説明

アリールアミンの製造方法

【課題】 電子写真感光体や有機電界発光素子等の電子材料用素材およびその中間体として有用なアリールアミン、特にトリアリールアミン又はジアリールアミンを高純度且つ低コストで製造する方法を提供する。
【解決手段】 アミン化合物、塩素化芳香族化合物および無機臭化物を、または、アミン化合物、臭素化芳香族化合物および無機ヨウ化物を、銅元素含有触媒、塩基および複素環式第3級アミン化合物の存在下で共存させて反応させることを特徴とするアリールアミンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真感光体や有機電界発光素子等の電子材料用素材およびその中間体として有用なアリールアミン、特にトリアリールアミン又はジアリールアミンを高純度且つ低コストで製造する方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
アリールアミン化合物を合成する方法の一つとして、ハロゲン化芳香族化合物とアミン化合物との置換反応(非特許文献1参照)が知られている。この置換反応は芳香族アミン化合物と芳香族ハロゲン化合物とを塩基及び銅触媒存在下でカップリングするウルマン縮合反応(非特許文献2参照)に代表されるように、一般的に反応時間が長く、しかも高温反応であるため生成物の酸化や不均化、ニ量化反応等によって副生物が生成する欠点がある。この副生物の分離精製は非常に困難であり、電子材料用素材又はその中間体として使用するには高度に精製しなければならず、高コストとなる問題点があった。また、基質であるハロゲン化芳香族化合物はその構造に電子吸引性置換基を有し特に活性化された場合にのみ臭素化芳香族化合物も使用できるが、そうでない場合は高価なヨウ素化芳香族化合物を使用しなければ効率良く反応が進行せず、コスト高となる原因となっていた。
【0003】
反応を効率良く進行させ、且つ副生成物を抑制するウルマン縮合反応としては、例えば芳香族アミン化合物とヨウ素化芳香族化合物とを無溶媒または不活性炭化水素溶媒中、銅触媒と水酸化カリウムの存在下で反応するトリアリールアミンの製造方法(特許文献1参照)、クラウンエーテルやポリエチレングリコール等の界面活性剤を添加するトリアリールアミンの製造方法(特許文献2参照)等が提案されているが、純度的に十分満足のいくものではなく、高価なヨウ素化芳香族化合物を使用する問題点は解決されていない。また、高純度のアリールアミン化合物を製造するためにはより低温で反応することが好ましく、例えば芳香族アミン化合物とヨウ素化芳香族化合物とを芳香族溶媒中、銅触媒と水酸化カリウムと第3級アミン化合物の共存下120〜150℃で反応するトリアリールアミン化合物の製造方法(特許文献3参照)が開示されている。しかし、これらの方法も収率、純度共に満足のいくものではなく、特に電子材料用素材として使用するためには高度に精製する必要があった。また、これらの方法でも電子吸引性基の効果によって活性化されていない限り、安価な臭素化芳香族化合物は用いることが出来ないため、高価なヨウ素化芳香族化合物を使用しなければならずコスト的な課題が残されていた。
【0004】
ヨウ素化芳香族化合物は高価であるが、それはヨウ素元素が高価である理由による。ヨウ素化芳香族化合物の合成方法としては芳香族化合物を直接ヨウ素化する方法やアニリン類のサンドマイヤー型ヨウ素化反応(非特許文献3参照)、ハロゲン化芳香族化合物のハロゲン交換ヨウ素化反応(非特許文献3〜4参照)等が知られているが、大過剰のヨウ素源を使用し、収率も満足いくものではなかった。近年では臭素化芳香族化合物に銅触媒存在下、ジアミン化合物と無機ヨウ化物を反応させてハロゲン交換反応を行いヨウ素化芳香族化合物を得る方法が提案されており(非特許文献5〜6参照)、収率は改善されているが、依然として反応基質の臭素化芳香族化合物に対し当量以上のヨウ素元素を必要とし、反応時間も長いため高コストとなっている。
【0005】
また、より安価な塩素化芳香族化合物や臭素化芳香族化合物と、芳香族アミン化合物を芳香族溶媒中、パラジウム触媒、ホスフィン化合物、塩基の共存下に20〜140℃で反応する製造方法(特許文献4参照)が提案されているが、パラジウム触媒は非常に高価であるため工業的な製造方法とは言えず、収率や純度も満足のいくものではなかった。
【0006】
【特許文献1】特公平01−29182号
【特許文献2】特開2000−256276号
【特許文献3】米国特許第5648542号
【特許文献4】特開平10−139742号
【非特許文献1】社団法人日本化学会編、新実験化学講座、丸善株式会社刊、1978年、14−III巻、1342〜1350頁
【非特許文献2】ヘミシェ ベリヒテ(Chemische Berichte.),1903年,36巻,2382頁
【非特許文献3】社団法人日本化学会編、実験化学講座、丸善株式会社刊、第4版、1992年、19巻、465〜478頁
【非特許文献4】ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(Journal of Organic Chemistry),1986年,52巻,691頁
【非特許文献5】ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティ(Journal of American Chemical Society),2002年,124巻,14844頁
【非特許文献6】ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(Journal of Organic Chemistry),2004年,69巻,5578頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ヨウ素化芳香族化合物に比べ反応性が低い臭素化芳香族化合物や塩素化芳香族化合物でも効率良く使用でき、工業的に有用なアリールアミン、特にトリアリールアミンまたはジアリールアミンの新規な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明の上記目的は以下の方法によって達成される。
(i)
アミン化合物、臭素化芳香族化合物および無機ヨウ化物を、銅元素含有触媒、塩基および複素環式第3級アミン化合物の存在下で共存させて反応させることを特徴とするアリールアミンの製造方法。
(ii)
アミン化合物、塩素化芳香族化合物および無機臭化物を銅元素含有触媒、塩基および複素環式第3級アミン化合物の存在下で共存させて反応させることを特徴とするアリールアミンの製造方法。
(iii)
アミン化合物が芳香族アミン化合物であることを特徴とする、上記(i)または(ii)に記載のアリールアミンの製造方法。
(iv)
無機臭化物および無機ヨウ化物の使用量が、塩素化芳香族化合物または臭素化芳香族化合物1モルに対し1モル未満である上記(i)〜(iii)のいずれかに記載のアリールアミンの製造方法。
(v)
複素環式第3級アミン化合物が下記一般式(1)〜(3)からなる群から選択される化合物であることを特徴とする上記(i)〜(iv)のいずれかに記載のアリールアミンの製造方法。
【化1】

