説明

アミノアルキルシランの製造方法

本発明は、アミノアルキルシランの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノアルキルシランの製造方法に関する。
【0002】
アミノアルキルシランは、例えばアミノアルキル末端化ポリシロキサンの製造のための前駆物質として使用することができる。更に、定着剤としての使用も見出される。
【0003】
DE10049183C1及びUS2003/0130543A1においては、クロロアルキルシランのアミノ化により製造される、一般式(I)
【化1】

[式中、
Rは、2価のSi−C及びSi−N結合した、場合によりシアノ−又はハロゲン置換されたC3〜C15炭化水素基であり、該基において、1つ以上の互いに隣接していないメチレン単位が基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、又は−OCOO−、−S−、又は−NRx−で置換されていてよく、かつ1つ以上の互いに隣接していないメチン単位が基−N=、−N=N−、又は−P=で置換されていてよく、その際、この環のケイ素原子と窒素原子との間に少なくとも3個かつ最大で6個の原子が配置されており、
xは、水素であるか又は場合によりハロゲン置換されたC1〜C10炭化水素基であり、かつ
2は、水素原子であるか又は1価の場合によりシアノ−又はハロゲン置換されたSi−C結合したC1〜C20炭化水素基又はC1〜C20炭化水素オキシ基であり、該基において、それぞれ1つ以上の互いに隣接していないメチレン単位が基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、又は−OCOO−、−S−、又は−NRx−で置換されていてよく、かつ1つ以上の互いに隣接していないメチン単位が基−N=、−N=N−、又は−P=で置換されていてよい]の環状シラザンが言及されている。
【0004】
目下のところ、一般式(I)の化合物を加水分解すると、実質的に副生成物不含の、一般式(II)のビスアミノアルキル置換されたジシロキサンが高い収率で生ずる。
【化2】

この場合、DE10049183C1及びUS2003/0130543A1において記載された方法は、市販の比較的容易に入手できるクロロアルキルシランから経済的に高反応性アミノアルキルシランを製造することができるという特別な利点を有する。
【0005】
しかしながら、DE10049183C1及びUS2003/0130543A1において記載された方法の欠点は、クロロアルキルシラン前駆物質とアンモニアとの反応が定量的に所望の生成物をもたらすではなく、副反応により、とりわけ第2級アミノアルキルシラン(IV)
【化3】

をもたらすことである。
【0006】
しかしこれらは、目下のところ、その非常に高い沸点のために、実質的にもはや蒸留によっては、本来の主生成物の蒸留塔底物から分離することができないが、所望の第1級アミノアルキル官能基を維持するフラグメントをなおも部分的に維持する。更に、蒸留の間に常に粘性を示す蒸留塔底物から、そこに含まれる一般式(I)の目的生成物をも完全に分離することは技術的に困難である。これに応じて、同様に蒸留塔底物中の(I)の成分は残留する。次いでこの蒸留塔底物をコスト集中的に処理しなければならない。
【0007】
従って本発明の課題は、粗製シラン蒸留塔底物を後処理する方法において、そこに残留する第1級及び第2級アミノアルキル化合物を市販可能な形でこの蒸留塔底物から得ることができる方法を提供することであった。
【0008】
驚くべきことに、前記課題は本発明により解決することができた。本発明にかかる、一般式(V)及び/又は(VI)
【化4】

のアミノアルキルシランの製造方法は、
一般式(I)及び/又は(IV)
【化5】

の環状シラザンと、一般式(III)
3−OH (III)
のアルコールとを反応させ、
その式中、
Rは、2価のSi−C及びSi−N結合した、場合によりシアノ−又はハロゲン置換されたC3〜C15炭化水素基であり、該基においては、1つ以上の互いに隣接していないメチレン単位が基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、又は−OCOO−、−S−、又は−NRx−で置換されていてよく、かつ1つ以上の互いに隣接していないメチン単位が基−N=、−N=N−、又は−P=で置換されていてよく、その際、この環のケイ素原子と窒素原子との間に少なくとも3個かつ最大で6個の原子が配置されており、
xは、水素であるか又は場合によりハロゲン置換されたC1〜C10炭化水素基であり、かつ
2は、水素原子であるか又は1価の場合によりシアノ−又はハロゲン置換されたSi−C結合したC1〜C20炭化水素基又はC1〜C20炭化水素オキシ基であり、該基においては、それぞれ1つ以上の互いに隣接していないメチレン単位が基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、又は−OCOO−、−S−、又は−NRx−で置換されていてよく、かつ1つ以上の互いに隣接していないメチン単位が基−N=、−N=N−、又は−P=で置換されていてよく、かつ
3は、1価のC1〜C20炭化水素基であり、該基においては、それぞれ1つ以上の互いに隣接していないメチレン単位が基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、又は−OCOO−、−S−、又は−NRx−で置換されていてよく、かつ1つ以上の互いに隣接していないメチン単位が基−N=、−N=N−、又は−P=で置換されてよいことを特徴とする。
【0009】
本発明にかかる方法は、好ましくは、一般式(I)及び(IV)の環状シラザンを、粗製シラン蒸留の蒸留塔底物の形で使用することを特徴とする。
【0010】
特に好ましくは、US2003/0130543A1及びDE10049183C1による粗製シランの蒸留の際に生じた蒸留塔底物と一般式(III)
3−OH (III)
とを反応させる。
【0011】
上記式中、R3は上述の意味を有する。
【0012】
上述の蒸留塔底物は、一般式(I)の化合物の成分を依然として含有し、これと一般式(III)のアルコールとを反応させる。この場合、一般式(V)のアミノアルキル置換されたジアルキルアルコキシシランが生ずる。
【化6】

