アルミキルド鋼の連続鋳造方法
【課題】 1分間当たりの溶鋼注入量が4トン以上の高速鋳造条件下でアルミキルド鋼を連続鋳造するに当たり、溶鋼中のAl2 O3 による浸漬ノズルの閉塞を防止し、連々鋳を実施する。
【解決手段】 タンディッシュ1の底部に設置した、ガス吹込部を有する上ノズル3と、該上ノズルに接続するスライディングノズル4と、該スライディングノズルに接続する浸漬ノズル9と、から構成される溶鋼注入手段を用いてタンディッシュ内のアルミキルド溶鋼17を鋳型2内に注入する際に、前記ガス吹込部を構成するポーラス煉瓦の平均気孔径を30μm〜50μmとするとともに、Arガス吹き込み量が溶鋼注入量1トン当たり2.0NL以上となるようにガス吹込部からArガスを吹き込みながら、1分間当たり4.0トン以上のアルミキルド溶鋼を鋳型内に注入する。
【解決手段】 タンディッシュ1の底部に設置した、ガス吹込部を有する上ノズル3と、該上ノズルに接続するスライディングノズル4と、該スライディングノズルに接続する浸漬ノズル9と、から構成される溶鋼注入手段を用いてタンディッシュ内のアルミキルド溶鋼17を鋳型2内に注入する際に、前記ガス吹込部を構成するポーラス煉瓦の平均気孔径を30μm〜50μmとするとともに、Arガス吹き込み量が溶鋼注入量1トン当たり2.0NL以上となるようにガス吹込部からArガスを吹き込みながら、1分間当たり4.0トン以上のアルミキルド溶鋼を鋳型内に注入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミキルド鋼の連続鋳造方法に関し、詳しくは、溶鋼中のAl2 O3 による浸漬ノズルの閉塞を防止することのできる連続鋳造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミキルド鋼は、酸化脱炭精錬された溶鋼がAlによって脱酸され、酸化脱炭精錬により増加した溶鋼中の酸素が除去されて製造される。この脱酸工程で生成したAl2 O3 粒子(アルミナ粒子)は、溶鋼とAl2O3 との密度差を利用して溶鋼から除去されているが、数10μm以下の微小なAl2 O3 粒子の浮上速度は極めて遅く、浮上分離に長時間を要するため、実際のプロセスでは、このような微小のAl2O3 粒子を完全に浮上・分離させることは極めて困難であり、そのため、アルミキルド溶鋼中には微細なAl2 O3粒子が懸濁した状態で残留する。
【0003】
鋼の連続鋳造では、タンディッシュから鋳型へと溶鋼を注湯する際に、耐火物製の浸漬ノズルを用いて注湯している。この浸漬ノズルに求められる特性としては、耐熱衝撃性及びモールドパウダーや溶鋼に対する耐溶損性に優れることであり、そのため、これらの特性に優れるAl2 O3 −黒鉛質或いはAl2 O3質の浸漬ノズルが広く用いられている。しかしながら、Al2 O3 −黒鉛質或いはAl2 O3質の浸漬ノズルを用いてアルミキルド鋼を鋳造すると、溶鋼中に懸濁しているAl2 O3 粒子が浸漬ノズル内壁表面に付着・堆積して、浸漬ノズルの閉塞が発生するという問題が発生する。
【0004】
浸漬ノズルが閉塞すると、鋳造作業上及び鋳片品質上で様々な問題が発生する。例えば、鋳片引き抜き速度を低下せざるを得ず、生産性が落ちるのみならず、甚だしい場合には、鋳込み作業そのものの中止を余儀なくされる。また、浸漬ノズル内壁表面に堆積し、粗大化したAl2 O3 粒子が突然剥離し、鋳型内に排出され、これが鋳型内の凝固シェルに捕捉された場合には製品欠陥となり、製品歩留まりの低下につながる。
【0005】
このような理由から、従来、アルミキルド鋼の連続鋳造においては、浸漬ノズル内壁表面へのAl2 O3 の付着を防止する手段が検討され、多数の提案がなされている。そのなかの1つの手段として、浸漬ノズルの内壁にArガスなどの不活性ガスを吹き込んで、不活性ガスによって浸漬ノズル内壁に付着したAl2O3 を強制的に洗浄する、或いは、浸漬ノズル内壁と溶鋼との間にガス膜をつくり、Al2 O3 が壁に接触しないようにする技術が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、タンディッシュ底部に設置した、Arガス吹込部を有する上ノズルと、上ノズルに接続するスライディングノズルと、スライディングノズルに接続する浸漬ノズルと、から構成される溶鋼注入手段を用いてアルミキルド鋼を鋳型内に注湯する際に、前記ガス吹込部の煉瓦気孔径を30μm〜50μmとしてArガスを吹き込みならが、1分間当たり1.0トン〜2.0トンの溶鋼を鋳造する連続鋳造方法が開示されている。
