説明

アンテナ及び物品管理収納庫

【課題】ループコイルを磁心部材に巻回する場合、ループコイルを磁心部材の中心部分に集約して巻回することにより、隣接する磁心部材に磁界が伝達しないようにして、隣接アンテナ間の磁気結合を防止したアンテナを提供する。
【解決手段】このアンテナAは、例えば板状の形状を有するフェライトコア(磁心部材)42と、フェライトコア42に所定回数巻回したループコイル43と、を備えて構成されている。そして、ループコイル43をフェライトコア42に巻回する場合、フェライトコア42の両端近傍部分を除いた中心部分に集約してループコイル43を巻回するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ及び物品管理収納庫に関し、さらに詳しくは、隣接するアンテナ同士の磁気結合を防止するアンテナの構成とそのアンテナを備えた物品管理収納庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカードと呼ばれる情報記録媒体が市場に広く出回り、種々の用途に使用されている。ICカードは、クレジットカード、銀行カード、ポイントカード等のカード状あるいはシート状の形状を備え、カード内にICが組み込まれているものを総称した名称である。最近では、ICカードと同様の原理で情報を記録するRFタグが、各種物品に付されて物品の種別や内容の判別、分類整理、在庫管理等の多様な分野において効率化に貢献している。例えば、物品の管理情報を記録したRFタグを取り付けた多数の物品を、管理収納部に収納して管理する場合、各収納部毎の管理情報を正確に読み取れることが必要条件である。即ち、各収納部毎に備えられたアンテナが当該収納部に収納された物品のみの管理情報を読み取り、他の(特に隣接する)収納部の物品の管理情報は読み取らないことが必要である。
【0003】
図6(a)は、従来のアンテナによる管理情報の読み取り誤動作を説明する模式図である。説明を簡略化するためにアンテナが2個設けられている場合について説明する。アンテナAはフェライトコア32に等間隔に巻回したループコイル33により構成され、同じくアンテナBはフェライトコア32に等間隔に巻回したループコイル33により構成されている。そしてアンテナAからは磁界30が発生し、アンテナBからは磁界31が発生するものとする。そして、アンテナAはRFタグ200aの管理情報を読み取り、アンテナBはRFタグ200bの管理情報を読み取るものとする。ここで、アンテナAのループコイル33に電流が流れると、磁界30が発生し、RFタグ200aのアンテナを横切って図示しないリーダライタと交信を行なう。しかし、磁界30は隣接するアンテナBのフェライトコア34を磁路として伝達し、フェライトコア34の端面から放射してRFタグ200bにも磁界30が横切ることになる。これにより、リーダライタはRFタグ200aと200bに記録されている管理情報を読み取ることになり、どちらが正しい情報かを判断することができない。更に、リーダライタが積層型のRFタグを読み取る形式で無い場合、情報が重複して読み取りエラーを起こすこともある。そこで、従来では、図6(b)のように、アンテナAとBの間に磁界を遮蔽する遮蔽部材34を配置して、磁界30と31が互いに隣接するフェライトコアに伝達しないようにしている。
【0004】
また従来技術として特許文献1には、書籍に取り付けられたICカードと無線通信を行うリーダライタのループアンテナが書籍を収納するための各棚に組み込まれた物品管理棚において、物品管理棚は複数の棚により1つの架となる筐体を構成し、複数の棚の各々にループアンテナが設置されて、且つ複数の棚のうちの少なくとも一部の棚の下面に鉄板等の金属の電磁遮蔽物を設置するようにした物品管理棚について開示されている。
【特許文献1】特開2002−60021公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来技術は、電磁結合を防止するために、少なくとも一部の棚の下面に鉄板等の金属の電磁遮蔽物を設置する必要があるため、物品管理棚のコストが高騰するといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑み、ループコイルを磁心部材に巻回する場合、ループコイルを磁心部材の中心部分に集約して巻回することにより、隣接する磁心部材に磁界が伝達しないようにして、隣接アンテナ間の磁気結合を防止したアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、非接触情報記録媒体に対して情報をリード、又はライトするための電波を授受するアンテナであって、磁心部材と、該磁心部材に所定回数巻回した導電線から成るループコイルと、を備え、該ループコイルを前記磁心部材の軸方向両端近傍部分を除いた中心部分に集約して巻回するように構成したことを特徴とする。
