説明

アンテナ共用器

【課題】耐電力性の向上。
【解決手段】本発明のアンテナ共用器は、入力端子と、この入力端子に入力側を接続した送信側フィルタと、この送信側フィルタの出力側に入力側を接続した受信側フィルタと、この受信側フィルタの出力側に接続した出力端子と、前記送信側フィルタと前記受信側フィルタとの間に接続したアンテナ端子とを備え、前記送信側フィルタは、ラダー型弾性波フィルタで構成されると共に、前記送信側フィルタにおいて、前記アンテナ端子側の最外腕は直列腕共振器であり、この直列腕共振器は複数の共振器が直列接続された構成であり、前記アンテナ端子側の最外腕における前記複数の共振器は、ほぼ同等の容量であると共に、前記受信側フィルタにおいて、前記入力端子側初段には直列腕共振器が接続されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電話などの無線通信機器に用いるアンテナ共用器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のアンテナ共用器について以下に説明する。
【0003】
図24に示すように、アンテナ共用器は入、出力端子301,305間に送信側フィルタ302、移相回路303(図中点線で囲んだ部分)、受信側フィルタ304の順に接続し、送信側フィルタ302と移相回路303との間にアンテナ端子306を接続したものである。この送信側フィルタ302として弾性表面波フィルタが適用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構成のアンテナ共用器を携帯端末機器に用いる場合、入力端子301より送信側フィルタ302に信号が入力されるときの耐電力性の向上のみ改善することが行われてきた。
【0005】
しかしながら、携帯端末機器のホィップアンテナが完全に伸ばされている時、もしくは完全に収納されている時に最も最良の状態となりアンテナ共用器のアンテナ端子とアンテナの移相整合のとれた状態となるが、それ以外の状況下、つまりアンテナが完全に伸ばされていなかったり、仮にアンテナが破損した状況などではアンテナ共用器のアンテナ端子とアンテナの間では移相不整合の状態、極端な場合はアンテナ共用器のアンテナ端子から先が開放状態となることがある。
【0006】
通常、アンテナ共用器の内部では送信信号が受信回路側に回り込むことでの損失や雑音を抑制するため、送信側フィルタの出力端およびアンテナ側の出力端子から受信側回路が送信周波数帯では開放状態に見えるように移相回路が設けられている。
【0007】
従ってアンテナ共用器のアンテナ端子とアンテナの間では移相不整合の状態においては、送信側フィルタの出力端から出力された信号の一部が送信フィルタに反射されることになる。またアンテナ共用器のアンテナ端子から先が開放状態においては、出力信号が全反射に近い形で送信側フィルタに出力端側から入力されることになる。この場合入力信号と反射波の重ね合わせにより最大約2倍の高周波電圧および高周波電流が印加されることが考えられる。従って弾性表面波フィルタを送信側フィルタに用いたアンテナ共用器の場合、出力側のSAW共振器に最も大きな電力が印加されるため、出力端子側に近いSAW共振器が劣化してしまうという問題を有していた。
【0008】
そこで本発明は、アンテナ端子側からの信号の入力に対しても耐電力性を有し、安定した特性を有するアンテナ共用器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために本発明のアンテナ共用器は、入力端子と、この入力端子に入力側を接続した送信側フィルタと、この送信側フィルタの出力側に入力側を接続した受信側フィルタと、この受信側フィルタの出力側に接続した出力端子と、前記送信側フィルタと前記受信側フィルタとの間に接続したアンテナ端子とを備え、前記送信側フィルタは、ラダー型弾性波フィルタで構成されると共に、前記送信側フィルタにおいて、前記アンテナ端子側の最外腕は直列腕共振器であり、この直列腕共振器は複数の共振器が直列接続された構成であり、前記アンテナ端子側の最外腕における前記複数の共振器は、ほぼ同等の容量であると共に、前記受信側フィルタにおいて、前記入力端子側初段には直列腕共振器が接続されたことを特徴とするものであり、送信信号のアンテナ端子での反射による電極の劣化を防止することにより、上記目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上本発明によると、アンテナ端子側からの信号の入力に対して耐電力性を有し、安定した特性を有するアンテナ共用器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1におけるアンテナ共用器のブロック回路図
