説明

アンテナ装置及び無線装置

【課題】ループ状アンテナ素子を備え多機能化された無線装置において、当該アンテナ素子を各機能に係る複数のシステム間で切り換えて共用化又は共通化したときの性能低下を防ぎ、かつ、ループ状アンテナ素子を含むアンテナ装置の特性を機能別に独立して調整可能にする。
【解決手段】アンテナ装置1は、ループ状アンテナ素子10並びに容量性素子11及び12からなる共振回路により、給電端15及び接地端17間に無線回路が接続される第1のシステムのアンテナとして動作する。またスイッチ素子14を切り換え、アンテナ素子10及び容量性素子11からなる共振回路により、給電端16及び接地端17間に無線回路が接続される第2のシステムのアンテナとして動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナ装置及び無線装置に係り、特にループ状に形成された導体をアンテナ素子として用いるアンテナ装置及び無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ループ状に形成された導体からなるアンテナ素子と、当該アンテナ素子を介して外部装置(リーダライタ)との間でデータを送受信する集積回路(IC)を内蔵したカード型のデバイスが知られている。このようなデバイスは、非接触ICカードと呼ばれる。また、非接触ICカードと等価な機能を内蔵した無線装置(例えば携帯電話機)が知られている。これらの非接触ICカード又は無線装置は、例えば料金精算、入退室管理、認証等の目的に用いられる。
【0003】
携帯電話機等の無線装置に、非接触ICカード機能とリーダライタ機能の両方を搭載する技術も知られている(例えば、特許文献1参照。)。上記の特許文献1によれば、非接触ICカード機能とリーダライタ機能を複合して半導体集積回路を構成し、共通のアンテナを介して外部のリーダライタ又は外部の非接触ICカードとの通信を行うことができる旨が記載されている。
【0004】
この他にも、リーダライタの小型化や効率の向上を図る技術が知られている(例えば、特許文献2又は特許文献3参照。)。上記の特許文献2によれば、リーダライタの送信部からループアンテナを含む第1の共振回路に接続し、ループアンテナから結合コンデンサ及び第2の共振回路を介して受信部に接続するように構成して送受分離することにより、送信効率と受信感度の両方を改善する旨が記載されている。
【0005】
上記の特許文献3によれば、リーダライタの3端子化されたループコイルとコンデンサの接続の工夫により、マッチングと高調波の抑制を図ってアンテナ効率を改善する旨が記載されている。
【特許文献1】特開2006−74423号公報(第2、7乃至12ページ、図3)
【特許文献2】特開2005−26741号公報(第2、6乃至8ページ、図1)
【特許文献3】特開2004−235884号公報(第2、6乃至9ページ、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
携帯電話機等の無線装置に内蔵されるループ状のアンテナ素子(例えば非接触ICカード機能又はリーダライタ機能に用いられるが、これらに限らない。)のサイズは、使用される周波数帯域(例えば現在実用化されている非接触ICカードのシステムにおいては13MHz帯)により、かなり大きなものとなる場合がある。
【0007】
一方、例えば携帯電話機のような無線装置は複数のシステム機能を搭載して多機能化する傾向にあるから、ループ状のアンテナ素子を他システムのアンテナにも共用したり、他システムのアンテナと回路を共通化したりすることができれば便宜であると共に、スペース効率も改善される。本発明が解決しようとする第1の課題は、上述したようなループ状のアンテナ素子の共用化又は共通化を図る点にある。
【0008】
無線装置に複数の機能の両方を搭載する場合、それぞれの機能に用いられる周波数が相異なる場合(例えば携帯電話と非接触ICカード)と、同一である場合(例えば非接触ICカードとリーダライタ)が考えられる。上述した共用化又は共通化が図られるループ状のアンテナ素子を含むアンテナ装置は、それぞれの機能に係る無線回路に切り換えて接続される。当該アンテナ装置の共振周波数等の特性は、機能別に独立して調整可能であることが望ましい。本発明が解決しようとする第2の課題は、このような独立調整を可能にする点にある。
