アンテナ装置およびそれを搭載した電子機器
【課題】 実装上の不都合を招かずに複数の送受信系で並行して1つのアンテナを共用できるようにする。
【解決手段】 第1の周波数(Fa)で動作する第1の無線部101の前段に第1の整合回路105を配置するとともに、第2の周波数(Fb)で動作する第2の無線部102の前段に第2の整合回路106を配置し、FaとFbの複共振特性を有するアンテナ100と第1及び第2の整合回路の間に第1の分波回路103と第2の分波回路104を配置する。第1の分波回路はアンテナと第1の整合回路の間をFaに応答してショート、Fbに応答してオープンにし、第2の分波回路はアンテナと第2の整合回路の間をFaに応答してオープン、Fbに応答してショートにする。
【解決手段】 第1の周波数(Fa)で動作する第1の無線部101の前段に第1の整合回路105を配置するとともに、第2の周波数(Fb)で動作する第2の無線部102の前段に第2の整合回路106を配置し、FaとFbの複共振特性を有するアンテナ100と第1及び第2の整合回路の間に第1の分波回路103と第2の分波回路104を配置する。第1の分波回路はアンテナと第1の整合回路の間をFaに応答してショート、Fbに応答してオープンにし、第2の分波回路はアンテナと第2の整合回路の間をFaに応答してオープン、Fbに応答してショートにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置およびそれを搭載した電子機器に関し、詳細には、二つの無線部で共用できるアンテナ装置およびそれを搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機には、本来の電話用無線部だけでなく、他の無線部、たとえば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)用の無線部や、BluetoothあるいはWiFi等の近距離通信用の無線部などが実装されてきており、これに伴い、小さな筐体に複数のアンテナ装置(以下、単にアンテナという)が組み込まれるようになってきた。
【0003】
複数のアンテナを一つの筐体、とりわけ携帯電話機のような小さな筐体に組み込む場合、その組み込み位置の決定に際しては、第一に、筐体を持つ手の影響を受けにくいこと、第二に、複数のアンテナの相互間距離ができるだけ離れていること、という少なくとも二つの条件を満たすことを考えなければならない。第一の条件は、人体は所定容量(100pF程度)の接地体とみなされるからであり、そのような接地体がアンテナの近くにあるとアンテナの特性(特に共振周波数)に影響を与えるからである。また、第二の条件は、アンテナ間の距離が近い場合は相互の電磁的干渉により、同様にして、アンテナの特性に影響を与えるからである。
【0004】
図11は、折り畳み式携帯電話機のアンテナ組み込み位置の一例を示す図である。この図において、筐体1は、手持ちされる本体部2と、この本体部2の上短辺端部にヒンジ機構3を介して開閉可能に連結された蓋部4とから構成されている。このような筐体1におけるアンテナ組み込み位置は、本体部2の上短辺端部内(以下、第1の位置5)と、蓋部4の上短辺端部内(以下、第2の位置6)の二カ所が考えられる。これらの組み込み位置(第1の位置5及び第2の位置6)は、いずれも手の平の近くになく、しかも、互いの位置が離れているからであり、上記二つの条件を満たしているからである。
【0005】
しかし、図11に示す組み込み位置は、アンテナの数が三つの場合に適用できない。第1の位置5または第2の位置6の一方に二つのアンテナを組み込む必要があり、これら二つのアンテナについては上記の第二の条件(相互干渉)を満足しないからである。
【0006】
第二の条件を満たすには、三つのアンテナのうちの二つ、つまり、第1の位置5または第2の位置6の一方に組み込まれる二つのアンテナを共用アンテナとすればよい。二つのアンテナを共用アンテナとすれば、実質的なアンテナの数を三つから二つに減らすことができ、上記二つの条件を満たしつつ、各々のアンテナを、たとえば、図11の第1の位置5と第2の位置6に支障なく組み込むことができる。
【0007】
共用アンテナについての公知技術を検討する。
特許文献1には、1つのアンテナを異なる周波数帯域の複数の送受信系で共用することができる「高周波モジュール及びそれを搭載した無線通信装置」に関する技術が開示されている。詳細には、1つのアンテナと複数の送受信系(同文献ではDCS/PCS系と、GSM850/GSM900系の二系)との間に分波回路(同文献ではDIP10)を入れる構成が開示されている。この分波回路は、同文献の説明によれば、DCS/PCS系については、ローパスフィルタとハイパスフィルタとの組み合わせからなり、GSM850/GSM900系については、ローパスフィルタとバンドパスフィルタとの組み合わせからなるとされており、さらに、ローパスフィルタは、分布定数線路を主体にして構成するとされている。これによれば、分波回路によってDCS/PCS系の送受信信号とGSM850/GSM900系の送受信信号とを切り分けることができ、異なる周波数帯域の複数の送受信系で1つのアンテナを共用することができる。
【0008】
特許文献2には、1つのアンテナと複数の送受信系の間に、切り替え手段として機能する制御回路部を入れた構成の「アンテナ装置及びそれを用いた携帯無線機」に関する技術が開示されている。これによれば、制御回路部を切り換えることにより、複数の送受信系で1つのアンテナを共用することができる。
【0009】
特許文献3には、FDD方式(周波数分割複信方式:送信と受信に別々の周波数を割り当てて全二重通信を行う電気通信技術)を採用する二つの送受信系の各々に、自系の送信信号と受信信号を分離するとともに、他系の送受信号を排除する分波回路を設け、且つ、それらの分波回路と各系用の二つのアンテナの間にアンテナ切り替え用のスイッチ回路を設けた構成の「高周波部品及びマルチバンド通信装置」に関する技術が開示されている。これによれば、スイッチ回路で一の系用のアンテナを選択した状態で、一の送受信系によるFDD方式の全二重通信を行うことができ、または、スイッチ回路で二の系用のアンテナを選択した状態で、二の送受信系によるFDD方式の全二重通信を行うことができるから、各系用のアンテナを、その系における「送信アンテナ」と「受信アンテナ」として共用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−117497号公報
【特許文献2】特開2006−174219号公報
【特許文献3】特開2009−124746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記の特許文献1〜3に記載の技術は、以下の問題点がある。
まず、特許文献1の技術は、1つのアンテナを複数の送受信系(DCS/PCS系とGSM850/GSM900系)で共用できるものの、ローパスフィルタを含む回路要素(分波回路)が必要であり、このローパスフィルタは、比較的(LCなどの部品に比べて)実装面積が大きい分布定数線路を主体にして構成されているから、とりわけ携帯電話機のような小型の電子機器にあっては、実装上の不都合を招く恐れがある。
また、特許文献2の技術は、単に1つのアンテナを切り換えて共用しているものに過ぎないから、一の送受信系を使用中は他の送受信系を使用できないという欠点があり、たとえば、一の送受信系をBluetooth、他の送受信系をGPSと仮定すると、Bluetoothの使用時にはGPSによる現在位置の情報更新を行うことができないという不都合がある。かかる不都合は、今日の携帯電子機器におけるマルチタスク(一の処理を実行中に並行して他の処理を実行すること)環境を考慮すると看過できない。たとえば、Bluetoothによる通信中にバックグラウンドでナビゲーションソフトなどを動作させることが十二分にあり得るからであり、このような場合でも現在位置の更新は継続して行う必要があるからである。
この点は、特許文献3の技術においても同様である。特許文献3の技術は各系ごとに「送信アンテナ」と「受信アンテナ」とを共用しているに過ぎないからであり、たとえば、Bluetoothの使用時にはGPSを使用できないという点で、特許文献2の技術とまったく同じ欠点を有しているからである。
また、スイッチによってアンテナを切り換えるもの(特許文献2、3)にあっては、切り換えのタイムラグを否めず、また、切り換えのための電力消費も無視できない。
このように、特許文献1〜3の技術にあっては、特に実装上の不都合や複数の送受信系で並行して1つのアンテナを共用できないという不都合がある。
【0012】
そこで、本発明は、実装上の不都合を招かず、しかも、複数の送受信系で並行して1つのアンテナを共用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のアンテナ装置は、少なくとも第1の周波数(Fa)と第2の周波数(Fb)の二つの周波数に共振する複共振特性を有するアンテナと、前記第1の周波数(Fa)で動作する第1の無線部と、前記第2の周波数(Fb)で動作する第2の無線部と、前記アンテナに接続された第1の分波回路及び第2の分波回路と、前記第1の分波回路と前記第1の無線部との間に介在して前記アンテナと前記第1の無線部とのインピーダンス整合をとる第1の整合回路と、前記第2の分波回路と前記第2の無線部との間に介在して前記アンテナと前記第2の無線部とのインピーダンス整合をとる第2の整合回路とを備え、前記第1の分波回路は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナと前記第1の整合回路との間をショート状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナと前記第1の整合回路との間をオープン状態にし、前記第2の分波回路は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナと前記第2の整合回路との間をオープン状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナと前記第2の整合回路との間をショート状態にすることを特徴とする。
本発明の電子機器は、前記アンテナ装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、実装上の不都合を招かず、しかも、複数の送受信系で並行して1つのアンテナを共用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】携帯電話機20の外観図である。
【図2】携帯電話機20の構成図である。
【図3】無線通信部31の構成図である。
【図4】ショートとオープンのインピーダンス特性図である。
【図5】第1の分波回路41及び第2の分波回路43の回路例を示す図である。
【図6】第1の分波回路41及び第2の分波回路43の他の回路例を示す図である。
【図7】共用アンテナ40のインピーダンス特性図である。
【図8】携帯電話機20をGPS端末として動作させたときの概念図である。
【図9】携帯電話機20をBluetooth端末として動作させたときの概念図である。
【図10】付記1の構成図である。
