説明

アミノアルキルポリシロキサンの製造方法

【課題】アミノアルキルポリシロキサンの反応時間の短い製造方法であって、低い残留揮発性、特に低い含有率の環状シロキサン、例えばシクロオクタメチルテトラシロキサン(D4)を有し、かつ貯蔵安定性であり、かつ特に、末端位シラノール基(Si−OH)を有する直鎖状のアミノアルキルポリシロキサンが得られる製造方法を提供する。
【解決手段】アミノアルキルポリシロキサンの製造方法であって、(1)と(2)の化合物を混合して、分散液を得ることと、(1)と(2)とを分散液中で塩基性触媒(3)の存在下で反応させて、十分に澄明な混合物を得ることと、塩基性触媒(3)を中和することによって反応を停止することによって行う製造方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノアルキルポリシロキサンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノアルキル官能性のシロキサンの通常実施される製造方法は、OH封鎖もしくはMe封鎖されたポリシロキサンへと平衡化されたアミノアルキルシランから出発する。個々の実施態様において、前記方法は、主に、平衡化の調整に必要な使用される触媒の種類と量の点で、反応終了時のその中和の種類の点で、場合により得られるポリマーの末端封鎖及び安定化のための様々なカルビノールの使用の点で異なる。アミノアルキルポリジメチルシロキサンでは、平衡化は、同時に、低分子の揮発性の副生成物の形成を意味し、それらは、大部分の用途において望まれず、従って、個別の物理的方法において除去せねばならない。このことは、主に、収量損失と結びついて製造コストの増大を意味し、かつ商品ではあまり経済的に魅力的でない。前記の理由から、この分野では、揮発性の副生成物の割合を減らすための技術的な最適化措置に焦点が当てられている。
【0003】
EP382366号Aに記載されるように、このことは、規定の水酸化物触媒の使用によって達成できるが、前記触媒は、末端位シラノール基を有する直鎖状のジオルガノポリシロキサンの縮合を触媒できるにすぎない。直鎖状のジオルガノポリシロキサンは、アミノアルキル基などの官能基を有してもよい。この方法では、"原材料"として、既にOH封鎖されたアミノアルキルシロキサンを使用せねばならず、その際、これは損失を少なく製造できるとは記載されていない。
【0004】
US3,890,269号(対応のDE2339761号A)は、アミノアルキルシロキサンの製造方法において、アミノアルキルシランを有する環状シロキサン又はそれらの加水分解物を、アルカリ金属触媒の存在下で平衡化させる方法を記載しているが、その平衡化に際して相当量の揮発性のシロキサンが生ずる。
【特許文献1】EP382366号A
【特許文献2】US3,890,269号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、アミノアルキルポリシロキサンの反応時間の短い製造方法であって、低い残留揮発性、特に低い含有率の環状シロキサン、例えばシクロオクタメチルテトラシロキサン(D4)を有し、かつ貯蔵安定性であり、かつ特に、末端位シラノール基(Si−OH)を有する直鎖状のアミノアルキルポリシロキサンが得られる製造方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の対象は、アミノアルキルポリシロキサンの製造方法であって、
(i)以下の(1)と(2)を混合して、分散液を得ることと、
(1)一般式
(ARaSiO(3-a)/2m(R11/2p (I)
で示されるアミノアルキルシラン加水分解物
(2)一般式
【化1】

の単位からなるオルガノポリシロキサン
[式中、
Rは、同一もしくは異なって、一価の、1〜18個の炭素原子を有する、ハロゲン化されていてよい炭化水素基を意味し、
1は、水素原子又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であって1もしくは2個の離れた酸素原子を有してよい基を意味し、有利には水素原子であり、
Aは、一価の、SiC結合された炭化水素基であって、1〜4個の離れた塩基性窒素原子を有する基を意味し、
aは、0もしくは1、有利には1であり、
mは、2〜500の整数、有利には2〜50の整数であり、かつ
pは、少なくとも2の整数を意味し、有利には2〜10の整数であり、
xは、0、1、2もしくは3であり、
yは、0もしくは1であるが、但し、
平均して少なくとも10個のSi原子が、有利には少なくとも20個のSi原子が、1分子当たりにオルガノポリシロキサン(2)中に含まれている]
(ii)アミノアルキルシラン加水分解物(1)とオルガノポリシロキサン(2)とを分散液中で塩基性触媒(3)の存在下で反応させて、十分に澄明な混合物を得ることと、