本発明は磁界が磁心部材の軸方向に広がらないようにするために、ループコイルを磁心部材の中央部分に集約して巻回するものである。これにより、磁心部材から放射する磁界は軸方向に広がらずに、軸方向に直交する方向に広がるようになり、隣接するアンテナへの影響を最小限にすることができる。
【0007】
請求項2は、非接触情報記録媒体に対して情報をリード、又はライトするための電波を授受するアンテナであって、磁心部材と、該磁心部材に所定回数巻回した導電線から成るループコイルと、を備え、前記磁心部材の軸方向長を前記ループコイルの軸方向長と略等しくなるように構成したことを特徴とする。
本発明は磁心部材の大きさを必要最小限にするために、ループコイルを巻回している部分のみに磁心部材を設けるものである。即ち、磁心部材は磁界の磁路として働くため、ループコイルが存在しない部分に磁心部材があると、その分横方向に磁界が広がることになる。そこで本発明では、ループコイルの巻き幅と同じ幅の磁心部材にして、不要な磁界の広がりを防ぐものである。
【0008】
請求項3は、非接触情報記録媒体に対して情報をリード、又はライトするための電波を授受するアンテナであって、磁心部材と、該磁心部材に所定回数巻回した導電線から成るループコイルと、を備え、前記ループコイルは、前記磁心部材の軸方向中央部に集約して巻回した第1のループコイルと、該第1のループコイルの両端から突出した磁心部材に巻回した第2のループコイルとから成り、前記第1のループコイルの両端部と、各第2のループコイルの内側端部は電気的に接続されると共に、該接続部にタップを備えたことを特徴とする。
本発明は、磁心部材の軸方向全体に亘って巻回した第2のループコイルと、その第2のループコイルの中心部分からタップを取り出して始点と終点とする第1のループコイルを備え、磁界が放射される距離が異なるアンテナを構成するものである。
【0009】
請求項4は、前記磁心部材は、フェライト、純鉄、珪素鋼、鉄・ニッケル合金又はダストコアであることを特徴とする。
磁界を強める磁心部材は、比透磁率が大きくヒステリシス現象の小さいものが良い。フェライトは高周波における鉄損が少なく、最大比透磁率や飽和特性が良い。また純鉄は、安価で比透磁率が大きい。また珪素鋼は、純鉄に比べて抵抗率、比透磁率が共に増加する。また鉄・ニッケル合金は、できるだけ大きい透磁率の磁心が必要なときに使用される。またダストコアは、高周波における比透磁率の減少を防ぐ。
【0010】
請求項5は、非接触情報記録媒体を取り付けた物品を管理収納する物品管理収納庫であって、前記物品を物品単位に収納する収納部と、各収納部に備えられた請求項1乃至4の何れか一項に記載のアンテナと、該アンテナの何れか1つを選択する切替手段と、前記非接触情報記録媒体との間で所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うリーダライタと、前記切替手段及びリーダライタを制御する制御手段と、を備え、前記各アンテナは、該各アンテナから放射する磁力線が隣接するアンテナの前記磁心部材に伝播しない距離に夫々配置されることを特徴とする。
本発明では一般的な本棚タイプの収納部の使用を想定している。本発明が最も特徴とする点は、アンテナの間隔を狭めてもアンテナ間の干渉を最小限にするために、本発明のアンテナを備えて構成した点である。これにより、常に安定した情報の読み取り可能とすることができる。
【0011】
請求項6は、前記アンテナを少なくとも2つ以上隣接して配置する場合、各磁心部材間に遮蔽部材を更に配置することを特徴とする。
本発明のアンテナを使う場合は、基本的に遮蔽部材は必要としないが、アンテナ間隔を更に狭める必要がある場合は、遮蔽部材を設ける必要がある。
【0012】
請求項7は、前記遮蔽部材は、銅、若しくはアルミニュウムにより構成されていることを特徴とする。
