説明

アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体及びそれを用いた蛍光ランプ

【課題】発光強度及びベーキング輝度維持率が高いアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を提供する。さらには、ランプ光束及び光束維持率が高く、色再現範囲の広い蛍光ランプを提供する。
【解決手段】母体元素がバリウム、ストロンチウム及びカルシウムから選択される少なくとも1種の元素と、マグネシウム及び亜鉛から選択される少なくとも1種の元素と、アルミニウムと、酸素からなり、付活剤元素がユウロピウム又はユウロピウム及びマンガンからなるアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体において、蛍光体に対してリチウム、ナトリウム及びカリウムから選択される少なくとも1種の元素を0.15〜1.60モル%、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される少なくとも1種の元素を0.07〜2.10モル%含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体及びそれを用いた蛍光ランプに関し、特に液晶表示装置のバックライトに使用される冷陰極蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は液晶シャッターとバックライトとの組合わせによりパネル上に画像を表示する非発光形表示装置であって、バックライトには主として細管化しやすい冷陰極蛍光ランプが用いられている。そして、このようなバックライトに用いられる冷陰極蛍光ランプには、高光束で色再現範囲が広いことが求められている。また、冷陰極蛍光ランプ用蛍光体としては従来から3波長蛍光体が使用されており、青色発光蛍光体としてユウロピウム付活アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体や、青緑色〜緑色発光蛍光体としてユウロピウム及びマンガン付活アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体などが使用されている。しかしながら、これらのアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は蛍光ランプ作製時のベーキング工程において輝度低下や色度変化の問題があり、これらの蛍光体を用いた蛍光ランプはランプ光束が経時的に低下するという問題があった。
【0003】
ベーキング工程の輝度低下の問題に対し、特開平8−143863号公報等に、Smなどの希土類元素を添加したユウロピウム付活アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体やユウロピウム及びマンガン付活アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体が開示されているが、いずれも十分ではなく改良が求められていた。
【特許文献1】特開平8−143863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものである。本発明の目的は、発光強度及びベーキング輝度維持率が高いアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を提供することであり、さらには、ランプ光束及び光束維持率が高く、色再現範囲の広い蛍光ランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定の組成を有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は発光強度及びベーキング輝度維持率が高く、この蛍光体を用いた蛍光ランプはランプ光束及び光束維持率が高く、色再現範囲が広いことを新たに見いだし本発明を完成させるに至った。
【0006】
(1)本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、母体元素がバリウム、ストロンチウム及びカルシウムから選択される少なくとも1種の元素と、マグネシウム及び亜鉛から選択される少なくとも1種の元素と、アルミニウムと、酸素からなり、付活剤元素がユウロピウム又はユウロピウム及びマンガンからなるアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体において、蛍光体に対してリチウム、ナトリウム及びカリウムから選択される少なくとも1種の元素を0.15〜1.60モル%、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される少なくとも1種の元素を0.07〜2.10モル%含有することを特徴とする。
【0007】
(2)本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、(1)に記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体であって、一般式が次式で表されることを特徴とする。
a(M1−xEu)O・(M1−yMn)O・bAl
(但し、MはBa、Sr及びCaから選択される少なくとも1種の元素、MはMg及びZnから選択される少なくとも1種の元素、0.8≦a≦1.2、4.6≦b≦5.4、0.03≦x≦0.2、0≦y≦0.35)
【0008】
