説明

アルツハイマー病のためのバイオマーカー

本発明は、患者のアルツハイマー病の病態を認定するために有用であるタンパク質をベースとするバイオマーカーおよびバイオマーカーの組み合わせを提供する。特に、本発明のバイオマーカーは、被験サンプルをアルツハイマー性痴呆または非アルツハイマー性痴呆または正常として分類するために有用である。このバイオマーカーはSELDI質量分析法により検出することができる。さらに、本発明は、適切な治療行為を提供し、治療に対する反応を測定するための方法を提供する。本発明の特定のバイオマーカーは、陽電子放出断層撮影(PET)等の非侵襲性撮像技術における放射標識リガンドとしての使用にも好適であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は2003年11月7日に出願された米国仮特許出願第60/518,360号;2003年12月2日に出願された米国仮特許出願第60/526,753号、;2004年2月19日に出願された米国仮特許出願第60/546,423号;2004年2月23日に出願された米国仮特許出願第60/547,250号;2004年4月2日に出願された米国仮特許出願第60/558,896号;2004年5月18日に出願された米国仮特許出願第60/572,617号;および2004年7月8日に出願された米国仮特許出願第60/586,503号の利益を主張し、参照によりその全文を本明細書に組み入れるものとする。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
アルツハイマー病は、ひとたび失われると置き換えができない脳細胞の死滅を導く進行性神経疾患の1種である。ADの手がかりとなる神経病理学的な2つの顕著な徴候は、主として凝集したβ−アミロイドタンパク質(Aβ)からなる老人斑、および高度にリン酸化されたタウタンパク質の蓄積により形成される神経原線維変化(NFT)の存在である。現在、ADの臨床診断は、病歴の評価および神経学的、神経心理学的および精神病理学的な評価を含む理学的診察、ならびに各種の生物学的、X線的、および電気生理学的な検査を必要とする。一連の試験にもかかわらず、定義的な診断は、死亡後の解剖脳検査によってしか達成されない。従って、早期の段階でADを検知でき、その疾患の進行をモニターでき、AD、正常、非AD性痴呆およびその他の神経学的疾患を識別可能な簡単な生化学試験には、満たされないニーズが存在する。
【0003】
脳脊髄液(CSF)中の3つの異なるバイオマーカー:神経線維タンパク質、タウおよびアミロイド前駆タンパク質(APP)の前駆体は特によく研究されている。
【0004】
神経線維タンパク質は、AD患者の脳神経細胞中で過剰発現していることが知られている。NYMOXという企業は、CSFおよび尿中における特定のタイプの神経線維タンパク質(AD7c−NTP)の量を測定するための定量試験を開発している。多数の研究がCSF−タウをADの死亡前マーカーとして評価している。このときの測定アッセイとしては、主として酵素免疫測定法(ELISA)が用いられている。NFTの形成に関与する同一タンパク質のリン酸化変異体の分析を記載する多数の文献が存在するにもかかわらず、これらの研究のほとんどにおいてはタウの総量が測定されている。CSF分析のために、40番目のアミノ酸で終了するAβ(Aβ40)と42番目の位置で終了する老人班形成種(Aβ42)とを区別することができるELISAも開発され、広く評価されている。個々にいずれかを使用する、またはタウおよびAβ42の場合には組み合わせて用いられる上記の3つのマーカーによるアッセイの全ては、日々の臨床用途に対して、特に早期の診断およびADとその他の非AD性とを識別するために必要とされる感度および特異度の値を有していない。さらに、血中タウおよびAβ42を測定するための試みは、限られた成功しかおさめておらず、さらに臨床的な応用への広範な利用に制限がかかっている。
【0005】
AD患者のCSF中には、NTP、タウおよびAβ以外のその他の広範囲な異常があることが報告されている。AD患者では、本明細書中に報告される同定されている(タンパク質配列が確認された)CSFマーカーの多くが、正常なヒトと比較して増加または減少していることが示されている。例えば、タンパク質ユビキチンは、AD患者の脳内で、NFTが成熟する間に高度にリン酸化されたタウとの複合体を形成することが知られている(非特許文献1)。ADおよび神経学的な対照群のCSFにおけるユビキチンレベルは、非神経学的な対照群のそれよりも顕著に高いことが示されている(非特許文献2;非特許文献3)。
【0006】
急性期/炎症性タンパク質α(1)−アンチキモトリプシン(ACT)はADの脳内で過剰生産される。ACTはまた、神経毒性のアミロイド沈着物の形成を促進し、それと共存し得る(非特許文献4)。血清およびCSFの両方におけるACTのレベルは、アルツハイマー型の痴呆を伴う患者において、対照被験体よりも顕著におよび特異的に高い(非特許文献5)。CSF−ACTにおける増加において、遅発型ADとの特に密接な関連が存在する(非特許文献6)。
【0007】
クロモグラニンA(CrA)は大型で緻密なシナプス小胞の主要なタンパク質であり、ADにおけるシナプス機能の生化学的なマーカーとして価値を有し得るものである。あるレポートは、疾患を有する個人におけるCSF CrAの統計学的有意性が確認できる増加が見られた家族性サブタイプ(AD タイプI)を対照群と比較した時を除き、AD、血管性痴呆、および年齢をマッチングした対照群の間に差がなかったことを記述した(非特許文献7)。
【0008】
β−2−ミクログロブリン(β2M)は、インターフェロンおよびある種のサイトカインによりモジュレートされる炎症性応答のイニシエーターである(非特許文献8)。二次元電気泳動(2D−ゲル)によるCSFのプロテオーム分析は、AD患者におけるβ2Mの顕著な増加を示し(非特許文献9)、より最近、これらの結果がSELDI分析により確認された(非特許文献10)。
【0009】
トランスサイレチン(TTR)はAβと相互作用し、体液中および脳内でのアミロイド形成を抑制するかもしれないことが示されている(非特許文献11)。少数のADおよび対照患者の2Dゲル分析を用いて、1つの同定されたTTRのイソ体がAD−CSFにおいて増加していることが示された(非特許文献9)。しかしこの結果は、対照と比較したAD患者由来のCSFにおけるTTRの明白な低下を示すその他のレポートと矛盾する(非特許文献12;非特許文献13)。この低下は老人斑(SP)の量とも負に相関している(非特許文献14)。
【0010】
システインプロテアーゼインヒビターであるシスタチンCは、神経変性および神経系の修復プロセスに関わるとみなされており、異なるタイプの痴呆において、βアミロイドペプチドと共に同タンパク質の沈着が脳アミロイド血管障害(CAA)として見出された(非特許文献15)。先のSELDIプロファイリング研究(非特許文献10)においては、ADのためのCSFマーカーとして完全長シスタチンCが見いだされた。相対的な血液脳関門(BBB)機能障害は、非常に高齢の者においてADと関連する。CSF/血清アルブミン比率はBBB機能の測定値として使用され得る。ADを含む研究された全ての痴呆において、非痴呆の者においてよりもCSF/血清アルブミン比率の平均値が高いことが報告されている(非特許文献16)。
【0011】
トランスフェリン(TF)は血清中の抗酸化防御において役割を果たし、また、酸化的ストレスにおけるその役割は不明であるが脳においても生産される。進行性痴呆を患うダウン症患者における研究は、神経学的疾患を有さない年齢をマッチングした対照群と比較して、TFのレベルが低下していることを示した(非特許文献17)。
【非特許文献1】Iqbalら、J Neural Transm Suppl.1998年、53:169−80
【非特許文献2】Wangら、Acta Neuropathol(Berl).1991年、82(1):6−12
【非特許文献3】Kudoら、Brain Res.1994年、639(1):1−7
【非特許文献4】Potterら、Neurobiol Aging.2001年、22(6):923−30
【非特許文献5】Matsubaraら、Ann Neurol.1990年、28(4):561−7
【非特許文献6】Harigayaら、Intern Med.1995年、34(6):481−4
【非特許文献7】Blennowら、Dimentia.1995年、6(6):306−11
【非特許文献8】Hoekmanら、Neth.J.Med.1985年、28:551−557
【非特許文献9】Davidssonら、Neuroreport、2002年、13:611−615
【非特許文献10】Carrette、O.ら、Proteomics、2003年、3:1486−1494
【非特許文献11】Tsuzukiら、Neurosci Lett、2000年、10:171−174
【非特許文献12】Serotら、J Neurol Neurosurg Psychiatry.1997年、63(4):506−8
【非特許文献13】Riisoenら、Acta Neurol Scand.1998年、78(6):455−9
【非特許文献14】Merchedら、FEBS Lett.1998年、425(2):225−8
【非特許文献15】Levyら、J.Neuropathol.Exp.Neurol.60:94−104
【非特許文献16】Skoogら、Neurology.1998年、50:966−71
【非特許文献17】Elovaara Acta Neurol Scand.1994年、69(5):302−5
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
痴呆患者のCSFにおける異なる生化学的マーカーを評価するこれまでの研究は、対象分析物の間接的な測定手段を使用するELISA等のアッセイ方法を利用してきた。これらの方法は、他のプロセスに見られる種々の処理形態のタンパク質を識別することができない。さらに、従来のアッセイ方法は、異なる処理がなされた形態のタンパク質に関する処置手段を開拓していない。従って、顕著なニューロンの欠損が起こる前にアルツハイマー病を診断する方法、および上記疾患の進行を抑制するための治療上の処置に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の概要)
本発明は、アルツハイマー病を有しない被験体、および/または非アルツハイマー性痴呆(例えば、LBD,FTD等)を患う被験体と比較してアルツハイマー性痴呆を伴う被験体において異なる量で存在するポリペプチドをベースとするバイオマーカーを提供する。さらに、本発明は、ポリペプチドをベースとするバイオマーカーを用いて被験体のアルツハイマー病を認定する(qualifying)方法を提供する。また本発明は、アルツハイマー病の治療薬の同定方法およびアルツハイマー病と認定されたヒトの治療方法を提供する。
【0014】
したがって、1つの態様において、本発明は、被験体におけるアルツハイマー病の病態を認定する方法であって、(a)被験体由来の生体サンプル中の少なくとも1種類のバイオマーカーを測定する工程であって、上記少なくとも1種類のバイオマーカーが、上掲の表I、表II、表IV−Aおよび表IV−Bのバイオマーカーからなる群から選択される、測定する工程;および(b)測定値をアルツハイマー病の病態と相関させる工程、を包含する方法を提供する。1つの実施形態において、サンプルは脳脊髄液(CFS)である。その他の実施形態において、サンプルは血清である。別の好ましい実施形態において、少なくとも1種類のバイオマーカーは表II,表IV−A、および表IV−Bのバイオマーカーからなる群から選択される。別の好ましい実施形態において、少なくとも1種類のバイオマーカーは、表IV−Bのバイオマーカーからなる群から選択される。
【0015】
好ましい実施形態において、少なくとも1種類のバイオマーカーは、表IIまたは表IV−Aまたは表IV−Bのバイオマーカーから選択される。
1実施形態において、少なくとも1種類のバイオマーカーは以下のバイオマーカー:M60464.7(ヘモペキシン)、M3513.9(7B2 CT断片)、M8291.0(ユビキチン(CTから−3aa))、M5044.2、M10379.8(10.3kDa)、M9984.6(10.3kDaに関連する)、M10265.6(10.3kDaに関連する)、M9802.4(EA−92(ChrAペプチド))、9757.0(10.3kDaに関連する)、M16207.4(膵臓リボヌクレアーゼ)、M14092.7(グルタチオニル化トランスサイレチンS)、M13904.7(トランスサイレチンS−Cys/S−CysGly)、M12545.9(シスタチン−C(NTから−8aa))、M8183.6(ユビキチン(CTから−4aa))、M5227.4、M3687.0(セクレトニューリン(ChrC/SGIIペプチド))、M3906.4 バソスタチンII(ChrAペプチド)、M3806.2、M8955.1、M5263.9、M14565.1(膵臓リボヌクレアーゼ)、M20839.2、M6509.6(クロモグラニンBペプチド)、M4320.6(A−β 1−40)、M7258.2(クロモグラニンBペプチド)、M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M58845.4、M8938.5(C3a des−Arg)、M6608.9、M5838.3、M23477.4(プロスタグランジン−Dシンターゼ)、M4357.0(α−1−アンチキモトリプシンCT断片)、M7653.2(オステオポンチンCT断片)、M16716.9、M4812.5(VGF(NCBI)ペプチド)、M4989.4(アセチル化チモシンβ−4)、M7878.7、M92082.4、M66479.2(アルブミン)、M3967.6、M7718.8(リン化オステオポンチンCT断片)、M89707.1、M11579.2、およびM4455.4、から選択される。別の好ましい実施形態において、この方法はN−アセチル化チモシンβ−4を測定する工程を包含する。さらに別の好ましい実施形態において、少なくとも1種類のバイオマーカーは表Vに名前が付けられている表IIまたは表IV−Aまたは表IV−Bのバイオマーカーのひとつから選択される。
【0016】
好ましい実施形態において、この方法は、以下のバイオマーカー:M11725.7(β−2−ミクログロブリン)、M78936.5(トランスフェリン)、M13349.5(シスタチンC)、M66479.2(アルブミン)およびM8585.9(ユビキチン)の1以上を測定する工程をさらに包含し、またはさもなければ、これらのさらなる各バイオマーカーを測定する工程を包含する。別の好ましい実施形態において、この方法は、以下の2セットのバイオマーカー:M17349.3(アポリポタンパク質A−II 二量体)、M60464.7(ヘモペキシン)、およびM3513.9(7B2 CT断片);およびM17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M60464.7(ヘモペキシン)、M10379.8(10.3kDa)およびM11725.7(βBeta−2−ミクログロブリン)からなる上記セットに由来する少なくとも各種類のバイオマーカーを測定する工程を包含する。別の好ましい実施形態において、この方法は、以下のバイオマーカー:16207.4(膵臓リボヌクレアーゼ)、8183.6(ユビキチン(CTから−4aa))、M5227.4、M3806.2、M8955.1、M5263.9、M20839.2、M4320.6(A−β 1−40)、7258.2(クロモグラニンBペプチド)、M6608.9、M5838.3、M23477.4((プロスタグランジン−Dシンターゼ)、7653.2(オステオポンチンCT断片)、M16716.9、M7878.7、7718.8(オステオポンチンCT断片 リン)、およびM4455.4.からなるセットからの少なくとも1種類のバイオマーカーを測定する工程を包含する。
【0017】
ある実施形態において、少なくとも1種類のバイオマーカーは、SELDIプローブの吸着剤上のバイオマーカーを捕捉し、レーザー脱離イオン化質量分析法により捕捉されたバイオマーカーを検出することにより測定する。ある種の実施形態において、吸着剤は陽イオン交換吸着剤、陰イオン交換吸着剤、金属キレートまたは疎水性吸着剤である。その他の実施形態において、吸着剤は生体特異的吸着剤である。別の実施形態において、少なくとも1種類のバイオマーカーはイムノアッセイにより測定される。
【0018】
別の実施形態において、相関付けはソフトウェア分類アルゴリズムにより実行される。ある種の実施形態において、アルツハイマー病の病態は、アルツハイマー病、非痴呆、および非アルツハイマー性痴呆から選択される。ある実施形態において、非アルツハイマー性痴呆は、レヴィー小体痴呆(LBD)および前頭側頭型痴呆(frontotemporal dementia)(FTD)を含む。
【0019】
さらにその他の実施形態において、この方法は(c)上記病態に基づいて被験体の治療を管理する工程をさらに包含する。測定値がアルツハイマー病と相関しているとき、被験体の治療の管理は上記被験体へのコリンエステラーゼ阻害剤の投与を含む。
【0020】
さらなる実施形態において、この方法は、(d)被験体の管理の後に上記少なくとも1種類のバイオマーカーを測定する工程をさらに包含する。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、被験体由来の生体サンプル中の少なくとも1種類のバイオマーカーを測定する工程を包含する方法であって、この少なくとも1種類のバイオマーカーが表II、表IV−Aまたは表IV−Bに示されるバイオマーカーのセットからなる群から選択される、または上記に論じられた任意のバイオマーカーである、上記方法を提供する。ある実施形態において、サンプルは脳脊髄液(CSF)である。別の実施形態において、サンプルは血清である。好ましい実施形態において、少なくとも1種類のバイオマーカーは表IIのバイオマーカーからなる群から選択される。別の好ましい実施形態において、少なくとも1種類のバイオマーカーは表IV−Aまたは表IV−Bのバイオマーカーからなる群から選択される。別の好ましい実施形態において、この方法はN−アセチル化チモシンβ−4を測定する工程を包含する。さらに別の好ましい実施形態において、少なくとも1種類のバイオマーカーは表Vに名前が付けられている表II、表IV−A、または表IV−Bのバイオマーカーのひとつから選択される。
【0022】
ある実施形態において、少なくとも1種類のバイオマーカーは以下のバイオマーカー:M60464.7(ヘモペキシン)、M3513.9(7B2 CT断片)、M8291.0(ユビキチン(CTから−3aa))、M5044.2、M10379.8(10.3kDa)、M9984.6(10.3kDaに関連する)、M10265.6(10.3kDaに関連する)、M9802.4(EA−92(ChrAペプチド))、9757.0(10.3kDaに関連する)、M16207.4(膵臓リボヌクレアーゼ)、M14092.7(グルタチオニル化トランスサイレチンS)、M13904.7(トランスサイレチンS−Cys/S−CysGly)、M12545.9(シスタチン−C(NTから−8aa))、M8183.6(ユビキチン(CTから−4aa))、M5227.4、M3687.0(セクレトニューリン(ChrC/SGIIペプチド))、M3906.4 バソスタチンII(ChrAペプチド)、M3806.2、M8955.1、M5263.9、M14565.1(膵臓リボヌクレアーゼ)、M20839.2、M6509.6(クロモグラニンBペプチド)、M4320.6(A−β 1−40)、M7258.2(クロモグラニンBペプチド)、M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M58845.4、M8938.5(C3a des−Arg)、M6608.9、M5838.3、M23477.4(プロスタグランジン−Dシンターゼ)、M4357.0(α−1−アンチキモトリプシンCT断片)、M7653.2(オステオポンチンCT断片)、M16716.9、M4812.5(VGF(NCBI)ペプチド)、M4989.4(アセチル化チモシンβ−4)、M7878.7、M92082.4、M66479.2(アルブミン)、M3967.6、M7718.8(リン化オステオポンチンCT断片)、M89707.1、M11579.2、およびM4455.4から選択される。別の実施形態において、少なくとも1種類のバイオマーカーは以下のバイオマーカー:M11728.3(β2ミクログロブリン)、M60976.2(ヘモペキシン)、M11127.8およびM9742.3から選択される。好ましい実施形態において、この方法は、シスタチンC(M13391)を測定する工程をさらに包含する。さらにその他の実施形態において、この方法は、例えば、完全長CysCのN末端から8アミノ酸を欠失したCysCの短縮された形態物であるCysCΔ1−8等のシスタチンC(CysC)改変体をさらに測定する工程を包含する。さらにその他の実施形態において、この方法は以下のさらなるバイオマーカー:M11725.7(β−2−ミクログロブリン)、M78936.5(トランスフェリン)、M13349.5(シスタチンC)、M66479.2(アルブミン)およびM8585.9(ユビキチン)の少なくとも1種類を測定する工程、またはさもなければ、これらのさらなるバイオマーカーの各々を測定する工程をさらに包含する。別の好ましい実施形態において、この方法は、N−アセチル化チモシンβ−4を測定する工程を包含する。さらに別の好ましい実施形態において、少なくとも1種類のバイオマーカーは、表Vに名前が付けられている表II、表IV−A、または表IV−Bのバイオマーカーのひとつから選択される。
【0023】
ある実施形態において、少なくとも1種類のバイオマーカーは、SELDIプローブの吸着剤上のバイオマーカーを捕捉し、レーザー脱離イオン化質量分析法により捕捉されたバイオマーカーを検出することにより測定する。ある種の実施形態において、吸着剤は陽イオン交換吸着剤、陰イオン交換吸着剤、金属キレートまたは疎水性吸着剤である。その他の実施形態において、吸着剤は生体特異的吸着剤である。別の実施形態において、少なくとも1種類のバイオマーカーはイムノアッセイにより測定される。
【0024】
さらに別の実施形態において、本発明は、(a)固体支持体であって、該固体支持体は、そこに接着される少なくとも1種類の捕捉試薬を含み、上記捕捉試薬が、表I、表II、表IV−Aおよび表IV−Bに示されるバイオマーカーからなる第1の群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーと結合する、上記固体支持体;および(b)表II、表IV−Aまたは表IV−Bに示されるバイオマーカーを検出するための上記固体支持体を使用するための説明書、を含むキットを提供する。好ましい実施形態において、少なくとも1種類のバイオマーカーは、表IIのバイオマーカーからなる群から選択される。さらに別の好ましい実施形態において、少なくとも1種類のバイオマーカーは、表Vに名前が付けられている表II、表IV−A、または表IV−Bのバイオマーカーのひとつから選択される。別の好ましい実施形態において、バイオマーカーはN−アセチル化チモシンβ−4である。
【0025】
ある実施形態において、キットは以下のバイオマーカー:M60464.7(ヘモペキシン)、M3513.9(7B2 CT断片)、M8291.0(ユビキチン(CTから−3aa))、M5044.2、M10379.8(10.3kDa)、M9984.6(10.3kDaに関連する)、M10265.6(10.3kDaに関連する)、M9802.4(EA−92(ChrAペプチド))、9757.0(10.3kDaに関連する)、M16207.4(膵臓リボヌクレアーゼ)、M14092.7(グルタチオニル化トランスサイレチンS)、M13904.7(トランスサイレチンS−Cys/S−CysGly)、M12545.9(シスタチン−C(NTから−8aa))、M8183.6(ユビキチン(CTから−4aa))、M5227.4、M3687.0(セクレトニューリン(ChrC/SGIIペプチド))、M3906.4 バソスタチンII(ChrAペプチド)、M3806.2、M8955.1、M5263.9、M14565.1(膵臓リボヌクレアーゼ)、M20839.2、M6509.6(クロモグラニンBペプチド)、M4320.6(A−β 1−40)、M7258.2(クロモグラニンBペプチド)、M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M58845.4、M8938.5(C3a des−Arg)、M6608.9、M5838.3、M23477.4(プロスタグランジン−Dシンターゼ)、M4357.0(α−1−アンチキモトリプシンCT断片)、M7653.2(オステオポンチンCT断片)、M16716.9、M4812.5(VGF(NCBI)ペプチド)、M4989.4(アセチル化チモシンβ−4)、M7878.7、M92082.4、M66479.2(アルブミン)、M3967.6、M7718.8(リン化オステオポンチンCT断片)、M89707.1、M11579.2、およびM4455.4から選択されるバイオマーカーを検出するために固体支持体を使用するための説明書を提供する。別の実施形態において、このキットは以下のバイオマーカー:M11728.3(β2ミクログロブリン)、M60976.2(ヘモペキシン)、M11127.8およびM9742.3から選択されるバイオマーカーを検出するために固体支持体を使用するための説明書を提供する。さらにその他の実施形態において、このキットは、以下のさらなるバイオマーカー:M11725.7(β−2−ミクログロブリン)、M78936.5(トランスフェリン)、M13349.5(シスタチンC)、M66479.2(アルブミン)およびM8585.9(ユビキチン)の少なくとも1種類を検出するために固体支持体を使用するための説明書、または、さもなければこれらの各バイオマーカーをさらに検出する工程をさらに包含する。さらにその他の実施形態において、このキットは、表Vに名前が付けられている表II、表IVに記載のバイオマーカーの少なくとも1種類を検出するために固体支持体を使用するための説明書をさらに含む。
【0026】
別の実施形態において、捕捉試薬を含む固体支持体はSELDIプローブである。ある種の実施形態において、吸着剤は陽イオン交換吸着剤、陰イオン交換吸着剤、金属キレートまたは疎水性吸着剤である。いくつかの好ましい実施形態において、捕捉試薬は陽イオン交換吸着剤である。その他の実施形態において、このキットは、(c)陰イオン交換クロマトグラフィー溶媒、をさらに含む。その他の実施形態において、キットは(c)表I、表II、表IV−Aおよび表IV−Bに示される少なくとも1種類のバイオマーカーを含む容器、をさらに含む。
【0027】
