説明

アミノカルボニルナフトール誘導体およびシアノナフトール誘導体ならびにそれらの製造方法

下記式〔1〕で表されるアミノカルボニルナフトール誘導体およびその製造方


[式中、YおよびYは、アミノカルボニル基、カルボキシル基、式〔2〕、


からなる群より選択される基であり、YおよびYの少なくとも一方はアミノカルボニル基である]。
また、下記式〔7〕で表される新規なシアノナフトール誘導体およびその塩類


[式中、YおよびYは独立に、シアノ基、式〔2〕、式〔3〕、式〔4〕、カルボキシル基およびアミノカルボニル基;
からなる群から選択される基であり、YおよびYの少なくとも一方がシアノ基である]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、新規なシアノナフトール誘導体およびその製造方法に関する。本発明はまた、新規なアミノカルボニルナフトール誘導体およびその製造方法に関する。該アミノカルボニルナフトール誘導体は、該シアノナフトール誘導体の合成のための中間体として使用されうる。
【背景技術】
2−ナフトール誘導体は共役ポリエン系を形成し、電子帯に吸収を有する縮合芳香族化合物の中で最も安価な化合物の1つであり、合成用原料として利用し易い。したがって、例えば、染料・顔料等の色材、感光材料、液晶性ポリエステル等の高分子材料などの種々の特徴ある材料の合成原料として用いられてきた。
特に、シアノ基を有するナフトール誘導体は、液晶材料、染料・顔料等の色材、医薬品等の生理活性物質などの合成原料として有用な物質である。種々のシアノ基を有する2−ナフトール誘導体、例えば、ナフタレン環上の6位にシアノ基を有する6−シアノ−2−ナフトールの誘導体(特開昭59−106473号および特開昭63−174963号公報)および3位にシアノ基を有する3−シアノ−2−ナフトールの誘導体(特開昭63−174963号公報)などが知られている。
しかし、2−ナフトールの3位と6位の両方に置換基を有するシアノナフトール誘導体はいまだ知られていない。
また、本発明者らは、2−ナフトール誘導体の中でも2−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸の誘導体が、アゾ化合物合成用のカップラーとして用いた場合に、種々の色相および光学特性を示すアゾ化合物が得られる点で特に有用であることを見出した(特許第3224397号公報、特許第3228516号公報、特許第3393869号公報、特許第3393870号公報、国際公開第00/23525号パンフレットおよび国際公開第01/87859号パンフレット)。
アゾ化合物用のカップラー成分として、そしてまた2−ナフトールの3位と6位の両方に置換基を有するシアノナフトール誘導体を合成するために、新たな種類の置換基を有する2−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸の誘導体が求められている。
【発明の開示】
本発明の目的は、新規なシアノナフトール誘導体およびその製造方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、種々の化合物、特に上記のシアノナフトール誘導体の合成用中間体として有用な、アミノカルボニル基を有する新規ナフトール誘導体およびその製造方法を提供することである。
本発明は、式〔1〕で表されるアミノカルボニルナフトール誘導体を提供する:

[式中、YおよびYは独立に、アミノカルボニル基、式〔2〕、式〔3〕、式〔4〕およびカルボキシル基;

からなる群から選択される基であり、YおよびYの少なくとも一方はアミノカルボニル基である;
nは1または2の整数である;
は、炭素原子数1〜20の分岐を有していてもよく置換基を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、および置換基を有していてもよい共役二重結合を有する複素環基からなる群から選択される基である;
は、炭素原子数1〜6の分岐を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい脂肪族基である;
Aは、置換基を有していてもよい芳香族基または置換基を有していてもよい共役二重結合を有する複素環基である;
Zは、−O−、−S−、および−NH−からなる群から選択される基である;
Qは、分岐を有していてもよい炭素原子数1〜6のアルキル基、分岐を有していてもよい炭素原子数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、およびニトロソ基からなる群から選択される基である;
mは、0〜3の整数である;
Rは、水素原子、アルカリ金属、炭素原子数が1〜20の分岐を有していてもよく置換基を有していてもよいアルキル基、炭素原子数が2〜20の分岐を有していてもよく置換基を有していてもよいアシル基、およびフェニルアルキル基からなる群から選択される基である]。
式〔1〕で表されるアミノカルボニルナフトール誘導体のなかでも、Rが、炭素原子数が1〜20の分岐を有していてもよく置換基を有していてもよいアルキル基、およびフェニルアルキル基から選択される基である化合物が種々の化合物の合成中間体として好ましい。かかるアミノカルボニルナフトール誘導体は、以下に説明するシアノナフトール誘導体の合成のための中間体として好適に利用されうる。
本発明はまた、式〔5〕で表されるカルボキシル基を有するナフトール誘導体のカルボキシル基を酸ハロゲン化物に変換する工程、および得られたナフトール誘導体の酸ハロゲン化物とアンモニアとを反応させる工程を含む、式〔6〕で表されるアミノカルボニルナフトール誘導体の製造方法を提供する:

[式中YおよびYは独立に、カルボキシル基、式〔2〕、式〔3〕、および式〔4〕からなる群から選択される基であり、YおよびYの少なくとも一方はカルボキシル基である;R、Qおよびmは式〔1〕と同意である];

