説明

アルカリ電池用電解液及びアルカリ電池

【課題】副反応により生じる水素ガスの発生や、亜鉛の析出時に発生するデンドライト、亜鉛の形状変化を抑制して、長期の充放電サイクル及び優れた充放電効率を実現し得るアルカリ電池用電解液及びアルカリ電池を提供する。
【解決手段】アルカリ電池用電解液は、分子内に炭素原子を2個以上有し且つヒドロキシル基を1個以上有する有機物を少なくとも含む。
アルカリ電池は、分子内に炭素原子を2個以上有し且つヒドロキシル基を1個以上有する有機物を少なくとも含むアルカリ電池用電解液を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ電池用電解液及びアルカリ電池に関する。更に詳細には、本発明は、空気−亜鉛二次電池やニッケル−亜鉛二次電池などのアルカリ二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気汚染や地球温暖化に対処するため、二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。
自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵となるモータ駆動用二次電池の開発が盛んに行われている。
モータ駆動用二次電池としては、高いエネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。
しかしながら、電気自動車では、ガソリン自動車並みの性能とともに、1充電当たりの航続距離がガソリン自動車に匹敵することが求められており、従来のリチウムイオン二次電池の技術的改善では、目標到達が非常に難しいことが指摘されている。
そこで、リチウムイオン二次電池を凌駕するより高いエネルギー密度化を実現し得る電池として、金属空気電池が注目を浴びている。
【0003】
ところが、金属空気電池は、充放電サイクルの寿命が非常に短いという問題点がある。
例えば、水系電解液を用いた亜鉛空気電池においては、充放電サイクルの寿命が短い原因として、副反応により生じる水素ガスの発生、亜鉛の析出時に発生するデンドライトや形状変化が指摘されている。
【0004】
従来、亜鉛の形状変化を抑制することを目的として、電解液にメタノールを添加することが提案されている(非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M.A.Dzieciuch,et al.,“Rechargeable Cells with Modified MnO2 Cathodes” Journal of The Electrochemical Society,135,10,(1988).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記非特許文献1に記載の二酸化マンガン−亜鉛二次電池にあっては、電解液にメタノールを添加することで亜鉛の形状変化を抑制することができているものの、メタノールの添加による水素ガスの発生の抑制については何ら記載されていない。そこで、本発明者らが、確認したところ、電解液にメタノールを添加すると水素ガスの発生が起こりやすくなっているという問題点があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的とするところは、副反応により生じる水素ガスの発生や、亜鉛の析出時に発生するデンドライト、亜鉛の形状変化を抑制して、長期の充放電サイクル及び優れた充放電効率を実現し得るアルカリ電池用電解液及びアルカリ電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた。
そして、その結果、分子内に炭素原子を2個以上有し且つヒドロキシル基を1個以上有する有機物を少なくとも含む構成とすることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のアルカリ電池用電解液は、分子内に炭素原子を2個以上有し且つヒドロキシル基を1個以上有する有機物を少なくとも含む。
【0010】
また、本発明のアルカリ電池は、上記本発明のアルカリ電池用電解液を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分子内に炭素原子を2個以上有し且つヒドロキシル基を1個以上有する有機物を少なくとも含む構成とした。
そのため、副反応により生じる水素ガスの発生や、亜鉛の析出時に発生するデンドライト、亜鉛の形状変化を抑制して、長期の充放電サイクル及び優れた充放電効率を実現し得るアルカリ電池用電解液及びアルカリ電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】各例の試験セルを模式的に示す断面図である。
