説明

アンテナ装置

【課題】 既存のアンテナを用いて電磁波の発生源の位置方向を特定する場合、その精度向上のために、アンテナ周囲に発生する電界が原因となって発生するノイズを低減するための技術が必要となる。
【解決手段】 本発明においては、外側を非磁性材導電体料製の鞘で覆われたコイル三組をそれぞれの中心を一致させるとともにそれぞれの軸が相互に直交するように組みあわせ、さらに、前記コイル三組それぞれのることで構成されるアンテナ装置を提供する。前記鞘は、本アンテナ装置周囲に発生する電界が原因となって発生するノイズを、低減させる機能を果たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間上任意の場所から発信された電磁波を検知し、その発信源を正確に特定するためのアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既存のアンテナを用いて電磁波の発生源の位置方向を特定するためには、手動によりアンテナの向きを変えて幾度も測定を行うなど、操作に手間がかかる。また、たとえば前記測定手段により電磁波の発生源の位置方向の特定を行ったとしても、測定に用いられるアンテナの向きは人手により固定されているものである。よって、前記人手がぶれることで、前記アンテナの向きもぶれ、前記アンテナの向きを固定し続けることは難しい。従って、必ずしもアンテナの感知方向が正確に電磁波の発生源の位置方向を向け続けるとは限らず、正確な電磁波の発生源の位置方向を特定することは難しいと考えられる。
【0003】
従来までの、電磁波を測定する装置の一例として、特許文献1に記載の発明を挙げる。特許文献1に係る発明は、互いに直交関係の3つのコイルを用いることで電磁波の高精度測定を行うことが可能である。
【特許文献1】特開 昭59−197874号
【0004】
しかし、特許文献1は互いに直交関係の3つのコイルを直列につなげるもので、3次元空間上に生じた電磁波の磁界成分の強度は計測できても、前記3つのコイルが別途独立に受信する電磁波の磁界成分の強度を、各コイルごとに計測することはできず、したがって、電磁波の発生方向を特定するのに用いることはできない。上記特許文献1にかかる発明を含め、アンテナの向きを変えることなく電磁波発生源の位置特定を可能とする装置は実現していなかった。
【0005】
そこで、本件発明者は以前、特願2007−252852において、それぞれの中心を一致させるとともにそれぞれの軸が相互に直交するように三組のコイルを組み合わせて構成されたアンテナを用いて、前記三組のコイルの各コイルが電磁波の磁界成分を受け付けることで生じる起電力を測定し、前記アンテナと電磁波発生源との位置関係などを調べることで、電磁波の発生方向を特定する手段を提供した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記特願2007−252852に記載のアンテナ装置や、前記特許文献1に記載の三軸方式磁気検知器においては、電磁波受信部分が主にループ状のコイルから構成されている。ループ状のコイルを用いて、前記起電力を検知する場合、その電磁波発生源周辺の高電圧機器と、接地電位点である地面と、の間に生じる電界が原因となり、接地電位点である地面と前記ループ状コイルとの間に電位差が生じてしまう。そして前記電位差を、前記起電力を検知する際に前記ループ状コイルがノイズとして受信してしまう。前記ノイズは、前記ループ状コイルによる前記起電力の正確な検出を妨げる。従って、前記電位差の発生は前記ループ状コイルを用いて電磁波発生源の位置を特定するのに不都合である。このように上記特許文献1および特願2007−252852にかかる発明を含め、アンテナの向きを変えることなく、かつ、電磁波受信部分と接地電位点との間に生じる電位差の寄与を受けることなく電磁波発生源の位置特定を可能とする装置は実現していなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件発明者は、前記特願2007−252852に記載のアンテナ装置の複合コイル部を構成する三組のコイルをそれぞれ非磁性導電体材料製の鞘で覆い、同軸ケーブルを用いてオシロスコープに接続して前記起電力の測定を行ってみた。その際、前記コイルのコイル線端の片方を前記同軸ケーブルの内部導体、もう片方を外部導体に接続し、さらに前記鞘と外部導体とも接続した。その結果、前記鞘を前記アンテナ装置に設けなかった場合と比べ、前記ノイズが約20dB低減した測定結果を得た。この結果より、電磁波検出用のコイルを非磁性導電体材料製の鞘で覆い、前記鞘を、前記コイルと計測器機器とを接続する同軸ケーブルの外部導体と接続することで、前記接地電位点である地面と前記コイルとの間に生じる電位差をキャンセルすることが可能であると考える。
【0008】
従って、本特許出願においては、外側を非磁性導電体材料製の鞘で覆われたコイル三組をそれぞれの中心を一致させるとともにそれぞれの軸が相互に直交するように組みあわせることで構成されるアンテナ装置を提供する。
【0009】
より具体的には、先ず、第一の発明として、それぞれの中心を一致させるとともにそれぞれの軸が相互に直交した三組のコイルを組み合わせて構成された複合コイル部と、外来電磁波によってコイルに生じる起電力を各コイルごとに検知する検知部と、コイルと検知部とを接続する接地シールド付ケーブルと、前記コイルのコイル線を覆う非磁性導電体材料からなる鞘部と、を有するアンテナ装置を提供する。
【0010】
次に、第二の発明として、鞘部の一方端は、接地シールド付ケーブルのシールドを介して接地されている前記第一の発明に記載のアンテナ装置を提供する。
【0011】
次に、第三の発明として、鞘部の他方端側のコイル線と、接地シールド付ケーブルの軸線との間にインピーダンス整合のための第一整合コンデンサを配置した前記第一の発明または前記第二の発明に記載のアンテナ装置を提供する。
【0012】
次に、第四の発明として、鞘部の一方端側のコイル線と、鞘部の他方端側のコイル線との間に、インピーダンス整合のための第二整合コンデンサを配置した前記第一から第三の発明のうちいずれか一に記載のアンテナ装置を提供する。
【0013】
次に、第五の発明として、検知部にて検知した各コイルの起電力に応じて電磁波発生源の方位を計算する第一方位計算部をさらに有する前記第一から第四の発明のうちいずれか一に記載のアンテナ装置を提供する。
【0014】
次に、第六の発明として、組み合わされた状態でコイルの向きを変化させるように複合コイル部を駆動可能な駆動部と、検知部で検知される特定のコイルの起電力が最大となるように駆動部を制御する駆動制御部と、特定のコイルの起電力が最大となった際のコイルの向きから電磁波発生源の方位を計算する第二方位計算部と、を有する前記第一から第五の発明のうちいずれか一に記載のアンテナ装置を提供する。
【0015】
次に、第七の発明として、各コイルは平面コイルである前記第一から第六の発明のうちいずれか一に記載のアンテナ装置を提供する。
【0016】
次に、第八の発明として、複合コイル部は、各コイル線を球体に巻き回すことで構成されている前記第一から第七の発明のうちいずれか一に記載のアンテナ装置を提供する。
【0017】
次に、第九の発明として、複合コイル部は、各コイル線を円形に巻きまわすための環状ガイドに巻き回すことで構成されている前記第一から第七の発明のうちいずれか一に記載のアンテナ装置を提供する。
【0018】
次に、第十の発明として、複合コイル部は、各コイル線を立方体に巻き回すことで構成されている前記第一から第七の発明のうちいずれか一に記載のアンテナ装置を提供する。
【0019】
次に、第十一の発明として、複合コイル部は、各コイル線を正方形の輪郭状に巻きまわすための矩形環状ガイドに巻き回すことで構成されている前記第一から第七の発明のうちいずれか一に記載のアンテナ装置を提供する。
【0020】
次に、第十二の発明として、前記各コイル線は複数巻きである前記第一から第十一の発明のうちいずれか一に記載のアンテナ装置を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のアンテナ装置における鞘部を非磁性導電体材料で構成し、接地することで、前記接地電位点である地面と、複合コイル部の各コイルと、の間に生じる電位差をキャンセルすることが可能である。よって、前記ノイズの低減が可能である。従って、電磁波発生源の位置をより精度よく特定することが可能なアンテナ装置が実現する。
【0022】
また、鞘部の他方端側のコイル線と、接地シールド付ケーブルの軸線と、の間にコンデンサを設置することで、複合コイル部と接地シールド付ケーブルとのインピーダンス整合を図ることが可能である。ひいては、電磁波発生源の位置をより精度よく特定することが可能なアンテナ装置が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。なお、以下の実施形態と請求項の関係は次の通りである。
実施形態1は、主に請求項1、2、および、12について説明する。
実施形態2は、主に請求項3、および、12について説明する。
実施形態3は、主に請求項4、および、12について説明する。
実施形態4は、主に請求項5、および、12について説明する。
実施形態5は、主に請求項6、および、12について説明する。
実施形態6は、主に請求項7、および、12について説明する。
実施形態7は、主に請求項8、10、および、12について説明する。
実施形態8は、主に請求項9、11、および、12について説明する。
<<実施形態1>>
<実施形態1の概要>
【0024】
本実施形態は、外側を非磁性導電体材料製の鞘で覆われたコイル三組をそれぞれの中心を一致させるとともにそれぞれの軸が相互に直交するように組みあわせることで構成されるアンテナ装置について説明するものである。このアンテナ装置は、主に発電所内あるいは変電所内の設備に生じる絶縁破壊箇所の探索を行うのに用いられる。また、工場内において漏電箇所の探索を行うことや、違法電波の発信源の特定を行うことにも用いることが可能である。
<実施形態1の機能的構成>
【0025】
図1に、本実施形態におけるアンテナ装置の機能ブロック図を示す。図1に示すように、本実施形態にかかるアンテナ装置(0101)は、複合コイル部(0102)と、検知部(0103)と、接地シールド付ケーブル(0104)と、鞘部(0105)とからなる。
【0026】
(複合コイル部についての説明)複合コイル部(0102)は、それぞれの中心を一致させるとともにそれぞれの軸が相互に直交した三組のコイルを組み合わせて構成される。図2は、本実施形態にかかるアンテナ装置の構成の一例を示すものである。図2に例示するように、本実施形態にかかる複合コイル部は、3つのコイル(0201〜0203)からなる。そして、前記3つのコイル(0201〜0203)は、それぞれの中心を一致させるとともにそれぞれの軸が相互に直交するよう組み合わされている。前記3つのコイル(0201〜0203)は、受信対象となる電磁波の磁界成分の単位時間の変化に応じて、それぞれ起電力を生じる。前記3つのコイル(0201〜0203)に生じた起電力は、接地シールド付ケーブルを介して検知部に伝達される。