[式中YおよびYは独立に、アミノカルボニル基、式〔2〕、式〔3〕、および式〔4〕からなる群から選択される基であり、YおよびYの少なくとも一方はアミノカルボニル基である;R、Qおよびmは上記と同意である]。
さらに本発明は、上記のアミノカルボニルナフトール誘導体を中間体として使用することにより合成されうる、式〔7〕で表されるシアノナフトール誘導体およびその塩類を提供する:

[式中、YおよびYは独立に、シアノ基、式〔2〕、式〔3〕、式〔4〕、カルボキシル基およびアミノカルボニル基からなる群から選択される基であり、YおよびYの少なくとも一方はシアノ基である;
Q、Rおよびmは式〔1〕と同意である]。
本発明はまた、式〔8〕で表されるシアノナフトール誘導体およびその塩類を提供する:

[式中、Yはシアノ基、式〔2〕、式〔3〕、式〔4〕、カルボキシル基およびアミノカルボニル基からなる群から選択される基である;R、Qおよびmは式〔1〕と同意である]。
さらに本発明は、式〔9〕で表されるカルボキシル基を有するナフトール誘導体のカルボキシル基をアミノカルボニル基に変換する工程、および得られたアミノカルボニル基を有するナフトール誘導体を脱水剤と反応させる工程を含む、式〔10〕で表されるシアノナフトール誘導体の製造方法を提供する:

[式中、Y’およびY’は独立に、カルボキシル基、式〔2〕、式〔3〕および式〔4〕からなる群から選択される基であり、Y’およびY’の少なくとも一方はカルボキシル基である;
R’は炭素原子数が1〜20の分岐を有していてもよく置換基を有していてもよいアルキル基、およびフェニルアルキル基から選択される基である;
Qおよびmは式〔1〕と同意である]。

