説明

アンテナ装置

【課題】小容積化が可能で高い利得の指向性を有する安価なアンテナ装置を提供する。
【構成】アンテナ装置として、平面基板上に、放射素子と、放射素子と並行に配置され放射素子よりも短い導波素子と、放射素子と並行に配置され前記放射素子よりも長い反射素子と、導波素子又は反射素子の領域内に、導波素子又は反射素子を構成する導体を回路パターンとして用いて実装された無線通信回路とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユビキタス通信や無線通信サービスに向けた平面形状を有する指向性アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、ユビキタス社会の進展により、無線LANやBluetooth(登録商標)などの小形のアンテナを有する電子機器が普及してきている。これらの小型アンテナは、電子機器に内蔵される場合が多い。
【0003】
一方、アンテナ装置(アンテナ付き通信用モジュール)も普及してきており、USB端子などを介してパソコンなどに接続される。これらのアンテナ装置は、アンテナ、通信用IC、パソコンとの接続インタフェースなどから構成されている。
【0004】
多くのアンテナ装置には、モノポールアンテナが多く使用されている。しかし、モノポールアンテナはサイズが小さくなるので多く用いられているが、グランドに電流が流れ、グランドの影響を大きく受けるという問題がある。
【0005】
また、一般的には、アンテナは内蔵化されると利得が低下する。
【0006】
関連するアンテナに関する技術は、例えば 特許文献1や特許文献2に記載されている。特許文献1および特許文献2には、基板パターンを用いた八木式アンテナ(八木・宇田アンテナ(いわゆる八木アンテナ(登録商標)))が記載されている。
【0007】
特許文献1に記載されたアンテナを図10に示す。
図10に図示された220はアンテナ部であり、誘電体基板221に設けられている。アンテナ部220の各素子は、誘電体基板221上に銅箔パターンによって形成されている。(a)に図示の223は放射素子として、222(a),222(b),222(c)は導波器として、224は1次反射器として動作する。また、226はアンテナ保持金具であるとともに、その端部を構成する保持部231は2次反射器として動作する。(b)に図示の八木式アンテナでは、反射器224を省略して、保持部231のみを反射器として用いている。図中の八木式アンテナでは、図中のd1およびd2を約1/4波長に合わせ、保持部231を反射器として動作させる。なお、この八木式アンテナの放射素子223への給電は、同軸線路227によって、アンテナ外部から給電されている。また、アンテナ部220と図示されていない無線通信回路とは、同軸線路227を介して接続される。
【0008】
上記構成で基板パターン上に良好な利得を得られる八木式アンテナは構成できる。一方、無線通信回路とアンテナとの接続が同軸線路(ケーブル)を用いるため、コンパクトかつ安価には実現できていない。また、無線通信回路はアンテナとは別に設けられている。
【0009】
特許文献2に記載された平面アンテナを図11に示す。
図11に図示されたように、基板の両面に、八木式アンテナを構成するアンテナ要素(放射素子、導波素子および反射素子)を配置して平面アンテナを構成している。図中では、実線は表面、斜線は裏面のパターンを示している。当該平面アンテナのダイポール放射素子への給電は、基板の両面を用いてマイクロストリップラインを構成して行われている。また、片面のマイクロストリップラインの形状にテーパを与え、バランとして機能させている。また、マイクロストリップラインの端部に接続される無線通信回路の一部を、平面アンテナを構成した基板上に設けてもよいことも記載されている。ただし、基板上に実装する部品は、マイクロストリップライン上に限定されて設けられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−142925号公報
【特許文献2】特開2009−200719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
アンテナの提供にあたり、良好な指向性特性および利得特性を有するアンテナが望まれている。また、個々の装置に内蔵してもその装置に対して容易にマッチングが行なえることが望まれている。加えて、小型であり安価であることが望まれる。
【0012】
しかしながら、上記複数の要求に対して良好なアンテナが提供されていない。
【0013】
