説明

アンテナ装置

【課題】サブアレー配列間隔を周期的にした場合においても、グレーティングローブを抑圧する。
【解決手段】素子アンテナ1と、素子アンテナ1の各々に互いに異なる励振振幅値を与える減衰器2と、素子アンテナ1の励振位相を変化させる第1移相器3と、素子アンテナ1の複数個で構成されるサブアレー5の励振位相を変化させる第2移相器6と、素子アンテナ1に与える励振振幅値、および、素子アンテナ1の位置座標に基づいて、サブアレー5毎に振幅分布の重心座標を演算する位相中心演算回路11と、サブアレー5毎に、重心座標に基づいて、指定された方向にビーム走査するための励振位相を算出し、算出された励振位相をサブアレー単位で与えるように第2移相器6を制御する第2移相器制御手段15とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はアンテナ装置に関し、特に、複数個の素子アンテナを有し、サブアレー単位でビーム走査するアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する従来のアンテナ装置としては、例えば特許文献1あるいは特許文献2記載のアンテナ装置がある。これら従来のアンテナ装置は、複数個の素子アンテナから構成されるサブアレーに対して各々位相制御手段を有し、サブアレー単位でビーム走査する構成となっている。いずれの文献においても、このサブアレー単位でのビーム走査の際に発生するグレーティングローブ抑圧方法に関する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1記載のアンテナ装置では、サブアレー開口の向きを変化させて配列することによりサブアレー配列間隔を非周期とし、これによりグレーティングローブを抑圧している。
【0004】
特許文献2記載のアンテナ装置では、サブアレー配列間隔を順次拡大することによりサブアレー配列間隔を非周期とし、これによりグレーティングローブを抑圧している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平5−501187号公報
【特許文献2】特開2006−174108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の従来のアンテナ装置においては、サブアレーの配列間隔を非周期にするためにサブアレー開口の向きを変化させている。このため、例えば同一直線偏波のアンテナを構成するためには、サブアレー開口の向きによりサブアレー内の素子アンテナの配置方向あるいは給電方向を変える必要がある。したがって、複数種類のサブアレーを準備する必要があり、設計/製造コストが大きくなってしまうという問題点があった。
【0007】
特許文献2記載の従来のアンテナ装置においては、サブアレーの配列間隔を順次拡大させている。このため、アレーアンテナ全体での開口寸法が大きくなってしまうという問題点があった。
【0008】
この発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、サブアレー単位でビーム走査するアレーアンテナにおいて、サブアレー配列間隔を周期的にした場合においてもグレーティングローブを抑圧することが可能なアンテナ装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、複数個の素子アンテナと、上記素子アンテナに接続され、上記素子アンテナの各々に互いに異なる励振振幅値を与える振幅制御手段と、上記素子アンテナに接続され、上記素子アンテナの励振位相を変化させる第1位相制御手段と、上記素子アンテナ複数個で構成されるサブアレーに接続され、上記サブアレーの励振位相を変化させる第2位相制御手段と、上記振幅制御手段により各上記素子アンテナに与える励振振幅値、および、各上記素子アンテナ1の位置座標に基づいて、上記サブアレー毎に振幅分布の重心座標を演算する位相中心演算手段と、上記サブアレー毎に、上記重心座標に基づいて、指定された方向にビーム走査するための励振位相を算出し、算出された上記励振位相を上記サブアレー単位で与えるように上記第2位相制御手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするアンテナ装置である。