【0009】
上述した特許文献1乃至特許文献3に開示された技術はいずれも、ループ状のアンテナ素子を上述したように共用化又は共通化するものではなく、上記の第1の課題を解決することはできないという問題があった。
【0010】
上述した特許文献1に開示された技術は、非接触ICカード機能とリーダライタ機能のそれぞれにおけるループ状のアンテナ素子の特性を独立に調整可能とするものではなく、上記の第2の課題を解決することはできないという問題があった。上述した特許文献2又は特許文献3に開示された技術は、リーダライタ機能のみに関するものであって、上記の第2の課題を解決することはできないという問題があった。
【0011】
従来の非接触ICカード又はリーダライタ用のアンテナ装置は、例えば図8(a)に示すように、ループ状のアンテナ素子と容量性素子からなる並列共振回路として構成される。図中のアンテナ装置8aは、ループ状に形成された導体からなるアンテナ素子80及び容量性素子81が並列共振回路をなして構成される。アンテナ装置8aは、給電端85及び接地端87を図示しない無線回路に接続することにより給電される。
【0012】
アンテナ素子80のインダクタンス値をL(80)、抵抗値をR(80)、容量性素子81の容量値をC(81)、アンテナ素子80と容量性素子81からなる並列共振回路の共振角周波数をω(8a)、アンテナ素子80のQ値をQ(8a)とすると、
Q(8a)=(ω(8a)×L(80))/R(80)
ただしω(8a)=(L(80)×C(81))の平方根の逆数
で表される。
【0013】
図8(b)に示すようにアンテナ装置8aを変形して、複数のシステム(仮に、第1システム及び第2システムという。)に共用可能なアンテナ装置8bを構成することができる。アンテナ装置8bは、アンテナ装置8aの構成にスイッチ素子84を付加し、アンテナ素子80の図中上側の端部(上端)がスイッチ素子84により切り換えられて給電端85又は新たに設けられた給電端86のいずれかに電気的に接続されるよう構成されたものである。
【0014】
アンテナ装置8bは、アンテナ装置8aと同様に給電端85及び接地端87を図示しない第1システム用の無線回路に接続すると共にスイッチ素子84を給電端85の側に切り換えることにより第1システム用のアンテナとして給電されるのに加えて、給電端86及び接地端87を別の図示しない第2システム用の無線回路に接続すると共にスイッチ素子84を給電端86の側に切り換えることにより第2システム用のアンテナとして給電される。
【0015】
アンテナ素子80のインダクタンス値及び抵抗値、容量性素子81の容量値はそれぞれ図8(a)の場合と同じとし、スイッチ素子84の導通抵抗をR(84)とする。この値はアンテナ素子80の抵抗値R(80)に直列であるから、図8(b)におけるアンテナ素子80のQ値をQ(8b)とすると、
Q(8b)=(ω(8a)×L(80))/(R(84)+R(80))
で表される。
【0016】
したがって、
Q(8b)=Q(8a)/(1+(R(84)/R(80)))
となり、図8(b)における(スイッチ素子84を挿入したときの)アンテナ素子80のQ値は、図8(a)におけるアンテナ素子80のQ値に比べて低下する。
【0017】
アンテナ素子80の両端間に誘起される電圧値は上記のQ値に比例するから、スイッチ素子84を設けて給電端85の側に切り換えたときのアンテナ装置8bの性能は、アンテナ装置8aの性能に劣る。例えばR(84)の値とR(80)の値が略等しいとすると、スイッチ素子84を挿入したことにより性能がほぼ半減することになる。
【0018】
図8(c)に示すようにアンテナ装置8bを変形して、アンテナ装置8cを構成する。アンテナ装置8cは、スイッチ素子84を容量性素子81と給電端85(又は86)との間に設けた点においてアンテナ装置8bと相違し、その他の点についてはアンテナ装置8bと同じである。
【0019】
