説明

アポトーシス関連ペプチドをコードする遺伝子ファミリー、それによってコードされるペプチド、およびそれらの使用方法

【課題】SARPポリヌクレオチドを提供する。
【解決手段】SARPポリヌクレオチドをコードする特定の配列番号に少なくとも60%相同な単離されたポリヌクレオチド;αSARPポリぺプチド少なくとも11個の連続するアミノ酸をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクター;単離されたポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換された宿主細胞;SARPに特異的な抗体;ならびにこのようなポリヌクレオチドおよび抗体の、診断および治療方法における使用。sarpの抗体およびポリヌクレオチドの治療的使用。ガンを含む組織および体液サンプルにおけるSARP発現の調節に関連する疾患を処置するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1996年9月24日に出願された米国仮出願番号第60/026,603号、および1996年10月11日に出願された米国仮出願番号第60/028,363号に対する優先権を請求する。
【0002】
技術分野
本発明は、アポトーシスすなわちプログラム細胞死に関連する状態を診断および処置する分野に関する。より詳細には、本発明は、その発現がアポトーシスに関連する、新規遺伝子ファミリーの同定および特徴付けに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
アポトーシスは、個々の細胞死を導く正常な生理学的プロセスである。プログラム細胞死のこのプロセスは、種々の正常および病原性生物学的事象に関連し、多数の非関連刺激によって誘導され得る。アポトーシスの生物学的調節の変化もまた加齢中に生じ、加齢に関連する多数の状態および疾患の原因である。アポトーシスの最近の研究は、細胞死を導く共通の代謝経路が、ホルモン、血清増殖因子欠乏、化学療法剤、電離放射線、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染を含む、広範な種々のシグナルによって開始され得ることを含意する。Wyllie (1980) Nature284:555-556; Kanterら(1984) Biochem. Biophys. Res. Commun. 118:392-399; DukeおよびCohen(1986) Lymphokine Res. 5:289-299; Tomeiら(1988) Biochem. Biophys. Res. Commun.155:324-331; Krumanら(1991) J. Cell. Physiol. 148:267-273; AmeisenおよびCapron(1991) Immunology Today 12:102;および、SheppardおよびAscher(1992) J. AIDS 5:143。従って、アポトーシスの生物学的制御を調節する薬剤が、広範な種々の状態に治療有用性を有する。
【0004】
アポトーシス細胞死は、細胞縮小、クロマチン凝集、細胞質泡化(cytoplasmicblebbing)、増大した膜透過性、および染色体間DNA切断によって特徴付けられる。Kerrら(1992) FASEB J. 6:2450;ならびにCohenおよびDuke(1992) Ann. Rev. Immunol. 10:267。アポトーシス細胞の表面から摘み取られた小さな膜被包性の球である気泡(bleb)は、周辺細胞組織を損傷するスーパーオキシドラジカルを産生し続け、炎症プロセスに関連し得る。
【0005】
アポトーシスは正常な細胞事象であるが、それはまた病原的状態および種々の損傷によって誘導され得る。アポトーシスは、心血管疾患;ガン退縮;免疫調節;ウイルス性疾患;貧血;神経学的障害;下痢および赤痢を含むがこれに限定されない胃腸障害;糖尿病;脱毛;臓器移植拒絶;前立腺肥大;肥満症;眼疾患;ストレス;および加齢を含むがこれに限定されない広範な種々の状態に関連する。
【0006】
腫瘍細胞でアポトーシス経路を活性化することが示された遺伝子は、FAS抗原、TNFα、およびTNFβを含む。例えば、TomeiおよびCopeら、ApoptosisII: The Molecular Basis of Apoptosis in Disease (1994) Cold Spring HarborLaboratory Pressを参照のこと。線虫C. elegansでは、遺伝子ced-3およびced-4での変異が、発生中の自律細胞死を阻む。YuanおよびHorvitz(1990)Dev. Biol. 138:33。線虫遺伝子ced-9を活性化する変異は、発生中の細胞死を阻むが、一方、この遺伝子を不活性化する変異は、プログラム細胞死を促進する。哺乳動物細胞では、p-53遺伝子は、いくつかの細胞ではアポトーシスを誘導したが、その他では誘導しなかったことが示されている。
【0007】
調査中のアポトーシス阻害遺伝子は、B細胞リンパ腫から単離されたbcl-2を含み、細胞増殖に影響を与えずにアポトーシスをブロックする。例えば、Tsujimotoら、Science226:1087; Hockenberryら(1990) Nature 348:334を参照のこと。bcl-2がアポトーシスを阻害するメカニズムは知られていない。骨髄性細胞で発現されるMcl-1は、bcl-2に配列類似性を示し、アポトーシスの調節に関連すると考えられる。Kozopasら(1993)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3516。
【0008】
Drosophila melanogaster組織極性遺伝子frizzledに関連する推定膜貫通型レセプターの大きなファミリーのメンバーが、最近クローニングされた。Wangら(1995)J. Biol. Chem. 271:4468を参照のこと。Frizzledファミリーメンバーは、線虫およびヒトのような多様な生物でも見出され、そして種々の組織でおよび胚発生の間に発現される。Drosophilaでは、frizzled変異は、身体表面上の感覚剛毛(sensorybristles)のような構造の極性に影響する。他の種におけるfrizzledファミリーの正確な機能および臨床的重要性は、ほとんど未知のままである。
【0009】
以前および以後の両方で本明細書に引用される全ての参考文献は、これにより、本明細書に参考として援用されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
本発明は、新規アポトーシス関連遺伝子の産物に由来するか、またはその産物と反応する、単離されたポリヌクレオチド、ポリペプチド、および抗体を包含する。本発明はまた、これらの組成物の使用を包含する。
【0011】
従って、本発明の1つの局面は、SARPファミリーのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。代表的なポリペプチドは、配列番号2、4、6、または7のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。本発明は同様に、配列番号2、4、6、または7のアミノ酸配列に実質的に相同性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドを包含する。
【0012】
別の局面では、本発明は、少なくとも15個の連続するヌクレオチドの領域から構成される単離されたポリヌクレオチドを提供し、ここで、これらのヌクレオチドは、配列番号1、3、5、または18の配列をコードするポリヌクレオチドと安定な二重鎖を形成し得る。
【0013】
本発明の別の局面は、本発明のポリヌクレオチドを含む、クローニングおよび発現ベクターである。さらに、本発明のポリヌクレオチドを含む宿主細胞が包含される。
【0014】
別の局面では、本発明は、配列番号2、4、6、または7の少なくとも11アミノ酸残基のポリペプチドを包含し、そしてさらに配列番号2、4、6、または7の11アミノ酸残基と実質的に相同であるポリペプチドを包含する。本発明はまた、本発明のポリペプチドを含む融合ポリペプチドを提供する。
【0015】
本発明はまた、本発明のポリペプチドに特異的に結合する、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を提供する。αSARPと呼ばれる抗体が存在する。
【0016】
別の局面では、本発明のポリヌクレオチドを検出する方法が提供される。これらの方法は、安定な複合体の形成を可能にする条件下で生物学的試料を接触させる工程、および形成された任意の安定な複合体を検出する工程を含む。
【0017】
本発明の別の局面は、SARPファミリーのタンパク質を検出する方法である。これらの方法は、個体から得た生物学的試料を本発明のαSARP抗体と安定な抗原-抗体複合体を可能にする条件下で接触させる工程、およびもしあれば、形成された安定な複合体を検出する工程を必要とする。
【0018】
本発明のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの治療有効量を、アポトーシスの処置の必要な患者に投与することによる、このような処置のための方法もまた提供される。その方法は、アポトーシスに関連する状態の処置のための組成物の作製を包含する。これらの組成物を使用する他の方法は、培養細胞でのアポトーシスの防止、心臓、肝臓、肺、脳などのような、次の器官移植のための器官保存およびバイパス手術のためのインサイチュ保存を増大するための方法、ならびにアポトーシスが関与する皮膚科学的状態を処置するための方法を含む。
【0019】
さらに、体液の試験試料を提供する工程;hsarp遺伝子の遺伝子産物の存在について試験試料をアッセイする工程;および試験試料中に検出される遺伝子産物の量を、試験試料と同じ組織型の非疾患試料中に検出される遺伝子産物の量と比較する工程による、疾患の検出のための方法が提供される。アッセイ工程は、核酸ハイブリダイゼーションおよび抗体-抗原相互作用を包含するがこれに限定されない。
【0020】
本発明のさらなる実施態様では、sarpまたはアンチセンスhsarpポリヌクレオチドまたはSARPポリペプチドまたはSARP抗体を包含する群より選択される成分を含有する、薬学的に受容可能な組成物の治療有効量を患者へ投与する工程を包含する、患者の処置方法が提供される。その方法は、アポトーシス関連状態を処置する方法であり得る。特定の実施態様では、患者は、乳房組織、前立腺、または前立腺上皮組織のガンを含むがこれらに限定されないガンに関連する状態を病んでいる患者である。さらなる実施態様では、組成物は、sarpポリヌクレオチドまたはそのポリヌクレオチドの遺伝子産物、SARPポリペプチドを含有する。
【0021】
本発明はまた以下を提供する。
1.配列番号2、4、6、または7に対して少なくとも90%同一性を有するポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
2.配列番号1、3、5、もしくは18のコード領域またはその相補鎖からの少なくとも15ヌクレオチドの長さの単離されたポリヌクレオチド。
3.項目1に記載のポリヌクレオチドによってコードされる、単離されたポリペプチド。
4.配列番号2、4、6、または7に示される配列に対する、単離されたポリペプチドフラグメントまたは機能的に等価なポリペプチドフラグメント。
5.(1)配列番号2、4、6、または7に示される配列と本質的に同一な少なくとも11アミノ酸残基の直鎖状配列を含有し、(2)第二のポリペプチドに共有結合されている、融合ポリペプチド。
6.配列番号2、4、6、または7に示される、少なくとも11個の連続するアミノ酸残基のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含有する、組換え発現ベクター。
7.配列番号1、3、5、または18内の直鎖状配列に同一である少なくとも18ヌクレオチドの直鎖状配列を含有する、組換えクローニングベクター。
8.項目1に記載のポリヌクレオチドまたは項目7に記載のベクターによって形質転換された、宿主細胞。
9.前記細胞が、前記ベクターから前記ポリペプチドを発現する、項目8に記載の宿主細胞。
10.項目1に記載のポリヌクレオチドのコード領域にコードされるタンパク質に特異的な、モノクローナル抗体または単離されたポリクローナル抗体。
11.モノクローナル抗体である、項目10に記載の抗体。
12.単離されたポリクローナル抗体である、項目10に記載の抗体。
13.SARPタンパク質発現を検出する方法であって、以下の工程:
(a)試験細胞を提供する工程;
(b)該試験細胞のタンパク質と、項目10に記載の抗体とを、該試験細胞のタンパク質と該抗体との間の安定な複合体の形成を可能にする条件下で接触させる工程;および
(c)該試験細胞のタンパク質によって形成される免疫複合体の量を、該試験細胞と同じ組織型の非アポトーシス細胞のタンパク質によって形成される免疫複合体の量と比較する工程、
を包含する、方法。
14.SARPタンパク質発現を検出する方法であって、以下の工程:
(a)試験細胞を提供する工程;
(b)該試験細胞のmRNAと、配列番号1、3、5、または18の少なくとも15ヌクレオチドの長さのセグメントに対するアンチセンス配列を含有する核酸プローブとを、該試験細胞のmRNAと該核酸プローブとの間の安定な複合体の形成を可能にする条件下で接触させる工程;および
(c)該試験細胞のmRNAに対する該プローブのハイブリダイゼーションの量を、該試験細胞と同じ組織型の非アポトーシス細胞のmRNAに対する該プローブのハイブリダイゼーションの量と比較する工程、
を包含する、方法。
15.SARP発現の調節に関連する疾患を診断する方法であって、以下の工程:
(a)組織の試験試料を提供する工程;
(b)hsarp遺伝子の遺伝子産物の存在について、該試験試料をアッセイする工程:および
(c)該試験試料中に検出される遺伝子産物の量を、該試験試料と同じ組織型の非罹病試料中に検出される遺伝子産物の量と比較する工程、
を包含する、方法。
16.前記遺伝子産物が、タンパク質である、項目15に記載の方法。
17.前記アッセイする工程が、前記試験試料と、前記タンパク質に対する抗体とを、該抗体と該試験試料中に存在する任意の該タンパク質との間の安定な複合体の形成を可能にする条件下で接触させることを包含する、項目16に記載の方法。
18.前記遺伝子産物が、hsarp mRNAである、項目15に記載の方法。
19.前記アッセイする工程が、前記試験試料と、hsarp mRNAの少なくとも15ヌクレオチドの長さのセグメントに対するアンチセンス配列を含有する核酸プローブとを、該核酸プローブと該試験試料中に存在する任意の相補的mRNAとの間の安定な複合体の形成を可能にする条件下で接触させることを包含する、項目18に記載の方法。
20.前記hsarp遺伝子が、hsarp1である、項目15に記載の方法。
21.前記疾患が、前立腺上皮組織のガンである、項目20に記載の方法。
22.前記hsarp遺伝子が、hsarp2である、項目15に記載の方法。
23.前記疾患が、乳房組織のガンである、項目22に記載の方法。
24.SARP発現の調節に関連する疾患を診断する方法であって、以下の工程:
(a)体液の試験試料を提供する工程;
(b)SARPタンパク質の存在について、該試験試料をアッセイする工程;および
(c)該試験試料中に検出されるSARPタンパク質の量を、該試験試料と同じ体液型の非罹病試料中に検出されるSARPタンパク質の量と比較する工程、
を包含する、方法。
25.前記アッセイする工程が、前記試験試料と、前記SARPタンパク質に対する抗体とを、該抗体と該試験試料中に存在する任意の該SARPタンパク質との間の安定な複合体の形成を可能にする条件下で接触させることを包含する、項目24に記載の方法。
