説明

アルコール検出装置

【課題】本発明は、煙草煙によるアルコールセンサの劣化を抑制することができるアルコール検出装置を提供する。
【解決手段】本発明は、被験者によって吹込口に吹き込まれた呼気のアルコール濃度を検出するアルコール検出装置1であって、吹込口に煙草煙が吹き付けられているか否かを判定するECU2と、ECU2により煙草煙が吹き付けられていると判定された場合に、煙草煙を吹き付け側へ戻すように気流を生じさせるファン9と、を備える。このアルコール検出装置1によれば、吹込口に煙草煙が吹き付けられていると判定された場合、ファン9が生じさせる気流によって煙草煙が吹き付け側へ戻されるので、煙草煙が吹込口内に入り込んだとしてもアルコールセンサ7と接触する前に排出することが可能となり、これによって煙草煙によるアルコールセンサ7の劣化を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の呼気のアルコール濃度を検出するアルコール検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2006−201097号公報がある。この公報に記載された酒気帯びチェッカーは、アルコールセンサの近傍にヒータが組み込まれており、このヒータによりアルコールセンサのヒートクリーニングを行うことで、汚れ等によるアルコールセンサの劣化防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−201097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した酒気帯びチェッカーにおいては、被験者が呼気と共に煙草煙をアルコールセンサに吹き付けると、煙草煙によりセンサが劣化し、正確なアルコール濃度の検出が妨げられるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、煙草煙によるアルコールセンサの劣化を抑制することができるアルコール検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被験者によって吹込口に吹き込まれた呼気のアルコール濃度を検出するアルコール検出装置であって、吹込口に煙草煙が吹き付けられているか否かを判定する吹付け判定手段と、吹付け判定手段により煙草煙が吹き付けられていると判定された場合に、煙草煙を吹き付け側へ戻すように気流を生じさせる気流発生手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るアルコール検出装置によれば、吹込口に煙草煙が吹き付けられていると判定された場合、気流発生手段が生じさせる気流によって煙草煙が吹き付け側へ戻されるので、煙草煙が吹込口内に入り込んだとしてもアルコールセンサと接触する前に排出することが可能となり、これによって煙草煙によるアルコールセンサの劣化を抑制することができる。
【0008】
また、気流発生手段は、順回転により呼気を吸引すると共に、逆回転により煙草煙を吹き付け側へ戻すように気流を生じさせるファンを有していることが好ましい。このような構成によれば、煙草煙の吹き付けが検出された場合に、ファンの逆回転により煙草煙を吹き付け側へ戻すことができる一方、通常時においては、ファンの順回転により呼気を吸引してアルコールセンサへと送ることが可能となる。
【0009】
また、被験者の顔を撮像する被験者撮像カメラを更に備え、吹付け判定手段は、被験者撮像カメラが撮像した被験者の顔画像に基づいて、吹込口に煙草煙が吹き付けられているか否かを判定することが好ましい。このような構成によれば、被験者撮像カメラが撮像した被験者の顔画像に基づいて、被験者が煙草煙を吹き付けているのか、或いは空気中の煙草煙が吹込口に入り込んだのかを判定することが可能となるので、誤判定によりアルコール検査が中止されることを回避することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、煙草煙によるアルコールセンサの劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るアルコール検出装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】アルコール検出装置を示す正面図である。
【図3】アルコール検出装置の使用例を示す図である。
【図4】図1に示すファン及び各種センサを示す概略図である。
【図5】アルコール検出装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るアルコール検出装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1〜図3に示すように、本発明に係るアルコール検出装置1は、車両の運転席付近に備えられた箱状の装置であり、配線を通じて車両と電気的に接続されている。アルコール検出装置1の正面には、被験者Sが呼気を吹き込むための吹込口Tが設けられており、この吹込口Tに吹き込まれた呼気のアルコール濃度が検出される。アルコール検出装置1は、装置を統括的に制御するECU[Electric Control Unit](吹付け判定手段)2を有している。
【0014】
