説明

アロマターゼ阻害剤、プロゲスチンおよびエストロゲンの組み合わせを含む組成物、ならびに子宮内膜症の処置のためのその使用

【課題】本発明の目的は、最小限の副作用を伴って、エストロゲンが引き起こす子宮内膜症の症状を阻害する手段を提供することである。
【解決手段】本発明は、アロマターゼ阻害剤、プロゲスチンおよびエストロゲンの組み合わせを使用した子宮内膜症の処置方法が提供する。本発明はまた、当該組み合わせを含む医薬製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アロマターゼ阻害剤、プロゲスチンおよびエストロゲンの組み合わせを使用する子宮内膜症の処置方法に関する。本発明はまた、当該組み合わせを含む医薬製剤にも関する。
【背景技術】
【0002】
子宮内膜症は、子宮腔の外の子宮内膜様組織の存在によって特徴づけられ、多くの場合は閉経前の女性にみられる状態である。子供を産む年齢の女性の2〜10%が関係すると見積もられている。この子宮内膜様組織は、正常な子宮内膜と同じ様式で、月経周期の間のホルモン環境の変化に応答し、エストロゲンおよびプロゲステロン濃度の変化に応じて当該組織は成長し、子宮内膜自体と同じ様式で除去される。子宮内膜症の症状には、骨盤痛、月経困難症および性交疼痛症が含まれ、不妊症と子宮内膜症との正確な関連性は重度の子宮内膜症を除いて不確定であるが、不妊症と関連して発見されることがしばしばある[子宮内膜症と現在の処置戦略の一般的総説として、使用者が参照される:Olive DL.Pritts EA.(2001)New England Journal of Medicine.第345巻(4):第266−75頁]。内科的および外科的アプローチの両方、およびその2つの組み合わせが、疾患根絶のための試みにおいて使用されるが、多くの例において処置は治癒的ではなく、この疾患および関連する症状が再発する。
【0003】
エストロゲンは、さらに強い骨盤痛を生じさせるこの子宮外組織における成長および炎症を強める、最も明確なマイトジェン因子である。閉経前の女性におけるエストロゲンの主要源、すなわち卵巣の生産を阻害する処置、またはいわゆる偽月経停止を生じさせる処置は、子宮内膜症を首尾よく処置するために使用されている。前者において性腺刺激ホルモン放出ホルモンアゴニスト類縁体(GnRH類縁体)は、LHおよびそれよりは少ない程度のFSHの脳下垂体からの生産を阻害し、それにより卵巣によるエストラジオールの生産の阻害が起こる。循環するエストラジオール濃度の閉経後の程度までの低下により、骨盤の痛みおよび圧迫症状の改善ならびに子宮内膜移植の退行がもたらされる。ダナゾールおよびプロゲストゲン剤もまた、当該疾患の処置に使用される。GnRH類縁体を用いた処置は、有効ではあっても骨ミネラル濃度に対する潜在的な影響のため、6ヶ月に限られる。ダナゾールを用いた処置もまた、そのアンドロゲン性副作用のために限定される。
【0004】
現在可能な内科的アプローチに、患者が耐えられないおよび/または応答しない場合がしばしばあり得る。さらに、再発の発生率は高い。
例えば、ルプロンデポ(LupronTM−depot、GnRHアゴニスト、ロイプロリドを含有する)の6ヶ月間の治療単位の終了18ヶ月後、52%の患者のみに有意な痛みの緩和が認められた。残りの患者における痛みの再発率は、毎年約5〜20%であった(5年での累加平均率は53%に達した)。重度の子宮内膜症において、5年での再発率は75%に上った[Rice VM(2002年)Annuals of the New York Academy of Science 955:第343−352頁を参照]。骨盤痛を処置した女性において、通常、治療の停止後かなり早く症状が再発する。しかし、内科的処置後の一定期間、症状の強度は緩和する。GnRHアゴニストを用いた処置後の再発率は、ダナゾール後の再発率と同様であり、両方とも外科的切除による場合と同様である。
【0005】
近年の業績により、卵巣に加えて、他のエストロゲン供給源が子宮内膜症の進行および持続的な存在に寄与することが示されている。特に、子宮内膜組織自体の中の高いレベルの局所的アロマターゼ活性およびエストロゲン生産が、子宮内膜症の維持および病態生理学において重要であるように考えられている。したがって、アロマターゼ阻害剤は子宮内膜症の処置のために薦められている[Bulunら(2000年)Human Reproduction Update 第6巻(5)、第413−418頁;Bulunら(2000年)Trends in Endocrinology and Medicine 第11巻(1)、第22−27頁]。
【0006】