【0013】
上記式中、R、R2及びR3は、上述の意味を有する。
【0014】
不所望な一般式(IV)の副生物から、一般式(III)のアルコールとの反応により、同様に一般式(V)のアミノアルキル置換されたジアルキルアルコキシシラン及び更に一般式(VI)
【化7】

のビス(ジアルキルアルコキシシリル−アルキル)−アミンが生ずる。
【0015】
上記式中、R、R2及びR3は、上述の意味を有する。
【0016】
この方法は、一般式(I)及び/又は(IV)の反応性Si−N結合1molに対して化学量論量のアルコール(III)を用いても、非化学量論量のアルコール(III)を用いても実施することができる。この方法において過少量のアルコール(III)を使用すると、部分的にアルコキシ化された化合物のみが得られる。しかしながら、この反応は過剰量のアルコール(III)を用いて実施することが好ましい。特に好ましくは、化合物(I)及び/又は(IV)の反応性Si−N結合1molに対して10〜30mol%の過剰量のアルコール(III)である。
【0017】
特に好ましくは、Rがプロピレン基であるアミノアルキルシランの製造方法である。
【0018】
同様に、特に好ましくは、R2が、メチル、エチル、フェニル、ビニル又はトリフルオロプロピルを含む群から選択された基であるアミノアルキルシランの製造方法である。
【0019】
更に、特に好ましくは、R3が、メチル、エチル、イソプロピル又はメチオキシエチル(Methyoxyethyl)を含む群から選択された基であるアミノアルキルシランの製造方法である。
【0020】
塔底物成分とアルコールとの反応は、発熱的に、かつ副生物不含で高収率で進行する。次いで、一般式(V)及び(VI)の化合物を容易に蒸留により分離することができる。
【0021】
この反応成分の良好な混和を確保するために、この方法は好ましくは撹拌下で実施する。反応温度は、反応成分の溶解度により下方に、かつ出発物及び生成物の分解温度により上方に制限される。好ましくは、この方法は0〜150℃の温度で実施する。好ましくは、この方法は室温を上回る温度で実施する。特に好ましくは、少なくとも20℃、特に少なくとも35℃の反応温度である。
【0022】
好ましくは、引き続いて一般式(V)及び(VI)の化合物の単離及び精製を分別蒸留により実施する。このように製造された化合物は、当業者に公知のように取り扱うことができる。
【0023】
この方法は、好ましくは、更なる非プロトン性溶剤の存在又は不在において実施することができる。非プロトン性溶剤を使用する場合には、0.1MPaにおいて120℃までの沸点もしくは沸騰範囲を有する溶剤又は溶剤混合物が好ましい。かかる溶剤の例は、エーテル、例えばジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル;塩素化炭化水素、例えばジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン;炭化水素、例えばペンタン、n−ヘキサン、ヘキサン異性体混合物、ヘプタン、オクタン、ベンジン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン;ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK);エステル、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸プロピル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル;二硫化炭素及びニトロベンゼン又はこれらの溶剤の混合物である。
【0024】
この方法は、好ましくは連続的に又は不連続的に実施する。
【0025】
本発明にかかる方法は、従来技術に対して以下の利点を有する。第1に、主生成物の収率が増大する。第2に、更に副生物が単離され、かつ更なる利用に自由に使用される。更に、顕著に小さい処理コストがもたらされる。それというのも、蒸留塔底物の大部分が使用可能な生成物に後処理されるからである。従って、全工程の経済性が顕著に増大する。
【0026】
前記式の上述した全ての記号は、それらの意味をそれぞれ互いに無関係に有する。
【0027】
以下の実施例では、その都度、特に示されていなければ、全ての量及び%の記載は質量に対するものであり、全ての圧力は0.10MPa(絶対圧)であり、かつ全ての温度は20℃である。
【実施例】
【0028】
実施例1:環状シラザンの3−アミノプロピル−ジメチルメトキシシランへのメタノリシス
【0029】
23g(100mmol)のN−((3−アミノプロピル)−ジメチルシリル)−2,2−ジメチル−1−アザ−2−シラシクロペンタンを、50mlのTHF中に溶解させ、次いで30mlのメタノールを氷冷下で添加した。蒸留後に、28gのアミノプロピル−ジメチルメトキシシランが得られた(収率95%)。
【0030】
実施例2:10%の過剰量のアルコールを用いる蒸留塔底物のメタノリシス
【0031】
アルゴンで不活性化された4lの3口フラスコ中に、1613.5gの上述の蒸留塔底物を装入した。これは、N−((3−アミノプロピル)−ジメチルシリル)−2,2−ジメチル−1−アザ−2−シラシクロペンタン7.0molの理論量に相当した。次いで、この反応混合物の温度が40℃を超過しないように、493.4g(15.4mol)のメタノールを2時間以内に撹拌下で滴加した。次いで、なおも約1時間にわたって室温で更に撹拌した。
【0032】
この反応混合物の組成(GC(面積%)):
メタノール 3.2%
(V) 38.2%
(VI) 51.4%。
【0033】
分別蒸留後に、732.7gの(V)及び930.4gの(VI)がそれぞれGC純度>96%で得られた。
【0034】
実施例3:80%の過剰量のアルコールを用いる蒸留塔底物のメタノリシス
【0035】
アルゴンで不活性化された4lの3口フラスコ中に、実施例2と同様に1500.0gの蒸留塔底物を装入した。これは、N−((3−アミノプロピル)−ジメチルシリル)−2,2−ジメチル−1−アザ−2−シラシクロペンタン6.5molの理論量に相当した。次いで、この反応混合物の温度が40℃を超過しないように、750.0g(23.4mol)のメタノールを2時間以内に撹拌下で滴加した。次いで、なおも約1時間にわたって室温で更に撹拌した。
【0036】
この反応混合物の組成(GC(面積%)):
メタノール 20.3%
(V) 31.1%
(VI) 43.1%。
【0037】
分別蒸留後に、662.7gの(V)及び787.8gの(VI)がそれぞれGC純度>96%で得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(V)及び/又は(VI)
【化1】