【図2】本発明の実施の形態1における受信側フィルタの回路図
【図3】本発明の実施の形態1〜8におけるSAW共振器の構成図
【図4】本発明の実施の形態1における送信側フィルタの上面図
【図5】図4に示す送信側フィルタの回路図
【図6】本発明の実施の形態1に示す弾性表面波フィルタの基本構造を示す回路図
【図7】図6に示す弾性表面波フィルタを構成する基本構成回路図
【図8】図7に示す基本構成回路を用いて図6に示す基本構造を形成するときの接続方法を説明するための回路図
【図9】本発明の比較例2における弾性表面波フィルタの回路図
【図10】本発明の比較例3における弾性表面波フィルタの回路図
【図11】本発明の実施の形態2における送信側フィルタの上面図
【図12】図11に示す送信側フィルタの回路図
【図13】本発明の実施の形態3における送信側フィルタの回路図
【図14】本発明の実施の形態4における送信側フィルタの回路図
【図15】本発明の実施の形態5における送信側フィルタの回路図
【図16】本発明の比較例4における送信側フィルタの上面図
【図17】本発明の比較例5における送信側フィルタの回路図
【図18】図7に示す送信側フィルタを構成するための基本構成回路図
【図19】図7に示す送信側フィルタを構成する図18に示す基本構成回路の接続方法を説明するための回路図
【図20】本発明の実施の形態6における受信側フィルタの回路図
【図21】本発明の実施の形態7における受信側フィルタの回路図
【図22】本発明の実施の形態8における受信側フィルタの回路図
【図23】本発明の比較例6における受信側フィルタの回路図
【図24】従来のアンテナ共用器のブロック回路図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の請求項1に記載の発明は、入力端子と、この入力端子に入力側を接続した送信側フィルタと、この送信側フィルタの出力側に入力側を接続した受信側フィルタと、この受信側フィルタの出力側に接続した出力端子と、前記送信側フィルタと前記受信側フィルタとの間に接続したアンテナ端子とを備え、前記送信側フィルタは、ラダー型弾性波フィルタで構成されると共に、前記送信側フィルタにおいて、前記アンテナ端子側の最外腕は直列腕共振器であり、この直列腕共振器は複数の共振器が直列接続された構成であり、前記アンテナ端子側の最外腕における前記複数の共振器は、ほぼ同等の容量であると共に、前記受信側フィルタにおいて、前記入力端子側初段には直列腕共振器が接続されたアンテナ共用器であり、送信信号がアンテナ端子で反射したとしても、弾性表面波フィルタの劣化を防止し、安定したアンテナ共用器の動作を得ることができるものである。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1では800MHz帯のアンテナ共用器(送信帯域:824MHz〜849MHz、受信帯域869MHz〜894MHz)について説明する。
【0015】
図1は本実施の形態1のアンテナ共用器のブロック回路図であり、入、出力端子1,5間に送信側フィルタ2、移相回路3(図中点線で囲んだ部分)、受信側フィルタ4の順に接続し、送信側フィルタ2と移相回路3との間にアンテナ端子6を接続したものである。
【0016】
このアンテナ共用器の受信側フィルタ4は図2に示すようにSAW共振器10a,10b,10c,11a,11b,11cを直列腕と並列腕に配置し、直列腕3段、並列腕3段の合計6段のSAW共振器で構成されたラダー型の弾性表面波フィルタを用いた。これらのSAW共振器は図3に示すように圧電基板上において一対のインターディジタルトランスデューサ電極100の両側に反射器電極101を設けたものである。
【0017】
