説明

アルカンの酸化脱水素用触媒、当該触媒の製造方法、並びに当該触媒を用いた不飽和炭化水素化合物および/または含酸素炭化水素化合物の製造方法、または不飽和酸の製造方法。

【課題】本発明は、アルカンを分子状酸素により気相酸化脱水素するに好適である。単独の触媒を用いることよりも、複数の触媒を用いることでアルカンの転化率が高く、特に特定の組合せの触媒、及び触媒の設置順により更に優れた効果を生じることがみられる。また、気相酸化脱水素反応において、オレフィンの他、含酸素炭化水素化合物、不飽和酸も同時に得ることもできる。
【解決手段】本発明は、二種以上の触媒を用いてアルカンを気相酸化脱水素することを特徴とするアルカンの気相酸化脱水素方法である。当該二種以上触媒が、バナジウム・マグネシウム系触媒とコバルト・モリブデン系触媒であり、好ましくは、当該二種以上の触媒がバナジウム・マグネシウム系触媒とコバルト・モリブデン系触媒とであって、かつバナジウム・マグネシウム系触媒とコバルト・モリブデン系触媒とを混合したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低級アルカン酸化脱水素触媒およびこの触媒を用いたオレフィンの製造方法に関する。詳しくは、本発明は炭素数3〜5の低級アルカンを気相酸化脱水素して対応するオレフィンを製造するに好適な触媒、及びこの触媒を用いて低級アルカンを分子状酸素により気相酸化脱水素して高収率で対応するオレフィンを製造する方法に関する。
【0002】
また本発明は、炭素数3〜5の低級アルカンを気相酸化脱水素して得られたオレフィンから、対応する不飽和アルデヒドおよび不飽和酸を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
低級オレフィン、特にプロピレンの製造方法として、近年低級アルカンの単純脱水素プロセスが工業化されているが、このプロセスは平衡の制約から高収率を得ることが困難であり、かつ高温を要するという本質的な問題を抱えている。さらに炭化物析出により短時間での触媒劣化が避けられず、スイッチコンバーターを使用するなどして頻繁に触媒の再生を行う必要があるため、プラント建設費やユーティリティ費用が高く、立地条件によっては経済的に成り立たず現時点での実用化は限られている。
【0004】
一方、平衡上制約がない酸化脱水素により低級アルカンから低級オレフィンを製造する試みはかなり以前から行われており、種々の触媒系が提案されている。例えばCo−Mo酸化物系触媒(米国特許第4,131,631号、特表2002−503628号)、V−Mg酸化物系触媒(米国特許第4,777,319号)、Ni−Mo酸化物系触媒(欧州特許第379.433Al号)、CeO2/CeF3系触媒(中国特許第1,073,893A号)Mg−Mo酸化物系触媒(Neftekhimiya(1990),30(2),207−210)、V2O5/Nb2O5系触媒(J.Chem.Commun.(1991),(8),558−9)、希土類バナデート系触媒(Catal.Letter(1996),37,(3,4),241−6)などが知られている。
【0005】
しかしこれら公知の触媒は肝心の酸化脱水素性能がいずれも非常に低いレベルにあり、工業化にははるかに及ばない状況にある。
【0006】
更に特開平8−245494号にはプロパンを脱水素によって得られたプロピレンを更に酸化してアクリル酸を製造する方法についての開示が見られるが、プロパンを脱水素した際に生成する水素を反応ガスから除去する必要がある。一方低級アルカン特にプロパンからアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造する方法としては、特開平10−045643号などが開示されているがこれら公報に記載されている目的生成物の収量は非常に低く、触媒を含めたプロセスの改良が必要である。
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,131,631号
【特許文献2】特表2002−503628号
【特許文献3】米国特許第4,777,319号
【特許文献4】欧州特許第379.433Al号
【特許文献5】中国特許第1,073,893A号
【特許文献6】特開平8−245494号
【特許文献7】特開平10−045643号
【非特許文献1】Neftekhimiya(1990),30(2),207−210
【非特許文献2】J.Chem.Commun.(1991),(8),558−9
