説明

アルツハイマー病の経皮的治療法及び経皮的治療システム

1日ないし7日間に渡ってアルツハイマー病用製剤、特に、ドネペジルを送達するための経皮送達システムが開示されており、このシステムでは、アルツハイマー病用製剤の血中濃度が、承認済みの経口投与用製剤の場合と同程度になるような透過率で遊離塩基型のアルツハイマー病用製剤が送達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NIHからの政府助成金AG017414に基づいて完成した。合衆国政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、アルツハイマー治療用薬物の経皮送達方法及び経皮送達システムに関する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病は、記憶の喪失と進行性の認識能力の減退を特徴とする神経変性障害である。老齢者は、相当な率でこの疾患を患っている。D.B. Carr et al., Current concepts in pathogenesis of Alzheimer's disease, 103(3A) AM. J. MED. 3S-10S (1997)。アルツハイマー病に共通する兆候及び症状としては、感情鈍麻、興奮、気分障害、被刺激性、脱抑制、妄想、運動行動の異常並びに睡眠及び食事の障害等が挙げられる(同文献参照)。
【0004】
アルツハイマー病患者の記憶力と注意力の不足は、前脳基底部のコリン作動性神経系から始まり、新皮質、海馬及び脳の他の領域の神経を刺激するコリン作動性神経系の変性によるものであることを示す十分な証拠が存在する。Coyle et al., 219 SCIENCE 1184 (1983; R. Mayeux et al., Treatment of Alzheimer's disease, 341 N. ENGL. J. MED. 1670-1679 (1999)。
【0005】
アルツハイマー病治療用のものとしてFDAが承認した最初のクラスの薬物は、コリンエステラーゼ阻害剤である(同文献参照)。可逆性のコリンエステラーゼ阻害剤の作用としては、脳内に最も多く存在するコリンエステラーゼであるアセチルコリンエステラーゼを選択的に阻害することによりアセチルコリンの濃度を上昇させ、中枢神経系でのコリン機能を促進することが提唱されている。S.L. Rogers, et al., The pharmacology of a piperidine cholinesterase inhibitor, In, CHOLINERGIC BASIS FOR ALZHEIMER'S THERAPY 314-320 (Birkhauser ed.. 1991); PJ. Tiseo et al, Metabolism and administration of 14C-donepezil in healthy volunteers: A single dose study, BRIT. J. CLINICAL PHARMACOL. (1998)。現時点で利用可能な経口投与用形態の可逆性コリンエステラーゼ阻害剤としては、Aricept(登録商標)(塩酸ドネペジル)、Exelon(登録商標)(酒石酸リバスチグミン)、レミニル(登録商標)(ガランタミン臭化水素酸塩)が挙げられ、希にCognex(登録商標)(塩酸タクリン)も処方される。例として、以下を参照:E.L. Barner et al, Donepezil use in Alzheimer's disease, 32 ANN PHARMACOTHER., 70-77 (1998); R. Moretti, et al, Rivastigmine in subcortical vascular dementia: a comparison trial on efficacy an tolerability for 12 months follow-up, 8 EUR. J. NEUROL. 361-362 (2001);G. K. Wilcock, et al., Efficacy and safety of galantamine in patients with mild to moderate Alzheimer's disease; multicenter randomized controlled trial, 321 BMJ 1445-1491 (2000); D. Knopman et al., Long-term tacrin (Cognex) treatment: effects on nursing home placement and mortality, Tacrin Study Group, 47 NEUROLOGY 166-177 (1996)。
【0006】
いくつかの神経障害(例えば、脳梗塞、虚血等)における皮質の神経変性は、グルタミン酸誘導性神経変性において決定的な役割を果たすN−メチル−D−アスパラギン酸(「NMDA」)へのグルタミン酸結合が原因であると考えられてきた。Mattson et al, 13 BRAIN RES. 174 (1988); Choi et al., 23 J. NEUROSCI. RES. 1 16 (1989); Hartley et al., 250 J. PHARMACOL. EXP. THER. 752 (1989); Meldrum et al., 1 1 TRENDS PHARNdACOL. SCI. 379 (1990)。
【0007】
従って、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤のクラスに加え、経口投与型のN−メチル−D−アスパラギン酸の非競合型アンタゴニストであるNamenda(登録商標)(塩酸メマンチン)も、アルツハイマー病の治療薬としてFDAに承認されている。B. Reisberg et al, Memantine Study Group: Memantine in moderate-to-severe Alzheimer's disease, N. ENGL. MED. 1333-1341 (2003)。
【0008】
現時点で利用可能なアルツハイマー病治療薬は、経口投与型のものしか存在しない。PHYSICIAN'S DESK REFERENCE 1736, 1197, 2304 (Lori Murray, ed., 59th ed., 2005)。このような経口投与型では、患者の服薬率に関して本質的に深刻な不利益を伴う。アルツハイマー病患者は、多くの場合、その薬物を摂取することを忘れるか又は嫌がる。従って、一日当たりの必要投与量にもよるが、一日に何回も介護人による補助が必要となるであろう。例えば、「Physicians' Desk Reference」には、定期的に介護人が薬物の摂取を管理することで治療の唐突な中断を避けられる場合にのみ、ドネペジルの経口投与による治療を開始すべきであることが記載されている。PHYSICIAN'S DESK REFERENCE 1197 (Lori Murray, ed., 59th ed., 2005)。
【0009】
FDAが承認した経口投与型のアルツハイマー病用製剤の中で最も多く処方されるものは、塩酸ドネペジル錠剤又はAricept(商標)である。ドネペジルは、水素結合によってアセチルコリンエステラーゼに結合し、水で簡単に加水分解されるので、レセプターレベルでの酵素阻害時間が非常に短いため、可逆性と称される(同文献参照)。
【0010】
長期間(例えば、数日の間)に渡って安定した血中薬物濃度を提供する経皮送達システムは、患者の服薬率を向上させることから、経口投与型に比べて利点を有する。例えば、患者は、薬物の摂取を覚えておく必要もなく、その日に後で投与する薬物を持ち歩く必要もない。このことは、アルツハイマー病患者の場合に特に有用である。
【0011】
