アンドロゲン受容体陽性癌を処置する方法
アンドロゲン受容体陽性癌細胞の成長を阻害する方法を提供する。この方法は、アンドロゲン受容体陽性癌と診断された、またはその疑いがある個体に投与すること、およびその個体に、アンドロゲン受容体陽性癌の成長を阻害できる化合物を含む組成物を投与することを必要とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示内容を参照によって本明細書に援用する、2009年10月23日に出願された米国仮特許出願第61/254,395号明細書に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、米国国立衛生研究所(National institutes of Health)が交付するgrant no.R42 CA 110400−01 2004−2005による政府支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明は全般的に癌治療に関し、より詳細にはアンドロゲン受容体陽性癌細胞を含む癌を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
前立腺癌(PCa:prostate cancer)は、最も多く見られる腫瘍性疾患であり、男性の癌関連死の原因として2番目に多く、米国だけで毎年30,000を超える人の生命を奪っている。PCaの腫瘍は主に前立腺管腔の上皮細胞からなる。前立腺管腔の上皮細胞の分化は、アンドロゲン受容体(AR:Androgen receptor)による前立腺特異的マーカーの発現により、ある程度制御される。ARは、複数のメカニズムにより細胞の生存を制御するが、そのメカニズムは、まだ不明である。ARは、前立腺癌だけでなく、乳癌など他の癌の原因にも関与している。ARは、ステロイド受容体(SR:steroid receptor)ファミリーに属し、転写因子として働く。このファミリーのメンバーは、リガンドの非存在下では、熱ショックタンパク質90(Hsp90)と結合して、細胞質に存在している不安定なタンパク質である。ARのリガンド結合ドメイン(LBD:ligand binding domain)にアンドロゲンなどのステロイドが結合すると、ARは、Hsp90から遊離され、核に移行する。核内のアンドロゲン結合ARは、遺伝子のプロモーターのアンドロゲン応答配列(ARE:androgen responsive element)と共に遺伝子の転写を活性化する(Cato,A.C.,et al.1998.Trends Endocrinol Metab 9:150−154)。ARは、転写活性化因子としての機能だけでなく、一部の遺伝子の転写を抑制することもできる(Claessens,et al.2001.J Steroid Biochem Mol Biol 76:23−30)。
【0005】
アンドロゲンを枯渇させると、正常な前立腺管腔の上皮細胞の死を引き起こすことから、その生存におけるAR経路の決定的役割が明らかにされる。癌性前立腺細胞はARを発現し続け、同時に癌性前立腺細胞の生存がアンドロゲンの存在に依存しているため、アンドロゲン除去が、進行したPCa患者に最適な治療法になっている。阻害剤のフルタミドおよびカソデックスの使用を含む抗アンドロゲン療法は通常、当初は効果的であるものの、完全な治癒に至るのは稀である。こうした療法で処置された患者の大部分でPCaの再発が起こり、アンドロゲン非依存性で化学療法抵抗性の腫瘍が発生し、予後は不良である。このため、抗アンドロゲン療法に対する抵抗性が、PCa処置の成功の大きな障害になっている。
【0006】
腫瘍進行の過程でPCaにより獲得されるアンドロゲン非依存性のメカニズムの解析から、ARシグナル伝達の低下が伴うことは稀であることが明らかにされる(Balk,S.P.2002.Urology 60:132−138;discussion 138−139)。これとは反対に、アンドロゲン非依存性PCaは典型的には、リガンド非依存性(恒常的に活性)であるかまたは非アンドロゲンリガンドに応答性であるARミュータントの発現により、AR活性が増強していることを特徴とする(Chen,Y.,et al.2008.Curr Opin Pharmacol 8:440−448;Tilley,et al.1996.Clin Cancer Res 2:277−285;Koivisto,et al.1998 Am J Pathol 152:1−9;Marques,et al.2005.Int J Cancer 117:221−229;Bohl,Cet al.2005.J Biol Chem 280:37747−37754;Hara,T.,et al.2003.Cancer Res 63:149−153)。
【0007】
自己複製する腫瘍細胞の主要な供給源と考えられる微量の細胞集団である前立腺の「腫瘍起源細胞」または「癌幹細胞」は、正常な前立腺幹細胞と異なり、機能的ARを発現することが最近明らかにされた(Vander Griend,et al.2008.Cancer Res 68:9703−97111)。このことと、去勢抵抗性の段階まで進行したPCa腫瘍でAR活性が維持されることが観察されることとを考え合わせると、ARが、アンドロゲン依存性PCaとアンドロゲン非依存性PCaとの双方のみならず、AR陽性の他の癌型も有望な治療標的となる可能性が示唆される。たとえば、乳房上皮細胞は、多くの点、前立腺細胞に類似している。PC細胞の生存がアンドロゲンの刺激による活性ARに依存するように、乳房上皮細胞も同様、関連するエストロゲン受容体(ER:estrogen receptor)、およびプロゲステロン受容体(PR:progesterone receptor)に依存する。乳癌(BC:breast cancer)におけるERおよびPRの役割と、治療アプローチとしてそれらの機能を調節することとが、長年研究の中心であった。しかしながら、ARの発現は、正常な乳腺細胞では低レベルであり、大部分のBCでは、標的治療がまだ利用できない「トリプルネガティブ」(ER陰性、PR陰性、Her2陰性)BCの50%など、様々なレベルで発現する。乳房上皮細胞に対するアンドロゲンの作用については、いくつかの研究で検討されてきものの、BCにおいてARが果たす役割は、依然として不明である(Birrell,et al.(1995)J Steroid Biochem Mol Biol 52,459−467;Brettes,et al.(2008)Bull Cancer 95,495−502;Di Monaco,et al.(1995)Anticancer Res 15,2581−2584)。このため、AR陽性癌に対する現行の処置方法は大部分が無効であり、以下に限定されるものではないが、PCaおよび乳癌などAR陽性癌細胞治療の新たな方法が現在も求められている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、個体におけるAR陽性癌細胞の成長を阻害する方法を提供する。この方法は、AR陽性癌と診断されたまたはその疑いがある個体に、AR陽性癌細胞の成長を阻害するか、またはAR陽性癌細胞を殺すことができる化合物を含む組成物を投与することを含む。AR陽性細胞は、どのようなAR陽性癌細胞であってもよい。種々の実施形態では、AR陽性癌細胞は、乳癌細胞、前立腺癌細胞、肝細胞癌細胞、甲状腺癌の細胞、グリオブラストーマまたは星状細胞腫である。
【0009】
本発明に使用するのに好適な化合物の構造を図7、図8、図9、図10、図11に示す。図7、図8、図9、図10、図11に示した化合物の特定の例を、それぞれc5、c6、c11、c52およびc85と呼ぶ。化合物は各々、Chembridge Chemical Corporation(San Diego,CA)から購入したDiverSet化学ライブラリーのスクリーニングから同定し、各化合物については、特定の化合物構造の識別に使用できる、一般に入手可能なChembridge識別(ID)番号と関連付けてある。種々の実施形態では、種々の実施形態では、本発明の方法においてc5(Chembridge ID6099112)、c6(Chembridge ID5652306)、c11(Chembridge ID6005978)、c52(Chembridge ID5582367)およびc85(Chembridge ID6028717)を使用することがある。
【0010】
一実施形態では、本発明の方法は、AR陽性癌と診断されたまたはその疑いがある個体に、本明細書でc5、c6、c11、c52およびc85と呼ばれる化合物、ならびにこれらの組み合わせから選択される化合物を含む組成物を投与することを含む。
【0011】
一実施形態では、個体に投与される組成物は、c52を含む。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、個体が、AR陽性癌細胞の成長を阻害するか、またはAR陽性癌細胞を殺すことができる化合物を含む組成物を用いた処置の候補であるかどうかを確認する方法を提供する。この方法は、個体から生物学的サンプルを採取すること、およびサンプルがアンドロゲン受容体陽性癌細胞を含んでいるかどうかを判定することを含み、生物学的サンプルがアンドロゲン受容体陽性癌細胞を含んでいると判定することは、個体が処置の候補であることを示唆し、生物学的サンプルがアンドロゲン受容体陽性癌細胞を含んでいないと判定することは、個体が処置の候補でないことを示唆する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】図1Aは、ARDLBDが無血清の培地(SFM:steroid−free media)中で転写活性があることを示す日付をグラフ化したものを示す。HeLa細胞に、AR依存性レポーターコンストラクトpARE−Lucと、野生型(wt)AR発現コンストラクト、ARDLBD発現コンストラクトまたは陰性対照(空ベクター)発現コンストラクトとをSFM中でトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。
【図1B】図1Bは、ARDLBDが常に核に局在化することを示す写真を示す。図Aと同様にSFM中でトランスフェクトしたHeLa細胞を未処理のままか、または1nMのジヒドロテストステロン(DHT:dihydrotestosterone)で24時間処理し、続いて抗AR抗体で免疫蛍光染色を行った。
【図1C】図1Cは、形質導入を用いてあるいは用いずに調製した細胞ライセートのウエスタンブロッティングにより得られた結果の写真を示す。図1Cでは、内因性のAR転写物の非翻訳領域を標的とするshRNA、およびARDLBD発現コンストラクトを組み合わせたレンチウイルスの形質導入により、CWR22R細胞の内因性のARを異所性ARDLBDで置換した。ブロットを抗AR抗体および抗アクチン抗体でブローブした。
【図1D】図1Dは、様々な濃度のDHTの添加によりSFMで成長させた最初の細胞および形質導入細胞を用いたAR依存性レポーターアッセイ(pARE−Luc)から得られたデータをグラフ化したものを示す。図1Dでは、内因性のAR転写物の非翻訳領域を標的とするshRNA、およびARDLBD発現コンストラクトを組み合わせたレンチウイルスの形質導入により、CWR22R細胞の内因性のARを異所性ARDLBDで置換した。図1Dに示したアッセイは、3回ずつ行った。エラーバーは、標準偏差を示す。
【図1E】図1Eは、血清を含む標準培地中で最初の細胞および形質導入細胞の成長速度(細胞数)を測定して得られたデータをグラフ化したものを示す。図1Eでは、内因性のAR転写物の非翻訳領域を標的とするshRNA、およびARDLBD発現コンストラクトを組み合わせたレンチウイルスの形質導入により、CWR22R細胞の内因性のARを異所性ARDLBDで置換した。図1Eに示したアッセイは、3回ずつ行った。エラーバーは、標準偏差を示す。
【図2A】図2Aは、様々な細胞に対するAR阻害剤の毒性を示すデータを示す。図2Aは、様々な化学物質で7日間処理した表記の細胞のコロニー形成アッセイの解析により得られたデータをグラフ化したものである。図2Aのエラーバーは、3回の実験の標準偏差を示す。
【図2B】図2Bは、様々な細胞に対するAR阻害剤の毒性を示すデータを示す。図2Bは、EC50(CWR22R細胞のAR依存性レポーターの阻害)およびIC50(CWR22R細胞に対する毒性)のグラフによる比較である。図2Bのエラーバーは、EC50およびIC50の信頼区間である。
【図2C】図2Cは、様々な細胞に対するAR阻害剤の毒性を示すデータを示す。図2Cは、由来の異なる一連の細胞株に対するいくつかの化合物の用量依存性の毒性を示すデータをグラフ化したものである。図2Cのエラーバーは、3回の実験の標準偏差を示す。
【図3A】図3Aは、ARタンパク質のレベルの低下が、PCa細胞に対する選択したAR阻害剤ヒットの毒性に関連することを示すデータを示す。図1Aは、10mMの表記のヒットで36時間処理したCWR22R細胞のライセートのウエスタンブロッティングの写真である。AR抗体により、これらの細胞に自然に存在するARの全長およびDLBD型が明らかになる。GAPDH抗体をタンパク質ローディングのコントロールに用いた。
【図3B】図3Bは、ARタンパク質のレベルの低下が、PCa細胞に対する選択したAR阻害剤ヒットの毒性に関連することを示すデータを示す。図3Bは、c52の存在下で選択したクローン(c52R)が、親CWR22R細胞と異なり、c52の作用に抵抗性があることを示すデータをグラフ化したものである。CWR22Rのc52RクローンのARタンパク質発現は、c52処理により低下しなかった。c52処理(10μMで36時間)をしてまたはせずに、親およびc52抵抗性CWR22R細胞のウエスタンブロッティングを行った。
【図3C】図3Cは、ARタンパク質のレベルの低下が、PCa細胞に対する選択したAR阻害剤ヒットの毒性に関連することを示すデータを示す。図3Cは、化合物の添加から4日後のメチレンブルー染色により細胞生存能を解析したデータをグラフ化したものを示す。エラーバーは、3回の実験の標準偏差を示す。
【図3D】図3Dは、ARタンパク質のレベルの低下が、PCa細胞に対する選択したAR阻害剤ヒットの毒性に関連することを示すデータを示す。図3Dは、蛍光活性化細胞分類法を用いて、細胞のDNA内容物(content)のヨウ化プロピジウム染色により測定したCWR22R細胞の細胞周期分布に対する選択した化合物の作用を示すデータをグラフ化したものである。アッセイは、2回行った。エラーバーは、2回の測定値の偏差を示す。
【図4A】図4Aは、AR発現PCa細胞のAR依存性の転写に対する、ARを標的とする2種類のshRNA(shAR5およびshAR6)と、ARミュータントHD1−KRAB−AR122との作用を比較したデータを示す。図4は、pARE−Lucコンストラクトと、x軸に示した様々な量のshRNAコンストラクトまたはARミュータントHD1−KRAB−AR122コンストラクトとをコトランスフェクトしたCWR22R細胞に実施したレポーターアッセイ(assasy)から得られたデータをグラフ化したものを示す。トランスフェクション混合物の総DNA量は、ベクターDNAを加えて同量に維持した。トランスフェクション効率は、pCMV−b−galコンストラクトのコトランスフェクションにより補正した。アッセイは、2回ずつ行った。
【図4B】図4Bは、AR発現PCa細胞のAR依存性の生存に対する、ARを標的とする2種類のshRNA(shAR5およびshAR6)と、ARミュータントHD1−KRAB−AR122との作用を比較したデータを示す。図4Bは、表記のコンストラクトをトランスフェクトし、ピューロマイシン耐性で選択したCWR22R細胞のコロニー形成アッセイ得られたデータをグラフ化したものを示す。アッセイは、2回ずつ行った。エラーバーは、反復実験の結果の偏差である。
【図5A】図5Aは、ステロイド受容体の活性に対するAR阻害剤の作用を示すデータである。図5Aは、CWR22R細胞のARE−Lucレポーター活性が、様々なステロイド(DHT−ジヒドロテストステロン、Dex−デキサメタゾン、Ald−アルドステロン)により誘導され得るものの、AR発現に依存することを示すデータをグラフ化したものを示す。ARまたはGAPDH(対照)を標的とするsiRNAを、SFM中でCWR22R−ARE−Luc細胞にトランスフェクトした。表記の濃度のステロイドをトランスフェクト細胞に加え、24時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。
【図5B】図5Bは、ステロイド受容体の活性に対するAR阻害剤の作用を示すデータである。図4Bは、DHT、DexまたはAldにより誘導された、MDA−MB−453−MMTV−Luc細胞のルシフェラーゼ活性に対するヒット化合物の作用を示すデータをDMSO対照に対する比率として示してグラフ化したものを示す。X軸は、ヒットの濃度をμM単位で示す。エラーバーは、反復実験の標準偏差を示す。
【図6A】図6Aは、アンドロゲン非依存性PCaのマウスモデルにおける、選択したヒットの抗腫瘍活性を示すデータである。図6Aは、記載した化合物またはDMSOビヒクルを、皮下に(s.c.)C4−2腫瘍を持つヌードマウスにi.p.注射して得られたデータをグラフ化したものを示す。腫瘍の大きさが約100mm3になってから6回の連日注射を行った。各群4〜5匹のマウスとし、各マウスには2つの腫瘍があった。ANOVA検定により対照群との間に統計的有意差がある(>99%)、c6群およびc11群の測定の平均値の下にそれぞれアスタリスク(*)および番号記号(#)を付してある。エラーバーは、所定の処置群内の腫瘍の大きさの標準偏差を示す。
【図6B】図6Bは、アンドロゲン非依存性PCaのマウスモデルにおける、選択したヒットの抗腫瘍活性を示すデータである。図6Bでは、腫瘍の大きさが約40mm3になってから、s.c.CWR22R腫瘍を持つヌードマウスの尾静脈に、C52(9mg/kgもしくは18mg/kg)またはDMSOビヒクルを注射した。5回の連日注射を行った。各群10匹のマウスとし、各マウスには1つの腫瘍があった。ANOVA検定により対照群との間に統計的有意差がある(>99%)測定の平均値の下にアスタリスク(*)を付してある。エラーバーは、所定の処置群内の腫瘍の大きさの標準偏差を示す。
【図7】図7は、クラス1化合物の構造を示す。
【図8】図8は、クラス3化合物の構造を示す。
【図9】図9は、クラス6化合物の構造を示す/
【図10】図10は、クラス54化合物の構造を示す。
【図11】図11は、クラスXX化合物の構造を示す。
【図12】図12は、様々な濃度の化合物c52、c70およびc85により別々の乳癌細胞および前立腺癌細胞に引き起こされる細胞死を解析することによって得られたデータをグラフ化したものを示す。9AAは9−アミノアグリジンであり、陽性対照として使用する。さらに、AR(AR)の発現に対する化合物の作用を示すウエスタンブロット(WB:Western blot)も示す。
【図13】図13は、様々な濃度の化合物c52、c70およびc85の存在下で別々の乳癌細胞および前立腺癌細胞の細胞生存を解析することにより得られたデータをグラフ化したものを示す。
【図14】図14は、様々な濃度の化合物c52、c70およびc85の存在下で別々の乳癌細胞および前立腺癌細胞の細胞細胞生存を解析することにより得られたデータをグラフ化したものを示す。さらに、ARタンパク質の発現に対する化合物の作用を示すウエスタンブロット)も示す。
【図15】図15は、様々な濃度の化合物c52、c70およびc85の存在下での乳癌細胞および前立腺癌細胞の細胞細胞生存を解析することにより得られたデータをグラフ化したものを示す。
【図16】図16は、様々な濃度の化合物c52、c70およびc85により引き起こされる乳癌細胞および前立腺癌細胞の細胞死を解析することにより得られたデータをグラフ化したものを示す。
【図17】図17は、様々な濃度の化合物c52、c70およびc85の存在下でのAR陰性乳癌および子宮頸癌の細胞細胞生存を解析することにより得られたデータをグラフ化したものを示す。
【図18】図18は、CWR22R、LNCaP、C4−2(AR陽性前立腺癌AR)、PC3、DU145、PPC1(AR陰性前立腺癌)、MDA−MB−231(AR陰性乳癌)、ACHN、SK−RC45(AR陰性腎細胞癌)、MRC5(正常2倍体線維芽細胞)およびNKE−hTERT(正常腎上皮線維芽細胞)など複数の細胞株の生存に対する種々の濃度のc5、c85、c6およびc52の作用を解析することにより得られたデータをグラフ化したものを示す
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、個体におけるAR陽性癌細胞の成長を阻害する方法を提供する。この方法は、AR陽性癌と診断されたまたはその疑いがある個体に、AR陽性癌細胞の成長を阻害するか、またはAR陽性癌細胞を殺すことができる化合物を含む組成物を投与することを含む。本発明に使用するのに好適な化合物の一般構造を図7、図8、図9、図10、図11に示す。本明細書では、図7に示した構造をクラス1ということもある。本明細書では、図8に示した構造をクラス3ということもある。本明細書では、図9に示した構造をクラス6ということもある。図10に示した構造をクラス54ということもある。本明細書では、図11に示した構造をクラスXXということもある。
【0015】
図7、図8、図9、図10、図11に示した化合物の特定の例は、それぞれc5、c6、c11、c52およびc85という。c5、c6、c11、c52およびc85は、Chembridge Chemical Corporation(San Diego、CA)から購入したDiverSet化学ライブラリーに存在する34,000の化合物から本発明の方法に使用するのに好適であると確認された。各化合物は、一般に入手可能なChembridge識別(ID)番号と関連付けてあるため、各構造は、それに従って評価することができる。
【0016】
当業者であれば、図7〜11に示した各構造は、Rの位置に存在し得る別の基によって相互に異なる複数の化合物を含むことを認識するであろう。たとえば、図7に示す化合物のクラスの場合、R5、R6およびR7は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、アリール部分が5または6個の炭素を含み、アルキル部分が1〜4個の炭素を含むアリールアルキル基(メチルベンゼン基など)、アルキル部分が1〜4個の炭素を含むアルキルケトン基(アセテート基など)、ハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージド)、またはヒドロキシル基である。R3は、水素またはヒドロキシル基である。R8、R9およびR10は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、ハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)、またはニトロ基である。X1は、酸素原子または硫黄原子である。