式(1)〜(3)中、R1〜R17は各々同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヒドロキシ基、オキシ基、オキソ基、カルボキシル基、カルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、アミノ基、イミノ基、アルドオキシム基、シアノ基、シアナート基、スルファニル基、チオ基、ハロゲン原子、複素環残基を表わす。R1〜R17の2つの置換基が結合して部分飽和環、芳香環、ヘテロ環を形成しても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安価な塩素化芳香族化合物および臭素化芳香族化合物から1工程で電子材料用素材、又はその中間体として有用なアリールアミン、特にトリアリールアミン又はジアリールアミンを高収率且つ高純度で製造することができ、本発明は極めて高い実用性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、複素環式第3級アミン化合物の共存下、原料である塩素化芳香族化合物に無機臭化物を作用させて置換基の塩素原子を臭素原子に、または原料である臭素化芳香族化合物に無機ヨウ化物を作用させて置換基の臭素原子をヨウ素原子に変換するハロゲン交換反応、並びに、生成したハロゲン化芳香族化合物とアミン化合物とのウルマン縮合反応、の2つの反応が同一反応系内で同時進行し、ジアリールアミン化合物またはトリアリールアミン化合物を合成する新規な製造方法である。本発明者は、無機臭素化物又は無機ヨウ素化物、並びに複素環式第3級アミン化合物との共存下の場合にのみ、この反応が効率よく進行することを見出し本発明を完成した。
なお、本発明では、ハロゲン交換反応に用いる試薬と基質、およびウルマン縮合反応に用いる試薬と基質とを一度に添加しハロゲン交換反応とウルマン縮合反応を同一系内で同時進行させても良いし、あるいはハロゲン交換反応を先に開始し、途中でアミン化合物を添加して更にハロゲン交換反応とウルマン縮合反応を同時に行なっても良い。
【0011】
ハロゲン化芳香族化合物と無機ハロゲン化合物との交換反応は種々開示されている(例えば、実験化学講座、第4版、丸善刊、1992年、465〜478頁;J.Org.Chem.,1986,52,691;J.Am.Chem.Soc.,2002,124,14844;J.Org.Chem.,2004,69,5578等)。これら従来の方法では当量以上の無機ハロゲン化合物を必要とする。しかし本発明の製造方法では過剰な無機ハロゲン化合物の共存は顕著に反応を阻害するため、無機臭化物および無機ヨウ素化物の使用量は等量未満が好ましい。また、本発明の複素環式第3級アミン化合物は反応系内で銅触媒と錯体を形成し、ハロゲン交換における塩素原子および臭素原子の活性化に寄与していると考えられる。
【0012】
従来、アリールアミン化合物の製造プロセスは原料の臭素化芳香族化合物若しくはヨウ素化芳香族化合物の製造、次いで目的物であるアリールアミン化合物の製造と2工程を要していたが、本発明によって安価な原料を用い且つ1工程で製造することが可能となり、大幅なコストダウンが可能となった。更に、本発明で得られるアリールアミン化合物は高温反応条件下でも極めて高純度であり、電子材料として使用する場合でも再結晶等の容易な精製方法で十分な特性を得ることができる。
以下に、本発明による塩素化芳香族化合物または臭素化芳香族化合物を用いた各合成例を挙げるが、本発明はこれに限定されない。
【0013】
【化2】

【0014】
<複素環式第3級アミン化合物>
次に、反応系に共存させる複素環式第3級アミン化合物について説明する。
本発明において、複素環式第3級アミン化合物としては、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0015】
【化3】

