説明

アレイ基板及び液晶表示装置

【課題】開口率の低下を抑制することができるアレイ基板及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】アレイ基板は、複数の補助容量電極17と、行方向Xに延在し、複数の補助容量電極に隙間を置いて対向配置され、複数の補助容量電極とともに複数の補助容量素子Cstを形成する複数の補助容量線Csと、列方向Yに延在し、複数の補助容量線と交差した複数の信号線Sと、複数の補助容量電極に電気的に接続された複数の画素電極PEと、を備える。列方向Yに隣合う一方の画素電極PEに接続された補助容量電極17及び他方の画素電極PEに接続された補助容量電極17は、同一の補助容量線Csに対向し、信号線Sと交差して行方向Xに延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アレイ基板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像表示装置として、液晶表示装置が用いられている。液晶表示装置は、薄型、軽量、低消費電力の特徴を活かして、携帯電話、スマートフォン、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)、パーソナルコンピュータ用のディスプレイ等に利用されている。液晶表示装置は、アレイ基板と、アレイ基板に対向配置された対向基板と、アレイ基板及び対向基板間に挟持された液晶層とを備えている。アレイ基板には、複数の走査線、複数の信号線、複数の補助容量線、画素スイッチング用の複数のTFT(薄膜トランジスタ)や複数の補助容量素子等が形成されている。
【0003】
液晶表示装置において、容量結合駆動(CC駆動)が提案されている。CC駆動では、補助容量線の電位を変化させ、補助容量素子を通して画素電極に重畳電圧を与える。上記CC駆動を採用することにより、信号線に与える映像信号の振幅(電圧値)を低減することができる。
【0004】
また、液晶表示装置において、ドット反転駆動が提案されている。上記ドット反転駆動を採用することにより、液晶表示装置、特に高画質の液晶表示装置において、フリッカと呼ばれるちらつきの発生を低減することができる。
さらに、液晶表示装置において、CC駆動とドット反転駆動を組合せた、容量結合ドット反転(CCDI)駆動が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−266738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記CCDI駆動を採用した場合、信号線の延在した方向、すなわち列方向において、場所によっては、隣合う一方の画素電極に接続された補助容量電極及び他方の画素電極に接続された補助容量電極が、同一の補助容量線に対向配置されている。この場合、所定の補助容量を確保するため、補助容量線の幅を大きくし、補助容量電極との対向面積を確保する必要がある。しかしながら、上記の場合、開口率の低下を招くこととなる。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、開口率の低下を抑制することができるアレイ基板及び液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るアレイ基板は、
複数の補助容量電極と、
行方向に延在し、前記複数の補助容量電極に隙間を置いて対向配置され、前記複数の補助容量電極とともに複数の補助容量素子を形成する複数の補助容量線と、
前記行方向に交差した列方向に延在し、前記複数の補助容量線と交差した複数の信号線と、
前記複数の補助容量電極に電気的に接続された複数の画素電極と、を備え、
前記列方向に隣合う一方の画素電極に接続された補助容量電極及び他方の画素電極に接続された補助容量電極は、同一の前記補助容量線に対向し、前記信号線と交差して前記行方向に延在している。
【0008】
また、一実施形態に係る液晶表示装置は、
アレイ基板と、
前記アレイ基板に隙間を置いて対向配置された対向基板と、
前記アレイ基板及び対向基板間に挟持された液晶層と、を備え、
前記アレイ基板は、
複数の補助容量電極と、
行方向に延在し、前記複数の補助容量電極に隙間を置いて対向配置され、前記複数の補助容量電極とともに複数の補助容量素子を形成する複数の補助容量線と、
前記行方向に交差した列方向に延在し、前記複数の補助容量線と交差した複数の信号線と、
前記複数の補助容量電極に電気的に接続された複数の画素電極と、を有し、
