説明

アルブミン融合クニッツドメインペプチド

【課題】血液凝固・線溶・炎症等に作用する、生体内プロテアーゼに対する阻害効果の高い、ペプチドを提供する。
【解決手段】クニッツドメインペプチドのようなセリンプロテアーゼ阻害ペプチド(その断片および変種を含むが、それらに限定されない)をアルブミンまたはその断片もしくは変種へ融合させた、溶解状態で長期貯蔵期間および/または長期または治療活性を示す、アルブミン融合タンパク質、およびその組成物、医薬組成物、処方物およびキット。さらに、該アルブミン融合タンパク質をコードする核酸分子、並びにこれらの核酸を含有したベクター、これらの核酸およびベクターで形質転換された宿主細胞、およびこれらの核酸、ベクターおよび/または宿主細胞を用いて本発明のアルブミン融合タンパク質を作製する方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、クニッツ(Kunitz)ドメインペプチドおよびアルブミン融合タンパク質の分野に関する。更に詳しくは、本発明は、疾患または障害を治療、予防または改善するための、クニッツドメインペプチドおよびアルブミン融合タンパク質に関する。
【0002】
背景技術
クニッツドメインは、中央の逆平行βシートと短いC末端ヘリックスを形成している、約51〜64残基の折り畳みドメインである(例えば、米国特許第6,087,473参照、これは参考のためそれ全体でここに組み込まれる)。この特徴的ドメインは3つのジスルフィド結合を形成する6つのシステイン残基を含んでいるため、二重ループ構造をとる。N末端領域と最初のβ鎖との間に、活性阻害結合ループが存在する。この結合ループは、最後の2β鎖間で形成されるヘアピンループへ、P2 C14残基を介してジスルフィド結合されている。様々なプロテイナーゼインヒビターから単離されたクニッツドメインが、阻害活性を有していることが示された(例えば、Petersen et al.,Eur.J.Biochem.125:310-316,1996;Wagner et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.186:1138-1145,1992;Dennis et al.,J.Biol.Chem.270:25411-25417,1995)。
【0003】
連結されたクニッツドメインも、例えば米国特許第6,087,473で記載されているように、阻害活性を有していることが示された。1以上のクニッツドメインを含んでなるプロテイナーゼインヒビターには、組織因子経路インヒビター(TFPI)、組織因子経路インヒビター2(TFPI−2)、アミロイドβ−タンパク質前駆体(AβPP)、アプロチニンおよび胎盤性ビクニンがある。TFPI、外因性経路インヒビターおよび自然抗凝固物質は、3つのタンデムに連結されたクニッツインヒビタードメインを含んでいる。アミノ末端クニッツドメインは、因子VIIa、プラスミンおよびカテプシンGを阻害し、第二のドメインは因子Xa、トリプシンおよびキモトリプシンを阻害し、第三のドメインは公知の活性を有していない(Petersen et al.,前掲)。
【0004】
セリンプロテアーゼに対するクニッツドメインペプチドの阻害活性は、以前のいくつかの研究で証明されていた。以下のサブセクションでは、クニッツドメインペプチドによるセリンプロテアーゼ、例えば血漿カリクレイン、プラスミンおよび好中球エラスターゼの阻害の研究について説明している。
【0005】
血漿カリクレインインヒビター
カリクレインは、組織および血漿の双方でみられるセリンプロテアーゼである〔例えば、Marklandの米国特許第6,333,402参照、これは参考のためそれ全体でここに組み込まれる〕。血漿カリクレインは、接触活性化(内因性経路)凝固、フィブリン溶解、血圧降下および炎症に関与する(Bhoola,K.D.,C.D.Figueroa and K.Worthy,Pharmacological Reviews(1992)44(1)1-80参照)。カリクレインのこれら効果は、3種の別々な生理学的基質の活性化から媒介される:
i)因子XII(凝固)
ii)プロウロキナーゼ/プラスミノーゲン(フィブリン溶解)、および
iii)キニノーゲン(血圧降下および炎症)
【0006】
キニノーゲンのカリクレイン開裂は、小さい高度に強力な生物活性ペプチド、キニンの産生に至る。キニンは、内皮、上皮、平滑筋、神経、腺および造血を含めた様々な細胞タイプに存在する、BK−1およびBK−2と称される細胞表面レセプターで作用する。細胞内ヘテロトリマーGタンパク質は、酸化窒素、アデニルシクラーゼ、ホスホリパーゼAおよびホスホリパーゼCを含めた第二メッセンジャー経路へキニンレセプターを結合させる。キニンの重要な生理活性の中には:(i)血管透過性の増加;(ii)血管拡張;(iii)気管支痙攣;および(iv)痛み誘導がある。そのため、キニンは生命脅威性の血管性ショックおよび菌血症(敗血症)または外傷に伴う浮腫、喘息の浮腫および気道過剰反応、組織傷害に伴う炎症および神経性双方の痛みを媒介する。不適当な血漿カリクレイン活性および得られるキニン産生の結果は、遺伝性血管性浮腫(HAE)の患者で劇的に実証される。HAEは、血漿カリクレインの主な内在性インヒビター、C1−インヒビターの遺伝的欠失に起因している。HAEの症状は、皮膚、皮下組織および胃腸管の浮腫と、腹痛および嘔吐がある。HAE患者のほぼ1/3は喉頭および上部呼吸管の浮腫のせいで、呼吸困難により死亡する。カリクレインは、タンパク質分解現象により活性化されるまで、不活性分子として循環するチモーゲン(プレカリクレイン)として分泌される〔GenebankエントリーP03952はヒト血漿プレカリクレインを示している〕。
【0007】
インビボで血漿カリクレイン(pKA)の重要なインヒビターはC1−インヒビターである(Schmaier,et al, "Contact Activation and Its Abnormalities" ,Chapter 2,Hemostasis and Thrombosis,Colman,R W,J Hirsh,V J Marder,and E W Salzman,Editors,Second Edition,1987,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,PA.,pp.27-28参照)。C1はセルピンであり、pKAと不可逆的またはほぼ不可逆的な複合体を形成する。ウシ膵臓トリプシンインヒビター(BPTI、アプロチニンまたはTrasylolTMとしても知られる)は、K=320pMで強力なpKAインヒビターであると当初は思われていたが〔Auerswald,E.A.,D.Hoerlein,G.Reinhardt,W.Schroder,and E.Schnabel,Bio.Chem.Hoppe-Seyler,(1988),369(Supplement):27-35〕、更に最近のレポート〔Berndt,et al.,Biochemistry,32:4564-70,1993〕は血漿カリクレインのKが30nM(即ち、30,000pM)であることを示している。G36S変異体は500nMを超えるKを有していた。
【0008】
Markland et al.〔米国特許第6,333,402、5,994,125、6,057,287および5,795,865;各レファレンスは参考のためそれ全体でここに組み込まれる〕は、ヒト血漿カリクレインを阻害する上で高い親和性および特異性を有したいくつかの誘導体を記載している。これらタンパク質のうち1種は、HAEを有するヒト患者で試験されている。初期試験事項は化合物が安全で有効かということであるが、効果の期間は期待よりも短かった。
【0009】
プラスミンインヒビター
プラスミンはプラスミノーゲンから誘導されるセリンプロテアーゼである。プラスミンの触媒ドメイン(または「CatDom」)は、特にアルギニン残基の後、それより少ない程度でリジンの後でペプチド結合を切断し、トリプシン、キモトリプシン、カリクレインおよび多くの他のセリンプロテアーゼと高度に相同的である:プラスミンの特異性のほとんどはフィブリンのクリングル結合に由来している(Lucas et al.,J.Biological Chem.(1983)258(7)4249-56;Varadi & Patthy,Biochemistry(1983)22:2440-2446;Varadi & Patthy,Biochemistry(1984)23:2108-2112)。活性化により、Arg561−Val562間の結合が切断され、新たな遊離アミノ末端に塩橋を形成させる。それにもかかわらず、クリングルは2つのジスルフィドによりCatDomへ付着したままである(Colman,R W,J Hirsh,V J Marder,and E W Salzman,Editors,Hemostasis and Thrombosis,Second Edition,1987,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,Pa.,Bobbins,1987,前掲)。
【0010】
フィブリン溶解に主に関与する剤は、プラスミノーゲンの活性型、プラスミンである。活性化ハーゲマン因子、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ(uPA)、組織型プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)および血漿カリクレイン(pKA)を含めた多くの物質が、プラスミノーゲンを活性化しうる。pKAは、ウロキナーゼのチモーゲン型のアクチベーター、および直接的なプラスミノーゲンアクチベーターの双方である。
【0011】
プラスミンは正常循環血で検出されないが、チモーゲンのプラスミノーゲンは約3μMで存在する。それ以外の未検出分のプラスミノーゲンは細胞外マトリックスおよび細胞表面のフィブリンおよび他成分と結合している。正常血液は、約2μMで、プラスミンの生理学的インヒビター、α−プラスミンインヒビター(α−PI)を含有している。プラスミンおよびα−PIは1:1複合体を形成する。マトリックスまたは細胞結合プラスミンは、α−PIによる阻害を比較的うけにくい。そのため、プラスミンの活性化はα−PIの中和能力を上回り、プロフィブリン溶解状態を引き起こすことがある。
【0012】
プラスミンは、一度形成されると:
i)時には早すぎて、フィブリン血餅を分解する;
ii)フィブリノーゲン(血餅の構築物質)を消化して、分解産物からもろい容易に溶解される血餅の形成と、フィブリノーゲン分解産物による血小板付着/凝集の阻害を引き起こすことで止血を害する;
iii)血小板と直接相互作用して糖タンパク質IbおよびIIb/IIIaを開裂し、高剪断血流の領域で損傷内皮への付着を妨げ、かつ血小板栓形成に必要な凝集応答を害する(Adelman et al.,Blood(1986)68(6)1280-1284);
iv)外因性凝固経路の酵素をタンパク質分解で不活化して、プロリチック状態を更に促す。Robbins(Robbins,Chapter 21 of Hemostasis and Thrombosis,Colman,R.W.,J.Hirsh,V.J.Marder,and E.W.Salzman,Editors,Second Edition,1987,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,PA)はプラスミノーゲン−プラスミン系を詳細に考察していた。この文献(即ち、Colman,R.W.,J.Hirsh,V.J.Marder,and E.W.Salzman,Editors,Hemostasis and Thrombosis,Second Edition,1987,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,PA)は参考のためここに組み込まれる。
【0013】
フィブリン分解およびフィブリノーゲン分解
過剰出血に至る不適当なフィブリン分解およびフィブリノーゲン分解は、心肺バイパスのような体外循環を要する外科処置でしばしば生じる合併症であり、血栓溶解療法および臓器移植、特に肝臓でも発生する。出血素質の高発症率で特徴付けられる他の臨床症状には、肝硬変、アミロイドーシス、急性前骨髄球性白血病および固形腫瘍がある。止血の回復には血漿および/または血漿製剤の注入を要し、免疫反応および病原体、例えば肝炎ウイルスおよびHIVへの露呈というリスクを負う。
【0014】
失血量が非常に多いと、大量注入でも解決しえないことがある。生命脅威的と判断されると、出血はε−アミノカプロン酸(Hoover et al.,Biochemistry(1993)32:10936-43参照)(EACA)、トラネキサム酸またはアプロチニン(Neuhaus et al.,Lancet(1989)2(8668)924-5)のような抗フィブリン溶解剤で処理される。EACAおよびトラネキサム酸はクリングルと結合することでプラスミンがフィブリンと結合することを妨げるだけであり、こうして血漿中に遊離プロテアーゼとしてプラスミンを残留させる。BPTIはプラスミンの直接的インヒビターであり、これら剤の中では最も有効である。血栓合併症、腎毒性およびBPTIの場合には免疫原性の可能性のために、これらの剤は用心しながら用いられ、通常「最終選択肢」として留保される(Putterman,Acta Chir Scand(1989)155(6-7)367)。全3種の抗フィブリン溶解剤は標的特異性および親和性を欠き、特徴未解明の代謝経路により組織および臓器と相互作用する。低親和性のせいで要する大用量、親和性の欠如による副作用、免疫反応および臓器/組織毒性の可能性は、出血を防止するための予防的な、または輸血療法を回避または低減するルーチン術後療法としての、これら抗フィブリン溶解剤の使用に伴い増大する。そのため、安全な抗フィブリン溶解剤の必要性がある。このような剤の本質的属性は:
i)関連標的フィブリン溶解酵素の中和;
ii)用量を最少に抑えうる、標的酵素との高親和性結合;
iii)副作用を減少させうる、標的との高親和性;および
iv)潜在的免疫原性および臓器/組織毒性を減少させうる、ヒトタンパク質との高度の類似性である。
【0015】
有効抗フィブリン溶解剤による阻害用の標的候補であるすべてのフィブリン溶解酵素は、キモトリプシン相同性セリンプロテアーゼである。
【0016】
過剰出血
過剰出血は、凝固活性の欠失、フィブリン溶解活性の上昇またはその2状態の組合せに起因する。ほとんどの出血素質において、プラスミンの活性を抑制しなければならない。失血量を減少させる上でBPTIの臨床的に有益な効果は、プラスミン(K〜0.3nM)、血漿カリクレイン(K〜100nM)または双方の酵素の阻害に起因すると考えられている。
【0017】
Gardell〔Toxicol.Pathol.(1993)21(2)190-8〕は現在使用の血栓溶解剤について考察しており、血栓溶解剤(例えば、tPA)は血管を広げるが、過剰出血は深刻な安全上の問題であると述べている。tPAおよびストレプトキナーゼは短い血漿半減期を有しているが、それらが活性化するプラスミンは長時間にわたり系中へ留まり、前記のように、系はプラスミンインヒビターを潜在的に欠いている。そのため、プラスミノーゲンの過剰な活性化は、凝固能力の危険なまでの欠如と、致傷または致死的出血に至ることがある。強力で高い特異性のプラスミンインヒビターが、このような場合には有用であろう。
【0018】
BPTIは強力なプラスミンインヒビターである。しかしながら、それは2回目の使用に皮膚試験を要するほど抗原性であることがわかった。更に、出血を抑制するために必要なBPTIの用量は相当に高く、作用のメカニズムは不明である。ある者はBPTIがプラスミンに作用すると述べているが、他の者はそれが血漿カリクレインを阻害することで作用すると述べている。Fraedrich et al.〔Thorac Cardiovasc Surg(1989)37(2)89-91〕は、心臓切開手術患者80例へBPTI約840mgの用量でほぼ半分まで失血を減らせ、平均輸血量が74%減った、と報告している。Miles Inc.は、手術で出血量の減少のために、USでTrasylolTMを最近導入した〔TrasylolTMに関するMiles製品パンフレット参照、これは参考のためここに組み込まれる〕。Lohmann and Marshal〔Refract Corneal Surg(1993)9(4)300-2〕は、プラスミンインヒビターが目の手術で出血を抑制する際に有用かもしれない、と述べている。Sheridan et al.〔Dis Colon Rectum(1989)32(6)505-8〕は、BPTIが結腸の手術で出血を抑制する際に有用かもしれない、と報告している。
【0019】
BPTIとほぼ同程度かまたはそれより強力であるが、ヒトタンパク質ドメインとほぼ同一であるプラスミンインヒビターは、類似の治療可能性を呈するが、抗原性の可能性は減る。
【0020】
血管形成:
プラスミンは血管形成に重要な酵素である。O’Reilly et al.〔Cell(1994)79:315-328〕は、プラスミンの38kDa断片(触媒ドメインを欠く)が転移の強力なインヒビターであると報告しており、プラスミンの阻害が腫瘍の転移を阻止する上で有用になりうることを示している〔Fidler & Ellis,Cell(1994)79:185-188;Ellis et al.,Ann NY Acad Sci(1992)667:13-31も参照;O’Reilly et al.、Fidler & EllisおよびEllis et al.は参考のためここに組み込まれる〕。
【0021】
好中球エラスターゼ阻害
嚢胞性線維症は、肺、胃腸および生殖系に影響を与える遺伝性の常染色体劣性障害である。世界中に80,000人の罹患者が存在し、CFの発病率は3500人に1人と見積もられている〔Cystic Fibrosis Foundation,Patient Registry 1998 Annual Data Report,Bethesda,Maryland,September 1999〕。CFの遺伝的欠失は1989年に508位で単一フェニルアラニンの欠失(ΔF508)として記載され、Cl(ひいてはNaおよび水)の再吸収を阻害する、嚢胞性線維症貫膜コンダクタンスレギュレータータンパク質(CFTR)の欠陥をもたらす〔Rommens,J.M.,et al.,”Identification of the cystic fibrosis gene:chromosome walking and jumping”,Science 245:1059,1989;Riordan,J.R.,et al.,”Identification of the cystic fibrosis gene:cloning and complementary DNA”,Science 245:1066,1989;Kerem,B.,et al.,”Identification of the cystic fibrosis gene:genetic analysis”,Science 245:1073,1989〕。ΔF508以外の変異もCFTRでみられ、CFを引き起こすことがある。その際に、粘液の枯渇が呼吸、胃腸および生殖系の多くの通路をふさいでしまう。
【0022】
CFの死亡者のうち75%以上は呼吸合併症による〔Cystic Fibrosis Foundation,Patient Registry 1998 Annual Data Report,Bethesda,Maryland,September 1999〕。膵臓、肝臓および腸の疾患が誕生前にCF個体に存在しているが、CF肺は誕生時と感染および炎症の開始時まで正常である。CF肺でCl再吸収の欠陥は、気道からナトリウムを引き出し、受動的に水が追随することで、気道分泌を枯渇させる。分泌の枯渇は、特有の微生物病原体のコロニー形成によく適した環境下に細菌を捕捉しておくことで、粘膜繊毛クリアランスを妨げることがある〔Reynolds,H.Y.,et al.,”Mucoid Pseudomonas aeruginosa:a sign of cystic fibrosis in young adults with chronic pulmonary disease”,J.A.M.A.236:2190,1976〕。それに続く肺感染および炎症は、好中球エラスターゼ(NE)を放出する好中球を引き寄せて、活性化させる。呼吸上皮表面における好中球性炎症は、好中球エラスターゼの長期的上皮付着を招く。内在性抗プロテアーゼは、CF肺で過剰のNEにより急速に圧倒される。加えて、NEはプロ炎症伝達物質の産生を刺激し、補体レセプターおよびIgGを開裂することで、更なる細菌コロニー化を妨げる宿主防御メカニズムを無能化させてしまう〔Tosi,M.F.et al.,”Neutrophil elastase cleaves C3bi on opsonized Pseudomonas as well as CR1 on neutrophils to create a functionally important opsonin receptor mismatch”,J.Clin.Invest.86:300,1990〕。こうして感染は慢性化し、大規模な炎症の進行と過剰レベルのNEが気道上皮を破壊して、気管支拡張、肺機能の進行性喪失および死へと至る。
【0023】
CF患者の1つの治療アプローチは、トブラマイシンおよびシプロフロキシンのような全身抗菌剤によるCF病原体の撲滅である。これらの特別な抗菌剤は感染を治して肺機能を改善する上で有効であると示されたが、トブラマイシンおよびシプロフロキシンに対する抗生物質耐性はCF患者で各々7.5%および9.6%と報告されている〔Cystic Fibrosis Foundation,Patient Registry 1998 Annual Data Report,Bethesda,Maryland,September 1999〕。CFに対するこれら抗菌剤の使用は患者で増しており、そのうち60%はP.aeruginosa、41%はS.aureusに感染したため、薬物耐性選択圧力は増加している。
【0024】
肺機能もCFの患者で治療標的である。痰中のDNAを加水分解することで粘液粘弾性を減少させる組換えヒトデオキシリボヌクレアーゼ、Pulmozyme(dornase alfa)は、治療の8日目以後にFEVおよびFVCを増加させることが、臨床研究で示された。この変化は6月間にわたり続き、静脈内抗生物質の使用量の減少につながる〔Fuchs,H.L.,et al.,”Effect of aerosolized recombinant human Dnase on exacerbations of respiratory symptoms and on pulmonary function in patients with cystic fibrosis”,N.Engl.J.Med.,331:637-642,1994〕。
【0025】
もう1つの治療アプローチは、エラスターゼ分解とその続発症に及ぼすNEの直接効果を消すために、プロテアーゼインヒビターを用いることである。過剰NEの中和は、細胞外肺マトリックスを防御する正常ホメオスタシスバランスを回復しうる。肺の抗プロテアーゼ活性の正常化はエラスチンを保護し、好中球応答の減少で粘液粘度を低下させ、肺機能を保護して、CFの死亡率を減少させる。加えて、補体媒介食作用の回復は免疫系に細菌病原体を除去させて、肺感染の発生、期間および重篤度の減少をもたらす。例えば、CFのラットモデルの場合、α抗トリプシン治療の7日目以後に、細菌数はプラセボ群の85±21と比較して0.2±0.4に減少した〔Cantin,A.and Woods,D,”Aerosolized Prolastin Suppresses Bacterial Proliferation in a Model of Chronic Pseudomonas aeruginosa Lung Infection”,Am.J.Respir.Crit.Care Med.160:1130-1136,1999〕。
【発明の概要】
【0026】
本発明は、クニッツドメインペプチドをアルブミンへ融合させたタンパク質に関する。これらの融合タンパク質は、ここでは「本発明のアルブミン融合タンパク質”として包括的に称される。本発明のこれら融合タンパク質は、溶解状態のとき、長期インビボ半減期および/または長期または治療活性を示す。
【0027】
本発明は、治療用アルブミン融合タンパク質、組成物、医薬組成物、処方物およびキットを包含する。本発明は、本発明のアルブミン融合タンパク質をコードする核酸分子、並びにこれらの核酸を含有したベクター、これらの核酸およびベクターで形質転換された宿主細胞、およびこれらの核酸、ベクターおよび/または宿主細胞を用いて本発明のアルブミン融合タンパク質を作製する方法も包含する。
【0028】
本発明の目的は、クニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種と、アルブミンまたはその断片もしくは変種とを含んでなるアルブミン融合タンパク質を提供することである。このようなアルブミン融合タンパク質で使用に適したクニッツドメインペプチドには、DX−890、DX−88、DX−1000およびDPI−14がある。クニッツドメインペプチド部分は、必要に応じて、リンカーによりアルブミン部分から離してもよい。本発明の別な目的は、セリンプロテアーゼを阻害するためにアルブミン融合タンパク質を含んだ組成物および方法を提供することであり、その非制限例には血漿カリクレイン、プラスミンおよび好中球エラスターゼがある。
【0029】
本発明の別の態様は、クニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種のうち少なくとも1つが、プラスミン、カリクレインまたはヒト好中球エラスターゼを阻害するような機能活性を有している、少なくとも2つのクニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種を含んでなるアルブミン融合タンパク質を提供することである。
【0030】
本発明の更に別の態様は、アルブミンが、非融合状態にあるクニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種のインビボ半減期と比較して、DX−890、DX−88、DX−1000およびDPI−14のようなクニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種のインビボ半減期を伸ばすアルブミン活性を有している、クニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種、およびアルブミンまたはその断片もしくは変種を含んでなるアルブミン融合タンパク質を提供することである。
【0031】
本発明の更に別の態様は、本発明のアルブミン融合タンパク質が生理的pHで向上した溶解性を有している、クニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種、およびアルブミンまたはその断片もしくは変種を含んでなるアルブミン融合タンパク質を提供することである。
【0032】