さらなる態様において、本発明は、(a)固体支持体であって、該固体支持体は、そこに接着される少なくとも1種類の捕捉試薬を含み、上記捕捉試薬が、表I、表II、表IV−Aおよび表IV−Bからなる第1の群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーと結合する、上記固体支持体;および
(b)表I、表II、表IV−Aおよび表IV−Bに示される少なくとも1種類のバイオマーカーを含む容器、を含むキットを提供する。好ましい実施形態において、上記少なくとも1種類のバイオマーカーは表II、表IV−Aおよび表IV−Bのバイオマーカーからなる群から選択される。別の好ましい実施形態において、上記少なくとも1種類のバイオマーカーはN−アセチル化チモシンβ−4である。さらに別の好ましい実施形態において、上記少なくとも1種類のバイオマーカーは、表Vに名前が付けられている表II、表IV−A、または表IV−Bのバイオマーカーのひとつから選択される。
【0028】
ある実施形態において、このキットは、以下のバイオマーカー:M60464.7(ヘモペキシン)、M3513.9(7B2 CT断片)、M8291.0(ユビキチン(CTから−3aa))、M5044.2、M10379.8(10.3kDa)、M9984.6(10.3kDaに関連する)、M10265.6(10.3kDaに関連する)、M9802.4(EA−92(ChrAペプチド))、9757.0(10.3kDaに関連する)、M16207.4(膵臓リボヌクレアーゼ)、M14092.7(グルタチオニル化トランスサイレチンS)、M13904.7(トランスサイレチンS−Cys/S−CysGly)、M12545.9(シスタチン−C(NTから−8aa))、M8183.6(ユビキチン(CTから−4aa))、M5227.4、M3687.0(セクレトニューリン(ChrC/SGIIペプチド))、M3906.4 バソスタチンII(ChrAペプチド)、M3806.2、M8955.1、M5263.9、M14565.1(膵臓リボヌクレアーゼ)、M20839.2、M6509.6(クロモグラニンBペプチド)、M4320.6(A−β 1−40)、M7258.2(クロモグラニンBペプチド)、M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M58845.4、M8938.5(C3a des−Arg)、M6608.9、M5838.3、M23477.4(プロスタグランジン−Dシンターゼ)、M4357.0(α−1−アンチキモトリプシンCT断片)、M7653.2(オステオポンチンCT断片)、M16716.9、M4812.5(VGF(NCBI)ペプチド)、M4989.4(アセチル化チモシンβ−4)、M7878.7、M92082.4、M66479.2(アルブミン)、M3967.6、M7718.8(リン化オステオポンチンCT断片)、M89707.1、M11579.2、およびM4455.4から選択されるバイオマーカーを検出するために固体支持体を使用するための説明書を提供する。好ましい実施形態において、このキットは、シスタチンC(M13391)を検出するために固体支持体を使用するための説明書をさらに含む。さらにその他の実施形態において、キットは、以下のバイオマーカー:の1つをさらに測定するための説明書を提供する。さらにその他の実施形態において、キットは、以下のさらなるバイオマーカー:M11725.7(β−2−ミクログロブリン)、M78936.5(トランスフェリン)、M13349.5(シスタチンC)、M66479.2(アルブミン)およびM8585.9(ユビキチン)の少なくとも1種類を検出するために固体支持体を使用するための説明書、または、さもなければこれらの各バイオマーカーをさらに検出する工程、をさらに包含する。さらにその他の実施形態において、キットは、表Vに名前が付けられている表II、表IV−A、または表IV−Bのバイオマーカーのひとつから選択される少なくとも1種類のバイオマーカーを検出するために固体支持体を使用するための説明書をさらに含む。
【0029】
別の実施形態において、捕捉試薬を含む固体支持体はSELDIプローブである。ある種の実施形態において、吸着剤は陽イオン交換吸着剤、陰イオン交換吸着剤、金属キレートまたは疎水性吸着剤である。その他の実施形態において、吸着剤は生体特異的吸着剤である。いくつかのその他の実施形態において、捕捉試薬は陽イオン交換吸着剤である。その他の実施形態において、このキットは、(c)陰イオン交換クロマトグラフィー溶媒、をさらに含む。
【0030】
さらなる態様において、本発明は、ソフトウェア製品であって、以下の(a)および(b):(a)サンプルに起因するデータにアクセスするコードであって、上記データは上記サンプル中の少なくとも1種類のバイオマーカーの測定値を含み、上記バイオマーカーは、表II、表IV−A、または表IV−Bのバイオマーカーからなる群から選択される、上記コード;および(b)上記サンプルのアルツハイマー病の病態を測定値の関数として分類する分類アルゴリズムを実行するコード、を備える、ソフトウェア製品を提供する。
【0031】
ある実施形態において、分類アルゴリズムは、M60464.7(ヘモペキシン)、M3513.9(7B2 CT断片)、M8291.0(ユビキチン(CTから−3aa))、M5044.2、M10379.8(10.3kDa)、M9984.6(10.3kDaに関連する)、M10265.6(10.3kDaに関連する)、M9802.4(EA−92(ChrAペプチド))、9757.0(10.3kDaに関連する)、M16207.4(膵臓リボヌクレアーゼ)、M14092.7(グルタチオニル化トランスサイレチンS)、M13904.7(トランスサイレチンS−Cys/S−CysGly)、M12545.9(シスタチン−C(NTから−8aa))、M8183.6(ユビキチン(CTから−4aa))、M5227.4、M3687.0(セクレトニューリン(ChrC/SGIIペプチド))、M3906.4 バソスタチンII(ChrAペプチド)、M3806.2、M8955.1、M5263.9、M14565.1(膵臓リボヌクレアーゼ)、M20839.2、M6509.6(クロモグラニンBペプチド)、M4320.6(A−β 1−40)、M7258.2(クロモグラニンBペプチド)、M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M58845.4、M8938.5(C3a des−Arg)、M6608.9、M5838.3、M23477.4(プロスタグランジン−Dシンターゼ)、M4357.0(α−1−アンチキモトリプシンCT断片)、M7653.2(オステオポンチンCT断片)、M16716.9、M4812.5(VGF(NCBI)ペプチド)、M4989.4(アセチル化チモシンβ−4)、M7878.7、M92082.4、M66479.2(アルブミン)、M3967.6、M7718.8(リン化オステオポンチンCT断片)、M89707.1、M11579.2、およびM4455.4からなる群から選択されるバイオマーカーの測定値の関数として、上記サンプルのアルツハイマー病の病態を分類する。さらにその他の実施形態において、分類アルゴリズムは、以下のバイオマーカー:M11725.7(β−2−ミクログロブリン)、M78936.5(トランスフェリン)、M13349.5(シスタチンC)、M66479.2(アルブミン)およびM8585.9(ユビキチン)、のひとつのさらなる測定値の関数として、上記サンプルのアルツハイマー病の病態を分類する。さらにその他の実施形態において、分類アルゴリズムは、表I、表II、表IV−Aおよび表IV−Bに示されるバイオマーカーの少なくとも1種類のさらなる測定値の関数として、上記サンプルのアルツハイマー病の病態を分類する。さらにその他の実施形態において、分類アルゴリズムは、表Vに名前が付けられている表II、表IV−A、または表IV−Bのバイオマーカーの少なくとも1種類のさらなる測定値の関数として、上記サンプルのアルツハイマー病の病態を分類する。
【0032】
その他の態様において、本発明は表I、表II、表IV−Aおよび表IV−Bに示されるバイオマーカーから選択される精製された生体分子および、さらに、質量分析またはイムノアッセイによって表I、表II、表IV−Aおよび表IV−Bに示されるバイオマーカーを検出する方法を提供する。
【0033】
本発明のその他の特徴、目的および優位性、および好ましい実施形態は後述の詳細な説明、実施例および特許請求の範囲から明確になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(本発明の詳細な説明および好ましい実施形態)
(I.序文)
バイオマーカーは、ある表現型の状態(例えば、疾患を有する)にある被験体から採取したサンプル中に、その他の表現型の状態(例えば、疾患を有していない)と比較した時とは異なる量で存在する有機生体分子である。異なる表現型の各群について、あるバイオマーカーの平均値または中央値の発現レベルが統計学的に顕著であると計算されれば、そのバイオマーカーは異なる量で各表現型に存在する。それらのうち、統計学的有意性に関する一般的な試験には、t−テスト、ANOVA、Kruskal−Wallis、Wilcoxon、Mann−Whitneyおよびオッズ比が含まれる。バイオマーカーは、単独または組み合わせて、被験体がある表現型の状態またはその他の状態に属する相対的リスクの尺度を提供する。したがって、それらは疾患(診断)、薬物の治療効果(治療)、および薬物毒性のためのマーカーとして有用である。
【0035】
(II.アルツハイマー病のバイオマーカー)
(A.バイオマーカー)
本発明は、アルツハイマー病を有しない被験体、および/または非アルツハイマー性痴呆(例えば、LBD、FTD等)を伴う被験体と比較するとアルツハイマー病の被験体では量が異なるポリペプチドをベースとするバイオマーカーを提供する。さらに、本発明は、ポリペプチドをベースとするバイオマーカーを用いて被験体のアルツハイマー病を認定する方法を提供する。それらは質量分析により決定されるような質量対電荷比により、飛行時間型質量分析におけるそれらのスペクトルピークの形状により、吸着剤表面へのそれらの結合特性により特徴付けられる。これらの特性は、特定の検出された生体分子が本発明のバイオマーカーであるか否かを決定するための方法を提供する。これらの特性は、上記生体分子が識別されるように上記生体分子の本来の特性を表すもので、プロセスを限定するものではない。1態様において、本発明はこれらのバイオマーカーの単離型を提供する。
【0036】
これらのバイオマーカーは、Ciphergen Biosystems社(Fremont、Calif.)のプロテインチップアレイ(「Ciphergen」)を利用するSELDI技術を用いて発見された。アルツハイマー病と診断された被験体および正常と診断された被験体(非痴呆)からCSFサンプルを採取した。いくつかの状況において、CSFサンプルを陰イオンクロマトグラフィー(例えば、実施例1)により分画した。きれいなCSFサンプルを使用することができる(例えば、実施例3)。分画されたまたはきれいなサンプルのいずれかをSELDIバイオチップに供し、Ciphergen PBSII質量分析機における飛行時間型質量分析により、上記サンプル中のポリペプチドのスペクトルを生成させた。このように得られた上記スペクトルを、Ciphergen Biosystems社のBiomarker WizardおよびBiomarker Patternソフトウェアを伴うCiphergen ExpresstmData Managerソフトウェアにより分析した。各群の質量スペクトルを散布図分析に供した。この散布図における各タンパク質クラスターに対して、アルツハイマー病および対照群を比較するためにMann−Whitney test分析を利用し、また、2群間で顕著に異なる(p<0.0001)タンパク質を選択した。この方法は実施例の項目において、より詳細に記述されている。
【0037】
アルツハイマー病を認定するために発見されたバイオマーカーの例を表I、表II、表IV−Aおよび表IV−BおよびVに示す。「プロテインチップアッセイ」の列は、上記バイオマーカーが見いだされたクロマトグラフィー画分を示し、バイオマーカーがそれに対し結合するバイオチップのタイプおよび洗浄条件は、本明細書中の実施例において詳細に記述される通りである。
【0038】
本発明のバイオマーカーは、質量分析により決定されるような質量対電荷比によって特徴付けられる。各バイオマーカーの上記質量対電荷比を本明細書中の表において提供する。表Iにおいて、例えば、バイオマーカーの質量を「M」の後に記載する。すなわち、例えば、バイオマーカーM2579.3は測定される質量対電荷比2579.3を有する。その質量対電荷比はCiphergen Biosystems社PBS II質量スペクトロメータにより生成された質量スペクトルから決定された。この装置は約+/−0.15%の質量正確性を有する(例えば、5,000Daのタンパク質に対して誤差は±7.5Da)。すなわち、測定によって明らかにされた質量によって表される本明細書中のバイオマーカーは、所定のサンプル中でその存在が検出される時、常に正確に同じ重さを示すわけではない。さらに、PBS II質量スペクトロメータは約400〜1000m/dmの質量解像度を有しており、mは質量およびdmはピーク高さの0.5倍における質量スペクトルピーク幅である。バイオマーカーの質量対電荷比はBiomarker Wizardtm ソフトウェア(Ciphergen Biosystems社)を用いて決定した。Biomarker Wizardは、PBSIIにより決定される時に、分析された全スペクトルから同一のピークの質量対電荷比をクラスター化し、上記クラスター中の最大および最小質量対電荷比を取り、2で割ることによりバイオマーカーに対し質量対電荷比を与える。従って、提供される質量は上記の事項が反映されたものである。
【0039】
本発明のバイオマーカーは、飛行時間型質量分析におけるそれらのスペクトルピークの形状により、さらに特徴づけられる。多くのバイオマーカーを表すピークを示す質量スペクトルを図1および9に示す。
【0040】
本発明のバイオマーカーは、クロマトグラフィー表面上のそれらの結合特性により、さらに特徴づけられる。本発明のバイオマーカーは陽イオン交換吸着剤(好ましくはCM−10またはWCX−2プロテインチップアレイ(Ciphergen Biosystems社))、陰イオン交換吸着剤(好ましくはQ−10プロテインチップアレイ(Ciphergen Biosystems社))、疎水性交換吸着剤(好ましくはH50プロテインチップアレイ(Ciphergen Biosystems社))および/またはIMAC吸着剤(好ましくはIMAC3またはIMAC30プロテインチップアレイ(Ciphergen Biosystems社))に結合する。
【0041】
本発明のバイオマーカーの多くのアイデンティティーが決定され、本明細書中の表中に示される。これらを決定した方法についても、例えば実施例の項目に示される。アイデンティティーが決定されているバイオマーカーについては、そのバイオマーカーの存在を当該技術で公知であるその他の方法で調べることができ、例えばイムノアッセイ、酵素活性アッセイにより、または任意のその他の検出可能なバイオマーカーの特性を測定することによって、調べることができる。
【0042】
本発明のバイオマーカーは質量対電荷比、結合特性およびスペクトルの形状により特徴づけられるため、それらの特定のアイデンティティーを知らない状態でも質量分析によってそれらを検出することができる。しかし、所望であれば、そのアイデンティティーが決定されていないバイオマーカーを、例えば、そのポリペプチドのアミノ酸配列決定によって同定することができる。例えば、あるバイオマーカーについて、トリプシンまたはV8プロテアーゼなどの多数の酵素を用いてペプチドマッピングを行うことができ、その消化断片の分子量を使用して各種の酵素により生成される消化断片の分子量とマッチする配列を検索するためのデータベース検索を行うことができる。別の方法においては、タンパク質バイオマーカーはタンデムMS技術を用いて配列決定することができる。この方法において、例えば、ゲル電気泳動により上記タンパク質が単離される。バイオマーカーを含むバンドを切り出し、上記タンパク質をプロテアーゼ消化に供する。個々のタンパク質断片を第1の質量スペクトロメータにより分離する。次いで、この断片を衝突誘起冷却に供し、ペプチドを断片化してポリペプチドラダーを生成させる。次いで、このポリペプチドラダーを、タンデムMSにおける第2の質量スペクトロメータにより分析する。上記ポリペプチドラダーのメンバーにおける質量の相違が上記配列中のアミノ酸を同定する。このようにタンパク質全体の配列が決定できるか、または配列断片を、同定候補を見つけるためのデータベース検索に供することができる。
【0043】
上記バイオマーカーを検出するための好ましい生物学的供給源が脳脊髄液(「CSF」)である。しかし、その他の実施形態において、上記バイオマーカーは血清から検出できる。本発明のバイオマーカーの多くはCSFおよび血清の両方に見出される。例えば、アルツハイマー病バイオマーカーのβ−2−ミクログロブリンおよびシスタチンC(完全長および変異型の両方)はCSFおよび血清の両方に見出されることが発見されている。
【0044】
本発明のバイオマーカーは生体分子である。従って、本発明は、これら生体分子を単離された形態で提供する。上記バイオマーカーはCSFまたは血清等の体液から単離され得る。バイオマーカーはそれらの質量およびそれらの結合特性の両方に基づき当該分野で公知である任意の方法で単離することができる。例えば、上記生体分子を含むサンプルを本明細書中に記述される方法によりクロマトグラフィー分画し、さらなる分離、例えばアクリルアミドゲル電気泳動等でさらに分離する。バイオマーカーのアイデンティティーを知っていれば、イムノアフィニティークロマトグラフィーによるそれらの単離も可能である。
【0045】
(B.バイオマーカー修飾型の使用)
タンパク質はしばしば、検出可能な異なる質量により特徴づけられた複数の異なる形態でサンプル中に存在することがわかっている。これらの形態は翻訳前および翻訳後のいずれか、あるいは両方での修飾による結果であり得る。翻訳前修飾型は、アレル変異体、スライス変異体、およびRNA編集体を含む。翻訳後修飾型は、タンパク質切断(例えば、親タンパク質の断片)、グリコシル化、リン酸化、脂質化、酸化、メチル化、シスチニル化、スルホン化およびアセチル化の結果生じる修飾型を含む。特定のタンパク質およびその全ての修飾型の集合を、本明細書中では「タンパク質クラスター」と呼ぶ。特定のタンパク質およびその全ての修飾型の集合のうち、当該特定のタンパク質以外のものを、本明細書中では「修飾タンパク質クラスター」と呼ぶ。本発明の任意のバイオマーカーの修飾型(表I、表II、表IV−A、表IV−BおよびVに示されるそれらのセットを含む)もそれら自体バイオマーカーとして使用可能である。修飾型は、診断において、タンパク質の非修飾型よりも優れた分別性能を示し得る場合もある。
【0046】
表I、表II、表IV−A、表IV−BまたはVに示されるバイオマーカーなど表に示される任意のバイオマーカーを含むバイオマーカーの修飾型は、修飾型を検出し、バイオマーカーと区別できる任意の方法により最初に検出され得る。最初の検出のための好ましい方法は、まずバイオマーカーおよびその修飾型を、例えば生体特異的捕捉試薬を用いて捕捉し、次いでその捕捉されたタンパク質を質量分析により検出する工程を包含する。より具体的には、上記タンパク質を、上記バイオマーカーおよびその修飾型を認識する抗体、アプタマーまたはアフィボディ等の生体特異的捕捉試薬を用いて捕捉する。この方法によれば、タンパク質に結合しているか、そうでなければ抗体により認識され、それら自体バイオマーカーとなり得るタンパク質相互作用物が捕捉される。好ましくは、上記生体特異的捕捉試薬は固相へと結合される。次いで、その捕捉されたタンパク質をSELDI質量分析により検出するか、または上記捕捉試薬から上記タンパク質を溶出させ、溶出したタンパク質を従来のMALDIにより、またはSELDIにより検出する。タンパク質の修飾型を、標識する必要なく質量に基づいて区別し、定量できるため、質量分析の使用は特に魅力的である。
【0047】
好ましくは、上記生体特異的捕捉試薬はビーズ、プレート、膜またはチップなどの固相へと結合される。抗体等の生体分子を固相へとカップリングする方法は技術的によく知られている。それらは、例えば、二価性架橋試薬を利用することができる。または上記固相は、上記分子に触れて結合するであろうエポキシドまたはイミダゾール等の反応基により誘導体化され得る。異なる標的タンパク質に対する生体特異的捕捉試薬は同一の場所で混合することができるか、またはそれらは物理的に異なる規定可能な位置において固相に結合させることができる。例えば、誘導体ビーズを用いて、各カラムがある単一のタンパク質クラスターを捕捉できるように複数のカラムを詰めることができる。別の方法においては、各種のタンパク質クラスターに対する捕捉試薬を用いて誘導体化した、異なるビーズを用いて単一のカラムを充填することができ、それにより1箇所で全ての分析物を捕捉することができる。従って、Luminex社(Austin、Tex.)のxMAP技術等の抗体で誘導体化されたビーズをベースとする技術を、タンパク質クラスターを検出するために使用することができる。しかし、このような生体特異的捕捉試薬は、タンパク質クラスターを区別するために、クラスターのメンバーに対し特異的に用いられねばならない。
【0048】
さらに別の実施形態において、バイオチップの表面は、タンパク質クラスターに対する捕捉試薬により、同一の場所で、または物理的に異なる規定可能な位置においてのいずれかにより誘導体化することができる。異なるクラスターを異なる規定可能な位置において捕捉することのひとつの有利な点は、分析がより単純になることである。
【0049】
タンパク質の修飾型を同定し、対象の臨床パラメーターと相関させた後、上記の修飾型を本発明の任意の方法におけるバイオマーカーとして使用することができる。この時点で、修飾されたfromの検出は、アフィニティー捕捉後の質量分析、または特定の修飾型に対する従来のイムノアッセイを含む任意の特定の検出方法により達成できる。イムノアッセイは、分析物を捕捉するために、抗体等の生体特異的捕捉試薬を必要とする。さらに、if上記アッセイは、タンパク質およびタンパク質の修飾型を特異的に区別するように設計されねばならない。このことは、例えば、ひとつの抗体が1以上の形態を捕捉し、はっきりと標識された第2の抗体が、各種形態と特異的に結合し、明確な検出を提供するサンドイッチアッセイを利用することにより行われる。抗体は上記生体分子で動物を免疫することにより生産できる。本発明はELISAまたは蛍光をベースとするイムノアッセイ並びにその他の酵素イムノアッセイを含む、サンドイッチイムノアッセイ等の従来のイムノアッセイを意図する。
【0050】
(III.アルツハイマー病のバイオマーカーの検出)
本発明のバイオマーカーは任意の好適な方法により検出できる。この分野に利用され得る検出の実例は、光学的方法、電気化学的方法(ボルタンメトリーおよびアンペロメトリー技法)、原子間力顕微鏡、および無線周波数法、例えば、多極化共鳴スペクトル法を含む。光学的方法の実例は、顕微鏡法に加えて、共焦点および非共焦点の、蛍光、発光、化学発光、吸収、反射率、透過率、および複屈折または屈折率検出法(例えば、表面プラズモン共鳴、偏光解析法、共振ミラー法、グレーチングカプラー導波管法または干渉法)の検出がある。
【0051】
ある実施形態において、サンプルをバイオチップにより分析する。バイオチップは通常固体の基質を含み、通常平面的な表面を有して、そこに捕捉試薬(吸着剤またはアフィニティー試薬とも称する)が付着する。しばしば、バイオチップの表面は複数の規定可能な配置を含み、その各々が、そこに結合した捕捉試薬を有する。
【0052】
「プロテインバイオチップ」は、ポリペプチドの捕捉に対し適合したバイオチップをいう。多くのプロテインバイオチップが技術的に記述されている。これらは例えば、Ciphergen Biosystems社(Fremont、CA)、Packard BioScience Company(Meriden CT)、Zyomyx(Hayward、CA)、Phylos(Lexington、MA)およびBiacore(Uppsala、Sweden)により生産されるプロテインバイオチップを含む。プロテインバイオチップの例は以下の特許または公開された特許出願において記述されている:米国特許第6,225,047号;国際公開第99/51773号パンフレット;米国特許第6,329,209号、国際公開第00/56934号パンフレットおよび米国特許第5,242,828号。
【0053】
(A.質量分析法による検出)
好ましい実施形態において、本発明のバイオマーカーは、気相のイオンを検出するために質量スペクトロメータを利用する方法である質量分析により検出される。質量スペクトロメータの例は、飛行時間型、磁場型、四重極フィルター型、イオン捕捉型、イオンサイクロトロン共鳴、静電場分析機およびこれらの融合型である。
【0054】
さらに好ましい方法において、上記質量スペクトロメータはレーザー脱離/イオン化質量スペクトロメータである。レーザー脱離/イオン化質量分析において、質量スペクトロメータのプローブインターフェースを連動させるため、および検体にイオン化のためのイオン化エネルギーを与えて質量スペクトロメータ中に導入するために適合させたデバイスである質量分析プローブの表面に分析物を設置する。レーザー脱離質量スペクトロメータは、典型的には紫外線レーザー由来であるが、赤外線レーザーにも由来するレーザーエネルギーを利用し、表面から分析物を脱離させ、揮発させ、およびそれらをイオン化して質量スペクトロメータのイオンを光学的に捕えることを可能にさせる。
【0055】
(1.SELDI)
本発明で使用するための好ましい質量スペクトルの技法は、例えば、HutchensおよびYipの両者により米国特許第5,719,060号および同第6,225,047号に記載されるような「表面増強レーザー脱離およびイオン化(Surface Enhanced Laser Desorption and Ionization)」または「SELDI」である。これは、脱離/イオン化気相イオン質量スペクトル法(例えば、質量分析)の1方法で、検体(ここでは、1以上の上記バイオマーカー)がSELDI質量分析プローブの表面上に捕捉されるものをさす。SELDIにはいくつかの種類が存在する。
【0056】