前記列方向に隣合う一方の画素電極に接続された補助容量電極及び他方の画素電極に接続された補助容量電極は、同一の前記補助容量線に対向し、前記信号線と交差して前記行方向に延在している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る液晶表示装置を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した液晶表示装置を示す平面図である。
【図3】図3は、図2のRで示したアレイ基板の画素の配線構造を示す拡大平面図であり、隣合う4つの画素を示す図である。
【図4】図4は、図3の線A−Aに沿った液晶表示パネルを示す断面図であり、補助容量素子を示す図である。
【図5】図5は、図3の線B−Bに沿った液晶表示パネルを示す断面図であり、画素スイッチを示す図である。
【図6】図6は、上記第1の実施形態のアレイ基板の一部を示す概略構成図であり、2H1V−CCDI駆動を説明する図である。
【図7】図7は、第2の実施形態のアレイ基板の一部を示す概略構成図であり、4H1V−CCDI駆動を説明する図である。
【図8】図8は、比較例1のアレイ基板の一部を示す概略構成図であり、1H1V−CCDI駆動を説明する図である。
【図9】図9は、図8に示した走査線及び補助容量線の電圧レベルの変化を示すタイミングチャートである。
【図10】図10は、比較例2の液晶表示装置のアレイ基板の画素の配線構造を示す拡大平面図であり、隣合う4つの画素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係るアレイ基板、及びアレイ基板を備えた液晶表示装置について詳細に説明する。この実施形態において、液晶表示装置は、透過型であり、CCDI(容量結合ドット反転)駆動を採り、また、OCB(Optically Compensated Birefringence)モードを採っている。
【0011】
図1乃至図5に示すように、液晶表示装置は、液晶表示パネルPNL、バックライトユニットBL及び制御回路CTRを備えている。液晶表示パネルPNLは、一対の基板、すなわち、アレイ基板1及び対向基板2と、液晶層3とを備えている。アレイ基板1及び対向基板2は、互いに所定の隙間を置いて対向配置されている。液晶層3は、アレイ基板1及び対向基板2間に挟持されている。
【0012】
液晶表示パネルPNLは、アレイ基板1及び対向基板2が重なった表示部DYPを有している。表示部DYPは、マトリクス状に配置された複数の画素PXを有している。この実施形態において、画素PXの配列として、正方配列を採用している。また、液晶表示装置は、カラー表示タイプであって、複数の画素PXは、複数の色表示画素を含んでいる。この実施形態において、液晶表示装置は、赤色を表示する画素PXR、緑色を表示する画素PXG及び青色を表示する画素PXBを含んでいる。
【0013】
バックライトユニットBLは、液晶表示パネルPNLの表示部DYPを照明するように配置されている。制御回路CTRは、液晶表示パネルPNL及びバックライトユニットBLを制御する。
【0014】
アレイ基板1は、透明な絶縁基板として、例えばガラス基板10を備えている。表示部DYPの外側において、ガラス基板10上には、走査線駆動回路GD、信号線駆動回路SD及び補助容量線駆動回路CsDが形成されている。走査線駆動回路GDは、表示部DYPの外側に延出した複数の走査線Gと接続されている。走査線駆動回路GDは、後述する画素スイッチSWを行単位に導通させるように複数の走査線Gを順次駆動する。
【0015】
信号線駆動回路SDは、表示部DYPの外側に延出した複数の信号線Sと接続されている。信号線駆動回路SDは、各行の画素スイッチSWが対応する走査線Gの駆動によって導通する期間において、映像信号、又は非映像信号を複数の信号線Sにそれぞれ出力する。
【0016】
補助容量線駆動回路CsDは、表示部DYPの外側に延出した複数の補助容量線Csと接続されている。補助容量線駆動回路CsDは、複数の補助容量線Csを1行毎に順次駆動する。
【0017】
走査線駆動回路GD、信号線駆動回路SD及び補助容量線駆動回路CsDは、外付けのIC形状にしたり、アレイ基板1(ガラス基板10)上に内蔵回路として造り込んだりすることができる。この実施形態において、走査線駆動回路GD、信号線駆動回路SD及び補助容量線駆動回路CsDは、アレイ基板1上の表示部DYPの外側に配置(外付け)されている。
【0018】
表示部DYPにおいて、ガラス基板10上には、行方向Xに延在した複数の走査線G及び行方向に直交した列方向Yに延在した複数の信号線Sが配置されている。ガラス基板10上には、行方向Xに延在し、走査線Gに平行な複数の補助容量線Csが形成されている。補助容量線Csは遮光部として機能している。隣合う2本の信号線S及び隣合う2本の補助容量線Csで囲まれた各領域には画素PXが形成されている。