(iii)塩基性触媒(3)を中和することによって反応を停止することと
によって行う製造方法である。
【0007】
有利には、工程(i)において、平均して少なくとも2個のR1O基を1分子中に有するオルガノポリシロキサン(2)が使用される。
【0008】
一般に、平衡化が、Si−O−Si−結合の開裂と再度の形成をしつつ、シロキサノールの縮合反応よりもゆっくりと進行することは、公知の技術水準である。しかしながら、驚くべきことに、アミノアルキルシラン加水分解物(1)がシラノール形であるにもかかわらず同様にシラノール形のオルガノポリシロキサン(2)と反応する際に、アミノアルキルシロキサンは、離れたアミノアルキルシラン単位の形でオルガノポリシロキサン(2)中に組み込まれ、それから、重要なシロキサノールの縮合が始まることが判明した。同様に、この迅速な再分配反応が、非常に少量の揮発性のシクロシロキサンしか生成しないということは驚くべきことである。
【0009】
本発明による方法は、低い残留揮発性、すなわち低い含有率の環状シロキサン、有利には1質量%未満の環状シロキサン、好ましくは0.7質量%未満の環状シロキサンの含有率を有するアミノアルキルポリシロキサンが得られるという利点を有する。
【0010】
しばしば実施される、アミノアルキルポリシロキサンとポリジメチルシロキサンジオールとの縮合反応に対して、本発明による方法は、生成物粘度が、出発物質に対して適度にのみ高められるにすぎないという利点を有する。生成物/出発物質混合物の粘度の商は、主に4未満に保たれるべきであるが、縮合方法に際しては主に10を上回る。所望であれば、このことは、本発明による方法では反応時間の延長によっても確かに可能であるが、容易な取り扱いの観点からは、主に、より低い生成物粘度が望ましい。縮合方法は、複数の出発物質の化合を必然的に含むので(非常に小さい分解生成物の形成下で)、そこから常にかなりの粘度上昇がもたらされる。
【0011】
特に、鎖端の実質的に定量的なSiOH封鎖を伴うアミノアルキルシロキサンジオールの製造方法が好適であり、これは、アミノアルキルシランを使用する場合には、決して達成されないか又は煩雑な後続手段によって達成されるものである。この種類のアミノアルキルポリシロキサンは、驚くべきことに貯蔵安定性であり、かつWO2006/015740号に記載されるように、例えばエマルジョン中でのアミノアルキルシロキサン高重合体の製造をもたらす。
【0012】
この場合に、R1O末端を有するアミノアルキルシラン加水分解物(1)[式中、R1は、水素である]が使用される。水素の意味のR1の割合は、その際、有利には90モル%より高く、好ましくは98モル%より高く、特に好ましくは約100モル%である。同じことは、オルガノポリシロキサン(2)の末端基についても言える。
【0013】
炭化水素基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基、及びオクタデシル基、例えばn−オクタデシル基、シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基、アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基及びフェナントリル基、アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基、及びアラルキル基、例えばベンジル基、α−及びβ−フェニルエチル基である。
【0014】
ハロゲン化された基Rのための例は、ハロゲンアルキル基、例えば3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2′,2′,2′−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基及びハロゲンアリール基、例えばo−、m−及びp−クロロフェニル基である。
【0015】
有利には、基Rは、1〜6個の炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、その際、メチル基が特に好ましい。
【0016】
1のための例は、H基、CH3基、CH3CH2基、(CH32CH基、CH3CH2CH2基、CH3CH2CH2CH2基、CH3CH2OCH2CH2基、CH3CH2OCH2基及びCH3OCH2CH2基である。
【0017】
好ましくは、式(I)中のAは、式
−R2−[NR3−R4−]gNR32
[式中、
2は、二価の、直鎖状もしくは分枝鎖状の、1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基を意味し、
3は、R1の意味を有するか、又はアシル基を意味し、有利には水素原子であり、
