説明

アルギナーゼ活性促進剤、免疫賦活剤、抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、及び痩身剤

【課題】 優れた、アルギナーゼ活性促進作用、免疫賦活作用、抗老化作用、美白作用、抗酸化作用、及び痩身作用などを有する、アルギナーゼ活性促進剤、免疫賦活剤、抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、及び痩身剤を提供する。
【解決手段】 キオン属植物の抽出物を含有するアルギナーゼ活性促進剤、免疫賦活剤、抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、及び痩身剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いアルギナーゼ活性促進果、免疫賦活効果、抗老化効果、美白効果、抗酸化効果、及び痩身効果を発揮するアルギナーゼ活性促進剤、免疫賦活剤、抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、及び痩身剤に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢に伴う皮膚の弾性低下やシミ及び肥満といった老化症状の要因として、細胞機能低下、コラーゲン等の細胞マトリックス成分の減少や変性、紫外線によるメラニン産生や色素沈着及び細胞の酸化傷害、脂肪の蓄積等が挙げられる。このような老化症状を防止・改善するために、従来様々な有効成分の検索及び配合検討がなされてきた。
アルギナーゼ活性促進剤としてはアンズ果汁(特許文献1)、細胞賦活剤としてはヒトリシズカ抽出物(特許文献2)、抗老化剤としては金時草抽出物(特許文献3)、美白剤としてはクルミの種皮抽出物(特許文献4)、抗酸化剤としてはコウヤマキ抽出物(特許文献5)、痩身剤としてはグリコーゲン(特許文献6)等が知られている。
なお、キオン属植物抽出物を有効成分とするアルギナーゼ活性促進剤、細胞賦活剤、コラーゲン産生促進剤、美白剤、抗酸化剤、及び痩身剤に関する先行技術は認められない。
【0003】
【特許文献1】特開2006−143608号公報
【特許文献2】特開2008−088074号公報
【特許文献3】特開2008−174459号公報
【特許文献4】開2008−081408号公報
【特許文献5】特開2008−074748号公報
【特許文献6】特開2008−001677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来用いられているアルギナーゼ活性促進剤、免疫賦活剤、抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、及び痩身剤は、本質的な効果としては不十分な場合もあり、より優れた有効成分の開発が期待されていた。本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、天然由来で安全性が高く、効果のより優れたアルギナーゼ活性促進剤、免疫賦活剤、抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、及び痩身剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、種々の天然物について検討を行った結果、キオン属植物の抽出物に優れた、アルギナーゼ活性促進作用、免疫賦活作用、抗老化作用、美白作用、抗酸化作用、及び痩身作用を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、キオン属植物の抽出物を含有するアルギナーゼ活性促進剤、免疫賦活剤、抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、及び痩身剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、優れた効果を有するアルギナーゼ活性促進剤、免疫賦活剤、抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、及び痩身剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の原料として用いられる植物であるキク科(Compositae)キオン属(Senecio)植物としては、ハンゴンソウ(Senecio cannabifolius Less.)、エゾオグルマ(Senecio pseudoarnica Less.)、キオン(Senecio nemorensis L.)