【非特許文献3】Catal.Letter(1996),37,(3,4),241−6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低級アルカンを分子状酸素により気相酸化脱水素して対応するオレフィンを高収率で製造することが出来る酸化脱水素用触媒、およびこの触媒を用いて低級アルカンから高収率で対応するオレフィンを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、アルカンを分子状酸素により気相酸化脱水素して対応するオレフィンを高収率で製造することが出来るに好適な触媒について鋭意研究の結果、二種以上の触媒を用いてアルカンを気相酸化脱水素することを特徴とするアルカンの気相酸化脱水素方法を見出し発明を完成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、アルカンを分子状酸素により気相酸化脱水素するに好適である。単独の触媒を用いることよりも、複数の触媒を用いることでアルカンの転化率が高く、特に特定の組合せの触媒、及び触媒の設置順により更に優れた効果を生じることがみられる。また、気相酸化脱水素反応において、オレフィンの他、含酸素炭化水素化合物、不飽和酸も同時に得ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、二種以上の触媒を用いてアルカンを気相酸化脱水素することを特徴とするアルカンの気相酸化脱水素方法である。当該二種以上触媒が、バナジウム・マグネシウム系触媒とコバルト・モリブデン系触媒であることが好ましい。好ましくは、(1)当該二種以上の触媒がバナジウム・マグネシウム系触媒とコバルト・モリブデン系触媒とであって、かつバナジウム・マグネシウム系触媒とコバルト・モリブデン系触媒とを混合したものであること、(2)当該二種以上の触媒がバナジウム・マグネシウム系触媒とコバルト・モリブデン系触媒とであって、かつ原料ガスの流れに対して前段にバナジウム・マグネシウム系触媒を設置し、後段にコバルト・モリブデン系触媒を設置されていること、が好ましい。(3)当該二種以上の触媒がバナジウム・マグネシウム系触媒とコバルト・モリブデン系触媒とであって、かつバナジウム・マグネシウム系触媒がコバルト・モリブデン系触媒の表層部に設置されていること、が好ましい。
【0012】
本発明にかかるバナジウム・マグネシウム系触媒は、VMgaOxで示される化合物である。aはマグネシウムのモル数であり、好ましくは0.5〜10であり、更に好ましくは1.0〜5.0である。酸素であるOの量xはVとMgの価数により決定されるものである。当該バナジウム・マグネシウム系触媒は、酸化バナジウムと酸化マグネシウムとの混合物であっても良いが、結晶性の高い複合酸化物であっても、また結晶性の低いアモルファスなものであっても良い。好ましくは、アモルファスなものである。また当該触媒には、性能向上に有効な添加物を添加することもできる。
【0013】
上記触媒の調製に用いられるV、Mgの原料には特に制限はなく、各々の硝酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、炭酸塩、酢酸塩、酸素酸、酸素酸アンモニウム塩などを使用することが出来る。これらの原料を用いて各々の成分量が所定量になるように調整し後述する方法により触媒を調製することができる。
【0014】
本発明にかかる触媒は、耐火性無機担体に担持して用いることができる。かかる場合は触媒の活性向上および物理的耐久性向上の点で好ましい。耐火性無機担体としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニアなどこの種の触媒の調製に一般に用いられている耐火性無機担体を用いることが出来る。当該バナジウム・マグネシウム系触媒を担持するときの担持量は、当該耐火性無機酸化物に対して5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%である。
【0015】
当該コバルト・モリブデン系触媒の調製に一般に用いられている方法によって調製することが出来る。調製方法としては、(1)バナジウムおよびマグネシウムの原料を水溶液とし、混合し乾燥し焼成し目的の酸化物を得る方法。(2)バナジウムおよびマグネシウムの原料を水溶液とした後、混合し、更にアンモニアで水和物とし沈殿させ、ろ過し、乾燥し焼成し目的の酸化物を得る方法。(3)酸化バナジウム、酸化マグネシウムを混合する方法。(4)酸化バナジウム、酸化マグネシウムを混合し、固相反応させる方法。バナジウムおよびマグネシウム何れかの酸化物に、他の原料水溶液を添加し、乾燥し、焼成する方法。等を用いることができる。
【0016】
具体的には、バナジウムのアンモニア水溶液と、水可溶なマグネシウム化合物とを混合し、濃縮乾燥した後に、焼成する方法である。
【0017】
気相酸化脱水素反応を実施する際、触媒は粉末の形であっても一定の触媒形状を有していても使用でき、その際の成型は焼成の前後どちらでも構わない。例えば原料水溶液を加熱濃縮し乾燥させた後、未焼成の状態でタブレッターや押出し成型、打錠成型などにより所望の形状にすることもできる。
【0018】
