説明

アルカリ二次電池

【課題】 電極合剤に対する担持能力に優れた集電基板を使用した大電流放電用アルカリ二次電池を提供する。
【解決手段】 粉末圧延法により作製され、周縁部にバリ部3を有する複数個の開口2が形成された多孔質金属シート1よりなる集電基板Aに電極合剤を担持させたものを正極とし、かつ、前記集電基板1における電極合剤の担持面積が前記電池の理論容量(Ah)当たり、25cm2以上であるアルカリ二次電池。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高容量で大電流放電が可能なアルカリ二次電池に関し、さらに詳しくは、正極に用いる集電基板の電池内における占有体積が小さいので電池内に多量の正極合剤を収容することができ、そしてその集電基板は正極合剤の担持能力に優れているので、大容量で、かつ、大電流放電が可能なアルカリ二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】ニッケル・カドミウム二次電池やニッケル水素二次電池に代表されるアルカリ二次電池は、一般に水酸化ニッケルのようなニッケル化合物の粉末を担持する正極と、水素吸蔵合金粉末を担持する負極との間に、電気絶縁性でかつ保液性を備えたセパレータを介装してなる積層体を、例えば渦巻き状に巻回して電極群を形成し、この電極群を容器すなわち電池缶の中に所定のアルカリ電解液と共に収容した後、この電池缶を封口した構造となっている。
【0003】上記の正極(ニッケル極)としては、従来から焼結式のものとペースト式のものがある。このうち、ペースト式のニッケル極は概ね次のようにして製造されている。まず、活物質である水酸化ニッケル粒子と、例えば電池組立後における初充電の過程で導電性マトリックスを形成して導電性を発現する一酸化コバルトのような導電材と、例えばカルボキシメチルセルロースのような結着剤とを水で混練して所定組成のペースト状合剤(以下、電極合剤という)を調製する。
【0004】ついで、この電極合剤を集電基板に直接塗布または充填したのち乾燥し、さらに例えばロール圧延することにより、厚みを調整すると同時に、乾燥した電極合剤を緻密化してこの集電基板に担持させてニッケル極とする。かかる構成において、集電基板としては一般に内部に連通孔が3次元的に形成されている多孔質の発泡金属多孔体シート、具体的には、通常、発泡Ni多孔体シ−トが用いられている。
【0005】このような発泡金属多孔体シートよりなる集電基板は、表面だけではなく内部の連通孔にも電極合剤が充填されるので、高密度充填が可能となり、正極、ひいては電池の高容量化にきわめて有利である。しかも、それと同時に内部に複雑に分布する連通孔に充填された電極合剤は、この連通孔内に確実に確保された状態となるので、例えば電極の巻回時においても電極合剤が集電基板から脱落することが防止されるという利点もある。
【0006】しかしながら、その反面、上記の集電基板には次のような問題がある。まず、第1の問題は高価であるということである。このことは、大電流放電が可能な大型電池を製造する場合には、多重の電極合剤を当該集電基板に担持させることが必要となり、そのことに対応して集電基板すなわち発泡Ni多孔体シートの使用量が不可避的に増加することになるため、製造コストが増大し、昨今の低価格競争に対応することに難点がある。
【0007】また、この集電基板に多量の電極合剤を担持せしめる場合には、不可避的に当該集電基板の厚みもあつくなる。そのため、電池缶の内径に適合する所定外径の電極群を製造したときに、当該電極群の体積に占める集電基板の占有体積は大きくなり、その結果、電極合剤の相対的な割合は減少することになるため、電池の高容量化に難点が生じてくる。
【0008】第二に、この発泡Ni多孔体シートは柔軟性にかける。したがって、前述したようにこの発泡Ni多孔体シートを集電基板にして製造したニッケル極と、例えば水素吸蔵合金負極とをセパレータを介して積層したのち渦巻き状に巻回して電極群を形成したときに、発泡Ni多孔体シートが折損してその折損端がセパレータを突き破って負極と接触し、短絡を起こすことがあるということである。
【0009】以上のことから、最近の大電流放電用の大型電池においては、正極の集電基板として上記の発泡Ni多孔体シートに代えて、安価でしかも薄いNiパンチングメタルやNiエキスパンドメタルのような2次元シ−トを用い、その表面に電極合剤を塗着した、いわゆる塗着式の電極が検討されている。この塗着式電極は、2次元シートの表面に電極合剤を所定の厚みで塗着し、ついで乾燥・圧延するだけで製造できるため、前述した金属多孔体シートを用いたときに比べて製造コストを低減することが可能である。