【0027】
前述した通り、この3つのコイル(0201〜0203)の各コイルはそれぞれの軸が相互に直交するように配置される。従って、たとえば、図2において前後方向に開口面を有するコイル(0201)は、受信対象たる電磁波の磁界成分の前後方向の成分のみを受信する。また、図2において左右方向に開口面を有するコイル(0202)は、受信対象たる電磁波の磁界成分の左右方向の成分のみを受信する。また、図2において上下方向に開口面を有するコイル(0203)は、受信対象たる電磁波の磁界成分の上下方向の成分のみを受信する。このように、本実施形態にかかる複合コイル部は、受信対象たる電磁波の磁界成分をたがいに直交する3つの軸方向成分ごとに分解して受信することを可能とする。そして、前記受信により前記各コイルごとに生じた起電力をそれぞれ比較することで、前記受信対象たる電磁波の発生源を特定することが可能となる。なお、前記起電力の比較は、検知部(0103)、もしくは、本実施形態に係るアンテナ装置にさらに備え付けられた演算処理装置などにより行う(詳しくは実施形態4にて説明する)。
【0028】
また、前記3つのコイルにおける各コイルはそれぞれ、鞘部(0105)を構成する非磁性導電体材料製の鞘(0204〜0206)に覆われている(詳しくは、鞘部(0105)についての説明のところで説明する)。また、前記各コイルは、接地シールド付ケーブル(0210〜0212)と接続している。
【0029】
図2において、前記3つのコイル(0201〜0203)は円形状であるが、必ずしも円形である必要はなく、正方形状、長方形状、台形状など、それぞれの中心を一致させるとともにそれぞれの軸が相互に直交するように構成するにあたり差し支えのない形状であればかまわない。また、前記「それぞれの中心を一致させる」については、必ずしも、全く誤差がないよう一致させる必要はない。また、図2においては前記3つのコイル(0201〜0203)にそれぞれ一重のコイル線を用いているが、コイルの種類についても、それぞれの中心を一致させるとともにそれぞれの軸が相互に直交するように構成するにあたり差し支えのないものであれば、どのようなコイルを用いてもかまわない。たとえば、ソレノイドコイルや平面コイルなどを用いてもかまわない。なお、前記3つのコイル(0201〜0203)のインピーダンスはそれぞれ同一であるのが好ましい。検知部(0103)において前記3つのコイル(0201〜0203)それぞれの感知した電磁波の磁界成分の強度を計算する際に、前記3つのコイル(0201〜0203)それぞれのインピーダンスの違いを加味する必要を回避するためである。また、前記3つのコイル(0201〜0203)の面積についてもそれぞれ同一であるのが好ましい。検知部(0103)において前記3つのコイル(0201〜0203)それぞれの感知した電磁波の磁界成分の強度を計算する際に、前記3つのコイル(0201〜0203)それぞれの面積の違いを加味する必要を回避するためである。また、前記3つのコイル(0201〜0203)それぞれについては、各コイルのコイル線を複数回巻くことにより巻数に比例した出力を得ることができる。これによりアンテナ装置の高感度化を図ることができる。
【0030】
(検知部についての説明)検知部(0103)は、外来電磁波によってコイルに生じる起電力を各コイルごとに検知する。
【0031】
ここで、「外来電磁波」とは、アンテナ装置外部にて発生した電磁波の磁界成分、および、アンテナ装置外部にて発生した磁界のことを指す。
【0032】
検知部については、検知した起電力を、信号処理を施し演算処理装置へと伝達する装置すなわち信号処理装置により構成することが可能である。前記信号処理装置については、たとえば、検知した起電力をもとにPCなどの演算処理装置により外部からの電磁波の磁界成分の強度や発生源を割り出す場合、検知した起電力をデジタル信号化するA/Dボードなどを用いることが可能である。またほかに、検知部については、前記信号処理装置と、前記演算処理装置とが一体となったものを用いることも可能である。より具体的には、図2に例示するように、汎用的なオシロスコープ(0213)を用いることが可能である。前述のように、検知部(0103)に前記信号処理装置と、前記演算処理装置とが一体となったものを用いることで、よりコンパクトなアンテナ装置を実現することが可能である。
【0033】
(接地シールド付ケーブルについての説明)接地シールド付ケーブル(0104)はコイルと検知部とを接続する。
【0034】
この接地シールド付ケーブル(0104)には、汎用的な同軸ケーブルを用いるのが一例として好ましい。また、フィーダー線のような、単にプラス極側の導線とマイナス極側の導線とを絶縁するようなものを用いることも可能である。なお、接地シールド付ケーブルとして用いるケーブルについては、受信する電磁波の周波数帯に応じて適宜様々なケーブルの中から選択する必要がある。たとえば、受信する電磁波が無線機から発生したものであれば、一例としてM型コネクタを有する同軸ケーブルを用いるのが好ましい。また、受信する電磁波がVHF波もしくはUHF波であれば、一例としてフィーダー線を用いることが可能である。
【0035】
また、接地シールド付ケーブル(0104)の接地シールド側の導線は接地するのが好ましい。前記接地については、一例として、検知部(0103)を介して接地を行うことが可能である。
【0036】
(鞘部についての説明)鞘部(0105)は、前記コイルのコイル線を覆う非磁性導電体材料からなる。図2に例示するように、本実施形態にかかる鞘部は、複合コイル部を構成する3つのコイル(0201〜0203)それぞれを覆う鞘(0204〜0206)などから構成される。図2において、前記鞘(0204〜0206)には、前記3つのコイル(0201〜0203)の各コイル線の形状にあわせて、略円形状のものを用いた。しかしこれは一例である。前記鞘については、略巻線形状のものなどを用いることも可能である。また、前記鞘(0204〜0206)は、複数回巻かれたコイル線を覆うことも可能である。
【0037】
鞘部(0105)は、接地電位点である地面と、複合コイル部(0102)と、の間に生じる電位差をキャンセルする機能を担う。図3は、本実施形態にかかる鞘部が、接地電位点である地面と、複合コイル部と、の間に生じる電位差をキャンセルする機能を説明するものである。
【0038】
図3(a)は、鞘部を有しないアンテナ装置を用いて、送電線(0302〜0304)の絶縁破壊部分(0306)から生じる部分放電由来の電磁波(0307)を受信する様子を示すものである(なお、図3(a)においては、説明を簡便にするために、複合コイル部を一つのコイル線のみで表わした(0305))。送電線(0302〜0304)と、設置電位点である地面と、の間には電界が生じる。前記電界により、複合コイル部(0305)と、設置電位点である地面と、の間には電位差が生じてしまう。この様子を回路図として表わすと、図3(b)に記載の回路図のようになる。送電線(0310)の絶縁破壊部分(0309)から生じる部分放電由来の電磁波の周波数は数ks−1から数Ms−1である。この部分放電由来の電磁波の周波数を波長に換算すると複合コイルの各コイルの長さに比べかなり長い値となる。ゆえに、前記各コイルは、厳密には分布定数回路として扱うことができる。このことは、前記各コイルが、部分放電由来の電磁波と同様の周波数帯の電磁波の磁界成分を受信する場合においても同じである。前記各コイルを分布定数回路として扱うことができる場合、図3(b)に示すように、前記各コイルは、複数のコイルが直列したもの(0308)として表すことができる。ここで、前記複数のコイル一つ一つを仮想コイル(0323〜0326)と呼ぶこととする。前述したとおり、送電線(0310)と、接地電位点である地面(0311〜0314)と、の間には電界が生じてしまう。前記電界は、送電線(0310)と前記各コイルとの間、および、接地電位点である地面(0311〜0314)と前記各コイルとの間に静電容量空間(0315〜0322)を形成する。そして、前記各コイルと接地電位点である地面(0311〜0314)との間に生じる静電容量空間(0319〜0322)により、前記各コイルと接地電位点である地面(0311〜0314)との間には電位差が生じてしまう。接地電位点である地面(0311〜0314)はそれぞれ別々の場所に存在するため、静電容量空間A〜D(0319〜0322)はそれぞれ異なる静電容量を有する。そして、接地電位点である地面A(0311)と静電容量空間A(0319)と仮想コイルA(0323)などからなる小回路Aは、前記各コイル(0308)と検知部(0327)とからなる回路とは別に電流を生じる。これは、接地電位点である地面B(0312)と静電容量空間B(0320)と仮想コイルB(0324)などからなる小回路B、および、接地電位点である地面C(0313)と静電容量空間C(0321)と仮想コイルC(0325)などからなる小回路C、および、接地電位点である地面D(0314)と静電容量空間D(0322)と仮想コイルD(0326)などからなる小回路D、についても同様である。したがって、各接地電位点である地面と各仮想コイルとの間に生じる電位差はバラバラであり、またその電位差の値も常に個々独立に変化し続ける。前記変化が、前記各コイル(0308)にノイズとしてとらえられてしまう。これが、複合コイル部が電磁波の磁界成分を受信する際に別途受信してしまうノイズの発生原因である。
【0039】
ここで、図3(c)に、本実施形態にかかるアンテナ装置のように、各コイル(0331)を鞘部(0332)で覆い、送電線(0328〜0330)の絶縁破壊部分(0333)から生じる部分放電由来の電磁波(0334)を受信する場合の様子を示す。図3(c)に例示するように、前記鞘部(0332)は、各コイル(0331)と検知部(0335)とを接続する接地シールド付ケーブルの接地シールド側(0336)に接続するのが好ましい。この様子を回路図として表わすと、図3(d)に記載の回路図のようになる。接地電位点である地面(0337)と複合コイル部の各コイル(0338)との間に鞘部(0339)が設けられたことにより、静電容量空間は接地電位点である地面(0337)と鞘部(0339)との間に生じることになる。よって、静電容量空間(0340)は、接地電位点である地面(0337)と鞘部(0339)との間に形成される。よって、前記各コイル(0338)は、前記静電容量空間(0340)の存在により生ずる電位差の影響をほとんど受けずにすむ。ひいては、本実施形態にかかるアンテナ装置は前記ノイズをほとんど検知せずにすむ。なお、前記鞘部(0332)については、必ずしも前記接地シールド付ケーブルの接地シールド側(0336)と接続することで接地をとらなければならない、というわけではない。別途接地電位点を設け、前記鞘部(0332)とその接地電位点とを接続することで、前記鞘部(0332)の接地をとることも可能である。
