説明

アンテナ用樹脂組成物

【課題】
高誘電率を保持しつつ、かつ誘電正接が低いアンテナ用樹脂組成物の提供。
【解決手段】
特定の構造を有する液晶性樹脂と、セラミック粉とを含有することを特徴とするアンテナ部品用樹脂組成物、セラミック粉が、バリウム、ストロンチウム、ビスマス、ランタン、ネオジウム、サマリウム、アルミニウム、カルシウム又はマグネシウムから選ばれる金属の酸化物の少なくとも一種と、酸化チタンとからなるチタン酸塩である上記アンテナ部品用樹脂組成物及び当該樹脂組成物を溶融成形してなるアンテナ部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高誘電率かつ低誘電正接を示すアンテナ部品用樹脂組成物および当該樹脂組成物を用いたアンテナ部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、衛星通信機器、携帯電話、PHS等の移動通信、無線LANシステム、あるいは高速道路のETCシステムやGPSなどの車載用通信機器など無線による情報通信網の発達に伴い、アンテナの需要が急増している。特に情報の高密度化に伴い、高周波の電磁波を用いた情報通信分野の伸びが著しい。これらに使用されるアンテナは、小型軽量かつ安価であることが要求され、生産性の点で溶融成形可能な熱可塑性樹脂をベースとした材料が使用されている。
また、電磁波は周波数が高ければ高いほど誘電損失が大きくなるため、高周波の電磁波を用いる情報通信分野においては、アンテナ材料として誘電正接が低い樹脂材料が望まれている。また、アンテナサイズの小型化には誘電率の高い材料が望まれており、誘電損失低減の目的と合わせると、アンテナ材料としては高周波での誘電率が高く且つ誘電正接の小さい材料が望まれている。
具体的には、アンテナ材料として高誘電率の樹脂材料を用いた例として、ポリフェニレンスルフィド、特定構造の液晶性樹脂等の熱可塑性樹脂と、SrTiO3等のセラミック材料約20〜70容量%とを含有する組成物を印刷回路アンテナ等に用いることが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特表2000−510639号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら特許文献1記載の組成物は、高誘電率は得られるものの、誘電正接が高いという問題があり、アンテナ用材料としてはより誘電正接の低い樹脂材料が求められていた。本発明の目的は、高誘電率を保持しつつ、かつ誘電正接が低いアンテナ用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の液晶性樹脂と、セラミック粉とを含有することを特徴とする樹脂組成物が、高誘電率を保持しつつも誘電正接が低く、アンテナ部品用として好適であることを見出し、本発明に至った。
【0005】
即ち、本発明は
[1]全構成単位に対して、下記式(I)で表される構成単位を40〜75mol%、下記式(II)で表される構成単位を12.5〜30mol%、下記式(III)で表される構成単位を4.5〜30mol%、下記式(IV)で表される構成単位を0〜8mol%含み、
溶融時に光学異方性を示す液晶性樹脂と、セラミック粉とを含有することを特徴とするアンテナ部品用樹脂組成物、



(Ar1及びAr2は、それぞれ独立に1,4−フェニレンまたはパラ位でつながるフェニレン数2以上の二価の残基から選ばれる基を表す。)
[2]液晶性樹脂とセラミック粉の合計量に対して、各成分の割合が液晶性樹脂20〜80重量%、セラミックス粉20〜80重量%であることを特徴とする上記1項に記載のアンテナ部品用樹脂組成物、
[3]セラミック粉が、バリウム、ストロンチウム、ビスマス、ランタン、ネオジウム、サマリウム、アルミニウム、カルシウム又はマグネシウムから選ばれる金属の酸化物の少なくとも一種と、酸化チタンとからなるチタン酸塩であることを特徴とする上記1または2項記載のアンテナ部品用樹脂組成物、
[4]上記1〜3項のいずれかに記載されるアンテナ部品用樹脂組成物を溶融成形してなるアンテナ部品及び
[5]アンテナ部品が、屋外設置用、自動車搭載用または携帯機器用である上記4項記載のアンテナ部品、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高誘電率を保持しつつ、かつ誘電正接が低いアンテナ用樹脂組成物を提供し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いられる液晶性樹脂は、全構成単位に対して、下記式(I)で表される構成単位を40〜75mol%、下記式(II)で表される構成単位を12.5〜30mol%、下記式(III)で表される構成単位を4.5〜30mol%、下記式(IV)で表される構成単位を0〜8mol%含み、溶融時に光学異方性を示す液晶性樹脂である。
ここで、式(IV)で表される構成単位は任意成分であり、含まれなくても良い。


(Ar1及びAr2は、それぞれ独立に1,4−フェニレンまたはパラ位でつながるフェニレン数2以上の二価の残基から選ばれる基を表す。)