本発明の1つの態様は、クニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種が、アルブミンのN末端、またはアルブミンの断片もしくは変種のN末端へ融合されている、クニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種、およびアルブミンまたはその断片もしくは変種を含んでなるアルブミン融合タンパク質を提供することである。一方、本発明は、クニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種が、アルブミンのC末端、またはアルブミンの断片もしくは変種のC末端へ融合されている、クニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種、およびアルブミンまたはその断片もしくは変種を含んでなるアルブミン融合タンパク質も提供する。
【0033】
本発明は、アルブミン融合タンパク質と、製薬上許容される担体とを含んでなる組成物を提供する。本発明のもう1つの目的は、嚢胞性線維症、嚢胞性線維症関連疾患または障害、あるいはDX−890および/またはDPI−14を含むクニッツドメインペプチドにより調節しうる疾患または障害の患者を治療する方法を提供することである。その方法は、DX−890および/またはDPI−14を含むクニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種、およびアルブミンまたはその断片もしくは変種を含んでなるアルブミン融合タンパク質の有効量を投与する工程を含んでなる。
【0034】
本発明の別な目的は、遺伝性血管性浮腫、遺伝性血管性浮腫関連疾患または障害、あるいはDX−88のようなクニッツドメインペプチドにより調節しうる疾患の患者を治療する方法を提供することである。その方法は、アルブミン融合タンパク質がDX−88を含むクニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種、およびアルブミンまたはその断片もしくは変種を含んでなる、アルブミン融合タンパク質の有効量を投与する工程を含んでなる。
【0035】
本発明の目的は、癌、癌関連疾患、出血、またはDX−1000のようなクニッツドメインペプチドにより調節される疾患の患者を治療する方法を提供することである。その方法は、アルブミン融合タンパク質がDX−1000を含むクニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種、およびアルブミンまたはその断片もしくは変種を含んでなる、アルブミン融合タンパク質の有効量を投与する工程を含んでなる。
【0036】
本発明の別な目的は、アルブミン融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子、およびこのような核酸分子を含んでなるベクターを提供することである。
【0037】
本発明はまた、アルブミン融合タンパク質を製造する方法であって、
(a) 生物で発現しうるアルブミン融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでなる核酸を用意し、
(b) 核酸を生物で発現させて、アルブミン融合タンパク質を形成させ、かつ
(c) アルブミン融合タンパク質を精製する、
ことを含んでなる方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】DX−890およびDX−890−HSA融合体のK測定。
【図2】125I−DX−890(左)および125I−DX−890−HSA融合体の血漿クリアランス曲線。
【図3】SE−HPLC(Superose-12)による正常マウス血漿中の125I−DX890。
【図4】正常マウス血漿中における125I−HAS−DX890のSE−HPLC(Superose-12)プロフィール。
【図5】ウサギにおける125I標識DX−890およびHSA−DX−890の血漿クリアランス。
【図6】ウサギ血漿サンプルのSEC分析。
【発明の具体的説明】
【0039】
本発明はアルブミン融合クニッツドメインペプチドに関する。本発明は、2つ(またはそれ以上)のクニッツドメインペプチド、必要に応じて異なるクニッツドメインペプチドにアルブミンがカップリングされた、二官能性(または多官能性)融合タンパク質にも関する。異なるクニッツドメインペプチドを有するこのような二官能性(または多官能性)融合タンパク質は、1タイプのみのクニッツドメインペプチドを含んでなるアルブミン融合タンパク質と比較して、改善された薬物耐性プロフィールを有すると予想される。一部の症状では2以上のプロテアーゼの阻害を要し、マルチクニッツドメインの融合体であれば1つの化合物で2種以上のプロテアーゼの阻害に用いうる。一方、2以上のクニッツドメインを融合させて、グラム当たりのインヒビター活性が増すように各々を同一プロテアーゼへ向けてもよい。2つのクニッツドメインを有するインヒビターの有用型はK::SA::Kであり、ここでKおよびKはクニッツドメインであり、SAはセリンアルブミンまたはその実質的部分である。このような二官能性(または多官能性)融合タンパク質は、1タイプのみのクニッツドメインペプチドを含んでなるアルブミン融合タンパク質と比較して、相乗効果も示す。更に、化学的存在物も、生物活性を高めるため、または生物活性を調節するために、本発明の融合タンパク質へ共有結合させてよい。
【0040】
本発明のアルブミン融合タンパク質は、インビボでクニッツドメインペプチドの半減期を長期化させると予想される。上記アルブミン融合ペプチドのインビトロまたはインビボ半減期は、連結アルブミンを欠くペプチドの半減期よりも2倍、5倍またはそれ以上伸びている。更に、少なくとも一部はペプチドの半減期延長のおかげで、本発明のアルブミン融合タンパク質は治療用ペプチドの投薬スケジュールの頻度を減少させられると期待される。投薬スケジュール頻度は、連結アルブミンを欠く治療用ペプチドの投薬スケジュールの頻度と比較して、少なくとも1/4、または少なくとも1/2に減少する。
【0041】
本発明のアルブミン融合タンパク質は、インビトロおよび/またはインビボにおいて、溶解状態(または医薬組成物中)のとき、ペプチドの貯蔵期間を長期化させる、および/またはペプチドおよび/またはその活性を安定化させる。治療剤でもあるこれらのアルブミン融合タンパク質は、非特異的結合のようなファクターによるタンパク質の喪失を防ぐために、大過剰のキャリアタンパク質(例えばアルブミン、未融合)でタンパク質溶液を処方する必要性を減らせると予想される。
【0042】
本発明は、アルブミン融合タンパク質をコードする核酸分子、これらの核酸を含有するベクター、これらの核酸ベクターで形質転換された宿主細胞、およびこれらの核酸、ベクターおよび/または宿主細胞を用いて本発明のアルブミン融合タンパク質を作製する方法も包含する。本発明は、核酸分子によりコードされたアルブミン融合タンパク質を発現するように必要に応じて修飾された、本発明の核酸分子を含有するように修飾されたトランスジェニック生物を更に含んでいる。
【0043】
アルブミン
ヒト血清アルブミン(HSA)およびヒトアルブミン(HA)という用語は、ここでは互換的に用いられる。「アルブミン」および「血清アルブミン」という用語は広く、ヒト血清アルブミン(とその断片および変種)および他種からのアルブミン(とその断片および変種)を包含する。
【0044】
ここで用いられている「アルブミン」とは、アルブミンの1以上の機能活性(例えば、生物活性)を有した、アルブミンタンパク質またはアミノ酸配列、またはアルブミン断片もしくは変種に包括的に関する。特に、「アルブミン」とは、ヒトアルブミンまたはその断片(EP201239、EP322094、WO97/24445、WO95/23857参照)、特にここでの配列番号18と、米国仮出願第60/355,547およびWO01/79480の表1および配列番号18で示されているようなヒトアルブミンの成熟型、あるいは他の脊椎動物からのアルブミンまたはその断片、あるいはこれら分子またはその断片のアナローグまたは変種に関する。
【0045】
本発明のアルブミン融合タンパク質で用いられているヒト血清アルブミンタンパク質は、配列番号18において下記組の点変異のうち一方または双方を含んでいる:Leu−407->Ala、Leu−408->Val、Val−409->AlaおよびArg−410->Ala;またはArg−410->Ala、Lys−413->GlnおよびLys−414->Gln(例えば、参考のためそれ全体でここに組み込まれる国際公開第WO95/23857参照)。他の態様では、上記組の点変異のうち一方または双方を含んだ本発明のアルブミン融合タンパク質は、酵母Yap3pタンパク質分解に対して改善された安定性/耐性を有し、酵母宿主細胞で発現される組換えアルブミン融合タンパク質の産生を増す。
【0046】
ここで用いられている、治療用タンパク質のインビボ半減期、治療活性または貯蔵期間を長期化または延長する上で十分なアルブミンの部分とは、非融合状態にある治療用タンパク質のインビボ半減期、治療活性または貯蔵期間と比較して、アルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分のインビボ半減期、治療活性または貯蔵期間を安定化、長期化または延長するために、鎖長または構造上十分なアルブミンの部分に関する。アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は上記のようなHA配列の全鎖長を含んでもよく、または治療活性を安定化または長期化しうる1以上の断片を含んでもよい。このような断片は鎖長が10以上のアミノ酸でも、またはHA配列からの約15、20、25、30、50またはそれ以上の隣接アミノ酸を含んでも、またはHAの特定ドメインの一部または全部を含んでもよい。
【0047】
本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、正常HAの変種でもよい。本発明のアルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分も、ここで記載されているような治療用タンパク質の変種でよい。「変種」という用語には、保存的または非保存的な挿入、欠失および置換を含み、このような改変が、治療用タンパク質の治療活性を発揮させるアルブミンまたはその活性部位または活性ドメインの腫脹性、有用なリガンド結合性および非免疫原性のうち1以上を実質的に変化させることはない。
【0048】
特に、本発明のアルブミン融合タンパク質は、ヒトアルブミンの天然多形性変種およびヒトアルブミンの断片、例えばEP322094で開示された断片(即ちHA(Pn)、ここでnは369〜419である)を含んでもよい。アルブミンは、いかなる脊椎動物、特にいかなる哺乳動物、例えばヒト、ウシ、ヒツジまたはブタに由来するものでもよい。非哺乳動物アルブミンにはメンドリおよびサケのものがあるが、それらに限定されない。アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、治療用タンパク質部分とは異なる動物に由来してもよい。
【0049】
一般的に言うと、HA断片または変種は少なくとも100のアミノ酸鎖長、必要に応じて少なくとも150のアミノ酸鎖長である。HA変種はHAの少なくとも1つの全ドメイン、例えばドメイン1(配列番号18のアミノ酸1−194)、2(配列番号18のアミノ酸195−387)、3(配列番号18のアミノ酸388−585)、1+2(配列番号18の1−387)、2+3(配列番号18の195−585)または1+3(配列番号18のアミノ酸1−194+配列番号18のアミノ酸388−585)からなるか、またはそれを含んでなる。各ドメインは、2つの相同的サブドメイン、即ち1−105、120−194、195−291、316−387、388−491および512−585と、残基Lys106−Glu119、Glu292−Val315およびGlu492−Ala511を含んでなるフレキシブルなサブドメイン間リンカー領域から、それ自体が構成されている。
【0050】
本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、HAの少なくとも1つのサブドメインまたはドメイン、またはその保存的修飾物を含んでもよい。融合体がサブドメインをベースにしているならば、隣接リンカーの一部または全部が、治療用タンパク質部分へ連結するために、必要に応じて用いられる。
【0051】
アルブミン融合タンパク質
本発明は、一般的に、アルブミン融合タンパク質と、疾患または障害を治療、予防または改善する方法に関する。ここで用いられている「アルブミン融合タンパク質」とは、治療用タンパク質(またはその断片もしくは変種)の少なくとも1つの分子へアルブミン(またはその断片もしくは変種)の少なくとも1つの分子の融合により形成されるタンパク質に関する。本発明のアルブミン融合タンパク質は、例えば互いの遺伝子融合により(即ち、治療用タンパク質の全部または一部をコードするポリヌクレオチドがアルブミンの全部または一部をコードするポリヌクレオチドと枠内で結合された核酸の翻訳により、アルブミン融合タンパク質が形成される)、互いに結合された、治療用タンパク質の少なくとも1つの断片または変種とヒト血清アルブミンの少なくとも1つの断片または変種とを含んでなる。アルブミン融合タンパク質の個別部分、治療用タンパク質およびアルブミンタンパク質は、アルブミン融合タンパク質の「一部分」、「領域」または「部分」と称されることもある。
【0052】
一つの態様において、本発明は、治療用タンパク質および血清アルブミンタンパク質を含んでなる、またはそれらからなる、アルブミン融合タンパク質を提供する。他の態様において、本発明は、治療用タンパク質および血清アルブミンタンパク質の生物活性および/または治療活性断片を含んでなる、またはそれらからなる、アルブミン融合タンパク質を提供する。他の態様において、本発明は、治療用タンパク質および血清アルブミンタンパク質の生物活性および/または治療活性変種を含んでなる、またはそれらからなる、アルブミン融合タンパク質を提供する。別な態様において、アルブミン融合タンパク質の血清アルブミンタンパク質成分は、血清アルブミンの成熟部分である。
【0053】
別な態様において、本発明は、治療用タンパク質と、血清アルブミンの生物活性および/または治療活性断片を含んでなる、またはそれらからなる、アルブミン融合タンパク質を提供する。別な態様において、本発明は、治療用タンパク質と、血清アルブミンの生物活性および/または治療活性変種を含んでなる、またはそれらからなる、アルブミン融合タンパク質を提供する。一部の態様において、アルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分は、治療用タンパク質の成熟部分である。
【0054】
別な態様において、本発明は、治療用タンパク質の生物活性および/または治療活性断片または変種と、血清アルブミンの生物活性および/または治療活性断片または変種とを含んでなる、またはそれらからなる、アルブミン融合タンパク質を提供する。一部の態様において、本発明は、治療用タンパク質の成熟部分および血清アルブミンの成熟部分を含んでなる、またはそれらからなる、アルブミン融合タンパク質を提供する。
【0055】
アルブミン融合タンパク質は、N末端部分としてHAおよびC末端部分として治療用タンパク質を含んでなる。一方、C末端部分としてHAおよびN末端部分として治療用タンパク質を含んでなるアルブミン融合タンパク質も用いてよい。
【0056】
他の態様において、アルブミン融合タンパク質はアルブミンのN末端およびC末端の双方へ治療用タンパク質を融合させている。一つの態様において、NおよびC末端で融合された治療用タンパク質は同一の治療用タンパク質である。別な態様において、NおよびC末端で融合された治療用タンパク質は異なる治療用タンパク質である。もう1つの態様において、NおよびC末端で融合された治療用タンパク質は、同様の疾患、障害または症状を治療または予防するために用いられる、異なる治療用タンパク質である。もう1つの態様において、NおよびC末端で融合された治療用タンパク質は、通常患者で同時に生じることが当業界で知られた疾患または障害を治療または予防するために用いられる、異なる治療用タンパク質である。
【0057】
アルブミン部分が治療用タンパク質部分のN末端および/またはC末端で融合されたアルブミン融合タンパク質に加えて、本発明のアルブミン融合タンパク質はHAの内部領域中へ対象の治療用タンパク質またはペプチドを挿入することにより作製してもよい。例えば、HA分子のタンパク質配列内には、ジスルフィド結合により安定化されるいくつかのループまたはターンが、α−ヘリックスの最後と最初との間に存在している。HAの結晶構造(PDBアイデンティファイアー1AO6、1BJ5、1BKE、1BM0、1E7E〜1E7Iおよび1UOR)から調べたところ、そのループは大部分が分子の本体から離れて伸びている。これらのループは、特別な生物活性を有するアルブミン分子を本質的に作製する上で、治療活性ペプチド、特に機能化に二次構造を要するもの、または治療用タンパク質の挿入または内部融合に有用である。
【0058】
本発明のアルブミン融合タンパク質を作製するためにペプチドまたはポリペプチドが挿入されるヒトアルブミン構造中のループには、Val54−Asn61、Thr76−Asp89、Ala92−Glu100、Gln170−Ala176、His247−Glu252、Glu266−Glu277、Glu280−His288、Ala362−Glu368、Lys439−Pro447、Val462−Lys475、Thr478−Pro486およびLys560−Thr566がある。他の態様では、ペプチドまたはポリペプチドが成熟ヒトアルブミン(配列番号18)のVal54−Asn61、Gln170−Ala176および/またはLys560−Thr566ループ中に挿入される。
【0059】
挿入される治療用タンパク質は、特定の生物活性についてスクリーニングされたファージディスプレーおよび合成ペプチドライブラリーを含むあらゆる供給源から、または望ましい機能を有した分子の活性部分から誘導される。加えて、治療用タンパク質向けの候補であるクニッツドメインペプチドを含んでなるランダムペプチドライブラリーは特定ループ内で、またはHA分子の特定ループ中へのこのようなランダム化ペプチドの挿入により作製してもよく、そこではアミノ酸の多くの組合せ(例えば、5×10)が表わされている。
【0060】
このようなライブラリーは、下記方法の1つにより、HAまたはHAのドメイン断片上で作製しうる:
(a) HAまたはHAドメイン断片の1以上のペプチドループ内におけるアミノ酸のランダム化変異。ループ内における1つ、それ以上または全部の残基はこうして変異させうる;
(b) 鎖長X(Xはアミノ酸であり、nは残基の数である)のランダム化ペプチドのHAまたはHAドメイン断片の1以上のループの置換またはその中への挿入(即ち、内部融合);
(c) (a)および/または(b)に加えて、N、CまたはNおよびC末端ペプチド/タンパク質融合。
【0061】
HAまたはHAドメイン断片は、異なる標的に対する異なるループの異なるスクリーンから誘導されたペプチドを同一HAまたはHAドメイン断片へグラフトすることにより、多機能化してもよい。
【0062】
ヒト血清アルブミンのループ中へ挿入されるペプチドの非制限的な例は、DX−890(ヒト好中球エラスターゼのインヒビター)、DPI−14(ヒト好中球エラスターゼのインヒビター)、DX−88ペプチド(ヒト血漿カリクレインのインヒビター、表2)およびDX−1000(ヒトプラスミンのインヒビター、表2)またはそれらのペプチド断片もしくはペプチド変種である。更に詳しくは、本発明は、鎖長が少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35または少なくとも40のアミノ酸のペプチド断片またはペプチド変種をヒト血清アルブミンのループ中へ挿入したアルブミン融合タンパク質を包含する。本発明は、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35または少なくとも40のアミノ酸のペプチド断片またはペプチド変種をヒト血清アルブミンのN末端へ融合させたアルブミン融合タンパク質も包含する。本発明は、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35または少なくとも40のアミノ酸のペプチド断片またはペプチド変種をヒト血清アルブミンのC末端へ融合させたアルブミン融合タンパク質も包含する。
【0063】
通常、本発明のアルブミン融合タンパク質は1つのHA由来領域および1つの治療用タンパク質由来領域を有する。しかしながら、各タンパク質の複数領域も、本発明のアルブミン融合タンパク質を作製する上で用いてよい。同様に、2以上の治療用タンパク質も、本発明のアルブミン融合タンパク質を作製する上で用いてよい。例えば、治療用タンパク質はHAのNおよびC末端の双方へ融合される。各構造において、治療用タンパク質部分は同一でもまたは異なる治療用タンパク質分子でもよい。二官能性アルブミン融合タンパク質の構造は、X−HA−Y、Y−HA−X、X−Y−HA、HA−X−Y、HA−X−Y−HA、HA−Y−X−HA、HA−X−X−HA、HA−Y−Y−HA、HA−X−HA−Y、X−HA−Y−HAまたは複数の組合せ、またはHA配列内のいずれかの位置における挿入Xおよび/またはYとして表わせる。
【0064】
追加の態様では、クニッツドメインのような治療用タンパク質「X」と、HAをパート1および2に分離する治療用ペプチド「Y」とを有している。本発明の融合タンパク質は式:X−HA(パート1)−Y−HA(パート2)およびHA(パート1)−Y−HA(パート2)−Xを有する。追加の態様では2つの治療用タンパク質ドメイン「X」および「Z」と治療用ペプチド「Y」を有し、式:X−HA(パート1)−Y−HA(パート2)−ZおよびZ−HA(パート1)−Y−HA(パート2)−Xの融合タンパク質となる。
【0065】
二または多官能性アルブミン融合タンパク質は、機能、半減期などに応じて、様々な比率で作製しうる。
【0066】
二または多官能性アルブミン融合タンパク質は、HAの反対端にあるタンパク質またはペプチドを介して標的臓器または細胞タイプへ融合体の治療用タンパク質部分を向かわせうるように作製してもよい。
【0067】
公知の治療用分子の融合体に代わるものとして、典型的には6、8、12、20、25またはX(Xはアミノ酸であり、nは残基の数である)ランダム化アミノ酸のHAまたはHAのドメイン断片のN、CまたはNおよびC末端への融合体として構築されたライブラリーのスクリーニングにより、ペプチドは得ることができ、そこではアミノ酸のすべての可能な組合せが表わされた。このアプローチの特別な利点は、ペプチドがHA分子付きのままで選択され、したがって、ペプチドの性質が、可能性として変化することなく、いずれか他の方法により誘導されて後からHAへ付着されるペプチドの場合のように選択しうることである。このような選択は、HAの末端における、クニッツドメインのような、よく折り畳まれたドメインの付着には、不要である。付いたままでの選別は、ジスルフィドまたは単一ジスルフィドループを有しないペプチドにとり重要であるらしい。
【0068】
加えて、本発明のアルブミン融合タンパク質は、各部分間で物理的距離を大きくして、例えば同族レセプターと結合する際の、治療用タンパク質部分の接近性を最大化するために、融合部分間にリンカーペプチドを含有してもよい。リンカーペプチドは、それがフレキシブルまたはより硬くなるように、アミノ酸から構成される。
【0069】
したがって、上記のように、本発明のアルブミン融合タンパク質は下記式:R2−R1;R1−R2;R2−R1−R2;R2−L−R1−L−R2;R1−L−R2;R2−L−R1;またはR1−L−R2−L−R1を有している:ここでR1は少なくとも1つの治療用タンパク質、ペプチドまたはポリペプチド配列(その断片または変種を含む)であるが、必ずしも同一の治療用タンパク質ではない;Lはリンカーである;およびR2は血清アルブミン配列(その断片または変種を含む)である。例示リンカーには、(GGGGS)(SEQ ID NO: )、(GGGS)(SEQ ID NO: )または(GGS)があり、ここでNは1以上の整数であり、Gはグリシンを表わし、Sはセリンを表わす。
【0070】
ある態様において、治療用タンパク質を含んでなる本発明のアルブミン融合タンパク質は、アルブミンへ融合されていない同治療用タンパク質の貯蔵期間、インビボ半減期または治療活性と比較して、長い貯蔵期間、インビボ半減期または治療活性を有している。貯蔵期間とは、典型的には、溶解状態またはある他の貯蔵処方時における治療用タンパク質の治療活性が治療活性の過度な喪失なしに安定である期間に関する。治療用タンパク質の多くは、それらの非融合状態時で高度に不安定である。下記のように、これら治療用タンパク質の典型的貯蔵期間は、本発明のアルブミン融合タンパク質中への組込みで著しく長期化している。
【0071】
貯蔵期間が「長期化」または「延長」された本発明のアルブミン融合タンパク質は、同一の貯蔵および取扱い条件に付された標準と比較して、大きな治療活性を示す。標準は非融合全鎖長治療用タンパク質である。アルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分がアナローグ、変種であるか、またはそれ以外に改変されているか、またはそのタンパク質の完全配列を含まないとき、治療活性の長期化はアナローグ、変種、改変ペプチドまたは不完全配列の非融合相当物と比較される。例として、本発明のアルブミン融合タンパク質は、標準と同一の貯蔵および取扱い条件に付されて、所定の時点で比較されたとき、標準の治療活性の約100%以上、または治療活性の約105%、110%、120%、130%、150%または200%以上を留めている。しかしながら、治療活性は治療用タンパク質の安定性に依存しており、100%以下のこともある。
【0072】
貯蔵期間は、貯蔵が始まったときの治療活性を基準とした、貯蔵後に残留する治療活性として評価してもよい。治療活性の長期化または延長で示されるような、貯蔵期間が長期化または延長された本発明のアルブミン融合タンパク質は、同一条件に付されたとき、相当する非融合治療用タンパク質の治療活性の約50%以上、治療活性の約60%、70%、80%、90%またはそれ以上を留めている。
【0073】
本発明のアルブミン融合タンパク質は、同一の貯蔵および取扱い条件に付された非融合治療用タンパク質標準と比較して、大きな溶解性を示す。
【0074】
治療用タンパク質
上記のように、本発明のアルブミン融合タンパク質は、遺伝子融合で互いに結合された、治療用タンパク質の少なくとも1つの断片または変種と、ヒト血清アルブミンの少なくとも1つの断片または変種とを含んでなる。
【0075】
ここで用いられている「治療用タンパク質」とは、1以上の治療および/または生物活性を有するクニッツドメインペプチド(その非制限例には、DX−890、DPI−14、DX−88またはDX−1000がある)またはその断片もしくは変種に関する。クニッツドメインは、中央の逆平行βシートと短いC末端ヘリックスを形成している、約51〜64残基の折り畳みドメインである。この特徴的ドメインは3つのジスルフィド結合を形成する6つのシステイン残基を含んでいるため、二重ループ構造をとる。N末端領域と最初のβ鎖との間に、活性阻害結合ループが存在する。この結合ループは、最後の2β鎖間で形成されるヘアピンループへ、P2 C14残基を介してジスルフィド結合されている。
【0076】
クニッツドメインは、次の形の約51AA〜64AAのポリペプチドである:
【化1】