26.前記SARPタンパク質が、hSARP1である、項目24に記載の方法。
27.前記疾患が、前立腺上皮組織のガンである、項目26に記載の方法。
28.前記SARPタンパク質が、hSARP2である、項目24に記載の方法。
29.前記疾患が、乳房組織のガンである、項目28に記載の方法。
30.患者の処置方法であって、sarpもしくはアンチセンスhsarpポリヌクレオチドまたはSARPポリペプチドまたはSARP抗体を包含する群より選択される成分を含有する、薬学的に受容可能な組成物の治療有効量を、該患者に投与する工程を包含する、方法。
31.前記患者が、ガンに関連する状態を病んでいる、項目30に記載の方法。
32.前記ガンに関連する状態が、乳房組織のガンである、項目31に記載の方法。
33.前記ガンに関連する状態が、前立腺のガンである、項目31に記載の方法。
34.前記ガンに関連する状態が、前立腺上皮組織のガンである、項目31に記載の方法。
35.前記ポリヌクレオチドが、hsarp2である、項目30に記載の方法。
36.前記ポリペプチドが、SARP2である、項目30に記載の方法。
37.アポトーシス関連状態を処置する方法であって、sarpもしくはアンチセンスhsarpポリヌクレオチドまたはSARPポリペプチドまたはSARP抗体を含有する、薬学的に受容可能な組成物の治療有効量を、このような治療を必要とする患者に投与する工程を包含する、方法。
38.前記アポトーシス関連状態が、ガンである、項目37に記載の方法。
39.前記ガンが、乳房組織のガンである、項目38に記載の方法。
40.前記ガンが、前立腺のガンである、項目38に記載の方法。
41.前記アポトーシス関連状態が、前立腺上皮組織のガンである、項目37に記載の方法。
42.前記ポリヌクレオチドが、hsarp2である、項目37に記載の方法。
43.前記ポリペプチドが、SARP2である、項目37に記載の方法。
44.Wnt-frizzledタンパク質相互作用に対するSARPタンパク質の影響を調節する、潜在的な治療剤をスクリーニングするための方法であって、以下の工程:
(a)Wntタンパク質およびSARPタンパク質を、それらが相互作用する条件下で合わせて試験試料を形成する工程;
(b)該試験試料を、潜在的な治療剤に曝露する工程;および
(c)該SARPタンパク質と該frizzledタンパク質との相互作用をモニターする工程、
を包含し、ここで該潜在的な治療剤が、該潜在的な治療剤が添加されていないコントロール試験試料に比較して該相互作用を改変する場合、該潜在的な治療剤を、さらなる研究のために選択する、方法。
【0022】
本発明の上記および他の目的は、以下の詳細な記述および図面から、当業者に容易に明白になる。ここでは、本発明を実施するための最良の形態を単に例示することによって、本発明の好ましい実施態様が示され、そして記載されている。容易に認識されるように、本発明は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、関連技術の範囲内で改変され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
発明を実施するための形態
本明細書中に新規遺伝子ファミリーが開示され、この発現はアポトーシスに関連する。その遺伝子は、「sarp」(分泌アポトーシス関連タンパク質)と呼ばれる。msarp遺伝子はマウス供給源に由来し、一方、hsarp遺伝子はヒト供給源に由来する。これらの遺伝子(msarp1、hsarp2、hsarp1、およびhsarp3を含む)は、「SARP」と呼ばれるタンパク質ファミリーに属する新規のタンパク質をコードする。hsarp2遺伝子は、種々の組織で発現される。hsarp2が発現ベクターに挿入され、ヒト細胞株にトランスフェクトされた場合、hsarp2は、培養物におけるアポトーシスを経る細胞の割合を増大した。hsarp2遺伝子は、指数関数的に増殖する非形質転換細胞株で発現され、静止細胞で提示される。hsarp2の増加した発現は、用量依存様式で、乳ガン細胞株におけるプログラム細胞死を増加することを示した。GeneBankのBLASTサーチは、新規遺伝子ファミリーと「Frizzled様」遺伝子ファミリーメンバーとの間に、有意な相同性を示した(図1B、配列番号10〜14を参照のこと)。frizzled様遺伝子ファミリーは、未知の機能を有する、7トランスメンブランドメインを有する細胞膜タンパク質をコードする。Wntおよびfrizzledタンパク質が相互作用することが、以前に示された。Bhanotら(1996)Nature 382:225-230。ヒト frizzeled様タンパク質に対する多重配列のアラインメントは、新規ファミリーが、トランスメンブラン領域にほとんど相同性を有さず、frizzled様タンパク質の細胞外N末端ドメインでほとんど相同であることを示した。現在、SARPは、Wnt-frizzledタンパク質相互作用を妨害し、細胞-細胞および細胞-細胞外マトリックスシグナリングに影響することによってアポトーシスを改変することが示されている。
【0024】
マウス細胞およびヒト心臓および膵臓cDNAライブラリー由来の新規遺伝子ファミリーをクローニングした。これらの遺伝子の発現は、アポトーシスの早期段階に関連する。msarp1と呼ばれるマウス遺伝子は、分泌される295アミノ酸の推定タンパク質産物をコードする単一のオープンリーディングフレームを含む。msarp1は、心臓、肺において高レベルで発現され、アポトーシスを誘発する損傷に供される心筋細胞において上方制御される。msarp1の転写もまた、静止期、すなわち、アポトーシス刺激に対する増大した耐性によって特徴づけられる抑制された細胞増殖期に達した10T1/2細胞で有意に誘導される。
【0025】
新規遺伝子ファミリーはまた、hsarp2、hsarp1、およびhsarp3と呼ばれる、3つのヒト遺伝子を含む。hsarp1は、msarp1に密接に相同であり、そしてhSARP1と呼ばれる、212アミノ酸ポリペプチドをコードする1つのオープンリーディングフレーム(ORP)を有する。hsarp3は、hSARP3と呼ばれる、316アミノ酸のタンパク質をコードし、これはhSARP2およびmSARP1に相同である。hSARP1は、結腸、小腸、膵臓、および前立腺で、最も高いレベルで発現される。hSARP3は、膵臓で主に発現される。
【0026】
hsarp2 cDNA配列は1302ヌクレオチドを含み、N末端メチオニンおよびC末端リジンアミノ酸残基を有する314アミノ酸のポリペプチドをコードする。全長cDNA配列は、5'非翻訳領域の301ヌクレオチド、および3'非翻訳領域の62ヌクレオチドを含む。hsarp2 cDNAは、1つの主要なオープンリーディングフレーム(ORP)を含む(hSARP2)。ATG開始部位は303位に見い出され、そして終結部位は1248位に存在する。hsarp2が発現ベクター中に挿入され、そしてヒト細胞株にトランスフェクトされる場合、hsarp2は、培養物においてアポトーシスを経る細胞の割合を増加する。
【0027】
本明細書中で使用される「sarp」(msarp, hsarp1、hsarp2、およびhsarp3を含む)は、SARPをコードする核酸分子、ならびにその誘導体および相補的なヌクレオチドをいう。「SARP」(mSARP、hSARP1、hSARP2、およびhSARP3を含む)は、それによってコードされるタンパク質をいう。ファミリーの他のメンバーは、本明細書中に示される実施例に記載される方法によって得られ得る。
【0028】
本発明は、新規遺伝子ファミリーのヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチドは、cDNA、ゲノム由来DNA、および合成または半合成のDNAまたはRNAを含むが、これらに限定されない。msarp1のヌクレオチド配列は配列番号1に含まれ;hsarp1のヌクレオチド配列は配列番号3に含まれ;hsarp3の配列は配列番号5に含まれ;そして、hsarp2のヌクレオチド配列は配列番号18に含まれる。本明細書中の実施例に記載されるように、この遺伝子ファミリーのmRNAは、ノーザンブロットによって、種々のヒト器官および組織において検出された。例えば、hsarp2mRNAの発現は、プローブ化されるほとんどのヒト組織において;指数関数的に増殖するヒト乳房非形質転換細胞において、そして指数関数的に増殖するヒト正常二倍体線維芽細胞において検出された。
【0029】
用語「ポリヌクレオチド」は、任意の長さの重合体形態のヌクレオチドを意味するために用いられ、このヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはそれらのアナログを含む。本明細書中で使用される用語「ポリヌクレオチド」および「ヌクレオチド」は、交換可能に使用される。ポリヌクレオチドは任意の三次構造を有し得、そして任意機能(既知または未知)をなし得る。用語「ポリヌクレオチド」は、二本鎖、一本鎖、および三重ヘリックス分子を含む。他に特定または要求されない限り、本明細書中に記載される本発明の任意の実施態様では、ポリヌクレオチドは、二本鎖型、および二本鎖型を形成することが知られているかまたはそのように予測される、2つの相補的な一本鎖型の各々の両方を含む。
【0030】
以下はポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子フラグメント、エキソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意配列の単離DNA、任意配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログのような、修飾ヌクレオチドを含み得る。プリンおよびピリミジンアナログは当該分野で公知であり、アジリジニルシトシン、4-アセチルシトシン、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチル-アミノメチルウラシル、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルプソイドウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、プソイドウラシル、5-ペンチニルウラシル、および2,6-ジアミノプリンをを含むが、これらに限定されない。デオキシリボ核酸でのチミジンに対する置換基としてのウラシルの使用もまた、ピリミジンの類似形態と考えられる。
【0031】
存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーのアセンブリの前後に与えられ得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって割り込まれ得る。ポリヌクレオチドはさらに、標識成分との結合によるような、重合化後に修飾され得る。この定義に含まれる他の修飾型は、例えば、「キャップ」、1つ以上の天然に存在するヌクレオチドのアナログでの置換、ヌクレオチド間修飾(例えば、非電荷連結を有するもの(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)、および電荷連結を有するもの(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど))、ペンダント部分(例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど))を含むもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラーレンなど)を有するもの、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を有するもの、アルキル化剤を有するもの、修飾連結(例えば、αアノマー核酸など)を有するもの、ならびにポリヌクレオチド(単数または複数)の非修飾型である。
【0032】
さらに、糖に通常存在する任意のヒドロキシル基は、ホスホネート基、ホスフェート基と置換され、標準的な保護基によって保護されるか、またはさらなるヌクレオチドとのさらなる連結のために活性化され得るか、または固相支持体に結合され得る。5'または3'末端のヒドロキシル基は、リン酸化され得るか、または、アミンもしくは1〜20の炭素原子の有機キャッピング基と置換され得る。その他のヒドロキシル基もまた、標準的な保護基に誘導され得る。
【0033】
ポリヌクレオチドはまた、一般に当該分野において公知であり、以下を含むがそれらに限定されないリボースまたはデオキシリボース糖のアナログ型を含み得る:2'-O-メチル-、2'-0-アリル、2'-フルオロ-、または2'-アジド-リボース、炭素環式糖アナログ、α-アノマー糖、エピマー糖(例えば、アラビノース、キシロースまたはリキソース)、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプトロース(sedoheptulose)、非環状アナログ、およびメチルリボシドのような非塩基性ヌクレオシドアナログ。
【0034】
上記のように、1つ以上のホスホジエステル連結は、代替の連結基で置換され得る。これらの代替の連結基は、ホスフェートが、P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)0R'、COまたはCH2(「ホルムアセタール」)によって置換される実施態様(ここで、各RまたはR'は、独立してH、または置換または非置換アルキル(1-20C)であり、必要に応じて、エーテル(-O-)結合、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはアラルジルを有する)を含むが、これらに限定されない。ポリヌクレオチド中の全連結が同じである必要はない。
【0035】
本発明の方法の適用に従来からの糖および塩基が使用されるが、ポリアミド骨格のような代替の骨格構造であり得るように、糖、プリン、およびピリミジンのアナログ型の置換が、最終生成物を設計する際に好都合であり得る。
【0036】
「アンチセンス」ポリヌクレオチドは、機能性RNAまたはDNAの全体または部分に相補的な配列である。例えば、アンチセンスRNAは、遺伝子からコピーされたmRNAの配列に相補的である。
【0037】
ポリヌクレオチド(すなわち、sarpをコードするポリヌクレオチド)の「フラグメント」(または「領域」と呼ばれる)は、新規遺伝子の少なくとも9連続ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドである。好ましいフラグメントは、少なくとも5連続アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも10連続アミノ酸残基、さらにより好ましくは少なくとも15連続アミノ酸残基をコードする領域を含む。
【0038】
本明細書中で使用される用語「組み換え」ポリヌクレオチドは、ゲノム、cDNA、起源が半合成または合成のポリヌクレオチドを意図し、この起源は、起源または操作の理由によって、天然で会合されているポリヌクレオチドの全体または部分と会合しないか;天然で連結されるものと異なるポリヌクレオチドに連結されているか;または天然に存在しない。
【0039】
用語「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書中で交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーのことをいう。ポリマーは直鎖状または分枝であり得、それは修飾アミノ酸残基を含有し得、そして、非アミノ酸残基によって割り込まれ得る。この用語はまた、天然または介在;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾(例えば、標識成分との複合体化)によって修飾されたアミノ酸ポリマーを含む。例えば、アミノ酸残基の1つ以上のアナログ(例えば、非天然アミノ酸残基など)ならびに当該分野で公知のその他の修飾を含有するポリペプチドもまた、この定義内に含まれる。