【0008】
全構成単位に対する各構成単位の好ましい量は、上記式(I)で表される構成単位が40〜65mol%、上記式(II)で表される構成単位が17.5〜30mol%、上記式(III)で表される構成単位が17.5〜30mol%、上記式(IV)で表される構成単位が0〜5mol%である。
【0009】
(I)の繰り返し構造単位が40mol%未満では、得られる液晶性樹脂は液晶性を発現しにくい傾向があり、75mol%を超えると、液晶性樹脂が溶融しにくくなる傾向がある。また、(II)の繰り返し構造単位が12.5mol%未満であると液晶性樹脂が溶融しにくくなる傾向があり、30mol%を超えると、得られる液晶性樹脂は液晶性を発現しなくなる傾向がある。また、(III)の繰り返し構造単位が30mol%を超えると、得られる液晶性樹脂は液晶性を発現しにくくなる傾向があり、12.5mol%未満であると液晶性樹脂が溶融しにくくなる傾向がある。さらに、(IV)の繰り返し構造単位が8mol%を超えると、得られる液晶性樹脂の耐熱性が低下しやすくなる傾向があるため好ましくない。
【0010】
式(I)で表される繰り返し構成単位を得る原料としては、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、またこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
式(II)で表される繰り返し構成単位を得る原料としては、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール、またこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
芳香族ジオールのエステル形成性誘導体としては、カルボン酸類とのエステルであって、エステル交換反応によりポリエステルを生成するような誘導体となっているものが挙げられる。
これらの中で、得られる芳香族液晶ポリエステルの耐熱性を高める観点からハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニルが、さらに好ましい。
これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
式(III)で表される繰り返し構成単位を得る原料としては、芳香族ジカルボン酸である2,6−ナフタレンジカルボン酸、またこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらは単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0013】
式(IV)で表される繰り返し構成単位を得る原料としては、テレフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、またこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
上記の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、酸塩化物、酸無水物などの反応活性が高くポリエステルを生成する反応を促進するような誘導体となっているもの、アルコール類やエチレングリコール等とのエステルであって、エステル交換反応によりポリエステルを生成するような誘導体となっているものが挙げられる。
これらの中では、液晶性樹脂の耐熱性を高める観点から、テレフタル酸が好ましい。
これらは単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明に用いられる液晶性樹脂を製造する方法について説明する。
本発明に用いられる芳香族液晶ポリエステルの製造方法は、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸および芳香族ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を過剰量の脂肪酸無水物によりアシル化してアシル化物を得、得られたアシル化物と、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸および芳香族ジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種とをエステル交換(重縮合)することにより溶融重合する方法が挙げられる。
【0015】
液晶性樹脂を製造する際には、原料に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸および芳香族ジオールのフェノール性水酸基を脂肪酸無水物でアシル化したエステル形成性誘導体が通常用いられる。
【0016】
この様な2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸および芳香族ジオールのフェノール性水酸基をアシル化する際に用いる脂肪酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸等が挙げられる。
