説明

アポトーシスを調節する方法および組成物

【課題】小胞体膜貫通グルコース調節タンパク質78(GRP78)の活性を調節することによって、アポトーシスを調節する組成物および方法の提供。
【解決手段】アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分とのグルコース調節タンパク質(GRP)の相互作用を調節する薬剤に、GRPを接触させることを含む方法。前記GRPが小胞体に局在する、方法。前記GRPがGRP94またはGRP78である、方法。前記アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分がカスパーゼである、方法。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]この出願は、参照により本明細書に援用する2003年10月27日出願の米国特許仮出願第60/514661号に基づく優先権を、米国特許法第119条の下に主張する。
【米国政府の資金助成を受けた研究に関する記載】
【0002】
[0002]本明細書に記載の発明は、部分的に、国立衛生研究所(National Institutes of Health)の助成金番号CA20607およびAI42394からの資金を用いて行われたものであり、米国特許法第202条に従い、米国政府が本発明に特定の権利を有することを承認する。
【技術分野】
【0003】
[0003]本発明は、選択的にグルコース調節タンパク質(GRP)を標的とすることによって、アポトーシスを調節する方法および組成物に関し、より詳細には、GRP78およびプロカスパーゼの活性および/または相互作用を調節することに関する。
【背景技術】
【0004】
[0004]化学療法に対する耐性は依然として癌治療の主要な障害である。ヒト癌における薬物耐性の複雑さは、複数の経路が関与していることを示唆する。1つの機構は癌細胞中での遺伝子変化の結果であり、これは内因性のものと後天性のものとの両方がある。別の機構は、固形腫瘍で自然に生じる環境条件の結果でありうる。血管新生が乏しいため、固形腫瘍は、グルコース飢餓および低酸素を起こしている領域を通常含有し、この結果、アシドーシス、および細胞代謝の変化が起きている。低酸素、および栄養物の枯渇は、分化の進んだ、成長の遅い、非転移性の腫瘍でも、成長の速い攻撃的な未分化の悪性腫瘍でも起こる。
【0005】
[0005]グルコース飢餓など、細胞培養でのストレス状態は、通常、グルコースで調節されたストレス応答を引き起こすが、これは非折りたたみタンパク質反応(unfolded protein response)(UPR)と呼ばれる一般的な細胞防御機構の一部である。UPRの特徴の1つは、グルコース調節タンパク質(GRP)と呼ばれる、小胞体(ER)に局在するストレスタンパク質を誘導することである。GRPは、防御的な特性を有するCa2+結合シャペロンタンパク質である。最もよく特徴付けされているGRPはGRP78であり、これはBiPとも呼ばれる78kDaタンパク質である。タンパク質シャペロンとして、GRP78は、ERを通してプロセシングされた異種タンパク質と複合体を形成することが知られている。
【0006】
[0006]グルコース調節タンパク質、すなわちGRP(GRP74、GRP78、GRP94、GRP170、ERp72、PDI、カルレティキュリン、およびGRP58(別名ERp57))は、タンパク質の折りたたみおよび組み立てを補助するER分子シャペロンである。GRP78、GRP94、ERp72、およびカルレティキュリンはCa2+結合タンパク質でもある。GRP78およびGRP94は、熱ショックタンパク質と配列相同性を共有する。GRPファミリーのタンパク質は、グルコース飢餓、低酸素、細胞内カルシウムの変化、およびグリコシル化阻害剤への曝露によって協調的に誘導され、また、PDT媒介の酸化ストレスによっても誘導される(Gomerら、Cancer Res.51:6574−79、1991年;およびLiら、J.Cell Physiol 153:575−82、1992年)。78000 GRP(すなわち、GRP78)は、免疫グロブリン重鎖結合タンパク質と配列が同一であり、GRP78およびGRP94は両方ともERに局在している。
【0007】
[0007]エトポシドなど、トポイソメラーゼ阻害剤を含めた多数の細胞毒性薬物がプログラム細胞死の開始を行う。エトポシドなどのDNA損傷薬は、p53の媒介によるカスパーゼ細胞死シグナルカスケードを介した細胞死を引き起こすことができ、その結果、チトクロームcの遊離およびカスパーゼ−3の活性化をもたらす。カスパーゼ−3、−6、および−7は、カスパーゼにおけるアポトーシス遂行グループのメンバーであり、カスパーゼ−7が構造的に、そして機能的に最もカスパーゼ−3に類似している。活性のカスパーゼ−7は、ミトコンドリアおよびERの膜に結合していることが示されているが、カスパーゼ−3は細胞質ゾル中に残留する。これらの観測は、類似のアポトーシス遂行タンパク質が異なった細胞コンパートメントで機能し、かつ別個の基質に作用することを示唆するが、アポトーシス過程における、ERなどの細胞小器官の寄与については情報が限られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008]したがって、アポトーシス経路に関与するタンパク質相互の主要な相互作用を同定し、さらにそれらの相互作用を調節する必要性が当技術分野に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]細胞システムでの過剰発現およびアンチセンスアプローチは、GRP78が、ER恒常性の撹乱によって引き起こされた細胞死から細胞を防御できることを示す。GRP78の過剰発現は、ERストレスにさらされた正常な組織および臓器の損傷を制限するかもしれないが、GRP78の抗アポトーシス機能は、それが腫瘍細胞で自然に誘導されることによって、癌の進行および薬物耐性を導くかもしれないことを予測する。様々な癌細胞系、固形腫瘍、およびヒト癌生検試料中でGRP78レベルが高く、悪性腫瘍との相関性を示している。グルコース調節されたストレス応答の結果に、GRP78、および細胞の薬物耐性と相関関係のある他の協調的に調節されたGRP遺伝子が誘導されることを、多数のストレス誘発研究が、ヒト癌および他の細胞系を用いて示している。それにもかかわらず、薬物耐性付与におけるGRPの直接的役割は立証されていない。これは、GRPを誘導するのに、ストレス誘発剤、または、ある特定の細胞機能の欠損を使用することに伴う固有の問題のためであるが、これは誘導条件によって他の未知の多面的効果が作用するかもしれず、場合によっては複数の細胞経路に影響を与えるからである。加えて、薬剤耐性におけるER局在GRPの防御機能の機構も理解に至っていない。
【0010】
[0010]細胞における、アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分との、グルコース応答タンパク質78(GRP78)の物理的および機能的相互作用を調節することによってアポトーシスを調節する方法および組成物を提供する。これらの方法および組成物は、細胞増殖障害を治療するために、アポトーシス誘導性の治療用化合物と併せて使用できる薬剤を同定するのに特によく適している。したがって、この開示は、例えば細胞増殖障害など、対象の疾患を治療、予防、および/または遅延させるための医薬組成物の調製に関する。
【0011】
[0011]したがって一実施形態では、本発明は、アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分との膜貫通タンパク質の相互作用を調節する薬剤に、グルコース調節タンパク質78(GRP78)小胞体膜貫通タンパク質を接触させることによってアポトーシスを調節する方法を提供する。一態様では、上記細胞質ゾル成分がカスパーゼである。上記カスパーゼは、例えば、カスパーゼ−7でありうる。一般的には、この方法は、アポトーシスを促進または抑制するのに使用できる。上記薬剤は、例えば、ポリペプチド、抗体、または小分子でありうる。一態様では、上記薬剤が、GRP78のATP結合ドメインと相互作用する。
【0012】
[0012]別の実施形態では、本発明は、グルコース調節タンパク質78(GRP78)を、このタンパク質が小胞体膜に貫入する能力を抑制または防止する薬剤と接触させることによってアポトーシスを調節する方法を提供する。一態様では、上記薬剤は、GRP78の疎水性膜貫通ドメインIII(配列番号2のアミノ酸210〜260)またはドメインIV(配列番号2のアミノ酸400〜450)と相互作用する。
【0013】
[0013]別の実施形態では、本発明は、アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分とのグルコース調節タンパク質78(GRP78)の相互作用を調節する薬剤を同定する方法を提供する。この方法は、内在的に膜に結合しているグルコース調節タンパク質78(GRP78)を準備するステップと、少なくとも1種類のカスパーゼを含む細胞質ゾル成分を準備するステップと、薬剤を準備するステップと、上記タンパク質を上記成分および上記薬剤に、同時に、または順番に接触させるステップと、対照と比較した、上記タンパク質および上記成分の相互作用に対する上記薬剤の作用を決定するするステップとを含む。
【0014】
[0014]別の実施形態では、本発明は、膜とのグルコース調節タンパク質78(GRP78)の相互作用を調節する薬剤を同定する方法を提供する。この方法は、グルコース調節タンパク質78(GRP78)のタンパク質の疎水性膜貫通ドメインIII(配列番号2のアミノ酸210〜260)および/またはドメインIV(配列番号2のアミノ酸400〜450)を含むポリペプチドを準備するステップと、薬剤を準備するステップと、上記ポリペプチドを上記薬剤と接触させるステップと、対照と比較した、上記ポリペプチドが膜に貫入する能力に対する上記薬剤の作用を決定するステップとを含む。
【0015】
[0015]さらに別の実施形態では、本発明は、標的組織のアポトーシスを、前記組織でGRP78またはGRP94を過剰発現させることによって抑制する方法を提供する。例示的な組織には、ニューロン組織、血管組織、および心臓組織が含まれる。
【0016】
[0016]本発明は、アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分とのグルコース調節タンパク質(GRP)の相互作用を調節する薬剤に、GRPを接触させることを含む、細胞のアポトーシスを調節する方法を提供する。
【0017】
[0017]本発明は、(i)GRP78が細胞質ゾルタンパク質と相互作用する能力を抑制または防止する薬剤、および/または(ii)GRP78の産生を抑制する薬剤でグルコース調節タンパク質78(GRP78)を抑制することを含む、細胞のアポトーシスを促進する方法も提供する。
【0018】
[0018]本発明は、さらに、アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分とのグルコース調節タンパク質78(GRP78)の相互作用を調節する薬剤を同定する方法を提供する。この方法は、(a)内在的に膜に結合しているグルコース調節タンパク質78(GRP78)を準備するステップと、(b)少なくとも1種類のカスパーゼを含む細胞質ゾル成分を準備するステップと、(c)薬剤を準備するステップと、(d)a)のタンパク質を、(b)の成分およびc)の薬剤に、同時に、または順番に接触させるステップと、(e)対照と比較した、前記タンパク質と前記成分との相互作用に対する前記薬剤の作用を決定するするステップとを含む。
【0019】
[0019]本発明は、グルコース調節タンパク質(GRP)ポリヌクレオチドと相互作用する核酸を含むグルコース調節タンパク質(GRP)抑制核酸分子を提供する。一態様では、上記抑制核酸がアンチセンス分子である。別の態様では、上記核酸が短鎖抑制核酸(siNA)分子である。
【0020】
[0020]本発明は、GRPタンパク質の可溶性ドメインを含むグルコース調節タンパク質調節薬剤も提供する。
【0021】
[0021]本発明は、さらに、アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分とのグルコース調節タンパク質78(GRP78)の相互作用を調節する薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、(a)グルコース調節タンパク質78(GRP78)のATP結合ドメインを含むポリペプチドを準備するステップと、(b)少なくとも1種類のカスパーゼを含む細胞質ゾル成分を準備するステップと、(c)薬剤を準備するステップと、(d)(a)のポリペプチドを、(b)の成分および(c)の薬剤に、同時に、または順番に接触させるステップと、(e)対照と比較した、上記ポリペプチドおよび上記成分の相互作用に対する上記薬剤の作用を決定するステップとを含む。
【0022】
[0022]本発明は、さらになお、膜とのグルコース調節タンパク質78(GRP78)の相互作用を調節する薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、(a)グルコース調節タンパク質78(GRP78)のタンパク質の疎水性膜貫通ドメインIII(配列番号1または2のアミノ酸210〜260)および/またはドメインIV(配列番号1または2のアミノ酸400〜450)を含むポリペプチドを準備するステップと、(b)薬剤を準備するステップと、(c)a)のポリペプチドをb)の薬剤に、同時に、または順番に接触させるステップと、(d)対照と比較した、上記膜との上記ポリペプチドの相互作用に対する上記薬剤の作用を決定するステップとを含む。
【0023】
[0023]本発明は、カスパーゼポリペプチドを含む細胞を、グルコース調節タンパク質78(GRP78)小胞体膜貫通タンパク質との上記ポリペプチドの相互作用を調節する薬剤と接触させることを含む、アポトーシスを調節する方法を提供する。
【0024】
[0024]本発明は、グルコース調節タンパク質94(GRP94)小胞体膜貫通タンパク質を含む細胞を、アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分との膜貫通タンパク質の相互作用を調節する薬剤と接触させることを含む、アポトーシスを調節する方法も提供する。
【0025】
[0025]本発明は、さらに、標的組織のアポトーシスを抑制する方法を提供し、この方法は、上記組織でGRP78またはGRP94を過剰発現することを含む。
【0026】
[0026]本発明は、アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分とのグルコース調節タンパク質94(GRP94)の相互作用を調節する薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、(a)グルコース調節タンパク質94(GRP94)を準備するステップと、(b)少なくとも1種類のカスパーゼを含む細胞質ゾル成分を準備するステップと、(c)薬剤を準備するステップと、(d)(a)のタンパク質を、(b)の成分および(c)の薬剤に、同時に、または順番に接触させるステップと、(e)対照と比較した、上記タンパク質および上記成分の相互作用に対する上記薬剤の作用を決定するステップとを含む。
【0027】
[0027]本発明によって、発現制御エレメントに作用可能に連結したグルコース調節タンパク質(GRP)抑制核酸分子を含む核酸コンストラクトも提供される。
【0028】
[0028]別の態様では、本発明は、発現制御エレメントに作用可能に連結したグルコース調節タンパク質(GRP)抑制核酸分子を含む核酸コンストラクトを含む組換え体ベクターを提供する。
【0029】
[0029]本発明は、本発明の核酸コンストラクトを、薬学的に許容される担体中に含む医薬組成物を提供する。
【0030】
[0030]細胞増殖を抑制する方法も、本発明によって提供される。この方法は、細胞増殖障害を有する標的細胞を、本発明の核酸コンストラクトと接触させることを含む。
【0031】
[0031]さらに別の態様では、本発明は、本発明の核酸コンストラクトを対象に投与することを含む、対象の細胞増殖障害を治療する方法を提供する。
【0032】
[0032]本発明は、発現制御エレメントに作用可能に連結したグルコース調節タンパク質(GRP)ポリヌクレオチドを含む核酸コンストラクトを提供する。
【0033】
[0033]本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細を、添付図面および以下の説明に記載する。本発明の他の特徴、目的、および利点は、明細書および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】Aは、親であるCHO細胞系と、それに派生するC.1とにおけるGRP78タンパク質レベルの比較を示す図である。総タンパク質溶解物(25および50μg/レーン)を8%SDS−PAGEで分離し、GRP78、GRP94、およびタンパク質Xのレベルを、抗KDEL抗体を用いた免疫ブロッティングによって測定した。Bは、GRP78局在を免疫蛍光法によって示す図である。GRP78の細胞内分布は、主として核周囲であり、これはER局在性を示す。Cは、ERにおけるGRP78およびカスパーゼ−7の共局在性を示す図である。緑色蛍光はカスパーゼ−7を示し、赤色はGRP78を示し、紫色染色は核を表す。複合イメージでは、黄色染色が共局在性を示す。
【図2】Aは、様々な濃度のエトポシドに6hさらされたCHO細胞およびC.1細胞のクローン原性生存試験を示す図である。Bは、様々な濃度のアドリアマイシンに1hさらされたCHO細胞およびC.1細胞のクローン原性生存試験を示す図である。Cは、様々な濃度のカンプトテシンに24hさらされたCHO細胞およびC.1細胞のクローン原性生存試験を示す図である。
【図3】Aは、GRP78過剰発現が、エトポシドによって誘導されたアポトーシスから細胞を防御することを示す図である。C.1細胞およびCHO細胞は、無処理(Ctrl)であるか、あるいは30μMのエトポシド(Etop)で6h処理されている。生存細胞は、アネキシン染色が低レベルであるか無染色、かつPI染色を有する細胞である(左下のパネル)。初期アポトーシス細胞は、高レベルのアネキシン染色および低レベルのPI染色によって表され(右下のパネル)、さらに後期のアポトーシス細胞は、高レベルのアネキシン染色および高レベルのPI染色によって表され(右上のパネル)、そして、壊死は、高レベルのPI染色および低レベルのアネキシン染色を有する細胞によって表される(左上のパネル)。Bは、エトポシド処理の後の、CHO細胞およびC.1細胞のDNA断片化パターンを示す図である。
【図4】Aは、GRP78の過剰発現が、ヒト膀胱癌T24/83細胞にエトポシド耐性を付与することを示す図である。空のベクターであるpcDNA(T24/83−pcDNA)または野生型GRP78を発現するベクター(T24/83−GRP78)で安定に形質移入されたT24/83細胞系が確立された。2つの細胞系でのGRP78タンパク質レベルの免疫ブロット分析を示す(挿入図)。Bは、GRP78を発現するT24/83細胞の免疫蛍光イメージを示す図である。GRP78の局在は核周囲である。Cは、エトポシドによって誘導されたアポトーシスに対するGRP78の過剰発現の影響を示す図である。T24/83−pcDNA細胞およびT24/83−GRP78細胞は、無処理(Ctrl)であるか、あるいはエトポシドで処理されている(Etop)。
【図5】Aは、トポイソメラーゼII発現およびカスパーゼ−7活性化に対するGRP78の過剰発現の影響を示す図である。総タンパク質溶解物は、無処理(Ctrl)またはエトポシド処理(Etop)のCHO細胞およびC.1細胞から調製された。Bは、GRP78の過剰発現を、カスパーゼ−7のin vitro活性化抑制として示す図である。Cは、10μMチトクロームcの存在下(+)または非存在下(−)で、示されている通りの様々な量のdATP(mM)とインキュベートされたCHO細胞およびC.1細胞から調製された細胞質抽出物を示す図である。
【図6】Aは、抗カスパーゼ−7抗体(レーン1および2)または抗カスパーゼ−3抗体(レーン3および4)で免疫沈降された、CHO細胞またはC.1細胞から得られた細胞溶解物を示す図である。Bは、抗カスパターゼ−7抗体で免疫沈降された、CHO細胞およびAD1細胞から得られた抽出緩衝液中の細胞溶解物を示す図である(レーン1および2)。平行して、CHO細胞およびAD1細胞から得られた全細胞抽出物(WCE)の免疫沈降を行った(レーン3および4)。GRP78、プロカスパーゼ−7、および欠失変異型GRP78(Δ78)の位置が示されている。Cは、シグナル配列(S)、ATP結合ドメイン、およびアミノ酸175〜201にまたがるAD−1の欠失の位置を示す、野生型(wt)GRP78およびAD−1の概略図を示す図である。
【図7】Aは、ウインドウサイズ17を用いたKyte−Doolittle法を使用して作成されたGRP78の疎水性プロットを示す図である。4つの推定上の疎水性ドメイン(I−IV)が同定されている。下部は、成熟したGRP78タンパク質の概略図を表し、ここでは、疎水性ドメインIVおよびIIIが、推定上の膜貫通ドメインとして、トリプシン耐性を有する35−kDaおよび50−kDaのカルボキシル断片を形成する。Bは、限定的トリプシン消化を示す図である。C.1細胞から単離されたミクロソームは、無処理(レーン1)であるか、あるいは0.01%(レーン2)または0.05%(レーン2)の濃度のトリプシンで消化された。反応の終わりに、カルボキシル末端を認識する抗GRP78ウサギポリクローナル抗体(StressGen社、Victoria,Canada)を用いたウェスタンブロットによってGRP78の量を検出した(左のパネル)。完全長GRP78のバンドは、塗りつぶした矢印で示されており、35−kDaおよび50−kDaのタンパク質分解産物は、星印で強調された白抜きの矢印によって示されている。同一の膜をストリッピングし、抗カルレティキュリン(CRT)ウサギポリクローナル抗体(中央パネル)、または、カルネキシンのアミノ末端を認識する抗カルネキシンウサギポリクローナル抗体で再度プロービングした(右のパネル)。完全長のCRTおよびカルネキシンは、塗りつぶした矢印によって示されており、カルネキシンの70−kDaタンパク質分解産物は、星印で強調された白抜きの矢印によって示されている。Cは、炭酸ナトリウム抽出を示す図である。ミクロソーム(M)画分は、無処理(レーン1)であるか、あるいは100mM炭酸ナトリウムで処理されて、さらにペレット(P)画分および上清(S)画分(それぞれレーン2および3)に分離した。各画分からのタンパク質試料は、10% SDS−PAGEによって分離して、抗GRP78ウサギ抗体(左のパネル)、抗カルレティキュリンウサギ抗体(中央パネル)、および抗カルネキシンウサギ抗体(右のパネル)を用いたウェスタンブロットに用いた。
【図8】Aは、10% SDS−PAGEで分離され、抗カスパターゼ−7抗体を用いて免疫沈降された、無処理(Ctrl)またはエトポシド処理(Etop)のAD−1細胞およびC.1細胞から調製された細胞質抽出物(50μg/レーン)を示す図である。Bは、エトポシド処理の後におけるC.1細胞およびAD−1細胞のDNA断片化パターンを示す図である。Cは、GRP78のATP結合ドメインが、エトポシドによって誘導される細胞死に対する防御に必要であることを示す細胞死アッセイを示す図である。S.D.が示されている。
【図9】GRP−78の相対的細胞周期分布を示す図である。G1、G2、およびS期の細胞の割合を測定した。
【図10】320bpのgrp78エキソン1断片のサブクローニングを示す概略図である。
【図11A】サブクローニングに用いたスキームを示す図である。(A)は、pShuttle CMVアデノウイルスへのHisタグ付き完全長GRP78のサブクローニングのスキームを示す。