【図11】折り畳み式携帯電話機のアンテナ組み込み位置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を、携帯電話機への適用を例にして図面を参照しながら説明する。
図1は、携帯電話機20の外観図である。この図において、携帯電話機20は、手持ちに適した厚みと大きさを有する縦長箱型形状の本体部21と、その本体部21の上短辺端にヒンジ機構22を介して連結された、本体部21と略同型状かつ薄厚の蓋部23とを備えた、いわゆる「折り畳み式」の筐体24を有している。なお、この形状(折り畳み式)は説明上の一例に過ぎない。非折り畳み式やスライド式などであってもよい。また、携帯電話機をスマートフォンと読み替えてもよい。
【0017】
本体部21の一方面(蓋部23との対向面)には、多数の操作ボタンからなる操作ボタン群25や送話孔26が設けられ、また、蓋部23の一方面(本体部21との対向面)には、表示部27や、この表示部27の周囲を覆う額縁部28及び受話孔29が設けられている。
【0018】
表示部27は、縦長形状の表示面を有する二次元表示デバイス、典型的には、高精細なカラー液晶ディスプレイパネルであり、表示部27の表示面には透明なタッチパネル30が貼り付けられている。
【0019】
図2は、携帯電話機20の構成図である。この図において、携帯電話機20は、無線通信部31、送受話部32、操作部33、制御部34、表示部27、タッチパネル30、並びに、この携帯電話機20の動作に必要な電源を供給するためのバッテリ(一次電池または充電可能な二次電池)を含む電源部35などを備えている。なお、これら以外にも、たとえば、カメラ等の撮像部や、カメラで撮影された画像を保存するための記憶部、さらには、パーソナルコンピュータ等の外部機器との間でデータのやりとりをするための入出力部などを備えていてもよい。
【0020】
無線通信部31は、異なる周波数帯で動作する複数の無線通信部(以下、単に無線部という)を含む。ここでは、第A無線部36、第B無線部37及び第C無線部38の三つを含むものとし、第A無線部36を携帯電話用、第B無線部37をGPS用、第C無線部38をBluetooth用とする。但し、これらの用途に限定されない。実施形態の電子機器は携帯電話機20であるから、少なくとも携帯電話用の第A無線部36は必須であるが、他の無線部(第B無線部37及び第C無線部38)については、上記用途の限りではなく、たとえば、WiFiやワンセグ放送受信などの他の用途の無線部であってもよい。
【0021】
携帯電話用の第A無線部36は、制御部34からの制御により、アンテナ36aを介して最寄りの基地局(図示略)との間で所定周波数帯(700MHz帯〜2GHzまでの間の所定周波数帯)の無線電波によるアナログもしくはデジタルデータの送受信を行い、このデータには、電話の着呼や発呼の情報および音声通話の情報が含まれるほか、必要であれば、インターネット上のコンテンツを利用(ダウンロード)する際などのコンテンツ情報や電子メールの送受信情報などが含まれる。
【0022】
GPS用の第B無線部37及びBluetooth用の第C無線部38は、アンテナ共用部39を介して一つのアンテナ40を共用する。以下、このアンテナ40を「共用アンテナ」と呼ぶことにする。
【0023】
第B無線部37は、制御部34からの制御により、共用アンテナ40を介してGPS衛星(図示略)からの所定周波数帯(1.5GHz帯)の電波(GPS信号)を受信し、その受信信号を制御部34に出力する。以下、GPS衛星からの信号周波数を便宜的に第1の周波数Faということにする。
【0024】
なお、GPS(全地球測位システム)とは、地球周回軌道上の最低3個の衛星からの電波を受信することにより、地球上における位置座標(緯度と経度及び衛星の捕捉数によっては高度)を測位できる位置測位システムのことをいう。一般的にこのシステムは、GPSアンテナと信号受信部と測位計算部の三つからなる。図2の構成では、共用アンテナ40がGPSアンテナに相当し、第B無線部37が信号受信部に相当する。そして、図示の例では、測位計算部が制御部34の機能に含まれているが、これに限定されない。測位計算部を第B無線部37の構成に含めてもよい。つまり、第B無線部37で衛星からの電波受信と位置座標の測位計算とを行うようにし、その測位結果を制御部34に出力する構成であってもよい。
【0025】
第C無線部38は、制御部34からの制御により、共用アンテナ40を介して近距離(一般的に数十メートル以内)に存在するあらかじめペアリングされたBluetooth機器(図示略)との間で所定周波数帯(2.4GHz帯)の無線電波による近距離ワイヤレス通信を行う。以下、Bluetoothの信号周波数を便宜的に第2の周波数Fbということにする。
【0026】
ここで、アンテナ共用部39は、一つのアンテナ(共用アンテナ40)を二つの無線部(第B無線部37と第C無線部38)で「共用」するための機能を持つが、特に重要な機能はアイソレーションの機能である。すなわち、第B無線部37が共用アンテナ40を利用している際には、第C無線部38が信号的に分離(アイソレーション)された状態となり、また、第C無線部38が共用アンテナ40を利用している際には、第B無線部37が信号的に分離(アイソレーション)された状態となることが特に重要な機能である。
【0027】
このようにすれば、第B無線部37が共用アンテナ40を利用している間は、第C無線部38が回路的に分離(アイソレーション)されるので、動作中の第B無線部37は非動作中の第C無線部38の影響を受けない。同様に、第C無線部38が共用アンテナ40を利用している間は、第B無線部37が回路的に分離(アイソレーション)されるので、動作中の第C無線部38は非動作中の第B無線部37の影響を受けない。分離(アイソレーション)についての詳しい説明は後述する。
【0028】
送受話部32は、本体部21の送話孔26の下に配置されたマイク32aや蓋部23の受話孔29の下に配置されたスピーカ32bを含み、この送受話部32は、制御部34からの制御により、マイク32aからの音声信号をデジタルデータに変換して制御部34に出力したり、制御部34から出力されたデジタルの音声信号をアナログ信号に変換してスピーカ32bから出力したりする。
【0029】
操作部33は、制御部34に対して所要のユーザ入力を行うための各種操作ボタン(図1の操作ボタン群25)を備え、ユーザによる任意の操作ボタンの押し下げに対応した操作ボタン信号を発生して制御部34に出力する。
【0030】
制御部34は、マイクロコンピュータまたは単にコンピュータ(以下、CPU)34a、書き込み型の不揮発性半導体メモリ(以下、PROM)34bおよび高速半導体メモリ(以下、RAM)34cならびに不図示の周辺回路を含むプログラム制御方式の制御要素であり、この制御部34は、携帯電話機20の全体動作を統括制御するために、あらかじめPROM34bに格納されている制御プログラムをRAM34cにロードしてCPU36aで実行する。なお、PROM34bの代わりに読み出し専用の半導体メモリ(ROM)や消去可能型の半導体メモリ(EPROM)などを用いてもよい。
【0031】
次に、無線通信部31の具体的な構成を説明する。
図3は、無線通信部31の構成図である。先に説明したとおり、無線通信部31は、携帯電話用の第A無線部36とアンテナ36aを備えるとともに、GPS用の第B無線部37、Bluetooth用の第C無線部38、アンテナ共用部39及びそれらの共用アンテナ40を備えるが、この図では、携帯電話用以外の無線部構成(GPS用の第B無線部37、Bluetooth用の第C無線部38、アンテナ共用部39及びそれらの共用アンテナ40)のみを抜粋して示している。
【0032】
この図において、アンテナ共用部39は、第1の分波回路41と第1の整合回路42及び第2の分波回路43と第2の整合回路44を含む。第1の分波回路41と第1の整合回路42はGPS用であり、第1の分波回路41の一端に共用アンテナ40を接続し、第1の分波回路41の他端に第1の整合回路42を介してGPS用の第B無線部37を接続している。第2の分波回路43と第2の整合回路44はBluetooth用であり、第2の分波回路43の一端に共用アンテナ40を接続し、第2の分波回路43の他端に第2の整合回路44を介してBluetooth用の第C無線部38を接続している。
【0033】
以下、「第1の」という用語にGPS用という意味を持たせるものとし、その意味に合わせて第B無線部37を「第1の無線部37」と呼称することとする。同様に、「第2の」という用語にBluetooth用という意味を持たせるものとし、その意味に合わせて第C無線部38を「第2の無線部38」と呼称することとする。つまり、第B無線部37=第1の無線部37、第C無線部38=第2の無線部38である。
【0034】
なお、ここでは、二つの整合回路(第1の整合回路42と第2の整合回路44)をアンテナ共用部39の構成に含めているが、これに限定されない。各々を第1の無線部37や第2の無線部38の構成に含めてもよい。要は、第1の分波回路41と第1の無線部37の間に第1の整合回路42が入っていればよく、同様に、第2の分波回路43と第2の無線部38の間に第2の整合回路44が入っていればよい。
【0035】
第1の整合回路42は、第1の無線部37とアンテナインピーダンス(共用アンテナ40のインピーダンス)との整合、すなわち、第1の無線部37のインピーダンスと共用アンテナ40のインピーダンスとのマッチングをとる(整合させる/揃える/等価にするなどともいう)ための回路であり、同様に、第2の整合回路44は、第2の無線部38とアンテナインピーダンス(共用アンテナ40のインピーダンス)との整合をとるための回路である。ちなみに、マッチングがとれていない状態(不整合状態)では、無駄な電力が生じて伝送効率を損なうばかりか、とりわけ高周波帯域では伝送路の反射波が増え、この反射波と進行波との重畳波(定在波)による様々な悪影響を生じるから、高周波技術の分野にとってインピーダンスのマッチングは不可欠な技術である。
【0036】
共用アンテナ40は、複共振型のアンテナ(複数の共振周波数を持つアンテナ)であり、この実施形態においては、少なくともGPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)と、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)の二つの周波数帯に対応する複共振特性を持っている。なお、二つの周波数帯(第1の周波数Fa、第2の周波数Fb)の一方を共用アンテナ40の基本共振周波数に対応させ、他方を基本共振周波数の任意の高次共振周波数に対応させてもよく、あるいは、第1の周波数Faと第2の周波数Fbの双方を任意の高次共振周波数に対応させてもよい。
【0037】
先に説明したとおり、共用アンテナ40と第1の無線部37及び第2の無線部38との間に入れられたアンテナ共用部39は、二つの分波回路(第1の分波回路41と第2の分波回路43)を含む。
【0038】
これら二つの分波回路(第1の分波回路41と第2の分波回路43)の究極の目的は、共用アンテナ40のアイソレーション(分離)にある。すなわち、第1の無線部37を使用中(GPS動作中)は、共用アンテナ40をあたかもGPS専用として使うことができる一方、第2の無線部37を使用中(Bluetooth動作中)は、共用アンテナ40をあたかもBluetooth専用として使うことができるようにすることにあり、しかも、そのような選択的使用を行う際に、機械的または電気的なスイッチ手段を必要としないようにすることにある。さらに、二つの分波回路(第1の分波回路41と第2の分波回路43)の実装面積を小さくして、とりわけ携帯電話機のような小型の電子機器における実装上の不都合を招かないようにすることにある。