【0040】
ここで、図2の四角い点線の枠内(0214)に、複合コイル部の各コイルのコイル線と接地シールド付ケーブルと、鞘部と、が接続している箇所の拡大図を示す。なお、前記枠内(0214)においては、一例として接地シールド付ケーブルに同軸ケーブル(0215)を用いた場合について記す。まず、前記コイル線端の一方(0216)は、同軸ケーブルの内部導体(0217)と接続する。そして、前記コイル線端もう一方(0218)は、同軸ケーブルの外部導体(0219)と接続する。そして、鞘(0220)を前記外部導体(0219)と接続する。以上が、複合コイル部の各コイルと接地シールド付ケーブルと、鞘部と、を接続する方法の一例である。前記接続方法により、検知部(0335)を介して前記鞘部(0332)の接地をとることが可能である。なお、鞘(0220)は、前記外部導体(0219)に接続する代わりに、前記内部導体(0217)と接続してもかまわないが、その場合、検知部にて検知する起電力の正負が逆になるので、前記起電力を信号変換する際などに、その正負を逆にする処理が必要である。
【0041】
上述した通り、鞘部は非磁性導電体材料からなる。従って、鞘部には、銅製、またはアルミニウム製、または導電性プラスチック製のパイプなどを用いるのが好ましい。また、前記パイプの太さについては、複合コイル部の各コイルがコイル線を複数回巻いたものから構成される場合であっても、その各コイルを覆うことのできる程度の太さが必要となる。また、前記各コイルのループ径については、受信する電磁波の波長の1/4πもしくはその整数倍である必要がある。従って、前記パイプの開口面の直径も、前記各コイルのループ径に合った長さにする必要がある。なお、鞘部をCuテープで構成することも可能である。その場合、前記各コイルのコイル線表面上を、各コイル線と接地シールド付ケーブルとの接続箇所を除いて、隙間なく前記Cuテープで巻きつけるなどする。
<実施形態1の効果>
【0042】
本実施形態のアンテナ装置は、接地電位点である地面と複合コイル部との間に生じる電位差をキャンセルすることが可能である。よって、前記電位差を複合コイル部が受信することで生じるノイズを、低減することが可能である。従って、電磁波発生源の位置をより精度よく特定することが可能なアンテナ装置が実現する。
<<実施形態2>>
<実施形態2の概要>
【0043】
本実施形態にかかるアンテナ装置は、基本的には実施形態1にかかるアンテナ装置と同様である。ただし、本実施形態に係るアンテナ装置は、複合コイル部と、接地シールド付ケーブルとのインピーダンス整合をとるためのコンデンサを有する点において、実施形態1にかかるアンテナ装置と異なる。
<実施形態2の機能的構成>
【0044】
図4に、本実施形態にかかるアンテナ装置の機能ブロック図を示す。本実施形態にかかるアンテナ装置(0401)の機構的構成は、基本的には実施形態1にかかるアンテナ装置の機能的構成と同様である。ただし、本実施形態にかかるアンテナ装置(0401)は、さらに第一整合コンデンサ(0402)を有する。
【0045】
(第一整合コンデンサについての説明)第一整合コンデンサ(0402)は、複合コイル部と接地シールド付ケーブルとのインピーダンス整合をとるために設けられる。そして、この第一整合コンデンサ(0402)は、鞘部の他方端側のコイル線と、接地シールド付ケーブルの軸線との間に配置される。
【0046】
ここで、図5において、本実施形態における第一整合コンデンサについて説明するための図を示す。まず、図5(a)は、複合コイル部の各コイルと接地シールド付ケーブルと、鞘部と、第一整合コンデンサと、をどのように接続するかを例示するものである。ただし図5(a)においては、一例として接地シールド付ケーブルに同軸ケーブル(0501)を用いた場合について記す。図5(a)に例示するように、第一整合コンデンサ(0502)は、同軸ケーブルの内部導体(0518)と、前記各コイルのコイル線端の片方(0503)と、の間に直列に接続するのが好ましい。そして、前記各コイルのコイル線端のもう片方(0504)は、同軸ケーブルの外部導体(0505)と接続する。そして、鞘部(0506)を前記外部導体(0505)と接続する。以上が、複合コイル部の各コイルと接地シールド付ケーブルと、鞘部と、第一整合コンデンサと、を接続する方法の一例である。
【0047】
次に、「複合コイル部と接地シールド付ケーブルとのインピーダンス整合をとる」とはどのようなことか、以下に示す。まず、前記接続により、接地シールド付ケーブルと、第一整合コンデンサと、複合コイル部の各コイルと、鞘部と、がなす回路を図5(b)に示す。接地シールド付ケーブル(0507)と、第一整合コンデンサ(0508)と、複合コイル部の各コイル(0509)と、は直列に接続し、一つの回路を形成している。また、鞘部(0516)が、前記各コイル(0509)に沿うように、前記各コイル(0509)のマイナス極側に並列に接続している。
【0048】
ここで、複合コイル部の各コイル(0509)と鞘部(0516)とからなる部分(0519)は分布定数回路として扱うことができ、より厳密には図5(c)のようにあらわされる。図5(c)に示すように、前記各コイル(0509)は、コイル線上に直列に接続している仮想直列コイル(0510)および仮想直列抵抗(0511)と、鞘部(0512)と、コイル線と前記鞘部(0512)との間に静電誘導が生じることで形成される仮想並列静電容量空間(0513)および仮想並列抵抗(0514)と、からなる小回路(0515)が、複数直列に配列したもので表わすことができる。ちなみに、前記仮想並列抵抗(0514)は、前記コイル線と前記鞘部(0512)との間に生じる漏洩抵抗により生じるものである。
【0049】
ここで、前記仮想直列コイル(0510)のインダクタンスの値をL、前記仮想直列抵抗(0511)の抵抗値をR、前記仮想並列静電容量空間(0513)の電荷容量の値をC、前記仮想並列抵抗(0514)の抵抗値をGとする。前記Lの値は前記各コイルのインダクタンスの値と同じである。すなわち、前記Lの値は、前記各コイルの開口面面積に比例し、また、前記各コイルの巻数の2乗に比例する。また、前記Rの値は、前記各コイルのコイル線の単位長あたりの抵抗値である。すなわち、前記Rの値は、前記各コイルのコイル線の抵抗値に依存する。よって、前記Rの値は、前記各コイルのコイル線の材質に依存する。また、前記Cの値は、前記コイル線と前記鞘部(0512)との距離、および、前記コイル線の半径と鞘部(0512)の半径に依存する。よって、前記Cの値は、前記コイル線の巻数や鞘部(0512)の内径などに依存する。また、前記Gの値は、前記コイル線と前記鞘部(0512)とを絶縁する材質の誘電率に依存する。よって、前記Gの値は、前記コイル線のシースの材質などに依存する。
【0050】
次に、接地シールド付ケーブルと、第一整合コンデンサと、複合コイル部の各コイルと、鞘部と、がなす回路の合成インピーダンスZtotについて考える。まず、接地シールド付ケーブル(0507)の特性インピーダンスをZとする。前記Zの値は、接地シールド付ケーブルの種類ごとに固有の値である。たとえば、同軸ケーブルの特性インピーダンスの値は50Ωもしくは75Ωである。ゆえに、接地シールド付ケーブルに同軸ケーブルを用いる場合、前記Zの値は50Ωもしくは75Ωである。よって、前記Zの値は、接地シールド付ケーブルの種類を決めた時点で一律に決められてしまう値であるので、定数とみなせる。そして、第一整合コンデンサ(0508)のインピーダンスを1/jωCとする。ちなみに、この第一整合コンデンサ(0508)に容量可変型コンデンサを用いれば、性能の範囲内で前記1/jωCの値を調節できる。そして、複合コイル部の各コイルのインピーダンスの値は、厳密には式1で表わされる。
〔式1〕

この式1は、式2のように簡略化することが可能である。
〔式2〕

ここで、前記Rの値は前記L、および、前記R、および、前記C、および、前記Gの各値に依存する。以上から、接地シールド付ケーブル(0507)と、前記各コイル(0509)と、第一整合コンデンサ(0508)と、鞘部(0516)と、からなる回路の合成インピーダンスZtotは、Z+R+j(ωL−(1/ωC))で表わされる。
【0051】
アンテナ装置の受信感度を最善にするには、アンテナ装置の電磁波の磁界成分の受信部分である前記各コイル(0509)の消費電力が最大になる必要がある。そのためには、前記各コイル(0509)に供給される平均電力Pを最大にする必要がある。まず、前記平均電力Pは式3にて表わされる。
〔式3〕

ここで、Iは接地シールド付ケーブル(0507)と、前記各コイル(0509)と、第一整合コンデンサ(0508)と、からなる回路を流れる電流の実効値を表す。前記Iは式4にて表わされる。
〔式4〕

ここで、Eは検知部(0517)が前記回路へと印加する電圧の値である。この値はアンテナ装置のユーザにより一律に決められてしまう値であるので、式4においては定数とみなす。まず、Pを最大にするためには、式3が満たされる必要がある。
〔式5〕

式5を満たすときの平均電力Pは、式6にて表わされる。
〔式6〕

この式6において、平均電力Pが最大値になるためには、前記Zと前記Rとは式7に示す条件を満たす必要がある。
〔式7〕

以上から、アンテナ装置の受信感度を最善にするには、図5(b)に示すように第一整合コンデンサ(0508)を設け、かつ、式5および式7を満たすよう前記各値を調整すればよいことがわかる。まず、式7を満たすためには、前記各コイルの開口面面積や、前記各コイルの巻数、前記各コイルのコイル線の材質、前記鞘部(0512)の内径、前記コイル線のシースの材質などをうまく調整する。そして、式5を満たすにはωL=(1/ωC)となるよう、前記各コイルの開口面面積と前記各コイルの巻数、および、第一整合コンデンサの電荷容量を調整する。以上が、「接地シールド付ケーブルとのインピーダンス整合をとる」方法の一例についての説明である。また、上記方法例のように、アンテナ装置の受信感度を最善にするために、複合コイル部と接地シールド付ケーブルとのインピーダンス値を調節することが、本実施形態における「インピーダンス整合」に相当する。また、以上から、第一整合コンデンサは、アンテナ装置の受信感度を最善にするために必要な構成要件であるといえる。
<実施形態2の効果>
【0052】
本実施形態により、より受信感度のよいアンテナ装置が実現する。
<<実施形態3>>
<実施形態3の概要>
【0053】
本実施形態にかかるアンテナ装置は、基本的には実施形態2にかかるアンテナ装置と同様である。ただし、本実施形態に係るアンテナ装置はさらに、鞘部の一方端側のコイル線と、鞘部の他方端側のコイル線との間にコンデンサを有する点において、実施形態1および2にかかるアンテナ装置と異なる。