【0040】
SARPのポリペプチド「フラグメント」(または「領域」と呼ばれる)は、SARP配列の少なくとも5連続アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも8連続アミノ酸残基、そしてさらにより好ましくは少なくとも約10連続アミノ酸残基を有する、SARP配列のアミノ酸残基を有するポリペプチドである。本発明の目的のために、SARPフラグメントは、任意の以下の機能によって同定および特徴づけられ得る:(a)SARPとの相同性;(b)アポトーシスを経る細胞の割合を変化させる能力;または(C)細胞死への影響。SARPフラグメントは、上記に定義された機能のいずれか、1つより多く、または全てを有し得る。これらの(a)から(C)の機能を決定する方法が、以下に記載される。
【0041】
「融合ポリペプチド」は、天然に存在するものと配列が異なる位置にある領域を有するポリペプドである。領域は、通常別のタンパク質に存在し得、融合ポリペプチド中に共にもたらされるか;または、それらは通常同じタンパク質に存在し得るが、融合ポリペプチド中で新たな配列に配置される。
【0042】
SARPポリペプチドまたはsarpポリヌクレオチドの「機能的等価フラグメント」は、SARPポリペプチドまたはsarpポリヌクレオチドの少なくとも1つの特性および/または機能をなす。例えば、配列は、その配列の機能性を変化しないように、当該分野で周知であるさらなるヌクレオチドまたはペプチドを付加することによって変化され得る。その他の実施例は、配列の欠失および/または置換である。あるいは、配列は、ヌクレオチドもしくはアミノ酸残基の置換、または付加、欠失、または置換の組み合わせによって変化され得る。当業者に明白であるように、ポリペプチド配列の機能性は、アポトーシス経路に対する抗原性および影響のような、配列の特徴および/または活性を含む。ポリヌクレオチド配列の機能性が、意図される使用に一部依存し、そしてポリヌクレオチドフラグメントに保存される任意の機能性がこの定義を満たすこともまた明白である。
【0043】
例えば、sarpポリヌクレオチドの「機能的等価フラグメント」は、所望のポリヌクレオチドがプローブとして使用され得るように、ハイブリダイズする能力が保存されているものであり得る。あるいは、sarpポリヌクレオチドの「機能的等価フラグメント」は、ポリヌクレオチドが、インタクトなSARPに関連する機能、好ましくはアポトーシス変調に関連する機能を有する、SARPフラグメントをコードすることを意味し得る。新規ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの機能的等価フラグメントは、SARPポリペプチドまたはポリヌクレオチドに比較した場合、同じか、増進されたか、または減退された機能を有し得る。SARPのその他の機能は、上記に掲載されている。機能的等価フラグメントは、少なくとも9ヌクレオチドまたは少なくとも5アミノ酸、好ましくは少なくとも15ヌクレオチドまたは少なくとも10アミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも25ヌクレオチドまたは少なくとも20アミノ酸を有する。
【0044】
DNA/DNAおよびDNA/RNAの両方のハイブリダイゼーションについての「ストリンジェント条件」は、Sambrookら(1989)MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL 第二編、Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている通りである。関連する条件の例は(ストリンジェンシーを増大する順に)、25℃、37℃、50℃、および68℃のインキュベーション温度;10×SSC、6×SSC、1×SSCの緩衝液濃度(ここで、SSCは0.15MNaClおよび15 mMクエン酸緩衝液である)、およびその他の緩衝液系を使用するそれらの等価物;0%、25%、50%、および75%のホルムアミド濃度;5分〜24時間のインキュベーション時間;1回、2回、またはそれより多い洗浄工程;1分、2分、または15分の洗浄インキュベーション時間;および、6×SSC、1×SSC、0.1×SSC洗浄溶液、または脱イオン水。
【0045】
ポリヌクレオチドの「安定な二重鎖」または生物化学反応で任意の2つ以上の成分間で形成された「安定な複合体」は、二重鎖または複合体の形成と、その後の検出(任意必要に応じた洗浄工程または中間に実施され得るその他の操作を含む)との間に持続するに十分に長く存続する二重鎖または複合体のことである。
【0046】
用語「抗体」は、免疫グロブリンタンパク質、または特定の抗原を認識する抗原結合フラグメントをいう。好ましくは、本発明の抗体(αSARPと呼ばれる)は、タンパク質のFrizzledファミリーのメンバーに特異的ではない。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。抗体の産生および特徴づけは当該分野内である。さらに用語「抗体」は、化学結合によって、または賦形剤もしくはアジュバントとの混合によって、別の成分と結合されたタンパク質を含む。用語「抗原結合フラグメント」は、特異様式でSARPに結合する、任意ペプチドを含む。代表的には、これらの誘導体は、Fab、F(ab')2、Fab'、scfv(モノマー型およびポリマー型の両方)、および単離したH鎖およびL鎖のような、免疫グロブリンフラグメントを含む。用語「αSARP」は、抗原結合フラグメントを含む。抗原結合フラグメントは、活性および/または親和性を変化し得るが、インタクトな免疫グロブリンの特異性を保持する。
【0047】
抗原結合フラグメント(本明細書中ではまた「誘導体」と呼ばれる)は、代表的には遺伝子工学によって生成されるが、それらは、代替的にその他の方法および方法の組み合わせによって得られ得る。この分類は、操作されたペプチドフラグメントおよび融合ペプチドを含むが、これらに限定されない。好ましい化合物は、CRDのポリペプチドフラグメント、サイトカインエフェクター成分を含有する抗体融合タンパク質、アジュバントまたは薬剤を含有する抗体融合タンパク質、および一本鎖V領域タンパク質を含む。さらに、本発明の抗原結合フラグメントは、診断および画像試薬として使用され得る。
【0048】
scfvは、組み換えまたは合成的に生成され得る。scfvの合成生成については、自動合成装置が使用され得る。scfvの組み換え産生に対しては、scfvをコードするポリヌクレオチドを含有する適切なプラスミドが、適切な宿主細胞(酵母、植物、昆虫、もしくは哺乳動物細胞のような真核生物宿主細胞、またはEscherichiacoliのような原核生物宿主細胞のいずれか)へ導入され得、そして発現されたタンパク質は、標準的なタンパク質精製技術によって、単離され得る。
【0049】
scfvの産生に特に有用なシステムは、E. coliのプラスミドpET-22b(+)(Novagen,Madison, WI)である。pET-22b(+)は、6連続ヒスチジン残基からなるニッケルイオン結合ドメインを含み、それは、発現されたタンパク質が、適切な親和性樹脂上で精製されることを可能にする。適切なベクターのもう1つの例は、上記のpcDNA3(Invitrogen,San Diego, CA)である。
【0050】
発現条件は、scfvが最適な三次構造を想定することを確実にするべきである。使用されるプラスミド(特にプロモーターの活性)および宿主細胞に依存して、産生速度を調整することが必要であり得る。例えば、より弱いプロモーターの使用、またはより低温での発現が、原核生物系で、適切に折り畳まれたscfvの産生を最適にするために必要であり得るか、あるいは、真核細胞でscfvを発現するのに好ましくあり得る。
【0051】
本発明はまた、化学的機能部分に結合された抗体を含む。典型的に、その部分は、検出シグナルを産生し得る標識である。これらの複合体化抗体は、例えば、検出および画像システムで有用である。このような標識は当該分野で公知であり、放射性同位体、酵素、蛍光化合物、化学発光化合物、生物発光化合物、基質コファクター、およびインヒビターを含むが、これらに限定されない。このような標識の使用を教示する特許の例については、米国特許第3,817,837号、第3,850,752号、第3,939,350号、第3,996,345号、第4,277,437号、第4,275,149号、および第4,366,241号を参照のこと。その部分は、抗体に共有的に連結され得るか、組み換え的に連結され得るか、または、二次抗体、プロテインA、またはビオチン-アビジン複合体のような、二次試薬を介して抗体に結合され得る。
【0052】
抗体の産生および単離の方法は当該分野で周知である。例えば、HarlowおよびLane(1988)Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New Yorkを参照のこと。精製方法は、塩沈降法(例えば、硫酸アンモニウムによる)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、中性pHで展開され、そしてイオン強度を増加させる段階勾配で溶出される陽イオンまたは陰イオン交換カラム)、ゲル濾過クロマトグラフィー(ゲル濾過HPLCを含む)、およびプロテインA、プロテインG、ヒドロキシアパタイト、および抗免疫グロブリンのような、親和性樹脂上でのクロマトグラフィーを含む。抗体はまた、SARPタンパク質(例えば精製Ab1またはAb3の形態)を有する親和性カラムで精製され得る。好ましくは、抗体は、プロテインA-CL-SepharoseTM4Bクロマトグラフィー、その後のDEAE-SepharoseTM4Bイオン交換カラムでのクロマトグラフィーを用いて、精製され得る。
【0053】
「細胞株」または「細胞培養物」は、インビトロにおいて増殖または維持された高等真核細胞を示す。細胞の子孫が、親細胞と(形態学的、遺伝子型的、または表現型的に)完全には同じでないかもしれないことは、理解される。
【0054】
「宿主細胞」は、ベクター(単数または複数)、または核酸分子および/もしくはタンパク質の取り込みのためのレシピエントであり得るか、またはレシピエントであった、個々の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一宿主細胞の子孫を含み、子孫は、天然、突然、または意図的変異に原因して、起源親細胞と(形態学的、または全DNA相補鎖のゲノム的に)完全に同じである必要はあり得ない。宿主細胞は、インビボにおいて、本発明のポリヌクレオチドによってトランスフェクトされた細胞を含む。
【0055】
「ベクター」は、挿入される核酸分子を宿主細胞へ、および/または宿主細胞間に移入する、自己複製核酸分子である。その用語は、主に核酸分子の細胞への挿入のために機能するベクター、主に核酸の複製のために機能するベクターの複製、ならびにDNAもしくはRNAの転写および/または翻訳のために機能する発現ベクターを含む。1つ以上の上記機能を提供するベクターもまた、含まれる。適切なクローニングベクターは当該分野で公知であり、例えば、細菌、哺乳動物、酵母、および昆虫発現系である。特異ベクターおよび適切な宿主細胞は、例えば、GalesaおよびRamjiVectors,,John WileyおよびSons(1994)に考察されている。本発明での使用に適した原核宿主細胞の例は、E. coliおよびBacillussubtilisを含むが、これらに限定されない。真核宿主細胞の例は、トリ、昆虫、植物、ならびにCO57、HeLaおよびCHO細胞のような、動物細胞を含むがこれらに限定されない。
【0056】
「発現ベクター」は、適切な宿主細胞へ導入される場合、ポリペプチドへ転写および翻訳され得るポリヌクレオチドとして定義される。「発現系」は、通常、所望の発現産物を与えるように機能し得る発現ベクターを有する、適切な宿主細胞を意味する。
【0057】
「シグナル配列」は、細胞膜(例えば小胞体)へ、および細胞膜を通して、新たに合成された分泌タンパク質または膜タンパク質を指向する短いアミノ酸配列である。シグナル配列は、典型的にポリペプチドのN末端部分に存在し、ポリペプチドが膜を通過した後に、切断される。
【0058】
「遺伝子産物」は、mRNA、tRNA、およびタンパク質を含む、遺伝子の転写または翻訳の任意産物(単数または複数)を含むが、これらに限定されない。
【0059】
「異種の」は、比較されている残りの物と遺伝子型が異なる物に由来する(すなわち、それから得られた)ことを意味する。例えば、ポリヌクレオチドは、遺伝子工学技術によって、異なる供給源に由来するプラスミドまたはベクターへ導入され得、従って、異種ポリヌクレオチドになる。天然では連結されないコード配列に連結されているプロモーターは、異種プロモーターである。
【0060】
異種ポリヌクレオチドは、治療目的のために目的の配列を含有し得、そして必要に応じて発現カセット形態であり得る。本明細書中で使用される場合、ベクターは、最終的な標的細胞または被験体で複製し得る必要はない。この用語は、ポリヌクレオチドの複製のためのクローニングベクター、および配列をコードするポリヌクレオチドの翻訳のための発現ベクターを含む。さらに、ウイルス粒子にキャプシド化されたかまたはエンペロープに包まれたポリヌクレオチドを含む、ウイルスベクターが含まれる。
【0061】
適切なクローニングベクターは、標準的な技術に従って構築され得るか、または当該分野で入手可能な多数のクローニングベクターから選択され得る。選択されたクローニングベクターは、使用が意図された宿主細胞に従って変化し得るが、有用なクローニングベクターは、一般には自己複製能力を有するか、特定の制限エンドヌクレアーゼに対する唯一の標的を有し得るか、またはベクターを含むクローンの選択で使用される得るマーカーに対する遺伝子を有し得る。適切な例は、例えば、pUC18、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4のようなプラスミドおよび細菌ウイルス、ファージDNA、ならびにpSA3およびpAT28のようなシャトルベクターを含む。これらおよび多くの他のクローニングベクターが、BioRad、Stratagene、およびInvitorogenのような、納入業者から入手可能である。
【0062】
発現ベクターは、一般には、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、複製可能なポリヌクレオチド構築物である。ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、プロモーター、エンハンサー、およびターミネーターのような、適切な転写制御エレメントに作動可能に連結される。発現(すなわち、翻訳)については、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、および終止コドンのような、1つ以上の翻訳制御エレメントもまたは通常要求される。これらの(転写および翻訳の)制御エレメントは、sarp遺伝子に由来し得るか、それらは異種(すなわち、他の遺伝子または他の生物由来)であり得る。シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列もまた、ポリペプチドが、細胞膜を通過するかもしくは細胞膜にとどまるか、または細胞から分泌されることを可能にするように含有され得る。
【0063】
