説明

アルカリ電池

【課題】正極及び負極の充填密度を低減しても、ゲルこぼれによる内部短絡の生じない、信頼性に優れ、かつコストパフォーマンスの高いアルカリ電池を提供することにある
【解決手段】正極2は、正極活物質である二酸化マンガンを含み、負極3は、負極活物質である亜鉛を含むゲル状負極からなり、正極2中の二酸化マンガンの密度は、2.31〜2.45g/cmの範囲にあり、負極3中の亜鉛の密度は、1.49〜1.65g/cmの範囲にあり、正極2の高さ(h)と負極3の高さ(h)の比(h/h)は、0.96〜1.06の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極及び負極の充填密度を低減したアルカリ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ電池は、単位重量当たりのエネルギー密度が高いことから、近年の携帯用電子機器の急速な普及に伴い、その電源として広く用いられるようになっている。そして、今日においては、携帯用ゲーム機等の機器に適した、軽負荷での放電特性に優れたレギュラータイプの電池から、デジタルカメラ等の機器に適した、重負荷での放電特性に優れた高性能の電池、さらには、大電流から小電流まで幅広いレンジで高い放電性能を有する高品質・高性能の電池まで、使用機器や用途に合わせて、価格帯の異なる種々のグレードの商品がラインナップされている。
【0003】
特に、アルカリ電池の高性能化に対しては、活物質の充填量や比表面積を増加したり、活物質を含む合剤への電解液の吸液量を増加するなど、様々な改善がなされている(例えば、特許文献1、2等)。
【特許文献1】特開2003−163003号公報
【特許文献2】特開2000−106176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高性能化を図ったグレードの高い電池に対して、コストを抑えたグレードの低い電池を製造するには、正極及び/又は負極の活物質の量を減らすのが最も効果的である。
【0005】
一般に、アルカリ電池は、正極及び負極をセパレータを介して電池ケース内に収納した構造を有するが、正極及び/又は負極の量を単純に減らすと、正極と負極との対向面積が減少するため、反応効率も低下してしまう。
【0006】
そこで、正極及び/又は負極の量を単純に減らす代わりに、正極及び負極の高さは維持したまま、正極及び負極の充填密度を低減することによって、反応効率の低下をできるだけ抑えて、コストダウンを図ることが望ましい。
【0007】
そこで、本願発明者は、正極及び負極の充填密度を低減したアルカリ電池を作製して、その性能の評価を行った。なお、作製したアルカリ電池は、正極には二酸化マンガンに黒鉛を含んだ材料、負極には亜鉛にゲル化剤を含んだ材料を用いた。
【0008】
作製したアルカリ電池について、落下試験による信頼性の評価を行ったところ、内部短絡に起因すると思われる発熱を生じた電池があった。特に、負極端子側(電池ケースの開口部がガスケットを介して負極端子板で封口されている)を下にした落下試験において、発熱を生じた電池の発生する割合が多かった。
【0009】
これは、もともと、ゲル状負極は流動性を有するため、電池に衝撃が加わると、ゲル状負極が負極端子側(ガスケット側)に移動してガスケットに衝突することによって、ゲル状負極がセパレータとガスケットとの間から正極側に漏れ出て(以下、単に「ゲルこぼれ」という。)、内部短絡が起きたことによるものと考えられる。特に、負極を低密度化した場合、亜鉛粒子間でのネットワークが低下するため、ゲル状負極の粘性が低下している。そのため、低密度化したゲル状負極は、衝撃に対してより移動しやすくなっていることから、内部短絡による発熱を生じた電池の発生する割合が増えたものと考えられる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その主な目的は、正極及び負極の充填密度を低減しても、ゲルこぼれによる内部短絡の生じない、信頼性に優れ、かつコストパフォーマンスの高いアルカリ電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明におけるアルカリ電池は、充填密度を低減した正極及び負極がセパレータを介して電池ケース内に収容されてなるアルカリ電池において、正極の高さと負極の高さの比を0.96〜1.06の範囲にした構成を採用する。