、オカオグルマ(Senecio integrifolius (L.) Clairv. subsp. fauriei (Lev. et Vant.)Kitam. ; Senecio integrifolius var. spathulatus(Miq.)Hara ; Senecio fauriei Lev. et Vant ; Senecio aurantiacus var. spathulatus Miq.)、サワギク(Senecio nikoensis Miq.)、サワオグルマ(Senecio pierotii Miq.)、ノボロギク(Senecio vulgaris L.)、キバナコウリンカ(Senecio furusei Kitam.)、ギンゲツ(Senecio haworthii Sch.−Bip.)、コウリンカ(Senecio flammeus Turcz. ex DC. subsp. glabrifolius (Cufod.) Kitam.)、コウリンギク(Senecio argunensis Turcz.)、シキンショウ(Senecio crassissimum Humb.)、シネラリア(Senecio cruentus DC.)、シロタエギク(Senecio cineraria DC.)、セネキオ・アンタンドロイ(Senecio antandoroi Scott−Elliot)、セネキオ・エレガンス(Senecio orbicularis Sond. ex Harv.)、セネキオ・オルビクラリス(Senecio orbicularis Sond. ex Harv.)、セネキオ・プラエコクス(Senecio praecox (Cav.) DC.)セネキオ・マクログロッスス・ウァリエガータ(Senecio macroglossus DC. var. variegata Hort)、セネキオ・ラディカンス(Senecio radicans Sch.−Bip.)、セネキオ・ロンギフロルス(Senecio longiflorus Sch.−Bip.)、タイキンギク(Senecio scandens Buch.−Hamil. ex D. Don)、タカネコウリンカ(Senecio takedanus Kitam.)、タカネコウリンギク(Senecio flammeus Turcz. ex DC. subsp. Flammeus)、テツシャクジョウ(Senecio stapeliaeformis Phillips)、マンポウ(Senecio repens Jacobs)、ミドリノスズ(Senecio rowleyanus Jacobs)、ミヤマオグルマ(Senecio kawakamii Makino)、ヤコブボロギク(Senecio jacobaea L.)、セネキオ・アウレウス(Senecio aureus L.)、菊葉千里光(Senecio chrysanthemoides DC.)、ムラサキオグルマ(Senecio elegans L.)、サワギク(Senecio nikonensis Miq.)、senekio・オレラセア(Senecio oleracea Crev. et Lem.)、大白頂草(Senecio orgyetorum Diels)、セネキア・プラティフィルス(Senecio platyphyllus DC.)等が例示される。本発明においては、これらキオン属植物から1種又は2種以上を選択して用いるが、本発明の効果の点から、ハンゴンソウ、エゾオグルマから選択される1種又は2種を用いることが好ましい。
【0008】
本発明におけるキオン属植物の抽出物には、キオン属植物の原体や乾燥物も抽出物に含まれるが、各種溶媒を用いて抽出した抽出物を用いることが好ましい。抽出には、キオン属植物の葉、花、種子、根、茎、芽などのいずれの部位を用いても構わないが、簡便に利用するには、全草を用いるとよい。抽出の際は、生のまま用いてもよいが、抽出効率を考えると、細切、乾燥、粉砕等の処理を行った後に抽出を行うことが好ましい。抽出は、抽出溶媒に浸漬するか、超臨界流体や亜臨界流体を用いた抽出方法でも行うことができる。抽出効率を上げるため、撹拌や抽出溶媒中でホモジナイズしてもよい。抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の温度とするのが適切である。抽出時間は抽出溶媒の種類や抽出温度によっても異なるが、1時間〜14日間程度とするのが適切である。
【0009】