【特許文献1】特開平3−297545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1には以下の問題点がある。即ち、Arガスの洗浄効果を利用してAl2 O3 の付着を防止する場合には、鋳造する溶鋼量に対するArガスの吹き込み量を設定する必要があるが、特許文献1では明確に示していない。また、特許文献1における1分間当たりの鋳造量、即ち鋳型への溶鋼注入量は1.0トン〜2.0トンであるが、連続鋳造機の生産性向上技術に伴って鋳片引き抜き速度は増加し、近年の1分間当たりの溶鋼注入量は4トン以上に達しており、このような高速鋳造条件における吹込み方法をどのようにするかは明確でない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、1分間当たりの溶鋼注入量が4トン以上の高速鋳造条件下でアルミキルド鋼を連続鋳造するに当たり、溶鋼中のAl2 O3 による浸漬ノズルの閉塞を防止することのできる、アルミキルド鋼の連続鋳造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係るアルミキルド鋼の連続鋳造方法は、タンディッシュ底部に設置した、ガス吹込部を有する上ノズルと、該上ノズルに接続するスライディングノズルと、該スライディングノズルに接続する浸漬ノズルと、から構成される溶鋼注入手段を用いてタンディッシュ内のアルミキルド溶鋼を鋳型内に注入する際に、前記ガス吹込部を構成するポーラス煉瓦の平均気孔径を30μm〜50μmとするとともに、Arガス吹き込み量が溶鋼注入量1トン当たり2.0NL以上となるようにガス吹込部からArガスを吹き込みながら、1分間当たり4.0トン以上のアルミキルド溶鋼を鋳型内に注入することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガス吹込部を構成するポーラス煉瓦の平均気孔径を30μm〜50μmとするので、溶鋼トン当たり2.0NL以上のArガスを上ノズルから安定して吹き込むことができ、1分間当たりの溶鋼注入量が4.0トン以上のアルミキルド溶鋼の連続鋳造であっても、浸漬ノズル内壁表面へのAl2 O3 付着を抑制することが可能となり、Al2O3 による浸漬ノズルの閉塞を防止することが達成される。その結果、鋳造可能時間を飛躍的に延長させることができると同時に、浸漬ノズル内壁から剥離する粗大化したAl2O3 に起因する鋳片の大型介在物性の欠陥、並びに、浸漬ノズルの閉塞による鋳型内溶鋼の偏流に起因するモールドパウダー性の欠陥を大幅に削減することができ、工業上有益な効果がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、本発明による連続鋳造方法を実施する際に用いたスラブ連続鋳造機の鋳型部の概略図である。
【0012】
図1において、相対する鋳型長辺13と、鋳型長辺13の内側に内装された、相対する鋳型短辺14と、により構成される鋳型2の上方所定位置に、外郭を鉄皮15で覆われ、内部を耐火物16で施行されたタンディッシュ1が配置されている。このタンディッシュ1の底部には、耐火物16に嵌合する上ノズル3が設置され、そして、上ノズル3の下面に接して、上部固定板5、摺動板6、下部固定板7及び整流ノズル8からなるスライディングノズル4が配置され、更に、スライディングノズル4の下面に接して、その下部に一対の吐出孔10を有する浸漬ノズル9が配置され、タンディッシュ1から鋳型2への溶鋼流出孔11が形成されている。即ち、タンディッシュ1から鋳型2への溶鋼注入手段として、上ノズル3、スライディングノズル4及び浸漬ノズル9が設置されている。
【0013】
浸漬ノズル9は、下部に設置される吐出孔10が鋳型内の溶鋼17に埋没するようにその先端が浸漬されて使用される。摺動板6は、往復型アクチュエーター12と接続されており、往復型アクチュエーター12の作動により、上部固定板5と下部固定板7との間をこれらの固定板と接触したまま移動し、摺動板6と上部固定板5及び下部固定板7とで形成する開口部面積を調整することにより溶鋼流出孔11を通過する溶鋼量が制御される。
【0014】
上部ノズル3の拡大図を図2に示す。図2に示すように、上ノズル3は、上部吹込部3a、下部吹込部3b、及び、上部吹込部3aと下部吹込部3bとの中間に位置する本体部3eの3つの部分で構成され、その外周には鉄皮3fが配置されている。上部吹込部3a及び下部吹込部3bは、ガス吹込部であり、アルミナ質のポーラス煉瓦で形成されている。本体部3eは、比較的緻密なアルミナ質で形成されている。図2では、上部吹込部3a及び下部吹込部3bが本体部3eと明確に区別できるように表示しているが、実際には明確な境界はなく、本体部3eを形成するアルミナ質煉瓦と、上部吹込部3a及び下部吹込部3bを形成するアルミナ質ポーラス煉瓦とが、徐々にその配合比率を変えるようにして形成されている。つまり、一体的に形成されている。
【0015】