残念ながら、皮膚による薬物透過抵抗性により、経皮投与によって生体利用可能な薬物の数はわずかなものである。T.K. Ghosh, et al., Transdermal and Topical Delivery Systems: an Overview and Future Trends in, TRANSDERMAL AND TOPICAL DRUG DELIVERY SYSTEMS 8 (1997)。
【0012】
皮膚は、全体の厚さが2−3mmの複雑な多層器官である。真皮の下には、厚さが可変性の脂肪層である皮下脂肪が存在する。真皮は、表皮を支持する結合組織が高密度に集まった層である。表皮は、上皮細胞を含み、厚さは、約100 μmである。表皮は、更に多数の層に分類され、その中で最も外側の層は、角質層(15−20μmの厚さ)である。角質層は、非常に高密度な角質化組織を含み、皮膚の透過/浸透抵抗の主な原因である。W. Montagna, et al., THE STRUCTURE AND FUNCTION OF SKIN (1974); K. A. Holbrook, K. A. et al., The Structure and Development of Skin, In, 1 DERMATOLOGY IN GENERAL MEDICINE, 97-145 (4th ed., Eds. T. B. Fitzpatrick et al., 1993)。
【0013】
皮膚の非透過性により、通常は、24時間で1cmの皮膚領域において、約1mgの薬物しか送達されない。T.K. Ghosh, et al., Transdermal and Topical Delivery Systems: an Overview and Future Trends in, TRANSDERMAL AND TOPICAL DRUG DELIVERY SYSTEMS 8 (1997)。分子量が大きいほど薬物の透過性が低下する(同文献参照)。種々の薬物の必要投与量を考慮するに、僅かに1パーセント未満が経皮送達の対象となっているものと予想される(同文献参照)。
【0014】
皮膚の本質的な透過抵抗性を克服することにより、長期間に渡り、経口投与型と同程度の血漿濃度でアルツハイマー病治療薬を送達することが可能な経皮送達系が必要とされる。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、長時間に渡って経口投与型と同程度の血漿濃度で患者にアルツハイマー病用製剤を経皮送達する、リザーバー型膜調節パッチと薬物含有接着性パッチに関する。本発明の経皮パッチは、1日ないし7日間に代わってアルツハイマー病用製剤を連続的に経皮送達し、これによって患者の毎日の経口投与に要する介護者の監督の必要性が軽減される。
【0016】
ある態様では、本発明のリザーバー型パッチは、裏張りフィルム、薬物リザーバー、速度調節膜、皮膚と接触する接着部を含む。薬物リザーバーは、速度調節膜を通じて、接着層へ、そしてヒトの皮膚を通じて、1日ないし7日間以上に渡ってアルツハイマー病用製剤を経皮送達する経皮用アルツハイマー病用医薬組成物を含む。
【0017】
別の態様では、本発明のリザーバー型パッチは、裏張りフィルム、薬物リザーバー、皮膚と接触する速度調節膜を含む。薬物リザーバーは、速度調節膜を通じて、そしてヒトの皮膚を通じて、1日ないし7日間以上に渡ってアルツハイマー病用製剤を経皮送達する経皮用アルツハイマー病用医薬組成物を含む。
【0018】
本発明のリザーバー型パッチの更なる別の態様では、薬物リザーバーと接着層の両方が、アルツハイマー病用製剤を含む。この態様では、アルツハイマー病用製剤が薬物リザーバーから接着層へ移動しないために遅延時間が減少され、従って、患者の皮膚に貼った後に患者の血流に、より迅速にアルツハイマー病用製剤が流れ込むことになる。
【0019】
本発明の別の態様では、裏張りフィルムとマトリックス型接着層を含む薬物含有接着経皮パッチが含まれる。マトリックス型接着層は、アルツハイマー病用製剤を含む。
【0020】
従って、ある態様では、本発明は、アルツハイマー病用製剤、ゲル化剤及び透過促進剤を含む薬物リザーバーと、該薬物リザーバーと接触する裏張りフィルムとを含むパッチであって、前記アルツハイマー病用製剤が、経皮送達に十分な量で存在するパッチに関する。
【0021】
別の態様では、本発明は、アルツハイマー病用製剤、ゲル化剤及び透過促進剤を含む薬物リザーバーを含むパッチであって、裏張りフィルムが前記薬物リザーバーと接触し、前記アルツハイマー病用製剤が経皮送達に十分な量で前記薬物リザーバー中に存在し、該パッチが前記薬物リザーバーと接触するマトリックス型接着部を更に含み、該接着部もアルツハイマー病用製剤を含む、パッチに関する。
【0022】
更に別の態様では、本発明は、アルツハイマー病用製剤、ゲル化剤及び透過促進剤を含む薬物リザーバーと該薬物リザーバーと接触する裏張りフィルムとを含むパッチであって、前記アルツハイマー病用製剤が経皮送達に十分な量で存在するパッチをアルツハイマー病患者の無傷に皮膚に貼ることにより、アルツハイマー病治療を必要とする患者に治療上有効量のアルツハイマー病用製剤を経皮投与することを含む、アルツハイマー病の治療方法に関する。
【0023】
本発明のパッチと方法により、経口投与型と比べて患者の服薬率を向上させることができる。更に、本発明の経皮パッチにより、経口投与型に伴う血漿濃度のピークが低下する。これにより、関連する有害事象が減少する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の上記及びその他の特徴、局面及び利点は、以下の記載、添付する請求項及び付録の図面によって、よりよく理解されるであろう。
【図1】図1には、本発明の薬物リザーバーパッチが図示されている。
【図2】図2には、本発明の薬物含有接着パッチが図示されている。
【図3】図3には、本発明のリザーバーパッチについて、ドネペジルがヒトの死体の皮膚を通る透過速度と時間の関係が図示されている。
【図4】図4には、本発明のリザーバーパッチについて、ドネペジルの放出速度と時間の関係が図示されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.定義
1.1 アルツハイマー病用製剤
本明細書で用いる場合、「アルツハイマー病用製剤」とは、アルツハイマー病の治療に有用なあらゆる薬物、医薬若しくは製剤又はアルツハイマー病用製剤のプロドラッグ及びこれらのいずれかの立体異性型又はこれらの立体異性型の混合物(例えば、幾何異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体又はこれらの混合物)を意味する。
【0026】
本発明で使用するのに好ましいアルツハイマー病用製剤は、塩基性の窒素基を含み、その遊離塩基型の状態で本発明のパッチに含まれて用いられる。本発明の使用に好ましいアルツハイマー病用製剤は、FDAに承認されたものである。また、好ましいアルツハイマー病用製剤としては、コリンエステラーゼ阻害剤であり、好ましくは、約100g/molないし約800g/mol、より好ましくは、約150g/molないし約450g/molの分子量を有する。別の好ましい態様では、アルツハイマー病用製剤は、N−メチル−D−アスパラギン酸の非競合的アンタゴニストである。より好ましくは、アルツハイマー病用製剤は、遊離塩基型で1つ以上の窒素原子を含む。好ましいアルツハイマー病用製剤としては、これらに限定されるものではないが、以下の表1に列挙される化合物が挙げられ、好ましくは、これらの遊離塩基型である。
【0027】

【0028】
1.2 哺乳類
本明細書で用いる場合、「哺乳類」という用語は、あらゆる哺乳類を意味しており、例えば、以下に限定されないが、ヒト;犬や猫などのペット類;ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジなどの家畜哺乳類;サル、モルモット、ラット、マウスなどの実験用動物を意味する。好ましくは、「哺乳動物」はヒトである。