SELDIの1つの種類は「アフィニティー捕捉質量分析」と称される。これはまた「表面増強アフィニティー捕捉法(Surface−Enhanced アフィニティー捕捉)」または「SEAC」とも称する。この方法は、物質と検体との間の非共有結合的な親和性相互作用(吸着)を通じて検体を捕捉する該物質をプローブ表面に有するプローブの使用を含む。この物質は「吸着剤」「捕捉試薬」「親和性試薬」または「結合部分」など、様々に称される。このようなプローブは「アフィニティー捕捉プローブ」として、および「吸着剤表面」を有するものとして言及され得る。上記捕捉試薬は検体と結合可能な任意の物質であり得る。この捕捉試薬は選択的表面の基質に直接的に結合することができ、または上記基質は、例えば、共有結合または配位的共有結合を形成するための反応を通じて、捕捉試薬と結合可能な反応分子を有する反応表面を有することができる。エポキシドおよびカルボジイミドは、抗体等のポリペプチド捕捉試薬または細胞レセプターと共有結合するための有用な反応部分である。ニトロ酢酸およびイミノ2酢酸は、ヒスチジン含有ペプチドと非共有結合的に相互作用する金属イオンと結合するキレート剤として機能する、有用な反応部分である。吸着剤は通常、クロマトグラフィー吸着剤および生体特異的吸着剤として分類される。
【0057】
「クロマトグラフィー吸着剤」は、通常クロマトグラフィーで使用される吸着剤物質をさす。クロマトグラフィー吸着剤には、例えば、イオン交換物質、金属キレート物質(例えば、ニトロ酢酸またはイミノ2酢酸)、固定化金属キレート、疎水性相互作用吸着剤、親水性相互作用吸着剤、色素、単純な生体分子(例えば、ヌクレオチド、アミノ酸、単純な糖類および脂肪酸)および混合モードの吸着剤(例えば、疎水性吸引力/静電反発力吸着剤)を含む。
【0058】
「生体特異的吸着剤」は、例えば、ヌクレオチド分子(例えば、アプタマー)、ポリペプチド、ポリサッカライド、脂質、ステロイドまたはこれらのコンジュゲート(結合体)(例えば、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、核酸(例えば、DNA)−タンパク質コンジュゲート)等の生体分子を含む吸着剤をいう。ある種の例においては、上記生体特異的吸着剤は、複数タンパク質複合体、生体膜またはウイルス等の巨大分子構造であり得る。生体特異的吸着剤の例は抗体、レセプタータンパク質および核酸である。生体特異的吸着剤は、通常、標的の検体に対し、クロマトグラフィー吸着剤よりも高い特異性を有する。SELDIにおいて使用するための吸着剤のさらなる例は、米国特許第6,225,047号中にある。「生物選択的吸着剤」とは、少なくとも10−8Mの親和性で検体と結合する吸着剤をいう。
【0059】
Ciphergen Biosystems社により生産されるプロテインバイオチップは、規定可能な配置でそれらに付着したクロマトグラフィー的な、または生体特異的な吸着剤を有する表面を含む。Ciphergenプロテインチップ(登録商標)アレイは、NP20(疎水性);H4およびH50(疎水性);SAX−2、Q−10およびLSAX−30(インイオン交換);WCX−2、CM−10およびLWCX−30(陽イオン交換);IMAC−3、IMAC−30およびIMAC40(金属キレート);およびPS−10、PS−20(カルボジイミド、expoxideとの反応表面)およびPG−20(カルボジイミドを通じてカップリングしたプロテインG)を含む。疎水性プロテインチップアレイは、イソプロピルまたはノニルフェノキシ−ポリ(エチレングリコール)メタクリレート機能性を有する。陰イオン交換プロテインチップアレイは、第4級アンモニウム機能性を有する。陽イオン交換プロテインチップアレイは、カルボン酸機能性を有する。固定化された金属キレートプロテインチップアレイは、銅、ニッケル、亜鉛およびガリウム等の遷移金属イオンをキレート化により吸着するニトロ酢酸機能性を有する。予め活性化したプロテインチップアレイは、共有結合のためにタンパク質上の基と反応し得るカルボジイミドまたはエポキシド官能基を有する。
【0060】
このようなバイオチップは、:米国特許第6,579,719号(HutchensおよびYip、「Retentate Chromatography(保持クロマトグラフィー)」、2003年6月17日);国際公開第00/66265(Richら、「Probes for a Gas Phase Ion Spectrometer(気相イオンスペクトロメータのためのプローブ)」、2000年11月9日);米国特許第6,555,813号(Beecherら、「Sample Holder with Hydrophobic Coating for Gas Phase Mass Spectrometer(気相質量スペクトロメータのための疎水性コーティングを有するサンプルホルダー)」、2003年4月29日);米国特許出願公開第20030032043A1号(PohlおよびPapanu、「Latex Based Adsorbent Chip(ラテックスをベースとして吸収剤チップ)」、2002年11月16日);および国際公開第03/040700号(Umら、「Hydrophobic Surface Chip(疎水性表面チップ)」、2003年5月15日);米国特許仮出願第60/367,837号(Boschettiら、「Biochips With Surfaces Coated With Polysaccharide−Based Hydrogels(ポリサッカライドをベースとしたヒドロゲルにより被覆された表面を有するバイオチップ)」、2002年5月5日)および「Photocrosslinked Hydrogel Surface Coatings」と題された米国特許出願第60/448,467号(Huangら、21、2003年2月21日出願)においてさらに記述されている。
【0061】
通常、吸着剤表面を有するプローブを、サンプル中に存在するであろう単数または複数のバイオマーカーを上記吸着剤へと結合させ得るために十分な時間、サンプルと接触させる。インキュベーション時間終了後、非結合物質を除去するために基質を洗浄する。任意の好適な洗浄溶液を使用することができ、好ましくは水性溶液を利用する。洗浄のストリンジェンシーを調整することにより、どの分子が結合を維持するかという範囲を操作することができる。洗浄溶液の溶出特性は、例えば、pH、イオン強度、疎水性、カオトロピック性、界面活性剤強度および温度に依存する。上記プローブがSEACおよびSEND特性(本明細書中に記述されるような)の両者を有しない場合は、結合したバイオマーカーを伴う基質に対してエネルギー吸収分子が適用される。
【0062】
上記基質へと結合したバイオマーカーを、飛行時間型質量スペクトロメータなどの気相イオンスペクトロメータにおいて検出する。このバイオマーカーをレーザー等のイオン源によりイオン化し、生成されたイオンをイオン光学アセンブリにより回収し、次いで質量分析器が通過するイオンを分散させて分析する。検出器は次いで、検出されたイオンの情報を質量対電荷比に変える。バイオマーカーの検出は、通常シグナル強度の検出を含む。従って、バイオマーカーの量および質量の両者が決定され得る。
【0063】
SELDIのその他の種類は、プローブ表面に化学的に結合しエネルギー吸着分子を有するプローブ(「SENDプローブ」)の使用を含む表面増強ニート脱離(SEND)である。この文言「エネルギー吸着分子」(EAM)とは、レーザー脱離/イオン化源からのエネルギーを吸着でき、その後に検体分子と接触し、それと共に、その脱離およびイオン化に寄与することができる分子を意味する。上記EAMの区分はMALDIにおいてしばしば「マトリックス」と称され使用される分子を含み、桂皮酸誘導体、シナピン酸(SPA)、シアノヒドロキシ桂皮酸(CHCA)およびジヒドロキシ安息香酸、フェルラ酸、およびヒドロキシアセトフェノン誘導体により例示される。ある種の実施形態において、上記エネルギー吸着分子は、直鎖上、または、例えばポリメタクリレート等の架橋された重合体へと取り込まれる。例えば、この組成物は、α−シアノ−4−メタクリロイルオキシ桂皮酸およびアクリラートの共重合体であり得る。別の実施形態において、上記組成物は、α−シアノ−4−メタクリロイルオキシ桂皮酸、アクリラート、および3−(トリエトキシ)シリルプロピルメタクリレートの共重合体である。別の実施形態において、上記組成物は、α−シアノ−4−メタクリロイルオキシ桂皮酸およびオクタデシルメタクリレート(「C18 SEND」)の共重合体である。SENDは、米国特許第6,124,137号および国際公開第03/64594号パンフレット(Kitagawa、「Monomers And Polymers Having Energy Absorbing Moieties Of Use In Desorption/Ionization Of Analytes(検体の脱離/イオン化において使用されるエネルギー吸着分子を有するモノマーおよびポリマー)」、2003年8月7日)においてさらに記述されている。
【0064】
SEAC/SENDは、捕捉試薬およびエネルギー吸着分子の両方が、サンプルが存在する表面へと付着するSELDIの1種類である。従って、SEAC/SENDプローブは、外部マトリックスを適用する必要なしに、アフィニティー捕捉およびイオン化/脱離を通じて分析物を捕捉することを可能にする。C18SENDバイオチップは、捕捉試薬として機能するC18部分およびエネルギー吸着分子として機能するCHCA部分を含むSEAC/SENDの1種である。
【0065】
表面増強不耐光性付着離脱(Surface−Enhanced Photolabile Attachment and Release(SEPAR)と称される、SELDIのその他の種類は、分析物に共有結合的に結合し、次いで例えばレーザー等の光に曝した後にこの部分の不耐光性の結合が破壊されることを通じて分析物を遊離させることができる表面付着部分を有するプローブを含む(米国特許第5,719,060号参照)。SEPARおよびその他の形態のSELDIは、単数または複数のバイオマーカープロファイルの検出に対し容易に適合し、本発明に準拠する。
【0066】
(2.その他の質量分析方法)
その他の質量分析方法において、上記バイオマーカーを最初に、上記バイオマーカーに結合するクロマトグラフィー特性を有するクロマトグラフィー樹脂上に捕捉する。本発明の実施例において、これは多様な方法を含み得る。例えば、上記バイオマーカーはCM Ceramic HyperD F樹脂等の陽イオン交換樹脂上に捕捉することができ、樹脂を洗浄し、MALDIによって上記バイオマーカーを溶出させ検出することができる。別の方法においては、この方法は、陽イオン交換樹脂に供する前に陰イオン交換樹脂上でのサンプル分画を先に行うことができる。別の方法においては、陰イオン交換樹脂およびMALDIによる検出を直接的に行うことができる。さらにその他の方法においては、上記バイオマーカーに結合する抗体を含むイムノクロマトグラフィー樹脂上に上記バイオマーカーを捕捉し、非結合物質を除去するために上記樹脂を洗浄し、上記樹脂から上記バイオマーカーを溶出させて、上記の溶出したバイオマーカーをMALDIまたはSELDIにより検出することができる。
【0067】
(3.データ分析)
飛行時間型質量分析による検体の分析は、飛行時間型スペクトルを生成する。最終的に分析される飛行時間型スペクトルは、通常、サンプルに対するイオン化エネルギーの単パルス由来のシグナルを示さず、むしろ多数のパルス由来シグナルの合計を示す。このことがノイズを減らし、ダイナミックレンジを増加させる。この飛行時間型データを、次いでデータ処理に供する。CiphergenのProteinChip(登録商標)ソフトウェアにおいて、データプロセスは通常、質量スペクトルを生成するためのTOFからM/Zへの変換と、装置上の補正値を消去するためのベースライン減算、および高頻度なノイズを低減するためのフィルタリングを含む。
【0068】
脱離およびバイオマーカーの検出によって生成したデータは、プログラムされたデジタルコンピュータの使用により分析され得る。上記コンピュータプログラムは、検出されたバイオマーカーの数と、所望により、検出された各バイオマーカーのシグナルの強度および決定された分子質量とを示すためにデータを分析する。データ分析は、バイオマーカーのシグナル強度を決定するステップおよび、予め決められた統計学的な分布から逸脱したデータを除去するステップを包含し得る。例えば、いくつかの参照値に対し各ピークの高さを計算することで、観察されたピークを標準化することができる。参照値は装置およびエネルギー吸着分子等の化学薬品等により生じるバックグラウンドノイズであり得、尺度においてそれをゼロに設定する。
【0069】
上記コンピュータは、得られたデータを表示用の多様な形態に変換することができる。標準的なスペクトルを表示することができるが、1つの有用な形態では、スペクトル画面からピーク高さおよび質量情報のみを保持し、よりはっきりとしたイメージが得られるようにし、ほぼ同じ分子量をもつバイオマーカーがよりわかるようになっている。その他の有用な形式においては、2またはそれ以上のスペクトルが比較され、サンプル間で正に調節されているまたは負に調節されている固有の単一または複数のバイオマーカーが簡便に強調される。これらの任意の形式を用いて、サンプル中に特定のバイオマーカーが存在するか否かを迅速に調べることができる。
【0070】
分析は、通常、分析物からのシグナルを表すスペクトル中のピークの同定を伴う。ピークの選択は視覚的に行うことができるが、Ciphergen社のProteinChip(登録商標)ソフトウェアパッケージの一部として、ピークの検出を自動化できるソフトウェアを利用することができる。一般にこのソフトウェアは、選択された閾値を越えるシグナル対ノイズ比を有するシグナルを同定し、上記のピークシグナルの質量中心においてピーク質量をラベルすることにより機能する。1つの有用な応用において、上記質量スペクトルにおいて選択されたパーセンテージで存在する同一のピークを同定するために、多くのスペクトルが比較される。このソフトウェアの1つのバージョンは、定義された質量範囲内の各種のスペクトル中に現れる全てのピークをクラスター化し、全てのそのピークに、質量(M/Z)クラスターの質量中心付近の質量(M/Z)を割り振る。
【0071】
データを分析するために使用するソフトウェアは、そのシグナルが本発明のバイオマーカーに相当するシグナル中のピークを表しているか否かを調べるための、シグナルを分析するためのアルゴリズムを使用するコードを含み得る。上記ソフトウェアはまた、実験下で特定の臨床パラメーターの状態を示すバイオマーカーピークまたはバイオマーカーピークの組み合わせが存在するか否かを調べるために、観察されるバイオマーカーのピークを分類ツリーまたはANN分析に供することができる。データの分析は、サンプルの質量スペクトル分析から直接的または間接的に得られる各種のパラメーターに「入力され得る」。これらのパラメーターは、以下に限定されるものではないが、1以上のピークの存在下または非存在下、ピークまたはピーク群の形状、1以上のピークの高さ、1以上のピークの高さの対数、およびその他のピーク高さデータの算術的操作を含む。
【0072】
(4.アルツハイマー病バイオマーカーのSELDI検出のための一般的プロトコール)
本発明のバイオマーカーを検出するための好ましいプロトコールは以下である。試験するサンプルを、表IおよびIIにも示すような、陽イオン交換吸着剤(好ましくはCM−10またはWCX−2プロテインチップアレイ(Ciphergen Biosystems社))、陰イオン交換吸着剤(好ましくはQ−10プロテインチップアレイ(Ciphergen Biosystems社))、疎水性交換吸着剤(好ましくはH50プロテインチップアレイ(Ciphergen Biosystems社))および/またはIMAC吸着剤(好ましくはIMAC30プロテインチップアレイ(Ciphergen Biosystems社))を含むアフィニティー捕捉プローブと接触させる。非結合分子を洗い落とす間に、バイオマーカーを保持するであろうバッファーで上記プローブを洗浄する。各バイオマーカーに対し好適な洗浄の例は、実施例および表Iにおいて同定されたバッファーである。上記バイオマーカーはレーザー脱離/イオン化質量分析により検出される。
【0073】
いくつかの例において、例えば血清等の上記サンプルを、SELDI分析前に予備的分画に供する。このことはサンプルを単純化し、また感度を向上させる。予備的分画の好ましい方法は、サンプルをQ HyperD(BioSepra、SA)等の陰イオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させる工程を包含する。次いで、上記結合物質をpH9、pH7、pH5およびpH4のバッファーを用いてステップワイズなpH溶出に供する(実施例1−バッファーリスト)。(バイオマーカーが溶出する画分を例えば表I中に示す)。上記バイオマーカーを含む各種画分を回収する。その後、上記バイオマーカーを含む上記の各種画分を上述のSELDI分析に供する。
【0074】
別の方法においては、上記バイオマーカーを認識する抗体を入手できる場合、例えばβ2−ミクログロブリン、シスタチン、トランスフェリン、トランスサイレチン、ヘモペキシン、WT ABri/ADアミロイドペプチド、完全長シスタチンC、シスタチンCΔN1−8、神経分泌タンパク質VGFのN−末端断片、補体3a des−Arg、神経内分泌タンパク質7B2のC−末端断片、およびセクレトニューリンの場合、これらは予め活性化したPS10またはPS20プロテインチップアレイ(Ciphergen Biosystems社)等のプローブ表面に付着し得る。これらの抗体はサンプル由来のバイオマーカーを上記プローブ表面へと捕捉することができる。次いで、上記バイオマーカーを、例えばレーザー脱離/イオン化質量分析により検出し得る。
【0075】
(B.イムノアッセイによる検出)
別の実施形態において、本発明のバイオマーカーはイムノアッセイにより測定することができる。イムノアッセイは、上記バイオマーカーを捕捉するために抗体等の生体特異的捕捉試薬を必要とする。抗体は、技術的によく知られた方法により、例えば、動物を上記バイオマーカーで免疫することにより生産することができる。バイオマーカーは、それらの結合特性に基づいてサンプルから単離することができる。別の方法においては、ポリペプチドバイオマーカーのアミノ酸配列が未知である場合、上記ポリペプチドを技術的によく知られた方法により合成し、また抗体を生成するために使用することができる。
【0076】
本発明は、例えば、ELISAまたは蛍光をベースとするイムノアッセイならびにその他の酵素イムノアッセイを含むサンドイッチイムノアッセイ等を含む従来のイムノアッセイを意図する。上記SELDIをベースとするイムノアッセイにおいて、上記バイオマーカーのための生体特異的捕捉試薬は予め活性化されたプロテインチップアレイ等のMSプローブの表面に付着される。上記バイオマーカーは次いで、この試薬を通じてバイオチップ上に特異的に捕捉され、上記の捕捉されたバイオマーカーは質量分析により検出される。
【0077】
(IV.被験体のアルツハイマー病における状態の判定)
(A.単独マーカー)
本発明のバイオマーカーは、例えばアルツハイマー病を診断するために、被験体におけるアルツハイマー病の病態を判断するための診断テストに使用することができる。「アルツハイマー病の病態」という語句は、とりわけ、アルツハイマー病と非アルツハイマー病、および、特に、アルツハイマー病と非アルツハイマー病の正常、またはアルツハイマー病と非アルツハイマー性痴呆を区別することを含む。この病態に基づいて、付加的な診断テストまたは治療手順または処方計画を含むさらなる方法が示され得る。
【0078】
正確に病態を予測するための診断テストの検出力は、上記アッセイの感度、上記アッセイの特異度、または受信者動作特性(「ROC」)曲線下面積として共通に測定される。感度は、試験により陽性であると予測される真の陽性の割合であり、一方、特異度は、試験により陰性であると予測される真の陰性の割合である。ROC曲線は、1−特異度の関数により、テストの感度を提供する。ROC曲線下面積が大きくなるほど、テストの予想される値は説得力が増す。テストの有効性を測定するその他の有用な測定は、陽性予測値および陰性予測値である。陽性予測値は陽性としてテストしたものにおける実際の陽性の割合である。陰性予測値は陰性としてテストしたものにおける実際の陽性の割合である。
【0079】
本発明のバイオマーカーは、異なるアルツハイマー病の病態において、少なくともp≦0.05、p≦10−2、p≦10−3、p≦10−4またはp≦10−5の統計学的に有意な差異を示す。これらのバイオマーカーを単独または君合わせで使用する診断テストは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%および約100%の感度および特異度を示す。
【0080】
表I、IIおよびIVに列挙されたバイオマーカーは、アルツハイマー病において異なる量で存在し、したがってそれぞれが個々に、アルツハイマー病の病態の診断を助けるのに有用である。上記方法は、第1に、例えば、SELDIバイオチップ上へ捕捉し、それに次いで質量分析により検出する等の本明細書中に記述された方法を用いて被験体サンプル中の選択されたバイオマーカーを測定すること、および、第2に、診断的な量により、または陽性なアルツハイマー病の病態を陰性なアルツハイマー病の病態から区別するカットオフにより、測定値を比較する工程、を包含する。上記の診断的な量は、被験体が特定のアルツハイマー病の病態を有するとして分類されるよりも多いまたは少ないバイオマーカーの測定量を表す。例えば、上記バイオマーカーが、アルツハイマー病との間に正常と比較して正に調節されている場合、診断的カットオフを超える量の測定量はアルツハイマー病の診断を提供する。別の方法においては、上記バイオマーカーが、アルツハイマー病の間に正常と比較して負に調節されている場合、診断的カットオフを下回る量の測定量はアルツハイマー病の診断を提供する。
【0081】
同様に、上記バイオマーカーが、非アルツハイマー性痴呆との間に正常と比較して正に調節されている場合、診断的カットオフを超える量の測定量は非アルツハイマー性痴呆の診断を提供する。別の方法においては、上記バイオマーカーが、非アルツハイマー性痴呆との間に正常と比較して負に調節されている場合、診断的カットオフを下回る量の測定量は非アルツハイマー性痴呆の診断(すなわち、アルツハイマー病は陰性であるという診断)を提供する。
【0082】
当該分野でよく理解されているように、アッセイにおいて使用される特定の診断的カットオフを調整することにより、診断医の好みに応じて診断的アッセイの感度または特異度を増加させることができる。上記の特定の診断的カットオフを、例えば、ここで行われたように、異なるアルツハイマー病の病態を伴う被験体由来の統計学的に顕著な多数のサンプルにおいてバイオマーカーの量を測定することにより、および、診断医の所望するレベルの特異度および感度へと適合させるためにカットオフを引き下げることにより、決定することができる。
【0083】
(B.マーカーの組み合わせ)
個々のバイオマーカーが有用な診断用バイオマーカーである一方で、バイオマーカーの組み合わせが、単独のバイオマーカーよりも大きい、特定の状態における予測値を提供し得ることが見出されている。具体的には、サンプル中の複数のバイオマーカーの検出が、テストの感度および/または特異度を増加させ得る。
【0084】
実施例に記述されるプロトコールが、アルツハイマー病および非痴呆と診断された患者サンプル由来の質量スペクトルを生成させるために使用された。そのピーク質量および高さを見出されたデータセットへと抽出した。分類および回帰ツリー(Classification and regression tree)分析(CART)(Ciphergen Biomarker Patterns SoftwareTM)を利用するアルゴリズムの学習を訓練するために、このデータセットを使用した。特に、CARTは、多くのピークのサブセットをランダムに選択した。各サブセットに関して、CARTは、アルツハイマー病または非アルツハイマー病としてサンプルを分類するための最良のまたは最良に近い判定の樹状図を生成した。CARTにより生成される多くの判定の樹状図において、いくつかのものは、アルツハイマー病を非アルツハイマー病から区別することにおいて優れた感度および特異度を有していた。
【0085】
事例としての判定の樹状図を図2に示す。この樹状図はM11753.4(β2ミクログロブリン、図中「B2M」)、M60976.2(ヘモペキシン、図中「HPX」)、M13391(シスタチンC、図中「CysC」)、M11.1KおよびM9.7Kを使用する。従って、これらのバイオマーカーは、互いに組み合わせて、および、所望によりその他のバイオマーカーと組み合わせて使用されたときに、アルツハイマー病に対する強力な分類要因として認識される。特に、例えば、M78677.3(トランスフェリン)、M2432.2(WT ABri/ADanアミロイドペプチド)、M12583.4(シスタチンCΔN1−8)、M3687.7(神経分泌タンパク質VGFのN−末端断片);M3951.6(神経分泌タンパク質VGFのN−末端断片)、M8933.2(補体3a des−Arg)、M3514.5(神経内分泌タンパク質7B2のC−末端断片)およびM3680.7(セクレトニューリン)と共に、またはさらにそれらと組み合わせて使用されるとき、これらのマーカーは、少なくとも89%の感度と少なくとも86%の特異度を伴ってアルツハイマー病を非アルツハイマー病から識別できる。
【0086】
判定の樹状図における詳細、特に分岐の決定に使用するカットオフ値は、見出されるデータセットを生成するために使用されるアッセイの詳細に依存することは特筆すべきでもある。本分析に用いられ、データを生成したアッセイのデータ取得パラメーターを実施例3に提供する。例えば、新たなサンプルセットまたは異なるアッセイプロトコールから分類アルゴリズムを開発することにおいて、オペレーターは、これらのバイオマーカーを検出するプロトコールを使用し、また、それらを含むための学習アルゴリズムを打ち込む。
【0087】
図2に示される判定の樹状図において、M11753.4(β2ミクログロブリン、図中「B2M」)、M60976.2(ヘモペキシン、図中「HPX」)、M13391(シスタチンC、図中「CysC」)、M11.1KおよびM9.7Kは、アルツハイマー病と非アルツハイマー病とを分類するために組み合わせたとき特に有用である。この組み合わせは、図2に示す帰納的分配プロセスにおいて得に有用である。再び、各カットオフ測定値は、当然ながら個々のアッセイプロトコールに依存する。この場合において上記カットオフは、実施例3に示されるプロトコールに基づく。
【0088】
この判定の樹状図において、B2Mは根となる決断点である。カットオフを超える(すなわち、M11753.4≦1.482)一定量のこのバイオマーカーを有する被験体はCysCに基づいて決断点4へと送られる。
【0089】
カットオフを下回る量(すなわち、CysC≦2.071)のM13391を有する被験体は、アルツハイマーとして分類される。
【0090】
カットオフを下回る量(すなわち、M9.7K≦0.293)のM9.7Kを有する被験体は、正常として分類される。カットオフを超える量(すなわち、M9.7K≦0.293)のM9.7Kを有する被験体は、アルツハイマー病として分類される。
【0091】
カットオフを下回る量(すなわち、M9.7K≦0.293)のB2Mを有する被験体は、HPXに基づいて決断点2へと送られる。
【0092】