本発明にかかるコバルト・モリブデン系触媒は、CobMoOyで示される化合物である。bはコバルトのモル数であり、好ましくは0.5〜1.5であり、更に好ましくは0.9〜1.0である。酸素であるOの量yはCoとMoの価数により決定されるものである。当該コバルト・モリブデン系触媒は、酸化コバルトと酸化モリブデンとの混合物であっても良いが、結晶性の高い複合酸化物であっても、また結晶性の低いアモルファスなものであっても良い。好ましくは、アモルファスなものがである。また当該触媒には、性能向上に有効な添加物を添加することもできる。
【0019】
上記触媒の調製に用いられるCo、Moの原料には特に制限はなく、各々の硝酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、炭酸塩、酢酸塩、酸素酸、酸素酸アンモニウム塩などを使用することが出来る。これらの原料を用いて各々の成分量が所定量になるように調整し後述する方法により触媒を調製することができる。
【0020】
本発明にかかる触媒は、耐火性無機担体に担持して用いることができる。かかる場合は触媒の活性向上および物理的耐久性向上の点で好ましい。耐火性無機担体としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニアなどこの種の触媒の調製に一般に用いられている耐火性無機担体を用いることが出来る。当該コバルト・モリブデン系触媒を担持するときの担持量は、当該耐火性無機酸化物に対して5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%である。
【0021】
当該コバルト・モリブデン系触媒の調製に一般に用いられている方法によって調製することが出来る。調製方法としては、(1)CoおよびMoの原料を水溶液とし、混合し乾燥し焼成し目的の酸化物を得る方法。(2)CoおよびMoの原料を水溶液とした後、混合し、更にアンモニアで水和物とし沈殿させ、ろ過し、乾燥し焼成し目的の酸化物を得る方法。(3)酸化コバルト、酸化モリブデンを混合する方法。(4)酸化コバルト、酸化モリブデンを混合し、固相反応させる方法。Co、Moの何れかの酸化物に、他の原料水溶液を添加し、乾燥し、焼成する方法。を用いることができる。
【0022】
具体的には、例えばパラモリブデン酸アンモニウム、硝酸コバルトを純水中で溶解し、水分を蒸発させ又はアンモニア等のアルカリを添加しモリブデンとコバルトを水酸化物とし析出させた後、ろ過し、乾燥した後、300〜800℃で焼成することによって得ることが出来る。焼成を行う際の雰囲気には特に制限はなく、大気中でも高酸素濃度または低酸素濃度雰囲気中でも、さらには真空中でも行うことが出来る。
【0023】
気相酸化脱水素反応を実施する際、触媒は粉末の形であっても一定の触媒形状を有していても使用でき、その際の成型は焼成の前後どちらでも構わない。例えば原料水溶液を加熱濃縮し乾燥させた後、未焼成の状態でタブレッターや押出し成型、打錠成型などにより所望の形状にすることもできる。
【0024】
バナジウム・マグネシウム系触媒とコバルト・モリブデン系触媒とを混合する場合には、上記方法により得られた触媒同士を混合することで得ることができる。
【0025】
当該二種の触媒を調製する際に、一方の触媒を上記手順により調製した後に、当該触媒を担体として他方の触媒成分を一方の触媒上に設置することもできる。好ましくは、
また、バナジウム・マグネシウム系触媒とコバルト・モリブデン系触媒は、原料ガスに対してガス流れに対して上流側、下流側に分けて設置することができ、好ましくは、原料ガスの流れに対して前段にバナジウム・マグネシウム系触媒を設置し、後段にコバルト・モリブデン系触媒を設置されるものである。好ましくは、バナジウム・マグネシウム系触媒がコバルト・モリブデン系触媒の表層部に設置されるものである。
【0026】
(アルカンの酸化脱水素工程)
アルカンの酸化脱水素工程とは、上記一般式(1)の触媒の存在下にアルカンを分子状酸素により気相酸化脱水素する反応工程である。当該酸化脱水素により不飽和炭化水素および/または含酸素炭化水素化合物を得ることができる。
【0027】
アルカンとは、飽和炭化水素であれば何れのものであっても良いが、好ましくは炭素数が3〜5のものであり、具体的にはプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタンであり、さらに好ましくはプロパンである。これらアルカンは単独でも複数のものを組み合わせて用いることもできる。
【0028】
本発明に用いる分子状酸素とは、酸素、オゾン、含酸素ガスおよびこれらを不活性ガスで希釈したガスであり、好ましくは酸素、空気である。当該分子状酸素は、アルカンと同モル量または小過剰のモル量を当該反応ガス中に含ませることが好ましい。
【0029】
不活性ガスとは、当該酸化脱水素反応または不飽和酸製造に影響の少ないガスをいい、例えば、希ガス、窒素ガス、二酸化炭素、各種のプラント排気ガスである。当該不活性ガスの量は、反応ガス中のアルカン、分子状酸素、必要に応じて水蒸気等以外の残余量である。
