説明

アルカリ金属クラスター化合物を使用するOLEDデバイス

本発明は、混合配位子を有する或る特定のアルカリ金属クラスター化合物を含有するOLEDデバイス、かかる化合物、及びかかる化合物を作製する方法を提供する。特に、該クラスター化合物は、第1のサブユニット及び第2のサブユニットを含む、中性の電荷を有する混合クラスター化合物であって、第1のサブユニットが、アニオン性ヒドロキシ基を持つ窒素含有複素環配位子のアルカリ金属塩を含み、且つ第2のサブユニットが、第1のサブユニットとは異なる有機アルカリ金属塩からなるクラスター化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合配位子を有する新規の(new and novel)アルカリ金属クラスター化合物、及び有機発光ダイオード(OLED)エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族フェノールのアルカリ金属(リチウム及びナトリウム等)塩が、複数のアルカリ金属原子に複数の配位子が組織的に配位した個別のクラスター化合物を形成し得ることはよく知られている。例えば、"Lithium Chemistry: A Theoretical and Experimental Overview", A. M. Sapse and P. Von Rague Schleyer, Eds., J. Wiley & Sons, NY, 1995, Chapters 7-9及びKissling et al, J. Org. Chem, 66(26), 9006 (2001)を参照されたい。
【0003】
かかるクラスター化合物は安定であり、全体の電荷が中性であり、混合物から自発的に且つ再現性よく形成され得る。クラスター化合物中に存在するアルカリ金属原子及び配位子の数は、配位子の性質に応じて変化し得る。リチウムの場合、2個、3個、4個及び6個のリチウム原子を有するクラスター化合物の例が知られている。例えば、Fenton et al, JCS, Chem Comm, (23), 1303 (1972)、Hao et al, Fagang Xuebao, 25(4), 419-424 (2004)、Baker et al, Organometallics, 13(11), 4170-2 (1994)、及びPrakash et al, J Indian Chem Soc, 62(6), 424-5 (1985)を参照されたい。
【0004】
2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジン誘導体の金属塩は当該技術分野で既知であり、エレクトロルミネッセンスデバイスにおけるそれらの使用が記載されている。例えば、中国特許出願公開第1245822号、中国特許出願公開第1544574号、及び米国特許出願公開第2005/0019605号を参照されたい。しかしながら、これらの材料がクラスター化合物を形成するか否かについては報告されていない。
【0005】
中国特許出願公開第1900213号では、クラスター化合物のリチウムナトリウムジ−(8−ヒドロキシキノレート)が、エレクトロルミネッセンスデバイスにおいて有用であるとして記載されている。
【0006】
Banerjee et al, JCS, Inorg, Phys and Theor. (17), 2536-43 (1969)は、8−ヒドロキシキノリンの付加的分子とのリチウム8−ヒドロキシキノレート錯体の荷電種の単離を記載している。結晶構造は報告されていない。
【0007】
リチウム8−ヒドロキシキノレート(LiQ)は、エレクトロルミネッセンスデバイスにおいて使用されてきた既知の化合物である。M. Rajeswaran et al, Polyhedron, 26(14), 3653-3660 (2007)及びW. Begley et al, Acta Crystallographica, Section E: Structure Reports Online (2006) E62(6), m1200-m1202に開示されているように、LiQは個別のクラスター化合物であり、三量体の二量体である[Li332又はLi66と正確に称される場合もある。LiQと記載され、エレクトロルミネッセンスデバイスに使用される材料は、実際は化合物のクラスター形態であり、単量体ではない可能性がある。
【0008】
LiQはエレクトロルミネッセンスデバイスの発光層に有用であると報告されている。例えば、米国特許出願公開第20060003089号、米国特許出願公開第2005016412号、国際公開第2003080758号、欧州特許第1458834号、Zhao et al, Guangxue Xuebao, 20(2), 288 (2000)、及びZhu et al, Bandaoti Guardian, 22(4), 279-281 (2001)を参照されたい。LiQは電子注入層において有用であると報告されている。例えば、Liu et al, Synthetic Metals, 128(2), 211-214 (2002)、Wu et al, Faguang Xuebao, 24(5), 473-476 (2003)、Zheng et al, Thin Solid Films, 478(1-2), 252-255 (2005)、及びSchmitz at al, Chemistry of Materials, 12(10), 3012-3019 (2000)を参照されたい。LiQ及び他の有機リチウム塩の電子輸送層での使用も、米国特許出願公開第20060286405号、米国特許出願公開第20020086180号、米国特許出願公開第20040207318号、米国特許第6396209号、特開2000−053957号公報、国際公開第9963023号、及び米国特許第6468676号に報告されている。
【0009】
OLEDデバイスにおける有機アルカリ金属塩の様々な用途も、米国特許出願公開第20060286402号、米国特許出願公開第20070092753号、米国特許出願公開第20070207347号、米国特許出願公開第20070092754号、米国特許出願公開第20070092756号、及び米国特許出願公開第20070092755号に開示されている。
【0010】
上記参照文献は全て、1種類の配位子しか存在しない有機アルカリ金属塩しか開示していない。
【0011】
Banerjee et al, J Indian Chem Soc, 50(10), 691-3 (1973)は、リチウム8−ヒドロキシキノレートと1,10−フェナントロリン配位子(アニオンではない)とから形成される化合物を記載している。結晶構造は報告されていない。Prakash et al, J Indian Chem Soc, 62(6), 424-5 (1985)は、LiQとピコリン酸又はキナルジン酸との荷電錯体を記載している。結晶構造は報告されていない。これらのような材料を昇華させる場合、材料は個々の構成部分として別々に昇華することが一般に認識されている。
【0012】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスは20年以上前から知られているが、その性能の制限は、望ましい多くの用途にとって障害となっていた。最も単純な形態の有機ELデバイスは、正孔を注入するためのアノードと、電子を注入するためのカソードと、これらの電極に挟まれた、電荷の再結合を支持して光を発生させる有機媒体とで構成されている。これらのデバイスは、一般に有機発光ダイオード、すなわちOLEDとも称される。初期の代表的な有機ELデバイスは、1965年3月9日に発行されたGurnee et al.の米国特許第3,172,862号、1965年3月9日に発行されたGurneeの米国特許第3,173,050号、Dresner, "Double Injection Electroluminescence in Anthracene", RCA Review, 30, 322, (1969)、及び1973年1月9日に発行されたDresnerの米国特許第3,710,167号である。これらのデバイスの有機層は、通常は多環芳香族炭化水素で構成されており、非常に厚いものであった(1μmよりもはるかに厚い)。その結果、動作電圧が非常に大きくなり、100Vを超えることがしばしばあった。
【0013】
より最近の有機ELデバイスは、アノードとカソードとの間の極めて薄い層(例えば1.0μm未満)からなる有機EL素子を含んでいる。本明細書では、「有機EL素子」という用語は、アノードとカソードとの間の層を包含する。厚さを小さくすることで有機層の抵抗値が小さくなり、はるかに低い電圧で動作するデバイスが可能となった。米国特許第4,356,429号に初めて記載された基本的な2層ELデバイス構造では、アノードに隣接するEL素子の一方の有機層は正孔を輸送するように特別に選択されているため、正孔輸送層と称され、他方の有機層は電子を輸送するように特別に選択されているため、電子輸送層と称される。有機EL素子の内部で注入された正孔と電子とが再結合することで効率的なエレクトロルミネッセンスが生じる。
【0014】
C. Tang et al.(J. Applied Physics, Vol. 65, 3610 (1989))によって開示されるような、正孔輸送層と電子輸送層との間に有機発光層(LEL)を含有する3層有機ELデバイスも提案されている。発光層は一般に、ゲスト材料(別名ドーパントとしても知られる)をドープしたホスト材料からなる。またさらに、米国特許第4,769,292号には、正孔注入層(HIL)と、正孔輸送層(HTL)と、発光層(LEL)と、電子輸送/注入層(ETL)とを備える4層EL素子が提案されている。これらの構造によってデバイスの効率が改善された。
【0015】
近年のELデバイスは、赤色、緑色及び青色等の単色発光デバイスだけでなく、白色光を発するデバイスである白色デバイスにも拡張されている。効率的な白色発光OLEDデバイスは産業上非常に望ましく、薄型(paper-thin)光源、LCDディスプレイのバックライト、自動車のドーム型ライト、及びオフィス照明等の幾つかの用途の低コスト代替品と見なされている。白色発光OLEDデバイスは明るく、効率的でなくてはならず、その国際照明委員会(CIE)色度座標は一般に、約(0.33、0.33)である。いずれにせよ、本開示によれば、白色光とは白色を有するとユーザにより認識される光である。
【0016】
これら初期の発明以来、デバイスの材料がさらに改善された結果、例えば特に米国特許第5,061,569号、米国特許第5,409,783号、米国特許第5,554,450号、米国特許第5,593,788号、米国特許第5,683,823号、米国特許第5,908,581号、米国特許第5,928,802号、米国特許第6,020,078号、及び米国特許第6,208,077号に開示されているように、色、安定性、輝度効率、製造容易性等の属性における性能が改善された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
これら全ての発展にもかかわらず、高い輝度効率及び長い寿命を維持しつつ、デバイス駆動電圧をさらに低くし、したがって電力消費量を減少させる、発光材料、電子輸送材料、及び電子注入材料等の有機ELデバイス構成要素が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、カソードと、アノードとを備え、且つそれらの間に、第1のサブユニット及び第2のサブユニットを含む、中性の電荷を有する混合クラスター化合物を含有する層を有するOLEDデバイスであって、第1のサブユニットが、アニオン性ヒドロキシ基を持つ窒素含有複素環配位子のアルカリ金属塩を含み、且つ第2のサブユニットが、第1のサブユニットとは異なる有機アルカリ金属塩を含み、両方のサブユニットのアルカリ金属カチオンが同じであるOLEDデバイスを提供する。本発明は、かかる化合物及びかかる化合物を作製する方法も提供する。
【0019】
本発明のクラスター化合物を含有するOLEDデバイスは、効率の改善及び駆動電圧の低減をもたらし、動作安定性等の他の改善された特徴を有する実施の形態を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】比較用のリチウム8−ヒドロキシキノレートクラスターのX線結晶構造を示す図である。黒色はリチウム原子を表し、白色は酸素原子を表し、薄灰色は窒素原子を表し、暗灰色は炭素原子を表す。明確にするために、水素原子は省略する。
【図2】比較用のリチウム2−(1,10−フェナントロリン−2−イル)−フェノレートクラスターのX線結晶構造を示す図である。黒色はリチウム原子を表し、白色は酸素原子を表し、薄灰色は窒素原子を表し、暗灰色は炭素原子を表す。明確にするために、水素原子は省略する。
【図3】リチウム8−ヒドロキシキノレート、及びリチウム2−(1,10−フェナントロリン−2−イル)−フェノレートから形成される本発明の混合クラスター化合物のX線結晶構造を示す図である。黒色はリチウム原子を表し、白色は酸素原子を表し、薄灰色は窒素原子を表し、暗灰色は炭素原子を表す。明確にするために、水素原子は省略する。
【図4】リチウム2−(1,10−フェナントロリン−2−イル)−フェノレート、及びリチウムペンタフルオロフェノレートから形成される本発明の混合クラスター化合物のX線結晶構造を示す図である。黒色はリチウム原子を表し、白色は酸素原子を表し、薄灰色は窒素原子を表し、暗灰色は炭素原子を表す。明確にするために、水素原子は省略する。
【図5】本発明のOLEDデバイスの一実施形態の概略横断面図である。個々の層があまりに薄く、各種層の厚さの差が縮尺通りに描写するには大き過ぎるため、図5は正確な縮尺ではないことが理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の議論において、「サブユニット」という用語は、その構造がクラスター化合物の最も小さい不可分な構成部分を表す個々の分子を指す。「部分」という用語は、サブユニット分子が或る種の配位結合又は供与結合によって結び付いた集団を指す。場合によっては、部分は単一のサブユニットであり得る。「サブユニット」及び「部分」という用語は、本発明においてはどちらもクラスター化合物の一部分又は一区分を記載するために使用され、個々の種として存在しても、又は存在しなくてもよい。「アルカリ金属塩」という用語は、アルカリ金属カチオン及びアニオンから構成される中性のイオン種を指す。アニオンが窒素含有複素環の一部であるヒドロキシアニオンである具体的な事例においては、複素環の窒素がアルカリ金属カチオンに配位するため、対応するアルカリ金属塩は錯体と称される場合もある。
【0022】
本発明は概して、上記に記載されるようなものである。本発明のクラスター化合物は、複数の個々の部分(単一又は複数のサブユニットから構成され得る)から構成される個別の錯体である。クラスター化合物は、様々な部分及びそれらのサブユニットが供与結合又は他のタイプの配位結合を介して互いに配位した明確且つ組織的な結晶構造を有する。クラスター化合物は、再現性よく形成することができ、個々の化合物の単純な混合物ではない。クラスター化合物は、それらの完全性を喪失することなく、クラスター中に存在するサブユニットの相対量間の変動なしに再結晶又は昇華させることができる。
【0023】
本発明のクラスター化合物は全体として電荷が中性であり、各々の全体電荷が中性である少なくとも2つの異なるサブユニットからなる。サブユニットの1つは、アニオン性ヒドロキシ基を持つ窒素含有複素環配位子のアルカリ金属塩である。第2のサブユニットは第1のサブユニットとは異なる有機アルカリ金属塩である。
【0024】
これらのサブユニットは他のサブユニットと配位して、二量体又は三量体等のより複雑な部分を形成し得る。個々の部分は互いにさらに配位して、混合クラスター化合物を形成し得る。例えば、個々のサブユニットの2つが互いに配位して二量体部分を形成し、2つの二量体部分が互いに配位して、合計で4つのアルカリ金属塩を有する個別のクラスター化合物を形成する場合もある。代替的には、個々のサブユニットの3つが互いに配位して三量体部分を形成し、次にこれらの部分の2つが互いに配位して、合計で6つのアルカリ金属塩を有する個別のクラスター化合物を形成する場合もある。これらが最も一般的ではあるが、サブユニット及び部分の他の組み合わせも可能である。
【0025】
第1のサブユニットのアニオン性ヒドロキシ基を持つ窒素含有複素環配位子においては、ヒドロキシ基は窒素含有複素環に直接結合し得るか、又は置換基の一部として複素環に間接的に結合し得る。後者の例としては、ヒドロキシ基は複素環上のフェニル置換基に結合し得る。いずれの場合にも、ヒドロキシル基はイオン化して、中性の電荷を有するアルカリ金属塩を形成可能でなくてはならない。イオン化可能な基を含有せず、アルカリ金属カチオンを有する荷電錯体しか形成しない複素環配位子は、本発明の一部ではない。
【0026】
アルカリ金属は周期表1A族のアルカリ金属のいずれかから選択される。その中でも、リチウム及びナトリウムが好ましく、リチウムが最も好ましい。本発明においては、クラスター化合物中にアルカリ金属カチオンは1種類しか存在しない。
【0027】
混合クラスター化合物中に存在する個々の部分を構成するサブユニットの1つは、少なくとも1つのイオン化したヒドロキシ基を持つ窒素含有複素環配位子の中性のアルカリ金属塩である。好ましくは、複素環の窒素は、アルカリ金属カチオンに複素環の窒素(複数可)及び5員、6員、7員又は8員環配置のヒドロキシアニオンの両方が配位し得るように、ヒドロキシ基に対して空間的に配置される。好適には、窒素は複素環系の一部であって、その外部にはなく、窒素含有複素環が芳香族であり且つヒドロキシアニオンを含有する基が芳香族であるため、ヒドロキシ基のpKaが14未満、好ましくは12未満となる。
【0028】
好適な窒素含有複素環の幾つかの非限定的な例は、キノリン、イソキノリン、フェナントロリン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール(imidiazoles)、ベンゾイミダゾール(benzoimidiazoles)、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラゾール、インドール、イソインドール、ピリジン(pryidines)、ピラジン、ピリミジン、インドリジン、プリン、及びキノキサリンである。窒素含有複素環は硫黄又は酸素等の他のヘテロ原子を含有していてもよい。これらの非限定的な例は、イソチアゾール、フェノチアジン、イソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、オキサゾール、及びベンゾオキサゾールであり得る。キノリン、フェナントロリン、及びピリジンが好ましい。
【0029】
以下はアニオン性ヒドロキシ基を持つ窒素含有複素環配位子のアルカリ金属塩の好ましい構造であり、第1のサブユニットとして使用するのに好適である。同じ構造が第2のサブユニットとしても好適である。第1のサブユニット及び第2のサブユニットの両方が、個々のサブユニットが同一でない限り、同じ式に属していてもよい。
【0030】
好ましい一サブユニットの構造は、式(I):
【0031】
【化1】