磁力線は導体内を通過するときにジュール熱としてエネルギーが減衰する。その結果、磁力線が減衰する。従って、遮蔽部材の材料としては反磁性材料である銅、若しくはアルミニュウムが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、磁心部材と、磁心部材に所定回数巻回したループコイルと、を備え、ループコイルを磁心部材の軸方向両端近傍部分を除いた中心部分に集約して巻回するように構成したので、磁心部材から放射する磁界は軸方向に広がらずに、軸方向と直交する方向に広がるようになり、隣接するアンテナへの影響を最小限にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は、一般的なリーダライタの構成を示すブロック図である。このリーダライタ100は、リーダライタ100との間でデータの授受を行ってシステム全体を制御するPC50によって制御される。リーダライタ100は、外部のPC50とのデータの通信プロトコルを司る送受信装置1と、リーダライタ100全体の動作を制御する制御装置2と、制御装置2を動作させる手順を記録したファームウェアと読み取ったデータを格納するメモリ装置3と、制御装置2からのデータを搬送波に乗せて変調する変調器4と、操作コマンドを入力する入力装置5と、制御装置2により制御された情報を表示する表示装置6と、制御装置2からの交流信号である電力供給用信号と変調器4からの書き込みコマンドを電力増幅する電力増幅器7と、ループアンテナ9から受信した搬送波から2値化データに変換する検波復調器8と、図示しないICカード(RFタグ)との電力用搬送波とデータの授受をするループアンテナ9とを備えて構成されている。
【0015】
次に、本構成によるリーダライタ100の動作を説明する前に、ICカード(RFタグ)(非接触情報記録媒体)の構成を先に説明しておく。図2は、ICカード(RFタグ)の構成を示すブロック図である。このICカード(RFタグ)200は、リーダライタ100からの電力用搬送波によりデータの授受をするアンテナ20と、書き込みコマンド読み出しコマンドを生成する送受信回路21と、アンテナ20からの電力用搬送波を受け、それを整流して直流電力に変換する電力生成回路22と、制御用ファームウェアとデータの記憶を司るメモリ装置23と、制御回路26からの送信コマンドに搬送波を乗せて変調する変調器24と、送受信回路21からの搬送波データから2値化データに変換する検波器25と、ICカード(RFタグ)200の全体の動作を制御する制御回路26から構成されている。
【0016】
次に、図1と図2を併せて参照してそれぞれ単独の動作について説明する。リーダライタ100は、図示しない電源が入れられると制御装置2のイニシャル動作後、メモリ装置3に記憶されたプログラムに従い動作を開始する。まず、初期化が行われる。次に、制御装置2は、ICカード(RFタグ)200に供給する電力供給用信号と、ポーリング信号を交互に電力増幅器7から送信する。その信号は、ループアンテナ9から電磁波として外部に放射される。次に、ICカード(RFタグ)200がリーダライタ100に近接すると、アンテナ20が電力供給用信号を受信し、電力生成回路22によりその搬送波を整流して直流電力に変換して、ICカード(RFタグ)200内の全ての回路に供給する。電力を供給されて制御回路26が駆動すると、メモリ装置23に格納されたプログラムに従って、制御を開始する。
【0017】
次に、制御回路26は、まず送受信回路21からコマンドを検波器25で復調して2値化信号に変換し、そのコマンドを解析する。その結果自分が呼び出されていることを認識すると、レスポンスを変調器24により変調して送受信回路21を介してアンテナ20から送信する。このレスポンスをリーダライタ100がループアンテナ9で受信して、検波復調器8で2値化コードに変換し、制御回路2により解析してICカード(RFタグ)200が規格に合致したICカード(RFタグ)であると認識する。それにより、以後リーダライタ100とICカード(RFタグ)200の間でポーリングが行われる。
【0018】
図3は本発明の第1の実施形態に係るアンテナの構成を示す斜視図である。このアンテナAは、例えば板状の形状を有するフェライトコア(磁心部材)42と、フェライトコア42に所定回数巻回したループコイル43と、を備えて構成されている。そして、ループコイル43をフェライトコア42に巻回する場合、ループコイル43をフェライトコア42の軸方向両端近傍部分を除いた中心部分に巻回するように構成したものである。尚、フェライトコア42の形状は板状に限らず、棒状でも構わない。
【0019】
次に、本発明のアンテナAとBを隣接して配置した場合の動作について説明する。尚、アンテナAとBは構成が同じである。本発明のアンテナA、Bは、ループコイル43をフェライトコア42の中心に集約して巻回している点が特徴である。即ち、ループコイル43が空芯の場合、磁界はループコイル43の端面から放射されてループコイル43の巻き幅yにより決定する磁界ループが形成される。言い換えると、磁界の強さ(ループコイルの巻き数Tとループコイルに流れる電流Aの積で一義的に決定する)が一定であれば、巻き幅yが小さい程ループコイル43の縦方向に放射される磁界の距離は大きくなり、横方向の距離は小さくなる(縦方向に長い円状)。逆に、巻き幅yが大きい程ループコイル43の縦方向に放射される磁界の距離は小さくなり、横方向の距離は大きくなる(横方向に長い円状)。尚、磁心部材にループコイルを巻回した場合は、上記の現象は維持されるが、磁界は空気より磁心部材の方が伝達しやすいため、磁心部材の形状に沿って磁路が形成されて、磁心部材の端面から磁界が放射される(詳細は後述する)。