【図2】実施例1〜実施例6、比較例1及び比較例2の充放電試験におけるサイクル特性評価結果(放電容量に対する充電容量の割合から充放電効率を算出し、充放電効率が120%以上又は80%以下になるまで充放電試験のサイクル試験を行った。)を示すグラフである。
【図3】実施例1〜実施例6、比較例1及び比較例2の水素過電圧測定結果(−2.00Vでの水素発生による電流値)を示すグラフである。
【図4】実施例2、実施例7及び実施例8の充放電試験におけるサイクル特性評価結果(放電容量に対する充電容量の割合から充放電効率を算出し、充放電効率が120%以上又は80%以下になるまで充放電試験のサイクル試験を行った。)を示すグラフである。
【図5】実施例4、実施例9及び実施例10の充放電試験におけるサイクル特性評価結果(放電容量に対する充電容量の割合から充放電効率を算出し、充放電効率が120%以上又は80%以下になるまで充放電試験のサイクル試験を行った。)を示すグラフである。
【図6】実施例6及び実施例11の充放電試験におけるサイクル特性評価結果(放電容量に対する充電容量の割合から充放電効率を算出し、充放電効率が120%以上、または80%以下になるまで充放電試験のサイクル試験を行った。)を示すグラフである。
【図7】実施例12〜15における充放電試験(5サイクル)後の亜鉛負極表面の走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係るアルカリ電池用電解液及びアルカリ電池について詳細に説明する。
【0014】
まず、本発明の一実施形態に係るアルカリ電池用電解液について詳細に説明する。
本実施形態のアルカリ電池用電解液は、アルカリ電解液の他に、分子内に炭素原子を2個以上有し且つヒドロキシル基を1個以上有する有機物を少なくとも含むものである。
このような構成にすると、空気−亜鉛二次電池やニッケル−亜鉛二次電池などのアルカリ二次電池に適用したとき、副反応により生じる水素ガスの発生や、亜鉛の析出時に発生するデンドライト、亜鉛の形状変化を抑制し得るものとなる。その結果、本発明のアルカリ電池用電解液を適用したアルカリ電池は、長期の充放電サイクル及び優れた充放電効率を実現し得る。
【0015】
以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0016】
アルカリ電解液としては、例えば、水にアルカリ塩を溶解させたものを挙げることができる。アルカリ塩としては、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)水酸化リチウム(LiOH)などを好適例として挙げることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、例えば、亜鉛又は亜鉛化合物を負極活物質とする負極と酸化還元反応が繰り返し実施できればよく、これらに限定されるものではない。
【0017】
また、有機物としては、分子内に炭素原子を2個以上有し且つヒドロキシル基を1個以上有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、炭素数2〜6の一価アルコールや二価アルコール、三価アルコール、6価以下の多価アルコールを挙げることができる。アルコールの炭素数が6を超えると、電解液と溶解し難くなる傾向があり、所望の効果を発揮しにくい。つまり、炭素数が6以下であると、アルカリ水溶液と有機物とを任意の割合で混合することができ、所望とする電池系に合わせ得たアルカリ電解液を容易に適用することができる。一方、炭素数が1個であるメタノールについては充電時に水素ガスが発生する副反応が起こり易い。また、ヒドロキシル基を6個以上有するものであると、有機物の水素結合力が増す傾向があり、アルカリ水溶液に添加した場合に、アルカリ電解液の粘度が増加する。従って、電解液のイオン伝導度の低下を抑制して、電池の内部抵抗の増加を抑制するという観点から、分子内に有するヒドロキシル基は5個以下であることが好ましい。
【0018】
なお、有機物としては、直鎖状有機物からなることが好ましい。直鎖状有機物とすることで、ヒドロキシル基の酸解離定数を下げることができ、ヒドロキシル基がアルカリ中で安定に存在することが可能となるため、長期の充放電サイクルにおいて十分な効果を発揮することができる。
【0019】