酵母、トリ、および哺乳動物細胞を含む、真核生物細胞での発現に適した多くの発現ベクターは、当該分野で公知である。発現ベクターの1つの例は、転写が、サイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーター/エンハンサーによって駆動される、pcDNA3(Invitrogen, San Diego, CA)である。このベクターはまた、目的のポリヌクレオチドの挿入のための複数の制限酵素に対する認識部位を含有する。別の発現ベクター(系)の例は、バキュロウイルス/昆虫系である。
【0064】
本発明のベクターは、ポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み得る。それはまた、IL-2、IL-4、およびGM-CSFを含む(しかし、これらに限定されない)リンホカインのような、所望の結果を増進、促進、または調整する他のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含有し得る。好ましいリンホカインは、GM-CSFである。好ましいGM-CSF構築物は、3'非翻訳領域からのAUリッチエレメント、およびヘアピンループを形成し得る5'非翻訳領域中の配列が欠失されたものである。
【0065】
目的のポリヌクレオチドを含有するベクターは、任意の多くの適切な手段(エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、またはその他の物質を使用するトランスフェクション;マイクロプロジェクタイルボンバーメント;リポフェクション;および感染(ここで、ベクターは、下記で考察されている、ワクシニアウイルスのような感染因子である)を含む)によって宿主細胞中に導入され得る。ベクターまたはポリヌクレオチドを導入する手段の選択は、しばしば、宿主細胞の特性に依存する。一旦適切な宿主細胞へ導入されると、ポリペプチドの発現は、当該分野で公知の任意のアッセイを用いて、決定され得る。例えば、ポリペプチドの存在は、培養上清(ポリペプチドが分泌される場合)または細胞溶解物のRIAまたはELISAによって検出され得る。
【0066】
「単離された」または「精製された」ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体は、天然で会合している物質を実質的に含まないものである。実質的に含まない、によって、天然で会合している物質の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、そしてさらにより好ましくは少なくとも90%を含まないことを意味する。
【0067】
生物学的「試料」は、個体から得られた種々の試料型を含み、代表的に診断手順またはアッセイで使用される。この定義は、血液および生物学的起源の他の液体試料、生検検体もしくは組織培養物、またはそれらに由来する細胞およびそれらの子孫のような、固体組織試料を含む。その定義はまた、それらの入手後に、試薬による処理、可溶化、または特定の成分(例えば、タンパク質またはポリヌクレオチド)についての富化によるような、任意方法によって操作された試料を含む。この用語は、任意種から得られた種々の臨床試料を含み、培養細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生物学的液体、および組織試料もまた含むが、これらに限定されない。
【0068】
本明細書中で使用される「処置」は、有益または所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益または所望の臨床結果は、症状の軽減、疾患の程度の減退、疾患の安定(すなわち、悪化しない)状態、疾患拡散(すなわち、転移)の予防、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または緩和、および検出可能または検出不可能のいずれであろうと寛解(部分的または全身的のいずれであろうと)を含むが、これらに限定されない。「処置」はまた、処置なしでの予測生存性に比較して生存性を延長することを意味する。
【0069】
「アポトーシス関連の」は、細胞死へ導くアポトーシス経路が関連する任意の状態をいう。それらの状態は、正常または病原性生物学的事象であり得、ホルモン、血清増殖因子欠乏、化学療法剤、電離放射線、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染を含むがこれらに限定されない、広範な種々のシグナルによって、開始され得る。
【0070】
梗塞形成は、塞栓、血栓、または壊死の肉眼的領域を生じる圧力に起因する、動脈または静脈血液供給の突然の不全によって生じ;心臓、脳、脾臓、腎臓、腸、肺、および精巣が影響されるようである。アポトーシスは、梗塞周辺領域への血液の再潅流の際に梗塞周辺組織に生じ;従って、内因的産生における生物学的修飾因子に誘導される変化によるか、またはインビボトランスフェクションによる調整が、心臓発作および発作に原因する損傷の重篤度を軽減するのに有効であり得た。
【0071】
化学療法剤、電離放射線、およびHIV感染もまた、アポトーシス経路を開始する。最近、種々の栄養補助食品が、化学療法、照射、AIDSを伴う胃腸病を改善する試みに使用されている。これらの栄養補助物は、一般に炭水化物、脂肪、および植物タンパク質加水分解産物を含有する。例えば、TomeiおよびCopeらのApoptosis:TheMolecular Basis of Cell Death (1991) Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照のこと。PCT公開第WO95/15173号は、抗アポトーシス効果を生じ得る、植物由来の脱脂抽出物を記載する。従って、アポトーシス関連状態の分子基礎に影響することは、多くの臨床的立場での治療的な実用性を有する。
【0072】
「アンチセンス治療」は、治療的ポリヌクレオチドを用いて遺伝子発現を減弱する方法である。治療的ポリヌクレオチドは、標的遺伝子自体、またはより代表的にはそれから転写された異核またはメッセンジャーRNAのいずれかと安定なハイブリッドを形成し得る配列または相補的配列を含む。代表的には、治療的ポリヌクレオチドは、適切なプロモーターと作動可能に連結される。アンチセンスポリヌクレオチドは生理的条件下で安定なハイブリッドが形成される限り、有効であるために標的ポリヌクレオチドに正確に相補性である必要はない。アンチセンスポリヌクレオチドの長さに依存して、中程度の数の変異、挿入、または欠失が存在し得る。アンチセンスポリヌクレオチドは、完全な標的遺伝子コード配列とハイブリダイズする必要性はないが、より長いハイブリダイズ領域が、短い領域より好ましい。
【0073】
「有効量」は、有利かまたは所望される臨床結果に影響するに充分な量である。有効量は、1回以上の用量において投与され得る。処置の用語において、「有効量」のポリヌクレオチド、および/またはポリペプチドは、アポトーシス関連疾患状態の進行を寛解させるか、回復させるか、安定させるか、逆転させるか、緩序させるか、もしくは遅延させるか、またはさもなくば疾患の病理学的結果を減少するに充分な量である。有効性のこれらの指標の検出または測定は、以下に考察される。有効量は、一般的に、個別的に基づいて医師によって決定され、そして当業者の範囲内である。適切な投薬量が決定される場合、いくつかの要因が代表的に考慮される。これらの要因は、患者の年齢、性別、および体重、処置される条件、状態の重篤度、ならびに投与される抗体の形態を含む。例えば、scfvの濃度は、治療的有効であるために天然の抗体の濃度と同じくらい高い必要はない。
【0074】
「個体」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物は、家畜および競技用動物、ならびにペットを含む。
【0075】
従って、本発明は、配列番号2、4、6、および7によって例示されるようなSARPポリペプチド(好ましくは保存的である任意のアミノ酸置換を有する)か、もしくはその対立遺伝子変異体か、またはヒトではない種由来のSARPのホモログとと実質的に同一(すなわち、少なくとも90%の配列同一性を有する)なポリペプチドをコードする(またはそれらに相補的な)単離されたヌクレオチドを含む。それゆえ、本発明は、例えばSARPをコードする一方への鎖もしくはcDNAの両鎖またはそれらの対立遺伝子変異体;ベクター内、自律複製プラスミドもしくはウイルス内、または原核生物細胞もしくは真核生物細胞のゲノムDNA内へ取り込まれる組換えDNA;あるいは、ゲノムDNAフラグメント(例えば、ヒトまたは他のゲノムDNAのPCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理によって産生される)を含む。それはまた、さらなるポリペプチドをコードするハイブリッド遺伝子の部分である組換えDNAを含む。
【0076】
単離されたDNAは、細胞のトランスフェクションまたは感染によって導入され得るベクター(例えば、ウイルス、ファージ、またはプラスミド)内へ取り込まれ得る。適切なベクターは、当該分野で公知の任意のベクターを含み、それには細菌、哺乳動物、酵母、および昆虫細胞の発現系における使用を含むが、それらに限定されない。特異的なベクターは当該分野で公知であり、そして本明細書中で詳細に記載する必要はない。ベクターは、細胞がポリペプチドを発現し得るベクターでトランスフェクトされる場合、1つ以上の発現制御配列を含み得る。ベクターはまた、sarpの発現のための誘導可能なプロモーターを提供し得る。誘導可能なプロモーターは、遺伝子の構成的発現を可能にしないが、むしろ特定の環境下でのみ発現を可能にするプロモーターである。そのようなプロモーターは、ベクターに対するリガンド、金属イオン、他の化学物質または温度の変化を含む細胞への曝露を含むがそれに限定されないに種々の刺激物よって誘導され得る。
【0077】
これらのプロモーターはまた細胞特異的、すなわち、特定の細胞型においてのみ、そしてしばしば特定の期間の間のみ誘導可能であり得る。このプロモーターはまた、さらに細胞周期特異的であり得、すなわち、細胞周期内の特定の段階の間でのみ誘導されるかまたは誘導可能であり得る。プロモーターは、細胞型に特異的および細胞周期特異的の両方であり得る。当該分野で公知の任意の誘導可能なプロモーターが、本発明における使用に適している。
【0078】
所望の配列を含むポリヌクレオチドは、適切なベクター内に挿入され得、次いで、ベクターは複製および増幅のために適切な宿主細胞に導入され得る。ポリヌクレオチドは、当該分野で公知の任意の手段によって宿主細胞に導入され得る。細胞は、直接の取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、f-接合、またはエレクトロポレーションによる外来性ポリヌクレオチドを導入することによって形質転換される。一旦導入されれば、外来性ポリヌクレオチドは、宿主細胞ゲノムに組み込まれないベクター(例えば、プラスミド)として細胞中で維持され得るか、または宿主細胞ゲノム内へ組み込まれ得る。増幅されたDNAは、標準的方法によって宿主細胞から単離され得る。例えば、Sambrookら(1989)を参照のこと。RNAはまた、形質転換宿主細胞から得られ得、それはDNA依存性RNAポリメラーゼを用いることによって得られ得る。
【0079】
本発明は、特にゲノムDNAの非コード領域における欠失、置換、および付加のようなsarpDNA配列に対する改変を含む。そのような変化は、クローニングを容易にし、そして遺伝子発現を改変するために有用である。種々の置換は、コードされるアミノ酸残基を変更しないか、またはアミノ酸残基の保存的置換をもたらすかのいずれかのコード領域内で作製され得る。コードされるアミノ酸残基を換えないヌクレオチド置換は、別の系における遺伝子発現を最適化するために有用である。適切な置換はまた、当該分野で公知であり、そして、例えば、特定の発現系における好ましいコドン使用を反映させられる。
【0080】
本発明は、SARPの特性を増強するか、減少するか、または有意に影響し得ないsarpの機能的に等価の変異体および誘導体を包含する。例えば、コードされるアミノ酸配列を変化しないDNA配列における変化、ならびにアミノ酸残基の保存的置換をもたらす変化、1または2、3のアミノ酸の欠失または付加、およびアミノ酸アナログによるアミノ酸残基の置換は、その特性に有意に影響しない変化である。
【0081】
相互に保存的に置換され得るアミノ酸残基としては、以下:グリシン/アラニン;バリン/イソロイシン/ロイシン;アスパラギン/グルタミン;アスパラギン酸/グルタミン酸;セリン/トレオニン;リジン/アルギニン;およびフェニルアラニン/チロシンが挙げられるが、これらに限定されない。SARPの特性に有為に影響しない任意の保存的アミノ酸置換が、本発明によって包含される。
【0082】
本発明の実施に有用な核酸操作のための技術は、種々の参考文献(MolecularCloning: A Laboratory Manual,第2版.第1〜3巻;Sambrookら編,Cold Spring Harbor LaboratoryPress (1989)、およびCurrent Protocols in Molecular Biology, Ausubelら編, GreenePublishing and Wiley Interscience: New York(1987)そして随時更新される)を含むが限定されない)に記載されている。
【0083】
本発明の範囲内はまた、少なくとも15ヌクレオチド、好ましくは少なくとも30ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも100ヌクレオチド、および最も好ましくは少なくとも500ヌクレオチドの長さの単離されたヌクレオチドであり、それらは(a)SARPをコードするDNA、(b)その相補物、または(a)および(b)の両方を含む二本鎖DNAを含む。この単離されたDNAの(例えば、ハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプライマーとして有用な)複数のコピーは、合成的か、または組換え手段によるか、細胞のこのDNAを含むベクターでのトランスフェクションによって産生され得る。
【0084】
本発明はまた、SARPペプチドの精製された調製物、またはペプチドの少なくとも10(好ましくは少なくとも11、より好ましくは少なくとも14、および最も好ましくは少なくとも18)アミノ酸残基を含むこれらのペプチドのフラグメントを含み、ここでこのポリペプチドフラグメントは、ペプチド自体との免疫複合体を形成するこのフラグメントに対して(またはポリペプチド、および必要ならばキャリア分子の結合体に対して)惹起される抗体のようなポリペプチドのエピトープを含む。組換えDNAによってか、または生物的供給源からのいずれかで発現されたSARPの精製または単離は、当該分野で公知の任意の方法によって達成され得る。一般的に、実質的に精製されたタンパク質はまた、他の混入細胞性物質である特定のタンパク質を有さないタンパク質である。好ましくは、精製ペプチドは80%純粋より上であり、そして最も好ましくは95%純粋より上である。
【0085】
タンパク質精製の適切な方法は当該分野で公知であり、そして親和性クロマトグラフィ、免疫親和性クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、HPLC、およびFPLCを含むが、それらに限定されない。タンパク質の実質的な分解を生じない任意の精製計画は、本発明における使用に適している。
【0086】
本発明は、抗原としてSARPまたは好ましくは、Frizzledタンパク質のような他の遺伝子産物と実質的な相同性を欠くSARPの領域を包含するペプチドを用いることによって生成される適切な抗体をさらに含む。このような抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルのいずれかであり得、動物を少なくとも1つのSARPの抗原性部分を含む抗原で免疫する工程を含む標準的方法によって生成される。