継続的なGnRHの投与により、脳下垂体からのゴナドトロピン生産が阻害され、循環するエストラジオール濃度が閉経後の程度まで減少する。しかし、循環するエストラジオール濃度が低下した場合に、脳下垂体がより多くのゴナドトロピンを生産し、それにより卵巣によるエストロゲンの生産が活性化されるという閉経前の女性における視床下部−下垂体系のフィードバック機構のために、アロマターゼ阻害剤は血漿中のエストラジオール濃度を低下させるとは考えられていなかった。ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモンの濃度の上昇は、卵巣のシストの形成を生じさせうるとの仮説が存在している。プロゲスチン剤のアロマターゼ阻害剤との同時使用により脳下垂体のゴナドトロピンのこの上昇は抑制されると考えられるであろう。プロゲスチンの同時投与のその他の利点は、プロゲスチンの優性効果により正常な子宮内膜の菲薄化を直接的に生じさせることが期待されることである。
【0007】
エストロゲンは子宮内膜症において病理学的役割を有するが、エストロゲンは骨などの多くの組織において保護的な効果も有している。したがって、エストロゲンを低減する治療法により子宮内膜症を処置することにより、エストロゲンの病理学的効果のほかに、エストロゲンの保護的効果まで阻害してしまうことに起因する副作用が起こる場合がある。例えば、GnRH類縁体による子宮内膜症の処置によりエストロゲンが去勢レベルとなることにより、一時的な膣からの出血、体のほてり、膣の乾燥、性欲減退、乳房の圧痛、不眠症、鬱病、不機嫌(irritability)および倦怠感、頭痛、骨粗鬆症ならびに皮膚の弾力低下を含む副作用が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、最小限の副作用を伴って、エストロゲンが引き起こす子宮内膜症の症状を阻害する戦略が求められている。アロマターゼ阻害剤のプロゲスチンとの組み合わせは、骨の損傷に関して一定の利益を有すると考えられる。しかし、この組み合わせにさらにエストロゲンを組み合わせることにより、プロゲスチンのみを加えた場合と比較してより効果的に骨の損傷を妨げるだけでなく、プロゲスチンに一般的に見られる破綻出血を停止させると考えられるかもしれない。しかし、閉経前の女性においてアロマターゼ阻害剤により部分的にエストロゲンを低減させる治療法と組み合わせて、子宮内膜症の患者にエストロゲンを投与することは、状態を悪化させるか、またはアロマターゼ阻害剤の処置の効果を減少させると考えられる。実際、野生型マウスおよびアロマターゼノックアウトマウスにおける研究で子宮内膜症モデルを使用した場合、Fangらは、アロマターゼ阻害剤レトロゾールにエストロゲンを添加することにより、子宮内膜の損傷範囲が増加し、そのため子宮内膜症が悪化することを確認した[Fangら、(2002年)Journal of Clinical Endocrinology&Metabolism、第87巻(7)、第3460〜3466]。我々はアロマターゼ阻害剤、プロゲスチンおよびエストロゲンの組み合わせについて研究し、驚くべきことに、アロマターゼ阻害剤およびプロゲスチンの組み合わせにエストロゲンを添加することが、予想に反して、重度の子宮内膜症の女性において効果的な苦痛緩和をもたらすことを発見した。さらに、この組み合わせ治療は、軽度の体のほてりと点状の破綻出血を伴うのみで、寛骨(腰)と脊椎の骨密度測定においてベースラインおよび処置後の間に有意な変化はなく、耐容性であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明の第1の側面によれば、アロマターゼ阻害剤、プロゲスチンおよびエストロゲンの組み合わせの投与を含む、子宮内膜症の処置方法が提供される。
本発明のさらなる側面によれば、子宮内膜症の処置のための医薬の製造における、アロマターゼ阻害剤、プロゲスチンおよびエストロゲンの組み合わせの使用が提供される。
【0010】
本発明のさらなる側面によれば、医薬的に許容な希釈剤または担体と混合された、アロマターゼ阻害剤、プロゲスチンおよびエストロゲンの組み合わせを含む、子宮内膜症の処置のための医薬組成物が提供される。
【0011】
前記医薬組成物における疑義をさけるために、成分は以下のように製剤されうる:
(i)単一製剤中に一緒に混合されたアロマターゼ阻害剤、プロゲスチンおよびエストロゲン;
(ii)同時にまたは連続的に服用するための、単一製剤中に一緒に混合された成分と別々に製剤された成分の2つ;
(iii)同時にまたは連続的に服用するための別々に製剤された各成分。
【0012】
本明細書において、アロマターゼ阻害剤は、酵素アロマターゼを阻害することにより代謝前駆体からエストロゲンが形成することを妨げる化合物と定義される。アロマターゼ阻害剤の例には:
(i)“Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism,”第49巻,第672頁(1979年)に記載されているテストラクトン(17a−オキサ−D−ホモアンドロスト−1,4−ジエン−3,17−ジオン);