【0020】
従って、アンテナAと全く同じ構成のアンテナBが互いに隣接して配置された場合、互いのフェライトコア42の間隔xを最適に保つことにより、相互の磁気結合を磁気遮蔽材を必要とせず防止することができる。即ち、アンテナAの磁界40はフェライトコア42の端面から直ぐ上方向に放射され、RFタグ200aを横切ってループを形成し、隣のアンテナBのフェライトコア42の端面に入射することはない。同様に、アンテナBの磁界41はフェライトコア42の端面から直ぐ上方向に放射され、RFタグ200bを横切ってループを形成し、隣のアンテナAのフェライトコア42の端面に入射することはない。これにより、図示しないリーダライタに対してアンテナAはRFタグ200aに記録されている情報のみを与え、アンテナBはRFタグ200bに記録されている情報のみを与える。
【0021】
図4は本発明の第2の実施形態に係るアンテナの構成を示す図である。このアンテナAは、板状の形状を有するフェライトコア(磁心部材)60と、フェライトコア60に所定回数巻回したループコイル61と、を備えて構成されている。そして、フェライトコア60の両端面に亘って等間隔にループコイル61を巻回し、ループコイル61の始端a及び終端b間に形成されるCL−A(第2のループコイル)と、CL−Aの中心部分を始端と終端とするCL−B(第1のループコイル)と、を備えて構成される。尚、フェライトコア60の形状は板状に限らず、棒状でも構わない。
【0022】
次に、本発明のアンテナAとBを隣接して配置した場合の動作について説明する。尚、アンテナAとBは構成が同じであり、その境界に遮蔽部材62を配置している。本発明のアンテナA、Bは、ループコイル61を巻き数の異なる2種類のループコイルにより構成した点が特徴である。即ち、アンテナA、Bの夫々のCL−Aに電流が流れると、電流が一定の場合巻き数が多いので磁界が強くなり、アンテナAから磁界63aとして放射される。磁界63aはフェライトコア60の端面から放射するが、遮蔽部材62により遮蔽されて上方向に放射され、RFタグ200a1を横切ってループを形成し、隣のアンテナBのフェライトコア60の端面に入射することはない。同様に、アンテナBの磁界64aはフェライトコア60の端面から放射するが、遮蔽部材62により遮蔽されて上方向に放射され、RFタグ200b1を横切ってループを形成し、隣のアンテナAのフェライトコア60の端面に入射することはない。これにより、図示しないリーダライタに対してアンテナAはRFタグ200a1に記録されている情報のみを与え、アンテナBはRFタグ200b1に記録されている情報のみを与える。
【0023】
また、アンテナA、Bの夫々のCL−Bに電流が流れると、電流が一定の場合巻き数が少ないので磁界が弱くなり、アンテナAから磁界63bとして放射される。アンテナAの磁界63bはフェライトコア60の端面から放射するが、遮蔽部材62により遮蔽されて上方向に放射され、RFタグ200a2を横切ってループを形成し、隣のアンテナBのフェライトコア60の端面に入射することはない。同様に、アンテナBの磁界64bはフェライトコア60の端面から放射するが、遮蔽部材62により遮蔽されて上方向に放射され、RFタグ200b2を横切ってループを形成し、隣のアンテナAのフェライトコア60の端面に入射することはない。これにより、図示しないリーダライタに対してアンテナAはRFタグ200a2に記録されている情報のみを与え、アンテナBはRFタグ200b2に記録されている情報のみを与える。
【0024】
この実施形態から分かるとおり、各アンテナのCL−Aを使用した場合は、アンテナからの距離が遠いRFタグと交信を行うことができる。一方、各アンテナのCL−Bを使用した場合は、アンテナからの距離が近いRFタグと交信を行うことができる。尚、本実施形態ではループコイル61の途中からCL−Bを形成しているためコイルの巻き数が変化してしまうが、CL−AとCL−Bを個別に巻回して、夫々の巻き数を同じにすることにより、異なった距離のRFタグの情報を個別に読むことができ、且つループコイルに流す電流を一定とすることができる。また、別の方法として、CL−Bを動作させるときは、磁界の強さがCL−Aと同じになるように電流を増加するようにしても良い。
【0025】