4は、二価の、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素基を意味し、
gは、0、1、2、3又は4であり、有利には0又は1である]で示される基である。
【0018】
基Aのための好ましい例は:
2N(CH23
2N(CH22NH(CH23
2N(CH22NH(CH2)CH(CH3)CH2
(シクロヘキシル)NH(CH23
CH3NH(CH23
(CH32N(CH23
CH3CH2NH(CH23
(CH3CH22N(CH23
CH3NH(CH22NH(CH23
(CH32N(CH2)NH(CH23
CH3CH2NH(CH22NH(CH23
(CH3CH22N(CH22NH(CH23
並びにそれらの部分アセチル化された形態もしくは完全アセチル化された形態のものである。
【0019】
基Aのための特に好ましい例は、
2H(CH23
2N(CH22NH(CH23
(シクロヘキシル)NH(CH23
(アセチル)−NH(CH22NH(CH23
(アセチル)−NH(CH22N(アセチル)(CH23
である。
【0020】
有利には、アミノアルキルシラン加水分解物(1)は、アミノアルキル官能性のジアルコキシシラン、例えばアミノプロピルメチルジメトキシシラン又はアミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシランから、水中での加水分解によって製造される。この特定の物質群は、有利には2〜50個のシロキシ単位を有する直鎖構造を有する。アミノアルキルシラン加水分解物(1)は、基本的に、あらゆる重合度で使用することができる。しかしながら、取り扱いの観点から、25℃で10000mPa・s未満の粘度を有する加水分解物が好ましく、特に25℃で2000mPa・s未満の粘度を有する加水分解物が好ましい。アミノアルキルシラン加水分解物(1)は、有利には、主に5ミリ当量/gから約12ミリ当量/gまでのアミン基濃度を有する。基Aは、第一級、第二級及び/又は第三級のアミン基を有してよい。
【0021】
従って、有利には、アミノアルキルシラン加水分解物(1)としては、一般式
HO(ARSiO)mH (III)
[式中、R、A及びmは、前記にそれらについて示された意味を有する]で示されるものが使用される。
【0022】
有利には、オルガノポリシロキサン(2)としては、一般式
HO(R2SiO)nH (IV)
[式中、Rは、前記にそれについて示された意味を有し、かつnは、20〜500の整数である]で示されるものが使用される。
【0023】
通常は、混合物(1)及び(2)は均質ではなく、熱中においても混濁した二相混合物である。できる限り小さい分散相の粒子を生成することによって、生成した分散液は、2つのマクロ相に分かれることが妨げられる。それに付随して、分散相と連続相との間に大きな界面が生成することによって、更に、最大の反応速度と、反応の制御可能性/再現性が保証される。そのためには、平均して、有利には1mm未満の粒度が生ぜねばならない。有利には、分散相は、100μm未満、特に有利には10μm未満、極めて好ましくは1μm未満の平均粒度を有する。有利には、分散液は、2cmより厚い層厚においてもはや透明ではない。もはや透明でない、というのが意味するところは、この場合に、バーコード(Strichcode)がもはや認識できないということである。この粒度を達成するためには、それに必要なエネルギー/仕事量を該系中にもたらすために種々の方法を使用することができる。これらは、慣用の撹拌装置及び/又は混合装置であってよい。更に、分散装置を使用することができる。このためには、原則的に、技術水準により知られるあらゆるホモジナイザーが該当し、例えば高速度撹拌機、高出力分散装置(例えば商標名IKA Ultra−Turrax(登録商標)として入手できるもの)、ディゾルバシステム及び他のロータ・ステータ−ホモジナイザー並びに高圧ホモジナイザー、振とう器、振動混合機、超音波発生器、遠心乳化装置、コロイドミル又は噴霧器などが該当する。均質化は、分散装置を混合物中に浸して反応室中で行われるか、又は反応混合物を連続的に循環において分散装置に導通させることで反応室の外側で行われるか、のいずれかであってよい。分散装置の他に、慣用の撹拌機を更なる完全混和のために用意することができる。
【0024】
混合比(1):(2)は、非常に広い範囲で変動でき、目的生成物のアミン基密度に従う。
【0025】
本発明による方法では、従って、オルガノポリシロキサン(2)は、有利には、1モルのアミノアルキルシラン加水分解物(1)当たりに、有利には20〜500モル、好ましくは20〜200モルの量で使用される。
【0026】
断続的な撹拌機プロセスの場合には、配量順序は重要ではないが、その際、実施の観点から、アミノアルキルシラン加水分解物(1)は、有利には、既に仕込まれたオルガノポリシロキサン(2)に対して配量される。