図4は本発明の実施の形態1におけるアンテナ共用器の送信側フィルタ2として用いる弾性表面波フィルタの上面図、図5は図4に示す弾性表面波フィルタの回路図であり、直列腕5段、並列腕2段の合計7段のSAW共振器で構成されている。40は圧電基板、41は入力用電極、42は出力用電極、43,44a,44b,45a,45bは直列腕SAW共振器、46,47は並列腕SAW共振器、48はアース電極である。
【0018】
この弾性表面波フィルタを構成するSAW共振器も図3に示すように基本的に一対のインターディジタルトランスデューサ電極の両側に反射器電極を設けたものである。直列腕SAW共振器44aと44b,45aと45bとはそれぞれ同一構造のSAW共振器である。
【0019】
つまりこの弾性表面波フィルタは、図7に示す直列腕SAW共振器と並列腕SAW共振器の回路を基本構成として、イメージインピーダンス法により、図8に示すように接続し、隣接する並列腕SAW共振器および直列腕SAW共振器をそれぞれ一つのSAW共振器にまとめて表現した図6に示す弾性表面波フィルタを基本構造とするものであり、図6において直列腕SAW共振器64,65は図4、図5に示す直列腕SAW共振器44aと44b、45aと45bの分割前に相当する。
【0020】
また比較のために図6に示す弾性表面波フィルタと等価である図9、図10に示す弾性表面波フィルタを準備する。図9に示す構成の弾性表面波フィルタは、図6に示す弾性表面波フィルタにおいて直列腕SAW共振器64を94a,94bに分割したものであり、図10に示す弾性表面波フィルタは図6に示す弾性表面波フィルタの直列腕SAW共振器63,64をそれぞれ103a,103b,104a,104bに分割したものである。
【0021】
図6に示す直列腕SAW共振器63,64,65及び並列腕SAW共振器66,67の容量をそれぞれC63,C64,C65,C66,C67とすると、送信側フィルタの受信帯域の減衰量を確保するために容量を下げているため、C63>C65,C66=C67の関係となっている。
【0022】
また、これらの容量をそれぞれ1とした場合の図5、図9、図10において対応する直列腕及び並列腕SAW共振器の容量を(表1)に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
図6に示すSAW共振器を分割したSAW共振器の開口長は分割前後で同じとし、対数はN段に分割したSAW共振器については分割前の対数のN倍とした。従ってN段に分割した分割後の1つ1つのSAW共振器の容量は分割前のSAW共振器の容量のN倍となっている。従って図5、図9、図10においては分割したSAW共振器はそれぞれ二つに分割したため分割前の容量の2倍の容量を有するものとなっている。
【0025】
従って図5に示す弾性表面波フィルタにおいてはC43=C44a(あるいはC44b)*2、(C45a、C45b)>C43>(C44a,C44b)、C46=C47となっている。
【0026】
これらの弾性表面波フィルタにおいて耐電力性評価を行った。試験方法としては、環境温度85℃、印加周波数は849MHzとし、電力印加時間が100時間を越えた場合その印加電力に対しては耐電力性があるものとし、印加電力を30dBmから1dBmずつあげて試験を行い寿命が100時間満たなくなる印加電力より1dBm低い電力を弾性表面波フィルタの耐電力性限界レベルとした。
【0027】
この耐電力性評価試験は図1に示すアンテナ共用器において、アンテナ端子6および出力端子5をそれぞれ50Ωで終端した状態で入力端子1に電力を印加した場合と、アンテナ端子6は開放状態、出力端子5は50Ωで終端した状態で入力端子1に電力を印加した場合の二つの場合について行った。この結果を(表2)に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
(表2)には試験後の弾性表面波フィルタの表面の観察によって劣化が確認されたSAW共振器についても合せて示している。またどの弾性表面波フィルタにおいても、受信側フィルタ4の弾性表面波フィルタが劣化することはなかった。
【0030】
(表2)からわかるように、アンテナ端子を開放にした場合、アンテナ端子を50Ωで終端した場合よりも低い電力で弾性表面波フィルタが劣化してしまうことがわかる。またこの実施の形態1の弾性表面波フィルタのように容量が小さな中間段の直列腕SAW共振器44a,44bを入力端子側初段の直列腕SAW共振器43の容量と同じになるように多段分割すると同時に最終段の直列腕SAW共振器45a,45bを初段の直列腕SAW共振器43よりもそれぞれ容量が大きくなるように分割することが有効であることが比較例2,3と比較するとわかる。