図5は図4の実施形態の回路の一例を示す図である。同じ構成要素には図4と同じ参照番号を付して説明する。この回路では、ループコイルAは、リーダライタ100からの信号はSW1とSW2によりCL−AとCL−Bに切り替えられる。図ではCL−Aに接続された状態を示している。またループコイルBは、リーダライタ100からの信号はSW3とSW4によりCL−AとCL−Bに切り替えられる。図ではCL−Aに接続された状態を示している。
【0026】
図6は本発明の実施形態に係るアンテナから放射される磁界の様子を説明する図である。尚、図6では従来のアンテナと比較するために、図6(a)、(b)に従来のアンテナを併せて図示する。また、説明を簡略化するためにアンテナが2つの場合について説明し、各アンテナから放射される磁界は磁力線が1本として説明する。また、フェライトコアの端面からRFタグの端面までの距離をdn(n=1〜3)、RFタグと磁界が直交する面と磁界の最長距離をDn(n=1〜3)として表す。
【0027】
図6(a)のアンテナAはフェライトコア32に等間隔に巻回したループコイル33により構成され、同じくアンテナBはフェライトコア32に等間隔に巻回したループコイル33により構成されている。そしてアンテナAからは磁界30が発生し、アンテナBからは磁界31が発生するものとする。そして、アンテナAはRFタグ200aの管理情報を読み取るためにあり、アンテナBはRFタグ200bの管理情報を読み取るためにあるものとする(以下、同様とする)。ここで、アンテナAのループコイル33に電流が流れると、磁界30が発生し、RFタグ200aのアンテナを横切って図示しないリーダライタと交信を行なう。しかし、磁界30は隣接するアンテナBのフェライトコア34を磁路として伝達し、フェライトコア34の端面から放射してRFタグ200bにも磁界30が横切ることになる。これにより、リーダライタはRFタグ200aと200bに記録されている管理情報を読み取ることになり、どちらが正しい情報かを判断することができない。更に、リーダライタが積層型のRFタグを読み取る形式で無い場合、情報が重複して読み取りエラーを起こすこともある。
【0028】
そこで、従来では、図6(b)のように、アンテナAとBの間に磁界を遮蔽する遮蔽部材34を配置して、磁界30と31が互いに隣接するフェライトコアに伝達しないようにしている。尚、磁心部材としてはフェライト以外に、純鉄、珪素鋼、鉄・ニッケル合金又はダストコアが使用され、遮蔽部材としては、銅、若しくはアルミニュウムが使用される。この場合、フェライトコアの端面からRFタグの端面までの距離d1は最も近く、RFタグと磁界が直交する面と磁界の距離D1は最も遠くなる。
【0029】
図6(c)は本発明の第1の実施形態に係るアンテナの動作を説明する図である。本実施形態は、遮蔽部材を使用しないで複数のアンテナを隣接して配置する場合である。同じ構成要素には図3と同じ参照番号を付して説明する。アンテナAの磁界40はフェライトコア42の端面から直ぐ上方向に放射され、RFタグ200aを横切ってループを形成し、隣のアンテナBのフェライトコア42の端面に入射しないように配置される。同様に、アンテナBの磁界41はフェライトコア42の端面から直ぐ上方向に放射され、RFタグ200bを横切ってループを形成し、隣のアンテナAのフェライトコア42の端面に入射することはない。これにより、図示しないリーダライタに対してアンテナAはRFタグ200aに記録されている情報のみを与え、アンテナBはRFタグ200bに記録されている情報のみを与える。即ち、図6(a)と同じ間隔でも本発明のアンテナの場合は遮蔽部材を必要とせず、隣接配置することができる。この場合、フェライトコアの端面からRFタグの端面までの距離d2はd1より遠くなり、RFタグと磁界が直交する面と磁界の距離D2はD1より近くなる。
【0030】
図6(d)は本発明の第2の実施形態に係るアンテナの動作を説明する図である。本実施形態ではアンテナAとBを更に近接するために、アンテナ間に遮蔽部材44を更に配置したものである。これにより、アンテナA、Bを図6(c)よりも近づけて配置することができ、これにより装置全体を小型に構成することができる。
図6(e)は本発明の第3の実施形態に係るアンテナの動作を説明する図である。本実施形態ではアンテナとRFタグとの距離を長くするために、フェライトコア47にループコイル48を中心部分に集約して巻回した場合、フェライトコア47の長さをループコイル48の巻き始めから巻き終わりまでの巻き幅と略等しくなるように構成したものである。これにより、フェライトコア47を最小限の大きさとすることができ、材料費が削減できると共に、フェライトコアの端面からRFタグの端面までの距離d3を最も長くすることができる。この場合、フェライトコアの端面からRFタグの端面までの距離d3はd2より遠くなり、RFタグと磁界が直交する面と磁界の距離D3はD2より近くなる。以上のことから、図6(b)、(c)、(e)との間にはd1<d2<d3、D1>D2>D3の関係が成立する。