【0019】
この実施形態において、ガラス基板10上には、m本の走査線G(G1乃至Gm)、m+1本の補助容量線Cs(Cs1乃至Csm+1)、及びk本の信号線S(S1乃至Sk)が形成されている。
【0020】
次に、画素PXを1つ取り出して説明する。
画素PXは、信号線S及び走査線Gの交差部近傍に設けられたスイッチング素子としての画素スイッチSWと、画素スイッチSWに電気的に接続された画素電極PEと、画素電極PEに電気的に接続された補助容量素子Cstとを有している。画素スイッチSWは、TFT(薄膜トランジスタ)で形成されている。
【0021】
詳述すると、ガラス基板10上に、複数の半導体層15及び複数の補助容量電極17が形成されている。補助容量電極17は、行方向Xに並べられ、列方向Yに間隔をおいて並べられている。半導体層15は、ソース領域RS及び補助容量電極17に一対一で接続されたドレイン領域RDを有している。
【0022】
半導体層15及び補助容量電極17は、ガラス基板10上に形成された半導体膜をパターニングすることにより、同一材料で同時に形成されている。この実施形態において、半導体層15及び補助容量電極17は、ポリシリコンで形成されている。また、半導体層15及び補助容量電極17は、一体に形成されている。半導体層15及び補助容量電極17は、T字型に形成されている。
【0023】
ガラス基板10、半導体層15及び補助容量電極17上に、ゲート絶縁膜18が成膜されている。ゲート絶縁膜18上に、複数の走査線Gと、複数の補助容量線Csとが形成されている。
【0024】
走査線Gは、補助容量電極17に対して列方向Yに間隔をおいて位置している。走査線Gは、ゲート絶縁膜18を介して半導体層15と交差している。走査線Gは、複数の半導体層15とともに複数の画素スイッチSWを形成する複数のゲート電極20を含んでいる。
【0025】
補助容量線Csは、行方向Xに延在し、列方向Yに間隔をおいて並べられている。補助容量線Csは、ゲート絶縁膜18を介して複数の補助容量電極17に対向配置され、複数の補助容量電極17とともに複数の補助容量素子Cstを形成している。補助容量電極17と重なった領域において、補助容量線Csにそれぞれ開口部21が形成されている。
【0026】
複数の補助容量電極17、複数の半導体層15、複数の走査線G及び複数の補助容量線Cs上に、層間絶縁膜22が形成されている。層間絶縁膜22は、複数の半導体層15のソース領域RSに対向した複数のコンタクトホールCH1を有している。この実施形態において、コンタクトホールCH1は、層間絶縁膜22だけでなくゲート絶縁膜18も貫通し形成されている。
【0027】
層間絶縁膜22上には、複数の信号線Sが形成されている。信号線Sは、列方向Yに延在し、行方向Xに間隔をおいて並べられている。信号線Sは、層間絶縁膜22を介して複数の走査線G及び複数の補助容量線Csと交差している。信号線Sは、複数のコンタクトホールCH1を通って複数の半導体層15のソース領域RSに電気的に接続されている。
【0028】
層間絶縁膜22及び複数の信号線S上に、絶縁膜として、透明な樹脂により平坦化膜31が成膜されている。この実施形態において、平坦化膜31は有機絶縁膜である。平坦化膜31は、補助容量電極17及び開口部21に重なって形成された複数のコンタクトホールCH2を有している。この実施形態において、コンタクトホールCH2は、平坦化膜31だけでなく層間絶縁膜22及びゲート絶縁膜18も貫通し形成されている。
【0029】
平坦化膜31上には、ITO(インジウム・ティン・オキサイド)等の透明な導電材料により複数の画素電極PEが形成されている。画素電極PEは、行方向X及び列方向Yに沿ってマトリクス状に並べられている。画素電極PEは、コンタクトホールCH2を通って補助容量電極17に電気的に接続されている。なお、コンタクトホールCH2は、補助容量線Csの開口部21を通っているため、画素電極PE及び補助容量線Cs間の絶縁状態は維持されている。画素電極PEは、補助容量電極17を介して半導体層15のドレイン領域RDに電気的に接続されている。画素電極PEは、隣合う2本の信号線S及び隣合う2本の補助容量線Csに周縁を重ねて形成されている。
【0030】
画素電極PEは、補助容量電極17に一対一で電気的に接続されている。走査線Gが延在した行方向Xに隣合う一方の画素電極PEが接続された補助容量電極17と、他方の画素電極PEが接続された補助容量電極17とは、走査線Gを挟んで位置している。
【0031】
上記のように、平坦化膜31及び画素電極PE等が形成されたガラス基板10上に、図示しない複数の柱状スペーサが形成されている。柱状スペーサが形成された平坦化膜31及び画素電極PE上に、配向膜37が形成されている。