【0027】
(1)と(2)との反応(ii)は、塩基性触媒の存在下で実施される。従って、(1)と(2)から分散液を製造してから、塩基性触媒(3)が添加される。
【0028】
(1)と(2)とを経済的に関心が持たれる時間で実施するために、シロキシ基の再分配を強く促す塩基性触媒が必要となる。原則的に、今までにもアミノアルキルポリシロキサンの製造のために使用されていたあらゆる公知の塩基性触媒を使用することができる。しかしながら、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコレート又はアルカリ金属シロキサノレートが好ましい。アルカリ金属水酸化物のための例は、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムである。
【0029】
アルカリ金属アルコレートのための例は、ナトリウムメタノレート及びナトリウムエタノレートである。
【0030】
アルカリ金属シロキサノレートのための例は、ナトリウムシロキサノレートである。塩基性触媒(3)は、本発明による方法においては、(1)と(2)とからなる混合物に対して、それぞれ、有利には、約1〜500ppm、好ましくは、40〜250ppmの量で使用される。
【0031】
成分(1)と(2)との反応は、有利には50〜150℃、好ましくは70〜120℃の範囲で実施される。
【0032】
本発明による方法は、周囲雰囲気の圧力で、従って、約1020hPaの圧力で、又はより高い圧力もしくはより低い圧力で実施することができる。
【0033】
反応時間は、有利には2〜60分である。
【0034】
塩基性触媒による、完全な平衡化となるまでの平衡化によって生ずるアミノアルキルポリシロキサンの場合の反応時間は、主に、複数時間である。係る方法は、通常は、非連続的に回分法で表される。それというのも、例えば撹拌機の長い加熱段階と冷却段階(同様に時間範囲で)は、長い反応時間に対して殆ど重要でないからである。しかしながら、反応時間が明らかに、上述の加熱段階と冷却段階よりも短い場合には、状況は明らかに変化する。本発明による方法の場合には、反応時間は、通常は、数分ないし約1時間の範囲である。とりわけ、この速度に基づき、該方法は、特に連続的な様式の実施のために適している。この場合に、場合により別々に予熱器を介して所望の温度にもたらされた反応物と触媒とを、連続的に加熱し、場合により混合エレメントを装備した反応室に導き、そこで反応を所望の滞留時間を調整して行い、それから反応生成物を、同じ程度で連続的に反応室から排出し、そして触媒を失活させる。この種類の連続的な製造様式のためには、本発明による方法は、従ってまた適性がよい。それというのも、反応混合物中の揮発性成分の量は、有利には1質量%未満で非常に低いからであり、それは通常、後接続された蒸留による方法によってのみ至る範囲である。それによって、大抵の場合には、真空様式並びにパージガス流を省くことができる。係る連続的な方法は、例えばループ型反応器、混練機、押出機、連続駆動式の回分反応器並びに回分反応器のカスケード、流管/管形反応器、マイクロリアクターもしくは循環ポンプにおいて、もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて実施することができる。
【0035】
好ましくは、本発明による反応は、透明点で停止される、すなわち十分に透明な混合物に至り、それが、Monitek混濁値(Monitek−Truebungswert)≦3.7ppmを有した場合に停止される。その混濁値の測定は、Monitec社の光学分析器を用いて、水中の珪藻土の参照懸濁液に対する比較測定によって行われる。その測定値は、珪藻土のppm数で示される。
【0036】
反応の停止は、触媒を透明点(均質なオルガノポリシロキサン)に達した場合に失活させることで行われる。原則的に、それは後に行ってよいが、これは時間損失に加えて、揮発性(及び粘度)の増大をもたらし、これは好ましくない。驚くべきことに、シロキシ基の再分配は、透明点で既に、加水分解物(1)で存在するような格別な量の隣接したアミノアルキルシロキシ基が検出できないほど広範に進行していることが示された。該触媒(3)は、今までにこの目的のために使用されていたあらゆる中和剤で失活させることができる。
【0037】
塩基性触媒の失活は、塩基性触媒と塩を形成する中和剤の添加によって行うことができる。係る中和剤は、例えばカルボン酸もしくは鉱酸であってよい。カルボン酸、例えばメタンスルホン酸、酢酸、プロパン酸並びにヘキサデカン酸及びオクタデカン酸が好ましい。
【0038】