【0031】
図7は本発明の一実施形態に係る物品管理収納庫の構成図である。
この物品管理収納庫は、物品68を物品単位に収納する収納部65と、各収納部65に備えられた図3から図6で説明した本発明のアンテナ67と、アンテナ67の何れか1つを選択するアンテナ切替器(切替手段)66と、RFタグ200との間で所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うリーダライタ100と、アンテナ切替器66及びリーダライタ100を制御するPC(制御手段)50と、を備えて構成される。尚、本実施形態では収納部65が複数あり、縦方向をA〜Dで表し、横方向を1〜4で表し、夫々の交点(例えば、最上段の左端をA−1として示す)が1つの物品の収納部として指示される。
この実施形態においては、例えば、PC50がアンテナ切替器66を順次切り替えて行き、そのときのアンテナ67から読み取られる物品に付されたRFタグ200の情報を読むことにより、どの収納部にどのような物品が収納或いは未収納であるかをリアルタイムに管理することができる。当然、必要なときにアンテナ切替器66を駆動して、その都度検索するようにしても良い。
【0032】
図8は図7の物品管理収納庫の動作を更に詳しく説明するための機能ブロック図である。この図では説明を簡略化するために、収納部をA−1〜A−4までとして表している。例えば、アンテナ切替器66はPC50により制御され、電子的なスイッチ等で接点Xを介してリーダライタ100と接続される。例えば、収納部A−1に収納されている物品の情報を読む場合、PC50がアンテナ切替器66の接点をaに接続し、リーダライタ100を起動して信号を接点X、接点aを介してアンテナ67に送信する。それにより、収納部A−1に収納された物品に付されたRFタグ200と交信して情報をリーダライタ100が読み取ってPC50に伝える。PC50では予め設定した接点aと収納部A−1との関係から収納部A−1の物品の情報を把握することができる。以下同様にして、順次アンテナ切替器66を切り替えることにより、全ての収納部に収納されている物品の情報を管理することができる。
【0033】
以上の通り本発明によれば、棒状又は板状の形状を有するフェライトコア42と、フェライトコア42に所定回数巻回したループコイル43と、を備え、ループコイル43をフェライトコア42の軸方向両端近傍部分を除いた中心部分に集約してループコイル43を巻回するように構成したので、フェライトコア42から放射する磁界は軸方向に広がらずに、軸方向と直交する方向に広がるようになり、隣接するアンテナへの影響を最小限にすることができる。
また、フェライトコア47にループコイル48を中心部分に集約して巻回した場合、フェライトコア47の長さをループコイル48の巻き始めから巻き終わりまでの巻き幅と略等しくなるように構成したので、フェライトコア47のコストを低減すると共に、アンテナ間を更に近接して配置することができる。
また、棒状又は板状の形状を有するフェライトコア60と、フェライトコア60に所定回数巻回したループコイル61と、を備え、フェライトコア60の両端面に亘って等間隔にループコイル61を巻回し、このループコイル61の始端a及び終端間bに形成されるCL−Aと、このCL−Aの中心部分を始端cと終端dとするCL−Bと、を備えたので、一つのループコイルで距離の異なる磁界を放射することができる。
【0034】
また、磁心部材は、フェライト、純鉄、珪素鋼、鉄・ニッケル合金又はダストコアであるので、使用目的により部材の種類を選択することができる。
また、物品を物品単位に収納する収納部65と、各収納部65に備えられた本発明のアンテナ67と、アンテナ67の何れか1つを選択するアンテナ切替器66と、RFタグ200との間で所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うリーダライタ100と、アンテナ切替器66及びリーダライタ100を制御するPC50と、を備え、各アンテナから放射する磁力線が隣接するアンテナの磁心部材に伝播しない距離に夫々配置されるので、常に安定した情報の読み取り可能とすることができる。
また、アンテナを少なくとも2つ以上隣接して配置する場合、各磁心部材間に遮蔽部材を更に配置するので、更にアンテナを近接して配置することができる。
また、遮蔽部材としては反磁性材料である銅、鉄若しくはアルミニュウムを使用するので、比較的安価で且つ磁力線の減衰効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】一般的なリーダライタの構成を示すブロック図である。
