説明

アンテナ装置

【課題】レドームの存在によりビームやヌル点がシフトする量を低減することができるアンテナ装置を得る。
【解決手段】複数の素子アンテナからなるアレーアンテナ100と、単数もしくは複数の誘電体層からなるレドーム101と、電磁波を反射させる反射材102とを備え、前記反射材102は、前記アレーアンテナ100の開口面での電磁波の反射量と同等の反射量を有し、前記アンテナ100の開口面が成す平面と同一平面上で、かつ前記アンテナ100から電磁波が放射される開口面の周囲に設置され、前記レドーム101は、前記反射材102と前記アンテナ100を覆うように設置された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダ用アンテナ装置に係るものであり、レドームの影響により、主ビームやヌル点の方向がシフトする量を低減するためのアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダ用アンテナ装置では、移動時の空気抵抗や風雨降雪などからアンテナを保護する目的でレドームが設置される。しかし、レドームの透過特性やレドーム内部での多重反射の影響により、ビームやヌルの走査方向が変化するなどの影響を及ぼす。
【0003】
従来のレドームとして、アンテナから放射された電力がレドームで反射される量を低減することを実現するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−5796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レドームでの反射量は任意の主ビーム/ナル点の方向で0とすることは不可能であり、結果として、主ビーム/ナル点の方向がシフトする問題が生じる。
【0006】
この発明は、上述した問題点に鑑みてなされたもので、レドームの存在によりビームやヌル点がシフトする量を低減することができるアンテナ装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るアンテナ装置は、複数の素子アンテナからなるアレーアンテナと、単数もしくは複数の誘電体層からなるレドームと、電磁波を反射させる反射材とを備え、前記反射材は、前記アレーアンテナの開口面での電磁波の反射量と同等の反射量を有し、前記アンテナの開口面が成す平面と同一平面上で、かつ前記アンテナから電磁波が放射される開口面の周囲に設置され、前記レドームは、前記反射材と前記アンテナを覆うように設置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、反射材が、アレーアンテナの開口面での反射係数と同等の反射係数を有することで、レドームの影響により主ビームあるいはヌル点がシフトすることを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の構成を示す図である。この実施の形態1に係るアンテナ装置は、複数の素子アンテナからなるアンテナ100、単数もしくは複数の誘電体層からなるレドーム101、電磁波を反射させる反射材102により構成され、反射材102は、アンテナ100の開口面での反射係数と同等の反射係数を有し、アンテナ100の開口面が成す平面と同一平面上で、かつアンテナ100から電磁波が放射される開口面の周囲に設置され、レドーム101は、反射材102とアンテナ100を覆うように設置されている。
【0010】
ここで、反射波103a、103bは、アンテナ100から放射された電磁波がレドーム101で反射し、更にアンテナ100の開口面もしくは反射材102で反射される。尚、レドーム101及び反射材102は、平板に近い形状であれば任意の形状で良い。このように、反射材102をアンテナ100の周辺に設けることで、全ての素子アンテナからの反射波の寄与を発生させることができ、主ビームやヌル点の方向の変化量を低減できる。
【0011】
図2は、図1のようにアンテナ装置を構成した時、ヌル点の方向へ与えるレドームの影響を示す図である。縦軸はアンテナ100から放射された電力のレベルを示し、横軸はアンテナ100のボア際と方向からの離角を示す。図2から、レドームの影響によりヌル点の方向は変化しないことが確認できる。
【0012】
図1に示す実施の形態1に係るアンテナ装置に対し、比較対象として、アンテナの周囲に反射材を設けない構成でなるアンテナ装置を図3に示す。図3に示すアンテナ装置は、アンテナ200、レドーム201により構成される。図3から分かるように、反射材を設けない構成では、ある素子アンテナからの反射波202aは、アンテナ200の開口面で反射するが、ある素子アンテナからの反射波202bは、アンテナ200の開口面で反射せず、全ての素子アンテナからの反射波の寄与を等しく発生させることができず、主ビームあるいはヌル点の方向の変化が生じる。
【0013】
図4は、図3のようにアンテナ装置を構成した時、ヌル点の方向へ与えるレドームの影響を示す図である。縦軸はアンテナ200から放射された電力のレベルを示し、横軸はアンテナ200のボア際と方向からの離角を示す。図4から、レドームの影響によりヌル点の方向は変化することが分かり、この発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の効果が確認できる。
【0014】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2に係るアンテナ装置の構成を示す図である。この実施の形態2に係るアンテナ装置は、実施の形態1と同様に、複数の素子アンテナからなるアンテナ300、単数もしくは複数の誘電体層からなるレドーム301、電磁波を反射させる反射材302により構成され、反射材302は、アンテナ300の開口面での反射係数と同等の反射係数を有し、アンテナ300の開口面が成す平面と同一平面上で、かつアンテナ300から電磁波が放射される開口面の周囲に設置され、レドーム301は、反射材302とアンテナ300を覆うように設置されている。
【0015】
ここで、反射波303a、303bは、アンテナ300から放射された電磁波がレドーム301で反射し、更にアンテナ300の開口面もしくは反射材302で反射される。尚、レドーム301と反射板302が平行に設置されている場合、アンテナ300のボアサイト方向から主ビームあるいはヌル点の最大形成角度をθとし、アンテナ300とレドーム301との間の距離をLとすると、反射材302は、2Lcotθ以上の幅とすることで、全ての素子アンテナからの反射波の寄与を等しく発生させることができ、主ビームあるいはヌル点の方向の変化を回避することができる。
【0016】
実施の形態3.
