説明

アルデヒドのカルベン触媒極性転換反応を介したα−ヒドロキシケトンの製造

本発明は、一般式Iのα−ヒドロキシケトンの製造に関する。殊に本発明は、新規のイミダゾリニウムカルボキシレート付加物、ならびに一般式I[式中、RおよびR'は、同じかまたは異なっており、かつHまたは直鎖あるいは分岐した、かつ場合によって置換されたC〜C12−アルキル基を意味し、かつR''=HCSCHCH、t−ブチル、n−ブチル、sec−ブチル、n−プロピル、i−プロピル、場合によってヘテロ原子で置換されたC〜C18−アリール、ヘテロアリール、C〜C18−アリールアルキル、殊にフェニルメチル、その際、フェニルは他方でヘテロ原子置換されていてよい、またはヘテロアルキルである]のヒドロキシケトンを製造するためのアルデヒドのアシロイン反応における触媒量のイミダゾリニウムおよびイミダゾリニウムカルボキシレート付加物の新規の使用法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式Iのα−ヒドロキシケトンの製造および、R'=R=Hである場合、α−ケト酸を得るためのその引き続く酸化に関する。
【0002】
殊に本発明は、新規のイミダゾリニウムカルボキシレート付加物、ならびに一般式I
【化1】

[式中、RおよびR'は、同じかまたは異なっており、かつHまたは直鎖あるいは分岐した、かつ場合によって置換されたC〜C12−アルキル基を意味し、かつR''=HCSCHCH、t−ブチル、n−ブチル、sec−ブチル、n−プロピル、i−プロピル、場合によってヘテロ原子で置換されたC〜C18−アリール、ヘテロアリール、C〜C18−アリールアルキル、殊にフェニルメチル、その際、フェニルは他方でヘテロ原子置換されていてよい、またはヘテロアルキルである]のヒドロキシケトンを製造するためのアシロイン反応(アルデヒドの極性転換反応(Umpolungsreaktion))における触媒量のイミダゾリニウム−およびイミダゾリニウムカルボキシレート付加物の新規の使用法に関する。
【0003】
α−ヒドロキシケトンは、その官能性に基づき、多数の化学薬品のための重要な合成要素であり、例えば:
・薬剤および農産物保護剤のための前駆体である複素環、例えばイミダゾール(EP−A252162)およびイミダゾロン(Journal of the Chemical Society Perkin II 1981, 310)の製造用に、
・その還元力に基づき、繊維を染色するための染色法における還元剤として(EP−A364752)
・食品中の香気物質、例えばアセトインまたはそれから生じるジアセチルとして用いられ、
・またそれに加えて、天然物における構造モチーフおよび頻繁に見られる構成成分として重要であり、このことは将来の薬剤のために非常に意義を持ちうる(Journal of the American Chemical Society, 2004, 3070)。
【0004】
α−ケト酸は、R'=R=Hである一般式Iのα−ヒドロキシケトンから、アルコール官能基の適した酸化によって製造されうる。なかでもα−ケト酸は、医薬品および前駆体として用いられる。
【0005】
それに加えて、重要な生成物のメチオニンまたはメチオニンヒドロキシ類似体(MHA)のケト酸前駆体は、R'=R=HおよびR''=CHS(CHである一般式Iのα−ヒドロキシケトンの適した酸化によって製造できるものとされる。その際、決定的な利点とされるのは、これまで使用されてきた高毒性でかつ危険性のシアン化水素酸(HCN)を、はるかに危険性の低いホルムアルデヒド(HCHO)で代用できる点である。
【0006】
一般式I
【化2】