特許文献1に記載された八木式アンテナでは、特性は良いものの小型化ができていない。また、特許文献2に記載された八木式アンテナでは、特性が良く、一部の部品をマイクロストリップライン上に実装するものの、無線通信回路にかかる他の多くの実装部品を別基板に乗せる必要がある。また、アンテナとマイクロストリップラインとのマッチングを行なっているものの、実装部品を考慮したマッチングを行なえない。すなわち、特許文献1および特許文献2に記載された八木式アンテナは、低容積化およびマッチングについて課題を残している。
【0014】
低容積化についてユビキタス通信に用いるアンテナを想定して説明すれば、個々の端末装置(ノード)の小形化により、端末装置に組み込むアンテナ装置に割当てられる容積が低下している。このとき、無線通信回路についての容積が削減できずに固定的であるとすれば、アンテナが使用できる容積が低下することを指す。このことに対して、アンテナが使用する容積を削減しつつ利得等の特性の維持する対策を採ることは、非常に困難である。
端末装置の小型化に加え通信距離を維持する対策として、アンテナとしての性能を維持しつつ、通信モジュールとしての低容積化を図る必要がある。
センサーノードとして用いる端末装置では、個々の端末装置が広い範囲に配置され、サーバとの通信距離が長くなる傾向にある。特に2.4GHz帯を使用周波数帯域として使用した場合には、米国などで使用されている900MHz帯よりも通信距離が短くなるため、サーバ側に高価な高利得アンテナが用いられている。このため、サーバ側および端末装置側に良好な利得を有しつつ小型且つ安価な高利得アンテナの登場が期待されてきている。
【0015】
なお、高利得アンテナとしてパッチアンテナが用いられることがある。しかし、パッチアンテナは厚みが薄いと高い利得が得られない特性を有するため、基板上のパターンをアンテナ素子として用いることは現実的でない。
【0016】
また、アンテナを内蔵する筐体や他の部品などとの配置によって、アンテナ周囲の静電容量などに変化が生じることに対して、事後的にマッチングを取ることも望まれる。
【0017】
本発明の目的は、指向性と高い利得を有し、低容積且つ安価で、マッチングが容易なアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明にかかるアンテナ装置は、平面基板上に、放射素子と、前記放射素子と並行に配置され前記放射素子よりも短い導波素子と、前記放射素子と並行に配置され前記放射素子よりも長い反射素子と、前記導波素子又は前記反射素子の領域内に、前記導波素子又は前記反射素子を構成する導体を回路パターンとして用いて実装された無線通信回路とを有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、指向性と高い利得を有し、低容積且つ安価で、マッチングが容易なアンテナ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施の一形態にかかるアンテナ装置1を示す模式図である。
【図2】第2の実施の一形態にかかるアンテナ装置1を示す模式図である。
【図3】第2の実施の一形態にかかるアンテナ装置1のガンママッチ変形例を示す模式図である。
【図4】第3の実施の一形態にかかるアンテナ装置1を示す模式図である。
【図5】第3の実施の一形態にかかるアンテナ装置1のガンママッチ変形例を示す模式図である。
【図6】実施例にかかるアンテナ装置101を示す構成図である。
【図7】実施例にかかるアンテナ装置101とポリカーボネイト製ケース120の関係を示す説明図である。
【図8】実施例にかかるアンテナ装置101の実測リターンロスを示す図である。
【図9】実施例にかかるアンテナ装置101と実測放射特性を示す図である。
【図10】特許文献1に記載されたアンテナを示す構成図である。
【図11】特許文献2に記載された平面アンテナを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0022】
図1は、第1の実施の一形態であるアンテナ装置1を示す構成図である。
本実施の一形態のアンテナ装置1は、アンテナとして基板パターンを用いて構成した指向性を有するパターンアンテナを用いる。
【0023】
アンテナ装置1は、プリント基板2上に、放射素子3、導波素子4、反射素子5、給電線路6を、基板パターンを用いて形成している。加えて、反射素子5は、無線通信回路7の実装領域としても使用する。給電線路6は平行2線線路であり、これにより、放射素子3を給電している。
【0024】
無線通信回路部7、すなわちRF部は、RFICおよび整合回路より構成され、給電線路に接続する。RFICの出力ポート10より平衡信号が平衡系の平行2線線路である給電線路6に向けて出力され、さらに整合回路を介して、給電線路6に出力されて、放射素子3に給電される。