【図11B】サブクローニングに用いたスキームを示す図である。(B)は、Hisタグ付き完全長アンチセンス(AS)GRP78のサブクローニングのスキームを示す。
【図11C】サブクローニングに用いたスキームを示す図である。(C)は、PShuttle CMVアデノウイルスへのアンチセンス(AS)GRP78(320BP)のサブクローニングに用いたスキームを示す。
【図12】アデノウイルスに感染した293T細胞における、Hisタグ付きGRP78、GRP78(AS)、および320(AS)の発現を示す図である。
【図13】AおよびBは、320(AS)の存在下および非存在下においてエトポシドで処理された形質導入MDA−MB−435細胞の結果を示す図である。
【図14】293T細胞のウェスタンブロットを示す図である。使用されたsiRNA Grp78IIの濃度を最上部に示す。
【図15】MDA−MB−435細胞のウェスタンブロットを示す図である。使用されたsiRNA Grp78IIの濃度を最上部に示す。
【図16】siRNAオリゴヌクレオチドによるGRP78抑制の結果、エトポシドによって誘導された細胞死に対する乳癌細胞の感受性が増大することを示す図である。
【図17】GRP−BlK間の物理的相互作用および機能的相互作用を示す図である。(A)293T細胞は、無処理(レーン1、2)であるか、あるいは50μMエトポシドで24時間処理された(レーン3)。細胞を採取し、細胞溶解物をヤギIgG(レーン1)または抗BlKヤギ抗体(レーン2、3)のいずれかで免疫沈降した。抗BlK抗体および抗GRP78抗体を用いたウェスタンブロットは、BlKとの内在性GRP78の免疫共沈降を示す。(B)pcDNA、Hisタグ付きGRP78のCMVプロモータ駆動発現ベクター、Flagタグ付きGlk−b5TM発現ベクター単独、または、示されている通りの組合せを用いて293T細胞に一時的な形質移入を行った。48時間後に、トリパンブルー排除アッセイによって細胞死を測定した。pcDNA3で形質移入された細胞で観測されたアポトーシスのレベルを1とした。結果は、GRP78の過剰発現が、ERを標的とするBlK−b5tMの一時的形質移入によって誘導された細胞死から、293T細胞を防御することを示した。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[0066]固形腫瘍の微環境では、独特のストレス状態がGRPの誘導を導くことがある。本明細書に記載のデータおよび発明は、GRPが抗アポトーシスタンパク質として作用することを示す。GRPに媒介された防御では、アポトーシスのエフェクターとのGRPの相互作用が関与し、それによって、薬物療法によって誘導された細胞死の抑制が導かれる。
【0036】
[0067]したがって、本発明によれば、GRP(例えば、GRP74、GRP78、およびGRP94)は、癌などの細胞増殖疾患の治療に関連した化学療法薬、免疫療法薬、アンチセンス、リボザイム、siRNA、およびワクチンの合理的な標的を代表するものである。それらの分子シャペロンとしての機能に鑑みて、GRP(例えばGRP78および94)は、限定されるものではないが、臓器(腎臓、心臓、肺、肝臓)移殖、卒中発作、および心筋梗塞を含めた虚血性損傷で生じることのあるものなど、組織の損傷およびストレスの治療薬を開発するための合理的な標的をさらに代表するものである。アポトーシスを調節する方法および組成物を提供する。
【0037】
[0068]本発明は、細胞、組織、および/または対象のアポトーシスを調節するのに有用な方法および組成物を提供する。「アポトーシス」は、積極的な生理過程によって起こるプログラム細胞死を意味する。アポトーシスは、形態形成、免疫系の成熟、および組織恒常性を含めた発生過程で重要な役割を果たし、組織恒常性は、細胞分裂によって間断なく再生する組織中の細胞数を制限する。アポトーシスは、腫瘍形成に対する、細胞の重要な防御機能である。アポトーシス細胞、または「プログラム細胞死」の過程にある細胞は、時間的に調節された細胞死または特定の標的の細胞死に伴う1つまたは複数の特徴を示す。それらの特徴には、細胞の生存、成長、死、または分化の抑制、タンパク質/核酸の切断/断片化、クロマチン凝集、膜断片化、および1つまたは複数の、アポトーシスを促進するタンパク質またはアポトーシスを抑制するタンパク質の発現または活性の変化が含まれる。
【0038】
[0069]アポトーシスの「調節」は、本明細書に記載されているか、当技術分野で知られているプログラム細胞死の1つまたは複数の特徴を増強、刺激、または誘導すること、あるいは、低減、抑制、阻止、または防止(例えば予防)することを意味する。例えば、この開示の方法および組成物は、GRPの活性または産生を抑制することによって、アポトーシスを増強、刺激、または誘導する薬剤(例えば、アンチセンス分子、リボザイム、ポリペプチド、小分子、および同様のもの)を含む。この開示は、虚血および同様のものによる損傷を受けた組織または細胞のアポトーシスを抑制するために、GRPの活性または産生を増強する薬剤および方法も含む。
【0039】
[0070]GRP78は、新生タンパク質、分泌タンパク質、および膜貫通タンパク質に一時的結合し、ER中で異常な折りたたみまたはプロセシングを受けたタンパク質に恒久的に結合する。GRP78は、ERでのタンパク質プロセシングが乱された場合に、細胞ストレスの最中および後における防御機能を有すると考えられている。GRP78は、いくつかの制癌剤、主としてラディシコールおよびゲルダナマイシンの潜在的な標的であると提案された(ScheibelおよびBuckner、Biochem Pharm 56:675−82、1998年)。
【0040】
[0071]虚血においてGRP94が有する潜在的で未だに特徴付けされていない防護的役割は、ニューロン死に至ることが知られている時間にわたる一過性前脳虚血の後で、GRP94の発現が海馬で促進されるという観測が支持している(Yagitaら、J Neurochem 72:1544−1551、1999年)。GRP94は、急性腎臓虚血の後にも同様に誘導される(Kuznetsov、Proc Natl Acad Sci USA 93:8584−8589、1996年)。比較すると、HSP90を含めた熱ショックタンパク質は、通常、虚血の後の再潅流の酸化ストレスの最中に過剰発現される。例えば、成体動物のレベルと比較して、未成熟ラット脳におけるGRP78およびGRP94のレベルが高いことは、未成熟ラットが発作に対してより高い耐性を有することを説明するものである。加えて、発作に続く、成体ラット脳の歯状回領域でのこれらのGRPの特異的誘導は、神経保護効果と関連している。早期発生の家族性アルツハイマー病(FAD)では、変異体プレセニリン−1(PS1)タンパク質を発現する神経芽細胞腫細胞でのGRP78の過剰発現が、ERストレスに対する耐性を回復することが報告された。
【0041】
[0072]GRP78の発現は、プリオン病および伝染性海綿状脳症などの神経変性障害と関係づけられている変異体プリオンタンパク質の凝集も防止し、そのプロテオソーム分解を促進する。GRP78の誘導は、高ホモシステイン血症によって引き起こされた還元ストレスによって損傷した内皮細胞でも観測されている。高ホモシステイン血症は、遺伝コンポーネントおよび環境コンポーネントと共に、早発性動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、血栓症などの血栓性血管イベントの一般的危険因子である。したがって、GRPの誘導は、ストレス誘導性の細胞死から内皮細胞を防御するために哺乳類で進化した適応反応であるかもしれない。
【0042】
[0073]アポトーシスは、様々なシグナルと、細胞遺伝子産物の複雑な相互作用とによって媒介されるが、これらの相互作用の結果は、最終的には、ヒトと無セキツイ動物との間で進化的に保存されている細胞死経路に入る。この経路それ自体は、血液凝固カスケードのものに類似したタンパク分解性イベントのカスケードである。
【0043】
[0074]アポトーシス経路に関与するいくつかの遺伝子ファミリーおよび遺伝子産物が同定されている。アポトーシスプログラムの主要要素は、カスパーゼと呼ばれるシステインプロテアーゼファミリーである。ヒトカスパーゼファミリーには、Ced−3、ヒトICE(インターロイキン−1ベータ転換酵素)(カスパーゼ−1)、ICH−I(カスパーゼ−2)、CPP32(カスパーゼ−3)、ICErelII(カスパーゼ−4)、ICErelII(カスパーゼ−5)、Mch2(カスパーゼ−6)、ICE−LAP3(カスパーゼ−7)、Mch5(カスパーゼ−8)、ICE−LAP6(カスパーゼ−9)、Mch4(カスパーゼ−10)、カスパーゼ11〜14、および他のものが含まれる。
【0044】
[0075]カスパーゼは、アポトーシスが起こるのに必要であることが実証されている。さらに、カスパーゼは、古典的なアポトーシスの特徴である正確かつ限定的なタンパク分解性イベントに必要と思われる(SalvesenおよびDixit、Cell 91:443−446、1997年)。アポトーシス中、イニシエーターカスパーゼのチモーゲンが、自己触媒切断によって活性化し、これが次に、エフェクターカスパーゼの不活性チモーゲンを切断することによって、エフェクターカスパーゼを活性化する(SalvesenおよびDixit、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:10964−10967、1999年;Srinivasulaら、Mol.Cell 1:949−957、1998年)。エフェクターは、多くの細胞タンパク質のタンパク分解性切断の原因であり、これらは、しばしばアポトーシスに伴う独特の形態変化およびDNA断片化を導く(Cohen、Biochem.J.326:1−16、1997年;Henkart、Immunity 4:195−201、1996年;MartinおよびGreen、Cell 82:349−352、1995年;NicholsonおよびThomberry、TIBS 257:299−306、1997年;Porterら、BioEssays 19:501−507、1997年;ならびにSalvesenおよびDixit、Cell 91:443−446、1997年に概説されている)。
【0045】
[0076]エクゼキューターカスパーゼのうち、カスパーゼ−7はERに関連することが報告されている。アポトーシスの誘導の際に、プロカスパーゼ−7(35kDa)が最初に32kDaの中間体に変換され、これがさらに、活性の20−kDaおよび11−kDaのサブユニットにプロセシングされる。本明細書に示すウェスタンブロットのデータは、CHO細胞をエトポシドで処理することによって、カスパーゼ−7が活性化され、32−kDaの中間体形態が生じることを示す(図5、パネルA)。オートラジオグラムでさらに長い露出を行うと、エトポシドで処理された細胞での、活性の20−kDa形態および11−kDa形態が明らかとなった。GRP78を過剰発現した際には、無処理の細胞と、エトポシドで処理された細胞との両方で、カスパーゼ−7の、低レベルの活性化が検出された。これらのデータは、GRP78が、カスパーゼ−7の活性化をin vivoで抑制し、それによってアポトーシスを抑制できることを示す。加えて、チトクロームcを添加した際に、CHO細胞でのカスパーゼ−7活性化がC.1細胞より高かったが、これは、CHO試料における活性の20−kDa形態および11−kDa形態が、C.1試料と比較して増加していることによって証明された。チトクロームcおよびdATP両方の存在下では、C.1試料の抑制効果が逆に戻された。1mM dATPでは、両細胞系が等量の32−kDa形態および20−kDa形態を示し、これは、dATPがプロカスパーゼ−7をGRP78から遊離させ、その活性化をもたらすことを示す。
【0046】
[0077]本発明は、組織培養系でのGRP78、GRP94、およびadapt78の過剰発現によって、細胞を細胞死から防御できることを実証する。本発明は、GRP活性の発現阻害剤(例えばアンチセンスおよびRNAi)または阻害剤が、組織培養系でアポトーシスを誘導できることを実証する。したがって、GRPの防御機能は、組織または臓器の損傷を伴う状況においては有用かつ有益である。癌では、この同じ防御機能が癌細胞のアポトーシスを防止することによって有害となっている。
【0047】
[0078]本明細書で実証するように、GRPの上方制御および/または過剰発現は、ストレスにさらされた臓器の損傷を制限するのに有用である。しかし、GRPの抗アポトーシス機能は、腫瘍細胞および細胞増殖障害においてそれらが誘導されると、癌の進行および薬物耐性が導かれるかもしれないことを示す。様々な癌細胞系、固形腫瘍、およびヒト癌生検試料で、GRP78およびGRP94のレベルが高く、悪性腫瘍との相関性を示している。加えて、GRP78の誘導は、癌細胞を免疫監視から防御し、一方、ストレスに媒介されたGRP78の誘導は、アポトーシスを促進し、腫瘍の成長を抑制し、慢性低酸素細胞の細胞毒性を増強した。
【0048】
[0079]したがって、本発明は、癌治療への新規のアプローチとして、癌細胞におけるGRPの発現または機能の選択的抑制に有用な方法および組成物を提供する。例えば、ゲニステインは、GRPおよび熱ショック反応の両方を抑制するが、これは、発癌性物質で誘発された、ラットの腫瘍、およびマウスに移植されたヒト白血病細胞の腫瘍の成長を抑制する。別の例では、GRP94がp185/erbB2(HER−2/neuとも呼ばれる)と会合して安定化することが示されている。p185/erbB2は、乳癌で一般的に過剰発現され、予後不良と関連している。乳癌細胞を、抗増殖薬であるゲルダナマイシンで処理すると、GRP94−p185複合体が破壊され、それによって、乳癌細胞中のp185の分解が可能となる。
【0049】
[0080]GRPの事前誘導は、様々なヒト癌細胞系で、トポイソメラーゼIIの阻害剤(例えば、エトポシド)に対する耐性を与えるが、シスプラチンなどのDNA架橋結合薬に対する感受性を増大させる。アンチセンスノックダウンストラテジーによるGRP94レベルの直接的抑制は、エトポシドで誘導された細胞死に対する感受性の増大をもたらす。
【0050】
[0081]したがって、本発明は、GRPの抗アポトーシス効果の低減、化学療法薬に対する癌細胞の感受性の増大、および腫瘍細胞のアポトーシスの促進に有用な方法および組成物を提供する。本発明の方法および組成物は、腫瘍性の細胞(例えば、癌細胞)および組織におけるGRPの産生または活性を抑制する。
【0051】
[0082]以下に論じるように、本発明は、一群のGRPが小胞体膜に内在的に結合していることの最初の証拠を提供する。これらのGRPは、アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分と相互作用する。本明細書で使用する場合、「アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分」は、アポトーシスの開始または促進に協同的に働く任意のポリペプチド、またはポリペプチドの任意の一群である。例えば、GRP78とカスパーゼ−7との相互作用、および/または、GRP94とp185/erbB2との相互作用が、GRPの、アポトーシスを調節する能力と関係している。これらの相互作用は、例えば、カスパーゼ−7との個別のものである場合も、アポトーシス経路に関与する他のポリペプチドの一群の一部としてのものである場合もある。
【0052】
[0083]本発明はさらに、内在性GRP78とカスパーゼ−7との間の複合体形成が小胞体と関連して起こることの最初の証拠を提供する。本明細書で提供するデータは、GRP78およびカスパーゼ−7が相互作用することを示すが、本発明は、これら2つのタンパク質の間での直接的な相互作用に限定されない。本発明は、カスパーゼ−7を含むポリペプチド複合体である細胞質ゾル成分も、個別にカスパーゼ−7も包含すると理解される。カスパーゼ−7とのGRP78の相互作用を防止することによって、薬剤は、アポトーシスを促進することにより、アポトーシスを調節する。別法では、カスパーゼ−7とのGRP78の相互作用を促進することによって、薬剤は、アポトーシスを抑制することにより、アポトーシスを調節するであろう。
【0053】
[0084]一実施形態では、本発明は、アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分とのGRPタンパク質の相互作用を調節する薬剤に、GRP(例えば、GRP74、78、および/または94)を接触させることによって、アポトーシスを調節する方法を提供する。本明細書で使用する場合、「相互作用する」という用語には、分子間におけるいかなる検出可能な相互作用も含まれる。「相互作用する」という用語は、分子間の「結合性」相互作用も含まれるものとする。例えば、相互作用には、水素結合相互作用、共有結合相互作用、および同様のものを含めた、タンパク質−タンパク質、タンパク質−核酸、および核酸−核酸の性質のものが含まれる。
【0054】
[0085]「薬剤」は、本明細書で使用する場合、例えば、ポリペプチド、抗体、核酸(例えば、アンチセンス、リボザイム、siRNA、または同様のもの)、または小分子を含めた任意の分子でありうる。薬剤は、抗腫瘍薬および抗炎症薬を含めた、細胞増殖に関連した障害の治療に有用な「治療薬」でありうる。
【0055】
[0086]本発明は、GRP(例えばGRP78)の抗アポトーシス効果を抑制する薬剤を含むアポトーシス薬(例えばGRPアンタゴニスト)を提供する。本発明の一態様では、カスパーゼ−7とのGRP78の相互作用を防止および/または破壊して、それによって、GRP78の抗アポトーシス活性を抑制するのに、dATPなどの小分子を用いる。別の態様では、GRP(例えばGRP78)遺伝子からの転写を抑制する薬剤を提供する。例えば、ヴァーシペロスタチン(VST)は、GRP78からの転写を抑制するのに有用である(Parkら、J.Nat.Canc.Inst.、96(17):1300−1310、2004年;この開示を参照により本明細書に援用する)。別の態様では、抑制核酸分子(例えば、アンチセンス、リボザイム、siRNA)を、GRP(例えばGRP78)の産生を抑制するのに用いる。一態様では、上記アポトーシス薬は、GRP78の産生を抑制し、それによって細胞におけるGRP78の抗アポトーシス効果を抑制することによってアポトーシスを誘導する方法を提供する。本発明のアポトーシス薬は、GRP78などのGRPを発現する細胞でアポトーシスを促進することによって腫瘍性障害および癌障害を治療するのに有用である。
【0056】
[0087]アポトーシスが所望される実施形態では、GRPの発現/活性を直接的に低減する薬剤が、GRPの発現を低減する核酸でありうる。抗アポトーシス活性が所望される実施形態では、上記核酸はGRPタンパク質をコードするセンス核酸でありうる(例えば、細胞内に導入することによって、細胞のGRP活性を増大できる)。
【0057】
[0088]アポトーシス活性が所望される一実施形態では、GRPアンタゴニストなどのアポトーシス薬が使用される。一態様では、アポトーシス核酸薬が使用される。アポトーシス核酸薬は、GRPをコードするmRNAにハイブリッド形成するアンチセンス核酸でありうる。本発明での使用に供するアンチセンス核酸分子は、細胞状態下において、GRPタンパク質をコードする細胞性mRNAおよび/またはゲノムDNAに特異的にハイブリッド形成するものであり、このハイブリッド形成は、GRPタンパク質の発現を、例えば、転写および/または翻訳を抑制することによって抑制する様式のものである。この結合は、従来の塩基対相補性によるものでも、例えば、DNA二本鎖に結合する場合に、二重らせんの主溝における特異的相互作用によるものでもよい。
【0058】
[0089]アンチセンスコンストラクトは、発現プラスミドとして送達することができ、この発現プラスミドは、細胞内で転写された際に、GRPタンパク質をコードするmRNAおよび/または内在性遺伝子における少なくとも特有の部分に相補的なRNAを生成する。別法では、アンチセンスコンストラクトは、ex vivo生成されたオリゴヌクレオチドプローブの形態を取ることができ、このオリゴヌクレオチドプローブは、GRPタンパク質を発現する細胞に導入された際に、GRPタンパク質をコードするmRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリッド形成することによって、GRPタンパク質発現の抑制を引き起こす。そのようなアンチセンス分子は、内在性のヌクレアーゼ、例えばエキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼに対して耐性を有し、それによってin vivoで安定な修飾ヌクレオチドを含みうる。加えて、アンチセンス治療に有用なオリゴマーを構築する一般的なアプローチが、例えば、Van der Krolら、Biotechniques、6:958−976、1988年;およびSteinら、Cancer Res.、48:2659−2668、1988年によって概説されている。
【0059】
[0090]アンチセンスアプローチは、GRPをコードする核酸に相補的な核酸分子(例えば、DNA、RNA、またはこれらの修飾形態)の設計を必要とする。アンチセンス分子は、GRPのmRNA転写物に結合して翻訳を防止するか、あるいは、内在性遺伝子に結合して転写を防止するであろう。絶対的な相補性は必要でない。ハイブリッド形成する機能性は、相補性の程度と、アンチセンス核酸の長さとの両方に依存するであろう。通常、ハイブリッド形成する核酸が長いほど、その分子は、より多くの塩基ミスマッチを含有してもなおかつ安定した二本鎖(あるいは、場合によっては三本鎖)を形成することができる。当業者ならば、ハイブリッド形成した複合体の融点を判定する標準的な方法の使用によって、許容できるミスマッチの程度を確かめることができる。
【0060】
[0091]翻訳の抑制には、mRNAの5’末端に相補的なアンチセンス核酸分子、例えば、AUG開始コドンまでの5’非翻訳配列とAUG開始コドンとを含めた配列が最も効果的に作用するであろう。しかし、mRNAの3’非翻訳領域に相補的な配列も、mRNAの翻訳を抑制するのに効果的であることが示されている(Wagner,R.、Nature、372:333、1994年)。したがって、内在性GRP遺伝子またはmRNAの、それぞれ、転写および/または翻訳を抑制するアンチセンスアプローチに、GRP mRNAまたは遺伝子の5’または3’非翻訳、非コード領域に相補的なアンチセンス分子を用いることができる。mRNAの5’非翻訳領域に相補的なオリゴヌクレオチドは、AUG開始コドンの相補配列を含むべきである。
【0061】
[0092]GRPのコード鎖配列は公知である。例えば、表1は、一部のGRPおよび近縁の分子シャペロンのコード配列を提供する。他の配列は、GenBankを介して容易に明らかとなり、また利用できるだろう。
【0062】
【表1】

【0063】
各アクセッション番号とそれらの内容とを参照により本明細書に援用する。例えばGRP78をコードするコード鎖配列を所与として、WatsonとCrickの塩基対合の規則に従ってアンチセンス核酸を設計することができる。アンチセンス核酸分子は、GRPポリヌクレオチド(例えば、GRP78 mRNA)の全コード領域に相補的なものであることもあるし、または、オリゴヌクレオチドである場合があり、オリゴヌクレオチドはGRPのコード領域または非コード領域の一部分に対してのみアンチセンスである。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、GRP mRNAの転写または翻訳開始部位周辺の領域に相補的なものでありうる。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが約10、20、25、50、100、150、200、250、300、350、400ヌクレオチド、またはそれより長いものでありうる。アンチセンス核酸分子は、当技術分野で知られている操作法を用いた、化学合成および酵素連結を用いて構築できる。本発明のアンチセンス核酸分子は、当技術分野で知られている標準法によって、例えばDNA自動合成機(Biosearch社、Applied Biosystems社から購入可能)の使用によって合成できる。例として、Steinら、Nucl.Acids Res.、16:3209、1988年の方法によってホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを合成することができ;また、調整細孔ガラス重合体担体(Sarinら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、85:7448−7451、1988年)の使用によってメチルホスホン酸エステルオリゴヌクレオチドを調製することができる。アンチセンス核酸分子は、天然存在のヌクレオチドを用いて、あるいは、分子の生物学的安定性が増大するように、またはアンチセンス核酸とセンス核酸との間で形成された二本鎖分子の物理的安定性が増大するように設計された、様々に修飾されたヌクレオチドを用いて化学的に合成することができる。
