説明

アルミニウム製ヒートシンク及びその製造方法

【課題】従来よりも放熱性に優れ、かつ、固定時の構造安定性が高いアルミニウム製ヒートシンク及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】発熱部材の表面に当接させるベース21と、ベース21から立設させたフィン22とを備えた放熱部2と、ベース21の外周に一体的に接合されたフレーム部3とを有する。放熱部2とフレーム部3とは、異なる材質よりなるアルミニウム合金により構成されており、放熱部2を構成する第1アルミニウム合金はフレーム部3を構成する第2アルミニウム合金よりも含有アルミニウム純度が高いと共に熱伝導性が高く、かつ、第2アルミニウム合金は第1アルミニウム合金よりも引張強さが高い。第1アルミニウム合金は、含有アルミニウム純度が98質量%以上であることが好ましい。第1アルミニウム合金は、熱伝導率が160W/m℃以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスその他の発熱部材からの放熱を促進するために用いるアルミニウム製ヒートシンク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用時に発熱する電子デバイス等の発熱部材には、放熱を促すためのヒートシンクが取り付けられることが多い。また、近年の電子デバイス等の高性能化によってその発熱量が増大したことにより、ヒートシンクの放熱効果の向上が求められている。
【0003】
ヒートシンクとしては、軽量で比較的熱伝導特性に優れたアルミニウム合金を素材としたアルミニウム製ヒートシンクが用いられる場合が多い。アルミニウム製ヒートシンクとしては、発熱部材に当接させると共に固定部分となる基部と、基部から延設された放熱面積を増大させるためのフィンとを備えるものが通常である(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭51−10968号公報
【特許文献2】特開昭57−193049号公報
【特許文献3】実開昭45−1948号公報
【特許文献4】特開平8−316378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルミニウム製ヒートシンクは、上記基部とフィンとを一体的に一種類の合金を素材として鋳造により作製することが多い。放熱効果を向上させるためには、ヒートシンクを構成しているアルミニウム合金の熱伝導特性が高い方が有利である。しかし、一般的には、アルミニウム合金の熱伝導特性を高めると機械的特性が低下する。すなわち、アルミニウム製ヒートシンクの放熱性だけを追求すれば、機械的特性が低下し、ヒートシンクを発熱部材に当接させて固定する固定構造が不安定となる。固定構造の不安定化は、耐久性にも影響する。一方、アルミニウム合金の機械的特性を確保した場合には、放熱性を犠牲にする必要がある。
【0006】
このような問題に対して、基部とフィンとを異なる材質のアルミニウム合金とすることが提案されている(特許文献3、4参照)。この場合には、基部の機械的特性を向上させると共に、フィンの熱伝導特性を向上させることが可能となる。
しかしながら、さらなる放熱性向上を検討する際には、発熱部材と直接当接する基部の熱伝導特性を向上させることが必要となってくる。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、従来よりも放熱性に優れ、かつ、固定時の構造安定性が高いアルミニウム製ヒートシンク及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、発熱部材の表面に当接させるベースと、該ベースから立設させたフィンとを備えた放熱部と、
上記ベースの外周に一体的に接合されたフレーム部とを有し、
上記放熱部と上記フレーム部とは、異なる材質よりなるアルミニウム合金により構成されており、上記放熱部を構成する第1アルミニウム合金は上記フレーム部を構成する第2アルミニウム合金よりも含有アルミニウム純度が高いと共に熱伝導性が高く、かつ、上記第2アルミニウム合金は上記第1アルミニウム合金よりも引張強さが高いことを特徴とするアルミニウム製ヒートシンクにある(請求項1)。
【0009】
第2の発明は、第1の発明のアルミニウム製ヒートシンクを製造する方法であって、
上記放熱部と上記フレーム部のうちの一方を鋳造により作製する第1鋳造工程と、
