説明

アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物およびその製造方法および使用方法

【課題】アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物およびその製造方法および使用方法を提供する。
【解決手段】硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物が開示されている。硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物も、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物の硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物からの製造法とともに開示される。カプセル化半導体装置、および半導体装置の半導体素子を硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンでコーティングすることによるカプセル化半導体装置の製造方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物をそれから製造する方法、および前記硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物、ならびにカプセル化半導体装置、および硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物で半導体装置の半導体素子をコーティングすることにより、カプセル化半導体装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学用途のための透明な高屈折率シリコーンが必要とされている。熱安定なシリコーンも必要とされている。加えて、高い屈折率、良好な熱安定性、および透明性を有するポリシロキサンおよび他のケイ素ベースのポリマーであって、液体であるか、あるいは硬化前、硬化のいくつかの部分の間、または両方で液体である、硬化性組成物を形成するポリマーが必要とされている。多くの場合、硬化してエラストマーになり得るシリコーンが必要とされる。これらの場合において硬化組成物を形成するために架橋され得る液体ケイ素ベースの前駆体を有するのが好都合である。
【0003】
高屈折率ポリマーは、光学装置カプセル化、医療用光学装置、例えば、コンタクトレンズおよび眼内レンズ、ならびにプラスチック光学部品、例えば、レンズおよび導波路に対して興味深いものである。これらの場合の多くにおいて、液体ケイ素含有反応物質を用いてポリマーを適所で硬化させ、高屈折率ポリマーであるケイ素含有反応物質、例えば、ポリシロキサンを使用することが望ましい。
【0004】
高輝度LED製造業者らは、可視領域で高い透明性を有し、高い屈折率(1.6より高い屈折率)、および数万時間を超える稼動で優れた熱安定性を有する光学ポリマーを望んでいる。さらに、LED産業は、液体プレポリマーを使用し、そして、装置の大部分が組み立てられた後に適所でそれを硬化させる。それゆえ、硬化ポリマー系は、最小の収縮を示すものでなければならず、組み立てられた装置に悪影響を及ぼさない条件下で硬化可能でなければならない。現時点では、製造業者らはこの目的のためにエポキシおよびシリコーンを採用する。しかしながら、エポキシは、150℃の接合部温度で作動し得る新しい高出力LED装置における使用に関して過度の黄変を示す。いくつかのシリコーンは優れた熱安定性を示し、黄変をほとんど示さないので、シリコーンは、LEDにおける主なカプセル材料となりつつある。商業的シリコーンカプセル材料は、現在、1.41〜1.57の範囲の屈折率を有する。カプセル材料の屈折率は、LED装置からどれだけ多く光が引き出されるかを決定する際、重要な役割を果たす。これは、光が固相高屈折率LEDから低屈折率ポリマー媒体へと通過する際の光の合計内部反射による。典型的なLED装置は、2.5の屈折率を有する。このように、より高い屈折率を有するシリコーンカプセル材料を得ることは大変興味深い。
【0005】
ポリマーの屈折率はその構成基のモル屈折率により決定される。市販のシリコーンモノマーは、主に脂肪族基とフェニル基の組み合わせである。これは、事実上伝統的な液体シリコーンの屈折率を約1.57〜1.58の上端に限定する。ポリ(ジフェニルシロキサン)の屈折率は1.61であるが、これは固体ポリマーである。多くの応用は、液体プレポリマーを必要とするので、屈折率を減少させるように、液体を得るためには、より低いガラス転移温度(Tg)モノマーをジフェニルシロキサンモノマーとブレンドすることが必要である。これは、前述のように1.57〜1.58のRIの上端を導く。必要なのは、ジフェニルシロキサンモノマーと同様もしくはより高い屈折率を有し、かつ、より低いTgを有するモノマーである。
【0006】
米国特許第3,114,759号は、末端p−フェノキシフェニルフェニルメチルシラン基を有するポリシロキサン組成物を開示しており、ここで、熱安定性を増大させるためにキャッピングが導入されている。米国特許第3,385,878号は、3および4モノマー単位を有するシクロシロキサンを開示している。これらのシクロシロキサンは、ジフェニルシリル単位と組み合わせられた1または2個のジ(p−フェノキシフェニル)シリル単位を含有する。
【特許文献1】米国特許第3,114,759号明細書
【特許文献2】米国特許第3,385,878号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、意外にも、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物を硬化させて、発光装置のカプセル材料として有用な硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物を形成することができることを見出した。ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基を含むケイ素ベースの前駆体は、非常に望ましい特性を有し、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の成分として有用である。例えば、液体ポリマー組成物を作るために、p−フェノキシフェニルフェニルシリル化合物を重合させることができる。1.605〜1.62の屈折率を有する液体ポリ(p−フェノキシフェニル)フェニルシロキサンを生産することができる。これは、伝統的な高RIジフェニルシリルモノマーよりも優れた改善点であり、これは低重合度(すなわち、5または6ポリマー単位の低さ)であっても固体ホモポリマーを産出する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、平均組成式I:
(RSiO(4−n)/2(O(4−p−r)/2SiZSiR(4−q−r)/2 (I)(式中:
それぞれの(RSiO(4−n)/2)単位については:
下付き文字nは独立して、0、1、2、または3に等しく;
それぞれの(O(4−p−r)/2SiZSiR(4−q−r)/2)単位については:
下付き文字pは0、1、2、または3に等しく;
下付き文字qは0、1、2、または3に等しく;
p+q=0〜[8−(2r+1)]であり;
下付き文字r=1、2、または3であり;
Zは、−CHRCHR−X−、アリーレン、置換アリーレン、およびその組み合わせから選択され;ここで、
−CHRCHR−X−はケイ素架橋アルキレン部分であり;
Xは独立して、メチレン、フェニル、置換フェニル、酸素、およびその組み合わせから選択され;
下付き文字s=0または1であり;および
およびRは独立して、水素原子、アリール(チオ)エーテル、アリール、およびアルキルから選択され:
、R、およびRは、アルケニル、水素原子、アリール、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アリール(チオ)エーテルアリール、他の炭化水素基、およびその組み合わせから選択されるケイ素結合有機基を含み;
、R、およびRの少なくとも1つは、ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基を含み;
下付き文字aおよびbは、それぞれ、(RSiO(4−n)/2)単位および(O(4−p−r)/2SiZSiR(4−q−r)/2)単位のモル分率と一致するように選択され;
0≦a≦1;0≦b≦1;並びに
a+b=1である)
により表されるアリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンを含む硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物に関する。
【0009】
本発明の第二の態様は、本発明の第一の態様の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物を製造する方法であって、
A.ケイ素ベースの前駆体を含む硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物を提供する工程
(ここで:
少なくとも1つのケイ素ベースの前駆体は、ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基を含み;および
少なくとも1つのケイ素ベースの前駆体は多結合性前駆体であり、当該多結合性前駆体は、同じかまたは他の多結合性前駆体の相補的反応性基と反応できる2以上の反応性基を含む);並びに
B.硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物を硬化させて、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物を形成する工程:
を含む方法に関する。
【0010】
本発明の第三の態様は、ケイ素ベースの前駆体を含む硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物であって、
少なくとも1つのケイ素ベースの前駆体が、ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基を含み;および
少なくとも1つのケイ素ベースの前駆体が多結合性前駆体を含み、当該多結合性前駆体が、同じかまたは他の多結合性前駆体の相補的反応性基と反応できる2以上の反応性基を含む:
硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物に関する。
【0011】
本発明の第四態様は、半導体素子を含むカプセル化半導体装置であって、1以上の半導体素子が本発明の第一の態様の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物でコーティングされている半導体装置に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書における専門用語は、本明細書において具体的に言及された語句、その派生語、および類似の意味を有する語句を包含する。
【0013】
本明細書において用いられる場合、以下の用語はこれらの定義を有する:
【0014】
本明細書において用いられる「a」および「an」なる語は、別段明確に記載しない限り、「少なくとも1つ」を意味する。
【0015】
「範囲」。本明細書における範囲の開示は、下限と上限の形態をとる。1以上の下限と、独立して1以上の上限があり得る。所定の範囲は、1つの下限と1つの上限を選択することにより規定される。選択された下限および上限は、次に特定の範囲の境界を規定する。このようにして規定できる全ての範囲は、両端を含み、組み合わせ可能であり、このことは、任意の下限を任意の上限と組み合わせて、ある範囲を表すことができることを意味する。
【0016】
「ケイ素結合有機基」は、ケイ素原子に結合された有機基であり、ここで、「有機基」は、少なくとも1つの炭素を含むか、または水素原子またはヒドロキシ基である。
【0017】
「ケイ素結合アリール基」(ケイ素結合アリール)は、ケイ素原子に直接結合された芳香族環の炭素を有するアリール基である。他の好適なケイ素結合有機基としては、例えば:「ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基」(ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール);「ケイ素結合アルケニル基」(ケイ素結合アルケニル);「ケイ素結合水素原子」(ケイ素結合水素);「ケイ素結合アルキル基」(ケイ素結合アルキル);「ケイ素結合アルコキシ基」(ケイ素結合アルコキシ);「ケイ素結合アラルコキシ基」(ケイ素結合アラルコキシ);「ケイ素結合ヒドロキシ基」(ケイ素結合ヒドロキシ);「ケイ素結合(メタ)アクリルオキシ基」(ケイ素結合(メタ)アクリルオキシ);「ケイ素結合アセトキシ基」(ケイ素結合アセトキシ);およびその組み合わせが挙げられる。
【0018】
「ケイ素結合フェノキシフェニル基」は、ケイ素原子に直接結合されたフェニル環の炭素原子および「フェノキシ置換基」の酸素原子に直接結合された同じフェニル環の別の炭素を有するケイ素結合アリール基である。この酸素原子は、従って、ケイ素結合フェノキシフェニル基の「エーテル結合」である。
【0019】
「ケイ素結合フェニルチオフェニル基」は、ケイ素原子に直接結合されたフェニル環の炭素原子および「フェニルチオ置換基」の硫黄原子と直接結合された同じフェニル環の別の炭素を有するケイ素結合アリール基である。硫黄原子は従って、ケイ素結合フェニルチオフェニル環の「チオエーテル結合」である。
【0020】
「ケイ素結合フェニル(チオ)エーテルフェニル基」は、ケイ素結合フェノキシフェニル基、ケイ素結合フェニルチオフェニル基、およびその組み合わせから選択される。「(チオ)エーテル」なる用語は、2つのフェニル環の間の結合として酸素原子を有する「エーテル」と、2つのフェニル環の間の結合として硫黄原子を有する「チオエーテル」の両方を意味する。