【0064】
[0093]本発明はアンチセンス核酸分子を含み、これは、GRPをコードする配列を含むポリヌクレオチド配列とハイブリッド形成する。利用されるアンチセンス分子は、無修飾のものでも、修飾されているものでも、RNA分子でも、DNA分子でもよい。適当な修飾には、参照によりその開示を本明細書に援用する米国特許第4469863号明細書に開示されているエチルホスホナートまたはメチルホスホナート修飾、ならびにLaPlancheら、1986年、Nucleic Acids Research、14:9081によって、そして、Stecら、1984年、J.Am.Chem Soc.、106:6077によって記述されたデオキシヌクレオチドへのホスホロチオエート修飾が含まれるが、これらに限定されない。アンチセンスオリゴヌクレオチドへの修飾は、典型的には、5’または3’領域での端末修飾である。別法では、アンチセンス分子は、異なった方法で修飾された2種類以上の修飾核酸塩基のキメラバックボーンを有するものでありうる。そのような方法には、例えば、K.RamasamyおよびW.Seifert(Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters、6(15):1799−1804(1996年))によって記述されたアミノ酸修飾または核酸修飾、あるいは、G.WangおよびW.Seifert(Tetrahedron Letters、37(36):6515−6518(1996年))によって記述された4’糖置換オリゴヌクレオチドが含まれる。
【0065】
[0094]ホスホジエステル結合のオリゴヌクレオチドは、血清中または細胞内でヌクレアーゼの作用を特に受けやすく、したがって、一実施形態では、本発明のアンチセンス核酸分子は、ヌクレアーゼ耐性であることが示されているホスホロチオエート結合類似体またはメチルホスホナート結合類似体である。本発明のために想定されている一部のアンチセンスオリゴヌクレオチドの特定の例は、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホナート、短鎖のアルキルもしくはシクロアルキル糖間結合、または短鎖のヘテロ分子もしくは複素環式糖間(「バックボーン」)結合を含有しうる。典型的なものは、ホスホロチオエート、ならびにCHNHOCH、CHN(CH)OCH、CHON(CH)CH、CHN(CH)N(CH)CH、およびON(CH)CHCHバックボーンを有するものである(一方ホスホジエステルはOPOCHである)。モルフォリノバックボーン構造を有するオリゴヌクレオチド(SummertonおよびWeller、米国特許第5034506号明細書)も典型的である。他の実施形態では、2’−メチルリボヌクレオチド(Inoueら、Nucleic Acids Research、15:6131、1987年)およびRNA−DNA類似体複合のキメラオリゴヌクレオチド(Inoueら、FEBS Lett、215:327、1987年)も本明細書に記載の目的に使用できる。最後に、ペプチド核酸(PNA)などのDNA類似体も含まれ(Eghoimら、Nature、365:566、1993年;Nielsenら、Science、254:1497、1991年)、本発明に従って使用することができる。他のオリゴヌクレオチドは、以下のものを2’の位置に含む、アルキルおよびハロゲン置換された糖残基を含有しうる。すなわち、nを1〜約10として、OH、SH、SCH、F、OCN、OCHOCH、OCHO(CHCH、O(CHNH、またはO(CHNH、C〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、またはアラルキル、Cl、Br、CN、CF、OCF、O、S、またはN−アルキル、O、S、またはNアルケニル、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、コレステリル基、抱合体、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善する基、あるいは、オリゴヌクレオチドおよび類似の特性を有する他の置換物の薬力学的性質を改善する基である。オリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル基の代わりにシクロブチルなどの糖ミメティックを有するものでもよい。他の実施形態は、少なくとも1つの修飾塩基形態、または、イノシンなどの「普遍的塩基」を含みうる。塩基修飾ヌクレオシドの調製、および前記塩基修飾ヌクレオシドを前駆体として用いた修飾オリゴヌクレオチドの合成は、例えば、米国特許第4948882号および第5093232号明細書に記載されている。これらの塩基修飾ヌクレオシドは、化学合成によってそれらをオリゴヌクレオチドの端末または内部の位置に組み込むことができるように設計される。オリゴヌクレオチドの端末または内部の位置に存在するそのような塩基修飾ヌクレオシドは、ペプチドまたは他の抗原の結合部位として機能する。それらの糖残基が修飾されたヌクレオシドについても記載されており(例えば、米国特許第5118802号および米国特許第5681940号明細書、これらの両方を参照により本明細書に援用する)、これらも同様に使用することができる。当技術分野の当業者ならば、本発明で使用するための他の結合を選択することができるであろう。これらの修飾も、オリゴヌクレオチドの細胞内取込みおよび安定性を改善するように設計できる。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与経路または投与形態に応じて、修飾または修飾部位が異なるであろうと理解されている(例えば、5’または3’修飾)。当業者ならば過度の実験をしなくても、適切な修飾を容易に判定することができる。
【0066】
[0095]アンチセンス分子を生成するのに使用できる修飾ヌクレオチドの例には、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキュェオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキュェオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キュェオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリンが含まれる。別法では、アンチセンス分子は、GRPポリヌクレオチドまたはその断片がその中にアンチセンス方向にサブクローニングされている(すなわち、挿入された核酸から転写されたRNAが、対象の標的核酸に対してアンチセンスの方向のとなるであろう)発現ベクターを用いることで、生物学的に産生することができる。
【0067】
[0096]特定の実施形態では、アンチセンス分子は、配列番号3に記載の配列またはその断片を含む。したがって、一態様では、アンチセンス分子は、(i)配列番号3、(ii)GRP78の産生を抑制する配列番号3の断片、(iii)TがUに置換されている、配列番号3またはその断片、(iv)修飾バックボーンを有する配列番号3、および(v)GRP78をコードするポリヌクレオチドと相互作用することができる(i)〜(iv)のうちのいずれかが含まれる。他の特定のアンチセンス分子には、GRPをコードする核酸のアンチセンス断片が含まれる(例えば、配列番号3の断片、GRP94のアンチセンス断片、および同様のもの、表1を参照)。
【0068】
[0097]GRPのサイレンシングを行うことのできる短鎖二本鎖核酸分子も、本発明の一部として提供される。短鎖干渉RNA(siRNA)分子は、RNAの転写を妨害するものとして提供される。RNA干渉(RNAi)は、転写後遺伝子サイレンシングの機構であり、その際には、対象の遺伝子(またはコード領域)に対応する二本鎖RNA(dsRNA)を細胞または生物に導入し、それによって、対応するmRNAの分解をもたらす。RNAi効果は、何回もの細胞分裂の間持続し、その後、遺伝子発現が回復する。したがって、RNAiは、標的ノックアウトまたは「ノックダウン」をRNAレベルで作製する非常に強力な方法である。RNAiは、ヒト胚腎臓およびHeLa細胞を含めたヒト細胞で成功している(例えば、Elbashirら、Nature、411(6836):494−8、2001年参照)。一実施形態では、RNAヘアピンの内在的発現を強制することによって、哺乳類細胞でGRP(例えば、GPR78)サイレンシングを誘導することができる(Paddisonら、PNAS USA、99:1443−1448、2002年を参照)。別の実施形態では、短鎖(21〜23nt)dsRNAを用いた形質移入によって遺伝子発現の特異的な抑制を行う(Caplen、Trends in Biotechnology、20:49−51、2002年で概説されている)。
【0069】
[0098]簡潔には、サイレンシングするべきGRP遺伝子の一部に対応するdsRNAを細胞内に導入する。dsRNAは、後で、消化されて21〜23ヌクレオチドのsiRNA、すなわち短鎖干渉RNAになる比較的長い配列である場合も、あるいは、21〜23ヌクレオチドのsiRNA分子を細胞に直接導入することもある。siRNA二本鎖分子は、ヌクレアーゼ複合体に結合して、RNA誘導サイレンシング複合体またはRISCとして知られるものを形成する。RISCは、siRNA鎖の一方と、内在性mRNAとの塩基対合相互作用によって、相同的な転写産物を標的とし、次に、siRNAの3’末端から約12ヌクレオチドのところで、そのmRNAを切断する(Sharpら、Genes Dev 15:485−490、2001年;およびHammondら、Nature Rev Gen 2:110−119、2001年に概説されている)。
【0070】
[0099]遺伝子サイレンシングにおけるRNAi技法は、標準的な分子生物学的方法を利用するものである。不活性化するべき標的遺伝子の配列に対応するdsRNAは、標準法によって、例えば、鋳型DNA(標的配列に対応する)の両鎖をT7 RNAポリメラーゼで同時に転写させることによって生成することができる。RNAiで使用するためのdsRNAを産生するためのキットを、例えば、New England Biolabs Inc.社から購入することができる。dsRNAを生成させるために構築されたdsRNAまたはプラスミドによる形質移入の方法は、当技術分野で日常的なものである。
【0071】
[00100]RNAiの遺伝子サイレンシング効果と同様の効果が、mRNA−cDNAハイブリッドコンストラクトで形質移入された哺乳類細胞で報告されており(Linら、Biochem Biophys Res Commun、281(3):639−44、2001年)、これは、遺伝子サイレンシングのさらに別のストラテジーを提供するものである。
【0072】
[00101]したがって、本発明は、GRPをコードするポリヌクレオチドと相互作用する短鎖干渉核酸(siNA)を提供する。一態様では、本発明は、(i)長さが21〜23ヌクレオチドであり、5’末端にAAジヌクレオチドを含み、GC含量が30〜50%である、表1に記載の配列番号1、5、7、9、11、13、または15に記載の配列およびそれらの相補配列;(ii)5’−AAGGTTACCCATGCAGTTGTT−3’(配列番号4)およびその相補配列を含む二本鎖核酸、(iii)TがUに置換されている、配列番号4に記載の配列およびその相補配列;ならびにsiNAが上記の修飾バックボーンを有する(i)〜(iii)のうちのいずれかを含むsiNAを提供する。
【0073】
[00102]GRP mRNAの翻訳およびGRPタンパク質の発現を防止するために、GRP mRNAの転写産物を触媒作用によって切断するように設計されたリボザイム分子を用いることもできる(例えば、1990年10月4日発行のPCT国際公開第WO90/11364号パンフレット;Sarverら、Science、247:1222−1225、1990年、および米国特許第5093246号明細書を参照)。GRP mRNAを破壊するのに、部位特異的認識配列でmRNAを切断するリボザイムを用いることもできるが、典型的なのはハンマーヘッド型リボザイムの使用である。ハンマーヘッド型リボザイムは、標的mRNAとの相補的塩基対を形成する隣接領域によって決定される位置でmRNAを切断する。唯一の要件は、標的mRNAが、5’−UG−3’という2塩基配列を有することである。ハンマーヘッド型リボザイムの構築および生成は、当技術分野で周知であり、HaseloffおよびGerlach、Nature、334:585−591、1988年によって十全な記載がなされている。通常、リボザイムは、切断認識部位がGRP mRNAの5’末端近傍に位置するように、すなわち、効率が増大し、非機能的なmRNA転写物の細胞内蓄積が最小となるように構築する。本発明におけるリボザイムは、ベクターを用いて細胞に送達することができる。
【0074】
[00103]内在性GRP遺伝子の発現の低減は、標的相同組換えを用いて、GRP遺伝子またはそのプロモータを不活性化または「ノックアウト」することによって行うこともできる。例えば、Kempinら、Nature、389:802(1997年);Smithiesら、Nature、317:230−234、1985年;ThomasおよびCapecchi、Cell、51:503−512、1987年;およびThompsonら、Cell、5:313−321、1989年を参照のこと。例えば、内在性GRP遺伝子(GRP遺伝子のコード領域または調節領域)に相同的なDNAが隣接した変異型の非機能的なGRP遺伝子変種(または、全く無関係なDNA配列)を使用して、選択マーカーおよび/または負の選択マーカーを用いて、あるいは用いずに、GRPタンパク質をin vivoで発現する細胞に形質移入することができる。
【0075】
[00104]本発明で使用される核酸、リボザイム、RNAi、および三重らせん分子は、DNAおよびRNA分子を合成するための、当技術分野で知られている任意の方法で調製することができる。これらには、例えば、固相ホスホラミド化学合成など、オリゴデオキシリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオチドを化学合成するための、当技術分野で周知の技法が含まれる。別法では、RNA分子は、その核酸分子をコードするDNA配列のin vitroおよびin vivo転写によって生成することができる。そのようなDNA配列は、広範なベクターに組み入れることができ、ベクターは、適当なRNAポリメラーゼプロモータを包含する。別法では、使用されるプロモータに応じて、アンチセンスRNAを構成的に、あるいは誘導によって合成するアンチセンスcDNAコンストラクトを、細胞系に安定的に導入することができる。
【0076】
[00105]さらに別の態様では、本発明は、GRP活性のポリペプチドアンタゴニストを提供する。そのようなポリペプチドには、抗体、GRPの可溶性ドメイン、および細胞膜へのGRPの貫入を防止する、GRPの膜貫通ドメインと相互作用するポリペプチドが含まれる。例えば、本明細書に記載の通り、GRP78は細胞質ゾルドメインおよび膜貫通ドメインを含む。この細胞質ゾルドメイン(例えば可溶性ドメイン)は、アポトーシスを誘導する細胞質ゾルタンパク質と相互作用する。アポトーシスを誘導する細胞質ゾルタンパク質とのGRPの相互作用を抑制することによって、GRPの抗アポトーシス効果を抑制することができる。さらに、GRP(例えばGRP78)は疎水性膜貫通ドメインを含む。例えば、GRP78タンパク質の疎水性膜貫通ドメインIII(配列番号2のアミノ酸210〜260)および/またはドメインIV(配列番号2のアミノ酸400〜450)は有用な標的である。GRPポリペプチドが膜に貫入する能力を調節するポリペプチド薬剤は、アポトーシス調節の候補薬である。例えば、GRP78が膜に貫入する能力を抑制するポリペプチド薬剤もアポトーシスを促進することができるであろう。なぜなら、それは、GRP78が、アポトーシスを促進するのに必要な細胞質ゾル成分と相互作用するのを防止するであろうからである。したがって、GRPタンパク質の変種および断片(例えば、天然のGRPタンパク質の断片、類似体、および誘導体)も、GRP(例えば、GRPアンタゴニスト)の抗アポトーシス活性を抑制する本発明の方法で使用することがある。
【0077】
[00106]上記に論じたように、GRP78のトポロジーは、GRP78の一部が細胞質ゾルに露出していて、細胞質ゾル成分との相互作用が可能になっていることを示す。したがって別の実施形態では、本発明は、GRP78を、このタンパク質が小胞体膜に貫入する能力を抑制または防止する薬剤と接触させることによって、アポトーシスを調節する方法を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、GRP78タンパク質の疎水性膜貫通ドメインIII(配列番号2のアミノ酸210〜260)および/またはドメインIV(配列番号2のアミノ酸400〜450)を含むポリペプチドを準備することによって、膜とのGRP78の相互作用を調節する薬剤を同定する方法を提供する。このポリペプチドを薬剤と接触させることができ、上記相互作用に対するこの薬剤の作用を決定することができる。上記ポリペプチドが膜に貫入する能力を調節する薬剤は、アポトーシス調節の候補薬である。例えば、GRP78が膜に貫入する能力を抑制する薬剤は、アポトーシスの促進もできるであろう。なぜならそれは、GRP78が、アポトーシスを促進するのに必要な細胞質ゾル成分と相互作用するのを防止するであろうからである。したがって、本発明の方法は、ER膜に結合した(すなわち、内在的に結合した)GRP78と、例えばカスパーゼ−7を含むタンパク質複合体など、アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分との相互作用を調節することによって、アポトーシスを調節することを含む。
【0078】
[00107]別の実施形態では、本発明は、アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分とのGRP78の相互作用を調節する薬剤を同定する方法を提供する。この方法は、膜に内在的に結合したGRP78を準備するステップと、少なくとも1種類のカスパーゼを含む細胞質ゾル成分を準備するステップと、薬剤を準備するステップと、上記タンパク質を上記成分および上記薬剤に、同時に、または順番に接触させるステップと、対照と比較した、前記タンパク質と前記成分との相互作用に対する前記薬剤の作用を決定するするステップとを含む。
【0079】
[00108]本発明は、GRP(例えばGRP78)の抗アポトーシス活性を抑制する薬剤に、組織または細胞を接触させることを含む、組織または細胞のアポトーシスを促進するのに有用な方法および組成物を提供する。これらの方法および組成物は、癌および腫瘍増殖を含めた腫瘍性障害の治療に有用である。これらの方法および組成物は、単独で用いることも、他の腫瘍/癌治療と組み合わせて用いることもできる。例えば、本発明の方法および組成物は、限定されるものではないが、5−フルオロウラシル(5FU)、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、エトポシド、タキソール、およびアルキル化剤などの化学療法薬と組み合わせて用いることができる。さらに、核酸阻害剤の組合せ(例えば、配列番号3および配列番号4の組合せ)を用いることもできる。
【0080】
[00109]別の態様では、GRPタンパク質の変種および断片(例えば、天然のGRPタンパク質の断片、類似体、および誘導体)を、本発明の方法で用いることができる。そのような変種には、例えば、天然のGRPポリヌクレオチドの天然に存在するアレル変種によってコードされたポリペプチド、天然のGRPポリヌクレオチドの選択的スプライシング形態によってコードされたポリペプチド、天然のGRPポリヌクレオチドの相同体によってコードされたポリペプチド、および天然のGRPポリヌクレオチドの天然には存在しない変種によってコードされたポリペプチドが含まれる。
【0081】
[00110]GRPタンパク質変種は、天然のGRPタンパク質とは1つまたは複数のアミノ酸が異なるポリペプチド配列を有する。そのような変種のペプチド配列は、天然のGRPポリペプチドにおける1つまたは複数のアミノ酸の欠失、付加、または置換を特徴としうる。アミノ酸挿入は通常、連続した約1〜4アミノ酸の挿入であり、欠失は、好ましくは連続した約1〜10アミノ酸の欠失である。一部の適用では、変種GRPタンパク質は、天然のGRPタンパク質の機能活性(例えば、抗アポトーシス活性を媒介する能力、カスパーゼ−7に結合する能力、および同様のもの、アゴニストである)を実質的に維持する。そのような機能性の変種は、アポトーシスの軽減が望ましい、アポトーシスに関連した障害、例えば虚血および同様のものを治療するのに有用である。他の適用では、変種GRPタンパク質は、GRPタンパク質の機能活性を欠失しているか、あるいは有意な低減を特徴とする。天然のGRPタンパク質の機能活性を保持していることが望ましい場合、GRPタンパク質変種の生成は、サイレントまたは保存的な変化を特徴とする核酸分子を発現することによって行うことができる。機能活性にかなりの変化を伴う変種GRPタンパク質の生成は、保存的な変化でないことを特徴とする核酸分子を発現することによって行うことができる。
【0082】
[00111]1つまたは複数の特定のモチーフおよび/またはドメイン、あるいは任意の大きさ、例えば、少なくとも5、10、25、50、75、100、125、150、または175アミノ酸の長さに対応するGRPタンパク質断片を本発明の方法で用いることができる。加えて、従来の固相f−Mocまたはt−Boc化学など、当技術分野で知られている技法を用いて、断片を化学的に合成することもできる。例えば、本発明の方法で使用されるGRPタンパク質は、任意に、断片相互のオーバーラップがない所望の長さの断片に分割しても、あるいはオーバーラップを有する所望の長さの断片に分割してもよい。それらの断片は、生成して(組換えによって、または化学合成によって)、天然のGRPタンパク質のアゴニストまたはアンタゴニストのいずれかとして機能しうる断片を同定するために試験することができる。
【0083】
[00112]本発明の方法は、GRPタンパク質の組換え体形態を用いることもある。天然のGRPタンパク質に加えて、組換え体ポリペプチドは、天然のGRP核酸配列と少なくとも85%(例えば、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%)の配列同一性を有する核酸によってコードされる。一実施形態では、変種GRPタンパク質は、天然のGRPタンパク質の1つまたは複数の機能活性を欠失している。
【0084】