【0077】
ジスルフィドはCおよびC55間、C14およびC38間と、C30およびC51間で形成される。C14およびC38ジスルフィドは自然クニッツドメインでいつもみられるが、人工クニッツドメインではなくてもよい。C14が他のアミノ酸タイプへ変えられると、C38も非システインへ変えられ、逆もある。いかなるポリペプチドもアミノ末端へ融合させてよい。X−Xは0〜4つのアミノ酸を含む。X−X13は8または9つのアミノ酸を含む。X9aが不在ならば、X12はGlyである。X26a、X26bおよびX26cの各々は不在でもよい;即ち、X15−X30は16、17、18または19つのアミノ酸を含む。X33はPheまたはTyrである。X39−X50は12、13、14または15つのアミノ酸を含む;即ち、X42a、X42bおよびX42cの各々は不在でもよい。X45はPheまたはTyrである。X56−X58は0〜3つのアミノ酸を含む。追加のシステインも50、53、54または58位に存在してよい。いかなるポリペプチドもカルボキシ末端へ融合させてよい。表3は21種公知ヒトクニッツドメインのアミノ酸配列を示している。
【0078】
【表1】


【0079】
表1のいかなるドメインも、(特定のプロテアーゼを阻害するような)特定の生物学的効果を有するように工学処理して、HAへ融合させることができる。そのため、本発明のアルブミン融合タンパク質は治療用タンパク質の少なくとも1つの断片または変種を含有してもよい。変種には変異体、アナローグ、ミメティックおよびホモローグを含み、内在または天然相関物を含める。
【0080】
「治療活性」を示すポリペプチドまたは「治療活性」であるタンパク質とは、ここで記載されたまたは当業界で知られている1種以上の治療用タンパク質のような、治療用タンパク質に付随する1種以上の公知生物および/または治療活性を有したポリペプチドを意味する。非制限例として、「治療用タンパク質」は、疾患、症状または障害を治療、予防または改善する上で有用なタンパク質である。
【0081】
ここで用いられている「治療活性」または「活性」とは、その効果がヒトで望まれる治療成果、あるいは非ヒト哺乳動物または他の種もしくは生物で望まれる効果と符合する、活性に関する。治療活性はインビボまたはインビトロで測定される。例えば、望ましい効果は細胞培養物でアッセイされる。このようなインビトロまたは細胞培養物アッセイは、当業界で記載されているように、多くの治療用タンパク質について通常利用しうる。
【0082】
有用アッセイの例には、参考のためここで特に組み込まれる、表4のレファレンスおよび文献で記載されたもの、および本例で記載されたものがあるが、それらに限定されない。本発明の融合タンパク質により示される活性は、例えば、ここで記載されているような簡単に行えるインビトロアッセイにより測定される。これらのアッセイを用いて、アルブミンへ融合されていない治療用タンパク質(またはその断片もしくは変種)と比較した、融合タンパク質が示す相対的な生物および/または治療活性のようなパラメーターが調べられる。
【0083】
本発明のアルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分に相当する治療用タンパク質は、1以上のオリゴ糖基の結合で修飾してもよい。グリコシル化と称される修飾は、タンパク質の物理的性質に劇的な影響を与え、タンパク質の安定性、分泌および局在化に重要なこともある。このような修飾は、参考のためここに組み込まれる、米国仮出願第60/355,547およびWO01/79480で詳細に記載されている。
【0084】
本発明のアルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分に相当する治療用タンパク質、並びにそのアナローグおよび変種は、それらが発現される宿主細胞により、または他の発現条件により、1以上の部位におけるグリコシル化がそれら核酸配列の操作結果として改変されるように修飾してよい。例えば、グリコシル化異性体は、グリコシル化部位を除くまたは導入することにより、例えばアスパラギンからグルタミンへの置換のような、アミノ酸残基の置換または欠失により産生してもよく、あるいは非グリコシル化組換えタンパク質は、それらをグリコシル化しない宿主細胞、例えばE.coliまたはグリコシル化欠陥酵母で、タンパク質を発現させることにより産生してもよい。これらアプローチの例は、参考のため組み込まれる、当業界で知られた米国仮出願第60/355,547およびWO01/79480で更に詳細に記載されている。
【0085】
表4は、本発明のアルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分に相当する治療用タンパク質の非網羅リストを掲載している。「治療用タンパク質X」欄では、治療用タンパク質分子を開示しており、その後の括弧書では、その治療用タンパク質分子またはその断片もしくは変種を含んでなる、またはそれらからなる、科学およびブランド名を記載している。ここで用いられている「治療用タンパク質X」とは、(CASおよびGenebank受入番号から得られるアミノ酸配列により特定されるような)個別の治療用タンパク質分子、またはこの欄で開示された所定の治療用タンパク質分子に関連した治療用タンパク質の全体グループに関する。これら項目の各々に関連した情報は、特にそこで記載されたアミノ酸配列に関して、それら全体で参考のため各々組み込まれる。「PCT/特許レファレンス」欄では、治療用タンパク質分子について記載する特許および/または公開特許出願に対応した米国特許番号、またはPCT国際公開番号を掲載している。「PCT/特許レファレンス」欄で引用された特許および/または公開特許出願の各々は、参考のためそれら全体でここに組み込まれる。特に、各引用「PCT/特許レファレンス」の配列リストで掲載された特定ポリペプチドのアミノ酸配列、例えば各引用「PCT/特許レファレンス」の詳細な説明で掲載されたこれらアミノ酸配列の変種(変異体、断片など)、例えば各引用「PCT/特許レファレンス」の詳細な説明で掲載された治療適応症、および各引用「PCT/特許レファレンス」の詳細な説明、更に詳しくは実施例で掲載された特定ポリペプチドについての活性アッセイが、参考のためここに組み込まれる。「生物活性」欄は、治療用タンパク質分子に伴う生物活性を記載している。「関連情報」欄で引用されたレファレンスの各々は、特に対応生物活性のアッセイについてレファレンス(例えば、方法セクション参照)で記載された各活性アッセイの記載に関して、参考のためそれら全体でここに組み込まれる。「好ましい適応症Y」欄では、治療用タンパク質X、または治療用タンパク質X部分を含んでなる本発明のアルブミン融合タンパク質により治療、予防、診断または改善される、疾患、障害および/または症状について記載している。
【0086】
【表2】