【0039】
かかる目的を達成するために、第1の分波回路41は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40と第1の整合回路42との間の信号的な接続をオン(ショート)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40と第1の整合回路42との間の信号的な接続をオフ(オープン)する。また、第2の分波回路43は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40と第2の整合回路44との間の信号的な接続をオフ(オープン)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40と第2の整合回路44との間の信号的な接続をオン(ショート)にする。
【0040】
ここで、上記の「ショート」や「オープン」は、第1の分波回路41及び第2の分波回路43の各々の入出力間のインピーダンス抵抗の大きさを意味する。つまり、ショートは0Ω(短絡)、オープンは∞Ω(開放)である。なお、これらの値(0Ω、∞Ω)は理想値である。実用上は0Ωにきわめて近い値(略0Ω)及び∞Ωにきわめて近い値(略∞Ω)であってもよい。
【0041】
図4は、ショートとオープンのインピーダンス特性図である。この図は、いわゆるスミスチャート(Smith Chart)と呼ばれる特性図のうちの「インピーダンスチャート」であり、(a)は第1の分波回路41の特性図45を示し、(b)は第2の分波回路43の特性図46を示している。
【0042】
(a)及び(b)において、円の中心を横切る水平軸はインピーダンスの純抵抗分(R)を表し、水平軸の左端がR=0Ω(ショート/短絡)、右端がR=∞Ω(オープン/開放)である。なお、インダクタンス成分(L)が含まれる場合はチャート上の軌跡が水平軸から円弧に沿って上に移動する。Lが最大になると∞Ω(オープン/開放)になる。また、キャパシタンス成分(C)が含まれる場合はチャート上の軌跡が円弧に沿って水平軸から下に移動する。Cが最小になると∞Ω(オープン/開放)になる。
【0043】
これらの特性図45、46から理解されるように、第1の分波回路41は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)に対して0Ω(ショート)、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)に対して∞Ω(オープン)になり、一方、第2の分波回路43は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)に対して∞Ω(オープン)、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)に対して0Ω(ショート)になるという特性を持つ。なお、これらの特性図45、46において、図中の菱形記号(◇)は第1の周波数Faを表し、また、丸記号(○)は第2の周波数Fbを表している。
【0044】
図5は、第1の分波回路41及び第2の分波回路43の回路例を示す図であり、(a)は第1の分波回路41の一例回路図、(b)は第2の分波回路43の一例回路図である。(a)に示すように、第1の分波回路41は、一対の入出力端子47、48の間に2個のコンデンサC11、C12を直列接続するとともに、一方のコンデンサC11にコイルL11を並列接続したLC型の共振回路の構成を有している。L11とC11の並列共振回路の共振周波数を第2の周波数Fbとし、この並列共振回路とC12の直列共振回路の共振周波数を第1の周波数Faとする。
また、(b)に示すように、第2の分波回路43は、一対の入出力端子49、50の間に2個のコイルL21、L22を直列接続するとともに、一方のコイルL21にコンデンサC21を並列接続したLC型の共振回路の構成を有している。L21とC21の並列共振回路の共振周波数を第1の周波数Faとし、この並列共振回路とL22の直列共振回路の共振周波数を第2の周波数Fbとする。
【0045】
このような構成において、たとえば、C11=3pF、C12=2pF、L11=2.2nH、L21=5.6nH、L22=3.3nH、C21=2pFとすることにより、前出の図4に示した特性、つまり、「第1の分波回路41は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40と第1の整合回路42との間の信号的な接続をオン(ショート)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40と第1の整合回路42との間の信号的な接続をオフ(オープン)し、また、第2の分波回路43は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40と第2の整合回路44との間の信号的な接続をオフ(オープン)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40と第2の整合回路44との間の信号的な接続をオン(ショート)にする。」という所望の特性を得ることができる。
【0046】
また、第1の分波回路41及び第2の分波回路43を次のように構成してもよい。
図6は、第1の分波回路41及び第2の分波回路43の他の回路例を示す図であり、(a)は第1の分波回路41の他の一例回路図、(b)は第2の分波回路43の他の一例回路図である。(a)に示すように、第1の分波回路41は、一対の入出力端子47、48の間にコンデンサC31とコイルL31を直列接続するとともに、さらに、入出力端子47、48の間にコンデンサC32を接続したLC型の共振回路の構成を有している。C31とL32の直列共振回路の共振周波数を第1の周波数Faとし、この直列共振回路とC32の並列共振回路の共振周波数を第2の周波数Fbとする。
また、(b)に示すように、第2の分波回路43は、一対の入出力端子49、50の間にコンデンサC41とコイルL41を直列接続し、さらに、一対の入出力端子49、50の間にコイルL42を接続したLC型の共振回路の構成を有している。C41とL41の直列共振回路の共振周波数を第2の周波数Fbとし、この直列共振回路とL42の並列共振回路の共振周波数を第1の周波数Faとする。
【0047】
このような構成においても、たとえば、C31=3pF、C32=2.4pF、L31=3.3nH、L41=2.7nH、L42=3.9nH、C41=1.5pFとすることにより、前出の図4に示した所定の特性、つまり、「第1の分波回路41は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40と第1の整合回路42との間の信号的な接続をオン(ショート)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40と第1の整合回路42との間の信号的な接続をオフ(オープン)し、また、第2の分波回路43は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40と第2の整合回路44との間の信号的な接続をオフ(オープン)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40と第2の整合回路44との間の信号的な接続をオン(ショート)にする。」という所望の特性を得ることができる。
【0048】
このように、第1の分波回路41及び第2の分波回路43をLC型の共振回路で構成すると、回路構成や回路定数を適宜に変更することができ、様々な周波数に柔軟に対応できるという利点が得られる。つまり、GPSやBluetoothに限らず、他の用途の無線部にも汎用性よく適用できるという利点が得られる。また、第1の分波回路41や第2の分波回路43の回路要素にチップコンデンサやチップコイルを使用できるという利点も得られる。このようなチップ部品は、冒頭の特許文献1に記載の分布定数線路に比べて小さく、実装面積を少なくできるから、とりわけ携帯電話機のような小型の電子機器にとって実装上のメリットが大きい。
【0049】
ここで、共用アンテナ40の複共振特性について説明する。先に説明したとおり、共用アンテナ40は、複共振型のアンテナ(複数の共振周波数を持つアンテナ)であり、正確には、少なくともGPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)と、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)の二つの周波数帯に対応する複共振特性を有するアンテナである。このような複共振特性は、以下のようにして得ることができる。
図7は、共用アンテナ40のインピーダンス特性図である。この図も先の図4と同じスミスチャートである。円の中心を横切る水平軸でインピーダンスの純抵抗分(R)を表し、左端がR=0Ω(ショート/短絡)、右端がR=∞Ω(オープン/開放)である。また、水平軸を境にした円の上半分でインピーダンスのインダクタンス成分(L)を表し、円の上半分でインピーダンスのキャパシタンス成分(C)を表している。この特性図51においても、図中の菱形記号(◇)は第1の周波数Faを表し、また、丸記号(○)は第2の周波数Fbを表している。このような複共振特性は、たとえば、共用アンテナ40を逆Lタイプのアンテナとすれば、そのアンテナの電気長で第1の周波数Faを調整し、また、第2の周波数Fbについては、第2の整合回路44内に配置した直列のコンデンサにより電気長を調整して得ることができる。
【0050】
次に、実施形態の動作について説明する。
<GPS動作>
図8は、携帯電話機20をGPS端末として動作させたときの概念図である。携帯電話機20をGPS端末として動作させた場合は、(a)に示すように、GPS用の第1の無線部(第B無線部)37が動作し、Bluetooth用の第2の無線部(第C無線部)38が非動作となるので、二つの分波回路(第1の分波回路41及び第2の分波回路43)は、前記のとおり、第1の分波回路41が「ショート」、第2の分波回路43が「オープン」となり、その結果、オープン状態の第2の分波回路43につながる第2の無線部38が図中の破線で示すように回路上、無視される(等価的に構成から省かれる)ことになる。
【0051】
したがって、GPS動作時の実質的な回路構成は、(b)に示すように、共用アンテナ40に第1の整合回路42を介して第1の無線部37が接続される構成となり、要するに、不要な回路(第2の無線部38)が信号的に分離(アイソレーション)された構成となるから、分離された回路(第2の無線部38)からの干渉等の影響を排除することができる。
【0052】
<Bluetooth動作>