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、複数個の素子アンテナと、上記素子アンテナに接続され、上記素子アンテナの各々に互いに異なる励振振幅値を与える振幅制御手段と、上記素子アンテナに接続され、上記素子アンテナの励振位相を変化させる第1位相制御手段と、上記素子アンテナ複数個で構成されるサブアレーに接続され、上記サブアレーの励振位相を変化させる第2位相制御手段と、上記振幅制御手段により各上記素子アンテナに与える励振振幅値、および、各上記素子アンテナ1の位置座標に基づいて、上記サブアレー毎に振幅分布の重心座標を演算する位相中心演算手段と、上記サブアレー毎に、上記重心座標に基づいて、指定された方向にビーム走査するための励振位相を算出し、算出された上記励振位相を上記サブアレー単位で与えるように上記第2位相制御手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするアンテナ装置であるので、サブアレー配列間隔を周期的にした場合においても、グレーティングローブを抑圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の構成を示したブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るアンテナ装置における素子アンテナ配列図と各素子アンテナの励振振幅値の一例を示した説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るアンテナ装置におけるアンテナパターンを示した説明図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係るアンテナ装置における各サブアレーの振幅重心座標の一例を示した説明図である。
【図5】この発明の実施の形態4に係るアンテナ装置の構成を示したブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態5に係るアンテナ装置の構成を示したブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態5に係るアンテナ装置における素子アンテナ配列図の一例を示した説明図である。
【図8】この発明の実施の形態6に係るアンテナ装置の構成を示したブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態7に係るアンテナ装置の構成を示したブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態9に係るアンテナ装置の構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の構成を示した機能ブロック図であり、ここでは例えば送信アンテナ装置の場合について説明する。図において、1は複数個設けられた素子アンテナ、2は素子アンテナ1の各々に接続され、かつ、素子アンテナ1毎に異なる固定の励振振幅を与える減衰器である。3は素子アンテナ1に各々接続され、かつ、素子アンテナ1の励振位相を変化させる第1位相制御手段であり、ここでは例えば移相器とする(以下、第1移相器3とする。)。4は、素子アンテナ1へ各々送信信号を分配するための第1電力分配器である。5は、複数個の素子アンテナ1、減衰器2、第1位相制御手段3及び第1電力分配器4から構成されるサブアレーである。
【0013】
本実施の形態1に係るアンテナ装置は、このように、所定の個数ずつ、素子アンテナ1をグルーピングして、当該グループでサブアレー5を構成し、サブアレー単位でビーム走査を行うものである。素子アンテナ1の個数およびサブアレー5の個数は任意である。
【0014】
また、図1において、6は、各サブアレー5に対して設けられ、サブアレー5の励振位相を変化させる第2位相制御手段であり、ここでは例えば移相器とする(以下、第2移相器6とする。)。7はサブアレー5に各々送信信号を分配するための第2電力分配器である。8は本アンテナ装置に信号を送信する送信機である。
【0015】
9は減衰器2により各素子アンテナ1に与えられる励振振幅の値を保存しておくための励振振幅データメモリ、10は各素子アンテナ1の位置(座標)の値を保存しておくための素子座標データメモリである。11は励振振幅データメモリ9及び素子座標データメモリ10に保存されている値を元に下記の式(1)により各サブアレー5の振幅分布の重心座標を演算する位相中心演算回路である。
【0016】
【数1】

【0017】