<実施形態3の機能的構成>
【0054】
図6に、本実施形態にかかるアンテナ装置の機能ブロック図を示す。本実施形態にかかるアンテナ装置(0601)の機構的構成は、基本的には実施形態2にかかるアンテナ装置の機能的構成と同様である。ただし、本実施形態にかかるアンテナ装置(0601)は、さらに第二整合コンデンサ(0602)を有する。
【0055】
(第二整合コンデンサについての説明)第二整合コンデンサ(0602)は、インピーダンス整合のために、鞘部の一方端側のコイル線と、鞘部の他方端側のコイル線との間に配置される。
【0056】
この第二整合コンデンサ(0602)には、容量可変型コンデンサを用いるのが好ましい。また、同様に、本実施形態にかかる第一整合コンデンサについても、容量可変型コンデンサを用いるのが好ましい。
【0057】
ここで、図7において、本実施形態における第二整合コンデンサについて説明するための図を示す。まず、図7(a)は、複合コイル部の各コイルのコイル線(0704)と、接地シールド付ケーブルと、鞘部(0705、0706)と、第一整合コンデンサ(0707)と、第二整合コンデンサ(0702)と、をどのように接続するかを例示するものである。ただし図7(a)においては、一例として接地シールド付ケーブルに同軸ケーブル(0701)を用いた場合について記す。図7(a)に例示するように、第二整合コンデンサ(0702)は、前記コイル線のうち第一整合コンデンサと直に接続している側と、前記コイル線のうち同軸ケーブルの外部導体(0708)と直に接続している側と、の間に配置する。以上が、第二整合コンデンサ(0702)を配置する方法の一例である。
【0058】
次に、前記接続により、接地シールド付ケーブルと、第一整合コンデンサと、第二整合コンデンサと、複合コイル部の各コイルと、鞘部と、がなす回路を図7(b)に示す。図7(b)に示すように、第一整合コンデンサ(0709)および第二整合コンデンサ(0710)を前記コイル線(0711)と直列に接続し、直列共振回路(0712)を構成すれば、さらに前記コイル線の開口面積を小さくすることができる。ひいては、複合コイル部の小型化を図ることができる。
【0059】
なお、本実施形態のアンテナ装置においては、第一整合コンデンサは有さず、第二整合コンデンサのみを有する構成をとることも可能である。この場合、前記第二整合コンデンサは、前記アンテナ装置の複合コイル部のインピーダンスを調整する機能を担う。従って、この場合において前記第二整合コンデンサは、実施形態2における第一整合コンデンサ同様、前記アンテナ装置の複合コイル部と接地シールド付ケーブルとのインピーダンス整合をとることが可能である。
<実施形態3の効果>
【0060】
本実施形態により、より小型のアンテナ装置が実現する。
<<実施形態4>>
<実施形態4の概要>
【0061】
本実施形態にかかるアンテナ装置は、基本的には実施形態1から3にかかるアンテナ装置と同様である。ただし、本実施形態に係るアンテナ装置はさらに、検知対象である電磁波の発生源の位置の自動割り出しが可能である点において、実施形態1から3にかかるアンテナ装置と異なる。
<実施形態4の機能的構成>
【0062】
図8に、本実施形態にかかるアンテナ装置の機能ブロック図を示す。本実施形態にかかるアンテナ装置(0801)の機構的構成は、基本的には実施形態3にかかるアンテナ装置の機能的構成と同様である。ただし、本実施形態にかかるアンテナ装置(0801)は、さらに第一方位計算部(0802)を有する。
【0063】
(第一方位計算部についての説明)第一方位計算部(0802)は検知部にて検知した各コイルの起電力に応じて電磁波発生源の方位を計算する。
【0064】
「検知部にて検知した各コイルの起電力に応じて電磁波発生源の方位を計算する」方法について説明する。実施形態1において説明した通り、複合コイル部を構成する各コイルに生じる起電力は、電磁波の発生位置と複合コイル部との相対的位置関係によりそれぞれ異なる。まず、複合コイル部の各コイルがそれぞれどの程度の電磁波の磁界成分を受信するか、について考える。図9は、複合コイル部の各コイルがそれぞれどの程度の電磁波の磁界成分を受信するか、を計算する方法を説明する図である。任意のxyz空間中において、軸方向がx軸方向を向いているコイルA(0901)、軸方向がy軸方向を向いているコイルB(0902)、軸方向がz軸方向を向いているコイルC(0903)を想定する。なお、前記コイルA(0901)の中心、コイルB(0902)の中心、コイルC(0903)の中心は、前記x軸とy軸とz軸との交点において一致している。ここで、前記x軸とy軸とz軸との交点を、磁界成分の強度がIの電磁波(0904)が通過したとする。また、前記電磁波の磁界成分(0904)の強度がIであり、前記電磁波の磁界成分(0904)の向きが、xz平面に対し角度θ、xy平面に対し角度φをなすものとする。各コイル(0901〜0903)が感知する電磁波の磁界成分の強度は、電磁波の磁界成分(0904)の強度Iの各コイル軸方向に対する射影量で表される。コイルA(0901)の場合、自身の軸方向はx軸方向であるので、コイルA(0901)が感知するコイル外部からの電磁波の磁界成分の強度は、電磁波の磁界成分(0904)の強度Iのx軸方向に対する射影量であるIcosφcosθ(0905)となる。同様に、コイルB(0902)の場合、自身の軸方向はy軸方向であるので、コイルB(0902)が感知するコイル外部からの電磁波の磁界成分の強度は、電磁波の磁界成分(0904)の強度Iのy軸方向に対する射影量であるIcosφsinθ(0906)となる。同様に、コイルC(0903)の場合、自身の軸方向はz軸方向であるので、コイルC(0903)が感知するコイル外部からの電磁波の磁界成分の強度は、電磁波の磁界成分(0904)の強度Iのz軸方向に対する射影量であるIsinφ(0907)となる。
【0065】
次に、前記各コイルが、電磁波の磁界成分の受信によりどれだけの起電力を生じるかについて考える。各コイルが生成する起電力の大きさは、上記各コイルが感知するコイル外部からの電磁波の磁界成分の強度に比例する。よって、コイルA(0901)、コイルB(0902)、コイルC(0903)が生成する起電力の大きさはそれぞれIcosφcosθ、Icosφsinθ、Isinφに比例するということになる。
【0066】
次に、検知した起電力の値から、前記角度φ、θを求める。検知部は、各コイル(0901〜0903)に生じた起電力を各コイルごとに独立に検知する。ここで、検知部が検知した起電力のうち、コイルA(0901)が生じた起電力の値がEであったとする。同様に、コイルB(0902)が生じた起電力の値がE、コイルC(0903)が生じた起電力の値がE、であったとする。これまでの説明から、各コイルが生成する起電力の大きさと、前記電磁波の磁界成分の向きと、前記電磁波の磁界成分の強度との間には式8のような関係があるといえる。
〔式8〕

ここで、kは比例定数である。前記式8から、角度φ、θが求まる。そして、前記xyz空間中の前記電磁波の磁界成分の向きがわかる。以上が、「検知部にて検知した各コイルの起電力に応じて電磁波発生源の方位を計算する」方法である。
【0067】
なお、第一方位計算部については、一例として、汎用的なパーソナルコンピュータなどの演算処理装置により構成するのが好ましい。その場合、検知部については、A/Dボードなどを用いる必要がある。そして、前記検知部と第一方位計算部とはUSBケーブルなどを用いて接続するのが好ましい。
<実施形態4の具体的実施例>
【0068】
図10に、本実施形態の具体的実施例の一つとして、本実施形態にかかるアンテナ装置を、変電所内の変圧器(1001)で発生した部分放電の発生位置を特定するのに用いた際の様子を示す。
【0069】
まず、本具体的実施例におけるアンテナ装置の構成例について図10を用いながら説明する。
【0070】
本具体的実施例においては、複合コイル部(1004)を、円形銅製パイプA(1005)内部に挿通されたコイル線A、円形銅製パイプB(1006)内部に挿通されたコイル線B、円形銅製パイプC(1007)内部に挿通されたコイル線C、により構成する(前記コイル線A〜Cについては、図10においては詳細な描写は省略する)。そして、前記コイル線A〜Cについては、ラジオ波受信用のループアンテナに用いられるケーブルなどを用いる。そして、鞘部については、前記円形銅製パイプA(1005)、円形銅製パイプB(1006)、円形銅製パイプC(1007)から構成する。また、前記コイル線A〜Cの中心が一致し、なおかつ、前記コイル線A〜Cの軸が相互に直交するよう、円形銅製パイプA〜Cを留め具(1012〜1017)により固定する。
【0071】
そして、検知部についてはA/DボードA(1008)から構成する。そして、接地シールド付ケーブルについては、汎用的な同軸ケーブル(1009〜1011)を用いる。ここで、前記コイル線A〜Cのそれぞれの端部の片方、すなわちコイル線A〜Cの端部P、は前記各同軸ケーブルの内部導体と接続する。また、前記コイル線A〜Cのそれぞれの端部のもう片方、すなわちコイル線A〜Cの端部Q、は前記同軸ケーブルの外部導体と接続する。また、前記各円形銅製パイプ(1005〜1007)は、導線により前記各同軸ケーブルの外部導体と接続する。
【0072】
そして、第一方位計算部は、汎用的なパーソナルコンピュータ(1018)から構成する。また、電磁波発生源の方位の計算結果を表示するためのモニタ(1019)も設ける。前記A/Dボード(1008)と前記パーソナルコンピュータ(1018)とは、汎用的なUSBケーブル(1021)を用いて接続する。
【0073】
また、本具体的実施例においては、変圧器(1001)を流れる電流の電圧の変化の周期を参照するために、A/DボードB(1020)を設ける。そして、前記変圧器(1001)中の電線と前記A/DボードB(1020)とを同軸ケーブルなどで接続する。そして、前記パーソナルコンピュータ(1018)と前記A/DボードB(1020)とを汎用的なUSBケーブルを用いて接続する。なお、以下においては、前記変圧器(1001)から前記A/DボードB(1020)へと流れる電流のことを参照電流と呼ぶこととする。
【0074】
次に、本具体的実施例における、部分放電の発生源の位置特定の流れについて説明する。
【0075】
まず、変電所内の変圧器(1001)において絶縁破壊が生じ、その絶縁破壊箇所(1002)から部分放電由来の電磁波すなわち部分放電電磁波(1003)が生じる。前記部分放電電磁波を、前記コイル線A〜Cそれぞれが受信する。前記受信により、前記コイル線A〜Cが、それぞれ起電力を生じる。前記各起電力は、前記同軸ケーブル(1009〜1011)を介してA/DボードA(1008)に伝達される。ここで、前記各起電力は、A/DボードA(1008)により信号処理され、起電力信号に変換される。前記起電力信号は、前記USBケーブル(1021)を介して前記パーソナルコンピュータ(1018)に伝達される。