該第1鋳造工程により作製した上記一方を金型内にインサートして他方を鋳造することにより両者を一体的に接合する第2鋳造工程とを有することを特徴とするアルミニウム製ヒートシンクの製造方法にある(請求項7)。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明のアルミニウム製ヒートシンクは、上記のごとく、ベースとフィンとを備えた上記放熱部を上記第1アルミニウム合金により構成し、上記フレーム部を上記第2アルミニウム合金により構成してある。これにより、上記アルミニウム製ヒートシンクは、従来よりも放熱性に優れ、かつ、固定時の構造安定性が高いものとなる。
【0011】
すなわち、まず、上記第2アルミニウム合金は、第1アルミニウム合金よりも引張強さが高い、つまり、機械的性質に優れて高強度である。そのため、上記放熱部のベースの外周に設けられた高強度の第2アルミニウム合金よりなるフレーム部が、アルミニウム製ヒートシンク全体の構造安定性を高める役割を発揮する。そして、アルミニウム製ヒートシンクを発熱部材あるは外部のハウジング等へ固定する際の固定部として、上記フレーム部を利用することにより、固定構造を強固とし安定化させることができる。
【0012】
次に、上記放熱部は、上記発熱部材と当接するベースとこれから立設させたフィンとを備え、その全体が上記第1アルミニウム合金により構成されている。第1アルミニウム合金は、第2アルミニウム合金よりも含有アルミニウム純度を高めて熱伝導性を向上させてある。これにより、上記放熱部においては、発熱部材に当接する上記ベースが発熱部材から発せられる熱を効率よくフィンに伝え、フィンは効率よく外部に熱を放熱することができる。また、アルミニウム製ヒートシンク全体の強度特性は、上記フレーム部によって確保することができるため、上記放熱部を構成するアルミニウム合金の強度が多少低くても問題はない。
【0013】
このように、本発明では、2種類の特性を有するアルミニウム合金を採用し、これらを、上記構成の放熱部と、上記フレーム部という特定の部分に分けて配置する。つまり、従来の基部とフィンとからなるヒートシンクの構成のうち、基部の部位を上記ベースとフレーム部とに分け、そのうちのベースをフィンと同じ種類の第1アルミニウム合金により構成して放熱部とし、上記フレーム部を放熱部と異なる種類の第2アルミニウム合金により構成する。これにより、上述した放熱性及び固定時の構造安定性の両者を確保することができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明のアルミニウム製ヒートシンクを製造する方法であって、第1鋳造工程と第2鋳造工程という2つの鋳造工程を組み合わせた方法である。この方法によれば、上記第1鋳造工程において作製した上記放熱部とフレーム部のうち一方を金型内にインサートして他方を形成するための上記第2鋳造工程を実施する。これにより、上記他方を形成した際に、上記放熱部とフレーム部の両者を容易に一体的に接合することができる。そして、得られたアルミニウム製ヒートシンクは、上記のごとく優れた作用効果を発揮しうるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における、放熱部の斜視図。
【図2】実施例1における、第2鋳造工程を実施するためのダイキャストマシーンの構成を示す説明図。
【図3】実施例1における、アルミニウム製ヒートシンクの斜視図。
【図4】実施例1における、アルミニウム製ヒートシンクの平面図。
【図5】実施例1における、アルミニウム製ヒートシンクの断面図(図4のA−A線矢視断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記アルミニウム製ヒートシンクにおける上記放熱部は、上記のごとく発熱部材の表面に当接させるベースと、該ベースから立設させたフィンとを備えたものである。上記ベースの形態は、上記発熱部材の放熱部分の表面形態に対応して形成することができ、通常は平板状に形成される。このベースから立設させる上記フィンは、板状、断面円形あるいは多角形の柱状、その他の表面積を増大させる種々の形態を取ることができる。
【0017】
また、上記フレーム部は、上記ベースの外周に設けるが、要求される強度特性が得られる限り、必ずしもその全周を囲うように構成する必要はない。例えば、C字形状、コ字形状にしてもよい。もちろん、上記フレーム部は、例えば後述する実施例のように、上記ベースの全周を囲うように構成することが構造安定性上最も好ましい。
【0018】
また、上記第1アルミニウム合金は、含有アルミニウム純度が98質量%以上であることが好ましい(請求項2)。この場合には、上記第1アルミニウム合金、すなわち、上記放熱部の熱伝導率を容易に高めることができる。なお、含有アルミニウム純度の上限は、製造コストが許す限り高いほど好ましい。
【0019】