ここで、Rはサブアレーの振幅分布の重心位置ベクトル(重心座標)、nはサブアレー内の素子アンテナの番号、Nはサブアレー内の素子アンテナ数、Aはサブアレー内のn番目の素子アンテナの励振振幅値(電界値)、rはサブアレー内のn番目の素子アンテナの位置ベクトル(座標)である。
【0018】
12は、主放射方向となるビーム走査方向を指示するための第1ビーム方向指令回路である。13は、第1ビーム方向指令回路12から指示されたビーム方向及び素子座標データメモリ10に保存されている素子アンテナ1の座標を元に当該方向にビーム走査するための励振位相を演算し、これを第1移相器3に与える第1移相器制御回路である。14は、第1ビーム方向指令回路12が指示する方向とは異なるビーム走査方向を指示する第2ビーム方向指令回路である。15は第2ビーム方向指令回路14から指示されたビーム方向及び位相中心演算回路11が演算した各サブアレー5の振幅分布の重心座標を元に当該所望のビーム走査方向にビーム走査するための励振位相を演算し、これを第2移相器6に与える第2移相器制御回路である。
【0019】
図2は、本実施の形態1における、素子アンテナ1の配列図と各素子アンテナ1の励振振幅値の一例を表す図である。図2において、16はサブアレー5の開口を表している。図2に示すように、本実施の形態においては、素子アンテナ1の配列間隔は一定(同間隔)であり、周期的に配列されている。また、サブアレー5の配列の間隔および配置も一定で、周期的となっている。サブアレー5の開口16の向きも、すべてのサブアレー5において同じである。但し、各素子アンテナ1の励振振幅の分布は、図2に示すように、素子アンテナ1ごとに異なり、非周期的となっている。図2において、・は−12dB以下、△は−12dBより大きく−9dB以下、◆は−9dBより大きく−6dB以下、●は−6dBより大きく−3dB以下、■は−3dBより大きく0dB以下となっている。各素子アンテナ1の励振振幅の分布は、例えば、乱数などを用いて設定し、励振振幅データメモリ9に予め記憶させておく。
【0020】
次に、本実施の形態1に係るアンテナ装置の動作について説明する。送信機8から送信された信号は、第2電力分配器7により、各サブアレー5に給電するために、サブアレー5の個数に合せて分配される。第2電力分配器7により分配された信号は、第2移相器6において位相を変化させられた後、各サブアレー5へと給電される。各サブアレー5へと給電された信号は、第1電力分配器4により、素子アレー1の個数に合せて分配された後、第1移相器3により位相を変化させられ、また、減衰器2により振幅を変化させられた後、素子アンテナ1に給電され、そこから空間へと放射される。
【0021】
ここで、第1移相器3の位相変化量は、第1移相器制御回路13により与えられ、n番目の素子アンテナ1に対しては、下記の式(2)で示される位相変化量が与えられる。
【0022】
【数2】

【0023】
ここで、kは当該送信信号の周波数における波数であり、あらかじめ第1移相器制御回路13内部に保存されているものとする。rはサブアレー5内のn番目の素子位置ベクトルであり、素子座標データメモリ10により与えられる。また、θは第1ビーム方向指令回路12により指示された方向の方向余弦ベクトルである。すなわち、式(2)の位相変化量は、第1ビーム方向指令回路12により指示された方向へビーム走査するための位相変化量である。
【0024】
また、第2移相器6の位相変化量は、第2移相器制御回路15により与えられ、m番目のサブアレー5に対しては、下記の式(3)で示される位相変化量が与えられる。
【0025】
【数3】

【0026】
ここで、Rはm番目のサブアレー5内の振幅分布の重心座標を表す位置ベクトルであり、励振振幅データメモリ9に保存されている各素子アンテナ1の励振振幅値、および、素子座標データメモリ10に保存されている各素子アンテナ1の座標を入力データとし、位相中心演算回路11において式(1)に基づき求められる。また、θは第2ビーム方向指令回路14により指示された方向の方向余弦ベクトルである。すなわち、式(3)の位相変化量は、第2ビーム方向指令回路14により指示された方向へビーム走査するために、サブアレー単位で与えられる位相変化量である。なお、各素子アンテナ1の励振振幅値は、例えば図2のように非周期に設定されており、この場合、式(1)により得られる各サブアレー5の振幅分布の重心座標Rは全てのサブアレー5に対して異なる。
【0027】