鉄皮3fを貫通して2本のガス導入管3c,3dが配置されていて、ガス導入管3cは上部吹込部3aに開口し、ガス導入管3dは下部吹込部3bに開口している。即ち、ガス導入管3cから供給されるArガスは上部吹込部3aを介して溶鋼流出孔11の内部に吹き込まれ、一方、ガス導入管3dから供給されるArガスは下部吹込部3bを介して溶鋼流出孔11の内部に吹き込まれるように構成されている。上ノズル3の外周に配置される鉄皮3fは、上ノズル3の強度を確保する目的もあるが、Arガスが上ノズル3の外周面から流出することを防止している。従って、ガス導入管3c,3dから供給されたArガスは、確実に溶鋼流出孔11の内部に吹き込まれるようになっている。ガス導入管3c,3dはそれぞれ独立したArガス供給装置に接続しており、それぞれ独立してArガス供給量が制御されるようになっている。
【0016】
本発明においては、ガス吹込部である上部吹込部3a及び下部吹込部3bのポーラスレンガの平均気孔径を30μm〜50μmとする。換言すれば、上部吹込部3a及び下部吹込部3bが、30μm〜50μmの平均気孔径を有するポーラス煉瓦で構成されている上ノズルを、上ノズル3として使用する。後述するように、本発明では1分間当たり4.0トン以上の溶鋼17を鋳型2に注入する際に、溶鋼注入量1トン当たり2.0NL以上のArガスを上ノズル3から吹き込む。ポーラス煉瓦の平均気孔率が30μm未満であると、溶鋼注入量1トン当たり2.0NL以上のArガスを安定して吹き込むことができない。一方、ポーラス煉瓦の平均気孔径が50μmを超えると、Arガス気泡が大きくなり過ぎ、洗浄効果が低下する、溶鋼湯面9における湯面変動が大きくなる、などするので好ましくない。
【0017】
図3は、平均気孔径が40μmのポーラス煉瓦と平均気孔径が20μmのポーラス煉瓦を用い、水中においてArガスの気泡径を調査した結果である。ポーラス煉瓦の平均気孔径が大きくなると、Arガス流量が同一の条件下においてArガスの平均気泡径は大きくなる。従って、水中におけるArガス気泡を測定することでポーラス煉瓦の平均気孔径を把握することができる。ポーラス煉瓦の平均気孔径を30μm〜50μmの範囲に維持して製造するには、耐火物粉末原料の粒度を調整する、粉体原料からポーラス煉瓦を圧縮成形加工する際の圧縮成形力を調整するなど、原料条件及び製造条件を特定することで得ることができる。
【0018】
尚、ポーラス煉瓦の平均気孔径を直接測定する方法としては、以下のような方法がある。即ち、ポーラス煉瓦を水銀中に埋没させ、特定の気孔径に相当する圧力をかけた際にポーラス煉瓦内に吸い込まれる水銀量を求め、この水銀量から該当する気孔径の比率を求める。この測定を、様々な圧力下で行うことにより全体の気孔径の分布を求め、その後に平均径を定める方法である。このようにして平均気孔径を測定したポーラス煉瓦を用いて図3に示すようなArガスの平均気泡径の分布図を定めておけば、それ以降は、気孔径を直接測定する必要はなく、水中におけるArガス気泡径を測定することで、平均気孔径を把握することができる。
【0019】
このように構成されるスラブ連続鋳造機を用い、以下のようにして本発明の連続鋳造方法を実施する。
【0020】
転炉または電気炉などの一次精錬炉若しくはRH真空脱ガス装置などの二次精錬炉で溶製されたアルミキルド鋼の溶鋼17を、取鍋(図示せず)からタンディッシュ1に注入し、タンディッシュ内の溶鋼量が所定量になったなら、摺動板6を開き、溶鋼流出孔11を介して溶鋼17を鋳型2に注入する。溶鋼17は、吐出孔10から、鋳型短辺14に向かう吐出流18となって鋳型内に注入される。鋳型内に注入された溶鋼17は鋳型2により冷却され、凝固シェル21を形成する。そして、鋳型内に所定量の溶鋼17が注入されたなら、吐出孔10を鋳型内の溶鋼17に浸漬した状態で、鋳型2の下方に設置したピンチロール(図示せず)を駆動して、外殻を凝固シェル21とし、内部に未凝固の溶鋼17を有する鋳片の引き抜きを開始する。引き抜き開始後は溶鋼湯面19の位置を鋳型内の略一定位置に制御しながら、1分間当たり4.0トン以上の溶鋼17が鋳型内に注入されるように、鋳片引き抜き速度を増速してその速度を維持する。鋳型内の溶鋼湯面19の上にはモールドパウダー20を添加する。モールドパウダー20は溶融して、溶鋼17の酸化防止や凝固シェル21と鋳型2との間に流れ込み潤滑剤としての効果を発揮する。
【0021】
この鋳造中、上ノズル3の上部吹込部3a及び下部吹込部3bから、溶鋼流出孔11を流下する溶鋼17の通過質量に応じて吹き込むガス流量を調整しながらArガスを溶鋼流出孔11の内部に吹き込む。
【0022】
具体的には、1分間当たり4.0トン以上のアルミキルド溶鋼を鋳型内に注入する際に、上部吹込部3a及び下部吹込部3bから吹き込むArガス吹き込み量の合計値が溶鋼注入量1トン当たりに対して2.0NL(標準状態換算)以上となるようにArガスを吹き込む。この場合、上部吹込部3aからの吹き込み量と、下部吹込部3bからの吹き込み量との比率は特に規定するものではなく、1:1程度で構わないが、上部吹込部3aの方が、吹き込み面積が大きいことから、均一に吹き込むためには10:4〜10:7程度とすることが好ましい。
【0023】