【0021】
「ケイ素結合アリールオキシアリール基」は、ケイ素原子に直接結合されたアリール環の炭素原子および「アリールオキシ置換基」の酸素原子と直接結合された同じアリール環の別の炭素を有するケイ素結合アリール基である。この酸素原子は、従って、ケイ素結合アリールオキシアリール基の「エーテル結合」である。
【0022】
「ケイ素結合アリールチオアリール基」は、ケイ素原子に直接結合されたアリール環の炭素原子および「アリールチオ置換基」の硫黄原子に直接結合された同じアリール環の別の炭素を有するケイ素結合アリール基である。この硫黄原子は、従って、ケイ素結合アリールチオアリール基の「チオエーテル結合」である。
【0023】
ケイ素結合「アリール(チオ)エーテルアリール基」は、ケイ素結合アリールオキシアリール基、ケイ素結合アリールチオアリール基、およびその組み合わせから選択される。
【0024】
「モルパーセント」および「モル%」なる用語は、本明細書全体にわたって交換可能に用いられる。所定のケイ素化合物、例えば、シロキサンまたはシランについての「ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基のモル%」は、前記ケイ素化合物中に含まれるケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基のモル数を、全てのケイ素結合有機基のモル数で割ったものである。例えば、8個のケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基および2個のケイ素結合水素原子を有するヒドリドケイ素ベースの前駆体は、合計10個のケイ素結合有機基について、ヒドリドケイ素化合物の全ケイ素結合有機基基準で、80モル%のケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基を含有する。
【0025】
「ケイ素結合アルケニル基」(ケイ素結合アルケニル)は、エチレン性不飽和基を有するケイ素結合炭化水素基である。ケイ素結合アルケニル基の例としては:ビニル;アリル基類(すなわち、炭素−炭素二重結合が−CH2−基または−CHR−基のすぐ隣りにある基)を含む。
【0026】
「アルケニルケイ素ベースの前駆体」は、ケイ素結合アルケニル基を含むケイ素ベースの化合物である。
【0027】
「アルケニルアリール(チオ)エーテルアリールケイ素化合物」は、ケイ素結合アルケニル基およびケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基を含む。
【0028】
「多結合性前駆体(multi−linkable precursor)」は、別の前駆体の「相補的反応性基」と反応できる2以上の反応性基を含む前駆体化合物である。「相補的反応性基」は、別の反応性基と反応できる反応性基(すなわち、第一の相補的反応性基と反応できる、別の相補的反応性基)であって、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の硬化の間に前駆体成分を結合する共有結合を形成する反応性基である。多結合性前駆体の反応性基は、同じであっても、異なっていてもよい。例えば、1つの多結合性前駆体は、2つの同じかまたは異なったケイ素結合アルケニル基を含んでもよく、一方、同じ硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の別の多結合性前駆体は、3つのケイ素結合水素原子を含んでもよい。ヒドロシル化触媒の存在下で、これらの2つの前駆体は、ヒドロシル化により「架橋したポリシロキサンネットワーク」中に組み入れられることができる。別の例において、1つの多結合性前駆体は、1つのケイ素結合アルケニル基および1つのケイ素結合メトキシ基を含み、一方で、別の前駆体は、1つのケイ素結合水素原子および1つのケイ素結合メトキシ基を含む。この別の例において、架橋は、ヒドロシル化触媒の存在下で、ケイ素結合アルケニル基をケイ素結合水素原子と反応させてケイ素架橋アルキレン部分を形成すること、およびメトキシ基の水分誘発性反応でSi−O−Si結合を形成することを組み合わせることにより達成されることができる。当業者は、多結合性前駆体の反応性基の全部または一部が別の、または同じ多結合性前駆体の相補的反応性基と実際に反応し得ることを認識するであろう。全ての基の反応が起こる程度は、相補的反応性基の相対量、硬化条件の詳細、ならびに分子量および硬化中のアリール(チオ)エーテルアリールシロキサンに対する架橋の増加の程度といった反応性基のアクセスのしやすさのような要因に依存するであろう。
【0029】
「一結合性前駆体」は、別の前駆体の「相補的反応性基」と反応できる1つの反応性基を含む前駆体化合物である。本発明の「キャッピング剤」は一結合性前駆体である。
【0030】
「ヒドリドケイ素化合物」は、ケイ素結合水素原子を含むケイ素ベースの前駆体である。
【0031】
「一次シロキサン単位」なる用語は、一つのケイ素原子を含有するポリシロキサンの部分を意味し、ここで、ケイ素原子は、1から4個の酸素原子と直接結合し、およびこれらの酸素原子のそれぞれは、隣接する一次シロキサン単位の別のケイ素原子と同様に結合する。例えば、(CHSi−O−Si(CHは、2個の一次シロキサン単位を有するポリシロキサンである。それぞれの一次シロキサン単位は、3つのメチル基および1つの酸素原子(当該酸素原子は両方のケイ素原子と結合している)と結合した1つのケイ素原子を有する。(CHSi−O−Si(CHの2つの一次シロキサン単位のそれぞれは、以下で「M単位」として定義される。第二の例において、(CHSi−O−Si(CHOHも、2つの一次シロキサン単位を有するポリシロキサンであり、そのそれぞれは、同じ1つの酸素原子と結合した1つのケイ素原子を有し、ここで、酸素原子は第二のケイ素原子と結合している。ヒドロキシ基の酸素は、第二のケイ素原子と結合しておらず、それが属する一次シロキサン単位がM単位であるかD単位であるかを決定する目的については、第二の酸素原子としてカウントされないようなものである。従って、ヒドロキシ基は、ケイ素結合有機基として扱われ、これが属する一次シロキサン単位はM単位である。
【0032】
「ポリシロキサン」は、少なくとも2つの一次シロキサン単位を有するシロキサンである。
【0033】
「M単位」なる用語は、ポリシロキサンの一次シロキサン単位をさし、ここで、前記単位のケイ素は、−O−Si−部分の酸素原子との共有結合を通じて1つの直接隣りの−O−Si−部分に結合されている。
【0034】
同様に、「D単位」、「T単位」、および「Q単位」なる用語は、それぞれ、シロキサンの一次シロキサン単位をさし、ここで、前記単位のケイ素は、−O−Si部分のそれぞれの酸素原子との共有結合を通じてそれぞれ2、3、または4つの直接隣りの−O−Si−部分に結合されている。
【0035】
「ppm」なる用語は、「百万あたりの部」を意味し、これは次に、「百万重量あたりの重量部」を意味する。百万あたりの部は重量基準である。従って、組成物y中の所定の成分xの量は、成分xの重量を組成物yの重量で割り、次に百万を掛けることにより計算される。例えば、0.002グラムの白金金属が1000グラムの硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物中に存在するならば、Pt金属は、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物の合計重量基準で2ppmで存在する。
【0036】
「硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物」は、「ケイ素ベースの前駆体成分」(ケイ素ベースの前駆体)を包含する。硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物のすべてのケイ素ベースの前駆体がケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基を有する必要はないが、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の少なくとも1つの「ケイ素ベースの前駆体成分」は、ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基を含有しなければならない。ケイ素ベースの前駆体は、多結合性前駆体または一結合性前駆体であってよい。硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物は、少なくとも1つの多結合性前駆体を含まなければならず、任意に一結合性前駆体(以下のキャッピング剤参照)を含んでもよい。本発明の硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物は、ケイ素ベースの前駆体成分を含まなければならないが、組成物は、任意に、「非ケイ素前駆体成分」(「非ケイ素前駆体」、以下のキャッピング剤参照)も含むことができる。
【0037】
「硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン」を含有する本発明の「硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物」は、当該分野において周知の様々な硬化法により、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物から形成することができる。従って、所定のケイ素ベースの前駆体成分の1以上のケイ素結合基は、ケイ素前駆体成分の全部または一部が硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン中に組み入れられるようになる方法を反映する。例えば、ヒドロシル化の方法は、ケイ素前駆体成分がケイ素結合アルケニル基を含有し、およびケイ素前駆体成分がケイ素結合水素原子を含有することを必要とする。このような場合において、ケイ素結合アルケニル基およびケイ素結合水素原子は、同じかまたは異なるケイ素前駆体成分と結合されてもよい。同様に、硬化法が湿潤硬化である場合、ケイ素結合メトキシ(または他のアルコキシ)、アセトキシ、ヒドロキシ、およびその組み合わせが実例となる官能基である。ケイ素結合アルケニル、メチル、およびその組み合わせは、硬化法がフリーラジカル硬化法である場合に有用な官能基例である。ケイ素結合(メタ)アクリレート基は、紫外線硬化法に有用であり、ケイ素結合エポキシ含有基はエポキシ化ベースの硬化法に有用である。
【0038】
硬化法がヒドロシル化である場合、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物は:少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有するケイ素ベースの前駆体;少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するケイ素ベースの前駆体;およびヒドロシル化による硬化を行うために十分な量で存在するヒドロシル化触媒を含む。別法として、ケイ素ベースの前駆体成分は、ケイ素結合アルケニル基およびケイ素結合水素原子の両方を含むアルケニルヒドリドケイ素ベースの前駆体であってもよい。ヒドロシル化に有用な硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物は、従って、ヒドロシル化触媒および:アルケニルケイ素ベースの前駆体およびヒドリドケイ素ベースの前駆体;アルケニルヒドリドケイ素ベースの前駆体;またはアルケニルヒドリドケイ素ベースの前駆体およびアルケニルケイ素ベースの前駆体またはヒドリドケイ素ベースの前駆体、あるいは両方を含む。
【0039】
「ヒドロシル化触媒」は、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、またはその組み合わせから選択されるVIII族元素を包含し、エチレン性不飽和基の二重結合におけるSi−H基の付加を触媒できる。当業者は、ヒドロシル化触媒が有効であるためには、前駆体成分のいずれも前記ヒドロシル化触媒の性能を著しく劣化させる働きをしないことが重要であることを認識するであろう。硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物としての使用が想定されている系がヒドロシル化を顕著に阻害することが判明している場合、この系は、典型的には、阻害基の除去により、あるいはヒドロシル化以外の手段により架橋を達成できる相補的反応性基で前駆体成分を修飾することにより修飾されるであろう。
【0040】
「高RIナノ粒子」は、少なくとも1.8から3.5以下の屈折率(RI)を有する粒子である。複数の高RIナノ粒子は少なくとも1nmかつ30nm以下の「平均粒子直径」を有する。
【0041】
「VIII族元素相当値」は、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物または硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物中に存在するヒドロシル化触媒の量を、前記組成物中に存在するVIII族元素の量で表す。例えば、それ自体が50重量%のVIII族元素を含有する所定のヒドロシル化触媒が、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物中に、10ppmの量で存在するならば、前記組成物中に存在するヒドロシル化触媒の量であって、「VIII族元素相当値として表された」量は、5ppmである。
【0042】