【0031】
特に比較例2,3からわかるように、アンテナ端子を50Ω終端した場合においても耐電力性が最終段の直列腕SAW共振器95,105によって決まってしまうような設計の場合は、従来行われてきたような電力の入力端子1側の直列腕SAW共振器を多段分割化することでは耐電力性が改善されないばかりか、アンテナ端子6が開放状態の場合には、さらに低い電力でやはり最終段の直列腕SAW共振器が劣化してしまうことがわかる。
【0032】
(実施の形態2〜5)
本実施の形態2〜5では1.9GHz帯のアンテナ共用器(送信帯域:1.85GHz〜1.91GHz、受信帯域1.93GHz〜1.99GHz)を用いて説明する。このアンテナ共用器の構成は図1に示したものと同じであるので説明を省略する。
【0033】
本実施の形態2〜5においても受信側フィルタ4として図2に示すラダー型弾性表面波フィルタを用いた。
【0034】
送信側フィルタ2として、実施の形態2においては図12、実施の形態3においては図13、実施の形態4においては図14、実施の形態5においては図15に示す構成のラダー型弾性表面波フィルタを用いた。また図11は、実施の形態2に示す送信側フィルタの圧電基板上でのレイアウトを示すものであり、110は圧電基板、111は入力用電極、112は出力用電極、113a,113b,114a,114b,114c,114d,115a,115bは直列腕SAW共振器、116,117は並列腕SAW共振器である。
【0035】
この図からわかるようにこの弾性表面波フィルタは入力用電極111側から出力用電極112側を見た場合と、逆に出力用電極112側から入力用電極111側を見た場合で構成が全く同じになるように、つまり回路的にも圧電基板110上での配置的にも対称になるように形成されている。比較例4としてこの実施の形態2と同じ回路構成で圧電基板110上での配置が異なる弾性表面波フィルタを図16に示す。この図からわかるように比較例4においては出力用電極112側の直列腕SAW共振器115a,115bのインターディジタルトランスデューサ電極115c,115dのバスバーおよびパッド電極115eの面積が他の直列腕SAW共振器113a,113b、114a〜114dと比較すると小さくなっている。
【0036】
また、実施の形態2〜5、比較例4の基本構造となったラダー型弾性表面波フィルタを比較例5とし、この構成を図17に示す。この弾性表面波フィルタは図18に示す直列腕SAW共振器と並列腕SAW共振器の回路を基本構成としてイメージインピーダンス法により図19のように接続し、隣接する並列腕SAW共振器および直列腕SAW共振器をそれぞれ一つのSAW共振器にまとめたものである。
【0037】
従って図17に示す弾性表面波フィルタにおいてそれぞれのSAW共振器の容量をC173,C174,C175,C176,C177(各数字は図17におけるSAW共振器の番号と対応するものとする)とすると、C173=2×C174、C173=C175となっている。図17の各SAW共振器の容量を1とした場合、これに対応する図11、図13〜図16の弾性表面波フィルタの各SAW共振器の容量を(表3)に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
本実施の形態2〜5においても実施の形態1と同様基本構造の弾性表面波フィルタ(図17)において分割したSAW共振器の開口長はその分割前後で同じとし、対数はN段に分割したSAW共振器については分割前の対数のN倍とした。従ってN段に分割した分割後の各SAW共振器の容量は分割前のSAW共振器の容量のN倍となっている。
【0040】
上記の各弾性表面波フィルタについて実施の形態1と同様の耐電力性評価試験を行った。但し、環境温度は50℃、印加周波数は1.91GHzとし、印加電力を27dBmから1dBmずつあげて試験を行い寿命が100時間に満たなくなる印加電力より1dBm低い電力を各弾性表面波フィルタの耐電力性限界レベルとした。この結果を(表4)に示す。
【0041】
【表4】

【0042】