【0025】
放射素子3と平行2線線路である給電線路6の間には、平衡系アンテナを平衡系線路で給電するTマッチと言う整合回路11を挿入している。Tマッチは調整用キャパシタ12を左右対称に有している。
【0026】
なお、Tマッチではなく、整合用キャパシタを有さないデルタマッチ(Yマッチとも言う)で整合させてもよい。
【0027】
放射素子3、導波素子4、および反射素子5は、図示するようにプリント基板2上に並行に配置され、各エレメント長が導波素子長<放射素子長<反射素子長である。
【0028】
放射素子3と反射素子4の間隔は、おおよそ実効波長の1/4か、それよりもやや小さく構成する。放射素子3と反射素子5の間隔は、おおよそ実効波長の1/4か、それよりもやや小さく構成する。
【0029】
反射素子5のパターン領域内には、無線通信回路7(RF部)と制御回路8(制御部)、入出力インタフェースが実装される。無線通信回路7には、RFICや、LC等で構成された整合回路などが含まれる。
【0030】
整合回路は、事後的にマッチングを取ることに用いる。無線通信回路7の電気回路の一部であるグランド(回路パターン)は、反射素子5を構成する導体を用いる。また、他の信号ラインなどのパターン(図示せず)も適に反射素子5を構成する導体を用いて形成される。当該実装は、アンテナ特性に影響を与えにくいという見識を得ている。
また、実装は、ビア等を用いて両面実装としてもよい。RFICは、整合回路を介して給電線路6に給電する。制御回路8には制御用MCUが実装されており、入出力インタフェース(A/Dポート、シリアル、USB規格など)に接続している。
【0031】
なお、実装領域は、反射素子5との共用でなく、導波素子4との共用でもよい。
【0032】
また、アンテナ装置1は、放射素子3近傍に整合回路を設けても良い。その整合方法は、平衡型アンテナを平衡型の線路で給電できるようにしたデルタマッチ(Yマッチ)もしくはTマッチが好ましい。
【0033】
このように基板上にパターンアンテナを形成するとともに、アンテナ要素となる反射素子または導波素子上に無線通信回路、必要に応じて制御回路などを実装することによって、指向性と良好な利得を得つつ、低容積且つ安価であるアンテナ装置を実現できる。また、アンテナ要素となる放射素子、導波素子、反射素子、および給電線路が1枚の回路実装基板に一体的に作り込めるため、低コストでコンパクトな高利得且つ指向性を有するアンテナを構成できるとともに、無線通信回路などの実装による影響が少ないアンテナ装置を実現できる。
【0034】
また、整合回路を設けることによって、アンテナと給電線路とのマッチングに加えて、無線通信回路の実装と筐体などへの実装による影響をも合わせてマッチングできる。また、図1の構成の放射素子3は、一つの導体であるが、放射素子3を2つの導体を中央で給電するダイポールアンテナで置き換えても同様である。
【0035】
次に、第2の実施の一形態を示す。第2の実施の一形態では、調整しやすくするため、RFICからの平衡信号を一旦、不平衡系に変換してマイクロストリップ線路に接続して整合回路を通し、さらに平衡系に変換して放射素子に給電している。
【0036】
図2のRFICの出力ポート10からは、平衡信号が出力される。この平衡信号はバランを介して、不平衡系のマイクロストリップ線路に出力され、整合回路を介して、放射素子3に給電される。放射素子3への給電は、給電線6(マイクロストリップ線路)と整合回路11(ガンママッチ)を介しておこなわれている。ガンママッチは、不平衡信号を平衡信号に変換するとともに、整合調整も同時に行う。ガンママッチを行なう整合回路11では、整合用チップキャパシタ12とスルーホールビア13を介してマイクロストリップ給電線路のグランド部9と放射素子3とを接続している。マイクロストリップ線路6のグランド部9はテーパ状になっていて、放射素子3に与えるグランドの影響を低減させている。
【0037】
第1の実施の一形態と同様に、アンテナ装置1は、平面基板上にアンテナ要素とRF部(無線通信回路部)、制御部(制御回路)、入出力部(入出力インタフェース)を有しており、制御部には制御用MCUを有している。
【0038】
また、図3に示す第3の実施の一形態のように、ガンママッチを変形してもよい。図3では、整合回路11(ガンママッチ)とアンテナ要素が、図2とは基板の逆面にある。この構成でも、ガンママッチになり、同様のアンテナ装置となる。
【0039】
次に、第4の実施の一形態を示す。第4の実施の一形態では、導波素子領域内に無線通信回路の実装領域を構成する。
【0040】
図4は、第4の実施の一形態であるアンテナ装置1を示す構成図である。図4に示すように、アンテナ装置1では、放射素子と反射素子および導波素子との関係を第2の実施の一形態のアンテナ装置1と逆としている。