抽出溶媒としては、水の他、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、1、3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル類、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類などの溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。また、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。さらに、水や二酸化炭素、エチレン、プロピレン、エタノール、メタノール、アンモニアなどの1種又は2種以上の超臨界流体や亜臨界流体を用いてもよい。
【0010】
キオン属植物の抽出として特に好ましいのは、常温常圧下における低級アルコール水溶液(たとえば、メタノール水溶液又はエタノール水溶液、特には、エタノール水溶液)による抽出、高温(例えば50〜200℃、好ましくは、50〜150℃、特には120℃)高圧化における水による抽出である。このような抽出を行うことで、アルギナーゼ活性促進剤、免疫賦活剤、抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、又は痩身剤としての機能に優れた抽出物を効果的且つ確実に得ることができる。
【0011】
キオン属植物の上記溶媒による抽出物は、そのままでも使用することができるが、濃縮、乾固した物を水や極性溶媒に再度溶解して使用することもでき、これらの生理作用を損なわない範囲で脱色、脱臭、脱塩等の精製処理やカラムクロマトグラフィー等による分画処理を行った後に用いてもよい。キオン属植物の前記抽出物やその処理物及び分画物は、各処理及び分画後に凍結乾燥し、用時に溶解して用いることもできる。
【0012】
キオン属植物抽出物は、アルギナーゼ、特に表皮角化細胞に存在するアルギナーゼの活性を促進する作用を発揮し、アルギナーゼ活性促進剤として有用である。
【0013】
キオン属植物抽出物は、免疫細胞賦活作用を有し、免疫賦活剤として有用である。
【0014】
キオン属植物抽出物は、真皮線維芽細胞賦活作用、表皮角化細胞賦活作用、真皮線維芽細胞コラーゲン産生促進作用、ヒト真皮線維芽細胞ヒアルロン酸産生促進作用、ヒト真皮線維芽細胞ATP産生促進作用を発揮し、抗老化剤として有用である。
【0015】
キオン属植物抽出物は、メラニン産生抑制作用、チロシナーゼ活性阻害作用を発揮し、美白剤として有用である。
【0016】
キオン属植物抽出物は、DPPHラジカル消去作用、スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)様作用、ヒト表皮角化細胞過酸化脂質耐性作用を発揮し、抗酸化剤として有用である。
【0017】
キオン属植物抽出物は、中性脂肪蓄積抑制作用を発揮し、痩身剤として有用である。
【0018】
以下に、キオン属植物抽出物の製造例、各作用を評価するための試験について詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれによってなんら限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
[ハンゴンソウ抽出物1]
ハンゴンソウの全草を乾燥させて粉砕し、サンプル質量の20倍量の50質量%エタノールを加え、室温で撹拌しながら2時間抽出した。得られた抽出液を濾過して不溶物を取り除き、減圧濃縮後、凍結乾燥を行って、エタノール抽出物を得た。
【0020】
[ハンゴンソウ抽出物2]
ハンゴンソウの全草を乾燥させて粉砕し、サンプル質量の20倍量の精製水を加え、オートクレーブにより20分間、120℃に加温して抽出した。得られた抽出液から、温度の高い状態を保ちながら吸引濾過により不溶物を取り除いた後、凍結乾燥を行って、熱水抽出物を得た。
【0021】
[エゾオグルマ抽出物1]
エゾオグルマの全草を乾燥させて粉砕し、サンプル質量の20倍量の50質量%エタノールを加え、室温で撹拌しながら2時間抽出した。得られた抽出液を濾過して不溶物を取り除き、減圧濃縮後、凍結乾燥を行って、エタノール抽出物を得た。
【0022】
[エゾオグルマ抽出物2]
エゾオグルマの全草を乾燥させて粉砕し、サンプル質量の20倍量の精製水を加え、オートクレーブにより20分間、120℃に加温して抽出した。得られた抽出液から、温度の高い状態を保ちながら吸引濾過により不溶物を取り除いた後、凍結乾燥を行って、熱水抽出物を得た。
【0023】
[エゾオグルマ抽出物3]
超臨界抽出装置に乾燥、粉砕したさせたエゾオグルマの全草を投入し、40℃において15MPaの気圧下で二酸化炭素の超臨界流体を用いて抽出した。抽出物を回収し、超臨界抽出物を得た。
【0024】