【0032】
(式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、且つZは各々の場合(occurrence)で独立して、少なくとも2つの縮合芳香環を有する核を完成させる原子を表す)に従うものである。Zにより表される縮合芳香環は、炭素のみから構成されていても、又は環系の一部として付加的なヘテロ原子を有していてもよい。
【0033】
式(I)のより好ましい構造は、式(II):
【0034】
【化2】

【0035】
(式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、且つR1〜R6は個々に水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シアノ基、又は複素環基を表すが、但し隣接する任意の2つのR基が結合して、環化した(annulated)飽和環系又は芳香環系を形成してもよい)に従うものである。
【0036】
式(II)の最も好ましい構造では、Mはリチウムカチオンであり、R1〜R6は全て水素である。
【0037】
別のサブユニットの構造は、式(III):
【0038】
【化3】

【0039】
(式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、R7〜R10は個々に水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シアノ基、又は複素環基を表すが、但し隣接する任意の2つのR基、又はR7及びAが結合して、環化した飽和環系又は芳香環系を形成してもよく、且つAは5員、6員、7員又は8員環系を完成させるのに必要な原子を表す)に従うものである。
【0040】
最も好ましい式(III)のサブユニットでは、Mはリチウムカチオンであり、Aは5員環又は6員環を表し、且つR7〜R10は全て水素である。
【0041】
式(III)のサブユニットの好ましい構造は、式(IV):
【0042】
【化4】

【0043】
(式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、R7〜R14は個々に水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シアノ基、又は複素環基を表すが、但し隣接する任意の2つのR基、又は具体的にはR7及びR14が結合して、環化した飽和環系又は芳香環系を形成してもよい)の構造である。
【0044】
最も好ましい式(IV)のサブユニットでは、Mはリチウムカチオンであり、R7〜R14は全て水素である。
【0045】
より好ましい式(III)及び式(IV)のサブユニットは、式(V):
【0046】
【化5】

【0047】
(式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、且つR7〜R10及びR15〜R21は個々に水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シアノ基、又は複素環基を表すが、但し隣接する任意の2つのR基、又は具体的にはR7及びR21が結合して、環化した飽和環系又は芳香環系を形成してもよい)に従うものである。
【0048】
最も好ましい式(V)のサブユニットでは、Mはリチウムカチオンであり、R7〜R10及びR15〜R21は全て水素である。
【0049】
本発明のクラスター化合物における第1又は第2のサブユニットに有用な、ヒドロキシ基を持つ窒素含有複素環の好適なアルカリ金属塩の例は、以下のものであるが、これらに限定されない:
【0050】
【化6】

【0051】
【化7】

【0052】
【化8】

【0053】
本発明の混合クラスター化合物では、全体として少なくとも2つの異なるサブユニットが存在する。しかしながら、クラスター化合物の結晶中では、サブユニットは、均一な(すなわち1種類のサブユニットしか含有しない)又は不均一な(すなわち2つ以上の異なるサブユニットを含有し得る)二量体又は三量体等の個別の部分を形成する場合がある。このためクラスター化合物は、2つ以上の均一な部分から構成される(各々の部分が異なるサブユニットを含有する場合に限る)か、又は代替的には、各々が異なるサブユニットを含有する2つ以上の不均一な部分から構成される場合がある。
【0054】
本発明の混合クラスター化合物中に存在する第2のサブユニットは、有機アルカリ金属塩である。第2のサブユニットが第1のサブユニットと同じ材料であることはない。好ましい有機アルカリ金属塩は、式(VI):
-X−R (VI)
(式中、Mはアルカリ金属カチオンであり、Xは酸素、窒素、又は硫黄を含むアニオン性原子であり、Rは炭素を含有する有機ラジカルである)に従う式を有する。式(VI)において、Xは好ましくは酸素であり、且つRは好ましくは芳香族炭化水素又は複素環である。
【0055】
例えば、第2のサブユニットは、窒素を有しないが酸性ヒドロキシル基を有する芳香族種であり得る。フェノール及びナフトールが特に好適である。最も好ましくは、いずれかのヒドロキシ基のpKaが12以下であるフェノール及びナフトールである。第2のサブユニットは、第1のサブユニットとは異なる構造を有する限り、式(I)〜式(V)に従うアニオン性ヒドロキシ基を持つ窒素含有複素環配位子の別のアルカリ金属塩であってもよい。
【0056】
図1はリチウム8−ヒドロキシキノレートのX線結晶構造を示す。リチウム8−ヒドロキシキノレートは、3つのサブユニットの三量体部分の二量体から構成される均一クラスター化合物であり、各々のサブユニットは単一のリチウム8−ヒドロキシキノレート分子(L−1)である。したがって、リチウム8−ヒドロキシキノレート(典型的にはLiQと記される)は、より正確にはその構造の観点から、三量体部分Li33の二量体から構成される六量体クラスター化合物Li66として記載される。これは、昇華により通常形成される結晶構造である。Li66は1種類のサブユニットしか含有しないため、本発明のクラスター化合物ではない。
【0057】
図2はリチウム2−(1,10−フェナントロリン−2−イル)−フェノレートのX線結晶構造を示す。リチウム2−(1,10−フェナントロリン−2−イル)−フェノレートは、2つのL−2サブユニットから構成される二量体部分の二量体から構成される均一クラスター化合物である。したがって、リチウム2−(1,10−フェナントロリン−2−イル)−フェノレートは、四量体クラスター化合物Li4(L−2)4として記載することができる。これは、昇華により通常形成される結晶構造である。Li4(L−2)4は1種類のサブユニットしか含有しないため、本発明のクラスター化合物ではない。
【0058】
図3は、リチウム8−ヒドロキシキノリネート及びリチウム2−(1,10−フェナントロリン−2−イル)−フェノレートから形成される混合クラスター化合物(Inv−1)のX線結晶構造を示す。Inv−1は、2分子のL−1及び1分子のL−2を含有する混合三量体部分の二量体から構成される不均一クラスター化合物である。したがって、Inv−1は、六量体混合クラスター化合物Li6(L−1)4(L−2)2として記載することができる。これは、昇華により通常形成される結晶構造である。Li6(L−1)4(L−2)2は2つの異なる種類のサブユニットを含有するため、本発明に属する(inventive)。
【0059】
図4は、リチウム2−(1,10−フェナントロリン−2−イル)−フェノレート(L−2)及びリチウムペンタフルオロフェノレート(LiPFP)から形成される混合クラスター化合物(Inv−2)のX線結晶構造を示す。Inv−2は、直鎖形態又は鎖反復(chain repeating)形態を有する不均一クラスター化合物である。反復する直鎖の一単位は5つのLiPFPサブユニット、1つのL−2サブユニットからなる部分、2つのLiPFPサブユニット、1つのL−2サブユニットからなる部分、及び5つのLiPFPサブユニットからなる部分からなる。したがって、Inv−2は、直鎖高分子混合クラスター化合物[Li14(PFP)12(L−2)2xとして記載することができる。これは、昇華により変化されずに形成される結晶構造である。この材料は2つの異なる種類のサブユニットを含有するため、本発明に属する。
【0060】
本発明のクラスター化合物の幾つかの例は以下である:
【0061】
【化9】

