説明

アルカリ電池

【課題】 軽負荷放電特性に優れたアルカリ電池を提供する。
【解決手段】 本発明のアルカリ電池における正極が、正極活物質として二酸化マンガンおよび平均粒径が8〜18μmのオキシ水酸化ニッケル、および導電剤として平均粒径が8〜25μmの黒鉛を含み、黒鉛を二酸化マンガンおよびオキシ水酸化ニッケルの合計100重量部に対して5〜9重量部含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ電池、さらに詳しくは正極に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型の電子機器は高性能化しており、これに用いられる電源として作動電圧が高く、かつ大電流放電に優れたアルカリ電池が要求されている。
例えば、二酸化マンガンおよび平均粒径が19〜24μmのオキシ水酸化ニッケルからなる正極活物質に、平均粒径が8〜25μmであり、正極活物質に対する含有量が3〜10重量%である黒鉛を混合することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
正極活物質に平均粒径が19〜40μmの範囲であるオキシ水酸化ニッケルを用いた電池では、作動電圧が高く、強負荷放電特性が向上する。
しかし、軽負荷放電では、正極活物質に二酸化マンガンのみを用いたアルカリ電池と比べて放電性能はあまり向上しない。これは、オキシ水酸化ニッケルを含むアルカリ電池では、軽負荷放電時の放電末期においてオキシ水酸化ニッケルのほとんどが導電性の低い水酸化ニッケルに変わり、正極の電子伝導性が著しく低下するためである。これに対して、正極活物質に二酸化マンガンのみを用いた場合は、放電末期においてMnO2のほとんどがMnO1.5に変化するが、正極の導電性は大きく低下しない。
【特許文献1】特開2002−343346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記の問題を解決するため、正極活物質として二酸化マンガン及びオキシ水酸化ニッケルを含む正極を用いた場合の放電末期における正極の電子伝導性の低下を抑制し、優れた軽負荷放電特性を有するアルカリ電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のアルカリ電池は、正極活物質として二酸化マンガンおよびオキシ水酸化ニッケル、ならびに導電剤として黒鉛を含む正極と、負極活物質として亜鉛を含む負極と、前記正極と負極との間に配されるセパレータと、アルカリ電解液とを具備するアルカリ電池であって、前記黒鉛の平均粒径が8〜25μmであり、前記オキシ水酸化ニッケルの平均粒径が8〜18μmであり、前記正極が二酸化マンガンおよびオキシ水酸化ニッケルの合計100重量部に対して5〜9重量部の黒鉛を含むことを特徴とする。
前記正極が二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルとを重量比10:90〜80:20の割合で含むのが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、正極活物質として二酸化マンガン及びオキシ水酸化ニッケルを含む正極を用いた場合において、放電末期における正極活物質の電子伝導性のネットワークを良好に保つことにより、軽負荷放電特性に優れたアルカリ電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明者らは、正極活物質としての二酸化マンガンで得られた知見がそのままオキシ水酸化ニッケルの場合に適用できない状況を踏まえ、正極活物質として二酸化マンガンおよびオキシ水酸化ニッケルを含む正極に対して、導電剤としての黒鉛の含有量および平均粒径、ならびに正極活物質としてのオキシ水酸化ニッケルの平均粒径の最適化を図った。
【0008】
そして、黒鉛の平均粒径が8〜25μmであり、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径が8〜18μmであり、正極が黒鉛を二酸化マンガンおよびオキシ水酸化ニッケルの合計100重量部に対して5〜9重量部含む場合に、活物質粒子間の導電性ネットワークが良好となり、放電末期におけるオキシ水酸化ニッケル粒子と二酸化マンガン粒子との間の電子伝導性の低下が抑制され、正極活物質に二酸化マンガンのみを用いた場合を上回る軽負荷放電特性が得られることを見出した。
【0009】
黒鉛の平均粒径が8μm未満では、正極ペレットの成形が困難となる。黒鉛の平均粒径が25μmを超えると、黒鉛の粒子サイズがオキシ水酸化ニッケルの粒子サイズよりも大きくなりすぎて、電極反応を阻害してしまい、放電性能が低下する。
オキシ水酸化ニッケルの平均粒径が8μm未満では、正極ペレットの成形性が悪くなり、放電性能が低下する。オキシ水酸化ニッケルの平均粒径が18μmを超えると、放電末期における電子伝導性が低下し、内部抵抗が増大し、放電性能が低下する。
【0010】
二酸化マンガンおよびオキシ水酸化ニッケルの合計100重量部に対する黒鉛の含有量が5重量部未満では、導電剤としての効果が不充分となる。黒鉛の含有量が9重量部を超えると、正極活物質量が減少するため、放電性能が低下する。