Arガス吹き込み量が溶鋼注入量1トン当たり2.0NL未満になると、浸漬ノズル9のAl2 O3 付着が激しくなるので、Arガス吹き込み量は溶鋼注入量1トン当たり2.0NL以上とする必要がある。但し、Arガス吹き込み量が多くなりすぎると、鋳型内の溶鋼17を浮上するArガス気泡によって溶鋼湯面19の変動が大きくなり、モールドパウダー20の巻き込みが発生する恐れがあるので、溶鋼注入量1トン当たり3.6NL以下とすることが好ましい。また、溶鋼17の1分間当たりの注入量が4.0トン未満の場合には、吐出流18の流速が遅くなり、溶鋼湯面19の流速も遅くなるので、それに応じてArガス吹き込み量を変更させる必要があるが、本発明は高速鋳造を意図したものであるので、ここでは特に言及しないこととする。
【0024】
このように、ガス吹込部を構成するポーラス煉瓦の平均気孔径を30μm〜50μmとし、且つ、溶鋼トン当たり2.0NL以上のArガスを上ノズル3から吹き込むので、1分間当たり4.0トン以上のアルミキルド溶鋼の連続鋳造であっても、浸漬ノズル内壁表面へのAl2 O3 付着を抑制することができ、Al2O3 による浸漬ノズルの閉塞を防止することが可能となる。
【0025】
尚、上記説明ではガス吹込部位が2箇所の例で説明したが、1箇所としても、また3箇所以上としても、上記に沿って本発明を適用することができる。また、上記説明では3枚板構成のスライディングノズル4の例を挙げたが、2枚板構成のスライディングノズルについても上記に沿って本発明を適用することができる。
【実施例1】
【0026】
平均気孔径が40μmのポーラス煉瓦を上部吹込部及び下部吹込部とする上ノズルが配置された、図1に示すスラブ連続鋳造機を用いて、Arガス吹き込み量を変化させた試験を実施した。
【0027】
タンディッシュの容量は50トンであり、厚みが250mm、幅が950mmのスラブ鋳片を2.5m/分の引き抜き速度で鋳造した。この場合の1分間当たりの溶鋼注入量は、4.66トンであり、この溶鋼注入量に応じてArガス吹き込み量を、Arガス吹き込み量(NL/分)/溶鋼注入量(トン/分)の比が、1.3〜4.2NL/トンの範囲で変更した。上部吹込部からのArガス吹き込み量と、下部吹込部からのArガス吹き込み量との比率は、全ての試験で10:6とした。この条件で6チャージの連続連続鋳造(「連々鋳」)を実施し、鋳造後、浸漬ノズル内壁のAl2 O3 付着量を測定した。また、鋳造した鋳片を熱間圧延し更に冷間圧延して薄鋼板を製造し、この薄鋼板における介在物性表面欠陥を調査した。
【0028】
図4に、浸漬ノズル内壁のAl2 O3 付着量を測定した結果を示す。図4に示すように、Arガス吹き込み量/溶鋼注入量の比が2.0NL/トン以上では、Al2O3 付着量は少なく、6チャージの連々鋳は全く問題なく、更に連々鋳を続けることが可能であることが確認された。一方、Arガス吹き込み量/溶鋼注入量の比が2.0NL/トン未満の場合には、浸漬ノズル内壁のAl2O3 付着が激しく、6チャージを超えて連々鋳を続けることは無理であることが確認された。
【0029】
図5に、薄鋼板において介在物性表面欠陥を調査した結果を示す。この場合には、Arガス吹き込み量/溶鋼注入量の比が1.3〜4.2NL/トンの範囲で表面欠陥の発生率は低く、問題のないことが確認できた。但し、Arガス吹き込み量/溶鋼注入量の比が3.6NL/トンを超えると、若干表面欠陥の発生率が高くなる傾向にあり、従って、薄鋼板における介在物性表面欠陥を抑える観点からは、Arガス吹き込み量/溶鋼注入量の比を3.6NL/トン以下にすることが好ましいことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による連続鋳造方法を実施する際に用いたスラブ連続鋳造機の鋳型部の概略図である。
【図2】図1に示す上部ノズルの拡大図である。
【図3】ポーラス煉瓦から発生するArガスの気泡径を水中において調査した結果を示す図である。
【図4】実施例1において、浸漬ノズル内壁のAl2 O3 付着量を測定した結果を示す図である。
【図5】実施例1において、薄鋼板における介在物性表面欠陥を調査した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 タンディッシュ
2 鋳型
3 上ノズル
3a 上部吹込部
3b 下部吹込部
3c ガス導入管
3d ガス導入管
3e 本体部
3f 鉄皮
4 スライディングノズル
5 上部固定板
6 摺動板
7 下部固定板
8 整流ノズル
9 浸漬ノズル
10 吐出孔
11 溶鋼流出孔
12 往復型アクチュエーター
13 鋳型長辺
14 鋳型短辺
15 鉄皮
16 耐火物
17 溶鋼
18 吐出流
19 溶鋼湯面
20 モールドパウダー
21 凝固シェル