ECU2は、演算処理を行うCPU[Central Processing Unit]、記憶部となるROM[Read Only Memory]及びRAM[Random Access Memory]、入力信号回路、出力信号回路、電源回路等により構成されている。ECU2は、スイッチ3、被験者撮像カメラ(吹付け検出手段)4、CO2センサ5、及び湿度センサ6と電気的に接続されている。更に、ECU2は、アルコールセンサ7、妨害ガスセンサ8、ファン(気流発生手段)9、インジケータ10、及び通信部11と電気的に接続されている。スイッチ3は、アルコール検出装置1を起動するための起動スイッチである。スイッチ3をON状態に切り換えることにより、アルコール検出装置1が起動する。また、スイッチ3をOFF状態に切り換えることにより、アルコール検出装置1が停止する。
【0015】
図1及び図2に示すように、被験者撮像カメラ4は、アルコール検出装置1の正面に設けられ、吹込口Tに呼気を吹き込もうとする被験者Sの顔を撮像するものである。被験者撮像カメラ4は、撮像した被験者Sの顔画像の情報をECU2に送信する。
【0016】
図1及び図4に示すように、CO2センサ5は、アルコール検出装置1内で吹込口Tの奥側に配置され、空気中の二酸化炭素(CO2)を検出するものである。CO2センサ5は、検出したCO2に関するCO2情報をECU2に送信する。また、湿度センサ6は、アルコール検出装置1内で吹込口Tの奥側に配置され、空気中の湿度を検出するものである。湿度センサ6は、検出した湿度に関する湿度情報をECU2に送信する。
【0017】
アルコールセンサ7は、アルコール検出装置1内で吹込口Tの手前側に配置され、空気中のアルコール濃度を検出するものである。アルコールセンサ7は、検出したアルコール濃度に関するアルコール濃度情報をECU2に送信する。
【0018】
妨害ガスセンサ8は、アルコール検出装置1内で吹込口Tの手前側に配置され、アルコールセンサ7におけるアルコール濃度の検出を妨害するガス(すなわち、アルコールセンサ7においてアルコールと誤認される呼気の臭い成分等)の濃度を検出するものである。妨害ガスセンサ8は、検出した妨害ガスの濃度に関する妨害ガス濃度情報をECU2に送信する。
【0019】
ファン9は、アルコール検出装置1内で吹込口Tに設けられ、回転により気流を生じさせるものである。ファン9は、アルコール検出装置1が起動された場合に順回転を行うと共に、ECU2からの指令に応じて逆回転を行う。ファン9の順回転により吹込口T内に空気を吸引する気流が生じ、ファン9の逆回転により吹込口Tから空気を排出する気流が生じる。
【0020】
インジケータ10は、ランプの点灯等により、被験者Sに対してアルコール検出装置1に関する各種情報を表示するものである。インジケータ10は、ECU2の指令により、エラーの表示や飲酒状態の判定結果の表示等を行う。
【0021】
通信部11は、車両側に設けられ、通信インフラを通じて管理者(例えば、運送事業会社の管理システムや責任者等)に各種情報を送信するものである。通信部11は、ECU2の指令により、悪質な行為(煙草煙を何度もアルコール検出装置1に吹き付ける等の行為)に関する情報を管理者に通知する。
【0022】
ECU2は、被験者撮像カメラ4からの送信により被験者Sの顔画像情報を取得する。ECU2は、取得した被験者Sの顔画像情報に基づいて、被験者Sが煙草煙を吹込口Tに吹き付けているか否かを判定する。具体的には、ECU2は、被験者Sの顔画像情報から呼気を吹き付ける被験者Sの口から煙草煙が出ているか否かを判別することにより、煙草煙を吹込口Tに吹き付けているか否かを判定する。被験者Sの口から煙草煙が出ているか否かの判別については、例えば予め煙草煙の出ている顔画像をテンプレートとして記憶し、このテンプレートと取得した顔画像とのマッチングを取ることにより判別すればよい。
【0023】
ECU2は、被験者Sが煙草煙を吹込口Tに吹き付けていないと判定した場合、CO2センサ5から送信されたCO2情報に基づいて、アルコール検出装置1内に呼気が吹き込まれたか否かを判定する。ECU2は、アルコール検出装置1内に呼気が吹き込まれたと判定した場合、湿度センサ6から送信された湿度情報、妨害ガスセンサ8から送信された妨害ガス濃度情報、及びアルコールセンサ7から送信されたアルコール濃度情報に基づいて、呼気のアルコール濃度を検出する。具体的には、ECU2は、湿度センサ6から送信された湿度情報に基づいて、アルコール検出装置1内の湿度を認識する。また、ECU2は、妨害ガスセンサ8から送信された妨害ガス濃度情報に基づいて、アルコール検出装置1内の妨害ガスの濃度を認識する。アルコールセンサ7が検出するアルコールの量は湿度や妨害ガスの濃度により変動するため、認識した湿度及び妨害ガスの濃度に応じて、アルコール濃度情報のアルコール濃度を補正することで、アルコール濃度の検出精度の向上を図ることができる。
【0024】
ECU2は、検出したアルコール濃度に基づいて、被験者Sが飲酒状態であるか否かを判定する。ECU2は、被験者Sが飲酒状態であるか否かの判定結果を表示するための判定結果表示指令をインジケータ10に送信すると共に、該判定結果に応じた所定の処理(車両のエンジンスタータの始動等)を行う。
【0025】
一方、ECU2は、被験者Sが煙草煙を吹込口Tに吹き付けていると判定した場合、ファン9に逆回転指令を送信すると共に、インジケータ10にエラー表示指令を送信する。また、ECU2は、被験者Sが煙草煙を吹込口Tに吹き付けていると判定した回数をカウントする。ECU2は、被験者Sが煙草煙を吹込口Tに吹き付けていると判定した回数が所定の閾値を超えた場合、被験者Sは故意で悪質な行為をしていると判定して、通信部11に悪質行為に関する管理者通知指令を送信する。
【0026】