【0010】しかしながら、この2次元シートを集電基板とした塗着式電極にも次のような問題がある。第一に、集電基板が2次元シートであるため、電極合剤と集電基板との密着力が弱く、集電基板の表面から電極合剤が剥離しやすいという問題である。そのため、電極の容量低下や電気抵抗の増加が発生し、結果として、組立後の電池の放電容量の低下や放電電圧の低下を招来することになる。
【0011】第二に、電極合剤における活物質が水酸化ニッケル粒子である場合、この水酸化ニッケル粒子は非導電性であるため、集電基板の表面に形成されている電極合剤層の厚み方向において集電基板から離れた位置に存在する水酸化ニッケル粒子と当該集電基板との間の電子伝導性が低下するという問題である。そのため、活物質の利用率低下、集電効率の低下、電極としての電気抵抗の増大、さらには、放電電圧や放電容量の低下などが引き起こされることになる。
【0012】かかる問題は、電極合剤における導電材の量比を増大させることによってある程度解消することが可能である。しかしながら、従来から使用されている酸化コバルトや水酸化コバルトのような導電材は、それ自体としては水酸化ニッケル粒子と同様に非導電性の材料であり、電池組立後の初充電での過程で導電性マトリックスを形成する材料であるため、これらを導電材として機能させる前提条件は、あくまでも電極合剤が集電基板から脱落していないということである。
【0013】また、2次元シートからなる集電基板は発泡金属多孔体シートの集電基板に比べて強度が高いため、電極としての要求強度に対する基板の目付け量を低減することが可能である。二次電池において、集電基板は電池容量に関与しない材料であるため、このように基板の目付け量を低減できると、電池内の空隙分が増加し、活物質量の増量および電解質液量の増量が可能となるので、電池の高容量化に極めて有効である。
【0014】上記の点を勘案すると、2次元シートよりなる集電基板は、発泡金属多孔体シートの集電基板に比べると、大電流放電用電池の集電基板としては有利な点もあるとはいえ、電極合剤の担持能力の点、活物質の利用率の低下の点などで難点がある。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、正極の集電基板として2次元シートを用いたアルカリ二次電池における上記した問題を解決した集電基板を使用することにより、正極の電極合剤における活物質の利用効率を高め、その結果、サイクル寿命特性、ならびに、大電流放電特性に優れたアルカリ二次電池を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明においては、正極と、この正極にセパレータを介して対面配置された負極と、アルカリ電解液とが容器内に収容されてなるアルカリ二次電池であって、正極は、粉末圧延法により作製され、周縁部にバリ部を有する複数個の開口が形成された多孔質金属シートよりなる集電基板に電極合剤を担持させたものであり、かつ、前記集電基板が電極合剤を担持する面積(以後、単に担持面積という)が電池の理論容量(Ah)当たり、25cm2以上であることを特徴とするアルカリ二次電池が提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】まず、本発明のアルカリ二次電池の構造例を図1に示す。図において、負極端子でもある金属製の電池缶15の中には、後述する電極群12と所定のアルカリ電解液(図示しない)が収容されている。電極群12は、例えば水酸化ニッケルの粉末を主成分とする電極合剤を後述する集電基板に担持して成る正極12aと、水素吸蔵合金粉末を主成分とする電極合剤を同じく後述する集電基板に担持してなる負極12bの間にセパレータ12cを介装したものを渦巻状に巻回して製造されている。
【0018】そして、この電池の場合、電極群12の負極12bの端部13aは負極側の集電板14aに例えば溶接して取り付けられ、更にこの負極側集電板14aはリード14bを介して電池缶15と電気的に接続されている。また、電極群12の正極12bの端部13bは正極側の集電板16aに例えば溶接して取り付けられ、さらにこの正極側集電板16aはリード16bを介して後述する封口板17と電気的に接続されている。