好適な「ケイ素架橋アルキレン部分」は、「−CHRCHR−X−」であり、ここで、ヒドロシル化によりアルケニルケイ素ベースの前駆体の炭素−炭素不飽和結合から由来する2個の炭素の少なくとも1つ(すなわち、Rが結合されている炭素)がアルキレン架橋アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンのケイ素原子と共有結合されている。他の炭素(すなわち、Rが結合している炭素)は、別のケイ素と直接結合されていてもよく(下付き文字s=0)またはXにより別のケイ素と結合されていてもよく(下付き文字s=1)、ここで、Xはメチレン、フェニル、置換フェニル、および酸素から選択される。このようにして、より大きな「Si−CHRCHR−Xs−Si部分」が形成される。本発明のアルキレン架橋ポリシロキサン(すなわち、「アルキレン架橋アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン)は少なくとも1つのケイ素架橋アルキレン部分を含まなければならない。しかしながら、本発明の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンがケイ素架橋アルキレン部分を含むことは必要とされない。ケイ素架橋アルキレン部分は、典型的には、ヒドロシル化が硬化を達成するための方法として利用される場合に、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン中に存在するものである。一方、水分誘発性硬化が唯一の硬化法であるならば、ケイ素架橋アルキレン部分は硬化中に形成されないであろう。
【0043】
「アルキレン架橋アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン」は、任意に、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物の成分であってよい。「アルキレン架橋アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン」は:ケイ素架橋アルキレン部分;「アルキレンケイ素ベースの前駆体」由来の少なくとも1つの単位および「ヒドリドケイ素ベースの前駆体」由来の少なくとも1つの単位、または「アルケニルヒドリドケイ素ベースの前駆体」由来の少なくとも1つの単位;および少なくとも1つのアリール(チオ)エーテルアリール基:を含むアリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンである。硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンは、任意に、「反応性ケイ素結合有機基」、例えば、ケイ素結合アルケニル、ケイ素結合水素原子、ケイ素結合アルコキシ、ケイ素結合アラルコキシ、ケイ素結合ヒドロキシ、ケイ素結合アセトキシ、ケイ素結合(メタ)アシルオキシ、ケイ素結合エポキシ、およびその組み合わせを包含し得る。あるいはまた、アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンは、反応性ケイ素結合有機基を含まなくともよい。
【0044】
「キャッピング剤」は、ケイ素ベースの前駆体の反応性ケイ素結合有機基と反応できる1つの「キャッピング部分」を含む。典型的には、キャッピング剤は一結合性前駆体である。想定された硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン(例えば、アルキレン架橋アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン)のかかる反応性ケイ素結合有機基の数を減少させることが望ましい場合、キャッピング剤は、対応する「硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物」(想定された硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンからがこれから製造されるべきものである)に添加される。典型的には、キャッピング剤は、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物に硬化前に添加される。あるいはまた、キャッピング剤は硬化中、硬化後に添加されてもよく、またはキャッピング剤の一部が硬化工程の前、最中並びに後の様々な時点で添加されてもよい。当業者は、硬化が始まった後の「キャッピング剤」の添加の実現可能性が、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンが成長途中かまたは完全に形成されたネットワークの架橋の程度、ならびに硬化中および硬化後のネットワーク内のキャッピング剤の溶解度および移動度などの因子に依存することを認識するであろうし、これらは全て、キャッピング剤が拡散して、キャッピングが均一になるようにする能力に影響を及ぼす。「キャップされた」なる用語は、硬化した、または硬化中のアリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物の反応性ケイ素結合有機基が、反応性基と反応できるキャッピング剤に反応されたことを意味する。「キャッピング反応」は、典型的には、新規な非反応性、またはあまり反応しない(すなわち「キャップされた」)末端基を形成する。当業者は、キャッピング剤、他の反応性種、それぞれの相対的量、および「キャッピング反応」の他の詳細(例えば、時間、温度、および混合)を包含する前駆体成分の特定の特性に応じて、反応性ケイ素結合有機基の全て、あるいは全てよりは少ないものが「キャップされる」ことができることを理解するであろう。キャッピング剤は、ケイ素ベースの前駆体、非ケイ素前駆体、およびその組み合わせから選択することができる。
【0045】
「硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物」がヒドロシル化を用いて形成された場合、この硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンは、アルキレン架橋アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン;およびヒドロシル化触媒:を包含する。硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物を含有するヒドロシル化触媒が、本発明の促進熱老化試験により測定して、変色しないのが望ましいならば、ヒドロシル化触媒は典型的には、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物の重量基準で、VIII族元素相当値で表して、少なくとも0.005ppmから3.0ppm以下の量で存在する。
【0046】
本発明の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物の使用は、高輝度発光装置(HBLED)のカプセル材料としての使用を包含する。このような場合、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンは長時間(数千時間)、100℃〜130℃の使用温度、またはさらに高い温度で、空気中で安定でなければならない。硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンの特性を失うことなく機能する能力の試験は、本発明の「促進熱老化試験」である。促進熱老化試験に合格する硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物は、CIE 1976 L65(照明角度)/10(観察角度)色彩試験法を用いて測定されるCIE b値が熱老化後の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物の0.6ミリメートルの厚さの試料を通して測定して2.0以下であることにより示されるように、200℃、空気中での14日の熱老化の間に変色しない。
【0047】
粒子の集団(すなわち、複数の粒子)について決定される「平均粒子サイズ」は、「重量平均粒子サイズ」、「d」(HPLCタイプの紫外線検出器を備えたMatec CHDF2000粒子サイズ分析器を用いたキャピラリーハイドロダイナミックフラクショネーション技術により測定)である。「粒子サイズ」、「粒子直径」、および「PS」は本明細書において交換可能に使用される。「平均粒子サイズ」、「平均粒子直径」、「重量平均粒子サイズ」。「重量平均粒子直径」および「d」なる用語は本明細書において交換可能に使用される。用語「粒子サイズ分布」および頭字語「PSD」は本明細書において交換可能に使用される。「多分散性」は値(この場合、粒子の集団について測定されたサイズの値)の分布の幅の尺度として当該分野において用いられる。本明細書において用いられる場合、「PSD多分散性」は、複数の粒子の粒子サイズの分布の説明である。PSD多分散性は、重量平均粒子サイズ(d)、および数平均粒子サイズ(d)から、式:
PSD多分散性=(d)/(d
(式中、d=Σn/Σn
=Σn/Σn 、および
(式中、nは粒子サイズdを有する粒子の数である)
に従って計算される。
【0048】
合成ポリマーはほとんどいつも、分子量が様々な鎖の混合物であり、すなわち、「MWD」と略記される「分子量分布」が存在する。ホモポリマーに関して、分布のメンバーはこれらが含有するモノマー単位の数が異なる。このようなポリマー鎖の分布の説明は、コポリマーにも及ぶ。分子量分布があれば、所定のサンプルの分子量の最も完全なキャラクタライゼーションは、全分子量分布の決定である。このキャラクタライゼーションは、分布のメンバーを分離し、次いで存在するそれぞれの量を定量化することにより得られる。この分布が得られたら、ポリマーの分子量を特徴づけるために、これから得ることができるいくつかの要約統計量、またはモーメントが存在する。
【0049】
2つの最も一般的な分布のモーメントは、「重量平均分子量」、「M」、および「数平均分子量」、「M」である。これらは次のように定義され:
=Σ(W)/ΣW=Σ(N)/ΣN
=ΣW/Σ(W/M)=Σ(N)/ΣN
(式中:
=分布のi番目の成分のモル量
=分布のi番目の成分の重量
=i番目の成分の鎖の数)
合計は、分布における全ての成分に及ぶ。MおよびMは典型的には、ゲル透過クロマトグラフィーにより測定されるMWDから計算される(実験の項を参照)。「MWD多分散性」はM/Mと等しい。
【0050】
ポリマーおよび他の成分(例えば、他のポリマー、あるいは溶媒または他の小分子)が混和性であるかどうかの評価は、D.W.Van Krevelen、Properties of Polymers、第3版、Elsevier、189〜225ページ、1990において記載されている周知の方法に従って行うことができる。例えば、Van Krevelenは、物質の合計溶解度パラメータ(δt)を:
δ=δ+δ+δ
(式中、δ、δ、およびδは、それぞれ、溶解度パラメータの分散性、極性、および水素結合成分である)と定義している。δ、δ、およびδの値は多くの溶媒、ポリマー、ポリマーセグメントについて決定されており、Van Krevelenのグループ寄与法(group contribution methods)を用いて評価することができる。例えば、所定の組成を有するポリマーが特定の溶媒または他の小分子(例えば、約500以下の分子量を有するもの)と混和性であるどうかを評価するために、ポリマーのδおよび溶媒のδを計算する。典型的には、二者の差Δδが25よりも大きいならば、(すなわち、Δδ>5)、ポリマーおよび溶媒は混和性でない。
【0051】
そのかわりに、組成が異なる2つのポリマーが混和性であるかどうかを決定することが望ましいならば、同じ計算を行うことができるが、検討中のポリマーの一方または両方の分子量が増加するにつれ、混和性についてのΔδの予想される上限は減少する。この減少は、混合される成分の分子量が増加する際に起こる混合のエントロピーの減少と平行すると考えられる。例えば、それぞれ100の重合度を有する2つのポリマーは、その混合物のΔδの値が9、またはさらには4(すなわち、Δδ=3、またはさらには2)である場合でさえも、非混和性である可能性が高い。さらに高い分子量ポリマーは、さらに低いΔδ値でさえも非混和性でありうる。本発明の前駆体成分は混和性であるのが望ましい。例えば、前駆体成分がアルケニルアリール(チオ)エーテルアリールケイ素ベースの前駆体およびヒドリドケイ素ベースの前駆体、ならびにヒドロシル化触媒を含む場合、その全てが混和性であることが望ましい。硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物中に存在するどのようなキャッピング剤も、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物中で混和性であることがさらに望ましい。任意の特定の理論により拘束されることを望まないが、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の成分の混和性は、さらに均一な硬化に結びつき、前駆体成分が混和性でなかった場合よりもさらに均一な硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物をもたらすと考えられる。例えば、所定の組成を有する本発明のアルケニルアリール(チオ)エーテルアリールケイ素ベースの前駆体が別の組成を有する特定のヒドリドケイ素ベースの前駆体と混和性であるかどうかを評価するために、それぞれのδtを計算する。これらの計算は、当業者に有用な指針を提供し、所望の結果を得るために必要な実験の量を大幅に減少させると理解される。しかしながら、さらに、かかる計算の結果は推定値であり、本発明の硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の特に有用な組成を決定するためには、これらの計算に加えて、いくらか実験が必要になると認識されている。さらに、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の2成分(例えば、2つの前駆体)がぎりぎりの混和性、あるいはさらには非混和性を示すならば、これらの2つの成分のそれぞれと混和性である第三の成分の選択が、3成分全てが混和性である溶液を製造するために有効でありうると理解される。本発明の硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の任意の2つの前駆体成分は、典型的には、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の重量基準で、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%、または少なくとも1.0重量%;および99.9重量%以下、90重量%以下、50重量%以下、10重量%以下、または5重量%以下の量で存在する場合、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物中に可溶性であるであろう。さらに、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物が、1つの前駆体を含む場合、その前駆体は硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の重量基準で、99.9重量%から100重量%の量で存在し得る。触媒成分(例えば、ヒドロシル化触媒)がさらに存在する場合、この触媒成分は、その使用量(通常、数ppm以下であるが、100ppm程度、あるいはさらには500ppm以上であってもよい)で、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物中に、典型的には、必ずしもそうである必要はないが(以下の高RIナノ粒子参照)、可溶である。