【0029】
1.3 パッチ又は経皮パッチ又は経皮システム
本明細書で用いる場合、「パッチ」、「経皮パッチ」又は「経皮システム」は、少なくとも経皮投与用製剤と裏張りフィルムを含んでおり、これにより、パッチを患者の皮膚の適用部位上に貼ることで薬物が全身に送達される。
【0030】
1.4 透過速度
本明細書で用いる場合、「透過速度」とは、アルツハイマー病用製剤が本発明のパッチにより、無傷の生きているヒトの皮膚を介して患者の血流に送達される速度を意味する。
【0031】
1.5 プロドラッグ
「プロドラッグ」という用語は、哺乳動物への投与後に、生体内変換により、in vivoでアルツハイマー病用製剤に変換される化合物を指す。プロドラッグは、例えば、1 BURGER'S MEDICINAL CHEMISTRY AND DRUG DISCOVERY, 172-178, 949-982 (Manfred E. Wolff ed., 5th ed. 1995)(この文献の内容は参照により本明細書中に組み入れられる)に記載されるような、よく知られている方法によって発見され、合成される。
【0032】
1.6 放出速度
本明細書で用いる場合、「放出速度」とは、アルツハイマー病用製剤が本発明のパッチから、そのパッチが張られた面へ放出される速度を意味する。
【0033】
1.7 治療上有効量のアルツハイマー病用製剤
本明細書で用いる場合、アルツハイマー病用製剤についての「治療上有効量」とは、本発明の経皮送達システムにより、アルツハイマー病用製剤をアルツハイマー病の治療に十分な血漿濃度で経皮送達するのに必要な量を意味する。
【0034】
1.8 経皮投与又は経皮送達
本明細書で用いる場合、「経皮投与」又は「経皮送達」という用語は、その製剤の系統的な作用を引き出すのに十分な量の製剤を哺乳動物の皮膚を通じてその血流に系統的に送達するために、哺乳動物に製剤を局所投与することを意味する。
【0035】
1.9 経皮送達に許容可能
本明細書で用いる場合、「経皮送達に許容可能」というフレーズは、哺乳動物への経皮投与において安全であるか又は承認が得られた経皮送達用医薬組成物のあらゆる医薬成分、賦形剤又は他の成分を意味する。
【0036】
1.10 経皮送達用医薬組成物
「経皮送達用医薬組成物」又は「経皮送達用組成物」とは、経皮パッチにより薬物又は製剤を経皮投与するために設計された医薬組成物を意味する。
【0037】
2. 本発明のパッチ
アルツハイマー病用製剤は、本発明のパッチにより、アルツハイマー病の治療のために患者に経皮投与可能である。好ましくは、本発明のパッチは、約5cmないし約100cm、好ましくは約10cmないし約50cmの無傷の皮膚の領域に、以下に示す範囲の透過速度と初期の2時間の放出速度で長時間に渡って投与される。
【0038】

【0039】
このように送達された場合、薬物送達装置の表面積を適切に選択することにより、安全で効果的な投薬形態を維持しながらも、個々の患者の必要量に適切な範囲の滴定量を提供するような総薬物投与速度を得ることが可能である。
【0040】
我々は、正常なヒトの皮膚がアルツハイマー用製剤に対して比較的広範囲の透過性を持つこと、そしてこの透過性が、個人及び部位によって変化するだけではなく、薬物の化学形態にも大きく依存することを発見した。例えば、塩酸ドネペジル(現在、ドネペジルが経口投与される形態)は、皮膚透過性が低いため、たとえ、透過促進剤を併用したとしても経皮送達に全く適していない。我々は、上述の送達速度を得るためには、薬物を、上記の形態にではなく、遊離塩基型で経皮治療システムに取り込ませるべきであることを発見した。
【0041】
本発明により、リザーバー及びマトリックス型経皮送達システムから一定の期間に渡って治療有効量のドネペジルが経皮送達される。好ましくは、本発明のパッチは、正常な皮膚を通じて患者の血流に約0.5μg/cm/時間ないし約20μg/cm/時間、好ましくは、約3μg/cm/時間ないし約13μg/cm/時間の範囲でアルツハイマー病用製剤を送達する。本発明の特定の態様では、十分量の透過促進剤を接着層に添加することにより皮膚透過性を向上させることができる。
【0042】
図1には、裏張りフィルム20;経皮送達用アルツハイマー病用医薬組成物を含む薬物リザーバー30;薬物リザーバーからのアルツハイマー病用製剤の徐放送達用の速度調節膜40;及び感圧接着剤を含む接着層50を含む、本発明のリザーバー型経皮送達用パッチ10が図示されている。好ましい態様では、パッチ10は保護ライナー60を含む。裏張りフィルム20は、アルツハイマー病用製剤を含むゲルの形状にある薬物リザーバー30が包含された中央体積部分を有するような形状をしている。
【0043】
パッチ10の好ましい態様では、粘着層50は、アルツハイマー病用製剤を含む。従って、この好ましい態様では、薬物リザーバー30と粘着層50の両方が、アルツハイマー病用製剤を含む。この態様では、アルツハイマー病用製剤が薬物リザーバー30から接着層50へ移動しないために遅延時間が減少され、従って、患者の皮膚にパッチ10を貼った後に患者の血流に、より迅速にアルツハイマー病用製剤が流れ込むことになる。
【0044】
図2には、裏張りフィルム120とマトリックス型接着剤及びアルツハイマー病用製剤を含む接着層150を含む、本発明の薬物含有接着経皮送達用パッチ110が図示されている。好ましい態様では、パッチ110には、保護ライナー160が含まれる。
【0045】
裏張りフィルム120は、アルツハイマー病用製剤を透過させず、保護層160も同様に不透過性であり、薬物リザーバー/接触接着層150から直ちに取り除かれるように設計されており、そしてアルツハイマー病用製剤が溶解された又は所望の場合には分散された接触接着剤からなる。このようなシステムは、加工しやすいという利点を有するが、速度調節膜がない場合には、特定の個人の適用部位での皮膚の透過性によって主に決定される透過速度で薬物を送達する。
【0046】
2.1 裏張りフィルム
裏張りフィルム又は裏張りは、パッチの上面としての役割を果たし、主な構成要素として機能し、パッチに柔軟性を与えるものである。好ましくは、裏張りフィルムは実質的に、経皮送達用医薬組成物を透過させない。裏張りは、好ましくは、柔軟なエラストマー材料のシート又はフィルムから作られる。裏張りは、好ましくは、非通気性である。
【0047】
本発明のパッチに用いられる裏張りは、好ましくは、皮膚の柔軟性を真似て、皮膚の動きに順応する、柔軟な生体適合性材料である。非密封性裏張りでは、そのエリアで通気が可能であるが(即ち、皮膚表面からの水蒸気の透過を促進する)、密封性裏張りでは、空気/蒸気の透過率が低下する。好ましくは、裏張りフィルムは、図1に示すリザーバーパッチと図2に示すマトリックスパッチにおいて、密封性を有する。
【0048】
好ましくは、裏張りフィルムは、ポリオレフィンオイル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリビニリデンクロリド、ポリウレタン等の合成ポリマーから作製される。裏張りフィルムの厚さは、好ましくは、約0.5ミルないし約5ミル、より好ましくは、1ミルないし約3ミルである。好ましくは、酸素透過率は、24時間当たり、約2cc/mないし約100cc/m、好ましくは、約70g/mないし約90g/mとなる。好ましいMVTRは、24時間当たり、約0.3g/mないし約50g/m、より好ましくは、約5g/mないし約30g/mとなる。
【0049】
好ましい態様では、裏張りフィルムは、ポリエステルと中密度ポリエチレン/エチレンビニルアセテートヒートシール層からなる厚さが約2.0ミル以上の3 M Scotchpak 9733でできた密封性ポリエステル製フィルムである(例えば、Scotchpak 9733、3M Drug Delivery Systems(セントポール、ミネソタ州)として市販されている);この薄板は、半透明で、形状適合性があり、密封性でヒートシール可能である。この態様は、図1に示すリザーバーパッチに有用である。