また、上記第1アルミニウム合金は、熱伝導率が160W/m℃以上であることが好ましい(請求項3)。上記第1アルミニウム合金の熱伝導率が160W/m℃未満の場合には、上記放熱部における放熱特性を向上させることが困難となる。より好ましくは、上記第1アルミニウム合金の熱伝導率は、180W/m℃以上とすることがよく、最も好ましくは200W/m℃以上とするのがよい。
【0020】
また、上記第2アルミニウム合金は、引張強さが180N/mm2以上であることが好ましい(請求項4)。上記第2アルミニウム合金の引張強さが180N/mm2未満の場合には、上記フレーム部の強度を十分に確保できず、固定構造の安定性を得ることが困難となる。より好ましくは、上記第2アルミニウム合金の引張強さは200N/mm2以上とするのがよい。
【0021】
また、上記放熱部と上記フレーム部とは、公知の様々な製造方法により作製することができる。その中でも、上記放熱部と上記フレーム部とは、一方を先に作製した後、当該一方を金型内にインサートして他方を鋳造することにより両者を一体的に接合してあることが好ましい(請求項5)。この場合には、上記放熱部とフレーム部との境界部分が上記他方を鋳造した際に容易に相溶状態となり、強固な接合状態を容易に得ることができる。
【0022】
また、上記放熱部と上記フレーム部との接合部分には、一方に設けられた突出部と該突出部を覆う鋳ぐるみ部とを有することが好ましい(請求項6)。この場合には、上記突出部とこれを覆う上記鋳ぐるみ部とが、機械的な結合関係となり、さらに放熱部とフレーム部との接合状態を強固にすることができる。
【0023】
また、上記のインサート鋳造を実施する場合には、上記放熱部とフレーム部のいずれを先に作製してもよいが、形状が比較的複雑な放熱部を先に作製し、これを金型内に配置してフレーム部を後から鋳造する方が製造上容易である。
また、上記放熱部と上記フレーム部のうち、先に作製する部材は、例えば、押出成形したものを切断して作製する方法などの鋳造以外の方法を採用することも可能であるが、上記突出部の形成などの形状の自由度の観点から見れば、鋳造が最も好ましい。
【0024】
また、上記鋳造方法としては、重力鋳造その他の公知の様々な鋳造方法を採用可能であるが、特に、寸法安定性などに優れたダイキャストを採用することが好ましい。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
本発明の実施例に係るアルミニウム製ヒートシンク及びその製造方法につき、図1〜図5を用いて説明する。
本例のアルミニウム製ヒートシンク1は、図3〜図5に示すごとく、発熱部材(図示略)の表面に当接させるベース21と、該ベース21から立設させたフィン22とを備えた放熱部2と、上記ベース21の外周に一体的に接合されたフレーム部3とを有する。
上記放熱部2とフレーム部3とは、異なる材質よりなるアルミニウム合金により構成されている。放熱部2を構成する第1アルミニウム合金はフレーム部3を構成する第2アルミニウム合金よりも含有アルミニウム純度が高いと共に熱伝導性が高く、かつ、第2アルミニウム合金は上記第1アルミニウム合金よりも引張強さが高い。
以下、さらに詳説する。
【0026】
本例のアルミニウム製ヒートシンク1は、上述したごとく、放熱部2とフレーム部3とを一体的に接合することにより構成されている。上記放熱部2は、図1に示すごとく、板状のベース21と、その一方の面211から立設させた複数枚の板状のフィン22を有している。板状のフィン22は、一定間隔を空けて平行に配列されている。なお、この板状のフィン22の配置を非平行あるいは間隔をランダムな状態に変更することは可能であり、また、板状を、断面円形あるいは多角形の柱状、その他の表面積を増大可能な種々の形態に変更することも可能である。
【0027】
上記ベース21におけるフィン22を立設させた面211の裏側面212(図5)が、発熱部材の表面に当接して発熱部材からの熱伝達を受ける面となる。また、ベース21の外周面には、外方に向かって突出する複数の突出部25が設けられている。
このような形状の放熱部2は、含有アルミニウム純度が98質量%以上の第1アルミニウム合金を用いてダイキャスト(第1鋳造工程)を実施することにより作製する。第1アルミニウム合金の化学成分は表1に示す。また、第1アルミニウム合金の熱伝導率及び引張強さについては表2に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
放熱部2のダイキャスト方法は、一般的なダイキャストマシーンを用いた一般的な条件を用いた方法により行った。ダイキャスト(第1鋳造工程)直後の放熱部2は、ゲート部やオーバーフロー部における余剰部(図示略)が繋がったものとなる。そのため、このような余剰部を取り除くトリミング工程を経て、図1に示すような形状の放熱部2を得ることができる。