【0019】封口板17は、電池缶15の上部開口に電気絶縁材料から成るガスケット18を介して配置され、その個所に例えば加締め加工を行うことにより気密構造が形成されている。そして、封口板17の中心には小孔17aが形成されており、この小孔17aを塞いでゴム弾性を有する弁体19が配置され、更にこの弁体19を覆って帽子形状をした正極キャップ20が正極端子として配置され、正極キャップ20と封口板17の間は例えば溶接されている。
【0020】この電池の場合、大電流放電で駆動したり、また過充電したときには電池内部でガスが発生し、電池内圧の上昇を引き起こすことがあるが、その場合には、ガス圧により弁体19が開弁して発生ガスは電池缶15の外へ放出されることにより電池の安全が確保される。本発明の電池は、上記した構造例において、正極12aに用いる集電基板が以下に説明するようなものであり、また、その集電基板の電極合剤の担持面積が電池の理論容量(Ah)当たり、25cm2以上になっていることを特徴とする。また、負極12bに用いる集電基板が、その端部は無開口部になっているパンチングメタルシートであって、前記無開口部が負極側集電板13aに溶接されていることを好適とする。
【0021】次に、本発明のアルカリ二次電池の要部である正極用集電基板について詳細に説明する。図2は、本発明の集電基板の1例Aを示す平面図であり、図3は図2のIII−III線に沿う断面図、また図4は図2の○で囲まれた領域Bの拡大図である。まず、図2において、集電基板Aは、全体が後述する金属多孔質シート1で構成され、その面内には複数個の開口2が形成されている。
【0022】ここで、集電基板Aの構成素材である金属多孔質シート1は、いわゆる粉末圧延法によって製造される。具体的には、例えばステンレス鋼から成る搬送シートの上に所定粒径の金属粉末を連続的に散布し、これを一対の圧延ロールの間を通過させることにより当該圧延ロールで金属粉末を加圧して圧延する。このとき圧延ロールの加圧力を適正値に調節することにより、金属粉末は互いに点接触または線接触した状態で圧粉体シートになる。
【0023】その後、この圧粉体シートを、金属粉末の溶融や焼結が起こらない程度の温度に調節されている不活性ガス雰囲気の焼成炉に導入・加熱して目的とする金属多孔質シートにする。この加熱処理の結果、図4の拡大図で示したように、金属多孔質シート1においては、圧粉体シートを構成していた各金属粉末1aは、全体が溶融や焼結することなく、互いの接触部1bで部分的に熱融着する。したがって、各金属粉末1aの間には複雑な形状で3次元的に分布する空孔(連通孔)1cが形成されることになる。
【0024】そして最後に、焼成炉から取り出し、搬送シートから剥離することにより、本発明の集電基板Aの素材である金属多孔質シート1が得られる。この一連の製造工程において、金属多孔質シート1の多孔度や機械的な強度(例えば引張強さ)などの性状は、上記した圧延ロールの加圧力,焼成時の温度などを適正に選択することにより変化させることができる。
【0025】さらに、この金属多孔質シート1としては、その多孔度が5〜15%であるものが好ましい。多孔度が5%未満のものは、緻密すぎるので、後述する打抜き加工時に割れが多発して不良品になりやすく、また15%より大きいものは、強度特性が充分ではないので、取扱い時の損傷が多発するようになるからである。
【0026】この金属多孔質シート1の面内に形成されている開口2は、その平面視形状が多角形(図では四角形)になっている。そして、開口2の各辺2aには、後述する型による打抜き方向と同じ方向に突出する状態で、辺2aを基部とする三角形をした4枚のバリ部3が形成されている。このバリ部3は、開口位置交互に表面1Aおよび裏面1Bの双方に突出して形成されている。バリ部3のいずれもは金属多孔質シート1の面1Aまたは面1Bの方向に反り返り拡開している(図3)。
【0027】このバリ部3の反りは次のような作用効果を発揮する。すなわち、この金属多孔質シート1の両面に、図3の仮想線で示したように、電極合剤4を塗着すると、面1A側および面1B側に反っているバリ部3が電極合剤に対するアンカー効果を発揮する。その結果、集電基板Aの電極合剤4に対する担持能力が向上する。