【0016】
式(1)〜(3)中、R1〜R17は各々同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヒドロキシ基、オキシ基、オキソ基、カルボキシル基、カルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、アミノ基、イミノ基、アルドオキシム基、シアノ基、シアナート基、スルファニル基、チオ基、ハロゲン原子、複素環残基を表わす。R1〜R17の2つの置換基が結合して部分飽和環、芳香環、ヘテロ環を形成しても良い。
【0017】
一般式(1)〜(3)で表わされる化合物において、R1〜R17が表わすアルキル基とは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表わす。
R1〜R17が表わすアルケニル基とは、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、イコセニル、ヘキサジエニル、ドデカトリエニル等の直鎖、分岐、または環状のアルケニル基を表わす。
R1〜R17が表わすアルキニル基とは、エチニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、シクロオクチニル、シクロノニニル、シクロデシニルなどの直鎖、分岐または環状のアルキニル基を表わす。
R1〜R17が表わすアリール基とは、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、フェナントリル、アントリル等の6〜10員の単環式または多環式アリール基を表わす。
【0018】
R1〜R17が表わすヒドロキシ基とは、ヒドロキシ基とそのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩を表わす。
R1〜R17が表わすオキシ基とは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、オクタデシルオキシ等のアルコキシ基;フェノキシ、トリルオキシ、キシリルオキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、バレリルオキシ、オクタノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ等のカルボニルオキシ基を表わす。
【0019】
R1〜R17が表わすカルボニル基とは、例えば、ホルミル;アセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル、バレリル、オクタノイル等のアルキルカルボニル基;ベンゾイル、トルオイル、ナフトイル、シンナモイル等のアリールカルボニル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、ノニルオキシカルボニル、デシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル、トリルオキシカルボニル、キシリルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等のアリールオキシカルボニル基を表わす。
R1〜R17が表わすカルバモイル基とは、カルバモイル;N−メチルカルバモイル、N−(tert−ブチル)カルバモイル、N−ドデシルカルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等のモノ置換カルバモイル基;N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジヘキシルカルバモイル、N,N−ジデシルカルバモイル、N,N−ジフェニルカルバモイル等のジ置換カルバモイル基を表わす。
【0020】
R1〜R17が表わすアミノ基とは、例えば、アミノ基;N−メチルアミノ、N−ブチルアミノ、N−ヘキシルアミノ、N−デシルアミノ、N−テトラデシルアミノ、N−オクタデシルアミノ、N−フェニルアミノ、N−ナフチルアミノ、N−ベンジルアミノ、N−フェネチルアミノ、ヒドロキシアミノ、カルボキシルアミノ等のモノ置換アミノ基;N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジヘプチルアミノ、N,N−ジオクチルアミノ、N,N−ドデシルアミノ、N,N−オクタデシルアミノ、N,N−ジフェニルアミノ、N−メチル−N−フェニルアミノ等のジ置換アミノ基;アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチリルアミノ、ペンタノイルアミノ、ヘキサノイルアミノ、バレリルアミノ、オクタノイルアミノ、ベンゾイルアミノ、ナフトイルアミノ等のカルボニルアミノ基;メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、n−プロポキシカルボニルアミノ、n−ブトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−ヘキシルオキシカルボニルアミノ、n−デシルオキシカルボニルアミノ、n−ドデシルオキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ等のアルコキシカルボニルアミノ基;フェノキシカルボニルアミノ、トリルオキシカルボニルアミノ、キシリルオキシカルボニルアミノ、ナフチルオキシカルボニルアミノ等のアリールオキシカルボニルアミノ基;メチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、トリルスルホニルアミノ等のスルホニルアミノ基;ウレイド基;N−メチルウレイド、N−ブチルウレイド、N−ヘキシルウレイド、N−デシルウレイド、N−テトラデシルウレイド、N−オクタデシルウレイド、N−フェニルウレイド、N−ナフチルウレイド等のモノ置換ウレイド基;N,N−ジエチルウレイド、N,N−ジヘプチルウレイド、N,N−ジオクチルウレイド、N,N−ドデシルウレイド、N,N−オクタデシルウレイド、N,N−ジフェニルウレイド、N−メチル−N−フェニルウレイド等のジ置換ウレイド基を表わす。
R1〜R17が表わすイミノ基とはイミノ基;メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等の直鎖、分岐のアルキルイミノ基;ヒドロキシイミノ基を表わす。
【0021】
R1〜R17が表わすシアナート基とはシアナート、イソシアナート、チオシアナート、イソチオシアナート等を表わす。
R1〜R17が表わすチオ基とは、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ、ノニルチオ、デシルチオ、ウンデシルチオ、ドデシルチオ、トリデシルチオ、テトラデシルチオ、ペンタデシルチオ、ヘキサデシルチオ、ヘプタデシルチオ、オクタデシルチオ、ノナデシルチオ、イコシルチオ、シクロプロピルチオ、シクロブチルチオ、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオ、シクロヘプチルチオ、シクロオクチルチオ、シクロノニルチオ、シクロデシルチオ等の直鎖、分岐または環状のアルキルチオ基;フェニルチオ、ナフチルチオ等のアリールチオ基;アセチルチオ、プロピオニルチオ、ブチリルチオ、ペンタノイルチオ、ヘキサノイルチオ、バレリルチオ、オクタノイルチオ等のアルキルカルボニルチオ基、ベンゾイルチオ、ナフトイルチオ等のアリールカルボニルチオ基を表わす。
【0022】
R1〜R17が表わすハロゲン原子とはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を表わす。
R1〜R17が表わす複素環残基とは、例えば、フラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピペリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、トリアジン、モルホリン、インドール、イソインドール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノリジン、シンノリン、キナゾリン、キノキザリン、フタラジン、ナフチリジン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナントリジン、フェナントロリン等の5〜10員の単環式、ニ環式または三環式の窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個の原子を含有するヘテロ環基を表わす。
【0023】
これらの置換基は更に置換基を有していてもよく、反応に関与しないものであれば特に制限されない。具体的には、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、オキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、アミノ基、イミノ基、シアノ基、スルファニル基、チオ基、ハロゲン原子、複素環残基等が挙げられる。
【0024】
R1〜R17の2つの置換基が結合して部分飽和環、芳香環、ヘテロ環を形成しても良い。具体的には、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロヘプタトリエン等の部分飽和炭化水素環;ベンゼン、ナフタレン等の芳香環;フラン、オキソラン、ジオキソラン、チオフェン、チオラン、ピロール、ピロリン、ピロリジンピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピラン、オキサン、ジオキサン、チアン、ジチアン、ピリジン、ピペリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、トリアジン、モルホリン、チアジン等のヘテロ環が挙げられる。
これらの環は更に置換基を有していてもよく、反応に関与しないものであれば特に制限されない。具体的には、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、オキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、アミノ基、イミノ基、シアノ基、スルファニル基、チオ基、ハロゲン原子、複素環基等が挙げられる。
【0025】