図8(c)においてスイッチ素子84を給電端85の側に切り換えたときのアンテナ素子80のQ値は、図8(a)におけるのと同じQ(8a)である。また、アンテナ素子80と容量性素子81からなる並列共振回路の共振角周波数は、図8(a)におけるのと同じω(8a)である。アンテナ素子80と容量性素子81からなる並列共振回路のインピーダンスの抵抗分は、その共振周波数ω(8a)において最も高くなり、一般にスイッチ素子84の導通抵抗より数桁高い値をとる。したがって、スイッチ素子84を設けたことにより生じるアンテナ素子80の両端誘起電圧の低下は1パーセント以下にとどまり、図8(b)の構成における上記の問題点(スイッチ素子84の挿入に伴う性能の低下)は軽減される。
【0020】
図8(d)に示すようにアンテナ装置8cを変形して、アンテナ装置8dを構成する。アンテナ装置8dは、例えば4分の1波長モノポール型の付加アンテナ素子89をアンテナ素子80の上端と電気的に接続した点においてアンテナ装置8cと相違し、その他の点についてはアンテナ装置8cと同じである。
【0021】
付加アンテナ素子89は一般に、アンテナ素子80と容量性素子81からなる並列共振回路とは異なる共振周波数を有する。付加アンテナ素子89の共振周波数における上記の並列共振回路のインピーダンスは、その並列共振角周波数ω(8a)における最大値に比べて低下する。したがって、スイッチ素子84を給電端86の側に切り換えたとき給電端86から給電されるアンテナ電流は、付加アンテナ素子89だけでなく上記の並列共振回路にも側流するため、付加アンテナ素子89の損失が増大したのと等価である。
【0022】
付加アンテナ素子89の損失を改善するためアンテナ素子80又は容量性素子81の定数を調整すると、スイッチ素子84を給電端85の側に切り換えたときの共振周波数の値が変動する。すなわち、調整の独立性が保たれない。
【0023】
以上、図8を参照して説明したところを要約すると、図8(b)の構成では、スイッチ素子84を挿入したことによりアンテナ素子80のQ値が低下してアンテナ性能が低下し、その点を改善した図8(c)又は(d)の構成では、付加アンテナ素子を設けてもその性能を十分に発揮することが難しいという問題があった。
【0024】
本発明は上述した諸問題を解決するためになされたもので、多機能化された無線装置において、ループ状のアンテナ素子を各機能に係る複数のシステム間で共用化又は共通化したときの性能低下を防ぎ、かつ、ループ状のアンテナ素子を含むアンテナ装置の特性を機能別に独立して調整可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するために、本発明のアンテナ装置は、第1の給電端と、第2の給電端と、第1の端部及び第2の端部を有し、ループ状に形成された導体からなるアンテナ素子と、前記アンテナ素子と並列に接続された第1の容量性素子と、前記アンテナ素子の第1の端部が、前記第1の給電端又は前記第2の給電端のうちいずれか一方と電気的に接続されるように切り換えるスイッチ素子と、一端が前記第1の給電端と電気的に接続され、他端が前記アンテナ素子の第2の端部と電気的に接続された第2の容量性素子とを備えたことを特徴とする。
【0026】
また、本発明の無線装置は、第1の給電端及び第2の給電端と、第1の端部及び第2の端部を有してループ状に形成された導体からなるアンテナ素子と、前記アンテナ素子と並列に接続された第1の容量性素子と、前記アンテナ素子の第1の端部が前記第1の給電端又は前記第2の給電端のいずれか一方と電気的に接続されるように切り換えるスイッチ素子と、一端が前記第1の給電端と電気的に接続され他端が前記アンテナ素子の第2の端部と電気的に接続された第2の容量性素子とを含んでなるアンテナ装置と、前記アンテナ装置の第1の給電端又は第2の給電端のうちの一方に接続された送受信回路と、前記アンテナ装置の第1の給電端又は第2の給電端のうちの他方に接続された受信回路とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ループ状のアンテナ素子及びスイッチ素子を含む共振回路の構成を選ぶことにより、多機能化された無線装置においてループ状のアンテナ素子を含む回路を複数のシステム間で共用化又は共通化し、かつ、ループ状のアンテナ素子を含むアンテナ装置の特性を機能別に独立して調整可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0029】