(表4)には試験後の弾性表面波フィルタの表面の観察によって劣化が確認されたSAW共振器についても合せて示している。またどの弾性表面波フィルタにおいても、試験を行った範囲において受信側弾性表面波フィルタが劣化することはなかった。
【0043】
(表4)からわかるように、アンテナ端子を開放にした場合、アンテナ端子を終端した場合よりも低い電力で弾性表面波フィルタが劣化してしまうことがわかる。また実施の形態2と比較例4とを比較すると分かるように弾性表面波フィルタの回路構成が等しくても、圧電基板上のレイアウトが異なると耐電力性が異なることがわかる。
【0044】
比較例4においては最終段の直列腕SAW共振器115a,115bのバスバーおよびパッド電極の面積を他の直列腕SAW共振器と比較すると小さくしたため、通電中に発生した熱の放熱が実施の形態2と比較した場合悪く、そのため耐電力性が低下したと考えられる。つまり通電中に発生する熱の放熱のことも考慮すると回路的にだけでなく圧電基板上でのレイアウトも対称にすることにより、放熱の偏りをできるだけ小さくすることができ、耐電力性を向上させることができる。また圧電基板上でのレイアウトを考える際は、アンテナ端子が開放された状況において入力電力よりも大きな電力が印加される可能性のある出力端子5に最も近いSAW共振器や最も最初に劣化してしまうSAW共振器のバスバーやパッドの面積を広くし、放熱の効率を高めてやるのが良いことが容易に考えられる。
【0045】
また、実施の形態3からわかるように直列腕SAW共振器の耐電力を改善していくと並列腕SAW共振器が劣化するモードが観測される。これは試験後の観察から出力端子5に近い並列腕SAW共振器のインターディジタルトランスデューサ電極間で放電してしまったのが劣化原因とわかった。つまりこの場合も、アンテナ端子での反射波と入力信号との重ね合わせにより、並列腕SAW共振器にはアンテナ端子を50Ω終端して入力端から電力を入力した場合よりも大きな高周波電圧が印加されたためにインターディジタルトランスデューサ電極間で放電を起こしてしまったと考えられる。従って実施の形態4,5のように出力端子5に近い並列腕SAW共振器を分割して各SAW共振器に印加される高周波電圧を分圧してやるとこの並列腕SAW共振器の劣化を抑制できアンテナ端子を開放した場合の耐電力性をさらに向上させることができる。また耐電力性限界レベルも通常観測される直列腕SAW共振器によって決定されることとなる。
【0046】
(実施の形態6〜8)
実施の形態6〜実施の形態8では1.9GHz帯のアンテナ共用器(送信帯域:1.85GHz〜1.91GHz、受信帯域1.93GHz〜1.99GHz)について説明する。アンテナ共用器の構成は、図1に示したものと同じであるので説明を省略する。
【0047】
但し送信側フィルタ2として実施の形態4と同じ構成のラダー型弾性表面波フィルタを用い、受信側フィルタ4として実施の形態6は図20、実施の形態7は図21、実施の形態8は図22、比較例6は図23に示すラダー型弾性表面波フィルタをそれぞれ用いた。
【0048】
図20〜図22のラダー型弾性表面波フィルタは入力端子1側の初段が直列腕SAW共振器203,213,223aである。また図20に示す弾性表面波フィルタを基本構成として図21においては、入力端子1側に最も近い並列腕SAW共振器のみ二段に分割したものであり、図22においては入力端子1側に最も近い直列腕SAW共振器223a,223bと並列腕SAW共振器226a,226bの両方を二段に分割したものである。
【0049】
図23(比較例6)のラダー型弾性表面波フィルタは入力端子1側初段が並列腕SAW共振器236となっている。実施の形態7,8においても分割とした直列腕SAW共振器216a,216b,223a,223b、並列腕SAW共振器226a,226bの開口長はその分割前である直列腕SAW共振器203,206とそれぞれ同じとし、対数はN段に分割したSAW共振器については分割前の対数のN倍とした。従ってN段に分割した分割後の各SAW共振器の容量は分割前のSAW共振器の容量のN倍となっている。実施の形態7,8においてはそれぞれ二段に分割したので各SAW共振器は分割前の容量の2倍の容量を有するものとなっている。
【0050】
上記の各弾性表面波フィルタについて実施の形態2〜5と同様の耐電力性評価試験を行った。この結果を(表5)に示す。