複数の画素PXは、画素スイッチSW、補助容量素子Cst及び画素電極PEをそれぞれ1つずつ有している。各画素スイッチSWは、各々対応走査線Gを介して駆動されたときに対応信号線S及び対応画素電極PE間を導通させる。
【0032】
次に、対向基板2について説明する。
対向基板2は、透明な絶縁基板として、例えばガラス基板40を備えている。ガラス基板40上には、ITO等の透明な導電材料により対向電極CEが形成されている。対向電極CEは、複数の画素電極PEに対向配置されている。対向電極CEには、制御回路CTRから対向電圧Vcomが印加される。対向電極CE上には配向膜43が形成されている。
【0033】
アレイ基板1及び対向基板2は、複数の柱状スペーサにより、所定の隙間を保持して対向配置されている。アレイ基板1及び対向基板2は、表示部DYP外周の両基板間に配置されたシール材60により接合されている。液晶層3は、アレイ基板1、対向基板2及びシール材60で囲まれた領域に形成されている。シール材60の一部には液晶注入口61が形成され、液晶注入口は封止材62で封止されている。
【0034】
配向膜37及び配向膜43には、互いに平行な方向に配向処理(ラビング)が施されている。
各画素電極PE及び対向電極CEは、画素電極PE及び対向電極41からの電界に対応した液晶分子配列に制御される液晶層3の一部である画素領域と共に画素PXを構成する。
画素PXは、画素電極PE及び対向電極CE間に保持される液晶層3によって構成される液晶容量を有する。液晶容量は、液晶材料の比誘電率、画素電極PEの面積、及び液晶セルギャップによって決定される。
【0035】
液晶表示パネルPNLは、図示しないカラーフィルタをさらに備えている。カラーフィルタは、アレイ基板1又は対向基板2に設けられている。カラーフィルタをアレイ基板1側に設ける場合、平坦化膜31の替わりにカラーフィルタを形成することにより対応できる。カラーフィルタを対向基板2側に設ける場合、ガラス基板40及び対向電極41間にカラーフィルタを形成することにより対応できる。カラーフィルタは、複数色の着色層として、例えば、赤色の着色層、緑色の着色層及び青色の着色層を有している。各着色層の周縁は、信号線Sに重なっている。画素PXRは赤色の着色層を含み、画素PXGは緑色の着色層を含み、画素PXBは青色の着色層を含む。
【0036】
バックライトユニットBLは、導光板BLaと、この導光板の一側縁に対向配置された図示しない光源及び反射板とを有している。導光板BLaは、アレイ基板1に対向配置されている。液晶表示装置は、図示しないベゼル等も有している。
上記のように形成された液晶表示装置において、信号線駆動回路SDによって信号線Sに与えられる信号(印加される電圧)は、対応する画素スイッチSWを介して選択行の画素PXの画素電極PEに印加される。画素電極PEに印加された電圧(画素電位)と対向電極CEに印加された対向電圧Vcomとの電位差が液晶容量に保持される。また、画素電極PEへの信号書き込み後の保持期間において、補助容量素子Cstは液晶容量に結合される。
【0037】
制御回路CTRは、図示しない外部信号源から入力される同期信号に基づいて発生される制御信号を走査線駆動回路GDに出力する。さらに、制御回路CTRは、上記外部信号源から入力される同期信号に基づいて発生される制御信号、並びに上記外部信号源から入力される映像信号又は黒挿入用の逆転移防止信号を信号線駆動回路SDに出力する。また、上述したように、制御回路CTRは、対向電圧Vcomを対向基板2の対向電極CEに対して出力する。
【0038】
信号線駆動回路SDは、並列的に複数の映像信号あるいは逆転移防止信号を出力する。
【0039】
本実施形態では、液晶表示装置は、CCDI駆動を採用している。CCDI駆動は信号線Sから画素PXに書き込みを行った後に画素電位に容量結合カップリングによる重畳電圧を与えて振幅増大効果を得るものである。
液晶表示装置は、上記のように形成されている。
【0040】
次に、補助容量電極17について説明する。
図3に示すように、列方向Yに隣合う一方の画素電極PEに接続された補助容量電極17及び他方の画素電極PEに接続された補助容量電極17は、同一の補助容量線Csに対向し、信号線Sと交差して行方向Xに延在している。このため、補助容量電極17は、自画素領域からはみ出して形成されていると言うことができる。
【0041】
次に、信号線駆動回路SD及び補助容量線駆動回路CsDについて説明する。
図2及び図3に示すように、信号線駆動回路SDは、n水平走査期間毎に極性が反転する映像信号を複数の信号線Sを介して複数の画素電極PEに与える。補助容量線駆動回路CsDは、複数の補助容量線Csの電位を変化させ、複数の画素電極PEに重畳電圧を与える。