【0050】
2.2 薬物リザーバー
図1に示すリザーバーパッチの薬物リザーバーは、少なくともアルツハイマー病用製剤と透過促進剤を含む。好ましくは、薬物リザーバーは、更にゲル化剤を含む。
【0051】
本発明の薬物リザーバーシステムに使用する透過促進剤の例としては、以下に限定されないが、エタノール、イソプロピルアルコール、及び他の高級アルコール、例えば、ラウリルアルコール及びポリエチレングリコール400、プロピレングリコール等が挙げられる。好ましい透過促進剤は、95%エタノール(米国薬局方)(5%水)であり、本明細書では「95%エタノール」と呼ぶ。適切な透過促進剤は、市販されており、例えば、EMD Chemicals, Inc.(ギブスタウン、ニュージャージー州)から市販されている。
【0052】
透過促進剤の量は、薬物リザーバーの総重量に対して約5重量%ないし約95重量%であり、より好ましくは、約30重量%ないし約80重量%である。
【0053】
本発明で使用する適切なゲル化剤としては、以下に限定されないが、セルロース系ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。セルロース系ポリマーは、非イオン性で水溶性であり、その水溶液は、カチオンによる影響を受けないものが好ましい。
【0054】
好ましいゲル化剤は、ヒドロキシエチルセルロースである。本発明で使用するヒドロキシセルロースは、3個のヒドロキシル基を含有するアンヒドログルコース単位で構成されるセルロースポリマーを水酸化ナトリウムで処理して次いで、エチレンオキシドと反応させることにより調製可能であり、ヒドロキシエチル基を導入すると、ヒドロキシエチルエーテル官能性が得られ、反応生成物を精製し、よく知られる方法により微細な白色粉末へグラインドする。好ましいヒドロキシエチルセルロースゲル化剤は、Hercules Incorporated, Aqualon Division(ウィルミントン、デラウェア州)から市販されるNatrosol(登録商標)250M Pharmである。
【0055】
適切なシステム寿命を与えるため、好ましくは、ゲルの充填量を約10mg/cmないし約50mg/cmにすると、乾燥充填量が、約0.5mg/cmないし約5mg/cmとなる。より好ましくは、ゲルの充填量は約20mg/cmないし約40mg/cmである。アルツハイマー病用製剤は、ゲルの総重量の約0.1%ないし約10%、より好ましくは、ゲルの総重量の約0.5%ないし約5%の量で薬物リザーバー中に充填される。
【0056】
本発明の組成物は、例えば、1種類以上の増粘剤、製剤又は調合薬、生体接着性ポリマー、不活性担体、液体吸収剤、粘性安定剤、キレート剤、バッファー、抗退色剤、安定剤、吸湿剤、芳香剤、着色剤又はフィルム形成材料等の1種類以上の追加成分を更に含んでいてもよい。当業者であれば、最終的な薬物リザーバー組成物に望ましい物理的特性及び化学的特性に基づいて、これらの追加の賦形剤を直ちに選択できるであろう。無論のこと、単一の賦形剤が、複数の機能及び特性を有する場合もある。
【0057】
種々の薬物リザーバー組成物が本発明において利用可能であり、これらには水性システムと非水性システムの両方が含まれる。表2に、好ましい水性ゲルシステムの一般式を、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースであるゲル化剤と共に示す。
【0058】

【0059】
2.3 速度調節膜
図1に示すリザーバーパッチの速度調節膜は、薬物リザーバーから粘着層へのアルツハイマー病用製剤の徐放送達を可能にする。本発明のパッチと併用される速度調節膜は、当該技術分野で良く知られており、通常の実務者であれば、直ちに選択できる。
【0060】
本発明で使用される速度調節膜としては、以下に限定されないが、半透過性のエチレンビニルアセテート共重合体薄膜又は微小孔性のポリエチレン及びポリプロピレンの薄膜が挙げられる。適切な速度調節膜は、市場から入手可能であり、例えば、3M Drug Delivery Systems(セントポール、ミネソタ州)から市販されている。
【0061】
速度調節膜は、厚さが、約0.5−5ミル(0.0127−0.1270mm)、好ましくは、約1−3ミル(0.25−0.076mm)であってもよい。
【0062】
好ましい態様では、速度調節膜は、半透明で、ヒートシール可能であり、厚さが均一に調節されたエチレンビニルアセテート膜である。好ましくは、酢酸ビニルの含有率は、約0%ないし約40%であり、より好ましくは、約4%ないし約19%であり、更により好ましくは、約9%である。好ましくは、MVTRは、24時間当たり、約15g/mないし約100g/m、より好ましくは、約40g/mないし約60g/mである。このような速度調節膜は、市場から入手可能であり、例えば、3M Drug Delivery Systems(セントポール、ミネソタ州)から市販されており、3M CoTran(登録商標)メンブランや、好ましくは、CoTran(登録商標)9702等がある。
【0063】
2.4 接着層
本発明のパッチに用いる接着剤は、当該技術分野で良く知られており、当業者であれば直ちに選択することができる。好ましくは、本発明で有用な接着剤は、高湿度及び低湿度、入浴中又は発汗条件下等の広範囲な条件下で機能することができる。接着剤は、例えば、1日交換用、週2回交換用又は週1回交換用パッチの場合など、所望の皮膚への接着特性に応じて選択される。好ましい態様では、本発明のパッチは、接着層により患者の皮膚に1日ないし7日間接着する。
【0064】
より好ましい態様では、接触する接着剤は、マトリックス型薬物担体である。マトリックス型薬物担体は、当該技術分野で良く知られている。適切なマトリックス型薬物担体としては、以下に限定されないが、ポリイソブチレン、シリコン系接着剤及びポリアクリル酸接着剤が挙げられる。
【0065】
図2に図示する薬物含有接着パッチでは、接着剤に直接アルツハイマー病用製剤が含有されている。
【0066】
図1に図示する薬物リザーバーパッチでは、アルツハイマー病用製剤は、所望の送達特性に応じて、接着層に含まれていてもよく、又は含まれていなくてもよい。好ましくは、アルツハイマー病用製剤は、薬物リザーバーに含まれるアルツハイマー病用製剤に加えて、接着剤に直接含有される。接着層自体に薬物を充填することにより、薬物リザーバーに含まれるアルツハイマー病用製剤が速度調節膜を通じて移動する遅延時間においても、初期の薬物放出量を高めることが可能になる。接着層からアルツハイマー病用製剤が初期に放出されることにより、患者体内でアルツハイマー病用製剤が適切な血中濃度に達するまでに要する時間が短縮される。
【0067】
別の態様では、接触する接着/リザーバー層の作製に適した材料としては、酢酸ビニル含有量が約0ないし18%のEVAポリマー、高分子量ポリイソブチレン(平均分子量:1,200,000)の含有量が15ないし25%で、低分子量のポリイソブチレン(平均分子量:35,000)の含有量が20ないし30%で、残りの分量に38℃での粘性が10センチポアズの軽ミネラルオイルを含むポリイソブチレン/ミネラルオイル等が挙げられる。
【0068】
好ましい態様では、乾燥後の接着層の厚さは、約0.5ミルないし約12ミルであり、より好ましくは、約1ミルないし約4ミルである。別の好ましい態様では、接着層は、約5mg/cmないし約50mg/cm、より好ましくは、約10mg/cmないし約30mg/cmの重量を有する。
【0069】
図2に示す薬物含有接着パッチのある態様では、アルツハイマー病用製剤は、約0.01mg/cmないし約10mg/cm、より好ましくは、約0.2mg/cm ないし約4mg/cmの量で接着層に含まれる。