[00113]当技術分野で知られている様々な技法によって、GRPタンパク質変種は生成することができる。例えば、GRPタンパク質変種は、個別の点突然変異を導入すること、またはトランケーションなど、変異導入によって生成することができる。変異によって、天然のGRPタンパク質の機能活性と実質的に同一のものを有するGRPタンパク質変種も、そのサブセットのみを有するGRPタンパク質変種も生成できる。別法では、GRPタンパク質と相互作用する別の分子に競合的に結合する(例えば、GRP78とカスパーゼ−7との相互作用を妨げる)ものなど、このタンパク質の天然存在の形態の機能を抑制できる、このタンパク質のアンタゴニスト形態を生成することができる。加えて、1つまたは複数のGRPの機能活性を構成的に発現するタンパク質のアゴニスト形態も生成できる。生成できる他のGRPタンパク質変種には、例えばプロテアーゼの標的配列を改変する変異による、タンパク分解性切断に対する耐性を有するものが含まれる。ペプチドのアミノ酸配列における変化が、天然のGRPタンパク質の1つまたは複数の機能活性を有するGRPタンパク質変種をもたらすものかどうかは、その変種が天然のGRPタンパク質の機能活性を有するかどうか試験することによって、容易に判定できる。
【0085】
[00114]GRP融合タンパク質をコードする核酸分子を本発明の方法で用いることもできる。そのような核酸は、適当な宿主に導入された際にGRP融合タンパク質を発現するコンストラクト(例えば発現ベクター)を調製することによって作製できる。例えば、そのようなコンストラクトは、別のタンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドにインフレームで融合した、GRPタンパク質をコードする第1のポリヌクレオチドを、適当な発現システムでそのコンストラクトを発現すると融合タンパク質が産生されるように連結することによって作製できる。
【0086】
[00115]別の例では、縮重オリゴヌクレオチド配列からGRPタンパク質変種を生成することができる。縮重ポリヌクレオチド配列の化学合成は、DNA自動合成機で行うことができ、その後、合成ポリヌクレオチドを適切な発現ベクターに連結する。縮重を有する1セットのポリヌクレオチドを用いる目的は、1セットの所望の潜在的GRPタンパク質配列をコードする配列すべてを1つの混合物中に提供することである。縮重オリゴヌクレオチドの合成は当技術分野で周知である(例えば、Narang、Tetrahedron、39:3,1983年;Itakuraら、Recombinant DNA,Proc 3rd Cleveland Sympos.Macromolecules、AG Walton編集、Amsterdam:Elsevier社、273〜289ページ、1981年;Itakuraら、Annu.Rev.Biochem.、53:323、1984年;Itakuraら、Science、198:1056,1984年;およびIkeら、Nucleic Acid Res.、11:477、1983年を参照のこと)。そのような技法は、他のタンパク質の指向性進化において利用されている(例えば、Scottら、Science、249:386−390、1990年;Robertsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:2429−2433、1992年;Devlinら、Science、249:404−406、1990年;およびCwirlaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:6378−6382、1990年;ならびに米国特許第5223409号;第5198346号;および第5096815号明細書を参照のこと)。
【0087】
[00116]同様に、スクリーニング、およびそれに続く、1つまたは複数のGRPアゴニスト(例えば抗アポトーシス)活性またはアンタゴニスト(例えばアポトーシス)活性を有する断片の選択に用いる、多様化されたGRPポリペプチド断片の集合を生成するために、GRPクローンのコード配列断片のライブラリーを準備することができる。化学合成を含めた、そのようなライブラリーを生成するための様々な技法が当技術分野で知られている。一実施形態では、(i)GRPポリヌクレオチドコード配列の二本鎖PCR断片を、ニッキングが1分子内で約1回のみ起こるようにヌクレアーゼで処理すること、(ii)二本鎖DNAを変性させること、(iii)異なったニッキング産物のセンス/アンチセンス対を含みうる二本鎖DNAが形成されるようにDNAを再生させること、(iv)S1ヌクレアーゼで処理することによって再生された二本鎖分子から一本鎖部分を除去すること、および(v)この結果得られた断片ライブラリーを発現ベクターに連結することによって、コード配列断片のライブラリーを生成することができる。この例示的方法によって、様々な大きさのN末端断片、C末端断片、および内部断片をコードする発現ライブラリーを得ることができる。
【0088】
[00117]点突然変異またはトランケーションで生成されたコンビナトリアルライブラリーの産物をスクリーニングするため、あるいは、ある特定の特性を有する産物を求めてcDNAライブラリーをスクリーニングするための広範な技法が当技術分野で知られている。そのような技法は、概ね、GRPポリヌクレオチド変種のコンビナトリアル変異生成によって作製された遺伝子ライブラリーの迅速スクリーニングに適用可能であろう。大きなライブラリーをスクリーニングする最も広範に使用されている技法は、複製可能な発現ベクターにライブラリーをクローニングすること、この結果得られたベクターライブラリーで適当な細胞を形質転換すること、および所望の活性の検出によって、その産物が検出された遺伝子をコードするベクターの比較的容易な単離が促進される条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現することを通常含む。抗アポトーシス効果およびアポトーシス効果を測定する有用なスクリーニング技法の1つは、エトポシドの存在下で細胞生存率を測定することを含む。天然のGRPの機能を抑制する(例えば、そのアゴニストである)組換え体産物は、エトポシドの存在下で細胞死の増大を示し、一方、GRPの機能を促進する(例えば、そのアゴニストである)産物は、対照と比較して、細胞死の減少を示すであろう。したがって、本発明は、遺伝子産物の変異生成およびスクリーニングを行って、GRP活性に対するそれらのアゴニスト作用および/またはアンタゴニスト作用を測定する方法を提供する。アゴニスト作用を有する薬剤は、虚血、および好ましくない細胞死を引き起こす関連障害を治療するのに有用である。アンタゴニスト作用を有する薬剤は、好ましくない細胞増殖を有する疾患および障害(例えば、癌および同様のものに関連した細胞増殖障害)を治療するのに有用である。
【0089】
[00118]本発明の方法は、天然のGRPタンパク質が相互作用する他のタンパク質または分子(例えば、カスパーゼ−7)とのGRPタンパク質の結合を破壊できるミメティック、例えばペプチドまたは非ペプチド薬剤を利用しうる。したがって、ここに記載した変異生成技法は、GRPタンパク質のどの決定部位が分子間相互作用に参加するか、例えば、アポトーシスを遂行するのに機能する他のタンパク質へのGRPタンパク質の結合に関与するかをマッピングするのに用いることができる。ここまで記載した発明は、抗アポトーシス性のGRPを抑制することによってアポトーシスを促進するのに有用な方法および組成物に焦点を合わせたが、本発明は、抗アポトーシス活性を促進する(例えば、虚血性損傷および同様のものに応答して)方法および組成物も含む。
【0090】
[00119]本発明は、GRP(例えば、GRP78および94)の抗アポトーシス活性を促進する方法および組成物も提供する。本発明のこの態様における組成物および方法は、例えば、脳卒中、心発作、低酸素、低血糖、脳もしくは脊髄虚血、または脳もしくは脊髄損傷の結果生じた組織損傷、または、細胞もしくは組織に対する潜在的な損傷を治療するのに有用である。この方法は、GRP活性、GRP発現、GRP産生、および/または、アポトーシスの抑制をもたらすポリペプチドとのGRPの結合を促進する薬剤(例えば、小分子、ポリペプチド、ペプチド、および核酸が含まれる)を用いる。
【0091】
[00120]本発明は、細胞におけるGRP発現および/またはGRP活性を調節する方法および組成物を提供する。細胞における、GRPなどの細胞内タンパク質の発現/活性を調節する薬剤が多数知られている。使用される特定のシステムに適したものなら、これらのうちのいずれを用いてもよい。GRP活性を促進する(例えば、アゴニストである)典型的な薬剤には、変異体/変種GRPポリペプチドまたはその断片、機能性GRPポリペプチドまたは変種をコードする核酸、および有機または無機の小分子が含まれる。
【0092】
[00121]細胞におけるGRP発現および/または活性を調節できるタンパク質の例には、天然のGRPタンパク質(例えば活性を上方制御するため)、または、カスパーゼなど、その結合リガンドに対して天然のGRPタンパク質と競合できるその変種(例えばアポトーシスを下方制御するため)が含まれる。そのようなタンパク質変種は、本明細書に記載の通り、当技術分野で知られている様々な技法を介して生成することができる。例えば、GRPタンパク質変種は、個別の点突然変異を導入すること、またはトランケーション(例えば、膜貫通量領域のトランケーション)など、変異導入によって生成することができる。変異によって、天然のGRPタンパク質の機能活性と実質的に同一の機能活性を有するGRP変種または断片も、改善された機能活性を有するものも、それら機能活性のサブセットのみを有するものも生成できる。1つまたは複数のGRP機能活性を構成的に発現する、GRPタンパク質のアゴニスト(またはスーパーアゴニスト)形態を生成しうる。生成できる他のGRPポリペプチド変種には、例えばプロテアーゼの標的配列を改変する変異による、タンパク分解性切断に対する耐性を有するものが含まれる。ペプチドのアミノ酸配列における変化が、天然のGRPタンパク質の1つまたは複数の機能活性を有するGRPタンパク質変種をもたらすものかどうかは、その変種が天然のGRPタンパク質の機能活性(例えばアポトーシスを調節する活性)を有するかどうか試験することによって、容易に判定できる。
【0093】
[00122]前述の通り、本発明は、標的組織でGRP78および/またはGRP94を過剰発現することによって、組織のアポトーシスを抑制する方法を提供する。標的組織におけるポリペプチドの過剰発現は、当業者に知られている任意の方法で行うことができる。例えば、GRP78および/またはGRP94をコードする核酸配列を、標的組織での発現に適した核酸コンストラクトに組み込むことができる。コンストラクトは、通常、標的組織での発現に適した調節配列を有するであろう。
【0094】
[00123]本発明は、細胞でのGRPレベルの調節を含む方法を提供する。細胞は、in vitroでも、in vivoでもよい。細胞がin vivoである場合、それは、ヒト、ラット、ネズミ、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、サル、類人猿、ウサギ、ウシ、および同様のものを含めた任意の哺乳動物など、動物対象の体内に存在しうる。動物対象は、成体、幼若動物、および新生児を含めた、発生の任意のステージのものでありうる。動物対象には、発生における胎児ステージのものも含まれる。標的組織は、肝臓、腎臓、心臓(例えば心筋細胞)、肺、胃腸管の構成要素、膵臓、胆嚢、膀胱、骨格筋、脳を含めた中枢神経系、眼、皮膚、骨、および同様のものなど、動物対象の体内にある任意のものでありうる。
【0095】
[00124]ウイルスベクターを用いた、GRP核酸(例えば、アンチセンス分子またはGRP変種などの抑制核酸)を細胞内に導入にする様々な技法を、本発明の方法で用いることができる。本発明での使用に供するウイルスベクターは、宿主細胞に対して低い毒性を示し、かつ、治療上有用な量のGRPタンパク質あるいはアンチセンスおよび/またはRNAi核酸を、組織特異的な方法で誘導する。本発明で使用できるウイルスベクターの方法およびプロトコールは、Kayら、Nature Medicine、7:33−40、2001年に概説されている。アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレトロウイルスに基づくものを含めた、特定のベクターの使用に関しては、下記により詳細に記述する。
【0096】
[00125]遺伝子療法ベクターとしての組換え体アデノウイルスの使用に関しては、W.C.Russell、Journal of General Virology、81:2573−2604、2000年、およびBransonら、Curr.Opin.Biotechnol、6:590−595、1995年に論じられている。本発明ではアデノウイルスベクターが有用であるが、それは、(1)標的細胞での効率の高い遺伝子発現を行うことができ、そして、(2)比較的多量の異種(非ウイルス性)DNAを収容することができるからである。組換え体アデノウイルスの典型的な形態は、「ヘルパー依存的な」アデノウイルスベクターである。そのようなベクターは、例えば、(1)すべてもしくはほとんどのウイルス性コード配列(ウイルスタンパク質をコードする配列)の欠失、(2)ウイルスDNAの複製に必要な配列であるウイルス性逆方向末端反復(ITR)、(3)28〜32kbまでの「外来性」または「異種」配列(例えば、GRPタンパク質、GRP変種、アンチセンス分子、またはRNAi分子をコードする配列)、および(4)感染性キャプシドへのウイルスゲノムのパッケージングに必要なウイルスDNAパッケージ配列を特徴とする。
【0097】
[00126]本発明で使用されるかもしれない他のウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベースのベクターである。AAVベースのベクターは、標的細胞への高い効率での形質導入を示し、部位特異的な方法で宿主ゲノム中に組み入れることができるので有利である。組換え体AAVベクターの使用に関しては、Tal,J.、J.Biomed.Sci、7:279−291、2000年、ならびにMonahanおよびSamulski、Gene Therapy、7:24−30、2000年に詳細に論じられている。典型的なAAVベクターは、GRP核酸に作用可能に連結した組織(例えば心臓)または細胞(例えば心筋細胞)特異的なプロモータを含有する少なくとも1つのカセットを挟んだ1対のAAV逆方向末端反復(ITR)を含む。ITR、プロモータ、およびGRP遺伝子を含むAAVベクターのDNA配列は、宿主ゲノム中に組み込むことができる。
【0098】
[00127]単純ヘルペスウイルス(HSV)ベースのベクターの使用については、CotterおよびRobertson、Curr.Opin.Mel.Ther.1:633−644、1999年に詳細に論じられている。1つまたは複数の前初期遺伝子(IE)が除去されているHSVベクターは、それらが、概ね非細胞毒性であり、宿主細胞中で潜伏に類似した状態で持続的に存在し、宿主細胞の効率的な形質導入をもたらすので有利である。組換え体HSVベクターは、約30kbの異種核酸を組み込むことができる。典型的なHSVベクターは、(1)HSV1型から構築されており、(2)そのIE遺伝子が除去されており、そして、(3)GRP核酸(例えば、アンチセンス、RNAi、GRP変種)に作用可能に連結した組織特異的プロモータを含有するものである。HSVアンプリコンベクターも、本発明の様々な方法で有用でありうる。HSVアンプリコンベクターは、通常、長さが約15kbであり、ウイルス性複製起点およびパッケージ配列を有する。
【0099】
[00128]C型レトロウイルスおよびレンチウイルスなどのレトロウイルスも本発明で有用である。例えば、レトロウイルスベクターはマウス白血病ウイルス(MLV)に基づいたものでよい。例えば、HuおよびPathak、Pharmacol.Rev.、52:493−511、2000年、およびFongら、Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.、17:1−60、2000年を参照のこと。MLVベースのベクターは、最大8kbの異種核酸をウイルス遺伝子の代わりに含有しうる。この異種核酸は、通常、組織特異的プロモータおよびGRP核酸を含む。
【0100】
[00129]使用されるかもしれない他のレトロウイルスベクターには、ヒト免疫不全(HIV)ベースのベクターを含めた複製欠損のレンチウイルスベースのベクターがある。例えば、VignaおよびNaldini、J.Gene Med.5:308−316、2000年、およびMiyoshiら、J.Virol.、72:8150−8157、1998年を参照のこと。レンチウイルスベクターは、それらが、活発に分裂している細胞と、分裂していない細胞との両方に感染できる点で有利である。それらは、ヒト上皮細胞の形質導入も高い効率で行う。本発明での使用に供するレンチウイルスベクターは、ヒトレンチウイルス由来でも、非ヒト(SUVを含める)レンチウイルス由来でもよい。典型的なレンチウイルスベクターは、ベクター増幅に必要な核酸配列と、GRP核酸に作用可能に連結した組織特異的プロモータとを含む。
【0101】
[00130]レンチウイルスベクターは、任意の適当なレンチウイルスキャプシドにパッケージングすることができる。ある粒子タンパク質を、異なるウイルス由来の別のもので置換することを「シュードタイピング」と呼ぶ。ベクターキャプシドは、マウス白血病ウイルス(MLA)または水疱性口内炎ウイルス(VSV)を含めた他のウイルス由来のウイルスエンベロープタンパク質を含有しうる。VSV Gタンパク質の使用は、高いベクター力価を与え、かつ、ベクターウイルス粒子のより高い安定性をもたらす。
【0102】
[00131]セムリキ森林ウイルス(SFV)およびシンドビスウイルス(SIN)から作製されたものなど、アルファウイルスベースのベクターも、本発明で使用されるかもしれない。アルファウイルスの使用については、Lundstrom、K.、Intervirology、43:247−257、2000年、およびPerriら、Journal of Virology、74:9802−9807、2000年に記載されている。アルファウイルスベクターは、通常、レプリコンとして知られている形態で構築される。レプリコンは、(1)RNA複製に必要なアルファウイルス遺伝子エレメント、および(2)GRP核酸をコードするものなどの異種核酸を含有しうる。
【0103】
[00132]組換え体複製欠損アルファウイルスベクターは、それらが、高いレベルでの遺伝子発現を行い、広範囲の宿主細胞を感染できるので有利である。アルファウイルスレプリコンは、認識される結合パートナーを発現する標的細胞への選択的結合を可能にするであろう機能性リガンドまたは結合ドメインをそれらのビリオン表面に提示することによって、特定の細胞型を標的にすることができる。アルファウイルスレプリコンは、宿主細胞内で潜伏し、それによって、長期の異種核酸発現を確立することができる。レプリコンは、宿主細胞内で一過性の異種核酸発現を行うこともできる。このウイルスの組織選択性を増大させて危険性を低減するために、そのようなウイルスは、そのビリオン表面に標的リガンドをもつことができるだけでなく、異種核酸(例えばGRP核酸)を組織特異的プロモータに作用可能に連結することができる。
【0104】
[00133]ウイルスベクタベースの方法に加えて、非ウイルス性の方法も、GRP核酸を宿主細胞に導入するのに用いることができる。非ウイルス性の遺伝子送達方法の概説は、NishikawaおよびHuang、Human Gene Ther.、12:861−870、2001年に提供されている。本発明による非ウイルス性の遺伝子送達方法は、GRP核酸を細胞に導入するのにプラスミドDNAを利用する。プラスミドベースの遺伝子送達方法は、当技術分野で一般的に知られており、Ilan,Y.、Curr.Opin.Mol.Ther.、1:116−120、1999年、Wolff,J.A.、Neuromuscular Disord.、7:314−318、1997年、およびArztl,Z.、Fortbild Qualitatssich、92:681−683、1998年などの参考文献に記載されている。
【0105】
[00134]GRP核酸を宿主細胞に導入する物理的技法を用いた方法を、本発明での使用に適合させることができる。例えば、微粒子銃遺伝子導入法は、Accell装置(遺伝子銃)を用いて、DNAコーティングされた金の微小粒子を標的組織、例えば癌組織に向けて加速する。例えば、Yangら、Mol.Med.Today、2:476−481、1996年、およびDavidsonら、Rev.Wound Repair Regen.、6:452−459、2000年を参照のこと。別の例として、GRP核酸を細胞内に送達するために細胞電気透過化法(cell electropermeabilization)(細胞電気穿孔法とも呼ばれる)を用いることもできる。例えば、Preat,V.、Ann.Pharm.Fr.、59:239−244、2001年を参照のこと。
【0106】
[00135]プラスミドDNAと共に凝集した多量体を形成するように、合成遺伝子送達分子を設計することができる。これらの凝集体は、エンドサイトーシスおよびエンドソーム膜破壊の引き金となるような方法で、標的細胞表面に結合するように設計することができる。リポポリアミンおよび陽イオン性脂質を含めた陽イオン性両親媒性試薬を用いて、標的細胞への受容体非依存性のGRP核酸送達を提供することができる。加えて、あらかじめ調製された陽イオン性リポソームまたは陽イオン性脂質をプラスミドDNAと混合して、細胞形質移入複合体を生成することもできる。陽イオン性脂質調合物を用いた方法は、Felgnerら、Ann.N.Y.Acad.Sci.、772:126−139、1995年、ならびにLasicおよびTempleton、Adv.Drug Delivery Rev.、20:221−266、1996年に概説されている。遺伝子送達には、DNAを両親媒性陽イオン性ペプチドと結合させることもできる(Fominayaら、J.Gene Med.、2:455−464、2000年)。
【0107】
[00136]GRP核酸の送達を促進するのに、DNAマイクロカプセル化を用いることもできる。マイクロカプセル化された遺伝子送達媒体は、適当な非溶媒が添加された際に、断片化された球形重合体粒子に強制的に相反転させられる低粘度重合体の水溶液から構築することができる。マイクロ粒子を用いた方法に関しては、Hsuら、J.Drug Target、7:313−323、1999年、およびCapanら、Pharm.Res.、16:509−513、1999年に論じられている。
【0108】
[00137]タンパク質導入法は、治療用タンパク質を標的細胞内に送達のための、遺伝子療法に代わる手段を提供するものであり、タンパク質形質導入を用いた方法も本発明の範囲内にある。タンパク質導入法は、外部環境から宿主細胞内へのタンパク質の取込みである。取込み過程は、細胞膜を透過できるタンパク質またはペプチドに依存する。この能力を通常は非導入性(non−transducing)のタンパク質に付与するため、非導入性タンパク質を、アンテナペディアペプチド、HIV tatタンパク質導入ドメイン、または単純ヘルペスウイルスVP22タンパク質などの導入媒介タンパク質(transduction−mediating protein)に融合することができる。Fordら、Gene Ther.、8:1−4、2001年を参照のこと。
【0109】
[00138]核酸(任意選択でベクター中に含有される)を対象の細胞内に入れるには、in vivoおよびex vivoの2つの主要なアプローチがある。in vivo送達では、核酸を対象に、直接、通常はその核酸を必要とする部位に注入する。ex vivo処置では、対象の細胞を取り出して、核酸をこれらの単離された細胞に導入し、改変された細胞を対象に直接投与するか、あるいは、例えば、多孔性膜に封入して、これを対象に移植する(例えば、米国特許第4892538号および第5283187号明細書を参照)。生存細胞に核酸を導入する様々な技法が利用可能である。これらの技法は、核酸を培養細胞にin vitroで導入するのか、あるいは、意図された宿主の細胞にin vivoで導入するのかによって異なる。哺乳類細胞にin vitroで核酸を導入する適当な技法には、リポソーム、電気穿孔、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、ウイルスベクター、および同様のものの使用が含まれる。ex vivoおよびin vivoでの送達に一般的に使用されるベクターは、上記に論じた通りウイルスベクターである。