(ii)“Endocrinology”1973年、第92巻、第3号、第874頁に記載されている化合物、アンドロスタ−4,6−ジエン−3,17−ジオン、アンドロスタ−4,6−ジエン−17β−オール−3−オン アセテート、アンドロスタ−1,4,6−トリエン−3,17−ジオン、4−アンドロステン−19−クロロ−3,17−ジオン、4−アンドロステン−3,6,17−トリオン;
(iii)ドイツ特許出願番号DE3124780に記載されている19−アルキニル化ステロイド;
(iv)ドイツ特許出願番号DE3124719に記載されている10−(1,2−プロパジエニル)ステロイド;
(v)ヨーロッパ特許出願公開番号EP100566に記載されている19−チオ−アンドロスタン誘導体;
(vi)“Endocrinology”1977年、第100巻、第6号、第1684頁および米国特許番号4235893に記載されている4−アンドロステン−4−オール−3,17−ジオンおよびそのエステル;
(vii)ドイツ特許出願番号DE3539244に記載されている1−メチル−15α−アルキル−アンドロスタ−1,4−ジエン−3,17−ジオン;
(viii)ドイツ特許出願番号DE3644358に記載されている10β−アルキニル−4,9(11)−エストラジエン誘導体;および
(ix)ヨーロッパ特許出願EP250262に記載されている1,2β−メチレン−6−メチレン−4−アンドロステン−3,17−ジオン
が含まれる。
【0013】
さらにアロマターゼ阻害剤の例には:アタメスタン、ホルメスタン、ファドロゾール、レトロゾール、ペントロゾール(pentrozole)、アナストロゾールおよびボロゾールが含まれる。
【0014】
より好ましいアロマターゼ阻害剤はアナストロゾールである。アナストロゾールは、0.1〜10mg/日、好ましくは0.5mg〜5mg/日を送達するための薬量および/または予定で投与されうる。最も好ましくは、アナストロゾールは1mg/日で投与される。
【0015】
本明細書において、プロゲスチンは、プロゲステロンの作用の一部またはすべてを模倣する、天然のまたは合成のプロゲステロン物質と定義される。プロゲステロンの例には、19−ノルテストステロンの誘導体(例えば、エストランおよびゴナンなど)および17α−アセトキシプロゲステロン(プレグナン)が含まれる。エストランの例には、ノルエチンドロンおよびそのアセテート、ならびにエチノジオール ジアセテート(ethynodiol diacetate、2酢酸エチノジオール)が含まれる。ゴナンの例には、ノルゲストレルおよびレボノルゲストレルおよびより低いアンドロゲン性のレボノルゲスチン誘導体(例えば、デソゲストレル、ノルゲスチメートおよびゲストデンなど)が含まれる。プロゲスチンのさらなる例には、ノルゲストレル、レボノルゲストレル、ノルエチンドロン、ノルエチンドロン アセテート(酢酸ノルエチンドロン)、デソゲストレル、ノルゲスチメートおよびエチノジオール ジアセテートが含まれる。好ましいプロゲスチンはレボノルゲストレルである。レボノルゲストレルは、0.05〜0.15mg/日、好ましくは0.1mg/日を送達するための薬量および/または予定で投与されうる。
【0016】
この明細書において、エストロゲンは、エストロゲン受容体においてアゴニスト活性を有する化合物と定義される。部分的アゴニストおよび全的アゴニストが想定されるが、全的アゴニストが好ましい。部分アゴニストの例にはタモキシフェンが含まれる。全的アゴニストの例には、エストロゲン、エストラジオール、メストラノールおよびエチニルエストラジオールが含まれる。さらに全的アゴニストの例には、エストロゲン、エストラジオールおよびエチニルエストラジオールが含まれる。好ましいエストロゲンには、エチニルエストラジオールおよびメストラノールが含まれる。より好ましいエストロゲンはエチニルエストラジオールである。エチニルエストラジオールは、0.01〜0.06mg/日、好ましくは0.02mg/日を送達するための薬量および/または予定で投与されうる。
【0017】
便宜的には、本発明の組み合わせのプロゲスチンおよびエストロゲン成分は、エストロゲンおよびプロゲスチンを含む組み合わせ避妊薬により供与されうるであろう。避妊薬の例には:
(i)エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン;
(ii)エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメート;
(iii)エチニルエストラジオールおよびデソゲストレル;
(iv)エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレル;
(v)エチニルエストラジオールおよびゲストデン(gestodene);
(vi)エチニルエストラジオールおよびノルゲストレル;および
(vii)メストラノールおよびノルエチンドロン
を含む錠剤が含まれる。
【0018】
好ましい組み合わせ避妊薬は、エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルを含む。