【0070】
図1のリザーバーパッチのある態様では、アルツハイマー病用製剤が接着層に含まれる場合には、接着層に含まれる含有量は、約0.01mg/cmないし約10mg/cm、より好ましくは、約0.2mg/cmないし約4mg/cmである。
【0071】
図1に図示するリザーバーパッチの別の態様では、アルツハイマー病用製剤は、パッチの装着後の最初の2時間で患者の皮膚がアルツハイマー病用製剤で飽和状態になる(本明細書では、「バースト効果」と呼ぶ)ような量で存在する。好ましくは、最初の2時間の放出速度は、1時間当たり、約10μg/cmないし約250μg/cmであり、より好ましくは、約25μg/cmないし約100μg/cmである。これにより、患者体内で、装着から最初の2時間以内にアルツハイマー病用製剤の血漿濃度が適したものになる。
【0072】
好ましくは、接着剤は、アミン耐性シリコン;天然又は合成ゴム;ポリブチルアクリレート、ポチメチルアクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート等のポリアクリル酸;ポリビニルアセテート;ポリジメチルシロキサン、ポリイソブチレン(PIB);及びこれらの組合せである。
【0073】
適切なポリイソブチレン接触接着剤には、高分子量ポリイソブチレン(平均分子量:1,200,000)の含有量が15ないし25%で、低分子量のポリイソブチレン(平均分子量:35,000)の含有量が20ないし30%で、残りの分量に38℃での粘性が10センチポアズの軽ミネラルオイルを含むポリイソブチレン/ミネラルオイルが含まれる。
【0074】
好ましい接着剤は、シリコン製医薬用接着剤のBio PSA 7-4301であり、Dow Corning Corporation(ミッドランド、ミシガン州)から市販されている。
【0075】
接着剤組成物に透過促進剤を含ませることでアルツハイマー病用製剤の角質層を通って血流に入る移動を最適化することもできる。局所投与用製剤中での透過促進剤の使用に関する議論については、全般的に以下を参照されたい:PERCUTANEOUS PENETRATION ENHANCERS (Eric W. Smith & Howard I. Maibach eds. 1995); Ghosh, T. K. et al. 17 PHARM. TECH. 72 (1993); Ghosh, T. K. et al. 17 PHARM. TECH. 62 (1993);Ghosh, T. K. et al. 17 PHARM. TECH. 68 (1993)(これら全ての文献の内容は参照により本明細書中に組み入れられる)。透過促進剤は、薬理学的に不活性で、非毒性で、非アレルゲンであり、即ち、迅速で可逆的に作用を開始するべきである。本発明の接着剤に使用される透過促進剤の例としては、以下に限定されないが、高級アルコール、ラウリルアルコール、サリチル酸、オクチルフェニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、N−デシルメチルスルホキシド(n-DMS)、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールジラウレート及び関連エステル、グリセロールモノオレエート及び関連の単官能性、二官能性、三官能性グリセリド、ジエチルトルアミド、Azone(登録商標)、N,N−ジメチルラウラミド、N,N−ジメチルラウラミンオキシド、ラウリル酸メチル、乳酸ラウリル、ミリスチン酸イソプロピル、リノール酸、Ceraphyl(登録商標)31等が挙げられる。
【0076】

【0077】
2.5 保護層
保護ライナーにより、使用時まで接着層が保護され、保護ライナーは、患者にパッチを装着する前に剥がされて捨てられる。好ましい保護ライナーは、厚さが約0.5ミルないし約5ミル、好ましくは、約2ミルないし約4ミルで、密封性を有し、透明なフッ素重合体でコーティングされたポリエステルフィルムである。このライナー上にコーティングを施すことにより、シリコン製の皮膚接触接着剤、並びにアクリル酸、ポリイソブチレン及びゴム系接着剤からの放出が可能になる。適切な保護ライナーは、よく知られており、市販されていて、例えば、フッ素重合体でコーティングされたポリエステル膜のScotchpak 1022 Release Liner(厚さ3ミル)や、他にも3M Drug Delivery System(セントポール、ミネソタ州)から市販される保護ライナーが挙げられる。
【0078】
3. 本発明の経皮送達用パッチの用途、投与量及び送達速度
アルツハイマー病の治療の場合、投与量や投与頻度は、熟練した医療の専門家によって決定されなければならず、患者の体重や疾患の重症度等、数多くの要因に依存することになる。一般的に、本発明のパッチを用いた場合のアルツハイマー病用製剤の透過速度は、患者の体内で、FDAが承認した経口投与型製剤によって得られる血漿濃度と同程度の血漿濃度が得られるようなレベルである。
【0079】
例えば、Aricept(商標)(塩酸ドネペジル)は、含有量が5mg又は10mg(遊離塩基型では、4.56mg又は9.12mgに相当)の錠剤であり、毎日一回服用される。PHYSICIAN'S DESK REFERENCE 1197 (59th ed., 2005)。ドネペジルの排出半減期は、約70時間である。PHYSICIAN'S DESK REFERENCE 1197 (59th ed., 2005)。
【0080】
一般的に、本発明のパッチは、疾患の重症度や、使用済みのパッチをはずして新しいパッチを装着することを記憶する患者の能力にもよるが、1日ないし7日間の期間で装着される。一般的に、より重症度の高い患者は、治療計画に従う能力が低下しているため、より長時間装着可能なパッチを必要とする。本発明のパッチは、患者の背中(肩甲骨の間)、腰、腹部、胸又は上腕、大腿部のいずれかに装着されるが、胸郭上部に装着することが好ましい。
【0081】
適切な投与量と適用箇所は、種々の検討事項に基づいて内科医が決定する。アルツハイマー病用製剤が吸収される速度は、皮膚の透過性に依存する。皮膚の透過性は、患者の身体の部位によっても変化し、角質層の厚さにも依存する。角質層は、皮膚の最も外側に存在し、経皮投与された薬物に対する透過性及び透過抵抗性の主な原因となる。例えば、透過性は、一般的に、足底のアーチ部分、くるぶしの横側、手のひら、前腕の腹側、前腕の背中側、背中、胸部、大腿部、腹部、頭皮、腋窩、前額部、陰嚢の順に高くなる;R. C. Wester. & H. I. Maibach, Regional variation in Percutaneous Absorption, in PERCUTANEOUS ABSORPTION, MECHANISM, METHODOLOGY, DRUG DELIVERY 111-119 (R. L. Bronaugh & H. I. Maibach eds., 2nd ed. 1989)(この文献の内容は参照により本明細書中に組み入れられる)を参照。
【0082】
本発明のパッチで投与するアルツハイマー病用製剤の投与量は、皮膚と接触するパッチの活性表面によって調節される。疾患の重症度に応じた内科医の処方に適した複数の投与強度を用意しておくことが好適である。従って、一般的に、内科医は、より大きな又はより小さな活性表面積を有するパッチを処方することによってアルツハイマー病用製剤の投与量を上下に調節できる。
【0083】
好ましくは、本発明のパッチからのアルツハイマー病用製剤の全体的な平均透過速度は、1時間当たり、約0.5μg/cmないし約20μg/cm、好ましくは、約3μg/cmないし約13μg/cmである。装着後の最初の2時間での平均放出速度は、1時間当たり、約10μg/cmないし約250μg/cmが好ましく、更に好ましくは、1時間当たり、約25μg/cmないし約100μg/cmである。