【0028】また、このバリ部3は、塗着された電極合剤の厚み方向に食い込んだ状態で当該電極合剤の中に配置されることになるので、集電基板Aの表面1Aおよび裏面1Bから遠く離れて存在している活物質の電子伝導性を確保する働き、すなわち導電経路としての機能も発揮する。このようなバリ部3は次のようにして形成することができる。すなわち、図5で示したように、前記した金属多孔質シート1に、先端部5aが四角錐形状をした打ち抜き型すなわちパンチ5で矢印方向への打抜き加工を行う。先端部5aで打ち抜かれた金属多孔質シート1の部分は、図5で示したように、パンチ5の先端部5aの形状に対応した4枚の三角形形状に引き裂かれてバリ部3となり、それらは面1A(面1B)の略垂直方向か、または面1A(面1B)側に若干反った状態で突出する。ついで、全体を例えば一対の圧延ロールの間に通して加圧する。これらバリ部3は面1A(面1B)側に押圧され、その結果、図3で示したようなバリ部3における面1A(面1B)側への反りが形成される。
【0029】このとき、バリ部3における上記した反りの程度は、圧延ロール間のスキンパスを調整する、すなわち圧延ロールの加圧力を調整することにより可能となる。スキンパスを小さくすれば、反りの角度を小さくすることができ、またスキンパスを大きくすれば反りの角度は大きくなるからである。図6は、本発明におけるバリ部3の別の例を示している。このバリ部3の場合は、開口2の辺2aでは略垂直方向に突出しているが、その先端部3aのみが面1A側に反り返っている。図示しないが、面1B側も同様である。このようなバリ部3も、先端部3aが塗着した電極合剤に対してアンカー効果を発揮する。
【0030】図6で示したバリ部3は、金属多孔質シート1が比較的厚く、したがってバリ部3の基部の強度が比較的強い場合に、圧延ロールのスキンパスを調整することによって形成することができる。なお、図2で示した集電基板Aは、その開口2のバリ部3が交互に多孔質金属シート1の表面1Aおよび裏面1Bに突出している場合であるが、本発明で用いる集電基板はこの態様に限定されるものではなく、場合によってはこれらの開口2のバリ部3が同一方向に突出した構造であってもよい。
【0031】また、開口2は図2で示したように四角形に限定されるものではなく、三角形,五角形など任意の多角形や円形であればよい。例えば三角形の場合には、3枚のバリ部が形成され、それらが塗着された電極合剤に対するアンカー効果を発揮することになる。この集電基板に、電極合剤が塗着され、それを乾燥したのち例えばロール圧延して厚みを調整することにより、本発明で用いる正極12aが製造される。
【0032】その場合、電極合剤は、集電基板Aが当該電極合剤を担持している面積が目的とする電池の理論容量(Ah)に対して25cm2以上となるように塗着されることが必要である。上記した担持面積が25cm2/Ahより小さい場合は、十分な放電特性を発揮することができず、活物質の利用率を十分に高めることができない。
【0033】そして、製造する電極が水酸化ニッケル粒子を活物質とするニッケル極である場合、活物質としては、特許登録第3040760号などで提案されているような水酸化ニッケル粒子、すなわち、非導電性の水酸化ニッケル粒子の表面が導電性を有するコバルトの高次酸化物で被覆されている複合化水酸化ニッケル粒子を使用することが好ましい。また、水酸化ニッケル粒子の表面が、水酸化コバルト,一酸化コバルトなどのコバルト化合物で被覆されているものを用いてもよい。更には両者を混合した状態で用いてもよい。これら活物質を用いると、集電基板の表面から遠く離れた箇所に存在している活物質であってもその電子伝導性が確保される状態が形成されるので、そのことによって活物質としての利用率が向上するからである。
【0034】一方、この正極と組み合わされるべき負極としては、例えば図7に示したように、パンチングNiシート10に水素吸蔵合金粉末を主成分とする負極合剤11を担持させたものが使用される。とくに、大電流放電用のアルカリ二次電池の場合、この負極を構成するパンチングNiシート10の少なくとも一端部に負極合剤11を担持しない無地部(無開口部)10aを形成することが好ましい。大電流放電時の集電効率を高めることができるからである。
【0035】実施例(1)集電基板の製造図8で概略を示した装置を用いた粉末圧延法により、次のようにしてNi多孔質シートを製造した。まず、ロール20a,20bの間を無限軌道を描いて走行速度1m/分で回転するベルトコンベア21の上に、ホッパ22内に収容されている平均粒径2〜3μmのNi粉23を連続的に供給して下流に搬送し、下流側に配置したドクターブレード24で厚み300μmの粉末層にしたのち、ロール径が同じである一対の圧延ロール25,25の間に通して上下方向から2940N/mm程度の加圧力で圧延して圧粉層にした。
【0036】ついで、Ar雰囲気の焼成炉26の中に導入し、温度950℃で10分加熱してNi多孔質シート1にし、それをベルトコンベア21から剥離して連続的に巻き取った。得られたNi多孔質シート1の厚みは平均値で30μmであり、また、その多孔度は平均値で7%、また目付け量は300g/m2であった。