(3)本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、(1)又は(2)に記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体であって、リチウム、ナトリウム及びカリウムから選択される少なくとも1種の元素の含有量mモル%と、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される少なくとも1種の元素の含有量nモル%は、次式の関係を満たすことを特徴とする。
2.0≦3m+2n≦5.2
【0009】
(4)本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、(1)又は(3)に記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体であって、前記蛍光体の平均粒径が5.5〜7.5μmの範囲にあり、中央粒径が7.5〜11.0μmの範囲にあることを特徴とする。
【0010】
(5)本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、(1)又は(4)に記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体であって、前記蛍光体を580℃で15分間ベーキングしたときの、ベーキング輝度維持率が85%以上であり、色度xの変化量Δx、色度yの変化量Δyがそれぞれ下記の数値範囲を満たすことを特徴とする。
lΔxl≦0.0015、lΔyl≦0.0095
【0011】
(6)本発明の蛍光ランプは、透光性気密容器と、透光性気密容器内に形成された蛍光体層と、透光性気密容器内に封入された放電媒体と、電極とを具備する蛍光ランプにおいて、前記蛍光体層は(1)乃至(5)に記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を含むことを特徴とする。
【0012】
(7)本発明の蛍光ランプは、(6)に記載の蛍光ランプであり、前記蛍光体層が(1)乃至(5)に記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体のみからなる蛍光ランプであって、100時間点灯後の光束維持率が95%以上であることを特徴とする。
【0013】
(8)本発明の蛍光ランプは、(6)又は(7)に記載の蛍光ランプであって、前記蛍光ランプが冷陰極蛍光ランプであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の蛍光体は、紫外線励起による発光強度が高く、さらに蛍光ランプ作製時のベーキング工程において輝度低下や色度変化が少ないアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体であり、本発明の蛍光体を用いることによって、ランプ光束及び光束維持率が高く、色再現範囲の広い蛍光ランプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体及びそれを用いた蛍光ランプを例示するものであって、本発明はアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体及びそれを用いた蛍光ランプを以下のものに特定しない。
【0016】
ここで、本発明の一実施の形態に係るアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法について詳細に説明する。蛍光体原料として、バリウム、ストロンチウム及びカルシウムから選択される少なくとも1種の元素の化合物と、マグネシウム及び亜鉛から選択される少なくとも1種の元素の化合物と、アルミニウム化合物と、ユウロピウム化合物又はユウロピウム化合物及びマンガン化合物と、リチウム、ナトリウム及びカリウムから選択される少なくとも1種の元素の化合物と、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される少なくとも1種の元素の化合物を混合し、原料混合物を得る。この原料混合物をルツボに充填後、炉内に入れ、還元性雰囲気中1200〜1600℃で焼成する。冷却後、焼成品を湿式で分散処理した後、分離乾燥して本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得る。
【0017】
バリウム、ストロンチウム及びカルシウムから選択される少なくとも1種の元素の化合物と、マグネシウム及び亜鉛から選択される少なくとも1種の元素の化合物と、アルミニウム化合物と、ユウロピウム化合物又はユウロピウム化合物及びマンガン化合物については、酸化物又は熱分解により酸化物となる化合物が好ましく用いられる。例えば、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩、シュウ酸塩などの高温で分解し酸化物となる化合物が好ましい。また、蛍光体を構成する元素を全部又は一部含む共沈物やこれらを仮焼して得られる酸化物を用いることもできる。リチウム、ナトリウム及びカリウムから選択される少なくとも1種の元素の化合物については、これらのアルカリ金属のハロゲン化物が好ましく用いられる。フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される少なくとも1種の元素の化合物については、バリウム、ストロンチウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属のハロゲン化物が好ましく用いられる。これらの蛍光体原料をボールミル、V型混合機などで混合した後、アルミナ、石英、炭化珪素などのルツボに充填し、還元性雰囲気中、1200〜1600℃で2〜20時間焼成することが好ましい。焼成温度が1200℃より低いと反応が進まず、1600℃より高いと焼結が過剰に進んで分散処理が困難となる。