本発明において、一般式(1)で示される複素環式第3級アミン化合物の具体例としては、例えばピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2−シアノピリジン、2−シアノ−3−メチルピリジン、2−シアノ−6−メチルピリジン、3−シアノピリジン、4−シアノピリジン、2−ホルミルピリジン、3−ホルミルピリジン、4−ホルミルピリジン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、5−エチル−2−メチルピリジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2−メトキシピリジン、3−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、3−ヒドロキシ−2−メチルピリジン、5−ヒドロキシ−2−メチルピリジン、2−ピリジンメタノール、3−ピリジンメタノール、4−ピリジンメタノール、2−クロロピリジン、3−クロロピリジン、3−ピリジルアセトニトリル、2−アセチルピリジン、3−アセチルピリジン、4−アセチルピリジン、2−ピリジル酢酸、2,4,6−トリメチルピリジン、2,3,5−トリメチルピリジン、ピリジン−2−アルドオキシム、ピリジン−3−アルドオキシム、ピリジン−4−アルドオキシム、4−ジメチルアミノピリジン、6−メチル−2−ピリジンメタノール、2−ピリジンカルボン酸、3−メチル−2−ピリジンカルボン酸、6−メチル−2−ピリジンカルボン酸、3−(カルボキシメチル)−2−ピリジンカルボン酸、2−ピリジンカルボン酸、3−ヒドロキシ−2−ピリジンカルボン酸、6−クロロ−2−ピリジンカルボン酸、メチル 2−ピリジンカルボキシレート、エチル 2−ピリジンカルボキシレート、ブチル 2−ピリジンカルボキシレート、エチル 6−メチル−2−ピリジンカルボキシレート、メチル 6−クロロ−2−ピリジンカルボキシレート、2,3−ピリジンジカルボン酸、6−メチル−2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、4−ヒドロキシ−2,6−ピリジンジカルボン酸、6−メチル−2,4,5−ピリジントリカルボン酸、ジメチル 2,3−ピリジンジカルボキシレート、ジメチル 2,5−ピリジンジカルボキシレート、ジメチル 2,6−ピリジンジカルボキシレート、ジエチル 2,6−ピリジンジカルボキシレート等のピリジン誘導体;2−キノリンカルボン酸、4−メトキシ−2−キノリンカルボン酸、4−ヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、4、8−ジヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、8−ヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、2−(2−ピリジル)−4−キノリンカルボン酸、1−イソキノリンカルボン酸、3−イソキノリンカルボン酸、エチル 4−ヒドロキシ−2−キノリンカルボキシレート、メチル 3−イソキノリンカルボキシレート等のキノリン、イソキノリン誘導体が挙げられる。
【0026】
一般式(2)で示される複素環式第3級アミン化合物の具体例としては、例えば2,2’−ビピリジン、2,3’−ビピリジン、2,4’−ビピリジン、4,4’−ビピリジン、6−メチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメトキシ−2,2’−ビピリジン、2,2’−ビピリジン−3,3’−ジオール、2−(2−ピリジル)キノリン、2,2’−ビピリジン−3,3’−ジカルボン酸、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸、2,2’−ビピリジン−5,5’−ジカルボン酸、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルバルデヒド、4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジフェニル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジノニル−2,2’−ビピリジン等のビピリジン誘導体;2,2’−ビキノリン、2,2’−ビキノリン−4,4’−ジカルボン酸等のビキノリン誘導体;2,2’:6’,2’’−ターピリジン、4’−クロロ−2,2’:6’,2’’−ターピリジン、4,4’4’’−トリ−tert−ブチル−2,2’:6’,2’’−ターピリジン等のターピリジン誘導体;1,7−フェナントロリン、4,7−フェナントロリン、1,10−フェナントロリン、4−メチル−1,10−フェナントロリン、5−メチル−1,10−フェナントロリン、5−シアノ−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジメチル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジメチル−1,10−フェナントロリン、1,10−フェナントロリン−5,6−ジオン、3,4,7,8,−テトラメチル−1,10−フェナントロリン、5−フェニル−1,10−フェナントロリン、4、7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、5−クロロ−1,10−フェナントロリン、5−ニトロ−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−4、7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン等のフェナントロリン誘導体が挙げられる。
【0027】
一般式(3)で示される複素環式第3級アミン化合物の具体例としては、例えばイミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−ブチリルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、5−クロロ−1−メチルイミダゾール、4,5−ジクロロイミダゾール、4−イミダゾールメタノール、1−アセチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール−5−カルバルデヒド、1−メチルイミダゾール−2−カルバルデヒド、1−メチル−4−ニトロイミダゾール、1−メチル−5−ニトロイミダゾール、2−メチル−5−ニトロイミダゾール、5−メチル−4−ニトロイミダゾール、2−(1H−イミダゾール−4−イル)エタノール、4−イミダゾールカルボン酸、4,5−ジシアノイミダゾール、2−アミノ−4,5−ジシアノイミダゾール、5−クロロ−1−エチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ベンズイミダゾール、1−メチルベンズイミダゾール、2−メチルベンズイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、2−エチル−ベンズイミダゾール、1,2−ジメチル−ベンズイミダゾール、5,6−ジメチル−ベンズイミダゾール等のベンズイミダゾール誘導体が挙げられる。
【0028】
これらの化合物の中でも好ましくは、2−ピリジンカルボン酸、3−メチル−2−ピリジンカルボン酸、6−メチル−2−ピリジンカルボン酸、3−(カルボキシメチル)−2−ピリジンカルボン酸、2−ピリジンカルボン酸、3−ヒドロキシ−2−ピリジンカルボン酸、6−クロロ−2−ピリジンカルボン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸、6−メチル−2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、4−ヒドロキシ−2,6−ピリジンジカルボン酸、6−メチル−2,4,5−ピリジントリカルボン酸等の2−ピリジンカルボン酸類;2−キノリンカルボン酸、4−メトキシ−2−キノリンカルボン酸、4−ヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、4、8−ジヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、8−ヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸等の2−キノリンカルボン酸類;1−イソキノリンカルボン酸等の1−イソキノリンカルボン酸類;3−イソキノリンカルボン酸等の3−イソキノリンカルボン酸類;2,2’−ビピリジン、6−メチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメトキシ−2,2’−ビピリジン、2,2’−ビピリジン−3,3’−ジオール、2−(2−ピリジル)キノリン、2,2’−ビピリジン−3,3’−ジカルボン酸、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸、2,2’−ビピリジン−5,5’−ジカルボン酸、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルバルデヒド、4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジフェニル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジノニル−2,2’−ビピリジン等の2,2’−ビピリジン誘導体;2,2’−ビキノリン、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビキノリン等の2,2’−ビキノリン誘導体;1,10−フェナントロリン、4−メチル−1,10−フェナントロリン、5−メチル−1,10−フェナントロリン、5−シアノ−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジメチル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジメチル−1,10−フェナントロリン、3,4,7,8,−テトラメチル−1,10−フェナントロリン、5−フェニル−1,10−フェナントロリン、4、7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、5−クロロ−1,10−フェナントロリン、5−ニトロ−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−4、7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン等の1,10−フェナントロリン誘導体が挙げられる。
【0029】
より好ましくは2−ピリジンカルボン酸類、2,2’−ビピリジン類、1,10−フェナントロリン類であり、更に好ましくは1,10−フェナントロリン、4−メチル−1,10−フェナントロリン、5−メチル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジメチル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジメチル−1,10−フェナントロリン、3,4,7,8,−テトラメチル−1,10−フェナントロリン、5−フェニル−1,10−フェナントロリン、4、7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、5−クロロ−1,10−フェナントロリン等の1,10−フェナントロリン誘導体である。
【0030】
これらの複素環式第3級アミン化合物はそのまま反応系に添加しても良いし、予め複素環式第3級アミン化合物と銅元素含有触媒とで銅錯体を調製してそれを反応系に添加しても良い。銅錯体は公知の方法(例えば、J.Chem.Soc.,1969,A,2219;Aust.J.Chem.,1964,17,219;Z.Anorg.Chem.,1936,227,237;J.Inomg.Nucl.Chem.,1959,9,211等)により調製することができ、例えば、銅元素含有触媒および上記複素環式第3級アミン化合物を各々水又はアルコール等の有機溶剤に溶解したものを混合し、析出した結晶を濾別後乾燥する方法や、銅元素含有触媒および複素環式第3級アミン化合物の混合液を加熱攪拌後に濃縮乾固して乾燥する方法が挙げられる。また、これら銅錯体は市販されており、市販品をそのまま用いても有効である。
複素環式第3級アミン化合物の使用量は通常、銅触媒1モルに対して0.1〜6.0モル、より好ましくは0.5〜3.0モル、更に好ましくは0.8〜2.5モルである。
【0031】
<無機臭化物および無機ヨウ化物>
次に本発明で用いる無機臭化物もしくは無機ヨウ化物について説明する。