【0012】
すなわち、本願発明に係わるアルカリ電池は、正極及び負極がセパレータを介して電池ケース内に収納されてなるアルカリ電池であって、正極は、正極活物質である二酸化マンガンを含み、負極は、負極活物質である亜鉛を含むゲル状負極からなり、正極中の二酸化マンガンの密度は、2.31〜2.45g/cmの範囲にあり、負極中の亜鉛の密度は、1.49〜1.65g/cmの範囲にあり、正極の高さ(h)と負極の高さ(h)の比(h/h)は、0.96〜1.06の範囲にあることを特徴とする。
【0013】
ある好適な実施形態において、上記正極の高さ(h)と負極の高さ(h)の比(h/h)は、0.98〜1.04の範囲にある。
【0014】
ある好適な実施形態において、上記電池ケースの内壁面の算術平均粗さ(Ra)は、0.7〜2.0μmの範囲にある。
【0015】
ある好適な実施形態において、上記亜鉛は亜鉛粉末からなり、200メッシュ以下の粒度を有する亜鉛粉末が、15〜40wt%の範囲で含まれている。
【0016】
ある好適な実施形態において、上記セパレータの厚みは、350〜550μmの範囲にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、正極及び負極の充填密度を低減しても、ゲルこぼれによる内部短絡の生じない、信頼性に優れ、かつコストパフォーマンスの高いアルカリ電池を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
一般に、アルカリ電池は、正極及び負極をセパレータを介して電池ケース内に収納した構造を有しているが、正極と負極との反応効率を高めるために、電池ケースに収納された正極の高さと負極の高さとを揃えて、対向面積が最大になるように設計している。
【0019】
しかしながら、量産工程においては、製造上のバラツキからゲル状負極の高さにもバラツキは生じる。そこで、正極及び負極の充填密度を低減したアルカリ電池の落下試験において、ゲルこぼれによる内部短絡に起因して発熱を生じた電池の発生する割合が増えたことに鑑みて、本願発明者は、負極高さのバラツキと落下試験における電池の発熱との関係を調べたところ、以下のような知見を得た。
【0020】
表1は、正極の高さ(h)と負極の高さ(h)が揃っていない電池について、落下試験を行ったときの評価結果を示したものである。なお、正極及び負極の高さのバラツキは、典型的には2〜4%程度と考えられるが、負極高さのバラツキと電池の発熱との関係を明確に把握するために、正極の高さ(h)及び負極の高さ(h)を予め変えた電池をそれぞれ作製して評価を行った。
【0021】
【表1】

【0022】
ここで、作製した電池は、単3形アルカリ電池で、正極には二酸化マンガンに黒鉛を含んだ材料、負極には亜鉛にゲル化剤を含んだ材料を用いた。なお、正極中の二酸化マンガンの密度は、2.38g/cm、負極中の亜鉛の密度は、1.57g/cmに設定した。なお、設定したこれらの密度は、高性能化を図った高グレードの電池で設定される二酸化マンガン密度(典型的には2.50g/cm程度)に対して、約5%程度低密度化された値に相当し、また、亜鉛密度(典型的には1.72g/cm3程度)に対して、約9%程度低密度化された値に相当する。
【0023】
また、落下試験の方法、及び評価方法は、以下の通りである。
【0024】
落下試験前に、それぞれ作製した電池の閉路電圧(V)を測定(精度1mV)した後、1.5mの高さから、電池を負極端子側を下にしてPタイル上に10回連続して落下させてから、落下試験直後の閉路電圧(V)と、1分後の閉路電圧(V)とを測定するとともに、落下試験後の電池表面の最高温度(T)を測定した。そして、表1に示した電池1〜4について10個ずつ落下試験を行い、VがVに対して2mV以上低下した電池をA、さらに、VがVに対して低下した電池をB、さらに、Tが40℃以上に上昇した電池をCと評価し、それぞれの評価結果となった電池の数をカウントした。