のα−ヒドロキシケトンは種々の方法で、例えば以下の反応によって製造できることが当業者に公知である:
ベンゾイン反応:これは、触媒としてのシアン化物を用いたアルデヒドの極性転換によりα−ヒドロキシケトンを得るための2つのアルデヒドの付加と理解される。芳香環による安定化に基づき、シアン化物との反応は芳香族アルデヒドに制限されている(Organische Chemie[Organic Chemistry], K. Peter C. Vollhardt VCH, p.1025, なおそれにCastells他, Tetrahedron letters 1985, 26, 5457)。さらにより久しく公知であるのは、チアゾリウムカルベン触媒を用いたベンゾイン縮合である(Breslow, Journal of the American Chemical Society 1959, 3719)。
ステッター反応:該反応は、カルベンを用いて触媒されうる、1,4−求電子体による極性転換されたアルデヒドの付加と理解される。
【0007】
カルベン触媒として、種々のN−複素環式カルベンが公知であり、かつ多岐にわたって、例えば遷移金属のための配位子として、アシル化、エステル交換反応または開環重合のための求核性触媒として使用可能である。アルデヒドの極性転換のためのカルベン触媒類として、自然界から公知のチアゾリウムカルベン、イミダゾリウムカルベンおよびトリアゾリウムカルベンが使用される。
【0008】
通常、活性カルベン触媒は、水と空気に対して影響を受けやすい。該触媒は、相応するイミダゾリウム塩、チアゾリウム塩またはトリアゾリウム塩から、塩基による脱プロトン化によって作製される。塩基として、なかでもTHF中の水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはカリウムtert−ブトキシドが用いられる(Nair他, Angewandte Chemie, 2004, Vol. 116, 5240 ff)。
【0009】
しかしまた、触媒量の活性触媒をin situで二相系の使用によって作製できることも公知である(Waymouth他, Journal of the American Chemical Society, 2003, 3046)。
【0010】
カルベン−カルボキシレート/CO付加物:第1表に挙げられたイミダゾリウムカルベンもしくはイミダゾリニウムカルベン1〜7のCO付加物は公知である。
【0011】
【表1】

【0012】
化合物5および6は、オリゴマーおよびポリマーのイソシアネート、殊にウレトジオンおよびイソシアヌレートの製造のために用いた(WO2005−113626)。イミダゾリウム構造およびイミダゾリニウム構造のさらに別のカルボキシレート付加物もしくは可能な触媒的使用はこれまで公知ではなかった。
【0013】
アルデヒドからのアシロイン形成に関する従来技術における欠点は次に示される:
・アシロイン形成反応に際しての、例えば触媒活性のイミダゾリウムカルベンを分離するための塩基の使用は、副反応、例えばアルデヒド間のアルドール縮合の原因となり、かつ
・所望されたα−ヒドロキシケトン(アシロイン)の収率の低下につながる。
・使用された塩基は、引き続き生成物から分離されなければならず、このことは付加的な煩雑さを意味し、かつ−例えば医薬品のために必要とされるような−高い純度を得る場合に困難となりうる。
・その上なお、種々のアルデヒドを互いに反応させる交差アルデヒド−アルデヒド付加のための一般的な合成パターンは今日まで公知ではない(Angewandte Chemie, 2004, 1348を参照のこと)。
・イミダゾリウムカルベンカルボキシレートIIもしくはイミダゾリニウムカルボキシレートIIIを、実際に活性のイミダゾリウムカルベン触媒もしくはイミダゾリニウムカルベン触媒の供給源として使用するために、まず脱カルボキシル化を要する。
・そのような例えば不飽和のイミダゾリウムカルベンカルボキシレートの脱カルボキシル化はH.A.Duong他(上記を参照のこと)に従って行われる。しかしながら、それは187℃からの温度で初めて行われるため、触媒活性のカルベンの遊離はそのような温度で初めて見込むことができた。この結果は、当業者がイミダゾリウムカルベンカルボキシレートを触媒としてアシロイン形成に際して真剣に考慮に入れることを、アシロイン形成反応におけるこのように高い温度での顕著な副反応に基づき思いとどまらせていたと考えられる。
【0014】
この発明の課題は、塩基のin situでの使用を要さないアシロイン反応によるα−ヒドロキシケトンの製造法のための適した触媒ならびに相応する方法を提供することであった。殊に課題は、アシロイン反応を簡単な方法でかつ温和な条件下で可能にし、かつ殊に従来技術の欠点を回避する、安定で良好に取り扱い可能なカルベン触媒もしくは活性カルベン触媒を生成する化合物を見つけ出すことであった。本発明のさらに別の一課題は、従来技術の上記欠点を回避する、殊に医薬のためのまたはメチオニンのためのもしくはメチオニンヒドロキシ類似体(MHA)のための合成における前駆体としてのα−ケトアルコール、α−ケトアルデヒドまたはα−ケト酸の合成のための改善された方法を見つけることであった。
【0015】
発明の詳細な説明
一般式IIおよびIIIの化合物:
【化3】