ハンゴウソウ抽出物1,2、エゾオグルマ抽出物1〜3を用いて、アルギナーゼ活性促進作用、免疫賦活作用、抗老化作用、美白作用、抗酸化作用、又は痩身作用の評価を行った。なお各評価結果に記載した*及び**は、t−検定における有意確率P値に対し、有意確率5%未満(P<0.05)を*で、有意確率1%未満(P<0.01)を**でそれぞれ表したものである。
【0025】
[表皮角化細胞アルギナーゼ活性促進作用]
ヒト皮膚角化細胞(HaCaT細胞)を1ウェル当たり2.0×104個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地にはダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)にウシ胎児血清(FBS)を5質量%添加したものを用いた。24時間後1.2mMCaCl2を含む5質量%FBS添加DMEM培地によって、各濃度に調整したハンゴンソウ抽出物2若しくはエゾオグルマ抽出物2を含有するサンプル液に交換しさらに9日間培養した。培地は3日に1回交換した。培養終了後、培養上清を採取し、アルギナーゼ活性促進能の評価を行った。アルギナーゼはアルギニンを加水分解し、オルニチンと尿素を生成する。尿素はウレアーゼによってアンモニアに分解され、アンモニアはペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム二水和物(ニトロプルシッドナトリウム)存在下でサリチル酸、次亜塩素酸と反応し、インドフェノールが生成する。アルカリ性条件下でインドフェノールの吸収(570nm)を測定し、尿素濃度を求め、アルギナーゼ活性の定量を行った。尿素定量のため、和光純薬社製尿素窒素B−テストワコーを用いて測定を行い、検量線を作成した。また、BCAProteinAssayKitにて、各ウェルのタンパク量を測定し、単位タンパク量あたりのアルギナーゼ活性促進能を求めた。サンプルを添加しないブランクの値を100とした時の相対値により、アルギナーゼ活性促進能を評価した。結果は、表1、2に示した通りであり、ハンゴウソウ抽出物2、エゾオグルマ抽出物2には、高いアルギナーゼ活性促進作用が認められた。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
[免疫細胞賦活作用(ヒト急性単球白血病細胞株を用いた細胞賦活作用)]
ヒト急性単球白血病細胞株(THP−1)を1ウェル当り5.0×104個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には1質量%のFBSを添加したRpswell Park Memorial Institute培地(RPMI)を用いた。24時間後、Phorbol 12−Myristate 13−Acetate(PMA)を20ng/mLとなるように細胞培養液に添加した。さらに24時間後、1質量%FBS添加RPMI培地にて各濃度に調整したハンゴウソウ抽出物2若しくはエゾオグルマ抽出物2を含有するサンプル培養液に交換し、48時間培養した。次に生細胞数測定試薬SF(同仁化学研究所)1/10量を添加した1質量%FBS添加RPMI培地を、上清を除いた細胞に添加し、2時間培養した。混合後、450nmの吸光度を測定した。同時に濁度として650nmの吸光度を測定し、両測定値の差を用いて細胞賦活作用を評価した。抽出物無添加のコントロールにおける細胞賦活作用を100とした時の相対値にて細胞賦活作用を算出した。その結果表3、4に示したとおり、ハンゴンソウ抽出物、エゾオグルマ抽出物には、高い免疫賦活作用が認められた。
【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
[ヒト真皮線維芽細胞賦活作用]
正常ヒト真皮線維芽細胞を1ウェル当り2.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には1質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後、1質量%FBS添加DMEM培地にて表5に示す濃度に調整したハンゴンソウ抽出物2若しくはエゾオグルマ抽出物1を含有する培養液に交換し、さらに48時間培養した。次に400μg/mLとなるよう培地にて調整したMTT試薬を、上清を除いた細胞に添加し、約2時間培養した。最後に2−プロパノールにて生じたフォルマザンを抽出し、550nmの吸光度を測定した。同時に濁度として650nmの吸光度を測定し、両測定値の差を用いて細胞賦活作用を評価した。線維芽細胞賦活作用は、抽出物無添加のブランクにおける細胞賦活作用を100とした相対値にて評価を行った。その結果表5、6に示したとおり、ハンゴンソウ抽出物、エゾオグルマ抽出物には、高いヒト真皮線維芽細胞賦活作用が認められた。
【0032】
【表5】