さらに、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径は8〜15μmが好ましい。
正極は、二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルとを重量比10:90〜80:20の割合で含むのが好ましい。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
《実験例1》
(1)正極合剤の作製
正極活物質として平均粒径が15μmのオキシ水酸化ニッケルおよび平均粒径が35μmの二酸化マンガン、ならびに黒鉛粉末を50:50:6の割合で混合し、得られた混合物100重量部あたり3重量部のアルカリ電解液を添加し、充分に攪拌した後、フレーク状に圧縮成形した。このとき、アルカリ電解液には、40重量%の水酸化カリウム水溶液を用いた。ついでフレーク状の正極合剤を粉砕して顆粒状とし、これを篩によって分級し、10〜100メッシュのものを中空円筒状に加圧成形してペレット状の正極合剤を得た。このとき、黒鉛粉末の粒径を8、10、15、25、30μmと変えて、黒鉛粉末の粒径が異なる、種々の正極合剤を得た。
【0012】
(2)アルカリ電池の組み立て
以下に示す手順で、図1に示す構造の単3形アルカリ電池を作製した。図1は、アルカリ電池の一部を断面とした正面図である。
電池ケース1内に上記で得られた正極合剤2を2個挿入し、加圧治具により正極合剤2を再成形して電池ケース1の内壁に密着させた。そして、電池ケース1内に配置された正極合剤2の中央に有底円筒形のセパレータ4を配置し、セパレータ4内へアルカリ電解液として40重量%の水酸化カリウム水溶液を所定量注入した。所定時間経過した後、ゲル状負極3をセパレータ4内へ充填した。
【0013】
なお、ゲル状負極3には、ゲル化剤であるポリアクリル酸ナトリウム1重量部、アルカリ電解液である40重量%の水酸化カリウム水溶液33重量部、ならびにAl、BiおよびInを含む亜鉛合金粉末66重量部からなるゲルを用いた。ここに用いられた亜鉛合金は、Al、Bi、およびInをそれぞれ35、250、および500ppm含む。セパレータ4には、ポリビニルアルコール繊維とレーヨン繊維を主体として混抄した不織布を用いた。
【0014】
続いて、負極集電子6をゲル状負極3の中央に挿入した。なお、負極集電子6には、ガスケット5および負極端子を兼ねる底板7を予め一体化させた。そして、電池ケース1内の開口端部を、ガスケット5の端部を介して、底板7の周縁部にかしめつけ、電池ケース1の開口部を封口した。最後に、外装ラベル8で電池ケース1の外表面を被覆して、アルカリ電池1〜5を得た。
【0015】
ここで、比較のために、正極活物質として平均粒径が35μmの二酸化マンガン、および黒鉛粉末を100:6の割合で混合した。この混合物を用いて上記と同様の方法によりペレット状の正極合剤を得た。このとき、黒鉛粉末の粒径を8、10、15、および25μmと変えて、黒鉛粉末の粒径が異なる種々の正極合剤を作製した。これらの正極合剤を用いて、上記と同様の方法によりアルカリ電池6〜9をそれぞれ作製した。
【0016】
電池1〜9について、それぞれ100mAで連続放電し、軽負荷放電における放電時間を測定した。このときの終止電圧は0.9Vとした。その結果を図2に示す。なお、図2中の放電性能指数は、電池9の放電時間を100とした指数を示す。図2中の●は電池1〜5の結果を示し、○は電池6〜9の結果を示す。
【0017】
電池6〜9では、黒鉛の粒径を変えても、放電特性はほとんど変わらなかった。これに対して、黒鉛の平均粒径が8〜25μmの電池1〜4の場合において、電池6〜9よりも優れた放電特性が得られた。黒鉛の平均粒径が25μmを超える電池5では、黒鉛の粒子サイズがオキシ水酸化ニッケルの粒子サイズよりも大きすぎるため、電極反応が阻害され、放電性能が低下した。
【0018】
《実験例2》
正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルおよび平均粒径が35μmの二酸化マンガン、ならびに平均粒径が15μmの黒鉛粉末を50:50:6の割合で混合した。この混合物を用いて実験例1と同様の方法によりペレット状の正極合剤を得た。このとき、オキシ水酸化ニッケルの粒径を5、8、10、15、18、20、30および40μmと変えて、オキシ水酸化ニッケルの粒径が異なる種々の正極合剤を得た。そして、これらの正極合剤を用いた以外は、実験例1と同様の方法によりアルカリ電池10〜17をそれぞれ作製した。
【0019】
ここで、比較のために、正極活物質として二酸化マンガン、および平均粒径が15μmの黒鉛粉末を100:6の割合で混合した。この混合物を用いて実験例1と同様の方法によりペレット状の正極合剤を得た。このとき、二酸化マンガンの粒径を20、35、47および60μmと変えて、二酸化マンガンの粒径が異なる種々の正極合剤を作製した。そして、これらの正極合剤を用いた以外は、実験例1と同様の方法によりアルカリ電池18〜21をそれぞれ作製した。