図9は、携帯電話機20をBluetooth端末として動作させたときの概念図である。携帯電話機20をBluetooth端末として動作させた場合は、(a)に示すように、Bluetooth用の第2の無線部(第C無線部)38が動作し、GPS用の第1の無線部(第B無線部)37が非動作となるので、二つの分波回路(第1の分波回路41及び第2の分波回路43)は、前記のとおり、第1の分波回路41が「オープン」、第2の分波回路43が「ショート」となり、その結果、オープン状態の第1の分波回路41につながる第1の無線部37が図中の破線で示すように回路上、無視される(等価的に構成から省かれる)ことになる。
【0053】
したがって、Bluetooth動作時の実質的な回路構成は、(b)に示すように、共用アンテナ40に第2の整合回路44を介して第2の無線部38が接続された構成となり、要するに、不要な回路(第1の無線部37)が信号的に分離(アイソレーション)された構成となるから、分離された回路(第1の無線部37)からの干渉等の影響を排除することができる。
【0054】
このように、本実施形態の携帯電話機20では、一つのアンテナ(共用アンテナ40)を二つの無線部(GPS用の第1の無線部37とBluetooth用の第2の無線部38)で共用することができるから、筐体24に組み込むアンテナの数を電話用のアンテナ36aと合わせて二つにすることができる。したがって、冒頭で説明した二つの条件(手の影響を受けないこと、及び、アンテナ相互の電磁的干渉を回避できること)を満たすことができる適切な位置(たとえば、図11の第1の位置5及び第2の位置6)に支障なく組み込むことができる。
【0055】
加えて、本実施形態の携帯電話機20では、二つの分波回路(第1の分波回路41及び第2の分波回路43)をLC型の共振回路構成としたから、実装面積が少ないチップコンデンサやチップコイルで、それらの分波回路(第1の分波回路41及び第2の分波回路43)を構成することができ、とりわけ携帯電話機のような小型の電子機器における実装上の不都合を招かない。
【0056】
また、共用アンテナ40を切り換えるための手段(機械的又は電子的なスイッチ)を必要とせず、GPS用の信号(第1の周波数Faの信号)やBluetooth用の信号(第2の周波数Fbの信号)を回路に流すだけで、時間的な遅延を生じることなく、しかも電力消費を生じることなく、直ちに所望の選択的回路構成(図8、図9参照)を実現できるので、複数の送受信系(実施形態ではGPS系とBluetooth系)で並行して1つのアンテナ(共用アンテナ40)を共用できるという利点も得られる。
【0057】
以上のとおり、本実施形態の携帯電話機20によれば、
(1)アンテナの数を三つから二つに減らして小さな筐体24に支障なく組み込むことができる、
(2)一つのアンテナ(共用アンテナ40)を二つの無線部(第1の無線部37と第2の無線部38)で共用する際の無線部間のアイソレーション機能を付与することができ、これによって、一方の無線部に対する他方の無線部の影響を排除することができる、
(3)二つの分波回路(第1の分波回路41及び第2の分波回路43)の構成にチップコンデンサやチップコイルを使用して実装上の不都合を招かない、
(4)スイッチ手段を必要としないので電力消費を招かない、
(5)共用アンテナ40の選択にタイムラグを生じない、
といった様々な効果が得られる。
【0058】
なお、以上の説明では、携帯電話機への適用を例にしたが、これに限定されない。少なくとも二つの無線部を実装した電子機器であって、二つの無線部で一つのアンテナを共用することが求められる電子機器であれば、如何なるものであっても適用することができる。
【0059】
以下、本発明の特徴を付記する。
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
図10は、付記1の構成図である。
この図に示すように、付記1は、
少なくとも第1の周波数(Fa)と第2の周波数(Fb)の二つの周波数に共振する複共振特性を有するアンテナ100(前記の共用アンテナ40に相当)と、
前記第1の周波数(Fa)で動作する第1の無線部101(前記の第1の無線部37に相当)と、
前記第2の周波数(Fb)で動作する第2の無線部102(前記の第2の無線部38に相当)と、
前記アンテナ100に接続された第1の分波回路103(前記の第1の分波回路41に相当)及び第2の分波回路104(前記の第2の分波回路43に相当)と、
前記第1の分波回路103と前記第1の無線部101との間に介在して前記アンテナ100と前記第1の無線部101とのインピーダンス整合をとる第1の整合回路105(前記の第1の整合回路42に相当)と、
前記第2の分波回路104と前記第2の無線部102との間に介在して前記アンテナ100と前記第2の無線部102とのインピーダンス整合をとる第2の整合回路106(前記の第2の整合回路44に相当)とを備え、
前記第1の分波回路103は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナ100と前記第1の整合回路105との間をショート状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナ100と前記第1の整合回路105との間をオープン状態にし、
前記第2の分波回路104は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナ100と前記第2の整合回路106との間をオープン状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナ100と前記第2の整合回路106との間をショート状態にする
ことを特徴とするアンテナ装置107(前記の無線通信部31に相当)である。
【0060】
(付記2)
付記2は、
前記第1の分波回路は、一対の入出力端子の間に2個のコンデンサ(C11、C12)を直列接続するとともに、一方のコンデンサ(C11)にコイル(L11)を並列接続したLC型の共振回路の構成を有し、前記L11とC11の並列共振回路の共振周波数を前記第2の周波数(Fb)とし、この並列共振回路と他方のコンデンサ(C12)の直列共振回路の共振周波数を前記第1の周波数(Fa)としたことを特徴とする付記1に記載のアンテナ装置である。
【0061】
(付記3)
付記3は、
前記第2の分波回路は、一対の入出力端子の間に2個のコイル(L21、L22)を直列接続するとともに、一方のコイル(L21)にコンデンサ(C21)を並列接続したLC型の共振回路の構成を有し、前記L21とC21の並列共振回路の共振周波数を前記第1の周波数(Fa)とし、この並列共振回路と他方のコイル(L22)の直列共振回路の共振周波数を前記第2の周波数(Fb)としたことを特徴とする付記1に記載のアンテナ装置である。
【0062】
(付記4)
付記4は、
前記第1の分波回路は、一対の入出力端子の間にコンデンサ(C31)とコイル(L31)を直列接続するとともに、前記一対の入出力端子の間にコンデンサ(C32)を接続したLC型の共振回路の構成を有し、前記C31とL31の直列共振回路の共振周波数を前記第1の周波数(Fa)とし、この直列共振回路と前記コンデンサ(C32)の並列共振回路の共振周波数を前記第2の周波数(Fb)としたことを特徴とする付記1に記載のアンテナ装置である。
【0063】
(付記5)
付記5は、
前記第2の分波回路は、一対の入出力端子の間にコンデンサ(C41)とコイル(L41)を直列接続するとともに、前記一対の入出力端子の間にコイル(L42)を接続したLC型の共振回路の構成を有し、前記C41とL41の直列共振回路の共振周波数を前記第2の周波数(Fb)とし、この直列共振回路と前記コイル(L42)の並列共振回路の共振周波数を前記第1の周波数(Fa)としたことを特徴とする付記1に記載のアンテナ装置である。
【0064】
(付記6)
付記6は、
付記1に記載のアンテナ装置を備えたことを特徴とする電子機器である。
【符号の説明】
【0065】
100 アンテナ
101 第1の無線部
102 第2の無線部
103 第1の分波回路
104 第2の分波回路
105 第1の整合回路
106 第2の整合回路
107 アンテナ装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置およびそれを搭載した電子機器に関し、詳細には、二つの無線部で共用できるアンテナ装置およびそれを搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機には、本来の電話用無線部だけでなく、他の無線部、たとえば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)用の無線部や、BluetoothあるいはWiFi等の近距離通信用の無線部などが実装されてきており、これに伴い、小さな筐体に複数のアンテナ装置(以下、単にアンテナという)が組み込まれるようになってきた。
【0003】
複数のアンテナを一つの筐体、とりわけ携帯電話機のような小さな筐体に組み込む場合、その組み込み位置の決定に際しては、第一に、筐体を持つ手の影響を受けにくいこと、第二に、複数のアンテナの相互間距離ができるだけ離れていること、という少なくとも二つの条件を満たすことを考えなければならない。第一の条件は、人体は所定容量(100pF程度)の接地体とみなされるからであり、そのような接地体がアンテナの近くにあるとアンテナの特性(特に共振周波数)に影響を与えるからである。また、第二の条件は、アンテナ間の距離が近い場合は相互の電磁的干渉により、同様にして、アンテナの特性に影響を与えるからである。
【0004】
図11は、折り畳み式携帯電話機のアンテナ組み込み位置の一例を示す図である。この図において、筐体1は、手持ちされる本体部2と、この本体部2の上短辺端部にヒンジ機構3を介して開閉可能に連結された蓋部4とから構成されている。このような筐体1におけるアンテナ組み込み位置は、本体部2の上短辺端部内(以下、第1の位置5)と、蓋部4の上短辺端部内(以下、第2の位置6)の二カ所が考えられる。これらの組み込み位置(第1の位置5及び第2の位置6)は、いずれも手の平の近くになく、しかも、互いの位置が離れているからであり、上記二つの条件を満たしているからである。
【0005】
しかし、図11に示す組み込み位置は、アンテナの数が三つの場合に適用できない。第1の位置5または第2の位置6の一方に二つのアンテナを組み込む必要があり、これら二つのアンテナについては上記の第二の条件(相互干渉)を満足しないからである。
【0006】
第二の条件を満たすには、三つのアンテナのうちの二つ、つまり、第1の位置5または第2の位置6の一方に組み込まれる二つのアンテナを共用アンテナとすればよい。二つのアンテナを共用アンテナとすれば、実質的なアンテナの数を三つから二つに減らすことができ、上記二つの条件を満たしつつ、各々のアンテナを、たとえば、図11の第1の位置5と第2の位置6に支障なく組み込むことができる。
【0007】
共用アンテナについての公知技術を検討する。
特許文献1には、1つのアンテナを異なる周波数帯域の複数の送受信系で共用することができる「高周波モジュール及びそれを搭載した無線通信装置」に関する技術が開示されている。詳細には、1つのアンテナと複数の送受信系(同文献ではDCS/PCS系と、GSM850/GSM900系の二系)との間に分波回路(同文献ではDIP10)を入れる構成が開示されている。この分波回路は、同文献の説明によれば、DCS/PCS系については、ローパスフィルタとハイパスフィルタとの組み合わせからなり、GSM850/GSM900系については、ローパスフィルタとバンドパスフィルタとの組み合わせからなるとされており、さらに、ローパスフィルタは、分布定数線路を主体にして構成するとされている。これによれば、分波回路によってDCS/PCS系の送受信信号とGSM850/GSM900系の送受信信号とを切り分けることができ、異なる周波数帯域の複数の送受信系で1つのアンテナを共用することができる。