炭素数2〜6の一価アルコールとしては、例えば、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2,3−ジメチル−1−ブタノール、2,2−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノールなどの1位の位置の炭素原子にヒドロキシル基を有する鎖状構造のアルコール等、2−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、2−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノールなどの2位の位置の炭素原子にヒドロキシル基を有する鎖状構造のアルコール等、3−ペンタノール、3−ヘキサノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノールなどの3位の位置の炭素原子にヒドロキシル基を有する鎖状構造のアルコール等、シクロペンタノール、シクロペンチルメタノール、1−メチル−シクロヘキサノール、2−メチル−シクロヘキサノール、3−メチル−シクロヘキサノールなどの環状構造のアルコールを挙げることができる。
【0020】
炭素数2〜6の二価アルコールや三価アルコールとしては、例えば、上述した一価アルコールの炭素原子に結合した水素原子をヒドロキシル基に置換した構造を有するものを挙げることができる。典型例としては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2,3−プロパントリオールなどを挙げることができる。
【0021】
また、本実施形態のアルカリ電池用電解液における有機物としては、2位の位置の炭素原子にヒドロキシル基が結合しているものを適用することが好ましい。
このような構成にすると、副反応による水素発生をより抑制しつつ、長期の充放電サイクル及び優れた充放電効率を実現し得る。
具体的な好適例としては、2−プロパノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2,3−プロパントリオールなどを挙げることができる。しかしながら、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0022】
更に、本実施形態のアルカリ電池用電解液における有機物としては、二価アルコールを適用することが好ましい。
このような構成にすると、副反応による水素発生を更に抑制することができる。
具体的な好適例としては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオールなどを挙げることができる。特に、1,2−エタンジオール(エチレングリコール)を適用することが好ましい。
【0023】
本実施形態のアルカリ電池用電解液における有機物の濃度としては、0.5〜5mol/L(以下「mol/L」を「M」と記載することがある。)であることが好ましい。0.5Mより低い濃度では、有機物の添加による亜鉛放電生成物の溶解性を制御する効果が殆ど得られないおそれがある。そのため、充放電のサイクルによる亜鉛の形状変化を抑制することができないおそれがある。また、5Mより高い濃度では、水酸化カリウムなどのアルカリ塩の溶解度が低下するために、高い伝導性を有する電解液の調整が困難となり、電池の内部抵抗が増加するおそれがある。
【0024】
次に、本発明の一実施形態に係るアルカリ電池について、アルカリ電池としてアルカリ二次電池を例に挙げて詳細に説明する。
本実施形態のアルカリ二次電池は、正極と、亜鉛及び亜鉛化合物(例えば酸化亜鉛など。)の一方又は双方を負極活物質として含む負極と、上述した電解液を含む電解質とを有するものである。
なお、電解質としては、上述した電解液のみからなるものであってもよく、電解液を保持し得る高分子材料を含んでいてもよい。
このような構成にすると、空気−亜鉛二次電池やニッケル−亜鉛二次電池などのアルカリ二次電池に適用したとき、副反応により生じる水素ガスの発生や、亜鉛の析出時に発生するデンドライト、亜鉛の形状変化を抑制し得る。その結果、長期の充放電サイクル及び優れた充放電効率を実現し得る。
【0025】
以下、上述した電解液以外の各構成要素について詳細に説明する。
【0026】
正極としては、炭素材料と酸素還元触媒と結着剤で構成された空気極や、オキシ水酸化ニッケルを主たる成分とする金属水酸化物と発泡ニッケルなどの集電体とで構成されたニッケル極などを好適例として挙げることができる。しかしながら、これに限定されるものではなく、アルカリ二次電池の正極として用いられる従来公知の材料を適宜用いることができる。
【0027】