【0062】
本発明の混合クラスター化合物を含むOLEDデバイスは、カソード、アノード、発光層(複数可)(LEL)、電子輸送層(複数可)(ETL)、及び電子注入層(複数可)(EIL)、並びに任意で正孔注入層(複数可)、正孔輸送層(複数可)、励起子ブロック層(複数可)、スペーサ層(複数可)、結合層(複数可)、及び正孔ブロック層(複数可)等の追加の層を備える多層エレクトロルミネッセンスデバイスである。
【0063】
本発明の混合クラスター化合物は、アノードと電極との間のいかなる位置にも配置することができる。混合クラスター化合物をLEL中、又はLELとカソードとの間の層中に配置するのが好ましく、最も好ましくはETL又はEIL中に配置する。
【0064】
混合クラスター化合物がLEL中に存在する場合、混合クラスター化合物はこの場合に存在する唯一の材料であり得るため、発光材料として働く。より一般的には、混合クラスター化合物は、この層中に全ての有機材料の0.5体積%〜50体積%の範囲でホスト又は共通ホスト(co-host)として存在する。任意の既知のホスト又はドーパントが存在していてもよく、これらの目的に好適な材料を後節で論じる。
【0065】
混合クラスター化合物がETL中に存在する場合、混合クラスター化合物は存在する唯一の材料であっても、又はETL層中で効果的であることが知られる任意の他の材料と混合されていてもよい。ETL中で混合クラスター化合物と共に使用することのできる好ましい種類の材料の具体例は、アントラセン、ルブレン誘導体、Alq等の金属オキシノイド、又はBphen等のフェナントロリンである。これらの種類の好適な例は後節で論じる。ETLがLELと直接接触し、且つLELのカソードと同じ側にあるのが好ましい。
【0066】
混合クラスター化合物がEIL中に存在する場合、混合クラスター化合物は存在する唯一の材料であっても、又はEIL層中で効果的であることが知られる任意の他の材料と混合されていてもよい。EIL中で混合クラスター化合物と共に使用することのできる好ましい種類の材料の具体例は、アントラセン又はルブレン誘導体等の多環芳香族炭化水素である。混合クラスター化合物とさらなる材料との体積比%は1%〜99%のいずれであってもよく、より好適には10%〜90%、最も望ましくは30%〜70%である。EILの厚さは、0.1nm〜20nmの厚さであり得るが、好ましくは0.4nm〜10nm、より好ましくは1nm〜8nmである。
【0067】
混合クラスター化合物は、2つ以上の層において同時に使用することができ、2つ以上の混合クラスター化合物を共に使用することができる。混合クラスター化合物をLi66等の均一クラスター化合物と共に使用することも可能である。
【0068】
実験の項で実証されるように、混合クラスター化合物は、個々のサブユニットを溶媒中で反応させることにより調製することができる。本発明の材料を形成することが可能な任意の溶媒が有用であり得る。溶媒が反応物質を完全に溶解するのが好ましいが、反応物質を部分的にしか溶解しない溶媒も有用である。実際は、このような場合、出発物質の溶解度は温度が上昇するにつれて増大し得るため、反応物質が周囲温度で不溶性の溶媒も同様に有用である。幾つかの化学反応が固体状態で起きることが知られているように、一部の反応物質の溶解が反応を起こすのに必要ではない可能性もあるため、反応物質が不溶性の溶媒であっても使用される場合がある。いずれにせよ、極性、沸点、及び融点等の溶媒特性から他のものより反応に適している溶媒もある。反応物質の極性は、溶媒の選択肢を考慮する場合の因子であるべきである。溶媒は非反応性であるべきである。すなわち、溶媒はサブユニット又は混合クラスター化合物のいずれかと化学的に反応しない。
【0069】
以下の種類から選択される溶媒が本発明において有用である:芳香族及び非芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、ニトロ炭化水素等のハロゲン化芳香族及び非芳香族炭化水素、炭水化物、環状及び非環状ケトン、環状及び非環状アルコール、環状及び非環状エステル、環状及び非環状エーテル、フェノール、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、ニトリル、ニトロ溶媒、環状及び非環状アミド、ラクトン、ラクタム、及びこれらの種類の誘導体。実際には、任意の材料、液体又は固体を本発明において溶媒として使用することができる(但し、その沸点又は融点は反応物質及び生成物の分解が起きることのないよう十分に低い)。特に有用な溶媒はクロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、テトラクロロエチレン、アミルアルコール、ブチルアルコール、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、エチルベンゼン、トルエン、キシレン、ジフェニルケトン、ジフェニルエーテル、メチルイソブチルケトン、クレゾール、フェノール、ペンタクロロフェノール、ニトロベンゼン、ニトロプロパン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、及びN−メチルビロリドンから選択される。最も好ましい溶媒は、沸点が少なくとも100℃の溶媒である。
【0070】
混合クラスター化合物は、個々のサブユニットの物理的混合物を得て、その固体混合物を高温で加熱することにより直接調製することもできる。必要とされる温度は通常150℃超である。昇華ユニットを低圧加熱に使用する場合、混合クラスター化合物はその後昇華ユニットの冷却表面から直接容易に採取することができる。昇華の場合、混合クラスター化合物が加熱の際、結晶沈着の際に固体状態、又は昇華中に気体状態のいずれで形成されるかについては知られていないが、本発明の目的上、これらの可能性のいずれも固体状態反応であると見なされる。
【0071】
図5は、電子輸送層及び電子注入層が存在する本発明の一実施形態を示す。本発明の混合クラスター化合物は、電子輸送層(ETL、136)中に配置することができる。別の実施形態では、化合物を電子注入層(EIL、138)中に配置する。発光層と電子輸送層との間に任意の正孔ブロック層(HBL、135)が示される。任意の正孔注入層(HIL、130)も図面に示される。別の実施形態では、ETLとLELとの間に配置される正孔ブロック層(HBL、135)は存在しない。さらに他の実施形態では、正孔注入層、電子注入層、及び電子輸送層が2つ以上あってもよい。
【0072】
好適な一実施形態では、ELデバイスは、相補エミッタ、白色エミッタ、又はフィルタリング手段を含み得る白色光を発する手段を含む。デバイスは、蛍光発光材料とリン光発光材料との組み合わせをも含み得る(ハイブリッドOLEDデバイスと称される場合もある)。白色発光デバイスを作り出すためには、ハイブリッド蛍光/リン光デバイスは青色蛍光エミッタ、並びに適当な割合の緑色及び赤色リン光エミッタ、又は白色発光を生じるのに好適な他の色の組み合わせを備えるのが理想的である。しかしながら、非白色発光を有するハイブリッドデバイスはそれ自体が有用でもあり得る。非白色発光を有するハイブリッド蛍光/リン光素子を、積層OLEDにおいて、さらなるリン光素子と順に組み合わせてもよい。例えば、白色発光は、1つ又は複数のハイブリッド青色蛍光/赤色リン光素子を、Tang et al.の米国特許第6936961号明細書に開示されているようなp/n接合コネクタを用いて、緑色リン光素子と順に積層することによって生じさせることができる。本発明は、例えば米国特許第5,703,436号明細書及び米国特許第6,337,492号明細書に教示されるような、いわゆる積層デバイス構造で使用され得る。
【0073】
望ましい一実施形態では、ELデバイスはディスプレイ装置の一部である。別の好適な実施形態では、ELデバイスはエリア照明装置の一部である。
【0074】
本発明のELデバイスは、電灯、又はテレビ、携帯電話、DVDプレイヤー、若しくはコンピュータ用モニター等の静止画像装置若しくは動画像装置の構成要素のような安定した発光が所望される任意の装置に有用である。
【0075】
本明細書中及び本願全体を通して使用される場合、「炭素環」及び「複素環」又は「炭素環基」及び「複素環基」という用語は概して、Grant & Hackh's Chemical Dictionary, Fifth Edition, McGraw-Hill Book Companyによって定義されるようなものである。炭素環は、炭素原子のみを含有する任意の芳香環系又は非芳香環系であり、複素環は炭素原子並びに窒素(N)、酸素(O)、硫黄(S)、リン(P)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、ホウ素(B)、ベリリウム(Be)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び環系を形成するのに有用な、周期表に見られる他の元素等の非炭素原子の両方を含有する任意の芳香環系又は非芳香環系である。本発明の目的上、配位結合を含む環も複素環の定義に含まれる。配位結合又は供与結合の定義は、Grant & Hackh's Chemical Dictionary, pages 91 and 153に見ることができる。要するに、配位結合は、O又はN等の電子の豊富な原子が、電子不足の原子又はイオン、例えばアルミニウム、ホウ素、又はLi+、Na+、K+、及びCs+等のアルカリ金属イオンに電子対を供与する場合に形成される。かかる例の1つは、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(Alqとも称される)において見られるが、この場合キノリン部分にある窒素が、その孤立電子対をアルミニウム原子に供与することで複素環が形成され、その結果Alqに合計で3つの縮合環が生じる。多座配位子を含む配位子の定義はそれぞれ、Grant & Hackh's Chemical Dictionary, pages 337 and 176に見ることができる。
【0076】
特に規定のない限り、「置換された」又は「置換基」という用語の使用は、水素以外の任意の基又は原子を意味する。さらに、「基」という用語を用いる場合、置換基が置換可能な水素を含有するのであれば、置換基の置換されていない形態だけでなく、本明細書中に言及される任意の置換基(複数可)でさらに置換された形態も、デバイスの有用性に必要とされる性質をその置換基が失わせない限りは包含することも意図されることを意味する。置換基は、ハロゲンであり得るか、又は原子(炭素、ケイ素、酸素、窒素、リン、硫黄、セレン、若しくはホウ素)によって分子の残部と結合し得ることが好適である。置換基は、例えばハロゲン(クロロ、ブロモ、若しくはフルオロ等)、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、又はさらに置換されていてもよい基であり得る。さらに置換されていてもよい基としては、例えばアルキル(メチル、トリフルオロメチル、エチル、t−ブチル、3−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)プロピル、及びテトラデシル等の直鎖アルキル若しくは分岐鎖アルキル又は環式アルキルが含まれる)、アルケニル(例えばエチレン、2−ブテン)、アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、2−メトキシエトキシ、sec−ブトキシ、ヘキシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、テトラデシルオキシ、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)エトキシ、及び2−ドデシルオキシエトキシ)、アリール(例えばフェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、ナフチル)、アリールオキシ(例えばフェノキシ、2−メチルフェノキシ、α−ナフチルオキシ又はβ−ナフチルオキシ、及び4−トリルオキシ)、カルボンアミド(例えばアセトアミド、ベンズアミド、ブチルアミド、テトラデカンアミド、α−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)アセトアミド、α−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド、α−(3−ペンタデシルフェノキシ)−ヘキサンアミド、α−(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェノキシ)−テトラデカンアミド、2−オキソ−ピロリジン−1−イル、2−オキソ−5−テトラデシルピロリン−1−イル、N−メチルテトラデカンアミド、N−スクシンイミド、N−フタルイミド、2,5−ジオキソ−1−オキサゾリジニル、3−ドデシル−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリル、及びN−アセチル−N−ドデシルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ、2,4−ジ−t−ブチルフェノキシカルボニルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、2,5−(ジ−t−ペンチルフェニル)カルボニルアミノ、p−ドデシル−フェニルカルボニルアミノ、p−トリルカルボニルアミノ、N−メチルウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N−メチル−N−ドデシルウレイド、N−ヘキサデシルウレイド、N,N−ジオクタデシルウレイド、N,N−ジオクチル−N’−エチルウレイド、N−フェニルウレイド、N,N−ジフェニルウレイド、N−フェニル−N−p−トリルウレイド、N−(m−ヘキサデシルフェニル)ウレイド、N,N−(2,5−ジ−t−ペンチルフェニル)−N’−エチルウレイド、及びt−ブチルカルボンアミド)、スルホンアミド(例えばメチルスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トリルスルホンアミド、p−ドデシルベンゼンスルホンアミド、N−メチルテトラデシルスルホンアミド、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ、及びヘキサデシルスルホンアミド)、スルファモイル(例えばN−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−ヘキサデシルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−[3−(ドデシルオキシ)プロピル]スルファモイル、N−[4−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチル]スルファモイル、N−メチル−N−テトラデシルスルファモイル、及びN−ドデシルスルファモイル)、カルバモイル(例えばN−メチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−[4−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチル]カルバモイル、N−メチル−N−テトラデシルカルバモイル、及びN,N−ジオクチルカルバモイル)、アシル(例えばアセチル、(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)アセチル、フェノキシカルボニル、p−ドデシルオキシフェノキシカルボニル、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、3−ペンタデシルオキシカルボニル、及びドデシルオキシカルボニル)、スルホニル(例えばメトキシスルホニル、オクチルオキシスルホニル、テトラデシルオキシスルホニル、2−エチルヘキシルオキシスルホニル、フェノキシスルホニル、2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシスルホニル、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、2−エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、フェニルスルホニル、4−ノニルフェニルスルホニル、及びp−トリルスルホニル)、スルホニルオキシ(例えばドデシルスルホニルオキシ及びヘキサデシルスルホニルオキシ)、スルフィニル(例えばメチルスルフィニル、オクチルスルフィニル、2−エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、ヘキサデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、4−ノニルフェニルスルフィニル、及びp−トリルスルフィニル)、チオ(例えばエチルチオ、オクチルチオ、ベンジルチオ、テトラデシルチオ、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)エチルチオ、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、及びp−トリルチオ)、アシルオキシ(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、オクタデカノイルオキシ、p−ドデシルアミドベンゾイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ、N−エチルカルバモイルオキシ、及びシクロヘキシルカルボニルオキシ)、アミン(例えばフェニルアニリノ、2−クロロアニリノ、ジエチルアミン、ドデシルアミン)、イミノ(例えば1−(N−フェニルイミド)エチル、N−スクシンイミド、又は3−ベンジルヒダントイニル)、ホスフェート(例えばジメチルホスフェート及びエチルブチルホスフェート)、ホスファイト(例えばジエチルホスファイト及びジヘキシルホスファイト)、複素環基、複素環オキシ基、又は複素環チオ基(どの基も置換されていてもよく、炭素原子と少なくとも1個のヘテロ原子(酸素、窒素、硫黄、リン、又はホウ素からなる群から選択される)とから構成される3員〜7員の複素環を含有し、例えば2−フリル、2−チエニル、2−ベンゾイミダゾリルオキシ、又は2−ベンゾチアゾリルがある)、第四級アンモニウム(例えばトリエチルアンモニウム)、第四級ホスホニウム(例えばトリフェニルホスホニウム)、並びにシリルオキシ(例えばトリメチルシリルオキシ)がある。
【0077】
必要に応じて、置換基それ自体がさらに上記の置換基で1回以上置換されていてもよい。当業者は、特定の用途にとって望ましい性質が実現されるように、使用する具体的な置換基を選択することができる。置換基としては例えば、電子求引基、電子供与基、及び立体基を挙げることができる。分子が2つ以上の置換基を有することができる場合には、特に規定のない限り、その置換基を互いに結合させて環(例えば縮合環)を形成させてもよい。一般に、上記の基及びその置換基は、48個までの炭素原子(典型的には1個〜36個であり、通常は24個未満である)を有する基を含み得るが、選択される特定の置換基によって、それよりも多くすることも可能である。
【0078】
OLEDデバイスの層構造、材料の選択、及び製造プロセスについて以下に記載する。
【0079】
<OLEDデバイスの一般的な構造>
本発明は、小分子材料、オリゴマー材料、ポリマー材料、又はこれらの組み合わせを用いた多くのOLED構成で利用することができる。このような構成には、単一のアノードとカソードとを有する非常に単純な構造から、より複雑なデバイス(例えば、複数のアノードとカソードとが直交配列を成して画素を形成するパッシブマトリクスディスプレイ、及び各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)によって独立して制御されるアクティブマトリクスディスプレイ)までが含まれる。本発明が首尾よく実施される有機層の構成は多数ある。本発明にとって必須の要件は、カソード、アノード、LEL、ETL、及びHILである。
【0080】
小分子デバイスに特に有用な本発明による一実施形態を図1に示す。OLED100は、基板110、アノード120、正孔注入層130、正孔輸送層132、発光層134、正孔ブロック層135、電子輸送層136、電子注入層138、及びカソード140を含有する。幾つかの他の実施形態では、LELのいずれかの側に任意のスペーサ層が存在する。これらのスペーサ層は典型的には発光材料を含有しない。これらの層タイプの全てを下記に詳しく説明する。基板を代替的にカソードに隣接させて配置してもよいこと、又は基板が実際にアノード若しくはカソードを構成し得ることに留意されたい。また、有機層を合計した厚さは、500nm未満であることが好ましい。
【0081】
OLEDのアノード及びカソードは、導電体160を介して電圧/電流源150と接続される。アノードとカソードとの間に、アノードがカソードより正の電位となるように電位を印加することによってOLEDが動作する。正孔はアノードから有機EL素子に注入される。ACモードではサイクル中に電位バイアスが逆転して電流が流れない期間があるため、OLEDをACモードで動作させるときにデバイスの安定性向上を実現することができる場合もある。AC駆動のOLEDの一例が、米国特許第5,552,678号明細書に記載されている。
【0082】
<アノード>
所望のEL発光をアノードを通して見る場合には、アノード120は、対象となる発光に対して透明であるか、又は実質的に透明である必要がある。本発明で用いられる透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、及びスズ酸化物であるが、他の金属酸化物(アルミニウムをドープした亜鉛酸化物、インジウムをドープした亜鉛酸化物、マグネシウム−インジウム酸化物、ニッケル−タングステン酸化物が挙げられるが、これらに限定されない)も有効である。これらの酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、及び金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノード120として用いることができる。EL発光をカソード140のみを通して見るような用途ではアノード120の透光特性は重要でなく、透明、不透明又は反射性の任意の導電性材料を使用することができる。この用途での導体の例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、及び白金が挙げられるが、これらに限定されない。典型的なアノード用材料は、光透過性であろうとそうでなかろうと、仕事関数が4.1eV以上である。望ましいアノード用材料は、一般に、任意の好適な手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、又は電気化学的手段)で堆積させる。アノードは、既知のフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。任意で、アノードを研磨した後に他の層を塗布することで表面粗度を小さくして、短絡を最少にすること、又は反射性を向上させることができる。
【0083】
<正孔注入層>
必ずしも必要な訳ではないが、OLEDにHILを設けることが有用であることが多い。OLED中のHIL130は、アノードからHTLへの正孔の注入を促進する役割を果たし得るが、それによりOLEDの駆動電圧が低下する。HIL130に使用するのに好適な材料としては、米国特許第4,720,432号明細書に記載されるようなポルフィリン化合物、及び幾つかの芳香族アミン(例えば4,4’,4’’−トリス[(3−エチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(m−TDATA))が挙げられるが、これらに限定されない。OLEDに有用であることが報告されている代替的な正孔注入材料は、欧州特許出願公開第0891121号明細書及び欧州特許出願公開第1029909号明細書に記載されている。後述する芳香族第三級アミンも正孔注入材料として有用であり得る。ジピラジノ[2,3−f:2’,3’−h]キノキサリンヘキサカルボニトリル等の他の有用な正孔注入材料が、米国特許出願公開第2004/0113547号明細書及び米国特許第6,720,573号明細書に記載されている。また、米国特許第6,423,429号明細書に記載されるように、p型ドープ有機層もHILに有用である。「p型ドープ有機層」という用語は、この層がドープ後に半導体特性を有し、この層を流れる電流が実質的に正孔により搬送されることを意味する。導伝性は、ドーパントからホスト材料への正孔の移動による電荷移動錯体の形成によってもたらされる。
【0084】
HIL130の厚さは、0.1nm〜200nmの範囲内、好ましくは0.5nm〜150nmの範囲内である。
【0085】
<正孔輸送層>
HTL132は、少なくとも1つの正孔輸送材料(例えば芳香族第三級アミン)を含有する。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香環の成員である)のみに結合する少なくとも1つの三価窒素原子を含有する化合物であると理解される。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン又は高分子アリールアミン)である。単量体トリアリールアミンの例は、Klupfel et al.の米国特許第3,180,730号明細書に示されている。1つ以上のビニルラジカル、又は少なくとも1つの活性な水素含有基で置換された他の好適なトリアリールアミンは、Brantley, et al.の米国特許第3,567,450号明細書及び同第3,658,520号明細書に開示されている。
【0086】
より好ましい種類の芳香族第三級アミンは、米国特許第4,720,432号明細書及び米国特許第5,061,569号に記載されるように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。かかる化合物として、構造式(A):
【0087】
【化10】

【0088】
(式中、Q1及びQ2は、独立して選択される芳香族第三級アミン部分であり、且つGは炭素−炭素結合の連結基(例えばアリーレン基、シクロアルキレン基、又はアルキレン基)である)で表されるものが挙げられる。
【0089】
一実施形態では、Q1又はQ2の少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン)を含有する。Gがアリール基である場合には、Q1又はQ2の少なくとも一方は、フェニレン部分、ビフェニレン部分、又はナフタレン部分であることが好都合である。
【0090】
構造式(A)を満たし、且つ2つのトリアリールアミン部分を含有する、有用な種類のトリアリールアミンは、構造式(B):
【0091】
【化11】