本発明の1つの側面において、投与は少なくとも6ヶ月間継続的に行われる。しかし、1〜2年間の処置も想定される。2年以上の処置もまた予想される。
【0019】
閉経前の女性の処置が最も好ましい。しかし、エストロゲン代償療法が検討されているが子宮内膜症の懸念のために目下のところ禁忌と考えられているような女性においては、閉経後の女性における処置も予想される。
【0020】
別の側面において、本発明の組み合わせは、外科的切除および/またはその前のまたはその後のホルモン処置の1以上の治療に対して難治性である患者を対象とすることが想定される。当該ホルモン療法の例には、GnRH類縁体を用いた処置が含まれる。
【0021】
用語「外科的切除」は、子宮内膜の移植片の外科的除去および/または子宮内膜症の瘢痕化により生じる癒着の溶解を意味する。当該除去は、例えばレーザーによる切除を含む。
【0022】
本発明を実施するために、当該組み合わせは、組み合わせの1以上の成分を含む単一の製剤または複数の製剤により供与されうる。組み合わせの要素の投与は同時に投与することができ、また各成分を異なる時期に投与することもできる。同時に投与するのが好ましい。当該組み合わせは、例えば非経口的(例えば、水性または油性懸濁液)または経口(例えば、錠剤、粉剤、カプセル、顆粒、水性または油性懸濁液)などの種々の製剤において供与されうる。好ましくは、当該組み合わせは、毎日投与されるために経口投与可能な製剤により供与される。しかし、除法性製剤または持続性製剤または経皮製剤もまた当該組み合わせの投与に使用されうる。
【0023】
したがって、本発明のさらなる特徴によれば、アロマターゼ阻害剤、プロゲスチンおよびエストロゲンを含む医薬製剤、好ましくは、子宮内膜症の処置のための医薬製剤が提供される。
【0024】
本発明の医薬製剤を調製するために、不活性で医薬的に許容な担体を当該組み合わせの成分に添加することができ、それは固体または液体であり得る。固形製剤には、粉剤、錠剤、分散性顆粒、カプセルおよびカシュ剤(cachets)が含まれる。
【0025】
固体担体は、希釈剤、着香剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、または錠剤崩壊剤としても作用しうる1以上の物質であり得る。それはまたカプセル化材料でもあり得る。
【0026】
粉剤において。担体は細かく分割された固体であり、細かく分割された活性成分との混合物となっている。錠剤において、活性成分は適切な割合で必要な結合特性を有する担体と混合され、望まれる形状および大きさに圧縮される。
【0027】
好適な担体には、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどが含まれる。
【0028】
用語「製剤」には、カプセルを提供する担体としてのカプセル化材料を伴う活性成分の混合物が含まれることを意図しており、この場合、(他の担体を伴うまたは伴わない)活性成分はそれに伴う担体に覆われている。同様に、カシュ剤も含まれる。錠剤、粉剤、カシュ剤およびカプセルは、経口投与に適した固体剤形として使用されうる。
【0029】
液状組成物には、溶液、懸濁液、および乳剤が含まれる。活性成分の滅菌水または水−プロピレングリコール溶液は、非経口投与に適した液体製剤の例として言及されうる。液体組成物は、水性ポリエチレングリコール溶液中の溶液としても製剤されうる。経口投与用の水溶液は、水に活性成分を溶解し、好適な着色料、着香剤、安定化剤、および増粘剤を必要に応じて加えることにより調製されうる。経口で使用するための水性懸濁液は、天然または合成のゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの粘性物質、および医薬製剤の技術分野で知られたその他の懸濁剤と共に、細かく分割した活性成分を水中に分散することにより製造されうる。
【0030】
医薬組成物は単位剤形とされていてもよい。そのような形態において、組成物は適量の活性成分を含む単位用量に分割されている。単位剤形はパッケージされた製剤であってもよく、当該パッケージは、例えば分包された錠剤、カプセル、およびバイアルまたはアンプル入りの粉剤などの製剤を別々の分量で含む。単位剤形はまた、カプセル、カシュ剤、または錠剤自体であってもよく、または適正数のこれらのパッケージ形態のいずれかであってもよい。
【0031】
ここで本発明は、以下の非限定的実施例を示すことにより説明される。
子宮内膜症の処置におけるアロマターゼ阻害剤、プロゲスチンおよびエストロゲンの組み合わせの効果を評価するために、臨床試験を設計した。重度の子宮内膜症に関連した骨盤痛を伴い、外科的切除と1以上のホルモン療法の治療には以前に応答しなかった18人の患者を試験に含めた。患者は年齢の範囲が23〜46であり、すべての患者において卵巣の機能は正常であった。これらの患者を、エストロゲン含有避妊薬、Alesse21TMの1日1錠[Alesse21TMは、レボノルゲストレル(0.1mg)、プロゲスチンおよびエチニルエストラジオール(0.02mg)、エストロゲンを含む]と組み合わせて、経口アロマターゼ阻害剤、アナストロゾール[ArimidexTM]を1mg/日で処置した。患者における疼痛の重度および副作用の重度が評価された。これらの18人の患者のうち、9人が当該試験を完了した。