以上のように構成されたアンテナ装置のアンテナパターンは、例えば図3のようになる。図において、17の実線は、本発明のアンテナ装置によるアンテナパターンであり、18の破線は、各素子アンテナの振幅分布を等振幅とした従来のアンテナ装置によるアンテナパターンである。また、19はサブアレー単位でビーム走査、すなわち第2移相器6によりビーム走査したときに発生するグレーティングローブの方向である。
【0028】
本実施の形態1では、各素子アンテナ1の振幅分布を、図2に示すように、素子アンテナ1ごとに異なるようにしたことにより、式(1)で計算されるサブアレー5の振幅分布の重心座標が全てのサブアレー5に対して異なる。これにより、本実施の形態1は、図3に示すように、従来のアンテナ装置と比較して、グレーティングローブを抑圧できる効果がある。
【0029】
以上のように、本実施の形態1においては、複数個の素子アンテナ1と、各素子アンテナ1に接続され、各素子アンテナ1に対して互いに異なる固定の励振振幅を与える減衰器2と、各素子アンテナ1に接続され、素子アンテナ1の励振位相を変化させる第1移相器3と、から構成されるサブアレー5と、各サブアレー5に対して(サブアレー単位で)設けられ、サブアレー5の励振位相を変化させる第2移相器6とを備え、減衰器2により各素子アンテナ1に与えた励振振幅から式(1)により算出されたサブアレー5の振幅分布の重心座標を全てのサブアレー5毎に互いに異なるように変化させ、かつ、所望の方向にビーム走査するための励振位相を当該重心座標を用いて算出し、これを第2移相器制御回路15によりサブアレー単位で第2移相器6に与えるようにしたので、サブアレー5の振幅分布の重心座標が全てのサブアレー5で互いに異なり、これにより、サブアレー配列間隔を周期的にした場合においても、グレーティングローブを抑圧することができるという効果が得られる。
【0030】
また、本実施の形態1においては、サブアレー5の配列間隔を周期的にし、サブアレー5の開口16の向きも同じとしたので、特許文献1とは異なり、サブアレー開口の向きによりサブアレー内の素子アンテナの配置方向あるいは給電方向を変える必要もなく、複数種類のサブアレーを準備する必要もないので、設計/製造コストを抑えることができるという効果が得られる。
【0031】
さらに、本実施の形態1においては、サブアレー配列間隔を周期的として同一にしたので、特許文献2のようにアレーアンテナ全体での開口寸法が大きくなってしまうことはなく、装置の小型化を図ることができるという効果が得られる。
【0032】
なお、上記の説明においては、減衰器2により与えられる各素子アンテナ1の励振振幅の値を固定値として説明したが、その場合に限らず、減衰器2により与えられる各素子アンテナ1の励振振幅の値を可変としてもよい。
【0033】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2に係る各サブアレー5の振幅分布の重心座標を表す図であり、例えば図2記載のサブアレー5の振幅分布の重心座標をX軸に投影したときの位置(座標)を表している。図4において、20は各サブアレー5の振幅分布の重心座標を表している。
【0034】
なお、本実施の形態2に係るアンテナ装置の全体の構成は、基本的に上記の実施の形態1と同様であるため、ここでは、その説明および図示を省略し、図1を参照することとする。
【0035】
図4から分かるように、本実施の形態2においては、位相中心演算回路11により演算される重心座標を、アンテナ装置の正面方向と所望のビーム走査方向とを含む面に投影した場合に、この投影した座標が全てのサブアレー5に対して異なるように構成する。
【0036】
すなわち、本実施の形態2では、X軸上に投影したサブアレー5の振幅分布の重心座標が全て異なるように、各素子アンテナ1の振幅分布を設定する。これにより、各サブアレー5は不等間隔アレーと等価となるため、サブアレー単位でX軸方向にビーム走査、すなわち第2移相器6によりX軸方向にビーム走査したときに発生するグレーティングローブを抑圧することができる。
【0037】
以上のように、本実施の形態2においては、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、X軸上に投影したサブアレー5の振幅分布の重心座標が全て異なるように、各素子アンテナ1の振幅分布を設定するようにしたので、各サブアレー5は不等間隔アレーと等価となり、サブアレー単位で第2移相器6によりX軸方向にビーム走査したときに発生するグレーティングローブをより抑圧できるという効果が得られる。
【0038】
実施の形態3.