しかしながら、塩基性触媒の失活は、塩基性触媒と塩を形成する中和剤であって、得られたアミン油中に可溶性であるので、全く混濁を生じない中和剤の添加によって行うことができる。係る中和剤のための例は、室温で液状の長鎖カルボン酸、例えばn−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、n−ノナン酸及びオレイン酸、ヘキサデカン酸もしくはオクタデカン酸、炭酸エステル、例えばプロピレンカーボネート又は無水カルボン酸、例えばオクテニルコハク酸無水物である。更なる例は、トリオルガノシリルホスフェート、有利にはトリメチルシリルホスフェート及びトリオルガノホスフェート、有利にはモノ−、ジ−及びトリ−イソトリデシルホスフェートの混合物(Clariant社で名称Hordaphos(登録商標)MDITとして入手できる)である。その際、トリメチルシリルホスフェートとして、実質的に、
式:[(CH33SiO](HO)2P=Oのモノシリルホスフェート0〜50質量%
式:[(CH33SiO]2(HO)P=Oのジシリルホスフェート20〜100質量%
式:[(CH33SiO]3P=Oのトリシリルホスフェート0〜70質量%
からなり、その際、全量が100質量%である組成を使用するのが好ましい。必要な中和剤の量は、使用される塩基性触媒(3)の量に従い、かつ反応混合物の全質量に対して、それぞれ、有利には0.05〜0.50質量%、好ましくは、0.15〜0.30質量%である。その際に、中和は、反応混合物の冷却の前にもしくはその後に行うことができる。
【0039】
本発明による方法によれば、アミノアルキルポリシロキサンとしては、有利には、一般式
【化2】

[式中、R、A、x及びyは、前記にそれらについて示された意味を有し、zは、0もしくは1であるが、但し、
平均して少なくとも2個の基A及び少なくとも2個のR1O基が、1分子当たりに含まれている]で示される単位からなるものが得られる。
【0040】
好ましくは、本発明による方法では、アミノアルキルポリシロキサンとしては、一般式
HO(ARSiO)m(R2SiO)nH (VI)
[式中、R、A、m及びnは、前記にそれらについて示された意味を有する]で示されるものが得られる。
【0041】
本発明によるアミノアルキルポリシロキサンは、25℃で、有利には、少なくとも100mPa・sの粘度、好ましくは、1000〜500000mPa・sの粘度、特に好ましくは、5000〜200000mPa・sの粘度を有する。
【0042】
有利には、前記のアミノアルキルポリシロキサンは、1gのアミノアルキルポリシロキサン当たりに、0.01〜0.80ミリ当量の、有利には0.03〜0.60ミリ当量のアミン塩基を有する。特に、0.05〜0.40ミリ当量/gの範囲が好ましい。
【0043】
本発明による方法により得られるアミノアルキルポリシロキサンは、有利には、1質量%未満の、好ましくは、0.7質量%未満の、特に好ましくは、0.5質量%未満の残留揮発性を有する。残留揮発性は、熱的に測定された値であり、その際、60分の時間において120℃で5gのサンプル量を加熱した場合の揮発性成分の質量%での量(120℃/5g/60分)として定義される。
【0044】
大部分の揮発性成分は環状シロキサンであり、その際、より高級の環の他に、オクタメチルテトラシロキサン(D4)が含まれている。
【0045】
本発明による方法により得られるアミノアルキルポリシロキサンは、0.3質量%未満の、好ましくは0.2質量%未満のオクタメチルテトラシロキサン(D4)の含有率を有することが好ましい。
【実施例】
【0046】
実施例1:
粘度1000mm2/s(25℃)を有するOH末端のポリジメチルシロキサン400gを、NH2濃度8.5ミリ当量/gと平均鎖長22シロキサン単位とを有するアミノプロピルメチルジメトキシシランの同様にOH末端の加水分解物8.0gとを乱流混合し、そうして層厚2cmより厚いともはや透明ではないので、バーコード(Strichcode)をもはや認識できない強く不透明な分散液が生ずる。
【0047】
羽根型撹拌機を用いて約300回転/分で撹拌しつつ、該混合物を100℃に加熱し、そして両成分の反応を、40mgのKOHをエタノール中の20%溶液の形で添加することによって開始させる。その分散液は10分後に澄明となり、そして触媒を直ちに42mgの酢酸で失活させる。酢酸カリウムによって薄く混濁した反応生成物を、冷却後に澄明に濾過する。粘度6700mm2/s(25℃)と、アミン密度0.17ミリ当量/gと、揮発性(5g/1時間/120℃)0.2質量%だけを有するアミン油が得られる。
【0048】
高分解能の29Si−NMRスペクトルにおいて、この非常に短い反応時間の場合には、約3モル%だけの加水分解物のアミノプロピルシロキシブロック構造が−22.40ppmの場合に検出でき、それに対して単離されたアミノプロピルシロキシ単位のメインピークは、−22.53ppmで新たに現れる。それとともに、使用されるアミノアルキル構成単位の良好な分離が、最少量の揮発性の環状シロキサンのみが存在する状態で示されている。