【0032】
疼痛
重度を0(無痛)から10(最大痛)まで変動させる自己評価視覚アナログ疼痛スコアシステム(VAS)を使用し、毎日記録した。すべての患者が疼痛スコアのベースラインを7〜10の間とした。表1および2は試験における疼痛測定の結果を示す。表1は試験を完了した9人の患者についてのデータを示し、表2は試験におけるすべての患者のデータを示し、各時点での患者数が示されている。結果は、最終の6ヶ月の時点まで疼痛の緩和が増加しつつ、各時点において患者の疼痛が有意に減少することを示している。
【0033】
表1:試験を完了した9人の患者についての月毎の平均疼痛スコア
統計学的有意性はANOVAとその後のNewman−Keuls多重比較試験により評価した。
【0034】
【表1】

【0035】
表2:試験におけるすべての患者についての月毎の平均疼痛スコア
【0036】
【表2】

【0037】
すべての結果は各々に対して統計学的有意性を示した。
副作用
副作用は定期的な外来診療において捕捉し、患者カルテに記録した。観察された潜在的な副作用には、忍容性(すなわち、例えば、一時的な膣からの出血、体のほてり、膣の乾燥、性欲減退、乳房の圧痛、不眠症、鬱病、不機嫌および倦怠感、頭痛、骨粗鬆症、破綻出血ならびに皮膚の弾力低下などのGnRH処置に伴うものなどの、低エストロゲン性の症状の欠如)の欠如および安全性の問題(すなわち、卵巣の活性化およびシスト形成を引き起こすゴナドトロピンの急増がなかったこと、および温存された骨密度の測定)が含まれた。
【0038】
最も一貫して観察された副作用は、軽度の体のほてりおよび破綻出血であったが、破綻出血はエストロゲン含有避妊薬の不注意による中断の結果として、もっぱら数名の患者においてのみ起こった。
【0039】
腰と脊椎の処置後DEXA骨密度測定とベースラインの間には有意差は見いだせなかった。
FSH、LH、エストラジオールおよびエストロンの月毎の測定は、ベースラインからの有意な変化を示さなかった。したがって、ゴナドトロピンにおける危険性は何ら観察されなかった。
【0040】
従って、アロマターゼ阻害剤、エストロゲンおよびプロゲスチンの組み合わせは、比較的良性の副作用プロフィールを有する子宮内膜症の症状の効果的処置をもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮内膜症の処置のための医薬の製造における、アロマターゼ阻害剤、プロゲスチンおよびエストロゲンの組み合わせの使用。
【請求項2】
アロマターゼ阻害剤が、アタメスタン、ホルメスタン、ファドロゾール、レトロゾール、ペントロゾール、アナストロゾールおよびボロゾールから選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
アロマターゼ阻害剤がアナストロゾールである、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
プロゲスチンが、ノルゲストレル、レボノルゲストレル、ノルエチンドロン、酢酸ノルエチンドロン、デソゲストレル、ノルゲスチメートおよび2酢酸エチノジオールから選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
プロゲスチンがレボノルゲストレルである、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
エストロゲンがエチニルエストラジオールおよびメストラノールから選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
エストロゲンがエチニルエストラジオールである、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において定義された組み合わせを含む医薬組成物。
【請求項9】
子宮内膜症の処置のための、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
アロマターゼ阻害剤、プロゲスチンおよびエストロゲンの組み合わせの投与を含む、子宮内膜症の処置方法。

【公開番号】特開2011−1388(P2011−1388A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227516(P2010−227516)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【分割の表示】特願2006−502229(P2006−502229)の分割
【原出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】