カットオフを超える量(すなわち、M60976.2≦0.063)のHPXを有する被験体は、アルツハイマーとして分類される。カットオフを下回る量(すなわち、M60976.2≧0.063)のHPXを有する被験体は、M11.1Kに基づいて決断点3へと送られる。
【0093】
カットオフを下回る量(すなわち、M11.1K≦2.659)のM11.1Kを有する被験体は、正常と分類される。カットオフを下回る量(すなわち、M11.1K≦2.659)のM11.1Kを有する被験体は、アルツハイマー病として分類される。
【0094】
図2に示されるように、この判定の樹状図は約89%の感度、および約86%の特異度を有する。
【0095】
(C.進行性疾患のリスク判定)
ある実施形態において、本発明は、被験体におけるアルツハイマー病の進行のリスクを調べるための方法を提供する。バイオマーカーの量またはパターンは、例えば高い、中程度の、低い等の各種のリスク状態において特徴的である。アルツハイマー病の進行リスクは、適切な単一のバイオマーカーまたは複数のバイオマーカーを測定すること、および、次いでそれらを分類アルゴリズムへと供し、または特定のリスクレベルと関連している対照量のバイオマーカーおよび/またはバイオマーカーのパターンと比較することにより、決定される。
【0096】
(D.疾患における段階の判定)
ある実施形態において、本発明は、被験体におけるアルツハイマー病の段階を調べるための方法を提供する。上記疾患の各段階は、特徴的な量のバイオマーカーまたはバイオマーカーのセットの相対量(パターン)を有する。疾患の上記段階は、適切な単数のバイオマーカーまたは複数のバイオマーカーを測定すること、および次いでそれらを分類アルゴリズムへと供し、または特定の段階と関連している対照量のバイオマーカーおよび/またはバイオマーカーのパターンと比較することにより、決定される。
【0097】
(E.疾患における経過(進行/寛解)の判定)
ある実施形態において、本発明は、被験体におけるアルツハイマー病の経過を調べるための方法を提供する。疾患の経過は、疾患の進行(悪化)および疾患の逆行(改善)を含む、長期にわたる疾患状態の変化をさす。長期にわたり、バイオマーカーの量又相対量(例えば、パターン)は変化する。例えば、バイオマーカーM9984.6およびM10265.6(表IV−B)の濃度はアルツハイマーの患者由来のサンプルにおいて増加し、一方、ヘモペキシンの濃度はアルツハイマーの患者由来のサンプルにおいて減少する。したがって、疾患または非疾患に向かう長期的な増加または減少のいずれかのこれらのマーカーの傾向は、上記疾患の経過を示す。従って、この方法は被験体における1以上のバイオマーカーを少なくとも2つの異なる時点、例えば、最初の時と2度目の時に測定する工程を包含し、および量における変化があればそれを比較する工程を包含する。疾患の経過はこれらの比較に基づいて調べられる。同様に、この方法は、治療に対する応答を調べるために有用である。治療が効果的である場合、上記バイオマーカーは正常に近づくであろうし、一方、治療が効果的でない場合、上記バイオマーカーは疾患を示す方へと向かうであろう。
【0098】
(F.被験体の管理)
アルツハイマー病の病態の認定における上記方法のある種の実施形態において、上記方法は被験体の治療を管理する工程をさらに包含する。このような管理には、内科医または臨床医学者の行為と、それに続くアルツハイマー病の病態の決定を含む。例えば、内科医がアルツハイマー病の診断を行い、次いでコリンエステラーゼインヒビターの処方または投与等のある種の治療計画を立てる場合、抗グルタミン酸作動性治療または酸化防止剤がそれに続き得る。別の方法においては、非アルツハイマー病または非アルツハイマー性痴呆の診断は、患者が患うであろう特定の痴呆を調べるためのさらなるテストが続き得るだろう。診断テストがアルツハイマー病の病態における最終的な結果を与えない場合にも、更なるテストが要求され得るだろう。
【0099】
本発明のさらなる実施形態は、例えば技術者、内科医または患者に対しての、アッセイ結果または診断または両方におけるコミュニケーションに関連する。ある種の実施形態において、例えば内科医および彼らの患者等の当事者にアッセイ結果または診断または両方を情報伝達するためにコンピュータが使用される。いくつかの実施形態において、結果または診断が情報伝達される国または管轄とは異なる国または管轄において上記アッセイが実行され、または上記アッセイ結果が分析される。
【0100】
本発明の好ましい実施形態において、表I、表II、表IV−A、Bおよび表Vにおける任意の上記バイオマーカーのテスト被験体における存在または非存在に基づく診断は、上記診断が得られた後、できる限り早く被験体へと情報伝達される。上記診断は、被験体の治療をする内科医により、上記被験体へと情報伝達され得る。別の方法においては、診断はテストの被験体へと送付され、電子メールまたは電話により被験体への情報伝達がなされる。コンピュータは、電子メールまたは電話により診断を情報伝達するために使用することができる。ある種の実施形態において、診断テストの結果を含むメッセージを生成し、およびテレコミュニケーションにおける当業者になじみ深いであろうコンピュータハードウエアおよびソフトウェアの組み合わせを用いて、自動的に被験体に届けることができる。ヘルスケア指向のコミュニケーションシステムの1例が米国特許第6,283,761号に記述されている;しかし、本発明はこの特定のコミュニケーションシステムを利用する方法に限定されない。本発明の方法におけるある種の実施形態において、サンプルをアッセイし、疾患を診断しおよびアッセイ結果または診断を情報伝達することを包含する上記方法のステップの全てまたはいくつかは、様々な方法(例えば、外国)範囲で実行され得る。
【0101】
(V.アルツハイマー病の病態を認定するための分類アルゴリズムの生成)
いくつかの実施形態において、「既知のサンプル」等のサンプルを用いて生成されたスペクトル(例えば、質量スペクトルまたは飛行時間型スペクトル)に由来するデータを、分類モデルを「訓練する」ために使用することができる。「既知のサンプル」は、予め分類されているサンプルである。上記スペクトルに由来し、また上記分類モデルを形成するために使用されるデータは、「トレーニングデータ」として参照される。ひとたび訓練されると、分類モデルは、未知のサンプルを使用して生成されたスペクトル由来のデータにおけるパターンを認識できるようになる。上記分類モデルを次いで、未知のサンプルを階級に分類するために使用することができる。このことは、例えば、特定の生体サンプルがある種の生物学的状態(例えば、疾患状態と非疾患状態)に関連しているか否かを予測することにおいて有用であり得る。
【0102】
分類モデルを形成するために使用される上記のトレーニングデータのセットは、生データまたは前処理されたデータを含み得る。いくつかの実施形態において、生データは飛行時間型スペクトルまたは質量スペクトルから直接的に得ることができ、および次いで所望により、上述のように「前処理」され得る。
【0103】
分類モデルは、データ中の目的パラメーターに基づいてデータの実体を階級へと分離することを試みる任意の好適な統計学的分類(または「訓練」)方法を用いて形成することができる。分類方法は監視することもでき、または監視しないこともできる。監視するおよび監視しない分類プロセスの例は、Jain、「Statistical Pattern Recognition:A Review(統計学的パターン認識:総説)」、IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence、Vol.22、No.1、January 2000、中に記載され、ここにおける教示を参照により組み込むものとする。
【0104】
監視された分類において、既知の階級のそれぞれを定義する1以上のセットの関係を学習する訓練メカニズムへ、既知のカテゴリーの例を含むトレーニングデータが与えられる。新たなデータは上記訓練メカニズムへと適用され得、それは次いでその新たなデータを学習した関係を用いて分類する。監視された分類プロセスの例には、直線回帰プロセス(例えば、複数直線回帰(MLR)、部分最小二乗法(PLS)回帰および第一成分回帰(PCR))、二分決定木(例えば、CART分類および回帰決定木等の再帰的区分プロセス)、人工神経ネットワーク等のバックプロパゲーションネットワーク、判別分析(例えば、Bayesian分類子またはフィッシャー(Fischer)分析)、ロジスティック分類子、およびサポートベクター分類子(サポートベクター装置)を含む。
【0105】
好ましい監視された分類方法は、再帰的区分プロセスである。再帰的区分プロセスは未知のサンプル由来のスペクトルを分類するために再帰的区分ツリーを使用する。再帰的区分プロセスに関するさらなる詳細は、米国特許出願シリアル番号第2002 0138208 A1号 to Paulseら、「Method for analyzing mass spectra(質量スペクトルの分析方法」により提供される。
【0106】
その他の実施形態において、上記分類モデルは監視されない学習方法を使用して形成することができる。監視されない分類は、上記トレーニングデータセットがそれに由来するスペクトルを予め分類することなく、上記トレーニングデータのセットにおける類似性に基づいて分類を学習することを試みる。監視されない学習方法はクラスター分析を含む。クラスター分析は、理想的には、互いに非常に類似のメンバーを有するもの、およびその他のクラスターのメンバーと非常に似ていないメンバーを有しているべきである「クラスター」またはグループへと上記データを分割することを試みる。次いで、データ項目間の距離を測定するいくつかの距離測定を使用して類似性を測定し、および、互いにより近いデータ項目をまとめる。クラスター化の技法はMacQueen’s K−平均アルゴリズムおよびKohonen’s Self−Organizing Mapアルゴリズムを含む。
【0107】
生物学的情報を分類するために使用するために行われる学習アルゴリズムは、例えば、国際公開第01/31580号パンフレット(Barnhillら、「Methods and devices for identifying patterns in biologicalsystems and Methods of use thereof(生物学的システムにおけるパターンを同定するための方法およびデバイスおよびその使用方法)」)、米国特許出願番号第2002 0193950 A1号(Gavinら、「Method or analyzing mass spectra(方法または質量スペクトルを分析すること)」)、米国特許出願番号第2003 0004402 A1号(Hittら、「Process for discriminating between biological states based on hidden patterns from biological Data(生物学的データ由来の隠されたパターンに基づいて生物学的状態の間を区別するプロセス)」)、および米国特許出願番号第2003 0055615 A1号(ZhangおよびZhang、「Systems and methods for processing biological expression data(生物学的発現データを処理するためのシステムおよび方法)」)において記述されている。
【0108】
上記分類モデルを、任意の好適なデジタルコンピュータを用いて形成することができる。好適なデジタルコンピュータは、Unix(登録商標)、Windows(登録商標)またはLinuxTMをベースとしたオペレーティングシステム等の任意の標準または特定のオペレーティングシステムを使用した、マイクロ、ミニ、または大型のコンピュータを含む。使用される上記デジタルコンピュータは、質量スペクトロメータから物理的に分離されて使用されることができ、それは対象のスペクトルを作りだすために使用され、またはそれを質量スペクトロメータとカップリングさせることができる。
【0109】
本発明の実施形態に従う上記トレーニングデータのセットおよび上記分類モデルを、デジタルコンピュータによって実行されまたは使用されるコンピュータコードによって具現化できる。上記コンピュータコードは任意の好適な読み取り可能な媒体、光学または磁気ディスク、スティック、テープ他において保存することができ、および任意の好適なC、C++、ビジュアルベーシック等のコンピュータ言語で書き込むことができる。
【0110】
すでに見出されたバイオマーカーに対する、またはアルツハイマー病について新たなバイオマーカーを見出すための分類アルゴリズムを開発するために、上述される学習アルゴリズムは有用である。上記分類アルゴリズムは、順に、単独でまたは組み合わせて使用されるバイオマーカーに関する診断値を提供することにより、診断用テストの基礎(例えば、カットオフ値)を形成する。
【0111】
(VI.アルツハイマー病のバイオマーカーを検出するキット)
別の実施形態において、本発明はアルツハイマー病の病態を認定するためのキットを提供し、上記キットは本発明によりバイオマーカーを検出するために使用される。ある実施形態において、上記キットは、捕捉試薬をその上に付着させ、上記捕捉試薬が本発明のバイオマーカーと結合しているチップ、マイクロタイタープレートまたはビーズまたは樹脂等の固体の支持体を含む。したがって、例えば、本発明のキットは、ProteinChip(登録商標)アレイ等のSELDIのための質量分析プローブを含み得る。生体特異的捕捉試薬の場合、上記キットは、反応表面を伴う固相支持体および生体特異的捕捉試薬を含む容器を含み得る。
【0112】
上記キットは、洗浄溶液または洗浄溶液を作製するための説明書を含み、そこにおいて捕捉試薬および洗浄溶液の組み合わせが固相支持体上の単独のバイオマーカーまたは複数のバイオマーカーの捕捉を可能にし、それに続く、例えば質量分析による検出を可能にする。上記キットは1種以上の吸着剤を含み、各々は異なる固相支持体上に存在する。
【0113】
さらなる実施形態において、このようなキットは、ラベルの形式で、または分離した挿入物の形式で、好適な操作パラメーターに対する説明書を含み得る。例えば上記説明書は、消費者に、どのようにサンプルを回収し、どのようにプローブを洗浄し、または特定のバイオマーカーを検出するかを知らせることができる。
【0114】
さらにその他の実施形態において、上記キットは、キャリブレーション用の単数または複数の標準品として使用するためのバイオマーカーサンプルを有する1以上の容器を含むことができる。
【0115】
(VII.イムノアッセイキャリブレーターの品質判定)
イムノアッセイのキャリブレーションは、イムノアッセイにおいて生じる結果の品質を保証するために重要である。キャリブレーションは一般的に、予め決められた量または濃度の標的分析物を含むイムノアッセイキャリブレーターの使用を含む。イムノアッセイにおいて上記キャリブレーターにより生じたシグナルは、上記キャリブレーター中の標的分析物の量に相関する。このキャリブレーションは、順に、テストサンプル中で測定されるシグナルの量を、テストサンプル中の標的分析物の量と相関させるために使用される。しかし、キャリブレーターにより生じたシグナルは、例えば、キャリブレーター中の標的分析物が分解されたり、シグナルを弱めるように修飾されたりした場合には、キャリブレーター中における真の分析物の量を表さない。
【0116】
例えば、ある実施形態において、本発明は、シスタチンイムノアッセイキャリブレーターの品質を調べるための方法を提供する。上記方法は、シスタチンを捕捉する抗体を用いたシスタチンに対するイムノアッセイにおいて使用されるイムノアッセイキャリブレーター由来の分子を捕捉して、および上記抗体により捕捉されるシスタチンまたは1以上のシスタチン修飾型の量を特異的に測定することを含む。別の方法においては、上記イムノアッセイは特定のシスタチン修飾型を測定することに向けられ得、およびこの形態に対する抗体と、この形態を含むキャリブレーターを含む。
【0117】
上記されたように、ひとたびキャリブレートされると、例えばシスタチンCΔN1−8などの修飾シスタチンポリペプチドの量を正確に測定することができるイムノアッセイを、痴呆と診断された被験体が、非アルツハイマー性痴呆のいくつかの形態と対立するものとしてアルツハイマー病を患っている可能性を調べるために使用することができる。
【0118】
同様に、本発明はまた、シスタチンイムノアッセイキャリブレーターについて上記された同様のステップを含む、本明細書中に開示されるバイオマーカーに対するイムノアッセイに使用する任意のイムノアッセイキャリブレーターの品質を調べるための方法をも提供する。
【0119】
(VIII.イムノアッセイに使用する抗体試薬中の抗体の品質判定)
イムノアッセイは、標的分析物に対し生成した抗体を含むイムノアッセイ試薬の使用を含む。このようなアッセイの正確性は、上記イムノアッセイ試薬中の抗体の強度および純度に依存する。抗体試薬中の夾雑物の存在は、抗体試薬中における抗体の量の正確な測定を妨げ得る。例えば、本発明は、イムノアッセイ試薬として使用されるADバイオマーカーに対する抗体の品質を、例えば試薬中で抗体が分解されたものなどの修飾物を特異的に検出することにより調べるための方法を提供する。
【0120】
例えば痴呆患者を診断し、患者の治療をモニターするために、上記アッセイの性能が単独であるいはその他のマーカーと組み合わせてテストされるだろう。最初に、ADおよび非AD性痴呆などの異なるタイプの痴呆サンプルが、高齢の正常サンプルと並行して分析され、アッセイ感度および特異度が調べられるだろう。アッセイの有用性は、脳脊髄液およびマッチングさせた血清サンプルの両者について調べられるだろう。最終的な目的は、AD患者の早期診断を向上させ、記録のための患者の階層化を助け、臨床試験および薬物治療応答についての代理マーカーを提供するテストを創り出すことである。
【0121】
(IX.アッセイおよび治療方法のスクリーニングにおけるアルツハイマー病バイオマーカーの使用)
本発明の上記方法は、その他の応用をさらに有する。例えば、上記バイオマーカーは、上記バイオマーカーの発現をin vitroまたはin vivoで調節する化合物を探索するために使用することができ、その化合物は順に、患者におけるアルツハイマー病の治療または抑制において有用であり得る。その他の例において、上記バイオマーカーは、アルツハイマー病に対する治療への応答をモニターするために使用できる。さらにその他の例においては、被験体がアルツハイマー病を進行するリスクを有しているかについて調べるための遺伝的研究において、上記バイオマーカーを使用することができる。
【0122】
従って、例えば本発明のキットは、プロテインバイオチップ(例えば、Ciphergen WCX2 プロテインチップアレイ、例えば、プロテインチップアレイ)等の陽イオン交換機能を有する固相基質、および上記基質を洗浄するための酢酸ナトリウムバッファー、ならびに本発明のバイオマーカーをチップ上で測定するためのプロトコールを提供する説明書、およびこれらの測定値をアルツハイマー病の診断に使用することを含む。
【0123】
治療的テストにとって好適な化合物を、まず表I、表II、表IV−A、表IV−Bまたは表Vに挙げられる1以上のバイオマーカーと相互作用する化合物を同定することによって探索することができる。例に挙げた方法により、探索は、表I、表II、表IV−A、表IV−Bまたは表Vに挙げられるバイオマーカーを組換え発現すること、上記バイオマーカーを精製すること、および上記バイオマーカーを基質へと付着させることを含み得る。試験化合物を次いで、通常水系条件下で上記基質と接触させ、および試験化合物と上記バイオマーカーとの間の相互作用を、例えば、塩濃度の関数として溶出速度を測定することにより、測定する。ある種のタンパク質は、シスタチンC等の表I、表II、表IV−A、表IV−Bまたは表Vに示される1以上のバイオマーカーを認識し、および切断することができ、その場合において上記タンパク質は、例えばタンパク質ゲル電気泳動等の標準的アッセイにおいて、1以上のバイオマーカーの消化をモニターすることによって検出され得る。
【0124】
関連する実施形態において、表I、表II、表IV−A、表IV−Bまたは表Vに示される1以上のバイオマーカーの活性を阻害する試験化合物の能力を測定することができる。当業者のある者は、特定のバイオマーカーの活性を測定するために使用される技術が上記バイオマーカーの機能および特性に依存するであろうことを認識するであろう。例えば、あるバイオマーカーの酵素活性は、好適な基質が入手可能であり、かつ基質濃度または反応産物の出願が迅速に測定できる場合に、アッセイすることができる。所定のバイオマーカーの活性を阻害または促進する潜在的に治療的な試験化合物は、上記試験化合物の存在または非存在下での触媒速度を測定することにより調べることができる。非酵素的な(例えば、構造的な)機能または表I、表II、表IV−A、表IV−Bまたは表Vに示されるバイオマーカーの1つの活性に干渉する化合物の能力を測定することもできる。例えば、表I、表II、表IV−A、表IV−Bまたは表Vに示されるバイオマーカーのひとつを含む複数タンパク質複合体の自己組織化は、試験化合物の存在または非存在下での分光によりモニターすることができる。別の方法においては、上記バイオマーカーが非酵素的な転写のエンハンサーである場合、転写を促進するための上記バイオマーカーの能力に干渉する試験化合物を、試験化合物の存在または非存在下での、in vivoまたはin vitroにおけるバイオマーカー依存的な転写レベルを測定することにより同定することができる。
【0125】
表Iにおける任意のバイオマーカーの活性をモジュレートできる試験化合物を、アルツハイマー病またはその他の痴呆を患う、または進行するリスクを有している患者に投与することができる。例えば、特定のバイオマーカーの活性がアルツハイマー病に関するタンパク質の蓄積をin vivoで抑制する場合には、特定のバイオマーカーの活性を増加させる試験化合物の投与は患者におけるアルツハイマーのリスクを低減し得る。逆にいえば、特定のバイオマーカーの活性を低減させる試験化合物の投与は、そのバイオマーカーの活性の増加がアルツハイマー病の発症の少なくとも部分的な原因である場合には、患者におけるアルツハイマー病のリスクを低減することができる。
【0126】
さらなる態様において、本発明は、シスタチンC等の表I、表II、表IV−A、表IV−Bまたは表Vに示されるバイオマーカーにおける任意の修飾型における量の増加に関連するアルツハイマー病等の疾患を治療するために有用な化合物を同定する方法を提供する。例えば、ある実施形態において、例えばシスタチンC等の完全長バイオマーカーの切断を触媒し、シスタチンCΔN1−8のような上記バイオマーカーの短縮型を形成するための化合物を、細胞抽出物または発現ライブラリーから探索することができる。例えば、このようなスクリーニングアッセイのある実施形態において、シスタチンCの切断は、シスタチンCに対しシスタチンCが切断されないときには光らないが、このタンパク質が8位と9位の間で切断されたときには蛍光を発するような蛍光プローブを結合することにより検出することができる。別の方法においては、修飾された完全長シスタチンの8位と9位のアミノ酸との間のアミド結合が切断されないように修飾された完全長シスタチンCを使用して、in vivoで完全長シスタチンCのその部位を切断する細胞性プロテアーゼと選択的に結合するまたはそれを「捕捉」するように使用することができる。プロテアーゼを探索して同定する方法、および彼らのターゲットが、Lopez−Ottinらの(Nature Reviews、3:509−519(2002))もの等の科学文献中によく記載されている。
【0127】
さらに異なる実施形態において、本発明は、例えばアルツハイマー病の疾病の進行または可能性を治療または低減させるための方法を提供する。それは例えばシスタチンCΔ1−8等の、本明細書中に記述された1以上のバイオマーカーの増加量と関連している。例えば、完全長シスタチンCの間の8位と9位のアミノ酸の間を切断する1以上のタンパク質が同定された後で、上記同定されたタンパク質の切断活性を阻害する化合物について、コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることができる。このような化合物を化学物質ライブラリーからスクリーニングする方法は技術的によく知られている。Lopez−Otinら(2002)参照。別の方法においては、シスタチンCの構造に基づいてインヒビター化合物を合理的に設計することができる。
【0128】
例えばシスタチンCと短縮型のシスタチンCΔ1−8等のように、モジュレーターとして完全長に対する短縮型バイオマーカーの相対レベルをテストされる化合物は、任意の低分子化合物またはタンパク質、糖、核酸または脂質等の生物学的物質であり得る。別の方法においては、モジュレーターはプロテアーゼまたは遺伝子組換えプロテアーゼである。通常、試験化合物は小さな化学分子およびペプチドであろう。ほとんどの場合、化合物は水系または有機系(特にDMSOをベースとする)溶液に溶解されるが、原則的には任意の化合物を潜在的なモジュレーターまたは結合化合物として本発明のアッセイにおいて使用できる。上記アッセイは、アッセイステップを自動化することにより、およびアッセイのための任意の簡便な供給源から化合物を提供することにより、大きな化学物質ライブラリーをスクリーニングするように設計され、それらは通常、並行して行われる(例えば、ロボットアッセイにおけるマイクロタイタープレート上のマイクロタイターフォーマット)。Sigma(St.Louis、ミズーリ州)、Aldrich(St.Louis、ミズーリ州)、Sigma−Aldrich(St.Louis、ミズーリ州)、Fluka Chemika−Biochemica Analytika(Buchs、スイス)等を含む化学物質の供給者が多く存在することが理解されるだろう。
【0129】
特定のバイオマーカーの修飾がアルツハイマー病または非アルツハイマー性痴呆と関連し、又、上記修飾が例えば、非タンパク質分解的である場合、例えば、上記バイオマーカーがグリコシル化、アセチル化またはリン酸化されている場合、酵素を調節することは、酵素活性を調節することを特異的にまたは一般的に阻害する化合物により同様に標的とされ得る。同様に、非修飾型の特定バイオマーカーにおける濃度の増加がアルツハイマー病または非アルツハイマー性痴呆と関連している場合、適切に酵素を調節する活性は、酵素を調節する活性を直接的にまたは間接的に増大させる外因性化合物の添加により、または、適切に酵素を調節することの組み換えによる付加により増加させることができる。バイオマーカーの量に対して、または修飾型として見つけられるバイオマーカーの程度に対して影響を与える実質的にあらゆる活性が標的とされ得ることに注意されたい。例えば、疾患によって制御されたプロホルモン転換酵素(PC)により生成されるクロモグラニンペプチド断片は、プロホルモン転換酵素の活性を標的とすることにより調節することができる。
【0130】