【0020】
そして、電池10〜21について、それぞれ上記と同様の方法により放電時間を測定した。その結果を図3に示す。なお、図3中の放電性能指数は、電池19の放電時間を100とした指数を示す。また、図3中の●は電池10〜17の結果を示し、○は電池18〜21の結果を示す。
【0021】
オキシ水酸化ニッケルの平均粒径が8〜18μmの電池11〜14では、二酸化マンガンのみを活物質とした電池18〜21よりもさらに優れた放電性能が得られた。オキシ水酸化ニッケルの平均粒径が8μm未満の電池10では、正極ペレットの成形性が悪くなったため、活物質粒子間の導電性ネットワークが弱くなったり、活物質の一部が脱落したりして放電性能が低下した。オキシ水酸化ニッケルの平均粒径が18μmを超える電池15〜17では、放電末期における電子伝導性が悪くなり、内部抵抗が増大して、放電性能が低下した。さらに、電池11〜13では放電性能指数が102を超えていることから、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径が8〜15μmであるのがより好ましいことがわかった。
【0022】
《実験例3》
正極活物質として平均粒径が10μmのオキシ水酸化ニッケルおよび平均粒径が35μmの二酸化マンガン、ならびに導電剤として平均粒径が15μmの黒鉛粉末を混合した。この混合物を用いて実験例1と同様の方法によりペレット状の正極合剤を得た。このとき、オキシ水酸化ニッケルおよび二酸化マンガンとを重量比1:1の割合で混合し、この混合物に対する黒鉛の添加量を4、5、6、7、8、9および10重量%と変えて、黒鉛の含有量の異なる種々の正極合剤を得た。そして、これらの正極合剤を用いた以外は、実験例1と同様の方法によりアルカリ電池22〜28をそれぞれ作製した。
【0023】
ここで、比較のために、正極活物質として平均粒径が35μmの二酸化マンガン、ならびに導電剤として平均粒径が15μmの黒鉛粉末を混合した。この混合物を用いて実験例1と同様の方法によりペレット状の正極合剤を得た。このとき、二酸化マンガン量に対する黒鉛の添加量を4、5、6、7、8、9および10重量%と変えて、黒鉛の含有量の異なる種々の正極合剤を得た。そして、これらの正極合剤を用いた以外は、実験例1と同様の方法によりアルカリ電池29〜35をそれぞれ作製した。
【0024】
そして、電池22〜35について、それぞれ実験例1と同様の方法により放電時間を測定した。その結果を図4に示す。なお、図4中の放電性能指数は、電池31の放電時間を100とした指数を示す。また、図4中の●は電池22〜28の結果を示し、○は電池29〜35の結果を示す。
【0025】
黒鉛の添加量が5〜9重量%の電池23〜27では、二酸化マンガンのみを活物質とした電池29〜35よりも優れた放電性能が得られた。黒鉛の添加量が5重量%未満では、導電剤としての効果が不充分となり、放電性能が低下した。黒鉛の添加量が9重量%を超える電池28では、正極活物質の量が減少し、放電性能が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明のアルカリ電池は、高性能の小型電子機器や携帯機器用の電源等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のアルカリ電池の一例の一部を断面にした正面図である。
【図2】本発明の実験例1における各電池の放電性能を示す図である。
【図3】本発明の実験例2における各電池の放電性能を示す図である。
【図4】本発明の実験例3における各電池の放電性能を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 電池ケース
2 正極合剤
3 ゲル状負極
4 セパレータ
5 ガスケット
6 負極集電子
7 底板
8 外装ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質として二酸化マンガンおよびオキシ水酸化ニッケル、ならびに導電剤として黒鉛を含む正極と、負極活物質として亜鉛を含む負極と、前記正極と負極との間に配されるセパレータと、アルカリ電解液とを具備するアルカリ電池であって、
前記黒鉛の平均粒径が8〜25μmであり、前記オキシ水酸化ニッケルの平均粒径が8〜18μmであり、前記正極が二酸化マンガンおよびオキシ水酸化ニッケルの合計100重量部に対して5〜9重量部の黒鉛を含むことを特徴とするアルカリ電池。
【請求項2】
前記正極が二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルとを重量比10:90〜80:20の割合で含む請求項1記載のアルカリ電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−12493(P2006−12493A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185023(P2004−185023)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】