負極としては、エネルギー密度や充放電効率、サイクル寿命を考慮すると、亜鉛及び亜鉛化合物(例えば酸化亜鉛など。)のいずれか一方又は双方を負極活物質として含むものであることが良い。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
<電解液の作製(1M KOH+4M エタノール水溶液)>
1M KOHと、4M エタノールの混合水溶液となるように、4M KOH水溶液、エタノール及びイオン交換水を、メスフラスコ中で計量、混合し、これを電解液とした。
【0030】
<電池の作製(1M KOH+4M エタノール水溶液)>
まず、正極を作製した。発泡ニッケルを集電体とし、これにオキシ水酸化ニッケルペーストを定着させ、成型して、本例で用いる正極とした。
次いで、負極を作製した。負極活物質としての亜鉛板(厚さ:1mm)を所定の大きさに切り出し、表面をエタノールで洗浄して、本例で用いる負極とした。
なお、Hg/HgO電極を参照電極とした。
しかる後、これらを用いて、図1に示すような本例の試験セルを作製した。
【0031】
すなわち、図1は試験セルを模式的に示した断面図である。1は正極であり、2は負極であり、3は電解液であり、10は参照電極である。試験セルは、円筒形の躯体11の底部に負極2を配置し、底部ホルダー12を締め付けて装着した。次いで、負極2を装着した円筒形の躯体11の内部に電解液3を満たし、正極1と参照電極10を装着した蓋13を円筒形の躯体11に回転させ、装着し、組み立てた。
【0032】
[充放電試験]
充放電試験は、試験セルの開回路電圧が安定するのを待って、電気化学測定システムを用い、−1.18V(対Hg/HgO、以下同様。)〜−1.46Vの電圧範囲、負極面積当たり5mA/cmの電流値で10分間の休止をはさみ、室温下、放電から開始して充放電試験を行った。放電容量に対する充電容量の割合から充放電効率を算出し、充放電効率が120%以上又は80%以下になるまで充放電試験のサイクルを繰返した。図2に充放電試験のサイクル特性評価結果を示す。
【0033】
[水素過電圧測定]
水素過電圧は、試験セルの開回路電圧が安定するのを待って、電気化学測定システムを用い、開回路電圧から1mV/secの走査速度で−2.00Vまで電位を走査する方法で行った。−2.00Vでの水素発生による電流値を図3に示す。
【0034】
(実施例2)
<電解液の作製(1M KOH+4M 1−プロパノール水溶液)>
1M KOHと4M 1−プロパノールの混合水溶液となるように、4M KOH水溶液、1−プロパノール及びイオン交換水を、メスフラスコ中で計量、混合し、これを電解液とした。
【0035】
<電池の作製(1M KOH+4M 1−プロパノール水溶液)>
実施例1の電解液に代えて、この電解液を使用した他は、実施例1と同様のセル構成とした。
【0036】
[充放電試験]
実施例1と同様の方法で充放電試験を実施した。図2及び図4に充放電試験のサイクル特性評価結果を示す。
【0037】
[水素過電圧測定]
実施例1と同様の方法で水素過電圧測定を実施した。図3に−2.00Vでの水素発生による電流値を示す。
【0038】
(実施例3)
<電解液の作製(1M KOH+4M 2−プロパノール水溶液)>
1M KOHと4M 2−プロパノールの混合水溶液となるように、4M KOH水溶液、2−プロパノール及びイオン交換水を、メスフラスコ中で計量、混合し、これを電解液とした。
【0039】
<電池の作製(1M KOH+4M 2−プロパノール水溶液)>
実施例1の電解液に代えて、この電解液を使用した他は、実施例1と同様のセル構成とした。
【0040】
[充放電試験]
実施例1と同様の方法で充放電試験を実施した。図2に充放電試験のサイクル特性評価結果を示す。
【0041】
[水素過電圧測定]
実施例1と同様の方法で水素過電圧測定を実施した。図3に−2.00Vでの水素発生による電流値を示す。
【0042】
(実施例4)
<電解液の作製(1M KOH+4M 1,2−エタンジオール水溶液)>
1M KOHと4M 1,2−エタンジオールの混合水溶液となるように、4M KOH水溶液、1,2−エタンジオール及びイオン交換水を、メスフラスコ中で計量、混合し、これを電解液とした。
【0043】
<電池の作製(1M KOH+4M 1,2−エタンジオール水溶液)>
実施例1の電解液に代えて、この電解液を使用した他は、実施例1と同様のセル構成とした。
【0044】
[充放電試験]
実施例1と同様の方法で充放電試験を実施した。図2及び図5に充放電試験のサイクル特性評価結果を示す。
【0045】
[水素過電圧測定]
実施例1と同様の方法で水素過電圧測定を実施した。図3に−2.00Vでの水素発生による電流値を示す。