本実施の形態3では、上記の実施の形態1のアンテナ装置において、第1ビーム方向指令回路12により指示される方向を主放射方向とし、第2ビーム方向指令回路14により指示される方向を、ビーム方向を微調整する方向とする。これにより、当該アンテナ装置のビーム走査方向が所望の方向からずれた場合においても、第2ビーム方向指令回路14の指示により微調整することが可能である。さらに、サブアレー5の振幅分布の重心座標が全てのサブアレー5に対して異なっているので、グレーティングローブを抑圧できる効果がある。
【0039】
なお、本実施の形態3に係るアンテナ装置の構成は、基本的に上記の実施の形態1と同様であるため、ここでは、その説明および図示を省略し、図1を参照することとする。
【0040】
以上のように、本実施の形態3においては、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、第1ビーム方向指令回路12により指示される方向を主放射方向とし、第2ビーム方向指令回路14により指示される方向をビーム方向を微調整する方向とし、アンテナ装置のビーム走査方向が所望の方向からずれた場合においても、第2ビーム方向指令回路14の指示により微調整することを可能にし、かつ、サブアレー5の振幅分布の重心座標を全てのサブアレー5に対して異なるようにしたので、グレーティングローブをより抑圧できるという効果が得られる。
【0041】
実施の形態4.
図5は、この発明の実施の形態4のアンテナ装置の構成を示した機能ブロック図である。図5において、21は各素子アンテナ1に接続され、かつ、各素子アンテナ1の励振振幅分布を変化させる可変減衰器である。22は、可変減衰器21に設定する減衰量を制御する振幅制御回路である。
【0042】
本実施の形態と上記の実施の形態1との違いは、本実施の形態においては、図1で示した減衰器2の代わりに可変減衰器21が設けられ、また、図1で示した励振振幅データメモリ9の代わりに振幅制御回路22が設けられている点である。また、サブアレー5が、素子アンテナ1、可変減衰器21、第1位相制御手段3及び第1電力分配器4から構成されている点も異なる。実施の形態1においては、素子アンテナ1の励振振幅を励振振幅データメモリ9に予め入れておいた固定値としたが、本実施の形態においては、素子アンテナ1の励振振幅の値は、振幅制御回路22によって制御される可変の値となる。他の構成については、実施の形態1と同じであるので、同一符号を付して示し、ここでは説明を省略する。
【0043】
本実施の形態のアンテナ装置の各サブアレーの振幅分布の重心座標は、振幅制御回路22が設定した各素子アンテナ1の振幅分布、および、素子座標データメモリ10に保存されている各素子アンテナ1の座標を入力データとし、位相中心演算回路11において式(1)に基づき求められる。したがって、例えば図2記載の振幅分布等の任意の振幅分布を振幅制御回路22により各可変減衰器21に設定することにより、サブアレー単位でビーム走査、すなわち第2移相器6によりビーム走査したときに発生するグレーティングローブを抑圧できる効果がある。加えて、可変減衰器21により各素子アンテナ1の振幅分布を自由に設定することが可能になるので、ビーム走査角に応じた振幅分布の設定が可能になり、高精度なビーム形成が実現できる。振幅制御回路22により各可変減衰器21に設定する励振振幅の値は、特に限定されるものではなく、素子アンテナ1毎に互いに異なる値となるような振幅分布であれば、任意の振幅分布を用いることが可能である。
【0044】
以上のように、本実施の形態においては、上記の実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、各素子アンテナ1の励振振幅分布を変化させるための振幅制御手段として、可変減衰器21を用いるようにしたので、各素子アンテナ1の振幅分布を自由に設定することが可能となり、ビーム走査角に応じた振幅分布の設定が可能となるので、高精度なビーム形成が実現できるという効果が得られる。
【0045】
実施の形態5.