【0025】
なお、評価Aの電池は、ゲルこぼれが生じた疑いのあるもの、評価Bの電池は、ゲルこぼれに起因する進行性のある内部短絡が発生したもの、評価Cの電池は、ゲルこぼれに起因する内部短絡の進行度が高く、発熱に至ったものと想定される。
【0026】
表1に示すように、負極の高さが低い電池3では、発熱に至った電池(評価C)があったのに対し、負極の高さが高い電池1では、発熱に至った電池のみならず、評価A、Bの電池も発生しておらず、明らかに負極の高さの違いによって、電池の発熱発生の有無に差が生じている。これは、負極の高さが高い電池1と、負極の高さが低い電池3とでは、負極とガスケットとの距離に差があるため、落下による衝撃で負極が負極端子側(ガスケット側)に移動した際に、ガスケットに衝突する衝撃の強さに差が生じ、この衝撃強さの差によって、ゲルこぼれに至った電池と至らなかった電池とが生じたものと考えられる。
【0027】
ところで、表1に示すように、負極の高さが低くても発熱に至らなかった電池4がある一方、負極の高さが高くても発熱に至った電池2があった。これは、ゲルこぼれにより発熱に至った原因が、上述したゲル状負極の移動によるものとは考えにくい結果であり、本願発明者は、ゲル状負極の移動以外に、ゲルこぼれを引き起こす別の要因があると考え、さらに詳細な検討を加え、以下のような知見を得た。
【0028】
図1(a)は、低密度化した正極2及び負極3をセパレータ4を介して電池ケース内に収容した電池の構成を示した図で、正極2及び負極3とガスケット5との間に空間Aが形成されている(図1(c)は、そのX線写真を示す)。図1(b)は、この電池を負極端子側を下にして落下させた後の電池の状態を示した図で、負極3のみならず正極2も負極端子側に移動して、ガスケット5に当接しており、正極端子側には空間Bが形成されているのが分かる(図1(d)は、そのX線写真を示す)。
【0029】
これは、一般に、正極は、電池ケース内に収容された後、電解液を吸収して電池ケースの径方向に膨張するため、電池ケースに密着しており、電池に衝撃が加わっても移動することはないと考えられていたが、正極を低密度化したことによって、電池ケースとの密着性が低下したことにより、電池に衝撃が加わった際に正極も同時に移動したものと考えられる。
【0030】
このような事実から、表1に示した電池4が、負極の高さが低いにも係わらず、電池3とは異なり、発熱に至らなかった理由は、次のように考えることができる。すなわち、電池4では、正極の高さも低くなっているため、正極の移動とともに、セパレータも追随して移動することによって、セパレータの先端部のガスケットに当接する長さが増大する。そのため、負極が移動してガスケットに強く衝突しても、当接する長さの増大によりガスケットとの密着性が向上したセパレータによって、ゲルこぼれの発生を抑制したものと考えられる。
【0031】
一方、表1に示した電池2が、負極の高さが高いにも係わらず、電池1とは異なり、発熱に至った理由は、次のように考えることができる。すなわち、電池2では、正極の高さが負極の高さよりも低くなっているため、負極が先にガスケットに当接した後、正極が遅れてガスケットに当接する。そのため、セパレータが移動してきた正極に押圧されることによって、セパレータとガスケットとの密着性が低下し、その結果、ゲルこぼれが発生したものと考えられる。
【0032】
以上の知見から、製造上のバラツキによって正極及び負極の高さにバラツキが生じた場合、ゲルこぼれの要因は異なるものの、正極及び負極の高さのバラツキが所定の範囲を超えるとゲルこぼれが生じるおそれがあることが分かった。それ故に、低密度化した正極及び負極を用いた電池において、ゲルこぼれによる内部短絡の発生を防止するためには、製造上のバラツキに伴う正極及び負極の高さバランス、すなわち、正極の高さと負極の高さとの比を、所定の範囲内にすることが必要と言える。本発明は、かかる正極の高さと負極の高さの比の許容範囲について指針を与えるものである。