[式中、Y’およびY10’は独立に、シアノ基、式〔2〕、式〔3〕および式〔4〕からなる群から選択される基であり、Y’およびY10’の少なくとも一方はシアノ基である;
R’、Qおよびmは上記と同意である]。
本発明のシアノナフトール誘導体の製造方法において使用される脱水剤は好ましくはオキシ塩化リンである。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例1で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図2は、実施例2で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図3は、実施例3で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図4は、実施例4で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図5は、実施例5で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図6は、実施例6で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図7は、実施例7で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図8は、実施例8で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図9は、実施例9で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図10は、実施例10で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図11は、実施例11で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図12は、実施例12で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図13は、実施例13で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図14は、実施例14で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図15は、実施例15で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図16は、実施例16で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図17は、実施例17で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図18は、実施例18で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図19は、実施例19で得たアミノカルボニル化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図20は、式[I]の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図21は、式[II]の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図22は、式[III]の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図23は、式[IV]の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図24は、式[V]の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図25は、式[VI]の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図26は、式[VII]の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図27は、式[VIII]の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図28は、式[IX]の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図29は、式[X]の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図30は、式[XI]の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図31は、式[XII]の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図32は、式[XIII]の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図33は、式[XIV]の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本明細書および特許請求の範囲において、「芳香族基」とは、6員の単環または縮合環であって、縮合環の環数4までの芳香族基を意味する。
「共役二重結合を有する複素環基」とは、1以上のN、SおよびOからなる群から選択されるヘテロ原子を含み、共役二重結合を有する5員乃至6員の単環または縮合環である複素環基を意味する。縮合環を形成する場合は、環数6までのものとする。
本発明の式〔1〕で表されるアミノカルボニルナフトール誘導体および式〔7〕で表されるシアノナフトール誘導体において、Y、Y、YまたはYが式〔2〕で表される基である場合のY、Y、YまたはYの例としては、アルキルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基などが挙げられる。これらの基に含まれる芳香族基および脂肪族基は、さらにハロゲン原子、ハロゲン化C1−6アルキル基、ニトロ基、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、およびシアノ基などの置換基を有していてもよい。
上記式〔2〕中、Xが置換基を有していてもよい芳香族基の場合のXの例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラキノン環などが挙げられる。Xが置換基を有していてもよい共役二重結合を有する複素環基である場合のXの例としては、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアゾール、テトラゾール、インドール、1H−インダゾール、プリン、4H−キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、ベンゾフランなどが挙げられる。
上の置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン化C1−6アルキル、ニトロ基、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基(たとえばメトキシ基)、シアノ基、フェノキシ基、ピリミジルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、スルホン酸基、エステル化されたカルボキシル基(たとえばアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基)、アミド化されたカルボキシル基(たとえばフェニルアミノカルボニル基)、アルキルアミノスルホニル基、およびアリール基を有することのあるC2−6アルケニル基等が挙げられる。
かかる置換基は、アルカリ金属との塩の形態であってもよい。
上の置換基が芳香族基を含む場合には、その環上にさらに一個以上の別の置換基、たとえば、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、フェニル基、シアノ基などを有していてもよい。
、Y、YまたはYが式〔3〕で表される基である場合のY、Y、YまたはYの例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、iso−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基などが挙げられる。
、Y、YまたはYが式〔4〕で表される基である場合のY、Y、YまたはYの例としては、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基などが挙げられる。上記式〔4〕中の環Aを形成する置換基を有していてもよい芳香族基の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラキノン環などが挙げられ、置換基を有していてもよい共役二重結合を有する複素環基の例としてはチオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアゾール、テトラゾール、インドール、1H−インダゾール、プリン、4H−キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、ベンゾフランなどが挙げられる。
式〔1〕で表されるアミノカルボニルナフトール誘導体ならびに式〔7〕および式〔8〕で表されるアミノカルボニルナフトール誘導体のRの例としては、水素原子、アルカリ金属(例えばナトリウム、カリウム)、炭素原子数が1〜20の分岐を有していてもよく置換基を有していてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n−オクチル基、n−ヘキサデシル基)およびアシル基(例えばアセチル基)、およびフェニルアルキル基(例えばベンジル基)などが挙げられる。
特に、式〔1〕で表されるアミノカルボニルナフトール誘導体において、Rが炭素原子数が1〜20の分岐を有していてもよく置換基を有していてもよいアルキル基、およびフェニルアルキル基から選択される基である化合物が、本発明のシアノナフトール誘導体の合成のための中間体として好ましい。
以下、式〔1〕で表されるアミノカルボニルナフトール誘導体の製造方法を説明するが、これは本発明を限定するものではない。
およびYの両方がカルボキシル基でない式〔1〕の化合物の好ましい合成方法は、式〔5〕で表されるカルボキシル基を有するナフトール誘導体のカルボキシル基を、酸ハロゲン化物に変換する工程、および得られたナフトール誘導体の酸ハロゲン化物をアンモニアと反応させる工程を含む。
また、YおよびYの一方がアミノカルボニル基で他方がカルボキシル基である式〔1〕の化合物の好ましい合成方法は、YおよびYの一方がアミノカルボニル基で他方が式〔3〕で示されるエステル基である式〔1〕のアミノカルボニルナフトール誘導体を、水性媒体中でエステル基を塩基により加水分解する工程、および生成物を酸析する工程を含む。
前記の酸ハロゲン化反応に用いる酸ハロゲン化剤としては、塩化チオニル、臭化チオニル、塩化オキサリルなどが挙げられる。また、酸ハロゲン化反応に用いる溶媒としては、キシレン、トルエン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
式〔5〕で表されるカルボキシル基を有するナフトール誘導体と酸ハロゲン化剤の反応温度は、80℃以下が好ましく、30〜50℃が特に好ましい。
酸ハロゲン化物とアンモニアとの反応は酸ハロゲン化反応完了後に、溶媒および過剰の酸ハロゲン化剤を減圧留去などによって除去し、酸ハロゲン化物を単離し、酸ハロゲン化反応に用いた溶媒と同様の溶媒中で、酸ハロゲン化物とアンモニアと反応させればよい。あるいは、酸ハロゲン化反応後に過剰の酸ハロゲン化剤を除いた後に、直接酸ハロゲン化物とアンモニアとを反応させてもよい。
式〔1〕で表されるアミノカルボニルナフトール誘導体において、Rがアルキル基、アシル基、フェニルアルキル基である化合物は、Rが水素原子である式〔1〕で表されるアミノカルボニルナフトール誘導体の水酸基を、公知の方法に従いアルキル化、アシル化、またはフェニルアルキル化することによって得ることができる。また、式〔1〕で表されるアミノカルボニルナフトール誘導体において、Rがアルカリ金属である化合物は、Rが水素原子である式〔1〕で表されるアミノカルボニルナフトール誘導体を、低級アルコール等の有機溶媒に溶解し、ナトリウムメトキシド、カリウムブトキシド、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の塩基性アルカリ金属化合物で処理することにより得ることができる。
以下により具体的に、式〔1〕で表されるアミノカルボニルナフトール誘導体の合成方法を説明する。
3位および6位がともにアミノカルボニル基である式〔1〕のアミノカルボニルナフトール誘導体は、スキーム1に示すように、式〔11〕で表される2−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸誘導体と塩化チオニルとを反応させ、カルボン酸塩化物である式〔12〕で表される化合物を得、次いでカルボン酸塩化物とアンモニアとを反応させることにより調製することが出来る。
〔スキーム1〕

[式〔11〕、式〔12〕および式〔13〕において、Q、m、およびRは式〔1〕と同意。]
また、3位及び6位の一方のみがアミノカルボニル基であり、他方の基が式〔2〕、式〔3〕、および式〔4〕からなる群より選択される基であるアミノカルボニルナフトール誘導体、例えば6位のみがアミノカルボニル基であるアミノカルボニルナフトール誘導体は、スキーム2に従って調製することができる。即ち、6位がアミノカルボニル基である式〔1〕の化合物は、式〔14〕で表される2−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸誘導体と塩化チオニルとを反応させ、カルボン酸塩化物である式〔15〕で表される化合物を得、次いでカルボン酸塩化物とアンモニアとを反応させることにより調製することが出来る。3位のみがアミノカルボニル基である式〔1〕の化合物も同様に調製することができる。
〔スキーム2〕