【0046】
(実施例5)
<電解液の作製(1M KOH+4M 1,2−プロパンジオール水溶液)>
1M KOHと4M 1,2−プロパンジオールの混合水溶液となるように、4M KOH水溶液、1,2−プロパンジオール及びイオン交換水を、メスフラスコ中で計量、混合し、これを電解液とした。
【0047】
<電池の作製(1M KOH+4M 1,2−プロパンジオール水溶液)>
実施例1の電解液に代えて、この電解液を使用した他は、実施例1と同様のセル構成とした。
【0048】
[充放電試験]
実施例1と同様の方法で充放電試験を実施した。図2に充放電試験のサイクル特性評価結果を示す。
【0049】
[水素過電圧測定]
実施例1と同様の方法で水素過電圧測定を実施した。図3に−2.00Vでの水素発生による電流値を示す。
【0050】
(実施例6)
<電解液の作製(1M KOH+2M 1,2,3−プロパントリオール水溶液)>
1M KOHと2M 1,2,3−プロパントリオールの混合水溶液となるように、4M KOH水溶液、1,2,3−プロパントリオール及びイオン交換水を、メスフラスコ中で計量、混合し、これを電解液とした。
【0051】
<電池の作製(1M KOH+2M 1,2,3−プロパントリオール水溶液)>
実施例1の電解液に代えて、この電解液を使用した他は、実施例1と同様のセル構成とした。
【0052】
[充放電試験]
実施例1と同様の方法で充放電試験を実施した。図2に充放電試験のサイクル特性評価結果を示す。
【0053】
[水素過電圧測定]
実施例1と同様の方法で水素過電圧測定を実施した。図3に−2.00Vでの水素発生による電流値を示す。
【0054】
(比較例1)
<電解液の作製(1M KOH水溶液)>
1M KOHを電解液として使用した。
【0055】
<電池の作製(1M KOH水溶液)>
実施例1の電解液に代えて、1M KOHを電解液として使用した他は、実施例1と同様のセル構成とした。
【0056】
[充放電試験]
実施例1と同様の方法で充放電試験を実施した。図2に充放電試験のサイクル特性評価結果を示す。
【0057】
[水素過電圧測定]
実施例1と同様の方法で水素過電圧測定を実施した。図3に−2.00Vでの水素発生による電流値を示す。
【0058】
(比較例2)
<電解液の作製(1M KOH+4M メタノール水溶液)>
1M KOHと4M メタノールの混合水溶液となるように、4M KOH水溶液、メタノール及びイオン交換水を、メスフラスコ中で計量、混合し、これを電解液とした。
【0059】
<電池の作製(1M KOH+4M メタノール水溶液)>
実施例1の電解液に代えて、この電解液を使用した他は、実施例1と同様のセル構成とした。
【0060】
[充放電試験]
実施例1と同様の方法で充放電試験を実施した。図2に充放電試験のサイクル特性評価結果を示す。
【0061】
[水素過電圧測定]
実施例1と同様の方法で水素過電圧測定を実施した。図3に−2.00Vでの水素発生による電流値を示す。
【0062】
(実施例7)
<電解液の作製(1M KOH+2M 1−プロパノール水溶液)>
1M KOHと2M 1−プロパノールの混合水溶液となるように、4M KOH水溶液、1−プロパノール及びイオン交換水を、メスフラスコ中で計量、混合し、これを電解液とした。
【0063】
<電池の作製(1M KOH+2M 1−プロパノール水溶液)>
実施例1の電解液に代えて、この電解液を使用した他は、実施例1と同様のセル構成とした。
【0064】
[充放電試験]
実施例1と同様の方法で充放電試験を実施した。図4に充放電試験のサイクル特性評価結果を示す。
【0065】
(実施例8)
<電解液の作製(1M KOH+1M 1−プロパノール水溶液)>
1M KOHと1M 1−プロパノールの混合水溶液となるように、4M KOH水溶液、1−プロパノール及びイオン交換水を、メスフラスコ中で計量、混合し、これを電解液とした。
【0066】
<電池の作製(1M KOH+1M 1−プロパノール水溶液)>
実施例1の電解液に代えて、この電解液を使用した他は、実施例1と同様のセル構成とした。
【0067】
[充放電試験]
実施例1と同様の方法で充放電試験を実施した。図4に充放電試験のサイクル特性評価結果を示す。
【0068】
(実施例9)
<電解液の作製(1M KOH+2M 1,2−エタンジオール水溶液)>
1M KOHと2M 1,2−エタンジオールの混合水溶液となるように、4M KOH水溶液、1,2−エタンジオール及びイオン交換水を、メスフラスコ中で計量、混合し、これを電解液とした。
【0069】