【0076】
また、前記変圧器(1001)から前記A/DボードB(1020)へは、常に参照電流が流れ続けている。前記A/DボードB(1020)は、前記参照電流を参照信号へと変換し続ける。そして、前記A/DボードB(1020)は、前記参照信号を前記パーソナルコンピュータ(1018)に伝達し続ける。
【0077】
ここで、第一方位計算部を汎用的なパーソナルコンピュータ(1018)から構成した場合における、ハードウエア構成について、図11を用いて説明する。前記パーソナルコンピュータ(1018)は、主に、CPU(1101)、HDD(1102)、メインメモリ(1103)、I/O(1104)、モニタ(1105)から構成される。
【0078】
前記メインメモリ(1103)のワーク領域には第一方位計算プログラム(1106)が展開される。この第一方位計算プログラム(1106)は、前記起電力信号をもとに前記部分放電の発生源の位置を算出し、その算出結果をモニタ(1105)に表示するのに用いられる。
【0079】
まず、前記パーソナルコンピュータ(1018)は、前記起電力信号(1107)および参照信号(1108)を、I/O(1104)を介して取り込む。
【0080】
次に、CPU(1101)は、前記起電力信号(1107)および参照信号(1108)に基づき、第一方位計算プログラム(1106)に従って、まず、複合コイル部に生じた起電力が前記部分放電電磁波に由来するものであるかを区別する。複合コイル部に生じた起電力から前記部分放電電磁波に由来する成分を抽出する様子を説明するための図を図12に例示する。ここで、図12(a)は、CPU(1101)が第一方位計算プログラム(1106)に従って、検知時間ごとの前記起電力信号及び参照信号の強度を比較する様子を説明するための図である。また、図12(b)は、CPU(1101)が第一方位計算プログラム(1106)に従って、前記比較処理を行った起電力信号から、前記部分放電電磁波に由来する成分を抽出する様子を説明するための図である。なお、図12(a)、(b)においては、参照信号(1204、1220)、及び、起電力信号のうちコイル線Aに生じた起電力の大きさを示すもの(1201、1208)、起電力信号のうちコイル線Bに生じた起電力の大きさを示すもの(1202、1209)、起電力信号のうちコイル線Cに生じた起電力の大きさを示すもの(1203、1210)、を、縦軸に信号強度、横軸に検知時間をとって表わした。まず、図12(a)に示すように、CPU(1101)は、前記起電力信号(1201〜1203)と、前記参照信号(1204)と、を比較する。そして、前記起電力信号(1201〜1203)中に発生するピーク(1205〜1207)が、前記参照信号(1204)と同じ周期であるか否かを判断する。
【0081】
次に、図12(b)に示すように、CPU(1101)は、第一方位計算プログラム(1106)に従って、前記ピーク(1205〜1207)を、起電力信号の中から抽出する(1208〜1210)。
【0082】
次に、CPU(1101)は、第一方位計算プログラム(1106)に従って、前記コイル線A〜Cがそれぞれ受信した部分放電電磁波の磁界成分の強度を算出する。より具体的には、たとえば、前記コイル線Aが受信した部分放電電磁波の磁界成分の強度すなわち磁界強度Aは、前記コイル線A由来のピーク(1211〜1213)の平均値を求めることで得られる。
【0083】
次に、CPU(1101)は、第一方位計算プログラム(1106)に従って、部分放電の発生源の位置を算出する。前記算出は、前記式8に基づく演算処理により行われる。まず、式8のEに磁界強度A、Eに磁界強度B、Eに磁界強度Cを代入することに相当する処理を行う。そして、式8に示す4つの式から角度φ、θを算出することに相当する処理を行う。そして、磁界強度Aと、磁界強度Bと、磁界強度Cと、角度φ、θとについての情報を含む方位計算結果(1109)を生成し、メインメモリのデータ領域に格納する。
【0084】
そして、CPU(1101)は、第一方位計算プログラム(1106)に従って、前記方位計算結果(1109)をモニタ(1105)に映し出す。図13は、モニタ(1105)に映し出された前記方位計算結果(1109)の一例である。図13に示すように、モニタには、前記磁界強度A(1301)、磁界強度B(1302)、磁界強度C(1303)、そして、角度φ、θ(1304)などが映し出される。
【0085】
図14に、本具体的実施例における第一方位計算部の処理フローを示す。まず、第一方位計算部は、検知部からコイル線A〜C由来の起電力信号を得たか判断する(S1401)。ここで、第一方位計算部が前記起電力信号を得たと判断しない場合、第一方位計算部は再度、検知部からコイル線A〜C由来の起電力信号を得たか否かの判断を行う。第一方位計算部が前記起電力信号を得たと判断した場合、次に、参照信号と、前記起電力信号に生じたピークと、の周期が同じであるかを判断する(S1402)。ここで、第一方位計算部が、前記参照信号と前記起電力信号に生じたピークとの周期が同じである、と判断しない場合、第一方位計算部は再度、検知部からコイル線A〜C由来の起電力信号を得たか否かの判断を行う。第一方位計算部が、前記参照信号と前記起電力信号に生じたピークとの周期が同じである、と判断した場合、次に、前記起電力信号から前記ピークをすべて抽出する(S1403)。次に、第一方位計算部は、前記コイル線A〜Cがそれぞれ受信した部分放電電磁波の磁界成分の強度を算出する(S1404)。次に、第一方位計算部は、前記角度φ、θを算出し、モニタに表示する(S1405)。以上が、本具体的実施例における第一方位計算部の処理フローである。
【0086】
最後に、本具体的実施例において第一整合コンデンサおよび第二整合コンデンサを設ける場合について追記する。第一整合コンデンサは、前記コイル線A〜Cの端部Pと、前記各同軸ケーブルの内部導体との間にそれぞれ接続する。そして、第二整合コンデンサは、前記コイル線A〜Cの端部Pと、前記コイル線A〜Cの端部Qと、の間に接続する。第一整合コンデンサおよび第二整合コンデンサについては、エアバリコンにより構成するのが好ましい。前記エアバリコンについては、一例として回転軸を有し、前記回転軸を回転することで自身に内蔵された電極板を回転させるタイプのものを用いる。また、前記回転軸の回転は、一例として電動で行うことが可能である。また、前記第一整合コンデンサおよび第二整合コンデンサの電荷容量調節のタイミングについては、一例として、前記第一方位計算部が部分放電発生位置特定の処理を行う前に行うのが好ましい。その場合、まず前記処理の前に、前記同軸ケーブル(1009〜1011)に、別途用意したオシロスコープを接続する。そして、前記オシロスコープの表示画面に、前記コイル線A〜Cが生成した起電力を表示させる。そして、ユーザが、前記起電力の表示を見ながら、前記回転軸を回すことで、第一整合コンデンサおよび第二整合コンデンサの電荷容量を調節する。このようにして、前記コイル線A〜Cと同軸ケーブルとのインピーダンス整合を行うことが可能である。
【0087】
以上が、本実施形態にかかるアンテナ装置の具体的実施例についての説明である。
<実施形態4の効果>
【0088】
本実施形態により、電磁波発生源の位置を自動的に得ることのできるアンテナ装置が実現する。
<<実施形態5>>
<実施形態5の概要>
【0089】
本実施形態にかかるアンテナ装置は、基本的には実施形態1から4にかかるアンテナ装置と同様である。ただし、本実施形態に係るアンテナ装置はさらに、複合コイル部の向きを制御できる点において、実施形態1から4にかかるアンテナ装置と異なる。
<実施形態5の機能的構成>
【0090】
図15に、本実施形態にかかるアンテナ装置の機能ブロック図を示す。本実施形態にかかるアンテナ装置(1501)の機構的構成は、基本的には実施形態4にかかるアンテナ装置の機能的構成と同様である。ただし、本実施形態にかかるアンテナ装置(1501)はさらに、駆動部(1502)および駆動制御部(1503)および第二方位計算部(1504)を有する。また、本実施形態にかかるアンテナ装置の機構例を図16に示す。
【0091】
(駆動部についての説明)駆動部(1502)は、組み合わされた状態でコイルの向きを変化させるように複合コイル部を駆動することができる。図16に例示するアンテナ装置において、駆動部は、複合コイル部と鞘部と第一および第二整合コンデンサとからなる部分すなわち受信部分A〜C(1601〜1603)を固定するためのコイル固定具A〜C(1604〜1606)と、受信部分A〜C(1601〜1603)を回転させるためのモータA(1607)と、コイル固定具A(1604)を回転させるためのモータC(1609)と、コイル固定具C(1606)を回転させるためのモータB(1608)と、から構成される。また、これらの構成物を持ち運び可能にするための正方形状ハンドル(1610)および取っ手(1611)を有していてもかまわない。また、検知対象である電磁波の磁界成分受信の便宜上、アンテナ装置の初期状態において基本的には、前記受信部分A〜C(1601〜1603)はぞれぞれ、コイル固定具A〜C(1604〜1606)のうちいずれか一つと同一平面上に並ぶよう構成する。なお、本実施形態においては、便宜上受信部分A(1601)に含まれるコイル線のことをコイル線A、受信部分B(1602)に含まれるコイル線のことをコイル線B、受信部分C(1603)に含まれるコイル線のことをコイル線Cと呼ぶこととする。
【0092】
ここで、駆動部(1502)が、複合コイル部をどのように駆動するかについて、図16および図17を用いて説明する。図17は、図16に示す受信部分と、コイル固定具Aと、コイル固定具Cと、モータAとの機械的関係を説明する図である。まず、モータA(1701)がどのようにして受信部分(1702)を回転するかについて説明する。図17(a)に示すように、コイル固定具A(1703)は、上層(1704)と下層(1705)とに分かれている。このコイル固定具A上層(1704)は、コイル固定具A下層(1705)との噛合い部分に設けられたねじ構造により、コイル固定具A下層(1705)内壁のねじ構造と噛合っていて、コイル固定具A下層(1705)の上を抵抗無く回転できる。コイル固定具A上層(1704)のコイル固定具A下層(1705)との噛合い部分に設けられたねじ構造と、コイル固定具A下層(1705)内壁のねじ構造のねじの長さは、この2つのねじ構造が実際に噛合って回転した際に、互いがちょうど度数法にして360度回転したところで外れる程度の長さとする。また、コイル固定具A下層(1705)にはモータA(1701)がモータ取り付けねじ(1708)と取付金具(1709)とによってとりつけられる。また、コイル固定具A上層(1704)の表側面には、モータA(1701)のギア(1706)と噛合いコイル固定具A円周方向に回転するための円形ギア(1707)が設置されている。また、コイル固定具A上層(1704)にはコイル固定ねじ(1710、1711)により前記受信部分(1702)を取り付ける。前記コイル固定ねじ(1710、1711)は、モータA(1701)のギア(1706)と円形ギア(1707)とが噛合うのに差し支えないよう深く差し込まれる。