[式〔14〕〜式〔16〕において、Yは、式〔2〕、式〔3〕、および式〔4〕から選択される基。Q、mおよびRは式〔1〕と同意。]
3位及び6位の一方がアミノカルボニル基であり、他方がカルボキシル基である式〔1〕のアミノナフトール誘導体は、上記のスキーム2に示す方法により得られるアミノカルボニルナフトール誘導体から、以下に記載する方法により調製することができる。
例えば3位がアミノカルボニル基であり、6位がカルボキシル基である式〔1〕のアミノカルボニルナフトール誘導体は、以下のスキーム3に示すように、Yが式〔3〕で示される基である、式〔17〕で表されるアミノカルボニルナフトール誘導体を、水性媒体中でそのエステル基を水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基により加水分解し、次いで生成物を、塩酸、硫酸、硝酸などの酸により酸析することにより調製することが出来る。3位がカルボキシル基である式〔1〕のアミノカルボニルナフトール誘導体も同様に調製することができる。
〔スキーム3〕

前記のスキーム1、スキーム2およびスキーム3の出発化合物である式〔11〕、式〔14〕および式〔17〕で表される2−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸誘導体の調製方法は特に限定されないが、例えば国際公開第96/32366号パンフレット、および国際公開第01/87859号パンフレットに記載の方法により調製することができる。
このようにして得られるアミノカルボニルナフトール誘導体は、例えば、脱水反応により、そのアミノカルボニル基をシアノ基へ変換してシアノナフトール誘導体を導くことができる。即ち、本発明のアミノカルボニルナフトール誘導体は、種々の新規な2−ナフトール誘導体の合成のための中間体として有用である。
以下に、式〔7〕で表されるシアノナフトール誘導体の製造方法を説明するが、これは本発明を限定するものではない。
Rがアルキル基またはフェニルアルキル基であり、YおよびYが共にシアノ基である本発明のシアノナフトール誘導体は、式〔20〕で表されるナフトール誘導体から、以下のスキーム4に従い調製することができる:
〔スキーム4〕

[式〔20〕〜〔23〕で表される化合物において、
R’は、炭素原子数が1〜20の分岐を有していてもよく置換基を有していてもよいアルキル基、およびフェニルアルキル基からなる群から選択される基である;
Qおよびmは式〔1〕と同意である]。
具体的には式〔20〕で表される化合物のカルボキシル基を、テトラヒドロフラン、キシレン、トルエンなどから選択される溶媒中で、塩化チオニルなどと反応させることにより、クロロカルボニル基に変換して式〔21〕で表される化合物を得る。次いで、式〔21〕で表される化合物をアンモニアと反応させ、式〔22〕で表されるアミノカルボニル基を有するナフトール誘導体を得る。得られた式〔22〕で表されるナフトール誘導体を、o−ジクロロベンゼン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼンなどから選択される溶媒中で、50〜200℃、好ましくは80〜160℃にてオキシ塩化リン、三塩化リン、五酸化二リン、五塩化リン、塩化チオニル、p−トルエンスルホニルクロリド、ベンゼンスルホニルクロリド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、2−クロロベンゾオキサゾリウム塩などから選択される脱水剤と反応させ、アミノカルボニル基をシアノ基に変換することにより、式〔23〕で表されるシアノナフトール誘導体を得る。
脱水剤としては、オキシ塩化リンが特に好ましい。
Rがアルキル基またはフェニルアルキル基であり、YまたはYの何れか一方のみがシアノ基であり、他方が式〔2〕、式〔3〕または式〔4〕で表される基である、本発明の式〔7〕で表されるシアノナフトール誘導体は、式〔24〕または〔28〕で表されるナフトール誘導体から、以下のスキーム5またはスキーム6に従い調製することが出来る:
〔スキーム5〕