【0110】
[00139]宿主細胞は、本明細書に記載の発現ベクターまたはクローニングベクターで、形質移入または形質転換して、プロモータの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする核酸の増幅に適した改変を有する従来の栄養物培地で培養することができる。培地などの培養条件(温度、pH、および同様のもの)は、当業者ならば、過度の実験をしないでも選択できる。一般的に、細胞培養の生産性を最大にするための原則、プロトコール、および実践的技術は、「Mammalian Cell Biotechnology:a Practical Approach」、M.Butler編集、(IRL Press社、1991年)、およびSambrookらに見出すことができる。
【0111】
[00140]真核細胞の形質移入および原核細胞の形質転換の方法、例えば、CaCl、CaPO、リポソーム媒介法、電気穿孔法は当業者に知られている。形質転換は、使用される宿主細胞に応じて、そのような細胞に適切な標準的な技法を用いて行う。Sambrookら、同上に記載の通り、原核生物には、通常、塩化カルシウムを用いたカルシウム処置または電気穿孔法が使用される。Shawら、Gene、23:315(1983年)、および1989年6月29日公開の国際公開第89/05859号パンフレットに記載の通り、アグロバクテリウムツメファシエンスを用いた感染は、ある特定の植物細胞の形質転換に使用される。そのような細胞壁のない哺乳類細胞には、Grahamおよびvan der Eb(Virology、52:456−457(1978年))のリン酸カルシウム沈殿法を利用することができる。哺乳類宿主細胞系への形質移入に関する一般的側面は、米国特許第4399216号明細書に記載されている。酵母の形質転換は、通常、Van Solingenら、J.Bact、130:946(1977年)、およびHsiaoら、Proc.Natl.Acad.Sci(USA)、76:3829(1979年)の方法に従って行われる。しかし、核マイクロインジェクション法、電気穿孔法、無傷細胞を用いた細菌プロトプラスト融合、または、ポリカチオン、例えば、ポリブレン、ポリオルニチンによるものなど、細胞にDNAを導入する他の方法も用いることができる。哺乳類細胞を形質転換する様々な技法に関しては、Keownら、Methods in Enzymology、185:527−537(1990年)、およびMansourら、Nature、336:348−352(1988年)を参照のこと。
【0112】
[00141]本明細書に記載のベクター中のDNAをクローニングまたは発現するのに適した宿主細胞には、原核生物、酵母、または、高等真核生物の細胞が含まれる。適当な原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性な生物などの真正細菌、例えば、大腸菌(E.coli)などの腸内細菌が含まれるが、これらに限定されない。大腸菌K12株MM294(ATCC 31446);大腸菌X1776(ATCC 31537);大腸菌株W3110(ATCC 27325);およびK5 772(ATCC 53635)などの様々な大腸菌株は公的に入手可能である。他の適当な原核細胞宿主細胞には、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、例えば、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、セラチア属、例えば、霊菌(Serratia xmarcescans)、および赤痢菌属、ならびに枯草菌(B.subtilis)およびリケニホルミス菌(B.licheniformis)(例えば1989年4月12日公開の独国特許第266710号に開示されたリケニホルミス菌41P)などの桿菌緑膿菌(P.aeruginosa)などのシュードモナス属、およびストレプトミセス属が含まれる。これらの例は限定的なものではなく、例示的でものある。
【0113】
[00142]原核生物に加えて、糸状真菌または酵母などの真核細胞微生物も、クローニング用または発現用の適当な宿主である。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)は、一般的に使用される低級真核細胞宿主微生物である。他には、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、例えば、K.lactis、K.fragilis、K.bulgaricus、K.wickeramii、K.waltii、K.drosophilarum、K.thermotolerans、およびK.marxianusなどのクルイフェロミケス属(Kluyveromyces)宿主;ヤルロウィア属(yarrowia);ピチアパストリス(Pichia pastoris);カンジダ属;トリコデルマリージア(Trichoderma reesia);アカパンカビ(Neurospora crassa);シュワニオミケス・オクシデンタリス(Schwanniamyces occidentalis)などのシュワニオミケス属(Schwanniomyces);ならびに例えば、アカパンカビ属、アオカビ属、トリポクラジウム属(Tolypocladium)、ならびに偽巣性コウジ菌(A.nidulans)およびクロカビ(A.niger)などのアスペルギルス属宿主などの糸状真菌が含まれる。本明細書ではメチロトローフの酵母が適しており、それらには、ハンゼヌラ属、カンジダ属、クロエケラ属(Kloeckera)、ピチア属、サッカロミケス属、トルロプシス属、およびロドトルラ属(Rhodotorula)からなる属選択されたメタノールで成長できる酵母が含まれるが、これらに限定されない。このクラスの酵母を例示する特定の種のリストは、C.Anthony、「The Biochemistry of Methylotrophs」、269(1982年)に見出すことができる。
【0114】
[00143]有用な哺乳類宿主細胞系の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1系(COS−7、ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓系(293または浮遊培養での成長用にサブクローニングされた293細胞、Grahamら、J.Gen.Virol、36:59、1977年);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:4216、1980年);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol.Reprod.、23:243−251、1980年);サル腎臓細胞(CV1、ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC MIL−1587);ヒト子宮頚部癌細胞(HELA、ATCC CGL2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL、75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳癌(MMT060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.、383:44−68、1982年);MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝癌細胞系(Hep G2)である。
【0115】
[00144]宿主細胞は、上記のGRP核酸発現ベクターまたはクローニングベクターで形質転換し、プロモータの誘導、形質転換体の選択、または、所望の配列をコードする核酸の増幅に適した改変を有する従来の栄養培地中で培養する。
【0116】
[00145]GRP核酸(例えば、アンチセンス、RNAi、リボザイム、変種、コード配列、および同様のもの)はクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入することができる。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、またはファージの形態でありうる。適切な核酸配列は、様々な操作法によってベクターに挿入することができる。一般に、DNAは、当技術分野で知られている技法を用いて適当な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクターの構成要素には、通常、1つまたは複数のシグナル配列、複製開始点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモータ、および転写終結配列が含まれるが、これらに限定されない。1つまたは複数のこれらの構成要素を含有する適当なベクターの構築は、当業者に知られている標準的な連結技法を用いて行われる。
【0117】
[00146]発現ベクターおよびクローニングベクターは、選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を通常含有する。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、またはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質をコードするもの、(b)栄養要求性を補完するタンパク質をコードするもの、または、(c)複合培地からは取得できない重要栄養物を供給するタンパク質をコードするもの、例えば、桿菌のD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子である。
【0118】
[00147]哺乳類細胞の適当な選択マーカーの例は、DHFRまたはチミジンキナーゼなど、BDBオリゴペプチドをコードする核酸を取り込むことのできる細胞の同定を可能にするものである。野生型DHFRが用いられる場合、適当な宿主細胞は、Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:4216、1980年に記載されている通りに調製および増殖された、DHFR活性欠損のCHO細胞系である。酵母での使用に適した選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7中に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcombら、Nature、282:39、1979年;Kingsmanら、Gene、7:141、1979年;Tschemperら、Gene、10:157、1980年)。trp1遺伝子は、トリプトファン中で増殖する能力を欠失した、酵母の突然変異株のための選択マーカーを提供する。
【0119】
[00148]例えばGRP78および/またはカスパーゼ−7に特異的に結合して、それらの相互作用を調節するポリペプチドを同定するのに、様々な周知の技法を用いることができる。例示的な技法には、移動度シフトDNA結合アッセイ、メチル化およびウラシル干渉アッセイ、DNアーゼおよびヒドロキシラジカルフットプリント分析、蛍光偏光、ならびにW架橋または化学架橋法が含まれる。概説には、例えば、Ausubel(第12章、「DNA−Protein Interactions」)を参照のこと。さらに、そのような薬剤のアゴニスト作用およびアンタゴニスト作用を測定する生物学的アッセイも提供する。
【0120】
[00149]例えば、本発明は、薬剤が細胞に与えうるGRPアゴニスト作用またはアンタゴニスト作用を測定するスクリーニングアッセイを提供する。このアッセイは、GRPアゴニスト活性またはアンタゴニスト活性を有すると考えられる薬剤に、GRPを発現する細胞を接触させることを含む。細胞を化学療法薬(例えば、エトポシド)と接触させ、それらの細胞または培養された細胞の生存率を測定する。対照と比較して、細胞生存率が増大している場合、その薬剤はアゴニスト活性を有し、細胞生存率が低下している場合、その薬剤はアゴニスト活性を有する。
【0121】
[00150]別の実施形態では、本発明は、細胞増殖障害の治療における、本発明の方法で同定された薬剤を含む医薬組成物と、その薬剤を使用するための指示とを提供する。例えば、GRP78と細胞質ゾル成分との相互作用を調節するものとして同定された薬剤、または、GRP78がER膜などの膜に貫入する能力を調節する薬剤を、細胞増殖障害を治療するための医薬組成物に含めることができる。この治療は、アポトーシスの促進またはアポトーシスの抑制による障害の抑制を包含しうる。例えば、本発明の方法は、分裂している細胞がさらに複製するのをアポトーシスの促進によって防止するか、あるいは、分裂していない細胞が破壊されるのをアポトーシスの抑制によって防止するための使用に適している。
【0122】
[00151]本発明は、細胞増殖障害を有する対象を治療する方法および組成物を提供する。対象は、任意の哺乳動物でありうるが、好ましくはヒトである。接触は、in vivoまたはex vivoでありうる。医薬組成物を投与する方法は、当技術分野で知られており、それらには、例えば、全身投与、局所投与、腹腔内投与、筋肉内投与、腫瘍または細胞増殖障害の部位での直接投与、および当技術分野で知られている他の投与経路が含まれる。
【0123】
[00152]本発明による医薬組成物は、局所投与しても、全身投与してもよい。「治療上有効な用量」は、疾患の症候およびその合併症を防止するか、治癒させるか、あるいは少なくとも部分的に停止させるのに必要な、本発明による化合物の量を意味する。この使用に有効な量は、当然ながら、疾患の重度、ならびに対象の体重および全身状態に依存するであろう。通常、in vitroで使用された用量は、その医薬組成物のin situ投与で有用な量に関する有用な手引きを提供しうる。さらに、特定の障害の治療に有効な用量を決定するのに動物モデルを用いることができる。考慮すべき様々な要件は、例えば、Langer、Science、249:1527、(1990年);Gilmanら(編集)(1990年)に記載されており、これらのそれぞれを参照により本明細書に援用する。
【0124】
[00153]本明細書で使用する場合、「治療上有効な量を投与すること」は、本発明の医薬組成物を、その組成物が、意図された治療機能を行えるように、対象に与えるか、または適用する方法を含むものとする。治療上有効な量は、対象における感染の程度、ならびに個体の年齢、性別、および体重などの因子によって異なるであろう。投与計画は、最適な治療反応が得られるように調整することができる。例えば、いくつかの分割量を毎日投与することもできるし、あるいは、治療状況の緊急性による指示と比例して用量を減少させることもできる。
【0125】
[00154]本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」は、溶剤、分散媒、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤、ならびに同様のものを含むものとする。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で周知である。従来の媒体または薬剤は、いかなるものでも、上記医薬組成物と非適合的でない限り、上記治療用組成物および治療方法におけるそれらの使用が企図されるものである。補完的な活性化合物も上記組成物に組み入れることができる。
【0126】
[00155]主要医薬組成物は、許容できる用量単位で、薬学的に許容される適当な担体と共に、有効な量で、好都合かつ効果的に投与されるように合成される。補完的な活性成分を含有する組成物の場合、前記成分の投与における通常の用量および方法を参照して用量を決定する。
【0127】
[00156]さらに、本発明の方法は、単独で行うことも、細胞増殖障害を治療するのに現在利用可能な標準的な医療と併せて行うこともできる。例えば、腫瘍を治療する場合には、腫瘍を構成する細胞に本発明のコンストラクトを導入する前に、手術または放射線照射によって腫瘍の大部分を除去することが望ましい場合がある。
【0128】
[00157]「タンパク質」、「ペプチド」、および「ポリペプチド」という用語は、本明細書で使用する場合、長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)にかかわらず、いかなるアミノ酸の鎖をも記述する。したがって、この用語は、アミノ酸残基の重合体を言及するのに、本明細書で互換性をもって使用される。この用語は、その中で、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然存在のアミノ酸の人工的な化学ミメティックであるアミノ酸ポリマーにも適用される。したがって、「ポリペプチド」という用語には、完全長の、天然存在のタンパク質だけでなく、完全長の、天然存在のタンパク質、または、天然存在のタンパク質の特定のドメインまたは部分に対応する、組換えまたは合成によって生成されたポリペプチドも含まれる。この用語は、原核細胞での発現を促進するために添加された、アミノ末端のメチオニンを有する成熟タンパク質も包含する。
【0129】
[00158]ポリペプチドおよびペプチドは、既知の技法を用いて化学的に合成するか、既知の分子生物学技法を用いて産生することができる。ポリペプチドおよびタンパク質は、生物のゲノム中で、場合によっては「遺伝子」と呼ばれる、個別の機能単位の中の核酸によってコードされる。しかし、核酸分子は、それらが天然に存在する環境から取り出し、単離して、分子生物学技術を用いて加工および操作することができる。「単離された」という用語は、それの自然な状態から「人間の手」によって改変されていること、すなわち、それが天然に存在する場合には、元の環境から変えられているか、もしくは取り出されていること、またはそれらの両方を意味する。この用語を本明細書で用いる場合、例えば、生きている動物の体内でそれの自然状態で自然に存在する天然存在の核酸分子またはポリペプチドは「単離されて」いないが、それの自然な状態における共存物質から分離された同じ核酸またはポリペプチドは「単離されて」いる。
【0130】
[00159]「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」は、長さが少なくとも10塩基の重合体形態のヌクレオチドを指す。「単離された核酸」によって、それが由来する生物の天然存在のゲノムにおいて、それが直ちに連続しているコード配列(5’末端のものおよび3’末端のもの)のいずれかと直ちに連続していないポリヌクレオチドを意味する。したがって、この用語には、例えば、ベクターに、自律的に複製するプラスミドまたはウイルスに、または、原核生物または真核生物のゲノムDNAに組み入れられた組換え体DNA、あるいは、他の配列とは独立して別々の分子(例えば、cDNA)として存在する組換え体DNAが含まれる。本発明の核酸分子は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはいずれかのヌクレオチドの修飾形態を含みうる。この用語には、一本鎖形態および二本鎖形態が含まれる。
【0131】
[00160]核酸分子またはポリヌクレオチドという用語は、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを全般的に指し、それは、無修飾のRNAまたはDNAである場合も、修飾されたRNAまたはDNAである場合もある。したがって、本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」は、例えば、とりわけ、一本鎖DNAおよび二本鎖DNA、一本鎖領域および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖RNAおよび二本鎖RNA、一本鎖領域および二本鎖領域の混合物であるRNA、ならびにDNAおよびRNAを含む混成分子を指し、これらの混成分子は、一本鎖であることもあるが、より典型的な場合、二本鎖であるか、もしくは一本鎖領域および二本鎖領域の混合物であることもある。
【0132】
[00161]加えて、本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドまたは核酸分子は、RNAもしくはDNA、またはRNAおよびDNAの両方を含む三本鎖領域を示す。そのような領域の鎖は、同じ分子からのものである場合も、異なる分子からのものである場合もある。この領域は、これら1つまたは複数の分子のすべてを含む場合もあるが、より典型的には、一部の分子のある一領域のみを含む。三本鎖領域の分子のうち1つは、オリゴヌクレオチドである場合が多い。
【0133】
[00162]本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドという用語には、1つまたは複数の修飾塩基を含有する上述のDNAまたはRNAが含まれる。したがって、安定性または他の理由で修飾されているバックボーンを有するDNAまたはRNAは、その用語が本明細書で意図される場合、「核酸分子」である。
【0134】
[00163]本明細書に開示するアンチセンス分子もしくはsiRNA分子を含む核酸分子、またはGRPポリペプチドをコードする核酸分子、および同様のものは、発現制御エレメントに作用可能に連結することができる。「作用可能に連結した」とは、そのように記述された構成要素が、それらに意図されている様式で機能するのを可能にする関係にある、近接した並列を意味する。本発明の核酸分子に作用可能に連結した発現制御エレメントは、その発現制御エレメントと適合した条件下でその核酸分子の転写が実現するように連結されている。本明細書で使用する場合、「発現制御エレメント」という用語は、それが作用可能に連結している核酸分子の発現を調節する制御領域を指す。発現制御エレメントが核酸分子の転写と、必要に応じてその翻訳とを制御および調節する場合に、その発現制御エレメントは、その核酸分子に作用可能に連結している。したがって、発現制御エレメントには、適切なプロモータ、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質をコードする核酸の前のスタートコドン(すなわちATG)、イントロンのためのスプライシングシグナル、mRNAの適切な翻訳を可能にするその遺伝子の正しいリーディングフレームの維持、および停止コドンが含まれる場合がある。「制御エレメント」という用語は、その存在が発現に影響を及ぼしうる最小の構成要素を含むことが意図されており、さらに、その存在が有利である追加の構成要素、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列も含みうる。発現制御エレメントは、プロモータを含みうる。
【0135】