【0093】
図17(b)に示すように、コイル固定具A下層(1715)は、コイル固定具C(1718)とは固定棒(1712)、(1713)により固定されている。よって、モータA(1716)を駆動することで、コイル固定具A上層(1717)のみを回転することができる。これにより、受信部分(1714)をモータA(1716)によりコイル固定具A下層(1715)上で回転させることができる。
【0094】
図16に示すアンテナ装置において、上述したような、受信部分A〜C(1601〜1603)と、コイル固定具A(1604)と、コイル固定具C(1606)と、モータA(1607)との機械的関係は、コイル固定具A(1604)と、コイル固定具C(1606)と、モータC(1609)と、コイル固定具B(1605)との機械的関係にも利用する。よって、コイル固定具A(1604)をモータC(1609)によりコイル固定具C(1606)の円周方向に回転することができる。また、前記機械的関係は、コイル固定具C(1606)と、コイル固定具B(1605)と、モータB(1608)と、正方形状ハンドル(1610)との機械的関係にも利用する。よって、コイル固定具C(1606)をモータB(1608)によりコイル固定具B(1605)の円周方向に回転することができる。
【0095】
なお、前記モータA〜C(1607〜1609)は、D/Aボード(1612)を介して、汎用的なパーソナルコンピュータ(1613)と接続している。前記パーソナルコンピュータ(1613)からの信号を、前記D/Aボード(1612)を介して受け取る。そして、前記モータA〜C(1607〜1609)は、前記信号に従って駆動する。
【0096】
また、前記モータA〜C(1607〜1609)には、DCモータを用い、またその制御はパルス信号を用いることが、一例として可能である。また、前記モータA〜C(1607〜1609)にステッピングモータを用いることも可能である。
【0097】
また、前記コイル固定具A〜C(1604〜1606)、前記正方形状ハンドル(1610)、前記取っ手(1611)は、一例として、絶縁材料により構成するのが好ましい。
【0098】
以上に説明した機械的関係をすべて組み合わせることで、複合コイル部および鞘部を3次元方向に駆動することができる。これが、複合コイル部の駆動方法の一例である。なお、本実施形態における駆動部については、上記例のみならず、複合コイル部および鞘部を遠隔操作により3次元方向に駆動できる機構を持つものなら、複合コイル部(1501)にて電磁波の磁界成分を受信する上で差し支えが無い限り転用可能である。
【0099】
また、各コイル固定具内に、各コイルのコイル線を設置し、前記各コイル固定具を鞘部の代わりにするなど、複合コイル部と駆動部と鞘部とが一体化している機構も可能である。
【0100】
(駆動制御部についての説明)駆動制御部(1503)は、検知部で検知される特定のコイルの起電力が最大となるように駆動部を制御する。
【0101】
「特定のコイル」をどのように決めるかについて、一例を示す。これまでの説明にもあるように、複合コイル部は、三組のコイルを組み合わせて構成されている。そして、前記三組のコイルはそれぞれの軸が相互に直交している。つまり、前記三組のコイルの開口面の開口方向はそれぞれ互いに直交している。ゆえに、前記三組のコイルが電磁波の磁界成分を受信する際、滅多なことがない限り、前記三組のコイルが生じる起電力の大きさの値は、互いに異なる値となる。よって、前記三組のコイルが電磁波の磁界成分を受信している際に、前記三組のコイルのうちの一つは、他のコイルと同じ大きさの起電力、もしくは、前記他のコイルよりも大きい起電力を生じることになる。そのコイルを、駆動制御部は、モニタリングコイルであると認識する。このようにして、駆動制御部(1503)はまず、前記三組のコイルのうちの一つすなわちモニタリングコイルが、前記三組のコイルのうちのどれであるかを判断する。以上が、「検知部で検知される特定のコイル」をどのように決めるかについての一例である。
【0102】
なお、前記三組のコイルが生じる起電力の大きさについては、第一方位計算部が算出する。前記算出の方法は、実施形態4に記載した方法と同様の方法により行う。
【0103】
この駆動制御部は、図16にも例示する汎用的なパーソナルコンピュータ(1613)により構成することが可能である。また、図16に例示するように、駆動部がモータなどから構成される場合、そのモータと、前記パーソナルコンピュータ(1613)と、はD/Aボード(1612)を介して接続する。これが、駆動部と駆動制御部との接続方法の一例である。なお、駆動制御部を前記パーソナルコンピュータ(1613)などの演算処理装置により構成した際のハードウエア構成についての説明は後述する。
【0104】
(第二方位計算部についての説明)第二方位計算部(1504)は、特定のコイルの起電力が最大となった際のコイルの向きから電磁波発生源の方位を計算する。
【0105】
この第二方位計算部は、図16にも例示する汎用的なパーソナルコンピュータ(1613)により構成することが可能である。また、その場合、前記電磁波発生源の方位の計算結果は、モニタ(1614)に表示することが可能である。なお、第二方位計算部を前記パーソナルコンピュータ(1613)などの演算処理装置により構成した際のハードウエア構成についての説明は以下に述べる。
【0106】
なお、図16に例示するアンテナ装置の機構例においては、これまでの実施形態同様、検知部はA/Dボード(1616)により構成する。そして、前記三組のコイルが生じる起電力は前記A/Dボード(1616)によりデジタル信号である起電力信号へと変換する。そして、前記起電力信号を汎用的なUSBケーブルを用いて前記パーソナルコンピュータ(1613)へと伝達する。
【0107】
また、図示はしないが、図16に示すアンテナ装置の機構例においては、検知対象である電磁波の周期性を割り出すために、たとえば、発電設備において測定対象となるラインに流す電流の電圧変化の周期を参照する。その際、前記電圧変化の周期を参照するために、別途A/Dボードを設ける。そして、前記ラインと前記A/Dボードとを同軸ケーブルなどで接続する。そして、前記パーソナルコンピュータ(1613)と前記A/Dボードとを汎用的なUSBケーブルを用いて接続する。前記A/Dボードは、前記電圧変化を参照信号へと変換し続ける。そして、前記A/Dボードは、前記参照信号を前記パーソナルコンピュータ(1613)に伝達し続ける。
【0108】
ここで、本実施形態において、第一方位計算部と、駆動制御部と、第二方位計算部と、を、前記パーソナルコンピュータ(1613)などの演算処理装置で構成した際の、ハードウエア構成の一例およびその処理の流れについて説明する。図18は、本実施形態のアンテナ装置において、第一方位計算部と、駆動制御部と、第二方位計算部と、を、前記パーソナルコンピュータ(1613)などの演算処理装置で構成した際の、ハードウエア構成の一例を示すものである。ここで説明するハードウエア構成は、基本的には、実施形態4の具体的実施例において説明したものと同様である。ただし、ワーク領域にはさらに駆動プログラム(1801)、駆動制御プログラム(1802)、第二方位計算プログラム(1803)が展開される。
【0109】
まず、前記パーソナルコンピュータ(1613)は、前記起電力信号(1817)および参照信号(1818)を、I/O(1811)を介して取り込む。
【0110】
次に、本実施形態における第一方位計算プログラム(1804)の機能、および、第一方位計算プログラム(1804)に従って行われる演算処理すなわち第一演算処理の流れについて説明する。本実施形態において、第一方位計算プログラム(1804)は、前記コイル線A〜Cがそれぞれ検知する電磁波の磁界成分の強度を算出するのに用いられる。すなわち、CPU(1806)が第一方位計算プログラム(1804)に基づき行う演算処理は、前記第一方位計算部の機能を担うといえる。
【0111】
CPU(1806)は、前記起電力信号(1817)および参照信号(1818)に基づき、第一方位計算プログラム(1804)に従って、まず、複合コイル部に生じた起電力が検出対象である電磁波の磁界成分すなわち対象電磁波の磁界成分に由来するものであるかを区別する。複合コイル部に生じた起電力から対象電磁波の磁界成分に由来する成分を抽出する様子を説明するための図を再び図12を用いて例示する。ここで、図12(a)は、CPU(1806)が第一方位計算プログラム(1804)に従って、検知時間ごとの前記起電力信号及び参照信号の強度を比較する様子を説明するための図である。また、図12(b)は、CPU(1806)が第一方位計算プログラム(1804)に従って、前記比較処理を行った起電力信号から、対象電磁波の磁界成分に由来する成分を抽出する様子を説明するための図である。なお、図12(a)、(b)においては、参照信号(1204、1220)、及び、起電力信号のうち前記コイル線Aに生じた起電力の大きさを示すもの(1201、1208)、起電力信号のうち前記コイル線Bに生じた起電力の大きさを示すもの(1202、1209)、起電力信号のうち前記コイル線Cに生じた起電力の大きさを示すもの(1203、1210)、を、縦軸に信号強度、横軸に検知時間をとって表わした。まず、図12(a)に示すように、CPU(1806)は、前記起電力信号(1201〜1203)と、前記参照信号(1204)と、を比較する。そして、前記起電力信号(1201〜1203)中に発生するピーク(1205〜1207)が、前記参照信号(1204)と同じ周期であるか否かを判断する。
【0112】
次に、図12(b)に示すように、CPU(1806)は、第一方位計算プログラム(1804)に従って、前記ピーク(1205〜1207)を、起電力信号の中から抽出する(1208〜1210)。
【0113】
次に、CPU(1806)は、第一方位計算プログラム(1804)に従って、前記コイル線A〜Cがそれぞれ受信した対象電磁波の磁界成分の強度を算出する。より具体的には、たとえば、前記コイル線Aが受信した対象電磁波の磁界成分の強度すなわち磁界強度Aは、前記コイル線A由来のピーク(1211〜1213)の平均値を求めることで得られる。そして、磁界強度Aと、磁界強度Bと、磁界強度Cと、を含む方位計算結果(1807)を生成し、メインメモリのデータ領域に格納する。以上が第一演算処理である。
【0114】