【0008】
特許文献2には、1つのアンテナと複数の送受信系の間に、切り替え手段として機能する制御回路部を入れた構成の「アンテナ装置及びそれを用いた携帯無線機」に関する技術が開示されている。これによれば、制御回路部を切り換えることにより、複数の送受信系で1つのアンテナを共用することができる。
【0009】
特許文献3には、FDD方式(周波数分割複信方式:送信と受信に別々の周波数を割り当てて全二重通信を行う電気通信技術)を採用する二つの送受信系の各々に、自系の送信信号と受信信号を分離するとともに、他系の送受信号を排除する分波回路を設け、且つ、それらの分波回路と各系用の二つのアンテナの間にアンテナ切り替え用のスイッチ回路を設けた構成の「高周波部品及びマルチバンド通信装置」に関する技術が開示されている。これによれば、スイッチ回路で一の系用のアンテナを選択した状態で、一の送受信系によるFDD方式の全二重通信を行うことができ、または、スイッチ回路で二の系用のアンテナを選択した状態で、二の送受信系によるFDD方式の全二重通信を行うことができるから、各系用のアンテナを、その系における「送信アンテナ」と「受信アンテナ」として共用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−117497号公報
【特許文献2】特開2006−174219号公報
【特許文献3】特開2009−124746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記の特許文献1〜3に記載の技術は、以下の問題点がある。
まず、特許文献1の技術は、1つのアンテナを複数の送受信系(DCS/PCS系とGSM850/GSM900系)で共用できるものの、ローパスフィルタを含む回路要素(分波回路)が必要であり、このローパスフィルタは、比較的(LCなどの部品に比べて)実装面積が大きい分布定数線路を主体にして構成されているから、とりわけ携帯電話機のような小型の電子機器にあっては、実装上の不都合を招く恐れがある。
また、特許文献2の技術は、単に1つのアンテナを切り換えて共用しているものに過ぎないから、一の送受信系を使用中は他の送受信系を使用できないという欠点があり、たとえば、一の送受信系をBluetooth、他の送受信系をGPSと仮定すると、Bluetoothの使用時にはGPSによる現在位置の情報更新を行うことができないという不都合がある。かかる不都合は、今日の携帯電子機器におけるマルチタスク(一の処理を実行中に並行して他の処理を実行すること)環境を考慮すると看過できない。たとえば、Bluetoothによる通信中にバックグラウンドでナビゲーションソフトなどを動作させることが十二分にあり得るからであり、このような場合でも現在位置の更新は継続して行う必要があるからである。
この点は、特許文献3の技術においても同様である。特許文献3の技術は各系ごとに「送信アンテナ」と「受信アンテナ」とを共用しているに過ぎないからであり、たとえば、Bluetoothの使用時にはGPSを使用できないという点で、特許文献2の技術とまったく同じ欠点を有しているからである。
また、スイッチによってアンテナを切り換えるもの(特許文献2、3)にあっては、切り換えのタイムラグを否めず、また、切り換えのための電力消費も無視できない。
このように、特許文献1〜3の技術にあっては、特に実装上の不都合や複数の送受信系で並行して1つのアンテナを共用できないという不都合がある。
【0012】
そこで、本発明は、実装上の不都合を招かず、しかも、複数の送受信系で並行して1つのアンテナを共用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のアンテナ装置は、少なくとも第1の周波数(Fa)と第2の周波数(Fb)の二つの周波数に共振する複共振特性を有するアンテナと、前記第1の周波数(Fa)で動作する第1の無線部と、前記第2の周波数(Fb)で動作する第2の無線部と、前記アンテナに接続された第1の分波回路及び第2の分波回路と、前記第1の分波回路と前記第1の無線部との間に介在して前記アンテナと前記第1の無線部とのインピーダンス整合をとる第1の整合回路と、前記第2の分波回路と前記第2の無線部との間に介在して前記アンテナと前記第2の無線部とのインピーダンス整合をとる第2の整合回路とを備え、前記第1の分波回路は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナと前記第1の整合回路との間をショート状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナと前記第1の整合回路との間をオープン状態にし、前記第2の分波回路は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナと前記第2の整合回路との間をオープン状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナと前記第2の整合回路との間をショート状態にすることを特徴とする。
本発明の電子機器は、前記アンテナ装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、実装上の不都合を招かず、しかも、複数の送受信系で並行して1つのアンテナを共用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】携帯電話機20の外観図である。
【図2】携帯電話機20の構成図である。
【図3】無線通信部31の構成図である。
【図4】ショートとオープンのインピーダンス特性図である。
【図5】第1の分波回路41及び第2の分波回路43の回路例を示す図である。
【図6】第1の分波回路41及び第2の分波回路43の他の回路例を示す図である。
【図7】共用アンテナ40のインピーダンス特性図である。
【図8】携帯電話機20をGPS端末として動作させたときの概念図である。
【図9】携帯電話機20をBluetooth端末として動作させたときの概念図である。
【図10】付記1の構成図である。
【図11】折り畳み式携帯電話機のアンテナ組み込み位置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を、携帯電話機への適用を例にして図面を参照しながら説明する。
図1は、携帯電話機20の外観図である。この図において、携帯電話機20は、手持ちに適した厚みと大きさを有する縦長箱型形状の本体部21と、その本体部21の上短辺端にヒンジ機構22を介して連結された、本体部21と略同型状かつ薄厚の蓋部23とを備えた、いわゆる「折り畳み式」の筐体24を有している。なお、この形状(折り畳み式)は説明上の一例に過ぎない。非折り畳み式やスライド式などであってもよい。また、携帯電話機をスマートフォンと読み替えてもよい。
【0017】
本体部21の一方面(蓋部23との対向面)には、多数の操作ボタンからなる操作ボタン群25や送話孔26が設けられ、また、蓋部23の一方面(本体部21との対向面)には、表示部27や、この表示部27の周囲を覆う額縁部28及び受話孔29が設けられている。
【0018】
表示部27は、縦長形状の表示面を有する二次元表示デバイス、典型的には、高精細なカラー液晶ディスプレイパネルであり、表示部27の表示面には透明なタッチパネル30が貼り付けられている。
【0019】
図2は、携帯電話機20の構成図である。この図において、携帯電話機20は、無線通信部31、送受話部32、操作部33、制御部34、表示部27、タッチパネル30、並びに、この携帯電話機20の動作に必要な電源を供給するためのバッテリ(一次電池または充電可能な二次電池)を含む電源部35などを備えている。なお、これら以外にも、たとえば、カメラ等の撮像部や、カメラで撮影された画像を保存するための記憶部、さらには、パーソナルコンピュータ等の外部機器との間でデータのやりとりをするための入出力部などを備えていてもよい。
【0020】
無線通信部31は、異なる周波数帯で動作する複数の無線通信部(以下、単に無線部という)を含む。ここでは、第A無線部36、第B無線部37及び第C無線部38の三つを含むものとし、第A無線部36を携帯電話用、第B無線部37をGPS用、第C無線部38をBluetooth用とする。但し、これらの用途に限定されない。実施形態の電子機器は携帯電話機20であるから、少なくとも携帯電話用の第A無線部36は必須であるが、他の無線部(第B無線部37及び第C無線部38)については、上記用途の限りではなく、たとえば、WiFiやワンセグ放送受信などの他の用途の無線部であってもよい。
【0021】
携帯電話用の第A無線部36は、制御部34からの制御により、アンテナ36aを介して最寄りの基地局(図示略)との間で所定周波数帯(700MHz帯〜2GHzまでの間の所定周波数帯)の無線電波によるアナログもしくはデジタルデータの送受信を行い、このデータには、電話の着呼や発呼の情報および音声通話の情報が含まれるほか、必要であれば、インターネット上のコンテンツを利用(ダウンロード)する際などのコンテンツ情報や電子メールの送受信情報などが含まれる。
【0022】
GPS用の第B無線部37及びBluetooth用の第C無線部38は、アンテナ共用部39を介して一つのアンテナ40を共用する。以下、このアンテナ40を「共用アンテナ」と呼ぶことにする。
【0023】
第B無線部37は、制御部34からの制御により、共用アンテナ40を介してGPS衛星(図示略)からの所定周波数帯(1.5GHz帯)の電波(GPS信号)を受信し、その受信信号を制御部34に出力する。以下、GPS衛星からの信号周波数を便宜的に第1の周波数Faということにする。
【0024】
なお、GPS(全地球測位システム)とは、地球周回軌道上の最低3個の衛星からの電波を受信することにより、地球上における位置座標(緯度と経度及び衛星の捕捉数によっては高度)を測位できる位置測位システムのことをいう。一般的にこのシステムは、GPSアンテナと信号受信部と測位計算部の三つからなる。図2の構成では、共用アンテナ40がGPSアンテナに相当し、第B無線部37が信号受信部に相当する。そして、図示の例では、測位計算部が制御部34の機能に含まれているが、これに限定されない。測位計算部を第B無線部37の構成に含めてもよい。つまり、第B無線部37で衛星からの電波受信と位置座標の測位計算とを行うようにし、その測位結果を制御部34に出力する構成であってもよい。
【0025】
第C無線部38は、制御部34からの制御により、共用アンテナ40を介して近距離(一般的に数十メートル以内)に存在するあらかじめペアリングされたBluetooth機器(図示略)との間で所定周波数帯(2.4GHz帯)の無線電波による近距離ワイヤレス通信を行う。以下、Bluetoothの信号周波数を便宜的に第2の周波数Fbということにする。
【0026】