【0049】
統計的に分布したジメチルシロキサン単位とアミノプロピルメチルシロキサン単位及び末端位のシラノール基を有するアミノアルキルシロキサンが得られる。
【0050】
比較試験1: US3,890,269号(=DE2339761号A)と同様
本発明とは異なる様式において、実施例1を、OH末端のポリジメチルシロキサンの代わりに、オクタメチルシクロテトラシロキサンとデカメチルシクロペンタシロキサンとの混合物400gを用いて実施する。その他は同じ条件下で、まず得られた分散液は、KOH溶液を用いた100℃での触媒反応の10分後に澄明にならない。酢酸によって失活されたシロキサン混合物は、2相に分離する。測定された揮発性(5g/1時間/120℃)は、49質量%である。使用可能なアミノアルキルオルガノポリシロキサンは、このように得ることができない。出発物質として使用されるアミノアルキルシラン加水分解物の沈殿物は、これが不十分にのみシクロシロキサンと反応したに過ぎないことを示している。分散液の均質化の後に測定された粘度3.2mm2/s(25℃)は、更に、完全に不十分なポリマー構造を示している。
【0051】
比較試験2: アミノアルキルシラン加水分解物(1)の代わりに、アミノアルキルシランを用いて
実施例1を繰り返すが、但し、11gのアミノプロピルメチルジメトキシシランを使用し、8.0gのその加水分解物を使用しない。アミノアルキル基の含有率は、0.17ミリ当量/gで同一である。同じ実施様式により、1780mm2/s(25℃)を有し、揮発性1.3質量%を有する(これは、本発明による実施例1の6倍の値に相当する)アミノアルキルシロキサン生成物が得られる。反応の進行は、ここでは透明点をもとに認識できない。それというのも、反応混合物が最初から透明だからである。従って、光学的インジケーターを欠いている。
【0052】
比較試験3: 安定性の測定
重合度38を有するOH末端のポリジメチルシロキサン400gとアミノプロピルメチルジメトキシシラン11gとから、慣用のように、400ppmのベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(MeOH中40%溶液)を用いて5時間で100℃で、引き続き150℃で加熱して、粘度3850mm2/s(25℃)を有するアミノプロピルメチル/ジメチルポリシロキサン380gを製造する。核共鳴分析は、鎖端のMeO/OH比42/58を示している。
【0053】
それぞれ50gの前記ポリマーと実施例1からのアミノアルキルシロキサンとを、70℃で7日間にわたり、加速劣化工程に供する。それらの結果を、第1表にまとめる。
【0054】
第1表:
【表1】

【0055】
慣用のように製造されたアミノアルキルシロキサンは、加速試験(Schnelltest)において実施例1からの生成物と比較して5倍より高い大きさの粘度上昇を示す。従って、本発明により製造されたアミノアルキルシロキサンに比してはるかに安定性が低い。
【0056】
実施例2:
粘度5900mm2/s(25℃)を有するOH末端のポリジメチルシロキサン400gを、実施例1からのアミノアルキルシラン加水分解物5gとを混合することで、強く不透明な分散液が得られ、同様に撹拌して90℃に加熱する。20%のKOH溶液100mgをエタノール中に添加した後に、21分後に強く混濁した分散液が澄明になる。触媒を、実施例1に記載されるように簡潔に失活させ、軽く混濁したアミン油を澄明に濾過する。0.10ミリ当量/gのアミン含有率で、該生成物は、揮発性0.3質量%と、粘度19100mm2/s(25℃)を有する。
【0057】
前記の生成物のサンプルを、70℃で7日間熱処理して、シロキサン基の自己縮合の傾向を調査する。その熱処理により、30800mm2/s(25℃)への粘度上昇が引き起こされ、それは約15%だけの平均連鎖延長と同義である。
【0058】
こうして得られた、統計的に分布したジメチルシロキサン単位とアミノプロピルメチルシロキサン単位とを有し、かつ末端シラノール基を有するアミノアルキルシロキサンは、従って貯蔵安定性である。
【0059】
実施例3:
さらに緩慢な条件下で方法を実施する可能性を調査するために、実施例2を60℃で繰り返すが、その際、KOH量を二倍にする。該反応混合物は、透明点の達成までに54分を必要とし、その上で、触媒が失活される(実施例2と同様)。当然のように同じアミン含有率で、揮発性は、再び0.3質量%であり、粘度は、18700mm2/s(25℃)である。29Si−NMRにおいて、−22.40ppmで、もはやブロック構造は検出できず、従ってその再分配は、緩慢な60℃でも、平衡化の状態にいたる前に明確に達成され、これは、低い揮発性で明らかに分かる。