【0087】
(2)第2のポリペプチドに共有的に接続された、(1)SARPまたはその抗原性フラグメント、を含むハイブリッドポリペプチドもまた、本発明の範囲内に包含される。このようなハイブリッドポリペプチドは、当業者に周知の多数の標準的技術によって作製され得、それには、共有的連結がペプチド結合である場合においての組換え法、または共有的連結がジスルフィド結合のような別の型の結合である場合においての化学的結合が含まれる。SARPまたはその抗原フラグメントの第2のポリペプチドへの連結は、第2のポリペプチド(例えば、グルタチオントランスフェラーゼ)に直接結合する親和性カラムの使用によって、ハイブリッドのタンパク質の混合物からの容易な単離のための手段を提供する。このようなハイブリッドポリペプチドはまた、SARPまたはそのフラグメントに関する免疫原性を増加する利点を有し得、その結果抗体がより容易に得られる。
【0088】
本発明の単離されたヌクレオチドおよび本発明の抗体の両方は、SARP発現の検出において有用である。特定のmRNA種を検出するための任意の方法は、本方法における使用に適切である。これはPCRにより容易に達成される。好ましくは、PCRのために選択されるプライマーは、他の遺伝子に対して実質的な相同性を欠くsarp遺伝子の領域に対応する。あるいは、ノーザンブロットは、これらの遺伝子に特異的なプローブを用いることによってsarpmRNAを検出するために利用され得る。PCRおよびノーザンブロットを利用する方法は、当該分野で公知であるので本明細書中では詳細に記載しない。
【0089】
sarpヌクレオチドを含むトランスジェニック動物もまた、本発明に包含される。トランスジェニック動物を作製する方法は、当該分野で公知であり、そして本明細書中で詳細に記載する必要はない。トランスジェニック動物を作製するために使用される方法の総説について、例えば、PCT公開番号WO93/04169を参照のこと。好ましくは、このような動物は、細胞特異的、およびさらにより好ましくはな細胞周期特異的プロモーターの制御の下で、組換えsarpを発現する。
【0090】
別の実施態様において、診断法が、タンパク質レベルまたはmRNAレベルでのいずれかの新規の遺伝子ファミリーの発現を検出するために提供される。SARPの異常なレベルが、不適切なアポトーシスに関連する疾患を有する患者の組織において見出されるようであり;それゆえ診断法は、そのようなアポトーシス欠陥に関連する生物学的条件を検出しそしてモニターするために有用である。
【0091】
検出法はまた、SARP関連治療の成功をモニターするのに有用である。本発明の単離されたsarpヌクレオチドおよび抗体の両方は、診断法として有用である。1つのそのような診断法は、所定の型の組織から試験細胞(例えば、組織切片または細胞調製物の形態において)を提供する工程;試験細胞のmRNAと、sarp遺伝子のセグメントであるアンチセンス(すなわち、センス鎖の配列に相補的)の配列を含む核酸プローブとを接触する工程を包含する。このセグメントは、少なくとも15ヌクレオチド、好ましくは少なくとも20ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも30ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも40ヌクレオチド、および最も好ましくは少なくとも100ヌクレオチドの長さである。試験細胞のmRNAに対するプローブのハイブリダイゼーションの量は、同じ型の組織由来の正常コントロール(非アポトーシス性)細胞のmRNAに対するプローブのハイブリダイゼーションの量と比較される。試験細胞における増加した量のハイブリダイゼーションは、試験細胞がアポトーシスの増加した発生率を有することの徴候である。このアッセイは、インサイチュハイブリダイゼーションまたはノーザン分析の標準的技術を用いて都合良く行われ得る。
【0092】
本発明の抗体に基づくアッセイは、上記と交換可能である。試験細胞、さもなくば試験細胞が浸っている液体由来のタンパク質は、SARPに特異的な抗体(ポリクローナル、またはモノクローナル)と接触させ、そしてそのようなタンパク質と形成される免疫複合体量は、同じ抗体と試験細胞と同じ型の組織由来の正常コントロール細胞(または正常コントロール細胞が浸っている液体)のタンパク質によって形成される量とを比較する。
【0093】
別の実施態様において、アポトーシス関連条件の処置が提供される。従って、本発明は、sarp遺伝子ファミリーでのエキソビボトランスフェクションを包含し、これはヒトを含む動物から取り出される細胞が、SARPまたはアンチセンスsarpをコードするベクターでトランスフェクトされ、そして動物内へ再導入される。適切なトランスフェクト細胞は、別々の細胞または全組織内に含まれる細胞を含む。さらに、エキソビボトランスフェクションは、最終的に導入される動物またはヒト被験体とは違った動物由来の細胞のトランスフェクションを含み得る、そのような移植は、同種移植、異種移植、および胎児組織移植を含むが、それらに限定されない。
【0094】
本発明はまた、SARPのレベルを減弱するアンチセンス治療を包含する、アンチセンスポリヌクレオチドは、生理的条件下で安定なハイブリッドが形成される限り、有効であるために標的ポリヌクレオチドに正確に相補性である必要はない。アンチセンスポリヌクレオチドの長さに依存して、中程度の数の変異、挿入、または欠失が存在し得る。好ましくは、アンチセンスポリヌクレオチドの相補敵背列は標的に対し50%同一であり、それは塩基の相違、挿入、および欠失を含む。より好ましくは、配列は約75%同一であり;なおより好ましくは、それらは約85%同一であり;さらにより好ましくは、約95%同一であり;そして最も好ましくは、それらは完全に同一である。アンチセンスポリヌクレオチドは、完全な標的遺伝子コード配列とハイブリダイズする必要性はないが、より長いハイブリダイズ領域が、短い領域より好ましい。好ましくは、ハイブリダイズ領域は、少なくとも約30塩基の長さであり;より好ましくは、それは少なくとも約60塩基であり;なおより好ましくは、それは少なくとも約100塩基であり;より好ましくは、それは少なくとも約200塩基以上である。
【0095】
本質的に任意の細胞または組織型が、この様式で調製され得る。適切な細胞には、心筋細胞およびリンパ球が挙げられるが、これらに限定されない。1つの例として、上記の方法によるHIV感染患者の処置において、白血球細胞は患者から取り出され、そして選別されてCD4+細胞を得る。次いでCD4+細胞はSARPまたはsarpに対するアンチセンスのいずれかをコードするベクターでトランスフェクトされ、そして患者に再導入される。あるいは、選別されていないリンパ球は、細胞特異的プロモーターの制御下で、少なくとも1つのsarpモジュレーターを有する組換えベクターでトランスフェクトされ得、その結果CD4+細胞のみがsarp遺伝子を発現または下方制御する。この場合、理想的なプロモーターはCD4プロモーターである;しかし、任意の適切なCD4+T細胞特異的プロモーターが使用され得る。
【0096】
本発明の実施は、他に示さなければ、当業分野の技術内の従来の分子生物学的技術を使用する。例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版(Sambrookら、1989);「OligonucleotideSynthesis」(M.J. Gaitら、1984);「Animal Cell Culture」(R.I. Freshney編、1987);「Methodsin Enzymology」(Academic Press, Inc.);「Handbook of Experimental Immunology」(D.M.Wei&C.C. Blackwell編);「Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells」(J.M.Miller&M.P. Calos編、1987);「Current Protocols in Molecular Biology」(F.M. Ausubelら編、1987);「PCR:ThePolymerase Chain Reaction」,(Mullisら編、1994);「Current Protocols in Immunology」(J.E.Coliganら編、1991)を参照のこと。
【0097】
以下の実施例は、例示のために提供されるが、本発明を限定しない。
【実施例】
【0098】
実施例1
sarpファミリーcDNAの同定およびクローニング
細胞および組織
全ての細胞株を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から得、そして供給者の推奨に従って、増殖および維持した。
【0099】
RNA単離のための組織標本を、雄20gのBALB/cマウス(Babko)から採取した。主要な心筋細胞を、SpragueDawleyラットの1日齢の心臓から、Simpson(1985)に記載される技術に従って調製した。虚血を、血清およびグルコースを含まないRPMI培地中で、37℃にて8時間、95%N2/5%CO2の雰囲気中で細胞をインキュベートすることにより行った。虚血後再灌流を、ウシ胎児血清(FBS)を10%まで、グルコースを2g/Lまで添加すること、および細胞を5%CO2中に、37℃にて16時間配置することによって刺激した。ウイルス感染のために、細胞を、37℃で2時間、無血清培地中で、適量の感染性粒子とともにインキュベートした。次いで、培地を通常の増殖培地(RPMI/10%FBS)により置換した。アデノウイルス力価を、ウイルス希釈物に曝した293細胞を使用して、限界希釈およびプラークアッセイにより決定した。80〜90%の細胞に感染し得るウイルスの数を、βガラクトシダーゼウイルス感染細胞、およびX-Gal(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルβ−D−ガラクトシド)染色により決定した。
【0100】
オリゴヌクレオチド合成
DNA配列決定およびPCRのためのプライマー、アダプターを、AppliedBiosystems model 394で合成し、ゲル精製し、そしてSep-Pak C18カートリッジ(Water Associates)を用いて脱塩した。14マー(5'CCTGTAGATCTCCC 3'、配列番号15)および18マー(5' ATTTCGGAGATCTACAGG 3'、配列番号16)オリゴヌクレオチドを、EcoRI-BgIIIアダプターとともに使用した。ディファレンシャルなディスプレイ反応のために、仮のd(N10)、およびTTTTTTTTTTTTTTTNS(配列番号17)のような係留オリゴ(T)を使用した。
【0101】
RNA単離
種々の細胞株および組織からのRNAを、ChomezinskiおよびSacchi(1987)のグアニジン-イソチオシアネート法を用いて単離した。RNA濃度を、分光光度法により測定した(Sambrookら、1989)。全RNAの20μgのサンプルを、1.2%のアガロース-ホルムアミドゲル中の電気泳動(Sambrookら、1989)に供し、そしてエチジウムブロミドを用いて可視化した。次いでRNAを、Lichtensteinら(1990)の方法に従って、10×SSC(1×SSCは、0.15MNaCl/0.015M クエン酸Na)を用いてナイロン膜(Hybond N+, Amersham)上に拡散により移動した。膜結合RNAを、製造者によって推奨されるようにUV照射により架橋した。
【0102】
ディファレンシャルディスプレイ
ディファレンシャルディスプレイ反応のために、対数的に増殖したまたは静止状態のいずれかの10T1/2細胞から単離した全RNAの2μgを使用して、第1鎖cDNAを合成した。第1鎖の合成を、製造業者のプロトコルに従って、SuperscriptReverse Transcriptase(Gibco)とともに係留オリゴ(dT)を使用してプライムした。PCR反応において、仮のd(N10)および係留オリゴ(dT)プライマーを使用した。PCR条件は、本質的に、Liang&Pardee(1992)で当初公表されたのと同じであった。PCR増幅cDNA産物を、6%DNA配列決定ゲル(Sambrookら、1989)上で分析した。ディファレンシャルにディスプレイしたバンドをゲルから切り出し、同じプライマーおよび条件で再増幅し、そしてpCRScript(Stratagene)に挿入した。
【0103】
cDNAライブラリーの構築
マウス10T1/2線維芽細胞λZAP IIを基礎にしたcDNAライブラリーを、いくつかの改変を伴って、本質的にはZapfら(1990)に記載されるように構築した。10μgの熱変性ポリ(A+)RNA、1×FirstStrand Buffer(Gibco BRL)、10mMのDTT、50ユニットのRNase Block(Stratagene)、2mMの各dATP、dCTP、dGTP、およびdTTP、10μCiの[a-32P]dCTP、400UのSuperscriptReverse Transcriptase II(Gibco)を含有する2つの40μlの反応混合物を調製した。2.5μgのオリゴ(dT)を、片方の反応混合物に添加し、そして25μlのd(N6)を他方の混合物に添加した。両方の反応混合物を、1時間42℃でインキュベートし、そして65℃で10分間加熱することにより終結した。第2鎖の合成を、第1鎖の反応物に362μLのH2O、80μLの5×の第2鎖反応緩衝液(100mMTris-HCl pH(7.5), 500mM KCl, 25mM MgCl2, 50mM DTT)、および1.5μLの15mg/mLBSAを添加することにより行った。第2鎖の合成を、12μLの10U/μL E. coli DNAポリメラーゼI(NEB)および2.5μLの1U/μLRNase H(Pharmacia)を添加することにより開始した。反応物を1時間15℃にて、そして1時間室温でインキュベートした。2つの反応物(今や二本鎖cDNA)を合わせ、そしてEcoRI-BglIIアダプター(Zapfら、1990)に連結した。低分子量のcDNA種と連結されていないアダプターとを、Bio-GelA-15mクロマトグラフィー(Bio Rad)を用いて分離した。cDNAのλZAP II/EcoRI/CIAP(Stratagene)への連結を、製造業者の指示に従って行った。パッケージングおよび力価測定を、本質的に供給者(Stratagene)の指示に従って行った。8×106の独立の組換えクローンのライブラリーを得た。
【0104】
マウス細胞由来のディファレンシャルに配置された遺伝子のクローニング
msarpl cDNAを単離するために、静止状態の10T1/2細胞ライブラリーを、PCRインサートをプローブとして使用しスクリーニングした。約2.5×105〜3.0×105の組換えファージを、E.coli XL-Blue(Stratagene)にプレートし、そして製造業者の指示に従ってニトロセルロースフィルター(Millipore)上に移した。このDNAフラグメントは、FeinbergおよびVogelstein(1984)Anal.Biochem. 137:266-267に記載される方法に従って32P標識し、そしてKeiferら(1991)に記載される方法に従ってライブラリーをスクリーニングするために使用した。
【0105】
次いで、最大クローン、msarplを選択してさらに分析した。msarplのDNA配列決定は、Sanger&Nicholsonジデオキシヌクレオチド法により、M13正方向プライマーおよび内部に特異的なプライマーを用いて行った。
【0106】