図6は、この発明の実施の形態3に係るアンテナ装置の構成を示す図である。この実施の形態3に係るアンテナ装置は、実施の形態1と同様に、複数の素子アンテナからなるアンテナ400、単数もしくは複数の誘電体層からなるレドーム401、電磁波を反射させる反射材402により構成され、反射材402は、アンテナ400の開口面での反射係数と同等の反射係数を有し、アンテナ400の開口面が成す平面と同一平面上で、かつアンテナ400から電磁波が放射される開口面の周囲に設置され、レドーム401は、反射材402とアンテナ400を覆うように設置されている。
【0017】
ここで、アンテナ400は、素子アンテナでもある給電素子403を複数配列することで構成され、反射材402は、複数のダミー終端素子404を配列することで構成される。このダミー終端素子404を装荷することで、アンテナ400開口面の反射係数と同等の反射係数を実現することができる。尚、レドーム401及び反射材402は平板に近い形状であれば任意の形状で良い。更に、ダミー終端素子404は、ダミー終端だけでなく、給電点は開放状態あるいは短絡状態、さらには、放射素子部分のみにより構成することも可能である。
【0018】
実施の形態4.
図7は、この発明の実施の形態4に係るアンテナ装置の構成を示す図である。この実施の形態4に係るアンテナ装置は、実施の形態1と同様に、複数の素子アンテナからなるアンテナ500、単数もしくは複数の誘電体層からなるレドーム501、電磁波を反射させる反射材502により構成され、反射材502は、アンテナ500の開口面での反射係数と同等の反射係数を有し、アンテナ500の開口面が成す平面と同一平面上で、かつアンテナ500から電磁波が放射される開口面の周囲に設置され、レドーム501は、反射材502とアンテナ500を覆うように設置されている。
【0019】
ここで、反射材502は、任意の媒質により構成されるアンテナ500の周囲構造の上に、損失性の塗料503を塗装する構成とすることで、アンテナ500の開口面での反射係数と同等の反射係数を有することができる。尚、レドーム501及び反射材502は平板に近い形状であれば任意の形状で良い。
【0020】
実施の形態5.
図8は、この発明の実施の形態5に係るアンテナ装置の構成を示す図である。この実施の形態5に係るアンテナ装置は、実施の形態1と同様に、複数の素子アンテナからなるアンテナ600、単数もしくは複数の誘電体層からなるレドーム601、電磁波を反射させる反射材602により構成され、反射材602は、アンテナ600の開口面での反射係数と同等の反射係数を有し、アンテナ600の開口面が成す平面と同一平面上で、かつアンテナ600から電磁波が放射される開口面の周囲に設置され、レドーム601は、反射材602とアンテナ600を覆うように設置されている。
【0021】
ここで、反射材602を、複数の誘電体層を積層することにより構成することで、アンテナ600の開口面での反射係数と同等の反射係数を有することができる。尚、レドーム601及び反射材602は平板に近い形状であれば任意の形状で良い。
【0022】
実施の形態6.
図9は、この発明の実施の形態6に係るアンテナ装置の構成を示す図である。この実施の形態6に係るアンテナ装置は、実施の形態1と同様に、複数の素子アンテナからなるアンテナ700、単数もしくは複数の誘電体層からなるレドーム701、電磁波を反射させる反射材702により構成され、反射材702は、アンテナ700の開口面での反射係数と同等の反射係数を有し、アンテナ700の開口面が成す平面と同一平面上で、かつアンテナ700から電磁波が放射される開口面の周囲に設置され、レドーム701は、反射材702とアンテナ700を覆うように設置されている。
【0023】
ここで、反射材702は、レドーム701との設置距離を調整するための調整機構を有するものとする。反射材702での反射係数において、反射位相がアンテナ700の開口面での反射位相と同等になるよう調整することが難しい場合、反射材702とレドーム701の距離を調整することで、等価的に同等な反射位相を実現することができる。尚、レドーム701及び反射材702は平板に近い形状であれば任意の形状で良く、更に本施の形態6において、反射材702に備えられる設置距離を調整するための調整機構は、実施の形態1〜5のどの構成においても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示すアンテナ装置を構成した時の、ヌル点の方向へ与えるレドームの影響を示す図である。
【図3】図1に示す実施の形態1に係るアンテナ装置に対し、比較対象として、アンテナの周囲に反射材を設けない構成でなるアンテナ装置を示す図である。
【図4】図3に示すアンテナ装置を構成した時の、ヌル点の方向へ与えるレドームの影響を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態4に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態5に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態6に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
100,200,300,400,500,600,700 アンテナ、101,201,301,401,501,601,701 レドーム、102,202,302,402,502,602,702 反射材、404 ダミー終端素子、503 損失性の塗料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素子アンテナからなるアレーアンテナと、
単数もしくは複数の誘電体層からなるレドームと、
電磁波を反射させる反射材と
を備え、
前記反射材は、前記アレーアンテナの開口面での電磁波の反射量と同等の反射量を有し、前記アンテナの開口面が成す平面と同一平面上で、かつ前記アンテナから電磁波が放射される開口面の周囲に設置され、
前記レドームは、前記反射材と前記アンテナを覆うように設置された
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記アレーアンテナから電磁波が放射される開口面の前面に前記レドームが平行に設置され、前記アレーアンテナのボアサイト方向から主ビームあるいはヌル点の最大形成角度をθとし、前記アレーアンテナと前記レドームとの間の距離をLとした場合、
前記反射材の幅を2Lcotθ以上とする
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記反射材は、複数のダミー終端素子を配列することにより構成される
ことを特徴としたアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記反射材は、任意の材料の上に損失性の塗料を塗装するにより構成される
ことを特徴としたアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記反射材は、複数の誘電体層を積層することにより構成される
ことを特徴としたアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記反射材は、前記レドームとの設置距離が調整可能である
ことを特徴としたアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−109890(P2010−109890A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281932(P2008−281932)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】