中でも価格と取り扱い性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸が好ましく、無水酢酸がより好ましい。
これらは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0017】
2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸および芳香族ジオールのフェノール性水酸基をアシル化する際の、これらの合計モル数に対する該脂肪酸無水物の使用量は、通常1.0〜1.2倍当量である。
また、成形品からのアウトガスが少なく、成形品の耐ハンダブリスター性などを向上する観点からは、該使用量は、1.0〜1.05倍当量がより好ましく、1.03〜1.05倍当量がさらに好ましい。また、衝撃強度の観点からは、1.05〜1.17倍当量が好ましく、1.05〜1.15倍当量がさらに好ましい。
【0018】
該脂肪酸無水物の使用量が、該フェノール性水酸基に対して1.0倍当量未満の場合には、アシル化反応時の平衡が脂肪酸無水物側にずれてポリエステルへの重合時に未反応の芳香族ジオールまたは芳香族ジカルボン酸が昇華し、反応系が閉塞する傾向があり、また1.2倍当量を超える場合には、得られる液晶性樹脂の着色が著しくなる傾向がある。
【0019】
該アシル化反応は、130℃〜180℃で30分〜20時間反応させることが好ましく、140〜160℃で1〜5時間反応させることがより好ましい。
【0020】
次に上述のエステル交換(重縮合)反応について説明する。
エステル交換反応は、130〜330℃の範囲で0.1〜50℃/分の割合で昇温させながら反応させることが好ましく、150〜320℃の範囲で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら反応させることがより好ましい。反応を330℃以上で行うと、芳香族液晶ポリエステルの高溶融粘度、高融点化が促進され反応装置からのプレポリマーの全量排出が困難となるため好ましくない。
【0021】
上記のアシル化されたエステル形成性誘導体のアシル基と、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来するカルボキシル基およびジカルボン酸のカルボキシル基とをエステル交換反応させる際、平衡をずらすために、副生する脂肪酸と未反応の脂肪酸無水物は、蒸発させて系外へ留去することが好ましい。また、留出する脂肪酸の一部を還流させて反応器に戻すことによって、脂肪酸と同伴して蒸発または昇華する原料などを凝縮または逆昇華し、反応器に戻すこともできる。この場合、析出したカルボン酸を脂肪酸とともに反応器に戻すことが可能である。
【0022】
上記のようにして得られたアシル化物をエステル交換(重縮合)する場合、液晶性樹脂の原料である芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとのモル比は85:100〜100:85の範囲であることが好ましい。この範囲内であれば、得られる液晶性樹脂の重合度が上がり、該液晶性樹脂から得られる成形体の機械的強度が向上する。
【0023】
なお、アシル化反応、エステル交換は、触媒の存在下に行ってもよい。該触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属塩触媒、N,N−ジメチルアミノピリジン、1―メチルイミダゾールなどの有機化合物触媒などを挙げることができる。
これらの触媒の中で、N,N−ジメチルアミノピリジン、1−メチルイミダゾールなどの窒素原子を2個以上含む複素環状有機塩基化合物が好ましく使用される。
【0024】
窒素原子を2原子以上含む複素環状含有機塩基化合物は、原料仕込みに用いる芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸の合計100重量部に対して、0.005〜1重量部の割合であることが好ましく、色調、生産性の観点から0.05〜0.5重量部であることがより好ましい。0.005重量部未満では、衝撃強度等の改善効果が少なくなる傾向があり、1重量部を超える場合、反応の制御が困難となる傾向がある。
【0025】
窒素原子を2原子以上含む複素環状有機塩基化合物は、アシル化、エステル交換、またはアシル化及びエステル交換する際の一時期に存在しておればよく、その添加時期は特に限定されず、反応開始の直前であっても、反応中に添加してもよい。特に、300℃以上で窒素原子を2原子以上含む複素環状有機塩基化合物を添加してエステル交換反応を行うことにより、成形品とした場合、成形品の収縮率を低減することが可能となる。
該触媒は、通常、モノマー類の投入時に投入され、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、該触媒を除去しない場合にはそのままエステル交換を行うことができる。
【0026】