【0092】
(式中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、アリール基、若しくはアルキル基を表すか、又はR1及びR2は共に、シクロアルキル基を完成させる原子を表し、且つR3及びR4は、各々独立してアリール基を表すが、このアリール基は、構造式(C):
【0093】
【化12】

【0094】
(式中、R5及びR6は、独立して選択されるアリール基である)に示されるように、ジアリール置換アミノ基によって置換されている)で表される。一実施形態では、R5又はR6の少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン)を含有する。
【0095】
別の種類の芳香族第三級アミンは、テトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンは、式(C)に示されるもののような、アリーレン基を介して連結した2つのジアリールアミノ基を含む。有用なテトラアリールジアミンとしては、式(D):
【0096】
【化13】

【0097】
(式中、各々のAREは、独立して選択されるアリーレン基(例えばフェニレン部分又はアントラセン部分)であり、nは1〜4の整数であり、且つAr、R7、R8、及びR9は、独立して選択されるアリール基である)で表されるようなものが挙げられる。典型的な実施形態では、Ar、R7、R8、及びR9のうち少なくとも1つは多環式縮合環構造(例えばナフタレン)である。
【0098】
別の種類の正孔輸送材料は、式(E)の材料を含む:
【0099】
【化14】

【0100】
式(E)において、Ar1〜Ar6は独立して、芳香族基(例えばフェニル基又はトリル基)を表し、R1〜R12は独立して、水素、又は独立して選択される置換基、例えば1個〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。
【0101】
上記の構造式(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の様々なアルキル部分、アルキレン部分、アリール部分、及びアリーレン部分は、各々置換されていてもよい。典型的な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、及びハロゲン(例えばフッ化物、塩化物、及び臭化物)が挙げられる。様々なアルキル部分及びアルキレン部分は、典型的には約1個〜6個の炭素原子を含有する。シクロアルキル部分は、3個〜約10個の炭素原子を含有することができるが、典型的には5個、6個、又は7個の環炭素原子を含有する(例えばシクロペンチル環構造、シクロヘキシル環構造、及びシクロヘプチル環構造)。アリール部分及びアリーレン部分は、典型的にはフェニル部分及びフェニレン部分である。
【0102】
HTLは、単一の芳香族第三級アミン化合物、又は芳香族第三級アミン化合物の混合物で形成される。具体的には、トリアリールアミン(例えば式(B)を満たすトリアリールアミン)をテトラアリールジアミン(例えば式(D)に示されるもの)と組み合わせて使用することができる。トリアリールアミンをテトラアリールジアミンと組み合わせて用いる場合には、テトラアリールジアミンは、トリアリールアミンと電子注入層及び電子輸送層とに挟まれた層として位置する。芳香族第三級アミンは正孔注入材料としても有用である。有用な芳香族第三級アミンの例は以下である:
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、 1,5−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ナフタレン、
2,6−ビス(ジ−p−トリルアミノ)ナフタレン、
2,6−ビス[ジ−(1−ナフチル)アミノ]ナフタレン、
2,6−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ナフタレン、
2,6−ビス[N,N−ジ(2−ナフチル)アミン]フルオレン、
4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[4−(ジ−p−トリルアミノ)−スチリル]スチルベン、
4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クアドリフェニル、
4,4’’−ビス[N−(1−アントリル)−N−フェニルアミノ]−p−テルフェニル、
4,4’−ビス[N−(1−コロネニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)、
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB)、
4,4’’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]−p−テルフェニル、
4,4’−ビス[N−(2−ナフタセニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(2−ペリレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(2−フェナントリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(2−ピレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(3−アセナフテニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)、
4,4’−ビス[N−(8−フルオランテニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(9−アントリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス{N−フェニル−N−[4−(1−ナフチル)−フェニル]アミノ}ビフェニル、
4,4’−ビス[N−フェニル−N−(2−ピレニル)アミノ]ビフェニル、
4,4’,4’’−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(m−TDATA)、
ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)−フェニルメタン、
N−フェニルカルバゾール、
N,N’−ビス[4−([1,1’−ビフェニル]−4−イルフェニルアミノ)フェニル]−N,N’−ジ−1−ナフタレニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、
N,N’−ビス[4−(ジ−1−ナフタレニルアミノ)フェニル]−N,N’−ジ−1−ナフタレニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、
N,N’−ビス[4−[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]フェニル]−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、
N,N−ビス[4−(ジフェニルアミノ)フェニル]−N’,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、
N,N’−ジ−1−ナフタレニル−N,N’−ビス[4−(1−ナフタレニルフェニルアミノ)フェニル]−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、
N,N’−ジ−1−ナフタレニル−N,N’−ビス[4−(2−ナフタレニルフェニルアミノ)フェニル]−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、
N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、
N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル、
N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル、
N,N,N’,N’−テトラ−1−ナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル、
N,N,N’,N’−テトラ−2−ナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル、及び
N,N,N’,N’−テトラ(2−ナフチル)−4,4’’−ジアミノ−p−テルフェニル。
【0103】
別の種類の有用な正孔輸送材料として、欧州特許第1009041号明細書に記載されるような多環芳香族化合物が挙げられる。オリゴマー材料を含む、3個以上のアミン基を有する芳香族第三級アミンを使用することができる。さらに、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、及びコポリマー(例えばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))等のポリマー正孔輸送材料が使用される。
【0104】
HTL132の厚さは、5nm〜200nmの範囲内、好ましくは10nm〜150nmの範囲内である。
【0105】
<励起子ブロック層(EBL)>
任意の励起子ブロック層又は電子ブロック層(図1には示さない)がHTLとLELとの間に存在し得る。かかるブロック層の幾つかの好適な例が、米国特許出願公開第20060134460号明細書に記載されている。
【0106】
<発光層>
米国特許第4,769,292号及び米国特許第5,935,721号明細書により詳しく説明されているように、図1に示す有機EL素子の発光層(LEL)134(複数可)は、発光、蛍光又はリン光材料を含み、この領域で電子−正孔対が再結合する結果としてエレクトロルミネッセンスが発生する。発光層は単一の材料で構成されていてもよいが、より一般的には、エレクトロルミネッセンスゲスト化合物(一般にドーパントと称される)をドープした非エレクトロルミネッセンス化合物(一般にホストと称される)、又は発光が主にエレクトロルミネッセンス化合物に由来する化合物からなり、任意の色であり得る。エレクトロルミネッセンス化合物は、0.01%〜50%で非エレクトロルミネッセンス成分材料にコーティングしてもよいが、典型的には0.01%〜30%、より典型的には0.01%〜15%で非エレクトロルミネッセンス成分にコーティングしてもよい。LELの厚さは任意の好適な厚さであり、0.1mm〜100mmの範囲内であり得る。
【0107】
エレクトロルミネッセンス成分として染料を選択する上で重要な関係は、分子の最高被占分子軌道と最低空分子軌道とのエネルギー差として規定されるバンドギャップ電位の比較である。非エレクトロルミネッセンス化合物からエレクトロルミネッセンス化合物分子への効率的なエネルギー移動にとって必要な条件は、エレクトロルミネッセンス化合物のバンドギャップが、非エレクトロルミネッセンス化合物(複数可)のバンドギャップより小さいことである。したがって、適切なホスト材料の選択は、エレクトロルミネッセンス化合物(それ自体が発せられる光の性質及び効率について選択される)の電気的特性と比較したその電気的特性に基づく。下記に記載されるように、蛍光ドーパント及びリン光ドーパントは典型的には異なる電気的特性を有するため、それぞれのために最も適切なホストは異なり得る。しかしながら、同一のホスト材料がいずれのタイプのドーパントにとっても有用である場合がある。
【0108】
有用であることが知られている非エレクトロルミネッセンス化合物及び発光分子としては、米国特許第4,768,292号明細書、米国特許第5,141,671号明細書、米国特許第5,150,006号明細書、米国特許第5,151,629号明細書、米国特許第5,405,709号明細書、米国特許第5,484,922号明細書、米国特許第5,593,788号、米国特許第5,645,948号明細書、米国特許第5,683,823号、米国特許第5,755,999号明細書、米国特許第5,928,802号、米国特許第5,935,720号明細書、米国特許第5,935,721号明細書、及び米国特許第6,020,078号に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
a)リン光発光層
リン光LELに好適なホストは、ホストからリン光ドーパント(複数可)への三重項励起子の移動は効率的に起こり得るが、リン光ドーパント(複数可)からホストへの三重項励起子の移動は効率的には起こり得ないように選択しなくてはならない。したがって、ホストの三重項エネルギーが、リン光ドーパントの三重項エネルギーより高いことが非常に望ましい。一般的に言えば、大きな三重項エネルギーは光学バンドギャップが大きいことを示唆する。しかしながら、ホストのバンドギャップは、正孔の蛍光青色LELへの注入に対する許容し難い障壁、及びOLEDの駆動電圧の許容し難い上昇の原因となるほど大きくないように選択しなくてはならない。リン光LELのホストは、それが層中のリン光ドーパントの三重項エネルギーより高い三重項エネルギーを有する限り、HTL132に使用される上述の正孔輸送材料のいずれかを含み得る。リン光LELに使用されるホストは、HTL132に使用される正孔輸送材料と同一であっても、又は異なっていてもよい。場合によっては、リン光LELのホストは好適には、それがリン光ドーパントの三重項エネルギーより高い三重項エネルギーを有する限り、電子輸送材料(後述する)も含み得る。
【0110】
上述のHTL132の正孔輸送材料に加えて、幾つかの他の種類の正孔輸送材料もリン光LELにおいてホストとして使用するのに好適である。
【0111】
望ましいホストのうちの1つは、式(F)の正孔輸送材料を含む:
【0112】
【化15】

【0113】
式(F)において、R1及びR2は置換基を表すが、但しR1及びR2は結合して環を形成してもよく(例えば、R1及びR2はメチル基であっても、又は結合してシクロヘキシル環を形成してもよい)、Ar1〜Ar4は、独立して選択される芳香族基(例えばフェニル基又はトリル基)を表し、R3〜R10は、独立して水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。
【0114】
好適な材料の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
1,1−ビス(4−(N,N−ジ−p−トリルアミノ)フェニル)シクロヘキサン(TAPC)、
1,1−ビス(4−(N,N−ジ−p−トリルアミノ)フェニル)シクロペンタン、
4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[N,N−ビス(4−メチルフェニル)−ベンゼンアミン、
1,1−ビス(4−(N,N−ジ−p−トリルアミノ)フェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−(N,N−ジ−p−トリルアミノ)フェニル)−4−メチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−(N,N−ジ−p−トリルアミノ)フェニル)−3−フェニルプロパン、
ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル(methylpenyl))メタン、
ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)エタン、
4−(4−ジエチルアミノフェニル)トリフェニルメタン、
4,4’−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)ジフェニルメタン。
【0115】
ホストとして使用するのに好適な有用な種類のトリアリールアミンとしては、式(G)で表されるようなカルバゾール誘導体が挙げられる:
【0116】
【化16】

【0117】
式(G)において、Qは独立して窒素、炭素、アリール基、又は置換アリール基、好ましくはフェニル基を表し、R1は好ましくはアリール基又は置換アリール基、より好ましくはフェニル基、置換フェニル基、ビフェニル基、置換ビフェニル基であり、R2〜R7は独立して水素、アルキル基、フェニル基若しくは置換フェニル基、アリールアミン、カルバゾール、又は置換カルバゾールであり、且つnは1〜4から選択される。
【0118】
構造式(G)を満たす別の有用な種類のカルバゾールは、式(H):
【0119】
【化17】

【0120】
(式中、nは1〜4の整数であり、Qは窒素、炭素、アリール、又は置換アリールであり、R2〜R7は独立して水素、アルキル基、フェニル若しくは置換フェニル、アリールアミン、カルバゾール、及び置換カルバゾールである)で表される。
【0121】
有用な置換カルバゾールの例は以下である:
4−(9H−カルバゾール−9−イル)−N,N−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−ベンゼンアミン(TCTA)、
4−(3−フェニル−9H−カルバゾール−9−イル)−N,N−ビス[4−(3−フェニル−9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−ベンゼンアミン、
9,9’−[5’−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル][1,1’:3’,1’’−テルフェニル]−4,4’’−ジイル]ビス−9H−カルバゾール、
9,9’−(2,2’−ジメチル[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイル)ビス−9H−カルバゾール(CDBP);
9,9’−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイルビス−9H−カルバゾール(CBP)、
9,9’−(1,3−フェニレン)ビス−9H−カルバゾール(mCP)、
9,9’−(1,4−フェニレン)ビス−9H−カルバゾール、
9,9’,9’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス−9H−カルバゾール、
9,9’−(1,4−フェニレン)ビス[N,N,N’,N’−テトラフェニル−9H−カルバゾール−3,6−ジアミン、
9−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン、
9,9’−(1,4−フェニレン)ビス[N,N−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン、
9−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N,N’,N’−テトラフェニル−9H−カルバゾール−3,6−ジアミン。
【0122】
リン光LELに好適な上記の種類のホストは、蛍光LELにおけるホストとしても同様に使用することができる。
【0123】
リン光LELに使用するのに好適なリン光ドーパントは、下記式(J):
【0124】
【化18】

【0125】
(式中、Aは少なくとも1つの窒素原子を含有する、置換又は非置換の複素環であり、Bは置換又は非置換の芳香環若しくは芳香族複素環であるか、又はMと結合したビニル炭素を含有する環であり、X−Yはアニオン性二座配位子であり、M=Rh若しくはIrの場合、m+n=3となるように、mは1〜3の整数であり、且つnは0〜2の整数であるか、又はM=Pt若しくはPdの場合、m+n=2となるように、mは1〜2の整数であり、且つnは0〜1の整数である)によって記載されるリン光材料から選択することができる。
【0126】
式(J)に従う化合物は、その中心金属原子が、金属原子と1つ又は複数の配位子の炭素原子及び窒素原子との結合により形成される環状単位に含有されることを示すために、C,N−(又はC^N−)シクロメタル化錯体と称される場合もある。式(J)における複素環Aの例としては、置換又は非置換のピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピリミジン環、インドール環、インダゾール環、チアゾール環、及びオキサゾール環が挙げられる。式(J)における環Bの例としては、置換又は非置換のフェニル環、ナフチル(napthyl)環、チエニル環、ベンゾチエニル環、フラニル環が挙げられる。式(J)における環Bは、ピリジン等のN含有環であってもよいが、但しこのN含有環は、式(J)に示すように、N原子ではなくC原子を介してMと結合する。
【0127】
式(J)(m=3であり、且つn=0である)に従うトリス−C,N−シクロメタル化錯体の一例は、トリス(2−フェニル−ピリジナト−N,C2'−)イリジウム(III)であり、facial(fac)異性体又はmeridional(mer)異性体として下記立体図に示す。
【0128】
【化19】