【図2】ICカード(RFタグ)の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るアンテナの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るアンテナの構成を示す図である。
【図5】本発明の図4の実施形態の回路の一例を示す図である。
【図6】(a)は従来のアンテナによる管理情報の読み取り誤動作を説明する模式図、(b)はアンテナAとBの間に磁界を遮蔽する遮蔽部材を配置した図、(c)は本発明の第1の実施形態に係るアンテナの動作を説明する図、(d)は本発明の第2の実施形態に係るアンテナの動作を説明する図、(e)は本発明の第3の実施形態に係るアンテナの動作を説明する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る物品管理収納庫の構成図である。
【図8】本発明の図7の物品管理収納庫の動作を更に詳しく説明するための機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0036】
A、B アンテナ、40、41 磁界、42 フェライトコア、43 ループコイル、44、62 遮蔽部材、65 収納部、66 アンテナ切替器、100 リーダライタ、200 RFタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触情報記録媒体に対して情報をリード、又はライトするための電波を授受するアンテナであって、
磁心部材と、該磁心部材に所定回数巻回した導電線から成るループコイルと、を備え、
該ループコイルを前記磁心部材の軸方向両端近傍部分を除いた中心部分に集約して巻回するように構成したことを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
非接触情報記録媒体に対して情報をリード、又はライトするための電波を授受するアンテナであって、
磁心部材と、該磁心部材に所定回数巻回した導電線から成るループコイルと、を備え、前記磁心部材の軸方向長を前記ループコイルの軸方向長と略等しくなるように構成したことを特徴とするアンテナ。
【請求項3】
非接触情報記録媒体に対して情報をリード、又はライトするための電波を授受するアンテナであって、
磁心部材と、該磁心部材に所定回数巻回した導電線から成るループコイルと、を備え、
前記ループコイルは、前記磁心部材の軸方向中央部に集約して巻回した第1のループコイルと、該第1のループコイルの両端から突出した磁心部材に巻回した第2のループコイルとから成り、前記第1のループコイルの両端部と、各第2のループコイルの内側端部は電気的に接続されると共に、該接続部にタップを備えたことを特徴とするアンテナ。
【請求項4】
前記磁心部材は、フェライト、純鉄、珪素鋼、鉄・ニッケル合金又はダストコアであることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のアンテナ。
【請求項5】
非接触情報記録媒体を取り付けた物品を管理収納する物品管理収納庫であって、
前記物品を物品単位に収納する収納部と、各収納部に備えられた請求項1乃至4の何れか一項に記載のアンテナと、該アンテナの何れか1つを選択する切替手段と、前記非接触情報記録媒体との間で所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うリーダライタと、前記切替手段及びリーダライタを制御する制御手段と、を備え、
前記各アンテナは、該各アンテナから放射する磁力線が隣接するアンテナの前記磁心部材に伝播しない距離に夫々配置されることを特徴とする物品管理収納庫。
【請求項6】
前記アンテナを少なくとも2つ以上隣接して配置する場合、各磁心部材間に遮蔽部材を更に配置することを特徴とする請求項5に記載の物品管理収納庫。
【請求項7】
前記遮蔽部材は、銅、若しくはアルミニュウムにより構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の物品管理収納庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−235896(P2007−235896A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−58462(P2006−58462)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】