〔スキーム6〕

[スキーム5およびスキーム6中の式〔24〕〜〔31〕で表される化合物において、
R’は、炭素原子数が1〜20の分岐を有していてもよく置換基を有していてもよいアルキル基、およびフェニルアルキル基からなる群から選択される基である;
、Yは式〔2〕、式〔3〕および式〔4〕から選択される基である;
Qおよびmは式〔1〕と同意である]。
なお、スキーム4〜6において、シアノナフトール誘導体の原料となる式〔20〕、式〔24〕、および式〔28〕で表されるナフトール誘導体は、国際公開第96/32366号パンフレット、および国際公開第01/87859号パンフレットに記載の方法により得ることができる。
Rが水素原子である、本発明の式〔7〕で表されるシアノナフトール誘導体は、上記スキーム4〜6により得られる式〔23〕、式〔27〕、または式〔31〕で表されるシアノナフトール誘導体を、塩化アルミニウム、臭化水素酸などと反応させることにより得ることが出来る。
またRがアシル基である、本発明の式〔7〕で表されるシアノナフトール誘導体は、Rが水素原子である式〔7〕で表されるシアノナフトール誘導体を、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ピバル酸などから選択されるアシル化剤と反応させることにより得ることができる。
Rがアルカリ金属である、本発明の式〔7〕で表されるシアノナフトール誘導体の塩は、Rが水素原子である式〔7〕で表されるシアノナフトール誘導体を、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、およびナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドなどの塩基性アルカリ金属化合物と反応させることにより得ることができる。
アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムが好ましく、ナトリウム、カリウムが特に好ましい。
およびYの何れか一方にカルボキシル基を有する本発明の式、〔7〕で表されるシアノナフトール誘導体は、YおよびYの何れか一方が式〔3〕で表されるカルボン酸エステルである式〔7〕で表されるシアノナフトール誘導体を、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類、またはこれらのアルコール類の水溶液から選択される溶媒中で、水酸化ナトリウムなどの塩基の存在下に加熱し加水分解した後に、塩酸などにより酸析することにより得ることが出来る。
およびYの何れかがカルボキシル基である場合には、カルボキシル基はアルカリ金属塩を形成していてもよい。アルカリ金属塩の調製方法および好ましいアルカリ金属の種類は式〔7〕で表されるシアノナフトール誘導体のRと同様である。
およびYの何れか一方にアミノカルボニル基を有する本発明の式〔7〕で表されるシアノナフトール誘導体は、YおよびYの何れか一方がカルボキシル基である式〔7〕で表されるシアノナフトール誘導体のカルボキシル基を、カルボン酸クロリドとアンモニアの反応などの常法によって、アミノカルボニル基へ変換することにより得ることが出来る。
およびYの何れか一方に、式〔2〕、式〔3〕、および式〔4〕から選択される基を有する、本発明の式〔7〕で表されるシアノナフトール誘導体は、スキーム5またはスキーム6に示す方法によっても調製することが出来るが、YおよびYの何れか一方がカルボキシル基である式〔7〕で表されるシアノナフトール誘導体のカルボキシル基を、国際公開第96/32366号パンフレット、および国際公開第01/87859号パンフレットに記載の方法に従い、式〔2〕、式〔3〕、および式〔4〕で表される基に変換することによっても得ることが出来る。
産業上の利用の可能性
本発明のアミノカルボニルナフトール誘導体は、そのまま若しくは、種々の有機化合物の合成中間体として使用される。また、本発明のアミノカルボニルナフトール誘導体から得られる種々のナフトール誘導体は、特にアゾ化合物のカップラーとして、耐候性などに優れた種々の色相のアゾ化合物の合成を可能にする。
また、本発明のシアノナフトール誘導体は、アゾ色素およびジケトピロロピロールを含む染料および顔料などの色材、液晶材料および液晶性ポリエステルなどの高分子材料などの合成原料として好適に利用される。
さらに、本発明のシアノナフトール誘導体は、3位および6位の両方に置換基を有する為、多様な色相の色材の合成が可能であり、特に染料および顔料などの色材の合成原料として好適に用いられる。
以下、実施例1〜19により本発明のアミノカルボニルナフトール誘導体の合成を詳細に説明する。
【実施例1】

3−ヒドロキシ−2−メトキシカルボニル−7−ナフトエ酸148gをTHF1100gに溶解し、溶液にN,N−ジメチルホルムアミド0.5gおよび塩化チオニル143gを逐次添加し、混合物を50℃にて2時間反応させた。反応物から過剰の塩化チオニルを留去し、反応物に再びTHF1100gを加えて溶液とした。この溶液にアンモニアガスを添加しながら、40℃にて2時間反応させた。反応液を室温まで冷却後、析出物をろ過し、水およびメタノールで十分洗浄した後、乾燥して、白色粉末である目的化合物126gを得た〔分解点:203℃、質量分析:m/z(−)244〕。
この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図1に示す
【実施例2〜実施例18】
実施例1の3−ヒドロキシ−2−メトキシカルボニル−7−ナフトエ酸を表1に示すカルボン酸に代えることの他は、実施例1と同様にしてアミノカルボニル化合物を合成した。ただし、塩化チオニルはカルボン酸当量が2当量の場合、2倍量使用した。合成したアミノカルボニル化合物の融点・分解点および質量分析値を表1に示す。また、これら化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図2〜図18に示す。




【実施例19】

実施例4で得た3−アミノカルボニル−2−メトキシ−6−n−ブトキシカルボニルナフタレン18.0gをメタノール50gおよび水20gに懸濁し、懸濁液に水酸化ナトリウム2.5gを添加し、60℃で2時間反応させた。反応液から不溶物を除去した後、10%塩酸にて反応液のpHをpH2に調整し、析出した結晶をろ過した。結晶を水で十分に洗浄した後、乾燥して、黄色粉末である目的化合物12.9gを得た〔融点:246℃、分解点:286℃、質量分析:m/z(−)244〕。この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図19に示す。
以下、実施例20〜33により本発明のシアノナフトール誘導体の合成を詳細に説明する。
【実施例20】
2−メトキシ−3,6−ジシアノナフタレンの合成