【0052】
ヒドロシル化が本発明の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンを製造するために使用される方法である場合、ヒドロシル化触媒は、金属(すなわち、0価元素形態)または金属化合物(すなわち、正原子価状態で、1以上の対イオン(カウンターイオン)と結合した金属;または有機金属錯体における金属)として存在する元素の周期表のVIII族元素を含み、ここで、元素は、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、およびその組み合わせ;白金、ロジウム、パラジウム、およびその組み合わせ;パラジウム、白金、およびその組み合わせ;または白金から選択される。白金化合物の非網羅的なリストは;白金黒;白金ハロゲン化物、例えば、塩化白金(II)、PtCl、HPtCl・6HO、NaPtCl・4HO、HPtCl・6HOのシクロヘキセンとの反応生成物、およびクロロ白金酸および一価アルコールの反応生成物(例えば、Lamoreaux触媒);白金−オレフィン錯体、例えば、Karstedt’s触媒、白金カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体、および白金シクロビニルメチルシロキサン錯体;白金−アルコール錯体;白金−アルコレート錯体;白金−エーテル錯体;白金−アルデヒド錯体;白金−ケトン錯体、例えば、白金ビスアセトアセテート;白金カルベン錯体;四塩化白金のオレフィン類およびアミン類との反応生成物;白金−ビニルシロキサン錯体、例えば、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体;ビス−(γ−ピコリン)−二塩化白金;トリメチレンジピリジン−二塩化白金、ジシクロペンタジエン−二塩化白金、シクロオクタジエン−二塩化白金;シクロペンタジエン−二塩化白金;ビス(アルキニル)ビス(トリフェニルホスフィン)−白金錯体;ビス(アルキニル)(シクロオクタジエン)−白金錯体;ジメチルスルホキシエチレン白金(II)クロリド;およびその組み合わせを包含する。
【0053】
ヒドロシル化触媒が本発明の硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物中に存在する場合、これはケイ素ベースの前駆体成分のケイ素結合アルケニル基とケイ素結合水素原子との間でヒドロシル化反応を起こすために有効な任意の量で存在するであろう。この量は、VIII族元素相当値として表すと、典型的には:硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の重量基準で、少なくとも0.005ppm、少なくとも0.01ppm、または少なくとも0.1ppmであり;500ppm以下、100ppm以下、10ppm以下、3.0ppm以下、2ppm以下、1ppm未満、0.6ppm未満、または0.5ppm以下である。ヒドロシル化触媒、およびその任意の誘導体は、同様に、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物中に、VIII族元素相当値として表すと、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の重量基準で:少なくとも0.005ppm、少なくとも0.01ppm、または少なくとも0.1ppm;500以下、100以下、10以下、3.0ppm以下、2ppm以下、1ppm未満、0.6ppm未満、または0.5ppm以下の合計量で存在する。しかしながら、ヒドロシル化が硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンを製造するために使用される方法であり、および硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンが促進熱老化試験に合格するのが望ましい場合、ヒドロシル化触媒は硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物中に、VIII族元素相当値として表すと:硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の重量基準で、少なくとも0.005ppm、少なくとも0.01ppm、または少なくとも0.1ppmであり;3.0ppm以下、2ppm以下、1ppm未満、0.6ppm未満、または0.5ppm以下の量で存在する。さらに、ヒドロシル化触媒およびその誘導体の量の好適な上限は、VIII族元素相当値として表すと、0.45ppm以下であってもよい。ヒドロシル化触媒、およびその任意の誘導体は、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物中に、合計量で、VIII族元素相当値として表すと:硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物の重量基準で、少なくとも0.005ppm、少なくとも0.01ppm、または少なくとも0.1ppmであり;および3.0ppm以下、2ppm以下、1ppm未満、0.6ppm未満、または0.5ppm以下の量で同様に存在する。さらに、ヒドロシル化触媒およびその誘導体の量の好適な上限は、VIII族元素相当値として表すと、0.45ppm以下であってもよい。当業者は、ヒドロシル化触媒の一部または全てが、硬化中または硬化後に、他の触媒種および不活性分解生成物を含む誘導体に、変換され得ることを理解するであろう。従って、ヒドロシル化触媒およびその誘導体の両方の量は、VIII族元素相当値として表される。さらに、ケイ素ベースの前駆体成分が、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンの形成中に結合される方法がヒドロシル化を含まない場合、ヒドロシル化触媒の量は典型的には0であると認識されるであろう。
【0054】
本発明の好適なヒドロシル化触媒は、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物中、および硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物中に別の分子(すなわち、小分子、または個々のポリマー鎖)を含む。他の好適なヒドロシル化触媒は、少なくとも1nm、少なくとも2nm、または少なくとも5nmであり;30nm以下、20nm以下、または10nm以下の平均粒子直径を有するVIII族金属ナノ粒子を含む。好適なヒドロシル化触媒は、さらにマイクロカプセル化形態において使用することができ、ここで、マイクロカプセルは、ヒドロシル化触媒を含有するポリエステル樹脂またはケイ素樹脂などの熱可塑性樹脂の超微粒子を含む。ヒドロシル化触媒は、シクロデキストリンなどのクラスレート化合物の形態においても使用できる。
【0055】
本発明の「ケイ素結合アリール基」は、少なくとも1つの芳香族環を含有する任意の基を含み、ここで、前記芳香族環は、アリール基が硬化条件に対して不活性であるならば、あるいは反応性である場合、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物の所望の特性(着色、物理的結合性(physical integrity)、および透明性を包含してもよい)の損失に寄与しないならば、置換されていても、非置換であってもよい。ケイ素結合アリール基の非網羅的なリストは:フェニル;ハロフェニル基、例えば、o−クロロフェニル、m−クロロフェニル、p−クロロフェニル、およびジクロロフェニル;C−C12アルキル基を有するアルキルフェニル基、例えば、トリル、キシリル、エチル置換フェニル、およびt−ブチル置換フェニル;アリール(チオ)エーテルアリール基、例えば、アリールオキシアリール基(その例は、o−フェノキシフェニル、m−フェノキシフェニル、およびp−フェノキシフェニルを包含する)、および例えば、アリールチオアリール基(その例は、o−フェニルチオフェニル、m−フェニルチオフェニル、およびp−フェニルチオフェニルを包含する);一価置換基として、または環縮合変異体として、フェニル環と結合されたヘテロ原子置換基を有するヘテロ原子フェニル基、例えば、アリールイミド類;アラルキル基、例えば、ベンジルまたはフェネチル;縮合環アリール、例えば、ナフチル;およびその組み合わせを包含する。好適なケイ素結合アリール基は、フェニル;アリール(チオ)エーテルアリール基、たとえば、アリールオキシアリール基(その例は、o−フェノキシフェニル、m−フェノキシフェニル、およびp−フェノキシフェニルを包含する)および例えばアリールチオアリール基(その例は、o−フェニルチオフェニル、m−フェニルチオフェニル、およびp−フェニルチオフェニルを包含する);ナフチルまたはその組み合わせから選択することができる。好適なケイ素結合アリール基は、フェニル;o−フェノキシフェニル、m−フェノキシフェニル、p−フェノキシフェニル;およびその組み合わせから選択することができる。ケイ素結合アリール基がアリール(チオ)エーテルアリール基を包含することが本発明の要件である。
【0056】
本発明のケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基の以下の「環構造a」は、本発明の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物のケイ素原子と直接共有結合された環炭素原子(すなわち、「環構造a」においてR基を有さない炭素)を有する。従って、ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基は、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物に対する少なくとも1つのケイ素ベースの前駆体のケイ素原子と直接共有結合された環炭素原子を有する「環構造a」を有する。「環構造a」の置換基R13−R17の少なくとも1つは、2つの環構造が、酸素または硫黄である原子「Y」により結合している「環構造b」である。すなわち、原子「Y」は、「環構造a」について示される芳香族環および「環構造b」について示される芳香族環と共有結合されている。「環構造c」は、パラ−アリール(チオ)エーテルアリール基を表す。R13−R14およびR16−R22のそれぞれが水素原子であり、Yが酸素であり、R15が環構造bであるならば、環構造cはp−フェノキシフェニル基である。そのかわりに環構造bがR14として結合し、R15が水素原子であるならば、環構造cはメタ−フェノキシフェニルになる。同様に、環構造bがR13として結合され、R14−R22のそれぞれが水素原子であるならば、環構造cはオルト−フェノキシフェニルになる。例示された3つの基のいずれかにおいて「Y」として酸素に対し硫黄で置換すると、それぞれ、p−、m−、およびo−フェニルチオフェニル置換基を得る。
【化1】

【化2】

【化3】

【0057】
「環構造a」の置換基R13−R17の少なくとも1つが、2つの環構造が酸素または硫黄である原子「Y」を通じて結合されている「環構造b」であるならば、置換基R13−R22は、独立して、本発明の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンを製造および使用の条件下で分解させない任意の置換基でありうる。様々な応用が、本発明の硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物が流体であることを必要とする。このような場合において、アリール(チオ)エーテルアリール基は、流動性を付与するように選択されるのが望ましい。例えば、フェノキシフェニル基(例えば、オルト−、メタ−、パラ−、およびその組み合わせ)は、単独または他の置換基、例えば、フェニルおよびメチルとの組み合わせにおいて、ケイ素ベースの前駆体および硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物に流動性を付与する。典型的には、アリール(チオ)エーテルアリール基のR13−R22は、独立して、水素原子;アルキル;フェニル;置換フェニル;アリールオキシ;置換アリールオキシ;アリールチオ;置換アリールチオ;ハロゲン;およびナフチルから選択される。
【0058】