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミキルド鋼の連続鋳造方法に関し、詳しくは、溶鋼中のAl2 O3 による浸漬ノズルの閉塞を防止することのできる連続鋳造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミキルド鋼は、酸化脱炭精錬された溶鋼がAlによって脱酸され、酸化脱炭精錬により増加した溶鋼中の酸素が除去されて製造される。この脱酸工程で生成したAl2 O3 粒子(アルミナ粒子)は、溶鋼とAl2O3 との密度差を利用して溶鋼から除去されているが、数10μm以下の微小なAl2 O3 粒子の浮上速度は極めて遅く、浮上分離に長時間を要するため、実際のプロセスでは、このような微小のAl2O3 粒子を完全に浮上・分離させることは極めて困難であり、そのため、アルミキルド溶鋼中には微細なAl2 O3粒子が懸濁した状態で残留する。
【0003】
鋼の連続鋳造では、タンディッシュから鋳型へと溶鋼を注湯する際に、耐火物製の浸漬ノズルを用いて注湯している。この浸漬ノズルに求められる特性としては、耐熱衝撃性及びモールドパウダーや溶鋼に対する耐溶損性に優れることであり、そのため、これらの特性に優れるAl2 O3 −黒鉛質或いはAl2 O3質の浸漬ノズルが広く用いられている。しかしながら、Al2 O3 −黒鉛質或いはAl2 O3質の浸漬ノズルを用いてアルミキルド鋼を鋳造すると、溶鋼中に懸濁しているAl2 O3 粒子が浸漬ノズル内壁表面に付着・堆積して、浸漬ノズルの閉塞が発生するという問題が発生する。
【0004】
浸漬ノズルが閉塞すると、鋳造作業上及び鋳片品質上で様々な問題が発生する。例えば、鋳片引き抜き速度を低下せざるを得ず、生産性が落ちるのみならず、甚だしい場合には、鋳込み作業そのものの中止を余儀なくされる。また、浸漬ノズル内壁表面に堆積し、粗大化したAl2 O3 粒子が突然剥離し、鋳型内に排出され、これが鋳型内の凝固シェルに捕捉された場合には製品欠陥となり、製品歩留まりの低下につながる。
【0005】
このような理由から、従来、アルミキルド鋼の連続鋳造においては、浸漬ノズル内壁表面へのAl2 O3 の付着を防止する手段が検討され、多数の提案がなされている。そのなかの1つの手段として、浸漬ノズルの内壁にArガスなどの不活性ガスを吹き込んで、不活性ガスによって浸漬ノズル内壁に付着したAl2O3 を強制的に洗浄する、或いは、浸漬ノズル内壁と溶鋼との間にガス膜をつくり、Al2 O3 が壁に接触しないようにする技術が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、タンディッシュ底部に設置した、Arガス吹込部を有する上ノズルと、上ノズルに接続するスライディングノズルと、スライディングノズルに接続する浸漬ノズルと、から構成される溶鋼注入手段を用いてアルミキルド鋼を鋳型内に注湯する際に、前記ガス吹込部の煉瓦気孔径を30μm〜50μmとしてArガスを吹き込みならが、1分間当たり1.0トン〜2.0トンの溶鋼を鋳造する連続鋳造方法が開示されている。
【特許文献1】特開平3−297545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1には以下の問題点がある。即ち、Arガスの洗浄効果を利用してAl2 O3 の付着を防止する場合には、鋳造する溶鋼量に対するArガスの吹き込み量を設定する必要があるが、特許文献1では明確に示していない。また、特許文献1における1分間当たりの鋳造量、即ち鋳型への溶鋼注入量は1.0トン〜2.0トンであるが、連続鋳造機の生産性向上技術に伴って鋳片引き抜き速度は増加し、近年の1分間当たりの溶鋼注入量は4トン以上に達しており、このような高速鋳造条件における吹込み方法をどのようにするかは明確でない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、1分間当たりの溶鋼注入量が4トン以上の高速鋳造条件下でアルミキルド鋼を連続鋳造するに当たり、溶鋼中のAl2 O3 による浸漬ノズルの閉塞を防止することのできる、アルミキルド鋼の連続鋳造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係るアルミキルド鋼の連続鋳造方法は、タンディッシュ底部に設置した、ガス吹込部を有する上ノズルと、該上ノズルに接続するスライディングノズルと、該スライディングノズルに接続する浸漬ノズルと、から構成される溶鋼注入手段を用いてタンディッシュ内のアルミキルド溶鋼を鋳型内に注入する際に、前記ガス吹込部を構成するポーラス煉瓦の平均気孔径を30μm〜50μmとするとともに、Arガス吹き込み量が溶鋼注入量1トン当たり2.0NL以上となるようにガス吹込部からArガスを吹き込みながら、1分間当たり4.0トン以上のアルミキルド溶鋼を鋳型内に注入することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガス吹込部を構成するポーラス煉瓦の平均気孔径を30μm〜50μmとするので、溶鋼トン当たり2.0NL以上のArガスを上ノズルから安定して吹き込むことができ、1分間当たりの溶鋼注入量が4.0トン以上のアルミキルド溶鋼の連続鋳造であっても、浸漬ノズル内壁表面へのAl2 O3 付着を抑制することが可能となり、Al2O3 による浸漬ノズルの閉塞を防止することが達成される。