【0018】
このようにして、蛍光体に対してリチウム、ナトリウム及びカリウムから選択される少なくとも1種の元素を0.15〜1.60モル%、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される少なくとも1種の元素を0.07〜2.10モル%含有することで、紫外線励起による発光強度が高く、さらに蛍光ランプ作製時のベーキング工程において輝度低下や色度変化が少ない本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得ることができる。
【0019】
次に、本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を用いて冷陰極蛍光ランプを作製する。先ず、蛍光体とピロリン酸カルシウム、カルシウムバリウムボレート等の結着剤をニトロセルロース/酢酸ブチル溶液に添加し、これらを混合し懸濁させて蛍光体塗布懸濁液を調製する。得られた蛍光体塗布懸濁液をガラス管の内面に流し込み、その後これに温風を通じることで乾燥させ、ベーキング、排気、フィラメントの装着、口金の取り付けを行い、冷陰極蛍光ランプを得る。このようにして、ランプ光束及び光束維持率が高く、色再現範囲の広い冷陰極蛍光ランプを得ることができる。
【0020】
図1に、本発明の冷陰極蛍光ランプの一例を示す。ガラス等から成る透光性気密容器11の内壁には一種以上の蛍光体と結着剤から成る蛍光体層12が形成される。透光性気密容器11の内部にはネオン等の希ガス及び水銀蒸気から成る放電媒体13が封入され、透光性気密容器11の両端は一対の電極14a、14bによって封止される。両電極間に電圧をかけて放電媒体13に放電を起こさせ、その際励起された水銀から紫外線が放出され、該紫外線により蛍光体層12の蛍光体が励起されて発光する。
【0021】
次に、本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の特性について図を用いて説明する。図2に、実施例1においてNaFの添加量を変化させて得られる(Ba0.85Eu0.15)O・(Mg0.7Mn0.3)O・5Al蛍光体について、580℃で15分間ベーキングしたときのベーキング輝度維持率と3m+2nとの関係を示した。ここで、mとnは、それぞれ蛍光体中のNa含有量(mモル%)とF含有量(nモル%)の値である。ここでNa含有量は原子吸光分析法により、F含有量はイオンクロマトグラフ法により測定した値である。この図から、ベーキング輝度維持率は3m+2nが2.0≦3m+2n≦5.2の範囲で高く、2.4≦3m+2n≦4.8の範囲でより高く、3.0≦3m+2n≦4.0の範囲でさらに高くなっていることがわかる。
【0022】
図3に、上記蛍光体について、580℃で15分間ベーキングしたときの色度xの変化量lΔxlと3m+2nとの関係を示した。ここで、lΔxlはΔxの絶対値である。この図から、色度xの変化は3m+2nが2.0≦3m+2n≦5.2の範囲で少ないことがわかる。
【0023】
図4に、上記蛍光体について、580℃で15分間ベーキングしたときの色度yの変化量lΔylと3m+2nとの関係を示した。ここで、lΔylはΔyの絶対値である。この図から、色度yの変化も3m+2nが2.0≦3m+2n≦5.2の範囲で少ないことがわかる。
【0024】
図5に、上記蛍光体について、蛍光体の平均粒径と3m+2nとの関係を示した。ここで、平均粒径は空気透過法によるフィッシャー・サブ・シーブ・サイザー(F.S.S.S)を用いて測定した値であり、一次粒子の大きさを示す。この図から、3m+2nが2.0≦3m+2n≦5.2の範囲において、蛍光体の平均粒径は5.5〜7.5μmの範囲にあることがわかる。従来、青色発光するユウロピウム付活アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体や青緑色〜緑色発光するユウロピウム及びマンガン付活アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を白色蛍光ランプに用いた場合、他の発光色の蛍光体に比べて比重が小さいため、蛍光体塗布懸濁液中の沈降速度が遅くなって、蛍光ランプの中央部と端部で色差が生じるという問題があった。このような管端色差の問題に対し、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の粒径を他の発光色の蛍光体に比べて大きくし、平均粒径の範囲を5.5〜7.5μmの範囲とすることで改善できる。
【0025】
図6に、上記蛍光体について、蛍光体の中央粒径と3m+2nとの関係を示した。ここで、中央粒径は電気抵抗法のコールターマルチサイザーII(コールター社製)を用いて測定した値であり、50%粒子径(体積基準)を示す。この場合、粒子が強く凝集していると一次粒子にまで分散させることは難しく、凝集した二次粒子が測定にかかる。この図から、3m+2nが2.0≦3m+2n≦5.2の範囲において、蛍光体の中央粒径は7.5〜11.0μmの範囲にあることがわかる。
【0026】
上記蛍光体について、実施例1と同様にして単色蛍光ランプを作製し、初期ランプ光束と100時間点灯後のランプ光束を測定し、初期ランプ光束を100%にしたときの100時間点灯後のランプ光束の値を、100時間点灯後の光束維持率として求めた。図7に、単色蛍光ランプの100時間点灯後の光束維持率と3m+2nとの関係を示した。この図から、100時間点灯後の光束維持率は、3m+2nが2.0≦3m+2n≦5.2の範囲において高く、ランプ光束の低下が少ないことがわかる。
【0027】