【0084】
4. 本発明のパッチの調製
一般的に、本発明のパッチは、以下のようにして調製される。遊離塩基型のアルツハイマー病用製剤を95%エタノールに添加して撹拌することで、この薬剤を溶解させる。60%のエタノール/水溶媒中に31.6mg/gのドネペジルを含む混合物を得るのに十分な量になるように、精製水を上記エタノール/ドネペジル溶液に添加する。2%のヒドロキシエチルセルロースゲル化剤を撹拌しながらゆっくりと上記溶液に添加し、滑らかなゲルが得られるまで混合する(約1時間)。
【0085】

【0086】
厚さ0.05mmのアミン耐性シリコン医薬用接着剤(BIO PSA 7-4301、Dow Corning(ミッドランド、ミシガン州)から購入)からなる接触接着層を、溶液流延によりフルオロカーボン処理済みポリエステルフィルム上にコーティングした。厚さ0.05mmのEVA含有速度調節膜(9%EVA)を露出した接着剤にプレッシャーラミネートした。ヒートシールマシン上で、標準的な3M裏張りフィルム(ポリエチレン、ポリエステル及びEVAの多層構造)と放出ライナー/接着/速度調節膜の間に30mg/cmのゲル充填量で上記で調製した水性ゲルリザーバーを封入した。
【0087】
20cmのシールした本発明の経皮送達システムをダイスカットし、エタノールのロスを回避するため、直ちに封入した。速度調節膜と接着層に含まれる薬物とエタノールを平衡濃度にさせるため、封入したシステムを2週間以上平衡化させた。
【実施例】
【0088】
5. 実施例
5.1 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)アッセイ
ドネペジル濃度の決定にはHP ChemStationソフトウェアを備えたHewlett-Packard Model 1090 Series IIクロマトグラフ(HPLCシステム)を用いた。分析は、Alltima Phenylカラム(5μm、150x4.6mm、Alltech Associates)を以下の条件で用いた:移動相としてメタノール:0.01Mリン酸ナトリウムバッファー(pH6.9)(80:20)、流速:1ml/分、波長:315nm及び注入量10μl。ドネペジルの見かけの滞留時間は4.0分間であった。キャリブレーションは、外部標準法によって行った。
【0089】
5.2 実施例1:図1に図示される本発明のリザーバーパッチと接着層に含まれるアルツハイマー病用製剤ドネペジルTDS1の調製
5.2.1 パッチ1枚当たり18Mgのドネペジル、アミン耐性シリコン医薬用接着剤を含む20cmのドネペジルTDS1パッチの調製
水性エタノールジェルリザーバーを用いた図1に示す経皮送達用ドネペジルTDS1治療システム(角の丸い長方形で、有効表面積が20cm)を調製した。遊離塩基型ドネペジルを95%エタノールに添加し、撹拌によって薬物を溶解させた。60%のエタノール/水溶媒中に31.6mg/gのドネペジルを含む混合物を得るのに十分な量になるように、精製水を上記エタノール/ドネペジル溶液に添加した。2%のヒドロキシエチルセルロースゲル化剤を撹拌しながら上記溶液にゆっくりと添加し、滑らかなゲルが得られるまで混合した(約1時間)。
【0090】

【0091】
厚さ0.05mmのアミン耐性シリコン医薬用接着剤(BIO PSA 7-4301、Dow Corning(ミッドランド、ミシガン州)から購入)からなる接触接着層を溶液流延によりフルオロカーボン処理済みポリエステルフィルム上にコーティングした。厚さ0.05mmのEVA含有速度調節膜(9%EVA)を露出した接着剤にプレッシャーラミネートした。ヒートシールマシン上で、標準的な3M裏張りフィルム(ポリエチレン、ポリエステル及びEVAの多層構造)と放出ライナー/接着/速度調節膜の間に30mg/cmのゲル充填量で上記で調製した水性ゲルリザーバーを封入した。
【0092】
20cmのシールした本発明の経皮送達システムをダイスカットし、エタノールのロスを回避するため、直ちに封入した。速度調節膜と接着層に含まれる薬物とエタノールを平衡濃度にさせるため、封入したシステムを2週間以上平衡化させた。
【0093】
5.2.2 パッチ1枚当たり18mgのドネペジル、ポリイソブチレン/ミネラルオイルの接触接着剤を含む20cmのドネペジルTDS2パッチの調製
水性エタノールジェルリザーバーを用いた図1に示す経皮送達用ドネペジルTDS2治療システム(角の丸い長方形で、有効表面積が20cm)を調製した。遊離塩基型ドネペジルを95%エタノールに添加し、撹拌によって薬物を溶解させた。60%のエタノール/水溶媒中に31.6mg/gのドネペジルを含む混合物を得るのに十分な量になるように精製水を上記エタノール/ドネペジル溶液に添加した。2%のヒドロキシエチルセルロースゲル化剤を撹拌しながら上記溶液にゆっくりと添加し、滑らかなゲルが得られるまで混合した(約1時間)。
【0094】

【0095】
接着剤のポリイソブチレン/ミネラルオイルは、低分子量ポリイソブチレン(平均分子量35,000)と高分子量ポリイソブチレン(平均分子量1,200,000)を、それぞれ、1.25:1.0の比率で撹拌容器に添加することによって調製した。この容器に、上記のポリイソブチレン混合物に対して約0.8ないし1部の比率で軽ミネラルオイルを添加した。十分量のヘプタンをこの容器に添加して、上記混合物を溶解させた。このポリイソブチレン接着混合物を溶液流延によりフルオロカーボン処理済みポリエステルフィルム上に0.05mmの厚さでコーティングした。
【0096】
厚さ0.05mmのEVA含有速度調節膜(9%EVA)を露出した接着剤にプレッシャーラミネートした。ヒートシールマシン上で、標準的な3M裏張りフィルム(ポリエチレン、ポリエステル及びEVAの多層構造)と放出ライナー/接着/速度調節膜の間に30mg/cmのゲル充填量で上記で調製した水性ゲルリザーバーを封入した。薬物充填量は、1cm当たりに0.9mgのドネペジルであった。
【0097】
20cmのシールした本発明の経皮送達システムをダイスカットし、エタノールのロスを回避するため、直ちに封入した。速度調節膜と接着層に含まれる薬物とエタノールを平衡濃度にさせるため、封入したシステムを2週間以上平衡化させた。
【0098】
5.2.3 ドネペジルTDS1及びドネペジルTDS2の定量的解析
ドネペジルTDS1パッチ及びドネペジルTDS2パッチに含まれるドネペジル含有量を以下のように測定した。各パッチを半分に切断して保護ライナーを取り外し、切断したパッチを60mlの透明なガラスジャーに入れた。次いで、40mlのメタノールを添加し、ジャーのキャップをきつく閉め、リストアクションシェーカーに一晩取り付けて、パッチからドネペジルを完全に抽出した。メタノール抽出物に含まれるドネペジルの濃度は、HPLCで測定した。
【0099】
ドネペジルTDS1及びドネペジルTDS2に含まれるドネペジルの定量は、上記と同様に逆相高速液体クロマトグラフィーで行った。
【0100】
5.2.4 ヒトの死体の皮膚における透過速度のドネペジルTDS1対ドネペジルTDS2の比較
両経皮送達用薬品が1日ないし7日間の期間に渡って所定の透過速度で送達されることを実証するため、上記で調製したドネペジルTDS1及びドネペジルTDS2についてin vitroでの皮膚透過を行った。
【0101】
この透過試験には、拡散面積が1.767cmの6個の改良型Franz拡散セル(FDC-400、Crown Glass Company(サマービル、ニュージャージー州))を用いた系を使用した。Franz拡散セルのレセプター相の体積は12mlであった。レセプター温度は、ウォータージャケットで37℃で維持した。リン酸緩衝食塩水(PBSバッファー)(pH7.4)をレセプター媒体として用いた。375μMで皮膚採取したヒトの死体の皮膚(New York Firefighters Skin Bank、ニューヨーク、ニューヨーク州)を通常の生理食塩水で15分間かけて水和させた。皮膚サンプルをレセプターコンパートメント上にマウントした。ドネペジルTDS1又はドネペジルTDS2を皮膚の角質層側の上に置いた。次いで、パッチ上にドナーキャップを置き、レセプターコンパートメントとクランプ固定した(真皮側がレセプター媒体と接触)。