<電池の作製(1M KOH+2M 1,2−エタンジオール水溶液)>
実施例1の電解液に代えて、この電解液を使用した他は、実施例1と同様のセル構成とした。
【0070】
[充放電試験]
実施例1と同様の方法で充放電試験を実施した。図5に充放電試験のサイクル特性評価結果を示す。
【0071】
(実施例10)
<電解液の作製(1M KOH+1M 1,2−エタンジオール水溶液)>
1M KOHと1M 1,2−エタンジオールの混合水溶液となるように、4M KOH水溶液、1,2−エタンジオール及びイオン交換水を、メスフラスコ中で計量、混合し、これを電解液とした。
【0072】
<電池の作製(1M KOH+1M 1,2−エタンジオール水溶液)>
実施例1の電解液に代えて、この電解液を使用した他は、実施例1と同様のセル構成とした。
【0073】
[充放電試験]
実施例1と同様の方法で充放電試験を実施した。図5に充放電試験のサイクル特性評価結果を示す。
【0074】
(実施例11)
<電解液の作製(1M KOH+1M 1,2,3−プロパントリオール水溶液)>
1M KOHと1M 1,2,3−プロパントリオールの混合水溶液となるように、4M KOH水溶液、1,2,3−プロパントリオール及びイオン交換水を、メスフラスコ中で計量、混合し、これを電解液とした。
【0075】
<電池の作製(1M KOH+1M 1,2,3−プロパントリオール水溶液)>
実施例1の電解液に代えて、この電解液を使用した他は、実施例1と同様のセル構成とした。
【0076】
[充放電試験]
実施例1と同様の方法で充放電試験を実施した。図6に充放電試験のサイクル特性評価結果を示す。
【0077】
(実施例12)
<電解液の作製(4M KOH+0.6M 1,2−プロパンジオール水溶液)>
4M KOHと0.6M 1,2−プロパンジオールの混合水溶液となるように、4M KOH水溶液、1,2−プロパンジオール及びイオン交換水を、メスフラスコ中で計量、混合し、これを電解液とした。
【0078】
<電池の作製(4M KOH+0.6M 1,2−プロパンジオール水溶液)>
実施例1の電解液に代えて、この電解液を使用した他は、実施例1と同様のセル構成とした。
【0079】
[走査電子顕微鏡観察]
上記作製した試験セルの開回路電圧が安定するのを待って、電気化学測定システムを用い、−1.18V〜−1.46Vの電圧範囲、負極面積当たり5mA/cmの電流値で10分間の休止をはさみ、室温下、放電から開始して充放電試験を行った。5サイクルの充放電試験の後に、電池を解体し、亜鉛負極を取り出してイオン交換水で洗浄した。洗浄後に減圧下で亜鉛負極を乾燥し、走査電子顕微鏡にて亜鉛負極表面の形状を観察した。走査電子顕微鏡写真を図7(a)に示す。
【0080】
(実施例13)
<電解液の作製(4M KOH+1.2M 1,2−プロパンジオール水溶液)>
4M KOHと1.2M 1,2−プロパンジオールの混合水溶液となるように、4M KOH水溶液、1,2−プロパンジオール及びイオン交換水を、メスフラスコ中で計量、混合し、これを電解液とした。
【0081】
<電池の作製(4M KOH+1.2M 1,2−プロパンジオール水溶液)>
実施例1の電解液に代えて、この電解液を使用した他は、実施例1と同様のセル構成とした。
【0082】
[走査電子顕微鏡観察]
実施例12と同様の条件で充放電試験を実施し、走査電子顕微鏡にて亜鉛負極表面の形状を観察した。走査電子顕微鏡写真を図7(b)に示す。
【0083】
(実施例14)
<電解液の作製(4M KOH+1.8M 1,2−プロパンジオール水溶液)>
4M KOHと1.8M 1,2−プロパンジオールの混合水溶液となるように、4M KOH水溶液、1,2−プロパンジオール及びイオン交換水を、メスフラスコ中で計量、混合し、これを電解液とした。
【0084】
<電池の作製(4M KOH+1.8M 1,2−プロパンジオール水溶液)>
実施例1の電解液に代えて、この電解液を使用した他は、実施例1と同様のセル構成とした。
【0085】
[走査電子顕微鏡観察]
実施例12と同様の条件で充放電試験を実施し、走査電子顕微鏡にて亜鉛負極表面の形状を観察した。走査電子顕微鏡写真を図7(c)に示す。
【0086】
(実施例15)
<電解液の作製(4M KOH+2.4M 1,2−プロパンジオール水溶液)>
4M KOHと2.4M 1,2−プロパンジオールの混合水溶液となるように、4M KOH水溶液、1,2−プロパンジオール及びイオン交換水を、メスフラスコ中で計量、混合し、これを電解液とした。
【0087】
<電池の作製(4M KOH+2.4M 1,2−プロパンジオール水溶液)>