好ましい実施形態において、ハイスループットなスクリーニング方法は、多数の潜在的治療化合物(潜在的モジュレーターまたは結合化合物)を含むコンビナトリアルな化学物質ライブラリーまたはペプチドライブラリーを含む。このような「コンビナトリアルケミカルライブラリー」を、次いで、本明細書中に記述されるように、所望の特徴的活性を呈するそれらのライブラリーメンバー(特定の化学物質種またはサブクラス)を同定するために1以上のアッセイにおいてスクリーニングする。このようにして同定された化合物は、従来型の「リード化合物」またはそれら自体潜在的なまたは実際の治療薬として使用され得る。
【0131】
コンビナトリアルケミカルライブラリーは、化学合成または生物学的合成のいずれかにより、試薬等の多数の化学的な「基礎的要素」を組み合わせることにより生成させた多様な化合物の集合である。例えば、ポリペプチドライブラリー等の直線的コンビナトリアルケミカルライブラリーは、1組の基礎的要素(アミノ酸)を、所定の化合物の長さ(すなわち、ポリペプチド化合物におけるアミノ酸の数)だけ、可能なあらゆる方法で組み合わせることにより形成される。数百万の化合物がこのような基礎的要素のコンビナトリアルな混合によって合成され得る。
【0132】
コンビナトリアルケミカルライブラリーの調製およびスクリーニングは当業者にはよく知られている。このようなコンビナトリアルケミカルライブラリーには、限定するものではないが、ペプチドライブラリー(例えば、米国特許第5,010,175号、Furka、Int.J.Pept.Prot.Res.37:487−493(1991)およびHoughtonら、Nature 354:84−88(1991)を参照されたい)が含まれる。化学的多様性を示すライブラリーの作製のためのその他の化学も利用することができる。そのような化学には、限定するものではないが:ペプトイド(例:PCT公開番号WO91/19735)、コード化ペプチド(例:PCT公開番号WO93/20242)、ランダムバイオオリゴマー(PCT公開番号WO92/00091)、ベンゾジアゼピン(例:米国特許5,288,514号)、ヒダイントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチド等のダイバーソマー(Hobbsら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 90:6909−6913(1993))、ビニロガスポリペプチド(Hagiharaら、J.Amer.Chem.Soc.114:6568(1992))、グルコースの足場を有する非ペプチド性ペプチド擬似体(Hirschmannら、J.Amer.Chem.Soc.114:9217−9218(1992))、小さな化合物ライブラリーの類似有機合成(Chenら、J.Amer.Chem.Soc.116:2661(1994))、オリゴカルバメート(Choら、Science 261:1303(1993))、および/またはペプチジルホスフェート(Campbellら、J.Org.Chem.59:658(1994))、核酸ライブラリー(Ausubel、BergerおよびSambrook、全て上掲、参照)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば、米国特許第5,539,083号参照)、抗体ライブラリー(例えば、Vaughnら、Nature Biotechnology、14(3):309−314(1996)およびPCT/US96/10287)、糖質ライブラリー(例えば、Liangら、Science、274:1520−1522(1996)および米国特許第5,593,853号参照)、小有機分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン類、Baum C&EN、Jan 18、page 33(1993);イソプレノイド類、米国特許第5,569,588号;チアゾリジノン類およびメタチアザノン類、米国特許第5,549,974号;ピロリジン類、米国特許第5,525,735号および同第5,519,134号;モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン類、米国特許第5,288,514号等を参照されたい)。
【0133】
コンビナトリアルライブラリーの調製のための装置は市販されている(例えば、357 MPS、390 MPS、Advanced Chem Tech、Louisville ケンタッキー州、Symphony、Rainin、Woburn、マサチューセッツ州、433A Applied Biosystems、Foster City、カリフォルニア州、9050 Plus、Millipore、Bedford、マサチューセッツ州、を参照されたい)。さらに、多数のコンビナトリアルライブラリーそれ自体が市販されている(例えば、ComGenex、Princeton、ニュージャージー州、Tripos社、St.Louis、ミズーリ州、3D Pharmaceuticals、Exton、ペンシルベニア州、Martek Biosciences、Columbia、メリーランド州等、を参照されたい)。
【0134】
完全長シスタチンCはヒトリソソームプロテアーゼ(例えば、カテプシンBおよびL)と結合して、その活性を阻害すると信じられている。シスタチンCのN末端の短縮は、シスタチンCのプロテアーゼインヒビター活性を減少させると考えられる。例えば、Abrahamsonら(Biochem.J.273:621−626(1991))を参照されたい。短縮型シスタチンCに完全長シスタチンCの機能を付与する化合物は、したがって、短縮された形態のシスタチンCが関連しているアルツハイマー病等の症状を治療するのに有用であると思われる。したがって、さらなる実施形態において、本発明は、平滑末端化シスタチンCのその標的とするプロテアーゼ(例えば、各種カテプシン類)に対する親和性を増大させる化合物を同定するための方法を提供する。例えば、短縮型シスタチンCに完全長シスタチンCのプロテアーゼインヒビター活性を付与する能力について化合物をスクリーニングすることができる。次に、シスタチンCのインヒビター活性またはシスタチンCと相互作用する分子の活性をモジュレートし得る試験化合物を、被験体のアルツハイマー病の進行を遅らせるまたは停止させる能力についてin vivoにおいて調べることができる。
【0135】
臨床レベルにおいては、試験化合物のスクリーニングには、被験体が試験化合物に曝露される前および後で、試験被験体からサンプルを取得することが含まれる。表Iに列記した1以上のバイオマーカーのサンプル中におけるレベルを、試験化合物への曝露後に該バイオマーカーのレベルが変化するか否かを調べるために、測定および分析することができる。サンプルは、本明細書中に記載するような質量分析法により分析してもよく、あるいは、当業者に公知の任意の適切な手段により分析してもよい。例えば、表Iに列記した1以上のバイオマーカーのレベルは、該バイオマーカーと特異的に結合する放射標識または蛍光標識した抗体を用いるウェスタンブロッティングにより直接測定してもよい。あるいは、該1以上のバイオマーカーをコードするmRNAのレベル変化を測定し、所定の試験化合物の被験体への投与と相関付けてもよい。さらなる実施形態において、該1以上のバイオマーカーの発現レベルの変化を、in vitroにおける方法および材料を用いて測定してもよい。例えば、表I、II、IV−A、IV−BまたはVの1以上のバイオマーカーを発現する、または発現し得るヒト組織培養細胞を試験化合物と接触させてもよい。試験化合物を用いて処置した被験体については、その処置から生じ得るあらゆる生理学的影響について定期的に調べる。特に、被験体の罹患可能性を減少させる能力について試験化合物を評価する。あるいは、これまでにアルツハイマー病と診断されている被験体に試験化合物を投与する場合には、疾患の進行を遅らせるまたは停止させる能力について試験化合物をスクリーニングする。
【0136】
具体的な実施例により本発明をより詳細に説明する。以下の実施例は例示の目的で提供するものであり、いかなる様式においても本発明を限定することを意図するものではない。当業者であれば、本質的に同じ結果を得るために変更し得るまたは改変し得る様々な重要ではないパラメーターを容易に認識するであろう。
【0137】
(X.イメージングのためのバイオマーカーの使用)
ポジトロン放出断層撮影法(Positron Emisson Tomography)(PET)またはシングルフォトン放出コンピュータ化断層撮影法(single photon emission computerized tomography)(SPECT)イメージング等の、非侵襲性の医療診断画像技術は、癌、冠動脈疾患および脳疾患を検出するために特に有用である。PETおよびSPECTイメージングは器官および組織の化学的機能を示すものであり、一方で、X線、CTおよびMRI等のその他の画像技術は構造を示す。PETおよびSPECTイメージングの使用は、アルツハイマー病等の脳疾患の進行における特定およびモニタリングのために、次第に有用性を増してきている。いくつかの例において、PETおよびSPECTイメージングの使用は、症状が発現するより数年早くアルツハイマー病を検出することを可能にする。
【0138】
ヒト脳中のアミロイド沈着物のin vivoイメージングのために好適な化合物を開発するために、異なる戦略が用いられている。A−βに対するモノクローナル抗体およびペプチド断片は、ADを伴う患者においてテストしたとき、脳により限定的に取り込まれた。アミロイドイメージングのための低分子のアプローチは、例えば、Nordberg A、Lancet Neurol.、3(9):519−27(2004);Kung MPら、Brain Res.、1025(1−2):98−105(2004);Herholz Kら、Mol Imaging Biol.、6(4):239−69(2004);Neuropsychol Rev.、Zakzanis K Kら、13(1):1−18(2003);Herholz K、Ann Nucl Med.、17(2):79−89(2003)により記述されたように、大きな成功からはかけ離れている。
【0139】
本明細書中に開示されるペプチドバイオマーカー、またはその断片は、PETおよびSPECTイメージング応用の状況において使用され得る。PETまたはSPECT応用のために適当なトレーサー残基を用いて修飾後、アルツハイマー患者におけるアミロイド斑の沈着を画像化するために、アミロイド斑タンパク質と相互作用するペプチドバイオマーカーを使用することができる。例えば、ADバイオマーカーのα(1)−アンチキモトリプシン(ACT)は、神経毒アミロイド沈着と関連を有する。表IV−B中に記述されるM4357ACT CT断片、またはそのサブ断片は、したがって、PETまたはSPECTイメージング応用のためのプローブとして使用され得る。
【実施例】
【0140】
(XI.実施例)
(実施例1.アルツハイマー病のためのバイオマーカーの発見)
以下の実施例に記載されるプロトコールを用いて65名のスウェーデン人の患者サンプルからマススペクトルを生成した。そのうち30名はアルツハイマー病と診断され、35名は痴呆を呈しなかった。この調査のために、認識力テスト、一般的な血液検査および尿検査、利用可能な場合にはMRIまたはCT画像検査、およびCSF中のタウおよびA−β(42)の測定を含むNINCDS−ADRDA基準にしたがって、患者をAD患者として診断した。痴呆の重篤度はミニメンタルステート試験(MMSE)を用いて評価した。30のアルツハイマー病サンプルを平均MMSEスコア21(5〜30の範囲)を示す患者群から採取した。35名の対照患者は年齢をマッチングさせてあり、平均MMSEスコア29(25〜30の範囲)を示した。18より高いMMSEスコアは軽度の痴呆の証拠とみなされており、24より高いMMSEスコアは非常に軽度なケースとみなされている。
【0141】
(1.陰イオン交換分画)
陰イオン交換分画のためのバッファーのリスト:
U1(1M 尿素、0.22% CHAPS、50mM Tris−HCl pH9)
0.1% OGP含有50mM Tris−HCl pH9(洗浄バッファー1)
0.1% OGP含有50mM Hepes pH7(洗浄バッファー2)
0.1% OGP含有100mM 酢酸ナトリウム pH5(洗浄バッファー3)
0.1% OGP含有100mM 酢酸ナトリウム pH4(洗浄バッファー4)
33.3% イソプロパノール/16.7% アセトニトリル/0.1% トリフルオロ酢酸(洗浄バッファー5)
注記:洗浄バッファー4を樹脂に適用するまでは洗浄バッファー5をバッファートレイに等分しないこと。これによって揮発性有機溶媒の蒸発という問題が生じないようにする
材料リスト:
フィルタープレート
5枚のv字ウェル型96穴ウェルディッシュ(F1〜F5とラベルする)
a.樹脂を洗浄する
Hyper Q DF 樹脂(BioSepra、Cergy、フランス)を5倍ベッド容量の50mM Tris−HCl pH9で3回洗浄することにより樹脂を調製する。次に、50%懸濁液として50 mM Tris−HCl pH9中に保存する
b.樹脂を平衡化する
フィルタープレートの各ウェルに125μLのHyper Q DFを添加する
バッファーをフィルターに通す
150μLのU1を各ウェルに添加する
バッファーをフィルターに通す
150μLのU1を各ウェルに添加する
バッファーをフィルターに通す
150μLのU1を各ウェルに添加する
バッファーをフィルターに通す
c.樹脂とCSFを結合させる
各チューブから150μLのサンプルをフィルタープレートの適当なウェル内にピペッティングする
4℃の状態で30分間Vortexにかける。
【0142】
d.画分を回収する
フィルタープレートの下にv字ウェル型96穴ウェルプレートF1を配置する
プレートF1中の流入物を回収する
100μLの洗浄バッファー1をフィルタープレートの各ウェルに添加する
室温(RT)の状態で10分間Vortexにかける
プレートF1中のpH9溶離液を回収する
画分1は流入物とpH9溶離液を含む
100μLの洗浄バッファー2をフィルタープレートの各ウェルに添加する
室温(RT)の状態で10分間Vortexにかける
フィルタープレートの下にv字ウェル型96穴ウェルプレートF2を配置する
プレートF2中の画分2を回収する
100μLの洗浄バッファー2をフィルタープレートの各ウェルに添加する
室温(RT)の状態で10分間Vortexにかける
プレートF2中の画分2の残りを回収する
画分2はpH7溶離液を含む
100μLの洗浄バッファー3をフィルタープレートの各ウェルに添加する
室温(RT)の状態で10分間Vortexにかける
フィルタープレートの下にv字ウェル型96穴ウェルプレートF3を配置する
プレートF3中の画分3を回収する
100μLの洗浄バッファー3をフィルタープレートの各ウェルに添加する
室温(RT)の状態で10分間Vortexにかける
プレートF3中の画分3の残りを回収する
画分3はpH5溶離液を含む
100μLの洗浄バッファー4をフィルタープレートの各ウェルに添加する
室温(RT)の状態で10分間Vortexにかける
フィルタープレートの下にv字ウェル型96穴ウェルプレートF4を配置する
プレートF4中の画分4を回収する
100μLの洗浄バッファー4をフィルタープレートの各ウェルに添加する
室温(RT)の状態で10分間Vortexにかける
プレートF4中の画分4の残りを回収する
画分4はpH4溶離液を含む
100μLの洗浄バッファー5をフィルタープレートの各ウェルに添加する
室温(RT)の状態で10分間Vortexにかける
フィルタープレートの下にv字ウェル型96穴ウェルプレートF5を配置する
プレートF5中の画分5を回収する
100μLの洗浄バッファー5をフィルタープレートの各ウェルに添加する
室温(RT)の状態で10分間Vortexにかける
プレートF5中の画分5の残りを回収する
画分4は有機溶媒溶離液を含む
チップ結合プロトコールを開始するまで凍結する。
【0143】
(2.チップ結合プロトコール)
CSF画分をチップと結合させる
60μLの対応するバッファーを各ウェルに添加する
20μLのQカラム画分を添加する。
【0144】
チップ洗浄バッファーリスト:
IMAC3アレイ(Ciphergen Biosystems社)
100mM CuSO
100mM リン酸ナトリウム+0.5M NaCl pH7
WCX2アレイ(Ciphergen Biosystems社)
100mM 酢酸ナトリウム pH4
H50アレイ(Ciphergen Biosystems社)
10%アセトニトリル+0.1%TFA
アレイの調製
アレイをバイオプロセッサー中に配置する
IMACアレイに銅をロードする
IMAC3アレイの各スポットに50μlのCuSOをロードする
室温(RT)の状態で5分間Vortexにかける
CuSOを除去し、繰り返す
水ですすぐ
アレイを平衡化する
アレイに適した100μlのチップ洗浄バッファーを各ウェルに添加する
RTの状態で5分間Vortexにかける
Vortex後にバッファーを除去する
アレイに適した100μlのチップ洗浄バッファーを各ウェルに添加する
RTの状態で5分間Vortexにかける
Vortex後にバッファーを除去する
CSF画分をアレイと結合させる
アレイに適した60μlのチップ洗浄バッファーを各ウェルに添加する
20μlのCSF画分を添加する
RTの状態で30分間Vortexにかける
サンプルおよびバッファーを除去する
アレイを洗浄する
アレイに適した100μlのチップ洗浄バッファーを各ウェルに添加する
RTの状態で5分間Vortexにかける
Vortex後にバッファーを除去する
アレイに適した100μlのチップ洗浄バッファーを各ウェルに添加する
RTの状態で5分間Vortexにかける
Vortex後にバッファーを除去する
アレイに適した100μlのチップ洗浄バッファーを各ウェルに添加する
RTの状態で5分間Vortexにかける
Vortex後にバッファーを除去する
水で2回すすぐ
基質を添加する
バイオプロセッサーの上部およびガスケットを取り除く
アレイを乾燥させる
SPA:
50%SPA(シナピン酸)を含む50%アセトニトリルおよび0.5%TFA 1μlを添加する
空気乾燥させる
1μlの50%SPAを添加する
空気乾燥させる。
【0145】
(3.データ取得設定)
エネルギー吸収分子:50%SPA
質量上限を100000 ダルトン、最適範囲を2000 ダルトン〜100000 ダルトンに設定する
開始時レーザー強度を200に設定する
開始時検出装置感度を8に設定する
焦点を質量8000ダルトンに合わせる
質量偏向を1000ダルトンに合わせる
データ取得方法をSeldi定量法に合わせる
Seldi捕捉パラメーターを20に、Δを4に合わせる
transients perを10に、終了ポジションを80に合わせる
強度225において1ショットの加温ポジションに合わせ、加温ショットを含まない
サンプルを処理する。
【0146】
(4.バイオマーカー特性の決定)
得られたスペクトルは、Ciphergen Biosystems、IncのBiomarker WizardおよびBiomarker Pattern Softwareと共にCiphergen ExpressTM DataManager Softwareにより分析した。各グループについてのマススペクトルを散布図分析に供した。散布図中の各タンパク質クラスターに関しアルツハイマー病および対照グループを比較するためにMann−Whitneyテスト分析を利用し、およびタンパク質は上記の2群の間で顕著に異なるもの(p<0.0001)を選択した。
【0147】
このようにして発見されたバイオマーカーの例を以下の表Iに示す。「プロテインチップアッセイ」の列は、そのバイオマーカーが見いだされたクロマトグラフィー画分を指し、バイオマーカーが結合するバイオチップのタイプ、およびその洗浄条件を指す。
【0148】
(表I)
【0149】
【表1−1】

【0150】
【表1−2】

【0151】
【表1−3】

バイオマーカーの特性は以下の様にして決定した。タンパク質をアクリルアミドゲル上で分離し、バイオマーカーを含むバンドをゲルから切り出した。バンド中のタンパク質を脱色した。アセトニトリルを用いてゲルを乾燥し、次いで、トリプシン溶液中で消化した。消化断片をCiphergen PBSII質量分析計にて分析した。測定された質量を同様のトリプシン消化パターンを有するタンパク質を同定するタンパク質データベースの照会に使用した。これらの同定の全てをさらにタンデムMS分析で確認した。最終的に、βミクログロブリンのアイデンティティーが抗体捕捉により調べられた。抗体を、エポキシド表面を有するCiphergen PS20 プロテインチップアレイに結合した。バイオマーカーを含むサンプルを上記抗体スポットに供した。結合していないタンパク質を除去し、および上記アレイをCiphergen PBSII リーダーにより読んだ。標的の質量を有するタンパク質の検出が単一性を確認した。
【0152】
M8623.24のものの本質はアナフィラトキシンC4aの切断産物であるC4ades−Arg タンパク質であることがわかった。アナフィラトキシンC4aは、補体C4(Swiss−Prot登録番号P01028 http://us.expasy.org/cgi−bin/niceprot.pl?P01028)の生物学的に活性な断片である。血清ならびにCSFにおいて、カルボキシペプチダーゼNは迅速にC−末端のアルギニンを切り落とし、それにより比較的安定なタンパク質C4ades−Argを生成する。C4ades−Argのアミノ酸配列を直接配列決定により決定した。C4ades−Argのアミノ酸配列は以下である:
NVNFQKAINEKLGQYASPTAKRCCQDGVTRLPMMRSCEQRAARVQQPDCREPFLSCCQFAESLRKKSRDKGQAGLQ(配列番号1)
(理論的分子量は8607.88 Daである)。
【0153】
イムノアッセイ実験において、ヒトC4ades−Argに対する抗体、すなわちアフィニティー精製された抗C4ades−Arg抗体は、CSFから8607Daのタンパク質を特異的に沈降させることが見出された。
【0154】
(実施例2.アルツハイマー病のためのマーカーとしてのB2ミクログロブリンの検証的研究)
アルツハイマー病のためのマーカーとしてのβ2ミクログロブリンの使用を検証するために、158の脳脊髄液(CSF)サンプルを3つのグループ:(1)アルツハイマー病(AD)、(2)対照、および(3)非アルツハイマー性痴呆(非AD)として予め診断された被験体から採取した。これらのグループにおけるサンプルの分布を以下の表IIIに示す。
【0155】
(表III.β2ミクログロブリン検証調査における被験体の分布)
【0156】
【表3】

簡潔にいえば、158のサンプルのうち66は軽度のアルツハイマー病(身にメンタルステート試験(MMSE)スコアが24を超える)を患う患者から採取し、またはより重度のアルツハイマー病の型を患う患者から採取した。51の「対照」サンプルは、「うつ」と診断された6名の患者を含む非痴呆の患者から得た。非アルツハイマー性痴呆を患う患者から採取した41のサンプルは、レヴィー小体痴呆(LBD)を患う患者から採取した20のサンプルおよび前頭側頭型痴呆(FTD)を患う患者から採取した21のサンプルを含んでいた。
【0157】
各サンプル中のβ2ミクログロブリンのSELDI−MSによる測定値は、チップの読み取りのためのEAMとして50%SPAを使用する以下の結合プロトコールに従い、Ciphergen H50プロテインチップを使用して取得した:
50%アセトニトリル中で30分間H50アレイをバルク洗浄し、次いで、30分間空気乾燥する。
【0158】
100μLの結合バッファー(10%アセトニトリル+0.1%トリフルオロ酢酸)を各ウェルに添加する
室温(RT)にて5分間振盪する
振盪後にバッファーを除去する
100μLの結合バッファーを各ウェルに添加する
室温(RT)にて5分間振盪する
振盪後にバッファーを除去する
45μLの結合バッファーを各ウェルに添加する
5μLのニート(neat)なCSFサンプルを添加する
室温(RT)にて30分間振盪する
振盪後にサンプルバッファーを除去する
100μLの結合バッファーを各ウェルに添加する
室温(RT)にて5分間振盪する
振盪後にバッファーを除去する
100μLの結合バッファーを各ウェルに添加する
室温(RT)にて5分間振盪する
振盪後にバッファーを除去する
1μlの50%SPA(シナピン酸)を含む50%アセトニトリルおよび0.5%TFAを添加する
空気乾燥させる
1μlの50%SPAを添加する
空気乾燥させる
アレイを分析する
結果(図3)は(1)アルツハイマー病を患う被験体におけるβ2ミクログロブリンのレベルが非アルツハイマー性痴呆を患う被験体のレベルよりも顕著に高いこと;(2)アルツハイマー病を患う被験体におけるβ2ミクログロブリンのレベルが痴呆の症状を示さない被験体のレベルよりも顕著に高いこと;および(3)非アルツハイマー性痴呆を患う被験体におけるβ2ミクログロブリンのレベルは痴呆の症状を示さない被験体のレベルよりも顕著に低いことを示す。
【0159】
(実施例3.アルツハイマー病のためのさらなるバイオマーカーの発見)
本実施例のために、スウェーデン人およびフィンランド人の患者からの237のCSFサンプルを使用した。これらのサンプルには以下のものが含まれた:アルツハイマー病患者由来の98サンプル(MMSE>24を示す83の非常に軽度のケースを含む)、前頭側頭型痴呆(FTD)患者由来の31サンプル、レヴィー小体痴呆(DLB)患者由来の29サンプル、および9のうつ病対照を含む79の年齢マッチングさせた正常個体由来サンプル。診断は上記実施例中で論じたNINCDS−ADRDA基準に従って行った。237のサンプルを訓練のための群(2/3)および盲検試験のための群(1/3)に無作為に分けた。
【0160】
上記実施例1において利用した陰イオン交換予備分画化ステップは、これらのCSFサンプルについては省略した(血清サンプルについては、予備分画化ステップの利用が好ましいことに注意されたい)。そのかわり、5μLのきれいなCSFサンプルを各チップのウェルに使用した。使用したチップは、Ciphergen社のIMAC30(銅またはニッケルにより活性化されている)、Q10、CM10およびH50プロテインチップであった。サンプルは、2つの異なるタイプのエネルギー吸収分子(EAM)を用いて複数データ収集設定を利用し、3連で実行した。プールされた正常参照CSFサンプルを内部アッセイおよび外部アッセイ再現性をモニターするために臨床サンプルと並行で実行した。全てのサンプルは、Biomek(登録商標)2000液体操作ロボットおよびチップ自動搭載機つきのProtein ChipTOF−MS Reader(Model PBS IIC)を含むProtein Chip Auto Biomarker Systemを用いて処理し、分析した。サンプルは何らのシステム的な偏りをも排除するために異なるバイオプロセッサーにランダムにかけた。
【0161】
(1.一般的チップ結合プロトコール.)