【0051】
【表5】

【0052】
(表5)には試験後の弾性表面波フィルタの表面の観察によって劣化を確認したSAW共振器についても合せて示している。またどの弾性表面波フィルタにおいてもアンテナ端子を開放した状態の試験においては試験を行った範囲では送信側弾性表面波フィルタが劣化することはなかった。
【0053】
(表5)からわかるように、受信側フィルタ4については入力端子1側初段が直列腕SAW共振器203,213,223aのラダー型弾性表面波フィルタを用いることにより、高耐電力性を有することが分かる。これは移相回路3を有するアンテナ共用器では送信電力のほとんどが移相回路3のアンテナ端子で反射されることによるものと考えられる。またアンテナ端子が開放状態になった場合を考慮しても、受信側フィルタ4の入力端子1側のSAW共振器を多段化することで耐電力性をさらに向上させることができる。
【0054】
本発明のポイントについて以下に記載する。
【0055】
(1)アンテナ端子からの反射波による送信側フィルタの劣化を防止するために、複数に分割した最外腕(アンテナ端子6に最も近い)直列腕SAW共振器の内最も容量が小さい直列腕SAW共振器の容量を前記最外腕以外の直列腕SAW共振器の容量よりも大きくする。そのために、最外腕以外の直列腕SAW共振器のインターディジタルトランスデューサ電極の分割前の対数をNi、分割後の対数をNaとすると、Ni≦Naとすれば良い。さらに最外腕の直列腕SAW共振器のインターディジタルトランスデューサ電極の分割前の交差幅をLi、分割後の交差幅をLaとするとLa≦Liとすることにより、電極指1本あたりの抵抗の上昇は抑制され発熱の影響を軽減することができる。
【0056】
また、送信側フィルタ2の直列腕SAW共振器は、耐電力性を考慮した場合、入力端子1および出力端子5に近いほど容量が大きいものを用いることが好ましい。
【0057】
(2)送信側フィルタ2としてラダー型弾性表面波フィルタを用いた場合、図14、図15に示すように、アンテナ端子に最も近い並列腕SAW共振器を複数に分割することにより、送信用周波数帯域において、大きな電圧のかかる並列腕SAW共振器の耐電圧性を高めて、劣化を抑制することができる。またアンテナ端子に最も近い並列腕SAW共振器を複数に分割する時は分割後の合成容量が分割前の容量と同等となるようにすることにより、通常印加される高周波電圧の約2倍の高周波電圧に対しても並列腕SAW共振器の劣化を抑制することができる。さらに分割した並列腕SAW共振器の内最も容量が小さい並列腕SAW共振器は、分割した並列腕以外の並列腕SAW共振器よりも大きな容量を有するようにすることにより、さらに最も大きな高周波電圧が印加される出力側端子(アンテナ端子)に最も近い並列腕SAW共振器の耐電圧性を向上させることができる。
【0058】
(3)受信側フィルタ4としてラダー型弾性表面波フィルタを用いる場合、アンテナ端子側に最も近い初段を直列腕SAW共振器とし、複数に分割すると共に分割した直列腕SAW共振器の内最も容量が小さい直列腕SAW共振器は、前記初段以外の直列腕SAW共振器の容量よりも大きくすることにより、さらに耐電力性を向上させることができる。すなわち分割前のインターディジタルトランスデューサ電極の対数をNi、分割後の対数をNaとすると、Ni≦Naとすればよい。
【0059】
さらに分割前の交差幅をLi、分割後の交差幅をLaとするとLa≦Liとすることにより、電極指1本あたりの抵抗の上昇は抑制され発熱の影響を軽減することができる。
【0060】
(4)受信側フィルタ4としてラダー型弾性表面波フィルタを用いた場合は、図21、図22に示すようにアンテナ端子に最も近い並列腕SAW共振器を複数に分割することにより、耐電圧性を高めて、劣化を抑制することができる。この時分割後の合成容量を分割前の容量と同等とすることにより、通常印加される高周波電圧の約2倍の高周波電圧に対しても並列腕SAW共振器の劣化を抑制することができる。さらに、分割した並列腕SAW共振器の内最も容量が小さい並列腕SAW共振器は、他の並列腕SAW共振器よりも大きな容量を有するものとすることにより、さらに耐電圧性を高めることができる。
【0061】