上記nは、2以上の整数であり、この実施形態において、nは2である。
信号線駆動回路SDが、同一の補助容量線Csに接続された複数の画素電極PEに与える映像信号の極性は、統一されている。
【0042】
次に、上記液晶表示装置を用いたnH1V−CCDI駆動について説明する。まず、比較例1として、CCDI駆動のうちで最も基本的な1H1V−CCDI駆動(n=1)について説明した後、上記液晶表示装置が採用する2H1V−CCDI駆動(n=2)について説明する。
【0043】
図8に示すように、1H1V−CCDI駆動は、画素PXが1列置きに極性反転しかつ1行置きにも極性反転するいわゆる1H1V反転を採用した方式であり、正極性の画素PXと負極性の画素PXが市松状に配列する駆動である。
【0044】
1H1V反転を採用する利点としては、各行書き込み時に正負極性が混在することになり、例えば信号線Sから対向電極CEへのカップリングが正負極性で相殺されるため、横クロストークが改善できるということが挙げられる。また、ライン反転駆動やカラム反転駆動では対向電極CEの電位がずれた場合などにラインフリッカが見えることがあるが、この比較例1では、ドット反転駆動を採っているため、対向電極CEの電位がずれてもラインフリッカが見えにくいというメリットもある。
【0045】
各画素PXの補助容量素子Cstは、図8に示す画素電極PEの上側、あるいは下側の補助容量線Csのいずれかに接続される。詳しくは、行方向Xに並んだ複数の画素PXの補助容量素子Cstは、1列毎に接続先が交互になっている。すなわち、行方向Xに並んだ複数の画素PXの補助容量素子Cstにおいて、例えば奇数番目の列に属する画素PXの補助容量素子Cstは画素電極PEの上側の補助容量線Csに、偶数番目の列に属する画素PXの補助容量素子Cstは画素電極PEの下側の補助容量線Csに接続されている。
【0046】
こうすることにより、各補助容量線Csから補助容量素子Cstを介して接続される先の画素電極PEの極性が統一される。例えば、補助容量線Cs2から補助容量線素子Cstを介して接続される先の画素PXはすべて負極性となり、補助容量線Cs3から補助容量素子Cstを介して接続される先の画素PXはすべて正極性となる。他の補助容量線Csについても同様であり、一般に奇数行の補助容量線Csから補助容量素子Cstを介して接続される先の画素PXはすべて正極性となり、偶数行の補助容量線Csから補助容量素子Cstを介して接続される先の画素PXはすべて負極性となる。このように、各補助容量線Csから補助容量素子Cstを介して接続される先の画素電極PEの極性を統一することで、各画素PXに矛盾なく所望の重畳電圧を与えることができる。
【0047】
図8及び図9に示すように、1H1V−CCDI駆動において、例えば、走査線G1を選択している期間、走査線G1によって駆動される行に属する画素PXのうち正極性の映像信号が書き込まれる画素PXの補助容量素子Cstが接続される先の補助容量線Cs1は、低電圧状態(以下、Lと称する)とする。一方、走査線G1によって駆動される行に属する画素PXのうち負極性の映像信号が書き込まれる画素PXの補助容量素子Cstが接続される先の補助容量線Cs2は、高電圧状態(以下、Hと称する)とする。
【0048】
そして、走査線G1の選択が終了した後に補助容量線Cs1の電位をL→Hに遷移させ、走査線G2を選択する。これにより、走査線G1によって駆動される行に属する画素PXのうち正極性の映像信号が書き込まれる画素PXには補助容量素子Cstを介して正の重畳電圧が加えられる。
【0049】
次に、走査線G2を選択している期間、走査線G2によって駆動される行に属する画素PXのうち正極性の映像信号が書き込まれる画素PXの補助容量素子Cstが接続される先の補助容量線Cs3は、Lとする。一方、走査線G2によって駆動される行に属する画素PXのうち負極性の映像信号が書き込まれる画素PXの補助容量素子Cstが接続される先の補助容量線Cs2は、Hとする。
【0050】
そして、走査線G2の選択が終了した後に補助容量線Cs2の電位をH→Lに遷移させ、走査線G3を選択する。これにより、走査線G1及び走査線G2によって駆動される行に属する画素PXのうち負極性の映像信号が書き込まれる画素PXには補助容量素子Cstを介して負の重畳電圧が加えられる。
【0051】
以下、走査線G3、走査線G4、…、走査線Gmの選択に関しても全く同様であり、液晶表示パネルPNL内の全ての画素PXについて、正極性の映像信号が書き込まれる画素PXには補助容量素子Cstを介して正の重畳電圧が加えられ、負極性の映像信号が書き込まれる画素PXには補助容量素子Cstを介して負の重畳電圧が加えられる。
【0052】
