説明

アンテナ装置及び無線通信デバイス

【課題】金属部材が近接している場合及び近接していない場合にあっても放射素子として機能するRFIDシステムに好適なアンテナ装置及び無線通信デバイスを得る。
【解決手段】誘電体素体20にループ状放射導体30及び中立導体35を設けたアンテナ装置。誘電体素体20上に無線IC素子50を搭載して無線通信デバイスとして構成される。ループ状放射導体30は、誘電体素体20の表面側に設けられた表面側導体31a,31bと、誘電体素体20の裏面側に設けられた裏面側導体33a,33bと、表面側導体31a,31b及び裏面側導体33a,33bを接続する層間接続導体34a,34bとで構成されている。中立導体35はループ状放射導体30から電気的に独立して配置され、表面側導体31a,31bと対向する対向領域40a,40bを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置及び無線通信デバイス、特にRFID(Radio Frequency Identification)システムに用いられるアンテナ装置及び無線通信デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の情報管理システムとして、誘導磁界を発生するリーダライタと、物品に付されたRFIDタグ(無線通信デバイスとも称する)とを電磁界を利用した非接触方式で通信し、所定の情報を伝達するRFIDシステムが実用化されている。このRFIDタグは、所定の情報を記憶し、所定の無線信号を処理する無線ICチップと、高周波信号の送受信を行うアンテナ(放射体)とを備えている。
【0003】
金属板に近接配置しても動作可能なRFIDタグとして、特許文献1に記載されている金属対応タグが知られている。この金属対応タグは、平板状の誘電体部材にループアンテナ導体を巻き付け、該ループアンテナ導体の一部分に形成したギャップ部分にRFIDチップを搭載している。また、ループアンテナ導体のチップ搭載面とは反対面側にもギャップが形成されている。この金属対応タグは、金属板に貼着されると、誘電体部材の裏面の導体と金属板との容量結合を介してループアンテナ導体及び金属板の両者に高周波信号電流が流れる。
【0004】
しかしながら、前記金属対応タグにおいては、誘電体部材の裏面の導体と金属板とが容量結合しているため、その容量値が変動すると、つまり、タグと金属板との距離がばらつくと、インピーダンスが変化してしまうという問題点を有している。従って、金属板が近接した状態でないと動作しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−272264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、金属部材が近接している場合及び近接していない場合にあっても放射素子として機能するRFIDシステムに好適なアンテナ装置及び無線通信デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の形態であるアンテナ装置は、
誘電体素体と
前記誘電体素体の表面側に設けられた第1及び第2表面側導体と、前記誘電体素体の裏面側に設けられた裏面側導体と、第1表面側導体及び前記裏面側導体を接続する第1層間接続導体と、第2表面側導体及び前記裏面側導体を接続する第2層間接続導体とで、ループ状に結合されたループ状放射導体と、
前記ループ状放射導体から独立した中立導体と、
を備え、
前記中立導体は第1表面側導体と対向する第1対向領域及び第2表面側導体と対向する第2対向領域を有すること、
を特徴とする。
【0008】
本発明の第2の形態である無線通信デバイスは、高周波信号を処理する無線IC素子と、該無線IC素子に結合された前記アンテナ装置とを備えたことを特徴とする。
【0009】
前記アンテナ装置において、高周波信号電流はループ状放射導体を流れようとする。金属部材が近接している場合、この金属部材を信号電流経路として高周波信号電流がループ状放射導体に流れ、金属部材から磁界エネルギーが外部に放射され、かつ、金属部材で受け取った磁界エネルギーがループ状放射導体に流れる。一方、金属部材が近接していない場合、第1及び第2表面側導体と中立導体とが第1及び第2対向領域で容量結合し、高周波信号電流は第1及び第2表面側導体と中立導体とを信号電流経路として流れるとともに、ループ状放射導体にも流れる。ループ状放射導体は、第1及び第2表面電極と中立導体とでインピーダンスの整合をとって、ダイポール型放射素子として機能する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属部材が近接している場合及び近接していない場合にあっても放射素子として機能し、金属部材との距離に影響されることなく、通信が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施例であるアンテナ装置を備えた無線通信デバイスを示し、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【図2】第1実施例であるアンテナ装置の動作説明図であり、(A)は金属板が近接している場合を示し、(B)は金属板は近接していない場合を示す。