【0017】
図8に示した化合物のクラスでは、R12、R13およびR14は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、アルキル部分が1〜6個の炭素を含むアルキルエーテル基(メチルエーテル基またはエチルエーテル基など)、ハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)、アミノ基、ヒドロキシル基、またはニトロ基である。X2は、酸素原子または硫黄原子である。
【0018】
図9に示した化合物のクラスでは、R17およびR18は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはアルキル部分が1〜4個の炭素を含むアルキルエーテル基(メチルエーテルまたはエチルエーテルなど)である。R19およびR20は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)である。
【0019】
図10に示した化合物のクラスでは、R21(R25)は、水素、または任意に1つもしくは複数のヒドロキシル基またはシアノで置換されていてもよい1〜6個の炭素を含むアルキル基である。R22、R23およびR24(R26、R27およびR29)は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、アルキル部分が1〜4個の炭素を含み、かつ任意に1つもしくは複数のハライドで置換されていてもよいアルキルケトン基(アセテート基またはトリフルロアセテート基)、アルキル部分が1〜4個の炭素を含み、かつ任意に1つもしくは複数のハライドで置換されていてもよいアルコキシ基、ハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)、アルキル基が1〜4個の炭素を含むアルキルスルホンアミド(メチルスルホンアミドなど)、またはヒドロキシル基である。R30、R31およびR41は独立に、水素、または任意に1つもしくは複数のハライドで置換されていてもよい1〜6個の炭素を含むアルキル基である。R32は、任意に1つもしくは複数のハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)で置換されていてもよい1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはアミノ基である。R33およびR34は独立に、任意に1つもしくは複数のハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)で置換されていてもよい1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはアルキル部分が1〜4個の炭素を含むアルキルシクロヘキシル基(メチルシクロヘキシル基など)である。
【0020】
図11に示した化合物のクラスでは、R35は、水素、任意に1つもしくは複数のハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)で置換されていてもよい1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)である。R36およびR37は独立に、水素、または任意に1つもしくは複数のハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)で置換されていてもよい1〜6個の炭素を含むアルキル基である。R38およびR39は独立に、水素、任意に1つもしくは複数のハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)で置換されていてもよい1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはヒドロキシル基である。R40は、水素またはヒドロキシル基である。本明細書に示した一部の構造には、位置によっては水素を示していない。当業者であれば、こうした構造は、そうした水素置換基を含むことが理解されよう。
【0021】
本開示内に包含される化合物の特定の例は、指定されたc5、c6、c8、c11、c16、c17、c18、c47、c52、c55、c61、c66およびc73(Chembrige ID番号6443213)である。個々の構造をChembridge ID番号と共に下記に示す。
【0022】
一実施形態では、本発明の方法は、AR陽性癌と診断されたまたはその疑いがある個体に、本明細書でc5、c6、c11、c52およびc85と呼ばれる化合物、ならびにこれらの組み合わせから選択される化合物を含む組成物を投与することを含む。
【0023】
一実施形態では、個体に投与される組成物は、c52を含む。
【0024】
本明細書に言及されるAR陽性癌細胞は、検出可能な量のARタンパク質を発現する癌細胞である。「アンドロゲン受容体」(およびその略語「AR」)は、当業者によく知られている用語であり、ヒトARタンパク質のすべてのアイソフォームおよび対立遺伝子変異体を含む、ヒト癌細胞に発現するARタンパク質という意味で使用される。
【0025】
一実施形態では、本発明の方法の実施により個体におけるその成長を阻害できるAR陽性癌細胞は、任意の種類の抗ヒトAR抗体により特異的に認識されるARを発現する細胞である。抗ヒトAR抗体は、市販されている。一実施形態では、本発明の方法の実施により個体におけるその成長を阻害できるAR陽性癌細胞は、BD PharMingen,San Diego,CAから、カタログ番号#554225で入手可能な抗ヒトAR抗体により特異的に認識され得るARを発現する細胞である。一実施形態では、ARタンパク質の検出可能な量は、ウエスタンブロットにより検出できるARタンパク質の量である。
【0026】
一実施形態では、AR陽性癌細胞は、参照によって本明細書に援用する、2009年9月1日エントリーのGenBankアクセッション番号P10275のアミノ酸配列を持つARを発現する細胞である。代替の実施形態では、AR陽性癌細胞は、2009年9月1日にGenBankアクセッション番号P10275で登録されたアミノ酸配列に対して70%以上99%以下(その間の整数をすべてを含む)相同であるアミノ酸配列を持つARを発現する細胞である。AR陽性細胞は、そうした配列のいずれを持つARを発現する癌細胞であってもよく、ARは、ウエスタンブロットにより検出可能である。
【0027】
AR陽性癌細胞は、どのような種類の癌細胞であってもよい。一実施形態では、癌細胞は、前立腺癌細胞である。前立腺癌細胞は、アンドロゲン依存性でも、またはアンドロゲン非依存性でもよい。
【0028】
別の実施形態では、AR陽性細胞は、乳癌細胞である。乳癌細胞は、どのような種類の乳癌細胞であってもよい。ただし、乳癌細胞は、AR陽性である。乳癌細胞は、ER−乳癌細胞でも、PR−乳癌細胞でも、Her2−乳癌細胞でも、またはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。
【0029】
別の実施形態では、AR陽性細胞は、肝細胞癌細胞、甲状腺の癌細胞、グリオブラストーマまたは星状細胞腫である。
【0030】
AR陽性癌細胞の成長の阻害は、部分的な阻害でも、または完全な阻害でもよい。個体由来のAR陽性癌細胞の一部または全部の根絶は、AR陽性癌細胞の成長の阻害の一種と見なされる。
【0031】
一実施形態では、本発明は、図7、図8、図9、図10、図11に示した構造を持つ化合物を含む有効量の組成物を細胞と接触させることにより、癌細胞の成長を阻害することを含む。
【0032】
本発明の一実施形態では、個体は、図7、図8、図9、図10、図11に示した化合物の群から選択される有効量の化合物を含む組成物を用いた処置の候補として確認することができる。個体は、個体由来の癌性組織の生物学的サンプルを採取し、癌性組織がARを発現しているか否かを判定することにより、こうした候補として確認することができる。癌性組織がARを発現していると判定することは、個体が処置の候補であることを示唆する。同様に、組織が検出可能な量のARを発現していないと判定することは、個体が処置の候補でないことを示唆する。癌性組織がARを発現しているかどうかの判定は、免疫学的な技術など任意の好適な手法を用いて行うことができる。一実施形態では、本発明は、個体から採取した生物学的サンプル中のARをAR−抗体複合体に変換すること、および免疫診断の装置を用いてAR−抗体複合体を検出することを含む。
【0033】
種々の実施形態では、本発明は、癌性組織がARを発現しているか否かの判定を有形媒体に固定すること、および/または個体の推奨処置を有形媒体に固定することをさらに含む。有形媒体は、以下に限定されるものではないが、コンピューター、DVD、CD−ROMまたは電子メールメッセージに保存できるデジタルファイルのような任意の種類のデジタル媒体など、どのような種類の有形媒体であってもよい。有形媒体は、処置プロトコルを開発し、それにより本発明の方法の実施を含む、個体の処置法を開発するため、医療提供者に提供してもよい。
【0034】
本発明の方法を実施するための化合物を含む組成物は、任意の好適な薬学的に許容されるキャリア、賦形剤および/または安定剤と混合することにより調製することができる。化合物との混合に好適な組成物の一部の例は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2005)21st Edition,Philadelphia,PA.Lippincott Williams & Wilkinsで確認することができる。
【0035】
本明細書に記載の化合物を含む組成物は、経口注射、非経口注射、皮下注射、腹腔内注射、肺内注射、鼻腔内注射および頭蓋内注射など任意の利用可能な方法および経路を用いて個体に投与してもよい。非経口注入としては、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与および皮下投与がある。
【0036】
本発明の方法は、以下に限定されるものではないが、化学療法、外科的介入および放射線療法など従来の抗癌療法の前に実施しても、同時に実施しても、または後に実施してもよい。
【0037】
当業者であれば、本発明の方法に利用される特定の投与レジメンの形態および特徴は、投与経路、および他のよく知られた可変要素、個体の性別および大きさ、ならびに処置対象の特定の癌の種類および段階によって決まることを認識するであろう。こうした判断基準に基づき、当業者は、個体に投与する組成物の有効量を判定することができる。
【0038】
我々は、本発明に到達した際に、AR−リガンド相互作用とは異なるARの機能面を標的とするAR阻害剤を同定した。我々は、これを、リガンド非依存性PCa細胞株におけるAR依存性の転写の特定の阻害剤を最初に同定することにより達成した。我々は、AR発現PCa細胞株に対して特異的な毒性を示す化合物を選択した。特に、AR依存性の転写の阻害剤がすべてアンドロゲン非依存性PCa細胞株に毒性があるとは限らなかったことから、ARの転写機能が、PCaの細胞生存を単独では制御しないことが示唆される。我々は、マウスのPCaの異種移植モデルを用いてインビボでの抗腫瘍活性に最も優れたAR阻害剤を試験し、最も効果的な化合物によりAR阻害の分子機構を解析した。これが、細胞からのARタンパク質の除去が、細胞生存に対して、ARのトランス活性化機能の抑制と異なる影響を与えるという発見につながった。このことは、ARが、本明細書に示したデータにより明らかなように、転写非依存性メカニズムを介して前立腺細胞生存、さらにおそらく乳癌細胞など他の種類のAR陽性癌細胞も制御することを示唆する。これは、重要、かつまだ認識されていない抗癌アプローチと考えられる。
【0039】
以下の実施例は、本発明の説明を意図するものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0040】
実施例1
本実施例は、本明細書に示した結果を得るために使用した材料および方法については説明する。
【0041】
細胞株:LNCaP細胞、DU145細胞、MDA−MB−453−MMTV−Luc細胞、HeLa細胞、ACHN細胞、MRC5細胞およびHT1080細胞をATCCから取得した。RCC45および正常腎上皮細胞(NKE:normal kidney epithelial cell)については、Gurova,et al.2004.Cancer Res 64:1951−1958)に記載された。pBabe−puroベクターを用いたヒトテロメラーゼサブユニットの形質導入により、不死化NKE−hTERT細胞を得た。CWR22R細胞およびC4−2細胞は、Dr.Warren Heston(Department of Cancer Biology,Cleveland Clinic)から提供された。pARE−LucレポーターコンストラクトおよびCWR22R−ARE−Lucレポーター細胞については、既に記載された(Tararova,N.et al.2007.Prostate 67:1801−1815)。ARが結合するコンセンサスDNAエレメントは他のいくつかのステロイド受容体によっても認識されるが、pARE−Lucレポーターは、最もAR特異的プロモーター領域の1つとして知られるプロバシンプロモーターの領域を利用するものである(Tararova,N.et al.2007.Prostate 67:1801−18154)。
【0042】
前立腺細胞株およびMDA−MB−453−MMTV−Lucはすべて、10%FBS、1mMのピルビン酸ナトリウム、10mMのHEPES緩衝液、55nMのβ−メルカプトエタノールおよび抗生物質を補充したRPMI 1640培地で培養した。HeLaおよびHT1080細胞は、10%FBSおよび抗生物質を含むDMEM培地で維持した。ステロイドを含まない培地(SFM)の作製には、フェノールレッドを含まない培地およびチャコール処理血清(CSS:charcoal−stripped serum)を使用した。CSSは、Biosource(Rockville,MD)から購入した。
【0043】
プラスミド:pTZV−wtARおよびpTZV−ARΔLBDレンチウイルス発現コンストラクトを、野生型全長(1〜919aa)AR、またはヒトARの最初の639aaに対応するARフラグメントをpTZV−CMVベクターにサブクローニングすることにより得た(Tararova,N.et al.2007.Prostate 67:1801−1815)。ヒトARに対するshRNAの発現を誘導するpLPCPw−shARレンチウイルスベクターについては、記載されているように作製した(Tararova,N.et al.2007.Prostate 67:1801−18154)。ヒトARの非翻訳領域に対応するshRNA配列(equence)は、TGATCCTCATATGGCCCAGであった。pHD1−KRAB−AR122は、Dr.G.Jenster(Department of Urology,Josephine Nefkens Institute,Erasmus MC,Rotterdam,Netherlands))から入手したものであり、既に記載された(23)。pLV−CMV−Lucベクターは、Dr.Peter Chumakov(Department of Molecular Genetics,Cleveland Clinic)から好意により提供された。
【0044】
レンチウイルスの形質導入およびsiRNAのトランスフェクションを、以前記載されたとおり、従来の技術を用いて行った(Gurova,et al. 2004.Cancer Res 64:1951−1958)。
【0045】
化学物質:34,000のDiverSet化学ライブラリー(分子量約500Daの多環低分子からなる)は、Chembridge Chemical Corporation(San Diego,CA)から購入した。DHTは、Cleveland Clinic Pharmacy Department(Cleveland,OH)から入手した。アルドステロン、デキサメタゾン、BSA、RNase Aおよびヨウ化プロピジウムは、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。カソデックス(ビカルタミド)は、TRC(Toronto、Canada)から購入した。
【0046】
化学物質の一次スクリーニング:DiverSetライブラリーの化学物質を、最終濃度20μMで96ウェルプレート中のCW22R−ARE−Luc細胞の単層に塗布した。翌日、ルシフェラーゼ活性を、BrightGlo Luciferase Assay System(Promega,Madison,WI)を用いて読み取り、化学物質処理した細胞内のレポーター活性のパーセンタイルを計算した(DMSOで処理した細胞を100%と見なして比較)。このパラメーターが50%以下であった化合物を一次ヒットとした。ヒットのリストを、p53、NF−κbまたはE−boxの結合エレメントを含むプロモーターにより誘導されるレポーターの阻害剤と、HeLa細胞、メラノーマ細胞および神経芽細胞腫細胞に対して毒性がある化合物とを含む、同じライブラリーの他のスクリーニングから得られたものと比較した。これらの他のリストのいずれかにも存在したAR阻害ヒットは、その後の検討から除外した。転写/翻訳またはルシフェラーゼ活性の非特異的阻害については、HT1080細胞を用いてCMV−lucレポーターにより試験し、この系で活性なヒット化合物をその後の検討から除外した。
【0047】
レポーター活性の用量依存性の阻害:CWR22R細胞を、96ウェルプレート中、1ウェル当たり5×104個蒔いた。化合物を、1〜20000nMの用量範囲で2倍ずつ増やしながら加えた。各用量について、2回ずつ試験した。対照は、0.1%DMSOおよび15μg/mlのアクチノマイシンDであった。ルシフェラーゼ活性を、Bright Gloアッセイ(Promega,Madison,WI)を用いて、化合物の添加から24時間後に測定した。アッセイは、2回実施し、DMSOと比較してレポーター活性を50%阻害する化合物の有効濃度(EC50)を、CalcuSynソフトウェア(Biosoft,Chembridge,UK)を用いてシグモイド近似法により計算した。シグモイドごとに信頼区間を計算した。
【0048】
細胞コロニーアッセイ:細胞を、コンフルエント前の指数関数的増殖まで6〜7日を要する密度で24ウェルプレートに蒔いた。培地および化合物を48時間ごとに交換し、起こり得る化合物の不安定性作用を最小限に抑えた。化合物の存在下でのインキュベーションから7日後、細胞を固定し、メチレンブルーで染色し、続いて1%SDSで染色物を抽出し、650nmで分光光度法を実施した。各アッセイは、3回ずつ実施し、対照ウェルと化合物処理ウェルとの差をスチューデントのt検定を用いて判定した。
【0049】
細胞成長の用量依存性の阻害:細胞を、96ウェルプレート中、1ウェル当たり1×103個蒔いた。化合物を、1〜20000nMの用量範囲で2倍ずつ増やしながら加えた。各用量について、3回ずつ試験した。対照は、0.1%DMSO(細胞生存能に対する影響なし)、および50μMの9−アミノアクリジン(完全な細胞死)であった。細胞を6日間インキュベートし、次いで固定し、メチレンブルーで染色し、続いて1%SDSで染色物を抽出し、650nmで分光光度法を実施した。アッセイは、2回実施し、結果に基づき、DMSOと比較して細胞成長を50%抑制する化合物の阻害濃度(IC50)を、CalcuSynソフトウェア(Biosoft,Chembridge,UK)を用いてシグモイド近似法により計算した。シグモイドごとに信頼区間を計算した。
【0050】
CWR22R細胞の化合物抵抗性変異体の選択を、107個の細胞を10×IC50の化合物の存在下で3日間インキュベートして行った。次いで細胞を、プレコンフルエントレベルになるまで薬剤を含まない培地で維持した。この手順を、化合物の存在下で死細胞が観察されなくなるまで数回繰り返した。
【0051】
コンディション培地におけるPSAタンパク質のレベルを、細胞を10μMの被検化合物と、あるいはそれなしで72時間インキュベートしてから、Antigenix America(Huntington,NY)製の「Human PSA ELISA Kit」を用いて判定した。
【0052】
ウエスタンブロット解析。細胞を、Cell Culture Lysis Reagent(Promega,Madison,WI)に溶解した。総タンパク質濃度を、Dc Protein Assay(BioRad,Hercules,CA)を用いて測定した。ウエスタンブロッティングについては、4〜12%SDSプレキャストNovexゲル(Invitrogen)およびPVDF膜(Pharmacia BioTech)を用いて行った。以下の抗体を使用した:ARに対する抗体(BD PharMingen,San Diego,CA;#554225、1μg/ml);ローディングコントロールとしてのGAPDHに対する抗体(Santa Cruz Biotechnology Inc,Santa Cruz,CA)。
【0053】
細胞周期分布の解析を、ヨウ化プロピジウムによるDNA内容物(content)の染色に基づき行った。トリプシンを用いて105個の細胞を培養皿から剥がし、PBSで洗浄し、3%BSAのPBS溶液300μlに再懸濁し、続いて70%エタノール5μlを加えた。細胞を−20℃で数時間維持し、次いで30μg/mlのRNase Aの存在下で10μg/mlのヨウ化プロピジウムで2時間37℃にて染色した。DNA内容物(content)については、FACS Calibur機器およびCellQuestソフトウェア(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)を用いて評価した。
【0054】
マウスを用いた化合物安全性の試験を、IACUC承認のプロトコルに従い行った。実験は、Harlan(Indianapolis,IN)製の8週齢の非近交系NIH Swiss雄マウスを用いて、各群4匹のマウスで実施した。マウス体重に基づくインビボ用量の計算には、IC50濃度を使用した(1gのマウス組織は約1mlの量を含むという仮定に基づき、mg/kgに相当するIC50のインビボ用量=mg/mlのIC50×1000)。化合物は、25%DMSO−75%PBSを用いて、化合物のインビトロでの細胞致死量に相当する20×IC50から腹腔内に(i.p.)注射した。その後マウスを3日間観察してから、50×IC50(用量2)および100×IC50(用量3)の2回の各注射を行った。マウスの対照群には、25%DMSO−75%PBSを3日間の間隔をおいて3回注射した。BioReliance(Rockville,MD)を用いて血液生化学的解析を行った。