【0033】
【表6】

【0034】
[表皮角化細胞賦活作用]
ヒト表皮角化細胞HaCaTを1ウェル当り2.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後、5質量%FBS添加DMEM培地にて各濃度に調整したハンゴンソウ抽出物2を含有する培養液に交換し、さらに24時間培養した。次に100μg/mlとなるよう培地にて調整したMTT試薬を、上清を除いた細胞に添加し、約2時間培養した。最後に2−プロパノールにて生じたフォルマザンを抽出し、550nmの吸光度を測定した。同時に濁度として650nmの吸光度を測定し、両測定値の差を用いて細胞賦活作用を評価した。評価結果をハンゴンソウ抽出物2無添加のコントロールにおける細胞賦活作用を100とした時の相対値にて評価を行った。その結果表7に示したとおり、ハンゴンソウ抽出物には、高いヒト表皮角化細胞賦活作用が認められた。
【0035】
【表7】

【0036】
[真皮線維芽細胞コラーゲン産生促進作用]
正常ヒト真皮繊維芽細胞を1ウェル当り2.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後、0.5質量%FBS添加DMEM培地にて各濃度に調整したハンゴンソウ抽出物2若しくはエゾオグルマ抽出物2を含有する培養液に交換し、さらに24時間培養した。培養上清中に分泌されたタイプIコラーゲンの定量にはELISA法を用い、最後は標識されたペルオキシダーゼに対し2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)及び過酸化水素を添加し反応させた後、405nmの吸光度を測定した。PIERCE社製BCA Protein Assay Kitにて各ウェルのタンパク量を測定し、単位タンパク量当りのタイプIコラーゲン産生量を求めた。評価結果を抽出物2無添加のコントロールにおける単位タンパク量当りのタイプIコラーゲン産生量を100とした時の相対値にて評価を行った。その結果、表8、9に示したとおり、ハンゴンソウ抽出物、エゾオグルマ抽出物には、高い真皮線維芽細胞コラーゲン産生促進作用が認められた。
【0037】
【表8】

【0038】
【表9】

【0039】
[ヒト真皮線維芽細胞ヒアルロン酸産生促進作用]
正常ヒト真皮繊維芽細胞を1ウェル当り2.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後、0.5重量%FBS添加DMEM培地にて各濃度に調整したハンゴンソウ抽出物2又はエゾオグルマ抽出物3を含有する培養液に交換し、さらに3日間培養した。培養上清中に分泌されたヒアルロン酸の定量には、プロテオグリカンを用いた間接ELISA法を用い、最後は標識されたペルオキシダーゼに対し2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)及び過酸化水素を添加し反応させた後、マイクロプレートリーダーにて405nmの吸光度を測定した。PIERCE社製BCA Protein Assay Kitにて各ウェルのタンパク量を測定し、単位タンパク量当りのヒアルロン酸産生量を求めた。抽出物無添加のコントロールにおける単位タンパク量当りのヒアルロン酸産生量を100とした相対値にてヒアルロン酸産生促進作用の評価を行った。その結果表10、11に示したとおり、ハンゴンソウ抽出物、エゾオグルマ抽出物には、高いヒアルロン酸産生促進作用が認められた。
【0040】
【表10】

【0041】
【表11】

【0042】
[ヒト真皮線維芽細胞ATP産生促進作用]
正常ヒト真皮線維芽細胞を1ウェル当り4.0×10個となるように48ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には1重量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後、1%FBS添加DMEMによって各濃度に調整したハンゴンソウ抽出物2又はエゾオグルマ抽出物2を含有する培養液に交換し、さらに24時間培養した。細胞上清を除去し洗浄し、細胞を超音波処理して細胞中のATPを溶出した。その際に細胞内にあるATP分解酵素の溶出を防ぐため、ATP分解酵素阻害剤(Cellstein Hoechst33342)を添加した。ATPの定量にはMolecular Probes社製 ATP determination kitを使用した。細胞溶解液を試験管に分注し、ルシフェラーゼおよびルシフェリン試薬を添加し、化学発光を測定した。抽出物無添加のコントロールにおけるATP産生能を100とした相対値にてヒト真皮線維芽細胞ATP産生促進作用の評価を行った。その結果、表12、13に示したとおり、ハンゴンソウ抽出物、エゾオグルマ抽出物には、高いヒト真皮線維芽細胞ATP産生促進作用が認められた。
【0043】
【表12】