【0031】
次に、図2に示すごとく、ダイキャストマシーン5を用いて第2鋳造工程を行う。
ダイキャストマシーン5の一対の金型51、52の間には、上記キャビティ50が設けられていると共に、ゲート53を介してオーバーフロー部55が設けられている。また、一方の金型51には、第2アルミニウム合金の溶湯をキャビティ50に向けて供給するためのスリーブ部56及びプランジャ57が設けられている。スリーブ部56は、ゲート54を介して上記キャビティ50につながっている。また、他方の金型52には、鋳造後にキャビティ50内から鋳物を離型させるためのイジェクトピン58が設けられている。
【0032】
ダイキャストマシーン5による第2鋳造工程では、まず、図2に示すごとく、第1鋳造工程によって得られた放熱部2を、上記キャビティ50内にインサートする。次いで、スリーブ部56の注湯口560から第2アルミニウム合金の溶湯をスリーブ部56に注湯し、その後、プランジャ57を前進させる。これにより、第2アルミニウム合金の溶湯を、ゲート54を介してキャビティ50内に充填する。このとき、余剰の第2アルミニウム合金は、オーバーフロー部55にも充填される。
【0033】
キャビティ50内の第2アルミニウム合金は、凝固してフレーム部3(図3〜図5)になると共に、このフレーム部3と放熱部2とが一体的に接合される。これによりアルミニウム製ヒートシンク1が形成される。上記接合は、ダイキャスト時に、フレーム部3と放熱部2との境界部分が相溶状態となってから凝固することにより容易に実現される。
【0034】
上記フレーム部3用の第2アルミニウム合金としては、JIS規格のADC12相当のものを用いた。第2アルミニウム合金の化学成分は、上記表1に示す。また、第2アルミニウム合金の熱伝導率及び引張強さについては上記表2に示す。
【0035】
第2鋳造工程としてのダイキャスト直後のアルミニウム製ヒートシンク1は、上記フレーム部3の周囲にゲート部53、54やオーバーフロー部55における余剰部が繋がったものとなる。そのため、このような余剰部を取り除くトリミング工程を経て、図3に示すような形状のアルミニウム製ヒートシンク1を得ることができる。
【0036】
得られたアルミニウム製ヒートシンク1は、上記のごとく、ベース21とフィン22とを備えた放熱部2を上記第1アルミニウム合金により構成し、フレーム部3を上記第2アルミニウム合金により構成してある。これにより、アルミニウム製ヒートシンク1は、従来よりも放熱性に優れ、かつ、固定時の構造安定性が高いものとなる。
【0037】
すなわち、上記表1、表2より知られるごとく、第2アルミニウム合金は、第1アルミニウム合金よりも引張強さが高い、つまり、機械的性質に優れて高強度である。そのため、放熱部2のベース21の外周に設けられた高強度の第2アルミニウム合金よりなるフレーム部3が、アルミニウム製ヒートシンク1全体の構造安定性を高める役割を発揮する。そして、アルミニウム製ヒートシンク1を発熱部材あるは外部のハウジング等へ固定する際の固定部として、フレーム部3を利用することにより、固定構造を強固とし安定化させることができる。なお、具体的な固定構造としては、フレーム部3に貫通穴を設けてボルト等によって締結する方法など、公知の様々な固定構造を採用することができる。
【0038】
また、放熱部2は、発熱部材と当接するベース21とこれから立設させたフィン22とを備え、その全体が上記第1アルミニウム合金により構成されている。表1、表2より知られるごとく、第1アルミニウム合金は、第2アルミニウム合金よりも含有アルミニウム純度を高めて熱伝導性を向上させてある。実際に、第1アルミニウム合金の熱伝導率は、第2アルミニウム合金よりも格段に高い。これにより、放熱部2においては、発熱部材に当接するベース21が発熱部材から発せられる熱を効率よくフィン22に伝え、フィン22は効率よく外部に熱を放熱することができる。また、アルミニウム製ヒートシンク1全体の強度特性は、上記フレーム部3によって確保することができるため、放熱部2を構成するアルミニウム合金の強度が多少低くても問題はない。
【0039】
このように、2種類の特性を有するアルミニウム合金を採用し、これらを、上記構成の放熱部2と、フレーム部3という特定の部分に分けて配置することにより、上述した放熱性及び固定時の構造安定性の両者を確保することができる。
【0040】
また、上述したごとく、アルミニウム製ヒートシンク1は、上記第1鋳造工程と第2鋳造工程という2つの鋳造工程を組み合わせた方法により製造することができる。これにより、自由度の高い形状選択が可能であると共に、上記放熱部2とフレーム部3の両者を容易に一体的に接合することができ、製造容易である。