【0102】
図3に示すように最長で168時間までの時間にサンプルを定期的に取り出し、HPLCでドネペジル濃度を分析した。ドネペジルの透過速度を時間に対してプロットした。図3には、ドネペジルTDS1及びドネペジルTDS2について、ドネペジル透過速度対時間の関係が図示されている。ドネペジルTDS1の平均皮膚透過速度は、1時間当たり3.20μg/cmであり、ドネペジルTDS2の平均皮膚透過速度は、1時間当たり6.85μg/cmである。
【0103】
5.2.5 in vitro放出のドネペジルTDS1対ドネペジルTDS2の比較
ドネペジルTDS1とドネペジルTDS2が、所望の速度で3日ないし7日間に渡って薬物を放出することを確認するため、米国薬局方28の「Apparatus 5-paddle over disk method」に記載される方法で、in vitro放出を行った。本試験ではVanderkemp 600の6本のスピンドル溶解ユニット(Vanderkemp 600 six spindles dissolution unit)を用いた。リン酸ナトリウムバッファー(0.01M)(pH5.8)を溶出溶媒として用い、32℃に維持した。経皮送達用パッチを、ステンレス製のスクリーンサポート上に取り付け、放出表面が上を向き、容器の底においてシステムが可能な限り平らになるようにした。
【0104】
図4に示すように最長で168時間までの時間にサンプルを定期的に取り出し、HPLCでドネペジル濃度を分析した。ドネペジルの透過速度を時間に対してプロットした。図4には、ドネペジルTDS1及びドネペジルTDS2について、ドネペジル透過速度対時間の関係が図示されている。ドネペジルTDS1の平均放出速度は、1時間当たり47.6μg/cmであり、ドネペジルTDS2の平均放出速度は、1時間当たり43.5μg/cmである。
【0105】
5.3 実施例2:図2に図示する本発明の薬物含有接着型パッチの調製とテスト
ドネペジル(200mg)と酢酸エチル中にアミン耐性シリコン医薬用接着剤(BIO PSA 7-4302、Dow Corning(ミッドランド、ミシガン州))を60重量%で含む溶液16gを正確に計量して、60mlのガラスボトルに入れ、5分間ボルテックス撹拌して、傾斜ボトルローラーで混合した。接着剤中で薬物を確実に完全に混合させるため、混合は24時間行った。これにより、接着剤中に2重量/重量%の薬物が得られた。薬物の充填量は1cm当たり0.3mgのドネペジルであった。
【0106】
上記で調製した薬物充填接着混合物を、Werner-Mathis table-top coaterを用いて100μmのギャップでScotchpak 1022(3M)放出ライナーの縦方向に沿ってコーティングした。コーティングした放出ライナーを80℃のオーブンで10分間乾燥させた。乾燥させたコーティング済の放出ライナーをScotchpak 1022(3M)裏張り材料でラミネートした。最終マトリックス(薬物含有接着)パッチを、表面積が5cmのサイズの小さなパッチにダイスカットした。
【0107】
5.3.1 上記で調製した5cmの薬物含有接着パッチに含まれるドネペジル含有量とコーティング重量の測定
上記で調製したマトリックス、薬物含有接着パッチに含まれるドネペジル含有量を以下のように測定した。パッチの放出ライナーをはがした。次いで、裏張り材料が付いた薬物含有マトリックスを20mlのシンチレーションバイアル内に入れた。メタノールや酢酸エチル等の溶媒(10ml)をバイアルに添加してパッチからドネペジルを抽出した。バイアルのキャップをきつく閉め、接着マトリックスから薬物を完全に抽出するためにリストアクションシェーカーに一晩取り付けた。抽出物に含まれる薬物の濃度は、先に記載した方法によってHPLCで測定した。
【0108】
5.3.2 上記で調製した5cmの薬物含有接着パッチのヒトの死体の皮膚の透過試験
ヒトの死体の皮膚を通るドネペジルの初期の高放出速度を実証するため、上記で調製した5cmの薬物含有接着パッチについてin vitroでの皮膚透過を行った。
【0109】
この透過試験には、拡散面積が0.6263cmのValia-Chien(VC)拡散セル(VC-100、Crown Glass Company(サマービル、ニュージャージー州))を用いた。375μMで皮膚採取したヒトの死体の皮膚(New York Firefighters Skin Bank、ニューヨーク、ニューヨーク州)を通常の生理食塩水で15分間かけて水和させた。皮膚サンプルをドナーとレセプターコンパートメントの間にマウントし、パッチを皮膚の角質層側の上に置いて、レセプターコンパートメントとクランプ固定した(真皮側がレセプターメディウムと接触)。レセプター相は4mlだった。レセプター温度は、ウォータージャケットで37℃に維持した。リン酸緩衝食塩水(PBSバッファー)(pH7.4)をレセプター媒体として用いた。定期的にサンプルを取り出して、HPLCでドネペジルの濃度を解析した。24時間に渡る皮膚の透過速度は、1時間当たり10.2μg/cmであった。
【0110】
5.4 実施例3:リザーバーと接着層の両方にアルツハイマー病用製剤を含む、図1に図示される本発明のリザーバーパッチの調製
水性エタノールジェルリザーバーを用いた図1に示す経皮送達用ドネペジルTDS3治療システム(角の丸い長方形で、有効表面積が40cm)を、薬物リザーバーと接着層の両方にドネペジルを含むように調製した。
【0111】
本実施例における本発明のパッチは、薬物リザーバーと接着層の両方にドネペジルを含む。本発明のこのようなパッチでは、初期の放出速度が増加される(バースト効果)。これにより、患者の皮膚への装着から薬物が患者の血流に流入するまでの遅延時間が短縮される。これに加え、薬物リザーバー内に薬物を含むことにより、3日ないし7日間の投与期間を通じて、経口投与と同程度の一定の薬物経皮投与が可能になる。
【0112】
遊離塩基型ドネペジルを95%エタノールに添加し、撹拌して薬物を溶解させた。60%のエタノール/水溶媒中に31.6mg/gのドネペジルを含む混合物を得るのに十分な量の精製水を上記エタノール/ドネペジル溶液に添加した。2%のヒドロキシエチルセルロースゲル化剤を撹拌しながら上記溶液にゆっくりと添加し、滑らかなゲルが得られるまで混合した(約1時間)。
【0113】

【0114】
ドネペジル(200mg)と酢酸エチル中にアミン耐性シリコン医薬用接着剤(BIO PSA 7-4302、Dow Corning(ミッドランド、ミシガン州))を60重量%で含む溶液16gを正確に計量して、60mlのガラスボトルに入れ、5分間ボルテックス撹拌して、傾斜ボトルローラーで混合した。接着剤中で薬物を確実に完全に混合させるため、混合は24時間行った。これにより、接着剤中に2重量/重量%の薬物が得られた。
【0115】
上記の薬物充填接着混合物を、Werner-Mathis table-top coaterを用いて100μmのギャップでScotchpak 1022(3M)放出ライナーの縦方向に沿ってコーティングした。コーティングした放出ライナーを80℃のオーブンで10分間乾燥させた。
【0116】
厚さ0.05mmのEVA含有速度調節膜(9%EVA)を露出した薬物含有接着層にプレッシャーラミネートした。ヒートシールマシン上で、標準的な3M裏張りフィルム(ポリエチレン、ポリエステル及びEVAの多層構造)と放出ライナー/接着/度調節膜の間に、上記のように調製可能な水性ゲルリザーバーを封入した。
【0117】