【図3】無線IC素子としての無線ICチップを示す斜視図である。
【図4】無線IC素子として給電回路基板上に前記無線ICチップを搭載した状態を示す斜視図である。
【図5】給電回路の一例を示す等価回路図である。
【図6】前記給電回路基板の積層構造を示す平面図である。
【図7】第2実施例であるアンテナ装置を構成するループ状放射導体を示す斜視図である。
【図8】第3実施例であるアンテナ装置を備えた無線通信デバイスを示し、(A)は断面図、(B)は金属板が近接している場合の動作説明図、(C)は金属板が近接していない場合の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るアンテナ装置及び無線通信デバイスの実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部品、部分は同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
(第1実施例、図1及び図2参照)
第1実施例であるアンテナ装置10Aは、UHF帯の通信に用いられるものであり、図1に示すように、無線IC素子50を備えた無線通信デバイスとして構成されている。アンテナ装置10Aは、直方体形状をなす誘電体素体20と、ループ状放射導体30と、中立導体35とで構成されている。無線IC素子50は、高周波信号を処理するもので、その詳細は図3〜図6を参照して以下に詳述する。誘電体素体20は、エポキシなどの熱硬化性樹脂やポリイミドなどの熱可塑性樹脂、あるいは、LTCCなどのセラミックからなり(磁性体であってもよい)、単層基板あるいは多層基板として構成されている。
【0014】
ループ状放射導体30は、誘電体素体20の表面に設けられた第1及び第2表面側導体31a,31bと、誘電体素体20の裏面に設けられた第1及び第2裏面側導体33a,33bと、第1表面側導体31a及び第1裏面側導体33aを接続する第1層間接続導体34aと、第2表面側導体31b及び第2裏面側導体33bを接続する第2層間接続導体34bとで構成されている。誘電体素体20の表面上であって第1及び第2表面側導体31a,31bの互いの対向する端部には給電端子32a,32bが形成されている。また、第1及び第2層間接続導体34a,34bは誘電体素体20の両端面に設けられている。
【0015】
裏面側導体は第1及び第2スリット36a,36bによって中立導体35を間に配置した第1裏面側導体33aと第2裏面側導体33bとに分割されている。中立導体35は、ループ状放射導体30から独立して形成され、第1表面側導体31aと対向する第1対向領域40a、及び、第2表面側導体31bと対向する第2対向領域40bを有している。
【0016】
前記各種導体は、銅やアルミなどの金属箔からなる薄膜導体パターンとして形成されたもの、あるいは、銀や銅などの粉末を含む導電性ペーストからなる厚膜導体パターンとして形成されたものである。
【0017】
誘電体素体20の表面には、無線IC素子50が給電端子32a,32bに結合されている。この結合は電磁界結合あるいは半田バンプなどによる電気的な直接結合(DC接続)である。
【0018】
以上の構成からなるアンテナ装置10Aは、図2(A)に示すように、基板45の表面に設けた金属板46に絶縁性接着剤47を介して貼着された場合と、図2(B)に示すように基板45の表面に金属板を介することなく絶縁性接着剤47を介して貼着された場合とで異なる動作で高周波信号の送受信を行う。
【0019】
即ち、金属板46が近接している場合、無線IC素子50から所定の高周波信号が伝達されると、図2(A)に点線で示すように、ループ状放射導体30とループ状放射導体30と結合した金属板46の表面に沿って高周波信号電流が流れる。ループ状放射導体30の周回面であるループ面は金属板46に対して垂直に配置されている。これにより、金属板46の表面に対して磁界が形成されるので、アンテナ装置10Aを金属板46に貼着してもアンテナとして機能させることができる。第1及び第2裏面側導体33a,33bの端部では接着剤47を介して容量で金属板46と結合している。高周波信号電流はこの容量結合を介して金属板46を電流経路として流れる。ループ状放射導体30は磁界アンテナとして作用し、金属板46から磁界エネルギーが外部に放射される。これにて、金属板46を介してリーダライタとの通信が可能となる。RFIDシステムのリーダライタから放射されて金属板46で受信された高周波信号はループ状放射導体30を介して無線IC素子50に供給され、無線IC素子50が動作する。一方、無線IC素子50からの応答信号はループ状放射導体30を介して金属板46に伝達されてリーダライタに放射される。
【0020】
前記ループ状放射導体30は、無線IC素子50と金属板46とを結合させるインピーダンスの整合回路として機能する。ループ状放射導体30はその電気長などを調整することで、インピーダンスの整合をとることができる。
【0021】