【0041】
さらに、本例では、放熱部2の外周部に突出部25を設けてあり、第2鋳造工程を実施することによってこの突出部25を覆う鋳ぐるみ部35(図5)を有する構造を採用した。これにより、突出部25とこれを覆う鋳ぐるみ部35とが、機械的な結合関係となり、さらに放熱部2とフレーム部3との接合状態を強固にすることができる。
放熱部2とフレーム部3との接合境界部の断面を顕微鏡観察した結果、両者が互いに融合して境界線が無くなっていることが観察された(図示略)。
【0042】
また、上記放熱部2とフレーム部3とは互いに異なる材質からなるものの、アルミニウム合金同士であるため、両者の熱膨張係数の差が小さい。それ故、上記のようにインサート鋳造する方法によって作製しても、熱膨張差から生じる変形を抑制することができる。
【0043】
なお、本例では、上記第1アルミニウム合金及び第2アルミニウム合金の組合せとして、表1及び表2に記載の化学成分及び特性を有するアルミニウム合金を採用したが、ヒートシンクに求められる要求のレベルによっては、材質を変更することも可能である。材質を変更する場合においても、本例と同様に、放熱部を構成する第1アルミニウム合金がフレーム部を構成する第2アルミニウム合金よりも含有アルミニウム純度が高いと共に熱伝導性が高く、かつ、第2アルミニウム合金が第1アルミニウム合金よりも引張強さが高いという条件を具備することが重要である。
【符号の説明】
【0044】
1 アルミニウム製ヒートシンク
2 放熱部
21 ベース
22 フィン
25 突出部
3 フレーム部
35 鋳ぐるみ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部材の表面に当接させるベースと、該ベースから立設させたフィンとを備えた放熱部と、
上記ベースの外周に一体的に接合されたフレーム部とを有し、
上記放熱部と上記フレーム部とは、異なる材質よりなるアルミニウム合金により構成されており、上記放熱部を構成する第1アルミニウム合金は上記フレーム部を構成する第2アルミニウム合金よりも含有アルミニウム純度が高いと共に熱伝導性が高く、かつ、上記第2アルミニウム合金は上記第1アルミニウム合金よりも引張強さが高いことを特徴とするアルミニウム製ヒートシンク。
【請求項2】
請求項1に記載のアルミニウム製ヒートシンクにおいて、上記第1アルミニウム合金は、含有アルミニウム純度が98質量%以上であることを特徴とするアルミニウム製ヒートシンク。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアルミニウム製ヒートシンクにおいて、上記第1アルミニウム合金は、熱伝導率が160W/m℃以上であることを特徴とするアルミニウム製ヒートシンク。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム製ヒートシンクにおいて、上記第2アルミニウム合金は、引張強さが180N/mm2以上であることを特徴とするアルミニウム製ヒートシンク。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム製ヒートシンクにおいて、上記放熱部と上記フレーム部とは、一方を先に作製した後、当該一方を金型内にインサートして他方を鋳造することにより両者を一体的に接合してあることを特徴とするアルミニウム製ヒートシンク。
【請求項6】
請求項5に記載のアルミニウム製ヒートシンクにおいて、上記放熱部と上記フレーム部との接合部分には、一方に設けられた突出部と該突出部を覆う鋳ぐるみ部とを有することを特徴とするアルミニウム製ヒートシンク。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミニウム製ヒートシンクを製造する方法であって、
上記放熱部と上記フレーム部のうちの一方を鋳造により作製する第1鋳造工程と、
該第1鋳造工程により作製した上記一方を金型内にインサートして他方を鋳造することにより両者を一体的に接合する第2鋳造工程とを有することを特徴とするアルミニウム製ヒートシンクの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−101239(P2012−101239A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250586(P2010−250586)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(510296993)株式会社名光精機 (1)
【Fターム(参考)】