【0087】
様々な態様において、本発明のアルブミン融合タンパク質は、表4の対応列で掲載されたアルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分に相当する治療用タンパク質の治療活性および/または生物活性に相当する治療活性および/または生物活性を発揮しうる(例えば、表4の「生物活性」および「治療用タンパク質X」欄参照)。別な態様において、本発明のアルブミン融合タンパク質の治療活性タンパク質部分はレファレンス配列の断片または変種であり、表4の「生物活性」欄で開示された対応治療用タンパク質の治療活性および/または生物活性を発揮しうる。
【0088】
ポリペプチドおよびポリヌクレオチド断片および変種
断片
本発明は、表4で記載された治療用タンパク質、アルブミンタンパク質および/または本発明のアルブミン融合タンパク質の断片に更に関する。
【0089】
タンパク質のN末端から1以上のアミノ酸の欠失が、治療用タンパク質、アルブミンタンパク質および/またはアルブミン融合タンパク質の1以上の生物学的機能の変化または喪失をもたらすとしても、他の治療活性および/または機能活性(例えば、生物活性、マルチマー化する能力、リガンドと結合する能力)はなお留まることがある。例えば、ポリペプチドの完全または成熟型を認識する抗体を誘導しうるおよび/またはそれと結合しうる、N末端欠失ポリペプチドの能力は、完全ポリペプチドの残基が過半数に満たないでN末端から除去されたとき、通常留められる。完全ポリペプチドのN末端残基を欠く具体的なポリペプチドがこのような免疫活性を留めているかどうかは、ここで記載された当業界で知られる常法により、簡単に調べられる。多数の欠失N末端アミノ酸残基を有する変異タンパク質がある生物または免疫活性を留めていることは、ないわけではない。事実、わずか6アミノ酸残基から構成されるペプチドでも、しばしば免疫応答を励起する。
【0090】
したがって、本発明のアルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分に相当する治療用タンパク質の断片には、全鎖長タンパク質、並びにレファレンスポリペプチド(例えば、表4で開示されているような治療用タンパク質)のアミノ酸配列のアミノ末端から1以上の残基を欠失させたポリペプチドを含む。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも、本発明に包含される。
【0091】
加えて、本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミンタンパク質部分に相当する血清アルブミンポリペプチドの断片には、全鎖長タンパク質、並びにレファレンスポリペプチド(例えば、血清アルブミン)のアミノ酸配列のアミノ末端から1以上の残基を欠失させたポリペプチドを含む。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも、本発明に包含される。
【0092】
更に、本発明のアルブミン融合タンパク質の断片には、全鎖長アルブミン融合タンパク質、並びにアルブミン融合タンパク質のアミノ末端から1以上の残基を欠失させたポリペプチドを含む。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも、本発明に包含される。
【0093】
上記のように、レファレンスポリペプチド(例えば、治療用タンパク質および/または血清アルブミンタンパク質)のN末端またはC末端から1以上のアミノ酸の欠失が、タンパク質の1以上の生物学的機能の変化または喪失をもたらすとしても、他の機能活性(例えば、生物活性、マルチマー化する能力、リガンドと結合する能力)および/または治療活性はなお留まることがある。例えば、ポリペプチドの完全または成熟型を認識する抗体を誘導しうるおよび/またはそれと結合しうる、C末端欠失ポリペプチドの能力は、完全または成熟ポリペプチドの残基が過半数に満たないでC末端から除去されたとき、通常留められる。レファレンスポリペプチドのN末端および/またはC末端残基を欠く具体的なポリペプチドが治療活性を留めているかどうかは、ここで記載されたおよび/または当業界で知られた常法により、簡単に調べられる。
【0094】
本発明は、本発明のアルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分に相当する治療用タンパク質(例えば、表4で掲載された治療用タンパク質)のアミノ酸配列のカルボキシ末端から1以上の残基を欠失させたポリペプチドを更に提供する。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも、本発明に包含される。
【0095】
加えて、本発明は、本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミンタンパク質部分に相当するアルブミンタンパク質(例えば、血清アルブミン)のアミノ酸配列のカルボキシ末端から1以上の残基を欠失させたポリペプチドを提供する。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも、本発明に包含される。
【0096】
更に、本発明は、本発明のアルブミン融合タンパク質のカルボキシ末端から1以上の残基を欠失させたポリペプチドを提供する。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも、本発明に包含される。
【0097】
加えて、上記いずれのNまたはC末端欠失も、NおよびC末端欠失レファレンスポリペプチド(例えば、表4で掲載された治療用タンパク質、または血清アルブミン(例えば、配列番号18、表1)、または本発明のアルブミン融合タンパク質)を作製するために組み合わせうる。本発明は、アミノおよびカルボキシル末端の双方から1以上のアミノ酸を欠失させたポリペプチドも提供する。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも、本発明に包含される。
【0098】
本出願は、ここで掲載されたレファレンスポリペプチド配列(例えば、治療用タンパク質、血清アルブミンタンパク質または本発明のアルブミン融合タンパク質)と少なくとも60%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一のポリペプチドを含有したタンパク質、またはその断片にも関する。一部の態様において、本出願は、上記のようなNおよびC末端欠失のアミノ酸配列を有するレファレンスポリペプチドと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一のポリペプチドを含んでなるタンパク質に関する。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも、本発明に包含される。
【0099】
本発明の他のポリペプチド断片は、アミノ酸配列が断片である、治療用タンパク質または血清アルブミンタンパク質のポリペプチド配列の治療活性および/または機能活性(例えば、生物活性)を示すアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる断片である。
【0100】
他のポリペプチド断片は生物活性断片である。生物活性断片とは、本発明のポリペプチドの活性と、必ずしも同一ではなく、類似した活性を示すものである。断片の生物活性には、望ましい活性の改善、または望ましくない活性の減少も含む。
【0101】
変種
「変種」とは、レファレンス核酸またはポリペプチドとは異なるが、その本質的性質を留めた、ポリヌクレオチドまたは核酸に関する。通常、変種はレファレンス核酸またはポリペプチドと全体的に近似し、多くの領域では同一である。
【0102】
ここで用いられている「変種」とは、治療用タンパク質(例えば、表4の「治療」欄参照)、アルブミンタンパク質および/または本発明のアルブミン融合タンパク質とは配列が異なるが、ここで他に記載されまたは当業界で他に知られているような、少なくとも1つのその機能性および/または治療性(例えば、表4の「生物活性」欄で開示されているような治療活性および/または生物活性)を留めた、本発明のアルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分、本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミン部分、またはアルブミン融合タンパク質に関する。通常、変種は、本発明のアルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分に相当する治療用タンパク質、本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミンタンパク質部分に相当するアルブミンタンパク質、および/または本発明のアルブミン融合タンパク質のアミノ酸配列と全体的に非常に類似しており、多くの領域では同一である。これらの変種をコードする核酸も本発明に包含される。
【0103】
本発明は、例えば、本発明のアルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分に相当する治療用タンパク質のアミノ酸配列(例えば、表4のレファレンスで開示されたアミノ酸配列またはその断片もしくは変種)、本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミンタンパク質部分に相当するアルブミンタンパク質のアミノ酸配列(例えば、表1またはその断片もしくは変種)、および/または本発明のアルブミン融合タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも60%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含んでなる、またはからなるタンパク質にも関する。これらポリペプチドの断片も提供される(例えば、ここで記載されている断片)。本発明に包含される別なポリペプチドは、ストリンジェントハイブリッド形成条件下(例えば、約45℃で6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)で結合DNAを濾過するハイブリッド形成、次いで約50〜65℃で0.2×SSC、0.1%SDSで1回以上の洗浄)、高ストリンジェント条件下(例えば、約45℃で6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)で結合DNAを濾過するハイブリッド形成、次いで約68℃で0.1×SSC、0.2%SDSで1回以上の洗浄)または当業者に知られた他のストリンジェントハイブリッド形成条件下(例えば、Ausubel,F.M.et al.,eds.,1989,Current protocol in Molecular Biology,Green publishing associates,Inc.,and John Wiley & Sons Inc.,New York,page 6.3.1-6.3.6 and 2.10.3参照)で、本発明のアミノ酸配列をコードする核酸分子の相補体とハイブリッド形成するポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも本発明に包含される。
【0104】
本発明の対象アミノ酸配列と少なくとも、例えば、95%「同一」のアミノ酸配列を有するポリペプチドとは、本ポリペプチドのアミノ酸配列が対象配列と同一であるが、本ポリペプチド配列が対象アミノ酸配列の100アミノ酸毎に5以内のアミノ酸改変を有しうることを意味する。換言すると、対象アミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るためには、本配列で5%以内のアミノ酸残基が挿入、欠失または他のアミノ酸と置換しうる。レファレンス配列のこれら改変は、レファレンスアミノ酸配列のアミノまたはカルボキシ末端で、あるいはこれら末端間のいずれで生じても、レファレンス配列の各残基内でまたはレファレンス配列内の1以上の隣接基で個別に散在してもよい。
【0105】
実際問題として、いずれか具体的なポリペプチドが、例えば本発明のアルブミン融合タンパク質またはその断片(例えば、アルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分またはアルブミン融合タンパク質のアルブミン部分)のアミノ酸配列と少なくとも60%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるかどうかは、従来どおりに公知のコンピュータープログラムを用いて調べることができる。このようなプログラムおよびそれらを用いる方法は、参考のためここに組み込まれる、例えば米国仮出願第60/355,547およびWO01/79480(p.41−43)で記載されており、当業界で周知である。
【0106】
本発明のポリヌクレオチド変種は、コード領域、非コード領域または双方で改変を含んでよい。ポリヌクレオチド変種には、サイレント置換、付加または欠失を生じるが、コードされたポリペプチドの性質または活性は変えない改変をもつものも含む。このようなヌクレオチド変種は、遺伝コードの縮重に基づくサイレント置換により作製してもよい。ポリペプチド変種には、50以下、40以下、30以下、20以下、10以下または5〜50、5〜25、5〜10、1〜5または1〜2のアミノ酸がいずれかの組合せで置換、欠失または付加されたものを含む。ポリヌクレオチド変種は、様々な理由から、例えば具体的宿主でのコドン発現を最適化するために作製しうる(微生物宿主、例えば酵母またはE.coliに好まれるものへヒトmRNAのコドンを改変する)。
【0107】
別な態様では、本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミン部分をコードするポリヌクレオチドが、酵母または哺乳動物細胞での発現用に最適化されている。他の態様では、本発明のアルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分をコードするポリヌクレオチドが、酵母または哺乳動物細胞での発現用に最適化されている。更に別な態様では、本発明のアルブミン融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、酵母または哺乳動物細胞での発現用に最適化されている。
【0108】
別な態様において、本発明のアルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドは、ここで記載されているようなストリンジェントハイブリッド形成条件下で、治療用タンパク質をコードする野生型ポリヌクレオチドとハイブリッド形成しない。更に別な態様において、本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミン部分をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドは、ここで記載されているようなストリンジェントハイブリッド形成条件下で、アルブミンタンパク質をコードする野生型ポリヌクレオチドとハイブリッド形成しない。もう1つの態様において、本発明のアルブミン融合タンパク質をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドは、ここで記載されているようなストリンジェントハイブリッド形成条件下で、治療用タンパク質部分またはアルブミンタンパク質部分をコードする野生型ポリヌクレオチドとハイブリッド形成しない。
【0109】
追加の態様において、本発明のアルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分をコードするポリヌクレオチドは、その治療用タンパク質の天然配列を含んでいるわけではなく、またはそれからなるわけでもない。別な態様において、本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミンタンパク質部分をコードするポリヌクレオチドは、アルブミンタンパク質の天然配列を含んでいるわけではなく、またはそれからなるわけでもない。別な態様において、本発明のアルブミン融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、治療用タンパク質部分またはアルブミンタンパク質部分の天然配列を含んでいるわけではなく、またはそれからなるわけでもない。
【0110】
追加の態様において、治療用タンパク質は、天然野生型ポリヌクレオチドが存在しないように、バイオパンニング(biopanning)によりランダムペプチドライブラリーから選択される。
【0111】
天然変種は「対立遺伝子変種」と称され、生物の染色体で所定の座を占める遺伝子の数種代替型のうち1つに関する(Genes II,Lewin,B.,ed.,John Wiley & Sons,New York(1985))。これらの対立遺伝子変種はポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドレベルが様々であり、本発明に含まれる。一方、非天然変種は変異誘発技術または直接合成により作製しうる。
【0112】
タンパク質エンジニアリングおよび組換えDNAテクノロジーの公知方法を用いて、本発明のポリペプチドの特徴を改善または改変するために変種が作製される。例えば、1以上のアミノ酸が、生物学的機能の実質的喪失なしに、本発明のポリペプチドのN末端またはC末端から欠失される。例えば、Ron et al.,J,Biol.Chem.268:2984-2988(1993)(KGF変種)およびDobeli et al.,J.Biotechnology,7:199-216(1988)(インターフェロンγ変種)参照。
【0113】
更に、変種が天然タンパク質の場合と類似した生物活性を多くの場合に留めていることを、十分な証拠が証明している(例えば、Gayle et al.,J.Biol.Chem.268:22105-22111(1993)(IL−1a変種))。更に、ポリペプチドのN末端またはC末端から1以上のアミノ酸を欠失させて、1以上の生物学的機能の改変または喪失をもたらすとしても、他の生物活性はなお留められることがある。例えば、分泌型を認識する抗体を誘導しうる、および/またはそれと結合しうる欠失変種の能力は、分泌型の残基が過半数に満たないでN末端またはC末端から除去されたとき、おそらく留められるであろう。タンパク質のNまたはC末端残基を欠く具体的ポリペプチドがこのような免疫活性を留めているかどうかは、ここで記載され当業界で他に知られた常法により、簡単に調べられる。
【0114】
そのため、本発明は機能活性(例えば、生物活性および/または治療活性)を有したポリペプチド変種を更に含んでいる。別な態様において、本発明は、アルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分に相当する治療用タンパク質の1以上の生物および/または治療活性に相当する機能活性(例えば、生物活性および/または治療活性、例えば表4の「生物活性」欄で開示されたもの)を有した、アルブミン融合タンパク質の変種を提供する。このような変種には、活性に影響をほとんど有しないような、当業界で知られた一般的規則に従い選択される欠失、挿入、逆転、反復および置換を含む。
【0115】
他の態様において、本発明の変種は保存的置換を有している。「保存的置換」とは、脂肪族または疎水性アミノ酸Ala、Val、LeuおよびIleの置換;ヒドロキシル残基SerおよびThrの置換;酸性残基AspおよびGluの置換;アミド残基AsnおよびGlnの置換;塩基性残基Lys、ArgおよびHisの置換;芳香族残基Phe、TyrおよびTrpの置換;小サイズアミノ酸Ala、Ser、Thr、MetおよびGlyの置換のような、グループ内の交換を意味する。
【0116】
表現型がサイレントのアミノ酸置換をどのように行うかに関するガイダンスは、例えばBowie et al.," Deciphering the Message in Protein Sequences:Tolerance to Amino Acid Substitutions”,Science,247:1306-1310(1990)で示されており、そこでは改変しうるアミノ酸配列の許容性を研究するための主戦略が2つあることを著者は示している。
【0117】
著者が述べているように、タンパク質はアミノ酸置換に対して驚くほど許容性である。その著者は、どのアミノ酸変更がタンパク質のあるアミノ酸位置で許容されそうかを更に示している。例えば、(タンパク質の三次構造内に)ほとんど埋没されたアミノ酸残基は非極性側鎖を必要とし、表面側鎖の特徴は通常ほとんど保存されていない。更に、許容される保存的アミノ酸置換には、脂肪族または疎水性アミノ酸Ala、Val、LeuおよびIleの置換;ヒドロキシル残基SerおよびThrの置換;酸性残基AspおよびGluの置換;アミド残基AsnおよびGlnの置換;塩基性残基Lys、ArgおよびHisの置換;芳香族残基Phe、TyrおよびTrpの置換;小サイズアミノ酸Ala、Ser、Thr、MetおよびGlyの置換がある。保存的アミノ酸置換の他にも、本発明の変種には、(i)置換アミノ酸残基が遺伝コードでコードされたまたはそうでない、非保存アミノ酸残基の1以上の置換を含んだポリペプチド、(ii)置換基を有するアミノ酸残基の1以上の置換を含んだポリペプチド、(iii)他の化合物、例えばポリペプチドの安定性および/または溶解性を増す化合物(例えば、ポリエチレングリコール)と融合された、または化学的に接合されたポリペプチド、または(iv)例えばIgG Fc融合領域ペプチドのような追加アミノ酸を含んだポリペプチドがある。このような変種ポリペプチドは、ここでの開示から当業者の範囲内に属すると思われる。
【0118】
例えば、他の荷電または中性アミノ酸による荷電アミノ酸のアミノ酸置換を含んだポリペプチド変種は、低凝集性のような、改善された特徴を有するタンパク質をもたらすことがある。医薬処方物の凝集は、凝集物の免疫活性のせいで、活性を減少させ、クリアランスを増加させる。Pinckard et al.,Clin.Exp.Immunol.2:331-340(1967);Robbins et al.,Diabetes 36:838-845(1987);Cleland et al.,Crit.Rev.Therapeutic Drug Carrier Systems 10:307-377(1993)参照。
【0119】
特別な態様において、本発明のポリペプチドは、ここで記載された治療用タンパク質および/またはヒト血清アルブミンおよび/または本発明のアルブミン融合タンパク質のアミノ酸配列の断片または変種を含んでなるか、またはそれからなり、その断片または変種は、レファレンスアミノ酸配列と比較して、1〜5、5〜10、5〜25、5〜50、10〜50または50〜150アミノ酸残基の付加、置換および/または欠失を有している。ある態様において、アミノ酸置換は保存的である。これらのポリペプチドをコードする核酸も本発明に包含される。
【0120】
本発明のポリペプチドは、ペプチド結合または修正ペプチド結合、即ちペプチドアイソスターで互いに結合されたアミノ酸から構成され、20遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含有してもよい。ポリペプチドは、翻訳後プロセッシングのような自然プロセスまたは当業界で周知の化学的修飾技術により修飾してもよい。このような修飾は、基本テキスト、更に詳細な専門研究論文、および多数の研究文献で詳しく記載されている。修飾は、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシル末端を含めて、ポリペプチドのどの箇所で生じてもよい。同一タイプの修飾が所定ポリペプチドの数部位に同一または異なる程度で存在しうることは明らかであろう。しかも、所定ポリペプチドは多くのタイプの修飾を含んでよい。ポリペプチドは、例えばユビキチン化の結果として分岐させてもよく、それらは分岐があるまたはない環状でもよい。環状、分岐および分岐環状ポリペプチドは翻訳後自然プロセスから得ても、または合成法により作製してもよい。修飾には、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリスチル化、酸化、ペギル化、タンパク質分解プロセッシング、ホスホリル化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化のようなタンパク質へのアミノ酸のトランスファーRNA媒介付加、およびユビキチン化がある。
【0121】
更に、化学的存在物も、例えばBiotechnology,10:324(1999)のCurrent Opinionsで開示された方法により、特定の機能または生物活性を高めるまたは調節するために、アルブミン融合タンパク質へ共有結合させてよい。
【0122】
更に、向標的存在物も、特定の機能または生物活性をある細胞またはステージ特異性タイプ、組織タイプまたは解剖学的構造へ向けるために、本発明のアルブミン融合タンパク質へ共有結合させてよい。本発明のアルブミン融合タンパク質を方向づけることにより、剤の作用は局在化される。更に、このような向標的化のおかげで、必要部位に本発明のアルブミン融合タンパク質を蓄積させることにより、より高い局在化濃度が得られることから、必要な本発明のアルブミン融合タンパク質の用量を減少させうる。本発明のアルブミン融合タンパク質は、架橋剤の使用により、および組換えDNA技術により、向標的部分と接合させることができ、こうすることにより、リガンドがタンパク質であるとき、本発明のアルブミン融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列、またはその機能部分がリガンドのヌクレオチド配列の近くでクローニングされて、複合体が融合タンパク質として発現される。
【0123】
本発明に包含される追加の翻訳後修飾には、例えば、N連結またはO連結炭水化物鎖、N末端またはC末端のプロセッシング、アミノ酸主鎖への化学的部分の付着、N連結またはO連結炭水化物鎖の化学修飾、および原核宿主細胞発現の結果としてN末端メチオニン残基の付加または欠失がある。アルブミン融合タンパク質は、検出可能ラベル、例えばタンパク質の検出および単離を行える酵素、蛍光、アイソトープまたは親和性ラベルで修飾してもよい。このような修飾の例は、例えば、参考のためここに組み込まれる、当業界で周知の米国仮出願第60/355,547およびWO01/79480(p.105−106)で示されている。
【0124】
機能活性
「機能活性を有するポリペプチド」とは、全鎖長プロタンパク質および/または治療用タンパク質の成熟型に伴う1以上の既知機能活性を示せるポリペプチドに関する。このような機能活性には、生物活性、酵素阻害、抗原性〔抗ポリペプチド抗体と結合しうる、または結合に際してポリペプチドと競合しうる能力〕、免疫原性(本発明の特定ポリペプチドと結合する抗体を産生しうる能力)、本発明のポリペプチドとマルチマーを形成しうる能力、およびポリペプチドのレセプターまたはリガンドと結合しうる能力があるが、それらに限定されない。
【0125】
「生物活性を有するポリペプチド」とは、用量依存的にまたはそれなしで、特定の生物学的アッセイで測定されるような、成熟型を含めた、本発明の治療用タンパク質の活性と類似した、但し必ずしもそれと同一ではない、活性を示す、ポリペプチドに関する。用量依存性が存在する場合に、それはポリペプチドの場合と同一でなく、本発明のポリペプチドと比較して、むしろ所定活性で用量依存性と実質的に類似していることを要する。
【0126】
他の態様において、本発明のアルブミン融合タンパク質は、アルブミンと融合していないときの治療用タンパク質(またはその断片もしくは変種)に伴う生物および/または治療活性を少なくとも1つ有している。
【0127】
本発明のアルブミン融合タンパク質は、当業界で公知のルーチンな修飾アッセイ、およびここで記載されたアッセイを用いて、機能活性(例えば、生物活性)についてアッセイしうる。特に、アルブミン融合タンパク質は、表4の「関連文献」欄で掲載されたアッセイを用いて、機能活性(例えば、生物活性または治療活性)についてアッセイしうる。加えて、当業者は、表4の対応列に掲載されたアッセイを用いて、活性について、本発明のアルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分に相当する治療用タンパク質の断片をルーチンでアッセイしうる。更に、当業者は、当業界で知られたおよび/または下記の実施例セクションで記載されたようなアッセイを用いて、活性について、本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミンタンパク質部分に相当するアルブミンタンパク質の断片をルーチンでアッセイしてもよい。
【0128】
加えて、ここで記載された(例および表4参照)、そうでなければ当業界で知られたアッセイは、本発明のアルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分および/またはアルブミン部分に関連した生物活性および/または治療活性(インビトロまたはインビボ)を発揮しうる、本発明のアルブミン融合タンパク質とその断片、変種および誘導体の能力を測定するために、ルーチンで適用される。他の方法も当業者に公知であり、本発明の範囲内に属する。
【0129】
融合タンパク質の発現
本発明のアルブミン融合タンパク質は、酵母、微生物、例えば細菌、またはヒトもしくは動物細胞系からの分泌により、組換え分子として産生してもよい。必要に応じて、ポリペプチドは宿主細胞から分泌される。
【0130】
ここで例示されたアルブミン融合タンパク質の発現向けに、WO95/33833で例示されたようなHSP150遺伝子の酵母株分断物(disrupted)、WO00/44772で例示されたようなPMT1遺伝子の酵母株分断物〔rHAプロセス〕(アルブミン融合体のO連結グリコシル化を減少/消失させるように働く)またはWO95/23857で例示されたようなYAP3遺伝子の酵母株分断物が、酵母PRB1プロモーター、WO90/01063で例示されたHSA/MFα−1融合リーダー配列、酵母ADH1ターミネーター、LEU2選択マーカーおよびUS5,637,504で例示された崩壊ベクターpSAC35と組み合わせて、好結果に用いられた。
【0131】
本発明で有用と期待される他の酵母株、プロモーター、リーダー配列、ターミネーター、マーカーおよびベクターは、参考のためここに組み込まれる、当業界で周知の米国仮出願第60/355,547およびWO01/74980(p.94−99)で記載されている。
【0132】
本発明は、本発明のアルブミン融合タンパク質を発現するように形質転換された細胞、必要に応じて酵母細胞も含む。形質転換宿主細胞自体に加えて、本発明では、栄養培地中における、それら細胞の培養物、必要に応じてモノクローナル(クローン的に均一な)培養物、またはモノクローナル培養物から誘導された培養物も考えている。そのポリペプチドが分泌されるならば、培地は細胞と一緒に、あるいはそれらが濾過または遠心で除去されるならば細胞なしで、そのポリペプチドを含有する。細菌(例えば、E.coliおよびBacillus subtilis)、酵母(例えば、Saccharomyces cerevisiae、Kluyveromyces lactisおよびPichia pastoris)、糸状菌(例えば、Aspergillus)、植物細胞、動物細胞および昆虫細胞を含めて、多くの発現系が公知であり、用いうる。
【0133】
望ましいタンパク質は、例えば宿主染色体または遊離プラスミドに挿入されたコード配列から、従来の手法で産生される。酵母は、いずれかの常法、例えばエレクトロポレーションにより、望ましいタンパク質のコード配列で形質転換される。エレクトロポレーションによる酵母の形質転換のための方法は、Becker & Guarente(1990)Methods Enzymol.194,182で開示されている。
【0134】
好結果に形質転換された細胞、即ち本発明のDNA構築物を含有した細胞は、周知の技術により同定しうる。例えば、発現構築物の導入から得られた細胞は、望ましいポリペプチドを産生するために増殖させうる。細胞は回収および溶離され、それらのDNA分がSouthern(1975)J.Mol.Biol.98,503またはBerent et al.(1985)Biotech.3,208により記載されたような方法を用いてDNAの存在について試験される。一方、上澄中におけるタンパク質の存在は抗体を用いて検出しうる。
【0135】
有用な酵母プラスミドベクターにはpRS403−406およびpRS413−416があり、これらはStratagene Cloning Systems,La Jolla,CA 92037,USAから通常入手しうる。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405およびpRS406は酵母組込みプラスミド(YIp)であり、酵母選択マーカーHIS3、TRP1、LEU2およびURA3を組み込んでいる。プラスミドpRS413−416は酵母動原体プラスミド(YCp)である。
【0136】
酵母で発現用のアルブミン融合タンパク質を作製するためのベクターにはpPPC0005、pScCHSA、pScNHSAおよびpC4:HSAがあるが、それらはAmerican Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,Virginia 20110-2209に2001年4月11日付で寄託され、参考のためここに組み込まれる仮出願第60/355,547およびWO01/79480で記載されている。
【0137】
酵母でアルブミン融合タンパク質を発現させるために有用であると期待されるもう1つのベクターは、参考のためそれ全体でここに組み込まれる、Sleep et al.,BioTechnology 8:42(1990)で記載されたpSAC35ベクターである。プラスミドpSAC35は、US5,637,504で記載された崩壊クラスのベクターに属する。
【0138】
相補的付着末端を介してDNAをベクターへ作働可能に連結させるために、様々な方法が開発された。例えば、相補的ホモポリマー領域がベクターDNAへ挿入されるDNAセグメントへ加えられる。次いで、ベクターおよびDNAセグメントが、組換えDNA分子を形成するために、相補的ホモポリマーの尾部間で水素結合により結合される。
【0139】
1以上の制限部位を含んだ合成リンカーは、DNAセグメントをベクターへ結合させる代替法を提供する。エンドヌクレアーゼ制限切断で得られたDNAセグメントは、3′,5′−エキソヌクレアーゼ分解活性で突出γ一本鎖末端を除去して、窪み3′末端を重合活性でふさぐ酵素、バクテリオファージT4DNAポリメラーゼまたはE.coli DNAポリメラーゼIで処理される。したがって、これら活性の組合せで平滑末端DNAセグメントを得る。次いで、平滑末端セグメントは、バクテリオファージT4DNAリガーゼのような平滑末端DNA分子の連結を触媒しうる酵素の存在下で、モル大過剰のリンカー分子とインキュベートされる。そのため、反応の産物は末端にポリマーリンカー配列を有するDNAセグメントである。次いで、これらのDNAセグメントは適切な制限酵素で開裂され、そのDNAセグメントのものと適合しうる末端を生じる酵素で開裂された発現ベクターへ連結される。
【0140】
様々な制限エンドヌクレアーゼ部位を含有する合成リンカーが、いくつかの市販元から商業的に入手しうる。
【0141】
本発明に従いDNAを修飾する望ましい手法は、例えばHA変種が作製されるのであれば、Saiki et al.(1988)Science 239,487-491で開示されたようなポリメラーゼ連鎖反応を用いることである。この方法において、酵素的に増幅されるDNAは、増幅DNA中へ自ら入り込む2種の特異的オリゴヌクレオチドプライマーにより隣接される。特異的プライマーは、当業界で公知の方法を用いて、発現ベクター中へのクローニングに用いうる制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含有してもよい。
【0142】
アルブミン融合タンパク質を発現させるための宿主として本発明の実施に際して有用と考えられる酵母の例示属は、Pichia(以前はHansenulaとして分類されていた)、Saccharomyces、Kluyveromyces、Aspergillus、Candida、Torulopsis、Torulaspora、Schizosaccharomyces、Citeromyces、Pachysolen、Zygosaccharomyces、Debaromyces、Trichoderma、Cephalosporium、Humicola、Mucor、Neurospora、Yarrowia、Metschunikowia、Rhodosporidium、Leucosporidium、Botryoascus、Sporidiobolus、Endomycopsisなどである。属には、Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Kluyveromyces、PichiaおよびTorulasporaからなる群より選択されるものを含む。Saccharomyces spp.の例はS.cerevisiae、S.italicusおよびS.rouxiiである。他の種類の例およびそれらの形質転換方法は、参考のためここに組み込まれる、米国仮出願第60/355,547およびWO01/79480(p.97−98)で記載されている。
【0143】
S.cerevisiaeの形質転換方法はEP251744、EP258067およびWO90/01063で一般的に記載されており、それらすべてが参考のためここに組み込まれる。
【0144】
S.cerevisiae用の適切なプロモーターには、PGK1遺伝子、GAL1またはGAL10遺伝子、CYC1、PHO5、TRP1、ADH1、ADH2、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、グルコキナーゼ、α−接合因子フェロモン(接合因子フェロモン)の遺伝子に伴うもの、PRB1プロモーター、GUT2プロモーター、GPD1プロモーター、および他のプロモーターの5′調節領域の一部または上流活性化部位との5′調節領域の一部のハイブリッドを要するハイブリッドプロモーター(例えば、EP−A−258067のプロモーター)がある。
【0145】
Schizosaccharomyces pombeで使用上便利な調節プロモーターは、Maundrell(1990)J.Biol.Chem.265,10857-10864で記載されたようなnmt遺伝子からのチアミン抑制性プロモーター、およびHoffman & Winston(1990)Genetics 124,807-816で記載されたようなグルコース抑制性jbpl遺伝子プロモーターである。
【0146】
外来遺伝子の発現用にPichiaを形質転換する方法は、例えば、Cregg et al.(1993)および様々なPhillips特許(例えば、参考のためここに組み込まれるUS4,857,467)で開示され、Pichia発現キットはInvitrogen BV,Leek,NetherlandsおよびInvitrogen Corp.,San Diego,Californiaから市販されている。適切なプロモーターにはAOX1およびAOX2がある。Gleeson et al.(1986)J.Gen.Microbiol.132,3459-3465はHansenulaベクターおよび形質転換の情報を含み、適切なプロモーターはMOX1およびFMD1である;EP361991、Fleer et al.(1991)およびRhone-Poulenc Rorerによる他の文献では、Kluyveromyces spp.で外来タンパク質を発現する方法を開示している。
【0147】
転写終結シグナルは、転写終結およびポリアデニル化用の適正なシグナルを含む真核生物遺伝子の3′隣接配列でもよい。適切な3′隣接配列は、例えば、用いられた発現コントロール配列へ自然に連結された遺伝子のものでもよく、即ちプロモーターに相当してもよい。一方、それらは異なってもよく、その際にはS.cerevisiae ADH1遺伝子の終結シグナルが必要に応じて用いられる。