金属板46が近接していない場合、図2(B)に示すように、第1及び第2表面側導体31a,31bと中立導体35とが第1及び第2対向領域40a,40b(図1(B)参照)で比較的大きな容量C1,C2で結合する。この場合、高周波信号電流は、一点鎖線で示すように、第1及び第2表面側導体31a,31bと中立導体35とを容量C1,C2を介して流れる。また、高周波信号電流は、点線で示すように、ループ状放射導体30、即ち、第1及び第2表面側導体31a,31bから第1及び第2層間接続導体34a,34bを通じて第1及び第2裏面側導体33a,33bに流れる。このとき、第1及び第2表面側導体31a,31bと中立導体35とで構成されるループから高周波信号の一部が外部に磁界として放射され、かつ、ループ状放射導体30(31a,31b,33a,33b,34a,34b)がダイポール型放射素子として作用し、高周波信号が外部に電界として放射される。
【0022】
この場合は、第1及び第2表面側導体31a,31bと、これに結合した中立導体35とが、インピーダンスの整合回路として機能する。中立導体35の電気長や、第1及び第2表面側導体31a,31bと中立導体35との距離などを調整することで、無線IC素子50とループ状放射導体30とのインピーダンスの整合をとることができる。そして、第1及び第2表面側導体31a,31bと中立導体35とでインピーダンスの整合をとることで、ループ状放射導体30がダイポール型放射素子として機能する。
【0023】
なお、ループ状放射導体30は電気長に相当する所定の共振周波数を有し、ダイポール型放射素子も同様にその電気長に相当する所定の共振周波数を有している。
【0024】
(無線IC素子、図3〜図6参照)
無線IC素子50は、図3に示すように、高周波信号を処理する無線ICチップ51であってもよく、あるいは、図4に示すように、無線ICチップ51と所定の共振周波数を有する共振回路を含んだ給電回路基板65とで構成されていてもよい。
【0025】
図3に示す無線ICチップ51は、クロック回路、ロジック回路、メモリ回路などを含み、必要な情報がメモリされている。無線ICチップ51は、その裏面に入出力用端子電極52,52及び実装用端子電極53,53が設けられている。入出力用端子電極52,52は前記第1実施例で示した給電端子32a,32bと金属バンプなどを介して電気的に接続される。なお、金属バンプの材料としては、Au、はんだなどを用いることができる。
【0026】
図4に示すように、無線ICチップ51と給電回路基板65とで無線IC素子50を構成する場合、給電回路基板65には種々の給電回路(共振回路/整合回路を含む)を設けることができる。例えば、図5に等価回路として示すように、互いに異なるインダクタンス値を有し、かつ、互いに逆相で磁気結合(相互インダクタンスMで示す)されているインダクタンス素子L1、L2を含む給電回路66であってもよい。給電回路66は、所定の共振周波数を有するとともに、無線ICチップ51のインピーダンスと金属板46とのインピーダンスマッチングを図っている。なお、無線ICチップ51と給電回路66とは、電気的に接続(DC接続)されていてもよいし、電磁界を介して結合されていてもよい。
【0027】
給電回路66は、無線ICチップ51から発信された所定の周波数を有する高周波信号を前記ループ状放射導体30に伝達し、かつ、受信した高周波信号をループ状放射導体30を介して無線ICチップ51に供給する。給電回路66が所定の共振周波数を有するので、インピーダンスマッチングが図りやすくなり、インピーダンスの整合回路、即ち、ループ状放射導体30や第1及び第2表面側導体31a,31bと中立導体35の電気長を短くすることができる。
【0028】
次に、給電回路基板65の構成について説明する。図3及び図4に示すように、無線ICチップ51の入出力用端子電極52は、給電回路基板65上に形成した給電端子電極142a、142bに、実装用端子電極53は、実装端子電極143a、143bに金属バンプなどを介して接続される。
【0029】
給電回路基板65は、図6に示すように、誘電体あるいは磁性体からなるセラミックシート141a〜141hを積層、圧着、焼成したものである。但し、給電回路基板65を構成する絶縁層はセラミックシートに限定されるものではなく、例えば、液晶ポリマなどのような熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂のような樹脂シートであってもよい。最上層のシート141aには、給電端子電極142a,142b、実装端子電極143a,143b、ビアホール導体144a,144b,145a,145bが形成されている。2層目〜8層目のシート141b〜141hには、それぞれ、インダクタンス素子L1,L2を構成する配線電極146a,146bが形成され、必要に応じてビアホール導体147a,147b,148a,148bが形成されている。
【0030】
以上のシート141a〜141hを積層することにより、配線電極146aがビアホール導体147aにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L1が形成され、配線電極146bがビアホール導体147bにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L2が形成される。また、配線電極146a,146bの線間にキャパシタンスが形成される。