次に、以上のように構成されたアルコール検出装置1の動作について図面を参照して説明する。先ずスイッチ3のON状態への切り替えによりアルコール検出装置1が起動される。アルコール検出装置1が起動された場合、ファン9は順回転を開始する。
【0027】
図5に示すように、ステップS1において、被験者撮像カメラ4からの送信により被験者Sの顔画像情報が取得される。その後、取得された被験者Sの顔画像情報に基づいて、被験者Sが煙草煙を吹込口Tに吹き付けているか否かが判定される(S2)。
【0028】
ステップS2において、被験者Sが煙草煙を吹込口Tに吹き付けていないと判定された場合、CO2センサ5から送信されたCO2情報に基づいて、吹込口Tからアルコール検出装置1内に呼気が吹き込まれたか否かが判定される(S3)。吹込口Tからアルコール検出装置1内に呼気が吹き込まれていないと判定された場合、ステップS1に戻り再び各ステップを繰り返す。
【0029】
一方、アルコール検出装置1内に呼気が吹き込まれたと判定された場合、湿度センサ6から送信された湿度情報、妨害ガスセンサ8から送信された妨害ガス濃度情報、及びアルコールセンサ7から送信されたアルコール濃度情報に基づいて、呼気のアルコール濃度が検出される(S4)。
【0030】
次に、検出されたアルコール濃度に基づいて、被験者Sが飲酒状態であるか否かが判定される(S5)。その後、被験者Sが飲酒状態であるか否かの判定結果を表示するため判定結果表示指令がインジケータ10に送信されると共に、該判定結果に応じた所定の処理が行われる(S6)。その後、ステップS1に戻り再び各ステップを繰り返す。
【0031】
ステップS2において、被験者Sが煙草煙を吹込口Tに吹き付けていると判定された場合、ファン9に逆回転指令が送信されると共に、インジケータ10にエラー表示指令が送信される(S7)。その後、被験者Sが故意で悪質な行為をしているか否かが判定される(S8)。被験者Sが故意で悪質な行為をしていないと判定された場合、ステップS1に戻る。一方、被験者Sが故意で悪質な行為をしていると判定された場合、通信部11に悪質行為に関する管理者通知指令が送信される(S9)。その後、ステップS1に戻り再び各ステップを繰り返す。
【0032】
以上説明したアルコール検出装置1によれば、吹込口Tに煙草煙が吹き付けられたと判定されると、ファン9が生じさせる気流によって煙草煙が吹き付け側へ戻されるので、煙草煙が吹込口T内に入り込んだとしてもアルコールセンサ7と接触する前に排出することが可能となり、これによって煙草煙によるアルコールセンサ7の劣化を抑制することができる。
【0033】
また、このアルコール検出装置1によれば、ファン9の順回転と逆回転とを切り換えることで、煙草煙が吹き付けられたと判定された場合に、ファン9の逆回転により煙草煙を吹き付け側へ戻すことができる一方、通常時においては、ファン9の順回転により呼気を攪拌して、一定の風力でアルコールセンサ7へと送ることが可能となる(図4の破線の矢印を参照)。
【0034】
更に、このアルコール検出装置1によれば、被験者撮像カメラ4が撮像した被験者Sの顔画像に基づいて、被験者Sが煙草煙を吹き付けているのか、或いは空気中の煙草煙が吹込口に入り込んだのかを判定することが可能となるので、誤判定によりアルコール検査が中止されることを回避することができる。
【0035】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、アルコール検出装置1は、被験者撮像カメラ4が取得した被験者Sの顔画像情報に基づいて、被験者Sの個人認証を行う態様であってもよい。また、湿度センサ6や妨害ガスセンサ8は、必ず備える必要はない。その他、CO2センサ5に代えてO2センサ(酸素センサ)を用いることにより、アルコール検出装置1内に被験者Sの呼気が吹き込まれたか否かを判定してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…アルコール検出装置、2…ECU(吹付け判定手段)、4…被験者撮像カメラ、7…アルコールセンサ、9…ファン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者によって吹込口に吹き込まれた呼気のアルコール濃度を検出するアルコール検出装置であって、
前記吹込口に煙草煙が吹き付けられているか否かを判定する吹付け判定手段と、
前記吹付け判定手段により前記煙草煙が吹き付けられていると判定された場合に、前記煙草煙を吹き付け側へ戻すように気流を生じさせる気流発生手段と、を備えることを特徴とするアルコール検出装置。
【請求項2】
前記気流発生手段は、順回転により前記呼気を吸引すると共に、逆回転により前記煙草煙を吹き付け側へ戻すように気流を生じさせるファンを有していることを特徴とする請求項1に記載のアルコール検出装置。
【請求項3】
前記被験者の顔を撮像する被験者撮像カメラを更に備え、
前記吹付け判定手段は、前記被験者撮像カメラが撮像した前記被験者の顔画像に基づいて、前記吹込口に煙草煙が吹き付けられているか否かを判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアルコール検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−203904(P2010−203904A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49379(P2009−49379)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】