なお、上記の説明にて補助容量線Cs2は、走査線G1で選択される行の画素PXと、走査線G2で選択される行の画素PXの両方に対して重畳電圧を与えているが、いずれも選択終了後の補助容量線Cs2の電位の遷移はH→Lであり、両者間で矛盾は生じない。他の補助容量線Cs、例えば補助容量線Cs3及び補助容量線Cs4等についても同様であり、連続する2行に対して重畳電圧を与えるが、いずれも選択終了後の補助容量線Csの電位の遷移は2行で共通であり特に矛盾は生じない。これは、先に説明したように各補助容量線Csから補助容量素子Cstを介して接続される先の画素電極PEの極性が統一されているためである。
【0053】
以上のように、画素PXの極性と整合した重畳電圧を画素電極PEに与えることで、信号線Sから画素電極PEに与える映像信号の振幅(電圧のレンジ)よりも大きな画素保持電圧の振幅を得ることができる。これにより、電圧振幅の小さな信号線駆動回路SDを用いることができ、ドライバコスト削減、及び消費電力の低減というメリットが得られる。
【0054】
次に、この実施形態に係る液晶表示装置が採用する2H1V−CCDI駆動について説明する。2H1V−CCDI駆動においても、1H1V−CCDI駆動と同様に、横クロストークを改善できる、ラインフリッカが見えにくい、電圧振幅の小さな信号線駆動回路SDを用いることができる、ドライバコストを削減できる、消費電力を低減できる、というメリットが得られるものである。また、後述するが、2H1V−CCDI駆動の場合、1H1V−CCDI駆動の場合に比べてさらに消費電力を低減できるものである。
【0055】
図2、図3及び図6に示すように、2H1V−CCDI駆動において、列方向Yに関して画素PXが1列置きに極性反転している点は1H1V−CCDIと同様であるが、行方向Xに関して2行置きに極性反転する点に特徴を有している。2H1V−CCDI駆動の利点は、1H1V−CCDI駆動よりもさらに低電力を実現できることである。すなわち、1H1V反転の場合は映像信号の極性が1水平走査期間(1H)毎に反転していたが、2H1V反転の場合は2水平走査期間(2H)毎の反転となるため、信号線充放電の周波数を半分にできるため、消費電力を低減できるものである。
【0056】
2H1V−CCDI駆動において、各画素PXにその極性と整合した重畳電圧を与えるためには、Cstの配置を以下のように決めればよい。まず、各補助容量線Csに1行置きに「正」または「負」の極性を割り当てる。例えば、補助容量線Cs1、補助容量線Cs3、補助容量線Cs5、…は「正」、補助容量線Cs2、補助容量線Cs4、補助容量線Cs6、…は「負」と割り当てる。
【0057】
こうすると全ての画素PXに関して、上下の補助容量線Csのうち一方が「正」、他方が「負」となるので、その画素PXに書き込まれる映像信号の極性と一致するほうの補助容量線Csとの間に補助容量素子Cstを配置すればよい。これにより、例えば「正」の補助容量線Csから補助容量素子Cstを介して接続される先の画素電極PEの極性はすべて正に統一され、「負」の補助容量線Csから補助容量素子Cstを介して接続される先の画素電極PEの極性はすべて負に統一されるため、各画素PXに極性の矛盾なく重畳電圧を与えることができる。
【0058】
図6及び図8を比較すると分かるように、2H1V−CCDI駆動を採用した場合、1H1V−CCDI駆動の場合と異なる大きな特徴として、各列に属する画素PXの補助容量素子Cstの配置が上側のものと下側のものとが混在することが挙げられる。
図2、図3、図6及び図9に示すように、2H1V−CCDI駆動の具体的な手順は、1H1V−CCDI駆動の場合と同じであり、説明は省略する。
【0059】
次に、比較例2の液晶表示装置について説明する。
図10に示すように、画素PX1の補助容量素子Cstは上側配置、画素PX3の補助容量素子Cstは下側配置であるため、画素PX1と画素PX3の間の補助容量線Cs上に、画素PX1、PX3の補助容量素子Cstは配置されない。
【0060】
一方、画素PX2の補助容量素子Cstは下側配置、画素PX4の補助容量素子Cstは上側配置であるため、補助容量線Csの幅Wを広くし、画素PX2と画素PX4の間の補助容量線Cs線上には2個の補助容量素子Cstを配置する必要がある。
【0061】
このように、補助容量線Cs上で補助容量素子Cstを配置する個数が場所によって異なるため、補助容量素子Cstを配置しない無駄なスペースができてしまい、その代償として画素PXの開口面積が小さくなり(開口率が低下)、輝度が低下するという問題が発生する。あるいは開口率低下を防ぐために補助容量線Csの幅Wを狭く(補助容量線Csを細く)して補助容量素子Cstの面積を小さくすると、十分な補助容量素子Cstの容量を確保できず、容量結合による画素保持電圧振幅増大効果が得られないという問題が生じる。