【0055】
マウスを用いた化合物の抗腫瘍作用の試験を、Harlan(Indianapolis,IN)製の8週齢の雄無胸腺ヌードマウスを用いて、IACUC承認のプロトコルに従い行った。C4−2異種移植モデルでは、106個のC4−2細胞を、50%マトリゲル(BD Biosciences,Bradford,MA)のPBS溶液を用いて各マウスの2部位に皮下(s.c.)注射した。目視可能な腫瘍が発生したら、デジタルカリパスを用いて測定した。腫瘍容積を、式:容積=長さ×幅2/2に従い計算した。各マウスで少なくとも1つの腫瘍の大きさが100mm3になったら、マウスに化合物を6日間毎日i.p.注射した。各群5匹のマウスを使用した。CWR22R異種移植モデルでは、CWR22R細胞を、50%マトリゲルを用いてマウス1匹当たり1部位に接種した(1接種当たり105個の細胞)。腫瘍が少なくとも25mm3の大きさになったとき、処置を開始した。化合物をキャプティソル(captisol)(CyDex,Lenexa,KS)で希釈し、1日1回5日間静脈内に(肝「初回通過」効果の抑制のため)送達した。各群10匹のマウスを使用した。マウスを毎日モニターし、腫瘍を1日おきに測定した。腫瘍の大きさが1000mm3に達したとき、委員会の規制に従いマウスを安楽死させた。ANOVA試験を用いて対照マウスと処置マウスとの腫瘍成長の比較を行った。
【0056】
実施例2
本実施例は、本発明の方法に使用するのに好適である化合物の同定について説明する。
【0057】
我々は、ARの阻害剤を同定するため低分子のライブラリーをスクリーニングした。我々は、以下のいくつかの理由から細胞ベースの読み出し(cell−based readout)アプローチを選択した。(i)我々は、標的の可能性を単にARタンパク質自体から、インビトロでの生化学的分析では不可能であるARシグナル伝達経路全体へと広げることを目指していた。(ii)ARのどの機能/ドメイン/結合部位が細胞生存の制御に関与しているか不明である。(iii)全長ARの結晶構造がまだ解明されていない。後者2つの現状から、合理的設計アプローチは、不可能である。
【0058】
AR−リガンド相互作用と異なるメカニズムを介した新しい種類のAR阻害剤を同定する可能性を高めるため、我々は、いくつかの入手可能な培養細胞株から最もアンドロゲン非依存性の細胞CWR22Rを選択して、ライブラリーのスクリーニングに使用した。この細胞の増殖は、アンドロゲンの非存在により影響を受けず、アンドロゲン除去に伴うAR転写活性の低下が最小限になる(他のPCa細胞株と比較して)。この細胞株のもう1つの重要な特徴は、LBDを欠損したARの切断型ミュータントを発現することである(ARΔLBD Cancer Res 62:6606−6614)。CWR22R細胞内に存在する50%を超えるARタンパク質がARΔLBD型であるのに対し、残りは、LBD突然変異を含む全長のARタンパク質である。AR活性の大部分が、LBDを欠損したミュータントに起因する細胞を使用すると、AR−リガンド相互作用の阻害以外のメカニズムを介して作用する低分子阻害剤を単離する可能性が高まる。ARΔLBDがリガンド非依存性のAR機能を持ち、阻害剤の同定に好適な標的であることを証明するため、我々は、ARΔLBDのみが存在するCWR22R細胞を実験的に作製した。CWR22R細胞に、内因性のAR転写物の非翻訳領域を標的とするshRNA、およびARΔLBDの異所性発現を誘導する発現コンストラクトを同時形質導入した(図1)。こうした細胞では、ARΔLBDミュータントが転写因子として恒常的に活性であり、任意のリガンドの非存在下(すなわち、チャコール処理血清を用いて作製した、ステロイドを含まない培地(SFM)中、図1Aおよび図1B)でも核に局在する。我々はさらに、全ARタンパク質の除去が、CWR22R細胞に対して毒性があるのに対し、異所性に発現したARΔLBDは、全長ARの非存在下でCWR22R細胞の増殖を支持し得ることも明らかにした(図1C〜図E)。これらの結果は、ARΔLBDミュータント型のARが、全長タンパク質と同じ転写および細胞生存に導く活性を持ってはいるものの、リガンドを必要としないことを示唆する。
【0059】
我々は、ARの活性に対するライブラリーの化学物質の作用をモニターするため、AR依存性ルシフェラーゼレポーターコンストラクト(pARE−Luc)をCWR22R細胞に導入し、レポーターを組み込んだ安定な細胞株を作製した。得られたCWR22R−ARE−Luc細胞に、34,000の低分子のライブラリーを20μMの濃度で塗布し、インキュベーションから24時間後、レポーター細胞のルシフェラーゼ活性を少なくとも2倍阻害した化合物を一次ヒットとして選択した。我々は、一次ヒットのリストから、(i)転写または翻訳の一般的または非特異的阻害剤、およびルシフェラーゼ酵素活性の阻害剤を回避するため、同じライブラリーを用いて試験した他のレポーター系(たとえば、CMV−GFP、E−box−ルシフェラーゼ)を阻害する化合物と、(ii)非特異的(ARシグナル伝達に明らかに無関係である)毒性がある化合物を回避するため、非PCa細胞(たとえば、HeLa細胞、メラノーマ細胞、RCC細胞)に対して毒性がある化合物とを除外した。選別したヒットについては、CWR22R−ARE−Luc細胞を用いたレポーター用量応答アッセイで確認し、EC50(レポーター活性を50%低下させる有効濃度)が<10μMであるものを、その後の解析のために選択した。
【0060】
我々は、内因性のAR標的遺伝子に対するヒットのAR阻害活性を確認するため、前立腺特異抗原(PSA:Prostate Specific Antigen)の発現に対する化合物の作用を評価した。このアッセイは、1つの特定の細胞型に対する特異的なヒットを除外するため、ライブラリーのスクリーニングに使用したのと異なるPCa細胞株(C4−2)で行った。C4−2細胞株は、去勢マウスにおける増殖能に基づき選択されたアンドロゲン感受性LNCaP細胞株から誘導したものであり、したがって、去勢抵抗性PCaのもう1つのモデルとなる。C4−2細胞は、LNCaP細胞と同じAR LBD突然変異を持っているが、ARコレギュレーターの発現が異なるため、DHTに対するARの感受性が数倍高くなっている。10μMの濃度で塗布したときに、C4−2細胞によるPSAの分泌を>60%阻害した化合物を選択し、その後10μMの化合物の存在下で24時間インキュベートしたCWR22R−ARE−Luc細胞のルシフェラーゼ活性を用いた解析を行い、0.1%DMSOとインキュベートした細胞のルシフェラーゼ活性に対する比率として解析した。shAR6の作用については、72時間で測定した。10μMの化合物の存在下で72時間インキュベートしたC4−2細胞の培地中のPSAレベルを、0.1%DMSOとインキュベートした細胞内のPSAレベルに対する比率として解析した。shAR6の作用を72時間で測定した。10μMの化合物の存在下で成長したコロニー数を、0.1%DMSOの存在下でのコロニー形成に対する比率として解析した。
【0061】
選択した化合物は、FBS中に自然に存在するステロイドの存在下で、あるいは、SFM中、最大10nMのジヒドロテストステロン(DHT)の存在下でどちらの細胞株(CWR22RおよびC4−2)のAR転写活性も阻害した。したがって、選択した化合物は、アンドロゲン非依存性PCaの少なくとも2つのモデルのAR転写活性の阻害剤である。
【0062】
実施例3
本実施例は、PCa細胞の成長に対する選択した化合物の作用について説明する。我々は、様々な由来の細胞に対する同定したAR阻害剤の毒性を試験するため、いくつかのPCa(LNCaP、C4−2、CWR22RおよびDU145)および2種の非PCa(HT1080およびHeLa)細胞株への各化合物(10μM)の単回投与を用いて、コロニー形成アッセイを行った(図2A)。1つの化合物(c66)を除き、選択した低分子は、非PCa細胞またはAR陰性PCa細胞(DU145)の成長に影響を与えなかった。試験した分子のほとんどすべてのほか、陽性対照ビカルタミド(診療所で現在使用されているAR阻害剤)が、ARを発現するアンドロゲン感受性LNCaP細胞の成長を、程度は異なるが抑制した(図2A)。一方、ビカルタミドは、C4−2細胞あるいはCWR22R細胞(AR発現、アンドロゲン非依存性細胞株)の成長を抑制しなかったのに対し、選択した分子には、抑制したものがあった。このため、我々は、3種のAR発現PCa細胞株に対して様々な程度の毒性を持つものの、非PCa細胞またはAR陰性細胞に対しては毒性がない、いくつかの化合物(c5、c6、c11、c17、c18、c52、c85)を同定した。しかしながら、化合物の中には(c8、c16、c47、c55、c61、c73)、LNCaP細胞の成長を抑制するが、CWR22R細胞またはC4−2細胞の成長を抑制しないという点でビカルタミドと同様の挙動を示すものもあった。これらの化合物は、CWR22R細胞またはC4−2細胞の成長を阻害した化合物と比較して、そうした細胞のAR転写活性の弱い阻害剤ではない。たとえば、化合物c55、c61およびc85は、ARE−Lucレポーター活性およびPSA分泌のEC50および最大阻害で判断すると、AR依存性の転写の阻害剤として同等である。しかしながら、c85は、アンドロゲン非依存性CWR22R細胞株およびC4−2細胞株の成長を阻害するのに対し、c55およびc61は、阻害しない。これらの知見は、AR依存性の転写活性の阻害がそれ自体で、アンドロゲン非依存性PCa細胞の成長を抑制するのに十分でないことを示す。
【0063】
ライブラリーのスクリーニングに使用したパラメーターである、CWR22R細胞におけるAR依存性レポーターの発現の阻害が、こうした細胞に対する化合物の毒性を必ずしも反映するものではないという我々の知見からは、以下の2つの考えられる理由を示唆する。すなわち、(i)ARは、転写非依存性メカニズムを介してアンドロゲン非依存性PCa細胞の生存を制御し、AR依存性の転写を阻害すると同定された化合物プールは、ARの転写非依存性の抗アポトーシス機能をも阻害すると仮定される一部の化合物を含む。または(ii)スクリーニングで同定されたAR阻害剤の毒性は、ARに依存するものではなく、AR転写活性について観察された阻害は、何か他のメカニズムを介して生じる、これらの化合物の毒性または他の作用を反映するものである。我々のスクリーニングで同定された毒性のある化合物は、その毒性において特異性を示す(ARを発現する試験した3種の標的PCa細胞株の3種に対して毒性があるのに対し、試験した3種の非標的細胞株の3種に対して毒性がない)ということは、この第2のシナリオと相反する。
【0064】
我々は、化合物のAR特異性をさらに解析するため、化合物により引き起こされるAR阻害とPCa細胞毒性との定量的パラメーターを比較した。化合物の添加から24時間後に測定した、CWR22R細胞のAR依存性ルシフェラーゼ活性を阻害するEC50を、化合物の添加から6日後のCWR22R細胞に対する毒性のIC50(生細胞を50%未満にする化合物の阻害濃度)と比較した(図2B)。重要な点として、24時間で毒性を示した化合物がなかった(データ示さず)。これは、siRNAの塗布から4〜6日後に明らかになる、ARを標的としたsiRNAの、こうした細胞に対する毒性作用の遅延性に類似している。図2Bは、AR依存性レポーターを阻害する24時間後のEC50が、毒性に関する6日後のIC50と同じ範囲内にあることを示す。このことは、AR依存性の転写の阻害が、毒性が起こる前に起こること、さらにPCa細胞に対して毒性があるこれらの化合物では、PCa細胞に対するARの阻害と毒性との間に相関性があることを示す。これらの結果を、一部のAR阻害剤に毒性がないことと考え合わせると、ARを不活化し得る異なる機序があることが示唆される。すなわち、(i)ARの転写活性のみの阻害は、アンドロゲン非依存性PCa細胞に対して毒性がない(アンドロゲン除去の作用に類似)、(ii)AR転写活性と、PCa細胞の生存を制御するARの他の何らかの転写非依存性機能との阻害は、アンドロゲン依存性および非依存性PCa細胞の両方に対して毒性がある。(iii)ARを介した転写に影響を与えずに細胞生存に導くと仮定される転写非依存性のAR機能のみの阻害は、すべてのPCa細胞に対して毒性があると予想されるけれども、こうした阻害剤は、これまで同定されなかった。我々の読み出し(readout)システムは、AR依存性トランス活性化のモニタリングに基づくものであり、我々のスクリーニングでは、仮定される第3の機序を介して作用する化合物は、単離されなかった。
【0065】
我々はさらに、より大きな群(n=10)の非標的細胞株(ARを発現しない非PCa細胞株およびPCa細胞)に対する、選択した化合物の作用について試験した。これらのデータの例を図2Cに示す。選択したヒットは、試験した全濃度で、標的細胞に対してのみ毒性があり、AR陰性細胞に対して無毒性であった。このため、毒性を示す選択したヒットは、ARを発現するPCa細胞に対してのみ毒性があり、したがって、これらの化合物の毒性は、ARに対するそれらの作用に関係している可能性が高いと、我々は強い確信を持って結論することができる。
【0066】
図2Cのデータはさらに、PCa細胞に対して毒性がある化合物を、その毒性の程度に基づき2つの分類に分けることができることを示す。すなわち、化合物c52およびc85は、7日目までに培養物中のほぼすべてのPCa細胞を殺す。これに対し、他の化合物は、未処理の対照細胞と比較して成長の抑制を引き起こしたものの、明らかな細胞死を引き起こさなかった(図2Cの化合物c5およびc6、化合物c11、c17、c18のデータは示していない)。この後者の場合、インキュベーションの時間または化合物の用量を増やしても、依然として細胞の完全な除去には至らなかった。これは、あるサブセットの化合物が、PCa細胞の増殖を抑制するものの、PCa細胞を殺さないことを示唆する。この可能性を試験するため、我々は、化合物の両分類で処理したCWR22R細胞の細胞周期分布を評価した。第1の種類の化合物(c52、c85)で処理すると、アポトーシス細胞の特徴であるsub−G1 DNA内容物(content)を含む細胞が出現する(図3D)。これに対し、第2の種類の代表的な化合物(c5、c6、c11)で細胞を処理すると、sub−G1 DNA内容物(content)を含む細胞は出現しなかったけれども、細胞周期停止を示唆する細胞周期分布の変化が生じた(細胞周期のG1期の細胞の比率の上昇、およびS期の細胞の比率の減少)。したがって、これらの細胞では、アンドロゲン非依存性PCa細胞のAR依存性の転写を阻害する様々なサブセットの化合物が、成長停止、あるいはアポトーシスのいずれかを引き起こす。化合物が成長停止を引き起こすか、それともアポトーシスを引き起こすかは、AR依存性の転写の阻害剤としての化合物の効力によって左右されない(すなわち、図2B)。
【0067】
実施例4
本実施例は、PCa細胞に対する化合物の毒性とARタンパク質のレベルに対するその作用との間の相関性について説明する。
【0068】
我々は、上述の結果に基づき、我々のスクリーニングで同定されたAR依存性転写の阻害剤の化合物を3つの分類に区別することができる。すなわち、(i)アンドロゲン感受性LNCaP細胞の成長を抑制するけれども、アンドロゲン非依存性のC4−2細胞またはCWR22R細胞の成長には作用しないビカルタミドに似た化合物(c8、c16、c47、c55、c61およびc73)、(ii)ARを発現するすべての(アンドロゲン依存性および非依存性の)PCa細胞の成長を抑制する化合物(c5、c6、c11、c17,およびc18)、および(iii)ARを発現するすべてのPCa細胞を殺す化合物(c52およびc85)である。第1の分類のAR阻害剤は、リガンド結合を標的とする(すなわち、アンドロゲン非依存性癌細胞に対して毒性がない)可能性があるため、本発明の方法に有用とは見なされない。残りの2つの分類は、アンドロゲン非依存性PCaおよび他のAR陽性癌を処置できる可能性がある新しい種類のAR阻害剤であると見られるため、考慮の対象になるものであった。このため、残りの2つの分類をARTIS(AR転写阻害剤−抑制性、化合物c5、c6、c11、c17、c18など)、およびARTIK(AR転写阻害剤−殺傷性、化合物c52およびc85など)と名付けた。
【0069】
ARTISおよびARTIK化合物がPCa細胞の成長に対して異なる作用を持つ理由を解明すること目的として、我々は、2つの分類の化合物で処理したCWR22R細胞内のARタンパク質のレベル、およびPCa細胞に対して毒性がない第1の分類のいくつかのヒットを比較した。この解析から、ARTIK(c52およびc85)により処理すると、ARタンパク質が細胞から完全に消失することが示された。これに対し、ARTIS化合物または無毒性のAR阻害剤による処理は、細胞内のARタンパク質のレベルに影響を与えなかった(図3A)。これは、ARが転写非依存性メカニズムを介してアンドロゲン非依存性PCa細胞の生存を制御することを裏付ける。様々な化合物の比較により、ARタンパク質の除去は、アンドロゲン依存性および非依存性細胞の死を引き起こす(さらに、AR依存性の転写で観察される阻害を説明すると考えられる)ことが示される。一方、ARタンパク質のレベルが低下しないAR依存性の転写の阻害は、アンドロゲン依存性PCa細胞、さらに場合によっては、アンドロゲン非依存性PCa細胞の成長を抑制するけれども、殺しはしない。1種のARTIK化合物の毒性作用におけるAR除去の決定的な重要性が、ARTIKの毒性に抵抗性を示すCWR22Rクローンのインビトロでの選択によって、明らかにされた(図3B、詳細については実施例1を参照)。c52の存在下で107個の細胞の成長後に単一クローンを得た。このクローンは、c52が常時存在する中で成長しても、ARの発現を維持していた(図3C)ことから、ARがc52の直接の標的である可能性があることが示唆される。化合物c85に抵抗性を示すクローンは、得られなかった。
【0070】
ARの転写非依存性機能がPCa細胞の生存を制御するかどうかの別の試験として、我々は、CWR22R細胞の生存に対する2つの遺伝子コンストラクトの作用を比較した。ARを標的とするshRNAはARTIK化合物と同様に、ARタンパク質の除去に至るAR発現の抑制を引き起こす)。一方、ARミュータント、HD1−KRAB−AR122の方は、ARのトランス活性化ドメインの一部(aa1〜122)がKRABおよびHDAC1のトランスリプレッションドメインで置換されたもので、内因性のARタンパク質のレベルに影響を与えないものの、ARE DNA配列に対する結合に際して内因性のARタンパク質との競合することにより、AR依存性の転写を完全に停止させる(Bramlett,et al.2001.Mol Cell Endocrinol 183:19−28)。これらの2つのコンストラクトについて、ARE−LucレポーターとのCWR22Rコトランスフェクションアッセイにより、一定の用量範囲におけるAR依存性の転写に対するその作用(図4A)を試験し、さらに、コロニー形成アッセイによりCWR22Rの生存に対するその作用を試験した(図4B)。どちらのコンストラクトも、CWR22R細胞のAR依存性のルシフェラーゼ発現をほぼ完全に抑制したが、同量のDNAのトランスフェクションの場合、HD1−KRAB−AR122ミュータントの方が、shRNAコンストラクトより若干強力であった。しかしながら、既に示したように、ARに対するshRNAは、CWR22Rコロニーの成長を抑制したのに対し、HD1−KRAB−AR122コンストラクトは、抑制しなかった。この状況は、我々の一連のAR阻害低分子で観察された状況によく似ており、ARが、これまでに特性が明らかにされていないトランス活性化非依存性機能を介してPCa細胞の生存を制御するという仮説をさらに裏付けるものである。
【0071】
実施例5
いくつかのステロイド受容体(SR)は、ARを含め、エストロゲン受容体(ER:estrogen receptor)、プロゲステロン受容体(PR)、糖質コルチコイド受容体(GR:glucocorticoid receptor)およびミネラルコルチコイド受容体(MR:mineralcorticoid receptor)など高度に相同的である。リガンド活性化型のこれらの受容体はすべて、同じDNA配列エレメントを認識し,結合する。受容体リガンド相互作用の下流で作用するAR阻害化合物を単離する試み(我々のスクリーニングなど)は、理論的には、これらのSRのすべてを阻害できる分子の単離に至る可能性がある。ERまたはPRの阻害は、これらの受容体が男性の重要な機能を制御しないため、PCaの処置にとって重量な問題ではないと予想される。しかしながら、GRおよびMR系は、男性で機能的であり、交差反応性の(cross−reactive)AR阻害剤によりこれらを阻害すると、特に長期的投与を伴う場合に有害な副作用を引き起こす恐れがある。
【0072】
我々のAR阻害化合物のいずれかが、GRまたはMRをも阻害するかどうかを判定するため、我々は最初に、我々のスクリーニングに使用したCWR22RARE−Lucレポーター系がアンドロゲン以外のステロイドに反応するかどうかを試験した。これは、我々のライブラリーのスクリーニングが、GRおよびMRのリガンドを含み得るFBSの存在下で行われたため、実施すべき重要な実験であった。我々は、GRリガンド、デキサメタゾン(Dex)またはMRリガンド、アルドステロン(Ald)のどちらかを用いてSFM中でCWR22RARE−Luc細胞を処理し、選択したヒットの存在下または非存在下でルシフェラーゼ活性を測定した。DexおよびAldはどちらも、CWR22R細胞のARE−Lucレポーターの活性を誘導した。さらに、選択したAR阻害ヒットはすべて、この活性を抑制し、抑制の程度は、DHTが誘導するARE−Luc活性に対するそれらの作用と比例した(データ示さず)。
【0073】
CWR22R細胞は、ARΔLBDのみならず、そのリガンド特異性に影響を与え得るLBD突然変異を含む全長ARも発現する(図1)。DexおよびAldにより観察されたルシフェラーゼの誘導が、これらのリガンドによるARの活性化によるものであるかどうかを試験するため、我々は、AR特異的siRNAを用いて、CWR22R細胞のAR(LBDおよび全長の両方)の発現を遮断した。こうした細胞では、全3種のリガンド、DHT、DexおよびAldによるARE−Luc活性化は、対照siRNAをトランスフェクトした細胞と比較して抑制された。これは、CWR22R細胞に存在するLBD変異ARの交雑性(promiscuous nature)を説明する(図5A)。この実験は、選択したヒットがDHT以外のリガンドにより刺激された場合でも、ARを阻害することができることを明らかにした。一方で、このデータは、ヒットが他の細胞のGRおよび/またはMR活性に影響を与える可能性を完全には排除できない。