図6は、この発明の実施の形態5のアンテナ装置の構成を示した機能ブロック図である。図6において、23は各素子アンテナ1への給電線路を遮断あるいは接続する可変スイッチであり、24は可変スイッチ23のON/OFFを制御するスイッチ制御回路である。また、図7は、本実施の形態のアンテナ装置において、可変スイッチ23により給電線路が接続された素子アンテナ1、すなわち信号を放射する素子アンテナ1の配置を示す図である。図7において、25の■は、可変スイッチ23により給電線路が接続された素子アンテナ1、すなわち信号を放射する素子アンテナ1、26の−は、可変スイッチ23により給電線路が遮断された素子アンテナ1、すなわち信号を放射しない素子アンテナ1を表す。
【0046】
本実施の形態と上記の実施の形態1との違いは、本実施の形態においては、図1で示した減衰器2の代わりに可変スイッチ23が設けられ、また、図1で示した励振振幅データメモリ9の代わりにスイッチ制御回路24が設けられている点である。また、サブアレー5が、素子アンテナ1、可変スイッチ23、第1位相制御手段3及び第1電力分配器4から構成されている点も異なる。他の構成については、実施の形態1と同じであるので、同一符号を付して示し、ここでは説明を省略する。
【0047】
本実施の形態のアンテナ装置の各サブアレーの振幅分布の重心座標は、スイッチ制御回路24が設定した信号を放射/非放射する素子アンテナ1の振幅分布および素子座標データメモリ10に保存されている各素子アンテナ1の座標を入力データとし、位相中心演算回路11において式(1)に基づき求められる。本実施の形態のアンテナ装置において、信号を放射する素子アンテナ1の配置は図7記載の通り非周期で各サブアレー5毎に異なるので、式(1)により計算された各サブアレー5の振幅分布の重心座標は、全てのサブアレー5において互いに異なっている。したがって、サブアレー単位でビーム走査、すなわち第2移相器6によりビーム走査したときに発生するグレーティングローブを抑圧できる効果がある。加えて、可変スイッチ23により各素子アンテナ1の振幅分布を自由に設定することが可能になるので、ビーム走査角に応じた振幅分布の設定が可能になり、高精度なビーム形成が実現できる。
【0048】
以上のように、本実施の形態においては、上記の実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、各素子アンテナ1の励振振幅分布を変化させるための振幅制御手段として、可変スイッチ23を用いて、素子アンテナ1のON/OFFを制御するようにしたので、スイッチ制御回路24により各素子アンテナ1の振幅分布を自由に設定することが可能となるので、ビーム走査角に応じた振幅分布の設定が可能となり、高精度なビーム形成が実現できるという効果が得られる。
【0049】
実施の形態6.
図8はこの発明の実施の形態6のアンテナ装置の構成を示した機能ブロック図である。図において、27は各素子アンテナ1に接続されている増幅器、28は増幅器27のバイアス電圧を制御するバイアス制御回路である。
【0050】
本実施の形態と上記の実施の形態1との違いは、本実施の形態においては、図1で示した減衰器2の代わりに増幅器27が設けられ、また、図1で示した励振振幅データメモリ9の代わりにバイアス制御回路28が設けられている点である。また、サブアレー5が、素子アンテナ1、増幅器28、第1位相制御手段3及び第1電力分配器4から構成されている点も異なる。他の構成については、実施の形態1と同じであるので、同一符号を付して示し、ここでは説明を省略する。
【0051】
本実施の形態のアンテナ装置においては、バイアス制御回路28により、各増幅器27へのバイアス電圧を制御することにより、増幅器27の利得を可変とする。これにより各素子アンテナ1の励振振幅値を可変とする。これにより設定された各素子アンテナ1の励振振幅値は、例えば図2記載の振幅分布とする。また、本アンテナ装置の各サブアレー5の振幅分布の重心座標は、バイアス制御回路28が設定した各素子アンテナ1の振幅分布および素子座標データメモリ10に保存されている各素子アンテナ1の座標を入力データとし、位相中心演算回路11において式(1)に基づき求められる。このため、式(1)により計算された各サブアレーの振幅分布の重心座標は、全てのサブアレー5に対して異なっている。したがって、サブアレー単位でビーム走査、すなわち第2移相器6によりビーム走査したときに発生するグレーティングローブを抑圧できる効果がある。加えて、バイアス制御回路28により各素子アンテナ1の振幅分布を自由に設定することが可能になるので、ビーム走査角に応じた振幅分布の設定が可能になり、高精度なビーム形成が実現できる。
【0052】
以上のように、本実施の形態によれば、上記の実施の形態1と同様の効果が得られるちとともに、さらに、各素子アンテナ1に増幅器27を接続し、各素子アンテナ1の励振振幅分布を変化させるための振幅制御手段として、増幅器27のバイアス電圧を可変するバイアス制御回路28を用いるようにしたので、バイアス制御回路28により各素子アンテナ1の振幅分布を自由に設定することが可能となり、ビーム走査角に応じた振幅分布の設定が可能となるので、高精度なビーム形成が実現できるという効果が得られる。
【0053】
実施の形態7.