msarpl遺伝子は、295アミノ酸の推定タンパク質産物(mSARP1)をコードする単一の伸長したオープンリーディングフレーム、252bpの5'非翻訳配列、および3'末端から637bpおよび234bpに位置する2つの推定ポリアデニル化シグナルを有する、891bpの3'非翻訳配列を含む。興味深いことに、3'非翻訳領域は、mRNAの転写後分解に関与すると考えられている11の保存された3'-UTR/HMGモチーフ(Reevesら、1987)を含む。MacVectorパッケージを用いるEntrez(14.0)に対するmsarpl配列の全体的なアライメントは、Drosophilamelanogaster frizzled (fz)遺伝子産物の7回-膜貫通(seven-transmembrane)ラットタンパク質相同体をコードする遺伝子に対する相同性を明らかにした。
【0107】
msarpl遺伝子は、いかなる膜貫通領域も有さず、そしてC末端領域は塩基性アミノ酸が豊富である。msarplは、1つの疎水性ストレッチを有し、これはシグナル配列を示し得る。EntrezおよびNCBI遺伝子配列データバンクを用いる複数のアライメントは、mSARP1のN末端領域とマウスの細胞外部分(図1B)、ラットとヒト遺伝子産物との間で強い相同性を示した。mSARP1のC末端領域は、いくつかの短いポリペプチドストレッチを含み、これは膜貫通領域の間に位置するfrizzledタンパク質の部位に相同性を示す。ESTデーターベースは、msarp1に75%の同一性を示すヒト乳房cDNAライブラリーから単離された400bpDNAを明らかにした。
【0108】
ヒトcDNAのクローニング
ヒト膵臓およびヒト心臓cDNAライブラリーをClontechから得、そしてmsarp1cDNAをプローブとして用いてスクリーニングした。2つのcDNAクローン、hsarp1およびhsarp3を、膵臓ライブラリーから回収し、そしてさらなる分析に供した。1つのクローン、hsarp2を、ヒト心臓cDNAから得た。hsarp2cDNA配列(配列番号18)は、1302ヌクレオチドを含む。全長配列は、5'非翻訳領域の301ヌクレオチド、および3'非翻訳領域の62ヌクレオチドを含む。hsarp2cDNAは、1つの主要なORF(hSARP2)を含む。ATG開始部位は303位、そして終止部位は1248位に見い出される。hsarp2遺伝子は、N末端メチオニンおよびC末端リジンを有する314アミノ酸残基のポリペプチドをコードする。クローンhsarp1は、890ヌクレオチド長であり、そしてmsarp1に対して約95%の相同性を有するポリペプチドをコードする。hsarp1のATGは203位であり、N末端の23アミノ酸下流に推定シグナルペプチド認識部位が存在する。hsarp3クローンは1923ヌクレオチドであり、そしてN末端に推定28アミノ酸分泌シグナルを含む316アミノ酸のポリペプチドをコードする。
【0109】
実施例2
組織型における新規の遺伝子の発現
単離されたDNAフラグメントを、FeinbergおよびVogelstein(1982)前出に従って、ランダムプライミング反応において[32P]dCTP(3000Ci/mmol,Amersham)で標識した。ハイブリダイゼーションを、Sambrookら(1989)前出に記載される標準的なプロトコールに従って行った。膜を、室温で30分間、2×SSCで2回洗浄した。続いてさらに2回、0.1×SSC、0.1%SDSで56℃にて洗浄し、膜をKodakX-Omatフィルム上にオートラジオグラフした。
【0110】
マウス組織におけるmsarp1の発現
マウス組織におけるmsarp1発現を分析するために、種々のマウス組織のノーザンブロットを標準的なプロトコルに従って調製した。結果を図2に示す。高レベルの発現が、マウス心臓および肺で検出された。検出可能な量の転写物がまた、腎臓においても検出された。他のマウス組織は、msarp1に対応するRNAを発現しなかった。msarp1の発現は、形質転換した細胞株FL5.12;WI-L2;S49;MCF7において検出されなかった。
【0111】
ヒト組織における新規遺伝子の発現
ヒト組織におけるsarp遺伝子ファミリーの発現を決定するために、Clontechのヒトの複数組織のノーザンブロットを、上記のように、標識したhsarp1、hsarp2、およびhsarp3でプローブした。図3A(hsarp2)および3B(hsarp1およびhsarp3)は、hsarp1、hsarp2、およびhsarp3の組織特異的発現を示す。
【0112】
結果は、hsarp2が、分析したほとんど全ての組織型で発現することを示す(図3A)。ハイブリダイゼーションは、約5.0kbのサイズのRNAバンドを示した。最高レベルのhsarp1発現は、膵臓、結腸、前立腺、および小腸で見られた。図3B。より低いレベルの発現が、心臓、脳、肺、骨格筋、および前立腺で検出された。胸腺、脾臓、末梢血白血球、精巣、卵巣、胎盤、肝臓、腎臓、および全ての胎児ヒト組織は、わずかなシグナルを示したかまたは示さなかった。脳を除く全ての組織型へのハイブリダイゼーションは、2.1kbおよび1.6kb長の2つの転写物を明らかにし、おそらくは、3'-UTRにおいて同定される2つのポリアデニル化シグナルの代替的利用を反映している。
【0113】
hsarp3は、膵臓において優先的に発現され、そして2.1kbのサイズの唯一のRNA転写物を有した(図3B)。
【0114】
いくつかの形質転換および非形質転換細胞株において、hsarp2の発現を分析した。hsarp2の発現は、分析した全ての形質転換細胞株において観察されなかった。hsarp2の発現は、指数関数的に増殖するヒト哺乳動物非形質転換細胞において検出可能であり、そして細胞が静止状態のとき抑制される(図4)。hsarp2の同じ発現パターンが、正常なヒト二倍体線維芽細胞において見られた。
【0115】
実施例3
10T1/2細胞におけるmsarp1の発現
msarp1のディファレンシャル発現を測定するために、遺伝子の転写を10T1/2細胞において評価した。msarp1転写の顕著な誘導が、10T1/2細胞が、静止状態に達したときに観察された(図5を参照のこと)。静止状態まで増殖した細胞を、3つのプレートに低密度で再播種した。再播種後の異なる時点に、1枚のプレートからの細胞を、RNA単離のために抽出し、第2のプレートの細胞を、細胞周期分析のために、そして血清を除いた第3のプレートの細胞を、24時間死滅細胞の数を評価するために使用した。
【0116】
図5は、ディファレンシャルにディスプレイしたDNAフラグメントの、増殖の庫となるフェーズで10T1/2細胞から単離したRNAサンプルへのノーザンハイブリダイゼーションを示す:1〜3−それぞれ、指数関数的に増殖、90〜95%のコンフルエント、および静止状態(G0)細胞;4〜6−静止状態細胞をより低密度で再プレートし、そしてそれぞれ0、2、および6時間後に採取した。図5は、msarp1に対応するメッセージが、再播種後すぐに消失することを示す。第2のプレートの分析は、再播種した細胞が、再播種の16時間後に細胞周期に入ることを示した。血清を除いたプレート中では、死滅細胞の数に有意な変化は観察されなかった。これらの結果は、低密度再播種後の最初の2〜3時間において、静止状態の細胞は、抗アポトーシス因子(単数または複数)を、血清欠乏に耐性の代表的な静止状態細胞を維持するのに十分な量で産生することを示す。
【0117】
指数関数的に増殖する10T1/2細胞で調製された培地もまたアポトーシスを防止することが以前に示されているので、本発明者らはまた、血清不足の指数関数的に増殖する細胞におけるmsarp1発現を分析した。RNAを、血清を除去した後、異なる時間で単離した。ハイブリダイゼーションにより、血清除去後16時間までにmsarp1メッセージの有意な誘導が明らかになった。msarp1の誘導は、TPAを補充した無血清培地における細胞増殖では観察されなかった。
【0118】
実施例4
心筋細胞に対する虚血性傷害後のmsarp1の発現
本発明者らは、心筋細胞に対する虚血性傷害が、再灌流の間にアポトーシスを誘発することを以前に示した。さらに、本発明者らはまた、ヒトクローンhsarp1が、成体の心臓組織において発現され、そして胎児の心臓組織において発現されないことを示した。虚血性傷害およびアポトーシスに関連するmsarp1発現を決定するために、心筋細胞を種々のストレス性刺激に供した。これらの細胞から単離したRNAを電気泳動し、そしてハイブリダイゼーションのためのメンブレンに移した。msarp1でプローブしたブロットは、すべてのストレスを受けた細胞においてmsarp1のアップレギュレーションを示した。ヒト胎児心臓組織の場合におけるように、msarp1に対応するRNA種は、新生のラットから得たストレスを受けていない初期心筋細胞においては見出されなかった。
【0119】
実施例5
mSARP1ペプチドは細胞表面タンパク質と相互作用する
mSARP1を、第1にmsarp1のSacIフラグメントをpcDNA3中のEcoRV/Not1部位中に導入することによって、MCF7細胞中に安定にトランスフェクトした。次いで、pcDNA3構築物を、製造業者の説明書に従って、LipofectAMINE試薬(GibcoBRL)を用いて、MCF7細胞中にトランスフェクトした。
【0120】
間接的な免疫染色のために、トリプシン処理化細胞を、ウサギ抗mSARP1抗血清とともに、1:100希釈にて、4℃にて1時間インキュベートした。細胞を、1%BSAを補充したPBSで3回洗浄し、次いで20μg/mLのFITC標識化二次抗体(Boehringer Mannheim)とともにインキュベートした。細胞を、Becton-DickinsonFACSシステム上で分析し、そして得られたデータを、CellQuestTMソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて分析した。
【0121】
実施例6
hSARP2のアポトーシス効果
hsarp2のNotI/XbaIフラグメントを、哺乳動物発現ベクターpcDNA3(Invitrogen)のNotI/XbaI部位中に挿入した。MCF7乳ガン細胞を、製造業者のプロトコルに従って、LipofectAMINE試薬(GibcoBRL)を用いて、この構築物でトランスフェクトした。生細胞の割合を、Coulter Counter (NZ)を用いて、接着細胞の相対量を計数することによって評価した。図6に示されるように、hsarp2発現は、生存可能な細胞の割合における減少を引き起こす。細胞をまた、hTNF(50ng/ml)およびアドリアマイシン(1μg/ml)で処理した。得られた結果を図6に示す。
【0122】
実施例7
心筋細胞死に対するmSARP1の効果
ラット新生児初期心筋細胞由来のRNAを、細胞死を誘発する処置(例えば、グルコース、血清、または血清およびグルコース欠乏)後に単離した。虚血を、細胞を8時間の酸素および増殖因子欠乏条件、続く正常な環境での16時間のインキュベーション(「再灌流」と称する)にプレートされたことによって刺激した。図7に示されるノーザンハイブリダイゼーションは、これらの処置に耐える細胞におけるsarp1発現がアップレギュレートされることを示す。
【0123】
第2の実験において、高密度で置かれた心筋細胞を、1細胞当たり50および100の感染性粒子の多重度で、組換えウイルスで感染した。msarp1含有組換えアデノウイルスを、pAdLXR-1アデノウイルス複製欠損性ベクターのNotI/EcoRV部位中に対応するcDNASacIフラグメントをサブクローニングすることによって構築した。β-ガラクトシダーゼ遺伝子保有ウイルスを、コントロールとして使用した。感染後、細胞を、血清欠乏またはアドリアマイシンでの処理に24時間供した。細胞の生存能力を、実験条件において、コントロールサンプルのものから得られた接着細胞の割合として計算した。図8において示された結果は、血清欠乏またはアドリアマイシン処理後、生存可能なmsarp1ウイルス感染細胞の量は、β-ガラクトシダーゼ感染細胞、またはコントロールの非感染細胞についての量より有意に高いことを示す。
【0124】
実施例8
アポトーシスに対するSARP発現の効果
C3H/10T1/2細胞を、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)を補充したEagle基礎培地(BME)において、抗生物質を含まない加湿した5%CO2雰囲気下で37℃にて増殖させた。細胞を、2×103細胞/mLで置き、そして3〜4日毎に栄養を与えた。最初の播種の約2週間後、細胞は完全に静止状態であり、有糸分裂細胞が存在したとしても少数であった。血清欠乏またはシクロヘキシミド処理の効果を分析するために、指数関数的に増殖する(約75%コンフルエントな)培養物または静止培養物を、無血清培地、または10μg/mLのシクロヘキシミドを補充した培地に移した。24時間で、アポトーシス(すなわち、非接着)細胞および非アポトーシス(すなわち、接着)細胞を別々に収集し、そしてそれらの量を細胞カウンター(CoulterCounter ZM)を用いて評価した。無血清馴化培地を、BMEにおいて静止状態の10T1/2細胞の24時間インキュベーション後に得た。RNAを、ChoumezinskiおよびSacchi(1987) Anal. Biochem. 162: 156-59に記載されるグアニジン-イソチオシアネート法によって単離した。20μgの総RNAのサンプルを、1.2%アガロースホルムアルデヒドゲルにおける電気泳動に供した。Sambrookら編(1989)。
【0125】
指数関数的に増殖する10T1/2細胞は、血清欠乏に特に感受性であり、そしてアポトーシスによって死滅することが以前に示されている。Tomeiら(1993)Proc.Natl. Acad. Sci. USA 90: 853-857。図9Aは、無血清培地における24時間後、約50%の細胞が脱着し、そしてアポトーシス性であることが見出されることを示す。細胞培養物が、密度依存性静止状態に達する場合、細胞は、増殖因子および他の血清成分の退薬に耐性になる。
【0126】
同様に、静止細胞は、スタウロスポリン、メナジオン、およびシス-プラチナの細胞傷害性効果に有意により耐性である。これらは、異なる作用メカニズムを有するプロアポトーシス薬剤である。指数関数的増殖の間に、アポトーシスは、シクロヘキシミドの添加によって遅延される。対照的に、タンパク質合成の阻害は、G0に拘束された静止細胞で急速に死を誘導する(図9A)。G0のアポトーシスはまた、ピューロマイシン、ならびにアクチノマイシンDまたはα-アマニチンによるRNA合成の阻害によって誘発される。これらの結果は、静止10T1/2培養物において、細胞がアポトーシス経路のすべての成分を有するが、活性化は、静止状態特異的タンパク質(単数または複数)によって抑制されることを示す。この観点は、静止10T1/2細胞由来の馴化培地が、血清が欠乏した指数関数的に増殖する10T1/2細胞、およびシクロヘキシミド処理静止10T1/2細胞の両方のアポトーシス死を阻害し得るという観察と一致する(図9B)。これらの結果は、抗アポトーシスタンパク質(単数または複数)が静止10T1/2細胞から分泌され、そして隣接する細胞の応答に影響することを強く示唆する。
【0127】
このmRNA種に対応するcDNAをクローニングするために、10T1/2静止細胞、ヒトの心臓、および膵臓のcDNAライブラリーを、プローブとして別々に提示されたDNAフラグメントを用いてスクリーニングした。4つの異なる組換え体が同定された。10T1/2およびヒト膵臓からスクリーニングしたcDNAライブラリーのうちの2つはオーソロガスであり、msarp1およびhsarp1と命名した。他の2つのクローンhsarp2およびhsarp3は、それぞれ、ヒトの心臓および膵臓のライブラリーから得られた。hsarp1を除いて、これらのcDNAクローンは、いくつかの共通な構造特性を共有する全長タンパク質を推定する単一の伸長したオープンリーディングフレームを有する。N末端から開始し、疎水性の推定シグナルペプチドに、成熟タンパク質配列(16の不変なシステインを有する270〜300のアミノ酸長)が続く。これらのうち、10のシステインは、frizzled様タンパク質の細胞外システイン豊富ドメイン(「CRD」)に25〜30%同一であるN末端の110〜120アミノ酸のセグメントに位置する。hsarp群のどれも、frizzled様タンパク質の特徴である膜貫通領域を含まない。Wangら(1996)J. Biol. Chem. 271: 4468-4476。hSARP1の部分的ポリペプチド配列決定は、mSARP1と約95%の同一性を示した。