[式中、RおよびRは、同じかまたは異なっており、かつアリール、有利にはC〜C10−アリール、ヘテロアリール、分岐したまたは非分岐のアルキル、有利にはC〜C10−アルキル、それは場合によってC〜C−アルキルでまたはヘテロアルキルでモノ置換または多置換されている、C〜C−シクロアルキル、またはC〜C−アルキルでモノ置換または多置換されたアリール、有利にはC〜C−アルキルでモノ置換または多置換されたC〜C10−アリールを意味し、かつRおよびRは、同じかまたは異なっており、かつ水素、場合によって分岐したC〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、アリール、有利にはC〜C10−アリール、またはヘテロアリールを意味する]を、アルデヒドのアシロイン付加によってα−ヒドロキシケトンを製造するための触媒として使用することによって、従来技術の欠点を克服することに成功する。
【0016】
ヘテロアリール基の内、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾリル基、ピロリル基およびフリル基が有利である。
【0017】
殊に、塩基の存在をアシロイン反応のあいだ完全に回避することに成功する。
【0018】
第4表中の実施例および比較例が示すように、触媒としてのイミダゾリニウムカルベンカルボキシレート付加物の使用は、活性カルベン触媒が塩基作用によって初めて遊離されるイミダゾリニウム塩と比較して、例外なくアシロイン生成物のより高い収率をもたらす。
【0019】
触媒としてのイミダゾリウム−およびイミダゾリニウムカルボキシレートの本発明による使用により明らかに、COの脱離によってアシロイン反応のあいだ常に十分な量の実際に触媒活性のカルベン種が存在していることになる。これは、式IIまたはIIIの触媒の使用によるのみの非常に顕著な方法において成功する。その際、メチルメルカプトプロピオンアルデヒド(MMP)によるアシロイン縮合に際して、環(イミダゾリニウム構造III)中の2つの隣接したC原子間の飽和C−C結合の存在がとりわけ重要であるように見える。それというのも−本発明者が発見したように−II型の相応する不飽和イミダゾリウム化合物では、殊に実施例の31番および32番の比較が示すように(第3表を参照のこと)、匹敵する良好な結果が得られなかったからである。
【0020】
H.A.Duongに従って187℃から初めて行われる不飽和イミダゾリウムカルベンカルボキシレートの脱カルボキシル化(上記を参照のこと)とは対照的に、ここでは意想外にも、式IIおよびIIIのイミダゾリウム−およびイミダゾリニウムカルベンカルボキシレートがアルデヒドの存在下で、すでに0℃〜約100℃の明らかにより低い温度で十分に脱カルボキシル化し、かつ活性カルベン触媒を生成することが見つかった。
【0021】
それゆえ本発明によるカルベンカルボキシレートは、アシロインを得るためのアルデヒドの反応において、すでに−20℃〜100℃の温度で使用することができる。好ましくは、しかしながらこの反応は、15℃〜約80℃の温度で、とりわけ有利には10〜60℃の温度で、しかしながら最も簡単には室温で実施される。
【0022】
有利には、反応は二酸化炭素0.1〜20barの分圧下で行われる。
【0023】
それゆえ本発明の対象は、式IIIの化合物からの選択である式IVの化合物でもある:
【化4】