【0060】
実施例4:
粘度2000mm2/s(25℃)を有するメチル末端のポリジメチルシロキサン400gを、2460mm2/s(25℃)を有するアミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシランのOH末端の加水分解物10.0gとよく混合することで、強く不透明の分散液が生成し、それを撹拌(300回転/分)をしつつ100℃に加熱する。エタノール中に溶かしたKOH60mgを添加した後に、まず、非常に混濁した混合物が9分後に澄明となる。それから触媒を、85mgの酢酸で失活させる。冷却した後に、酢酸カリウムを濾別し、そして粘度1100mm2/s(25℃)と、アミン密度0.25ミリ当量/gと、揮発性(5g/1時間/120℃)0.3質量%だけを有する澄明な油が得られる。
【0061】
実施例5:
実施例4を、高粘度のシリコーン油の代わりに、約40のシロキシ単位を有する低粘度のOH末端のポリジメチルシロキサン400gを用いて繰り返す。触媒反応のために、更に20mgのナトリウムメチレートを、メタノール中に溶解させて使用する。澄明な反応生成物を、47分後に、0.24gのHordaphos MDITを用いて中和する。そのバッチは、揮発性0.7質量%及び0.26(ミリ当量/g)のアミン価で、140mm2/s(25℃)の粘度に達する。
【0062】
実施例6:
実施例5で使用したOH末端のポリジメチルシロキサン100gと560mm2/s(25℃)を有する他のOH末端のポリジメチルシロキサン300gとを、同じアミノアルキルシラン加水分解物(実施例4)10gと混合することで、強く不透明な分散液が生成し、それを撹拌しつつ85℃に加熱する。同量のナトリウムメチレート(実施例5)を添加することで、64分後に、澄明な反応混合物が得られ、それを直ちに、0.24gのHordaphos MDITで中和する。得られたアミン油は、0.8質量%の揮発性と、0.26(ミリ当量/g)のアミン価を有し、今や粘度790mm2/s(25℃)を有する。
【0063】
実施例7:
粘度5900mm2/s(25℃)を有するOH末端のポリジメチルシロキサン98.79容量%と、実施例1からのアミノアルキルシラン加水分解物1.18容量%とを、管形反応器中で、連続的に混合して、不透明な分散液を得て、メタノール中に溶かしたナトリウムメチレート(30%)0.02容量%を添加して、管形反応器(内径80mm/高さ500mm、容量約2.5L)中で80℃の反応器内部温度で連続的に反応させるが、その際、反応混合物は、反応室からの出口に至る直前で澄明となった。触媒の失活は、0.01容量%の酢酸で実施した。
【0064】
生成物の排出、生成物の冷却並びに連続的な触媒失活は、平均滞留時間25分後に実施した。反応器の走行時間6時間後に、反応器を停止させ、生成物受容器に排出した。動的粘度13300mPa・s(25℃)と、揮発性(150℃/5g/60分)0.20質量%と、アミン価0.10(ミリ当量/g)とを有する無色の油が得られた。29Si−NMRにおいて、−22.40ppmにおいて、ブロック構造はもはや検出できない。
【0065】
実施例8: 揮発性のオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)の含分の測定:
シロキサン生成物の不所望な揮発性の評価のための表現的パラメータ(ポリマー生成物から熱的に除去可能な物質の含有率)として、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)の分光的に確認できる含有率を考慮できる。好適な基準値は、29Si−NMRにおける−19.3ppmでのD4についての積分値と、−10〜−25ppmの範囲での全てのジアルキルシロキシ単位(全D)の全積分値とからの商である。D4は、生成物中の揮発性成分の一部のみを表すので、このパーセント表示は、一般に、熱的に測定される揮発性の値よりも低い。実施例1〜6(B1〜B6)及び比較試験1と2(V1及びV2)のアミノアルキルポリシロキサンについては、第2表に結果をまとめている。
【0066】
第2表:
【表2】

【0067】
加熱されていないアミノアルキルポリシロキサンにおける揮発性のD4の低い含有率は、また、本発明による方法の優位性を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノアルキルポリシロキサンの製造方法であって、
(i)以下の(1)と(2)を混合して、分散液を得ることと、
(1)一般式
(ARaSiO(3-a)/2m(R11/2p (I)
で示されるアミノアルキルシラン加水分解物
(2)一般式
【化1】