本発明において臭素化芳香族化合物を用いる場合には無機ヨウ化物の共存下で反応を行なう。用いる無機ヨウ化物は、具体的にはLiI、NaI、KI、KI3、RbI、RbI3、CsI、CsI3等の第1族無機ヨウ化物;BeI2、MgI2、CaI2、SrI2,BaI2等の第2族無機ヨウ化物;ScI3、YI3、LaI2、LaI3等の第3族無機ヨウ化物;TiI2、TiI3、TiI4、ZrI2、ZrI3、ZrI4、HfI3、HfI4等の第4族無機ヨウ化物;VI2、VI3、NbI3、NbI4、NbI5、Nb38、Nb611、TaI3、TaI5、Ta614、Ta615等の第5族無機ヨウ化物;CrI2、CrI3、MoI2、MoI3、MoI4、WI2、WI3、WI4等の第6族無機ヨウ化物;MnI2、ReI2、ReI3、ReI4等の第7族無機ヨウ化物;FeI、FeI2、FeI2、FeI3、Fe38、RuI、RuI2、RuI3、OsI、OsI2、OsI3等の第8族無機ヨウ化物;CoI、CoI2、RhI2、RhI3、IrI、IrI2、IrI3、IrI4等の第9族無機ヨウ化物;NiI2、PdI2、PtI2、PtI3、PtI4等の第10族無機ヨウ化物;CuI、CuI2、AgI、AuI、AuI3等の第11族無機ヨウ化物;ZnI2、CdI2,HgI2、Hg22等の第12族無機ヨウ化物;B26I、BI3、B24、AlI3、GaI、GaI2、GaI3、InI,InI2,InI3,TlI、TlI3等の第13族無機ヨウ化物;SiI4、GeI2、GeI4、SnI2,SnI4,PbI2等の第14族無機ヨウ化物;NI3、NH4I、NH43、PI3、P24、AsI3、As24、SbI3、Sb24、BiI3等の第15族無機ヨウ化物;TeI2、TeI4、PoI4等の第16族無機ヨウ化物;CeI2、CeI3、EuI2、EuI3等のランタノイド族無機ヨウ化物;ThI2、ThI3、UI3、UI4、NpI3、NpI4、PuI3等のアクチノイド族無機ヨウ化物等が挙げられる。
これらの中でも、LiI、NaI、KI、CaI2、BaI2、CuI、NH4Iの無機ヨウ化物は市販品を容易に入手でき、添加効果も高いので好ましい。
【0032】
本発明において塩素化芳香族化合物を用いる場合には無機臭化物の共存下で反応を行なう。用いる無機臭化物は、具体的にはLiBr、NaBr、KBr、RbBr、CsBr等の第1族無機臭化物;BeBr2、MgBr2、CaBr2、SrBr2,BaBr2等の第2族無機臭化物;ScBr3、YBr3、LaBr3等の第3族無機臭化物;TiBr2、TiBr3、TiBr4、ZrBr2、ZrBr3、ZrBr4、HfBr2、HfBr3、HfBr4等の第4族無機臭化物;VBr2、VBr3、VBr4、NbBr3、NbBr4、NbBr5、Nb3Br8、Nb6Br14、TaBr3、TaBr4、TaBr5、Ta6Br14、Ta6Br15等の第5族無機臭化物;CrBr2、CrBr3、MoBr2、MoBr3、MoBr4、WBr2、WBr3、WBr4、WBr5、WBr6等の第6族無機臭化物;MnBr2、MnBr3、TcBr4、ReBr3、ReBr4、ReBr5等の第7族無機臭化物;FeBr2、FeBr3、Fe3Br8、RuBr2、RuBr3、OsBr3、OsBr4等の第8族無機臭化物;CoBr2、RhBr2、RhBr3、IrBr、IrBr2、IrBr3、IrBr4等の第9族無機臭化物;NiBr2、PdBr2、PtBr2、PtBr3、PtBr4等の第10族無機臭化物;CuBr、CuBr2、AgBr、AuBr、AuBr3等の第11族無機臭化物;ZnBr2、CdBr2,HgBr2、Hg2Br2等の第12族無機臭化物;B25Br、BBr3、B2Br4、AlBr3、GaBr、GaBr2、GaBr3、InBr,InBr2,InBr3,In4Br7、In5Br7、In7Br9、TlBr、TlBr2、TlBr3、Tl2Br3等の第13族無機臭化物;SiBr2、SiBr4、GeBr2、GeBr4、SnBr2,SnBr4,PbBr2等の第14族無機臭化物;NBr3、N25Br、NOBr、NH4Br、PBr3、PBr5、POBr3、AsBr3、As24、SbBr3、BiBr3等の第15族無機臭化物;SBr、SBr2、SBr4、S2Br2、SOBr2、SeBr4、Se2Br4、SeOBr2、TeBr2、TeBr4、PoBr2、PoBr4等の第16族無機臭化物;CeBr3、EuBr2、EuBr3等のランタノイド族無機臭化物;ThBr4、UBr3、UBr4、UBr5、NpBr3、NpBr4、PuBr3等のアクチノイド族無機臭化物等が挙げられる。
これらの中でも、LiBr、NaBr、KBr、MgBr2、CaBr2、BaBr2、CuBr、CuBr2、NH4Brの無機臭化物は市販品を容易に入手でき、添加効果も高いので好ましい。
【0033】
これらの無機臭化物および無機ヨウ化物は市販品を入手してそのまま反応系に添加しても良いし、市販されていないものでも公知の方法(例えば、中原勝よし著、無機化合物・錯体辞典、講談社サイエンティフィク刊、第1版、1997年等)で調製してそれを用いても良い。これら無機臭化物および無機ヨウ化物は1種単独、又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
無機臭化物および無機ヨウ化物の使用量は、反応の阻害防止やコストの観点から、塩素化芳香族化合物および臭素化芳香族化合物1モルに対して好ましくは1.0モル未満、より好ましくは0.7モル以下である。適正量の無機臭化物又は無機ヨウ化物を共存することによって反応が極めて短時間に終了し、高純度なアリールアミン化合物を製造することができる。これら無機臭化物および無機ヨウ化物は触媒量で効果は得られるが、反応系内に存在する塩素化芳香族化合物および臭素化芳香族化合物1モルに対し0.0001モル未満では十分な効果が得られないため、通常は0.0001モル以上1.0モル未満を使用する。好ましくは0.001〜0.7モル、より好ましくは0.005〜0.5モル、更に好ましくは0.01〜0.4モルである。
【0034】
<銅元素含有触媒>
本発明で使用する銅元素含有触媒(銅触媒)は特に制限されず、ウルマン縮合反応で通常使用する触媒を用いることができる。例えば、銅粉、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、沃化銅、酸化第一銅、酸化第二銅、硫酸銅、硝酸銅、炭酸銅、水酸化第二銅等が挙げられ、好ましくは塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、沃化銅、硫酸銅である。これらの銅触媒の使用量は臭素化芳香族化合物又は塩素化芳香族化合物1モルに対して通常0.0001〜0.4モル、好ましくは0.0005〜0.3モル、更に好ましくは0.001〜0.2モルである。
【0035】
<塩基>
本発明で使用する塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸化物;燐酸三リチウム、燐酸三ナトリウム、燐酸三カリウム等のアルカリ金属燐酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウム−tert−ブトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシドが挙げられる。上記中アルカリ金属アルコキシドは反応系にそのまま添加するか、またはアルカリ金属、水素化アルカリ金属、水酸化アルカリ金属等とアルコールから調製して使用してもよい。これらの塩基のなかで好ましくは炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸化物、燐酸三ナトリウムや燐酸三カリウム等のアルカリ金属燐酸化物である。
これらの塩基の使用量はアミン化合物に対して1.0〜4.0等量、好ましくは1.1〜3.0等量、より好ましくは1.2〜2.0等量である。
【0036】
本発明の製造方法では反応溶媒を使用しなくても良いが、必要に応じて芳香族化合物や脂肪族化合物を反応溶媒として用いることができる。具体的には1気圧において100℃以上の沸点を有する以下の溶媒が挙げられる。
(a)ハロゲン化されてもよい芳香族炭化水素化合物:トルエン、キシレン、メシチレン、デュレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジフェニルメタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等。
(b)環骨格がジヒドロ化、テトラヒドロ化、ヘキサヒドロ化、オクタヒドロ化、デカヒドロ化等、部分的に水素添加した水素化芳香族炭化水素化合物:1,4−ジヒドロナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、9,10−ジヒドロアントラセン、9,10−ジヒドロフェナントレン、4,5,9,10−テトラヒドロピレン、1,2,3,6,7,8−ヘキサヒドロピレン、ドデカヒドロトリフェニレン等。
(c)飽和脂肪族化合物:オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、2−メチルドデカン、4−エチルウンデカン、テトラデカン、ペンタデカン、3,3−ジメチルトリデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、2−メチル−4−エチルテトラデカン等。
(d)不飽和脂肪族化合物:2−ヘプチン、3−ヘプチン、2−オクテン、3−ノネン、1−デシン、1−ウンデセン、4−ドデセン、3,3−ジメチル−1−デセン、1,3,5−ドデカトリエン、5−トリデセン、3−メチル−4−エチル−2−デセン、1−ドデシン、3−ドデセン−1−イン、1−トリデシン、5,5−ジメチル−3−ウンデセン−1−イン、5−エチニル−1,3−ドデカジエン等や、オシメン、ミルセン、スクアレン等。
(e)飽和脂環式化合物:ジシクロヘキシル、デカヒドロナフタレン、ドデカヒドロフルオレン等。
(f)不飽和脂環式化合物:α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、(+)−α−フェランドレン、(−)−β−フェランドレン、(−)−1−p−メンテン、(+)−3−メンテン、ジペンテン、(+)−リモネン、(+)−サビネン、(+)−α−ピネン、(+)−β−ピネン、(−)−β−カジネン、(−)−β−カリオフィレン、(−)−β−サンタレン、(−)−α−セドレン、(+)−β−セリネン、(−)−β−ビサボレン、α−フムレン等。
【0037】
上記溶媒のなかでも、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン等のアルキルベンゼンや、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、フェランドレン、テルピノレン等のテルペンが好ましい。これらの溶媒を用いた場合は不純物の生成が抑制され、高収率で高純度なアリールアミンを製造することができる。
これら溶媒は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの反応溶媒を用いる場合、その使用量は通常原料の塩素化芳香族化合物および臭素化芳香族化合物1モルに対して100〜1000mlである。
【0038】
本発明における反応温度は100℃以上であれば反応は進行するが、反応時間が短縮でき、また目的物であるアリールアミン化合物が高純度で得られることから、160℃以上であることが好ましい。より好ましくは160〜270℃、更に好ましくは180〜260℃、特に好ましくは200〜250℃である。
反応時間はアミン化合物および塩素化芳香族化合物および臭素化芳香族化合物の反応部位の数、反応温度、また塩素化芳香族化合物および臭素化芳香族化合物を反応基質兼溶媒として用いる場合等、個々の反応によって異なるが、通常1〜12時間程度で反応が完結する。
【0039】
<塩素化芳香族化合物および臭素化芳香族化合物>
本発明で使用される塩素化芳香族化合物および臭素化芳香族化合物は下記一般式(4)で表わされる化合物である。
【0040】
【化4】