存在する場合、本発明の「アルケニルケイ素ベースの前駆体」は、少なくとも2つのケイ素結合アルケニル基を含む。ケイ素結合アルケニル基はアルケニルケイ素ベース前駆体において、アルケニルケイ素ベースの前駆体の全ケイ素結合有機基基準で、少なくとも0.1モル%、少なくとも1モル%、または少なくとも5モル%;60モル%以下、30モル%以下、または10モル%以下の量で存在する。ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基は、アルケニルケイ素ベースの前駆体において、アルケニルケイ素ベースの前駆体の全ケイ素結合有機基基準で、0、少なくとも10モル%、少なくとも30モル%、または少なくとも40モル%であり;99.9モル%以下、90モル%以下、80モル%以下、または70モル%以下の量で存在する。ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基がアルケニルケイ素ベースの前駆体中に存在しないならば、それは硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の少なくとも1つの他のケイ素ベースの前駆体において存在するであろう。
【0059】
ケイ素結合アルケニル基は:ビニル;モノエチレン性不飽和C−C18直鎖、分岐鎖、または環状炭化水素、例えば、アリル、プロプ−1−エン−1−イル、ヘキシ−1−エン−1−イル、およびヘキシ−5−エン−1−イル;ビニル置換アリール基、例えば、p−ビニルフェニル、およびその組み合わせを包含する。好適なケイ素結合アルケニル基は、ビニル、またはアリル、およびその組み合わせから選択されうる。好適なアルケニル基はさらにビニルであってよい。
【0060】
本発明の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物において、アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンは、平均組成式I:
(RSiO(4−n)/2(O(4−p−r)/2SiZSiR(4−q−r)/2 (I)
(式中:
それぞれの(RSiO(4−n)/2)単位については:
下付き文字nは独立して、0、1、2、または3に等しい;
それぞれの(O(4−p−r)/2SiZSiR(4−q−r)/2)単位については:
下付き文字pは0、1、2、または3に等しい;
下付き文字qは、0、1、2または3に等しい;
p+q=0〜[8−(2r+1)];
下付き文字r=1、2、または3;
Zは、−CHRCHR−X−、アリーレン、置換アリーレン、およびその組み合わせから選択され、ここで、
−CHRCHR−X−はケイ素架橋アルキレン部分であり;
Xは独立して、メチレン、フェニル、置換フェニル、酸素、およびその組み合わせから選択される;
下付き文字s=0または1であり;および
およびRは独立して、水素原子、アリール(チオ)エーテルアリール、およびアルキルから選択される;
、R、およびRは、アルケニル、水素原子、アリール、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アリール(チオ)エーテルアリール、他の炭化水素基、およびその組み合わせから選択されるケイ素結合有機基を包含し;
、R,およびRの少なくとも1つは、ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基を包含し;
下付き文字aおよびbは、それぞれ、(RSiO(4−n)/2)単位および(O(4−p−r)/2SiZSiR(4−q−r)/2)単位のモル分率と一致するように選択され;
0≦a≦1;0≦b≦1;並びに
a+b=1である)により表される。
下付き文字「a」および「b」はモル分率を表す。例えば、4(RSiO(4−n)/2)単位および6(O(4−p−r)/2SiZSiR(4−q−r)/2)単位を有するアルキレン架橋アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンは、それぞれ0.4および0.6の式I「a」および「b」値を有するであろう。
【0061】
式Iの好適なアリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンにおいて、ビニル、水素原子、メチル、フェニル、ナフチル、およびアリール(チオ)エーテルアリールから選択される式Iのアリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンの組み合わされたR基、R、R、およびRのモルパーセントは、アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンのケイ素結合有機基の全モル数基準で、少なくとも70モルパーセント、少なくとも90モルパーセント、または少なくとも95モルパーセントであり;および100モルパーセント、99モルパーセント以下、または97モルパーセント以下である。式Iの別の好適なアリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンにおいて、フェニルおよびフェノキシフェニル類から選択される式Iのアリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンの組み合わされたR基、R、R、およびRのモルパーセントは、アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンのケイ素結合有機基の全モル数基準で、少なくとも70モルパーセント、少なくとも90モルパーセント、または少なくとも95モルパーセントであり;100モルパーセント以下、99モルパーセント以下、または97モルパーセント以下である。本発明の硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物中に存在する前駆体成分の組成は、もちろん、硬化組成物について記載されたモルパーセントが達成されるようなものである。
【0062】
本発明の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンは、ヒドロシル化を用いて形成される場合、ケイ素架橋アルキレン部分を含むであろう。ケイ素結合アルケニル基は、ビニル;モノエチレン性不飽和C−C18直鎖、分岐鎖、または環状炭化水素:を、ビニル置換アリール基とともに含むので、ケイ素架橋アルキレン部分のCHRCHR単位中に含まれる炭素原子の数は、典型的には2〜18個の炭素原子になるであろう。したがって、RおよびRの炭素原子の合計数が0〜16の範囲で、RおよびRはそれぞれ0〜16個の炭素原子を含んでもよい。実際には、典型的に、CHRCHR単位中に2〜18個の炭素原子があるような場合であっても、CHRCHR単位中の炭素原子の合計数に特に制限はない。
【0063】
本発明の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンの数平均分子量Mnは、少なくとも328g/モル、少なくとも500g/モル、または少なくとも1,000g/モルであり、および硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンが、不確定に高い分子量を有する1つの架橋分子でありうるか、または複数の架橋分子を含みうるならば、特に上限はない。本明細書において、「架橋」なる用語は、相補的反応性(すなわち、互いに反応する能力)を有し、任意のケイ素ベースの前駆体上のケイ素結合有機基として存在する2つの反応性ケイ素結合有機基が反応して架橋を形成することを意味する(例えば、アルキレン架橋はケイ素結合水素原子とケイ素結合ビニルとの反応により形成され、あるいはケイ素結合ヒドロキシル基がケイ素結合アルコキシ基と反応して、Si−O−Si結合を形成する)。好適な硬化性アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンのMnは、少なくとも328g/モル、少なくとも500g/モル、または少なくとも1,000g/モル;300,000g/モル以下、200,000g/モル以下、50,000g/モル以下、10,000g/モル以下とすることができ;並びにMWD多分散性(Mw/Mn)は、少なくとも1.00、少なくとも1.01、少なくとも1.1、または少なくとも1.2;50以下、20以下、10以下、または3以下とすることができる。当業者はさらに、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンは、1以上の非常に大きな架橋アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン分子(すなわち、200,000;300,000;1,000,000、または不確定に高いMnを有する)と、より小さなアリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン分子との混合物を含んでもよく、そのようなMWDは二モード、または多モードであることを認識するであろう。
【0064】
本発明の「ケイ素ベースの前駆体成分(ケイ素ベースの前駆体)」は、式II:
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (II)
(式中:
SiO1/2、RSiO2/2、RSiO3/2、およびSiO4/2は、それぞれ、M単位、D単位、T単位、およびQ単位であり、これらはすべて一次シロキサン単位である;
下付き文字c、d、e、およびfは、それぞれ、RSiO1/2、RSiO2/2、RSiO3/2、およびSiO4/2のモル分率と一致するように選択される;
0.001≦c≦1;0≦d≦0.999;0≦e≦0.50;0≦f≦0.10;
c+d+e+f=1)、および
式V:
13Si (V)、並びに
その組み合わせ、
から選択される平均組成式により表され、ここで:
ケイ素結合アルケニル基は、ケイ素前駆体成分のケイ素結合有機基の合計モル基準で、0モルパーセントから60モルパーセント以下の量で該ケイ素にて存在する;
ケイ素結合水素原子は、ケイ素前駆体成分のケイ素結合有機基の合計モル基準で、0モルパーセントから60モルパーセント以下の量で該ケイ素にある;
ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基は、ケイ素前駆体のケイ素結合有機基の合計モル基準で、少なくとも0モルパーセントから99.9モルパーセント以下の量で該ケイ素前駆体にて存在する;
−Rおよび組み合わせは、アルケニル、水素原子、アリール、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アリール(チオ)エーテルアリール、他の炭化水素基、およびその組み合わせから選択されるケイ素結合有機基を包含する;並びに
13は、アルケニル、水素原子、アリール、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アリール(チオ)エーテルアリール、他の炭化水素基、およびその組み合わせから選択されるケイ素結合有機基を包含する。
ケイ素ベースの前駆体成分はアリール(チオ)エーテルアリール基を有する必要はないが、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の少なくとも1つの「ケイ素ベースの前駆体成分」は、アリール(チオ)エーテルアリール基を含有しなければならない。
【0065】
本発明のケイ素ベースの前駆体、または非ケイ素ベースの前駆体(例えば、キャッピング剤)の粘度は:25℃で、少なくとも1センチポアズ、少なくとも10センチポアズ、または少なくとも100センチポアズであり;および100,000センチポアズ以下、10,000センチポアズ以下、または1,000センチポアズ以下である。硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の粘度は:25℃で、少なくとも10センチポアズ、または少なくとも100センチポアズであり;2,000,000センチポアズ以下、1,000,000センチポアズ以下、100,000センチポアズ以下、10,000センチポアズ以下、または1,000センチポアズ以下である。硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物が、良好な流動特性を必要とする用途(例えば、型の充填、または基体表面のコーティング)において用いられる場合、硬化性組成物は空洞を完全に埋め、過度の広がりまたは飛び散りなしに表面にわたって十分に広がるのが望ましい。このような場合において、硬化前、または場合によっては硬化中の臨界使用温度での硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の好適な粘度は、典型的には:少なくとも100センチポアズ、少なくとも500センチポアズ、または少なくとも1,000センチポアズであり;50,000センチポアズ以下、20,000センチポアズ以下、10,000センチポアズ以下、または5,000センチポアズ以下である。
【0066】
アルケニルケイ素ベースの前駆体の非網羅的なリストは、たとえば、ビニルジメチルシリル末端(フェノキシフェニル)フェニルシロキサン、ビニルジメチルシリル末端(フェノキシフェニル)メチルシロキサン、ビニルジメチルシリル末端(フェニルチオフェニル)フェニルシロキサン、ビニルジメチルシリル末端(フェニルチオフェニル)メチルシロキサン、ビニルジフェニルシリル末端ビス(p−フェノキシフェニル)シロキサン、ビニル(フェノキシフェニル)フェニル末端ビス(p−フェニルチオフェニル)シロキサン、ビニルジメチルシリル末端ポリ(フェニルメチルシロキサン)、ビニルジメチルシリル末端ポリ(フェニルメチルシロキサン−コ−ジフェニルシロキサン)、ビニルジメチルシリル末端ポリ[(フェノキシフェニル)フェニルシロキサン−コ−ジフェニルシロキサン]、ビニルメチルフェニルシリル末端ポリ(フェニルメチルシロキサン)、ビニルメチルフェニルシリル末端ポリ(フェニルメチルシロキサン−コ−ジフェニルシロキサン)、ビニルジメチルシリル末端ポリ(フェニルメチルシロキサン−コ−ビニルメチルシロキサン)、ビニルジメチルシリル末端ポリ(フェニルメチルシロキサン−コ−ジフェニルシロキサン−コ−ビニルメチルシロキサン)、ビニルメチルフェニルシリル末端ポリ(フェニルメチルシロキサン−コ−ビニルメチルシロキサン)、ビニルメチルフェニルシリル末端ポリ(フェニルメチルシロキサン−コ−ジフェニルシロキサン−コ−ビニルメチルシロキサン);ジビニルジフェニルジメチルジシロキサン、1,5−ジビニル−1,5−ジメチル−テトラフェニルトリシロキサン、1,5−ジビニル−ヘキサフェニルトリシロキサン、およびその組み合わせを包含する。