【0041】
アンテナ装置1では、反射素子5は無線通信回路7などの実装を伴わない。他方、導波素子4領域上に、無線通信回路7、制御回路8などの実装部品が両面に実装される。また、放射素子3に基板2を介して対向するように整合回路11が設けられている。
【0042】
整合回路11は、ガンママッチを採用し、整合用チップキャパシタ12とスルーホールビア13を介して給電線路9と放射素子3とを接続している。整合用チップキャパシタ12を適に取り替えることで、整合線路の容量を変更させ、特性のマッチングが行える。なお、整合回路11は、整合線路上に容量を変更させる実装部品を載せるパターンを有していることによって、事後的にマッチングを取ることを可能としている。
【0043】
アンテナ装置1は、無線通信回路7(導波素子4側)から給電線路6,9に給電すると、放射素子3に電流定在波が分布する。その後、放射素子3が導波素子4、反射素子5を励振し、それらの相互作用の結果として、導波素子4側に指向性を発生させる。
【0044】
本実施の一形態の構成においても、第2の実施の一形態と同様に、平面基板を用いるアンテナ装置として、導波素子領域に、無線通信回路を実装したとしても、指向性と良好な利得を維持できる。また、低容積、安価、マッチングの容易性を実現できる。
【0045】
同様に、放射素子をおおよそ実効波長/4の長さの導体を2つ並べ、片側に通信回路、制御回路、入出力ポートなどの回路をのせて、モノポールとして動作させ、前後に導波素子、反射素子を置いても、同様に指向性アンテナ装置として機能する。また、図5に示すように、ガンママッチを変形してもよい。
【0046】
次に、実施例を示し、本発明を説明する。
【0047】
以下の実施例の説明は、実際に試作評価した図2と同様の形状のアンテナ装置で行う。
【0048】
図6に示すアンテナ装置101は、2.4GHz帯のアンテナ一体型センサーノード用アンテナ装置である。当該アンテナ装置は、制御部やUSB等の外部インタフェースを載せて、Zigbee(登録商標)モジュールとして動作する。
【0049】
アンテナ装置101は、60×60×0.8mmのFR4(Flame Retardant Type 4)基板102上にパターンアンテナの形成と無線通信回路107の実装を行なっている。
【0050】
チップ等の実装領域は反射素子105を兼ね、60×20mmを確保し、反射素子105を除くアンテナ領域は60×40mmである。
【0051】
反射素子105のパターンは、アンテナ要素として機能させるとともに、ZigbeeモジュールのRF部、制御部、入出力部の実装領域として利用する。
【0052】
放射素子103は、実装されたzigbee通信用の無線通信回路107からマイクロストリップライン106及び109を介して給電される。
【0053】
放射素子103と反射素子105との間隔d1は実効波長をλeとして、0.15〜0.25λe程度にとられる。放射素子103と導波素子104との間隔d2は0.1〜0.25λe程度にとられる。
【0054】
マイクロストリップライン106及び109は、それぞれ基板102の片面に対向するように配置され、反射素子105の実装領域の端部中央から放射素子103に延びている。
【0055】
マイクロストリップラインのグランド109は、放射素子103に近づくにつれて放射素子103への影響を小さくするため、細く窄まったようになっている。
【0056】
また、マイクロストリップライン106の先に整合回路111が設けられている。
【0057】
整合回路111は、ガンママッチを採用し、整合用チップキャパシタ112とスルーホールビア113を有しており、整合用チップキャパシタ112を調整することによってマッチング調整を行えるように形成される。
【0058】
整合方法は、オメガマッチなど別の整合方法を用いても良い。ガンママッチ、オメガマッチは、平衡型アンテナを不平衡型給電線路で給電する際に使用される。
【0059】
無線通信回路107(RF部)は、アンテナ装置101をZigbeeモジュールとして動作させるRFIC、チップコンデンサ、バラン、LC整合回路などから構成される。
【0060】
無線通信回路107は、反射素子105のパターン領域内に実装され、反射素子105として用いられるパターン領域内に設けられた 電源やグランドとする回路パターンを用いて電気回路として動作する。また、無線通信回路107を機能させるための部品間の配線パターンも適に反射素子105領域内に回路パターンとして形成されて用いられる。
【0061】
ここで、筐体等の影響について説明する。説明の為、アンテナ装置101をポリカーボネイト製ケース120に入れた状態を例示する。アンテナ装置101の寸法は、適に筐体やアンテナ周囲の実装部品などの誘電率等を考慮して調整する。