上記の経皮送達システムを40cmにダイスカットし、エタノールのロスを回避するため、直ちに封入した。速度調節膜に含まれる薬物とエタノールを平衡濃度に達せさせるため、封入したシステムを2週間以上平衡化させた。このように調製したドネペジルTDS3では、ゲルリザーバーの薬物充填量は、0.9mg/cmであり、薬物含有接着層の薬物充填量は、0.3mg/cmであったので、薬物の層充填量は、1cm当たり1.2mgのドネペジルであった。
【0118】
このように調製した40cmのドネペジルTDS3では、最初の2時間の放出速度が1時間当たり約25μg/cmないし約100μg/cmである。7日間に渡ってのドネペジルTDS3の平均放出速度は、1時間当たり約5μg/cmないし約20μg/cmである。
【0119】
5.5 実施例4:患者のアルツハイマー病の治療
70歳で体重160ポンドの男性が、中程度のアルツハイマー病と診断されている。患者は、アルツハイマー病を除けば良好な健康状態にある。上体の体毛を剃って石鹸と水で洗う。実施例3で調製した40cmのドネペジルTDS3経皮送達システムの放出ライナーを取り除き、パッチを介護者によって上体に取り付ける。4日毎に新しいパッチを上述したように取付ける。治療担当医が患者を定期的にモニターする。
【0120】
本発明は、本発明の2、3の局面を例示することを目的とした実施例に開示される特定の態様によって限定されるべきではない。機能的に同等ないずれの態様も本発明の範囲に含まれる。実際に、本明細書に提示され、記載される内容の他にも本発明に種々の修飾を施すことが可能なことは、当業者に自明なことであり、これらの修飾は、添付する請求項の範囲に含まれることが意図される。本明細書で引用した文献は、参照によりその全内容が本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルツハイマー病用製剤、ゲル化剤及び透過促進剤を含む薬物リザーバーと、該薬物リザーバーと接触する裏張りフィルムとを具えるパッチであって、前記アルツハイマー病用製剤が、経皮送達に十分な量で存在するパッチ。
【請求項2】
前記薬物リザーバーと接触する速度調節膜を更に含む、請求項1記載のパッチ。
【請求項3】
前記ゲル化剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項1記載のパッチ。
【請求項4】
前記透過促進剤が、エタノール、イソプロピルアルコール、ラウリルアルコール、ポリエチレングリコール又はプロピレングリコールを含む、請求項1記載のパッチ。
【請求項5】
前記アルツハイマー病用製剤が、遊離塩基型のドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、タクリン又はメマンチンを含む、請求項1記載のパッチ。
【請求項6】
前記速度調節膜と接触する接着剤を更に含む、請求項2記載のパッチであって、前記接着剤が、マトリックス型薬物担体を含み、前記薬物リザーバーと前記接着剤の両方がアルツハイマー病用製剤を含む、パッチ。
【請求項7】
前記透過促進剤が95%エタノールを含み、前記ゲル化剤がヒドロキシエチルセルロースを含み、前記接着剤がポリイソブチレン系接着剤、シリコン系接着剤又はポリアクリル酸系接着剤を含み、前記アルツハイマー病用製剤が遊離塩基型のドネペジルを含む、請求項6記載のパッチ。
【請求項8】
アルツハイマー病用製剤、ゲル化剤及び透過促進剤を含む薬物リザーバーを含むパッチであって、裏張りフィルムが前記薬物リザーバーと接触し、前記アルツハイマー病用製剤が経皮送達に十分な量で前記薬物リザーバー中に存在し、該パッチが前記薬物リザーバーと接触するマトリックス型接着剤を更に含み、該接着剤もアルツハイマー病用製剤を含む、パッチ。
【請求項9】
前記アルツハイマー病用製剤がドネペジルを含み、前記ゲル化剤がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、前記透過促進剤が95%エタノールを含み、前記接着剤がポリイソブチレン接着剤、シリコン接着剤又はポリアクリル酸接着剤を含む、請求項8記載のパッチ。
【請求項10】
裏張りフィルムとマトリックス型接着剤とを含むパッチであって、前記接着剤が遊離塩基型のドネペジルを経皮送達に十分な量で含むパッチ。
【請求項11】
前記接着剤が、ポリイソブチレン接着剤、シリコン接着剤又はポリアクリル酸接着剤を含む、請求項10記載のパッチ。
【請求項12】
アルツハイマー病用製剤、ゲル化剤及び透過促進剤を含む薬物リザーバーと該薬物リザーバーと接触する裏張りフィルムとを含むパッチであって、前記アルツハイマー病用製剤が経皮送達に十分な量で存在するパッチをアルツハイマー病患者の無傷に皮膚に貼ることにより、アルツハイマー病治療を必要とする患者に治療上有効量のアルツハイマー病用製剤を経皮投与することを含む、アルツハイマー病の治療方法。
【請求項13】
前記パッチが、前記薬物リザーバーと接触する速度調節膜と、該速度調節膜と接する接着剤を更に含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記ゲル化剤がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記透過促進剤が、エタノール、イソプロピルアルコール、ラウリルアルコール、ポリエチレングリコール又はプロピレングリコールを含む、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記アルツハイマー病用製剤が、遊離塩基型のドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、タクリン又はメマンチンを含む、請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記薬物リザーバーと前記接着剤が前記アルツハイマー病用製剤を含み、前記透過促進剤が95%エタノールを含み、前記ゲル化剤がヒドロキシエチルセルロースを含み、前記接着剤がポリイソブチレン系接着剤、シリコン系接着剤又はポリアクリル酸系接着剤を含み、前記アルツハイマー病用製剤が遊離塩基型のドネペジルを含む、請求項13記載の方法。
【請求項18】
アルツハイマー病用製剤、ゲル化剤及び透過促進剤を含む薬物リザーバーと該薬物リザーバーと接触する裏張りフィルムとを具えるパッチであって、前記アルツハイマー病用製剤が経皮送達に十分な量で存在し、アルツハイマー病治療用の医薬としての使用に適したパッチ。
【請求項19】
前記薬物リザーバーと接触する速度調節膜を更に含む、請求項18記載のパッチの使用。
【請求項20】
前記ゲル化剤がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項18記載のパッチの使用。
【請求項21】
前記透過促進剤が、エタノール、イソプロピルアルコール、ラウリルアルコール、ポリエチレングリコール又はプロピレングリコールを含む、請求項18記載のパッチの使用。
【請求項22】
前記アルツハイマー病用製剤が、遊離塩基型のドネペジルを含む、請求項21記載の使用。
【請求項23】
前記速度調節膜と接触する接着剤を更に含み、そして前記薬物リザーバーと前記接着剤の両方がアルツハイマー病用製剤を含む、請求項19記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−500992(P2010−500992A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524620(P2009−524620)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/017599
【国際公開番号】WO2008/021113
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(509041359)コア テク ソリューションズ,インク. (1)
【Fターム(参考)】