【0044】
【表13】

【0045】
上述のごとくキオン属植物抽出物は、真皮線維芽細胞賦活作用、表皮角化細胞賦活作用、真皮線維芽細胞コラーゲン産生促進作用、ヒト真皮線維芽細胞ヒアルロン酸産生促進作用、ヒト真皮線維芽細胞ATP産生促進作用を発揮し、抗老化剤として有用である。
【0046】
[B16マウスメラノーマ細胞メラニン産生抑制作用]
B16マウスメラノーマ細胞(B16F0細胞)を1ディッシュ当り18000個となるように90mmディッシュに播種した。播種培地には5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後、5質量%FBS添加DMEM培地にて各濃度に調整したハンゴンソウ抽出物1若しくはエゾオグルマ抽出物1を含有する培養液に交換し、さらに5日間培養した。培養終了後、トリプシン処理にて細胞をはがし、1.5 mLマイクロチューブに移して遠心操作して細胞沈殿物を得た。得られた沈殿物は下記評価基準を基にその黒化状況を肉眼判定した。評価ではネガティブコントロールに5%重量FBS添加DMEM培地、ポジティブコントロールに50 mM乳酸ナトリウムを含有する5%重量FBS添加DMEM培地を用いた。これらの肉眼判定結果は判定5及び判定1とし、サンプル判定の指標とした。肉眼判定は下記に示す通り、5段階評価した。また同時に、沈殿物に組織溶解剤(商品名Solvable)を添加して煮沸し、室温に戻して分光光度計(HITACHI製分光光度計U−3010)により500nmの吸光度を測定し、総メラニン量を求めた。その結果、表14、15に示したとおりハンゴンソウ抽出物、エゾオグルマ抽出物には、高いメラニン産生抑制作用が認められた。
評価基準
判定1:ポジティブコントロールと同程度(ほぼ白色)
判定2:ポジティブコントロールより僅かに黒い(薄い褐色)
判定3:ポジティブコントロールとネガティブコントロールの中間(褐色)
判定4:ネガティブコントロールより僅かに白い(黒褐色)
判定5:ネガティブコントロールと同程度(ほぼ黒色)
【0047】
【表14】

【0048】
【表15】

【0049】
[ヒト表皮メラニン細胞チロシナーゼ活性阻害作用]
正常ヒト表皮メラニン細胞を1ウェル当り3.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地にはMedium 254Sを用いた。24時間後、Medium 254Sによって各濃度に調整したハンゴンソウ抽出物2若しくはエゾオグルマ抽出物3を含有する培養液に交換し、さらに48時間培養した。次に1質量%Triton−Xを含有するリン酸緩衝液75μLに交換し、細胞を完全に溶解させ、内50μLを粗酵素液として使用した。粗酵素液に基質となる50μLの0.05質量%L−ドーパ含有リン酸緩衝液を加え、37℃で2時間静置した。基質添加直後と反応終了時の405 nmの吸光度を測定し、生成されたドーパメラニン量は両測定値の差を次式に導入して求めた。
生成されたドーパメラニン量
={(反応後405nm値−反応前405nm値)−2.166}/5.238
また、PIERCE社製BCA Protein Assay Kitにて各ウェルのタンパク量を測定し、単位タンパク量当りのドーパメラニン生成量を求めた。評価結果は抽出物無添加のコントロールにおける単位タンパク量当りのドーパメラニン生成量と比較した。表16、17に示したとおり、ハンゴンソウ抽出物、エゾオグルマ抽出物には、高いヒト表皮メラニン細胞チロシナーゼ活性阻害作用が認められた。
【0050】
【表16】

【0051】
【表17】

【0052】
上述したとおり、キオン属植物抽出物は、メラニン産生抑制作用、チロシナーゼ活性阻害作用を発揮し、美白剤として有用である。
【0053】
[DPPHラジカル消去作用]
50重量%エタノールによって各濃度に調整したハンゴンソウ抽出物1若しくはエゾオグルマ抽出物2を含有する溶液100μLに、0.2mM 1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)エタノール溶液100μLを添加し、よく混合した後、室温、暗所にて10分間静置し、DPPHラジカルに由来する516nmの吸光度を測定した。試料無添加時の吸光度を(A)、試料添加時の吸光度を(B)とした時の、DPPHラジカル消去率を次式により算出した。その結果、表18、19に示したとおり、ハンゴンソウ抽出物、エゾオグルマ抽出物には、高いDPPHラジカル消去作用が認められた。
消去率(%)={1 −(B)/(A)}×100
【0054】
【表18】