2−メトキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸7.4gをテトラヒドロフラン75gに懸濁し、懸濁液に塩化チオニル14.3gを添加した。この混合物を45℃で1時間反応させた後、過剰な塩化チオニルを溶媒と共に留去した。残渣にテトラヒドロフラン150gを加えて溶解し、45℃に加温した。この溶液にアンモニアガスを添加し、1時間反応させた後、析出した結晶を濾過した。得られた2−メトキシ−3,6−ジアミノカルボニルナフタレン6.0gを1,2−ジクロロベンゼン120gに懸濁し、懸濁液にオキシ塩化リン4.1gを添加した。この混合物を140℃で1時間反応させた後、80℃まで冷却した。次いで混合物に水150gを加え十分に攪拌した。析出した結晶を濾過し、水およびメタノールで洗浄した後、乾燥して淡橙色粉末3.6gを得た(分解点:255℃)。この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図20に示す。
【実施例21】
2−n−ブトキシ−3,6−ジシアノナフタレンの合成

実施例20の2−メトキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸7.4gを2−n−ブトキシ−3,6−ジカルボン酸8.6gに代えることの他は、実施例20と同様の手順に従い、白色粉末3.1gを得た(融点:181℃、分解点:265℃)。この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図21に示す。
【実施例22】
2−n−オクチルオキシ−3,6−ジシアノナフタレンの合成

実施例20の2−メトキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸7.4gを2−n−オクチルオキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸10.3gに代えることの他は、実施例20と同様の手順に従い、白色粉末4.4gを得た(融点:160℃、分解点:280℃)。この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図22に示す。
【実施例23】
2−n−ドデシルオキシ−3,6−ジシアノナフタレンの合成

実施例20の2−メトキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸7.4gを2−n−ドデシルオキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸12.0gに代えることの他は、実施例20と同様の手順に従い、白色粉末5.8gを得た(融点:157℃、分解点:297℃)。この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図23に示す。
【実施例24】
2−ヒドロキシ−3,6−ジシアノナフタレンの合成

実施例20で得た2−メトキシ−3,6−ジシアノナフタレン3.1gをベンゼン100gに懸濁し、懸濁液に塩化アルミニウム10gを添加した。混合物を75℃で2時間反応させた後、50℃まで冷却した。次いで混合物に水50gを加え十分に攪拌した。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄した後、乾燥して白色粉末2.5gを得た(分解点:290℃)。この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図24に示す。
【実施例25】
2−アセトキシ−3,6−ジシアノナフタレンの合成

実施例24で得た2−ヒドロキシ−3,6−ジシアノナフタレン1.0gを無水酢酸6gと氷酢酸4gの混合液に懸濁し、懸濁液に少量のN,N−ジメチルアミノピリジンを添加した。混合物を70℃で2時間反応させた後、水20g中にブローし、析出した結晶を濾過した。結晶を水およびメタノールで洗浄した後、乾燥して淡橙色粉末1.0gを得た(融点:185℃、分解点:237℃)。
この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図25に示す。
【実施例26】
2−ヒドロキシ−3,6−ジシアノナフタレンナトリウム塩の合成

実施例24で得た2−ヒドロキシ−3,6−ジシアノナフタレン1.0gをメタノール10gに懸濁し、懸濁液にメタノール中28重量%ナトリウムメトキシド溶液1.0gを滴下した。滴下終了後、懸濁液はほぼ透明な溶液となった。溶液からわずかな不溶分を濾過して取り除き、濾液を濃縮乾固して黄色粉末1.1gを得た(分解点500℃以上)。この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図26に示す。
【実施例27】
2−ベンジルオキシ−3,6−ジシアノナフタレンの合成

2−ベンジルオキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸4.8gをテトラヒドロフラン50gに懸濁し、懸濁液に塩化チオニル7.2gを添加した。混合物を45℃で1時間反応させた後、過剰な塩化チオニルを溶媒と共に留去した。残渣にテトラヒドロフラン50gを加えて溶解し、45℃に加温した。この溶液にアンモニアガスを添加し、1時間反応させて析出した結晶を濾過した。このようにして得た2−ベンジルオキシ−3,6−ジアミノカルボニルナフタレン3.6gを1,2−ジクロロベンゼン60gに懸濁し、懸濁液にオキシ塩化リン1.8gを添加した。混合物を140℃で3時間反応させた後、80℃まで冷却した。次いで混合物に水60gを加えて十分に攪拌した後、静置し分液して有機層を分離した。有機層にヘキサン100gを加えて結晶を析出させ、濾過した。結晶をメタノールで洗浄した後、乾燥して淡黄色粉末1.7gを得た(分解点:278℃)。この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図27に示す。
【実施例28】
2−メトキシ−3−シアノ−6−メトキシカルボニルナフタレンの合成

2−ヒドロキシ−6−メトキシカルボニルナフタレン−3−カルボン酸24.6gをテトラヒドロフラン300gに懸濁して、懸濁液に塩化チオニル35.7gを添加した。混合物を45℃で1時間反応させた後、過剰な塩化チオニルと共に溶媒を留去した。残渣にテトラヒドロフラン300gを加えて溶解し、45℃に加温した。溶液にアンモニアガスを添加し、1時間反応させて析出した結晶を濾過した。
このようにして得た2−ヒドロキシ−3−アミノカルボニル−6−メトキシカルボニルナフタレン14.7gをN,N−ジメチルホルムアミド150gに溶解した。溶液に、50%水酸化カリウム水溶液8.0gとヨウ化メチル11.1gを添加した。混合物を室温で1日反応させた後、水300g中にブローして析出した結晶を濾過、乾燥した。
得られた2−メトキシ−3−アミノカルボニル−6−メトキシカルボニルナフタレン7.8gを1,2−ジクロロベンゼン80gに懸濁して、懸濁液にオキシ塩化リン2.8gを加えた。混合物を140℃で2時間反応させた後、80℃まで冷却した。次いで混合物に水80gを加えて十分に攪拌した。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄した後、乾燥して白色粉末5.8gを得た(融点:202℃、分解点:229℃)。この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図28に示す。
【実施例29】
2−メトキシ−3−シアノナフタレン−6−カルボン酸の合成