【0148】
望ましいアルブミン融合タンパク質は分泌リーダー配列と一緒に初めは発現されることがあり、その配列は選択された酵母で有効ないかなるリーダーでもよい。S.cerevisiaeで有用なリーダーには、接合因子αポリペプチド(MFα−1)からのもの、およびEP−A−387319のハイブリッドリーダーがある。このようなリーダー(またはシグナル)は、成熟アルブミンが周辺培地中へ放出される前に、酵母により開裂される。別のこのようなリーダーには、JP62−096086(911036516として許可)で開示されたS.cerevisiaeインベルターゼ(SUC2)、酸ホスファターゼ(PHO5)、MFα−1,0グルカナーゼのプレ配列(BGL2)およびキラー毒素;S.diastaticusグルコアミラーゼII;S.carlsbergensis α−ガラクトシダーゼ(MEL1);K.lactisキラー毒素;およびCandidaグルコアミラーゼのものがある。
【0149】
アルブミン融合タンパク質の組換えおよび合成産生の別法
本発明は、本発明のアルブミン融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、これらのポリヌクレオチドを含有するベクター、宿主細胞および生物を含む。本発明は、合成および組換え技術により、本発明のアルブミン融合タンパク質を産生する方法も含む。ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞および生物は、当業界で公知の方法により単離および精製される。
【0150】
本発明で有用なベクターは、例えば、ファージ、プラスミド、コスミド、ミニ染色体、ウイルスまたはレトロウイルスベクターである。
【0151】
本発明のポリヌクレオチドをクローニングおよび/または発現するために利用しうるベクターは、そのポリヌクレオチドの複製および/または発現が望まれる宿主細胞でポリヌクレオチドを複製および/または発現しうるベクターである。一般的に、ポリヌクレオチドおよび/またはベクターは、哺乳動物細胞(例えばヒト(例えばHeLa)、サル(例えばCos)、ウサギ(例えばウサギ網状赤血球)、ラット、ハムスター(例えば、CHO、NSOおよびベビーハムスター腎臓細胞)またはマウス細胞(例えばL細胞))、植物細胞、酵母細胞、昆虫細胞または細菌細胞(例えばE.coli)を含めて、真核または原核いずれの細胞でも利用しうる。例えば、様々なタイプの宿主細胞向けに適したベクターの例に関して、F.Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience(1992) and Sambrook et al.(1989)参照。しかしながら、複製欠失のあるレトロウイルスベクターが用いられた場合、ウイルス増殖は相補的宿主細胞のみで通常生じることに留意しなければならない。
【0152】
これらのポリヌクレオチドを含有した宿主細胞は、例えば医薬、診断試薬、ワクチンおよび治療剤に有用なタンパク質を大量に発現させるために用いうる。タンパク質は、当業界で知られたまたはここで記載された方法により、単離および精製される。
【0153】
本発明のアルブミン融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、宿主で増殖用の選択マーカーを含有したベクターへ結合させてもよい。通常、プラスミドベクターは、沈降物、例えばリン酸カルシウム沈降物、または荷電脂質との複合物中に導入される。ベクターがウイルスであるならば、それは適切なパッケージング細胞系を用いてインビトロでパッケージングされ、次いで宿主細胞中へ導入される。
【0154】
ポリヌクレオチドインサートは、ポリヌクレオチドが発現される宿主細胞と適合しうる適切なプロモーターへ作働可能に連結すべきである。そのプロモーターは強プロモーターおよび/または誘導プロモーターである。プロモーターの例として、いくつか挙げると、ファージラムダPLプロモーター、E.coli lac、trp、phoAおよびtacプロモーター、SV40初期および後期プロモーター、およびレトロウイルスLTRのプロモーターがある。他の適切なプロモーターも当業者にはわかるであろう。発現構築物は、転写開始、終結のための部位、および転写領域には、翻訳のためのリボソーム結合部位を更に含有する。その構築物により発現される転写物のコード部分は、翻訳されるポリペプチドの始めに翻訳開始コドン、およびその終わりに終止コドン(UAA、UGAまたはUAG)を適切な部位で含有しうる。
【0155】
示されたように、発現ベクターは少なくとも1つの選択マーカーを含有しうる。このようなマーカーには、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、G418、グルタミンシンターゼ、または真核細胞培養用のネオマイシン耐性、およびE.coliおよび他の細菌で培養向けのテトラサイクリン、カナマイシンまたはアンピシリン耐性遺伝子がある。適切な宿主の代表例には、細菌細胞、例えばE.coli、StreptomycesおよびSalmonella typhimurium細胞;真菌細胞、例えば酵母細胞(例えば、Saccharomyces cerevisiaeまたはPichia pastoris(ATCC受入No.201178));昆虫細胞、例えばDrosophila S2およびSpodoptera Sf9細胞;動物細胞、例えばCHO、COS、NSO、293およびBowesメラノーマ細胞;および植物細胞があるが、それらに限定されない。上記宿主細胞用に適した培地および条件は、当業界で公知である。
【0156】
一つの態様において、本発明のアルブミン融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、原核または真核細胞の特定分画へ本発明のタンパク質を局在化させる、および/または原核または真核細胞から本発明のタンパク質を分泌させる、シグナル配列へ融合させてもよい。例えば、E.coliの場合では、タンパク質の発現を周辺腔へ向けたいと思うことがある。細菌の周辺腔へポリペプチドの発現を向けるために、本発明のアルブミン融合タンパク質が融合されるシグナル配列またはタンパク質(またはその断片)の例には、pelBシグナル配列、マルトース結合タンパク質(MBP)シグナル配列、MBP、ompAシグナル配列、ペリプラズムE.coli熱不安定エンテロトキシンBサブユニットのシグナル配列、およびアルカリホスファターゼのシグナル配列があるが、それらに限定されない。いくつかのベクターが、New England Biolabs市販のpMALシリーズのベクター(特に、pMAL−pシリーズ)のように、タンパク質の局在化を指示する融合タンパク質の構築向けに市販されている。特別な態様において、本発明のアルブミン融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、グラム陰性菌でこのようなポリペプチドの発現および精製の効力を高めるために、pelBペクチン酸リアーゼシグナル配列へ融合される。米国特許第5,576,195および5,846,818参照;その内容は参考のためそれら全体でここに組み込まれる。
【0157】
哺乳動物細胞で分泌を指示するために本発明のアルブミン融合タンパク質へ融合されるシグナルペプチドの例には、MPIF−1シグナル配列(例えば、GenBank受入No.AAB51134のアミノ酸1−21)、スタンニオカルシンシグナル配列(MLQNSAVLLLLVISASA、SEQ ID NO: )およびコンセンサスシグナル配列(MPTWAWWLFLVLLLALWAPARG、SEQ ID NO: )があるが、それらに限定されない。バキュロウイルス発現系と共に用いうる適切なシグナル配列は、gp67シグナル配列(例えば、GenBank受入No.AAA72759のアミノ酸1−19)である。
【0158】
選択マーカーとしてグルタミンシンターゼ(GS)またはDHFRを用いたベクターは、各々薬物メチオニンスルホキシミンまたはメソトレキセートの存在下で増幅させうる。グルタミンシンターゼベースベクターの利点は、グルタミンシンターゼ陰性の細胞系(例えば、ネズミミエローマ細胞系NSO)の利用可能性である。グルタミンシンターゼ発現系は、追加インヒビターを入れて内在遺伝子の機能を妨げることにより、グルタミンシンターゼ発現細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)でも機能しうる。グルタミンシンターゼ発現系およびその成分はPCT文献:WO87/04462、WO86/05807、WO89/01036、WO89/10404およびWO91/06657で詳述されており、これらは参考のためそれら全体でここに組み込まれる。加えて、グルタミンシンターゼ発現ベクターはLonza Biologics,Inc.(Portsmouth,NH)から得られる。ネズミミエローマ細胞でGS発現系を用いたモノクローナル抗体の発現および産生は、参考のためここに組み込まれるBebbington et al.,Bio/technology 10:169(1992)およびBiblia and Robinson Biotechnol.Prog.11:1(1995)で記載されている。
【0159】
本発明は、ベクター構築物を含有した宿主細胞、例えばここで記載されているものにも関し、当業界で公知の技術を用いて1以上の異種コントロール領域(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)と作働可能に結合された本発明のヌクレオチド配列を含有する宿主細胞を更に包含する。宿主細胞は哺乳動物細胞(例えば、ヒト由来細胞)のような高等真核細胞でもまたは酵母細胞のような下等真核細胞でもよく、あるいは宿主細胞は細菌細胞のような原核細胞でもよい。挿入遺伝子配列の発現を調節するか、または望ましい特別な方式で遺伝子産物を修飾およびプロセッシングする宿主株が選択される。あるプロモーターからの発現はあるインデューサーの存在下で高められる;こうして遺伝子工学ポリペプチドの発現が制御しうる。更に、異なる宿主細胞はタンパク質の翻訳および翻訳後プロセッシングおよび修飾(例えば、リン酸化、開裂)について特徴および特別なメカニズムを有している。発現される外来タンパク質の望ましい修飾およびプロセッシングを保証するために、適切な細胞系が選択される。
【0160】
本発明の核酸および核酸構築物の宿主細胞中への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスダクション、感染または他の方法により行える。このような方法は多くの標準実験マニュアル、例えばDavis et al.,Basic Methods In Molecular Biology(1986)で記載されている。本発明のポリペプチドは組換えベクターを欠く宿主細胞により実際に発現させうる、と特に考えられている。
【0161】
ここで記載されたベクター構築物を含有した宿主細胞を包含することに加えて、本発明は、内在遺伝物質を欠失または置き換える(例えば、治療用タンパク質に相当するコード配列は、治療用タンパク質に相当するアルブミン融合タンパク質で置き換えてもよい)および/または遺伝物質を含有する(例えば、例えば治療用タンパク質に相当する本発明のアルブミン融合タンパク質のような異種ポリヌクレオチド配列が含有させうる)ように工学処理された脊椎動物源、特に哺乳動物源の一次、二次および不死化宿主細胞も包含する。内在ポリヌクレオチドと作働可能に結合された遺伝物質は、内在ポリヌクレオチドを活性化、変化および/または増幅させうる。
【0162】
加えて、当業界で公知の技術は、相同的組換え(例えば、1997年6月24日付で発行された米国特許第5,641,670;国際公開第WO96/29411;国際公開第WO94/12650;Koller et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932-8935(1989);Zijlstra et al.,Nature 342:435-438(1989)参照;それら各々の開示は参考のためそれら全体でここに組み込まれる)により、治療用タンパク質をコードする内在ポリヌクレオチド配列と、異種ポリヌクレオチド(例えば、アルブミンタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはその断片もしくは変種)および/または異種コントロール領域(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)を作働可能に結合させるために用いてもよい。
【0163】
有利には、本発明のアルブミン融合タンパク質は、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈降、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、疎水性電荷相互作用クロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含めた周知の方法により、組換え細胞培養物から回収および精製しうる。一部の態様では、高性能液体クロマトグラフィー(「HPLC」)が精製に用いうる。一部の場合には、治療用タンパク質は低い溶解性を有するか、あるいは低もしくは高pHのみでまたは高もしくは低塩のみに可溶性である。HSAへの治療用タンパク質の融合は、治療用タンパク質の溶解特徴を改善するようである。
【0164】
一部の態様において、本発明のアルブミン融合タンパク質は上記の1以上のクロマトグラフィー法を用いて精製される。他の態様では、本発明のアルブミン融合タンパク質は次のクロマトグラフィーカラム、QセファロースFFカラム、SPセファロースFFカラム、Qセファロース高性能カラム、ブルーセファロースFFカラム、ブルーカラム、フェニルセファロースFFカラム、DEAEセファロースFFまたはメチルカラムのうち1以上を用いて精製される。
【0165】
加えて、本発明のアルブミン融合タンパク質は、参考のためそれ全体でここに組み込まれる国際公開第WO00/44772で記載されたプロセスを用いて精製してもよい。当業者であれば、本発明のアルブミン融合タンパク質の精製で使用のために、ここで記載されたプロセスを容易に改変しうるであろう。
【0166】
本発明のアルブミン融合タンパク質は、例えば細菌、酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物細胞を含めた原核または真核宿主から組換え技術により産生された産物より回収しうる。組換え産生操作で用いられた宿主に応じて、本発明のポリペプチドはグリコシル化されても、またはグリコシル化されなくてもよい。加えて、本発明のアルブミン融合タンパク質は、一部の場合には宿主媒介プロセスの結果として、開始修飾メチオニン残基も含有してよい。こうすると、翻訳開始コドンによりコードされたN末端メチオニンが、すべての真核細胞で翻訳後にタンパク質から高効力で通常除去されることは、当業界で周知である。ほとんどのタンパク質のN末端メチオニンはほとんどの原核細胞で効率的に除去されるが、一部のタンパク質の場合には、N末端メチオニンが共有結合されたアミノ酸の性質に応じて、この原核除去プロセスは非効率的である。
【0167】
本発明のアルブミン融合タンパク質、および治療用タンパク質またはその断片もしくは変種と結合する抗体は、マーカー配列、例えば精製を促すためのペプチドへ融合させてもよい。一つの態様において、マーカーアミノ酸配列はヘキサヒスチジンペプチド、例えばpQEベクターでもたらされるタグ(QIAGEN,Inc.,9259 Eton Avenue,Chatsworth,CA,91311)であり、特にその多くが市販されている。例えばGentz et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821-824(1989)で記載されているように、ヘキサヒスチジンは融合タンパク質の精製に便宜をもたらす。精製に有用な他のペプチドタグには、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質から誘導されるエピトープに相当する「HA」タグ(Wilson et al.,Cell 37:767(1984))および「FLAG」タグがあるが、それらに限定されない。
【0168】
更に、本発明のアルブミン融合タンパク質は、治療部分、例えば、細胞毒素、例えば細胞静止または細胞致死剤、治療剤または放射性金属イオン、例えば213Biのようなα放出体へ接合してもよい。このような剤の例は、参考のためここに組み込まれる、米国仮出願第60/355,547およびWO01/79480(p.107)で記載されている。
【0169】
アルブミン融合タンパク質は、本発明のアルブミン融合タンパク質により結合されている、それと結合または会合するポリペプチドのイムノアッセイまたは精製に特に有用な固形担体へ付着させてもよい。このような固形担体には、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルクロリドまたはポリプロピレンがあるが、それらに限定されない。
【0170】
ポリペプチドの溶解性、安定性および循環時間の向上、または免疫原性の低下のような追加の利点を発揮しうる、本発明のアルブミン融合タンパク質の化学的修飾誘導体も、本発明により提供される(米国特許第4,179,337参照)。ポリエチレングリコールの使用を伴う例は、参考のためここに組み込まれる、WO01/79480(p.109−111)で記載されている。
【0171】
本発明のアルブミン融合タンパク質の存在および量は、当業界で知られている周知のイムノアッセイ、ELISAを用いて調べてもよい。
【0172】
ポリペプチドの使用
ここで特定されたポリペプチドの各々は様々な手法で用いうる。以下の記載は例示とみなすべきであり、公知の技術を利用している。
本発明のアルブミン融合タンパク質は、哺乳動物、好ましくはヒトで様々な障害の治療、予防および/または予後に有用である。このような障害には表4の「生物活性」欄で記載されたものがあるが、それらに限定されない。例えば、本発明のアルブミン融合タンパク質は、セリンプロテアーゼ、プラスミン、ヒト好中球エラスターゼおよび/またはカリクレインのインヒビターとして用いうる。
【0173】
アルブミン融合タンパク質は、生物学的サンプルポリペプチドのレベルをアッセイするために用いうる。例えば、本発明の放射線標識アルブミン融合タンパク質は身体におけるポリペプチドの画像診断に用いうる。アッセイの例は、例えば、参考のためここに組み込まれる米国仮出願第60/355,547およびWO0179480(p.112−122)で記載されており、当業界で周知である。タンパク質のインビボ画像診断用のラベルまたはマーカーには、X−ラジオグラフィー、核磁気共鳴(NMR)、電子スピン緩和(ESR)、陽電子放射断層撮影法(PET)またはコンピューター断層撮影法(CT)により検出しうるものがあるが、それらに限定されない。X−ラジオグラフィーの場合、適切なラベルには、検出可能な放射線を放射するが、被験者に過度に有害でない、バリウムまたはセシウムのような放射性同位元素がある。NMRおよびESRに適したマーカーには、本発明のアルブミン融合タンパク質を発現する細胞系へ入れられる栄養素のラベリングによりアルブミン融合タンパク質中へ取り込まれる、重水素のような、検出可能な特徴的スピンをもつものがある。
【0174】
適切な検出可能画像化部分、例えば放射性同位元素、例えば131I、112In、99mTc(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、イオウ(35S)、トリチウム(H)、インジウム(115mIn、113mIn、112In、111In)、テクネチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru)、放射線不透過性物質、または核磁気共鳴により検出しうる物質で標識されたアルブミン融合タンパク質は、免疫系障害について試験される哺乳動物へ(例えば、非経口、皮下または腹腔内)導入される。被験者のサイズおよび用いられる画像化システムが診断画像を作るために必要な画像化部分の量を決定する、と当業界では理解されるであろう。放射性同位元素部分について、ヒト被験者の場合では、投入される放射線の量が99mTcで通常約5〜20ミリキュリーである。その際に、標識されたアルブミン融合タンパク質は、1以上のレセプター、リガンドまたは基質(本発明のアルブミン融合タンパク質を作製するために用いられる治療用タンパク質のものに相当する)が位置する体内部位(例えば、臓器、細胞、細胞外空間またはマトリックス)で、優先的に蓄積してくる。一方、アルブミン融合タンパク質が治療用抗体の少なくとも1つの断片または変種を含んでなる場合に、標識されたアルブミン融合タンパク質は、(本発明のアルブミン融合タンパク質を作製するために用いられる)治療用抗体により結合されるものに相当するポリペプチド/エピトープが位置する体内部位(例えば、臓器、細胞、細胞外空間またはマトリックス)で、優先的に蓄積してくる。インビボ腫瘍画像診断はS.W.Burchiel et al.,”Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments”(Chapter 13 in Tumor Imaging:The Radiochemical Detection of Cancer,S.W.Burchiel and B.A.Rhodes,eds.,Masson Publishing Inc.(1982))で記載されている。そこで記載されたプロトコールは、本発明のアルブミン融合タンパク質向けに、当業者により簡単に修正しうる。
【0175】
本発明のアルブミン融合タンパク質は、宿主細胞の形質転換を評価する手法として、または生物学的サンプルにおいて、組換え細胞からの治療用タンパク質、アルブミンタンパク質および/または本発明のアルブミン融合タンパク質のタンパク質発現を測定するために用いられる抗体を産生するために用いることもできる。更に、本発明のアルブミン融合タンパク質は、ここで記載された生物活性を試験するために用いうる。
【0176】
トランスジェニック生物
本発明のアルブミン融合タンパク質を発現するトランスジェニック生物も本発明に含まれる。トランスジェニック生物は、組換え、外来またはクローン化遺伝物質が移入された遺伝子修飾生物である。このような遺伝物質はトランスジーンと称されることが多い。トランスジーンの核酸配列は、コードされたタンパク質の最良発現および分泌に必要かもしれない、1以上の転写調節配列および他の核酸配列、例えばイントロンを含有しうる。トランスジーンは、生物からの、または生物により産生された産物からの、例えば生物の乳、血液、尿、卵、毛または種子からの回収を促すやり方で、コードタンパク質の発現を指示するようにデザインしてもよい。トランスジーンは、標的動物の種と同様の種またはそれとは異なる種のゲノムから誘導される核酸配列からなる。トランスジーンは、特定の核酸配列が通常みられないゲノムの座に、またはトランスジーンの正常な座に組み込まれる。
【0177】
「生殖細胞系トランスジェニック生物」という用語は、遺伝子改変または遺伝情報が生殖系細胞中へ導入されることで、遺伝情報を子孫へ伝えうるトランスジェニック生物の能力を付与した、トランスジェニック生物に関する。このような子孫がその改変または遺伝情報の一部または全部を実際に有しているならば、それらもトランスジェニック生物である。その改変または遺伝情報は、レシピエントが属する生物の種に外来でも、具体的な個別のレシピエントのみに外来であっても、またはレシピエントにより既に保有された遺伝情報でもよい。最後の場合に、改変または導入された遺伝子は、在来遺伝子とは別に発現されることもある。
【0178】
トランスジェニック生物は、トランスジェニックのヒト、動物または植物である。トランスジェニックは、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、胚幹細胞での遺伝子標的化と組換えウイルスおよびレトロウイルス感染を含めた様々な異なる方法により作製しうる(例えば、米国特許第4,736,866;米国特許第5,602,307;Mullins et al.(1993)Hypertension 22(4):630-633;Brenin et al.(1997)Surg.Oncol.6(2)99-111;Tuan(ed.),Recombinant Gene Expression Protocols,Methods in Molecular Biology No.62,Humana Press(1997)参照)。組換えコンピテント哺乳動物細胞中への核酸断片の導入方法は、マルチ核酸分子の同時形質転換を行わせる、どのような方法によるものでもよい。トランスジェニック動物を作製するための詳細な操作は、米国特許第5,489,743および米国特許第5,602,307の開示を含めて、当業者に容易に利用しうる。追加の情報は、参考のためここに組み込まれる、米国仮出願第60/355,547およびWO01/79480(p.151−162)で記載されている。
【0179】
遺伝子療法
本発明のアルブミン融合タンパク質をコードする構築物は、治療有効量のアルブミン融合タンパク質を送達する遺伝子療法プロトコールの一部として用いうる。細胞中への核酸のインビボ導入のための1つのアプローチは、本発明のアルブミン融合タンパク質をコードする核酸を含有したウイルスベクターの使用による。ウイルスベクターによる細胞の感染は、標的細胞の大部分がその核酸を受け取れる、という利点を有している。加えて、ウイルスベクター内でコードされた分子は、例えばウイルスベクターに含有されたcDNAにより、ウイルスベクター核酸を取り込んだ細胞で効率的に発現される。望ましいアルブミン融合タンパク質の血漿半減期延長は、潜在的な低発現レベルすら補えるかもしれない。
【0180】
レトロウイルスベクターおよびアデノ関連ウイルスベクターは、インビボでアルブミン融合タンパク質をコードする外来核酸分子の移入用の組換え遺伝子送達系として用いうる。これらのベクターは細胞中への核酸の効率的送達を行い、移入された核酸は宿主の染色体DNA中へ安定的に組み込まれる。このようなベクターの例、それらを用いる方法、それらの利点および非ウイルス送達法は、参考のためここに組み込まれる、米国仮出願第60/355,547およびWO01/79480(p.151−153)で詳細に記載されている。
【0181】
本発明のアルブミン融合タンパク質をコードする遺伝子用の遺伝子送達系は、いくつかの方法で患者へ導入される。例えば、遺伝子送達系の医薬製剤は、例えば静脈注射により全身導入でき、標的細胞へのタンパク質の特異的導入は、遺伝子送達ビヒクルにより得られるトランスフェクションの特異性、レセプター遺伝子の転写調節配列制御発現による細胞タイプまたは組織タイプ発現、またはそれらの組合せから優先的に生じる。他の態様において、組換え遺伝子の初期送達は更に制限されており、動物への導入は全く局在化されている。例えば、遺伝子送達ビヒクルはカテーテル(米国特許5,328,470)または定位注射(例えば、Chen et al.(1994)PNAS 91:3054-3057)により導入しうる。遺伝子療法構築物の医薬製剤は許容される希釈物中の遺伝子送達系から本質的になるか、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれた徐放性マトリックスを含むことができる。アルブミン融合タンパク質が組換え細胞、例えばレトロウイルスベクターから完全なままで産生されうる場合は、医薬製剤はアルブミン融合タンパク質を産生する1以上の細胞を含むことができる。別な遺伝子療法は、参考のためここに組み込まれる、米国仮出願第60/355,547およびWO01/79480(p.153−162)で記載されている。
【0182】
医薬または治療組成物
本発明のアルブミン融合タンパク質またはその処方物は、非経口(例えば、皮下または筋肉内)注射または静脈内注入を含めた、いずれかの常法により投与される。治療は所定の期間にわたり1回の投薬または複数回の投薬からなる。更に、1回分の用量または複数回分の用量が、アルブミンへ融合されていない治療用タンパク質の場合よりも少ない回数で投与される。
【0183】
本発明のアルブミン融合タンパク質は単独で投与することが可能であるが、1種以上の許容される担体と一緒に医薬処方物としてそれを提供することが望ましい。担体は、アルブミン融合タンパク質と適合できて、そのレシピエントに有害でないという意味で、「許容しうる」ものでなければならない。典型的には、担体は無菌で無発熱物質の水または塩水である。本発明のアルブミン融合タンパク質は、溶液中での貯蔵期間延長のおかげで、無菌無発熱物質水、塩水または他の等張液のような水性担体中での処方に特によく合う。例えば、本発明の医薬組成物は、例えば分配される数週間、数ヶ月間前またはそれ以上前に、予め水性形で適宜に処方される。
【0184】
アルブミン融合タンパク質を含有した処方物は、水性処方物中でのアルブミン融合タンパク質の貯蔵期間延長を考慮にいれて製造される。上記のように、これら治療用タンパク質の多くの貯蔵期間はHAへの融合後に著しく増加または長期化する。
【0185】
エアゾール投与が適する場合に、本発明のアルブミン融合タンパク質は標準操作を用いてエアゾールとして処方しうる。「エアゾール」という用語は、細気管支または鼻腔中へ吸入されうる、本発明のアルブミン融合タンパク質のガス入り懸濁相を含有している。特に、エアゾールは、計量吸入器もしくはネブライザー、またはミストスプレー器で生じさせるように、本発明のアルブミン融合タンパク質の液滴のガス入り懸濁物を含有している。エアゾールは、例えば吸入器から吸入により送達される、空気または他のキャリアガス中に懸濁された本発明の化合物の乾燥粉末組成物も含有している。
【0186】
処方物は便宜上単位剤形で供与し、製剤業界で周知の方法により製造してもよい。このような方法は、1種以上の補助成分からなる担体とアルブミン融合タンパク質とを混合する工程を含んでいる。一般的に、処方物は、液体担体、微細固形担体または双方と活性成分を均一かつ完全に混合し、必要であれば、製品に成形することにより製造される。
【0187】
非経口投与に適した処方物には、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤および処方物を所定のレシピエントに適合させる溶質を含有した水性および非水性無菌注射液;懸濁剤および増粘剤を含有した水性および非水性無菌懸濁液がある。処方物は単位用量またはマルチ用量容器、例えば密封アンプル、バイアルまたはシリンジで供与され、フリーズドライ(凍結乾燥)条件下で貯蔵されて、使用直前に無菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを要する。即時注射溶液および懸濁液は無菌粉末から調製される。投薬処方物は、血清半減期の延長が本発明のアルブミン融合タンパク質の多くにより示されるとすれば、治療用タンパク質の非融合標準処方物と比較して低いモル濃度または低い用量で、治療用タンパク質部分を含有しうる。
【0188】
例として、本発明のアルブミン融合タンパク質が1以上の治療用タンパク質領域を含んでなるとき、投薬剤形は、治療用タンパク質そのものの場合と比べたアルブミン融合タンパク質の血清半減期および貯蔵期間の長期化を考慮しながら、治療用タンパク質の効力と比較したアルブミン融合タンパク質の効力に基づき計算できる。例えば、全鎖長治療用タンパク質に融合された全鎖長HAからなるアルブミン融合タンパク質において、相当用量が単位の関係で剤の重量増加に繋がるが、投与回数は減少しうる。
【0189】
本発明の処方物または組成物は、アルブミン融合タンパク質成分の貯蔵期間延長に関する説明書またはパッケージインサートと一緒にパッケージングされるか、またはそれと共にキットへ入れられる。例えば、このような説明書またはパッケージインサートは、本発明のアルブミン融合タンパク質の貯蔵期間延長または長期化を考慮にいれた、時間、温度および光のような推奨貯蔵条件を扱う。このような説明書またはパッケージインサートは、管理された病院、診療所またはオフィス条件の外部、野外で使用を要することもある処方物での貯蔵の容易性のような、本発明のアルブミン融合タンパク質の特別な利点についても扱える。上記のように、本発明の処方物は水性形でもよく、治療活性の過大な喪失なしに、理想とはいかない環境下でも貯蔵しうる。
【0190】
本発明は、製薬上許容される担体中で本発明のアルブミン融合タンパク質または本発明のアルブミン融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(「アルブミン融合ポリヌクレオチド」)の有効量の対象者への投与による、疾患または障害(例えば、ここで開示された疾患または障害のうち1以上)の治療および/または予防の方法も提供する。
【0191】
投与される本発明のアルブミン融合タンパク質および/またはポリヌクレオチドの有効量は、当業者に周知の方法を用いた、表4のレファレンスで記載されたようなルーチンのインビトロおよびインビボ研究からのデータを用いることを含めて、生物学的半減期、バイオアベイラビリティおよび毒性のようなパラメーターを扱う当業者に周知の操作から決定しうる。
【0192】
アルブミン融合タンパク質および/またはポリヌクレオチドは、個別患者の臨床条件(特に、アルブミン融合タンパク質および/またはポリヌクレオチド単独での治療の副作用)、送達の部位、投与の方法、投与のスケジュール、および従事者に公知の他のファクターを考慮にいれて、良好な医療実務に従い処方および投与される。こうして、ここでの目的に合わせた「有効量」がこのような考慮により定められる。
【0193】
例えば、送達される物質の有効量の決定は、例えば、物質の化学構造および生物活性、動物の年齢および体重、治療を要する正確な症状およびその重篤度、および投与の経路を含めたいくつかのファクターに依存しうる。治療の頻度は、1回当たりで投与されるポリヌクレオチド構築物の量、対象者の健康および病歴のようないくつかのファクターに依存する。正確な量、投与の回数および投与のタイミングは、担当医または獣医師により決定される。
【0194】
本発明のアルブミン融合タンパク質およびポリヌクレオチドは、あらゆる動物、好ましくは哺乳動物および鳥へ投与しうる。好ましい哺乳動物には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ウシ、ウマおよびブタがあるが、ヒトが特に好ましい。
【0195】
一般論として、本発明のアルブミン融合タンパク質は、非融合治療用タンパク質よりも少ない用量で、または少ない頻度で投与される。治療有効量とは、患者でインビボHIV力価の低下、症状の改善、病状の安定化または生存期間の延長、または生活の質の改善をもたらすために十分な化合物の量に関する。
【0196】
アルブミン融合タンパク質および/またはポリヌクレオチドは、経口、経直腸、非経口、槽内、膣内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、ゲル、滴剤または経皮パッチとして)、経口腔で、または経口もしくは経鼻スプレーとして投与しうる。「製薬上許容される担体」とは、無毒性固形、半固形または液体フィラー、希釈物、封入物質または処方補助物のあらゆるものに関する。ここで用いられている「非経口」という用語は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節腔内注射および注入を含めた投与様式に関する。
【0197】
本発明のアルブミン融合タンパク質および/またはポリヌクレオチドは、参考のためここに組み込まれる米国仮出願第60/355,547およびWO01/79480(p.129−130)で記載されたような持続的放出系でも、適切に投与される。
【0198】
非経口投与の場合、一つの態様において、アルブミン融合タンパク質および/またはポリヌクレオチドは、製薬上許容される担体、即ち用いられる用量および濃度でレシピエントに無毒性であって処方物の他成分と適合しうるものと、単位注射剤形(溶液、懸濁液または乳濁液)で、望ましい純度でそれを混合することにより、通常処方される。例えば、処方物は、治療剤に有害であることが知られた酸化剤および他の化合物を必要に応じて含有しない。
【0199】
本発明のアルブミン融合タンパク質および/またはポリヌクレオチドは、単独で、または他の治療剤と組み合わせて投与される。本発明のアルブミン融合タンパク質および/またはポリヌクレオチドと組み合わせて投与しうるアルブミン融合タンパク質および/またはポリヌクレオチド剤には、化学療法剤、抗生物質、ステロイドおよび非ステロイド抗炎症剤、慣用的免疫療法剤、および/または、例えば、参考のためここに組み込まれる米国仮出願第60/355,547およびWO01/79480(p.132−151)で記載されたような治療剤があるが、それらに限定されない。組合せ剤は、協同して、例えば混合物として、別々に但し同時または併合して;または連続的に投与される。これには、組合せ剤が治療用混合物として一緒に投与される方式、更には、組合せ剤が別々に但し同時に、例えば同一個体へ別々な静脈系を介して投与される処置も含む。「組合せ」投与には、初回、次いで2回目に行われる化合物または剤の1種の別々な投与を更に含む。
【0200】
本発明で使用に適した医薬組成物には、活性成分がその所定目的を果たせる有効量で含有された組成物を含む。
【0201】
本発明は、本発明のアルブミン融合タンパク質を含んでなる医薬組成物の1種以上の諸成分で1以上の容器を満たした、製薬パックまたはキットも提供する。必要に応じて、医薬または生物学的製剤の製造、使用または販売を規制する政府機関により規定された告知書がこのような容器に付されており、その告知書はヒト投与用の製造、使用または販売について機関による承認を表示している。
【0202】
本発明のこの一般的記載から、当業者であれば、これまでの記載および以下の実施例を用いて、本発明で認められた改変を行いおよび利用して、請求項記載の方法を実施しうる、と考えられる。したがって、下記研究例は本発明の異なる態様を特に示しており、開示の残りを制限するとは決して解釈すべきでない。
【実施例】
【0203】
例1: N末端およびC末端アルブミン−(GGS)GGリンカークローニングベクターの構築
組換えアルブミン発現ベクターpDB2243およびpDB2244は、特許出願WO00/44772で以前に記載されている。組換えアルブミン発現ベクターpAYE645およびpAYE646は、UK特許出願0217033.0で以前に記載されている。
アルブミンポリペプチドのC末端で14アミノ酸ポリペプチドリンカーN−GGSGGSGGSGGSGG−C((GGS)GG:「N」および「C」はポリペプチド配列の向きを表わす)をコードするDNA配列を導入し、次いで(GGS)GGリンカーのC末端にもう1つのポリペプチド鎖を挿入して、全体構造、アルブミン−(GGS)GG−ポリペプチドのC末端アルブミン融合体を作製するように、プラスミドpDB2243を修飾した。同様に、アルブミンポリペプチドのN末端で(GGS)GGポリペプチドリンカーをコードするDNA配列を導入し、次いで(GGS)GGリンカーのN末端にもう1つのポリペプチド鎖を挿入して、ポリペプチド−(GGS)GG−アルブミンの全体構造でN末端アルブミン融合体を作製するように、プラスミドpAYE645を修飾した。
【0204】
適切な転写プロモーターおよび転写ターミネーター配列を供与する酵母PRB1プロモーターおよび酵母ADH1ターミネーターを含有したプラスミドpDB2243が、Sleep,D.et al.(1991)Bio/Technology 9,183-187および特許出願WO00/44772で記載されている。プラスミドpDB2243をBamHIで完全に切断し、窪み末端をT4DNAポリメラーゼおよびdNTPで平滑末端化し、最後に再連結して、プラスミドpDB2566を作製した。
【0205】
2本鎖合成オリゴヌクレオチドリンカーBsu36I/HindIIIリンカーを、合成オリゴヌクレオチドJH033AおよびJH033Bをアニールすることにより合成した。
【化2】