【0055】
【表19】

【0056】
[SOD様活性の評価(スーパーオキサイドアニオン消去作用)]
0.25mM WST−1及び 1mM Hypoxanthineを含むHANK’S(+)溶液 75μLに、HANK’S(+)溶液にて表9に示した濃度に調整したハンゴンソウ抽出物1若しくはエゾオグルマ抽出物2を含有する溶液25μLを添加した。さらに、Xanthine Oxidase 25μL(0.0075 Units)を添加し、37℃にて15分間反応後、450nmの吸光度を測定した。試料無添加時の吸光度を(A)、試料添加時の吸光度を(B)とした時、スーパーオキサイドアニオン消去率を次式により算出した。その結果、表20、21に示したとおり、ハンゴンソウ抽出物、エゾオグルマ抽出物には、高いスーパーオキサイドアニオン消去作用が認められた。
消去率(%)={1 −(B)/(A)}×100
【0057】
【表20】

【0058】
【表21】

【0059】
[ヒト表皮角化細胞過酸化脂質耐性の評価]
ヒト表皮角化細胞HaCaTを1ウェル当り2.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には10質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後、10質量%FBS添加DMEM培地にて各濃度に調整したハンゴンソウ抽出物2若しくはエゾオグルマそう抽出物2を含有する培養液に交換し、さらに24時間培養した。任意濃度のt−butylhydroperoxideを添加したHANK’S(+)溶液に交換し、2時間培養した。さらに、150μg/mLニュートラルレッドを含有するPBS(−)に交換し、37℃にて2時間培養した。次に1容量%酢酸を含む50容量%エタノール水溶液に交換し、細胞内に取りこまれたニュートラルレッドを抽出し、抽出液の540nmの吸光度を測定した。t−butylhydroperoxide無添加のコントロールにおける細胞生存率を100としたときの相対値にて評価した。その結果、表22、23に示したとおり、ハンゴンソウ抽出物、エゾオグルマ抽出物には、高いヒト表皮角化細胞過酸化脂質耐性作用が認められた。
【0060】
【表22】

【0061】
【表23】

【0062】
上述したとおり、キオン属植物抽出物は、DPPHラジカル消去作用、スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)様作用、ヒト表皮角化細胞過酸化脂質耐性作用を発揮し、抗酸化剤として有用である。
【0063】
[ヒト前駆脂肪細胞中性脂肪蓄積抑制作用]
皮下脂肪由来正常ヒト前駆脂肪細胞Cryo HPRAD−SQを1ウェル当り5.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地にはPGM培地(10% FBS, 2 mM L−glutamine, 100 units/mL Penicilline, 100μg/mL Streptomycine含有)を用いた。48時間培養後、各濃度に調整したハンゴンソウ抽出物2を添加したPGM分化用培地(10 μg/mLインシュリン, 1 μM Dexamethasone, 200μM Indomethacin, 500μM Isobutylmethylxanthine含有)に交換し、脂肪細胞への分化誘導を行った。分化誘導開始後、コントロール群が成熟して細胞内に多数の脂肪滴が蓄積されるまで、10〜14日間培養した。細胞を回収後、10容量%中性緩衝ホルムアルデヒド溶液を用いて細胞を固定した。PBS(−)にて洗浄後、0.5w/v%オイルレッド溶液を添加し、37℃で2時間培養した。PBS(−)にて洗浄後、メタノールを添加し、色素を抽出し、550nmの吸光度を測定した。同時に、濁度として650nmの吸光度を測定し、両測定値の差を用いて中性脂肪蓄積抑制作用を評価した。結果は抽出物無添加のコントロールにおける中性脂肪蓄積量を100とした時の相対値にて評価した。その結果、表24に示したとおり、ハンゴンソウ抽出物は、高い中性脂肪蓄積抑制作用を示した。
【0064】
【表24】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キオン属植物抽出物を有効成分とするアルギナーゼ活性促進剤。
【請求項2】
キオン属植物抽出物を有効成分とする免疫賦活剤。
【請求項3】
キオン属植物抽出物を有効成分とする抗老化剤。
【請求項4】
キオン属植物抽出物を有効成分とする美白剤。
【請求項5】
キオン属植物抽出物を有効成分とする抗酸化剤。
【請求項6】
キオン属植物抽出物を有効成分とする痩身剤

【公開番号】特開2010−70456(P2010−70456A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236044(P2008−236044)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】