図9はこの発明の実施の形態7のアンテナ装置の構成を示した機能ブロック図である。図9において、29はサブアレー5の励振位相を変える第2の位相制御手段であり、ここでは実時間遅延器(TTD)とする。30は、第1ビーム方向指令回路14から指示されたビーム方向及び位相中心演算回路11が演算した各サブアレー5の振幅重心座標を元に当該方向にビーム走査するための励振位相を演算し、これを実時間遅延器29に与える実時間遅延器制御回路である。
【0054】
本実施の形態と上記の実施の形態1との違いは、本実施の形態においては、図1で示した減衰器2の代わりに可変減衰器21が設けられ、また、図1で示した励振振幅データメモリ9の代わりに振幅制御回路22が設けられ、さらに、図1で示した第2ビーム方向指令回路14及び第2移相器制御回路15の代わりに実時間遅延器制御回路30が設けられ、また、図1で示した第2移相器6の代わりに実時間遅延器29が設けられている点である。また、サブアレー5が、素子アンテナ1、可変減衰器21、第1位相制御手段3及び第1電力分配器4から構成されている点も異なる。他の構成および動作については、実施の形態1または実施の形態4と同じであるので、同一符号を付して示し、ここでは説明を省略する。
【0055】
なお、上記実時間遅延器制御回路30により実時間遅延器29に与えられる位相変化量は、m番目のサブアレー5に対しては次のようになる。
【0056】
【数4】

【0057】
ここで、int()は引数を整数化する関数を表す。したがって、式(4)で表される実時間遅延器29に与えられる位相変化量は、第1のビーム方向指令回路12から指示された方向にビーム走査するためにサブアレー単位で与えられる励振位相のうち、2π(ラジアン)の整数倍となる位相である。従って、実時間遅延器29は、0度から360度までの位相変化が可能な移相器であると言える。
【0058】
また、本実施の形態のアンテナ装置における各素子アンテナ1の励振振幅分布は、例えば図2のように設定される。このため、式(1)により計算された各サブアレー5の振幅分布の重心座標は、全てのサブアレー5に対して異なっている。したがって、サブアレー単位でビーム走査、すなわち実時間遅延器29によりビーム走査したときに発生するグレーティングローブを抑圧できる効果がある。加えて、サブアレー単位でのビーム走査に実時間遅延器29を用いているので、広い周波数帯域にわたりメインビームと一定の方向に保持することができる。
【0059】
以上のように、本実施の形態によれば、上記の実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、サブアレー5の励振位相を変化させる第2位相制御手段として、サブアレー単位でのビーム走査に実時間遅延器29を用いるようにしたので、広い周波数帯域にわたり、メインビームを一定の方向に保持することができるという効果が得られる。
【0060】
実施の形態8.
以上の実施の形態1〜7では、送信アンテナ装置として説明をしてきたが、受信アンテナ装置の場合も同様の効果がある。
【0061】
実施の形態9.