【0129】
一般に、facial異性体はmeridional異性体より高いリン光量子収率を有すると判明することが多いため、facial異性体が好ましい。式(J)に従うトリス−C,N−シクロメタル化リン光材料のさらなる例は、トリス(2−(4’−メチルフェニル)ピリジナト−N,C2')イリジウム(III)、トリス(3−フェニルイソキノリナト−N,C2')イリジウム(III)、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2')イリジウム(III)、トリス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2')イリジウム(III)、トリス(1−(4’−メチルフェニル)イソキノリナト−N,C2')イリジウム(III)、トリス(2−(4’,6’−ジフルオロフェニル(diflourophenyl))−ピリジナト−N,C2')イリジウム(III)、トリス(2−((5’−フェニル)−フェニル)ピリジナト−N,C2')イリジウム(III)、トリス(2−(2’−ベンゾチエニル)ピリジナト−N,C3')イリジウム(III)、トリス(2−フェニル−3,3’−ジメチル)インドラト(indolato)−N,C2')Ir(III)、トリス(1−フェニル−1H−インダゾラト(indazolato)−N,C2')Ir(III)である。
【0130】
その中でも、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)(Ir(piq)3とも称される)及びトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3とも称される)が本発明に特に好適である。
【0131】
トリス−C,N−シクロメタル化リン光材料には、一価アニオン性二座配位子X−Yが別のC,N−シクロメタル化配位子である、式(J)に従う化合物も含まれる。例としては、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2')(2−フェニルピリジナト−N,C2')イリジウム(III)及びビス(2−フェニルピリジナト−N,C2')(1−フェニルイソキノリナト−N,C2')イリジウム(III)が挙げられる。2つの異なるC,N−シクロメタル化配位子を含有する、かかるトリス−C,N−シクロメタル化錯体の合成は、以下の工程により都合よく合成することができる。最初に、ビス−C,N−シクロメタル化ジハロゲン化二イリジウム錯体(又は類似の二ロジウム錯体)を、Nonoyama(Bull. Chem. Soc. Jpn., 47, 767 (1974))の方法に従って作製する。第2に、第2の異種C,N−シクロメタル化配位子の亜鉛錯体を、ハロゲン化亜鉛と、シクロメタル化配位子のリチウム錯体又はグリニャール試薬との反応により調製する。第3に、そのように形成された第2のC,N−シクロメタル化配位子の亜鉛錯体を、先に得られたビス−C,N−シクロメタル化ジハロゲン化二イリジウム錯体と反応させて、2つの異なるC,N−シクロメタル化配位子を含有するトリス−C,N−シクロメタル化錯体を形成させる。そのように得られた2つの異なるC,N−シクロメタル化配位子を含有するトリス−C,N−シクロメタル化錯体は、ジメチルスルホキシド等の好適な溶媒中で加熱することにより、金属(例えばIr)と結合したC原子が全て互いにシスである異性体に変換するのが望ましい。
【0132】
式(J)に従う好適なリン光材料は、C,N−シクロメタル化配位子(複数可)に加えて、C,N−シクロメタル化していない一価アニオン性二座配位子(複数可)X−Yも含有し得る。一般的な例は、アセチルアセトネート等のβ−ジケトネート、及びピコリネート等のシッフ塩基である。式(J)に従う、かかる混合配位子錯体の例としては、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2')イリジウム(III)(アセチルアセトネート)、ビス(2−(2’−ベンゾチエニル)ピリジナト−N,C3')イリジウム(III)(アセチルアセトネート)、及びビス(2−(4’,6’−ジフルオロフェニル(diflourophenyl))−ピリジナト−N,C2')イリジウム(III)(ピコリネート)が挙げられる。
【0133】
式(J)に従う他の重要なリン光材料としては、cis−ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2')白金(II)、cis−ビス(2−(2’−チエニル)ピリジナト−N,C3')白金(II)、cis−ビス(2−(2’−チエニル)キノリナト−N,C5')白金(II)、又は(2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2')白金(II)(アセチルアセトネート)等のC,N−シクロメタル化Pt(II)錯体が挙げられる。
【0134】
式(J)に従うC,N−シクロメタル化リン光材料の発光波長(色)は主に、錯体の最低エネルギー光学遷移、したがってC,N−シクロメタル化配位子の選択に依存する。例えば、2−フェニル−ピリジナト−N,C2'錯体は典型的には緑色発光であるが、1−フェニル−イソキノリノラト−N,C2'錯体は典型的には赤色発光である。2つ以上のC,N−シクロメタル化配位子を有する錯体の場合、発光は発光波長が最も長いという性質を有する配位子のものとなる。発光波長は、C,N−シクロメタル化配位子上の置換基の影響によりさらにシフトし得る。例えば、N含有環A上の適切な位置にある電子供与基、又はC含有環B上の電子求引基を置換することにより、発光が非置換C,N−シクロメタル化配位子錯体と比較して青色にシフトする傾向がある。式(J)においてより強い電子求引特性を有する単座アニオン性配位子X,Yを選択することにより、C,N−シクロメタル化配位子錯体の発光が同様に青色にシフトする傾向がある。電子求引特性を有する一価アニオン性二座配位子及び電子求引置換基の両方をC含有環B上に有する錯体の例として、ビス(2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)−ピリジナト−N,C2')イリジウム(III)(ピコリネート)及びビス(2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)−ピリジナト−N,C2')イリジウム(III)(テトラキス(1−ピラゾリル)ボレート)が挙げられる。
【0135】
式(J)に従うリン光材料の中心金属原子は、Rh又はIr(m+n=3)、及びPd又はPt(m+n=2)であり得る。好ましい金属原子はIr及びPtであるが、これはこれらの原子が、より強いスピン軌道結合相互作用(一般に第三遷移系列の元素により得られる)によって、より高いリン光量子効率をもたらす傾向があるためである。
【0136】
式(J)によって表される二座C,N−シクロメタル化錯体に加えて、多くの好適なリン光材料が多座C,N−シクロメタル化配位子を含有する。本発明に使用するのに好適な、三座配位子を有するリン光材料は、米国特許第6,824,895号明細書及びその引用文献(その全体が参照により本明細書中に援用される)に開示されている。本発明に使用するのに好適な、四座配位子を有するリン光材料は、以下の式:
【0137】
【化20】

【0138】
(式中、MはPt又はPdであり、R1〜R7は水素又は独立して選択される置換基を表すが、但しR1及びR2、R2及びR3、R3及びR4、R4及びR5、R5及びR6、並びにR6及びR7が結合して環基を形成してもよく、R8〜R14は水素又は独立して選択される置換基を表すが、但しR8及びR9、R9及びR10、R10及びR11、R11及びR12、R12及びR13、並びにR13及びR14が結合して、環基を形成してもよく、Eは以下より選択される架橋基を表す:
【0139】
【化21】

【0140】
(式中、R及びR’は水素又は独立して選択される置換基を表すが、但しR及びR’が結合して環基を形成してもよい))により記載される。
【0141】
リン光ドーパントとして使用するのに好適な望ましい四座C,N−シクロメタル化リン光材料の1つは、以下の式:
【0142】
【化22】

【0143】
(式中、R1〜R7は水素又は独立して選択される置換基を表すが、但しR1及びR2、R2及びR3、R3及びR4、R4及びR5、R5及びR6、並びにR6及びR7が結合して環基を形成してもよく、R8〜R14は水素又は独立して選択される置換基を表すが、但しR8及びR9、R9及びR10、R10及びR11、R11及びR12、R12及びR13、並びにR13及びR14が結合して環基を形成してもよく、Z1〜Z5は水素又は独立して選択される置換基を表すが、但しZ1及びZ2、Z2及びZ3、Z3及びZ4、並びにZ4及びZ5が結合して環基を形成してもよい)により表されるものである。
【0144】
本発明に使用するのに好適な四座C,N−シクロメタル化配位子を有するリン光材料の具体例としては、下記に示される化合物(M−1)、(M−2)及び(M−3)が挙げられる。
【0145】
【化23】

【0146】
四座C,N−シクロメタル化配位子を有するリン光材料は、四座C,N−シクロメタル化配位子を、氷酢酸等の適当な有機溶媒中でK2PtCl4等の所望の金属の塩と、四座C,N−シクロメタル化配位子を有するリン光材料が形成されるように反応させることにより合成することができる。テトラブチルアンモニウムクロリド等のテトラアルキルアンモニウム塩を相間移動触媒として用いて、反応を促進することができる。
【0147】
C,N−シクロメタル化配位子を含まない他のリン光材料が知られている。Pt(II)、Ir(I)、及びRh(I)のマレオニトリルジチオレートとのリン光錯体が報告されている(Johnson et al., J. Am. Chem. Soc., 105, 1795 (1983))。Re(I)トリカルボニルジイミン錯体も強いリン光を発することが知られている(Wrighton and Morse, J. Am. Chem. Soc., 96, 998 (1974)、Stufkens, Comments Inorg. Chem., 13, 359 (1992)、Yam, Chem. Commun., 789 (2001))。シアノ配位子及びビピリジル配位子又はフェナントロリン配位子を含む配位子の組み合わせを含有するOs(II)錯体も、高分子OLEDにおいて実証されている(Ma et al., Synthetic Metals, 94, 245 (1998))。
【0148】
2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン白金(II)等のポルフィリン錯体も有用なリン光ドーパントである。
【0149】
有用なリン光材料のさらに他の例としては、Tb3+及びEu3+等の三価ランタニドの配位錯体が挙げられる(Kido et al., Chem. Lett., 657 (1990)、J. Alloys and Compounds, 192, 30 (1993)、Jpn. J. Appl. Phys., 35, L394 (1996)及びAppl. Phys. Lett., 65, 2124 (1994))。
【0150】
リン光LEL中のリン光ドーパントは、典型的にはLELの1体積%〜20体積%の量で存在し、LELの2体積%〜8体積%であるのが都合がよい。幾つかの実施形態では、1つ又は複数のホスト材料にリン光ドーパント(複数可)を付着させてもよい。ホスト材料はさらに、ポリマーであってもよい。第1のリン光発光層中のリン光ドーパントは、緑色リン光材料及び赤色リン光材料から選択される。
【0151】
リン光LELの厚さは、0.5nm超、好ましくは1.0nm〜40nmの範囲内である。
【0152】
b)蛍光発光層
「蛍光」という用語は一般に、任意の発光材料を説明するために使用されるが、本件においては、該用語は一重項励起状態から発光する材料を指す。蛍光材料はリン光材料と同一の層、隣接する層、隣接する画素において、又は任意の組み合わせで使用され得る。本発明のリン光材料の性能に悪影響を与える材料を選択しないよう注意しなければならない。リン光材料と同一の層又は隣接する層における材料の濃度及び三重項エネルギーを、望ましくないリン光の消失を防ぐよう適切に設定すべきことが当業者には理解される。
【0153】
典型的には、蛍光LELは、少なくとも1つのホスト及び少なくとも1つの蛍光ドーパントを含む。ホストは正孔輸送材料であっても、又は上記に規定されるリン光ドーパントに好適なホストのいずれかであっても、又は下記に規定される電子輸送材料であってもよい。
【0154】
ドーパントは典型的には、強い蛍光を発する染料、例えば国際公開第98/55561号パンフレット、国際公開第00/18851号パンフレット、国際公開第00/57676号パンフレット、及び国際公開第00/70655号パンフレットに記載されるような遷移金属錯体から選択される。
【0155】
有用な蛍光ドーパントとしては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、フェニレンの誘導体、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物及びチアピリリウム化合物、アリールピレン化合物、アリーレンビニレン化合物、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタンホウ素化合物、ジスチリルベンゼン(distryrylbenzene)誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、ジスチリルアミン誘導体、並びにカルボスチリル化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
幾つかの蛍光発光材料としては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、及びキナクリドンの誘導体、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物及びチアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、(米国特許第5,121,029号明細書に記載されるような)ビス(アジニル)メタン化合物、並びにカルボスチリル化合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用な材料の具体例として以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
【化24】

【0158】
【化25】

【0159】
【化26】

【0160】
【化27】

【0161】
【化28】

【0162】
【化29】

【0163】
好ましい蛍光青色ドーパントは、Chen, Shi, and Tang, "Recent Developments in Molecular Organic Electroluminescent Materials," Macromol. Symp. 125, 1 (1997)及びそれに引用される引用文献、Hung and Chen, "Recent Progress of Molecular Organic Electroluminescent Materials and Devices," Mat. Sci. and Eng. R39, 143 (2002)及びそれに引用される引用文献に見ることができる。
【0164】
特に好ましい種類の青色発光蛍光ドーパントは、ビス(アジニル)アミンボラン錯体として知られる式(N)によって表され、米国特許第6,661,023号明細書に記載されている。
【0165】
【化30】

【0166】
(式中、A及びA’は、少なくとも1つの窒素を含有する6員芳香環系に相当する独立したアジン環系を表し、Xa及びXbは各々、独立して選択される置換基であり、そのうちの2つがA又はA’と結合して縮合環を形成してもよく、m及びnは独立して0〜4であり、Za及びZbは独立して選択される置換基であり、且つ1、2、3、4、1’、2’、3’、及び4’は独立して炭素原子又は窒素原子のいずれかであるように選択される。)
【0167】
望ましくは、アジン環がキノリニル環又はイソキノリニル環のいずれかであって、1、2、3、4、1’、2’、3’、及び4’が全て炭素であり、m及びnが2以上であり、且つXa及びXbが、結合して芳香環を形成する少なくとも2つの炭素置換基を表す。望ましくは、Za及びZbはフッ素原子である。
【0168】
好ましい実施形態には、2つの縮合環系がキノリン系又はイソキノリン系であり、アリール又は複素環置換基がフェニル基であり、結合して6−6縮合環を形成する少なくとも2つのXa基及び2つのXb基が存在し、この縮合環系がそれぞれ1位−2位、3位−4位、1’位−2’位、又は3’位−4’位で縮合し、縮合環の一方又は両方がフェニル基で置換され、且つドーパントが式(N−a)、式(N−b)、又は式(N−c)に示されるデバイスがさらに含まれる。
【0169】
【化31】

【0170】
(式中、Xc、Xd、Xe、Xf、Xg、及びXhは各々、水素又は独立して選択される置換基であるが、そのうちの1つがアリール基又は複素環基でなくてはならない。)
【0171】
望ましくは、アジン環がキノリニル環又はイソキノリニル環のいずれかであって、1、2、3、4、1’、2’、3’、及び4’が全て炭素であり、m及びnが2以上であり、且つXa及びXbが、結合して芳香環を形成する少なくとも2つの炭素置換基を表し、その芳香環がアリール基又は置換アリール基である。望ましくは、Za及びZbはフッ素原子である。
【0172】
その中でも、化合物FD−54が特に有用である。
【0173】
クマリンは、Tang et al.の米国特許第4,769,292号及び米国特許第6,020,078号に記載されているように、有用な種類の緑色発光ドーパントである。緑色ドーパント又は緑色発光材料は0.01重量%〜50重量%でホスト材料にコーティングしてもよいが、典型的には0.01%〜30%、より典型的には0.01重量%〜15重量%でホスト材料にコーティングしてもよい。有用な緑色発光クマリンの例としては、C545T及びC545TBが挙げられる。キナクリドンは別の有用な種類の緑色発光ドーパントである。有用なキナクリドンは、米国特許第5,593,788号、特開平9−13026号公報、及び本発明の譲受人に譲渡された、Lelia Cosimbescuにより2002年6月27日付で出願された、「緑色有機発光ダイオードを含むデバイス(Device Containing Green Organic Light-Emitting Diode)」という表題の米国特許出願第10/184,356号明細書で説明されている(それらの開示は本明細書中に援用される)。
【0174】
特に有用な緑色発光キナクリドンの例はFD−7及びFD−8である。
【0175】
下記式(N−d)は、本発明に有用な別の種類の緑色発光ドーパントを表す。
【0176】
【化32】