実施例28で得た2−メトキシ−3−シアノ−6−メトキシカルボニルナフタレン5.0gをメタノール50gに懸濁し、懸濁液に10%水酸化ナトリウム水溶液25gを加え、65℃で2時間反応させた。その後、混合物に塩酸水を添加することによって、中和および酸析を行って、析出した結晶を濾過した。水およびメタノールで洗浄した後、乾燥して白色粉末4.2gを得た(分解点:301℃)。この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図29に示す。
【実施例30】
2−メトキシ−3−シアノ−6−アミノカルボニルナフタレンの合成

実施例29で得た、2−メトキシ−3−シアノナフタレン−6−カルボン酸5gをテドラヒドロフラン50gに懸濁させ、懸濁液に塩化チオニル5.2gを添加した。混合物を45℃で1時間反応させた後、過剰な塩化チオニルを溶媒と共に留去した。残渣にテトラヒドロフラン50gを加えて溶解し、45℃に加温した。溶液にアンモニアガスを添加し、1時間反応させた。その後、析出した結晶を濾過し、水およびメタノールで洗浄した後、乾燥して白色粉末3.7gを得た(分解点:300℃)。この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図30に示す。
【実施例31】
2−メトキシ−3−シアノ−6−(2−クロロフェニルウレイドカルボニル)ナフタレンの合成

2−メトキシ−6−(2−クロロフェニルウレイドカルボニル)ナフタレン−3−カルボン酸4.0gをテトラヒドロフラン80gに懸濁し、懸濁液に塩化チオニル2.4gを添加した。混合物を45℃で1時間反応させた後、過剰な塩化チオニルを溶媒と共に留去した。残渣にテトラヒドロフラン80gを加えて溶解して45℃に加温した。溶液にアンモニアガスを添加し、1時間反応させて、析出した結晶を濾過した。このようにして得た2−メトキシ−3−アミノカルボニル−6−(2−クロロフェニルウレイドカルボニル)ナフタレン2.4gを1,2−ジクロロベンゼン60gに懸濁し、懸濁液にオキシ塩化リン1.1gを添加した。混合物を140℃で3時間反応させた後、80℃まで冷却した。次いで混合物に水60gを加えて十分に攪拌した。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄した後、乾燥して白色結晶1.4gを得た(分解点:271℃)。この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図31に示す。
実施例32−1
2−メトキシ−3−シアノ−6−(ベンゾ−1’,3’−チアゾ−ル−2’−イル)ナフタレンの合成(1)

2−メトキシ−6−(ベンゾ−1’,3’−チアゾ−ル−2’−イル)ナフタレン−3−カルボン酸3.4gをテトラヒドロフラン100gに懸濁させ、懸濁液に塩化チオニル2.4gを添加した。混合物を45℃で1時間反応させた後、過剰な塩化チオニルを溶媒と共に留去した。残渣にテトラヒドロフラン80gを加えて溶解し、45℃に加温した。溶液にアンモニアガスを添加し、1時間反応させて、析出した結晶を濾過した。このようにして得た2−メトキシ−3−アミノカルボニル−6−(ベンゾ−1’,3’−チアゾ−ル−2’−イル)ナフタレン2.4gを1,2−ジクロロベンゼン60gに懸濁し、懸濁液にオキシ塩化リン1.1gを添加した。混合物を140℃で3時間反応させた後、80℃まで冷却した。次いで混合物に水60gを加えて十分に攪拌した。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄した後、乾燥して黄色粉末2.0gを得た(融点:220℃、分解点:340℃)。この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図32に示す。
実施例32−2
2−メトキシ−3−シアノ−6−(ベンゾ−1’,3’−チアゾ−ル−2’−イル)ナフタレンの合成(2)
実施例32−1で得た化合物は、次の方法によっても合成できる。
実施例29で得た、2−メトキシ−3−シアノナフタレン−6−カルボン酸1.0gおよび2−アミノベンゼンチオール1.0gをスルホラン25gに懸濁し、懸濁液に三塩化リン0.8gを添加した。混合物を140℃で2時間反応させた後、室温まで冷却した。混合物にメタノール50gを加えた後、濾過した。得られた結晶を温水およびメタノールで洗浄した後、乾燥して黄色粉末1.1gを得た。
【実施例33】
2−メトキシ−3−フェニルアミノカルボニル−6−シアノナフタレンの合成