ここで、アンテナ共用部39は、一つのアンテナ(共用アンテナ40)を二つの無線部(第B無線部37と第C無線部38)で「共用」するための機能を持つが、特に重要な機能はアイソレーションの機能である。すなわち、第B無線部37が共用アンテナ40を利用している際には、第C無線部38が信号的に分離(アイソレーション)された状態となり、また、第C無線部38が共用アンテナ40を利用している際には、第B無線部37が信号的に分離(アイソレーション)された状態となることが特に重要な機能である。
【0027】
このようにすれば、第B無線部37が共用アンテナ40を利用している間は、第C無線部38が回路的に分離(アイソレーション)されるので、動作中の第B無線部37は非動作中の第C無線部38の影響を受けない。同様に、第C無線部38が共用アンテナ40を利用している間は、第B無線部37が回路的に分離(アイソレーション)されるので、動作中の第C無線部38は非動作中の第B無線部37の影響を受けない。分離(アイソレーション)についての詳しい説明は後述する。
【0028】
送受話部32は、本体部21の送話孔26の下に配置されたマイク32aや蓋部23の受話孔29の下に配置されたスピーカ32bを含み、この送受話部32は、制御部34からの制御により、マイク32aからの音声信号をデジタルデータに変換して制御部34に出力したり、制御部34から出力されたデジタルの音声信号をアナログ信号に変換してスピーカ32bから出力したりする。
【0029】
操作部33は、制御部34に対して所要のユーザ入力を行うための各種操作ボタン(図1の操作ボタン群25)を備え、ユーザによる任意の操作ボタンの押し下げに対応した操作ボタン信号を発生して制御部34に出力する。
【0030】
制御部34は、マイクロコンピュータまたは単にコンピュータ(以下、CPU)34a、書き込み型の不揮発性半導体メモリ(以下、PROM)34bおよび高速半導体メモリ(以下、RAM)34cならびに不図示の周辺回路を含むプログラム制御方式の制御要素であり、この制御部34は、携帯電話機20の全体動作を統括制御するために、あらかじめPROM34bに格納されている制御プログラムをRAM34cにロードしてCPU36aで実行する。なお、PROM34bの代わりに読み出し専用の半導体メモリ(ROM)や消去可能型の半導体メモリ(EPROM)などを用いてもよい。
【0031】
次に、無線通信部31の具体的な構成を説明する。
図3は、無線通信部31の構成図である。先に説明したとおり、無線通信部31は、携帯電話用の第A無線部36とアンテナ36aを備えるとともに、GPS用の第B無線部37、Bluetooth用の第C無線部38、アンテナ共用部39及びそれらの共用アンテナ40を備えるが、この図では、携帯電話用以外の無線部構成(GPS用の第B無線部37、Bluetooth用の第C無線部38、アンテナ共用部39及びそれらの共用アンテナ40)のみを抜粋して示している。
【0032】
この図において、アンテナ共用部39は、第1の分波回路41と第1の整合回路42及び第2の分波回路43と第2の整合回路44を含む。第1の分波回路41と第1の整合回路42はGPS用であり、第1の分波回路41の一端に共用アンテナ40を接続し、第1の分波回路41の他端に第1の整合回路42を介してGPS用の第B無線部37を接続している。第2の分波回路43と第2の整合回路44はBluetooth用であり、第2の分波回路43の一端に共用アンテナ40を接続し、第2の分波回路43の他端に第2の整合回路44を介してBluetooth用の第C無線部38を接続している。
【0033】
以下、「第1の」という用語にGPS用という意味を持たせるものとし、その意味に合わせて第B無線部37を「第1の無線部37」と呼称することとする。同様に、「第2の」という用語にBluetooth用という意味を持たせるものとし、その意味に合わせて第C無線部38を「第2の無線部38」と呼称することとする。つまり、第B無線部37=第1の無線部37、第C無線部38=第2の無線部38である。
【0034】
なお、ここでは、二つの整合回路(第1の整合回路42と第2の整合回路44)をアンテナ共用部39の構成に含めているが、これに限定されない。各々を第1の無線部37や第2の無線部38の構成に含めてもよい。要は、第1の分波回路41と第1の無線部37の間に第1の整合回路42が入っていればよく、同様に、第2の分波回路43と第2の無線部38の間に第2の整合回路44が入っていればよい。
【0035】
第1の整合回路42は、第1の無線部37とアンテナインピーダンス(共用アンテナ40のインピーダンス)との整合、すなわち、第1の無線部37のインピーダンスと共用アンテナ40のインピーダンスとのマッチングをとる(整合させる/揃える/等価にするなどともいう)ための回路であり、同様に、第2の整合回路44は、第2の無線部38とアンテナインピーダンス(共用アンテナ40のインピーダンス)との整合をとるための回路である。ちなみに、マッチングがとれていない状態(不整合状態)では、無駄な電力が生じて伝送効率を損なうばかりか、とりわけ高周波帯域では伝送路の反射波が増え、この反射波と進行波との重畳波(定在波)による様々な悪影響を生じるから、高周波技術の分野にとってインピーダンスのマッチングは不可欠な技術である。
【0036】
共用アンテナ40は、複共振型のアンテナ(複数の共振周波数を持つアンテナ)であり、この実施形態においては、少なくともGPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)と、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)の二つの周波数帯に対応する複共振特性を持っている。なお、二つの周波数帯(第1の周波数Fa、第2の周波数Fb)の一方を共用アンテナ40の基本共振周波数に対応させ、他方を基本共振周波数の任意の高次共振周波数に対応させてもよく、あるいは、第1の周波数Faと第2の周波数Fbの双方を任意の高次共振周波数に対応させてもよい。
【0037】
先に説明したとおり、共用アンテナ40と第1の無線部37及び第2の無線部38との間に入れられたアンテナ共用部39は、二つの分波回路(第1の分波回路41と第2の分波回路43)を含む。
【0038】
これら二つの分波回路(第1の分波回路41と第2の分波回路43)の究極の目的は、共用アンテナ40のアイソレーション(分離)にある。すなわち、第1の無線部37を使用中(GPS動作中)は、共用アンテナ40をあたかもGPS専用として使うことができる一方、第2の無線部37を使用中(Bluetooth動作中)は、共用アンテナ40をあたかもBluetooth専用として使うことができるようにすることにあり、しかも、そのような選択的使用を行う際に、機械的または電気的なスイッチ手段を必要としないようにすることにある。さらに、二つの分波回路(第1の分波回路41と第2の分波回路43)の実装面積を小さくして、とりわけ携帯電話機のような小型の電子機器における実装上の不都合を招かないようにすることにある。
【0039】
かかる目的を達成するために、第1の分波回路41は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40と第1の整合回路42との間の信号的な接続をオン(ショート)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40と第1の整合回路42との間の信号的な接続をオフ(オープン)する。また、第2の分波回路43は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40と第2の整合回路44との間の信号的な接続をオフ(オープン)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40と第2の整合回路44との間の信号的な接続をオン(ショート)にする。
【0040】
ここで、上記の「ショート」や「オープン」は、第1の分波回路41及び第2の分波回路43の各々の入出力間のインピーダンス抵抗の大きさを意味する。つまり、ショートは0Ω(短絡)、オープンは∞Ω(開放)である。なお、これらの値(0Ω、∞Ω)は理想値である。実用上は0Ωにきわめて近い値(略0Ω)及び∞Ωにきわめて近い値(略∞Ω)であってもよい。
【0041】
図4は、ショートとオープンのインピーダンス特性図である。この図は、いわゆるスミスチャート(Smith Chart)と呼ばれる特性図のうちの「インピーダンスチャート」であり、(a)は第1の分波回路41の特性図45を示し、(b)は第2の分波回路43の特性図46を示している。
【0042】
(a)及び(b)において、円の中心を横切る水平軸はインピーダンスの純抵抗分(R)を表し、水平軸の左端がR=0Ω(ショート/短絡)、右端がR=∞Ω(オープン/開放)である。なお、インダクタンス成分(L)が含まれる場合はチャート上の軌跡が水平軸から円弧に沿って上に移動する。Lが最大になると∞Ω(オープン/開放)になる。また、キャパシタンス成分(C)が含まれる場合はチャート上の軌跡が円弧に沿って水平軸から下に移動する。Cが最小になると∞Ω(オープン/開放)になる。
【0043】
これらの特性図45、46から理解されるように、第1の分波回路41は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)に対して0Ω(ショート)、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)に対して∞Ω(オープン)になり、一方、第2の分波回路43は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)に対して∞Ω(オープン)、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)に対して0Ω(ショート)になるという特性を持つ。なお、これらの特性図45、46において、図中の菱形記号(◇)は第1の周波数Faを表し、また、丸記号(○)は第2の周波数Fbを表している。
【0044】
図5は、第1の分波回路41及び第2の分波回路43の回路例を示す図であり、(a)は第1の分波回路41の一例回路図、(b)は第2の分波回路43の一例回路図である。(a)に示すように、第1の分波回路41は、一対の入出力端子47、48の間に2個のコンデンサC11、C12を直列接続するとともに、一方のコンデンサC11にコイルL11を並列接続したLC型の共振回路の構成を有している。L11とC11の並列共振回路の共振周波数を第2の周波数Fbとし、この並列共振回路とC12の直列共振回路の共振周波数を第1の周波数Faとする。
また、(b)に示すように、第2の分波回路43は、一対の入出力端子49、50の間に2個のコイルL21、L22を直列接続するとともに、一方のコイルL21にコンデンサC21を並列接続したLC型の共振回路の構成を有している。L21とC21の並列共振回路の共振周波数を第1の周波数Faとし、この並列共振回路とL22の直列共振回路の共振周波数を第2の周波数Fbとする。
【0045】