【0128】
MCF7乳腺ガン細胞株を、アポトーシスのプロセスにおけるSARPタンパク質の関与を研究するためのモデルとして選択した。異なる薬剤によって誘導されたこれらの細胞のプログラムされた細胞死は、十分に特徴付けられている。Zyedら(1994)Cancer Res. 54: 825-831。この細胞型は、sarp1もsarp2も発現しない。MCF7細胞を、全長のmsarp1またはhsarp2を保有するpcDNA3哺乳動物発現ベクターで安定にトランスフェクトした。msarp1およびhsarp2を発現するトランスフェクタントをノーザンハイブリダイゼーションによって選択した。トランスフェクトしたMCF7細胞の増殖率および細胞周期は、親細胞と有意には異ならなかった;しかし、図10(A)に示される結果は、mSARP1およびhSARP2の発現が、細胞傷害性刺激に対する細胞感受性への逆の効果を有したことを実証する。mSARP1の発現はより高い耐性を生じ、hSARP2の発現は、細胞をTNFおよびセラミド(種々の薬剤によって引き起こされるアポトーシス経路における第2のメッサンジャー)によって誘導されるアポトーシスに感作した。HannunおよびObeid(1995) T. Biochem. Sci. 20: 73-7; ならびにKolesnickおよびFuks (1995) J. Exp. Med. 181:1949-52。
【0129】
SARPがシグナル配列を有するが膜貫通ドメインを有さないという事実に起因して、それらは分泌したタンパク質であると考えられた。この理論は以下のように試験した。ポリクローナル抗mSARP1抗体を、GST-mSARP1組換えタンパク質に対して惹起し、そしてMBP-mSARP1アフィニティーカラムを用いてアフィニティー精製した。GST-mSARP1およびMBT-mSARP1融合タンパク質の細菌発現を、それぞれpGEX-5X-2(Pharmacia)およびpMAL (NEB)ベクターを用いて実施した。抗hSARP2抗体について、タンパク質の非Frizzled様C末端ドメイン(167〜185aa)(配列番号19)由来のポリペプチドを免疫原として用いた。得られるアフィニティー精製抗mSARP1または抗hSARP2抗体を用いて、分泌したタンパク質を、馴化培地において、形質転換MCF7細胞および非形質転換静止10T1/2の両方から検出した(図10(c))。特に、mSARP抗体はhSARP2と相互作用しない。
【0130】
記載する実験は、細胞傷害性シグナルに対する細胞アポトーシス応答を調整し得る新規な遺伝子ファミリーを同定する。frizzledタンパク質(7つの膜貫通ドメインを有する細胞膜レセプターのクラス)のSARP CRDと類似の領域との間の高程度の配列類似性に注意することが重要である。Drosophilamelanogasterにおいて、frizzledタンパク質は、剛毛および毛の方向の調節に関与する。Alder (1992) Cell 69:1073-1087。最近、Dfz2(frizzledタンパク質ファミリーメンバー)の、Winglessタンパク質についてのレセプターとして機能する能力が報告された。Bhanotら(1996)Nature 382: 225-230。Winglessは、その産物が細胞-細胞および細胞-細胞外マトリクス相互作用に関与するWnt遺伝子ファミリーのメンバーである。NusseおよびVarmus(1992) Cell 69: 1073-1087。分泌されたタンパク質SARPは、Wnt-frizzledタンパク質相互作用の調節に関与する。この観点から、3つの遺伝子ファミリー(frizzled、Wnt、およびsarp)のすべてのメンバーの発現が組織特異的であることは興味深い。Wangら(1996);NusseおよびVarmus (1992);Gavinら(1990)Genes and Devel 4: 2319-2332;ならびにChanら(1992) J. Biol. Chem. 267: 25202-25207。アポトーシスの調節における細胞-細胞および細胞-細胞外マトリクス相互作用の役割は十分に実証されている。RouslahtiおよびReed(1994) Cell 77: 477-478; Batesら(1994) Cell. Biol. 125: 403-415; およびBoudreauら(1995)Science 267: 891-893。従って、他の機能の中でも、遺伝子の3つのファミリーのすべてが、プログラムされた細胞死の調節に関与する。
【0131】
実施例9
ヒトの正常細胞および新生物細胞におけるhsarp発現の比較
この実施例において、ヒトの正常組織および新生物組織を、hsarp遺伝子のそれらの発現について評価した。正常な前立腺上皮組織および新生物前立腺上皮組織を、hsarp1発現について評価し、そして正常哺乳動物組織および新生物哺乳動物組織をhsarp2発現について評価した。
【0132】
実験を以下のように実施した:最初に、ジゴキシゲニン(DIG)標識hsarp RNAプローブを、RNADIG標識キット(Boerhinger Mannheim GmbH, Concord, CA)を用いて、Nonradioactive in SituHibridization Application Manual, 第2版、1996、44頁に示されるプロトコルに従って得た。次いで、5μmのホルマリン固定化パラフィン包埋ガン組織(前立腺上皮または乳房)切片を、適切なDIG標識hsarp1またはhsarp2RNAプローブとハイブリダイズさせた。最後に、mRNAの検出を、Geniusキット(Boerhinger Mannheim GmbH, Concord, CA)を用いて、Nonradioactivein Situ Hybridization Application Manual, 第2版、1996, 127頁に示されるプロトコルに従って実施した。
【0133】
図11(前立腺上皮組織)および12(乳房組織)は結果を示す。hsarp1の発現は、正常サンプルと比較した場合10×および40×ガンサンプルにおいて誤って暗視野によって示されるように、正常組織コントロールと比較して前立腺腫瘍細胞において上昇している。hsarp2の発現は、正常組織コントロールと比較して哺乳動物腫瘍細胞では抑制されている。これらの結果は、それぞれ、hSARP1およびhSARP2の抗およびプロアポトーシス活性を支持する。この実施例は、組織におけるsarp遺伝子産物の検出がhsarp発現の調整と関連した種々の疾患(ガンを含む)を診断するために用いられ得ることを示す。さらに、hSARPは分泌タンパク質であるため、体液サンプルもまたそのような診断目的のために使用され得る。
【0134】
本実施例が、sarp遺伝子産物の検出のためのmRNAプローブを用いるインサイチュハイブリダイゼーションの使用を詳細に実証する一方で、組織および体液の両方におけるアミノ酸または核酸の存在を検出する代替方法は当該分野において周知である。さらに、当業者は、本明細書中に開示されるか、または参考として援用される配列に基づいて本発明の方法における使用のために適切なプローブを選択し得る。
【0135】
実施例10
SARPの発現は、βカテニンの細胞内レベルを改変する。
【0136】
上記実施例において、sarp遺伝子は、プロアポトーシス刺激に対する細胞応答を改変し得る分泌されるタンパク質をコードすることを示した。この実験は、Wnt-frizzledタンパク質シグナリング経路を妨害するSARPタンパク質の能力を評価する。最近、frizzledタンパク質が、Wntタンパク質ファミリーのメンバーのレセプターとして機能することが示された。Yang-Snyderら(1996)Curr Biol 6:1302-6; Bhanotら(1996) Nature 382:225-30; Orsulicら(1996) CurrentBiology 6:1363-1267; およびPerrimon (1996) Cell 86:513-516。
【0137】
Wntファミリーメンバーとそのそれぞれのfrizzledレセプターとの相互作用は、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(GSK-3)またはそのDrosophilaホモログZw-3の不活化を引き起こす。Paiら(1997)Development124:2255-66; Cookら(1996)EMBO J. 15:4526-4536; およびSiegfriedら(1994) Nature367:76-80。Wntの非存在下で、GSK-3βは、βカテニン(Armadilloは、そのDrosophilaホモログである)をリン酸化する。リン酸化されたβカテニンまたはArmadilloは、非リン酸化形態のタンパク質よりも迅速に分解される。Perrimon(1996) Cell 86: 513-516; Siegfriedら (1994) Nature 367: 76-80; Rubinfeldら(1996)Science 272:1023-6; およびYostら(1996) Genes and Development 10:1443-1454。結果として、Wntシグナリングは、βカテニンまたはArmadilloの細胞内濃度の変化を引き起こし、そしてこのパラメーターは、Wnt-frizzledタンパク質相互作用およびシグナル伝達を記録する(register)ために使用されてきた。Bhanotら(1996)Nature 382:225-30。SARPがfrizzledタンパク質のCRDに相同なドメインを有する可溶性タンパク質であるので、それらがWnt-frizzledタンパク質相互作用を妨害することによって機能することが仮定された。
【0138】
βカテニンが、結腸ガン(Korinekら(1997) Science275:1784-7; およびMorinら(1997) Science 275:1787-90); およびメラノーマ(Rubinfeldら(1997)Science 275:1790-2)(これらは、腫瘍サプレッサーAPCに変異を有した)において蓄積することが最近示された。さらに、βカテニンの調節は、APCの腫瘍抑制効果に重要である。Morinら(1997)Science 275:1787-90。本明細書中に記載される結果は、βカテニンのレベルと、プロアポトーシスまたは抗アポトーシス活性を有するSARPファミリーメンバーの発現のレベルとの間の相関を示す。腫瘍におけるさらに高いレベルのβカテニンは、アポトーシス細胞死の減少、発ガンに特徴的な特徴に関連する。Thompson(1995)Science 267:1456-1462。
【0139】
SARPがWnt-frizzledタンパク質相互作用を妨害したか否かを決定するために、MCF7形質転換体におけるβカテニンの発現を比較した。実験を以下のように行った。細胞培養。MCF7ヒト乳房腺ガン細胞を、2×105細胞/mlでプレートし、そして10%FBSを補充した改変イーグル培地(MEM)において培養した。無血清馴化培地を、MEM中で静止状態のMCF7細胞を24時間インキュベートした後に得た。
【0140】
MCF7のトランスフェクション。MCF7細胞を、インサート、msarp1、またはhsarp2cDNAを含有しないpcDNA3哺乳動物発現ベクター(Invitrogen)で、LipofectAMINE試薬(Gibco)を製造業者のプロトコルに従って用いてトランスフェクトした。安定な形質転換体および2、3週間後に単一の細胞から生じたクローンを、1mg/mlG418で選択し、そしてそれぞれの遺伝子の発現をノーザンハイブリダイゼーションで確認した。
【0141】
免疫組織化学。4ウェルLab-Tekチャンバースライド上で増殖したパラホルムアルデヒド固定化トランスフェクトMCF7細胞を、抗βカテニンモノクローナルIgG(TransductionLaboratories)によってプローブした。染色をアビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ系(Vector Laboratories)によって、ジアミノベンジジンを基質として用いて行った。免疫前血清から単離したIgGを、ネガティブコントロールとして用いた。
【0142】
ウエスタン免疫ブロット。ウエスタン分析のために、馴化培地のサンプルをCENTRIPREP-10濃縮器(AMICON)を用いて濃縮した。細胞を、20mMtris-HCl (pH 7.8)、5mM MgCl2、250mM スクロース、1% NP40からなる抽出緩衝液中に回収した。氷上での1時間のインキュベーションの後、抽出物を遠心分離によって明澄化した。細胞抽出物のタンパク質濃度を、DCProtein Assayキット(Bio Rad)を用いて決定した。等量のタンパク質を、SDS/PAGE (Sambrook, J.ら(1989)Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第2版)(CSHL Press)に供し、ニトロセルロース膜上にトランスファーし、そして抗GST-mSARP1ポリクローナルアフィニティー精製IgG(1μg/mL)または抗βカテニンモノクローナルIgG (Transduction Laboratories)でプローブした。
【0143】
結果を図13(SARP2の発現が、βカテニンの細胞内濃度を減少させることを示すウエスタン免疫ブロットの画像)に示す。βカテニンのレベルに対するSARP1の効果は、より複雑である。ウエスタンブロットは、SARP1とコントロールとの間の有意な差異を識別するのに十分なほど感度が良くなかったが、免疫組織化学データは、SARP1形質転換体におけるβカテニンのより高い濃度を明らかにした。これらの結果から、SARPの発現が、βカテニンの細胞内レベルを改変することが明らかである。このことは、SARPがWnt-frizzledタンパク質シグナリング経路を妨害することを支持する。
【0144】
この実施例は、sarp遺伝子およびその産物が、hsarp発現の調節に関連する種々の疾患(ガンを含む)を診断するためだけでなく、細胞内レベルに対するこれらの疾患の作用を活発に妨害するため、そしてそのためにこれらの疾患を処置するためにも使用され得ることを支持する。
【0145】
さらに、本発明は、SARPとWnt-frizzledタンパク質との間の相互作用を調節する潜在的な治療剤を、SARPのWnt-frizzledシグナリング経路に対する効果を、問題の治療剤の存在下または非存在下で比較することによって、スクリーニングする方法を包含する。一般に、このような薬物スクリーニングアッセイは、(a)Wntタンパク質とSARPタンパク質とを、それらが相互作用する条件下で組み合わせて試験サンプルを形成すること;(b)上記試験サンプルを潜在的な治療剤に曝露すること;および(c)SARPタンパク質とfrizzledタンパク質との相互作用をモニターすることによって行われ得る。ここで、潜在的な治療剤は、潜在的な治療剤が添加されていないコントロール試験サンプルに比較して相互作用を改変する場合に、さらなる研究のために選択される。
【0146】
上記の発明は、いくらか詳細に、説明および例示によって、理解の明確性の目的で記載されてきたが、当業者には、特定の変更および改変が行われ得ることが明らかである。従って、説明および実施例は、添付の請求の範囲によって描写される本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0147】
[配列表]
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】