[00164]「プロモータ」によって、転写を指示するのに十分な最小の核酸ドメインを意味する。細胞型特異的に、組織特異的に、あるいは外部シグナルまたは薬剤によって制御可能な、プロモータ依存的な遺伝子発現を付与するのに十分なプロモータエレメントも本発明に含まれる。そのようなエレメントは遺伝子の5’領域に位置しても、あるいは3’領域に位置してもよい。構成的なプロモータと誘導性のプロモータとの両方が本発明に含まれる(例えば、Bitterら、Methods in Enzymology、153:516−544、1987年を参照のこと)。例えば、細菌システムにクローニングする場合には、バクテリオファージ−γのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp−lac混成プロモータ)、および同様のものなどの誘導性プロモータを使用できる。哺乳類細胞系にクローニングする場合には、哺乳類細胞ゲノム由来(例えばメタロチオネインプロモータ)、または哺乳類ウイルス由来(例えばレトロウイルスロの長末端反復;アデノウイルス後期プロモータ;ワクシニアウイルス7.5Kプロモータ)のプロモータを使用できる。組換えDNA技法または合成技法によって生成されたプロモータも、本発明の核酸の転写を得るために使用できる。
【0136】
[00165]核酸分子は、所望の条件下において標的ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに選択的にハイブリッド形成するように設計することができる。「選択的に(特異的に)ハイブリッド形成する」という句は、特定のヌクレオチド配列が複雑な混合物中に存在する場合に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、そのヌクレオチド配列の分子のみに結合、二本鎖形成、またはハイブリッド形成することを意味する。
【0137】
[00166]「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という句は、通常は複雑な核酸混合物中で、核酸分子が標的相補配列にハイブリッド形成するが、他の配列には結合しない条件を指す。本発明のコンテクストでは、ストリンジェントな条件は、相互に少なくとも60%の相同性を有するヌクレオチド配列が、通常、相互にハイブリッド形成した状態で残る、洗浄およびハイブリダイゼーションを含む。通常、この条件は、相互に少なくとも65%〜70%または75%以上相同性を有する配列が、通常、相互にハイブリッド形成した状態で残るような条件である。
【0138】
[00167]一般的に、ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度およびpHにおける特定の配列の融点(T)より約5〜10℃低い条件が選択される。Tは、平衡状態において、標的に相補的な核酸分子の50%が標的配列にハイブリッド形成する温度(特定のイオン強度、pH、および核酸濃度において)である(標的配列が過剰で存在する場合、Tでは、平衡状態において、プローブの50%が結合している)。ストリンジェントな条件は、pH7.0〜8.3において、塩濃度が約1.0Mナトリウムイオン未満、通常、約0.01〜1.0Mナトリウムイオン濃度(または他の塩類)、そして、温度が、短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチド超)では少なくとも約60℃となる条件であろう。ストリンジェントな条件は、不安定化物質、例えばホルムアミドの添加によって実現することもできる。
【0139】
[00168]高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は次の通りでありうる。すなわち、例えば、50%ホルムアミド、5xSSC、および1% SDSにおける42℃でのインキュベーション、または、5xSSC、および1% SDSにおける65℃でのインキュベーション、そして、これに0.2xSSCおよび0.1% SDSにおける65℃での洗浄が伴う。代わりの条件には、例えば、少なくとも、68℃で20時間のハイブリダイゼーション、それに続く、2xSSC、0.1% SDS、55℃での洗浄30分間を2回、そして、60℃で15分間を3回と同程度にストリンジェントな条件が含まれる。もう1セットの代わりの条件は、6xSSCにおける約45℃でのハイブリダイゼーション、そして、それに続く、0.2xSSC、0.1% SDSにおける50〜65℃での洗浄1回以上である。例示的な中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、40%ホルムアミド、1M NaCl、1% SDSの緩衝液中、37℃でのハイブリダイゼーション、そして、1xSSCにおける45℃での洗浄が含まれる。
【0140】
[00169]「治療する」、「治療」、または「軽減」は、治療上の処置と、予防または防止手段の両方を意味し、これらは、標的である疾患状態または障害を防止または減速(軽減)することを目的とする。治療を必要とするものには、既に障害を有するものだけでなく、障害をもつ傾向のあるもの、または、障害が防止されるべきものも含まれる。治療用量のGRPアンタゴニストを与えられた後に、次の項目のうち1つまたは複数において、対象が観察可能および/または測定可能な低減または不在を示す場合に、対象または哺乳動物の腫瘍性障害/癌が良好に「治療」されたことになる。すなわち、癌細胞数の減少または癌細胞の不在;腫瘍サイズの減少;軟部組織および骨への癌の拡散を含めた周辺器官への癌細胞の浸潤の抑制(すなわち、ある程度の遅延、好ましくは停止);腫瘍転移の抑制(すなわち、ある程度の遅延、好ましくは停止);腫瘍成長のある程度の抑制;および/または、特定の癌に関連した1つまたは複数の症候のある程度の鎮静;罹患率および死亡率の低下、およびクオリティオブライフ問題の改善である。
【0141】
[00170]「分裂していない」細胞は、有糸核分裂を行っていない細胞を指す。分裂していない細胞は、その細胞が活発に分裂していない限り、細胞周期のいかなる時点(例えば、G0/G1、G1/S、G2/M)で停止していてもよい。体内における既存の分裂していない細胞には、ニューロン、筋、肝臓、皮膚、心臓、肺、および骨髄細胞、ならびにそれらの派生物が含まれる。
【0142】
[00171]「分裂している」は、活発な有糸核分裂または減数分裂を行っている細胞を意味する。そのような分裂している細胞には、幹細胞、皮膚細胞(例えば、繊維芽細胞および角質細胞)、生殖細胞、および当技術分野で知られている他の分裂している細胞が含まれる。特別に注目され、かつ分裂している細胞という用語に包含されるのが、腫瘍細胞などの細胞増殖障害を有する細胞である。「細胞増殖障害」という用語は、異常な数の細胞によって特徴付けられる状態を意味する。この状態は、肥厚性の細胞増殖(組織内の細胞集団の肥大をもたらす継続的な細胞増殖)および発育不全の細胞増殖(組織内の細胞の欠失または欠乏)の両方、または身体のある領域への細胞の過度の流入もしくは移動を含みうる。これらの細胞集団は、必ずしも形質転換細胞、腫瘍原性細胞、または悪性細胞である必要はなく、正常な細胞も含みうる。
【0143】
[00172]細胞増殖障害には、強皮症、関節炎、および肝硬変を含めた様々な線維性状態など、結合組織の肥大に関連した障害が含まれる。細胞増殖障害は、頭頚部癌などの腫瘍障害が含まれる。頭頚部癌には、例えば、口、食道、のど、喉頭、甲状腺、舌、口唇、唾液腺、鼻、副鼻腔、鼻咽頭の癌腫、上部鼻蓋および静脈洞炎腫瘍、鼻腔神経芽細胞腫、扁平上皮癌、悪性黒色腫、副鼻腔未分化癌腫(SNUC)、または血液腫瘍が含まれるであろう。頚部リンパ節、喉頭前リンパ節、肺食道傍リンパ節、および顎下リンパ節を含めた局部リンパ節の癌腫も含まれる(「Harrison’s Principles of Internal Medicine」(Isselbacherら編集、McGraw−Hill,Inc.社、第13版、1850〜1853ページ、1994年)。他のタイプ癌には、肺癌、大腸−直腸癌、乳癌、前立腺癌、尿路癌、子宮癌、リンパ腫、口腔癌、膵臓癌、白血病、黒色腫、胃癌、および卵巣癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
[00173]従来の分子生物学技法を用いた方法は、本明細書に記載されている。そのような技法は、当技術分野で一般的に知られており、「[Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版、第1〜3巻、Sambrookら編集、Cold Spring Harbor Laboratory Press社、Cold Spring Harbor,N.Y.、1989年;および「Current Protocols in Molecular Biology」、Ausubel ら編集、Greene Publishing and Wiley−Interscience社、New York、1992年(および定期的アップデート)などの方法論に関する論文に詳細に説明されている。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いた様々な技法は、例えば、Innisら、「PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications」、Academic Press社、San Diego、1990年に記載されている。PCRプライマー対は、それを目的としたコンピュータプログラムを用いるな、既知の技法によって既知の配列から得ることができる(例えば、プライマー、バージョン0.5、81991,Whitehead Institute for Biomedical Research,Cambridge,Mass)。核酸を化学合成する方法は、例えば、BeaucageおよびCarruthers、Tetra.Letts.22:1859−1862、1981年、およびMatteucciら、J.Am.Chem.Soc.103:3185、1981年に論じられている。核酸の化学合成は、例えば、市販のオリゴヌクレオチド自動合成機で行うことができる。免疫学的方法(例えば、抗原特異的抗体の調製、免疫沈降反応、およびイムノブロッティング)は、例えば、「Current Protocols in Immunology」、Coliganら編集、John Wiley&Sons社、New York、1991年;および「Methods of Immunological Analysis」、Masseyeff編集、John Wiley&Sons社、New York、1992年に記載されている。遺伝子導入および遺伝子療法の在来法も、本発明での使用に適合させることができる。例えば、「Gene Therapy:Principles and Applications」、T.Blackenstein編集、Springer Verlag社、1999年;「Gene Therapy Protocols (Methods in Molecular Medicine)」、P.D.Robbins編集、Humana Press社、1997年;および「Retro−vectors for Human Gene Therapy」、C.P.Hodgson編集、Springer Verlag社、1996年を参照のこと。
【0145】
[00174]少数の疾患および障害(例えば、虚血および腫瘍障害)について言及した。しかし、様々な疾患および変性障害が異常または脱調節されたアポトーシスに関与し、不適切もしくは時期尚早な細胞死または不適切な細胞増殖をもたらすことを当業者は認めるであろう。例えば、細胞死の抑制は、自己反応性のB細胞およびT細胞の存続を可能にすることによって、自己免疫疾患に導き、免疫系の疾患に寄与しうる。さらに、特定のウイルスによる感染は、抗アポトーシスウイルス遺伝子産物による宿主細胞死の抑制に依存することがあり、アポトーシスの抑制はウイルス感染の経路(溶菌対潜伏)を改変しうる。
【実施例】
【0146】
[00175]本発明は、GRP(例えばGRP78)が、薬物誘導性アポトーシスに対する防御を介してトポイソメラーゼ阻害剤に対する耐性を付与するという発見に一部基づいている。親のCHO細胞が比較された図1、パネルAに示すように、全細胞抽出物の免疫ブロットの定量化は、C.1細胞におけるGRP78レベルが、親であるCHO細胞より5倍高いことを示し、一方、同じくER局在性のシャペロンタンパク質であるGRP94、および抗KDEL抗体で認識可能な45−kDa未確認のタンパク質(X)は、両細胞系で比較的一定であった。抗GRP78抗体を用いたin situ免疫蛍光法イメージングは、CHO細胞およびC.1細胞の両方で、GRP78の大部分が核周囲領域に濃縮されていることをさらに明らかにしたが、これはそのER局在性と一致する(図1、パネルB)。GRP78の免疫蛍光シグナルの強度は、CHO細胞と比較して、C.1細胞の大部分でより強かった。
【0147】
[00176]免疫蛍光法を用いて、GRP78およびカスパーゼ−7分布をin situで検査したところ、カスパーゼ−7は、ER局在性を示す核周囲パターンを示した(図1、パネルC)。共焦点顕微鏡法によって、カスパーゼ−7がGRP78のサブ分画に極めて接近していることがさらに明らかになった。GRP78およびカスパーゼ−7の共局在性は、主として、核周囲/ER領域で検出された。
【0148】
[00177]GRP78との内在性カスパーゼ−7の物理的相互作用を、CHO細胞およびC.1細胞から調製された全細胞抽出を用いてさらに確認した。共焦点顕微鏡から得られた共局在性の結果に一致して、プロカスパーゼ−7は、C.1細胞において、高レベルのGRP78と複合体を形成する(図6、パネルA、レーン2)。CHO細胞では、GRP78は、抗KDEL抗体を用いた抗カスパーゼ−7免疫沈降中でかすかなバンドとして検出され(図6、パネルA、レーン1)、抗ハムスターGRP78抗体をウェスタンブロットに用いた際には、GRP78のシグナルが強く促進された(図6、パネルB、レーン1)。免疫沈降抗体として抗カスパーゼ−3を用いた場合には、GRP78は、ウェスタンブロットでプロカスパーゼ−3に付随して検出されなかった(図6、パネルA、レーン3および4)。したがって、内在性GRP78構成的にプロカスパーゼ−7と結合する。本明細書に提示するデータはGRP78およびカスパーゼ−7が相互作用することを示すものであるが、本発明は、これら2つのタンパク質の直接的相互作用に限定されない。本発明は、カスパーゼ−7を含むポリペプチド複合体、または、個別のカスパーゼ−7である細胞質ゾル成分を包含するものと理解される。カスパーゼとのGRP78の相互作用を防止することによって、薬剤は、アポトーシスの促進によりアポトーシスを調節する。別法では、カスパーゼ−7とのGRP78の相互作用を促進することによって、薬剤は、アポトーシスの抑制によりアポトーシスを調節するであろう。
【0149】
[00178]図7、パネルAに示すように、低用量のトリプシン消化では、耐性のある35kDaカルボキシルバンドが検出された。より高用量のトリプシンでは、35−kDaバンドの強度がさらに強くなっており、約50−kDaの弱いバンドも目に見えた。CHO細胞の消化パターンも同じであったが、GRP78の過剰発現と相関して、耐性のバンドはC.1細胞でより明らかであった。カルレティキュリン対照によって確認されたように、トリプシン処理は小胞体内腔に局在するERタンパク質を消化しなかった(図7、パネルB)。
【0150】
[00179]加えて、ミクロソーム膜分画の炭酸ナトリウム抽出は、GRP78が膜および内腔の両方に局在していることを示す(図7、パネルC)。これらの結果は、GRP78がもっぱらER内腔タンパク質であるわけではなく、その亜集団は膜貫通タンパク質として存在することを示す。これは、ドメインIIIおよびIVが推定上の膜貫通ドメインとして機能し、カルボキシル断片がER内腔に位置して、それによって、それらにトリプシン消化に対する耐性を与えているということと一致している(図7、パネルA)。このトポロジーは、GRP78の一部が細胞質ゾルに露出しており、それと細胞質ゾル成分との相互作用が可能となっていることをさらに示す。したがって、別の実施形態では、本発明は、グルコース調節タンパク質78(GRP78)を、このタンパク質が小胞体の膜に貫入する能力を抑制または防止する薬剤と接触させることによってアポトーシスを調節する方法を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、グルコース調節タンパク質78のタンパク質の疎水性膜貫通ドメインIII(配列番号1または2のアミノ酸210〜260)および/またはドメインIV(配列番号1または2のアミノ酸400〜450)を含むポリペプチドを準備することによって、膜とのグルコース調節タンパク質78(GRP78)の相互作用を調節する薬剤を同定する方法を提供する。このポリペプチドを薬剤と接触させることができ、そして、この相互作用に対する薬剤の作用を測定することができる。このポリペプチドが膜に貫入する能力を調節する薬剤は、アポトーシス調節の候補薬である。例えば、GRP78が膜に貫入する能力を抑制する薬剤は、GRP78が、アポトーシスを促進するのに必要な細胞質ゾル成分と相互作用するのを防止するであろうから、それはアポトーシスを促進することもできるであろう。
【0151】
[00180]さらに、GRP78のATP結合ドメインが細胞質ゾル成分との相互作用に必要であることを決定した。ATP結合領域は、GRP78のアミノ部分に存在する(図6、パネルC)。本発明はさらに、ATP結合ドメインを含有するGRP78断片の、本発明の方法における使用を包含する。例えば、配列番号1または2のアミノ酸125〜275、配列番号1または2のアミノ酸150〜250、あるいは配列番号1または2のアミノ酸175〜201を含むポリペプチドを、GRP78および細胞質ゾル成分の相互作用を調節する薬剤を同定する方法で用いることができる。
【0152】
[00181]カスパーゼに結合するのにGRP78のATP結合領域が必要であることを決定するために、欠失形態のGRP78を安定に発現するCHO細胞系AD−1(図6、パネルC)を用いた。欠失は、ATP結合ドメイン中の残基175〜201にまたがっており、ATPアーゼ活性の欠損をもたらす。CHO細胞およびAD1細胞から調製された全細胞抽出物のウェスタンブロット分析は、内在性の野生型GRP78に加えて、欠失形態のGRP78の発現をAD1細胞で確認した(図6B、レーン3および4)。
【0153】
[00182]抗カスパーゼ7抗体を用いた免疫沈降は、プロカスパーゼ−7が野生型GRP78とは複合体を形成できるが、残基175〜201の欠失によって、プロカスパーゼ−7と結合する能力が破壊されることを示した(図6、パネルB、レーン1および2)。エトポシド処理をすると、AD1細胞は、野生型タンパク質を過剰発現するC.1細胞と比較して、より強いカスパーゼ−7の活性化をin vivoで示し、また、より大規模のDNA断片化を示した(図8、パネルAおよびB)。親であるCHO細胞と比較して、AD1細胞で行ったアネキシン標識およびクローン原性生存試験は、エトポシド処理に対する防御が存在しないことをさらに示した。
【0154】
[00183]一過性形質移入細胞死アッセイは、GRP78によるアポトーシスの抑制がGRP78とカスパーゼとの相互作用に依存していることをさらに示した。細胞生存率は、薬物で処理した後の細胞におけるβ−ガラクトシダーゼ活性の保持によって定量的に測定した。図8に示すように、野生型GRP78の発現ベクターで形質移入された細胞はエトポシド処理に対して防御を与えた。GRP78のATP結合機能がGRP78の防御作用に必要であることを確認するために、野生型GRP78または変異体GRP78(G227D)のいずれかを発現するベクターで細胞を形質移入した。変異体GRP78(G227D)は、位置227にアミノ酸置換を有し、ATP結合能が破壊されている。図8、パネルCに示すように、変異体型GRP78では防御作用が失われていた。
【0155】
[00184]化学療法薬に対するGRP78の作用を調べるために実験を行った。pShuttle−CMVと呼ばれる詳細に特徴付けされているアデノウイルスベクターのコンテクストにおいて、強力な細胞性プロモータ(CMV)を、GRP78の発現を駆動するのに用いた。GRP78の過剰発現機能および抑制機能を果たす、センス方向およびアンチセンス方向両方のGRP78を構築した。CMVプロモータでアンチセンス(AS)Grp78を駆動する2つのバージョンのアデノウイルスを構築した(図11A〜Cを参照)。完全長ASコンストラクトの構築スキームを図11に示す。grp78エキソンIの320bp断片を含む部分長ASを発現するアデノウイルスコンストラクトを、CMVプロモータに対して逆方向にクローニングした(図11Cを参照)。このより短い断片はAUG開始コドンを標的としており、完全長アンチセンス分子より効果的でありうる。
【0156】
[00185]ヒト293T組織培養試験システムで、Hisタグ付きGRP78の過剰発現を行った。この細胞系は、アデノウイルスで極めて効率的に感染させることができるので用いた。この目的では、Hisタグ付きGRP78を発現するアデノウイルスを様々な用量で293T細胞に感染させた。72時間後に細胞溶解液を調製し、Hisタグ付きGRP78のレベルを検出するために、アデノウイルスで発現されたタンパク質に特異的な、Hisタグに対する抗体を用いて免疫ブロットを行った。結果は、Hisタグ付きGRP78が高レベルで用量依存的に発現されたことを示した(図12、レーン4、5、および6)。これは、完全長GRP78を発現するアデノウイルスコンストラクトが成功していることを証明する。次のステップは、これらの実験をMDA細胞およびMCF−7細胞で反復することである。これらの細胞は培養するがさらに難しく、感染させるのがより困難であるため、このステップはさらに困難なものである。
【0157】
[00186]原則の証明として、2つのアンチセンス(AS)コンストラクトを試験して、ヒト293T組織培養試験システムにおいて、それらがHisタグ付きGRP78を抑制する能力を測定した。この目的では、完全長ASまたは320bpのASを発現する様々な用量のアデノウイルスを、Hisタグ付きGRP78を発現するアデノウイルスと共に、293T細胞に同時感染させた。72時間後に細胞溶解液を調製し、Hisタグ付きGRP78のレベルを検出するために、アデノウイルスで発現されたタンパク質に特異的な、Hisタグに対する抗体を用いて免疫ブロットを行った。結果は、完全長AS(図12、レーン7、8、および9)、および320bpのAS(図12、レーン1、2、および3)は両方とも、用量依存的にHisタグ付きGRP78の発現を抑制できることを示した。これは、アンチセンスGRP78を発現するアデノウイルスコンストラクトが成功していることを証明する。最も急激な減少は320bpのASで得られた(図12、レーン1)。
【0158】
[00187]次に、320bpのASを発現するアデノウイルスを、化学療法薬であるエトポシドによる処理の存在下または非存在下で、ヒト乳癌MDA−MB−435細胞に感染させた。同じ細胞をGFPネガティブコントロールアデノウイルスで感染させた。結果は、模擬感染細胞(mock−infected cell)では、エトポシド処理それ自体によって内在性GRP78の量が約40%減少したことを示した(図13、レーン1および2)。重要なことに、320bpのASコンストラクトによって、GRP78レベルがさらに、有意に減少し、とりわけ、エトポシドで処理された細胞では、最終レベルが10%未満であった(図13、レーン3および4)。したがって、GRP78を標的とした完全長バージョンおよび320bpバージョン両方のコンストラクトが、293T試験システムでGRP78の発現を阻止した。これをヒト肺癌細胞で反復して、これらのASアデノウイルスが内在性GRP78発現を抑制できることを示した。
【0159】
[00188]GRP78の過剰発現によって付与される抗アポトーシス作用を測定する実験も行った。この課題は完遂した。GRP78の過剰発現は、4つの薬物(シスプラチン、ドキソルビシン、エトポシド、およびカンプトテシン)すべてに対して耐性を与えた。結果を表2にまとめる。
【0160】
【表2】

【0161】
[00189]上記のアンチセンスアプローチを、siRNAアプローチに替えた。Grp78 siRNA配列は、次の通りである。
5’ AAGGTTACCCATGCAGTTGTT 3’ (配列番号4)
3’ TTCCAATGGGTACGTCAACAA 5’ (配列番号17)