【0074】
我々は、我々のAR阻害ヒットが他のSRに影響を与えるかどうかをさらに明らかにするため、文献によりGR、MRおよびARを発現するとされるMDA−MB−453乳癌細胞を使用した(Zhou,Cet al.2008.DBr J Pharmacol 154:440−45029)。我々は、プロモーター領域に、3種のSRのすべてが認識するDNA結合エレメントを含むMMTV−Lucレポーターコンストラクトを、この細胞にトランスフェクトした。この系では、c66を除くヒット化合物のすべてが、DHTの刺激によるレポーター活性の特異的阻害剤であり、DexまたはAldの刺激によるMMTV−Lucに対しては作用がなかった(図5B)。したがって、我々は、選択したヒット分子の大部分が、高度に相同的なGRおよびMRに対してさえも活性を持たない特異的AR阻害剤であると結論する(表1)。
【0075】
実施例6
インビボ試験のため、前の全アッセイをベースにして、ARTIS分類とARTIK分類を代表する5つのヒット化合物(c6、c11、c17、c52およびc85)を選択した。化合物c5は、ミクロソーム安定性が非常に低いため(ラットのミクロソームとの1時間のインキュベーション後で<5%)、除外した。化合物の毒性は、用量漸増アッセイ(dose escalation assay)で評価した。このアッセイでは、NIH Swiss雄マウス(n=4)に、3日おきに、送達される各化合物を連続的に3回腹腔内(i.p.)注射した。第1の用量は、マウス体重に基づき再計算した、CWR22R細胞内の化合物のインビトロでのIC50の20倍(20×IC50)(実施例1を参照)、第2および第3の用量はそれぞれ、50×IC50および100×IC50であった。最後の注射の翌日に、肉眼的病理検査と、総タンパク質レベル、グルコースレベル、ビリルビンレベルおよびクレアチニンレベル、肝臓酵素の活性、ならびにイオン濃度を含む血清の生化学アッセイのための採血とのため、各群のマウスの半数を屠殺した。化合物の最後の注射から7日後に、残りのマウスも同様に屠殺し、評価した。生きたマウスの目視検査、あるいは肉眼的病理検査の際に、化合物を注射したどのマウスも、異常は観察されなかった。化合物の最後の注射の翌日に、ほとんどすべてのマウスで血清中のグルコース濃度の若干の低下(対照の70〜80%)が観察されたが、1週間後のグルコースレベルは、正常であった(データ示さず)。血清中のグルコースレベルが低いのは、選択した化合物の弱い一過性のGR阻害作用を反映したのかもしれない。しかしながら、全体的に見ると、この実験からは、マウスの場合、試験した用量の化合物が無毒性であり、したがってインビボでの有効性試験に好適であることが明らかにされた。
【0076】
我々は、ヌードマウスのアンドロゲン非依存性PCaのC4−2およびCWR22R異種移植モデルを用いて、ヒットに起こり得る抗腫瘍作用を評価した。C4−2腫瘍を持つマウス群(各群マウス4〜5匹、それぞれ2つの腫瘍を持つ)に、化合物(100×IC50用量)またはDMSOビヒクルを6回連日i.p.注射した。この処置レジメンでは、化合物c6およびc11は、C4−2腫瘍成長の明確な抑制を示したのに対し、c17、c52およびc85は、示さなかった(図6A)。
【0077】
ARTIK化合物c52およびc85も、CWR22Rモデルを用いて試験した。18mg/kg/dayの用量(200×IC50と同等)でc52を5回連日静脈内(i.v.)注射したところ、顕著な有害な副作用をまったく起こさずにCWR22Rの皮下腫瘍の成長を抑制した(図6B)。化合物c85は、腫瘍成長の確かな抑制を示さなかった。18mg/kg/dayのc52で処置した10匹のマウスのうち、2匹のマウスで腫瘍が完全に消失し、1匹のマウスで退縮し、5匹のマウスで大きくならなかった。これに対し、10匹の対照動物のうち9匹は、腫瘍が次第に成長し、1匹のマウスは、腫瘍がゆっくりと成長した。
【0078】
これらのインビボでの結果から、ARTIKとARTISとの代表的な化合物(化合物c6、c11およびc52)は一般に無毒性であるが、アンドロゲン非依存性PCaの腫瘍の成長を遮断し、したがって、PCaおよびAR陽性BCに対して候補治療薬として有力であることが示唆される。本開示の利点を踏まえると、薬理作用の最適化のための通常の実験法を用いれば、これらの化合物の抗腫瘍効果が大きく改善するだけでなく、上述の実験で腫瘍成長を抑制しなかった他のヒット化合物のインビボでの有効性も明らかになり得る可能性がある。
【0079】
実施例7
本実施例は、AR陽性およびAR陰性癌細胞、ならびに非癌性細胞に対する化合物の作用の解析を示す。特に、化合物を、AR陽性乳癌細胞、AR陰性乳癌細胞、AR陽性前立腺癌細胞、AR陰性腎細胞癌、AR陰性頸部細胞およびAR陽性肝細胞癌、ならびに正常肝実質細胞に対して試験した。本実施例に記載した実験は、本質的に実施例1に記載されているように実施した。その結果から、本発明の方法に使用するのに好適であると本明細書に記載された化合物がAR陽性癌細胞の成長の阻害には効果的であるものの、AR陰性癌細胞には効果的でないことが明らかにされる。結果は、図12〜図20にグラフでまとめてある。
【0080】
我々は、アンドロゲン非依存性(およびアンドロゲン依存性)PCaの処置に使用される新しい種類のAR阻害剤を同定するため、ARのLBDを欠損した形態(ARΔLBD)に対して低分子をスクリーニングしたことが、本発明の明細書本文および実施例から当業者には明らかであろう。他のARドメインを標的にすると、大部分の突然変異は、ドメイン機能(たとえば、トランス活性化、DNA結合、補助因子の相互作用)の喪失を引き起こすことが予想されるため、再発を起こす突然変異の選択につながる可能性が低くなる。
【0081】
いくつかの我々の知見は、ARΔLBDが完全にアンドロゲン非依存性であっても、なおPCa細胞生存能に不可欠なAR機能をすべて保持することを明らかにした。すなわち、i)ARΔLBDは、AR特異的プロバシンプロモーターからpARE−Lucレポーターの発現を活性化する(実施例1を参照)。ii)CWR22R細胞は、ARの非存在下で生存できない一方、ARΔLBDの発現は、この細胞の通常の増殖を支持するのに十分である。さらに、iii)SFM中のARΔLBDの活性は、アンドロゲンの存在下での野生型ARの活性と同等か、またはそれを上回る(レポーター活性のアッセイ、核局在化など)。これらのデータは、細胞生存に決定的に重要なARの機能に干渉し、ARの様々な変異体に対して広範な活性を持ち得る新しい種類の(リガンド結合に影響を与えない)AR阻害剤を同定するための標的としてARΔLBDを使用することの正当性を立証するものである。
【0082】
ARを標的とするのに我々が用いたアプローチは、異なる根拠に基づき、他の報告に記載されたものと異なる戦略を利用した。Attar et al.は、ARのLBDに結合したビカルタミドの結晶構造に基づき新しい非ステロイド性AR阻害剤の合理的なデザインを報告した(Salvati,et al.2005.Bioorg Med Chem Lett 15:271−276)。これらの新しい阻害剤は、ビカルタミドと比較してAR結合特性が向上しており、さらに、ビカルタミドがARの一部のミュータント型に対して活性であるのに対し、この新しい化合物は、アンドロゲン非依存性PCa細胞に対して毒性が強くなっている。しかしながら、このアプローチは、ARのLBDに対する治療法の変異形であり、したがってLBDの変異性によって限定される可能性がある。
【0083】
別のグループは、アンドロゲンの非存在下で成長が可能なアンドロゲン感受性LNCaP細胞を選択する際、最も多く見られる遺伝子変化がAR遺伝子の増幅であることを見出したNat Med 10:33−39)。著者らは、観察された増幅が、1細胞当たりのAR分子を増大させることによりリガンドの非存在下でのARの低活性を補うために選択されると仮定した。同じグループは最近、こうした細胞を用いてアンドロゲン非依存性PCaに対して活性を持つ低分子を選択したと報告した(Tran,et al.2009.Development of a second−generation antiandrogen for treatment of advanced prostate cancer.Science 324:787−790)。この分子、MDV3100が、去勢抵抗性PCa患者の第I相臨床試験でPSAレベルの低下に有効性を示した。しかしながら、ARに対するMDV3100の活性のメカニズムは、我々のアプローチにより単離されたAR阻害剤が使用すると我々が考えるものと異なる。MDV3100、およびそれに近いホモログRD162はどちらも、ARのLBDに高い親和性で結合するARの非競合的アンタゴニストである。MDV3100(およびRD162)の結合親和性は、アンタゴニストに対してこれまでに得られたアンドロゲンの結合親和性に最も近い。このため、これらの化合物は、アンドロゲンによるARの活性化を妨げるもので、ビカルタミドおよびフルタミドなど診療所で利用可能なARアンタゴニストよりも優れた効力を持つ。さらに、後者の分子は、MDV3100またはRD162が示さないパーシャルアゴニスト活性により妨げられる(Tran,et al.2009.Development of a second−generation antiandrogen for treatment of advanced prostate cancer.Science 324:787−790)。これらの新しい化合物に起こり得る問題は、化合物がLBDにも結合し、カソデックスと同様にLBDの突然変異の選択を誘導し得ることに起因するかもしれない。
【0084】
我々のスクリーニングの予想外の知見の1つは、AR転写活性の喪失が必ずしも、アンドロゲン非依存性PCa細胞の成長または生存の阻害につながらないことであった。我々がAR依存性の転写の阻害剤として同定した分子のほとんどすべては、LNCaP細胞の成長も阻害しており、それによりAR転写活性がリガンド依存性PCa細胞の成長に重要であることが確認された。しかしながら、アンドロゲン非依存性PCa細胞(C4−2およびCWR22R)の成長に対して作用を有する化合物は、一部のみであった。重要な点として、ARを発現するすべてのPCa細胞(アンドロゲン依存性および非依存性の両方)の成長を抑制した少数のヒット化合物が、アンドロゲン非依存性PCa細胞の成長に対して作用を示さない分子より、AR依存性の転写の阻害剤として必ずしも強力ではなかった。スクリーニング結果のかなりの割合のAR依存性転写の無毒性阻害剤と毒性阻害剤(死または成長停止を引き起こす)とは、AR依存性の転写の阻害が、少なくともアンドロゲン非依存性PCa細胞に対する毒性を必ずしも決定するものではないことを示唆する。これは、これまでに特徴付けられていない転写調節以外のARの別の機能が、PCa細胞の生存にとって重要であることを示唆する。これらの結果はさらに、この仮定された細胞生存に導く別の機能を除去せずに低分子を用いて特異的に、ARの転写調節機能を阻害し得ることも示唆する。
【0085】
アンドロゲン非依存性PCaに対する毒性を示すAR阻害ヒットのさらなる特徴付けから、ヒットを2つの分類、PCa細胞を殺すヒットとその増殖を抑制しかしないヒットとに明確に分けることができることが示される。さらに、ARタンパク質のレベルに対する化合物の作用は、化合物が誘導する毒性の種類と相関関係があった。すなわち、ARタンパク質の除去を引き起こす化合物は、アンドロゲン非依存性PCa細胞を殺したのに対し、ARレベルに対する作用を持たない化合物は、その成長を抑制するのみであった。このデータもやはり、PCa細胞の生存を制御し、ARタンパク質が細胞から除去されたときのみ完全に消失する、ARの転写非依存性機能の存在により説明することができる。
【0086】
前立腺癌の細胞死を誘導するには、ARのトランス活性化機能の阻害にとどまらず、ARタンパク質の除去を必要とするという考えは、野生型ARを発現する正常な前立腺上皮細胞と、LBDの突然変異を含み、ARを発現する前立腺腫瘍細胞とでは、去勢の作用が異なることにより裏付けられる。野生型ARは、アンドロゲンの非存在下では、特にその結合パートナーHSP90が限られている場合には、不安定である。このため、去勢を行うと、ARタンパク質の消失、および正常前立腺上皮細胞のアポトーシスが起こる。これに対し、ARのLBD突然変異はリガンド結合の特異性に影響を与えるだけでなく、アンドロゲンの非存在下でARの安定性を促進するため、去勢は、変異LBDを含む多くのPCa細胞を殺さずに、その増殖を抑制するのみである。
【0087】
PCa細胞の生存を制御するARの転写非依存性の役割の存在は、shRNAを介したARの除去が、PCa細胞によるコロニー形成を抑制するのに対し、トランス活性化欠損ドミナントネガティブ型HD1−KRAB−AR122ARミュータントの発現は、抑制しなかったという我々の知見によりさらに裏付けられる。このため、我々のデータから、ARが、前立腺細胞生存に影響を与える、以前に認識されていない転写非依存性機能を持つ可能性が裏付けられる
【0088】
我々の選択したAR阻害ヒットには、PCa細胞を効率的に殺すものもあれば、抗増殖作用が弱いものもあるが、どちらの分類の化合物も、マウスのPCaの腫瘍モデルに対して有効性を示すことは、注目に値する。どちらの分類の化合物にもインビボで抗腫瘍有効性があることは、以下のいくつかの点で説明することができる。すなわち、(i)化合物が、インビトロよりインビボで強力になる代謝変換をインビボで受ける。(ii)化合物が、インビトロでのPCa細胞生存には決定的に重要ではないけれども、インビボではより重要となる活性のメカニズムを持つ。および/または、(iii)一部の化合物の成長抑制作用は、インビボで腫瘍成長を停止させるのに十分である。
【0089】
我々が調査したマウスモデルでは、インビトロでアンドロゲン非依存性PCa細胞に対して毒性があったいくつかの化合物が、インビボでの腫瘍成長に対して顕著な作用をまったく有さなかった。これに対して考えられる2つの理由として、(i)これらの化合物は、薬理作用が最適化されていなかったものの、過度の実験を行うことなく本開示を応用したものになる可能性がある。および/または、(ii)これらの化合物の作用メカニズムは、インビボではインビトロほど重要でないことがある。化合物C52は、C4−2モデルを用いた我々の実験においてインビボで有効性を示さなかったものの、CWR22R腫瘍を用いた我々の実験では効果的であった。この相違は、後者の実験で、より高用量の化合物および異なる投与経路(i.v.とi.p.)を我々が使用したことによるかもしれない。静脈内注射は、i.p.注射で起こる肝初回通過を回避することにより、c52(ラットのミクロソームとの1時間のインキュベーション後に残る化合物は17%)など比較的不安定な化合物のバイオアベイラビリティーを著しく向上させることができる。このため、C4−2モデルにおけるc52の有効性の喪失は、当業者であれば本開示に基づき対処し得る、化合物の不十分な薬理学的特性による可能性がある。
【0090】
要約すると、我々は、インビトロおよびインビボで非常に特異的抗PCa特性を持ついくつかのAR阻害化合物を同定した。これらの化合物は、AR−リガンド相互作用を標的としないため、新しいクラスのAR阻害剤である。したがって、これらの化合物は、標準的な抗アンドロゲン療法に応じて発生するLBD突然変異に関係なく、AR陽性細胞に対して活性である可能性がある。このため、本開示で試験した個々の化合物が属する化学クラスも、AR陽性癌に対して有用であると予想される。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示内容を参照によって本明細書に援用する、2009年10月23日に出願された米国仮特許出願第61/254,395号明細書に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、米国国立衛生研究所(National institutes of Health)が交付するgrant no.R42 CA 110400−01 2004−2005による政府支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明は全般的に癌治療に関し、より詳細にはアンドロゲン受容体陽性癌細胞を含む癌を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
前立腺癌(PCa:prostate cancer)は、最も多く見られる腫瘍性疾患であり、男性の癌関連死の原因として2番目に多く、米国だけで毎年30,000を超える人の生命を奪っている。PCaの腫瘍は主に前立腺管腔の上皮細胞からなる。前立腺管腔の上皮細胞の分化は、アンドロゲン受容体(AR:Androgen receptor)による前立腺特異的マーカーの発現により、ある程度制御される。ARは、複数のメカニズムにより細胞の生存を制御するが、そのメカニズムは、まだ不明である。ARは、前立腺癌だけでなく、乳癌など他の癌の原因にも関与している。ARは、ステロイド受容体(SR:steroid receptor)ファミリーに属し、転写因子として働く。このファミリーのメンバーは、リガンドの非存在下では、熱ショックタンパク質90(Hsp90)と結合して、細胞質に存在している不安定なタンパク質である。ARのリガンド結合ドメイン(LBD:ligand binding domain)にアンドロゲンなどのステロイドが結合すると、ARは、Hsp90から遊離され、核に移行する。核内のアンドロゲン結合ARは、遺伝子のプロモーターのアンドロゲン応答配列(ARE:androgen responsive element)と共に遺伝子の転写を活性化する(Cato,A.C.,et al.1998.Trends Endocrinol Metab 9:150−154)。ARは、転写活性化因子としての機能だけでなく、一部の遺伝子の転写を抑制することもできる(Claessens,et al.2001.J Steroid Biochem Mol Biol 76:23−30)。
【0005】
アンドロゲンを枯渇させると、正常な前立腺管腔の上皮細胞の死を引き起こすことから、その生存におけるAR経路の決定的役割が明らかにされる。癌性前立腺細胞はARを発現し続け、同時に癌性前立腺細胞の生存がアンドロゲンの存在に依存しているため、アンドロゲン除去が、進行したPCa患者に最適な治療法になっている。阻害剤のフルタミドおよびカソデックスの使用を含む抗アンドロゲン療法は通常、当初は効果的であるものの、完全な治癒に至るのは稀である。こうした療法で処置された患者の大部分でPCaの再発が起こり、アンドロゲン非依存性で化学療法抵抗性の腫瘍が発生し、予後は不良である。このため、抗アンドロゲン療法に対する抵抗性が、PCa処置の成功の大きな障害になっている。
【0006】
腫瘍進行の過程でPCaにより獲得されるアンドロゲン非依存性のメカニズムの解析から、ARシグナル伝達の低下が伴うことは稀であることが明らかにされる(Balk,S.P.2002.Urology 60:132−138;discussion 138−139)。これとは反対に、アンドロゲン非依存性PCaは典型的には、リガンド非依存性(恒常的に活性)であるかまたは非アンドロゲンリガンドに応答性であるARミュータントの発現により、AR活性が増強していることを特徴とする(Chen,Y.,et al.2008.Curr Opin Pharmacol 8:440−448;Tilley,et al.1996.Clin Cancer Res 2:277−285;Koivisto,et al.1998 Am J Pathol 152:1−9;Marques,et al.2005.Int J Cancer 117:221−229;Bohl,Cet al.2005.J Biol Chem 280:37747−37754;Hara,T.,et al.2003.Cancer Res 63:149−153)。
【0007】
自己複製する腫瘍細胞の主要な供給源と考えられる微量の細胞集団である前立腺の「腫瘍起源細胞」または「癌幹細胞」は、正常な前立腺幹細胞と異なり、機能的ARを発現することが最近明らかにされた(Vander Griend,et al.2008.Cancer Res 68:9703−97111)。このことと、去勢抵抗性の段階まで進行したPCa腫瘍でAR活性が維持されることが観察されることとを考え合わせると、ARが、アンドロゲン依存性PCaとアンドロゲン非依存性PCaとの双方のみならず、AR陽性の他の癌型も有望な治療標的となる可能性が示唆される。たとえば、乳房上皮細胞は、多くの点、前立腺細胞に類似している。PC細胞の生存がアンドロゲンの刺激による活性ARに依存するように、乳房上皮細胞も同様、関連するエストロゲン受容体(ER:estrogen receptor)、およびプロゲステロン受容体(PR:progesterone receptor)に依存する。乳癌(BC:breast cancer)におけるERおよびPRの役割と、治療アプローチとしてそれらの機能を調節することとが、長年研究の中心であった。しかしながら、ARの発現は、正常な乳腺細胞では低レベルであり、大部分のBCでは、標的治療がまだ利用できない「トリプルネガティブ」(ER陰性、PR陰性、Her2陰性)BCの50%など、様々なレベルで発現する。乳房上皮細胞に対するアンドロゲンの作用については、いくつかの研究で検討されてきものの、BCにおいてARが果たす役割は、依然として不明である(Birrell,et al.(1995)J Steroid Biochem Mol Biol 52,459−467;Brettes,et al.(2008)Bull Cancer 95,495−502;Di Monaco,et al.(1995)Anticancer Res 15,2581−2584)。このため、AR陽性癌に対する現行の処置方法は大部分が無効であり、以下に限定されるものではないが、PCaおよび乳癌などAR陽性癌細胞治療の新たな方法が現在も求められている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、個体におけるAR陽性癌細胞の成長を阻害する方法を提供する。この方法は、AR陽性癌と診断されたまたはその疑いがある個体に、AR陽性癌細胞の成長を阻害するか、またはAR陽性癌細胞を殺すことができる化合物を含む組成物を投与することを含む。AR陽性細胞は、どのようなAR陽性癌細胞であってもよい。種々の実施形態では、AR陽性癌細胞は、乳癌細胞、前立腺癌細胞、肝細胞癌細胞、甲状腺癌の細胞、グリオブラストーマまたは星状細胞腫である。
【0009】