【0041】
一般式(4)中、Qは塩素原子または臭素原子を表わす。q1は0〜5の整数を表わす。Kaが複数存在する場合は各々独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジ置換アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ヘテロ環残基、ハロゲン原子または−L1−Kbで表される基を表わす。L1は二価の連結基を表わす。Kbはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジ置換アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ヘテロ環残基、またはハロゲン原子を表わす。Ka、Kb、L1で表わされる基は各々置換基を有していてもよい。複数のKaによって更に環を形成してもよい。
式(4)で表わされる塩素化芳香族化合物および臭素化芳香族化合物は、より好ましくは下記一般式(5)または(6)で表わされる化合物である。
【0042】
【化5】

【0043】
式(5)および(6)中、Qは前記と同じ意味を有する。Xは二価の連結基を表わし、q2が2以上の場合にはXは同じでも異なっていてもよい。Xは好ましくは−C(R32)(R33)−、酸素原子、硫黄原子、−N(R34)−、シクロアルキレン基、アリーレン基、二価のヘテロ環残基、−N=N−、または−C(R32)=C(R33)−であり、更に好ましくは3〜10員のシクロアルキレン基、6〜10員の単環式または二環式のアリーレン基、フリレン基、チエニレン基、ピリジレン基である。q2は0〜3の整数を表わし、q2が0の場合には単結合を表わす。R18〜R34は各々独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジ置換アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ヘテロ環残基、またはハロゲン原子を表わす。R18〜R22およびR23〜R34における2つの基によって更に環を形成してもよい。
R23〜R34において、二価の連結基を介して式(6)で表わされる構造をもう1つ有していてもよい。この場合、複数の式(6)で表わされる構造において、両者の連結部位は同一でも異なっても良い。
【0044】
一般式(5)、(6)において、R18〜R34は具体的には水素原子;メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルなどの直鎖、分岐または環状の炭素数1〜20のアルキル基;ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、イコセニル、ヘキサジエニル、ドデカトリエニル等の直鎖、分岐、または環状の炭素数2〜20のアルケニル基;エチニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、シクロオクチニル、シクロノニニル、シクロデシニル等の直鎖、分岐または環状の炭素数2〜20のアルキニル基;フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントリル等の単環式またはニ〜四環式アリール基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、オクタデシルオキシ等の炭素数1〜20のアルコキシ基;フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;ジメチルアミノ、N−エチル−N−フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、N−フェニル−N−ナフチルアミノ等のジ置換アミノ基;ニトロ基;カルボキシル基とそのエステル;フリル、チエニル、ピリジル等のヘテロ環残基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を表わす。好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、カルボキシル基、ヘテロ環残基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ニトロ基カルボキシル基である。また、二価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜10)、シクロアルキレン基(好ましくは3〜10員)、アリーレン基(好ましくは6〜10員)、二価のヘテロ環残基が好ましく挙げられ、この中でもシクロアルキレン基、アリーレン基、フリレン基、チエニレン基、ピリジレン基が特に好ましい。
【0045】
一般式(4)、(5)、(6)において、Ka、Kb、L1、R18〜R34は更に置換基を有してもよく、反応に関与しないものであれば特に制限されない。具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等のアルキル基;ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、イコセニル、ヘキサジエニル、ドデカトリエニル等のアルケニル基;エチニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、シクロオクチニル、シクロノニニル、シクロデシニル等のアルキニル基;フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントリル等の単環式またはニ〜四環式アリール基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等のアルコキシ基;フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;ジメチルアミノ、N−エチル−N−フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、N−フェニル−N−ナフチルアミノ等のジ置換アミノ基;ニトロ基;カルボキシル基とそのエステル;フリル、チエニル、ピリジル等のヘテロ環残基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ジ置換アミノ基、ニトロ基、ヘテロ環残基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基である。
【0046】
また、複数のKa、R18〜R22またはR23〜R34における2つの基によって更に環を形成してもよい。具体的にはシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの飽和環;シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン等の部分飽和環;ベンゼン、ナフタレン等の芳香環;ピロリジン、ピリジン、ピラン、オキソラン、チオラン、オキサン、チアン等のヘテロ環が挙げられ、好ましくは飽和環、芳香環である。
【0047】
一般式(6)のXにおけるシクロアルキレン基とは具体的にはシクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン等を表わす。またアリーレン基とは具体的にはフェニレン、ナフチレン、アントリレン、フェナントリレン、ピレニレン等を表わす。
【0048】
<アミン化合物>
本発明で使用するアミン化合物は、具体的にはアンモニア、アルカリ金属アミドなどの無機含窒素化合物;メチルアミン、iso−プロピルアミン、tert−ブチルアミン、n−ドデシルアミン、シクロヘキシルアミン等の鎖状、分岐状または環状のアルキルアミン類;ビニルアミン、エチニルアミン;アニリン、ナフチルアミン、ジフェニルアミン等の芳香族アミン類;ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピロール、インドール、カルバゾール等のヘテロ環化合物類であり、特に制限無く使用できるが、好ましくは芳香族アミン類である。芳香族アミン類で好ましくは、下記一般式(7)で表わされる化合物である。
【0049】
【化6】