ヒトゲノム配列に対してBLAST検索を行ったところ、この配列は独特であり、原則として、他のいかなるヒト遺伝子にも影響を与えないはずである。これを立証するために、ヒト293T細胞における、GRP78、ならびに近縁のストレスタンパク質であるGRP94およびHSP70の発現に対するこのsiRNAの影響を試験する実験を行った。β−アクチンのレベルをローディング対照として用いた。図14に示すように、GRP78レベルのみが抑制され、このsiRNAがGRP78に特異的であることを確認した。
【0162】
[00190]80nM以上のGrp78(II)siRNAで、ヒト乳癌MDA−MB−435細胞におけるGRP78レベルを有意に抑制できることを、実験によってさらに示した(図15)。これによって、関係ない緑色蛍光タンパク質を標的とした対照siRNAより多くの細胞が、Grp78(II)siRNAで処理された細胞で死亡することとなる(図16)。
【0163】
[00191]GRP78作用の標的候補の1つはBlKであるが、これは、DNA損傷に反応して誘導されるBH3のみにおけるタンパク質であり、ERと、ミトコンドリアとに局在する。際だったことに、ER標的としたBlKは、チトクロームcの遊離を誘導することができ、ER部位に作用して、平行する細胞死経路を開始ができることを示唆する(Germainら、2002年)。ミトコンドリアからのチトクロームcの遊離を制御する向アポトーシス分子の作用を、GRP78が、分子シャペロンとして、直接的または間接的に阻止ができるかどうかを試験する実験を行った。エトポシド処理および内在性BlKとのGRP78の免疫共沈降の後にBlKレベルが増大していることを、293Tをモデル系として用いて観測した(図17A)。これらの結果は、GRP78の過剰発現によって、ERを標的としたBlKによって媒介された細胞死から細胞を保護ができることを示唆する(図17B)。これらの新知見は、エトポシドで処理された細胞において、BlKおよびGPP78の物理的相互作用および機能的相互作用の両方があることを意味する。したがって、これは、エトポシドで誘導された細胞死に対するGRP78の防御作用に部分的に寄与することができる。
【0164】
[00192]細胞培養条件−CHO細胞は、10%透析ウシ胎児血清、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン/ネオマイシン抗生物質で補充した、ヌクレオシドを含む最小イーグル培地で維持した。C.1細胞およびAD1細胞は、0.1μg/mlメトトレキサート存在下における上記条件で、ヌクレオシドを添加せずに維持した。ヒトGRP78を過剰発現するか、または空の発現ベクター(pcDNA3.1)で形質移入された、安定な一時的T24/83ヒト膀胱癌細胞系の確立については既に記載されている。T24/83細胞系は、1%ペニシリン/ストレプトマイシン/ネオマイシン抗生物質および200μg/ml G418を含有する、10%ウシ胎児血清で補充したM199培地で維持した。ヒト急性T細胞白血病Jurkat細胞は、1%ペニシリン/ストレプトマイシン/ネオマイシン抗生物質を含有する、10%ウシ胎児血清で補充したRPMI 1640培地で維持した。すべての細胞は37℃、5% CO/95%大気の加湿雰囲気中で維持した。
【0165】
[00193]試薬−エトポシド(Calbiochem社)は、MeSOで濃度30mMに溶解して、−20℃で保存した。メトトレキサート(Sigma社)は、最小量の1M NaOHで溶解して、水で1μg/mlに希釈し、−20℃で保存した。2 mg/mlのドキソルビシン(Bedford Laboratories社、Bedford,OH)、および20mg/mlのカンプトテシン(Amersham Biosciences社)は、等張液として入手した。
【0166】
[00194]細胞周期分析−播種の後、指数関数的に増殖している細胞を、様々な日にトリプシン処理して、70%エタノール中で固定した。固定した細胞を、0.1%トリトンX−100、0.2mg/ml(v/v)DNアーゼフリーRNアーゼ、および20μg/mlヨウ化プロピジウム(PI)を含有するPBSで、30分間、室温で処理した。細胞周期分布は、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析(FACstar;BD Biosciences社)によって分析した。細胞周期分布の測定は、3〜4回反復した。
【0167】
[00195]クローン原性生存試験−直径10cmの培養皿に4000細胞を播種した。播種の2日後に、細胞を、エトポシドで6h、ドキソルビシンで1h、またはカンプトテシンで24h、示されている様々な濃度で処理した。薬物処理の後、細胞を10〜14日間、新しい培地中で培養した。コロニーを氷冷PBSで洗浄し、メタノールで固定し、10%ギムザ染色溶液で染色した。生存率は、薬物で処理された細胞の中で生き残っているコロニーの数を、処理されていない対照群のコロニー数で割ることによって決定した。
【0168】
[00196]アネキシンV染色およびFACS分析−CHO細胞、C.1細胞、およびT24/83細胞をトリプシン処理し、pH7.4の氷冷PBSで洗浄し、1μ結合緩衝液に再懸濁した(pH7.4の10mMヘペス、140mM NaCl、2.5mM CaCl、細胞密度1×10細胞/ml)。100μlの細胞懸濁液を5mlプラスチックチューブに移し、5μlのアネキシンV−フルオレセインイソチオシアネート(PharMingen社)、および0.5mg/mlのPI 4μlを添加した。細胞を穏やかにボルテックスし、暗中、室温で、20分間、インキュベートした。各チューブに400μlの結合緩衝液を添加し、1h以内に、フローサイトメトリーによってアネキシンV染色を分析した。PIおよびアネキシンV染色の両方に関して陰性の細胞が生存細胞であり、アネキシンV染色陽性の細胞は早期アポトーシス細胞であり、PI陽性かつアネキシンV染色陽性の細胞は、主としてアポトーシス後期ステージの細胞である。
【0169】
[00197]カスパーゼ−7活性化アッセイ、−細胞は無処理か、または100μMのエトポシドで6h処理され、24h後に採取された。細胞は、2μg/mlのロイペプチン、ペプスタチン、およびアプロチニンプロテアーゼ阻害剤の存在下で、5倍容積の低張緩衝液(pH7.4の5mMトリス−塩酸、5mM KCl、1.5mM MgCl、pH8.0の0.1mM EGTA、および1mMジチオトレイトール)に懸濁した。氷上で20分間、インキュベーションした後、最終濃度250mMとなるようにショ糖を添加し、1mlのドウンス型ウィートンホモジナイザー中で8回上下することによって細胞を破砕した。ホモジネートを750μ gで、10分間、2回遠心した。上清を、16000×g、4℃で、15分間遠心して透明にし、細胞質画分と名付けた。in vitroでのカスパーゼ−7活性化アッセイには、150μgの無細胞抽出物を様々な量のチトクロームcおよびdATPと、37℃で、1hインキュベートした。等量の総タンパク質を分離して、カスパーゼ−7に対するウェスタンブロットを行った。
【0170】
[00198]ウェスタンブロッティング−細胞溶解液を、放射免疫沈殿アッセイ緩衝液中に調製し、GRP78、GRP94、トポイソメラーゼII、カスパーゼ−7、およびα−アクチンに対する抗体で免疫ブロットを上記の通りに行った。転写されたタンパク質を含有するニトロセルロース膜を、5%無脂粉乳、および0.1%トゥイーン20を含有するトリス緩衝生理食塩水で、1h、室温でブロッキングし、それぞれの一次抗体でプロービングした。GRP78には、抗KDELマウスモノクローナル抗体(SPA−827)、ラットGRP78のカルボキシル末端10アミノ酸に対する抗GRP78ウサギポリクローナル抗体(SPA−826)(StressGen社、Victoria,Canada)、または抗ハムスターGRP78ウサギポリクローナル抗体を、それぞれ、1:3000、1:2000、および1:5000の希釈率で用いた。他の一次抗体の希釈率は次の通りである。すなわち、抗カルネキシンウサギポリクローナル抗体(SPA−865)(StressGen社)は1:2000、抗カルレティキュリンウサギポリクローナル抗体(SPA−600)(StressGen社)は1:3000、抗β−アクチンマウスモノクローナル抗体(Sigma社)は1:5000、抗カスパーゼ−7マウスモノクローナル抗体(10−1−62)(BD Biosciences社)は1:1000、抗カスパーゼ−3ウサギポリクローナル抗体(Cell Signaling社、Beverly,MA)は1:1000、そして、抗トポイソメラーゼIIマウスモノクローナル抗体(SWT3D1)(Oncogene社、San Diego,CA)は1:1000である。それぞれに対応するホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体を使用し、ECL法(Amersham Biosciences社)によってタンパク質バンドを可視化した。
【0171】
[00199]一過性形質移入死亡アッセイ−簡潔には、CMV−neo−Bcl2ベクター、または野生型ハムスターGRP78もしくはGRP78 ATP結合部位変異体G227Dの発現ベクターでJurkat細胞に一時的に形質移入した。薬物で処理した後、細胞溶解液を調製して、生存細胞に残留しているβ−ガラクトシダーゼ活性をアッセイした。細胞毒性パーセントは、以前に記載されている通りに計算した。
【0172】
[00200]DNA断片化アッセイ−細胞は無処理か、または100μMのエトポシドで12h処理し、48h後に採取した。DNA断片化アッセイは、製造会社の説明書に従ってアポトーシスDNAラダーキット(Roche Molecular Biochemicals社)を使用して行った。
【0173】
[00201]蛍光抗体法および像解析−CHO細胞およびC.1細胞をチャンバースライド(Nalge Nunc International社、Naperville,IL)中で60%の集密度まで増殖させ、PBSで2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒドを含むPBSで10分間、固定した。その後、細胞をPBSで洗浄し、0.1%トリトンX−100および5%ウシ血清アルブミンを含有するPBS中で、30分間、透過処理した。GRP78の検出には、1:1000希釈の抗GRP78(C−20)ヤギポリクロナール抗体(Santa Cruz Biotechnology Inc.社、Santa Cruz,CA)と、1:500希釈のテキサスレッド結合抗ヤギ二次抗体(Vector Labs社、Burlingame,CA)とで細胞を染色した。カスパーゼ−7の検出には、1:500希釈の抗カスパーゼ−7マウスモノクローナル抗体(BD Biosciences社)と、1:500希釈のフルオレセインイソチオシアネート結合抗マウス二次抗体(Vector Labs社)で細胞を染色した。DAPI封入剤を含むVectashield(登録商標)(Vector Labs社)中に細胞を封入し、Zeiss社製LSM510二光子共焦点顕微鏡で可視化した。T24/83細胞は、CHO細胞について記述したのと同じ抗GRP78ポリクロナール抗体とインキュベートした。全細胞イメージは、後で、ノーザン露出イメージ分析/記録保管ソフトウェア(Mississauga社、Ontario,Canada)を用いて捕捉し、分析した。
【0174】
[00202]免疫共沈降反応アッセイ−400μlの抽出緩衝液(プロテアーゼ阻害錠剤(Roche Molecular Biochemicals社)を含有する、pH7.5の50mMトリス−塩酸、150mM NaCl、0.5%ノニデット P−40、および0.5%デオキシコール酸)中で2×10細胞を溶解させ、凍結融解処置を3回行った。各試料から得た500μgの総タンパク質を、50μlのプロテインAセファロースビーズ(Sigma社)で、1h、4℃で前処置し、その後、抗カスパーゼ−7マウスモノクローナル抗体または抗カスパーゼ−3抗体のいずれか5μgで2hインキュベートした。インキュベーション時間の後、50μlのプロテインAセファロースビーズを添加し、混合物を終夜、4℃で回転させた。その後、抽出緩衝液でビーズを5回洗浄した。免疫沈降は、30μlの1×SDS−PAGE試料添加緩衝液(pH6.8の50mMトリス−塩酸、100mMジチオトレイトール、2% SDS、0.1%ブロムフェノールブルー、10%グリセロール)を添加して、その後、100℃で10分間、加熱することによって、洗浄されたビーズから遊離させた。遠心法の後に得られた上清をSDS−PAGEによって分離し、ウェスタンブロット分析を行って、免疫共沈降したタンパク質の検出を行った。
【0175】
[00203]ミクロソームの単離およびプロテアーゼ消化−細胞をトリプシン処理し、冷PBSで洗浄した後、10倍容積の冷低張緩衝液(10mMトリス−塩酸、pH7.4)でのインキュベーションと、それに続くドウンスホモジナイゼーションとによって細胞を溶解させた。溶解物を直ちに、0.25Mショ糖、1mM MgClに調整し、1000×g、4℃で10分間、遠心して核および細胞破片を除去した。上清を100,000×gで90分間、さらに遠心した。ミクロソームに相当するペレットを、冷水で短時間すすぎ、pH7.4の50mMトリス−塩酸に再懸濁し、タンパク質分解検査および炭酸ナトリウム抽出検査に使用した。
【0176】
[00204]炭酸ナトリウム抽出−内腔タンパク質からのER膜の単離には、ミクロソームペレットはpH11.5の100mM炭酸ナトリウム50倍容積に再懸濁し、氷上で1hインキュベートした。その後、懸濁液を240000×g、4℃で1h遠心した。ペレット(ER膜に相当する)を冷水ですすぎ、1×SDS−PAGE試料添加緩衝液に再懸濁して、ウェスタンブロットによって分析した。小胞体内腔に存在するタンパク質は、トリクロロ酢酸を最終濃度10%になるように添加することによって、上清から回収した。ペレットをアセトンで3回洗浄し、空気乾燥させ、1mlのSDS−PAGE試料添加緩衝液中に可溶化させ、ウェスタンブロットによって分析した。
【0177】
[00205]ミクロゾームタンパク質の限定トリプシン消化−トリプシン消化反応には、ミクロソームをトリプシン(0.01%または0.05%)と、30分間、室温でインキュベートした。タンパク分解性切断反応は、1×SDS−PAGE試料添加緩衝液を添加して、100℃で5分間、煮沸させることによって終了させた。各反応から得た10〜20μgの総タンパク質をウェスタンブロットによって分析した。
【0178】
[00206]GRP78の特異的な過剰発現が薬物耐性の発生を直接導くことができるかどうか検査するために、CHO細胞およびC.1細胞を様々な薬物に曝露し、クローン原性生存試験を用いて細胞生存率を測定した。様々な用量のエトポシド(VP16とも呼ばれる)、アドリアマイシン(ドキソルビシンとも呼ばれる)およびカンプトテシンを試験した。エトポシドおよびアドリアマイシンは両方ともトポイソメラーゼIIの阻害剤であり、カンプトテシンはトポイソメラーゼIの阻害剤である。試験された各薬物の結果を図2に示す。GRP78を過剰発現するC.1細胞は、これら3つの薬物すべてでCHO細胞より高い耐性を与えた。これらのデータは、GRP78の特異的な過剰発現が、UPRの非存在下において、トポイソメラーゼIおよびIIの阻害剤に対する耐性をCHO細胞に付与するのに十分であることを確立するものである。
【0179】
[00207]GRP78が、エトポシドによって誘導されたアポトーシスから細胞を防御するかどうかを決定するため、CHO細胞およびC.1細胞を、無処理とするか、あるいはエトポシドで処理して、アネキシンVおよびPlで標識した。アポトーシス細胞はアネキシンV標識によって同定した。CHO細胞では、エトポシド処理によって、アポトーシス細胞の割合が10倍(9%から90%)に増大したが、C.1細胞では、4.7倍の増大であった(15%から70%)(図3A)。エトポシド処理されたCHO細胞では、より大規模なDNA断片化も検出されたが、C.1細胞では検出されなかった(図、パネルB)。
【0180】
[00208]同一条件下で選択および培養された、一対の、安定に形質移入された一時的ヒト膀胱癌T24/83細胞系を用いて、腫瘍細胞に対するGRP過剰発現の影響を測定した。T24/83−GRP78と呼ばれる細胞系は、ヒトGRP78を過剰発現し、T24/83−pcDNAと呼ばれるもう一方の細胞系は、空の発現ベクターであるpcDNA(28)で安定に形質移入されている。免疫ブロット分析を行い、その後、α−アクチンに対して正規化を行ったところ、T24/83−GRP78細胞では、T24/83−pcDNA細胞と比較して、GRP78発現レベルに3倍の増大があった(図4A、挿入図)。T24/83−GRP78細胞におけるGRP78の過剰発現は、ERシャペロンタンパク質である、GRP94、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ、およびカルレティキュリン、または熱ショックタンパク質であるHSP47の発現レベルには影響を与えなかった(図4、パネルA)。全細胞イメージは、T24/83−GRP78細胞のGRP78免疫蛍光がはるかに強いことを明らかにし、免疫ブロットの結果を確認する(図4、パネルB)。
【0181】
[00209]CHO細胞系と一致して、GRP78を過剰発現するT24/83細胞は、エトポシドに対してより強い耐性をクローン原性生存試験で示した(図4A、パネルA)。アドリアマイシンおよびカンプトテシンに対しても、同様の防御が観測された。T24/83−cDNA細胞では、エトポシド処理によって、アネキシンV標識された細胞の割合が2.7倍(7%から19%に)増大し、これと比較して、T24/83−GRP78細胞では1.4倍(8%から11%に)の増大であった(図4C)。
【0182】
[00210]GRP78を過剰発現する細胞系が利用可能となったので、UPRの非存在下における、トポイソメラーゼIIレベルに対するGRP78過剰発現の影響を測定した。CHO細胞およびC.1細胞を、無処理とするか、あるいはエトポシドで処理し、トポイソメラーゼIIのレベルを免疫ブロッティングによって測定した(図5、パネルA)。データは、GRP78の特異的な過剰発現が、トポイソメラーゼIIタンパク質のレベルには影響しないことを示す。
【0183】
[00211]指数関数的に増殖している細胞の細胞周期分布の分析は、CHO細胞およびC.1細胞が同様のG1、S、およびG2分布プロファイルを有することを示した(図9)。対照的に、共に標準的なUPR誘発剤であるツニカマイシンまたはタプシガルジンで処理されたCHO細胞は、より多くのG1期細胞を示し、また、S期の細胞の劇的な減少を示した。指数関数的に増殖しているT24/83細胞でも同様のパターンが観測された。ベクターで形質移入された細胞でも、GRP78を過剰発現する細胞でも、両方ともG1、S、およびG2細胞の割合は同様であった。ツニカマイシンまたはタプシガルジンで処理された細胞は、高い割合のG1細胞と、低い割合のS期細胞とを示した(図9)。これらの結果は、併せると、UPRとは対照的に、GRP78の特異的な過剰発現は細胞周期の分布を変化させないことを示す。
【0184】
[00212]本発明の多くの実施形態について記載した。それにもかかわらず、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、様々な改変を加えうることが理解されよう。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞のアポトーシスを調節する方法であって、アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分とのグルコース調節タンパク質(GRP)の相互作用を調節する薬剤に、GRPを接触させることを含む方法。
【請求項2】
前記GRPが小胞体に局在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記GRPがGRP94またはGRP78である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記GRPがGRP78である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分がカスパーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記カスパーゼが、Ced−3、カスパーゼ−1、カスパーゼ−2、カスパーゼ−4、カスパーゼ−5、カスパーゼ−6、カスパーゼ−7、カスパーゼ−8、カスパーゼ−9、カスパーゼ−10、およびカスパーゼ11〜14からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記カスパーゼがカスパーゼ−7である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞質ゾル成分がポリペプチドの複合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記調節がアポトーシスの抑制による、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
GRPタンパク質またはその機能性断片をコードする核酸に、細胞を接触させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記GRPタンパク質がGRP78である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸が発現ベクターに含有されている、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸が制御エレメントに作用可能に連結している、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記制御エレメントがプロモータである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記GRP78断片が、細胞質ゾル成分と相互作用するGRP78の可溶性断片を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記調節がアポトーシスの促進による、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記調節が、前記細胞質ゾル成分とのGRPの相互作用を抑制すること、またはGRPの産生を抑制することによる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記薬剤が、小分子、タンパク質、ペプチド、ペプチドミメティック、核酸分子、またはこれらの組合せである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリペプチドが抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記薬剤が小分子である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記薬剤が、ヴァーシペロスタチン(VST)、dATP、またはこれらの組合せである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記薬剤が前記タンパク質のATP結合ドメインと相互作用する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記薬剤が、ATP、または、前記タンパク質のATP結合ドメインに結合するATP誘導体である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ATP結合ドメインが配列番号2のアミノ酸125〜275を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記薬剤が配列番号2のアミノ酸150〜250と相互作用する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記薬剤が配列番号2のアミノ酸175〜201と相互作用する、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記核酸が、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、またはこれらの組合せである、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記アンチセンス分子がGRP78ポリヌクレオチドと相互作用する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記siRNAがGRP78ポリヌクレオチドと相互作用する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記アンチセンス分子が配列番号1と少なくとも80%同一である配列を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記アンチセンス分子は配列番号1と少なくとも90%同一である配列を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記アンチセンス分子は配列番号3を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記アンチセンス分子が配列番号3からなる、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記siRNAが、配列番号4と約90%同一である配列およびその相補配列を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記siRNAが、配列番号4と約95%同一である配列およびその相補配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記siRNAが配列番号4およびその相補配列を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記siRNAが配列番号4およびその相補配列からなる、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