以下、図1を参照して、本発明の実施例1を説明する。図1(a)は、本発明の実施例1に係るアンテナ装置1の構成及び接続を表す図である。アンテナ装置1は、アンテナ素子10、容量性素子11、容量性素子12及びスイッチ素子14を有している。アンテナ素子10はループ状に形成された導体からなる2端子素子で、図中の上側及び下側にそれぞれ端部(上端と下端)を有している。容量性素子11及び容量性素子12は、それぞれ例えば固定コンデンサ、可変コンデンサ、バラクタダイオード等の2端子素子である。スイッチ素子14は、機械的スイッチ又は電子的スイッチ(半導体スイッチ等)である。容量性素子11は、アンテナ素子10と並列に接続されている。
【0030】
アンテナ装置1は2のシステムに切り換えて共用可能に構成されており、給電端15、給電端16及び接地端17を有している。アンテナ素子10の上端は、スイッチ素子14を介して給電端15と電気的に接続されている。容量性素子12は、一端が給電端15と電気的に接続され、他端がアンテナ素子10の下端及び接地端17と電気的に接続される。
【0031】
図1(a)において、アンテナ素子10のインダクタンス値をL(10)、Q値をQ(1a)、容量性素子11の容量値をC(11)、容量性素子12の容量値をC(12)とする。アンテナ素子10は、容量性素子11及び容量性素子12と並列共振回路を構成し、その共振角周波数は(L(10)×(C(11)+C(12)))の平方根の逆数に等しい。この値により定まる周波数又はその近傍の周波数を用いるシステム(これを、第1のシステムと呼ぶ。)の図示しない無線回路を給電端15及び接地端17の間に接続することにより、アンテナ装置1を当該第1のシステムにおいて使用することができる。
【0032】
第1のシステムにおいてスイッチ素子14を設けたことによるアンテナ素子10のQ値の低下は、スイッチ素子14の導通抵抗の値を、第1のシステムの使用周波数におけるアンテナ素子10と容量性素子11からなる並列共振回路のインピーダンスの抵抗分に比べて小さくすることにより、先に図8(c)を参照して説明したのと同じように限定することができる。
【0033】
図1(b)は図1(a)と同じくアンテナ装置1の構成及び接続を表し、スイッチ素子14が切り換えられた点を除いて図1(a)と同じ図である。アンテナ素子10の上端は、スイッチ素子14を介して給電端16と電気的に接続されている。アンテナ素子10は、容量性素子11と並列共振回路を構成し、その共振角周波数は(L(10)×C(11))の平方根の逆数に等しい。この値により定まる周波数又はその近傍の周波数を用いるシステム(これを、第2のシステムと呼ぶ。)の図示しない無線回路を給電端16及び接地端17の間に接続することにより、アンテナ装置1を当該第2のシステムにおいて使用することができる。
【0034】
第2のシステムにおいてスイッチ素子14を設けたことによるアンテナ素子10のQ値の低下は、スイッチ素子14の導通抵抗の値が、第2のシステムの使用周波数すなわちアンテナ素子10と容量性素子11からなる並列共振回路の共振周波数における当該並列共振回路のインピーダンスの抵抗分に比べて十分小さいことから、先に図8(c)を参照して説明したのと同じように限定することができる。
【0035】
本発明の実施例1によれば、スイッチ素子の切り換えによって1のループ状アンテナ素子を含む複数の共振回路を形成可能にすることにより、相異なる周波数で使用される複数のシステム用のアンテナを構成することができる。
【実施例2】
【0036】
以下、図2を参照して、本発明の実施例2を説明する。図2(a)は、本発明の実施例2に係るアンテナ装置2の構成及び接続を表す図である。アンテナ装置2は、図1(a)又は(b)に表したアンテナ装置1に容量性素子23を付加したものであるから、アンテナ装置1と共通の構成については同じ符号を付して表し、説明を省略する。容量性素子23は、例えば固定コンデンサ、可変コンデンサ、バラクタダイオード等の2端子素子である。容量性素子23は、一端が給電端16と電気的に接続され、他端がアンテナ素子10の下端及び接地端17と電気的に接続されている。