次に、モニタリングコイルが最大の電磁波の磁界成分の強度を受信するよう制御するための演算処理すなわち第二演算処理、および第二演算処理に用いられるプログラムについて説明する。
【0115】
駆動プログラム(1801)は、前記三組のコイルのうちモニタリングコイルがどれであるかを判別し、駆動部のモータA〜Cを駆動するための駆動信号を生成するためのプログラムである。駆動制御プログラム(1802)は、モニタリングコイルが最大の電磁波の磁界成分の強度を受信するよう制御するためのプログラムである。第二方位計算プログラム(1803)は、前記モニタリングコイルの向きから電磁波発生源の方位を計算するためのプログラムである。すなわち、CPU(1806)が駆動プログラム(1801)および駆動制御プログラム(1802)に基づき行う演算処理は、前記駆動制御部の機能を担うといえる。そして、CPU(1806)が第二方位計算プログラム(1803)に基づき行う演算処理は、前記第二方位計算部の機能を担うといえる。以下に、CPU(1806)がこれら4つのプログラムに従って演算処理を行う様子を示す。
【0116】
第二演算処理における初期の処理として、CPU(1806)は、駆動プログラム(1801)に従って、まず方位計算結果(1807)に含まれる磁界強度A〜Cそれぞれを比較し、前記三組のコイルのうちモニタリングコイルがどれであるかを判別し、モニタリングコイル情報(1808)としてメインメモリ(1809)のデータ領域に格納する。以上が第二演算処理における初期の処理である。
【0117】
次に、CPU(1806)は、前記モニタリングコイル情報(1808)を基に、前記モニタリングコイルをコイル固定具A(1604)円周方向に駆動するための信号である駆動信号A(1810)を生成し、I/O(1811)およびD/Aボード(1612)を介してモータA(1607)へ伝達する。この駆動信号A(1810)を受け、モータA(1607)は駆動する。そして前記三組のコイルもそれに合わせてコイル固定具A(1604)円周方向に駆動する。
【0118】
前記三組のコイルがコイル固定具A(1604)円周方向に駆動する間、CPU(1806)は、前記三組のコイルが生じる起電力を起電力信号としてI/O(1811)を介して取得し、第一方位計算プログラム(1804)に従って方位計算結果(1807)を上書きし続ける。同時に、CPU(1806)は、駆動制御プログラム(1802)に従って、前記方位計算結果(1807)から、起電力信号のうちモニタリングコイルに生じた起電力の大きさを表す成分すなわちモニタリング信号のみを取り出す。そして、前記モニタリング信号の強度値をモニタリングコイルピーク値情報(1812)としてメインメモリ(1809)のデータ領域に格納し、また、履歴として更新し続ける。前記初期の処理を除く、第二演算処理におけるここまでの一連の処理すなわち処理Aを1ステップとして、CPU(1806)は、前記処理Aを終了させるための処理(詳しくは以下に示す)を行うまでの間、繰り返す。
【0119】
モ前記処理Aを続ける間、CPU(1806)は駆動制御プログラム(1802)に従って、前記処理Aのスタートからnステップまでの間、モニタリングコイルピーク値情報(1812)を参照し続ける。そして、前記nステップまでの間に、モニタリング信号の強度値が極大値になったか否かを判断する。そして、前記nステップまでの間に、モニタリング信号の強度値が極大値になったと判断した場合、前記nステップ目で前記処理Aを終了する。なお、前記nステップにかかるnの数値は、ユーザが検知条件を考慮したうえで、I/O(1811)を介して入力するのが一例として好ましい。
【0120】
このように、前記nステップまでの間にモニタリング信号の強度値が極大値になったと判断した場合、CPU(1806)は、前記nステップ目で上記処理Aをいったん停止する。そして、駆動制御プログラム(1802)に従って、モニタリングコイルピーク値情報(1812)の履歴に基づいて、モニタリング差分値情報A(1813)を生成し、メインメモリ(1809)のデータ領域に格納する。より具体的には、まずCPU(1806)は駆動制御プログラム(1802)に従って、モニタリングコイルピーク値情報(1812)を参照する。そして、前記参照により、前記nステップまでの間の何ステップ目にモニタリング信号の強度値が極大値になったかを判断する。そして、モニタリング信号の強度値が極大値になった際のステップ数すなわち極大値ステップ数とnの数値との差分値を算出し、モニタリング差分値情報A(1813)とする。
【0121】
CPU(1806)は、駆動プログラム(1801)に従って、モニタリング差分値情報A(1813)に基づいて、補正信号A(1814)を生成し、I/O(1811)およびD/Aボード(1612)を介してモータA(1607)へ伝達する。補正信号A(1814)とは、前記差分値ステップ分、前記処理Aの際の方向とは逆方向にモータA(1607)を駆動するための信号である。この補正信号A(1814)を受け、モータA(1607)は前記三組のコイルの向きを補正すべく駆動する。なお、前記処理Aからここまでの処理を、シーケンスAと呼ぶこととする。
【0122】
次に、シーケンスAと同様の処理に基づき、前記三組のコイルの向きを、コイル固定具B(1605)方向に駆動し、モニタリングコイルが最大の起電力を生じるよう調整を行う。なお、この処理全体を、シーケンスBと呼ぶこととする。
【0123】
また、シーケンスAと同様の処理に基づき、前記三組のコイルの向きを、コイル固定具C(1606)方向にも駆動し、モニタリングコイルが最大の起電力を生じるよう調整を行う。なお、この処理全体を、シーケンスCと呼ぶこととする。
【0124】
次に、モニタリングコイルピーク値情報(1812)のうちシーケンスAにて記録された前記極大値、すなわち極大値Aと、モニタリングコイルピーク値情報(1812)のうちシーケンスCにて記録された前記極大値、すなわち極大値Cと、の双方の値を比較する。
【0125】
そして、極大値Aよりも極大値Cの方が大きいと判断した場合、最後に、CPU(1806)は、モニタリングコイルピーク値情報(1812)の履歴およびモニタリング差分値情報A〜C(1813、1815、1816)に基づき、第二方位計算プログラム(1803)に従って、補正後方位計算結果(1805)を生成し、モニタに表示する。この補正後方位計算結果(1805)は、xyz軸(1615)を基準として、モニタリングコイルの軸がどの方向を向いているかを、前記軸とxz平面とがなす角度θと、前記軸とxy平面とがなす角度φと、などの情報を含む。
【0126】
以上が、第一方位計算部、および、駆動制御部、および、第二方位計算部を演算処理装置などにより構成した場合のすべての処理の流れの一例である。また、図19に、そのすべての処理の流れをフロー図として表わしたものを示す。なお、図19についての説明は、前記すべての処理の流れの一例に記載した内容とほぼ同様であるので、省略する。
<実施形態5の効果>
【0127】
本実施形態により、電磁波発生源の位置をより簡単に得ることのできるアンテナ装置が実現する。
<<実施形態6>>
<実施形態6の概要>
【0128】
本実施形態にかかるアンテナ装置は、基本的には実施形態1から5にかかるアンテナ装置と同様である。ただし、本実施形態に係るアンテナ装置は、複合コイル部の各コイルが平面コイルである点において、実施形態1から5にかかるアンテナ装置と異なる。
<実施形態6の機能的構成>
【0129】
本実施形態にかかるアンテナ装置を機能ブロック図として示すと、図15に記載の機能ブロック図とほぼ同様である。
【0130】
本実施形態にかかるアンテナ装置の、複合コイル部と鞘部と第一および第二整合コンデンサとからなる部分すなわち受信部分の概念図を、図20に示す。本実施形態において、前記受信部分は、平面コイルA(2001)と鞘A(2002)と第一整合コンデンサA(図示せず)と第二整合コンデンサA(図示せず)とからなる受信部分Aと、平面コイルB(2003)と鞘B(2004)と第一整合コンデンサB(図示せず)と第二整合コンデンサB(図示せず)とからなる受信部分Bと、平面コイルC(2005)と鞘C(2006)と第一整合コンデンサC(図示せず)と第二整合コンデンサC(図示せず)とからなる受信部分Cと、などから構成する。図20に示すように、本実施形態において、前記受信部分は、受信部分Cの内側空洞部分に切れ込みを入れて受信部分Bを差し込み、さらに受信部分Bの内側空洞部分に切れ込みを入れて受信部分Aを差し込む、などすることで、前記受信部分を簡単に組み立てることができる。また逆に、適宜用途に応じて、前記受信部分を解体し、受信部分A〜Cのうちいずれか一つを単独で用いることも可能となる。また、平面コイルにマイクロストリップアンテナを用いることで、さまざまな偏波に対応することが可能となる。
【0131】
なお、前記受信部分A〜Cと接地シールド付ケーブルとの接続は、それぞれの平面コイルA〜C(2001,2003、2005)が、鞘A〜C(2002,2004、2006)により覆われていない箇所(2007〜2009)にて行うのが好ましい。
<実施形態6の効果>
【0132】
本実施形態により、組み立ておよび解体を簡単に行えるアンテナ装置が実現する。
<<実施形態7>>
<実施形態7の概要>
【0133】
本実施形態にかかるアンテナ装置は、基本的には実施形態1から5にかかるアンテナ装置と同様である。ただし、本実施形態に係るアンテナ装置においては、複合コイル部が、各コイル線を球体もしくは立方体に巻き回すことで構成されている点において、実施形態1から5にかかるアンテナ装置と異なる。
<実施形態7の機能的構成>
【0134】
本実施形態にかかるアンテナ装置を機能ブロック図として示すと、図15に記載の機能ブロック図とほぼ同様である。
【0135】
本実施形態にかかるアンテナ装置の、複合コイル部と鞘部と第一および第二整合コンデンサとからなる部分すなわち受信部分の概念図を、図21に示す。図21(a)は、前記受信部分を球体に巻きまわした場合についての概念図である。図21(a)に示すように、本実施形態の前記受信部分は、まず、内部に各コイルのコイル線を挿通させた各鞘(2101〜2103)を、そのまま球体(2104)に取り付けることで構成する。ここで、前記各鞘(2101〜2103)のそれぞれの中心が一致するとともにそれぞれの軸が相互に直交するように、前記各鞘(2101〜2103)を取り付ける前に前記球体(2104)にマジックペンなどで線を書いておくなどする。そうすれば、前記各鞘(2101〜2103)と前記球体(2104)とを組み合わせるときに、容易に、前記各鞘(2101〜2103)のそれぞれの中心を一致させ、かつ、それぞれの軸を相互に直交させることが可能である。また、前記コイル線と第一および第二整合コンデンサと接地シールド付ケーブルとは、各鞘の円周上に接続用の箱(2105〜2107)を設け、その内部で接続すればよい。
【0136】