【0030】
当該不飽和炭化水素化合物とは、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテンなどである。当該含酸素炭化水素化合物とは、アクロレイン、ブテナール、メタクロレイン,ペンテナールなどである(以下、「アルデヒド」と記載することもある)。また当該不飽和酸とは、アクリル酸、メタクリル酸、ブテン酸、ペンテン酸である。
【0031】
気相酸化脱水素反応を実施する際の条件には特に制限はなく、例えば空間速度300〜30,000hr−1および反応温度250〜650℃の条件下に上記反応ガスを本発明の酸化脱水素用触媒に接触させればよい。
【0032】
上記反応は通常常圧下で実施するが、減圧下、加圧下でも実施することが出来る。反応方式についても特に制限はなく、固定床式、移動床式、または流動床式のいずれでもよい。また単流方式でもリサイクル方式でもよい。
【0033】
また、本発明は、アルカンを酸化脱水素反応により、不飽和炭化水素、含酸素炭化水素を得ることができる他、不飽和酸を同時に得ることもできる場合がある。また、本発明の触媒を用いてアルカンを気相酸化脱水素(アルカンの酸化脱水素工程)して得られた不飽和炭化水素を更に気相酸化することでアクロレイン等の不飽和アルデヒドなど(含酸素化合物)および/またはアクリル酸等の不飽和酸を得ることができる(オレフィンの酸化工程)。一方、アルカンを気相酸化脱水素して得られた含酸素炭化水素またはオレフィン酸化工程により得られた含酸素化合物を、更に酸化して不飽和酸を製造(アルデヒドの酸化工程)することができる。
【0034】
(オレフィンの酸化工程)
オレフィンの酸化工程とは、触媒の存在下に当該アルカンの気相酸化脱水素工程により得られたオレフィンを分子状酸素で酸化する方法である。当該オレフィンの酸化工程は当該アルカンの気相酸化脱水素工程後連続的に行うこともできる他、オレフィンを分離した後に分子状酸素、不活性ガスを加えた後に行うこともできる。反応温度、オレフィン等のガス成分濃度等の反応条件は通常のオレフィンの気相酸化反応と同じ条件で行うことができる。また、オレフィンの酸化工程で用いる触媒の一例としては、次の一般式(2)で表される触媒を挙げることが出来る。
【0035】
MoaBibFecAdBeCfDgOx ・・・(2)
ここで、Moはモリブデン、Biはビスマス、Feは鉄、Aは、コバルトおよびニッケル
から選ばれる少なくとも一種の元素、Bはアルカリ金属、タリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、Cはケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、およびチタンから選ばれる少なくとも1種の元素、Dはタングステン、リン、テルル、アンチモン、スズ、セリウム、鉛、ニオブ、マンガン、ヒ素及び亜鉛から選ばれる少なくとも1種の元素、Oは酸素を表し、それぞれの元素比は、a=12としたときb=0.1〜10、c=0.1〜20、d=2〜20、e=0.001〜10、f=0〜30、g=0〜4、xは酸素以外の元素の酸化状態によって定まる数値を表す。
【0036】
(アルデヒドの酸化工程)
アルデヒドの酸化工程とは、触媒の存在下に当該アルカンの酸化脱水素工程により得られた含酸素炭化水素、当該オレフィンの酸化工程により得られた含酸素炭化水素を分子状酸素で酸化する方法である。当該アルデヒドの酸化工程はアルカンの酸化脱水素工程後または当該オレフィンの酸化工程後に連続的に行うこともできる他、含酸素炭化水素を分離した後に分子状酸素、不活性ガスを加えた後に行うこともできる。当該含酸素炭化化合物は、アルデヒド特に上記発明により得られた不飽和オレフィンを用いることが好ましい。当該工程の反応温度、含酸素炭化水素等のガス成分濃度等の反応条件は通常の不飽和アルデヒドの気相酸化反応と同じ条件で行うことができる。また、アルデヒド酸化工程で用いる触媒の一例としては、次の一般式(3)で表される触媒を挙げることが出来る。
【0037】
MohViWjEkFlGmHnOx ・・・(3)
ここでMoはモリブデン、Vはバナジウム、Wはタングステン、Eは銅、コバルト、ビスマスおよび鉄から選ばれる少なくとも1種の元素、Fはアンチモンおよびニオブから選ばれる少なくとも1種の元素、Gはケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、およびチタンから選ばれる少なくとも1種の元素、Hはアルカリ土類金属、タリウム、リン、テルル、スズ、セリウム、鉛、マンガン、および亜鉛から選ばれる少なくとも1種の元素、Oは酸素を表し、それぞれの元素比はh=12としたとき、i=0.1〜10、j=0〜10、k=0.1〜20、l=0〜10、m=0〜10、n=0〜30、xは酸素以外の元素の酸化状態によって定まる数値を表す。