【0037】
図2(a)においては、図1(a)を参照して説明したのと同様に、アンテナ素子10の上端はスイッチ素子14を介して給電端15と電気的に接続されている。アンテナ素子10、容量性素子11及び容量性素子12が構成する並列共振回路の共振角周波数は(L(10)×(C(11)+C(12)))の平方根の逆数に等しい。この値により定まる周波数又はその近傍の周波数を用いる第1のシステムの図示しない無線回路を給電端15及び接地端17の間に接続することにより、アンテナ装置2を当該第1のシステムにおいて使用することができる。
【0038】
図2(b)は図2(a)と同じくアンテナ装置2の構成及び接続を表し、スイッチ素子14が切り換えられた点を除いて図2(a)と同じ図である。アンテナ素子10の上端は、スイッチ素子14を介して給電端16と電気的に接続されている。アンテナ素子10は、容量性素子23及び容量性素子11と並列共振回路を構成し、その共振角周波数は(L(10)×(C(11)+C(23)))の平方根の逆数に等しい(C(23)は容量性素子23の容量値。)。この値により定まる周波数又はその近傍の周波数を用いる第2のシステムの図示しない無線回路を給電端16及び接地端17の間に接続することにより、アンテナ装置2を当該第2のシステムにおいて使用することができる。
【0039】
アンテナ装置2は、実施例1で説明したアンテナ装置1と同様に、相異なる周波数で使用される複数のシステム用のアンテナとして用いることができる。それぞれの周波数においてスイッチ素子14を設けたことによるアンテナ素子10のQ値の低下は、スイッチ素子14の導通抵抗の値をアンテナ素子10と容量性素子11からなる並列共振回路の上記各周波数におけるインピーダンスの抵抗分に比べて小さくすることにより、実施例1において説明したのと同じように限定することができる。
【0040】
例えば、第1のシステムが非接触ICカード、第2のシステムがリーダライタであるような場合には、両システムの使用周波数が同じか又は近い値をとる。実施例1は、アンテナ装置1が給電端15から給電される第1のシステムの使用周波数が、給電端16から給電される第2のシステムの使用周波数よりも高いことを前提としている。したがって、実施例1のアンテナ装置1を上記のように第1及び第2のシステムの使用周波数が同じか又は近い場合に適用することは難しい。
【0041】
これに対して、アンテナ装置2は、上記のように第1及び第2のシステムの使用周波数が同じか又は近い場合にも容易に適用することができる。一方のシステムにおいて周波数の調整を行っても、他方のシステムに影響を与えないようにすることができる。
【0042】
本発明の実施例2によれば、スイッチ素子の切り換えによって1のループ状アンテナ素子を含む複数の共振回路を形成可能にし、同じか又は近い値をとる周波数で使用される複数のシステム用のアンテナとして用いることができるという、付加的な効果が得られる。
【実施例3】
【0043】
以下、図3を参照して、本発明の実施例3を説明する。図3(a)は、本発明の実施例3に係るアンテナ装置3の構成及び接続を表す図である。アンテナ装置3は、図1(a)又は(b)に表したアンテナ装置1に付加アンテナ素子30を付加したものであるから、アンテナ装置1と共通の構成については同じ符号を付して表し、説明を省略する。アンテナ装置3に含まれるアンテナ素子10の上端は、スイッチ素子14を介して給電端15と電気的に接続されている。
【0044】
付加アンテナ素子30は、アンテナ素子10の上端と電気的に接続される。付加アンテナ素子30の共振周波数は、アンテナ素子10と容量性素子11からなる並列共振回路の共振周波数又はその近傍に設定される。例えば付加アンテナ素子30が4分の1波長モノポールアンテナである場合には、スイッチ素子14の切り換えにより給電端16に接続された場合を考え、給電端16からスイッチ素子14を経て付加アンテナ素子30の開放端までの線路長を選ぶことにより上記の設定が可能である。