緑色蛍光体(G)として上記蛍光体を、青色蛍光体(B)として(Sr,Ca,Ba)10(POCl:Eu蛍光体を、赤色蛍光体(R)としてY:Eu蛍光体を用い、それぞれ重量比でB:G:R=50:20:30の割合で混合した。この混合蛍光体について、実施例1と同様にして白色蛍光ランプを作製し、初期ランプ光束と100時間点灯後のランプ光束を測定し、初期ランプ光束を100%にしたときの100時間点灯後のランプ光束の値を、100時間点灯後の光束維持率として求めた。図8に、白色蛍光ランプの100時間点灯後の光束維持率と3m+2nとの関係を示した。この図からも、100時間点灯後の光束維持率は、3m+2nが2.0≦3m+2n≦5.2の範囲において高く、ランプ光束の低下が少ないことがわかる。
【0028】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は具体的実施例のみに限定されるものではないことは言うまでもない。
【実施例】
【0029】
[実施例1]
<蛍光体>
原料としてBaCO0.85mol、Eu0.075mol、MgCO0.70mol、MnCO0.30mol、Al5.0mol、NaF0.0062mol、及びMgF0.057molをボールミルで混合し、この原料混合物をアルミナルツボに充填して還元雰囲気中(2%H/N)で1400℃で6時間焼成する。冷却後、水洗して過剰のハロゲン化物を洗浄し、分散処理を行い、篩を通した後、脱水乾燥して、一般式が(Ba0.85Eu0.15)O・(Mg0.70Mn0.30)O・5Alで表されるアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得る。この蛍光体は、蛍光体に対しNa元素を0.59モル%、F元素を0.90モル%含有し、254nm紫外線励起で緑色に発光する。この場合、3m+2n=3×0.59+2×0.90=3.57である。
【0030】
<単色蛍光ランプ>
このようにして得られる蛍光体と結着剤をニトロセルロース/酢酸ブチル溶液に添加し、これらを混合して蛍光体塗布スラリーを調製する。これを管径3mm、長さ400mmのガラス管に流し込み、その内面に塗布し、温風を通じて乾燥し、580℃で15分間塗布バルブをベーキングして、蛍光膜を形成する。その後、通常の方法に従い、排気、電極のマウント、口金の取り付けを行い、緑色に発光する単色冷陰極蛍光ランプを得る。
【0031】
<白色蛍光ランプ>
次に、緑色発光の上記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体と、(Sr,Ca,Ba)10(POCl:Eu青色発光蛍光体と、Y:Eu赤色発光蛍光体を重量比で青色:緑色:赤色=50:20:30の割合で混合する。この混合蛍光体と結着剤をニトロセルロース/酢酸ブチル溶液に添加し、混合して蛍光体塗布スラリーを調製する。これを管径3mm、長さ400mmのガラス管に流し込み、その内面に塗布し、温風を通じて乾燥し、580℃で15分間塗布バルブをベーキングして、蛍光膜を形成する。その後、通常の方法に従い、排気、電極のマウント、口金の取り付けを行い、白色冷陰極蛍光ランプを得る。
上記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、単色蛍光ランプ、及び白色蛍光ランプの測定結果を、表2及び表3に示す。
【0032】
[実施例2〜4]
蛍光体原料のうちNaFとMgFを表1に示した量で混合する以外は実施例1と同様にして、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、単色蛍光ランプ、及び白色蛍光ランプを作製し、測定結果を表2及び表3に示す。
【0033】
[実施例5]
蛍光体原料のうちNaFの代わりにLiFを0.0062mol使用する以外は実施例1と同様にして、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を作製する。この蛍光体の平均粒径は5.3μm、中央粒径は7.6μmである。
【0034】
[実施例6]
蛍光体原料のうちNaFの代わりにKFを0.0062mol使用する以外は実施例1と同様にして、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を作製する。この蛍光体の平均粒径は7.3μm、中央粒径は10.3μmである。
【0035】
[比較例1]
蛍光体原料のうちNaFとMgFを表1に示した量で混合する以外は実施例1と同様にして、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、単色蛍光ランプ、及び白色蛍光ランプを作製し、測定結果を表2及び表3に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1〜4及び比較例1で得られるアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体について、蛍光体中のNa含有量(mモル%)とF含有量(nモル%)の値を表2に示す。また、蛍光体の平均粒径、中央粒径も表2に示す。この表から、本発明の蛍光体の平均粒径が5.5〜7.5μmの範囲にあり、中央粒径が7.5〜11.0μmの範囲にあることがわかる。さらに、これらの蛍光体について、580℃で15分間ベーキングしたときの、ベーキング輝度維持率、色度xの変化量lΔxl、色度yの変化量lΔylも表2に示す。この表から、本発明の蛍光体は下記の数値範囲を満たすことがわかる。
lΔxl≦0.0015、lΔyl≦0.0095
【0038】
【表2】

【0039】