CSF画分をチップと結合させる
45μLの対応するバッファーを各ウェルに添加する
5μLのニートなCSFを添加する
チップ洗浄バッファーリスト:
IMAC3アレイ(Ciphergen Biosystems社):
適宜、100mM CuSOまたはNiSO
100mM リン酸ナトリウム+0.5M NaCl pH7
H50アレイ(Ciphergen Biosystems社):
10%アセトニトリル+0.1%TFA
Q10アレイ(Ciphergen Biosystems社):
100mM Tris pH9.0
CM10アレイ(Ciphergen Biosystems社):
100mM 酢酸ナトリウム pH4
アレイの調製
アレイをバイオプロセッサー中に配置する
適宜、IMAC30アレイに銅またはニッケルをロードする
IMAC30アレイの各スポットに50μlのCuSO(またはNiSO)をロードする
室温(RT)の状態で5分間Vortexにかける
CuSO(またはNiSO)を除去し、繰り返す
水ですすぐ
アレイを平衡化する
アレイに適した100μlのチップ洗浄バッファーを各ウェルに添加する
RTの状態で5分間Vortexにかける
Vortex後にバッファーを除去する
アレイに適した100μlのチップ洗浄バッファーを各ウェルに添加する
RTの状態で5分間Vortexにかける
Vortex後にバッファーを除去する
CSF画分をアレイと結合させる
アレイに適した45μlのチップ洗浄バッファーを各ウェルに添加する
5μlのCSF画分を添加する
RTの状態で30分間Vortexにかける
サンプルおよびバッファーを除去する
アレイを洗浄する
アレイに適した100μlのチップ洗浄バッファーを各ウェルに添加する
RTの状態で5分間Vortexにかける
Vortex後にバッファーを除去する
アレイに適した100μlのチップ洗浄バッファーを各ウェルに添加する
RTの状態で5分間Vortexにかける
Vortex後にバッファーを除去する
アレイに適した100μlのチップ洗浄バッファーを各ウェルに添加する
RTの状態で5分間Vortexにかける
Vortex後にバッファーを除去する
水で2回すすぐ
基質を添加する
バイオプロセッサーの上部およびガスケットを取り除く
アレイを乾燥させる
SPA:
1μlの50%SPA(シナピン酸)を含む50%アセトニトリルおよび0.5%TFAを添加する
空気乾燥させる
1μlの50%SPAを添加する
空気乾燥させる
CHCA
1μlの50%CHCAを溶解させた50%アセトニトリル+0.25%TFAを添加する
空気乾燥させる
1μlの50%CHCAを添加する
空気乾燥させる
(2.特定のチップの結合プロトコール)
Q10チップ
アレイを平衡化する
1.100μLの100mM Tris pH9を各ウェルに添加する
2.室温にて5分間混合する
3.混合後にバッファーを除去する
4.100μLの100mM Tris pH9を各ウェルに添加する
5.室温にて5分間混合する
6.混合後にバッファーを除去する
サンプルをアレイに添加する
1.50μLの100mM Tris pH9を各ウェルに添加する
2.5μLのCSFを添加する
3.室温にて30分間混合する
4.サンプルおよびバッファーを除去する
アレイを洗浄する
1.100μLの100mM Tris pH9を各ウェルに添加する
2.室温にて5分間混合する
3.混合後にバッファーを除去する
4.100μLの100mM Tris pH9を各ウェルに添加する
5.室温にて5分間混合する
6.混合後にバッファーを除去する
7.100μLの100mM Tris pH9を各ウェルに添加する
8.室温にて5分間混合する
9.混合後にバッファーを除去する
10.脱イオン水で2回すすぐ
EAMを添加する
1.バイオプロセッサーのリザーバーおよびガスケットを取り除く
2.直ちにアレイを乾燥させる
3.EAMを適用する:
SPAに対して
a.400μLの50% アセトニトリル、0.5% TFAをSPAチューブに添加する
b.室温にて5分間混合する
c.1μLを各スポットに添加する
d.空気乾燥させる
e.1μLを各スポットに添加する
f.空気乾燥させる
CHCAに対して
a.200μLの50% ACN、0.5% TFAをCHCAチューブに添加する
b.室温にて5分間混合する
c.室温にて10,000rpmで1分間遠心分離にかける
d.上清を除去し、等量の50%アセトニトリル、0.25%TFAで希釈する
e.1μLを各スポットに適用する
f.空気乾燥させる
g.1μLを各スポットに適用する
h.空気乾燥させる
CM10
アレイを平衡化する
1.100μLの100mM 酢酸ナトリウム pH4を各ウェルに添加する
2.室温にて5分間混合する
3.混合後にバッファーを除去する
4.100μLの100mM 酢酸ナトリウム pH4を各ウェルに添加する
5.室温にて5分間混合する
6.混合後にバッファーを除去する
サンプルをアレイに添加する
1.50μLの100mM 酢酸ナトリウム pH4を各ウェルに添加する
2.5μLのCSFを添加する
3.室温にて30分間混合する
4.サンプルおよびバッファーを除去する
アレイを洗浄する
1.100μLの100mM 酢酸ナトリウム pH4を各ウェルに添加する
2.室温にて5分間混合する
3.混合後にバッファーを除去する
4.100μLの100mM 酢酸ナトリウム pH4を各ウェルに添加する
5.室温にて5分間混合する
6.混合後にバッファーを除去する
7.100μLの100mM 酢酸ナトリウム pH4を各ウェルに添加する
8.室温にて5分間混合する
9.混合後にバッファーを除去する
10.脱イオン水で2回すすぐ
EAMを添加する
1.バイオプロセッサーのリザーバーおよびガスケットを取り除く
2.直ちにアレイを乾燥させる
3.EAMを適用する:
SPAに対して
a.400μLの50% アセトニトリル、0.5% TFAをSPAチューブに添加する
b.室温にて5分間混合する
c.1μLを各スポットに添加する
d.空気乾燥させる
e.1μLを各スポットに添加する
f.空気乾燥させる
CHCAに対して
a.200μLの50% ACN、0.25% TFAをCHCAチューブに添加する
b.室温にて5分間混合する
c.室温にて10,000rpmで1分間遠心分離を行う
d.上清を除去し、等量の50%アセトニトリル、0.25%TFAで希釈する
e.1μLを各スポットに適用する
f.空気乾燥させる
g.1μLを各スポットに適用する
h.空気乾燥させる
IMAC30およびH50プロテインチップ
IMAC30およびH50プロテインチップのプロトコールについては、それぞれ実施例1および2のプロトコールを参照されたい。IMAC30プロテインチップに対するプロトコールは、陰イオン交換分画ステップを除外した点を除き、本実施例における全てのチップと同様に、IMAC3プロテインチップに対して行われるものと本質的に同じである。IMAC30プロテインチップはサンプル閉じ込めのための疎水性バリアという付加的特徴を有するIMAC3アレイに対する代替となるものである。IMAC3アレイと同様に、IMAC30アレイは使用する前に遷移金属(例えば、銅またはニッケル)を用いて活性化する。
【0162】
(3.データ取得設定)
以下の条件をデータ取得のために使用した。
【0163】
IMAC30 Cu:CHCA、SPA 低、SPA 高(エネルギー吸収分子として50% SPA使用)
IMAC30 Ni:CHCA;SPA 低、SPA 高
Q10: CHCA、SPA 低、SPA 高
CM10: CHCA;SPA 低、SPA 高
H50: CHCA;SPA 低、SPA 高
CHCA
検出器電圧を2850ボルトに設定する
1000ダルトン〜200000ダルトンの範囲で最適化し、最大質量200000ダルトンに設定する
開始時レーザー強度を170に設定する
検出器感度を7に設定する
4000ダルトンの質量に焦点を合わせる
質量ディフレクターを1000ダルトンに設定する
データ取得方法をSeldi定量法に設定する
Seldi捕捉パラメーターを22Δ 5、transientsを5、
終了ポジションを82に合わせる
強度220において2ショットの加温ポジションに合わせ、加温ショットを含まない
サンプルを処理する
SPA低
検出器電圧を2850ボルトに設定する
1000ダルトン〜200000ダルトンの範囲で最適化し、最大質量200000ダルトンに設定する
開始時レーザー強度を194に設定する
検出器感度を8に設定する
4000ダルトンの質量に焦点を合わせる
質量ディフレクターを1000ダルトンに設定する
データ取得方法をSeldi定量法に設定する
Seldi捕捉パラメーターを22Δ 5、transientsを5、
終了ポジションを80に合わせる
強度220において2ショットの加温ポジションに合わせ、加温ショットを含まない
サンプルを処理する
SPA高
検出器電圧を2850ボルトに設定する
10000ダルトン〜200000ダルトンの間で最適化し、最大質量200000ダルトンに設定する
開始時レーザー強度を199に設定する
検出器感度を8に設定する
12000ダルトンの質量に焦点を合わせる
マスディフレクターを4000ダルトンに設定する
データ取得方法をSeldi定量法に設定する
Seldi捕捉パラメーターを22Δ 5、transientsを5、
終了ポジションを82に合わせる
強度220において2ショットの加温ポジションに合わせ、加温ショットを含まない
サンプルを処理する
(4.データ分析)
スペクトルデータは、CiphergenExpressTM Data Manager 2.1.を使用して大規模データ処理および単変量解析を行うProteinChip Software バージョン 3.1.を用いて収集した。スペクトルの前処理工程には、ベースライン減算を含むスペクトルの前処理、および、内生分析物由来の既知の質量サンプルを使用した内部分子量キャリブレーションを含んでいた。ピーク強度の標準化は外部係数0.2を用いて総イオン電流により実行した。ピークラベリングおよび異なるスペクトルにわたるクラスター化はユーザーが定義して設定を利用し、ソフトウェアによって自動的に行った。各グループにわたる個々のピークについてのピーク強度 P値は、2群比較についてMann−Whitneyテストを用いて、および3以上の群についてKruskal−Wallisテストを用いて計算した。サンプルを最も良好に分類するように予め定義した表現型に基づき、多変量データ分析をBiomarker PatternsTM Software 5.0を用いて実行した。
【0164】
(結果)
上記プロテインチップおよび条件を使用して、トレーニング群(「調査2」、すなわち、上記サンプル群の2/3)の解析の後に、単変量バイオマーカー群(P<0.005)について全条件下で同定した。結果を以下の表IIにまとめる。
【0165】
(表II)
【0166】
【表2−1】

【0167】
【表2−2】

【0168】
【表2−3】

さらなる分析を全サンプル群(すなわち、98のAD(MMSE>24を示す非常に軽度な83のケースを含む)、78の正常、31のFTDおよび29のレヴィー小体痴呆のケースを含む236サンプル)を用いて行った。この全サンプル群を用いて、P値<0.001でADサンプルとその他のグループとを区別し得る固有のピーク群が見つけられた。該バイオマーカーのサイズは2〜90kDaの範囲に及ぶ。これらのピークを以下の表IV−Aに示す。表IV−Aに列記された質量は表IIのものとは若干異なることに注意されたい。表IV−A中の質量は、初期の研究において同定されたバイオマーカーの理論的分子量を用いて付加的な計器による較正を反映している。
【0169】
さらなる分析をGothenburg site(すなわち、64のAD(MMSE>24を示す非常に軽度な49のケースを含む)および49の臨床的に正常な個体を含む113サンプル)にのみ由来するサンプル群を用いて行った。P値<0.005でADサンプルと臨床的に正常なサンプルとを区別し得る固有のピーク群が見つけられた。該バイオマーカーのサイズは3.5〜92.1kDaの範囲に及ぶ。これらのピークを以下の表IV−Bに示す。この表に記載したのは内部スペクトル較正を用いた質量(較正基準として既知のタンパク質およびペプチドの質量を利用)および利用可能な配列から予測された理論的質量である。
【0170】
(表IV−A)
【0171】
【表4−1】

【0172】
【表4−2】

説明:IC−Cuで活性化したIMACチップ;IN−Niで活性化したIMACチップ;H−H50チップ;C−CM10チップ;Q−Q10チップ;下側にある場合の“c”および“s”はそれぞれエネルギー吸収分子SPAおよびCHCAの使用を意味する
(表IV−B)
【0173】
【表4−3】

【0174】
【表4−4】

図4A〜Kは各種グループについて観察されたピーク強度の分布および観察された任意の相違についての有意性を調べるために用いられたMann−Whitney試験またはKruskal−Wallis試験の結果を示す。さらに、図5〜8は、(1)症例群−対照群である、年齢をマッチングさせたAD群対正常サンプル群(n=86)および(2)69のAD例および35の正常例(Tau>450+Ab42<550を示すAD群、およびその逆の値を示す正常群)を含む、Ab42/T−Tauに関して予め選択したサンプル群(n=104)の分析から得られた結果を示す。図9は表IV−AおよびIV−Bの多くのバイオマーカーについて得られたマススペクトルの例を示す。
【0175】
この試験において検出された多くのピークの特性は上述した方法と同様の方法を用いて規定した。バイオマーカーは、一連のBiosepra溶媒を使用するクロマトグラフィー技法の組み合わせを用いて、次いで1D−SDS−PAGEを行うことにより精製した。精製スキームは対象のバイオマーカーを追跡するためにプロテインチップを使用してモニタリングした。30kDaより小さいタンパク質については、対象の損なわれていないバンドをゲルから抽出し、次に、オリジナルのバイオマーカーと適合する質量を確認するためにプロテインチップリーダーを用いて再び分析した。ゲル抽出したタンパク質はトリプシンを用いて溶液内で消化し、30kDaより大きいタンパク質はゲル内で消化した。プロテインチップリーダーを用いたペプチドマッピングにより、および、PCI−1000プロテインチップインターフェースを装備したQ−STAR(Applied Biosystems)装置を用いたタンデムMSにより、トリプシン消化物は分析した。4kDaより小さいバイオマーカーはクロマトグラフィー技法の組み合わせにより濃縮し、SDS−PAGE精製および/またはトリプシン消化を行わずにタンデムMSにより直接同定した。
【0176】
例えば、以下のペプチド/タンパク質が同定された:
M11727:このタンパク質はβ2ミクログロブリン(Swiss−Prot 登録番号P01884、http://us.expasy.org/cgi−bin/niceprot.pl?P01884)として同定された。この知見は実施例1および2の知見と一致する。β2ミクログロブリン(B2M)は、(1)主要組織適合複合体 クラスI分子の細胞内輸送を指令する;および(2)炎症における重要な役割も担うインターフェロンおよび特定のサイトカインによってモジュレートされるという意味において、炎症性反応の強力なイニシエーターである。ADに対するCSFバイオマーカーとしてのB2Mの役割は今までに議論されていた。しかし、今回、血液中のADのためのバイオマーカーとしてB2Mが同定された。
【0177】
M3680.7:このペプチドはセクレトグラニンIIペプチド(セクレトニューリンとしても知られる)として同定され、配列番号2のイタリック体で表された配列を有する。セクレトグラニンIIは大きな密集した中心部を有するシナプス小胞タンパク質である。セクレトグラニンIIのレベルは、年齢をマッチングさせた対照群と比較して、AD患者の側頭皮質において低下していることが観察された。ADの主要な特徴のひとつはシナプスの変性である。したがって、CSF中のセクレトニューリンペプチドレベルはシナプスの損失を反映し得る。このシナプスの損失は、初期の認知障害により反映され、患者の脳内において特別な細胞限局性沈着物であるβ−アミロイドペプチドの出現につながる。
【0178】
M78677.3:このタンパク質はトランスフェリン(Swiss−Prot 登録番号 P02787)として同定され、実施例1の知見と一致する。トランスフェリンは、主要な鉄輸送タンパク質であり、神経変性疾患におけるフリーラジカル生成および酸化的ストレスの主要な因子である。トランスフェリンレベルは、高齢の対照と比較して、ADの前頭葉において増加している。C2アレルはApoE4陰性被験体のADと関係した。ApoEおよびトランスフェリンはアルツハイマー病の病因の複雑なメカニズムの一部であり得る。
【0179】
M2431.2:このペプチドは膜内在性タンパク質2B(MMP2BまたはBRI)の短縮型ABri/ADanアミロイドペプチドとして同定され、配列番号3の下線が引かれた配列を有する。脳における正確な生理学的役割についてはさらに十分に理解する必要がある。BRI遺伝子における変異は珍しい神経変性症状−−家族性英国型およびデンマーク型痴呆−−を引き起こし、該症状は広範なアミロイド生成性ペプチド(ADan/ABri)の沈着およびADとの著しい神経病理学的類似性を伴う。このペプチドは疾患に関連するより短い初めての野生型C末端ペプチドである。
【0180】
M13391ペプチドは完全長シスタチンCとして同定され、配列番号4のイタリック体で表された配列を有する。シスタチンCは大部分の体液および組織中で見られ、尿中の腎機能マーカーである。シスタチンCはリソソームのシステインプロテアーゼ(カテプシン類)の活性を阻害する。シスタチン−C/カテプシンのバランスは、炎症、癌およびADを含む多くの疾患プロセスにとって重要である。シスタチンCはADと関連性を有する。例えば、CST3 B/Bホモ接合性はADの発症リスク増大に関連する;シスタチンCは、シスタチンCの遺伝子型とは関係なく、ADにおいて細胞死を最も受けやすいAD脳内のニューロン部位で増加;および、シスタチンCはAD脳沈着物中にA−βとともに局在する。
【0181】
M12583.4:このペプチドは短縮型シスタチンCペプチドとして同定され、配列番号4の下線を引いた配列を有する。始めの8個のN末端残基を欠く、この短縮型Cys−Cは、その他のカテプシン類に対してはそうではないが、カテプシンBに対しては20倍低い親和性を有する。カテプシンBはADにおいてキーとなる役割を担う。カテプシンBは多くの初期アルツハイマー病の脳内エンドソーム中に同定されるが、わずかな割合で正常の脳内エンドソーム中においても検出され得る。特定のカテプシンBインヒビターはAβ42によって活性化された小グリア細胞により引き起こされる神経毒性効果を排除する。この短縮型Cys−CはCSFおよび血液両方においてADのためのバイオマーカーであることが見出された。この8個のアミノ酸がN末端で短縮されたバージョンのシスタチンCペプチドがCSFまたは血液中について記述されるのはこれが初めてである。
【0182】
M3951.6:このペプチドは神経分泌タンパク質VGFのN末端断片であると同定され、配列番号5においてイタリック体で表された配列を有する。同様に、M3687.7ペプチドは神経分泌タンパク質VGF(−3アミノ酸)であると同定され、配列番号5のボールド体で表された配列を有する。神経分泌タンパク質VGFは神経内分泌細胞および神経細胞で選択的に合成される神経成長因子である。VGF mRNAレベルは長期増強、発作、および損傷を含むニューロンの活動により調節される。該配列はタンパク質分解的プロセシングが可能な部位である対になった塩基性アミノ酸残基が豊富である。このような断片は新規であると思われる。同じタンパク質の異なる断片が別のグループによって発見された。
【0183】
M60976.2:このタンパク質はヘモペキシン(Swiss−Prot 登録番号 P02790)として同定された。ヘモペキシンは、IL−6による炎症の後に誘導される急性期反応性タンパク質であり;ヘムが介在する酸化的ストレスを抑制するためのスカベンジャー/トランスポーターであり;又、神経修復における役割を担うと信じられてもいる。
【0184】
M8933.2:このペプチドはC3a アナフィラトキシンdesArgであると同定され、配列番号6において下線を引いた配列を有する。C3aアナラトキシンペプチドに対する完全長配列は配列番号6においてイタリック体で表された配列である。AD脳において起こることが知られている補体の活性化:(1)局所的な炎症状態の発症に寄与する;および(2)認知機能障害に相関した。AD脳におけるC3の局在化および潜在的なメカニズム:(1)A−β合成ペプチドに対して反応してマウスの培養小グリア細胞におけるタンパク質の発現が増加する(5〜10倍);および(2)hAPPマウスにおけるプラーク沈着および神経変性増大のC3による阻害−クリアランスにおける潜在的な役割。このペプチドはADの新規補体タンパク質断片マーカーである。
【0185】
M3514.5:このペプチドは神経内分泌タンパク質7B2のC末端断片として同定され、配列番号7において下線を引いた配列を有する。このC末端断片はアミノ酸182−212に相当し;完全長タンパク質は配列番号7においてイタリック体で表された配列を有する。神経内分泌タンパク質7B2は、小胞体(ER)においてプロホルモン転換酵素2(PC2)と複合体を形成する。PC2はソマトスタチン前駆体をプロセシングする。一旦、proPC2/7B2複合体がトランス−ゴルジネットワークに到着したら、7B2は2つのドメインに内部切断され、21kDaの断片とカルボキシ末端の31残基ペプチドになる。proPC2が細胞内で7B2と遭遇しなかった場合、活性成熟種を触媒的に生成することはできない。総酵素貯蔵量に対するPC2前駆体の割合の顕著な減少がアルツハイマー患者の前頭葉において観察される。この減少は結合タンパク質7B2の増加と同時に起こる。ソマトスタチンの欠乏が、ソマトスタチンを含むニューロンが大きく損失することなく、アルツハイマー病患者の大脳皮質において起こる。この欠乏は、ペプチド前駆体におけるタンパク質分解的プロセシングの割合の減少と合致し得る。CSF中における特定の形態のソマトスタチンが痴呆の重篤度と相関することを示唆する一連の証拠が存在する。
【0186】
M3912.8:このペプチドはクロモグラニンA(CMGA_HUMAN(SwissProt #P10645))の断片として同定され、配列番号8においてイタリック体で表された配列に相当する。配列番号8において下線を引いた配列はバソスタチンIである。下線を引いた配列およびイタリック体で表された配列からなるタンパク質は血管抑制特性を有するクロモグラニンAの断片であるバソスタチンIIである。クロモグラニンAは大型有芯シナプス小胞(large dense−core synaptic vesicle)の主要なタンパク質である。側頭皮質におけるセクレトグラニンIIに対するクロモグラニンAの割合は、痴呆の臨床的重篤度および神経病理学的変化と顕著に相関する。CSF中のバソスタチンIIペプチドレベルはシナプスの損失を反映し得る。
【0187】
M4352.4:このペプチドはα−1−アンチキモトリプシン(SwissProt #P01011;理論的分子量 4354.19 Da;配列番号9)のC末端断片として同定された。これは、神経毒性アミロイド沈着物の形成を促進し得る、且つ、これと関連する、AD脳において過剰生産される急性/炎症性タンパク質である。脳内レベルの増大はCSF中よりもより高いレベルにより反映される。このペプチドは直接配列決定を行い、特性は抗−α−1−アンチキモトリプシン抗体を用いて確認した。
【0188】
M21100.1:このタンパク質は完全長レチノール結合タンパク質(SwissProt #P02753;理論的分子量 21,071.60Da)として同定された。このマーカーの特性は、8つのトリプシン消化断片の直接配列決定および抗−レチノール−結合タンパク質抗体を用いるプルダウンアッセイにより規定した。
【0189】
M8575、M8292、M8184:これらのタンパク質はユビキチンおよびそのC末端断片として同定された。神経原線維変化(NFT)は、過剰にリン酸化され、且つ、ユビキチン化された形態のタウタンパク質から構成される。成熟化に伴い、タウに基づく神経原線維変化は徐々にユビキチン化される。タウおよび共役するユビキチンのレベルはADの脳およびCSFの両方で上昇する。さらに、CSF−ユビキチンレベルは、コンピュータ断層撮影法により測定されるような、皮層および中心部の脳における萎縮症の程度の増大に関連する。
【0190】
M4971:このタンパク質は、N−アセチル化形態のチモシンβ−4(N末端のセリンがアセチル化されている)として同定された。チモシンβ−4は、ADにおける慢性の炎症性プロセスの中心的部分である、小グリア細胞の活性化のためのマーカーとして機能し得ると考えられる。このタンパク質のアミノ酸配列を配列番号10(SwissProt 登録番号P62328)として示す。
【0191】
M13960およびM14110:これらのバイオマーカーは、それぞれ完全長トランスサイレチンS−Cys(および/またはS−CysGly)および トランスサイレチン S−グルタチオニル化タンパク質として同定された。トランスサイレチンは、健常対照と比較してAD患者のCSF中でより低い濃度で存在する、A−β捕捉タンパク質としてこれまでに特徴付けられている。この濃度の低下は老人斑の存在量とは相関しない。
【0192】
M6502および7262:これらのバイオマーカーはニューロンの大型有芯小胞中に見られるクロモグラニンB(ChB)ペプチドの断片として同定された。ChBは前駆タンパク質からより小さなペプチドを形成するプロホルモン転換酵素(PC)酵素によって高度にプロセシングされる。PC酵素のアンバランスが関連する疾患は、クロモグラニンタンパク質のプロセシングにおける変化を生じ得る。クロモグラニンタンパク質類(ChA、ChBおよびセクレトグラニンII)は、AD患者の脳内におけるそれらの分布の識別し得る変化を示し、アミロイド斑に関連することも多い。ChBを含むクロモグラニンペプチド類は、アルツハイマー病におけるシナプス変性のための神経マーカーとしての可能性を有する。
【0193】
M7658およびM7738:これらのバイオマーカーはオステオポンチンC末端断片であり、それぞれリン酸化されていない種類のものおよび一箇所だけリン酸化されている種類のものである。オステオポンチンは、神経炎症の病因においてキーとなる役割を担い得る、組織修復を調節するサイトカインである。