本発明に使用するのに好適な化合物の構造を図7、図8、図9、図10、図11に示す。図7、図8、図9、図10、図11に示した化合物の特定の例を、それぞれc5、c6、c11、c52およびc85と呼ぶ。化合物は各々、Chembridge Chemical Corporation(San Diego,CA)から購入したDiverSet化学ライブラリーのスクリーニングから同定し、各化合物については、特定の化合物構造の識別に使用できる、一般に入手可能なChembridge識別(ID)番号と関連付けてある。種々の実施形態では、種々の実施形態では、本発明の方法においてc5(Chembridge ID6099112)、c6(Chembridge ID5652306)、c11(Chembridge ID6005978)、c52(Chembridge ID5582367)およびc85(Chembridge ID6028717)を使用することがある。
【0010】
一実施形態では、本発明の方法は、AR陽性癌と診断されたまたはその疑いがある個体に、本明細書でc5、c6、c11、c52およびc85と呼ばれる化合物、ならびにこれらの組み合わせから選択される化合物を含む組成物を投与することを含む。
【0011】
一実施形態では、個体に投与される組成物は、c52を含む。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、個体が、AR陽性癌細胞の成長を阻害するか、またはAR陽性癌細胞を殺すことができる化合物を含む組成物を用いた処置の候補であるかどうかを確認する方法を提供する。この方法は、個体から生物学的サンプルを採取すること、およびサンプルがアンドロゲン受容体陽性癌細胞を含んでいるかどうかを判定することを含み、生物学的サンプルがアンドロゲン受容体陽性癌細胞を含んでいると判定することは、個体が処置の候補であることを示唆し、生物学的サンプルがアンドロゲン受容体陽性癌細胞を含んでいないと判定することは、個体が処置の候補でないことを示唆する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】図1Aは、ARDLBDが無血清の培地(SFM:steroid−free media)中で転写活性があることを示す日付をグラフ化したものを示す。HeLa細胞に、AR依存性レポーターコンストラクトpARE−Lucと、野生型(wt)AR発現コンストラクト、ARDLBD発現コンストラクトまたは陰性対照(空ベクター)発現コンストラクトとをSFM中でトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。
【図1B】図1Bは、ARDLBDが常に核に局在化することを示す写真を示す。図Aと同様にSFM中でトランスフェクトしたHeLa細胞を未処理のままか、または1nMのジヒドロテストステロン(DHT:dihydrotestosterone)で24時間処理し、続いて抗AR抗体で免疫蛍光染色を行った。
【図1C】図1Cは、形質導入を用いてあるいは用いずに調製した細胞ライセートのウエスタンブロッティングにより得られた結果の写真を示す。図1Cでは、内因性のAR転写物の非翻訳領域を標的とするshRNA、およびARDLBD発現コンストラクトを組み合わせたレンチウイルスの形質導入により、CWR22R細胞の内因性のARを異所性ARDLBDで置換した。ブロットを抗AR抗体および抗アクチン抗体でブローブした。
【図1D】図1Dは、様々な濃度のDHTの添加によりSFMで成長させた最初の細胞および形質導入細胞を用いたAR依存性レポーターアッセイ(pARE−Luc)から得られたデータをグラフ化したものを示す。図1Dでは、内因性のAR転写物の非翻訳領域を標的とするshRNA、およびARDLBD発現コンストラクトを組み合わせたレンチウイルスの形質導入により、CWR22R細胞の内因性のARを異所性ARDLBDで置換した。図1Dに示したアッセイは、3回ずつ行った。エラーバーは、標準偏差を示す。
【図1E】図1Eは、血清を含む標準培地中で最初の細胞および形質導入細胞の成長速度(細胞数)を測定して得られたデータをグラフ化したものを示す。図1Eでは、内因性のAR転写物の非翻訳領域を標的とするshRNA、およびARDLBD発現コンストラクトを組み合わせたレンチウイルスの形質導入により、CWR22R細胞の内因性のARを異所性ARDLBDで置換した。図1Eに示したアッセイは、3回ずつ行った。エラーバーは、標準偏差を示す。
【図2A】図2Aは、様々な細胞に対するAR阻害剤の毒性を示すデータを示す。図2Aは、様々な化学物質で7日間処理した表記の細胞のコロニー形成アッセイの解析により得られたデータをグラフ化したものである。図2Aのエラーバーは、3回の実験の標準偏差を示す。
【図2B】図2Bは、様々な細胞に対するAR阻害剤の毒性を示すデータを示す。図2Bは、EC50(CWR22R細胞のAR依存性レポーターの阻害)およびIC50(CWR22R細胞に対する毒性)のグラフによる比較である。図2Bのエラーバーは、EC50およびIC50の信頼区間である。
【図2C】図2Cは、様々な細胞に対するAR阻害剤の毒性を示すデータを示す。図2Cは、由来の異なる一連の細胞株に対するいくつかの化合物の用量依存性の毒性を示すデータをグラフ化したものである。図2Cのエラーバーは、3回の実験の標準偏差を示す。
【図3A】図3Aは、ARタンパク質のレベルの低下が、PCa細胞に対する選択したAR阻害剤ヒットの毒性に関連することを示すデータを示す。図1Aは、10mMの表記のヒットで36時間処理したCWR22R細胞のライセートのウエスタンブロッティングの写真である。AR抗体により、これらの細胞に自然に存在するARの全長およびDLBD型が明らかになる。GAPDH抗体をタンパク質ローディングのコントロールに用いた。
【図3B】図3Bは、ARタンパク質のレベルの低下が、PCa細胞に対する選択したAR阻害剤ヒットの毒性に関連することを示すデータを示す。図3Bは、c52の存在下で選択したクローン(c52R)が、親CWR22R細胞と異なり、c52の作用に抵抗性があることを示すデータをグラフ化したものである。CWR22Rのc52RクローンのARタンパク質発現は、c52処理により低下しなかった。c52処理(10μMで36時間)をしてまたはせずに、親およびc52抵抗性CWR22R細胞のウエスタンブロッティングを行った。
【図3C】図3Cは、ARタンパク質のレベルの低下が、PCa細胞に対する選択したAR阻害剤ヒットの毒性に関連することを示すデータを示す。図3Cは、化合物の添加から4日後のメチレンブルー染色により細胞生存能を解析したデータをグラフ化したものを示す。エラーバーは、3回の実験の標準偏差を示す。
【図3D】図3Dは、ARタンパク質のレベルの低下が、PCa細胞に対する選択したAR阻害剤ヒットの毒性に関連することを示すデータを示す。図3Dは、蛍光活性化細胞分類法を用いて、細胞のDNA内容物(content)のヨウ化プロピジウム染色により測定したCWR22R細胞の細胞周期分布に対する選択した化合物の作用を示すデータをグラフ化したものである。アッセイは、2回行った。エラーバーは、2回の測定値の偏差を示す。
【図4A】図4Aは、AR発現PCa細胞のAR依存性の転写に対する、ARを標的とする2種類のshRNA(shAR5およびshAR6)と、ARミュータントHD1−KRAB−AR122との作用を比較したデータを示す。図4は、pARE−Lucコンストラクトと、x軸に示した様々な量のshRNAコンストラクトまたはARミュータントHD1−KRAB−AR122コンストラクトとをコトランスフェクトしたCWR22R細胞に実施したレポーターアッセイ(assasy)から得られたデータをグラフ化したものを示す。トランスフェクション混合物の総DNA量は、ベクターDNAを加えて同量に維持した。トランスフェクション効率は、pCMV−b−galコンストラクトのコトランスフェクションにより補正した。アッセイは、2回ずつ行った。
【図4B】図4Bは、AR発現PCa細胞のAR依存性の生存に対する、ARを標的とする2種類のshRNA(shAR5およびshAR6)と、ARミュータントHD1−KRAB−AR122との作用を比較したデータを示す。図4Bは、表記のコンストラクトをトランスフェクトし、ピューロマイシン耐性で選択したCWR22R細胞のコロニー形成アッセイ得られたデータをグラフ化したものを示す。アッセイは、2回ずつ行った。エラーバーは、反復実験の結果の偏差である。
【図5A】図5Aは、ステロイド受容体の活性に対するAR阻害剤の作用を示すデータである。図5Aは、CWR22R細胞のARE−Lucレポーター活性が、様々なステロイド(DHT−ジヒドロテストステロン、Dex−デキサメタゾン、Ald−アルドステロン)により誘導され得るものの、AR発現に依存することを示すデータをグラフ化したものを示す。ARまたはGAPDH(対照)を標的とするsiRNAを、SFM中でCWR22R−ARE−Luc細胞にトランスフェクトした。表記の濃度のステロイドをトランスフェクト細胞に加え、24時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。
【図5B】図5Bは、ステロイド受容体の活性に対するAR阻害剤の作用を示すデータである。図4Bは、DHT、DexまたはAldにより誘導された、MDA−MB−453−MMTV−Luc細胞のルシフェラーゼ活性に対するヒット化合物の作用を示すデータをDMSO対照に対する比率として示してグラフ化したものを示す。X軸は、ヒットの濃度をμM単位で示す。エラーバーは、反復実験の標準偏差を示す。
【図6A】図6Aは、アンドロゲン非依存性PCaのマウスモデルにおける、選択したヒットの抗腫瘍活性を示すデータである。図6Aは、記載した化合物またはDMSOビヒクルを、皮下に(s.c.)C4−2腫瘍を持つヌードマウスにi.p.注射して得られたデータをグラフ化したものを示す。腫瘍の大きさが約100mm3になってから6回の連日注射を行った。各群4〜5匹のマウスとし、各マウスには2つの腫瘍があった。ANOVA検定により対照群との間に統計的有意差がある(>99%)、c6群およびc11群の測定の平均値の下にそれぞれアスタリスク(*)および番号記号(#)を付してある。エラーバーは、所定の処置群内の腫瘍の大きさの標準偏差を示す。
【図6B】図6Bは、アンドロゲン非依存性PCaのマウスモデルにおける、選択したヒットの抗腫瘍活性を示すデータである。図6Bでは、腫瘍の大きさが約40mm3になってから、s.c.CWR22R腫瘍を持つヌードマウスの尾静脈に、C52(9mg/kgもしくは18mg/kg)またはDMSOビヒクルを注射した。5回の連日注射を行った。各群10匹のマウスとし、各マウスには1つの腫瘍があった。ANOVA検定により対照群との間に統計的有意差がある(>99%)測定の平均値の下にアスタリスク(*)を付してある。エラーバーは、所定の処置群内の腫瘍の大きさの標準偏差を示す。
【図7】図7は、クラス1化合物の構造を示す。
【図8】図8は、クラス3化合物の構造を示す。
【図9】図9は、クラス6化合物の構造を示す/
【図10】図10は、クラス54化合物の構造を示す。
【図11】図11は、クラスXX化合物の構造を示す。
【図12】図12は、様々な濃度の化合物c52、c70およびc85により別々の乳癌細胞および前立腺癌細胞に引き起こされる細胞死を解析することによって得られたデータをグラフ化したものを示す。9AAは9−アミノアグリジンであり、陽性対照として使用する。さらに、AR(AR)の発現に対する化合物の作用を示すウエスタンブロット(WB:Western blot)も示す。
【図13】図13は、様々な濃度の化合物c52、c70およびc85の存在下で別々の乳癌細胞および前立腺癌細胞の細胞生存を解析することにより得られたデータをグラフ化したものを示す。
【図14】図14は、様々な濃度の化合物c52、c70およびc85の存在下で別々の乳癌細胞および前立腺癌細胞の細胞細胞生存を解析することにより得られたデータをグラフ化したものを示す。さらに、ARタンパク質の発現に対する化合物の作用を示すウエスタンブロット)も示す。
【図15】図15は、様々な濃度の化合物c52、c70およびc85の存在下での乳癌細胞および前立腺癌細胞の細胞細胞生存を解析することにより得られたデータをグラフ化したものを示す。
【図16】図16は、様々な濃度の化合物c52、c70およびc85により引き起こされる乳癌細胞および前立腺癌細胞の細胞死を解析することにより得られたデータをグラフ化したものを示す。
【図17】図17は、様々な濃度の化合物c52、c70およびc85の存在下でのAR陰性乳癌および子宮頸癌の細胞細胞生存を解析することにより得られたデータをグラフ化したものを示す。
【図18】図18は、CWR22R、LNCaP、C4−2(AR陽性前立腺癌AR)、PC3、DU145、PPC1(AR陰性前立腺癌)、MDA−MB−231(AR陰性乳癌)、ACHN、SK−RC45(AR陰性腎細胞癌)、MRC5(正常2倍体線維芽細胞)およびNKE−hTERT(正常腎上皮線維芽細胞)など複数の細胞株の生存に対する種々の濃度のc5、c85、c6およびc52の作用を解析することにより得られたデータをグラフ化したものを示す
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、個体におけるAR陽性癌細胞の成長を阻害する方法を提供する。この方法は、AR陽性癌と診断されたまたはその疑いがある個体に、AR陽性癌細胞の成長を阻害するか、またはAR陽性癌細胞を殺すことができる化合物を含む組成物を投与することを含む。本発明に使用するのに好適な化合物の一般構造を図7、図8、図9、図10、図11に示す。本明細書では、図7に示した構造をクラス1ということもある。本明細書では、図8に示した構造をクラス3ということもある。本明細書では、図9に示した構造をクラス6ということもある。図10に示した構造をクラス54ということもある。本明細書では、図11に示した構造をクラスXXということもある。
【0015】
図7、図8、図9、図10、図11に示した化合物の特定の例は、それぞれc5、c6、c11、c52およびc85という。c5、c6、c11、c52およびc85は、Chembridge Chemical Corporation(San Diego、CA)から購入したDiverSet化学ライブラリーに存在する34,000の化合物から本発明の方法に使用するのに好適であると確認された。各化合物は、一般に入手可能なChembridge識別(ID)番号と関連付けてあるため、各構造は、それに従って評価することができる。
【0016】
当業者であれば、図7〜11に示した各構造は、Rの位置に存在し得る別の基によって相互に異なる複数の化合物を含むことを認識するであろう。たとえば、図7に示す化合物のクラスの場合、R5、R6およびR7は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、アリール部分が5または6個の炭素を含み、アルキル部分が1〜4個の炭素を含むアリールアルキル基(メチルベンゼン基など)、アルキル部分が1〜4個の炭素を含むアルキルケトン基(アセテート基など)、ハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージド)、またはヒドロキシル基である。R3は、水素またはヒドロキシル基である。R8、R9およびR10は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、ハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)、またはニトロ基である。X1は、酸素原子または硫黄原子である。
【0017】
図8に示した化合物のクラスでは、R12、R13およびR14は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、アルキル部分が1〜6個の炭素を含むアルキルエーテル基(メチルエーテル基またはエチルエーテル基など)、ハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)、アミノ基、ヒドロキシル基、またはニトロ基である。X2は、酸素原子または硫黄原子である。
【0018】
図9に示した化合物のクラスでは、R17およびR18は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはアルキル部分が1〜4個の炭素を含むアルキルエーテル基(メチルエーテルまたはエチルエーテルなど)である。R19およびR20は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)である。
【0019】
図10に示した化合物のクラスでは、R21(R25)は、水素、または任意に1つもしくは複数のヒドロキシル基またはシアノで置換されていてもよい1〜6個の炭素を含むアルキル基である。R22、R23およびR24(R26、R27およびR29)は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、アルキル部分が1〜4個の炭素を含み、かつ任意に1つもしくは複数のハライドで置換されていてもよいアルキルケトン基(アセテート基またはトリフルロアセテート基)、アルキル部分が1〜4個の炭素を含み、かつ任意に1つもしくは複数のハライドで置換されていてもよいアルコキシ基、ハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)、アルキル基が1〜4個の炭素を含むアルキルスルホンアミド(メチルスルホンアミドなど)、またはヒドロキシル基である。R30、R31およびR41は独立に、水素、または任意に1つもしくは複数のハライドで置換されていてもよい1〜6個の炭素を含むアルキル基である。R32は、任意に1つもしくは複数のハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)で置換されていてもよい1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはアミノ基である。R33およびR34は独立に、任意に1つもしくは複数のハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)で置換されていてもよい1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはアルキル部分が1〜4個の炭素を含むアルキルシクロヘキシル基(メチルシクロヘキシル基など)である。
【0020】
図11に示した化合物のクラスでは、R35は、水素、任意に1つもしくは複数のハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)で置換されていてもよい1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)である。R36およびR37は独立に、水素、または任意に1つもしくは複数のハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)で置換されていてもよい1〜6個の炭素を含むアルキル基である。R38およびR39は独立に、水素、任意に1つもしくは複数のハライド(フッ化物、クロリド、ブロミドおよびヨージドなど)で置換されていてもよい1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはヒドロキシル基である。R40は、水素またはヒドロキシル基である。本明細書に示した一部の構造には、位置によっては水素を示していない。当業者であれば、こうした構造は、そうした水素置換基を含むことが理解されよう。
【0021】
本開示内に包含される化合物の特定の例は、指定されたc5、c6、c8、c11、c16、c17、c18、c47、c52、c55、c61、c66およびc73(Chembrige ID番号6443213)である。個々の構造をChembridge ID番号と共に下記に示す。
【0022】
一実施形態では、本発明の方法は、AR陽性癌と診断されたまたはその疑いがある個体に、本明細書でc5、c6、c11、c52およびc85と呼ばれる化合物、ならびにこれらの組み合わせから選択される化合物を含む組成物を投与することを含む。
【0023】
一実施形態では、個体に投与される組成物は、c52を含む。
【0024】
本明細書に言及されるAR陽性癌細胞は、検出可能な量のARタンパク質を発現する癌細胞である。「アンドロゲン受容体」(およびその略語「AR」)は、当業者によく知られている用語であり、ヒトARタンパク質のすべてのアイソフォームおよび対立遺伝子変異体を含む、ヒト癌細胞に発現するARタンパク質という意味で使用される。
【0025】
一実施形態では、本発明の方法の実施により個体におけるその成長を阻害できるAR陽性癌細胞は、任意の種類の抗ヒトAR抗体により特異的に認識されるARを発現する細胞である。抗ヒトAR抗体は、市販されている。一実施形態では、本発明の方法の実施により個体におけるその成長を阻害できるAR陽性癌細胞は、BD PharMingen,San Diego,CAから、カタログ番号#554225で入手可能な抗ヒトAR抗体により特異的に認識され得るARを発現する細胞である。一実施形態では、ARタンパク質の検出可能な量は、ウエスタンブロットにより検出できるARタンパク質の量である。
【0026】
一実施形態では、AR陽性癌細胞は、参照によって本明細書に援用する、2009年9月1日エントリーのGenBankアクセッション番号P10275のアミノ酸配列を持つARを発現する細胞である。代替の実施形態では、AR陽性癌細胞は、2009年9月1日にGenBankアクセッション番号P10275で登録されたアミノ酸配列に対して70%以上99%以下(その間の整数をすべてを含む)相同であるアミノ酸配列を持つARを発現する細胞である。AR陽性細胞は、そうした配列のいずれを持つARを発現する癌細胞であってもよく、ARは、ウエスタンブロットにより検出可能である。
【0027】
AR陽性癌細胞は、どのような種類の癌細胞であってもよい。一実施形態では、癌細胞は、前立腺癌細胞である。前立腺癌細胞は、アンドロゲン依存性でも、またはアンドロゲン非依存性でもよい。
【0028】
別の実施形態では、AR陽性細胞は、乳癌細胞である。乳癌細胞は、どのような種類の乳癌細胞であってもよい。ただし、乳癌細胞は、AR陽性である。乳癌細胞は、ER−乳癌細胞でも、PR−乳癌細胞でも、Her2−乳癌細胞でも、またはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。
【0029】
別の実施形態では、AR陽性細胞は、肝細胞癌細胞、甲状腺の癌細胞、グリオブラストーマまたは星状細胞腫である。
【0030】
AR陽性癌細胞の成長の阻害は、部分的な阻害でも、または完全な阻害でもよい。個体由来のAR陽性癌細胞の一部または全部の根絶は、AR陽性癌細胞の成長の阻害の一種と見なされる。
【0031】