本発明に用いられる液晶性樹脂は、例えば上記の2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸および芳香族ジオールのフェノール性水酸基を脂肪酸無水物等でアシル化したエステル形成性誘導体ならびに、2,6−ナフタレンジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸および2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸とを、エステル交換する工程により得ることができる。
【0027】
本発明において、溶融重縮合工程が、バッチ式繰返し重合法により行われることが生産性の向上という観点から好ましい。
【0028】
溶融重縮合反応により得られたプレポリマーは、高重合度の液晶性樹脂を得る目的で、固相重合に供される。固相重合させるには、得られたプレポリマーを粉末とし、加熱すればよい。加熱によって、微粉状態のまま液晶性樹脂の重合が進行して、その重合度が高くなる。
【0029】
溶融重縮合により得られたプレポリマーを粉末とするには、例えばプレポリマーを冷却固化した後に粉砕すればよい。粉末の粒子径は、平均で0.05mm以上3mm程度以下が好ましく、特に0.05mm以上1.5mm程度以下が芳香族液晶ポリエステルの高重合度化が促進されることからより好ましく、0.1mm以上1.0mm程度以下であれば粉末の粒子間のシンタリングを生じることなく液晶性樹脂の高重合度化が促進されるため更に好ましい。
【0030】
固相重合における加熱は、通常昇温しながら行われ、例えば室温からプレポリマーの流動開始温度より20℃以上低い温度まで昇温させる。このときの昇温時間は、特に限定されるものではないが、反応時間の短縮といった観点から1時間以内で行うことが好ましい。
【0031】
液晶性樹脂の製造においては、固相重合における加熱は、プレポリマーの流動開始温度より20℃以上低い温度から280℃以上の温度まで昇温することが好ましい。昇温は、0.3℃/分以下の昇温速度で行うことが好ましい。当該昇温速度は、好ましくは0.1〜0.15℃/分である。該昇温速度が0.3℃/分以下であれば、粉末の粒子間のシンタリングが生じにくいため高重合度の液晶性樹脂の製造が容易となるので好ましい。
【0032】
芳香族液晶ポリエステルの重合度を高めるため、固相重合における加熱は、得られる液晶性樹脂の芳香族ジオール又は芳香族ジカルボン酸成分のモノマー種によって異なるが、280℃以上の温度で、好ましくは280℃〜400℃の範囲で30分以上反応させることが好ましい。
とりわけ、液晶性樹脂の熱安定性の点から、反応温度300〜350℃で30分〜30時間反応させることが好ましく、反応温度300〜340℃で30分〜20時間反応させることがさらに好ましい。
【0033】
液晶性樹脂の流動開始温度は300〜400℃の範囲であることが耐熱性の向上という観点から好ましく、特に320℃以上380℃以下であれば耐熱性が高くかつ成形時のポリマーの分解劣化が抑えられるため好ましく、330℃以上360℃以下であれば更に好ましい。
【0034】
ここで流動開始温度とは、内径1mm、長さ10mmのダイスを取付けた毛細管型レオメーターを用い、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下において昇温速度4℃/分で芳香族ポリエステルをノズルから押出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48000ポイズ)を示す温度である。
【0035】
本発明に用いられるセラミック粉としては、バリウム、ストロンチウム、ビスマス、ランタン、ネオジウム、サマリウム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム等から選ばれる金属の酸化物の少なくとも一種と、酸化チタンとからなるチタン酸塩が挙げられる。
具体的にはBaTiO3、SrTiO3、CaTiO3、MgTiO3、BaSrTi26、BaNd2Ti412、BaNd2Ti514、BaBi2Nd2TiO9等が挙げられ、中でもSrTiO3 BaSrTi26、BaNd2Ti412、BaNd2Ti514が好ましい。
これらの化合物は一種以上を混合して使用しても良い。
これらはチタネート系、アルミ系およびシラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
【0036】
本発明の樹脂組成物には必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で,補強剤等の添加剤が含有されていても良い。
ここで添加剤としては、例えばガラス繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの繊維状補強材;ホウ酸アルミニウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカーなどの針状の補強材;ガラスビーズ、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ドロマイトなどの無機充填材;フッ素樹脂、金属石鹸類などの離型改良剤;染料、顔料などの着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤などが挙げられる。
これらの添加剤は一種以上が含有されていても良い。
【0037】
また、たとえば高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等の外部滑剤効果を有するものを1種以上含有させることも可能である。 更に、少量の熱可塑性樹脂、たとえば、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル及びその変性物、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド等や、少量の熱硬化性樹脂、たとえば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の、1種または2種以上を含有させることもできる。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、液晶性樹脂、セラミック粉、必要に応じて上記の添加剤等のその他の成分を混合することにより得られる。
【0039】
本発明のアンテナ部品用樹脂組成物を得る方法としては、原料成分の配合手段は特に限定されず、例えば液晶性樹脂とセラミック粉、必要に応じてガラス繊維、タルク、ホウ酸アルミニウムウィスカーなどの補強材や無機充填材、離型改良剤、熱安定剤などの各成分を各々別々に溶融混合機に供給するか、またはこれらの原料成分を乳鉢、ヘンシェルミキサー、ボールミル、リボンブレンダーなどを利用して予備混合してから溶融混合機に供給する方法等が挙げられる。
【0040】
本発明の樹脂組成物における液晶性樹脂とセラミックス粉との比率は、用いるセラミックス粉の特性を発揮し、かつ溶融加工性とのバランスの点から、配合される液晶性樹脂とセラミックス粉の合計量100重量%に対し、通常、液晶性樹脂20〜80重量%、セラミックス粉20〜80重量%であり、好ましくは液晶性樹脂20〜50重量%、セラミックス粉50〜80重量%、更に好ましくは液晶性樹脂30〜50重量%、セラミックス粉50〜70重量%である。
【0041】
本発明のアンテナ部品用樹脂組成物は、高誘電率かつ低誘電正接であるという特徴を活かして溶融成形、中でも射出成形や押出成形などの成形法、特に好ましくは射出成形法により、アンテナ部品に成形される。
本発明のアンテナ部品は屋外設置用、自動車搭載用または携帯機器用のアンテナ部品などに好適に用いられる。
【実施例】
【0042】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行なったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。
実施例1
(a)液晶性樹脂
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸987.95g(5.25モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル486.47g(2.612モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸513.45g(2.375モル)、無水酢酸1174.04(11.5モル)および触媒として1−メチルイミダゾール0.194gを添加し、室温で15分間攪拌した後、攪拌しながら昇温した。内温が145℃となったところで、同温度を保持したまま1時間攪拌し、触媒である1−メチルイミダゾール5.83gをさらに添加した。
次に、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から310℃まで3時間30分かけて昇温した。同温度で2時間保温して液晶性樹脂を得た。得られた芳香族ポリエステルを室温に冷却し、粉砕機で粉砕して、液晶性樹脂の粉末(粒子径は約0.1mm〜約1mm)を得た。この粉末(液晶性樹脂)についてフローテスターを用いて、流動開始温度を測定したところ、273℃であった。
得られた粉末を25℃から250℃まで1時間かけて昇温したのち、同温度から325℃まで10時間かけて昇温し、次いで同温度で12時間保温して固相重合させた。その後、固相重合した後の粉末を冷却し、冷却後の粉末(液晶性樹脂)をフローテスターを用いて、流動開始温度を測定したところ、349℃であった。
(b)セラミックス粉
セラミックス粉として共立マテリアル製チタン酸ストロンチウムSTを用いた。
実施例1に記載の液晶性樹脂とセラミックス粉の比率が液晶性樹脂40重量%、セラミックス粉60重量%になるように配合し、2軸押出機(池貝鉄工(株)「PCM−30」)によって340℃で造粒しペレット状の樹脂組成物を得た。得られたペレットを日精樹脂工業(株)製射出成形機「PS40E5ASE」を用いて、シリンダー温度355℃、金型温度130℃で射出成形し、64mm×64mm×厚さ1mmの樹脂基板を得た。