【0194】
M17380:このバイオマーカーはアポリポタンパク質A−IIの二量体である。ApoA−IIは、おそらくクリアランスにおける役割を担うa−betaと強力に結合するタンパク質 ApoEと、複合体を形成する。ApoA−IIのレベルは痴呆患者の血清において減少していることが以前から示されていた。
【0195】
M23477:このバイオマーカーはプロスタグランジンD−シンターゼであり、PGH2からプロスタグランジンD2(PGD2)への形成を触媒するbeta−traceタンパク質としても知られる糖タンパク質である。
【0196】
7653Da/7718Da(IMAC−Cu SPA):このタンパク質はオステオポンチン(SwissProt #P10451、MW7658.19Da;配列番号11)のC末端断片として同定された。オステオポンチンはセリン残基が広範にわたりリン酸化されていることが知られている。7653Daはリン酸化されていない形態であるのに対して、7718Daはリン酸化ペプチドである。配列番号11においてボールド体で強調表示された配列は7653Daバイオマーカーに相当する。
【0197】
7258Da(Q1O SPA):このタンパク質はクロモグラニンB(セクレトグラニンI;SG1_HUMAN(SwissProt #P05060))のプロセシング断片である。配列番号12においてボールド体で強調表示された配列は7258Daバイオマーカーに相当する。下線を引いた3つの断片は高スコアを有するMSMSにより同定された。Y341はスルホチロシンであるので、予測される分子量は7262.42Daである。このペプチドを生成するための生化学は、6502Daペプチドのためのものと正に同じである。7262Daペプチド配列は、プロホルモン転換酵素1/3およびプロホルモン転換酵素2のための切断配列:−KK−、−RR−、および−KR−と隣接する(そして、カルボキシペプチダーゼHはC末端のLysおよびArgを切り取る)。
【0198】
23kDaバイオマーカー:このタンパク質はプロスタグランジン−H2 D−イソメラーゼ(SwissProt #P41222)である。予測分子量は18.7kDaであるが、このタンパク質は非常に高度にグリコシル化されている。
【0199】
17.3kDaバイオマーカー: このタンパク質はアポリポタンパク質 A−II(SwissProt #P02652)のCys−Cys二量体である。単独のモノマーの分子量は8707.91Daであるが、N末端Qはピロリドンカルボン酸(約17Da)に改変されていることが知られている。したがって、2つの完全長モノマーからなる二量体は17379.82Daである。
【0200】
9.8kDa(Q10 SPA):このタンパク質はクロモグラニンA(SwissProt #P10645、MW9730.18Da;配列番号13)のEA−92ペプチドとして同定された。配列番号13においてボールド体で強調表示された配列は9730Daのバイオマーカーに相当する。下線を引いた3つの断片は高スコアを有するMSMSにより同定された。9730Daペプチド配列はプロホルモン転換酵素1/3およびプロホルモン転換酵素2のための切断配列と隣接している。9.8kDaバイオマーカー(Q10)は、他(CM10、H50)のアッセイ条件下で見られる9750Daバイオマーカーとは異なることに注意されたい。
【0201】
4812Da(Q10):このバイオマーカーはVGF神経成長因子誘導前駆体(NCBI #gi17136078、MW4808.80Da;配列番号14)のプロセシング断片として同定された。配列番号14においてボールド体で強調表示された配列は4808Daバイオマーカーに相当する。下線を引いた2つの断片は、MSMSにより同定され、該ペプチドの配列の全てをカバーする。4808Daペプチド配列はプロホルモン転換酵素1/3およびプロホルモン転換酵素2のための切断配列と隣接している。
【0202】
4320(IMAC−Ni):このバイオマーカーはA−β 1−40ペプチド(MW4329.86Da)として同定された。このピークは、RPC、YM30、およびSDS−PAGEにより精製され、トリプシンを用いて消化される、IMAC−Niアレイを用いてQ画分3中に見られ、消化物中の主要なイオンはアミロイドβA4前駆体(SwissProt #P05067;配列番号15)の断片として同定された。ボールド体で強調表示された配列番号15中の配列は4330Daのバイオマーカーに相当する。下線を引いた3つの断片がMSMSにより同定された。
【0203】
16.2kDa(IMAC−Cu):このバイオマーカーはグリコシル化膵臓リボヌクレアーゼ(SwissProt #P07998)である。16.2kDaのピーク後の全ピークは、成分としてともに精製され、また、様々なグリコシル化形態であると思われる。リボヌクレアーゼはわずかに部分的にグリコシル化されていることが知られている。14.6kDaのピーク(16.2kDaのバイオマーカーと共に精製)は、シンプルな非グリコシル化形態の膵臓リボヌクレアーゼ(MW14,574.33Da)に相当する。
【0204】
4146Da(Q10):このポリペプチドはプロテアーゼC1インヒビター(SwissProt #P05155、MW4152.87Da)のC末端断片(配列番号16)として同定された。
【0205】
上記バイオマーカーはADに対する多くの興味深いメカニズム的関連性を有する。例えば、以下のものは宿主応答性タンパク質タンパク質および断片である:神経内分泌タンパク質VGF(断片);およびβ−2−ミクログロブリン(完全長)。以下のものはプラーク“関連”タンパク質/ペプチドである:BRI膜タンパク質(断片);A−β(断片/形態);シスタチンCおよび短縮型シスタチン−C(断片);セクレトニューリン;バソスタチンII;ユビキチンおよびユビキチン断片;神経内分泌タンパク質7B2;および補体3aタンパク質(断片)。最後に、以下のタンパク質は鉄の輸送および再利用における役割を担う:トランスフェリン(完全長);およびヘモペキシン(完全長)。これらのバイオマーカー間のメカニズム的関連性を図10および以下の表Vにまとめる。
【0206】
(表V)
(特性判定された神経病理学的関連性を有するマーカーのリスト)
【0207】
【表5】

(実施例4.アルツハイマー病のためのマーカーとしてのシスタチンCおよびその改変体)
(A.サンプルプロトコール)
1. 0.25mg/mLのシスタチンC抗体を含む2μLの溶液をPS−20アレイ(Ciphergen Biosystems社、Fremont、カリフォルニア州)の各スポットに手作業で載せる。陰性対照として、同濃度のIgGを別のスポットに対して使用する。
【0208】
2. 室温にて2時間、湿潤チャンバ内でインキュベートすることにより、上記抗体をスポットに共有結合させる。
【0209】
3. バイオプロセッサーをBiomek2000液体処理ロボットに移す。
【0210】
4. Block residual active sites 25μLの1M エタノールアミンを添加することにより残りの活性部位をブロックする。
室温にて30分間、湿潤チャンバ内でインキュベートする。
【0211】
5. 100μL PBS+0.5% Triton X−100で、各5分間、3回洗浄することにより、結合していないタンパク質を除去する。
【0212】
6. 100μLのPBSで5分間洗浄する。
【0213】
7. 20μLのニートなCSFを各スポットに載せ、4℃にて一晩インキュベートする。
【0214】
8. 100μL PBS+0.5% Triton X−100で、各10分間、3回スポットを洗浄する。
【0215】
9. 100μLのPBSで、各1分間、3回洗浄する。
【0216】
10. 100μLの1mM HEPESを用いてアレイをすすぐ。
【0217】
11. Biomek2000ロボットからバイオプロセッサーを取り除く。
【0218】
12. バイオプロセッサーのガスケットを取り除き、スポットを空気乾燥させる。
【0219】
13. 0.8μLの飽和SPA溶液を2回、アレイの各スポットに手作業で載せる。
【0220】
14. プロテインチップリーダーを使用してアレイを分析する。
【0221】
(B.CysC Δ1−8マーカーの検証)
CysC Δ1−8のアルツハイマー病のためのマーカーとしての使用を検証するために、158の脳脊髄液(CSF)サンプルは、3つのグループ:(1)アルツハイマー病(AD)、対照、および非アルツハイマー性痴呆(非AD)として予め診断された被験体から採取した。これらのグループのサンプル分布は上記表IIIに示す。
【0222】
各サンプル中のCysC Δ1−8に対するSELDI−MSの測定値は、Ciphergen H50プロテインチップおよびEAMとして50% SPAを使用する標準的プロトコールにしたがって取得した。結果を図11の左下部のグラフに示す。完全長CysCの同様の測定値も同じサンプル群を使用して得られた(図11、右下部)。結果は、アルツハイマー病を患う被験体のCysC Δ1−8のレベルが非アルツハイマー性痴呆を患う被験体のレベルよりも顕著に高いことを示す。
【0223】
(実施例5.アルツハイマーを検出するためのマーカーの組み合わせ)
上述したように、バイオマーカーの組み合わせは、単一のバイオマーカーのみよりも特定の症状について、より大きな予測値を提供し得る。サンプル中の複数のバイオマーカーは試験の感度および/または特異度を増加させ得る。患者のアルツハイマー病の病態を認定するための好ましいバイオマーカー群は、その群の中のバイオマーカーがin vivoで互いに独立して調節されるものである。好ましい試験は80%より高い感度および特異度を有する。さらにより好ましいのは、感度および特異度の両方が90%より高い試験である。組み合わせ試験のために好ましいバイオマーカー群のひとつの例は、M17349.3(アポリポタンパク質 A−II二量体)、M60464.7(ヘモペキシン)、およびM3513.9(7B2 CT断片)である。好ましいバイオマーカー群の別の例は、M17349.3(アポリポタンパク質 A−II二量体)、M60464.7(ヘモペキシン)、M10379.8(10.3kDa)および M11725.7(β−2−ミクログロブリン)を含む群である。
【0224】
本明細書中に記載された実施例および実施形態は、例示のみを目的とするものであり、それらに照らし合わせて様々な改変および変更が当業者に示唆され、また、それらは本出願の精神および範囲、並びに添付の特許請求の範囲内に含まれることが理解される。本明細書中で引用した全ての出版物、特許、および特許出願は、全ての目的のために参照によりその全体を明細書中に組み入れるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1A】図1A−1Qは実施例1に記載の技法に従って同定されたバイオマーカーを示す質量スペクトルを示す。この図はまた、各バイオマーカーに対する質量対電荷比も提供する。
【図1B】図1Aの続き。
【図1C】図1Bの続き。
【図1D】図1Cの続き。
【図1E】図1Dの続き。
【図1F】図1Eの続き。
【図1G】図1Fの続き。
【図1H】図1Gの続き。
【図1I】図1Hの続き。
【図1J】図1Iの続き。
【図1K】図1Jの続き。
【図1L】図1Kの続き。
【図1P】図1Oの続き。
【図1Q】図1Pの続き。
【図2】図2は、本発明のある種のバイオマーカーを用いて、サンプルをアルツハイマー病または非アルツハイマー病に分類するための判定の樹状図を示す。
【図3】図3は、非アルツハイマー性痴呆(「非AD」)および痴呆の症状を示さない患者(「対照」)に対してアルツハイマー病(「AD」)を患う患者を識別するための手段として、CSF中のβ2ミクログロブリンの測定値の有効性を立証するための統計学的試験の結果を示す。データは特に、アルツハイマー患者と対照群との間(「A−C」);アルツハイマー患者と非アルツハイマー性痴呆との間(「A−N」);および非アルツハイマー性痴呆と対照群との間(「C−N」)でのβ2ミクログロブリンの平均ピーク強度において統計学的に顕著な差を示唆する。ピーク強度の測定は実施例に記載されるように、Ciphergen H50 プロテインチップを利用して実行した。
【図4A】図4A−Kは、各種の群について観察されたピーク強度の分布および観察された各差異の有意性を調べるために用いられたMann−WhitneyまたはKruskal−Wallis試験の結果を示す。
【図4B】図4Aの続き。
【図4C】図4Bの続き。
【図4D】図4Cの続き。
【図4E】図4Dの続き。
【図4F】図4Eの続き。
【図4G】図4Fの続き。
【図4H】図4Gの続き。
【図4I】図4Hの続き。
【図4J】図4Iの続き。
【図4K】図4Jの続き。
【図5】図5は、完全長および短縮されたユビキチンバイオマーカーについて観察されたピーク強度の分布および観察された各差異の有意性を調べるために用いられたMann−WhitneyまたはKruskal−Wallis試験の結果を示す。結果はまた、年齢をマッチングしたサンプルおよび特異的なTau/AB42切断レベルにより限定されたサンプルを用いた疾患群と対照群との比較も表す。
【図6】図6は、完全長および短縮されたシスタチンCバイオマーカーについて観察されたピーク強度の分布および観察された各差異の有意性を調べるために用いられたMann−WhitneyまたはKruskal−Wallis試験の結果を示す。結果はまた、年齢をマッチングしたサンプルおよび特異的なTau/AB42切断レベルにより限定されたサンプルを用いた疾患群と対照群との比較も表す。
【図7】図7は、チモシンβ−4について観察されたピーク強度の分布および観察された各差異の有意性を調べるために用いられたMann−WhitneyまたはKruskal−Wallis試験の結果を示す。結果はまた、年齢をマッチングしたサンプルおよび特異的なTau/AB42切断レベルにより限定されたサンプルを用いた疾患群と対照群との比較も表す。
【図8】図8は、神経内分泌タンパク質7B2、ヘモペキシン、β2−ミクログロブリンおよびトランスフェリンバイオマーカーについて観察されたピーク強度の分布を示す。図8はまた、観察された各差異の有意性を調べるために用いられたMann−WhitneyまたはKruskal−Wallis試験の結果を示す。
【図9−1】図9は、CSFサンプルを用いて実施例3に記載の技法に従って同定されたバイオマーカーを示す質量スペクトルを示す。
【図9−2】図9−1の続き。
【図9−3】図9−2の続き。
【図9−4】図9−3の続き。
【図9−5】図9−4の続き。
【図9−6】図9−5の続き。
【図9−7】図9−6の続き。
【図9−8】図9−7の続き。
【図9−9】図9−8の続き。
【図9−10】図9−9の続き。
【図9−11】図9−10の続き。
【図9−12】図9−11の続き。
【図9−13】図9−12の続き。
【図9−14】図9−13の続き。
【図9−15】図9−14の続き。
【図9−16】図9−15の続き。
【図9−17】図9−16の続き。
【図9−18】図9−17の続き。
【図9−19】図9−18の続き。
【図9−20】図9−19の続き。
【図9−21】図9−20の続き。
【図10】図10は、本明細書中で同定され記載される多数のバイオマーカー間のメカニズム的な関係をまとめたものである。
【図11】図11は、非アルツハイマー性痴呆に対してアルツハイマー病を識別するための手段としての、短縮されたCysCバイオマーカーの測定値における有効性を立証するための統計学的試験の結果を示す。図は特に、アルツハイマー患者と非アルツハイマー性痴呆との短縮されたCysC(12583.8Daのマーカー)の平均ピーク強度における統計学的に顕著な差を示唆する(「A−N」p−値<0.0001)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体におけるアルツハイマー病の病態を認定するための方法であって、以下:
a.該被験体由来の生体サンプル中の少なくとも1種類のバイオマーカーを測定する工程であって、該少なくとも1種類のバイオマーカーが、M60464.7(ヘモペキシン)、M3513.9(7B2 CT断片)、M8291.0(ユビキチン(CTから−3aa))、M9802.4(EA−92(ChrAペプチド))、M16207.4(膵臓リボヌクレアーゼ)、M14092.7(グルタチオニル化トランスサイレチンS)、M13904.7(トランスサイレチンS−Cys/S−CysGly)、M12545.9(シスタチン−C(NTから−8aa))、M8183.6(ユビキチン(CTから−4aa))、M5227.4、M3687.0(セクレトニューリン(ChrC/SGIIペプチド))、M3906.4 バソスタチンII(ChrAペプチド)、M14565.1(膵臓リボヌクレアーゼ)、M6509.6(クロモグラニンBペプチド)、M4320.6(A−β 1−40)、M7258.2(クロモグラニンBペプチド)、M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M8938.5(C3a des−Arg)、M23477.4(プロスタグランジン−Dシンターゼ)、M4357.0(α−1−アンチキモトリプシンCT断片)、M7653.2(オステオポンチンCT断片)、M4812.5(VGF(NCBI)ペプチド)、M4989.4(アセチル化チモシンβ−4)、およびM7718.8(リン酸化オステオポンチンCT断片)からなる群から選択される、工程、ならびに
b.該測定値をアルツハイマー病の病態と相関させる工程、
を包含する、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記被験体由来の生体サンプル中の少なくとも1種類のさらなるバイオマーカーを測定する工程をさらに包含し、該少なくとも1種類のさらなるバイオマーカーが、M11725.7(β−2−ミクログロブリン)、M78936.5(トランスフェリン)、M13349.5(シスタチンC)、M66479.2(アルブミン)およびM8585.9(ユビキチン)からなる群から選択される、方法。
【請求項3】
被験体のアルツハイマー病の病態を認定するための方法であって、以下:
a.該被験体由来の生体サンプル中の少なくとも1種類のバイオマーカーを測定する工程であって、該少なくとも1種類のバイオマーカーが、M60464.7(ヘモペキシン)、M3513.9(7B2 CT断片)、M8291.0(ユビキチン(CTから−3aa))、M5044.2、M10379.8(10.3kDa)、M9984.6(10.3kDaに関連する)、M10265.6(10.3kDaに関連する)、M9802.4(EA−92(ChrAペプチド))、9757.0(10.3kDaに関連する)、M16207.4(膵臓リボヌクレアーゼ)、M14092.7(グルタチオニル化トランスサイレチンS)、M13904.7(トランスサイレチンS−Cys/S−CysGly)、M12545.9(シスタチン−CNTから−8aa))、M8183.6(ユビキチン(CTから−4aa))、M5227.4、M3687.0(セクレトニューリン(ChrC/SGIIペプチド))、M3906.4 バソスタチンII(ChrAペプチド)、M3806.2、M8955.1、M5263.9、M14565.1(膵臓リボヌクレアーゼ)、M20839.2、M6509.6(クロモグラニンBペプチド)、M4320.6(A−β 1−40)、M7258.2(クロモグラニンBペプチド)、M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M58845.4、M8938.5(C3a des−Arg)、M6608.9、M5838.3、M23477.4(プロスタグランジン−Dシンターゼ)、M4357.0(α−1−アンチキモトリプシンCT断片)、M7653.2(オステオポンチンCT断片)、M16716.9、M4812.5(VGF(NCBI)ペプチド)、M4989.4(アセチル化チモシンβ−4)、M7878.7、M92082.4、M66479.2(アルブミン)、M3967.6、M7718.8(リン化オステオポンチンCT断片)、M89707.1、M11579.2、およびM4455.4からなる群から選択される、工程、ならびに
b.該測定値をアルツハイマー病の病態と相関させる工程、
を包含する、
方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記被験体由来の生体サンプル中の少なくとも1種類のさらなるバイオマーカーを測定する工程をさらに包含し、該少なくとも1種類のさらなるバイオマーカーが、M11725.7(β−2−ミクログロブリン)、M78936.5(トランスフェリン)、M13349.5(シスタチンC)、M66479.2(アルブミン)およびM8585.9(ユビキチン)からなる群から選択される、方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種類のバイオマーカーが、M60464.7(ヘモペキシン)を含む、請求項1または3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種類のバイオマーカーが、M10379.8(10.3kDa)を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種類のバイオマーカーが、M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)を含む、請求項1または3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
以下の各バイオマーカー: M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M60464.7(ヘモペキシン)、M10379.8(10.3kDa)およびM11725.7(β−2−ミクログロブリン)を測定する工程をさらに包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
以下の各バイオマーカー: M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)およびM60464.7(ヘモペキシン)を測定する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
以下の各バイオマーカー: M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M60464.7(ヘモペキシン)およびM3513.9(7B2 CT断片)を測定する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1種類のバイオマーカーが、SELDIプローブの吸着剤表面上の該バイオマーカーを捕捉し、レーザー脱離イオン化質量分析法によって該捕捉されたバイオマーカーを検出することによって測定される、請求項1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種類のバイオマーカーが、イムノアッセイにより測定される、請求項1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記サンプルがCSFである、請求項1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記サンプルが血清である、請求項1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記相関させる工程が、ソフトウェア分類アルゴリズムにより実行される、請求項1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
アルツハイマー病の病態がアルツハイマー病および非痴呆から選択される、請求項1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
(c)前記病態に基づいて被験体の治療を管理する工程、をさらに包含する、請求項1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
アルツハイマー病の病態がアルツハイマー病、非痴呆、および非アルツハイマー性痴呆から選択される、請求項1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
アルツハイマー病の病態がアルツハイマー病および非アルツハイマー性痴呆から選択される、請求項1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
非アルツハイマー性痴呆がレヴィー小体を伴う痴呆および前頭側頭型痴呆を伴う痴呆から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記吸着剤が陽イオン交換吸着剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記吸着剤が生体特異的吸着剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
前記吸着剤が疎水性吸着剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1種類のバイオマーカーが、質量以外の検出手段により測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1種類のバイオマーカーが、イムノアッセイにより測定される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記測定値がアルツハイマー病と相関する場合に、被験体の治療を管理する工程が、該被験体へコリンエステラーゼ阻害剤を投与する工程を包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
(d)被験体の管理の後に前記少なくとも1種類のバイオマーカーを測定する工程、をさらに包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
キットであって、以下:
(a)固体支持体であって、該固体支持体は、そこに接着される少なくとも1種類の捕捉試薬を含み、該捕捉試薬が、M60464.7(ヘモペキシン)、M3513.9(7B2 CT断片)、M8291.0(ユビキチン(CTから−3aa))、M5044.2、M10379.8(10.3kDa)、M9984.6(10.3kDaに関連する)、M10265.6(10.3kDaに関連する)、M9802.4(EA−92(ChrAペプチド))、9757.0(10.3kDaに関連する)、M16207.4(膵臓リボヌクレアーゼ)、M14092.7(グルタチオニル化トランスサイレチンS)、M13904.7(トランスサイレチンS−Cys/S−CysGly)、M12545.9(シスタチン(NTから−8aa))、M8183.6(ユビキチン(CTから−4aa))、M5227.4、M3687.0(セクレトニューリン(ChrC/SGIIペプチド))、M3906.4 バソスタチンII(ChrAペプチド)、M3806.2、M8955.1、M5263.9、M14565.1(膵臓リボヌクレアーゼ)、M20839.2、M6509.6(クロモグラニンBペプチド)、M4320.6(A−β 1−40)、M7258.2(クロモグラニンBペプチド)、M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M58845.4、M8938.5(C3a des−Arg)、M6608.9、M5838.3、M23477.4(プロスタグランジン−Dシンターゼ)、M4357.0(α−1−アンチキモトリプシンCT断片)、M7653.2(オステオポンチンCT断片)、M16716.9、M4812.5(VGF(NCBI)ペプチド)、M4989.4(アセチル化チモシンβ−4)、M7878.7、M92082.4、M66479.2(アルブミン)、M3967.6、M7718.8(リン化オステオポンチンCT断片)、M89707.1、M11579.2、およびM4455.4からなる第1の群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーと結合する、固体支持体、ならびに
(b)該固体支持体を使用して表II、表IV−Aまたは表IV−Bに示されるバイオマーカーを検出するための、説明書、
を含む、キット。
【請求項29】
請求項28に記載のキットであって、前記捕捉試薬が、M60464.7(ヘモペキシン)、M3513.9(7B2 CT断片)、M8291.0(ユビキチン(CTから−3aa))、M9802.4(EA−92(ChrAペプチド))、M16207.4(膵臓リボヌクレアーゼ)、M14092.7(グルタチオニル化トランスサイレチンS)、M13904.7(トランスサイレチンS−Cys/S−CysGly)、M12545.9(シスタチン−C(NTから−8aa))、M8183.6(ユビキチン(CTから−4aa))、M5227.4、M3687.0(セクレトニューリン(ChrC/SGIIペプチド))、M3906.4 バソスタチンII(ChrAペプチド)、M14565.1(膵臓リボヌクレアーゼ)、M6509.6(クロモグラニンBペプチド)、M4320.6(A−β 1−40)、M7258.2(クロモグラニンBペプチド)、M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M8938.5(C3a des−Arg)、M23477.4(プロスタグランジン−Dシンターゼ)、M4357.0(α−1−アンチキモトリプシンCT断片)、M7653.2(オステオポンチンCT断片)、M4812.5(VGF(NCBI)ペプチド)、M4989.4(アセチル化チモシンβ−4)、およびM7718.8(リン酸化オステオポンチンCT断片)を含む第1の群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーと結合する、キット。
【請求項30】
請求項28に記載のキットであって、第2の固体支持体をさらに含み、該固体支持体は、そこに接着される捕捉試薬を含み、該捕捉試薬が、M11725.7(β−2−ミクログロブリン)、M78936.5(トランスフェリン)、M13349.5(シスタチンC)、M66479.2(アルブミン)およびM8585.9(ユビキチン)バイオマーカー シスタチンC(M13391)からなる群から選択される少なくとも1種類のさらなるバイオマーカーと結合する、キット。
【請求項31】
アルツハイマー病の病態を認定するための説明書をさらに含む、請求項28に記載のキット。
【請求項32】
前記捕捉試薬を含む固体支持体が、SELDIプローブである、請求項28、29または30のいずれかに記載のキット。
【請求項33】
(c)表I、表II、表IV−Aおよび表IV−Bに記載のバイオマーカーのうちの少なくとも1種類を含む容器、をさらに含む、請求項28、29または30のいずれかに記載のキット。
【請求項34】
前記捕捉試薬が陽イオン交換吸着剤である、請求項26に記載のキット。
【請求項35】
(c)陰イオン交換クロマトグラフィー吸着剤、をさらに含む、請求項28、29または30のいずれかに記載のキット。
【請求項36】
キットであって、以下:
(a)固体支持体であって、該固体支持体は、そこに接着される少なくとも1種類の捕捉試薬を含み、前記捕捉試薬が、M60464.7(ヘモペキシン)、M3513.9(7B2 CT断片)、M8291.0(ユビキチン(CTから−3aa))、M5044.2、M10379.8(10.3kDa)、M9984.6(10.3kDaに関連する)、M10265.6(10.3kDaに関連する)、M9802.4(EA−92(ChrAペプチド))、9757.0(10.3kDaに関連する)、M16207.4(膵臓リボヌクレアーゼ)、M14092.7(グルタチオニル化トランスサイレチンS)、M13904.7(トランスサイレチンS−Cys/S−CysGly)、M12545.9(シスタチン−C(NTから−8aa))、M8183.6(ユビキチン(CTから−4aa))、M5227.4、M3687.0(セクレトニューリン(ChrC/SGIIペプチド))、M3906.4 バソスタチンII(ChrAペプチド)、M3806.2、M8955.1、M5263.9、M14565.1(膵臓リボヌクレアーゼ)、M20839.2、M6509.6(クロモグラニンBペプチド)、M4320.6(A−β 1−40)、M7258.2(クロモグラニンBペプチド)、M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M58845.4、M8938.5(C3a des−Arg)、M6608.9、M5838.3、M23477.4(プロスタグランジン−Dシンターゼ)、M4357.0(α−1−アンチキモトリプシンCT断片)、M7653.2(オステオポンチンCT断片)、M16716.9、M4812.5(VGF(NCBI)ペプチド)、M4989.4(アセチル化チモシンβ−4)、M7878.7、M92082.4、M66479.2(アルブミン)、M3967.6、M7718.8(リン化オステオポンチンCT断片)、M89707.1、M11579.2、およびM4455.4からなる群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーと結合する、固体支持体、ならびに
(b)少なくとも1種類のバイオマーカーを含む容器、
を含む、キット。
【請求項37】
請求項36に記載のキットであって、前記捕捉試薬が、M60464.7(ヘモペキシン)、M3513.9(7B2 CT断片)、M8291.0(ユビキチン(CTから−3aa))、M9802.4(EA−92(ChrAペプチド))、M16207.4(膵臓リボヌクレアーゼ)、M14092.7(グルタチオニル化トランスサイレチンS)、M13904.7(トランスサイレチンS−Cys/S−CysGly)、M12545.9(シスタチン−C(NTから−8aa))、M8183.6(ユビキチン(CTから−4aa))、M5227.4、M3687.0(セクレトニューリン(ChrC/SGIIペプチド))、M3906.4 バソスタチンII(ChrAペプチド)、M14565.1(膵臓リボヌクレアーゼ)、M6509.6(クロモグラニンBペプチド)、M4320.6(A−β 1−40)、M7258.2(クロモグラニンBペプチド)、M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M8938.5(C3a des−Arg)、M23477.4(プロスタグランジン−Dシンターゼ)、M4357.0(α−1−アンチキモトリプシンCT断片)、M7653.2(オステオポンチンCT断片)、M4812.5(VGF(NCBI)ペプチド)、M4989.4(アセチル化チモシンβ−4)、およびM7718.8(リン酸化オステオポンチンCT断片)からなる第1の群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーと結合する、キット。
【請求項38】
請求項36に記載のキットであって、第2の固体支持体をさらに含み、該固体支持体はそこに接着される捕捉試薬を含み、該捕捉試薬が、M11725.7(β−2−ミクログロブリン)、M78936.5(トランスフェリン)、M13349.5(シスタチンC)、M66479.2(アルブミン)およびM8585.9(ユビキチン)からなる群から選択される少なくとも1種類のさらなるバイオマーカーと結合する、キット。
【請求項39】
前記捕捉試薬を含む固体支持体が、SELDIプローブである、請求項36、37または38のいずれかに記載のキット。
【請求項40】
(c)陰イオン交換クロマトグラフィー吸着剤、をさらに含む、請求項36、37または38のいずれかに記載のキット。
【請求項41】
前記捕捉試薬が陽イオン交換吸着剤である、請求項34に記載のキット。
【請求項42】
ソフトウェア製品であって、以下:
a.サンプルに起因するデータにアクセスするコードであって、該データは該サンプル中の少なくとも1種類のバイオマーカーの測定値を含み、該バイオマーカーは、M60464.7(ヘモペキシン)、M3513.9(7B2 CT断片)、M8291.0(ユビキチン(CTから−3aa))、M5044.2、M10379.8(10.3kDa)、M9984.6(10.3kDaに関連する)、M10265.6(10.3kDaに関連する)、M9802.4(EA−92(ChrAペプチド))、9757.0(10.3kDaに関連する)、M16207.4(膵臓リボヌクレアーゼ)、M14092.7(グルタチオニル化トランスサイレチンS)、M13904.7(トランスサイレチンS−Cys/S−CysGly)、M12545.9(シスタチン−C(NTから−8aa))、M8183.6(ユビキチン(CTから−4aa))、M5227.4、M3687.0(セクレトニューリン(ChrC/SGIIペプチド))、M3906.4 バソスタチンII(ChrAペプチド)、M3806.2、M8955.1、M5263.9、M14565.1(膵臓リボヌクレアーゼ)、M20839.2、M6509.6(クロモグラニンBペプチド)、M4320.6(A−β 1−40)、M7258.2(クロモグラニンBペプチド)、M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M58845.4、M8938.5(C3a des−Arg)、M6608.9、M5838.3、M23477.4(プロスタグランジン−Dシンターゼ)、M4357.0(α−1−アンチキモトリプシンCT断片)、M7653.2(オステオポンチンCT断片)、M16716.9、M4812.5(VGF(NCBI)ペプチド)、M4989.4(アセチル化チモシンβ−4)、M7878.7、M92082.4、M66479.2(アルブミン)、M3967.6、M7718.8(リン化オステオポンチンCT断片)、M89707.1、M11579.2、およびM4455.4からなる群から選択される、コード;ならびに
b.該サンプルのアルツハイマー病の病態を該測定値の関数として分類する分類アルゴリズムを実行するコード、
を備える、
ソフトウェア製品。
【請求項43】
請求項42に記載のソフトウェア製品であって、前記分類アルゴリズムは、M60464.7(ヘモペキシン)、M3513.9(7B2 CT断片)、M8291.0(ユビキチン(CTから−3aa))、M9802.4(EA−92(ChrAペプチド))、M16207.4(膵臓リボヌクレアーゼ)、M14092.7(グルタチオニル化トランスサイレチンS)、M13904.7(トランスサイレチンS−Cys/S−CysGly)、M12545.9(シスタチン−C(NTから−8aa))、M8183.6(ユビキチン(CTから−4aa))、M5227.4、M3687.0(セクレトニューリン(ChrC/SGIIペプチド))、M3906.4 バソスタチンII(ChrAペプチド)、M14565.1(膵臓リボヌクレアーゼ)、M6509.6(クロモグラニンBペプチド)、M4320.6(A−β 1−40)、M7258.2(クロモグラニンBペプチド)、M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M8938.5(C3a des−Arg)、M23477.4(プロスタグランジン−Dシンターゼ)、M4357.0(α−1−アンチキモトリプシンCT断片)、M7653.2(オステオポンチンCT断片)、M4812.5(VGF(NCBI)ペプチド)、M4989.4(アセチル化チモシンβ−4)、およびM7718.8(リン酸化オステオポンチンCT断片)からなる群から選択されるバイオマーカーの該測定値の関数として該サンプルのアルツハイマー病の該病態を分類する、ソフトウェア製品。
【請求項44】
請求項42に記載のソフトウェア製品であって、前記分類アルゴリズムが、M11725.7(β−2−ミクログロブリン)、M78936.5(トランスフェリン)、M13349.5(シスタチンC)、M66479.2(アルブミン)およびM8585.9(ユビキチン)からなる群から選択される少なくとも1種類のさらなるバイオマーカーの前記測定値の関数として前記サンプルの前記アルツハイマー病の病態を分類する、ソフトウェア製品。
【請求項45】
請求項42に記載のソフトウェア製品であって、前記分類アルゴリズムが、以下の各バイオマーカー: M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M60464.7(ヘモペキシン)、M10379.8(10.3 kDa)およびM11725.7(β−2−ミクログロブリン)の前記測定値の関数として前記サンプルの前記アルツハイマー病の病態を分類する、ソフトウェア製品。
【請求項46】
単離された改変シスタチンCポリペプチドであって、該改変シスタチンCポリペプチドは配列番号2のアミノ酸配列を有する、単離された改変シスタチンCポリペプチド。
【請求項47】
被験体のアルツハイマー病の病態を認定するための方法であって、以下:
a.該被験体由来の生体サンプル中の少なくとも1種類の改変シスタチンCバイオマーカーを測定する工程であって、該少なくとも1種類の改変シスタチンCバイオマーカーが配列番号2のアミノ酸配列を有する、工程、および
b.該測定値をアルツハイマー病の病態と相関させる工程、
を包含する、
方法。
【請求項48】
シスタチン(M13416)を測定する工程をさらに包含する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
請求項47に記載の方法であって、前記少なくとも1種類の改変シスタチンCバイオマーカーは、SELDIプローブの吸着剤表面上の該バイオマーカーを捕捉し、レーザー脱離イオン化質量分析法によって該捕捉されたバイオマーカーを検出することによって測定される、方法。
【請求項50】
前記少なくとも1種類の改変シスタチンCバイオマーカーが、イムノアッセイにより測定される、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記サンプルがCSFである、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記サンプルが血清である、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
前記相関付けはソフトウェア分類アルゴリズムにより実行される、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
アルツハイマー病の病態が、アルツハイマー病および非アルツハイマー性痴呆から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項55】
前記非アルツハイマー性痴呆が、レヴィー小体痴呆(LBD)および前頭側頭型痴呆(FTD)からなる群から選択されるメンバーである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
(c)前記病態に基づいて被験体の治療を管理する工程、をさらに包含する、請求項47に記載の方法。
【請求項57】
前記吸着剤が疎水性吸着剤である、請求項47に記載の方法。
【請求項58】
前記吸着剤が生体特異的吸着剤である、請求項47に記載の方法。
【請求項59】
前記測定値がアルツハイマー病と相関する場合に、前記被験体の治療を管理する工程が、該被験体へコリンエステラーゼ阻害剤を投与する工程を包含する、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
(d)被験体の管理の後に前記少なくとも1種類のバイオマーカーを測定する工程、をさらに包含する、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記少なくとも1種類の改変シスタチンバイオマーカーが、抗体により捕捉される、請求項47に記載の方法。
【請求項62】
シスタチンC ΔN1−8と相互作用する化合物を同定するための方法であって、
a)シスタチンC ΔN1−8を試験化合物と接触させる工程、および
b)該試験化合物がシスタチンC ΔN1−8と相互作用するか否かを判断する工程、
を包含する、
方法。
【請求項63】
シスタチンCと相互作用する化合物を同定するための方法であって、
a)シスタチンCを試験化合物と接触させる工程、および
b)該試験化合物がシスタチンCと相互作用するか否かを判断する工程、
を包含する、
方法。
【請求項64】
細胞中のシスタチンCの濃度を調節するための方法であって、該方法は、以下:該細胞をプロテアーゼインヒビターと接触させる工程を包含し、該プロテアーゼインヒビターは、Arg8とLeu9との間でのシスタチンCの切断を防ぐ、方法。
【請求項65】
被験体のアルツハイマー病を処置する方法であって、該方法は、以下:Arg8とLeu9との間でシスタチンCを切断するプロテアーゼの発現または活性を調節する化合物の治療的有効量を、被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項66】
被験体の痴呆の病態を認定するための方法であって、該痴呆の病態は非痴呆および非アルツハイマー性痴呆から選択され、
a.該被験体由来の生体サンプル中のβ2ミクログロブリンを測定する工程、および
b.該測定値を非アルツハイマー性痴呆の病態と相関させる工程、
を包含する、
方法。
【請求項67】
被験体のアルツハイマー病の病態を認定するための方法であって、以下:
a.該被験体由来の生体サンプル中の少なくとも1種類のバイオマーカーを測定する工程であって、該少なくとも1種類のバイオマーカーが、表I、表II、表IV−Aおよび表IV−Bに記載のバイオマーカーからなる群から選択される、工程、および
b.該測定値をアルツハイマー病の病態と相関させる工程、
を包含する、
方法。
【請求項68】
被験体のアルツハイマー病の病態を認定するための方法であって、以下:
a.M60464.7(ヘモペキシン)、M3513.9(7B2 CT断片)、M8291.0(ユビキチン(CTから−3aa))、M5044.2、M10379.8(10.3kDa)、M9984.6(10.3kDaに関連する)、M10265.6(10.3kDaに関連する)、M9802.4(EA−92(ChrAペプチド))、9757.0(10.3kDaに関連する)、M16207.4(膵臓リボヌクレアーゼ)、M14092.7(グルタチオニル化トランスサイレチンS)、M13904.7(トランスサイレチンS−Cys/S−CysGly)、M12545.9(シスタチン−C(NTから−8aa))、M8183.6(ユビキチン(CTから−4aa))、M5227.4、M3687.0(セクレトニューリン(ChrC/SGIIペプチド))、M3906.4 バソスタチンII(ChrAペプチド)、M3806.2、M8955.1、M5263.9、M14565.1(膵臓リボヌクレアーゼ)、M20839.2、M6509.6(クロモグラニンBペプチド)、M4320.6(A−β 1−40)、M7258.2(クロモグラニンBペプチド)、M17349.3(アポリポタンパク質A−II二量体)、M58845.4、M8938.5(C3a des−Arg)、M6608.9、M5838.3、M23477.4(プロスタグランジン−Dシンターゼ)、M4357.0(α−1−アンチキモトリプシンCT断片)、M7653.2(オステオポンチンCT断片)、M16716.9、M4812.5(VGF(NCBI)ペプチド)、M4989.4(アセチル化チモシンβ−4)、M7878.7、M92082.4、M66479.2(アルブミン)、M3967.6、M7718.8(リン化オステオポンチンCT断片)、M89707.1、M11579.2、およびM4455.4からなる群から選択されるバイオマーカーを検出可能に標識する工程、ならびに
b.該標識したバイオマーカーを用いて被験体を処置する工程、
c.該被験体における該バイオマーカーの局在パターンを可視化させるために陽電子放出断層撮影(PET)を利用する工程、
d.該局在パターンをアルツハイマー病の病態と相関させる工程、
を包含する、
方法。
【請求項69】
前記バイオマーカーがアルツハイマー病患者の脳内のβ−アミロイド沈着物とともに局在する、請求項68に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図1J】
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【図1K】
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【図1L】
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【図1M】
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【図1N】
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【図1O】
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【図1P】
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【図1Q】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図4J】
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【図4K】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図9−5】
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【図9−6】
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【図9−7】
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【図9−8】
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【図9−9】
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【図9−10】
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【図9−11】
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【図9−12】
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【図9−13】
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【図9−14】
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【図9−15】
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【図9−16】
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【図9−17】
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【図9−18】
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【図9−19】
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【図9−20】
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【図9−21】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−524847(P2007−524847A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538558(P2006−538558)
【出願日】平成16年11月6日(2004.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/037994
【国際公開番号】WO2005/047484
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(501497253)サイファージェン バイオシステムズ インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】