その結果、鋳造可能時間を飛躍的に延長させることができると同時に、浸漬ノズル内壁から剥離する粗大化したAl2O3 に起因する鋳片の大型介在物性の欠陥、並びに、浸漬ノズルの閉塞による鋳型内溶鋼の偏流に起因するモールドパウダー性の欠陥を大幅に削減することができ、工業上有益な効果がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、本発明による連続鋳造方法を実施する際に用いたスラブ連続鋳造機の鋳型部の概略図である。
【0012】
図1において、相対する鋳型長辺13と、鋳型長辺13の内側に内装された、相対する鋳型短辺14と、により構成される鋳型2の上方所定位置に、外郭を鉄皮15で覆われ、内部を耐火物16で施行されたタンディッシュ1が配置されている。このタンディッシュ1の底部には、耐火物16に嵌合する上ノズル3が設置され、そして、上ノズル3の下面に接して、上部固定板5、摺動板6、下部固定板7及び整流ノズル8からなるスライディングノズル4が配置され、更に、スライディングノズル4の下面に接して、その下部に一対の吐出孔10を有する浸漬ノズル9が配置され、タンディッシュ1から鋳型2への溶鋼流出孔11が形成されている。即ち、タンディッシュ1から鋳型2への溶鋼注入手段として、上ノズル3、スライディングノズル4及び浸漬ノズル9が設置されている。
【0013】
浸漬ノズル9は、下部に設置される吐出孔10が鋳型内の溶鋼17に埋没するようにその先端が浸漬されて使用される。摺動板6は、往復型アクチュエーター12と接続されており、往復型アクチュエーター12の作動により、上部固定板5と下部固定板7との間をこれらの固定板と接触したまま移動し、摺動板6と上部固定板5及び下部固定板7とで形成する開口部面積を調整することにより溶鋼流出孔11を通過する溶鋼量が制御される。
【0014】
上部ノズル3の拡大図を図2に示す。図2に示すように、上ノズル3は、上部吹込部3a、下部吹込部3b、及び、上部吹込部3aと下部吹込部3bとの中間に位置する本体部3eの3つの部分で構成され、その外周には鉄皮3fが配置されている。上部吹込部3a及び下部吹込部3bは、ガス吹込部であり、アルミナ質のポーラス煉瓦で形成されている。本体部3eは、比較的緻密なアルミナ質で形成されている。図2では、上部吹込部3a及び下部吹込部3bが本体部3eと明確に区別できるように表示しているが、実際には明確な境界はなく、本体部3eを形成するアルミナ質煉瓦と、上部吹込部3a及び下部吹込部3bを形成するアルミナ質ポーラス煉瓦とが、徐々にその配合比率を変えるようにして形成されている。つまり、一体的に形成されている。
【0015】
鉄皮3fを貫通して2本のガス導入管3c,3dが配置されていて、ガス導入管3cは上部吹込部3aに開口し、ガス導入管3dは下部吹込部3bに開口している。即ち、ガス導入管3cから供給されるArガスは上部吹込部3aを介して溶鋼流出孔11の内部に吹き込まれ、一方、ガス導入管3dから供給されるArガスは下部吹込部3bを介して溶鋼流出孔11の内部に吹き込まれるように構成されている。上ノズル3の外周に配置される鉄皮3fは、上ノズル3の強度を確保する目的もあるが、Arガスが上ノズル3の外周面から流出することを防止している。従って、ガス導入管3c,3dから供給されたArガスは、確実に溶鋼流出孔11の内部に吹き込まれるようになっている。ガス導入管3c,3dはそれぞれ独立したArガス供給装置に接続しており、それぞれ独立してArガス供給量が制御されるようになっている。
【0016】
本発明においては、ガス吹込部である上部吹込部3a及び下部吹込部3bのポーラスレンガの平均気孔径を30μm〜50μmとする。換言すれば、上部吹込部3a及び下部吹込部3bが、30μm〜50μmの平均気孔径を有するポーラス煉瓦で構成されている上ノズルを、上ノズル3として使用する。後述するように、本発明では1分間当たり4.0トン以上の溶鋼17を鋳型2に注入する際に、溶鋼注入量1トン当たり2.0NL以上のArガスを上ノズル3から吹き込む。ポーラス煉瓦の平均気孔率が30μm未満であると、溶鋼注入量1トン当たり2.0NL以上のArガスを安定して吹き込むことができない。一方、ポーラス煉瓦の平均気孔径が50μmを超えると、Arガス気泡が大きくなり過ぎ、洗浄効果が低下する、溶鋼湯面9における湯面変動が大きくなる、などするので好ましくない。
【0017】
図3は、平均気孔径が40μmのポーラス煉瓦と平均気孔径が20μmのポーラス煉瓦を用い、水中においてArガスの気泡径を調査した結果である。ポーラス煉瓦の平均気孔径が大きくなると、Arガス流量が同一の条件下においてArガスの平均気泡径は大きくなる。従って、水中におけるArガス気泡を測定することでポーラス煉瓦の平均気孔径を把握することができる。ポーラス煉瓦の平均気孔径を30μm〜50μmの範囲に維持して製造するには、耐火物粉末原料の粒度を調整する、粉体原料からポーラス煉瓦を圧縮成形加工する際の圧縮成形力を調整するなど、原料条件及び製造条件を特定することで得ることができる。