一実施形態では、本発明は、図7、図8、図9、図10、図11に示した構造を持つ化合物を含む有効量の組成物を細胞と接触させることにより、癌細胞の成長を阻害することを含む。
【0032】
本発明の一実施形態では、個体は、図7、図8、図9、図10、図11に示した化合物の群から選択される有効量の化合物を含む組成物を用いた処置の候補として確認することができる。個体は、個体由来の癌性組織の生物学的サンプルを採取し、癌性組織がARを発現しているか否かを判定することにより、こうした候補として確認することができる。癌性組織がARを発現していると判定することは、個体が処置の候補であることを示唆する。同様に、組織が検出可能な量のARを発現していないと判定することは、個体が処置の候補でないことを示唆する。癌性組織がARを発現しているかどうかの判定は、免疫学的な技術など任意の好適な手法を用いて行うことができる。一実施形態では、本発明は、個体から採取した生物学的サンプル中のARをAR−抗体複合体に変換すること、および免疫診断の装置を用いてAR−抗体複合体を検出することを含む。
【0033】
種々の実施形態では、本発明は、癌性組織がARを発現しているか否かの判定を有形媒体に固定すること、および/または個体の推奨処置を有形媒体に固定することをさらに含む。有形媒体は、以下に限定されるものではないが、コンピューター、DVD、CD−ROMまたは電子メールメッセージに保存できるデジタルファイルのような任意の種類のデジタル媒体など、どのような種類の有形媒体であってもよい。有形媒体は、処置プロトコルを開発し、それにより本発明の方法の実施を含む、個体の処置法を開発するため、医療提供者に提供してもよい。
【0034】
本発明の方法を実施するための化合物を含む組成物は、任意の好適な薬学的に許容されるキャリア、賦形剤および/または安定剤と混合することにより調製することができる。化合物との混合に好適な組成物の一部の例は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2005)21st Edition,Philadelphia,PA.Lippincott Williams & Wilkinsで確認することができる。
【0035】
本明細書に記載の化合物を含む組成物は、経口注射、非経口注射、皮下注射、腹腔内注射、肺内注射、鼻腔内注射および頭蓋内注射など任意の利用可能な方法および経路を用いて個体に投与してもよい。非経口注入としては、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与および皮下投与がある。
【0036】
本発明の方法は、以下に限定されるものではないが、化学療法、外科的介入および放射線療法など従来の抗癌療法の前に実施しても、同時に実施しても、または後に実施してもよい。
【0037】
当業者であれば、本発明の方法に利用される特定の投与レジメンの形態および特徴は、投与経路、および他のよく知られた可変要素、個体の性別および大きさ、ならびに処置対象の特定の癌の種類および段階によって決まることを認識するであろう。こうした判断基準に基づき、当業者は、個体に投与する組成物の有効量を判定することができる。
【0038】
我々は、本発明に到達した際に、AR−リガンド相互作用とは異なるARの機能面を標的とするAR阻害剤を同定した。我々は、これを、リガンド非依存性PCa細胞株におけるAR依存性の転写の特定の阻害剤を最初に同定することにより達成した。我々は、AR発現PCa細胞株に対して特異的な毒性を示す化合物を選択した。特に、AR依存性の転写の阻害剤がすべてアンドロゲン非依存性PCa細胞株に毒性があるとは限らなかったことから、ARの転写機能が、PCaの細胞生存を単独では制御しないことが示唆される。我々は、マウスのPCaの異種移植モデルを用いてインビボでの抗腫瘍活性に最も優れたAR阻害剤を試験し、最も効果的な化合物によりAR阻害の分子機構を解析した。これが、細胞からのARタンパク質の除去が、細胞生存に対して、ARのトランス活性化機能の抑制と異なる影響を与えるという発見につながった。このことは、ARが、本明細書に示したデータにより明らかなように、転写非依存性メカニズムを介して前立腺細胞生存、さらにおそらく乳癌細胞など他の種類のAR陽性癌細胞も制御することを示唆する。これは、重要、かつまだ認識されていない抗癌アプローチと考えられる。
【0039】
以下の実施例は、本発明の説明を意図するものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0040】
実施例1
本実施例は、本明細書に示した結果を得るために使用した材料および方法については説明する。
【0041】
細胞株:LNCaP細胞、DU145細胞、MDA−MB−453−MMTV−Luc細胞、HeLa細胞、ACHN細胞、MRC5細胞およびHT1080細胞をATCCから取得した。RCC45および正常腎上皮細胞(NKE:normal kidney epithelial cell)については、Gurova,et al.2004.Cancer Res 64:1951−1958)に記載された。pBabe−puroベクターを用いたヒトテロメラーゼサブユニットの形質導入により、不死化NKE−hTERT細胞を得た。CWR22R細胞およびC4−2細胞は、Dr.Warren Heston(Department of Cancer Biology,Cleveland Clinic)から提供された。pARE−LucレポーターコンストラクトおよびCWR22R−ARE−Lucレポーター細胞については、既に記載された(Tararova,N.et al.2007.Prostate 67:1801−1815)。ARが結合するコンセンサスDNAエレメントは他のいくつかのステロイド受容体によっても認識されるが、pARE−Lucレポーターは、最もAR特異的プロモーター領域の1つとして知られるプロバシンプロモーターの領域を利用するものである(Tararova,N.et al.2007.Prostate 67:1801−18154)。
【0042】
前立腺細胞株およびMDA−MB−453−MMTV−Lucはすべて、10%FBS、1mMのピルビン酸ナトリウム、10mMのHEPES緩衝液、55nMのβ−メルカプトエタノールおよび抗生物質を補充したRPMI 1640培地で培養した。HeLaおよびHT1080細胞は、10%FBSおよび抗生物質を含むDMEM培地で維持した。ステロイドを含まない培地(SFM)の作製には、フェノールレッドを含まない培地およびチャコール処理血清(CSS:charcoal−stripped serum)を使用した。CSSは、Biosource(Rockville,MD)から購入した。
【0043】
プラスミド:pTZV−wtARおよびpTZV−ARΔLBDレンチウイルス発現コンストラクトを、野生型全長(1〜919aa)AR、またはヒトARの最初の639aaに対応するARフラグメントをpTZV−CMVベクターにサブクローニングすることにより得た(Tararova,N.et al.2007.Prostate 67:1801−1815)。ヒトARに対するshRNAの発現を誘導するpLPCPw−shARレンチウイルスベクターについては、記載されているように作製した(Tararova,N.et al.2007.Prostate 67:1801−18154)。ヒトARの非翻訳領域に対応するshRNA配列(equence)は、TGATCCTCATATGGCCCAGであった。pHD1−KRAB−AR122は、Dr.G.Jenster(Department of Urology,Josephine Nefkens Institute,Erasmus MC,Rotterdam,Netherlands))から入手したものであり、既に記載された(23)。pLV−CMV−Lucベクターは、Dr.Peter Chumakov(Department of Molecular Genetics,Cleveland Clinic)から好意により提供された。
【0044】
レンチウイルスの形質導入およびsiRNAのトランスフェクションを、以前記載されたとおり、従来の技術を用いて行った(Gurova,et al. 2004.Cancer Res 64:1951−1958)。
【0045】
化学物質:34,000のDiverSet化学ライブラリー(分子量約500Daの多環低分子からなる)は、Chembridge Chemical Corporation(San Diego,CA)から購入した。DHTは、Cleveland Clinic Pharmacy Department(Cleveland,OH)から入手した。アルドステロン、デキサメタゾン、BSA、RNase Aおよびヨウ化プロピジウムは、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。カソデックス(ビカルタミド)は、TRC(Toronto、Canada)から購入した。
【0046】
化学物質の一次スクリーニング:DiverSetライブラリーの化学物質を、最終濃度20μMで96ウェルプレート中のCW22R−ARE−Luc細胞の単層に塗布した。翌日、ルシフェラーゼ活性を、BrightGlo Luciferase Assay System(Promega,Madison,WI)を用いて読み取り、化学物質処理した細胞内のレポーター活性のパーセンタイルを計算した(DMSOで処理した細胞を100%と見なして比較)。このパラメーターが50%以下であった化合物を一次ヒットとした。ヒットのリストを、p53、NF−κbまたはE−boxの結合エレメントを含むプロモーターにより誘導されるレポーターの阻害剤と、HeLa細胞、メラノーマ細胞および神経芽細胞腫細胞に対して毒性がある化合物とを含む、同じライブラリーの他のスクリーニングから得られたものと比較した。これらの他のリストのいずれかにも存在したAR阻害ヒットは、その後の検討から除外した。転写/翻訳またはルシフェラーゼ活性の非特異的阻害については、HT1080細胞を用いてCMV−lucレポーターにより試験し、この系で活性なヒット化合物をその後の検討から除外した。
【0047】
レポーター活性の用量依存性の阻害:CWR22R細胞を、96ウェルプレート中、1ウェル当たり5×104個蒔いた。化合物を、1〜20000nMの用量範囲で2倍ずつ増やしながら加えた。各用量について、2回ずつ試験した。対照は、0.1%DMSOおよび15μg/mlのアクチノマイシンDであった。ルシフェラーゼ活性を、Bright Gloアッセイ(Promega,Madison,WI)を用いて、化合物の添加から24時間後に測定した。アッセイは、2回実施し、DMSOと比較してレポーター活性を50%阻害する化合物の有効濃度(EC50)を、CalcuSynソフトウェア(Biosoft,Chembridge,UK)を用いてシグモイド近似法により計算した。シグモイドごとに信頼区間を計算した。
【0048】
細胞コロニーアッセイ:細胞を、コンフルエント前の指数関数的増殖まで6〜7日を要する密度で24ウェルプレートに蒔いた。培地および化合物を48時間ごとに交換し、起こり得る化合物の不安定性作用を最小限に抑えた。化合物の存在下でのインキュベーションから7日後、細胞を固定し、メチレンブルーで染色し、続いて1%SDSで染色物を抽出し、650nmで分光光度法を実施した。各アッセイは、3回ずつ実施し、対照ウェルと化合物処理ウェルとの差をスチューデントのt検定を用いて判定した。
【0049】
細胞成長の用量依存性の阻害:細胞を、96ウェルプレート中、1ウェル当たり1×103個蒔いた。化合物を、1〜20000nMの用量範囲で2倍ずつ増やしながら加えた。各用量について、3回ずつ試験した。対照は、0.1%DMSO(細胞生存能に対する影響なし)、および50μMの9−アミノアクリジン(完全な細胞死)であった。細胞を6日間インキュベートし、次いで固定し、メチレンブルーで染色し、続いて1%SDSで染色物を抽出し、650nmで分光光度法を実施した。アッセイは、2回実施し、結果に基づき、DMSOと比較して細胞成長を50%抑制する化合物の阻害濃度(IC50)を、CalcuSynソフトウェア(Biosoft,Chembridge,UK)を用いてシグモイド近似法により計算した。シグモイドごとに信頼区間を計算した。
【0050】
CWR22R細胞の化合物抵抗性変異体の選択を、107個の細胞を10×IC50の化合物の存在下で3日間インキュベートして行った。次いで細胞を、プレコンフルエントレベルになるまで薬剤を含まない培地で維持した。この手順を、化合物の存在下で死細胞が観察されなくなるまで数回繰り返した。
【0051】
コンディション培地におけるPSAタンパク質のレベルを、細胞を10μMの被検化合物と、あるいはそれなしで72時間インキュベートしてから、Antigenix America(Huntington,NY)製の「Human PSA ELISA Kit」を用いて判定した。
【0052】
ウエスタンブロット解析。細胞を、Cell Culture Lysis Reagent(Promega,Madison,WI)に溶解した。総タンパク質濃度を、Dc Protein Assay(BioRad,Hercules,CA)を用いて測定した。ウエスタンブロッティングについては、4〜12%SDSプレキャストNovexゲル(Invitrogen)およびPVDF膜(Pharmacia BioTech)を用いて行った。以下の抗体を使用した:ARに対する抗体(BD PharMingen,San Diego,CA;#554225、1μg/ml);ローディングコントロールとしてのGAPDHに対する抗体(Santa Cruz Biotechnology Inc,Santa Cruz,CA)。
【0053】
細胞周期分布の解析を、ヨウ化プロピジウムによるDNA内容物(content)の染色に基づき行った。トリプシンを用いて105個の細胞を培養皿から剥がし、PBSで洗浄し、3%BSAのPBS溶液300μlに再懸濁し、続いて70%エタノール5μlを加えた。細胞を−20℃で数時間維持し、次いで30μg/mlのRNase Aの存在下で10μg/mlのヨウ化プロピジウムで2時間37℃にて染色した。DNA内容物(content)については、FACS Calibur機器およびCellQuestソフトウェア(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)を用いて評価した。
【0054】
マウスを用いた化合物安全性の試験を、IACUC承認のプロトコルに従い行った。実験は、Harlan(Indianapolis,IN)製の8週齢の非近交系NIH Swiss雄マウスを用いて、各群4匹のマウスで実施した。マウス体重に基づくインビボ用量の計算には、IC50濃度を使用した(1gのマウス組織は約1mlの量を含むという仮定に基づき、mg/kgに相当するIC50のインビボ用量=mg/mlのIC50×1000)。化合物は、25%DMSO−75%PBSを用いて、化合物のインビトロでの細胞致死量に相当する20×IC50から腹腔内に(i.p.)注射した。その後マウスを3日間観察してから、50×IC50(用量2)および100×IC50(用量3)の2回の各注射を行った。マウスの対照群には、25%DMSO−75%PBSを3日間の間隔をおいて3回注射した。BioReliance(Rockville,MD)を用いて血液生化学的解析を行った。
【0055】
マウスを用いた化合物の抗腫瘍作用の試験を、Harlan(Indianapolis,IN)製の8週齢の雄無胸腺ヌードマウスを用いて、IACUC承認のプロトコルに従い行った。C4−2異種移植モデルでは、106個のC4−2細胞を、50%マトリゲル(BD Biosciences,Bradford,MA)のPBS溶液を用いて各マウスの2部位に皮下(s.c.)注射した。目視可能な腫瘍が発生したら、デジタルカリパスを用いて測定した。腫瘍容積を、式:容積=長さ×幅2/2に従い計算した。各マウスで少なくとも1つの腫瘍の大きさが100mm3になったら、マウスに化合物を6日間毎日i.p.注射した。各群5匹のマウスを使用した。CWR22R異種移植モデルでは、CWR22R細胞を、50%マトリゲルを用いてマウス1匹当たり1部位に接種した(1接種当たり105個の細胞)。腫瘍が少なくとも25mm3の大きさになったとき、処置を開始した。化合物をキャプティソル(captisol)(CyDex,Lenexa,KS)で希釈し、1日1回5日間静脈内に(肝「初回通過」効果の抑制のため)送達した。各群10匹のマウスを使用した。マウスを毎日モニターし、腫瘍を1日おきに測定した。腫瘍の大きさが1000mm3に達したとき、委員会の規制に従いマウスを安楽死させた。ANOVA試験を用いて対照マウスと処置マウスとの腫瘍成長の比較を行った。
【0056】
実施例2
本実施例は、本発明の方法に使用するのに好適である化合物の同定について説明する。
【0057】
我々は、ARの阻害剤を同定するため低分子のライブラリーをスクリーニングした。我々は、以下のいくつかの理由から細胞ベースの読み出し(cell−based readout)アプローチを選択した。(i)我々は、標的の可能性を単にARタンパク質自体から、インビトロでの生化学的分析では不可能であるARシグナル伝達経路全体へと広げることを目指していた。(ii)ARのどの機能/ドメイン/結合部位が細胞生存の制御に関与しているか不明である。(iii)全長ARの結晶構造がまだ解明されていない。後者2つの現状から、合理的設計アプローチは、不可能である。
【0058】
AR−リガンド相互作用と異なるメカニズムを介した新しい種類のAR阻害剤を同定する可能性を高めるため、我々は、いくつかの入手可能な培養細胞株から最もアンドロゲン非依存性の細胞CWR22Rを選択して、ライブラリーのスクリーニングに使用した。この細胞の増殖は、アンドロゲンの非存在により影響を受けず、アンドロゲン除去に伴うAR転写活性の低下が最小限になる(他のPCa細胞株と比較して)。この細胞株のもう1つの重要な特徴は、LBDを欠損したARの切断型ミュータントを発現することである(ARΔLBD Cancer Res 62:6606−6614)。CWR22R細胞内に存在する50%を超えるARタンパク質がARΔLBD型であるのに対し、残りは、LBD突然変異を含む全長のARタンパク質である。AR活性の大部分が、LBDを欠損したミュータントに起因する細胞を使用すると、AR−リガンド相互作用の阻害以外のメカニズムを介して作用する低分子阻害剤を単離する可能性が高まる。ARΔLBDがリガンド非依存性のAR機能を持ち、阻害剤の同定に好適な標的であることを証明するため、我々は、ARΔLBDのみが存在するCWR22R細胞を実験的に作製した。CWR22R細胞に、内因性のAR転写物の非翻訳領域を標的とするshRNA、およびARΔLBDの異所性発現を誘導する発現コンストラクトを同時形質導入した(図1)。こうした細胞では、ARΔLBDミュータントが転写因子として恒常的に活性であり、任意のリガンドの非存在下(すなわち、チャコール処理血清を用いて作製した、ステロイドを含まない培地(SFM)中、図1Aおよび図1B)でも核に局在する。我々はさらに、全ARタンパク質の除去が、CWR22R細胞に対して毒性があるのに対し、異所性に発現したARΔLBDは、全長ARの非存在下でCWR22R細胞の増殖を支持し得ることも明らかにした(図1C〜図E)。これらの結果は、ARΔLBDミュータント型のARが、全長タンパク質と同じ転写および細胞生存に導く活性を持ってはいるものの、リガンドを必要としないことを示唆する。
【0059】
我々は、ARの活性に対するライブラリーの化学物質の作用をモニターするため、AR依存性ルシフェラーゼレポーターコンストラクト(pARE−Luc)をCWR22R細胞に導入し、レポーターを組み込んだ安定な細胞株を作製した。得られたCWR22R−ARE−Luc細胞に、34,000の低分子のライブラリーを20μMの濃度で塗布し、インキュベーションから24時間後、レポーター細胞のルシフェラーゼ活性を少なくとも2倍阻害した化合物を一次ヒットとして選択した。我々は、一次ヒットのリストから、(i)転写または翻訳の一般的または非特異的阻害剤、およびルシフェラーゼ酵素活性の阻害剤を回避するため、同じライブラリーを用いて試験した他のレポーター系(たとえば、CMV−GFP、E−box−ルシフェラーゼ)を阻害する化合物と、(ii)非特異的(ARシグナル伝達に明らかに無関係である)毒性がある化合物を回避するため、非PCa細胞(たとえば、HeLa細胞、メラノーマ細胞、RCC細胞)に対して毒性がある化合物とを除外した。選別したヒットについては、CWR22R−ARE−Luc細胞を用いたレポーター用量応答アッセイで確認し、EC50(レポーター活性を50%低下させる有効濃度)が<10μMであるものを、その後の解析のために選択した。
【0060】
我々は、内因性のAR標的遺伝子に対するヒットのAR阻害活性を確認するため、前立腺特異抗原(PSA:Prostate Specific Antigen)の発現に対する化合物の作用を評価した。このアッセイは、1つの特定の細胞型に対する特異的なヒットを除外するため、ライブラリーのスクリーニングに使用したのと異なるPCa細胞株(C4−2)で行った。C4−2細胞株は、去勢マウスにおける増殖能に基づき選択されたアンドロゲン感受性LNCaP細胞株から誘導したものであり、したがって、去勢抵抗性PCaのもう1つのモデルとなる。C4−2細胞は、LNCaP細胞と同じAR LBD突然変異を持っているが、ARコレギュレーターの発現が異なるため、DHTに対するARの感受性が数倍高くなっている。10μMの濃度で塗布したときに、C4−2細胞によるPSAの分泌を>60%阻害した化合物を選択し、その後10μMの化合物の存在下で24時間インキュベートしたCWR22R−ARE−Luc細胞のルシフェラーゼ活性を用いた解析を行い、0.1%DMSOとインキュベートした細胞のルシフェラーゼ活性に対する比率として解析した。shAR6の作用については、72時間で測定した。10μMの化合物の存在下で72時間インキュベートしたC4−2細胞の培地中のPSAレベルを、0.1%DMSOとインキュベートした細胞内のPSAレベルに対する比率として解析した。shAR6の作用を72時間で測定した。10μMの化合物の存在下で成長したコロニー数を、0.1%DMSOの存在下でのコロニー形成に対する比率として解析した。
【0061】
選択した化合物は、FBS中に自然に存在するステロイドの存在下で、あるいは、SFM中、最大10nMのジヒドロテストステロン(DHT)の存在下でどちらの細胞株(CWR22RおよびC4−2)のAR転写活性も阻害した。したがって、選択した化合物は、アンドロゲン非依存性PCaの少なくとも2つのモデルのAR転写活性の阻害剤である。
【0062】
実施例3