前記核酸がベクター中で細胞に送達される、請求項27に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞との接触がin vitroで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞との接触がin vivoで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記アポトーシスが、脳卒中、心発作、低酸素、低血糖、脳もしくは脊髄虚血、脳もしくは脊髄損傷に関連した疾患または障害の結果起こる、請求項9に記載の方法。
【請求項42】
前記調節がアポトーシスの促進であり、前記細胞が腫瘍細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞が腫瘍細胞である、請求項16に記載の方法。
【請求項44】
細胞のアポトーシスを促進する方法であって、(i)GRP78が細胞質ゾルタンパク質と相互作用する機能を抑制または防止する薬剤、および/または(ii)GRP78の産生を抑制する薬剤でグルコース調節タンパク質78(GRP78)を抑制することを含む方法。
【請求項45】
前記薬剤がポリペプチドである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ポリペプチドが抗体である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記薬剤が小分子である、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記薬剤が、前記タンパク質の疎水性膜貫通ドメインIII(配列番号1または2のアミノ酸210〜260)またはドメインIV(配列番号1または2のアミノ酸400〜450)と相互作用する、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分とのグルコース調節タンパク質78(GRP78)の相互作用を調節する薬剤を同定する方法であって、
a)内在的に膜に結合しているグルコース調節タンパク質78(GRP78)を準備するステップと、
b)少なくとも1種類のカスパーゼを含む細胞質ゾル成分を準備するステップと、
c)薬剤を準備するステップと、
d)a)のタンパク質を、b)の成分およびc)の薬剤に、同時に、または順番に接触させるステップと、
e)対照と比較した、前記タンパク質と前記成分との相互作用に対する薬剤の作用を決定するステップと
を含む方法。
【請求項50】
前記カスパーゼがカスパーゼ−7である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記内在的に膜に結合しているグルコース調節タンパク質78(GRP78)がミクロソーム複合体である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記薬剤の作用が、前記タンパク質と前記成分との相互作用を抑制することである、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記アッセイが、ある細胞で行われる、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記細胞をエトポシドと接触させることをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記決定が、前記薬剤の存在下および非存在下における細胞の生存率を測定することによる、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
グルコース調節タンパク質(GRP)ポリヌクレオチドと相互作用する核酸を含むグルコース調節タンパク質(GRP)抑制核酸分子。
【請求項57】
前記核酸がアンチセンス分子である、請求項56に記載のGRP抑制核酸分子。
【請求項58】
(a)配列番号3と少なくとも80%同一であり、GRPポリヌクレオチドと特異的に相互作用する配列を含む核酸または断片、
(b)配列番号3と少なくとも90%同一であり、GRPポリヌクレオチドと特異的に相互作用する配列を含む核酸または断片、
(c)配列番号3と少なくとも95%同一であり、GRPポリヌクレオチドと特異的に相互作用する配列を含む核酸または断片、
(d)配列番号3に記載の配列を含む核酸、および
(e)配列番号3に記載の配列からなる核酸
からなる群から選択される、請求項57に記載のアンチセンス分子。
【請求項59】
前記GRPポリヌクレオチドがGRP78ポリヌクレオチドである、請求項57に記載のアンチセンス分子。
【請求項60】
前記核酸が短鎖抑制核酸(siNA)分子である、請求項56に記載のGRP抑制核酸分子。
【請求項61】
前記siNA分子が、
(a)配列番号4と少なくとも90%同一である配列およびその相補配列を含み、GRPポリヌクレオチドと特異的に相互作用する核酸、
(b)配列番号4と少なくとも95%同一である配列およびその相補配列を含み、GRPポリヌクレオチドと特異的に相互作用する核酸、
(c)配列番号4に記載の配列およびその相補配列を含む核酸、および
(d)配列番号4に記載の配列およびその相補配列からなる核酸配列
からなる群から選択される、請求項60に記載のGRP抑制核酸分子。
【請求項62】
GRPタンパク質の可溶性ドメインを含む、グルコース調節タンパク質を調節する薬剤。
【請求項63】
アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分とのグルコース調節タンパク質78(GRP78)の相互作用を調節する薬剤を同定する方法であって、
(a)グルコース調節タンパク質78(GRP78)のATP結合ドメインを含むポリペプチドを準備するステップと、
(b)少なくとも1種類のカスパーゼを含む細胞質ゾル成分を準備するステップと、
(c)薬剤を準備するステップと、
(d)(a)のポリペプチドを、(b)の成分および(c)の薬剤に、同時に、または順番に接触させるステップと、
(e)対照と比較した、前記ポリペプチドおよび前記成分の相互作用に対する前記薬剤の作用を決定するステップと
を含む方法。
【請求項64】
前記ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸125〜275を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸150〜250を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記ポリペプチドが配列番号1または2のアミノ酸175〜201を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
膜とのグルコース調節タンパク質78(GRP78)の相互作用を調節する薬剤を同定する方法であって、
(a)グルコース調節タンパク質78(GRP78)のタンパク質の疎水性膜貫通ドメインIII(配列番号1または2のアミノ酸210〜260)および/またはドメインIV(配列番号1または2のアミノ酸400〜450)を含むポリペプチドを準備するステップと、
(b)薬剤を準備するステップと、
(c)a)のポリペプチドをb)の薬剤と同時に、または順番に接触させるステップと、
(d)対照と比較した、前記膜との前記ポリペプチドの相互作用に対する前記薬剤の作用を決定するステップと
を含む方法。
【請求項68】
カスパーゼポリペプチドを含む細胞を、グルコース調節タンパク質78(GRP78)小胞体膜貫通タンパク質との前記ポリペプチドの相互作用を調節する薬剤と接触させることを含む、アポトーシスを調節する方法。
【請求項69】
前記カスパーゼが、Ced−3、カスパーゼ−1、カスパーゼ−2、カスパーゼ−4、カスパーゼ−5、カスパーゼ−6、カスパーゼ−7、カスパーゼ−8、カスパーゼ−9、カスパーゼ−10、およびカスパーゼ11〜14からなる群から選択される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記カスパーゼがカスパーゼ−7である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記調節がアポトーシスの促進による、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記調節がアポトーシスの抑制による、請求項68に記載の方法。
【請求項73】
前記薬剤がポリペプチドである、請求項68に記載の方法。
【請求項74】
前記薬剤が小分子である、請求項68に記載の方法。
【請求項75】
前記ポリペプチドが、配列番号2からなるポリペプチドの断片である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記断片が、配列番号2を含むポリペプチドの可溶性ドメインを含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記薬剤が核酸分子である、請求項68に記載の方法。
【請求項78】
前記核酸が、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、またはこれらの組合せである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記アンチセンス分子がGRP78ポリヌクレオチドと相互作用する、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記siRNAがGRP78ポリヌクレオチドと相互作用する、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記アンチセンス分子が、配列番号3と少なくとも80%同一である配列を含み、配列番号1を含むポリヌクレオチドと特異的に相互作用する、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記アンチセンス分子が、配列番号3と少なくとも90%同一である配列を含み、配列番号1を含むポリヌクレオチドと特異的に相互作用する、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記アンチセンス分子が配列番号3を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記アンチセンス分子が配列番号3からなる、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
前記siRNAが、配列番号4と約90%同一である配列およびその相補配列を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項86】
前記siRNAが、配列番号4と約95%同一である配列およびその相補配列を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記siRNAが配列番号4およびその相補配列を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
前記siRNAが配列番号4およびその相補配列からなる、請求項85に記載の方法。
【請求項89】
前記細胞を化学療法薬と接触させることをさらに含む、請求項68に記載の方法。
【請求項90】
グルコース調節タンパク質94(GRP94)小胞体膜貫通タンパク質を含む細胞を、アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分との膜貫通タンパク質の相互作用を調節する薬剤と接触させることを含む、アポトーシスを調節する方法。
【請求項91】
標的組織のアポトーシスを抑制する方法であって、前記組織でGRP78またはGRP94を過剰発現することを含む方法。
【請求項92】
前記組織がニューロン組織である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記組織が血管組織である、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記組織が心臓組織である、請求項91に記載の方法。
【請求項95】
アポトーシスを媒介する細胞質ゾル成分とのグルコース調節タンパク質94(GRP94)の相互作用を調節する薬剤を同定する方法であって、
(a)グルコース調節タンパク質94(GRP94)を準備するステップと、
(b)少なくとも1種類のカスパーゼを含む細胞質ゾル成分を準備するステップと、
(c)薬剤を準備するステップと、
(d)(a)のタンパク質を、(b)の成分および(c)の薬剤に、同時に、または順番に接触させるステップと、
(e)対照と比較した、前記タンパク質と前記成分との相互作用に対する前記薬剤の作用を決定するするステップと
を含む方法。
【請求項96】
発現制御エレメントに作用可能に連結したグルコース調節タンパク質(GRP)抑制核酸分子を含む核酸コンストラクト。
【請求項97】
前記核酸がアンチセンス分子である、請求項96に記載の核酸コンストラクト。
【請求項98】
前記アンチセンス分子が、
(a)配列番号3と少なくとも80%同一であり、GRPポリヌクレオチドと特異的に相互作用する配列を含む核酸または断片、
(b)配列番号3と少なくとも90%同一であり、GRPポリヌクレオチドと特異的に相互作用する配列を含む核酸または断片、
(c)配列番号3と少なくとも95%同一であり、GRPポリヌクレオチドと特異的に相互作用する配列を含む核酸または断片、
(d)配列番号3に記載の配列を含む核酸、および
(e)配列番号3に記載の配列からなる核酸
からなる群から選択される、請求項97に記載の核酸コンストラクト。
【請求項99】
前記抑制核酸分子が短鎖抑制核酸(siNA)分子である、請求項96に記載の核酸コンストラクト。
【請求項100】
前記siNA分子が、
(a)配列番号4と少なくとも90%同一である配列およびその相補配列を含み、GRPポリヌクレオチドと特異的に相互作用する核酸、
(b)配列番号4と少なくとも95%同一である配列およびその相補配列を含み、GRPポリヌクレオチドと特異的に相互作用する核酸、
(c)配列番号4に記載の配列およびその相補配列を含む核酸、ならびに
(d)配列番号4に記載の配列およびその相補配列からなる核酸
からなる群から選択される、請求項99に記載の核酸コンストラクト。
【請求項101】
前記発現制御エレメントがグルコース応答タンパク質78(grp78)プロモータ配列を含む、請求項96に記載の核酸コンストラクト。
【請求項102】
前記grp78プロモータ配列が、grp78コード配列の転写開始部位の約3000の塩基対5’側から、grp78コード配列の開始部位の200塩基対3’側までの配列を含む、請求項101に記載の核酸コンストラクト。
【請求項103】
前記siNA分子が内在性GRPポリヌクレオチドの発現を破壊する、請求項99に記載の核酸コンストラクト。
【請求項104】
前記内在性GRPポリヌクレオチドがGRP78ポリヌクレオチドである、請求項103に記載の核酸コンストラクト。
【請求項105】
請求項96に記載の核酸コンストラクトを含む組換え体ベクター。
【請求項106】
前記ベクターが動物細胞発現ベクターである、請求項105に記載の組換え体ベクター。
【請求項107】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項105に記載の組換え体ベクター。
【請求項108】
前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクターおよびDNAウイルスベクターからなる群から選択される、請求項107に記載の組換え体ベクター。
【請求項109】
請求項96に記載の核酸コンストラクトを、薬学的に許容される担体中に含む医薬組成物。
【請求項110】
細胞増殖障害を有する標的細胞を、請求項96に記載の核酸コンストラクトと接触させることを含む、細胞増殖を抑制する方法。
【請求項111】
請求項96に記載の核酸コンストラクトを対象に投与することを含む、対象の細胞増殖障害を治療する方法。
【請求項112】
前記対象が哺乳動物である、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記哺乳動物がヒトである、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記投与が、in vivo投与である、請求項111に記載の方法。
【請求項115】
前記in vivo投与が全身投与、局部投与、または局所投与である、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記投与がex vivo投与である、請求項111に記載の方法。
【請求項117】
前記細胞増殖障害が腫瘍性障害である、請求項111に記載の方法。
【請求項118】
前記腫瘍性障害が、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、前立腺癌、尿路癌、子宮癌リンパ腫、口腔癌、膵臓癌、白血病、黒色腫、胃癌、甲状腺癌、肝臓癌、脳腫瘍、および卵巣癌からなる群から選択される、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
発現制御エレメントに作用可能に連結したグルコース調節タンパク質(GRP)ポリヌクレオチドを含む核酸コンストラクト。
【請求項120】
前記発現制御エレメントがグルコース応答タンパク質78(grp78)プロモータ配列を含む、請求項119に記載の核酸コンストラクト。
【請求項121】
前記GRPポリヌクレオチドがGRP78ポリヌクレオチドおよび/またはGRP94ポリヌクレオチドを含む、請求項119に記載の核酸コンストラクト。
【請求項122】
前記GRPポリヌクレオチドが、
(a)配列番号1と少なくとも80%同一である配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチドから生成されたポリペプチドがアポトーシスを抑制する、ポリヌクレオチド、
(b)配列番号1と少なくとも90%同一である配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチドから生成されたポリペプチドがアポトーシスを抑制する、ポリヌクレオチド、
(c)配列番号1と少なくとも95%同一である配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチドから生成されたポリペプチドがアポトーシスを抑制する、ポリヌクレオチド、および
(d)配列番号1の断片を含むポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチドから生成されたポリペプチドがアポトーシスを抑制する、ポリヌクレオチド
からなる群から選択される、請求項121に記載の核酸コンストラクト。
【請求項123】
前記grp78プロモータ配列が、grp78コード配列の転写開始部位の約3000の塩基対5’側から、grp78コード配列の開始部位の200塩基対3’側までの配列を含む、請求項120に記載の核酸コンストラクト。
【請求項124】
請求項119に記載の核酸コンストラクトを含む組換え体ベクター。
【請求項125】
前記ベクターが動物細胞発現ベクターである、請求項124に記載の組換え体ベクター。
【請求項126】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項124に記載の組換え体ベクター。
【請求項127】
前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクターおよびDNAウイルスベクターからなる群から選択される、請求項126に記載の組換え体ベクター。
【請求項128】
請求項119に記載の核酸コンストラクトを、薬学的に許容される担体中に含む医薬組成物。
【請求項129】
虚血に感受性の細胞を有する標的細胞を、請求項119に記載の核酸コンストラクトと接触させることを含む、虚血による組織損傷を抑制する方法。
【請求項130】
請求項119に記載の核酸コンストラクトを対象に投与することを含む、対象の虚血組織傷害を治療する方法。
【請求項131】
前記対象が哺乳動物である、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
前記哺乳動物がヒトである、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記投与がin vivo投与である、請求項130に記載の方法。
【請求項134】
前記in vivo投与が全身投与、局部投与、または局所投与である、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記投与がex vivo投与による、請求項130に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−233569(P2010−233569A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94359(P2010−94359)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【分割の表示】特願2006−536935(P2006−536935)の分割
【原出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(504153875)ユニバーシティ オブ サウザーン カリフォルニア (4)
【Fターム(参考)】