【0177】
(式中、A及びA’は、少なくとも1つの窒素を含有する6員芳香環系に相当する独立したアジン環系を表し、Xa及びXbは各々、独立して選択される置換基であり、そのうちの2つがA又はA’と結合して縮合環を形成してもよく、m及びnは独立して0〜4であり、YはH又は置換基であり、Za及びZbは独立して選択される置換基であり、且つ1、2、3、4、1’、2’、3’、及び4’は炭素原子又は窒素原子のいずれかであるように独立して選択される。)
【0178】
該デバイスにおいて、1、2、3、4、1’、2’、3’、及び4’は全て炭素原子であるのが都合がよい。デバイスは望ましくは、結合して縮合環を形成する置換基を含有する環A又は環A’の少なくとも一方又は両方を含有し得る。有用な一実施形態では、ハロゲン化物、並びにアルキル基、アリール基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基からなる群から選択される少なくとも1つのXa基又はXb基が存在する。別の実施形態では、フッ素、並びにアルキル基、アリール基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基からなる群から独立して選択されるZa基及びZb基が存在する。望ましい実施形態では、Za及びZbがFである。Yは好適には水素、又はアルキル基、アリール基、若しくは複素環基等の置換基である。
【0179】
これらの化合物の発光波長は、目標色、すなわち緑色を達成するために、中心のビス(アジニル)メテンホウ素基の周囲を適切に置換することにより或る程度調整することができる。有用な材料の幾つかの例はFD−50、FD−51、及びFD−52である。
【0180】
ナフタセン及びその誘導体も有用な種類の発光ドーパントであり、安定剤としても使用することができる。これらのドーパント材料を0.01重量%〜50重量%でホスト材料にコーティングしてもよいが、典型的には0.01%〜30%、より典型的には0.01重量%〜15重量%でホスト材料にコーティングしてもよい。下記のナフタセン誘導体YD−1(t−BuDPN)は、安定剤として使用されるドーパント材料の一例である。
【0181】
【化33】

【0182】
この種類の材料の幾つかの例は、ドーパントだけでなくホスト材料としても好適である。例えば、米国特許第6773832号明細書又は米国特許第6720092号明細書を参照されたい。この材料の具体例はルブレン(FD−5)である。
【0183】
別の種類の有用なドーパントはペリレン誘導体である。例えば、米国特許第6689493号明細書を参照されたい。具体例はFD−46である。
【0184】
8−ヒドロキシキノリン及び類似の誘導体の金属錯体(式O)は、エレクトロルミネッセンスを支持することが可能な、有用な非エレクトロルミネッセンスホスト化合物の1種を構成し、500nmより長い波長、例えば、緑色、黄色、橙色、及び赤色の発光に特に好適である。
【0185】
【化34】

【0186】
(式中、Mは金属を表し、nは1〜4の整数であり、Zはどの場合も独立して、少なくとも2つの縮合芳香環を有する核を完成させる原子を表す。)
【0187】
金属が一価、二価、三価、又は四価の金属であり得ることが上記から明らかである。金属は、例えばリチウム、ナトリウム、若しくはカリウム等のアルカリ金属、マグネシウム若しくはカルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム若しくはガリウム等の土類金属、又は亜鉛若しくはジルコニウム等の遷移金属であり得る。一般に、有用なキレート金属であることが知られる任意の一価、二価、三価、又は四価の金属を使用することができる。
【0188】
Zは、少なくとも2つの縮合芳香環(そのうち少なくとも1つはアゾール環又はアジン環である)を含有する複素環の核を完成させる。必要に応じて、さらなる環(脂環及び芳香環の両方を含む)を、2つの所要の環と縮合させてもよい。機能が改善されることなく多量の分子が付加されることを回避するために、環原子の数は通常18以下に維持される。
【0189】
有用なキレート化オキシノイド化合物の例は以下である:
O−1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)]
O−2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム(II)]
O−3:ビス[ベンゾ{f}−8−キノリノラト]亜鉛(II)
O−4:ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)
O−5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)インジウム] O−6:アルミニウムトリス(5−メチルオキシン)[別名、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)]
O−7:リチウムオキシン[別名、(8−キノリノラト)リチウム(I)]
O−8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)ガリウム(III)] O−9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
O−10:ビス(2−メチル−8−キノリナト)−4−フェニルフェノラトアルミニウム(III)。
【0190】
式(P)
【0191】
【化35】

【0192】
(式中、R1〜R10は独立して水素、1個〜24個の炭素原子を有するアルキル基、又は1個〜24個の炭素原子を有する芳香族基から選択される)に従うアントラセン誘導体もLELに有用なホスト材料である。R1及びR6がフェニル、ビフェニル、又はナフチル(napthyl)であり、R3がフェニル、置換フェニル、又はナフチル(napthyl)であり、R2、R4、R5、R7〜R10が全て水素である化合物が特に好ましい。かかるアントラセンホストは、優れた電子輸送特性を有することが知られている。
【0193】
9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセンの誘導体が特に望ましい。具体例としては、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(ADN)及び2−t−ブチル−9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(TBADN)が挙げられる。米国特許第5,927,247号明細書に記載されるようなジフェニルアントラセン及びその誘導体等の他のアントラセン誘導体が、LELにおける非エレクトロルミネッセンス化合物として有用であり得る。米国特許第5,121,029号明細書及び特開08333569号公報に記載されるようなスチリルアリーレン誘導体も、有用な非エレクトロルミネッセンス材料である。例えば、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルエテニル)−1,1’−ビフェニル(DPVBi)、及び欧州特許第681,019号明細書に記載されるようなフェニルアントラセン誘導体は、有用な非エレクトロルミネッセンス材料である。
【0194】
好適なアントラセンの幾つかの具体例は以下である:
【0195】
【化36】

【0196】
【化37】

【0197】
<スペーサ層>
スペーサ層が存在する場合、スペーサ層はLELと直接接触させて配置される。スペーサ層は、アノード若しくはカソードのいずれかの上に配置してもよく、又はさらにはLELの両側に配置してもよい。スペーサ層は典型的にはいかなる発光ドーパントをも含有しない。1つ又は複数の材料を使用してもよく、材料は上記で規定されるような正孔輸送材料、又は下記に規定されるような電子輸送材料のいずれかであり得る。リン光LELの隣に配置した場合、スペーサ層中の材料は、LEL中のリン光ドーパントの三重項エネルギーより高い三重項エネルギーを有しなくてはならない。最も望ましくは、スペーサ層中の材料は隣接するLELにおいてホストとして使用されるものと同一である。したがって、記載されるいずれのホスト材料もスペーサ層に使用する上でも好適である。スペーサ層は薄くなくてはならず、少なくとも0.1nm、好ましくは1.0nm〜20nmの範囲内である。
【0198】
<正孔ブロック層(HBL)>
リン光エミッタを含有するLELが存在する場合、励起子及び再結合現象をLELに局限するのを助けるために、正孔ブロック層135を電子輸送層136と発光層134との間に配置するのが望ましい。この場合、共通ホストから正孔ブロック層への正孔の移動に対するエネルギー障壁がなくてはならず、一方で電子が正孔ブロック層から共通ホスト材料及びリン光エミッタを含む発光層へと容易に受け渡される必要がある。さらに、正孔ブロック材料の三重項エネルギーがリン光材料の三重項エネルギーより大きいことが望ましい。好適な正孔ブロック材料は、国際公開第00/70655号パンフレット、国際公開第01/41512号パンフレット、及び国際公開第01/93642号パンフレットに記載されている。有用な正孔ブロック材料の2つの例は、バトクプロイン(BCP)及びビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlq)である。米国特許出願公開第20030068528号明細書に記載されるように、BAlq以外の金属錯体も正孔及び励起子を遮断することが知られている。正孔ブロック層を使用する場合、その厚さは2nm〜100nm、好適には5nm〜10nmであり得る。
【0199】
<電子輸送層>
電子輸送層136は、混合クラスター化合物のみから構成されていても、又はクラスター化合物と他の適切な材料との混合物であってもよい。混合クラスター化合物とさらなる材料との体積比%は1%〜99%のいずれであってもよく、より好適には10%〜90%、最も望ましくは30%〜70%である。使用されるクラスター化合物又は任意のさらなる材料は、LEL又はスペーサ層においてホストとして使用されるものと同一であっても又は異なっていてもよい。ETL136は任意で副層に分かれていてもよい。
【0200】
アントラセン類の電子輸送材料が、本発明の化合物と組み合わせるのに特に望ましい。これらのアントラセン電子輸送誘導体は、LELのホスト材料に関して上記に記載される式(P)により表される。
【0201】
先に記載される電子輸送材料のいずれかに加えて、ETLに使用するのに好適であることが知られる任意の他の材料を使用することができる。キレート化オキシノイド化合物、フルオランテン誘導体、ピリジン系材料、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール及びこれらの誘導体、ポリベンゾビスアゾール、シアノ含有ポリマー、及び過フッ化材料が挙げられるが、これらに限定されない。他の電子輸送材料としては、米国特許第4,356,429号に開示されているような様々なブタジエン誘導体、及び米国特許第4,539,507号明細書に記載されるような様々な複素環光学的光沢剤が挙げられる。
【0202】
好ましい種類のベンザゾールは、米国特許第5,645,948号明細書及び同第5,766,779号明細書においてShi et al.により説明されている。かかる化合物は構造式(Q)により表される:
【0203】
【化38】

【0204】
式(Q)において、nは2〜8から選択され、iは1〜5から選択され、Zは独立してO、NR、又はSであり、Rは個々に水素、1個〜24個の炭素原子を有するアルキル(例えばプロピル、t−ブチル、ヘプチル等)、5個〜20個の炭素原子を有するアリール若しくはヘテロ原子置換アリール(例えばフェニル、及びナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、及び他の複素環系)、又はクロロ、フルオロ等のハロゲン、又は縮合芳香環を完成させるのに必要な原子であり、Xは炭素、アルキル、アリール、置換アルキル、又は置換アリールからなる結合単位であり、共役的又は非共役的に複数のベンザゾールを結合する。
【0205】
有用なベンザゾールの一例は、下記に示す式(Q−1)によって表される2,2’,2’’−(1,3,5−フェニレン)トリス[1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール](TPBI)である:
【0206】
【化39】

【0207】
別の適切な種類の電子輸送材料は、式(R)によって表されるような様々な置換フェナントロリンを含む:
【0208】
【化40】

【0209】
式(R)において、R1〜R8は独立して水素、アルキル基、アリール基、又は置換アリール基であり、R1〜R8のうち少なくとも1つはアリール基又は置換アリール基である。
【0210】
EILに有用なフェナントロリンの具体例は、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−フェナントロリン(BCP)(式(R−1)を参照されたい)及び4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(Bphen)(式(R−2)を参照されたい)である。
【0211】
【化41】

【0212】
電子輸送材料として機能する好適なトリアリールボランは、化学式(S):
【0213】
【化42】

【0214】
(式中、Ar1〜Ar3は独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環式(hydrocarbocyclic)基又は芳香族複素環基である)を有する化合物から選択され得る。上記構造を有する化合物は、好ましくは式(S−1):
【0215】
【化43】

【0216】
(式中、R1〜R15は独立して水素、フルオロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、スルホニル基、アルキル基、アリール基、又は置換アリール基)から選択される。
【0217】
トリアリールボランの具体的な代表例(embodiments)としては以下が挙げられる:
【0218】
【化44】

【0219】
電子輸送材料は、式(T):
【0220】
【化45】

【0221】
(式中、R1及びR2は個々に水素、1個〜24個の炭素原子を有するアルキル(例えばプロピル、t−ブチル、ヘプチル等)、5個〜20個の炭素原子を有するアリール若しくはヘテロ原子置換アリール(例えばフェニル、及びナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、及び他の複素環系)、又はクロロ、フルオロ等のハロゲン、又は縮合芳香環を完成させるのに必要な原子である)の置換1,3,4−オキサジアゾールからも選択され得る。
【0222】
有用な置換オキサジアゾールの例は以下である:
【0223】
【化46】

【0224】
電子輸送材料は、式(U):
【0225】
【化47】

【0226】
(式中、R1、R2、及びR3は独立して水素、アルキル基、アリール基、又は置換アリール基であり、R1〜R3のうち少なくとも1つはアリール基又は置換アリール基である)に従う置換1,2,4−トリアゾールからも選択され得る。有用なトリアゾールの一例は、式(U−1)によって表される3−フェニル−4−(1−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾールである:
【0227】
【化48】

【0228】
電子輸送材料は、置換1,3,5−トリアジンからも選択され得る。好適な材料の例は以下である:
2,4,6−トリス(ジフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン、
2,4,6−トリカルバゾロ−1,3,5−トリアジン、
2,4,6−トリス(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、
2,4,6−トリス(N−フェニル−1−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、
4,4’,6,6’−テトラフェニル−2,2’−ビ−1,3,5−トリアジン、
2,4,6−トリス([1,1’:3’,1’’−テルフェニル]−5’−イル)−1,3,5−トリアジン。
【0229】
また、LEL中のホスト材料として有用な式(O)のオキシン自体のキレートを含む金属キレート化オキシノイド化合物(一般に8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリンとも称される)のいずれかも、ETLに使用するのに好適である。
【0230】
高い三重項エネルギーを有する幾つかの金属キレート化オキシノイド化合物が、電子輸送材料として特に有用であり得る。特に有用な高い三重項エネルギー準位を有するアルミニウム又はガリウム錯体ホスト材料は、式(V)によって表される。
【0231】
【化49】