の単位からなる、直鎖状の及び分枝鎖状のオルガノポリシロキサン
[式中、
Rは、同一もしくは異なって、一価の、1〜18個の炭素原子を有する、ハロゲン化されていてよい炭化水素基を意味し、
1は、水素原子又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であって1もしくは2個の離れた酸素原子を有してよい基を意味し、有利には水素原子であり、
Aは、一価の、SiC結合された炭化水素基であって、1〜4個の離れた塩基性窒素原子を有する基を意味し、
aは、0もしくは1であり、
mは、2〜500の整数であり、かつ
pは、少なくとも2の整数を意味し、
xは、0、1、2もしくは3であり、
yは、0もしくは1であるが、但し、
平均して少なくとも10個のSi原子が、1分子当たりにオルガノポリシロキサン(2)中に含まれている]
(ii)アミノアルキルシラン加水分解物(1)とオルガノポリシロキサン(2)とを分散液中で塩基性触媒(3)の存在下で反応させて、十分に澄明な混合物を得ることと、
(iii)塩基性触媒(3)を中和することによって反応を停止することと
によって行う製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、アミノアルキルシラン加水分解物(1)として、一般式
HO(ARSiO)mH (III)
[式中、
Rは、同一もしくは異なって、一価の、1〜18個の炭素原子を有する、ハロゲン化されていてよい炭化水素基を意味し、
Aは、一価の、SiC結合された炭化水素基であって、1〜4個の離れた塩基性窒素原子を有する基を意味し、かつ
mは、2〜500の整数である]で示されるものを使用することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、オルガノポリシロキサン(2)として、一般式
HO(R2SiO)nH (IV)
[式中、
Rは、同一もしくは異なって、一価の、1〜18個の炭素原子を有する、ハロゲン化されていてよい炭化水素基を意味し、かつ
nは、20〜500の整数である]で示されるものを使用することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法において、塩基性触媒(3)として、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコレート及びアルカリ金属シロキサノレートの群から選択されるものを使用することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法において、中和剤として、カルボン酸、トリオルガノシリルホスフェート及びトリオルガノホスフェートを使用することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法において、(ii)の反応を、50〜150℃の温度及び2〜60分の反応時間で実施することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法において、該方法を連続的に実施することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法において、アミノアルキルポリシロキサンとして、一般式
HO(ARSiO)m(R2SiO)nH (VI)
[式中、
Rは、同一もしくは異なって、一価の、1〜18個の炭素原子を有する、ハロゲン化されていてよい炭化水素基を意味し、
Aは、一価の、SiC結合された炭化水素基であって、1〜4個の離れた塩基性窒素原子を有する基を意味し、かつ
mは、2〜500の整数であり、かつ
nは、20〜500の整数である]で示されるものが得られることを特徴とする方法。
【請求項9】
一般式
HO(ARSiO)m(R2SiO)nH (VI)
[式中、
Rは、同一もしくは異なって、一価の、1〜18個の炭素原子を有する、ハロゲン化されていてよい炭化水素基を意味し、
Aは、一価の、SiC結合された炭化水素基であって、1〜4個の離れた塩基性窒素原子を有する基を意味し、かつ
mは、2〜500の整数であり、かつ
nは、20〜500の整数である]で示されるアミノアルキルポリシロキサンであるが、但し、0.3質量%未満のオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)の含有率を有するアミノアルキルポリシロキサン。

【公開番号】特開2008−274280(P2008−274280A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118448(P2008−118448)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】