【表5】


【表6】


【表7】


【表8】


【表9】


【表10】


【表11】


【表12】


【表13】


【表14】


【表15】


【表16】


【表17】


【表18】


【表19】


【表20】


【表21】


【表22】


【表23】


【表24】


【表25】


【表26】


【表27】


【表28】


【表29】


【表30】


【表31】


【表32】


【表33】

【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1A】図1Aは、frizzledタンパク質に対するhSARP2推定アミノ酸配列のアラインメントを示す。[配列番号7〜9]。
【図1B】図1Bは、mSARP1(配列番号2)のアミノ酸配列と、種々のfrizzledタンパク質(配列番号10〜14)との比較を示す。
【図1B1】図1Bは、mSARP1(配列番号2)のアミノ酸配列と、種々のfrizzledタンパク質(配列番号10〜14)との比較を示す。
【図2】図2は、種々のマウス組織におけるmsarp1の組織特異的発現を示す、ノーザンブロットである。RNAは、別々の組織から単離され、1.2%ホルムアルデヒド-アガロースゲル上で分離され、ナイロン膜へ移され、高いストリンジェンシーでmsarp1によってプローブされた。
【図3A】図3Aは、hsarp2に対して特異的なプローブでの、複数のヒト組織のノーザンブロット分析の結果を示す。
【図3B】図3Bは、種々のヒト組織における、hsarp1およびhsarp3の組織特異的発現を示す、ノーザンブロットの比較である。複数の組織のノーザンブロットが、高いストリンジェンシー条件でプローブされた。
【図4】図4は、hsarp2に対して特異的なプローブでの、正常細胞株および形質転換細胞株のノーザンブロット分析の結果を示す。
【図5】図5は、低密度で再播種後の、10T1/2静止細胞でのmsarp1の発現を示す、ノーザンブロットである。
【図6】図6のパネル(A)から(C)は、別々の処理後の生存可能な形質転換MCF7細胞株のパーセントを示す。MCF7細胞は、発現ベクター(pcDNA3)またはhsarp2遺伝子を有するpcDNA3のいずれかによって形質転換された。パネル(A)は、血清欠乏7日後の生細胞のパーセントを示す。パネル(B)は、1μg/mlでのアドリアマイシンによる処理の24時間後の生細胞のパーセントを示す。パネル(C)は、50ng/mlでのhTNFでの処理の24時間後の生細胞のパーセントを示す。パネル(D)は、本明細書に示される実施例に記載される実験で使用される、各MCF7クローンでのhsarp2発現の相対量を示す。
【図7】図7は、msarp1 cDNAフラグメントでプローブされた、種々の処理後のラット心筋細胞から単離されたRNAのノーザンブロットである。
【図8】図8は、無血清培地またはアドリアマイシン処理に24時間供した、コントロール、β-ガラクトシダーゼ、およびmsarp1でトランスフェクトした新生仔ラットの心筋細胞の生存能力を示す、2つの棒グラフである。1細胞あたりの感染性ウイルス粒子の量を、括弧内に示す。
【図9】図9は、(A)血清欠乏によって誘導される、10T1/2 logでのシクロヘキシミドおよび静止細胞死の影響、ならびに(B)血清欠乏およびシクロヘキシミド処理に供した細胞への、静止細胞からの馴化培地の影響を示す、一連のグラフである。
【図10】図10は、(A)グラフ、(B)ノーザンブロット、および(C)ウエスタン分析を示す。グラフは、SARPの存在下での細胞生存率に対する、TNFおよびセラミドの影響を示す。ノーザンブロットは、pcDNA3によってトランスフェクトされた細胞からのコントロールRNA、msarp1またはhsarp2の組み換えベクターによってトランスフェクトされた細胞からのRNAを示す。10T1/2およびMCF7細胞からの血清を含まない馴化培地のタンパク質を、濾過によって濃縮し、そして抗GST-mSARP1抗血清(1:5000希釈)を使用したウエスタン分析に供した。
【図11】図11は、ヒト正常細胞および新生物性前立腺上皮細胞でのhsarp1発現の、10倍および40倍での比較を示す。
【図12】図12は、ヒト正常細胞および新生物性乳房上皮細胞でのhsarp2発現の、10倍および40倍での比較を示す。
【図13】図13は、pcDNA3、msarp1、およびhsarp2でトランスフェクトされたMCF7細胞での、β-カテニンのウエスタン分析による検出を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1A】
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【図1B】
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【図1B1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−50257(P2009−50257A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194206(P2008−194206)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【分割の表示】特願平10−515877の分割
【原出願日】平成9年9月24日(1997.9.24)
【出願人】(500352579)タノックス インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】