【0050】
式(7)中、q3は0〜5の整数を表わす。Kcが複数存在する場合は各々独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジ置換アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ヘテロ環残基、ハロゲン原子または−L2−Keで表わされる基を表わす。Kdは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、、カルボニル基、スルホニル基、ヘテロ環残基、−L2−Keで表わされる基を表わす。L2は二価の連結基を表わす。
Keはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジ置換アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ヘテロ環残基、ハロゲン原子を表わす。Kc、Kd、Ke、L2で表わされる基は各々置換基を有していてもよい。複数のKcによって更に環を形成してもよい。
本発明において使用されるアミン化合物は、より好ましくは下記一般式(8)もしくは(9)で表わされる化合物である。
【0051】
【化7】

【0052】
式(8)および(9)中、Yは二価の連結基を表わし、q4が2以上の場合はYは同じでも異なっても良い。Yは好ましくは−C(R51)(R52)−、酸素原子、硫黄原子、−N(R53)−、シクロアルキレン基、アリーレン基、二価のヘテロ環残基、−N=N−、または−C(R51)=C(R52)−であり、更に好ましくは3〜10員のシクロアルキレン基、6〜10員の単環式または二環式のアリーレン基、フリレン基、チエニレン基、ピリジレン基である。q4は0〜3の整数を表わし、q4が0の場合は単結合を表わす。
芳香族アミン類の中でも、より好ましくは下記一般式(8)または(9)で表わされる化合物である。
【0053】
R35〜R39、R41〜R44、R46〜R53は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジ置換アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ヘテロ環残基、ハロゲン原子を表わす。R40、R45は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、ヘテロ環残基を表わす。また、R35〜R40およびR41〜R53において2つの基によって飽和環、不飽和環、複素環を形成してもよい。R41〜R53において、二価の連結基を介して式(9)で表わされる構造をもう1つ有していてもよい。この場合、複数の式(9)で表わされる構造において、両者の連結部位は同一でも異なっても良い。
【0054】
R35〜R39、R41〜R44、R46〜R53は、具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルなどの直鎖、分岐または環状の炭素数1〜20のアルキル基;ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、イコセニル、ヘキサジエニル、ドデカトリエニル等の直鎖、分岐、または環状の炭素数2〜20のアルケニル基;エチニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニル、シクロオクチニル、シクロノニニル、シクロデシニル等の直鎖、分岐または環状の炭素数2〜20のアルキニル基;フェニル、ナフチル等の単環式またはニ環式アリール基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、オクタデシルオキシ等の炭素数1〜20のアルコキシ基;フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジヘプチルアミノ、N,N−ジオクチルアミノ、N,N−ドデシルアミノ、N,N−オクタデシルアミノ、N,N−ジフェニルアミノ、N−メチル−N−フェニルアミノ等のジ置換アミノ基;ニトロ基;カルボキシル基とそのエステル;フリル、チエニル、ピリジル等のヘテロ環残基;フッ素、塩素のハロゲン原子を表わす。
【0055】
R40、R45は、具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルなどの直鎖、分岐または環状の炭素数1〜20のアルキル基;ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、イコセニル、ヘキサジエニル、ドデカトリエニル等の直鎖、分岐または環状の炭素数2〜20のアルケニル基;エチニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニル、シクロオクチニル、シクロノニニル、シクロデシニル等の直鎖、分岐または環状の炭素数2〜20のアルキニル基;フェニル、ナフチル等の単環式またはニ環式アリール基;カルボキシル基;ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル、バレリル、オクタノイル等のアシル基;ベンゾイル、トルオイル、ナフトイル、シンナモイル等のアリールカルボニル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、ノニルオキシカルボニル、デシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル、トリルオキシカルボニル、キシリルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等のアリールオキシカルボニル基;メチルスルホニル、フェニルスルホニル、トリルスルホニル等のスルホニル基;フリル、チエニル、ピリジル等のヘテロ環残基を表わす。
R18〜R22、R24〜R27、R29〜R36において、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジ置換アミノ基、ヘテロ環残基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ジ置換アミノ基である。
R23およびR28において、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環残基、カルボニル基、スルホニル基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、スルホニル基である。
【0056】
一般式(7)、(8)、(9)において、Kc、Kd、Ke、L2、R35〜R53は更に置換基を有してもよく、反応に関与しないものであれば特に制限されない。具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等のアルキル基;ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、イコセニル、ヘキサジエニル、ドデカトリエニル等のアルケニル基;エチニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、シクロオクチニル、シクロノニニル、シクロデシニル等のアルキニル基;フェニル、ナフチル、フェナントレン、アントラセン等の単環式またはニ〜四環式アリール基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等のアルコキシ基;フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;アミノ基;メチルアミノ、n−ヘキシルアミノ、フェニルアミノ、ジメチルアミノ、N−エチル−N−フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、N−フェニル−N−ナフチルアミノ等の置換アミノ基;ニトロ基;カルボキシル基とそのエステル;フリル、チエニル、ピリジル等のヘテロ環残基が挙げられる。好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アミノ基、置換アミノ基、ニトロ基、ヘテロ環残基であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アミノ基、置換アミノ基である。また、二価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜10)、シクロアルキレン基(好ましくは3〜10員)、アリーレン基(好ましくは6〜10員)、二価のヘテロ環残基等が挙げられ、この中でもシクロアルキレン基、アリーレン基、フリレン基、チエニレン基、ピリジレン基が特に好ましい。
【0057】
また、複数のKc、R35〜R40又はR41〜R53における2つの基によって更に環を形成してもよい。具体的にはシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の飽和環;シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン等の部分飽和環;ベンゼン、ナフタレン等の芳香環;ピロリジン、ピロール、ピペリジン、ピリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、アザシクロヘプタン、アザシクロヘプテン、アザシクロヘプタトリエン、オキソラン、チオラン、オキサン、チアン等のヘテロ環が挙げられ、好ましくは飽和環、芳香環である。
【0058】
一般式(9)のYにおけるシクロアルキレン基とは、具体的にはシクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン等を表わす。またアリーレン基とは、具体的にはフェニレン、ナフチレン、アントリレン、フェナントリレン、ピレニレン等を表わす。
アミン化合物の使用量は、アミン化合物および塩素化芳香族化合物又は臭素化芳香族化合物の反応部位の数、反応温度、また塩素化芳香族化合物又は臭素化芳香族化合物を基質兼溶媒として用いる場合等、個々の反応によって異なるが、塩素化芳香族化合物又は臭素化芳香族化合物1モルに対し、通常0.1〜20モル、好ましくは0.3〜10モルである。
【0059】
本発明で合成され得るアリールアミン類の具体例を下記に示すが、本発明はこれに限定されない。
【0060】
【化8】