【0018】
尚、ポーラス煉瓦の平均気孔径を直接測定する方法としては、以下のような方法がある。即ち、ポーラス煉瓦を水銀中に埋没させ、特定の気孔径に相当する圧力をかけた際にポーラス煉瓦内に吸い込まれる水銀量を求め、この水銀量から該当する気孔径の比率を求める。この測定を、様々な圧力下で行うことにより全体の気孔径の分布を求め、その後に平均径を定める方法である。このようにして平均気孔径を測定したポーラス煉瓦を用いて図3に示すようなArガスの平均気泡径の分布図を定めておけば、それ以降は、気孔径を直接測定する必要はなく、水中におけるArガス気泡径を測定することで、平均気孔径を把握することができる。
【0019】
このように構成されるスラブ連続鋳造機を用い、以下のようにして本発明の連続鋳造方法を実施する。
【0020】
転炉または電気炉などの一次精錬炉若しくはRH真空脱ガス装置などの二次精錬炉で溶製されたアルミキルド鋼の溶鋼17を、取鍋(図示せず)からタンディッシュ1に注入し、タンディッシュ内の溶鋼量が所定量になったなら、摺動板6を開き、溶鋼流出孔11を介して溶鋼17を鋳型2に注入する。溶鋼17は、吐出孔10から、鋳型短辺14に向かう吐出流18となって鋳型内に注入される。鋳型内に注入された溶鋼17は鋳型2により冷却され、凝固シェル21を形成する。そして、鋳型内に所定量の溶鋼17が注入されたなら、吐出孔10を鋳型内の溶鋼17に浸漬した状態で、鋳型2の下方に設置したピンチロール(図示せず)を駆動して、外殻を凝固シェル21とし、内部に未凝固の溶鋼17を有する鋳片の引き抜きを開始する。引き抜き開始後は溶鋼湯面19の位置を鋳型内の略一定位置に制御しながら、1分間当たり4.0トン以上の溶鋼17が鋳型内に注入されるように、鋳片引き抜き速度を増速してその速度を維持する。鋳型内の溶鋼湯面19の上にはモールドパウダー20を添加する。モールドパウダー20は溶融して、溶鋼17の酸化防止や凝固シェル21と鋳型2との間に流れ込み潤滑剤としての効果を発揮する。
【0021】
この鋳造中、上ノズル3の上部吹込部3a及び下部吹込部3bから、溶鋼流出孔11を流下する溶鋼17の通過質量に応じて吹き込むガス流量を調整しながらArガスを溶鋼流出孔11の内部に吹き込む。
【0022】
具体的には、1分間当たり4.0トン以上のアルミキルド溶鋼を鋳型内に注入する際に、上部吹込部3a及び下部吹込部3bから吹き込むArガス吹き込み量の合計値が溶鋼注入量1トン当たりに対して2.0NL(標準状態換算)以上となるようにArガスを吹き込む。この場合、上部吹込部3aからの吹き込み量と、下部吹込部3bからの吹き込み量との比率は特に規定するものではなく、1:1程度で構わないが、上部吹込部3aの方が、吹き込み面積が大きいことから、均一に吹き込むためには10:4〜10:7程度とすることが好ましい。
【0023】
Arガス吹き込み量が溶鋼注入量1トン当たり2.0NL未満になると、浸漬ノズル9のAl2 O3 付着が激しくなるので、Arガス吹き込み量は溶鋼注入量1トン当たり2.0NL以上とする必要がある。但し、Arガス吹き込み量が多くなりすぎると、鋳型内の溶鋼17を浮上するArガス気泡によって溶鋼湯面19の変動が大きくなり、モールドパウダー20の巻き込みが発生する恐れがあるので、溶鋼注入量1トン当たり3.6NL以下とすることが好ましい。また、溶鋼17の1分間当たりの注入量が4.0トン未満の場合には、吐出流18の流速が遅くなり、溶鋼湯面19の流速も遅くなるので、それに応じてArガス吹き込み量を変更させる必要があるが、本発明は高速鋳造を意図したものであるので、ここでは特に言及しないこととする。
【0024】
このように、ガス吹込部を構成するポーラス煉瓦の平均気孔径を30μm〜50μmとし、且つ、溶鋼トン当たり2.0NL以上のArガスを上ノズル3から吹き込むので、1分間当たり4.0トン以上のアルミキルド溶鋼の連続鋳造であっても、浸漬ノズル内壁表面へのAl2 O3 付着を抑制することができ、Al2O3 による浸漬ノズルの閉塞を防止することが可能となる。
【0025】
尚、上記説明ではガス吹込部位が2箇所の例で説明したが、1箇所としても、また3箇所以上としても、上記に沿って本発明を適用することができる。また、上記説明では3枚板構成のスライディングノズル4の例を挙げたが、2枚板構成のスライディングノズルについても上記に沿って本発明を適用することができる。
【実施例1】
【0026】
平均気孔径が40μmのポーラス煉瓦を上部吹込部及び下部吹込部とする上ノズルが配置された、図1に示すスラブ連続鋳造機を用いて、Arガス吹き込み量を変化させた試験を実施した。
【0027】