【0067】
ケイ素結合水素原子は、本発明の(任意の)ヒドリドケイ素ベースの前駆体中に、ヒドリドケイ素ベースの前駆体の全ケイ素結合有機基基準で、少なくとも0.1モル%、少なくとも1モル%、または少なくとも5モル%であり;60モル%以下、30モル%以下、10モル%以下の量で存在する。ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基は、ヒドリドケイ素化合物中:ヒドリドケイ素ベースの前駆体の全ケイ素結合有機基基準で、少なくとも0モル%、少なくとも10モル%、少なくとも30モル%、または少なくとも40モル%であり:99.9モル%以下、90モル%以下、80モル%以下、または70モル%以下の量で存在する。
【0068】
本発明の好適な硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物において、ヒドリドケイ素ベースの前駆体は:
i)平均組成式III:
(RSiO1/2(R10SiO2/2(R11SiO3/2(SiO4/2 (III)
(式中:
SiO1/2、R10SiO2/2、R11SiO3/2、SiO4/2は、それぞれ、M単位、D単位、T単位、およびQ単位であり、これらは全て一次シロキサン単位である;
下付き文字g、h、j、およびkは、それぞれ、RSiO1/2、R10SiO2/2、R11SiO3/2、およびSiO4/2のモル分率と一致するように選択される;
0.001≦g≦1;0≦h≦0.999;0≦j≦0.50;0≦f≦0.10;
g+h+j+k=1;
ケイ素結合水素原子は、ヒドリドケイ素化合物において、ヒドリドケイ素化合物のケイ素結合有機基の合計モル基準で、少なくとも0.1モルパーセントから60モルパーセント以下の量で存在する;および
−R11は、アルケニル、水素原子、アリール、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アリール(チオ)エーテルアリール、他の炭化水素基、およびその組み合わせから選択される)を有するヒドリドケイ素化合物;および
ii)式IV:
12SiH(4−m) (IV)
(式中:
m=1または2である;
12は、アルケニル、アリール、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アリール(チオ)エーテルアリール、他の炭化水素基、およびその組み合わせから選択される)を有するヒドリドケイ素化合物;並びに
その組み合わせ:
から選択されるヒドリドケイ素化合物を包含する。
【0069】
本発明のケイ素ベースの前駆体のM、M、またはMWD多分散性(M/M)に特に制限はない。さらに、ケイ素ベースの前駆体は、単一の分子量を有する1つの十分に定義された化合物であってもよく、または鎖長(よって、分子量)の分布を有するポリマー鎖の集まりのものであってよい。典型的には、どちらに対するMも少なくとも100g/モル、少なくとも500g/モルであり;200,000g/モル以下、100,000g/モル以下、50,000g/モル以下、30,000g/モル以下、10,000g/モル以下、または2,000g/モル以下である。典型的には、どちらに対するMWD多分散性M/Mも、少なくとも1.00、少なくとも1.01、少なくとも1.1、または少なくとも1.2であり;20以下、10以下、または3以下である。
【0070】
ヒドリドケイ素化合物の非網羅的なリストは、例えば:ヒドリド末端ポリ(フェニル−(ジメチルヒドロシロキシ)シロキサン)、ヒドリド末端ポリ[(フェノキシフェニル)フェニルシロキサン、ヒドリド末端ポリ(ジフェノキシフェニル)シロキサン、ヒドリド末端ポリ[(フェニルチオフェニル)フェニルシロキサン、ヒドリド末端ポリ(メチルヒドロシロキサン−コ−フェニルメチルシロキサン)、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、フェニルシラン、ジフェニルシラン、1,3−ジフェニル−1,1,3,3−テトラキス(ジメチルシロキシ)ジシロキサン、およびその組み合わせを包含する。
【0071】
本発明の基R−RおよびR−R13は、次のリストにより例示される。アルキル基の非網羅的なリストは:メチル、C−C12アルキル(ここで、アルキル部分は、直鎖、分岐鎖または環状、例えば、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル、ブチル、およびイソブチル;ハロ置換アルキル、例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル;およびアルコキシ置換アルキル、例えば、メトキシメチルを包含する。好適なアルキル基は、メチルまたはエチル、およびその組み合わせから選択することができる。好適なアルキル基はメチルとすることができる。アルケニル基は、例えば、ビニル、1−ヘキセニル、5−ヘキセニル、アリル、2−ヘキセニル、およびビニルフェニル(すなわち、フェニル環の炭素との共有結合を通じてケイ素と結合されたスチレン基)を包含する。好適なアルケニル基は、ビニルまたはアリル、およびその組み合わせから選択することができる。好適なアルケニル基はビニルとすることができる。好適なアルケニル基は少なくとも1つのビニルフェニル基を包含してもよい。アルコキシ基は、例えば:メトキシ、C−C12アルコキシ(ここで、アルキル部分は、直鎖、分岐鎖または環状であり、例えば、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、およびt−ブトキシである)を包含する。好適なアルコキシ基は、メトキシまたはエトキシ、およびその組み合わせから選択することができる。好適なアルコキシ基はメトキシとすることができる。アリールオキシ基は、例えば:フェノキシ;フェニル環に結合した1以上のアルコキシ、アリールオキシ、またはハロ置換基を有するフェノキシを包含する。アリール基をケイ素原子と結合させる酸素原子を有するこれらのアリールオキシ基は、本発明のアリール(チオ)エーテルアリール基と混同されるべきでない。当業者は、上記の種類および特定の基以外の他の炭化水素基がR−RおよびR−R13として存在し得ることを認識するであろう。典型的には、これらの他の炭化水素基は、分子中に存在するケイ素結合有機基の全モル基準で、0モル%から10モル%以下の量で存在する。硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンの硬化および特性(例えば、熱老化耐性)に対する有害な影響が最小であるか、または存在しないならば、10モル%よりさらに多い他の炭化水素基が存在してもよい。他の炭化水素基の種類の非網羅的なリストは:アミン類、ニトリル類、(メタ)アクリレート類、エポキシド類、アミド類、イミド類、およびその組み合わせを包含する。
【0072】
本発明の硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物において、ヒドロシル化が硬化の方法である場合、アルケニルケイ素ベースの前駆体のケイ素結合アルケニル基に対するヒドリドケイ素ベースの前駆体のケイ素結合水素原子のモル比は、少なくとも0.5、少なくとも0.8、または少なくとも1.0であり;3.0以下、2.0以下、または1.5以下である。
【0073】
本発明のキャッピング剤は、「アルケニルキャッピング剤」;「ヒドリドキャッピング剤」;「アルコキシキャッピング剤」;「アラルコキシ」または「ヒドロキシキャッピング剤」から選択されるキャッピング剤を包含する。アルケニルキャッピング剤は、ケイ素結合ビニル基と反応できる部分である、「アルケニルキャッピング部分」を包含する。典型的には、アルケニルキャッピング部分は「ヒドリドケイ素結合」(すなわち、Si−H結合)である。アルケニルキャッピング剤の例は:トリメチルシラン、トリフェニルシラン、メチルフェニルシラン、およびペンタフェニルジシロキサンを包含する。ヒドリドキャッピング剤は、ケイ素結合ヒドリド基と反応できる「ヒドリドキャッピング部分」を包含する。典型的には、ヒドリドキャッピング部分はアルケニル基である。ヒドリドキャッピング剤の例は:トリメチルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、およびペンタフェニルビニルジシロキサンを包含する。アルコキシキャッピング剤は、ケイ素結合アルコキシ基と反応できる部分であるアルコキシキャッピング部分を包含する。典型的には、アルコキシキャッピング部分は、アルコキシ、水、またはヒドロキシ、およびその組み合わせから選択される。アルコキシキャッピング剤の例は:トリメチルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、およびペンタフェニルメトキシジシロキサンを包含する。ヒドロキシキャッピング剤は、ケイ素結合ヒドロキシル基と反応できる部分である「ヒドロキシキャッピング部分」を包含する。典型的には、ヒドロキシキャッピング部分は、アルコキシまたはヒドロキシ、およびその組み合わせから選択される。ヒドロキシキャッピング剤の例は:トリメチルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、およびペンタフェニルメトキシジシロキサンを包含する。当業者は、本発明のキャッピング剤は、すでに明記されたもの以外の他のキャッピング部分を含んでもよいが、ただし、それらの他のキャッピング剤が、硬化反応または硬化アリールポリシロキサン組成物に悪影響を及ぼすことなく、ケイ素結合アルケニル、ヒドリド、アルコキシ、アラルコキシ、またはヒドロキシル基と反応性であるキャッピング部分を含むことを条件とすることを理解するであろう。キャッピング剤は、1以上のアリール(チオ)エーテルアリール基を含んでもよいし、あるいはアリール(チオ)エーテルアリール基を含まなくてもよい。
【0074】
本発明の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物の屈折率は、少なくとも1.50、少なくとも1.55、または少なくとも1.58であり;1.67以下、1.65以下、1.63以下、1.62以下である。屈折率のこれらの制限は、高RIナノ粒子などの高RI添加剤の不在下での制限である。高RIナノ粒子の添加は、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物の屈折率の上限を2.5以下、2.1以下、または1.8以下に増加させうる。
【0075】
本発明の硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の屈折率は:少なくとも1.50、少なくとも1.55、または少なくとも1.58であり;1.67以下、1.65以下、1.63以下、1.62以下である。屈折率のこれらの制限は、高RIナノ粒子などの高RI添加剤の不在下での制限である。高RIナノ粒子の添加は、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の屈折率の上限を2.5以下、2.1以下、または1.8以下に増加させうる。
【0076】
本発明の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物は、さらに添加剤を含むことができる。1以上の添加剤を硬化ポリシロキサン中に含めることができる。添加剤の非網羅的なリストは:ナノ粒子またはミクロ粒子サイズのフィラー、例えば、セリア、チタニア、シリカ、ジルコニア、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ランタン;酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤(HALS);潤滑添加剤;殺菌剤;難燃剤;コントラストエンハンサー;UV安定剤;光安定剤;界面活性剤、接着修飾剤、例えば、アルコキシ含有シラン、アルコキシ含有シリコーン、およびエポキシシリコーン;蛍光体;吸収色素;蛍光色素;導電性添加剤または熱伝導性添加剤、例えば、カーボンナノチューブまたはナノ粒子;キレート化剤または金属イオン封鎖剤;酸スカベンジャー;塩基スカベンジャー;および金属不動態化剤および強化剤、例えば、蛍光粉末、ナノチューブ、ナノスフィア、ナノ粒子、ミクロスフィア、顔料、液晶、およびクレイを包含する。
【0077】
高RIナノ粒子または他の添加剤を、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物に添加して、その屈折率および対応する硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物の屈折率を上昇させることができる。かかる屈折率増加添加剤は、例えば、セリア、チタニア、ジルコニア、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ランタン、酸化亜鉛、タングステート類、モリブデート類、酸化ニオブ、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、ヘキサフェニルジシロキサン、テトラフェニル鉛、およびテトラフェニルシランを包含する。本発明の複数の高RIナノ粒子は、少なくとも1nm、少なくとも2nm、または少なくとも5nmであり;30nm以下、20nm以下、または10nm以下の平均粒子直径を有する。硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物に関する適用が、高い光透過率を必要とする場合、複数の高RIナノ粒子が試料の光透過率を90%より低い値に有意に減少させないことがさらなる要件である。複数の高RIナノ粒子についてのPSD多分散性に特に制限はないが、複数の高RIナノ粒子のPSD多分散性は典型的には、少なくとも1.00、少なくとも1.01、少なくとも1.1、または少なくとも1.2であり;20以下、10以下、または3以下である。PSDは一モードまたは多モードであってよい。