【0038】
(吸収工程)
生成した不飽和アルデヒド及び/又は不飽和酸は吸収塔によって捕集される。本発明における酸素源としては空気及び/又は、深冷分離法、圧力スイング吸着法などによって製造される酸素を使用することが出来る。本発明によれば、低級アルカンから水素を副生することはなく、対応するオレフィンを製造することが出来る。この場合各工程に導入されるガスに必要に応じて酸素および/または水蒸気を追加することが出来、これら追加する酸素および/または水蒸気は、例えば空気、酸素、水および/または吸収工程から排出されるガスによって供給される。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。ここで「%」は断りない限り「重量%」を意味する。なお転化率、単流収率および選択率は副生物を含めてそれぞれ以下のように定義される。
(触媒調製例1)
以下に、バナジウム・マグネシウム系触媒の調製例を示す。水300mlを沸騰させ、バナジン酸アンモニウム5.0g加え溶解後、Mg(OH)を9.97g加える。加熱し、ペースト状になるまで攪拌する。これを120℃12時間空気中で乾燥した後に550℃2時間空気中で焼成し、バナジウム・マグネシウム系触媒(触媒A)を得る。
(触媒調製例2)
以下に、モリブデン・コバルト系触媒の調製例を示す。水100ml中にパラモリブデン酸アンモニウム10gを40℃で溶解し、更に、水50ml中に硝酸コバルト15.66gを溶解させた溶液を添加し、ペースト状になるまで撹拌しながら加熱する。これを120℃2時間空気中で乾燥した後に550℃6時間空気中で焼成し、モリブデン・コバルト系触媒を得る(触媒B)。
【0040】
(実施例1)
上記触媒(A)、(B)を各0.5gを、流通式反応装置にガス流れ方向から(A)、(B)の順に順に充填し、下記条件下で反応を行った。反応温度は500℃、SV(空間速度)は3000hr−1、反応ガスはプロパン、酸素、窒素の各モル比が1/1/8である。以下に転化率、選択率、単流収率、C3total選択率及びC3total収率の算出式を示す。
【0041】
【数1】

結果は表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
(比較例1)
実施例1において触媒(B)を使用しない以外は、実施例1と同様にして反応を行った。結果は表1に示す。
【0044】
(比較例2)
実施例1において触媒(A)を使用しない以外は、実施例1と同様にして反応を行った。結果は表1に示す。
【0045】
触媒(A)、(B)の単独に比べ、積層にすることで燃焼が抑えられ全C3(プロパンとアクロレイン)収量は高い値を示した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、アルカンの酸化脱水素反応に用いる触媒に関するものである。当該触媒を用いることでアルカンの酸化脱水素反応を好適に行うことができるものである。本発明により得られた不飽和炭化水素等は更に酸化することにより不飽和アルデヒド、不飽和酸を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二種以上の触媒を用いてアルカンを気相酸化脱水素することを特徴とするアルカンの気相酸化脱水素方法。
【請求項2】
請求項1記載の触媒が、バナジウム・マグネシウム系触媒とコバルト・モリブデン系触媒であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
請求項1記載の二種以上の触媒がバナジウム・マグネシウム系触媒とコバルト・モリブデン系触媒とであって、かつバナジウム・マグネシウム系触媒とコバルト・モリブデン系触媒とを混合したものであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
請求項1記載の二種以上の触媒がバナジウム・マグネシウム系触媒とコバルト・モリブデン系触媒とであって、かつ原料ガスの流れに対して前段にバナジウム・マグネシウム系触媒を設置し、後段にコバルト・モリブデン系触媒を設置されていることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
請求項1記載の二種以上の触媒がバナジウム・マグネシウム系触媒とコバルト・モリブデン系触媒とであって、かつバナジウム・マグネシウム系触媒がコバルト・モリブデン系触媒の表層部に設置されていることを特徴とする請求項1記載の方法。

【公開番号】特開2010−260793(P2010−260793A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223819(P2007−223819)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】