2−メトキシ−3−フェニルアミノカルボニルナフタレン−6−カルボン酸4.6gをテトラヒドロフラン45gに懸濁させ、懸濁液に塩化チオニル3.6gを添加した。混合物を45℃で1時間反応させた後、過剰な塩化チオニルを溶媒と共に留去した。残渣にテトラヒドロフラン50gを加えて溶解し、45℃に加温した。溶液にアンモニアガスを吹き込み、1時間反応させた後、析出した結晶を濾過した。このようにして得られた2−メトキシ−3−フェニルアミノカルボニル−6−アミノカルボニルナフタレン3.0gを1,2−ジクロロベンゼン40gに懸濁し、懸濁液にオキシ塩化リン1.0gを添加した。混合物を140℃で1時間反応させた後、80℃まで冷却した。混合物に水50gを加え十分に攪拌した。析出した結晶を濾過し、水およびメタノールで洗浄した後、乾燥して白色粉末1.8gを得た(融点:201℃、分解点:319℃)。この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図33に示す。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式〔1〕で表されるアミノカルボニルナフトール誘導体:

[式中、YおよびYは独立に、アミノカルボニル基、式〔2〕、式〔3〕、式〔4〕およびカルボキシル基;

からなる群から選択される基であり、YおよびYの少なくとも一方はアミノカルボニル基である;
nは1または2の整数である;
は、炭素原子数1〜20の分岐を有していてもよく置換基を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、および置換基を有していてもよい共役二重結合を有する複素環基からなる群から選択される基である;
は、炭素原子数1〜6の分岐を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい脂肪族基である;
Aは、置換基を有していてもよい芳香族基または置換基を有していてもよい共役二重結合を有する複素環基である;
Zは、−O−、−S−、および−NH−からなる群から選択される基である;
Qは、分岐を有していてもよい炭素原子数1〜6のアルキル基、分岐を有していてもよい炭素原子数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、およびニトロソ基からなる群から選択される基である;
mは、0〜3の整数である;
Rは、水素原子、アルカリ金属、炭素原子数が1〜20の分岐を有していてもよく置換基を有していてもよいアルキル基、炭素原子数が2〜20の分岐を有していてもよく置換基を有していてもよいアシル基、およびフェニルアルキル基からなる群から選択される基である]。
【請求項2】
Rが、炭素原子数が1〜20の分岐を有していてもよく置換基を有していてもよいアルキル基、およびフェニルアルキル基から選択される基である、請求項1記載のアミノカルボニルナフトール誘導体。
【請求項3】
式〔5〕で表されるカルボキシル基を有するナフトール誘導体のカルボキシル基を酸ハロゲン化物に変換する工程、および得られたナフトール誘導体の酸ハロゲン化物とアンモニアとを反応させる工程を含む、式〔6〕で表されるアミノカルボニルナフトール誘導体の製造方法:

[式中YおよびYは独立に、カルボキシル基、請求項1記載の式〔2〕、式〔3〕、および式〔4〕からなる群から選択される基であり、YおよびYの少なくとも一方はカルボキシル基である;R、Qおよびmは請求項1記載の式〔1〕と同意である];

[式中YおよびYは独立に、アミノカルボニル基、請求項1記載の式〔2〕、式〔3〕、および式〔4〕からなる群から選択される基であり、YおよびYの少なくとも一方はアミノカルボニル基である;R、Qおよびmは上記と同意である]。
【請求項4】
式〔7〕で表されるシアノナフトール誘導体およびその塩類:

[式中、YおよびYは独立に、シアノ基、請求項1記載の式〔2〕、式〔3〕、式〔4〕、カルボキシル基およびアミノカルボニル基からなる群から選択される基であり、YおよびYの少なくとも一方はシアノ基である;
Q、Rおよびmは請求項1記載の式〔1〕と同意である]。
【請求項5】
式〔8〕で表されるシアノナフトール誘導体およびその塩類:

[式中、Yはシアノ基、請求項1記載の式〔2〕、式〔3〕、式〔4〕、カルボキシル基およびアミノカルボニル基からなる群から選択される基である;R、Qおよびmは請求項1記載の式〔1〕と同意である]。
【請求項6】
式〔9〕で表されるカルボキシル基を有するナフトール誘導体のカルボキシル基をアミノカルボニル基に変換する工程、および得られたアミノカルボニル基を有するナフトール誘導体を脱水剤と反応させる工程を含む、式〔10〕で表されるシアノナフトール誘導体の製造方法:

[式中、Y’およびY’は独立に、カルボキシル基、請求項1記載の式〔2〕、式〔3〕および式〔4〕からなる群から選択される基であり、Y’およびY’の少なくとも一方はカルボキシル基である;
R’は炭素原子数が1〜20の分岐を有していてもよく置換基を有していてもよいアルキル基、およびフェニルアルキル基から選択される基である;
Qおよびmは請求項1記載の式〔1〕と同意である]。

[式中、Y’およびY10’は独立に、シアノ基、請求項1記載の式〔2〕、式〔3〕および式〔4〕からなる群から選択される基であり、Y’およびY10’の少なくとも一方はシアノ基である;
R’、Qおよびmは上記と同意である]。
【請求項7】
脱水剤がオキシ塩化リンである、請求項6記載のシアノナフトール誘導体の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/012231
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【発行日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512539(P2005−512539)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011014
【国際出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000146423)株式会社上野製薬応用研究所 (30)
【Fターム(参考)】