【0078】
さらに、硬化阻害剤、補助触媒、接着促進剤、表面不動態化剤、および可動イオン種の不動態化剤を本発明の硬化性アリールシロキサン組成物中および硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物中に含めることができる。硬化阻害剤は、例えば:アセチレンアルコール、例えば、3−メチル−3−ブチン−2−オール、2−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、および3,7−ジメチル−6−オクテン−1−イン−3−オール(BASFから入手される「デヒドロリナロール(dehydrolinalool)」);トリアゾール類;ヒドロシラン、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン;ジアルキルホルムアミド;アルキルチオ尿素;メチルエチルケトオキシム;脂肪族三重結合および適当な沸点を有する有機ケイ素化合物;マレイン酸モノエステル;ジアリルマレエートおよびビニルアセテートの混合物;ニトリル化合物;およびリン化合物を包含する。補助触媒は、例えば、金属酸化物、例えば、チタン、スズ、ジルコニウム、および鉛の酸化物類を包含する。これらの同じ金属酸化物はさらに、接着促進剤として作用することもできる。不動態化剤は、典型的には表面エネルギーを低下させることにより水との相互作用を防げるものであって、例えば、ポリ[(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシロキサン]、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリメトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)ジメチルクロロシラン、および3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルジメチルクロロシランを包含する。
【0079】
担体溶媒も、高温耐性硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンコーティングを形成するために硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物中に含めることができる。好適な溶媒の非網羅的なリストは、トルエン、キシレン、アセトン、エーテル系溶媒(ダウアノール(dowanol)、グライム、アルキルエーテル)、およびハロゲン化溶媒を包含する。本発明の硬化性アリールシロキサン組成物または硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物と混和性である全ての溶媒をこれらの組成物中に含めることができる。
【0080】
本発明の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物を製造する方法がヒドロシル化を含む場合、当業者は、硬化温度および時間が、特定の硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物およびヒドロシル化触媒量に適応するように変更できることを認識するであろう。典型的には、硬化温度は、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物が数分から数時間以内で形成されるように選択され、少なくとも100℃、少なくとも120℃、または140℃であり;220℃以下;200℃以下;または180℃以下である。硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物を製造する好適な方法はさらに、記載した温度極値より高い硬化温度および低い硬化温度をさらに含んでもよい。100℃よりも低い硬化温度は、特に反応性の系またはデリケートな電子装置に望ましいであろうし、220℃よりも高い硬化温度は、硬化中および硬化後の高い温度に対しても特に安定である、特に非反応性の系に望ましいであろう。もちろん、各硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物の特性、例えば、成分の揮発性も、硬化条件を選択する場合に考慮しなければならない。硬化温度は硬化中に変化し得ることもさらに理解される。例えば、硬化温度は最初は130℃に設定できるが、2時間の間に150℃まで上昇するようにプログラムされ、続いて180℃で8時間の最終硬化時間にすることができる。典型的には、アルケニルケイ素ベースの前駆体およびヒドロシル化触媒を、ヒドリドケイ素ベースの前駆体を添加する前に組み合わせて、ケイ素結合水素原子とのその相互作用の前にヒドロシル化触媒の均一な分布を保証する。容易に入手可能なアルケニルケイ素ベースの前駆体の不在下でのこのような相互作用は、相互作用の生成物の沈降を引き起こし、その後のアルケニルケイ素ベースの前駆体の添加に際して、均一で、完全に硬化可能な反応混合物の形成を困難にするか、または不可能にする。ヒドロシル化触媒を、アルケニルケイ素ベースの前駆体およびヒドリドケイ素ベースの前駆体の両者を含有する混合物と組み合わせることも可能である。
【0081】
本発明の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物を製造する方法は:
ケイ素ベースの前駆体を含む硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物を提供し(ここで、少なくとも1つのケイ素ベースの前駆体は、ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基を含み;および少なくとも1つのケイ素ベースの前駆体は多結合性前駆体であり、当該多結合性前駆体は、同じかまたは他の多結合性前駆体の相補的反応性基と反応できる2以上の反応性基を含む);並びに
硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物を硬化させて、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物を形成する工程:を含む。
【0082】
方法はさらに:半導体素子を含む半導体装置を提供する工程;および
硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物を硬化の工程の前または硬化の工程の間に表面に適用すること;
硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物を表面に適用すること;および
その組み合わせ:から選択される工程を含む技術により、半導体素子の少なくとも1つの、少なくとも1表面上にコーティングを形成する工程:を含んでもよい。
【0083】
硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物が:ヒドロシル化触媒を含む場合、ヒドロシル化触媒は、白金、ロジウム、パラジウム、およびその組み合わせから選択されるVIII族元素を包含する金属または金属化合物であり;少なくとも1つの多結合性前駆体は、少なくとも2つのケイ素結合アルケニル基を含むアルケニルアリール(チオ)エーテルアリールシロキサンであり;少なくとも1つの多結合性前駆体は、少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含むヒドリドアリール(チオ)エーテルアリールケイ素化合物であり、前記方法は:ヒドロシル化触媒の少なくとも一部を除去すること;ヒドロシル化触媒の少なくとも一部を不活性化すること;およびその組み合わせから選択される1以上の工程を含む技術により硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物を精製する任意の工程をさらに含むことができる。不活性化は、限定されるわけではないが例えばアンモニア、トリメチルアミンおよびトリエチルアミンのようなアミン類、およびチオール類をはじめとする不活性化種での硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物の処理により達成されうる。
【0084】
硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物は、もちろん、例えば、フィルムの形成および硬化;様々に成形された物品の押出または浸出;射出成形、および様々な形状の物品(例えば、レンズ、またはパターン化された表面を有するフィルム、例えば光抽出フィルム)の、他の型ベースの形成により、本発明の硬化方法を用いるどのような装置が不在である場合にも形成することができる。例えば、半導体装置のような装置が硬化中に存在する場合、装置を損傷しない硬化温度を選択する必要がある。このような場合、半導体装置の1以上の半導体素子は、カプセル化半導体装置を形成するために、半導体素子を硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物で硬化工程前または硬化工程の間にコーティングすることにより、カプセル化されることができる。別法として、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物を、例えば、独立のフィルムとして形成し、次いで装置に適用することができる。
【0085】
本発明の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物は、半導体を含む電気および電子製品のアンダーフィラー、保護コーティング剤、ポッティング剤、または接着剤(例えば、ダイ接着用途)を包含する多くの用途を有する。カプセル化できる半導体の種類に特に制限はない。例えば、発光ダイオード(LED)装置を本発明の硬化アリールポリシロキサンでカプセル化することができる。アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物の高い光透過率は、これを光学用途に用いられる半導体素子においてアンダーフィラー、保護コーティング剤、ポッティング剤、または接着剤として使用するのに特に好適にする。アリール(チオ)エーテルアリールケイ素部分は、コンタクトレンズおよび眼内レンズの分野において非常に有用であり得る。適切なTを維持することは、眼内レンズおよびコンタクトレンズの重大な技術的制約である。しかしながら、高い透明性および屈折率も求められる。したがって、アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンは、その高いRIおよび低いTのためにこれらの用途に有用である。低粘度硬化性アリール(チオ)アリールケイ素組成物は、眼科用レンズ、眼内インプラント、コンタクトレンズ、および光学装置レンズを含む成形レンズを成型するために有用である。硬化アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物は、フリップチップパッケージング用の高熱伝導性伝熱アンダーフィルとしても使用できる。
【0086】
本発明の装置は、その半導体素子が硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物でコーティングされるか、または硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物でコーティングされ、次いで適所で硬化されることを特徴とする。このような半導体素子は、ダイオード、トランジスタ、サイリスタ、固体撮像素子、モノリシックICおよびハイブリッドICにより例示される。加えて、このような半導体装置は、ダイオード、発光ダイオード(LED)、トランジスタ、サイリスタ、フォトカップラー、電荷結合素子(CCD)、モノリシック集積回路(IC)、ハイブリッドIC、大規模および超大規模集積回路(LSI、およびVLSI)により例示される。
【実施例】
【0087】
実験
本発明のいくつかの実施形態がここで以下の実施例において詳細に記載される。
【0088】
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いた分子量測定
ゲル透過クロマトグラフィー(別にサイズ排除クロマトグラフィーとしても知られる)は、実際に、そのモル質量ではなく溶液中のその流体力学的サイズに従って分布のメンバーを分離する。この系を次いで既知の分子量および組成の標準で較正して、溶出時間を分子量と相関させる。GPCの技術は、Modern Size Exclusion Chromatography,W.W.Yau,J.J Kirkland、D.D.Bly;Wiley−Interscience,1979、およびA Guide to Materials Characterization and Chemical Analysis、J.P.Sibilia;VCH、1988、p81〜84において詳細に論議されている。
【0089】
例えば、低分子量サンプル(例えば、10,000)の分子量情報は、次のようにして決定できる:サンプル(低分子量粒子を含有する水性エマルジョン)をTHF中に、約0.1重量%サンプル/体積THFの濃度で溶解させ、6時間振盪し、続いて0.45μmPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)メンブランフィルターを通して濾過する。分析は、連続的に連結された3つのカラム上に100μlの前記溶液を注入し、40℃で保持することにより実行される。3つのカラムは:PL Gel5 100、PL Gel 5 1,000およびPL Gel 10,000を各1個(全てマサチューセッツ州アムハースト(Amherst、Massachusetts)のPolymer Labsから入手可能)である。使用される移動相は1ml/分で流動するTHFである。検出は示差屈折率による。系を狭い分子量のポリスチレン標準で較正した。サンプルのポリスチレン等価分子量を、ポリスチレン標準に対するK=14.1×10−3ml/gおよびa=0.70を使用して、Mark−Houwink較正により計算する。