実施例1〜4及び比較例1で得られる単色蛍光ランプ及び白色蛍光ランプについて、100時間点灯後の光束維持率を表3に示す。この表から、本発明の実施例の蛍光ランプはいずれも100時間点灯後の光束維持率が95%以上であり、比較例の蛍光ランプに比べて光束維持率が高いことがわかる。
【0040】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0041】
以上に述べたように、本発明によって、紫外線励起による発光強度が高く、さらに蛍光ランプ作製時のベーキング工程において輝度低下や色度変化が少ないアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を提供することができ、さらに、ランプ光束及び光束維持率が高く、色再現範囲の広い蛍光ランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の冷陰極蛍光ランプの一例を示す図である。
【図2】本発明の蛍光体のベーキング輝度維持率と3m+2nとの関係を示す図である。
【図3】本発明の蛍光体をベーキングしたときの色度xの変化量lΔxlと3m+2nとの関係を示す図である。
【図4】本発明の蛍光体をベーキングしたときの色度yの変化量lΔylと3m+2nとの関係を示す図である。
【図5】本発明の蛍光体の平均粒径と3m+2nとの関係を示す図である。
【図6】本発明の蛍光体の中央粒径と3m+2nとの関係を示す図である。
【図7】本発明の単色蛍光ランプの100時間点灯後の光束維持率と3m+2nとの関係を示す図である。
【図8】本発明の白色蛍光ランプの100時間点灯後の光束維持率と3m+2nとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
11 透光性気密容器
12 蛍光体層
13 放電媒体
14a、14b 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母体元素がバリウム、ストロンチウム及びカルシウムから選択される少なくとも1種の元素と、マグネシウム及び亜鉛から選択される少なくとも1種の元素と、アルミニウムと、酸素からなり、付活剤元素がユウロピウム又はユウロピウム及びマンガンからなるアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体において、蛍光体に対してリチウム、ナトリウム及びカリウムから選択される少なくとも1種の元素を0.15〜1.60モル%、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される少なくとも1種の元素を0.07〜2.10モル%含有することを特徴とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体。
【請求項2】
一般式が次式で表されることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体。
a(M1−xEu)O・(M1−yMn)O・bAl
(但し、MはBa、Sr及びCaから選択される少なくとも1種の元素、MはMg及びZnから選択される少なくとも1種の元素、0.8≦a≦1.2、4.6≦b≦5.4、0.03≦x≦0.2、0≦y≦0.35)
【請求項3】
リチウム、ナトリウム及びカリウムから選択される少なくとも1種の元素の含有量mモル%と、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される少なくとも1種の元素の含有量nモル%は、次式の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体。
2.0≦3m+2n≦5.2
【請求項4】
前記蛍光体の平均粒径が5.5〜7.5μmの範囲にあり、中央粒径が7.5〜11.0μmの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至3に記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体。
【請求項5】
前記蛍光体を580℃で15分間ベーキングしたときの、ベーキング輝度維持率が85%以上であり、色度xの変化量Δx、色度yの変化量Δyがそれぞれ下記の数値範囲を満たすことを特徴とする請求項1乃至4に記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体。
lΔxl≦0.0015、lΔyl≦0.0095
【請求項6】
透光性気密容器と、透光性気密容器内に形成された蛍光体層と、透光性気密容器内に封入された放電媒体と、電極とを具備する蛍光ランプにおいて、前記蛍光体層は請求項1乃至5に記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を含むことを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項7】
前記蛍光体層は請求項1乃至5に記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体のみからなる蛍光ランプであって、100時間点灯後の光束維持率が95%以上であることを特徴とする請求項6に記載の蛍光ランプ。
【請求項8】
前記蛍光ランプが冷陰極蛍光ランプであることを特徴とする請求項6又は7に記載の蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−208325(P2008−208325A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153546(P2007−153546)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】