【0206】
アニールされたBsu36I/HindIIIリンカーをHindIII/Bsu36I切断pDB2566へ連結して、C末端に(GGS)GGペプチドリンカーをもつアルブミンコード領域を含んでなるプラスミドpDB2575Xを作製した。
【0207】
適切な転写プロモーターおよび転写ターミネーター配列を供与する酵母PRB1プロモーターおよび酵母ADH1ターミネーターを含有したプラスミドpAYE645が、UK特許出願0217033.0で記載されている。プラスミドpAYE645を制限酵素AflIIで完全に切断し、制限酵素HindIIIで部分的に切断し、3′側の酵母PRB1プロモーターおよびrHAコード配列を含んでなるDNA断片を単離した。特許出願WO00/44772で記載されたプラスミドpDB2241をAflII/HindIIIで切断し、5′側の酵母PRB1プロモーターおよび酵母ADH1ターミネーターを含んでなるDNA断片を単離した。次いで、pAYE645からのAflII/HindIII DNA断片をAflII/HindIII pDB2241ベクターDNA断片へクローニングして、プラスミドpDB2302を作製した。プラスミドpDB2302をPacI/XhoIで完全に切断し、6.19kb断片を単離し、窪み末端をT4DNAポリメラーゼおよびdNTPで平滑末端化し、再連結して、プラスミドpDB2465を作製した。プラスミドpDB2465をClaIで直線化し、窪み末端をT4DNAポリメラーゼおよびdNTPで平滑末端化し、再連結して、プラスミドpDB2533を作製した。プラスミドpDB2533をBlnIで直線化し、窪み末端をT4DNAポリメラーゼおよびdNTPで平滑末端化し、再連結して、プラスミドpDB2534を作製した。プラスミドpDB2534をBmgBI/BglIIで完全に切断し、6.96kb DNA断片を単離し、2種の2本鎖オリゴヌクレオチドリンカーのうち一方、即ちVC053/VC054およびVC057/VC058へ連結してプラスミドpDB2540を作製し、またはVC055/VC056およびVC057/VC058へ連結してプラスミドpDB2541を作製した。
【0208】
【化3】