【0062】
上記のように構成された第1の実施形態に係る液晶表示装置によれば、図3に示すように、補助容量素子Cstを形成する一方の電極である補助容量電極17は、半導体層15とともにT字型に形成され、補助容量素子Cstは自画素領域からはみ出して形成されている。この実施形態に係る補助容量素子Cstは、図10における補助容量線Cs上での無駄なスペースの部分まで延ばして形成された格好である。
【0063】
2H1V−CCDI駆動は、偶数列と奇数列で映像信号の極性が異なる駆動であるため、図3、図6及び図9からも分かるように、行方向X(左右)に隣接する画素同士では補助容量素子Cstの配置(上側/下側)が必ず逆になっている。従って、表示部DYP内の全ての画素PXについて補助容量素子Cst(補助容量電極17)をはみ出させたレイアウトを採用することが可能である。
【0064】
以上のようなレイアウトを採用することで、補助容量線Cs上の無駄なスペースを有効活用することができ、補助容量線Csの幅Wをより狭くすることができるため、開口面積(開口率)の確保と、補助容量素子Cstの容量の確保とを両立することが可能となる。
【0065】
また、信号線駆動回路SDは、2水平走査期間毎に極性が反転する映像信号を信号線Sに与えることになるため、1水平走査期間毎に極性が反転する映像信号を信号線Sに与える場合に比べて消費電力を低減することができる。
上記のことから、開口率の低下を抑制すること及び消費電力を低減することができる液晶表示装置を得ることができる。
【0066】
次に、第2の実施形態に係る液晶表示装置について詳細に説明する。この実施形態において、他の構成は上述した実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0067】
第1の実施形態で述べた2H1V−CCDI駆動において、映像信号の極性反転周期をさらに大きくすれば、nH1V−CCDI駆動(nは3以上の整数)に拡張することも可能である。映像信号の極性反転をn水平走査期間(nH)毎にすることで、信号線Sに対する充放電の消費電力を1/nに比例して低減できるというメリットが得られる。ただし、あまりnが大きすぎるとn行ピッチの横帯やラインフリッカが目立ちやすくなるというデメリットも顕在化してくるため、実際の液晶表示装置においては画質や消費電力の要求仕様を鑑みて最適なnの値を選択すればよい。
【0068】
図7に示しように、この実施形態において、n=4であり、液晶表示装置は4H1V−CCDI駆動を採用している。補助容量素子Cstの配置の決め方は、2H1V−CCDI駆動の場合と同様の手法を用いることができる。すなわち、各補助容量線Csに1行置きに「正」又は「負」の極性を割り当てる。例えば、補助容量線Cs1、補助容量線Cs3、補助容量線Cs5、…は「正」、補助容量線Cs2、補助容量線Cs4、補助容量線Cs6、…は「負」と割り当てる。
【0069】
こうすると全ての画素PXに関して、上下の補助容量線Csのうち一方が「正」、他方が「負」となるので、その画素PXに書き込まれる映像信号の極性と一致するほうの補助容量線Csとの間に補助容量素子Cstを配置すればよい。これにより、例えば「正」の補助容量線Csから補助容量素子Cstを介して接続される先の画素電極PEの極性は全て正に統一され、「負」の補助容量線Csから補助容量素子Cstを介して接続される先の画素電極PEの極性はすべて負に統一されるため、各画素PXに極性の矛盾なく重畳電圧を与えることができる。
【0070】
第1の実施形態(図3及び図6)とは異なったパターンの配置になるが、各列に属する画素PXの補助容量素子Cstが、上側配置のものと下側配置のものとが混在することは第1の実施形態と同様である。4H1V−CCDI駆動の具体的な手順は、1H1V−CCDI駆動や2H1V−CCDI駆動の場合と同じであり(図9)、説明は省略する。
【0071】
上記のように構成された第2の実施形態に係る液晶表示装置によれば、各列に属する画素PXの補助容量素子Cstには、上側配置のものと下側配置のものとが混在している。しかし、列方向Yに隣合う一方の画素電極PEに接続された補助容量電極17及び他方の画素電極PEに接続された補助容量電極17は、同一の補助容量線Csに対向し、信号線Sと交差して行方向Xに延在している。このため、第1の実施形態と同様、開口面積(開口率)の確保と、補助容量素子Cstの容量の確保とを両立することができる。
また、信号線駆動回路SDは、4水平走査期間毎に極性が反転する映像信号を信号線Sに与えることになるため、第1の実施形態よりも消費電力を低減することができる。
【0072】