【0033】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0034】
図2は、本発明の実施形態におけるアルカリ電池の構成を示した半断面図である。図2に示すように、有底円筒状の電池ケース1内に、セパレータ4を介して正極2とゲル状負極3が収納され、電池ケース1の開口部が、ガスケット5、負極集電子6、及び負極端子板7を一体化した封口ユニット9によって封口されている。ここで、正極2は、正極活物質である二酸化マンガンを含み、負極3は、負極活物質である亜鉛(亜鉛合金を含む)を含むゲル状負極からなる。また、正極2及び負極3は低密度化された電極で構成されている。
【0035】
表2は、正極2中の二酸化マンガン密度を、2.31〜2.45g/cmの範囲で低密度化し、また、負極3中の亜鉛密度を、1.49〜1.65g/cmの範囲で低密度化した電極を用い、それぞれ、正極2の高さ(h)と負極3の高さ(h)の比(h/h)を0.94〜1.08の範囲に変えて作製した単3形アルカリ電池について、表1で示した落下試験と同じ方法で行ったときの評価結果を示したものである。
【0036】
【表2】

【0037】
表2の結果から、低密度化した正極2及び負極3を用いた電池において、ゲルこぼれによる内部短絡の発生を防止するために、製造上のバラツキに伴う正極2及び負極3の高さバランス、すなわち、正極2の高さ(h)と負極3の高さ(h)との比(h/h)の許容範囲について有用な指針を得ることができる。
【0038】
すなわち、正極2中の二酸化マンガン密度を、2.31〜2.45g/cmの範囲に、負極3中の亜鉛密度は、1.49〜1.65g/cmの範囲に設定した場合、電池に落下等の衝撃を加えた場合でも、ゲルこぼれによる内部短絡の発生に伴う電池の発熱を防止するためには、表2の落下試験における評価Cの結果に基づけば、正極の高さ(h)と負極の高さ(h)の比(h/h)を、0.96〜1.06の範囲にすることが好ましいことが分かる。
【0039】
また、ゲルこぼれに起因する進行性のある内部短絡の発生を防止するためには、表2の落下試験における評価Bの結果に基づけば、正極の高さ(h)と負極の高さ(h)との比(h/h)を、0.98〜1.04の範囲にすることがより好ましいことが分かる。
【0040】
なお、本実施形態において、上記に示した正極の高さ(h)と負極の高さ(h)との比(h/h)の好ましい範囲は、製造上のバラツキを含めたものであるが、もとより、電池の仕様等によって、製造上のバラツキも異なるため、かかる好ましい範囲は、製造上のバラツキを考慮した設計上の許容範囲として規定することができる。
【0041】
ここで、本発明における「二酸化マンガン密度」は、正極2の体積に対して、正極2を構成する電解二酸化マンガンに含有される二酸化マンガンの重量比をいう。また、「二酸化マンガン密度」は、例えば、以下の方法により測定することができる。
【0042】
すなわち、電池をX線透視して正極2の外径、内径、および高さの寸法を計測することにより正極2の体積を算出する。そして、電池を分解して正極2を全て取り出して充分に酸溶解させた後、不溶分を濾別して得られる水溶液からICP発光分析法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)によりその水溶液中のマンガン(Mn)の含有量を調べ、その含有量を二酸化マンガン量に換算して正極2に含まれている二酸化マンガンの重量を求める。このようにして「二酸化マンガン密度」を求めるとよい。
【0043】
また、本発明における「亜鉛密度」は、負極3の体積に対して、負極3を構成する亜鉛の重量比をいう。また「亜鉛密度」は、例えば、以下の方法により測定することができる。
【0044】