【0031】
シート141b上の配線電極146aの端部146a−1はビアホール導体145aを介して給電端子電極142aに接続され、シート141h上の配線電極146aの端部146a−2はビアホール導体148a,145bを介して給電端子電極142bに接続される。シート141b上の配線電極146bの端部146b−1はビアホール導体144bを介して給電端子電極142bに接続され、シート141h上の配線電極146bの端部146b−2はビアホール導体148b,144aを介して給電端子電極142aに接続される。
【0032】
以上の給電回路66において、インダクタンス素子L1,L2はそれぞれ逆方向に巻かれているため、インダクタンス素子L1,L2で発生する磁界が相殺される。磁界が相殺されるため、所望のインダクタンス値を得るためには配線電極146a,146bをある程度長くする必要がある。これにてQ値が低くなるので共振特性の急峻性がなくなり、共振周波数付近で広帯域化することになる。
【0033】
インダクタンス素子L1,L2は、給電回路基板65を平面透視したときに、左右の異なる位置に形成されている。また、インダクタンス素子L1,L2で発生する磁界はそれぞれ逆向きになる。これにて、給電回路66をループ状放射導体30に結合させたとき、ループ状放射導体30には逆向きの電流が励起され、金属板46に電流を発生させることができ、その電流による電位差で金属板46を放射素子(アンテナ)として動作させることができる。
【0034】
給電回路基板65に共振/整合回路を内蔵することにより、外部の物品の影響による特性変動を抑えることができ、通信品質の劣化を防ぐことができる。また、無線IC素子50を構成する無線ICチップ51を給電回路基板65の厚み方向の中央側に向けて配置すれば、無線ICチップ51の破壊を防ぐことができ、無線IC素子50としての機械的強度を向上させることができる。
【0035】
(第2実施例、図7参照)
第2実施例であるアンテナ装置10Bは、図7に示すように、誘電体素体20に設けたビアホール導体又はスルーホール導体にて第1及び第2層間接続導体34a,34bとしたものであり、他の構成は前記第1実施例と同様である。従って、本第2実施例の作用効果は第1実施例と同様である。そして、ビアホール導体又はスルーホール導体は通常のプリント配線基板を製作するのと同じ工程で容易に形成することができる。
【0036】
(第3実施例、図8参照)
第3実施例であるアンテナ装置10Cは、図8(A)に示すように、中立導体35を誘電体素体20の内層に設けたものであり、他の構成は前記第1実施例と同様である。本第3実施例においても、第1実施例と同様の作用効果を奏する。特に、本第3実施例では、中立導体35を誘電体素体20の内層に設けたため、容量C1,C2を大きくすることができる。逆に、中立導体35の面積を小さくすることができる。また、中立導体35を裏面側導体33a,33bとは異なる層に配置するため、中立導体35のサイズを比較的自由に設定することができる。
【0037】
即ち、金属板46が近接している場合、無線IC素子50から所定の高周波信号が伝達されると、図8(B)に点線で示すように、ループ状放射導体30及びループ状放射導体30と結合した金属板46の表面に沿って高周波信号電流が流れる。ループ状放射導体30の周回面であるループ面は金属板46に対して垂直に配置されている。第1及び第2裏面側導体33a,33bの端部では接着剤47を介して金属板46と容量で結合している。高周波信号電流はこの容量結合を介して金属板46を電流経路として流れる。ループ状放射導体30は磁界アンテナとして作用し、金属板46から磁界エネルギーが外部に放射される。これにて、金属板46を介してリーダライタとの通信が可能となる。RFIDシステムのリーダライタから放射されて金属板46で受信された高周波信号はループ状放射導体30を介して無線IC素子50に供給され、無線IC素子50が動作する。一方、無線IC素子50からの応答信号はループ状放射導体30を介して金属板46に伝達されてリーダライタに放射される。なお、ループ状放射導体30が、無線IC素子50と金属板46とのインピーダンスの整合回路として機能することも実施例1と同様である。
【0038】
金属板46が近接していない場合、図8(C)に示すように、第1及び第2表面側導体31a,31bと中立導体35とが第1及び第2対向領域40a,40bで比較的大きな容量C1,C2で結合する。この場合、高周波信号電流は、一点鎖線で示すように、第1及び第2表面側導体31a,31bと中立導体35とを容量C1,C2を介して流れる。また、高周波信号電流は、点線で示すように、ループ状放射導体30、即ち、第1及び第2表面側導体31a,31bから第1及び第2層間接続導体34a,34bを通じて第1及び第2裏面側導体33a,33bに流れる。このとき、第1及び第2表面側導体31a,31bと中立導体35とで構成されるループからは高周波信号の一部が外部に磁界として放射され、かつ、ループ状放射導体30(導体31a,31b,33a,33b,34a,34b)がダイポール型放射素子として作用し、高周波信号が外部に電界として放射される。第1及び第2表面側導体31a,31bと、これに結合する中立導体35とが、無線IC素子50とループ状放射導体30とのインピーダンスの整合回路として機能することで、ループ状放射導体30がダイポール型放射素子として機能することも実施例1と同様である。