本実施例は、PCa細胞の成長に対する選択した化合物の作用について説明する。我々は、様々な由来の細胞に対する同定したAR阻害剤の毒性を試験するため、いくつかのPCa(LNCaP、C4−2、CWR22RおよびDU145)および2種の非PCa(HT1080およびHeLa)細胞株への各化合物(10μM)の単回投与を用いて、コロニー形成アッセイを行った(図2A)。1つの化合物(c66)を除き、選択した低分子は、非PCa細胞またはAR陰性PCa細胞(DU145)の成長に影響を与えなかった。試験した分子のほとんどすべてのほか、陽性対照ビカルタミド(診療所で現在使用されているAR阻害剤)が、ARを発現するアンドロゲン感受性LNCaP細胞の成長を、程度は異なるが抑制した(図2A)。一方、ビカルタミドは、C4−2細胞あるいはCWR22R細胞(AR発現、アンドロゲン非依存性細胞株)の成長を抑制しなかったのに対し、選択した分子には、抑制したものがあった。このため、我々は、3種のAR発現PCa細胞株に対して様々な程度の毒性を持つものの、非PCa細胞またはAR陰性細胞に対しては毒性がない、いくつかの化合物(c5、c6、c11、c17、c18、c52、c85)を同定した。しかしながら、化合物の中には(c8、c16、c47、c55、c61、c73)、LNCaP細胞の成長を抑制するが、CWR22R細胞またはC4−2細胞の成長を抑制しないという点でビカルタミドと同様の挙動を示すものもあった。これらの化合物は、CWR22R細胞またはC4−2細胞の成長を阻害した化合物と比較して、そうした細胞のAR転写活性の弱い阻害剤ではない。たとえば、化合物c55、c61およびc85は、ARE−Lucレポーター活性およびPSA分泌のEC50および最大阻害で判断すると、AR依存性の転写の阻害剤として同等である。しかしながら、c85は、アンドロゲン非依存性CWR22R細胞株およびC4−2細胞株の成長を阻害するのに対し、c55およびc61は、阻害しない。これらの知見は、AR依存性の転写活性の阻害がそれ自体で、アンドロゲン非依存性PCa細胞の成長を抑制するのに十分でないことを示す。
【0063】
ライブラリーのスクリーニングに使用したパラメーターである、CWR22R細胞におけるAR依存性レポーターの発現の阻害が、こうした細胞に対する化合物の毒性を必ずしも反映するものではないという我々の知見からは、以下の2つの考えられる理由を示唆する。すなわち、(i)ARは、転写非依存性メカニズムを介してアンドロゲン非依存性PCa細胞の生存を制御し、AR依存性の転写を阻害すると同定された化合物プールは、ARの転写非依存性の抗アポトーシス機能をも阻害すると仮定される一部の化合物を含む。または(ii)スクリーニングで同定されたAR阻害剤の毒性は、ARに依存するものではなく、AR転写活性について観察された阻害は、何か他のメカニズムを介して生じる、これらの化合物の毒性または他の作用を反映するものである。我々のスクリーニングで同定された毒性のある化合物は、その毒性において特異性を示す(ARを発現する試験した3種の標的PCa細胞株の3種に対して毒性があるのに対し、試験した3種の非標的細胞株の3種に対して毒性がない)ということは、この第2のシナリオと相反する。
【0064】
我々は、化合物のAR特異性をさらに解析するため、化合物により引き起こされるAR阻害とPCa細胞毒性との定量的パラメーターを比較した。化合物の添加から24時間後に測定した、CWR22R細胞のAR依存性ルシフェラーゼ活性を阻害するEC50を、化合物の添加から6日後のCWR22R細胞に対する毒性のIC50(生細胞を50%未満にする化合物の阻害濃度)と比較した(図2B)。重要な点として、24時間で毒性を示した化合物がなかった(データ示さず)。これは、siRNAの塗布から4〜6日後に明らかになる、ARを標的としたsiRNAの、こうした細胞に対する毒性作用の遅延性に類似している。図2Bは、AR依存性レポーターを阻害する24時間後のEC50が、毒性に関する6日後のIC50と同じ範囲内にあることを示す。このことは、AR依存性の転写の阻害が、毒性が起こる前に起こること、さらにPCa細胞に対して毒性があるこれらの化合物では、PCa細胞に対するARの阻害と毒性との間に相関性があることを示す。これらの結果を、一部のAR阻害剤に毒性がないことと考え合わせると、ARを不活化し得る異なる機序があることが示唆される。すなわち、(i)ARの転写活性のみの阻害は、アンドロゲン非依存性PCa細胞に対して毒性がない(アンドロゲン除去の作用に類似)、(ii)AR転写活性と、PCa細胞の生存を制御するARの他の何らかの転写非依存性機能との阻害は、アンドロゲン依存性および非依存性PCa細胞の両方に対して毒性がある。(iii)ARを介した転写に影響を与えずに細胞生存に導くと仮定される転写非依存性のAR機能のみの阻害は、すべてのPCa細胞に対して毒性があると予想されるけれども、こうした阻害剤は、これまで同定されなかった。我々の読み出し(readout)システムは、AR依存性トランス活性化のモニタリングに基づくものであり、我々のスクリーニングでは、仮定される第3の機序を介して作用する化合物は、単離されなかった。
【0065】
我々はさらに、より大きな群(n=10)の非標的細胞株(ARを発現しない非PCa細胞株およびPCa細胞)に対する、選択した化合物の作用について試験した。これらのデータの例を図2Cに示す。選択したヒットは、試験した全濃度で、標的細胞に対してのみ毒性があり、AR陰性細胞に対して無毒性であった。このため、毒性を示す選択したヒットは、ARを発現するPCa細胞に対してのみ毒性があり、したがって、これらの化合物の毒性は、ARに対するそれらの作用に関係している可能性が高いと、我々は強い確信を持って結論することができる。
【0066】
図2Cのデータはさらに、PCa細胞に対して毒性がある化合物を、その毒性の程度に基づき2つの分類に分けることができることを示す。すなわち、化合物c52およびc85は、7日目までに培養物中のほぼすべてのPCa細胞を殺す。これに対し、他の化合物は、未処理の対照細胞と比較して成長の抑制を引き起こしたものの、明らかな細胞死を引き起こさなかった(図2Cの化合物c5およびc6、化合物c11、c17、c18のデータは示していない)。この後者の場合、インキュベーションの時間または化合物の用量を増やしても、依然として細胞の完全な除去には至らなかった。これは、あるサブセットの化合物が、PCa細胞の増殖を抑制するものの、PCa細胞を殺さないことを示唆する。この可能性を試験するため、我々は、化合物の両分類で処理したCWR22R細胞の細胞周期分布を評価した。第1の種類の化合物(c52、c85)で処理すると、アポトーシス細胞の特徴であるsub−G1 DNA内容物(content)を含む細胞が出現する(図3D)。これに対し、第2の種類の代表的な化合物(c5、c6、c11)で細胞を処理すると、sub−G1 DNA内容物(content)を含む細胞は出現しなかったけれども、細胞周期停止を示唆する細胞周期分布の変化が生じた(細胞周期のG1期の細胞の比率の上昇、およびS期の細胞の比率の減少)。したがって、これらの細胞では、アンドロゲン非依存性PCa細胞のAR依存性の転写を阻害する様々なサブセットの化合物が、成長停止、あるいはアポトーシスのいずれかを引き起こす。化合物が成長停止を引き起こすか、それともアポトーシスを引き起こすかは、AR依存性の転写の阻害剤としての化合物の効力によって左右されない(すなわち、図2B)。
【0067】
実施例4
本実施例は、PCa細胞に対する化合物の毒性とARタンパク質のレベルに対するその作用との間の相関性について説明する。
【0068】
我々は、上述の結果に基づき、我々のスクリーニングで同定されたAR依存性転写の阻害剤の化合物を3つの分類に区別することができる。すなわち、(i)アンドロゲン感受性LNCaP細胞の成長を抑制するけれども、アンドロゲン非依存性のC4−2細胞またはCWR22R細胞の成長には作用しないビカルタミドに似た化合物(c8、c16、c47、c55、c61およびc73)、(ii)ARを発現するすべての(アンドロゲン依存性および非依存性の)PCa細胞の成長を抑制する化合物(c5、c6、c11、c17,およびc18)、および(iii)ARを発現するすべてのPCa細胞を殺す化合物(c52およびc85)である。第1の分類のAR阻害剤は、リガンド結合を標的とする(すなわち、アンドロゲン非依存性癌細胞に対して毒性がない)可能性があるため、本発明の方法に有用とは見なされない。残りの2つの分類は、アンドロゲン非依存性PCaおよび他のAR陽性癌を処置できる可能性がある新しい種類のAR阻害剤であると見られるため、考慮の対象になるものであった。このため、残りの2つの分類をARTIS(AR転写阻害剤−抑制性、化合物c5、c6、c11、c17、c18など)、およびARTIK(AR転写阻害剤−殺傷性、化合物c52およびc85など)と名付けた。
【0069】
ARTISおよびARTIK化合物がPCa細胞の成長に対して異なる作用を持つ理由を解明すること目的として、我々は、2つの分類の化合物で処理したCWR22R細胞内のARタンパク質のレベル、およびPCa細胞に対して毒性がない第1の分類のいくつかのヒットを比較した。この解析から、ARTIK(c52およびc85)により処理すると、ARタンパク質が細胞から完全に消失することが示された。これに対し、ARTIS化合物または無毒性のAR阻害剤による処理は、細胞内のARタンパク質のレベルに影響を与えなかった(図3A)。これは、ARが転写非依存性メカニズムを介してアンドロゲン非依存性PCa細胞の生存を制御することを裏付ける。様々な化合物の比較により、ARタンパク質の除去は、アンドロゲン依存性および非依存性細胞の死を引き起こす(さらに、AR依存性の転写で観察される阻害を説明すると考えられる)ことが示される。一方、ARタンパク質のレベルが低下しないAR依存性の転写の阻害は、アンドロゲン依存性PCa細胞、さらに場合によっては、アンドロゲン非依存性PCa細胞の成長を抑制するけれども、殺しはしない。1種のARTIK化合物の毒性作用におけるAR除去の決定的な重要性が、ARTIKの毒性に抵抗性を示すCWR22Rクローンのインビトロでの選択によって、明らかにされた(図3B、詳細については実施例1を参照)。c52の存在下で107個の細胞の成長後に単一クローンを得た。このクローンは、c52が常時存在する中で成長しても、ARの発現を維持していた(図3C)ことから、ARがc52の直接の標的である可能性があることが示唆される。化合物c85に抵抗性を示すクローンは、得られなかった。
【0070】
ARの転写非依存性機能がPCa細胞の生存を制御するかどうかの別の試験として、我々は、CWR22R細胞の生存に対する2つの遺伝子コンストラクトの作用を比較した。ARを標的とするshRNAはARTIK化合物と同様に、ARタンパク質の除去に至るAR発現の抑制を引き起こす)。一方、ARミュータント、HD1−KRAB−AR122の方は、ARのトランス活性化ドメインの一部(aa1〜122)がKRABおよびHDAC1のトランスリプレッションドメインで置換されたもので、内因性のARタンパク質のレベルに影響を与えないものの、ARE DNA配列に対する結合に際して内因性のARタンパク質との競合することにより、AR依存性の転写を完全に停止させる(Bramlett,et al.2001.Mol Cell Endocrinol 183:19−28)。これらの2つのコンストラクトについて、ARE−LucレポーターとのCWR22Rコトランスフェクションアッセイにより、一定の用量範囲におけるAR依存性の転写に対するその作用(図4A)を試験し、さらに、コロニー形成アッセイによりCWR22Rの生存に対するその作用を試験した(図4B)。どちらのコンストラクトも、CWR22R細胞のAR依存性のルシフェラーゼ発現をほぼ完全に抑制したが、同量のDNAのトランスフェクションの場合、HD1−KRAB−AR122ミュータントの方が、shRNAコンストラクトより若干強力であった。しかしながら、既に示したように、ARに対するshRNAは、CWR22Rコロニーの成長を抑制したのに対し、HD1−KRAB−AR122コンストラクトは、抑制しなかった。この状況は、我々の一連のAR阻害低分子で観察された状況によく似ており、ARが、これまでに特性が明らかにされていないトランス活性化非依存性機能を介してPCa細胞の生存を制御するという仮説をさらに裏付けるものである。
【0071】
実施例5
いくつかのステロイド受容体(SR)は、ARを含め、エストロゲン受容体(ER:estrogen receptor)、プロゲステロン受容体(PR)、糖質コルチコイド受容体(GR:glucocorticoid receptor)およびミネラルコルチコイド受容体(MR:mineralcorticoid receptor)など高度に相同的である。リガンド活性化型のこれらの受容体はすべて、同じDNA配列エレメントを認識し,結合する。受容体リガンド相互作用の下流で作用するAR阻害化合物を単離する試み(我々のスクリーニングなど)は、理論的には、これらのSRのすべてを阻害できる分子の単離に至る可能性がある。ERまたはPRの阻害は、これらの受容体が男性の重要な機能を制御しないため、PCaの処置にとって重量な問題ではないと予想される。しかしながら、GRおよびMR系は、男性で機能的であり、交差反応性の(cross−reactive)AR阻害剤によりこれらを阻害すると、特に長期的投与を伴う場合に有害な副作用を引き起こす恐れがある。
【0072】
我々のAR阻害化合物のいずれかが、GRまたはMRをも阻害するかどうかを判定するため、我々は最初に、我々のスクリーニングに使用したCWR22RARE−Lucレポーター系がアンドロゲン以外のステロイドに反応するかどうかを試験した。これは、我々のライブラリーのスクリーニングが、GRおよびMRのリガンドを含み得るFBSの存在下で行われたため、実施すべき重要な実験であった。我々は、GRリガンド、デキサメタゾン(Dex)またはMRリガンド、アルドステロン(Ald)のどちらかを用いてSFM中でCWR22RARE−Luc細胞を処理し、選択したヒットの存在下または非存在下でルシフェラーゼ活性を測定した。DexおよびAldはどちらも、CWR22R細胞のARE−Lucレポーターの活性を誘導した。さらに、選択したAR阻害ヒットはすべて、この活性を抑制し、抑制の程度は、DHTが誘導するARE−Luc活性に対するそれらの作用と比例した(データ示さず)。
【0073】
CWR22R細胞は、ARΔLBDのみならず、そのリガンド特異性に影響を与え得るLBD突然変異を含む全長ARも発現する(図1)。DexおよびAldにより観察されたルシフェラーゼの誘導が、これらのリガンドによるARの活性化によるものであるかどうかを試験するため、我々は、AR特異的siRNAを用いて、CWR22R細胞のAR(LBDおよび全長の両方)の発現を遮断した。こうした細胞では、全3種のリガンド、DHT、DexおよびAldによるARE−Luc活性化は、対照siRNAをトランスフェクトした細胞と比較して抑制された。これは、CWR22R細胞に存在するLBD変異ARの交雑性(promiscuous nature)を説明する(図5A)。この実験は、選択したヒットがDHT以外のリガンドにより刺激された場合でも、ARを阻害することができることを明らかにした。一方で、このデータは、ヒットが他の細胞のGRおよび/またはMR活性に影響を与える可能性を完全には排除できない。
【0074】
我々は、我々のAR阻害ヒットが他のSRに影響を与えるかどうかをさらに明らかにするため、文献によりGR、MRおよびARを発現するとされるMDA−MB−453乳癌細胞を使用した(Zhou,Cet al.2008.DBr J Pharmacol 154:440−45029)。我々は、プロモーター領域に、3種のSRのすべてが認識するDNA結合エレメントを含むMMTV−Lucレポーターコンストラクトを、この細胞にトランスフェクトした。この系では、c66を除くヒット化合物のすべてが、DHTの刺激によるレポーター活性の特異的阻害剤であり、DexまたはAldの刺激によるMMTV−Lucに対しては作用がなかった(図5B)。したがって、我々は、選択したヒット分子の大部分が、高度に相同的なGRおよびMRに対してさえも活性を持たない特異的AR阻害剤であると結論する(表1)。
【0075】
実施例6
インビボ試験のため、前の全アッセイをベースにして、ARTIS分類とARTIK分類を代表する5つのヒット化合物(c6、c11、c17、c52およびc85)を選択した。化合物c5は、ミクロソーム安定性が非常に低いため(ラットのミクロソームとの1時間のインキュベーション後で<5%)、除外した。化合物の毒性は、用量漸増アッセイ(dose escalation assay)で評価した。このアッセイでは、NIH Swiss雄マウス(n=4)に、3日おきに、送達される各化合物を連続的に3回腹腔内(i.p.)注射した。第1の用量は、マウス体重に基づき再計算した、CWR22R細胞内の化合物のインビトロでのIC50の20倍(20×IC50)(実施例1を参照)、第2および第3の用量はそれぞれ、50×IC50および100×IC50であった。最後の注射の翌日に、肉眼的病理検査と、総タンパク質レベル、グルコースレベル、ビリルビンレベルおよびクレアチニンレベル、肝臓酵素の活性、ならびにイオン濃度を含む血清の生化学アッセイのための採血とのため、各群のマウスの半数を屠殺した。化合物の最後の注射から7日後に、残りのマウスも同様に屠殺し、評価した。生きたマウスの目視検査、あるいは肉眼的病理検査の際に、化合物を注射したどのマウスも、異常は観察されなかった。化合物の最後の注射の翌日に、ほとんどすべてのマウスで血清中のグルコース濃度の若干の低下(対照の70〜80%)が観察されたが、1週間後のグルコースレベルは、正常であった(データ示さず)。血清中のグルコースレベルが低いのは、選択した化合物の弱い一過性のGR阻害作用を反映したのかもしれない。しかしながら、全体的に見ると、この実験からは、マウスの場合、試験した用量の化合物が無毒性であり、したがってインビボでの有効性試験に好適であることが明らかにされた。
【0076】
我々は、ヌードマウスのアンドロゲン非依存性PCaのC4−2およびCWR22R異種移植モデルを用いて、ヒットに起こり得る抗腫瘍作用を評価した。C4−2腫瘍を持つマウス群(各群マウス4〜5匹、それぞれ2つの腫瘍を持つ)に、化合物(100×IC50用量)またはDMSOビヒクルを6回連日i.p.注射した。この処置レジメンでは、化合物c6およびc11は、C4−2腫瘍成長の明確な抑制を示したのに対し、c17、c52およびc85は、示さなかった(図6A)。
【0077】
ARTIK化合物c52およびc85も、CWR22Rモデルを用いて試験した。18mg/kg/dayの用量(200×IC50と同等)でc52を5回連日静脈内(i.v.)注射したところ、顕著な有害な副作用をまったく起こさずにCWR22Rの皮下腫瘍の成長を抑制した(図6B)。化合物c85は、腫瘍成長の確かな抑制を示さなかった。18mg/kg/dayのc52で処置した10匹のマウスのうち、2匹のマウスで腫瘍が完全に消失し、1匹のマウスで退縮し、5匹のマウスで大きくならなかった。これに対し、10匹の対照動物のうち9匹は、腫瘍が次第に成長し、1匹のマウスは、腫瘍がゆっくりと成長した。
【0078】
これらのインビボでの結果から、ARTIKとARTISとの代表的な化合物(化合物c6、c11およびc52)は一般に無毒性であるが、アンドロゲン非依存性PCaの腫瘍の成長を遮断し、したがって、PCaおよびAR陽性BCに対して候補治療薬として有力であることが示唆される。本開示の利点を踏まえると、薬理作用の最適化のための通常の実験法を用いれば、これらの化合物の抗腫瘍効果が大きく改善するだけでなく、上述の実験で腫瘍成長を抑制しなかった他のヒット化合物のインビボでの有効性も明らかになり得る可能性がある。
【0079】
実施例7
本実施例は、AR陽性およびAR陰性癌細胞、ならびに非癌性細胞に対する化合物の作用の解析を示す。特に、化合物を、AR陽性乳癌細胞、AR陰性乳癌細胞、AR陽性前立腺癌細胞、AR陰性腎細胞癌、AR陰性頸部細胞およびAR陽性肝細胞癌、ならびに正常肝実質細胞に対して試験した。本実施例に記載した実験は、本質的に実施例1に記載されているように実施した。その結果から、本発明の方法に使用するのに好適であると本明細書に記載された化合物がAR陽性癌細胞の成長の阻害には効果的であるものの、AR陰性癌細胞には効果的でないことが明らかにされる。結果は、図12〜図20にグラフでまとめてある。
【0080】
我々は、アンドロゲン非依存性(およびアンドロゲン依存性)PCaの処置に使用される新しい種類のAR阻害剤を同定するため、ARのLBDを欠損した形態(ARΔLBD)に対して低分子をスクリーニングしたことが、本発明の明細書本文および実施例から当業者には明らかであろう。他のARドメインを標的にすると、大部分の突然変異は、ドメイン機能(たとえば、トランス活性化、DNA結合、補助因子の相互作用)の喪失を引き起こすことが予想されるため、再発を起こす突然変異の選択につながる可能性が低くなる。
【0081】
いくつかの我々の知見は、ARΔLBDが完全にアンドロゲン非依存性であっても、なおPCa細胞生存能に不可欠なAR機能をすべて保持することを明らかにした。すなわち、i)ARΔLBDは、AR特異的プロバシンプロモーターからpARE−Lucレポーターの発現を活性化する(実施例1を参照)。ii)CWR22R細胞は、ARの非存在下で生存できない一方、ARΔLBDの発現は、この細胞の通常の増殖を支持するのに十分である。さらに、iii)SFM中のARΔLBDの活性は、アンドロゲンの存在下での野生型ARの活性と同等か、またはそれを上回る(レポーター活性のアッセイ、核局在化など)。これらのデータは、細胞生存に決定的に重要なARの機能に干渉し、ARの様々な変異体に対して広範な活性を持ち得る新しい種類の(リガンド結合に影響を与えない)AR阻害剤を同定するための標的としてARΔLBDを使用することの正当性を立証するものである。
【0082】
ARを標的とするのに我々が用いたアプローチは、異なる根拠に基づき、他の報告に記載されたものと異なる戦略を利用した。Attar et al.は、ARのLBDに結合したビカルタミドの結晶構造に基づき新しい非ステロイド性AR阻害剤の合理的なデザインを報告した(Salvati,et al.2005.Bioorg Med Chem Lett 15:271−276)。これらの新しい阻害剤は、ビカルタミドと比較してAR結合特性が向上しており、さらに、ビカルタミドがARの一部のミュータント型に対して活性であるのに対し、この新しい化合物は、アンドロゲン非依存性PCa細胞に対して毒性が強くなっている。しかしながら、このアプローチは、ARのLBDに対する治療法の変異形であり、したがってLBDの変異性によって限定される可能性がある。
【0083】