このような構成において、たとえば、C11=3pF、C12=2pF、L11=2.2nH、L21=5.6nH、L22=3.3nH、C21=2pFとすることにより、前出の図4に示した特性、つまり、「第1の分波回路41は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40と第1の整合回路42との間の信号的な接続をオン(ショート)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40と第1の整合回路42との間の信号的な接続をオフ(オープン)し、また、第2の分波回路43は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40と第2の整合回路44との間の信号的な接続をオフ(オープン)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40と第2の整合回路44との間の信号的な接続をオン(ショート)にする。」という所望の特性を得ることができる。
【0046】
また、第1の分波回路41及び第2の分波回路43を次のように構成してもよい。
図6は、第1の分波回路41及び第2の分波回路43の他の回路例を示す図であり、(a)は第1の分波回路41の他の一例回路図、(b)は第2の分波回路43の他の一例回路図である。(a)に示すように、第1の分波回路41は、一対の入出力端子47、48の間にコンデンサC31とコイルL31を直列接続するとともに、さらに、入出力端子47、48の間にコンデンサC32を接続したLC型の共振回路の構成を有している。C31とL32の直列共振回路の共振周波数を第1の周波数Faとし、この直列共振回路とC32の並列共振回路の共振周波数を第2の周波数Fbとする。
また、(b)に示すように、第2の分波回路43は、一対の入出力端子49、50の間にコンデンサC41とコイルL41を直列接続し、さらに、一対の入出力端子49、50の間にコイルL42を接続したLC型の共振回路の構成を有している。C41とL41の直列共振回路の共振周波数を第2の周波数Fbとし、この直列共振回路とL42の並列共振回路の共振周波数を第1の周波数Faとする。
【0047】
このような構成においても、たとえば、C31=3pF、C32=2.4pF、L31=3.3nH、L41=2.7nH、L42=3.9nH、C41=1.5pFとすることにより、前出の図4に示した所定の特性、つまり、「第1の分波回路41は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40と第1の整合回路42との間の信号的な接続をオン(ショート)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40と第1の整合回路42との間の信号的な接続をオフ(オープン)し、また、第2の分波回路43は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40と第2の整合回路44との間の信号的な接続をオフ(オープン)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40と第2の整合回路44との間の信号的な接続をオン(ショート)にする。」という所望の特性を得ることができる。
【0048】
このように、第1の分波回路41及び第2の分波回路43をLC型の共振回路で構成すると、回路構成や回路定数を適宜に変更することができ、様々な周波数に柔軟に対応できるという利点が得られる。つまり、GPSやBluetoothに限らず、他の用途の無線部にも汎用性よく適用できるという利点が得られる。また、第1の分波回路41や第2の分波回路43の回路要素にチップコンデンサやチップコイルを使用できるという利点も得られる。このようなチップ部品は、冒頭の特許文献1に記載の分布定数線路に比べて小さく、実装面積を少なくできるから、とりわけ携帯電話機のような小型の電子機器にとって実装上のメリットが大きい。
【0049】
ここで、共用アンテナ40の複共振特性について説明する。先に説明したとおり、共用アンテナ40は、複共振型のアンテナ(複数の共振周波数を持つアンテナ)であり、正確には、少なくともGPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)と、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)の二つの周波数帯に対応する複共振特性を有するアンテナである。このような複共振特性は、以下のようにして得ることができる。
図7は、共用アンテナ40のインピーダンス特性図である。この図も先の図4と同じスミスチャートである。円の中心を横切る水平軸でインピーダンスの純抵抗分(R)を表し、左端がR=0Ω(ショート/短絡)、右端がR=∞Ω(オープン/開放)である。また、水平軸を境にした円の上半分でインピーダンスのインダクタンス成分(L)を表し、円の上半分でインピーダンスのキャパシタンス成分(C)を表している。この特性図51においても、図中の菱形記号(◇)は第1の周波数Faを表し、また、丸記号(○)は第2の周波数Fbを表している。このような複共振特性は、たとえば、共用アンテナ40を逆Lタイプのアンテナとすれば、そのアンテナの電気長で第1の周波数Faを調整し、また、第2の周波数Fbについては、第2の整合回路44内に配置した直列のコンデンサにより電気長を調整して得ることができる。
【0050】
次に、実施形態の動作について説明する。
<GPS動作>
図8は、携帯電話機20をGPS端末として動作させたときの概念図である。携帯電話機20をGPS端末として動作させた場合は、(a)に示すように、GPS用の第1の無線部(第B無線部)37が動作し、Bluetooth用の第2の無線部(第C無線部)38が非動作となるので、二つの分波回路(第1の分波回路41及び第2の分波回路43)は、前記のとおり、第1の分波回路41が「ショート」、第2の分波回路43が「オープン」となり、その結果、オープン状態の第2の分波回路43につながる第2の無線部38が図中の破線で示すように回路上、無視される(等価的に構成から省かれる)ことになる。
【0051】
したがって、GPS動作時の実質的な回路構成は、(b)に示すように、共用アンテナ40に第1の整合回路42を介して第1の無線部37が接続される構成となり、要するに、不要な回路(第2の無線部38)が信号的に分離(アイソレーション)された構成となるから、分離された回路(第2の無線部38)からの干渉等の影響を排除することができる。
【0052】
<Bluetooth動作>
図9は、携帯電話機20をBluetooth端末として動作させたときの概念図である。携帯電話機20をBluetooth端末として動作させた場合は、(a)に示すように、Bluetooth用の第2の無線部(第C無線部)38が動作し、GPS用の第1の無線部(第B無線部)37が非動作となるので、二つの分波回路(第1の分波回路41及び第2の分波回路43)は、前記のとおり、第1の分波回路41が「オープン」、第2の分波回路43が「ショート」となり、その結果、オープン状態の第1の分波回路41につながる第1の無線部37が図中の破線で示すように回路上、無視される(等価的に構成から省かれる)ことになる。
【0053】
したがって、Bluetooth動作時の実質的な回路構成は、(b)に示すように、共用アンテナ40に第2の整合回路44を介して第2の無線部38が接続された構成となり、要するに、不要な回路(第1の無線部37)が信号的に分離(アイソレーション)された構成となるから、分離された回路(第1の無線部37)からの干渉等の影響を排除することができる。
【0054】
このように、本実施形態の携帯電話機20では、一つのアンテナ(共用アンテナ40)を二つの無線部(GPS用の第1の無線部37とBluetooth用の第2の無線部38)で共用することができるから、筐体24に組み込むアンテナの数を電話用のアンテナ36aと合わせて二つにすることができる。したがって、冒頭で説明した二つの条件(手の影響を受けないこと、及び、アンテナ相互の電磁的干渉を回避できること)を満たすことができる適切な位置(たとえば、図11の第1の位置5及び第2の位置6)に支障なく組み込むことができる。
【0055】
加えて、本実施形態の携帯電話機20では、二つの分波回路(第1の分波回路41及び第2の分波回路43)をLC型の共振回路構成としたから、実装面積が少ないチップコンデンサやチップコイルで、それらの分波回路(第1の分波回路41及び第2の分波回路43)を構成することができ、とりわけ携帯電話機のような小型の電子機器における実装上の不都合を招かない。
【0056】
また、共用アンテナ40を切り換えるための手段(機械的又は電子的なスイッチ)を必要とせず、GPS用の信号(第1の周波数Faの信号)やBluetooth用の信号(第2の周波数Fbの信号)を回路に流すだけで、時間的な遅延を生じることなく、しかも電力消費を生じることなく、直ちに所望の選択的回路構成(図8、図9参照)を実現できるので、複数の送受信系(実施形態ではGPS系とBluetooth系)で並行して1つのアンテナ(共用アンテナ40)を共用できるという利点も得られる。
【0057】
以上のとおり、本実施形態の携帯電話機20によれば、
(1)アンテナの数を三つから二つに減らして小さな筐体24に支障なく組み込むことができる、
(2)一つのアンテナ(共用アンテナ40)を二つの無線部(第1の無線部37と第2の無線部38)で共用する際の無線部間のアイソレーション機能を付与することができ、これによって、一方の無線部に対する他方の無線部の影響を排除することができる、
(3)二つの分波回路(第1の分波回路41及び第2の分波回路43)の構成にチップコンデンサやチップコイルを使用して実装上の不都合を招かない、
(4)スイッチ手段を必要としないので電力消費を招かない、
(5)共用アンテナ40の選択にタイムラグを生じない、
といった様々な効果が得られる。
【0058】
なお、以上の説明では、携帯電話機への適用を例にしたが、これに限定されない。少なくとも二つの無線部を実装した電子機器であって、二つの無線部で一つのアンテナを共用することが求められる電子機器であれば、如何なるものであっても適用することができる。
【0059】
以下、本発明の特徴を付記する。
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
図10は、付記1の構成図である。
この図に示すように、付記1は、
少なくとも第1の周波数(Fa)と第2の周波数(Fb)の二つの周波数に共振する複共振特性を有するアンテナ100(前記の共用アンテナ40に相当)と、
前記第1の周波数(Fa)で動作する第1の無線部101(前記の第1の無線部37に相当)と、
前記第2の周波数(Fb)で動作する第2の無線部102(前記の第2の無線部38に相当)と、
前記アンテナ100に接続された第1の分波回路103(前記の第1の分波回路41に相当)及び第2の分波回路104(前記の第2の分波回路43に相当)と、
前記第1の分波回路103と前記第1の無線部101との間に介在して前記アンテナ100と前記第1の無線部101とのインピーダンス整合をとる第1の整合回路105(前記の第1の整合回路42に相当)と、
前記第2の分波回路104と前記第2の無線部102との間に介在して前記アンテナ100と前記第2の無線部102とのインピーダンス整合をとる第2の整合回路106(前記の第2の整合回路44に相当)とを備え、