式中、RおよびRは、同じかまたは異なっており、C〜C10−アリール、C〜C−アルキルでモノ置換または多置換されたC〜C10−アリール、有利にはしかしメシチル、場合によってC〜C−アルキルでモノ置換または多置換されたC〜C10−アルキル、またはC〜C−シクロアルキルを意味し、かつRおよびRは、同じかまたは異なっており、かつ水素または場合によって分岐したC〜C−アルキル、有利にはメチルを意味するが、ただしRおよびRは、同じく水素であり、RおよびRは、同時にフェニルであってはならない。
【0024】
とりわけ有利な化合物は、化合物HIMes.COであり、その際、R=R=メシチルおよびR=R=水素である。
【0025】
さらに本発明の対象は、上記のアシロイン付加によってα−ヒドロキシケトンを製造するための触媒としての一般式IVの化合物の使用である。
【0026】
本発明の対象はまた、一般式II、IIIまたはIVの本発明による触媒(前で定義したように)の存在下における、一般式RR'C=Oのカルボニル化合物と一般式HR''C=Oのカルボニル化合物との反応による一般式I
【化5】

[式中、RおよびR'は、同じかまたは異なっており、かつHまたは直鎖あるいは分岐した、かつ場合によって置換されたC〜C12−アルキル基を意味し、かつR''=HCSCHCH、t−ブチル、n−ブチル、sec−ブチル、n−プロピル、i−プロピル、場合によってヘテロ原子で置換されたC〜C18−アリール、ヘテロアリール、C〜C18−アリールアルキル、殊にフェニルメチル、その際、フェニルは他方でヘテロ原子置換されていてよい、またはヘテロアルキルである]のα−ヒドロキシケトンの製造法でもある。
【0027】
ヘテロアルキルは、殊にこの文脈において、計1〜12個のC原子ならびにそのつど計1〜12個のC原子を有するエーテル基またはチオエーテル基を有する第一級アミン基、第二級アミン基または第三級アミン基と理解されるべきであり、それらはC原子を介して結合されている。
【0028】
その際、有利なのは
R=R'=Hおよび
R''=CHSCHCH、すなわちCH=Oのアルデヒドおよびメチルメルカプトプロピオンアルデヒドを使用する方法である。これらの方法は、全てをひっくるめて家畜栄養において使用されるメチオニンもしくはケトメチオニンのためのまたはそれにメチオニンヒドロキシ類似体(MHA)のための前駆体、例えば化合物Vの製造に顕著に適している。
【0029】
その際に必要とされる鍵反応は、直接使用することのできる、または簡単な還元または還元アミノ化によってMHAもしくはメチオニンに変換することのできるケト酸(V)を得るための式Iの相応するアシロイン化合物の選択的酸化である:
【化6】

【0030】
同様に有利なのは、末端アルデヒド基およびα−ヒドロキシル官能基を有する化合物(VII)が発生するように、
R=H、
R'=CHSCHCHおよび
R''=Hのアルデヒドを使用する方法である。
【0031】
化合物VIまたはVIIが発生するかどうかは、基本的に反応条件の適した選択によって影響を及ぼされうる。しかしながら、VIの形成が一般に有利には行われるとされる。
【0032】
有利なのはまた、
R=H
R'=CHまたはCおよび
R''=CHSCHCHのアルデヒドを用いる方法である。
【0033】
前記の本発明による方法の場合、触媒として使用されるイミダゾリウム−イミダゾリニウムカルベン−化合物(II)および(III)は、場合によって過少量で使用されるそのアルデヒドに対して、好ましくは0.1〜5モル%の濃度で使用される。
【0034】
本発明により適したアシロイン形成反応のための溶剤は、C〜C−炭化水素、とりわけ有利にはヘプタン、芳香族炭化水素、有利にはトルエン、ベンゼンもしくはキシレン、または線状および環状のエーテル、有利にはTHF、ジエチルエーテルおよびジオキサンである。
【0035】
同様に本発明の対象は、本発明により製造可能な式VI〜VIII
【化7】

の化合物である。
【0036】
これらの化合物は、殊に飼料産業におけるメチオニンまたはメチオニン代替物質、例えばMHAを製造するための有益な前駆体生成物である。
【0037】
同様に本発明の対象は、
一般式IX、XまたはXI
【化8】