別のグループは、アンドロゲンの非存在下で成長が可能なアンドロゲン感受性LNCaP細胞を選択する際、最も多く見られる遺伝子変化がAR遺伝子の増幅であることを見出したNat Med 10:33−39)。著者らは、観察された増幅が、1細胞当たりのAR分子を増大させることによりリガンドの非存在下でのARの低活性を補うために選択されると仮定した。同じグループは最近、こうした細胞を用いてアンドロゲン非依存性PCaに対して活性を持つ低分子を選択したと報告した(Tran,et al.2009.Development of a second−generation antiandrogen for treatment of advanced prostate cancer.Science 324:787−790)。この分子、MDV3100が、去勢抵抗性PCa患者の第I相臨床試験でPSAレベルの低下に有効性を示した。しかしながら、ARに対するMDV3100の活性のメカニズムは、我々のアプローチにより単離されたAR阻害剤が使用すると我々が考えるものと異なる。MDV3100、およびそれに近いホモログRD162はどちらも、ARのLBDに高い親和性で結合するARの非競合的アンタゴニストである。MDV3100(およびRD162)の結合親和性は、アンタゴニストに対してこれまでに得られたアンドロゲンの結合親和性に最も近い。このため、これらの化合物は、アンドロゲンによるARの活性化を妨げるもので、ビカルタミドおよびフルタミドなど診療所で利用可能なARアンタゴニストよりも優れた効力を持つ。さらに、後者の分子は、MDV3100またはRD162が示さないパーシャルアゴニスト活性により妨げられる(Tran,et al.2009.Development of a second−generation antiandrogen for treatment of advanced prostate cancer.Science 324:787−790)。これらの新しい化合物に起こり得る問題は、化合物がLBDにも結合し、カソデックスと同様にLBDの突然変異の選択を誘導し得ることに起因するかもしれない。
【0084】
我々のスクリーニングの予想外の知見の1つは、AR転写活性の喪失が必ずしも、アンドロゲン非依存性PCa細胞の成長または生存の阻害につながらないことであった。我々がAR依存性の転写の阻害剤として同定した分子のほとんどすべては、LNCaP細胞の成長も阻害しており、それによりAR転写活性がリガンド依存性PCa細胞の成長に重要であることが確認された。しかしながら、アンドロゲン非依存性PCa細胞(C4−2およびCWR22R)の成長に対して作用を有する化合物は、一部のみであった。重要な点として、ARを発現するすべてのPCa細胞(アンドロゲン依存性および非依存性の両方)の成長を抑制した少数のヒット化合物が、アンドロゲン非依存性PCa細胞の成長に対して作用を示さない分子より、AR依存性の転写の阻害剤として必ずしも強力ではなかった。スクリーニング結果のかなりの割合のAR依存性転写の無毒性阻害剤と毒性阻害剤(死または成長停止を引き起こす)とは、AR依存性の転写の阻害が、少なくともアンドロゲン非依存性PCa細胞に対する毒性を必ずしも決定するものではないことを示唆する。これは、これまでに特徴付けられていない転写調節以外のARの別の機能が、PCa細胞の生存にとって重要であることを示唆する。これらの結果はさらに、この仮定された細胞生存に導く別の機能を除去せずに低分子を用いて特異的に、ARの転写調節機能を阻害し得ることも示唆する。
【0085】
アンドロゲン非依存性PCaに対する毒性を示すAR阻害ヒットのさらなる特徴付けから、ヒットを2つの分類、PCa細胞を殺すヒットとその増殖を抑制しかしないヒットとに明確に分けることができることが示される。さらに、ARタンパク質のレベルに対する化合物の作用は、化合物が誘導する毒性の種類と相関関係があった。すなわち、ARタンパク質の除去を引き起こす化合物は、アンドロゲン非依存性PCa細胞を殺したのに対し、ARレベルに対する作用を持たない化合物は、その成長を抑制するのみであった。このデータもやはり、PCa細胞の生存を制御し、ARタンパク質が細胞から除去されたときのみ完全に消失する、ARの転写非依存性機能の存在により説明することができる。
【0086】
前立腺癌の細胞死を誘導するには、ARのトランス活性化機能の阻害にとどまらず、ARタンパク質の除去を必要とするという考えは、野生型ARを発現する正常な前立腺上皮細胞と、LBDの突然変異を含み、ARを発現する前立腺腫瘍細胞とでは、去勢の作用が異なることにより裏付けられる。野生型ARは、アンドロゲンの非存在下では、特にその結合パートナーHSP90が限られている場合には、不安定である。このため、去勢を行うと、ARタンパク質の消失、および正常前立腺上皮細胞のアポトーシスが起こる。これに対し、ARのLBD突然変異はリガンド結合の特異性に影響を与えるだけでなく、アンドロゲンの非存在下でARの安定性を促進するため、去勢は、変異LBDを含む多くのPCa細胞を殺さずに、その増殖を抑制するのみである。
【0087】
PCa細胞の生存を制御するARの転写非依存性の役割の存在は、shRNAを介したARの除去が、PCa細胞によるコロニー形成を抑制するのに対し、トランス活性化欠損ドミナントネガティブ型HD1−KRAB−AR122ARミュータントの発現は、抑制しなかったという我々の知見によりさらに裏付けられる。このため、我々のデータから、ARが、前立腺細胞生存に影響を与える、以前に認識されていない転写非依存性機能を持つ可能性が裏付けられる
【0088】
我々の選択したAR阻害ヒットには、PCa細胞を効率的に殺すものもあれば、抗増殖作用が弱いものもあるが、どちらの分類の化合物も、マウスのPCaの腫瘍モデルに対して有効性を示すことは、注目に値する。どちらの分類の化合物にもインビボで抗腫瘍有効性があることは、以下のいくつかの点で説明することができる。すなわち、(i)化合物が、インビトロよりインビボで強力になる代謝変換をインビボで受ける。(ii)化合物が、インビトロでのPCa細胞生存には決定的に重要ではないけれども、インビボではより重要となる活性のメカニズムを持つ。および/または、(iii)一部の化合物の成長抑制作用は、インビボで腫瘍成長を停止させるのに十分である。
【0089】
我々が調査したマウスモデルでは、インビトロでアンドロゲン非依存性PCa細胞に対して毒性があったいくつかの化合物が、インビボでの腫瘍成長に対して顕著な作用をまったく有さなかった。これに対して考えられる2つの理由として、(i)これらの化合物は、薬理作用が最適化されていなかったものの、過度の実験を行うことなく本開示を応用したものになる可能性がある。および/または、(ii)これらの化合物の作用メカニズムは、インビボではインビトロほど重要でないことがある。化合物C52は、C4−2モデルを用いた我々の実験においてインビボで有効性を示さなかったものの、CWR22R腫瘍を用いた我々の実験では効果的であった。この相違は、後者の実験で、より高用量の化合物および異なる投与経路(i.v.とi.p.)を我々が使用したことによるかもしれない。静脈内注射は、i.p.注射で起こる肝初回通過を回避することにより、c52(ラットのミクロソームとの1時間のインキュベーション後に残る化合物は17%)など比較的不安定な化合物のバイオアベイラビリティーを著しく向上させることができる。このため、C4−2モデルにおけるc52の有効性の喪失は、当業者であれば本開示に基づき対処し得る、化合物の不十分な薬理学的特性による可能性がある。
【0090】
要約すると、我々は、インビトロおよびインビボで非常に特異的抗PCa特性を持ついくつかのAR阻害化合物を同定した。これらの化合物は、AR−リガンド相互作用を標的としないため、新しいクラスのAR阻害剤である。したがって、これらの化合物は、標準的な抗アンドロゲン療法に応じて発生するLBD突然変異に関係なく、AR陽性細胞に対して活性である可能性がある。このため、本開示で試験した個々の化合物が属する化学クラスも、AR陽性癌に対して有用であると予想される。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AR陽性癌と診断されたまたはその疑いがある個体におけるAR陽性癌細胞の成長を阻害する方法において、下記i)〜v)の構造を持つ化合物であり、
式中、R21またはR25は、水素、または任意に1つもしくは複数のヒドロキシル基またはシアノ基で置換されている1〜6個の炭素を含むアルキル基であり、
R22、R23およびR24、またはR26、R27もしくはR29は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、アルキル部分が1〜4個の炭素を含み、かつ任意に1つもしくは複数のハライドで置換されているアルキルケトン基、ハライド、アルキル基が1〜4個の炭素を含むアルキルスルホンアミド、ヒドロキシル基、アルキル部分が1〜4個の炭素を含むアルコキシ基、または以下の基であり、
式中、R31は、任意に1つもしくは複数のハライドで置換されている1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはアミノ基であり、
R32は、任意に1つもしくは複数のハライドで置換されている1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはアミノ基であり、
R33は、任意に1つもしくは複数のハライドで置換されている1〜6個の炭素を含むアルキル基、アミノ基、任意に1つもしくは複数のハライドで置換されている1〜4個の炭素を含むアルキルケトン基、またはアルキル部分が1〜4個の炭素を含むアルキルシクロヘキシル基であり、
式中、R35は、水素、任意に1つもしくは複数のハライドで置換されている1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはハライドであり、
R36およびR37は独立に、水素、または任意に1つもしくは複数のハライドで置換されている1〜6個の炭素を含むアルキル基であり、
R38およびR39は独立に、水素、または任意に1つもしくは複数のハライドで置換されている1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはヒドロキシル基であり、
R40は、水素またはヒドロキシル基であり、
式中、R5、R6およびR7は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、アリール部分が5または6個の炭素を含み、かつアルキル部分が1〜4個の炭素を含むアリールアルキル基、アルキル部分が1〜4個の炭素を含むアルキルケトン基、ハライド、またはヒドロキシル基であり、
R3は、水素またはヒドロキシル基であり、
R8、R9およびR10は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、ハライド、またはニトロ基であり、
X1は、酸素原子または硫黄原子であり、
式中、R12、R13およびR14は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、アルキル部分が1〜6個の炭素を含むアルキルエーテル基、ハライド、アミノ基、ヒドロキシル基、またはニトロ基であり、
X2は、酸素原子または硫黄原子であり、
式中、R17およびR18は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはアルキル部分が1〜4個の炭素を含むアルキルエーテル基であり、
R19およびR20は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはハライドである
化合物および
i)〜v)に記載された前記化合物の組み合わせ
の群から選択される化合物を含む組成物を前記個体に投与することを含み、
前記個体の前記アンドロゲン受容体陽性癌の成長が、前記個体への前記組成物の投与後に阻害されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記化合物が下記構造を持つことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記化合物が下記構造を持つことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記化合物が下記構造を持つことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記化合物が下記構造を持つことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記化合物が下記構造を持つことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記アンドロゲン受容体陽性癌細胞は、前立腺癌細胞、乳癌細胞、肝細胞癌細胞、甲状腺癌細胞、グリオブラストーマまたは星状細胞腫から選択されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記個体は、アンドロゲン受容体陽性前立腺癌と診断された、またはその疑いがあることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記アンドロゲン受容体陽性前立腺癌は、アンドロゲン非依存性前立腺癌であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記個体は、アンドロゲン受容体陽性乳癌と診断された、またはその疑いがあることを特徴とする方法。
【請求項11】
個体が、請求項1に記載の化合物を含む組成物を用いた処置の候補であるかどうかを確認することを特徴とする方法において、前記方法は、前記個体から生物学的サンプルを採取すること、および前記サンプルがアンドロゲン受容体陽性癌細胞を含んでいるかどうかを判定することを含み、前記生物学的サンプルがアンドロゲン受容体陽性癌細胞を含んでいると判定することは、前記個体が前記処置の候補であることを示唆し、前記生物学的サンプルがアンドロゲン受容体陽性癌細胞を含んでいないと判定することは、前記個体が前記処置の候補でないことを示唆することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記生物学的サンプルは、アンドロゲン受容体陽性前立腺癌細胞を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、前記生物学的サンプルは、アンドロゲン受容体陽性乳癌細胞を含むことを特徴とする方法。
【請求項1】
AR陽性癌と診断されたまたはその疑いがある個体におけるAR陽性癌細胞の成長を阻害する方法において、下記i)〜v)の構造を持つ化合物であり、
式中、R21またはR25は、水素、または任意に1つもしくは複数のヒドロキシル基またはシアノ基で置換されている1〜6個の炭素を含むアルキル基であり、
R22、R23およびR24、またはR26、R27もしくはR29は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、アルキル部分が1〜4個の炭素を含み、かつ任意に1つもしくは複数のハライドで置換されているアルキルケトン基、ハライド、アルキル基が1〜4個の炭素を含むアルキルスルホンアミド、ヒドロキシル基、アルキル部分が1〜4個の炭素を含むアルコキシ基、または以下の基であり、
式中、R31は、任意に1つもしくは複数のハライドで置換されている1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはアミノ基であり、
R32は、任意に1つもしくは複数のハライドで置換されている1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはアミノ基であり、
R33は、任意に1つもしくは複数のハライドで置換されている1〜6個の炭素を含むアルキル基、アミノ基、任意に1つもしくは複数のハライドで置換されている1〜4個の炭素を含むアルキルケトン基、またはアルキル部分が1〜4個の炭素を含むアルキルシクロヘキシル基であり、
式中、R35は、水素、任意に1つもしくは複数のハライドで置換されている1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはハライドであり、
R36およびR37は独立に、水素、または任意に1つもしくは複数のハライドで置換されている1〜6個の炭素を含むアルキル基であり、
R38およびR39は独立に、水素、または任意に1つもしくは複数のハライドで置換されている1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはヒドロキシル基であり、
R40は、水素またはヒドロキシル基であり、
式中、R5、R6およびR7は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、アリール部分が5または6個の炭素を含み、かつアルキル部分が1〜4個の炭素を含むアリールアルキル基、アルキル部分が1〜4個の炭素を含むアルキルケトン基、ハライド、またはヒドロキシル基であり、
R3は、水素またはヒドロキシル基であり、
R8、R9およびR10は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、ハライド、またはニトロ基であり、
X1は、酸素原子または硫黄原子であり、
式中、R12、R13およびR14は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、アルキル部分が1〜6個の炭素を含むアルキルエーテル基、ハライド、アミノ基、ヒドロキシル基、またはニトロ基であり、
X2は、酸素原子または硫黄原子であり、
式中、R17およびR18は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはアルキル部分が1〜4個の炭素を含むアルキルエーテル基であり、
R19およびR20は独立に、水素、1〜6個の炭素を含むアルキル基、またはハライドである
化合物および
i)〜v)に記載された前記化合物の組み合わせ
の群から選択される化合物を含む組成物を前記個体に投与することを含み、
前記個体の前記アンドロゲン受容体陽性癌の成長が、前記個体への前記組成物の投与後に阻害されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記化合物が下記構造を持つことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記化合物が下記構造を持つことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記化合物が下記構造を持つことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記化合物が下記構造を持つことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記化合物が下記構造を持つことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記アンドロゲン受容体陽性癌細胞は、前立腺癌細胞、乳癌細胞、肝細胞癌細胞、甲状腺癌細胞、グリオブラストーマまたは星状細胞腫から選択されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記個体は、アンドロゲン受容体陽性前立腺癌と診断された、またはその疑いがあることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記アンドロゲン受容体陽性前立腺癌は、アンドロゲン非依存性前立腺癌であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記個体は、アンドロゲン受容体陽性乳癌と診断された、またはその疑いがあることを特徴とする方法。
【請求項11】
個体が、請求項1に記載の化合物を含む組成物を用いた処置の候補であるかどうかを確認することを特徴とする方法において、前記方法は、前記個体から生物学的サンプルを採取すること、および前記サンプルがアンドロゲン受容体陽性癌細胞を含んでいるかどうかを判定することを含み、前記生物学的サンプルがアンドロゲン受容体陽性癌細胞を含んでいると判定することは、前記個体が前記処置の候補であることを示唆し、前記生物学的サンプルがアンドロゲン受容体陽性癌細胞を含んでいないと判定することは、前記個体が前記処置の候補でないことを示唆することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記生物学的サンプルは、アンドロゲン受容体陽性前立腺癌細胞を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、前記生物学的サンプルは、アンドロゲン受容体陽性乳癌細胞を含むことを特徴とする方法。
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2013−508417(P2013−508417A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535441(P2012−535441)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/053916
【国際公開番号】WO2011/050353
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(504206056)ヘルス リサーチ インコーポレイテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】HEALTH RESEARCH, INC.
【出願人】(512101257)パナセラ ラブズ,インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】PANACELA LABS,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/053916
【国際公開番号】WO2011/050353
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(504206056)ヘルス リサーチ インコーポレイテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】HEALTH RESEARCH, INC.
【出願人】(512101257)パナセラ ラブズ,インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】PANACELA LABS,INC.
【Fターム(参考)】
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