タンディッシュの容量は50トンであり、厚みが250mm、幅が950mmのスラブ鋳片を2.5m/分の引き抜き速度で鋳造した。この場合の1分間当たりの溶鋼注入量は、4.66トンであり、この溶鋼注入量に応じてArガス吹き込み量を、Arガス吹き込み量(NL/分)/溶鋼注入量(トン/分)の比が、1.3〜4.2NL/トンの範囲で変更した。上部吹込部からのArガス吹き込み量と、下部吹込部からのArガス吹き込み量との比率は、全ての試験で10:6とした。この条件で6チャージの連続連続鋳造(「連々鋳」)を実施し、鋳造後、浸漬ノズル内壁のAl2 O3 付着量を測定した。また、鋳造した鋳片を熱間圧延し更に冷間圧延して薄鋼板を製造し、この薄鋼板における介在物性表面欠陥を調査した。
【0028】
図4に、浸漬ノズル内壁のAl2 O3 付着量を測定した結果を示す。図4に示すように、Arガス吹き込み量/溶鋼注入量の比が2.0NL/トン以上では、Al2O3 付着量は少なく、6チャージの連々鋳は全く問題なく、更に連々鋳を続けることが可能であることが確認された。一方、Arガス吹き込み量/溶鋼注入量の比が2.0NL/トン未満の場合には、浸漬ノズル内壁のAl2O3 付着が激しく、6チャージを超えて連々鋳を続けることは無理であることが確認された。
【0029】
図5に、薄鋼板において介在物性表面欠陥を調査した結果を示す。この場合には、Arガス吹き込み量/溶鋼注入量の比が1.3〜4.2NL/トンの範囲で表面欠陥の発生率は低く、問題のないことが確認できた。但し、Arガス吹き込み量/溶鋼注入量の比が3.6NL/トンを超えると、若干表面欠陥の発生率が高くなる傾向にあり、従って、薄鋼板における介在物性表面欠陥を抑える観点からは、Arガス吹き込み量/溶鋼注入量の比を3.6NL/トン以下にすることが好ましいことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による連続鋳造方法を実施する際に用いたスラブ連続鋳造機の鋳型部の概略図である。
【図2】図1に示す上部ノズルの拡大図である。
【図3】ポーラス煉瓦から発生するArガスの気泡径を水中において調査した結果を示す図である。
【図4】実施例1において、浸漬ノズル内壁のAl2 O3 付着量を測定した結果を示す図である。
【図5】実施例1において、薄鋼板における介在物性表面欠陥を調査した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 タンディッシュ
2 鋳型
3 上ノズル
3a 上部吹込部
3b 下部吹込部
3c ガス導入管
3d ガス導入管
3e 本体部
3f 鉄皮
4 スライディングノズル
5 上部固定板
6 摺動板
7 下部固定板
8 整流ノズル
9 浸漬ノズル
10 吐出孔
11 溶鋼流出孔
12 往復型アクチュエーター
13 鋳型長辺
14 鋳型短辺
15 鉄皮
16 耐火物
17 溶鋼
18 吐出流
19 溶鋼湯面
20 モールドパウダー
21 凝固シェル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンディッシュ底部に設置した、ガス吹き込み部を有する上ノズルと、該上ノズルに接続するスライディングノズルと、該スライディングノズルに接続する浸漬ノズルと、から構成される溶鋼注入手段を用いてタンディッシュ内のアルミキルド溶鋼を鋳型内に注入する際に、前記ガス吹き込み部を構成するポーラス煉瓦の平均気孔径を30μm〜50μmとするとともに、Arガス吹き込み量が溶鋼注入量1トン当たり2.0NL以上となるようにガス吹き込み部からArガスを吹き込みながら、1分間当たり4.0トン以上のアルミキルド溶鋼を鋳型内に注入することを特徴とする、アルミキルド鋼の連続鋳造方法。
【請求項1】
タンディッシュ底部に設置した、ガス吹き込み部を有する上ノズルと、該上ノズルに接続するスライディングノズルと、該スライディングノズルに接続する浸漬ノズルと、から構成される溶鋼注入手段を用いてタンディッシュ内のアルミキルド溶鋼を鋳型内に注入する際に、前記ガス吹き込み部を構成するポーラス煉瓦の平均気孔径を30μm〜50μmとするとともに、Arガス吹き込み量が溶鋼注入量1トン当たり2.0NL以上となるようにガス吹き込み部からArガスを吹き込みながら、1分間当たり4.0トン以上のアルミキルド溶鋼を鋳型内に注入することを特徴とする、アルミキルド鋼の連続鋳造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2006−231397(P2006−231397A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53285(P2005−53285)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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