【0045】
図3(a)において、アンテナ素子10は容量性素子11及び容量性素子12と並列共振回路を構成し、実施例1で説明したのと同じくその共振周波数又はその近傍の周波数を用いる第1のシステムにおいてアンテナ装置3を使用することができる。スイッチ素子14を設けたことによるアンテナ素子10のQ値の低下は、実施例1と同様に限定することができる。付加アンテナ素子30の共振周波数と上記の並列共振周波数との差を十分大きくとることにより、付加アンテナ素子30が付加されたことによる影響を限定することができる。
【0046】
図3(b)は図3(a)と同じくアンテナ装置3の構成及び接続を表し、スイッチ素子14が切り換えられた点を除いて図3(a)と同じ図である。付加アンテナ素子30は、スイッチ素子14を介して給電端16と電気的に接続されている。アンテナ素子10は、容量性素子11と並列共振回路を構成し、その共振周波数において当該並列共振回路のインピーダンスは最も高い値をとる。したがって、図8(d)に表した場合と異なり給電端16から付加アンテナ素子30に給電されるアンテナ電流の当該並列共振回路への側流は限定され、付加アンテナ素子30の損失の増加を抑えることができる。
【0047】
付加アンテナ素子30の損失を改善するためアンテナ素子10又は容量性素子11の定数を調整した場合であっても、スイッチ素子14を給電端15の側に切り換えたときの共振周波数の値は容量性素子12の定数によって調整することができる。すなわち、調整の独立性が保たれる。
【0048】
本発明の実施例3によれば、スイッチ素子の切り換えによって1のループ状アンテナ素子を含む複数の共振回路を形成可能にすると共に、その一方の共振周波数又はその近傍の周波数に共振する付加アンテナ素子を設けることにより、相異なる周波数で使用される複数のシステム用のアンテナをスペース効率よく構成することができる。
【実施例4】
【0049】
以下、図4を参照して、本発明の実施例4を説明する。図4(a)は、本発明の実施例4に係るアンテナ装置4の構成及び接続を表す図である。アンテナ装置4は、図3(a)又は(b)に表したアンテナ装置3にスイッチ素子44を付加したものであるから、アンテナ装置3と共通の構成については同じ符号を付して表し、説明を省略する。アンテナ素子10の上端は、スイッチ素子14を介して給電端15と電気的に接続される。アンテナ素子10の下端は、スイッチ素子44を介して接地端17と電気的に接続される。
【0050】
図4(a)に表されたアンテナ装置4の回路は、図3(a)に表されたアンテナ装置3の回路と電気的に等価である。したがって、アンテナ素子10は容量性素子11及び容量性素子12と並列共振回路を構成し、実施例1で説明したのと同じくその共振周波数又はその近傍の周波数を用いる第1のシステムにおいてアンテナ装置4を使用することができる。
【0051】
図4(b)は図4(a)と同じくアンテナ装置4の構成及び接続を表し、スイッチ素子14及びスイッチ素子44が切り換えられた点を除いて図4(a)と同じ図である。なお、スイッチ素子14及びスイッチ素子44は、上記のように連動して切り換えられるように構成されている。付加アンテナ素子30は、スイッチ素子14を介して給電端16と電気的に接続されている。
【0052】
アンテナ素子10の下端は、スイッチ素子44が切り換えられたために開放されている。その結果、給電端16から付加アンテナ素子30に給電されるアンテナ電流はアンテナ素子10と容量性素子11からなる並列共振回路へ側流せず、付加アンテナ素子30の損失は増加しない。実施例3の場合と異なり、この効果を得るために付加アンテナ素子30の共振周波数をアンテナ素子10と容量性素子11からなる並列共振回路の共振周波数又はその近傍に設定する必要はない。
【0053】
本発明の実施例4によれば、付加アンテナ素子の共振周波数設定の自由度を高めることができるという、付加的な効果が得られる。
【実施例5】
【0054】