[式中、X=Cl、Br、I、pCHSO、BF、PF、CHSO]の化合物を塩基の存在下でCOと反応させることを特徴とする、一般式II、IIIまたはIV
【化9】

の触媒の製造法である。
【0038】
塩基として、好ましくは、その対応する酸がpKa>8を有する化合物が使用される。その際、好ましくは、アルカリ金属カルボン酸塩およびアルカリ土類金属カルボン酸塩、とりわけ有利には酢酸ナトリウム、アルカリ金属アルコラートおよびアルカリ土類金属アルコラート、とりわけ有利にはカリウムtert−ブトキシド、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ土類金属炭酸塩または第一級アミン、第二級アミン、または第三級アミンならびに二環式アミン、好ましくは1,8−ジアゾビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)が使用される。
【0039】
反応は、一般に−20℃〜100℃の温度で実施される。好ましくは、しかしながらこの反応は、15℃〜約80℃の温度で、とりわけ有利には10〜60℃の温度で、しかしながら最も簡単には室温で実施される。
【0040】
その際、有利な溶剤はTHF、ジエチルエーテルまたはトルエンである。
【0041】
その際、本発明によるイミダゾリニウムカルベンカルボキシレートの単離および精製は、好ましくはアルコールの結晶化によって行うことができる。
【0042】
本発明の重要な利点は次に示される:
・アシロイン形成のあいだ塩基の使用をなくすことによって、発生する副生成物はより少なくなる。不所望のアルドール縮合が実際、完全に回避される。
・上述の塩基のような付加的な助剤を使用する必要がなく、かつ反応後のそれらの分離が不要である。
・慣例の方法と比較してアシロイン生成物のより高い純度が達成される。
・本発明による方法は、非常に好適な方法条件、例えば低い温度および僅かな触媒使用量によって際立つ。
・本発明による方法によって、飼料添加剤の産業において重要ないくつかの新規の化合物が入手される。これらは経済的にかつ良好な収率で製造することができる。
【0043】
実施例および比較例*
実施例1〜44に関する一般的な試験の記載:
パラホルムアルデヒドおよび触媒を不活性のシュレンクフラスコ内に量り入れ、かつ溶剤(絶対テトラヒドロフラン、THF)を添加した。引き続き、出発材料(アルデヒド)、GC分析用の標準物質(トルエン、0.1当量、出発材料に対して)および場合によって塩基(カルベン触媒前駆体としてイミダゾリニウム塩が使用される場合=比較例)を、セプタムを通して添加した。反応混合物を、磁気攪拌機によって約30分攪拌した。反応を、室温(20〜22℃)にて第2表〜第4表の中でそれぞれ明記された反応時間で実施した。反応の終了後(GC−FIDによる転化のモニタリング)、生成物を溶媒の蒸留除去後にカラムクロマトグラフィーによって精製した。下記の全ての生成物構造を、GC−MSおよびNMRデータによって確認した。転化率(もしくは収率)の測定は、出発物質と、あらかじめ単離した生成物とを別個に校正することによって行った。転化率と収率との間に差違が生じる原因の大部分は、副生成物としての二量化、三量化したおよび重合した化合物によるものとされうる。
【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
第3表、第4表に関する説明
【化10】

【0048】
選択した生成物のNMRデータおよびMSデータ:
【化11】

【0049】
1−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン−2−オン

【0050】
【化12】

【0051】
1−ヒドロキシヘキサン−2−オン

【0052】
【化13】

【0053】
2−ヒドロキシ−フェニルエタノン(2−ヒドロキシ−アセトフェノン)

【0054】
【化14】

【0055】
1−ヒドロキシ−3−フェニルプロパン−2−オン

【0056】
【化15】

【0057】
1−ヒドロキシノナン−2−オン

【0058】
【化16】

【0059】
1−シクロヘキシル−2−ヒドロキシエタノン

【0060】
【化17】

【0061】
2−ヒドロキシ−1−(5−メチルフラン−2−イル)エタノン

【0062】
新規の触媒のNMRデータ(HIMes.CO
【化18】

【0063】
1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−3−イウム−2−カルボキシレート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒドのアシロイン付加によってα−ヒドロキシケトンを製造するための触媒として、
一般式IIまたはIII:
【化1】