図10は、この発明の実施の形態9のアンテナ装置の構成を示した機能ブロック図である。この場合、受信アンテナ装置として説明する。図10において、31は各サブアレー5が受信した信号をディジタル信号に変換するADコンバータである。32は、ADコンバータ31によりディジタル信号に変換された各サブアレー5の受信信号を元にディジタル信号処理によりビーム形成を行うディジタルビームフォーマーである。
【0062】
本実施の形態と上記の実施の形態1との違いは、本実施の形態においては、図1で示した減衰器2の代わりに可変減衰器21が設けられ、また、図1で示した励振振幅データメモリ9の代わりに振幅制御回路22が設けられ、また、図1で示した第2ビーム方向指令回路14及び第2移相器制御回路15が削除され、さらに、図1で示した第2移相器6の代わりにADコンバータ31が設けられ、また、図1で示した電力分配器7の代わりにディジタルビームフォーマー32が設けられている点である。また、サブアレー5が、素子アンテナ1、可変減衰器21、第1位相制御手段3及び第1電力分配器4から構成されている点も異なる。他の構成については、実施の形態1または実施の形態4と同じであるので、同一符号を付して示し、ここでは説明を省略する。
【0063】
上記の実施の形態4と同様に、本実施の形態のアンテナ装置における各素子アンテナ1の励振振幅分布は、例えば図2のように設定される。このため、式(1)により計算された各サブアレー5の振幅分布の重心座標は、全てのサブアレー5に対して異なっている。したがって、ディジタルビームフォーマー32により、サブアレー単位でビーム形成したときに発生するグレーティングローブを抑圧できる。
【0064】
以上のように、本実施の形態によれば、上記の実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、サブアレー5の励振位相を変化させる第2位相制御手段として、ディジタルビームフォーマー32を用いるようにしたので、それにより、サブアレー単位でビーム形成したときに発生するグレーティングローブを抑圧できるという効果が得られる。
【0065】
実施の形態10.
図10に記載のアンテナ装置において、ディジタルビームフォーマー32によりマルチビームを形成した場合においても、サブアレー単位で発生するグレーティングローブを抑圧できる効果がある。
【符号の説明】
【0066】
1 素子アンテナ、2 減衰器、3 第1移相器(第1位相制御手段)、4 第1電力分配器、5 サブアレー、6 第2移相器(第2位相制御手段)、7 第2電力分配器、8 送信機、9 励振振幅データメモリ、10 素子座標データメモリ、11 位相中心演算回路、12 第1ビーム方向指令回路、13 第1移相器制御回路、14 第2ビーム走査方向指示回路、15 第2移相器制御回路、16 開口、17,18 アンテナパターン、19 グレーティングローブの方向、20 振幅分布の重心座標、21 可変減衰器、22 振幅制御回路、23 可変スイッチ、24 スイッチ制御回路、25,26 素子アンテナ、27 増幅器、28 バイアス制御回路、29 実時間遅延器(第2位相制御手段)、30 実時間遅延器制御回路、31 ADコンバータ、32 ディジタルビームフォーマー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の素子アンテナと、
上記素子アンテナに接続され、上記素子アンテナの各々に互いに異なる励振振幅値を与える振幅制御手段と、
上記素子アンテナに接続され、上記素子アンテナの励振位相を変化させる第1位相制御手段と、
上記素子アンテナ複数個で構成されるサブアレーに接続され、上記サブアレーの励振位相を変化させる第2位相制御手段と、
上記振幅制御手段により各上記素子アンテナに与える励振振幅値、および、各上記素子アンテナ1の位置座標に基づいて、上記サブアレー毎に振幅分布の重心座標を演算する位相中心演算手段と、
上記サブアレー毎に、上記重心座標に基づいて、指定された方向にビーム走査するための励振位相を算出し、算出された上記励振位相を上記サブアレー単位で与えるように上記第2位相制御手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
上記第1位相制御手段により、主放射方向にビーム走査するための励振位相を与え、
上記第2位相制御手段により、上記主放射方向からビーム走査方向を微調整するための励振位相を与える
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
上記位相中心演算手段により演算される上記重心座標を、アンテナ装置の正面方向と所望のビーム走査方向とを含む面に投影した場合に、この投影された座標が全ての上記サブアレーに対して異なることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
上記振幅制御手段により与えられる各上記素子アンテナの励振振幅値を可変としたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
上記振幅制御手段として、可変減衰器を用いたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
上記振幅制御手段として、スイッチを用い、上記スイッチにより上記素子アンテナのON/OFFを制御することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
各上記素子アンテナに増幅器を接続し、
上記振幅制御手段として、上記増幅器のバイアス電圧を可変するバイアス制御回路を用いたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
上記第2位相制御手段として、0度から360度までの位相変化が可能な移相器を用いたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
上記第2位相制御手段として、信号を実時間で遅延させる実時間遅延器を用いたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
上記第2位相制御手段として、ディジタルビームフォーマーを用いたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−109181(P2011−109181A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259075(P2009−259075)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】