【0232】
式(V)において、M1はAl又はGaを表す。R2〜R7は水素又は独立して選択される置換基を表す。望ましくは、R2は電子供与基を表す。好適には、R3及びR4は各々独立して、水素又は電子供与置換基を表す。好ましい電子供与基はメチル等のアルキルである。好ましくは、R5、R6、及びR7は各々独立して、水素又は電子求引基を表す。隣接する置換基R2〜R7は、結合して環基を形成してもよい。Lは、酸素によりアルミニウムと連結した芳香族部分であり、Lが6個〜30個の炭素原子を有するように置換基で置換されていてもよい。
【0233】
ETLにおいて使用する有用なキレート化オキシノイド化合物の例は、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)−4−フェニルフェノレート[別名、Balq]である。
【0234】
ETLの厚さは、5nm〜200nmの範囲内、好ましくは10nm〜150nmの範囲内である。
【0235】
<電子注入層>
本発明の幾つかの実施形態において、クラスター化合物はEIL138中に配置される。他の好適な材料をEILに使用してもよい。例えば、EILは、ホストとして少なくとも1つの電子輸送材料、及び少なくとも1つのn型ドーパントを含有するn型ドープ層であってもよい。ドーパントは、電荷移動によってホストを還元することが可能である。「n型ドープ層」という用語は、この層がドープ後に半導体特性を有し、この層を流れる電流が実質的に電子により搬送されることを意味する。
【0236】
EILにおけるホストは、電子の注入及び電子の輸送を支持することが可能な電子輸送材料であり得る。電子輸送材料は、上記で規定されるようなETL領域に使用する電子輸送材料から選択することができる。
【0237】
n型ドープEIL中のn型ドーパントは、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、又はアルカリ土類金属化合物、又はそれらの組み合わせから選択することができる。「金属化合物」という用語は、有機金属錯体、金属有機塩、及び金属無機塩、金属酸化物、及び金属ハロゲン化物を包含する。この種類の金属含有n型ドーパントのうち、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Sm、Eu、Tb、Dy、又はYb、及びこれらの化合物が特に有用である。n型ドープEILにおいてn型ドーパントとして使用される材料には、強い電子供与特性を有する有機還元剤も含まれる。「強い電子供与特性」とは、有機ドーパントが少なくとも幾つかの電子電荷をホストに供与して、ホストと共に電荷移動錯体を形成可能であることを意味する。有機分子の非限定的な例として、ビス(エチレンジチオ)−テトラチアフルバレン(BEDT−TTF)、テトラチアフルバレン(TTF)、及びこれらの誘導体が挙げられる。ポリマーホストの場合、ドーパントは上記のいずれかであるか、又は微量成分としてホストを分子的に分散した材料若しくはホストと共重合した材料でもある。好ましくは、n型ドープEIL中のn型ドーパントは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、若しくはYb、又はそれらの組み合わせを含む。n型ドープ濃度は、この層の0.01体積%〜20体積%の範囲内であるのが好ましい。
【0238】
EILの厚さは、典型的には20nm未満、好ましくは5nm未満の範囲内である。n型ドープEILを使用する場合、その厚さは典型的には200nm未満、好ましくは150nm未満の範囲内である。
【0239】
<カソード>
アノードのみを通して発光を見る場合には、カソード140は、ほぼ任意の導電性材料を含む。望ましい材料は、下にある有機層との効果的な接触を確実にする有効な膜形成特性を有し、低電圧で電子の注入を促進し、有効な安定性を有する。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな金属又は合金(4.0eV未満)を含有することが多い。好ましいカソード材料の1つは、米国特許第4,885,221号明細書に記載されるようなMg:Ag合金を含む。別の好適な種類のカソード材料としては、有機層(例えば有機EIL又はETL)に接触する薄い無機EILを含み、より厚い導電性金属層で覆われる二重層が挙げられる。ここで、無機EILは仕事関数が小さな金属又は金属塩を含んでいることが好ましく、そのような場合には、より厚い被覆層が小さな仕事関数を有する必要はない。かかるカソードの1つは、米国特許第5,677,572号明細書に記載されているように、LiFの薄層と、それに続くより厚いAl層を含む。他の有用なカソード材料の組としては、米国特許第5,059,861号明細書、同第5,059,862号明細書、及び同第6,140,763号明細書に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0240】
カソードを通して発光を見る場合、カソード140は透明であるか、又はほぼ透明である必要がある。かかる用途のためには、金属が薄いか、又は透明な導電性酸化物を使用するか、又はこのような材料を含んでいる必要がある。光学的に透明なカソードは、米国特許第4,885,211号明細書、同第5,247,190号明細書、同第5,703,436号明細書、同第5,608,287号明細書、同第5,837,391号明細書、同第5,677,572号明細書、同第5,776,622号明細書、同第5,776,623号明細書、同第5,714,838号明細書、同第5,969,474号明細書、同第5,739,545号明細書、同第5,981,306号明細書、同第6,137,223号明細書、同第6,140,763号明細書、同第6,172,459号明細書、同第6,278,236号明細書、同第6,284,393号明細書、及び欧州特許第1076368号明細書により詳細に記載されている。カソード材料は、典型的には熱蒸着、電子ビーム蒸着、イオンスパッタリング、又は化学蒸着によって堆積させる。必要に応じて、多くの既知の方法(スルーマスク蒸着、例えば米国特許第5,276,380号明細書及び欧州特許第0732868号明細書に記載されるような一体化シャドーマスキング(integral shadow masking)、レーザーアブレーション、及び選択的化学蒸着が挙げられるが、これらに限定されない)によってパターニングを行なう。
【0241】
<基板>
OLED100は、典型的には支持基板110上に設けられるが、ここでアノード120又はカソード140のいずれかが基板と接触していてもよい。基板と接触する電極は便宜上、底面電極と称される。従来、底面電極はアノード120であるが、本発明はその構成に限定されない。基板は、意図される発光の方向に応じて光透過性であっても、又は不透明であってもよい。基板を通してEL発光を見るには光透過性が望ましい。このような場合には、透明なガラス又はプラスチックが一般に使用される。基板は複数の材料層を備える複雑な構造であってもよい。これは典型的には、OLED層の下側にTFTが設けられるアクティブマトリックス基板の場合に当てはまる。基板は、少なくとも発光画素化領域において、概ね透明な材料(ガラス又はポリマー等)から構成されることがさらに必要とされる。EL発光を上部電極を通して見る用途においては、底面支持体の光透過性は重要ではなく、したがって基板は光透過性であっても、光吸収性であっても、又は光反射性であってもよい。この場合に使用される基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料(ケイ素、セラミックス等)、及び回路基板材料が挙げられるが、これらに限定されない。この場合もやはり、基板は、アクティブマトリクスTFT設計において見られるような複数の材料層を備える複雑な構造であってもよい。これらのデバイス構成においては、光透明性の上部電極を設けることが必要とされる。
【0242】
<有機層の堆積>
上記の有機材料は、好適には昇華によって堆積させるが、膜の形成を改善するために任意で結合剤を用いて溶媒から堆積させることもできる。材料がポリマーである場合には、溶媒堆積が通常は好ましい。昇華によって堆積させる材料は、例えば米国特許第6,237,529号明細書に記載されるように、タンタル材料で構成されることの多い昇華「ボート」(sublimator "boat")から蒸発させるか、又は最初にドナーシートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。材料の混合物を含む層では、別個の昇華ボートを用いるか、又は材料を予め混合し、単一のボート若しくはドナーシートからコーティングすることができる。パターニング堆積は、シャドーマスク、一体化シャドーマスク(米国特許第5,294,870号明細書)、ドナーシートからの空間的に限定された染料熱転写(米国特許第5,851,709号明細書及び米国特許第6,066,357号明細書)、インクジェット法(米国特許第6,066,357号明細書)を利用して実現することができる。
【0243】
OLEDを作製する上で有用な有機材料、例えば有機正孔輸送材料、有機エレクトロルミネッセンス成分をドープした有機発光材料は、分子結合力の比較的弱い比較的複雑な分子構造を有するため、物理的蒸着中に有機材料(複数可)の分解が回避されるよう注意を払う必要がある。上述の有機材料は、比較的高い純度で合成され、粉末、フレーク、又は顆粒の形態で提供される。かかる粉末又はフレークは従来、物理的蒸着源に入れて使用されてきたが、この物理的蒸着源では、有機材料の昇華又は気化により蒸気を形成させ、基板上で蒸気を凝縮させて基板上に有機層を設けるために熱が加えられる。
【0244】
有機粉末、フレーク又は顆粒を物理的蒸着において使用する際に幾つかの問題が見られていたが、これは、これらの粉末、フレーク、又は顆粒の取り扱いが困難であるということである。これらの有機材料は一般に、比較的低い物理的密度を有し、特に10-6トールにまで減圧されるチャンバ内に配置される、物理的蒸着源に入れる際に望ましくない低い熱伝導率を有する。このため、粉末粒子、フレーク、又は顆粒は、加熱源からの放射加熱、及び加熱源の加熱表面と直接接触した粒子又はフレークの伝導加熱によってしか加熱されない。加熱源の加熱表面と接触していない粉末粒子、フレーク、又は顆粒は、粒子間接触面積が比較的小さいことから、伝導加熱では効果的に加熱されない。これは物理的蒸着源におけるかかる有機材料の不均一な加熱をもたらし得る。したがって、結果として不均一な蒸着有機層が基板上に形成される可能性がある。
【0245】
これらの有機粉末は固結して固体ペレットとすることができる。昇華性有機材料粉末の混合物から固結して固体ペレットとなるこれらの固体ペレットは、取り扱いがより容易である。有機粉末の固体ペレットへの固結は、比較的単純な器具を用いて行なうことができる。1つ又は複数の非発光性の有機非エレクトロルミネッセンス成分材料、又は発光エレクトロルミネッセンス成分材料、又は非エレクトロルミネッセンス成分材料及びエレクトロルミネッセンス成分材料の混合物を含む混合物から形成される固体ペレットは、有機層を作製するために物理的蒸着源に入れることができる。かかる固結ペレットは、物理的蒸着装置において使用することができる。
【0246】
一態様では、本発明は有機材料の圧縮ペレットから、OLEDの一部を形成する有機層を基板上に作製する方法を提供する。
【0247】
本発明の材料を堆積させる好ましい方法の1つは、米国特許出願公開第2004/0255857号明細書及び米国特許出願第10/945,941号明細書に記載されているが、この場合、本発明の材料の各々を蒸発させるために異なる蒸発源(source evaporators)が使用される。第2の好ましい方法は、温度制御された材料供給経路に沿って材料が計量供給される(metered)フラッシュ蒸発を利用する。このような好ましい方法は、以下の本発明の譲受人に譲渡された(co-assigned)特許出願に記載されている:米国特許出願第10/784,585号明細書、米国特許出願第10/805,980号明細書、米国特許出願第10/945,940号明細書、米国特許出願第10/945,941号明細書、米国特許出願第11/050,924号明細書、及び米国特許出願第11/050,934号明細書。この第2の方法を用いる場合、各々の材料を異なる蒸発源を用いて蒸発させても、又は固体材料を混合した後に、同一の蒸発源を用いて蒸発させてもよい。
【0248】
<封止>
大抵のOLEDデバイスは、水分及び/又は酸素に敏感であるため、一般に不活性雰囲気(例えば窒素又はアルゴン)中で、乾燥剤(例えばアルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、クレイ、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、金属硫酸塩、又は金属ハロゲン化物及び金属過塩素酸塩)と共に密封される。封止及び乾燥のための方法としては、米国特許第6,226,890号明細書に記載される方法が挙げられるが、これに限定されない。
【0249】
<OLEDデバイス設計基準>
フルカラーディスプレイに対しては、LELの画素化が必要とされ得る。このLELの画素化堆積は、シャドーマスク、一体化シャドーマスク(米国特許第5,294,870号明細書)、ドナーシートからの空間的に限定された染料熱転写(米国特許第5,688,551号明細書、同第5,851,709号明細書、及び同第6,066,357号明細書)、並びにインクジェット法(米国特許第6,066,357号明細書)を用いて行なわれる。
【0250】
本発明のOLEDでは、その発光特性の向上を望むのであれば、そのために既知の様々な光学的効果を利用することができる。これは、層の厚さを最適化して光の透過を最大にすること、誘電体ミラー構造を設けること、反射性電極の代わりに光吸収性電極にすること、グレア防止用若しくは反射防止用コーティングをディスプレイ上に設けること、偏光媒体をディスプレイ上に設けること、又は色フィルタ、減光フィルタ、若しくは色変換フィルタをディスプレイ上に設けることを含む。フィルタ、偏光板、及びグレア防止用又は反射防止用コーティングは、特にOLEDの上に、又はOLEDの一部として設けることができる。
【0251】
本発明のOLEDデバイスでは、その特性の向上を望むのであれば、そのために既知の様々な光学的効果を利用することができる。これは、層の厚さを最適化して光の透過を最大にすること、誘電体ミラー構造を設けること、反射性電極の代わりに光吸収性電極にすること、グレア防止用若しくは反射防止用コーティングをディスプレイ上に設けること、偏光媒体をディスプレイ上に設けること、又は色フィルタ、減光フィルタ、若しくは色変換フィルタをディスプレイ上に設けることを含む。フィルタ、偏光板、及びグレア防止用又は反射防止用コーティングは、特にカバーの上に、又はカバーの一部として設けることができる。
【0252】
本発明の実施形態により、良好な輝度効率、良好な動作安定性を有し、且つ駆動電圧が低減したELデバイスが提供され得る。本発明の実施形態では、電力消費(consumption requirements)がより少ないため、電池と共に使用する場合、電池寿命を延長することができる。
【実施例】
【0253】
<実験例>
Inv−1の調製に必要とされる出発物質である、リチウム2−(1,10−フェナントロリン−2−イル)−フェノレート(5)の合成をスキーム1に概略的に説明する。
【0254】
【化50】

【0255】
2−クロロ−1,10−フェナントロリン(1):
2−クロロ−1,10−フェナントロリンを、B. E. Halcrow, Wm. O. Kermack; Journal of the Chemical Society (1946), 155-7の手順に従って、1,10−フェナントロリンから調製し、十分な収率で単離した。
【0256】
2−(2−メトキシフェニル)−1,10−フェナントロリンヒドロクロリド・クロリド(Hydrochloride Chloride)(3):
2−クロロ−1,10−フェナントロリン(5.9g、27.5mmol)、2−メトキシフェニルボロン酸(2)(5g、33mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1g、0.825mmol)、2M Na2CO3(33mL、66mmol)、及びエタノール(8mL)を、トルエン(70mL)中に懸濁し、よく攪拌しながら24時間100℃に加熱した。この期間が終了した時点で、反応物を冷却し、酢酸エチル(200mL)で希釈して、水層を流出させた。有機層を水(3×100mL)及び断続的にブラインで洗浄し、形成されるエマルションを溶解した(break up)。有機層をセライトパッドを通して濾過し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して油を得た。この油をCH2Cl2(20mL)中に溶解させ、ジエチルエーテル(150mL)を添加した。よく攪拌しながら、濃HClの20%エタノール溶液(20mL)を添加した。黄色の2−(2−メトキシフェニル)−1,10−フェナントロリンヒドロクロリド・クロリドを濾過して、エーテルで洗浄し、風乾した。収量:9.7g。
【0257】
2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,10−フェナントロリン(4):
濃HCl(17.6mL)及びピリジン(16mL)を室温で混合した。得られた溶液を、窒素を溶液表面上に通しながら砂浴上で加熱し、蒸留物をディーン・スタークトラップに回収した。反応器の内部温度を1時間かけて215℃〜220℃まで上昇させた。溶液を140℃まで冷却した後、2−(2−メトキシフェニル)−1,10−フェナントロリンヒドロクロリド・クロリド(6g、18.59mmol)を添加した。よく攪拌しながら、得られた溶液の温度を再度215℃〜220℃まで上昇させ、この温度で3時間保持した。次いで、溶液を100℃に冷却し、慎重に水(10mL)で処理した後、最終的に過剰の水(70mL)中に注ぎ入れて、ゴム状固体を沈殿させた。よく攪拌しながら、溶液のpHを固体Na2CO3を用いて6〜7に調整した。この橙色の固体を濾過し、水でよく洗浄して、乾燥させた。2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,10−フェナントロリンの収量は4.6gであった。
【0258】
リチウム2−(1,10−フェナントロリン−2−イル)−フェノレート(5):
2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,10−フェナントロリン(4)(20g、73.45mmol)をテトラヒドロフラン中に溶解させて、よく攪拌しながらリチウムt−ブトキシド(5.65g、88.14mmol)で処理した。沈殿した生成物を反応混合物中、室温で1時間攪拌し、反応を完了させた。リチウム2−(1,10−フェナントロリン−2−イル)−フェノレートを濾過し、ジエチルエーテルでよく洗浄して、風乾させた。収量:21g。
【0259】
実施例1(経路A):溶媒中での本発明の化合物Inv−1の合成:
【0260】
【化51】