なお、nを大きくした極限としてnを液晶表示装置の全ての行数に一致させると(n=m)、1列内の全画素PXの極性が同一になり、CCカラム反転方式に帰着する。CCカラム反転方式でも全く同様の規則で補助容量素子Cstの配置を決めることで、各画素PXにその極性と整合した重畳電圧を与えることが可能である。CCカラム反転方式は電力も小さく、横帯やラインフリッカも発生しないという長所があるが、一方で縦クロストークが発生しやすいという課題もある。これらの長所・課題点を勘案の上で、CCカラム反転方式を採用することも可能である。
上記のことから、開口率の低下を抑制すること及び消費電力を低減することができる液晶表示装置を得ることができる。
【0073】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0074】
例えば、上述した液晶表示装置は、携帯電話、スマートフォン、その他のモバイル端末等の各種の電子機器に用いることができる。特に、時分割駆動で3D表示を行うモバイル用途ディスプレイのように、高速動作と低消費電力の両立が要求される液晶表示装置への適用に有効である。
【0075】
また、上述した液晶表示装置は、高速応答が可能なOCBモードを採っているが、これに限らず、IPS(In-Plane Switching)モード、TN(Twisted Nematic)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、VA(Vertically Aligned)モードなどの他のモードを採ってもよい。
【符号の説明】
【0076】
PNL…液晶表示パネル、1…アレイ基板、2…対向基板、3…液晶層、10…ガラス基板、15…半導体層、17…補助容量電極、PX,PXR,PXG,PXB,PX1,PX2,PX3,PX4…画素、GD…走査線駆動回路、SD…信号線駆動回路、CsD…補助容量線駆動回路、G(G1乃至Gm)…走査線、S(S1乃至Sk)…信号線、Cs(Cs1乃至Csm+1)…補助容量線、SW…画素スイッチ、PE…画素電極、Cst…補助容量素子、X…行方向、Y…列方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の補助容量電極と、
行方向に延在し、前記複数の補助容量電極に隙間を置いて対向配置され、前記複数の補助容量電極とともに複数の補助容量素子を形成する複数の補助容量線と、
前記行方向に交差した列方向に延在し、前記複数の補助容量線と交差した複数の信号線と、
前記複数の補助容量電極に電気的に接続された複数の画素電極と、を備え、
前記列方向に隣合う一方の画素電極に接続された補助容量電極及び他方の画素電極に接続された補助容量電極は、同一の前記補助容量線に対向し、前記信号線と交差して前記行方向に延在しているアレイ基板。
【請求項2】
前記複数の信号線に接続され、n水平走査期間毎に極性が反転する映像信号を前記複数の信号線を介して前記複数の画素電極に与える信号線駆動回路と、
前記複数の補助容量線に接続され、前記複数の補助容量線の電位を変化させ、前記複数の画素電極に重畳電圧を与える補助容量線駆動回路と、をさらに備え、
前記nは、2以上の整数であり、
前記信号線駆動回路が、同一の前記補助容量線に接続された前記複数の画素電極に与える前記映像信号の極性は、統一されている請求項1に記載のアレイ基板。
【請求項3】
アレイ基板と、
前記アレイ基板に隙間を置いて対向配置された対向基板と、
前記アレイ基板及び対向基板間に挟持された液晶層と、を備え、
前記アレイ基板は、
複数の補助容量電極と、
行方向に延在し、前記複数の補助容量電極に隙間を置いて対向配置され、前記複数の補助容量電極とともに複数の補助容量素子を形成する複数の補助容量線と、
前記行方向に交差した列方向に延在し、前記複数の補助容量線と交差した複数の信号線と、
前記複数の補助容量電極に電気的に接続された複数の画素電極と、を有し、
前記列方向に隣合う一方の画素電極に接続された補助容量電極及び他方の画素電極に接続された補助容量電極は、同一の前記補助容量線に対向し、前記信号線と交差して前記行方向に延在している液晶表示装置。
【請求項4】
OCBモードを採る請求項3に記載の液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−208410(P2012−208410A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75507(P2011−75507)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(302020207)株式会社ジャパンディスプレイセントラル (2,170)
【Fターム(参考)】