【0062】
ポリカーボネイト製ケース120は、厚み1.5mmのポリカーボネイト製であり、アンテナ装置101の全面を覆っている。ポリカーボネイト製ケース120とアンテナ装置101との関係を図7に示す。なお、無線通信回路107の図示は省略する。
【0063】
アンテナ装置101が、図7のポリカーボネイト製ケース120に実装されている状態で調整した導体パターンのサイズは、以下のとおりである。
【0064】
放射素子103のサイズは5×41mm、導波素子104のサイズは5×36mm、反射素子105のサイズは回路実装領域のサイズである20×60mmである。
【0065】
放射素子103と導波素子4の間隔は13.4mm、反射素子105(実装領域端部)と放射素子103の間隔は14mmである。すなわち、放射素子103の中心から導波素子104の中心までの距離は18.4mmである。
【0066】
放射素子103の長さL1は実効波長の1/2程度にしている。アンテナ要素に対する実効波長は、基板102の誘電率やポリカーボネイト製ケース120の誘電率の影響などで、自由空間波長よりも短くなっている。そのため、放射素子103のエレメント長は、自由空間波長の1/2よりも短くてもよい。
導波素子104の長さL2および反射素子105の長さL3も同様に、ケースなどの影響を考慮して、自由空間での長さよりも短くとる。
各エレメント長の関係は、導波素子104の長さL2<放射素子103の長さL1<反射素子105の長さL3である。
【0067】
ポリカーボネイト製ケース120は、厚みtc=1.5mmであり、基板102とのギャップg1=0.3mmである(図7参照)。また、基板102のアンテナパターン側のギャップg2=2.5mm、裏側のギャップg3=2mmである(図7参照)。
【0068】
図7のポリカーボネイト製ケース120に無線通信回路107を実装したアンテナ装置101で評価した場合の評価測定結果を図8および図9に示す。なお、マッチングを行った結果の整合用チップキャパシタ112の値は、4.7pFであった。
図8は実測リターンロスであり、図9は実測放射特性である。
図8を参照すれば、2.4−2.5GHz帯に対して、リターンロス−15dB以下と、極めて広帯域な整合特性が得られていることが確認できる。
また、図9を参照すれば、放射特性は、導波素子方向に最大利得6.3dBiが得られていることが確認できる。
【0069】
このように、実施例によって、低容積且つ安価であるアンテナ装置101が良好な指向性特性と高い利得を得られていることを確認できた。
【0070】
また、整合回路111(ガンママッチ部)の整合用チップキャパシタやRF部に設けた整合回路の変更によってマッチングを図り、アンテナ装置101の置かれる環境に対して容易にマッチングできることを確認できた。
【0071】
すなわち、平面基板を用いるアンテナ装置として、反射素子領域に、無線通信回路を実装したとしても、指向性と高い利得を維持する智見を確認できた。
【0072】
加えて、低容積、安価、マッチングの容易性を実現できた。
【0073】
また、無線通信回路を構成している実装部品は、平面基板に、埋め込むように実装することとしても良い。このように実装すれば、無線通信回路を構成するチップ高さ分の厚みを更に低減できる。また、このように放射素子または導波素子領域内に埋め込むように無線通信回路を実装したとしても、アンテナ装置としての指向性と高い利得を維持できる。加えて更なる小容積化が図れる。
【0074】
また、上記説明では、導波素子を1つのみ記載しているが、導波素子は適に複数としてもよい。また、導波素子は両面に設けるようにしてもよい。
【0075】
また、上記したように、アンテナ装置に用いる基板や周囲の筐体などの配置によって、アンテナ要素に対しての誘電率(あるいは透磁率)が変化して、波長短縮効果が生じる。このため、各要素の長さは、当該効果を考慮した上で実質的な長さを調節すればよい。
【0076】
また、アンテナ装置に用いる材質としては、プリント基板(PWB:printed wiring board)に換えてFPC(Flexible Printed Circuit)にアンテナ素子をプリンティングして無線通信回路等を実装するようにしてもよい。
【0077】
また、多層基板を用いて、アンテナ要素やマイクロストリップラインなどを内層を用いて形成するようにしてもよい。
【0078】