すなわち、電池をX線透視して負極3の外径及び高さの寸法を計測することにより負極3の体積を算出する。そして、電池を分解して負極3をすべて取り出して、水を溶媒としてデカンテーションにより水溶性物質及びゲル化剤を取り除いた後、十分乾燥することにより亜鉛を取り出しその重量を求める。このようにして「亜鉛密度」を求めるとよい。
【0045】
表3は、低密度化していない正極及び負極(二酸化マンガン密度が2.50g/cm、亜鉛密度が1.72g/cm)を用いて、正極の高さ(h)と負極の高さ(h)の比(h/h)を、0.90〜1.10の範囲に変えて作製した電池について、表2と同じ方法で落下試験を行ったときの評価結果を示したものである。表3に示すように、正極の高さ(h)と負極の高さ(h)の比(h/h)が、製造上のバラツキの範囲(典型的には、2〜4%程度)を超える値(例えば、h/h=0.90、または1.10)になっても、ゲルこぼれによる内部短絡の発生に伴う電池の発熱は生じていない。それ故に、低密度化した正極及び負極を用いた電池において、ゲルこぼれによる内部短絡の発生を防止するためには、正極の高さ(h)と負極の高さ(h)の比(h/h)は、製造上管理しなければならない重要なパラメータと言える。
【0046】
【表3】

【0047】
ところで、上述したように、正極を低密度化したことにより、電池に衝撃が加わったときに、正極も移動しやすくなっているが、正極と電池ケースとの密着性を向上させることによって、正極の移動を抑制する効果が期待できる。
【0048】
表4は、電池ケース1の内壁面の算術平均粗さ(Ra)を0.5〜3.0μmの範囲で変えて作製した電池について、表2と同じ方法で落下試験を行ったときの評価結果を示したものである。表4に示すように、電池ケース1の内壁面の算術平均粗さ(Ra)が大きくなるに従い、ゲルこぼれに起因する内部短絡の発生(評価A、B)が低減されているのが分かる。これは、電池ケース1の内壁面の表面粗さが増すことによって、正極と電池ケースとの密着性が向上したためと考えられる。
【0049】
【表4】

【0050】
ただし、算術平均粗さ(Ra)が2.0μmを超えると、電池ケース1の内壁面の表面積が増加することによって、ガスが発生しやすくなるため、かえって耐漏液性の低下を招くおそれがある。従って、表4に示すように、ゲルこぼれに起因する内部短絡の発生を低減するためには、電池ケース1の内壁面の算術平均粗さ(Ra)を、0.7〜2.0μmの範囲に設定することが好ましい。なお、表4に示した電池は、正極2中の二酸化マンガン密度が2.31g/cm、負極3中の亜鉛密度が1.49g/cmの電極を用いた。
【0051】
また、負極についても、粒度の細かい亜鉛粉末を多く含有させることによって、亜鉛のネットワークを高めることができ、これにより、負極の移動を抑制する効果が期待できる。
【0052】
表5は、200メッシュ以下の粒度を有する亜鉛粉末(以下、「亜鉛微粉末」という。)の含有率を10〜40wt%の範囲で変えて作製した電池について、表2と同じ方法で落下試験を行ったときの評価結果を示したものである。表5に示すように、亜鉛微粉末の含有率が大きくなるに従い、ゲルこぼれに起因する内部短絡の発生(評価A、B)が低減されているのが分かる。
【0053】
【表5】

【0054】
ただし、亜鉛微粉末の含有率が40wt%を超えると、負極の粘度が高くなって生産性の低下を招くおそれがあるため、ゲルこぼれに起因する内部短絡の発生を効果的に低減するためには、表5に示すように、亜鉛微粉末の含有率を、15〜40wt%の範囲に設定することが好ましい。なお、表5に示した電池は、正極2中の二酸化マンガン密度が2.31g/cm、負極3中の亜鉛密度が1.49g/cmの電極を用いた。
【0055】
また、セパレータ4は、その先端部をガスケットに当接させることによって、ゲル状負極3が正極2に漏れ出ることを防止する機能を有しているが、セパレータ4の厚みを増加させることによって、その機能をより強化することができ、これにより、正極の移動に伴うセパレータ4とガスケット5との密着性の低下を抑制する効果が期待できる。
【0056】