のアミノアルキルシランの製造方法において、
一般式(I)及び/又は(IV)
【化2】

の環状シラザンと、一般式(III)
3−OH (III)
のアルコールとを反応させ、
その式中、
Rは、2価のSi−C及びSi−N結合した、場合によりシアノ−又はハロゲン置換されたC3〜C15炭化水素基であり、該基においては、1つ以上の互いに隣接していないメチレン単位が基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、又は−OCOO−、−S−、又は−NRx−で置換されていてよく、かつ1つ以上の互いに隣接していないメチン単位が基−N=、−N=N−、又は−P=で置換されていてよく、その際、この環のケイ素原子と窒素原子との間に少なくとも3個かつ最大で6個の原子が配置されており、
xは、水素であるか又は場合によりハロゲン置換されたC1〜C10炭化水素基であり、かつ
2は、水素原子であるか又は1価の場合によりシアノ−又はハロゲン置換されたSi−C結合したC1〜C20炭化水素基又はC1〜C20炭化水素オキシ基であり、該基においては、それぞれ1つ以上の互いに隣接していないメチレン単位が基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、又は−OCOO−、−S−、又は−NRx−で置換されていてよく、かつ1つ以上の互いに隣接していないメチン単位が基−N=、−N=N−、又は−P=で置換されていてよく、かつ
3は、1価のC1〜C20炭化水素基であり、該基においては、それぞれ1つ以上の互いに隣接していないメチレン単位が基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、又は−OCOO−、−S−、又は−NRx−で置換されていてよく、かつ1つ以上の互いに隣接していないメチン単位が基−N=、−N=N−、又は−P=で置換されてよいことを特徴とする方法。
【請求項2】
一般式(I)及び(IV)の環状シラザンを、粗製シラン蒸留の蒸留塔底物の形で使用することを特徴とする、請求項1に記載のアミノアルキルシランの製造方法。
【請求項3】
Rがプロピレン基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
2が、メチル、エチル、フェニル、ビニル又はトリフルオロプロピルを含む群から選択された基であることを特徴とする、請求項1から3までの何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
3が、メチル、エチル、イソプロピル又はメチオキシエチルを含む群から選択された基であることを特徴とする、請求項1から4までの何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
0〜150℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1から5までの何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
撹拌下で実施することを特徴とする、請求項1から6までの何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
引き続いて一般式(V)及び(VI)の化合物の単離及び精製を、分別蒸留により実施することを特徴とする、請求項1から7までの何れか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−532957(P2008−532957A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500071(P2008−500071)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001652
【国際公開番号】WO2006/094643
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】