前記第1の分波回路103は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナ100と前記第1の整合回路105との間をショート状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナ100と前記第1の整合回路105との間をオープン状態にし、
前記第2の分波回路104は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナ100と前記第2の整合回路106との間をオープン状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナ100と前記第2の整合回路106との間をショート状態にする
ことを特徴とするアンテナ装置107(前記の無線通信部31に相当)である。
【0060】
(付記2)
付記2は、
前記第1の分波回路は、一対の入出力端子の間に2個のコンデンサ(C11、C12)を直列接続するとともに、一方のコンデンサ(C11)にコイル(L11)を並列接続したLC型の共振回路の構成を有し、前記L11とC11の並列共振回路の共振周波数を前記第2の周波数(Fb)とし、この並列共振回路と他方のコンデンサ(C12)の直列共振回路の共振周波数を前記第1の周波数(Fa)としたことを特徴とする付記1に記載のアンテナ装置である。
【0061】
(付記3)
付記3は、
前記第2の分波回路は、一対の入出力端子の間に2個のコイル(L21、L22)を直列接続するとともに、一方のコイル(L21)にコンデンサ(C21)を並列接続したLC型の共振回路の構成を有し、前記L21とC21の並列共振回路の共振周波数を前記第1の周波数(Fa)とし、この並列共振回路と他方のコイル(L22)の直列共振回路の共振周波数を前記第2の周波数(Fb)としたことを特徴とする付記1に記載のアンテナ装置である。
【0062】
(付記4)
付記4は、
前記第1の分波回路は、一対の入出力端子の間にコンデンサ(C31)とコイル(L31)を直列接続するとともに、前記一対の入出力端子の間にコンデンサ(C32)を接続したLC型の共振回路の構成を有し、前記C31とL31の直列共振回路の共振周波数を前記第1の周波数(Fa)とし、この直列共振回路と前記コンデンサ(C32)の並列共振回路の共振周波数を前記第2の周波数(Fb)としたことを特徴とする付記1に記載のアンテナ装置である。
【0063】
(付記5)
付記5は、
前記第2の分波回路は、一対の入出力端子の間にコンデンサ(C41)とコイル(L41)を直列接続するとともに、前記一対の入出力端子の間にコイル(L42)を接続したLC型の共振回路の構成を有し、前記C41とL41の直列共振回路の共振周波数を前記第2の周波数(Fb)とし、この直列共振回路と前記コイル(L42)の並列共振回路の共振周波数を前記第1の周波数(Fa)としたことを特徴とする付記1に記載のアンテナ装置である。
【0064】
(付記6)
付記6は、
付記1に記載のアンテナ装置を備えたことを特徴とする電子機器である。
【符号の説明】
【0065】
100 アンテナ
101 第1の無線部
102 第2の無線部
103 第1の分波回路
104 第2の分波回路
105 第1の整合回路
106 第2の整合回路
107 アンテナ装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の周波数(Fa)と第2の周波数(Fb)の二つの周波数に共振する複共振特性を有するアンテナと、
前記第1の周波数(Fa)で動作する第1の無線部と、
前記第2の周波数(Fb)で動作する第2の無線部と、
前記アンテナに接続された第1の分波回路及び第2の分波回路と、
前記第1の分波回路と前記第1の無線部との間に介在して前記アンテナと前記第1の無線部とのインピーダンス整合をとる第1の整合回路と、
前記第2の分波回路と前記第2の無線部との間に介在して前記アンテナと前記第2の無線部とのインピーダンス整合をとる第2の整合回路とを備え、
前記第1の分波回路は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナと前記第1の整合回路との間をショート状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナと前記第1の整合回路との間をオープン状態にし、
前記第2の分波回路は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナと前記第2の整合回路との間をオープン状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナと前記第2の整合回路との間をショート状態にする
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1の分波回路は、一対の入出力端子の間に2個のコンデンサ(C11、C12)を直列接続するとともに、一方のコンデンサ(C11)にコイル(L11)を並列接続したLC型の共振回路の構成を有し、前記L11とC11の並列共振回路の共振周波数を前記第2の周波数(Fb)とし、この並列共振回路と他方のコンデンサ(C12)の直列共振回路の共振周波数を前記第1の周波数(Fa)としたことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第2の分波回路は、一対の入出力端子の間に2個のコイル(L21、L22)を直列接続するとともに、一方のコイル(L21)にコンデンサ(C21)を並列接続したLC型の共振回路の構成を有し、前記L21とC21の並列共振回路の共振周波数を前記第1の周波数(Fa)とし、この並列共振回路と他方のコイル(L22)の直列共振回路の共振周波数を前記第2の周波数(Fb)としたことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1の分波回路は、一対の入出力端子の間にコンデンサ(C31)とコイル(L31)を直列接続するとともに、前記一対の入出力端子の間にコンデンサ(C32)を接続したLC型の共振回路の構成を有し、前記C31とL31の直列共振回路の共振周波数を前記第1の周波数(Fa)とし、この直列共振回路と前記コンデンサ(C32)の並列共振回路の共振周波数を前記第2の周波数(Fb)としたことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第2の分波回路は、一対の入出力端子の間にコンデンサ(C41)とコイル(L41)を直列接続するとともに、前記一対の入出力端子の間にコイル(L42)を接続したLC型の共振回路の構成を有し、前記C41とL41の直列共振回路の共振周波数を前記第2の周波数(Fb)とし、この直列共振回路と前記コイル(L42)の並列共振回路の共振周波数を前記第1の周波数(Fa)としたことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1に記載のアンテナ装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
少なくとも第1の周波数(Fa)と第2の周波数(Fb)の二つの周波数に共振する複共振特性を有するアンテナと、
前記第1の周波数(Fa)で動作する第1の無線部と、
前記第2の周波数(Fb)で動作する第2の無線部と、
前記アンテナに接続された第1の分波回路及び第2の分波回路と、
前記第1の分波回路と前記第1の無線部との間に介在して前記アンテナと前記第1の無線部とのインピーダンス整合をとる第1の整合回路と、
前記第2の分波回路と前記第2の無線部との間に介在して前記アンテナと前記第2の無線部とのインピーダンス整合をとる第2の整合回路とを備え、
前記第1の分波回路は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナと前記第1の整合回路との間をショート状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナと前記第1の整合回路との間をオープン状態にし、
前記第2の分波回路は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナと前記第2の整合回路との間をオープン状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナと前記第2の整合回路との間をショート状態にする
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1の分波回路は、一対の入出力端子の間に2個のコンデンサ(C11、C12)を直列接続するとともに、一方のコンデンサ(C11)にコイル(L11)を並列接続したLC型の共振回路の構成を有し、前記L11とC11の並列共振回路の共振周波数を前記第2の周波数(Fb)とし、この並列共振回路と他方のコンデンサ(C12)の直列共振回路の共振周波数を前記第1の周波数(Fa)としたことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第2の分波回路は、一対の入出力端子の間に2個のコイル(L21、L22)を直列接続するとともに、一方のコイル(L21)にコンデンサ(C21)を並列接続したLC型の共振回路の構成を有し、前記L21とC21の並列共振回路の共振周波数を前記第1の周波数(Fa)とし、この並列共振回路と他方のコイル(L22)の直列共振回路の共振周波数を前記第2の周波数(Fb)としたことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1の分波回路は、一対の入出力端子の間にコンデンサ(C31)とコイル(L31)を直列接続するとともに、前記一対の入出力端子の間にコンデンサ(C32)を接続したLC型の共振回路の構成を有し、前記C31とL31の直列共振回路の共振周波数を前記第1の周波数(Fa)とし、この直列共振回路と前記コンデンサ(C32)の並列共振回路の共振周波数を前記第2の周波数(Fb)としたことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第2の分波回路は、一対の入出力端子の間にコンデンサ(C41)とコイル(L41)を直列接続するとともに、前記一対の入出力端子の間にコイル(L42)を接続したLC型の共振回路の構成を有し、前記C41とL41の直列共振回路の共振周波数を前記第2の周波数(Fb)とし、この直列共振回路と前記コイル(L42)の並列共振回路の共振周波数を前記第1の周波数(Fa)としたことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1に記載のアンテナ装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−244454(P2012−244454A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113203(P2011−113203)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.GSM
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.GSM
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]