【0209】
2本鎖合成オリゴヌクレオチドリンカーBglII/AgeIリンカーを、合成オリゴヌクレオチドJH035AおよびJH035Bをアニールすることにより合成した。
【化4】

【0210】
アニールされたBglII/AgeIリンカーをBglII/AgeI切断pDB2540へ連結して、N末端に(GGS)GGペプチドリンカーをもつアルブミンコード領域を含んでなるプラスミドpDB2573Xを作製した。
【0211】
例2: 非融合DPI−14の平衡阻害定数
DPI−14のアミノ酸配列はか下記のとおりである:
【化5】

(SEQ ID NO: )。DNA配列を逆翻訳のプロセスによりこのポリペプチド配列から誘導した。DPI−14をPichiaで発現させ、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよび限外濾過を用いて発酵ブロス上澄から抽出した。ヒト好中球エラスターゼ(HNE)のDPI−14阻害に関する平衡阻害定数(K)は15±2pM、〔HNE〕=57±7pMであることがわかった。K測定は例15で記載された方法を用いて行った。
【0212】
例3: N末端およびC末端アルブミン−DPI−14融合体の構築
N末端DPI−14−(GGS)GG−アルブミンまたはC末端アルブミン−(GGS)GG−DPI−14融合体で適合するようなDPI−14コード領域、アルブミンコード領域またはリーダー配列間の架橋配列をコードするDNA配列を5′または3′末端で用意した。N末端BglII−BamHI DPI−14 cDNA(表5)およびC末端BamHI−HindIII DPI−14 cDNA(表6)をオーバーラップオリゴヌクレオチドから構築した。
【0213】
例4: N末端DPI−14−(GGS)GG−アルブミン発現プラスミドの構築
プラスミドpDB2573XをBglIIおよびBamHIで完全に切断し、6.21kb DNA断片を単離し、仔ウシ腸ホスファターゼで処理し、次いで0.2kb BglII/BamHI N末端DPI−14 cDNAと連結して、pDB2666を作製した。
N末端DPI−14−(GGS)GG−アルブミン融合体のDNAおよびアミノ酸配列は表7および表8で各々示されている。適切な酵母ベクター配列を、EP−A−286424で一般的に開示され、Sleep,D.et al.(1991)Bio/Technology 9,183-187で記載された「崩壊」プラスミドpSAC35により得た。NotI N末端DPI−14−(GGS)GG−rHA発現カセットをpDB2666から単離し、精製し、仔ウシ腸ホスファターゼで処理されたNotI切断pSAC35へ連結させて、2種のプラスミドを作製した;第一(pDB2679)はLEU2と同じ発現方向でNotI発現カセットを含有し、第二(pDB2680)はLEU2と反対の方向でNotI発現カセットを含有していた。pDB2679およびpDB2680は双方とも望ましい融合タンパク質の良いプロデューサーである。
【0214】
例5: C末端アルブミン−(GGS)GG−DPI−14発現プラスミドの構築
プラスミドpDB2575XをHindIIIで部分的に切断し、次いでBamHIで完全に切断した。望ましい6.55kb DNA断片を単離し、0.2kb BamHI/HindIII C末端DPI−14 cDNAと連結して、pDB2648を作製した。C末端アルブミン−(GGS)GG−DPI−14融合体のDNAおよびアミノ酸配列は表9および表10で各々示されている。適切な酵母ベクター配列を、EP−A−286424で一般的に開示され、Sleep,D.et al.(1991)Bio/Technology 9,183-187で記載された「崩壊」プラスミドpSAC35により得た。NotI C末端アルブミン−(GGS)GG−DPI−14発現カセットをpDB2648から単離し、精製し、仔ウシ腸ホスファターゼで処理されたNotI切断pSAC35へ連結させて、LEU2と同じ発現方向でNotI発現カセットを含有するpDB2651を作製した。
【0215】
例6:C末端アルブミン−(GGS)GG−DX−1000発現プラスミドの構築
プラスミドpDB2575XをHindIIIで部分的に切断し、次いでBamHIで完全に切断した。望ましい6.55kb DNA断片を単離し、表11で示されているような0.2kb BamHI/HindIII C末端DX−1000 cDNAと連結して、pDB2648X−1000を作製した。適切な酵母ベクター配列を、EP−A−286424で一般的に開示され、Sleep,D.et al.(1991)Bio/Technology 9,183-187で記載された「崩壊」プラスミドpSAC35により得た。NotI C末端アルブミン−(GGS)GG−DX−1000発現カセットをpDB2648X−1000から単離し、精製し、仔ウシ腸ホスファターゼで処理されたNotI切断pSAC35へ連結させて、LEU2と同じ発現方向でNotI発現カセットを含有するpDB2651X−1000を作製した。
【0216】
例7: N末端およびC末端アルブミン−DX−890融合体の構築
基本クローンの作製
DX−890のアミノ酸配列は下記のとおりである:
【化6】

(SEQ ID NO: )。DNA配列を逆翻訳のプロセスによりこのポリペプチド配列から誘導した。N末端DX−890−(GGS)GG−アルブミンまたはC末端アルブミン−(GGS)GG−DX−890融合体で適合するようなDX−890コード領域、アルブミンコード領域またはリーダー配列間の架橋配列をコードするDNA配列を5′または3′末端で用意した。N末端BglII−BamHI DX−890 cDNA(表12)およびC末端BamHI−HindIII DX−890 cDNA(表13)をオーバーラップオリゴヌクレオチドから構築した。
【0217】
例8: N末端DX−890−(GGS)GG−アルブミン発現プラスミドの構築
プラスミドpDB2573XをBglIIおよびBamHIで完全に切断し、6.21kb DNA断片を単離し、仔ウシ腸ホスファターゼで処理し、次いで0.2kb BglII/BamHI N末端DX−890 cDNAと連結して、pDB2683を作製した。N末端DX−890−(GGS)GG−アルブミン融合体のDNAおよびアミノ酸配列は表14および表15で各々示されている。適切な酵母ベクター配列を、EP−A−286424で一般的に開示され、Sleep,D.et al.(1991)Bio/Technology 9,183-187で記載された「崩壊」プラスミドpSAC35により得た。NotI N末端DX−890−(GGS)GG−rHA発現カセットをpDB2683から単離し、精製し、仔ウシ腸ホスファターゼで処理されたNotI切断pSAC35へ連結させて、LEU2と反対の方向でNotI発現カセットを含有するpDB2684を作製した。
【0218】
例9: C末端アルブミン−(GGS)GG−DX−890発現プラスミドの構築
プラスミドpDB2575XをHindIIIで部分的に切断し、次いでBamHIで完全に切断した。望ましい6.55kb DNA断片を単離し、0.2kb BamHI/HindIII C末端DX−890 cDNAと連結して、pDB2649を作製した。C末端アルブミン−(GGS)GG−DX−890融合体のDNAおよびアミノ酸配列は表16および表17で各々示されている。適切な酵母ベクター配列を、EP−A−286424で一般的に開示され、Sleep,D.et al.(1991)Bio/Technology 9,183-187で記載された「崩壊」プラスミドpSAC35により得た。NotI C末端アルブミン−(GGS)GG−DX−890発現カセットをpDB2649から単離し、精製し、仔ウシ腸ホスファターゼで処理されたNotI切断pSAC35へ連結させて、2種のプラスミドを作製した;第一のpDB2652はLEU2と同じ発現方向でNotI発現カセットを含有し、第二のpDB2653はLEU2と反対の方向でNotI発現カセットを含有していた。
【0219】
例10: 融合タンパク質を産生するための発酵
DX−890−HSA融合タンパク質をWO00/44772で記載されているような発酵培養で発現させた。WO00/44772で記載されているような標準HA精製SP−FF(Pharmacia)条件を用いて発酵培養上澄からDX−890−HSA融合タンパク質を精製したが、但し追加200mM NaClが溶離用緩衝液に必要とされた。
【0220】
例11: 酵母形質転換および培養条件
WO95/23857、WO95/33833およびWO94/04687で開示された酵母株を、Sleep,D.et al.(2001)Yeast 18,403-421で記載されているように、ロイシン原栄養体性に形質転換させた。形質転換株を緩衝化最少培地(BMM、Kerry-Williams,S.M.et al.(1998)Yeast 14,161-169で記載)上に点在させ、更なる分析用に十分増殖するまで30℃でインキュベートした。
【0221】
例12: DX−890サンプルのK測定
HNEのDX−890およびDX−890−HSA阻害に関する平衡阻害定数(K)を、可逆的複合体(1:1化学量論)の形成による強結合阻害モデルに従い調べた。hNEの阻害は50mM HEPES,pH7.5、150mM NaClおよび0.1% Triton X−100中30℃で調べた。すべての反応(全容量=200μL)をマイクロタイタープレート(Coster #3789)で行った。hNEを様々な濃度の添加インヒビターと共に24時間インキュベートした。残留酵素活性を基質加水分解の相対速度から調べた。加水分解反応は基質としてN−メトキシスクシニル−Ala−Ala−Pro−Val−7−アミノメチルクマリンの添加により開始させた。この基質の酵素開裂がメチルクマリン部分を放出させ、同時にサンプル蛍光を増加させる。基質加水分解の速度を360nmの励起および460nmの放射でモニターした。残留活性率 vs.インヒビター濃度のプロットを非直線回帰分析により式1へあてはめ、平衡解離定数を求めた。
【数1】

ここで:
%A=活性率
I=DX−890
E=HNE濃度
=平衡阻害定数
【0222】
自然DX−890のKを陽性コントロールとして同時に測定した。ヒト好中球エラスターゼ(HNE)に対するDX−890およびDX−890−HSA融合体のKは互いに類似していた(図1)。類似した結果が、シェークフラスコ酵母培養物または発酵槽からの上澄中におけるDX−890−HSA融合体でみられた。両上澄ともAventisからDyaxへ供給された。この結果は、HSAへの融合がHNEのインヒビターとしてDX−890の効力に影響を与えないことを示している。
【0223】
例13: HSAのN末端へのDX−88の融合
DX−88は、K〜40pMでヒト血漿カリクレインを阻害するヒトLACIの第一クニッツドメインから誘導されるクニッツドメインである。DX−88の血清半減期は1時間以下である。DX−88は遺伝性血管性浮腫(HAE)の治療についてクリニックで現在試験されている。初期データは、DX−88が安全で有効なことを示している。HAEは、発作が時々起きて、長期作用型があれば反応性治療の代わりに予防処置を施せるような症状である。
【0224】
DX−88のDNA配列は入手可能であり、HAのN末端への融合用に用意した。N末端DX−88−(GGS)GG−アルブミンで適合するようなDX−88コード領域、アルブミンコード領域またはリーダー配列間の架橋配列をコードするDNA配列を5′または3′末端で用意した(表18)。
【0225】
プラスミドpDB2573XをBglIIおよびBamHIで完全に切断し、6.21kb DNA断片を単離し、仔ウシ腸ホスファターゼで処理し、次いで0.2kb BglII/BamHI N末端DX−88 cDNAと連結して、pDB2666−88を作製した。N末端DX−88−(GGS)GG−アルブミン融合体のDNAおよびアミノ酸配列は表19および表20で各々示されている。適切な酵母ベクター配列を、EP−A−286424で一般的に開示され、Sleep,D.et al.(1991)Bio/Technology 9,183-187で記載された「崩壊」プラスミドpSAC35により得た。NotI N末端DX−88−(GGS)GG−rHA発現カセットをpDB2666−88から単離し、精製し、仔ウシ腸ホスファターゼで処理されたNotI切断pSAC35へ連結させて、2種のプラスミドを作製した;第一のpDB2679−88はLEU2と同じ発現方向でNotI発現カセットを含有し、第二のpDB2680−88はLEU2と反対の方向でNotI発現カセットを含有していた。
【0226】
例14: C末端アルブミン−(GGS)GG−DX−88発現プラスミドの構築
例5のように、プラスミドpDB2575XをHindIIIで部分的に切断し、次いでBamHIで完全に切断した。望ましい6.55kb DNA断片を単離し、0.2kb BamHI/HindIII C末端DX−88 cDNA(表21)と連結して、pDB2648−88を作製した。C末端アルブミン−(GGS)GG−DX−88融合体のDNAおよびアミノ酸配列は表22および表23で各々示されている。適切な酵母ベクター配列を、EP−A−286424で一般的に開示され、Sleep,D.et al.(1991)Bio/Technology 9,183-187で記載された「崩壊」プラスミドpSAC35により得た。NotI C末端アルブミン−(GGS)GG−DX−88発現カセットをpDB2648−88から単離し、精製し、仔ウシ腸ホスファターゼで処理されたNotI切断pSAC35へ連結させて、LEU2と同じ発現方向でNotI発現カセットを含有するpDB2651−88を作製した。
【0227】
例15: マウスでの薬物動態研究
DX−890−HSA融合タンパク質をWO00/44772で記載されているような発酵培養で発現させた。WO00/44772で記載されているような標準HA精製SP−FF(Pharmacia)条件を用いて発酵培養上澄からDX−890−HSA融合タンパク質を精製したが、但し追加200mM NaClが溶離用緩衝液に必要とされた。
【0228】
約10mgのrHA−DX−890融合体をSEC−HPLCによりダイアフィルトレーション保持物質から精製し、SCS−PAGEおよびRP−HPLC法により特徴付けたところ、約92%モノマー形であった。この物質を次の125I放射線標識およびインビボ血漿クリアランス研究に用いた。
【0229】
マウスを用いる研究用に、動物を尾静脈で注射し、動物4匹を注射から約0、7、15、30および90分、4h、8h、16h、24h後に、そのおそらく短い半減期のために自然DX−890について4以内の時点で犠牲にして調べた。注射の時間およびサンプリングの時間を記録した。犠牲時、〜0.5mlのサンプルを抗凝固液(0.02ml EDTA)中へ集めた。細胞を回転沈降させ、血漿から分離させた。血漿を2つに分け、1つは凍結し、他は即時分析用に4℃で貯蔵した。分析には全サンプルのガンマ計数を含めた。加えて、各時点、即ち125I−DX−890については0および30分間目に、125I−DX−890−HSA融合体については0、30分間目および24時間目に、2つの血漿サンプル(N=2)で分析を行った。インライン放射線検出器装備のSEC−HPLC Superose-12カラムを用いて、血漿フラクションを分析した。
【0230】
結果は、HSAへDX−890を融合させると、〜5×までそのβ(消失)半減期を劇的に改善することを示している(図2)。加えて、DX−890−HSA融合体はマウス血漿中でDX−890よりも安定であるらしい(図3および4)。
【0231】
例16: ウサギでの薬物動態研究
タンパク質をヨウ素化し、ウサギで循環からの放射線標識のクリアランスを測定することにより、DX−890およびDX−890−HSAの薬物動態を調べた。ヨードゲン法を用いて、2種のDX−890調製物をヨウ素−125でヨウ素化した。放射線標識後、2種の標識されたタンパク質調製物をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により未結合標識から精製した。最大放射能を有するSECカラムからのフラクションをプールした。精製された放射線標識調製物は、シンチレーション計数により比活性について、およびインライン放射線検出器装備のSuperose-12カラムを用いてSECにより純度について特徴付けた。
【0232】
New Zealand Whiteウサギ(約2.5kg)をクリアランス測定に用い、各々1匹の動物を2種の標識タンパク質調製物に用いた。放射線標識調製物を耳静脈から動物に注射した。初めの時点は約0、7、15、30および90分間目に、後の時点では4、8、16、24、48、72、96、144、168および192時間目に、各時点で動物1匹につき1つの血液サンプルを集めた。サンプル(約0.5ml)を抗凝固液(EDTA)管に集めた。細胞を遠心により血漿/血清フラクションから分離させた。血漿フラクションを2つに分けた。1つの血漿分を−70℃で貯蔵し、他は即時分析用に4℃で保った。サンプル分析には、クリアランス速度測定用に放射線計数、およびインビボ安定性用にSECクロマトグラフィーを含めた。ウサギクリアランス研究の結果は図5および6と表24でまとめられている。
【0233】
HSA−DX−890融合タンパク質は、未修飾DX−890の場合と比較して、インビボ循環性で実質的改善を示す。血漿クリアランス速度は融合タンパク質の場合に大きく減少し、1日後における放射線標識の相対的循環レベルは未修飾タンパク質の場合よりもHSA−DX−890融合体で100倍高い(図5)。データへの単純二指数あてはめでは、クリアランス曲線のαおよびβ双方の部分で大きな増加を示す(表24)。特に、T1/2βの値は、未修飾タンパク質の約165分間(2.75時間)から、HSA−DX−890融合体の約3500分間(〜60時間、〜2.5日)へと、20倍以上増加している。加えて、曲線の遅いクリアランス部分に関与する全物質のフラクションは、未修飾DX−890と比較して、融合タンパク質でほぼ2倍である(表24)。
【0234】
【表3】