【0037】ついで、このNi多孔質シート1に対して打抜き加工を行い、一辺2aの長さが400μmである正方形の開口2を単位面積(1cm2)当たり204個(両面合計)の割合で格子状に形成した。この時点で、それぞれのバリ部3を目視観察したところ、概ね、バリ部3は面1Aおよび1B面に対し略垂直方向(僅かに面1Aまたは1B側に反っている)に突出していた。
【0038】ついで、打抜き加工後のシートを一対の圧延ロールの間に通して図2で示したように、バリ部3の全体を面1A側または面1B側に反り返らせた。なお、比較のために、平均孔径500μmの連通孔を有し、空隙率が96%、目付け量が420g/m2の発泡Niシート(厚み1.3mm)を集電基板として用意した。
【0039】(2)ニッケル正極の製造まず、水酸化ニッケルを主成分とする粒子と、コバルト化合物の粒子を密閉型ミキサの中で酸素とアルカリ水溶液との存在下において熱処理を施しながら撹拌,混合することで平均粒径12μm程度の複合化水酸化ニッケル粒子を調製した。この複合化水酸化ニッケル粒子は、水酸化ニッケル粒子の表面が導電性を有するコバルトの高次酸化物で被覆されている。
【0040】この複合化水酸化ニッケル粒子100質量部に対し、カルボキシメチルセルロース0.1質量部、ポリアクリル酸ナトリウム0.1質量部、ポリテトラフルオロエチレン1質量部、水30質量部を配合したのち混練してペーストにした。ついで、電極合剤を上記により得られた集電基板に塗布し、温度160℃で10分間の乾燥処理を行ったのち、4900N/mmの加圧力でロール圧延して厚みが約0.35mmとした。なお、これらニッケル正極の理論容量はいずれも約1700mAhとなるように調整されており、集電基板における理論容量当たりの正極合剤の担持面積を表1に示したように様々に変えて数種のニッケル正極を作製した。
【0041】(3)電池の組立まず、組成:LmNi4.0Co0.4Al0.3の水素吸蔵合金を機械粉砕して平均粒径35μmの合金粉末とし、この合金粉末100質量部に対し、ポリアクリル酸ナトリウム0.1質量部、カルボキシメチルセルロース0.1質量部、ポリテトラフルオロエチレンのディスパージョン1.0質量部(固形分換算)、カーボンブラック1.0質量部、水35質量部を配合したのち混練して負極合剤ペーストを調製し、ついで、このペーストを開口率38%のパンチングNiシートに塗布し、温度160℃で10分間の乾燥処理を施し、更に単位ワーク幅にかかる荷重が2940N/mm程度の加圧力でロール圧延して厚み約0.24mmの水素吸蔵合金負極を製造した。
【0042】この水素吸蔵合金負極と前記した正極合剤の担持面積を種々に変えた各ニッケル正極の間に親水化処理が施されているポリプロピレン不織布を配置したのち巻回して電極群とし、その電極群を電池缶に収容し、更に水酸化カリウム水溶液を主体とする電解液を注液したのち封口し、図1に示したような4/5Aサイズ(公称容量1700mAh)の円筒形ニッケル・水素二次電池を組み立てた。
【0043】(4)電池の特性評価まず各電池に対し、温度25℃において0.5C電流で150%の充電を行い、さらに0.5C電流で1Vになるまでの放電を行った。ついで、0.1C電流で150%深度の充電をしたのち0.2C電流で1Vになるまでの放電を行い、このときの放電容量を測定し、その値の理論容量に対する比から活物質の利用率(%)を算出し、結果を表1に示した。
【0044】また、これらの電池につき、1Cで1.2時間充電したのち、30分間放置し、ついで10Cで大電流放電を行い、電圧の経時変化を観察して結果を図9に示した。さらに、これらの電池の充放電サイクル特性を調べるために、温度45℃において2C電流で45分間の充電を行い、2C、1Vカットで放電を1サイクルとする充放電を反復し、放電容量が初期値の80%以下になった時のサイクル数を表1に示した。また、上記した各電池のニッケル正極における集電基板の製造コストを算出し、それを、比較例1の集電基板(発泡Ni)の製造コストを100としたときの相対値として表1に示した。
【0045】
【表1】


【0046】表1から次のことが明らかである。
(1)まず、本発明の集電基板をニッケル極に使用した電池は、理論容量当たりの正極合剤の担持面積が同一のもので比較した場合(実施例1と比較例1、実施例2と比較例2)、利用率は劣るものの、放電サイクル特性、コスト比ともに、従来の発泡Niを使用した電池と比べ同等以上の性能を示している。これは電池内の空隙が増加したことによるサイクル特性の向上に起因している。