また、アンテナ装置を、USB端子などによって脱着可能に構成することによって、指向性と高い利得を得つつ、低容積且つ安価であるアンテナ一体型通信モジュールを提供できる。当該アンテナ一体型通信モジュールは、容易にマッチングでき利便性に富む。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、例えばセンサーノード、無線LANなどで使用される小容積の指向性アンテナに利用できる。また、本発明は、Bluetoothなどの外付け無線モジュールの内蔵アンテナなどに利用できる。
【符号の説明】
【0080】
1、101 アンテナ装置
2、102 プリント基板
3、103 放射素子(放射器)
4、104 導波素子(導波器)
5、105 反射素子(反射器)
6、9 給電線路
7、107 無線通信回路
8 制御回路(制御部)
10 出力ポート(RFICの給電ポート)
11、111 整合回路
12、112 整合用チップキャパシタ
13、113 スルーホールビア
106、109 マイクロストリップライン
120 ポリカーボネイト製ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面を有する基板上に、
放射素子と、
前記放射素子と並行に配置され前記放射素子よりも短い導波素子と、
前記放射素子と並行に配置され前記放射素子よりも長い反射素子と、
前記導波素子又は前記反射素子の領域内に、前記導波素子又は前記反射素子を構成する導体を回路パターンとして用いて実装された無線通信回路と
を有することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記導波素子又は前記反射素子の領域内に、前記無線通信回路および、前記導波素子又は前記反射素子を構成する導体を回路パターンとして用いて実装された制御回路を有することを特徴とする請求項1のアンテナ装置。
【請求項3】
前記無線通信回路は、前記導波素子又は前記反射素子を構成する導体を、グランドとして用いるように実装される
ことを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記放射素子に対する給電を、前記無線通信回路から、前記基板に設けられる導電パターンを用いた給電線路を介して行なうことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記給電線路は、マイクロストリップ線路であることを特徴とする請求項4記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記マイクロストリップ線路のグランドのパターン幅が放射素子近傍を窄めるテーパ形状に設けられることを特徴とする請求項5記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記基板の前記放射素子を有する面の逆面に前記放射素子と対向するように形成された導体パターンを 前記放射素子を構成する導体とビア(via)で電気的に接続して設けられた整合線路を、前記マイクロストリップ線路として用いる導体に接続された整合回路を有する
ことを特徴とする請求項5または6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記整合回路は、前記整合線路に当該整合線路の容量を変更させる実装部品を載せるパターンを有することを特徴とする請求項7に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記整合回路は、ガンママッチ、もしくはオメガマッチを用いてマッチングを行える形状であることを特徴とする請求項7または8に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記給電線路は、平行2線を用いた平衡線路であり、
当該給電線路がTマッチ又はデルタマッチにより、前記放射素子に整合していることを特徴とする請求項4記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記無線通信回路を構成している実装部品が、前記基板に埋め込み実装されていることを特徴とする請求項1ないし10の何れかに記載のアンテナ装置。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れかに記載のアンテナ装置を、USB端子によって脱着可能に構成したことを特徴とするアンテナ一体型通信モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−120001(P2012−120001A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268901(P2010−268901)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】