[式中、RおよびRは、同じかまたは異なっており、かつC〜C10−アリール、ヘテロアリール、分岐したまたは非分岐の、場合によってC〜C−アルキルでまたはヘテロアルキルでモノ置換または多置換されたC〜C10−アルキル、C〜C−シクロアルキル、またはC〜C−アルキルでモノ置換または多置換されたC〜C10−アリールを意味し、かつRおよびRは、同じかまたは異なっており、かつ水素、場合によって分岐したC〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリールまたはヘテロアリールを意味する]の化合物の使用。
【請求項2】
式IV
【化2】

[式中、RおよびRは、同じかまたは異なっており、C〜C10−アリール、C〜C−アルキルでモノ置換または多置換されたC〜C10−アリール、有利にはメシチル、場合によってC〜C−アルキルでモノ置換または多置換されたC〜C10−アルキルまたはC〜C−シクロアルキルを意味し、かつRおよびRは、同じかまたは異なっており、かつ水素または場合によって分岐したC〜C−アルキル、有利にはメチルを意味し、ただしRおよびRは、同じく水素であり、RおよびRは、同時にフェニルではない]の化合物。
【請求項3】
アルデヒドのアシロイン付加によってα−ヒドロキシケトンを製造するための触媒として、請求項2記載の化合物IVの使用。
【請求項4】
請求項1または2記載の式II、IIIまたはIVの触媒の存在における、一般式RR'C=Oのカルボニル化合物と一般式HR''C=Oのカルボニル化合物との反応による、一般式I
【化3】

[式中、RおよびR'は、同じかまたは異なっており、かつHまたは直鎖あるいは分岐鎖の、かつ場合によって置換されたC〜C12−アルキル基を意味し、かつR''=HCSCHCH、t−ブチル、n−ブチル、sec−ブチル、n−プロピル、i−プロピル、場合によってヘテロ原子置換されたC〜C18−アリール、ヘテロアリール、C〜C18−アリールアルキル、殊にフェニルメチル、その際、フェニルはヘテロ原子置換されていてよい、またはヘテロアルキルである]のα−ヒドロキシケトンの製造法。
【請求項5】
R=R'=Hおよび
R''=CHSCHCHであることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項6】
R=H、
R'=CHSCHCHおよび
R''=Hであることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項7】
R=H
R'=CHおよび
R''=CHSCHCHであることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項8】
R=H
R'=Cおよび
R''=CHSCHCHであることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項9】
触媒を、場合によって過少量で使用されるアルデヒドに対して、0.1〜5モル%の濃度で使用することを特徴とする、請求項4から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
反応を、−20℃〜100℃の温度で、好ましくは15℃〜80℃の温度で、とりわけ有利には20〜60℃の温度で実施することを特徴とする、請求項4から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
反応を、二酸化炭素0.1〜20barの分圧下で実施することを特徴とする、請求項4から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
式VI
【化4】

の化合物。
【請求項13】
式VII
【化5】

の化合物。
【請求項14】
式VIII
【化6】

の化合物。
【請求項15】
一般式IX、XまたはXI
【化7】

[式中、X=Cl、Br、I、pCHSO、BF、PF、CHSO]の相応する化合物を塩基の存在下でCOと反応させることを特徴とする、請求項1または2記載の触媒の製造法。
【請求項16】
その対応する酸がpKa>8を有する塩基を使用することを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
塩基として、アルカリ金属カルボン酸塩およびアルカリ土類金属カルボン酸塩、有利には酢酸ナトリウム、アルカリ金属アルコラートおよびアルカリ土類金属アルコラート、有利にはカリウムtert−ブトキシド、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ土類金属炭酸塩または第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンまたは二環式アミン、好ましくは1,8−ジアゾビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)を使用することを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
反応を、−20℃〜100℃の温度で、好ましくは15℃〜80℃の温度で、とりわけ有利には10〜60℃の温度で実施することを特徴とする、請求項15から17までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2010−501019(P2010−501019A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524992(P2009−524992)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057626
【国際公開番号】WO2008/019927
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】