この樹脂基板の誘電特性について、HP製インピーダンスアナライザーにより評価したところ、その誘電率(1GHz)は12.0であり、誘電正接(1GHz)は0.003であった。
【0043】
実施例2
(a)液晶性樹脂:実施例1と同じものを使用。
(b)セラミックス粉
セラミックス粉として富士チタン工業製NPO−Sを用いた。
上記の液晶性樹脂とセラミックス粉が液晶性樹脂40重量%、セラミックス粉60重量%になるように配合し、2軸押出機(池貝鉄工(株)「PCM−30」)によって340℃で造粒しペレット状の樹脂組成物を得た。得られたペレットを日精樹脂工業(株)製射出成形機「PS40E5ASE」を用いて、シリンダー温度355℃、金型温度130℃で射出成形し、64mm×64mm×厚さ1mmの樹脂基板を得た。
この樹脂基板の誘電特性について、HP製インピーダンスアナライザーにより評価したところ、その誘電率(1GHz)は8.9であり、誘電正接(1GHz)は0.001であった。
【0044】
比較例1
(a)液晶性樹脂
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸を911g(6.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニルを409g(2.2モル)、テレフタル酸を274g(1.65モル)、イソフタル酸を91g(0.55モル)及び無水酢酸を1235g(12.1モル)、それぞれ仕込んだ。そして反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。
【0045】
次に、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。内容物から得られた固形分を室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から278℃まで5時間かけて昇温し、278℃で3時間保持し、固相で重合反応を進め、液晶性樹脂を得た。
(b)セラミックス粉
セラミックス粉として共立マテリアル製チタン酸ストロンチウムSTを用いた。
上記の液晶性樹脂とセラミックス粉が液晶性樹脂40重量%、セラミックス粉60重量%になるように配合し、2軸押出機(池貝鉄工(株)「PCM−30」)によって340℃で造粒しペレット状の樹脂組成物を得た。得られたペレットを日精樹脂工業(株)製射出成形機「PS40E5ASE」を用いて、シリンダー温度355℃、金型温度130℃で射出成形し、64mm×64mm×厚さ1mmの樹脂基板を得た。
この樹脂基板の誘電特性について、HP製インピーダンスアナライザーにより評価したところ、その誘電率(1GHz)は11.5であり、誘電正接(1GHz)は0.008であった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
アンテナ部品は屋外設置用、自動車搭載用または携帯機器用のアンテナ部品などに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全構成単位に対して、下記式(I)で表される構成単位を40〜75mol%、下記式(II)で表される構成単位を12.5〜30mol%、下記式(III)で表される構成単位を4.5〜30mol%、下記式(IV)で表される構成単位を0〜8mol%含み、
溶融時に光学異方性を示す液晶性樹脂と、セラミック粉とを含有することを特徴とするアンテナ部品用樹脂組成物。


(Ar1及びAr2は、それぞれ独立に1,4−フェニレンまたはパラ位でつながるフェニレン数2以上の二価の残基から選ばれる基を表す。)
【請求項2】
液晶性樹脂とセラミック粉の合計量に対して、各成分の割合が液晶性樹脂20〜80重量%、セラミックス粉20〜80重量%であることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ部品用樹脂組成物。
【請求項3】
セラミック粉が、バリウム、ストロンチウム、ビスマス、ランタン、ネオジウム、サマリウム、アルミニウム、カルシウム又はマグネシウムから選ばれる金属の酸化物の少なくとも一種と、酸化チタンとからなるチタン酸塩であることを特徴とする請求項1または2記載のアンテナ部品用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載されるアンテナ部品用樹脂組成物を溶融成形してなるアンテナ部品。
【請求項5】
アンテナ部品が、屋外設置用、自動車搭載用または携帯機器用である請求項4記載のアンテナ部品。

【公開番号】特開2006−233118(P2006−233118A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52874(P2005−52874)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】