【0235】
最後に、インビボ安定性は、未修飾DX−890と比較して、融合タンパク質で改善されているようである(図6)。125I−DX−890で注射されたウサギからの血漿のSEC分析(図6、パートA)では、高分子量血漿成分(早期溶出ピーク)との標識の比較的早い結合を示している。更に、高分子量物質と結合する全残留循環標識の相対的割合は、注射後の時間が経過するにつれて増加する(30分間 vs.4時間の溶出プロフィール)。逆に、125I−HSA−DX−890で注射されたウサギからの血漿サンプルのSEC分析(図6、パートB)では、ほぼすべての循環標識が注射液でみられるHSA−DX−890ピークと結合し、標識が少なくとも72時間にわたりこのピークと安定的に結合したままであることを示している。
【0236】
例17: 二重融合HSAを作製するためのベクター
ベクターpDB2300X1は、rHA遺伝子の5′末端近くにBglII/BamHIカセット、および3′末端近くにBspEI/KpnIカセットが存在した、pDB2575Xの修飾体である。この遺伝子を含むNotIカセットが表25で示されており、そこではDNA、コードされたAA配列および有用な制限部位を示している。表25の各ラインで、記号の後はすべて注釈であり、DNA配列は番号が付され、デザインの理解に役立てるために間隔が設けられている。
【0237】
例18: DX890の第一部分をpDB2300X1へ付加する
表12で示されたDNAを、BglIIおよびBamHIで切断されたpDB2300X1へ導入して、新たなベクターpDB2300X2を作製する。pDB2300X2のNotIカセットのDNA、コードされたAA配列および有用な制限部位が表26で示されている。
【0238】
例19: DX890の第二部分をpDB2300X2へ付加する
表27で示されたDNAを、BspEIおよびKpnIで切断されたpDB2300X2へ導入して、新たなベクターpDB2300X3を作製する。このDNAは表12のDNAと同様のAA配列をコードしているが、2つのDX890コード領域間で組換えの可能性を減らすために多くのコドンが変更されていた。この構築物のDNA、コードされたAA配列および有用な制限部位が表28で示されている。コードされたAA配列は表29で示されている。このタンパク質は本発明の他の構築物と同様に発現される。表103のタンパク質「Dx890−HA−Dx890」はDX890のHNE中和活性の〜16%であるが、かなり長い半減期を有している。そのため、HNEの阻害に関する曲線下面積は、裸のDX890よりもかなり高い。
【0239】
例20: DX1000::(GGS)GG::HSA
表30で示されたDNAを、BglIIおよびBamHIで切断されたpDB2573Xへ導入して、pDX1000を作製する。コードされたタンパク質のAA配列が表31で示されている。このタンパク質の発現は、本発明の他のHA融合体の場合と本質的に同様である。
【0240】
例21: DX−88::(GGS)GG::HSA::(GGS)GG::DX−88
DX−890−HSA−DX−890をコードする遺伝子の構築と同様に、表18のDNAをBglIIおよびBamHIで切断されたpDB2300X1へ導入して、新たなベクターpDB2300X88aを作製する。表32で示されたDNAをEspEI/KpnI断片としてpDB2300X88aへ導入して、DX−88をコードするDNAの2部分を含有したpDB2300X88bを作製する。表32のDNAは表18のDNAとは実質的に異なり、組換えは起こりそうもない。
【0241】
例22: マルチアルブミン融合
ここで記載されているようなN末端融合発現プラスミドpDB2540は、C末端で唯一のBsu36Iを導入するように修飾しうる;新たなプラスミドをpDB2301Xと名づけた。pDB2301XからのNotI発現カセットのDNA配列は次の通りである:
pDB2540+Bsu36I
【化7】


【0242】
DNAコードポリペプチドは、N末端アルブミン融合体を発現するためにBglIIおよびAgeI部位間で、またはC末端アルブミン融合体を発現するためにBsu36IおよびHindIII部位間で(唯一ではないため、部分的HindIII切断を要する)、または両NおよびC末端アルブミン融合体を作製するために両対の部位間で挿入しうる。
【0243】
ポリペプチドスペーサーも必要に応じて組み込める。修飾pDB2540からのNotI発現カセットのDNA配列は次の通りに予想される:
pDB2540+2×GSリンカー
【化8】


【0244】
DNAコードポリペプチドは、N末端アルブミン融合体を発現するためにBglIIおよびBamHI部位間で、またはC末端アルブミン融合体を発現するために唯一のEspEIおよびKpnI部位間で、または両NおよびC末端アルブミン融合体を作製するために両対の部位間で挿入しうる。これは、ここで記載されているようなBglII−BamHI DPI−14 cDNAおよびBamHI−HindIII DX−890 cDNAを用いることで、最も簡単に例示される。これらのcDNAを適切な部位へ連結させることにより、下記DNA配列のDPI−14−(GGS)GG−rHA−(GGS)GG−DX−890融合体が構築される。
【化9】


【0245】
このDPI−14−(GGS)GG−rHA−(GGS)GG−DX−890融合体の一次翻訳産物は次の通りである。
【化10】

【0246】
初めの24アミノ酸は、ここで記載されているように、融合リーダー配列を構成しているが、分泌される産物のアミノ酸配列は次の通りである。
【化11】

【0247】
例23: DPI−14−(GGS)GG−HSA融合タンパク質のアミノ酸配列
表33は、(GGS)GGを含むリンカーでDPI−14をHSAへ連結させた融合体のアミノ酸配列を示している。所定の配列をコードする遺伝子の構築は簡単であり、ここで記載された方法およびベクターを用いる。DPI−14はHNEの強力なインヒビターであり、HSAへの融合で血清滞留時間の長い分子を生じる。
【0248】
表:
表1:GenBankエントリーAAN17825からの成熟HSAのアミノ酸配列
【化12】

(配列番号18)
【0249】
表2:DX−1000およびDX−88のアミノ酸配列
【化13】

【0250】
表5:N末端BglII−BamHI DPI−14 cDNAのDNA配列
【化14】

【0251】
表6:C末端BamHI−HindIII DPI−14 cDNAのDNA配列
【化15】

【0252】
表7:N末端DPI−14−(GGS)GG−アルブミン融合体コード領域のDNA配列
【化16】

【0253】
表8:N末端DPI−14−(GGS)GG−アルブミン融合タンパク質のアミノ酸配列
【化17】

【0254】
表9:C末端アルブミン−(GGS)GG−DPI−14融合体コード領域のDNA配列
【化18】

【0255】
表10:C末端アルブミン−(GGS)GG−DPI−14融合タンパク質のアミノ酸配列
【化19】

【0256】
表11:C末端BamHI−HindIII DX−1000 cDNAのDNA配列
【化20】

【0257】
表12:N末端BglII−BamHI DX−890 cDNAのDNA配列
【化21】

【0258】
表13:C末端BamHI−HindIII DX−890 cDNAのDNA配列
【化22】

【0259】
表14:N末端DX−890−(GGS)GG−アルブミン融合体コード領域のDNA配列
【化23】

【0260】
表15:N末端DX−890−(GGS)GG−アルブミン融合タンパク質のアミノ酸配列
【化24】

【0261】
表16:C末端アルブミン−(GGS)GG−DX−890融合体コード領域のDNA配列
【化25】


【0262】
表17:C末端アルブミン−(GGS)GG−DX−890融合タンパク質のアミノ酸配列
【化26】

【0263】
表18:N末端BglII−BamHI DX−88 cDNAのDNA配列
【化27】

【0264】
表19:N末端DX−88−(GGS)GG−アルブミン融合体コード領域のDNA配列
【化28】

【0265】
表20:DX−88::HSAのAA配列
【化29】

【0266】
表21:C末端BamHI−HindIII DX−88 cDNAのDNA配列
【化30】

【0267】
表22:HSA::(GGS)GG::DX−88
【化31】


【0268】
表23:表22でコードされた成熟タンパク質のAA配列
【化32】

【0269】
表25:2×GSリンカー付加pDB2300X1のNotIカセット
【化33】




(SEQ ID NO.: )
【0270】
表26:第二DX890の用意ができたDX890(N末端)およびC末端リンカー付加pDB2300X2のNotIカセット
【化34】





【0271】
表27:DX−890の2回目のコード向けにBspEI/KpnI部位で挿入されるDNA
【化35】

【0272】
表28:2×DX890付加pDB2300X3のNotIカセット
DNA配列はSEQ ID NO: を有している。
AA配列はSEQ ID NO: を有している。
1〜3回切断された酵素
$=DAM部位、*=DCM部位、&=双方
【化36】






【0273】
表29:DX890::(GGS)GG::HA::(GGS)GG::DX890のAA配列
【化37】

【0274】
表30:N末端BglII−BamHI DX−1000 cDNAのDNA配列
【化38】

【0275】
表31:DX1000::(GGS)GG::HAのAA配列
【化39】

【0276】
表32:2回目のコード−N末端BspEI−KpnI DX−88 cDNAのDNA配列
【化40】

【0277】
表33:DPI14::HSAのAA配列
【化41】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クニッツ(Kunitz)ドメインペプチドまたはその断片もしくは変種と、アルブミンまたはその断片もしくは変種とを含んでなる、アルブミン融合タンパク質。
【請求項2】
クニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種が機能活性を有している、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項3】
機能活性がセリンプロテアーゼを阻害することを含む、請求項2に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項4】
機能活性がプラスミンを阻害することを含む、請求項2に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項5】
機能活性がヒト好中球エラスターゼを阻害することを含む、請求項2に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項6】
機能活性がカリクレインを阻害することを含む、請求項2に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項7】
DX‐890またはその断片もしくは変種と、アルブミンまたはその断片もしくは変種とを含んでなる、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項8】
DPI‐14またはその断片もしくは変種と、アルブミンまたはその断片もしくは変種をを含んでなる、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項9】
DX‐88またはその断片もしくは変種と、アルブミンまたはその断片もしくは変種をと含んでなる、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項10】
DX‐1000またはその断片もしくは変種と、アルブミンまたはその断片もしくは変種とを含んでなる、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項11】
少なくとも2つのクニッツドメイン融合ペプチドまたはその断片もしくは変種を含んでなる、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項12】
少なくとも2つのクニッツドメイン融合ペプチドまたはその断片もしくは変種の各々が、機能活性を有している、請求項11に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項13】
少なくとも2つのクニッツドメイン融合ペプチドのうち1つの機能活性が、セリンプロテアーゼを阻害することを含む、請求項12に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項14】
少なくとも2つのクニッツドメイン融合ペプチドのうち1つの機能活性が、プラスミンを阻害することを含む、請求項12に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項15】
少なくとも2つのクニッツドメイン融合ペプチドのうち1つの機能活性が、ヒト好中球エラスターゼを阻害することを含む、請求項12に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項16】
少なくとも2つのクニッツドメイン融合ペプチドのうち1つの機能活性が、カリクレインを阻害することを含む、請求項12に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項17】
クニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種のうち少なくとも2つが、異なるアミノ酸配列を有している、請求項11に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項18】
DX‐890、DX‐88、DX‐1000およびDPI‐14からなる群より選択されるペプチドの少なくとも1つの断片または変種と、アルブミンまたはその断片もしくは変種とを含んでなり、該アルブミン断片または変種がアルブミン活性を有し、該ペプチド断片または変種が機能活性を有している、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項19】
アルブミン活性が、DX‐890、DX‐88、DX‐1000およびDPI‐14からなる群より選択されるペプチドまたはその断片もしくは変種のインビボ半減期を、非融合状態にあるペプチドまたはその断片もしくは変種のインビボ半減期と比較して、伸ばせる能力を有している、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項20】
1以上の追加アルブミン部分を更に含んでなる、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項21】
DX‐890、DX‐88、DX‐1000およびDPI‐14またはその断片もしくは変種からなる群より選択される1以上の部分、または1以上の追加アルブミン部分を含んでなる、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項22】
融合タンパク質が化学的部分を更に含んでなる、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項23】
クニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種が、アルブミンのN末端、またはアルブミンの断片もしくは変種のN末端へ融合されている、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項24】
クニッツドメインペプチドが、DX‐890、DPI‐14、DX‐88またはDX‐1000を含んでなる、請求項23に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項25】
クニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種が、アルブミンのC末端、またはアルブミンの断片もしくは変種のC末端へ融合されている、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項26】
クニッツドメインペプチドが、DX‐890、DPI‐14、DX‐88またはDX‐1000を含んでなる、請求項24に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項27】
クニッツドメインペプチドが、第一のペプチドまたはその断片もしくは変種、および第二のペプチドまたはその断片もしくは変種を含んでなり、第一のペプチドまたはその断片もしくは変種が第二のペプチドまたはその断片もしくは変種とは異なるものである、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項28】
第一のペプチドまたはその断片もしくは変種、および第二のペプチドまたはその断片もしくは変種が、DX‐890、DX‐88、DX‐1000およびDPI‐14からなる群より選択されるものである、請求項27に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項29】
クニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種が、リンカーにより、アルブミンまたはアルブミンの断片もしくは変種から離されている、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項30】
アルブミン融合タンパク質が下記式を含んでなる、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質:
R2‐R1;R1‐R2;R2‐R1‐R2;R2‐L‐R1‐L‐R2;R1‐L‐R2;R2‐L‐R1;またはR1‐L‐R2‐L‐R1
[式中、R1は、DX‐890、DX‐88、DX‐1000およびDPI‐14からなる群より選択される少なくとも1つのペプチドまたはその断片もしくは変種であり、Lはペプチドリンカーであり、かつ、R2はアルブミンである]。
【請求項31】
アルブミンまたはその断片もしくは変種へ融合されたクニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種のインビトロ生物活性が、非融合状態にあるクニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種のインビトロ生物活性よりも大きい、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項32】
アルブミンまたはその断片もしくは変種へ融合されたクニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種の溶解性が、同一の貯蔵、取扱いまたは生理条件に付された、非融合状態にあるクニッツドメインペプチドまたはその断片もしくは変種の溶解性よりも大きい、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項33】
アルブミンまたはその断片もしくは変種へ融合された少なくとも1つのペプチドまたはその断片もしくは変種のインビボ生物活性が、非融合状態にある少なくとも1つのペプチドまたはその断片もしくは変種のインビボ生物活性よりも大きい、請求項30に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項34】
非グリコシル化されている、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項35】
酵母で発現される、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項36】
酵母がグリコシル化欠陥である、請求項35に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項37】
酵母がプロテアーゼ欠陥である、請求項36に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項38】
哺乳動物細胞により発現される、請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項39】
培養で哺乳動物細胞により発現される、請求項38に記載のアルブミン融合タンパク質。
【請求項40】
請求項1〜39のいずれか一項に記載のアルブミン融合タンパク質と、製薬上許容される担体とを含んでなる、組成物。
【請求項41】
請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質を投与する工程を含んでなる、患者で疾患または障害を治療する方法。
【請求項42】
DX‐890および/またはDPI‐14により調節される嚢胞性線維症または嚢胞性線維症関連疾患または障害の患者を治療する方法であって、
請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質の有効量を投与する工程を含んでなり、クニッツドメインペプチドがDX‐890またはDPI‐14、またはその断片もしくは変種である、方法。
【請求項43】
非融合状態にあるDX‐890および/またはDPI‐14またはその断片もしくは変種のインビボ半減期と比較して、DX‐890および/またはDPI‐14またはその断片もしくは変種のインビボ半減期を延長させるのに十分な、アルブミンまたはアルブミンの断片もしくは変種へ、DX‐890および/またはDPI‐14またはその断片もしくは変種を融合させる工程を含んでなる、DX‐890および/またはDPI‐14またはその断片もしくは変種のインビボ半減期を延長する方法。
【請求項44】
DX‐88により調節される遺伝性血管性浮腫または遺伝性血管性浮腫関連疾患または障害の患者を治療する方法であって、
請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質の有効量を投与する工程を含んでなり、クニッツドメインペプチドがDX‐88またはその断片もしくは変種である、方法。
【請求項45】
非融合状態にあるDX‐88またはその断片もしくは変種のインビボ半減期と比較して、DX‐88またはその断片もしくは変種のインビボ半減期を延長させるのに十分な、アルブミンまたはアルブミンの断片もしくは変種へ、DX‐88またはその断片もしくは変種を融合させる工程を含んでなる、DX‐88またはその断片もしくは変種のインビボ半減期を延長する方法。
【請求項46】
癌、癌関連疾患、出血、またはDX‐1000により調節される障害の患者を治療する方法であって、
請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質の有効量を投与する工程を含んでなり、クニッツドメインペプチドがDX‐1000またはその断片もしくは変種である、方法。
【請求項47】
非融合状態にあるDX‐1000またはその断片もしくは変種のインビボ半減期と比較して、DX‐1000またはその断片もしくは変種のインビボ半減期を延長させるのに十分な、アルブミンまたはアルブミンの断片もしくは変種へ、DX‐1000またはその断片もしくは変種を融合させる工程を含んでなる、DX‐1000またはその断片もしくは変種のインビボ半減期を延長する方法。
【請求項48】
請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含んでなる、核酸分子。
【請求項49】
請求項48に記載の核酸分子を含んでなる、ベクター。
【請求項50】
請求項48に記載の核酸分子を含んでなる、宿主細胞。
【請求項51】
請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質の有効量と、製薬上許容される担体または賦形剤とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項52】
請求項1に記載のアルブミン融合タンパク質の製造方法であって、
(a) 生物で発現しうるアルブミン融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでなる核酸を用意し、
(b) 核酸を生物で発現させて、アルブミン融合タンパク質を形成させ、かつ
(c) アルブミン融合タンパク質を精製する、
ことを含んでなる、方法。
【請求項53】
アルブミン融合タンパク質が、グリコシル化欠陥酵母株で発現されるDX‐890および/またはDPI‐14アルブミン融合体を含んでなる、請求項52に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−46076(P2010−46076A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239593(P2009−239593)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【分割の表示】特願2003−566175(P2003−566175)の分割
【原出願日】平成15年2月7日(2003.2.7)
【出願人】(591131523)ノボザイムス バイオファーマ ユーケー リミテッド (9)
【出願人】(502352519)ダイアックス、コープ (16)
【氏名又は名称原語表記】DYAX CORP.
【Fターム(参考)】