実施例1の電解液に代えて、この電解液を使用した他は、実施例1と同様のセル構成とした。
【0088】
[走査電子顕微鏡観察]
実施例12と同様の条件で充放電試験を実施し、走査電子顕微鏡にて亜鉛負極表面の形状を観察した。走査電子顕微鏡写真を図7(d)に示す。
【0089】
図2の充放電試験のサイクル特性評価結果から、実施例1〜6の電解液は、1M KOHのみの比較例1に比べ優れたサイクル特性を示すことが分かる。更に、従来報告にあるメタノールを加えた比較例2に比べても優れたサイクル特性を示すことが分かる。
なお、図示しないが、実施例2は300サイクルに達し(図4参照。)、実施例4は100サイクルを超えた(図5参照。)。
【0090】
また、図3の−2.00Vにおける水素発生電流の測定結果から、本発明の電解液は、1M KOHのみの比較例1に比べて水素発生の電流値が小さいことが分かる。この結果から、亜鉛の腐食反応(自己放電)や充電時の副反応である水素ガス発生反応を抑制し、放電容量及び充放電効率の低下を効果的に抑制すると考えられる。つまり、この結果が、図2において優れたサイクル特性を示している理由の一つとなっていると考えられる。
【0091】
更に、図4、図5及び図6の充放電試験のサイクル特性評価結果から、実施例2、実施理恵7及び実施例8、実施例4、実施例9及び実施例10、実施例6及び実施例11に示す濃度範囲において、1M KOHのみの比較例1に比べ優れたサイクル特性を示すことが分かる。
【0092】
更にまた、図7の走査電子顕微鏡による充放電試験後の亜鉛負極表面の観察結果から、本発明の電解液は、充放電試験による亜鉛負極表面の形状の変化を効果的に抑制していることが分かる。
【0093】
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0094】
例えば、上述した各実施形態や実施例においては、アルカリ二次電池として、ニッケル−亜鉛二次電池を例に挙げて説明したが、空気−亜鉛二次電池などに本発明を適用することもできる。
【0095】
また、例えば、上述した各実施形態や実施例に記載した構成は、各実施形態や実施例毎に限定されるものではなく、例えば、各実施形態の構成を上述した各実施形態以外の組み合わせにしたり、正極や負極、電解質の細部を変更したりすることができる。
【符号の説明】
【0096】
1 正極
2 負極
3 電解液
10 参照電極
11 躯体
12 底部ホルダー
13 蓋


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に炭素原子を2個以上有し且つヒドロキシル基を1個以上有する有機物を少なくとも含むことを特徴とするアルカリ電池用電解液。
【請求項2】
上記有機物は、2位の位置の炭素原子にヒドロキシル基が結合していることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ電池用電解液。
【請求項3】
上記有機物が、二価アルコールであることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルカリ電池用電解液。
【請求項4】
上記有機物が、1,2−エタンジオールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のアルカリ電池用電解液。
【請求項5】
上記有機物の濃度が、0.5〜5mol/Lであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載のアルカリ電池用電解液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つの項に記載のアルカリ電池用電解液を有することを特徴とするアルカリ電池。
【請求項7】
二次電池であることを特徴とする請求項6に記載のアルカリ電池。
【請求項8】
上記二次電池が、空気−亜鉛二次電池又はニッケル−亜鉛二次電池であることを特徴とする請求項6又は7に記載のアルカリ電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−84349(P2013−84349A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221541(P2011−221541)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、革新型蓄電池先端科学基礎研究事業/革新型蓄電池先端科学基礎研究開発委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】