【0047】また担持面積が25cm2/Ah未満の場合の特性劣化は、発泡基板より大きいものの、製造コストの相対値を勘案した利用率、およびサイクル特性に関しては発泡基板より優れている。
(2)集電基板の製造コストは従来の発泡Niと比べて大幅に低下(約1/3)しているので、この集電基板を用いることにより、従来に比べて大幅に低コストで、特性低下を招くことなく電池を製造することができる。
【0048】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明の集電基板は2次元的なシートであるにもかかわらず電極合剤の担持能力と活物質に対する集電効率とが良好であるため、この集電基板を用いると、活物質の利用率の向上、とくに大電流放電用電池の放電特性の向上を達成することができる。
【0049】そして、この集電基板は粉末圧延法で製造されるので、従来の発泡金属多孔体の場合に比べてその製造コストは極めて低廉であり、また柔軟性にも富むので、製造時における短絡事故が発生しにくく、また、特性面でも従来電池と比べて遜色のない電池を低コストで製造することができ、その工業的価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルカリ二次電池の構造例を示す断面図である。
【図2】本発明の集電基板の1例Aを示す平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図2の領域Bの拡大図である。
【図5】金属多孔質シートに打抜き加工を行う状態を示す説明図である。
【図6】別のバリ部を示す断面図である。
【図7】本発明のアルカリ二次電池の負極を構成するパンチングNiシートの平面図である。
【図8】金属多孔質シートの製造ラインを示す概略図である。
【図9】電池の大電流放電時の電圧の経時変化を表すグラフである。
【符号の説明】
1 金属多孔質シート
1a 金属粉末
1b 金属粉末1a間の接触部
1c 空孔(連通孔)
1A 金属多孔質シート1の面
2 開口
2a 開口2の辺
3 バリ部
3a バリ部3の先端部
4 電極合剤
5 打ち抜き型(パンチ)
5a 打ち抜き型の先端部
10 負極
10a パンチングNiシートの無開口部
11 負極合剤
12 電極群
12a 正極
12b 負極
12c セパレータ
13a 負極の端部
13b 正極の端部
14a 負極側集電板
14b リード
15 電池缶
16a 正極側集電板
16b リード
17 封口板
18 ガスケット
19 弁体
20 正極キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 正極と、この正極にセパレータを介して対面配置された負極と、アルカリ電解液とが容器内に収容されてなるアルカリ二次電池において、前記正極は粉末圧延法により作製され、周縁部にバリ部を有する複数個の開口が形成された多孔質金属シートよりなる集電基板に電極合剤を担持させたものであり、かつ、前記集電基板が前記電極合剤を担持する面積が前記電池の理論容量(Ah)当たり、25cm2以上であることを特徴とするアルカリ二次電池。
【請求項2】 前記正極の集電基板に形成されたバリ部の少なくとも先端部が、前記多孔質金属シート面方向に反り返っている請求項1に記載のアルカリ二次電池。
【請求項3】 前記多孔質金属シートの多孔度が5〜15%である請求項1または2に記載のアルカリ二次電池。
【請求項4】 前記負極が水素吸蔵合金粉末を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載のアルカリ二次電池。
【請求項5】 前記負極の集電基板が金属のパンチングシートよりなり、そのパンチングシートの端部に無開口部が形成され、前記無開口部が集電板を介して前記容器底部に接続されている請求項1〜4のいずれかに記載のアルカリ二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2002−175833(P2002−175833A)
【公開日】平成14年6月21日(2002.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−129348(P2001−129348)
【出願日】平成13年4月26日(2001.4.26)
【出願人】(000003539)東芝電池株式会社 (109)
【Fターム(参考)】