以下、図5乃至図7を参照して、本発明の実施例5を説明する。図5は、本発明の実施例5に係る無線装置5の構成及び接続を表す図である。無線装置5は、実施例1において説明したアンテナ装置1と、送受信回路51及び受信回路52を備えている。アンテナ装置1の構成については、実施例1で説明した通りであるので再度の説明を省略する。
【0055】
送受信回路51は、実施例1で説明した第1のシステムの無線回路として、アンテナ装置1の給電端15及び接地端17に接続される。送受信回路51は、例えば非接触ICカード又はリーダライタ用の送受信回路であるが、これに限るものではない。受信回路52は、実施例1で説明した第2のシステムの無線回路として、アンテナ装置1の給電端16及び接地端17に接続される。受信回路52は、例えば読み取り専用装置用の受信回路であるが、これに限るものではない。無線装置5は、送受信回路51の使用周波数が受信回路52の使用周波数よりも高い場合に適用することができる。
【0056】
図6は、本発明の実施例5に係る無線装置6の構成及び接続を表す図である。無線装置6は、実施例1において説明したアンテナ装置1と、送受信回路61及び受信回路62を備えている。
【0057】
送受信回路61は、実施例1で説明した第2のシステムの無線回路として、アンテナ装置1の給電端16及び接地端17に接続される。送受信回路61は、例えば非接触ICカード又はリーダライタ用の送受信回路であるが、これに限るものではない。受信回路62は、実施例1で説明した第1のシステムの無線回路として、アンテナ装置1の給電端15及び接地端17に接続される。受信回路62は、例えば読み取り専用装置用の受信回路であるが、これに限るものではない。無線装置6は、受信回路62の使用周波数が送受信回路61の使用周波数よりも高い場合に適用することができる。
【0058】
なお図6に表した無線装置6の構成において、アンテナ装置1を実施例3で説明したアンテナ装置3又は実施例4で説明したアンテナ装置4と置き換え、送受信回路61を例えば携帯電話又は無線LAN用の送受信回路としてもよい。この場合には、受信回路62の使用周波数が送受信回路61の使用周波数より低くてもよい。
【0059】
図7は、本発明の実施例5に係る無線装置7の構成及び接続を表す図である。無線装置7は、実施例2において説明したアンテナ装置2と、送受信回路71及び受信回路72を備えている。アンテナ装置2の構成については、実施例2で説明した通りであるので再度の説明を省略する。
【0060】
送受信回路71は、実施例2で説明した第1のシステムの無線回路として、アンテナ装置2の給電端15及び接地端17に接続される。送受信回路71は、例えば非接触ICカード又はリーダライタ用の送受信回路であるが、これに限るものではない。受信回路72は、実施例2で説明した第2のシステムの無線回路として、アンテナ装置2の給電端16及び接地端17に接続される。受信回路72は、例えば読み取り専用装置用の受信回路であるが、これに限るものではない。
【0061】
無線装置7は、上述した無線装置5と同様に、送受信回路71の使用周波数と受信回路72の使用周波数が相異なる場合に適用することができる。無線装置7は、送受信回路71の使用周波数と受信回路72の使用周波数が同じか又は近い値をとる場合に適用することができる。送信回路の増幅器と受信回路の増幅器とで端子間容量が異なる場合に、アンテナ装置2の構成により複数の共振回路を独立して調整可能である利点が発揮される。
【0062】
本発明の実施例5によれば、実施例1乃至実施例4において説明したアンテナ装置を複数のシステムに共用化又は共通化した無線装置を構成し、各システムの共振周波数を異ならせたり、周波数を同一にして独立に調整したりすることができる。
【0063】
以上の実施例1乃至実施例5において説明したアンテナ装置又は無線装置の構成、接続、周波数等の条件は例示であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまな変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施例1に係るアンテナ装置の構成及び接続を表す図((a)及び(b)の区別はスイッチ素子の切り換えに対応する。)。
【図2】本発明の実施例2に係るアンテナ装置の構成及び接続を表す図((a)及び(b)の区別はスイッチ素子の切り換えに対応する。)。