【0061】
【化9】

【0062】
【化10】

【0063】
【化11】

【0064】
【化12】

【0065】
【化13】

【0066】
【化14】

【0067】
【化15】

【0068】
【化16】

【0069】
【化17】

【0070】
【化18】

【0071】
【化19】

【0072】
【化20】

【実施例】
【0073】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお純度の評価は高速液体クロマトグラフィー(HPLCと略記する)またはガスクロマトグラフィー(GCと略記する)によった。
【0074】
実施例1 3−メチルトリフェニルアミン(例示化合物I−1)の合成
ジフェニルアミン20.3g(0.12mol)、3−ブロモトルエン20.5g(0.12mol)、炭酸カリウム32.6g(0.24mol)、ヨウ化第一銅0.9g(0.0048mol)、1,10−フェナントロリン2.2g(0.012mol)、ヨウ化ナトリウム0.9g(0.006mol)、およびテルピノレン32mlを混合し、窒素気流下200〜210℃で2時間反応した。反応終了後、トルエン66mlと水66mlを添加し、分液後トルエンを減圧留去した。酢酸エチル39mlとメタノール243mlを添加して晶析し、淡黄色粗結晶を得た。更にこの粗結晶にメタノール100mlを加え、室温下で30分間攪拌後ろ別して、目的化合物(I−1)28.2g(収率90.7%)を得た。
融点69〜70℃ HPLC含量(カラム:YMC−A−312、溶離液:メタノール/テトラヒドロフラン(THFと略記)(V/V=99/1)、検出波長:300nm、流量:1.0ml/min)は99.5%であった。
【0075】
実施例2〜13
実施例1においてヨウ化ナトリウムの使用量を変えた以外は、実施例1と同様の方法で操作を行った。
【0076】
比較例1
実施例1においてヨウ化ナトリウムを添加しない以外は実施例1と同様の方法で操作を行った。
【0077】
比較例2
実施例1においてヨウ化ナトリウムと1,10−フェナントロリンを添加しない以外は実施例1と同様の方法で操作を行った。
【0078】
比較例3
目的化合物を公知のアリールアミン合成方法(米国特許第5648542号)を用いて合成を行なった。ヨウ化ナトリウムは添加せず、塩基に水酸化カリウム(0.48mol)を使用し、反応温度を120〜130℃に設定して行なった。他の使用原料、使用量、後処理は実施例1と同様の方法で行った。
実施例1〜13および比較例1〜3の結果を表1に示す。
なお、比較例2,3については10時間まで反応したが、10時間目における反応率は比較例2が5%、比較例3が3%であった。
【0079】
比較例4〜6
公知のハロゲン交換反応(J.Am.Chem.Soc.,2002年,124巻,14844頁)の配位子を用い、反応時間を10時間とした以外は実施例1と同様の操作で合成を行った。
実施例1および比較例4〜6の結果を表2に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
上記表1の結果から、無機ヨウ化物と複素環第3級アミン化合物の存在下の場合にのみ反応が効率よく進行することは明らかである。
また、上記表2の比較例より、先行文献に記載されている脂肪族アミン(1,3−プロパンジアミンやN,N’−ジメチル−1,2−エチレンジアミン)や脂環式アミン(1,2−シクロヘキシルアミン)では効果は得られず、本発明の複素環第3級アミン化合物を用いた場合にのみ顕著な反応促進効果を得ることが判る。
【0083】
実施例14 N,N’−ジフェニル− N,N’ −ビス(3−メチルフェニル)−(p−ターフェニル)−4,4’−ジアミン(例示化合物I−13)の合成
N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミン13.5g(73.9mmol)、4,4’’−ジブロモ−1,1’:4’,1’’−ターフェニル11.9g(24.6mmol)、炭酸カリウム20.4g(147.8mmol)、硫酸銅5水和物0.03g(0.11mmol)、2,2’−ビピリジン0.38g(2.5mol)、ヨウ化カリウム0.8g(4.9mmol)を混合し、窒素雰囲気下220〜230℃で8時間反応した。反応後、トルエン25mlと水50mlを添加し、分液後水洗して有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、トルエンを減圧留去して酢酸エチル28ml添加し晶析後濾別した。白色粗結晶として目的化合物(I−13)を13.0g(収率89.1%)得た。
融点189〜190℃ HPLC含量(カラム:GL Science Inertsil ODS−3)、溶離液:アセトニトリル/水(V/V=80/20)、検出波長:300nm、流量:1.0ml/min)は99.3%であった。
【0084】
実施例15 4,4’,4’’−トリス(N,N−1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(例示化合物I−37)の合成
4,4’,4’’−トリブロモトリフェニルアミン10.6g(17.0mmol)、N,N−1−ナフチルフェニルアミン22.4g(102mmol)、燐酸三カリウム58.5g(275.4mmol)、臭化第一銅0.05g(0.34mmol)、2−ピリジンカルボン酸0.1g(0.85mmol)、ヨウ化リチウム0.23g(1.7mmol)、ジエチルベンゼン10mlを混合し、窒素雰囲気下230〜240℃で10時間反応した。反応後、減圧濃縮して反応溶媒を留去しトルエン70ml、水40mlを添加して分液した。有機層にメタノール70mlを添加して晶析し、淡黄色粗結晶として目的化合物(I−35)を13.3g(収率86.8%)得た。
融点204〜205℃、HPLC含量(カラム:ODS−80TM、溶離液:メタノール/テトラヒドロフラン(V/V=95/5)、緩衝剤:トリエチルアミン、燐酸各0.2%、検出波長:254nm、流量:1.0ml/min)は99.0%であった。
【0085】
実施例16 9−フェニルカルバゾール(例示化合物II−1)の合成
カルバゾール16.5g(98.5mmol)、ブロモベンゼン61.9g(394.0mmol)、炭酸ナトリウム15.7g(147.8mmol)、塩化第一銅0.1g(0.99mmol)、4−イミダゾールカルボン酸0.24g(2.2mmol)、ヨウ化アンモニウム0.7g(4.9mmol)を混合し、窒素雰囲気下、235〜240℃で留出してくるブロモベンゼンを反応系内に戻しながら6時間反応した。反応後、トルエン50mlと水100mlを添加して分液し、水洗して有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、トルエンを減圧濃縮してメタノール352mlを添加して晶析し、白色粗結晶として目的化合物(II−1)を21.1g(収率88.0%)得た。
融点96〜97℃ HPLC含量(カラム:ODS−80TM、溶離液:アセトニトリル/水(V/V=65/35)、緩衝剤:トリエチルアミン、酢酸各0.1%、検出波長:254nm、流量:1.0ml/min)は99.7%であった。
【0086】
実施例17 N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミン(例示化合物IV−1)の合成
3−メチルアセトアニリド25.0g(185.0mmol)、クロロベンゼン41.6g(370mmol)、炭酸ナトリウム13.5g(127.1mmol)、臭化第一銅2.12g(14.8mmol)、2,2’−ビキノリン7.6g(29.6mmol)、臭化カルシウム2水和物15.3g(64.8mmol)を混合し、窒素雰囲気下、235〜240℃で留出してくるクロロベンゼンを反応系内に戻しながら3時間反応した。反応後、水40mlを添加し分液後、エタノール30mlと水酸化カリウム27.5gを添加して更に85〜90℃で3時間反応した。ヘキサン50mlと水60mlを添加し分液後、有機層を水洗し有機溶剤を減圧留去した。粗製物より減圧蒸留にて減圧度15Torr、塔温155℃の留分を取り出し、薄黄色液体として目的化合物(IV−1)55.6g(収率87.0%)を得た。
GC含量(カラム:DB−5、カラム温度:50〜300℃(20℃/分)、He流量:10ml/分、スプリット比:1/10、気化室温度:280℃、検出器温度:300℃)は99.8%であった。
【0087】
比較例7
実施例17において臭化カルシウム2水和物を添加しない以外は実施例17と同様の方法で操作を行った。
【0088】
比較例8
実施例17において臭化カルシウム2水和物および2,2’−ビキノリンを添加しない以外は実施例17と同様の方法で操作を行った。
実施例17および比較例7,8の結果を表2に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
実施例18 N−(9−フェナントリル)−N−フェニルアミン(例示化合物IV−5)の合成
9−ブロモフェナントレン15.0g(58.3mmol)、アニリン16.3g(174.9mmol)、燐酸三ナトリウム19.1g(116.6mmol)、臭化第二銅1.95g(8.7mmol)、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン5.8g(17.5mmol)、ヨウ化バリウム2水和物12.5g(29.2mmol)を混合し、窒素雰囲気下において240〜250℃で留出してくるアニリンを反応系内に戻しながら5時間反応した。反応後、水50mlとトルエン50mlを添加し分液後、有機層を水洗し有機溶剤を減圧留去した。リグロイン30mlから晶析させ薄褐色結晶として目的化合物(IV−5)を13.2g(収率84.3%)得た。
融点133〜134℃。GC含量(カラム:DB−5、カラム温度:50〜300℃(20℃/分)、He流量:10ml/分、スプリット比:1/10、気化室温度:280℃、検出器温度:300℃)は99.5%であった。
【0091】
これらの実施例および比較例から明らかなように、本発明によって、安価な塩素化芳香族化合物および臭素化芳香族化合物から1工程で電子材料用素材、又はその中間体として有用なアリールアミン、特にトリアリールアミン又はジアリールアミンを高収率且つ高純度で製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン化合物、臭素化芳香族化合物および無機ヨウ化物を、銅元素含有触媒、塩基および複素環式第3級アミン化合物の存在下で共存させて反応させることを特徴とするアリールアミンの製造方法。
【請求項2】
アミン化合物、塩素化芳香族化合物および無機臭化物を銅元素含有触媒、塩基および複素環式第3級アミン化合物の存在下で共存させて反応させることを特徴とするアリールアミンの製造方法。
【請求項3】
アミン化合物が芳香族アミン化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載のアリールアミンの製造方法。
【請求項4】
無機臭化物および無機ヨウ化物の使用量が、塩素化芳香族化合物または臭素化芳香族化合物1モルに対し1モル未満である請求項1〜3のいずれかに記載のアリールアミンの製造方法。
【請求項5】
複素環式第3級アミン化合物が下記一般式(1)〜(3)からなる群から選択される化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアリールアミンの製造方法。
【化1】

式(1)〜(3)中、
R1〜R17は各々同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヒドロキシ基、オキシ基、オキソ基、カルボキシル基、カルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、アミノ基、イミノ基、アルドオキシム基、シアノ基、シアナート基、スルファニル基、チオ基、ハロゲン原子、複素環残基を表わす。
R1〜R17の2つの置換基が結合して部分飽和環、芳香環、ヘテロ環を形成しても良い。

【公開番号】特開2006−347964(P2006−347964A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176809(P2005−176809)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000175607)富士フイルムファインケミカルズ株式会社 (34)
【Fターム(参考)】