【0090】
ケイ素結合ビニル基のケイ素結合水素原子に対する比を決定するための核磁気共鳴(NMR)法
Bruker ADVANCE(商標)500NMR分析分光計を用いたNMR分析により、配合のためのケイ素結合水素原子およびビニル成分のグラム重量当量を得る。ケイ素含有化合物のビニル性またはヒドリド性プロトンの積分プロトンNMRシグナルが次いで、プロトンNMRにより既知量のトルエン標準から得られる積分されたシグナルと比較される。そしてビニルまたはヒドリドプロトンの量が重量基準で計算されることができる。
【0091】
ヒドロシル化触媒ストック溶液中の白金濃度を決定するためのX線蛍光(XRF)法
既知量のヒドロシル化触媒を既知量の溶媒(トルエンまたはキシレン)中に溶解させることにより、ヒドロシル化触媒ストック溶液が製造される。トルエンまたはキシレン中ヒドロシル化触媒ストック溶液に関してX線蛍光(XRF)分光法を行うことにより、白金濃度が計算される。Philips PW2404 Sequential Wavelength Dispersive XRFを用いたXRF測定は、既知白金標準で較正される。計算された量(例えば、マイクロピペットを用いて供給されたマイクロリットル)のヒドロシル化触媒ストック溶液を最初にアルケニルケイ素ベースの前駆体と組み合わせ、次いでヒドリドケイ素ベースの前駆体と組み合わせて、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物を形成する。ヒドロシル化触媒ストック溶液が複数の濃度で製造される。
【0092】
材料
ほとんどのシロキサンモノマーおよびポリマーはGelest、Inc.から購入した。溶媒および他の化学物質はAldrichまたはFisher Scientificから購入した。化学物質は入手したままの状態で使用した。x線蛍光分光法を白金ストック溶液に関して行うことにより白金濃度が計算される。ポリマー分子量は、ポリスチレン標準を用いたゲル透過クロマトグラフィーにより決定され、従って相対分子量である。
【0093】
屈折率測定
屈折率は、Reichert Abbe Mark IIデジタル式屈折計を用いて次の合成反応において形成されたケイ素ベースの前駆体について測定された。
【0094】
(p−フェノキシフェニル)フェニルジメトキシシランの合成
1.29グラムのマグネシウム粉末を乾燥窒素でパージされたフラスコ中に入れた。100mLのテトラヒドロフラン(無水)はシリンジにより添加され、続いて12gのp−ブロモジフェニルエーテルが添加された。グリニャール形成を開始するため混合物は音波処理された。溶液は室温で1時間、続いて還流で1時間撹拌された。溶液は冷却された。別のフラスコ中で、10.03gのメタノールを含まないフェニルトリメトキシシランが60mLの無水THFに添加された。グリニャール試薬はゆっくりと添加漏斗から添加され、反応混合物は70℃で16時間加熱された。反応はトルエン中で仕上げ処理(worked up)された。収量は15.62グラムの液体(p−フェノキシフェニル)フェニルジメトキシシランであった。
【0095】
ビニル末端ポリ(p−フェノキシフェニル)フェニルシロキサンの合成
0.91グラムの(p−フェノキシフェニル)フェニルジメトキシシランは55.9mgのジビニルテトラメチルジシロキサン、180mgの水、423mgのTHF、および58.5mgの40%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)と混合された。反応は135分間、油浴中、85℃で、続いて3時間105℃で還流された。反応は次いで105℃で凝縮器を用いずに30分間放置され、揮発性物質および水を除去した。反応はトルエンで仕上げ処理された。水性HClおよび水での洗浄を行って、TBAHを除去した。収量は、0.47グラムの液体ポリマーであって、ならびにトルエン中に溶解しない固体であった。ポリマーのRIはAbbe屈折計により測定すると、1.606であった。
【0096】
ビニル末端ポリ(p−フェノキシフェニルフェニルシロキサン−コ−フェニルメチルシロキサンの合成
0.97グラムのp−フェノキシフェニルフェニルジメトキシシランが130mgのフェニルメチルジメトキシシラン、74.6mgのジビニルテトラメチルジシロキサン、169mgの水、550mgのTHF、および77.8mgの40%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)と混合された。反応は45分間油浴中85℃、続いて30分95℃で、続いて2.5時間105℃で還流された。反応は次いで105℃で20分間、次いで110℃で10分間凝縮器を用いずに放置され、揮発性物質および水を除去した。全ての反応温度は油浴設定温度である。反応はトルエンで仕上げ処理された。水性HClおよび水での洗浄を行って、TBAHを除去した。収量は0.82グラムの液体ポリマーであった。ポリマーのRIはAbbe屈折計により測定すると1.595であった。
【0097】
ビニル末端ポリ(p−フェノキシフェニルフェニルシロキサン−コ−ジフェニルシロキサンの合成。
8.24グラムのp−フェノキシフェニルフェニルジメトキシシランは9.41gのジフェニルジメトキシシラン、1.30gのジビニルテトラメチルジシロキサン、2.96gの水、および1.36gの40%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)と混合された。反応は65分間油浴中80℃で還流された。反応は98℃で2時間45分間、凝縮器を用いずに放置されて、揮発性物質および水を除去した。さらに15分間、98℃での反応が窒素でスイープされ、したがってその反応混合物は透明であった。さらに0.85グラムのジビニルテトラメチルジシロキサンを添加し、反応を30分間98℃で凝縮器を用いて還流させた。全ての反応温度は油浴設定温度であった。反応はトルエンで仕上げ処理された。水性HClおよび水での洗浄を行って、TBAHを除去した。ロータリーエバポレーション後の収量は14.18グラムの透明液体ポリマーであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均組成式I:
(RSiO(4−n)/2(O(4−p−r)/2SiZSiR(4−q−r)/2 (I)
により表されるアリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサンを含む硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物:
[式中:
それぞれの(RSiO(4−n)/2)単位については:
下付き文字nは独立して、0、1、2、または3に等しく;
それぞれの(O(4−p−r)/2SiZSiR(4−q−r)/2)単位については:
下付き文字pは0、1、2、または3に等しく;
下付き文字qは0、1、2、または3に等しく;
p+q=0から[8−(2r+1)]であり;
下付き文字r=1、2、または3であり;
Zは、−CHRCHR−X−、アリーレン、置換アリーレン、およびその組み合わせから選択され、ここで、
−CHRCHR−X−はケイ素架橋アルキレン部分であり、
Xは独立して、メチレン、フェニル、置換フェニル、酸素、およびその組み合わせから選択され;
下付き文字s=0または1であり;および
およびRは独立して、水素原子、アリール(チオ)エーテルアリール、およびアルキルから選択され;
、R、およびRは、アルケニル、水素原子、アリール、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アリール(チオ)エーテルアリール、他の炭化水素基、およびその組み合わせから選択されるケイ素結合有機基を含み;
、R、およびRの少なくとも1つは、ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基を含み;
下付き文字aおよびbは、それぞれ(RSiO(4−n)/2)単位および(O(4−p−r)/2SiZSiR(4−q−r)/2)単位のモル分率と一致するように選択され;
0≦a≦1;0≦b≦1;並びに
a+b=1である]。
【請求項2】
0<a<1;0<b<1であって、およびヒドロシル化触媒をさらに含み、ヒドロシル化触媒が、白金、ロジウム、パラジウム、およびその組み合わせから選択されるVIII族元素を含む金属または金属化合物である、請求項1記載の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物。
【請求項3】
ヒドロシル化触媒、およびその任意の誘導体が、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物の合計重量基準で、VIII族元素相当値として表すと、少なくとも0.005ppmから3.0ppm以下の合計量で存在する、請求項2記載の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物。
【請求項4】
合わせられたR、R、およびRの少なくとも70モルパーセントから100モルパーセントが、アリール(チオ)エーテルアリール、および任意に、ビニル、水素原子、メチル、フェニル、ナフチル、およびその組み合わせから選択されるケイ素結合有機基である請求項1記載の硬化アリールポリシロキサン組成物。
【請求項5】
合わせられたR、R、およびRの少なくとも70モルパーセントから100モルパーセントが、フェノキシフェニル類、および任意にフェニルである請求項1記載の硬化アリールポリシロキサン組成物。
【請求項6】
請求項1記載の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物を製造する方法であって、
A.ケイ素ベースの前駆体を含む硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物を提供する工程
(ここで、少なくとも1つのケイ素ベースの前駆体は、ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基を含み;および
少なくとも1つのケイ素ベースの前駆体は多結合性前駆体であり、ここで当該多結合性前駆体は、同じかまたは他の多結合性前駆体の相補的反応性基と反応できる2以上の反応性基を含む);並びに
B.硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物を硬化させて、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物を形成する工程:
を含む方法。
【請求項7】
C.半導体素子を含む半導体装置を提供する工程;および
D.半導体素子の少なくとも1つの、少なくとも1表面上にコーティングを形成する工程であって、
硬化の工程B.の前または間に、硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物を表面に適用すること;
硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物を表面に適用すること;および
その組み合わせ:
から選択される工程を含む技術により、半導体素子の少なくとも1つの、少なくとも1表面上にコーティングを形成する工程:
をさらに含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
a)硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物がヒドロシル化触媒をさらに含み;
b)ヒドロシル化触媒が、白金、ロジウム、パラジウム、およびそれらの組み合わせから選択されるVIII族元素を含む金属または金属化合物であり;
c)少なくとも1つの多結合性前駆体が、少なくとも2つのケイ素結合アルケニル基を含むアルケニルアリール(チオ)エーテルアリールシロキサンであり;
d)少なくとも1つの多結合性前駆体が、少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含むヒドリドアリール(チオ)エーテルアリールケイ素化合物であり;および
e)方法が、ヒドロシル化触媒の少なくとも一部を除去すること;ヒドロシル化触媒の少なくとも一部を不活性化すること;およびその組み合わせ:から選択される工程を含む技術により、硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物を精製する任意の工程(E)をさらに含む:
請求項6記載の方法。
【請求項9】
ケイ素ベースの前駆体を含む硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物であって、
少なくとも1つのケイ素ベースの前駆体が、ケイ素結合アリール(チオ)エーテルアリール基を含み;および
少なくとも1つのケイ素ベースの前駆体が多結合性前駆体を含み、当該多結合性前駆体が、同じかまたは他の多結合性前駆体の相補的反応性基と反応できる2以上の反応性基を含む:
硬化性アリール(チオ)エーテルアリールケイ素組成物。
【請求項10】
半導体素子を含むカプセル化半導体装置であって、1以上の半導体素子が請求項1記載の硬化アリール(チオ)エーテルアリールポリシロキサン組成物でコーティングされている、カプセル化半導体装置。

【公開番号】特開2008−138207(P2008−138207A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−310172(P2007−310172)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】