【図3】本発明の実施例3に係るアンテナ装置の構成及び接続を表す図((a)及び(b)の区別はスイッチ素子の切り換えに対応する。)。
【図4】本発明の実施例4に係るアンテナ装置の構成及び接続を表す図((a)及び(b)の区別はスイッチ素子の切り換えに対応する。)。
【図5】本発明の実施例5に係る無線装置の第1の構成及び接続を表す図。
【図6】本発明の実施例5に係る無線装置の第2の構成及び接続を表す図。
【図7】本発明の実施例5に係る無線装置の第3の構成及び接続を表す図。
【図8】(a)は従来の非接触ICカード等用のアンテナ装置の構成及び接続を表す図、(b)はその変形例の構成及び接続を表す図、(c)はさらに素子の位置関係を入れ換えた場合の構成及び接続を表す図、(d)はさらに付加アンテナ素子を付加した場合の構成及び接続を表す図。
【符号の説明】
【0065】
1、2、3、4 アンテナ装置
5、6、7 無線装置
10 アンテナ素子
11、12、23 容量性素子
14 スイッチ素子
15、16 給電端
17 接地端
30 付加アンテナ素子
51、61、71 送受信回路
52、62、72 受信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の給電端と、
第2の給電端と、
第1の端部及び第2の端部を有し、ループ状に形成された導体からなるアンテナ素子と、
前記アンテナ素子と並列に接続された第1の容量性素子と、
前記アンテナ素子の第1の端部が、前記第1の給電端又は前記第2の給電端のうちいずれか一方と電気的に接続されるように切り換えるスイッチ素子と、
一端が前記第1の給電端と電気的に接続され、他端が前記アンテナ素子の第2の端部と電気的に接続された第2の容量性素子とを
備えたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
一端が前記第2の給電端と電気的に接続され、他端が前記アンテナ素子の第2の端部と電気的に接続された第3の容量性素子を、さらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナ素子の第1の端部と電気的に接続され、前記アンテナ素子のインダクタンス値及び前記第1の容量性素子の容量値によって定まる共振周波数又はその近傍で共振する付加アンテナ素子を、さらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記アンテナ素子の第1の端部と電気的に接続された付加アンテナ素子と、
前記アンテナ素子の第1の端部が前記第2の給電端と電気的に接続されるように前記スイッチ素子を切り換えたとき、前記アンテナ素子の第2の端部が開放されるように前記アンテナ素子の第2の端部に電気的に接続された付加スイッチ素子を、さらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
第1の給電端及び第2の給電端と、第1の端部及び第2の端部を有してループ状に形成された導体からなるアンテナ素子と、前記アンテナ素子と並列に接続された第1の容量性素子と、前記アンテナ素子の第1の端部が前記第1の給電端又は前記第2の給電端のいずれか一方と電気的に接続されるように切り換えるスイッチ素子と、一端が前記第1の給電端と電気的に接続され他端が前記アンテナ素子の第2の端部と電気的に接続された第2の容量性素子とを含んでなるアンテナ装置と、
前記アンテナ装置の第1の給電端又は第2の給電端のうちの一方に接続された送受信回路と、
前記アンテナ装置の第1の給電端又は第2の給電端のうちの他方に接続された受信回路とを
備えたことを特徴とする無線装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−61009(P2008−61009A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236801(P2006−236801)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】