(5)送信側フィルタ、受信側フィルタともラダー型弾性表面波フィルタを用いた場合は、入力側から見た時と出力側から見た時の構成を回路的に、より好ましくは圧電基板上のレイアウト的にも対称となるように設計することにより、通電中に発生する熱の放熱を効率よく行うことができ、耐電力性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 入力端子
2 送信側フィルタ
3 移相回路
4 受信側フィルタ
5 出力端子
6 アンテナ端子
10a SAW共振器
10b SAW共振器
10c SAW共振器
11a SAW共振器
11b SAW共振器
11c SAW共振器
40 圧電基板
41 入力用電極
42 出力用電極
43 直列腕SAW共振器
44a 直列腕SAW共振器
44b 直列腕SAW共振器
45a 直列腕SAW共振器
45b 直列腕SAW共振器
46 並列腕SAW共振器
47 並列腕SAW共振器
48 アース電極
63 直列腕SAW共振器
64 直列腕SAW共振器
65 直列腕SAW共振器
66 並列腕SAW共振器
67 並列腕SAW共振器
93 直列腕SAW共振器
95 直列腕SAW共振器
100 IDT電極
101 反射器電極
103a 直列腕SAW共振器
103b 直列腕SAW共振器
104a 直列腕SAW共振器
104b 直列腕SAW共振器
105 直列腕SAW共振器
110 圧電基板
111 入力用電極
112 出力用電極
113a 直列腕SAW共振器
113b 直列腕SAW共振器
114a 直列腕SAW共振器
114b 直列腕SAW共振器
114c 直列腕SAW共振器
114d 直列腕SAW共振器
115a 直列腕SAW共振器
115b 直列腕SAW共振器
116 並列腕SAW共振器
117 並列腕SAW共振器
203 直列腕SAW共振器
206 直列腕SAW共振器
213 直列腕SAW共振器
216a 直列腕SAW共振器
216b 直列腕SAW共振器
223a 直列腕SAW共振器
223b 直列腕SAW共振器
226a 並列腕SAW共振器
226b 並列腕SAW共振器
236 並列腕SAW共振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と、この入力端子に入力側を接続した送信側フィルタと、この送信側フィルタの出力側に入力側を接続した受信側フィルタと、この受信側フィルタの出力側に接続した出力端子と、前記送信側フィルタと前記受信側フィルタとの間に接続したアンテナ端子とを備え、前記送信側フィルタは、ラダー型弾性波フィルタで構成されると共に、
前記送信側フィルタにおいて、前記アンテナ端子側の最外腕は直列腕共振器であり、この直列腕共振器は複数の共振器が直列接続された構成であり、前記アンテナ端子側の最外腕における前記複数の共振器は、ほぼ同等の容量であると共に、
前記受信側フィルタにおいて、前記入力端子側初段には直列腕共振器が接続されたアンテナ共用器。
【請求項2】
前記受信側フィルタの前記入力端子側初段に接続された直列腕共振器は、複数の共振器が直列接続された構成である請求項1に記載のアンテナ共用器。
【請求項3】
前記受信側フィルタの前記入力端子側初段に接続された直列腕共振器は、複数の共振器が直列接続された構成であり、これら複数の共振器は、ほぼ同等の容量である請求項1に記載のアンテナ共用器。
【請求項4】
前記受信側フィルタの前記入力端子側初段に接続された直列腕共振器は、複数の共振器が直列接続された構成であり、これら複数の共振器のそれぞれの容量は、前記受信側フィルタにおける前記入力端子側初段以外の1つの直列腕共振器の容量より大きい請求項1に記載のアンテナ共用器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−41333(P2011−41333A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263353(P2010−263353)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【分割の表示】特願2009−164752(P2009−164752)の分割
【原出願日】平成12年4月3日(2000.4.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】