【0261】
リチウムキノレート(6)(3g、19.86mmol)及びリチウム2−(1,10−フェナントロリン−2−イル)−フェノレート(5)(2.76g、9.92mmol)の混合物を、オルトジクロロベンゼン(50mL)中で45分間穏やかに還流した。この淡黄色の溶液を冷却し、フラスコの壁をこすることにより結晶化を誘起した。Inv−1の結晶を濾過し、エーテルでよく洗浄して、乾燥させた。生成物Inv−1の収量:4.0g。デバイスの製造において使用する前に、Inv−1を290℃/10-3mmHgで昇華させた。
【0262】
実施例1(経路B):直接昇華による本発明の化合物Inv−1の代替的合成:
リチウムキノレート(5)(1.5g、9.93mmol)及びリチウム2−(1,10−フェナントロリン−2−イル)−フェノレート(6)(1.4g、4.96mmol)を乳鉢及び乳棒で粉砕し、均質混合物とした。次いで、この材料混合物を290℃/10-3mmHgで昇華させて、1.5gのInv−1を得た。
【0263】
実施例2(経路B):直接昇華による本発明の化合物Inv−5の合成:
リチウムペンタフルオロフェノレート(1g、1.32mmol)及びリチウム2−(1,10−フェナントロリン−2−イル)−フェノレート(6)(0.37g、0.66mmol)を乳鉢及び乳棒で粉砕し、均質混合物とした。次いで、この材料混合物を235℃/10-3mmHgで昇華させて、0.2gのInv−5を得た。
【0264】
実施例3:デバイス3.1〜3.4の作製
一連のELデバイス(3.1〜3.4)を以下の方法で組み立てた:
1. 85nmのインジウム−スズ酸化物(ITO)の層でコーティングしたガラス基板をアノードとして、順に、市販の界面活性剤中で超音波処理し、脱イオン水でリンスし、約1分間酸素プラズマに曝露した。
2. 米国特許第6,208,075号明細書に記載されるようなCHF3のプラズマ支援堆積によって、ITO上に1nmのフッ化炭素(CFx)正孔注入層(HIL)を堆積させた。
3. 次いで、正孔輸送材料4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)の層を、75nmの厚さに堆積させた。
4. ホスト材料P−1及び1.5体積%のFD−54に相当する20nmの発光層(LEL)を次に堆積させた。
5. Li66及びP−1の混合物(1:1)の35nmの電子輸送層(ETL)を、LEL上に真空蒸着した。
6. 表1に示すようなLi66及びInv−1の電子注入層(EIL)を、ETL上に真空蒸着した。
7. 最後に、100nmのアルミニウムの層をEIL上に堆積させて、カソードを形成した。
【0265】
上記の手順によってELデバイスの堆積が完了した。次いで、デバイスを周囲環境から保護するため、乾燥グローブボックスで密封包装した。
【0266】
このように形成したデバイスを、20mA/cm2の動作電流で輝度効率について試験したが、その結果を表1に報告する。T70は、初期輝度を元の値の70%まで低下させるのにかかる時間である。
【0267】
【表1】

【0268】
ETLがLi66及びP−1の混合物(1:1)である場合、Inv−1は種々のEIL厚さで、比較用Li66(Li6Q6 comparisons)と比較して、より低い駆動電圧だけでなく、より高い輝度効率及びより良好なT70フェード(fade)性能をももたらすことが表1から明らかである。
【0269】
実施例4:デバイス4.1〜4.4の作製
一連のELデバイス(4.1〜4.4)を、工程5のETL混合物においてLi66の代わりにInv−1を使用した以外は、実施例3と同様の方法で組み立てた。結果を表2に報告する。
【0270】
【表2】

【0271】
ETLがInv−1及びP−1の混合物(1:1)であり、且つEILがLi66又はInv−1のいずれかである場合、本発明の化合物は、駆動電圧及び輝度効率は同様であるが、実施例2.1及び実施例2.2の比較用Li66よりもはるかに優れたT70フェード性能をもたらすことが表2から明らかである。
【0272】
実施例5:デバイス5.1〜5.4の作製
一連のELデバイス(5.1〜5.4)を、工程5のETLに、実施例5.1〜実施例5.3においてはInv−1を使用し、実施例5.4〜実施例5.6においてはLi66を比較目的で使用した以外は、実施例3と同様の方法で組み立てた。工程6のEILにおいてはLiF(5nm)を使用した。結果を表3に報告する。
【0273】
【表3】

【0274】
EILがLiFであり、且つETLがInv−1である場合、本発明の化合物は様々なETL厚さで、比較用Li66よりも低い駆動電圧及び高い輝度効率をもたらすことが表3から明らかである。
【0275】
実施例6:デバイス6.1〜6.9の作製
一連のELデバイス(6.1〜6.9)を下記に詳述する方法で組み立てた。実施例6.1〜実施例6.3はEILにLi66を組み込んだ比較用デバイスであり、一方で6.4〜6.6はInv−1をEILとした本発明の実施例の組であり、6.7〜6.9はInv−2をEILとした本発明の実施例の別の組である。比較のために、各々の組は同じレベルのEILを含有する。結果を表4に報告する。
【0276】
85nmのインジウム−スズ酸化物(ITO)の層でコーティングしたガラス基板をアノードとして、順に、市販の界面活性剤中で超音波処理し、脱イオン水でリンスし、約1分間酸素プラズマに曝露した。
1. 米国特許第6,208,075号明細書に記載されるようなCHF3のプラズマ支援堆積によって、ITO上に1nmのフッ化炭素(CFx)正孔注入層(HIL1)を堆積させた。
2. 次いで、ジピラジノ[2,3−f:2’,3’−h]キノキサリンヘキサカルボニトリルの正孔注入層(HTL2)を10nmの厚さに堆積させた。
3. 次いで、正孔輸送材料4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)の層を、85nmの厚さに堆積させた。
4. P−1中1.5%のFD−54の20nmの発光層(LEL)を次に堆積させた。
5. Li66及びP−1の混合物(1:1)の35nmの電子輸送層(ETL)を、LEL上に真空蒸着した。
6. 表4に示すような電子注入材料(EIL)の層を、ETL上に真空蒸着した。
7. 最後に、100nmのアルミニウムの層を堆積させて、カソード層を形成した。
【0277】
上記の手順によってELデバイスの堆積が完了した。次いで、デバイスを周囲環境から保護するため、乾燥グローブボックスで密封包装した。
【0278】
このように形成したデバイスを、20mA/cm2の動作電流で輝度効率について試験したが、その結果を表4に報告する。
【0279】
【表4】

【0280】
平均すると、EIL中に本発明の化合物Inv−1及びInv−2を組み込んだデバイスは、Li66をEILとした比較用デバイスよりも低い駆動電圧及び高い輝度効率という点で優れた性能をもたらすことが表4から明らかである。さらに、より高いEILレベルでは、Inv−1及びInv−2の優位性は明らかに顕著である。
【0281】
部品表
100 OLED
110 基板
120 アノード
130 正孔注入層(HIL)
132 正孔輸送層(HTL)
134 発光層(LEL)
135 正孔ブロック層(HBL)
136 電子輸送層(ETL)
138 電子注入層(EIL)
140 カソード
150 電圧/電流源
160 電気コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードと、アノードとを備え、且つそれらの間に、第1のサブユニット及び第2のサブユニットを含む、中性の電荷を有する混合クラスター化合物を含有する層を有するOLEDデバイスであって、前記第1のサブユニットが、アニオン性ヒドロキシ基を持つ窒素含有複素環配位子のアルカリ金属塩を含み、且つ前記第2のサブユニットが、該第1のサブユニットとは異なる有機アルカリ金属塩を含み、両方のサブユニットのアルカリ金属カチオンが同じであるOLEDデバイス。
【請求項2】
前記カソードと、前記アノードとの間に配置される発光層をさらに備え、且つ前記クラスター化合物を含有する層が、該発光層と、該カソードとの間に配置される請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項3】
前記アルカリ金属カチオンがリチウムである請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項4】
前記クラスター化合物の前記第1のサブユニットが、式(I):
【化1】

(式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、且つZは各々の場合で独立して、少なくとも2つの縮合芳香環を有する核を完成させる原子を表す)に従うものである請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項5】
前記クラスター化合物の前記第1のサブユニットが、式(II):
【化2】

(式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、且つR1〜R6は個々に水素、又はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シアノ基、若しくは複素環基を表すが、但し隣接する任意の2つのR基が結合して、環化した飽和環系又は芳香環系を形成してもよい)に従うものである請求項4に記載のOLEDデバイス。
【請求項6】
前記第1のサブユニットが、式(III):
【化3】

(式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、R7〜R10は個々に水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シアノ基、又は複素環基を表すが、但し隣接する任意の2つのR基、又は具体的にはR7及びAが結合して、環化した飽和環系又は芳香環系を形成してもよく、且つAは5員、6員、7員又は8員環系を完成させるのに必要な原子を表す)に従うものである請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項7】
前記第1のサブユニットが、式(IV):
【化4】

(式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、且つR7〜R14は個々に水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シアノ基、又は複素環基を表すが、但し隣接する任意の2つのR基、又は具体的にはR7及びR14が結合して、環化した飽和環系又は芳香環系を形成してもよい)に従うものである請求項6に記載のOLEDデバイス。
【請求項8】
前記第1のサブユニットが、式(V):
【化5】

(式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、且つR7〜R10及びR15〜R21は個々に水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シアノ基、又は複素環基を表すが、但し隣接する任意の2つのR基、又は具体的にはR7及びR21が結合して、環化した飽和環系又は芳香環系を形成してもよい)に従うものである請求項7に記載のOLEDデバイス。
【請求項9】
前記第2のサブユニットが、式(III):
【化6】

(式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、R7〜R10は個々に水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シアノ基、又は複素環基を表すが、但し隣接する任意の2つのR基、又は具体的にはR7及びAが結合して、環化した飽和環系又は芳香環系を形成してもよく、且つAは5員、6員、7員又は8員環系を完成させるのに必要な原子を表す)である請求項4に記載のOLEDデバイス。
【請求項10】
前記第2のサブユニットの前記有機アルカリ金属塩が、
(i)前記第1のサブユニットとは異なる、アニオン性ヒドロキシ基を持つ窒素含有複素環配位子のアルカリ金属塩、又は
(ii)フェノール若しくはナフトールのアルカリ金属塩のいずれかである請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項11】
第1のサブユニット及び第2のサブユニットを含む、中性の電荷を有する混合クラスター化合物であって、前記第1のサブユニットが、アニオン性ヒドロキシ基を持つ窒素含有複素環配位子のアルカリ金属塩を含み、且つ前記第2のサブユニットが、該第1のサブユニットとは異なる有機アルカリ金属塩を含み、両方のサブユニットのアルカリ金属カチオンが同じである混合クラスター化合物。
【請求項12】
前記アルカリ金属カチオンがリチウムである請求項11に記載のクラスター化合物。
【請求項13】
前記第2のサブユニットの前記有機アルカリ金属塩が、アニオン性ヒドロキシ基を持つ窒素含有複素環配位子のアルカリ金属塩である請求項11に記載のクラスター化合物。
【請求項14】
前記第1のサブユニットが、式(I):
【化7】

(式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、且つZは各々の場合で独立して、少なくとも2つの縮合芳香環を有する核を完成させる原子を表す)に従うものである請求項11に記載のクラスター化合物。
【請求項15】
前記第1のサブユニットが、式(II):
【化8】

(式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、且つR1〜R6は個々に水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シアノ基、又は複素環基を表すが、但し隣接する任意の2つのR基が結合して、環化した飽和環系又は芳香環系を形成してもよい)に従うものである請求項14に記載のクラスター化合物。
【請求項16】
前記第1のサブユニットが、式(III):
【化9】

(式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、R7〜R10は個々に水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シアノ基、又は複素環基を表すが、但し隣接する任意の2つのR基、又はR7及びAが結合して、環化した飽和環系又は芳香環系を形成してもよく、且つAは5員、6員、7員又は8員環系を完成させるのに必要な原子を表す)に従うものである請求項11に記載のクラスター化合物。
【請求項17】
前記第1のサブユニットが、式(IV):
【化10】

(式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、且つR7〜R14は個々に水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シアノ基、又は複素環基を表すが、但し隣接する任意の2つのR基、又は具体的にはR7及びR14が結合して、環化した飽和環系又は芳香環系を形成してもよい)に従うものである請求項16に記載のクラスター化合物。
【請求項18】
前記第1のサブユニットが、式(V):
【化11】

(式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、且つR7〜R10及びR15〜R21は個々に水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シアノ基、又は複素環基を表すが、但し隣接する任意の2つのR基、又は具体的にはR7及びR21が結合して、環化した飽和環系又は芳香環系を形成してもよい)に従うものである請求項17に記載のクラスター化合物。
【請求項19】
前記第2のサブユニットが、式(III):
【化12】

(式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、R7〜R10は個々に水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シアノ基、又は複素環基を表すが、但し隣接する任意の2つのR基、又は具体的にはR7及びAが結合して、環化した飽和環系又は芳香環系を形成してもよく、且つAは5員、6員、7員又は8員環系を完成させるのに必要な原子を表す)である請求項14に記載のクラスター化合物。
【請求項20】
前記第2のサブユニットが、フェノール又はナフトールのアルカリ金属塩である請求項11に記載のクラスター化合物。
【請求項21】
請求項11に記載の混合クラスター化合物を調製する方法であって、前記個々のサブユニットに対応する化合物を、少なくとも100℃の沸点を有する非反応性有機溶媒中で一緒に加熱する混合クラスター化合物の調製方法。
【請求項22】
請求項11に記載の混合クラスター化合物を調製する方法であって、前記個々のサブユニットに対応する化合物を固体状態で一緒に加熱する混合クラスター化合物の調製方法。
【請求項23】
前記個々のサブユニットに対応する化合物を固体状態で一緒に加熱し、且つ前記混合クラスター化合物を昇華により単離する請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−505696(P2011−505696A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535968(P2010−535968)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/012991
【国際公開番号】WO2009/073088
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(510048417)グローバル・オーエルイーディー・テクノロジー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (95)
【氏名又は名称原語表記】GLOBAL OLED TECHNOLOGY LLC.
【住所又は居所原語表記】1209 Orange Street, Wilmington, Delaware 19801, United States of America
【Fターム(参考)】