【0039】
(他の実施例)
なお、本発明に係るアンテナ装置及び無線通信デバイスは前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0040】
特に、ループ状放射導体の細部の構造、形状は任意である。また、例えば、アンテナ装置と金属板と近接させる場合、アンテナ装置を金属板に絶縁性接着剤を介して貼着したが、導電性接着剤を介して貼着してもよい。この場合は、ループ状放射導体は金属板と直接結合(DC接続)することになる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明は、アンテナ装置及び無線通信デバイスに有用であり、特に、金属部材が近接している場合及び近接していない場合にあっても放射素子として機能する点で優れている。
【符号の説明】
【0042】
10A,10B,10C…アンテナ装置
20…誘電体素体
30…ループ状放射導体
31a,31b…表面側導体
32a,32b…給電端子
33a,33b…裏面側導体
34a,34b…層間接続導体
35…中立導体
36a,36b…スリット部
40a,40b…対向領域
50…無線IC素子
51…無線ICチップ
65…給電回路基板
66…給電回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体素体と
前記誘電体素体の表面側に設けられた第1及び第2表面側導体と、前記誘電体素体の裏面側に設けられた裏面側導体と、第1表面側導体及び前記裏面側導体を接続する第1層間接続導体と、第2表面側導体及び前記裏面側導体を接続する第2層間接続導体とで、ループ状に結合されたループ状放射導体と、
前記ループ状放射導体から独立した中立導体と、
を備え、
前記中立導体は第1表面側導体と対向する第1対向領域及び第2表面側導体と対向する第2対向領域を有すること、
を特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記裏面側導体及び前記中立導体は、前記誘電体素体の裏面に設けられ、
前記裏面側導体は、第1及び第2スリットによって前記中立導体を間に配置した第1及び第2裏面側導体に分割されており、
第1裏面側導体は第1層間接続導体を介して第1表面側導体に接続され、第2裏面側導体は第2層間接続導体を介して第2表面側導体に接続されていること、
を特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記裏面側導体は、前記誘電体素体の裏面に設けられて第1層間接続導体を介して第1表面側導体に接続された第1裏面側導体と、前記誘電体素体の裏面に設けられて第2層間接続導体を介して第2表面側導体に接続された第2裏面側導体と、を有し、
前記中立導体は、前記誘電体素体の内層に設けられていること、を特徴する請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
第1及び第2層間接続導体は前記誘電体素体に設けられたビアホール導体又はスルーホール導体からなること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
高周波信号を処理する無線IC素子と、前記無線IC素子に結合されたアンテナ装置とを備え、
前記アンテナ装置は、
誘電体素体と
前記誘電体素体の表面側に設けられた第1及び第2表面側導体と、前記誘電体素体の裏面側に設けられた裏面側導体と、第1表面側導体及び前記裏面側導体を接続する第1層間接続導体と、第2表面側導体及び前記裏面側導体を接続する第2層間接続導体とで、ループ状に結合されたループ状放射導体と、
前記ループ状放射導体から独立した中立導体と、
を備え、
前記中立導体は第1表面側導体と対向する第1対向領域及び第2表面側導体と対向する第2対向領域を有すること、
を特徴とする無線通信デバイス。
【請求項6】
前記無線IC素子は、高周波信号を処理する無線ICチップであること、を特徴とする請求項5に記載の無線通信デバイス。
【請求項7】
前記無線IC素子は、高周波信号を処理する無線ICチップと、所定の共振周波数を有する給電回路を含んだ給電回路基板とで構成されていること、を特徴とする請求項5に記載の無線通信デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−205384(P2011−205384A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70431(P2010−70431)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】