図21(b)は、前記受信部分を立方体(2111)に巻きまわした場合についての概念図である。図21(b)に示すように、前記受信部分(2108〜2110)は、球体に取り付けるのと同様の方法で、立方体(2111)に取り付けることも可能である。ただし、この場合、前記鞘を略正方形状に構成せねばならない。また、同様に、前記コイル線も略正方形状にせねばならない。このように、前記受信部分(2108〜2110)を立方体(2111)に取り付けることで、前記受信部分(2108〜2110)を、任意の平面、たとえば自動車の屋根の上(2112)などに、吸盤(2113)などを用いて固定することが可能である。
<実施形態7の効果>
【0137】
本実施形態により、組み立ておよび解体を簡単に行えるアンテナ装置が実現する。
<<実施形態8>>
<実施形態8の概要>
【0138】
本実施形態にかかるアンテナ装置は、基本的には実施形態1から5にかかるアンテナ装置と同様である。ただし、本実施形態に係るアンテナ装置においては、複合コイル部が、各コイル線を円形に巻きまわすための環状ガイド、あるいは、各コイル線を正方形の輪郭状に巻きまわすための矩形環状ガイドに巻き回すことで構成されている点において、実施形態1から5にかかるアンテナ装置と異なる。
<実施形態8の機能的構成>
【0139】
本実施形態にかかるアンテナ装置を機能ブロック図として示すと、図15に記載の機能ブロック図とほぼ同様である。
【0140】
前記環状ガイドの一例を図22(a)に示す。図22(a)に例示するように、前記環状ガイドは、長辺両側に垂直なガイドを有する細長い平板を、その短辺側両端をつなげ、真円形にしたものすなわち円形レール(2201〜2203)を三つ、それぞれの中心が一致するとともにそれぞれの軸が相互に直交するように組み立てたものからなる。本実施形態においては、一例として、前記円形レール(2201〜2203)のガイドとガイドの間に、内部にコイル線を挿通した真円形状の鞘(2204〜2206)をはめ込むことで、複合コイル部および鞘部を構成する。この構成により、前記鞘(2204〜2206)が前記円形レールから外れることなく、前記鞘(2204〜2206)は常に、それぞれの中心が一致し、かつ、それぞれの軸が相互に直交した状態を保つことができる。
【0141】
前記矩形環状ガイドの一例を図22(b)に示す。図22(b)に例示するように、前記矩形環状ガイドは、長辺両側に垂直なガイドを有する細長い平板を、その短辺側両端をつなげ、方形にしたものすなわち方形レール(2207〜2209)を三つ、それぞれの中心が一致するとともにそれぞれの軸が相互に直交するように組み立てたものからなる。本実施形態においては、一例として、前記方形レール(2207〜2209)のガイドとガイドの間に、内部にコイル線を挿通した方形状の鞘(2210〜2212)をはめ込むことで、複合コイル部および鞘部を構成する。この構成により、前記鞘(2210〜2212)が前記方形レールから外れることなく、前記鞘(2210〜2212)は常に、それぞれの中心が一致し、かつ、それぞれの軸が相互に直交した状態を保つことができる。
【0142】
図23は、前記環状ガイドのもう一つの例を示すものである。図23において、環状ガイドは、ガイドAC(2301)と、ガイドB(2302)とから構成される。前記ガイドAC(2301)は、内部が空洞である円筒の両端をつなげ真円状にしたものを二つ用意し、それぞれの中心が一致するとともにそれぞれの軸が相互に直交するように組みあわせたものから構成する。そして、前記ガイドB(2302)は、内部が空洞である円筒の両端をつなげ真円状にしたものから構成する。前記ガイドAC(2301)およびガイドB(2302)の内部には、内部にコイル線を挿通した真円状の鞘(2303〜2305)を通すことができる。このように、環状ガイドを筒状に構成すれば、前記鞘(2303〜2305)が前記環状ガイドから外れることはほぼ確実にない。このようにして、より頑丈なアンテナ装置を構成することが可能である。
<実施形態8の効果>
【0143】
本実施形態により、より頑丈なアンテナ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】実施形態1におけるアンテナ装置の機能ブロック図
【図2】実施形態1にかかるアンテナ装置の構成の一例を示す図
【図3】実施形態1にかかる鞘部が、接地電位点である地面と、複合コイル部と、の間に生じる電位差をキャンセルする機能について説明する図
【図4】実施形態2にかかるアンテナ装置の機能ブロック図
【図5】実施形態2における第一整合コンデンサについて説明するための図
【図6】実施形態3にかかるアンテナ装置の機能ブロック図
【図7】実施形態3における第二整合コンデンサについて説明するための図
【図8】実施形態4にかかるアンテナ装置の機能ブロック図
【図9】複合コイル部の各コイルがそれぞれどの程度の電磁波の磁界成分を受信するか、を計算する方法を説明する図
【図10】実施形態4の具体的実施例の一つを示す図
【図11】実施形態4の具体的実施例において、第一方位計算部を汎用的なパーソナルコンピュータから構成した場合における、ハードウエア構成について説明する図
【図12】実施形態4の具体的実施例において、複合コイル部に生じた起電力から電磁波の磁界成分に由来する成分を抽出する様子を示す図
【図13】実施形態4の具体的実施例において、モニタに映し出された前記方位計算結果の一例を示す図
【図14】実施形態4の具体的実施例における第一方位計算部の処理フローを示す図
【図15】実施形態5にかかるアンテナ装置の機能ブロック図
【図16】実施形態5にかかるアンテナ装置の機構例
【図17】図16に示す受信部分と、コイル固定具Aと、コイル固定具Cと、モータAとの機械的関係を説明する図
【図18】実施形態5のアンテナ装置において、第一方位計算部と、駆動制御部と、第二方位計算部と、を、パーソナルコンピュータなどの演算処理装置で構成した際の、ハードウエア構成の一例を示す図
【図19】実施形態5に記載のアンテナ装置の機構例におけるすべての演算処理の流れを示す図
【図20】実施形態6にかかるアンテナ装置の、受信部分の概念図
【図21】実施形態7にかかるアンテナ装置の、受信部分の概念図
【図22】実施形態8にかかる環状ガイドおよび矩形環状ガイドの一例を示す図
【図23】実施形態8にかかる環状ガイドのもう一つの例を示す図
【符号の説明】
【0145】
0201 コイル
0202 コイル
0203 コイル
0204 鞘
0205 鞘
0206 鞘
0207 コイル周回上のうち鞘に覆われていない箇所
0208 コイル周回上のうち鞘に覆われていない箇所
0209 コイル周回上のうち鞘に覆われていない箇所
0210 接地シールド付ケーブル
0211 接地シールド付ケーブル
0212 接地シールド付ケーブル
0213 オシロスコープ
0214 複合コイル部の各コイルのコイル線と接地シールド付ケーブルと、鞘部と、が接続している箇所の拡大図
0215 同軸ケーブル
0216 コイル線端の一方
0217 同軸ケーブルの内部導体
0218 コイル線端のもう一方
0219 同軸ケーブルの外部導体
0220 鞘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの中心を一致させるとともにそれぞれの軸が相互に直交した三組のコイルを組み合わせて構成された複合コイル部と、
外来電磁波によってコイルに生じる起電力を各コイルごとに検知する検知部と、
コイルと検知部とを接続する接地シールド付ケーブルと、
前記コイルのコイル線を覆う非磁性導電体材料からなる鞘部と、
を有するアンテナ装置。
【請求項2】
鞘部の一方端は、接地シールド付ケーブルのシールドを介して接地されている請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
鞘部の他方端側のコイル線と、接地シールド付ケーブルの軸線との間にインピーダンス整合のための第一整合コンデンサを配置した請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
鞘部の一方端側のコイル線と、鞘部の他方端側のコイル線との間に、インピーダンス整合のための第二整合コンデンサを配置した請求項1から3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
検知部にて検知した各コイルの起電力に応じて電磁波発生源の方位を計算する第一方位計算部をさらに有する請求項1から4のいずれか一に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
組み合わされた状態でコイルの向きを変化させるように複合コイル部を駆動可能な駆動部と、
検知部で検知される特定のコイルの起電力が最大となるように駆動部を制御する駆動制御部と、
特定のコイルの起電力が最大となった際のコイルの向きから電磁波発生源の方位を計算する第二方位計算部と、
を有する請求項1から5のいずれか一に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
各コイルは平面コイルである請求項1から6のいずれか一に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
複合コイル部は、各コイル線を球体に巻き回すことで構成されている請求項1から7のいずれか一に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
複合コイル部は、各コイル線を円形に巻きまわすための環状ガイドに巻き回すことで構成されている請求項1から7のいずれか一に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
複合コイル部は、各コイル線を立方体に巻き回すことで構成されている請求項1から7のいずれか一に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
複合コイル部は、各コイル線を正方形の輪郭状に巻きまわすための矩形環状ガイドに巻き回すことで構成されている請求項1から7のいずれか一に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記各コイル線は複数巻きである請求項1から11の何れか一に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−28247(P2010−28247A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184322(P2008−184322)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(599016431)学校法人 芝浦工業大学 (109)
【Fターム(参考)】