表6は、セパレータ4の厚みを315〜650μmの範囲で変えて作製した電池について、表2と同じ方法で落下試験を行ったときの評価結果を示したものである。なお、セパレータ4の厚みとは、1枚の厚さが100〜210μmのポリビニルアルコール繊維およびレーヨン繊維を主体として混抄した不織布を円筒状に3重に巻回して得られた厚みである。表6に示すように、セパレータ4の厚みが大きくなるに従い、ゲルこぼれに起因する内部短絡の発生(評価A、B)が低減されているのが分かる。
【0057】
【表6】

【0058】
ただし、セパレータ4の厚みが550μmを超えると、正極2及び負極3の容積の低下を招くため、ゲルこぼれに起因する内部短絡の発生を効果的に低減するためには、表6に示すように、セパレータ4の厚みを、350〜550μmの範囲に設定することが好ましい。なお、表6に示した電池は、正極2中の二酸化マンガン密度が2.31g/cm、負極3中の亜鉛密度が1.49g/cmの電極を用いた。
【0059】
なお、電池ケース1の内壁面の算術平均粗さ(Ra)、200メッシュ以下の粒度を有する亜鉛粉末の含有率、及びセパレータ4の厚みを、それぞれ上述した効果を発揮し得る範囲の値に適宜組み合わせることによって、より効果的にゲルこぼれに起因する内部短絡の発生を低減することができる。
【0060】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、上記の実施形態では、単3形アルカリ電池を例に説明したが、他の大きさのアルカリ電池についても、同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のアルカリ電池は、優れた生産性と、高いコストパフォーマンスを有し、乾電池を電源とする広範な電子機器に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】(a)は電池の構成を示した図、(b)は電池を落下させた後の状態を示した図、(c)は(a)のX線写真、(d)は(b)のX線写真である。
【図2】本発明の実施形態におけるアルカリ電池の構成を示した半断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 電池ケース
2 正極
3 ゲル状負極
4 セパレータ
5 ガスケット
6 負極集電子
7 負極端子板
9 封口ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極がセパレータを介して電池ケース内に収納されてなるアルカリ電池であって、
前記正極は、正極活物質である二酸化マンガンを含み、
前記負極は、負極活物質である亜鉛を含むゲル状負極からなり、
前記正極中の二酸化マンガンの密度は、2.31〜2.45g/cmの範囲にあり、
前記負極中の亜鉛の密度は、1.49〜1.65g/cmの範囲にあり、
前記正極の高さ(h)と前記負極の高さ(h)の比(h/h)は、0.96〜1.06の範囲にある、アルカリ電池。
【請求項2】
前記正極の高さ(h)と前記負極の高さ(h)の比(h/h)は、0.98〜1.04の範囲にある、請求項1に記載のアルカリ電池。
【請求項3】
前記電池ケースの内壁面の算術平均粗さ(Ra)は、0.7〜2.0μmの範囲にある、請求項1または2に記載のアルカリ電池。
【請求項4】
前記亜鉛は亜鉛粉末からなり、200メッシュ以下の粒度を有する亜鉛粉末が、15〜40wt%の範囲で含まれている、請求項1または2に記載のアルカリ電池。
【請求項5】
前記セパレータの厚みは、350〜550μmの範囲にある、請求項1または2に記載のアルカリ電池。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−123319(P2010−123319A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294265(P2008−294265)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】