説明

アンドロゲン調節薬

本発明は、新しいクラスのベンゾニトリルおよびアンドロゲン受容体調節薬としてのそれらの使用を対象とする。本発明の他の態様は、過剰皮脂分泌を減少させ、発毛を刺激するためのこれらの化合物の使用を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しいクラスの4−シクロアルコキシベンゾニトリルおよびアンドロゲン受容体調節薬としてのそれらの使用を対象とする。本発明の他の態様は、皮脂分泌を減少させ、発毛を刺激するためのこれらの化合物の使用を対象とする。
【背景技術】
【0002】
脱毛症、すなわち禿げは、医学がいまだ緩和できていない共通の問題である。アンドロゲンは、禿げに関係しているが、この脱毛が起きる生理学的機構は不明である。しかしながら、発毛が、脱毛症に悩む一人一人で異なることは知られている。
【0003】
毛髪は、継続的には成長しないが、成長、休止、および脱落の期間を含んだ活動の周期をもっている。ヒト頭皮は、通常、100,000〜350,000個の毛髪繊維または毛幹を含有し、それらは、3つの異なる段階で変態する。
(a)成長期(アナゲン)の間に、濾胞(すなわち、毛根)は、真皮の奥深くまで浸透し、濾胞細胞は、毛髪の主成分であるケラチンを合成するプロセスにおいて急速に分裂し分化する。禿げかかっていないヒトにおいて、この成長期は、1〜5年続く。
(b)移行期(カタゲン)は、有糸分裂の休止を特徴とし、2〜3週間続く。
(c)毛髪が、下部頭皮からの新たな濾胞成長によって置き換えられるまで、頭皮内に12週までの間保持される休止期(テロゲン)。
【0004】
ヒトにおいて、この成長周期は、同期していない。ある人は、これら3期の各々で数千の濾胞を有するはずである。しかしながら、毛包の大部分は、アナゲン期にあるはずである。健康な若年成人において、アナゲン対テロゲン比は、9対1と高いことがある。脱毛症の人において、この比は、2:1という低さまで低下する。
【0005】
アンドロゲン性脱毛症は、循環するアンドロゲン性ホルモンに対する遺伝によって受け継がれた感受性の活性化に起因する。この脱毛症は、最も一般的なタイプの脱毛症である。この脱毛症は、主に白色人種起源の男性(50%)と女性(30%)の双方に影響を与える。毛幹の幅および長さの段階的変化は、時間と共にかつ加齢に伴って、場合によっては若くして体験される。硬毛は、短く、細い、無色のうぶ毛へと徐々に変化する。その結果、20歳代の男性ならびに30歳代および40歳代の女性は、毛髪が細くかつ短くなるのに気がつき始める。男性において、脱毛の大部分は、頭冠に起きる。女性は、全頭皮にわたる薄化を経験する。上記で議論されているように、アナゲン対テロゲン比は、顕著に低下し、発毛の低下を招く。
【0006】
カリウムチャンネル開口薬であるミノキシジルは、発毛を促進する。ミノキシジルは、Rogaine(登録商標)という商標で米国において市販されている。ミノキシジルの作用の正確な機構は不明であるが、発毛周期に対するその影響は、十分に立証されている。ミノキシジルは、毛包の成長を促進し、毛包がアナゲン期にある期間を増加させる(すなわち、アナゲン対テロゲン比を増加させる)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ミノキシジルは、発毛を促進するが、この発毛の美容効果は、大きく異なることがある。例えば、Roenigkは、3%ミノキシジルの局所溶液を19ヶ月間使用した83名の男性が関わる臨床試験の結果を報告した。発毛は、被験者のうちの55%で起きた。しかしながら、被験者の20%のみが、その発毛を、美容的に意味があると見なした(Clin.Res.、33、No.4、914A、1985)。Tostiは、彼の被験者のうちの18.1%で美容的に許容できる再発毛を報告した(Dermatologica、173、No.3、136−138、1986)。したがって、本技術分野では、脱毛症患者において美容的に許容できる発毛の速度を高める能力を有する化合物の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、新しいクラスのベンゾニトリルが発見された。これらの化合物、それらの塩、溶媒和物、およびそれらのプロドラッグは、以下の式Iによって表すことができ、
【0009】
【化1】

式中、
a)Xは、ハロゲン、シアノ、C〜Cアルコキシ、ハロアルコキシ、またはハロアルキルによって表され、
b)Xは、存在しないか、あるいはハロゲン、シアノ、C〜Cアルコキシ、ハロアルコキシ、またはハロアルキルによって表され、
c)nは、1〜4の整数によって表され、
d)Rは、
i)水素、
ii)ハロゲン、
iii)シアノ、
iv)ヒドロキシ、
v)置換されていてもよい(C〜C12)アルキル、
vi)置換されていてもよい(C〜C12)アルケニル、
vii)置換されていてもよい(C〜C12)アルキニル、
viii)置換されていてもよい(C〜C10)シクロアルキル、
ix)アルキルおよびシクロアルキル部分が、各々、置換されていてもよい(C〜C10)シクロアルキル(C〜C)アルキル、
x)置換されていてもよい(C〜C10)アリール、
xi)アルキルおよびアリール部分が、各々、置換されていてもよい(C〜C10)アリール(C〜C)アルキル、
xii)(CH−SR
xiii)(CH−OR
xiv)(CH−NR
xv)(CH−COOR
xvi)(CH−CONR
xvii)(CH−NRCOR、および
xviii)(CHOCORからなる群から選択される置換基によって表され、
e)zは、0〜6の整数によって表され、
f)Rは、水素、(C〜C12)アルキル、(C〜C12)アルケニル、(C〜C12)アルキニル、置換されていてもよい(C〜C10)アリール、および(C〜C10)アリール(C〜C)アルキル(ここで、アルキルおよびアリール部分は、各々、置換されていてもよい)からなる群から選択される置換基によって表され、
g)Rは、水素、および(C〜C12)アルキルからなる群から選択される置換基によって表される。
【0010】
式Iの化合物は、アンドロゲン受容体調節薬である。化合物は、アンドロゲン受容体に対する親和性を有し、受容体と結合することによって生物学的効果を引き起こす。通常、化合物は、拮抗薬として作用する。選択された実施形態において、化合物は、部分作動薬、完全作動薬、または組織選択的作動薬として作用する。アンドロゲン受容体調節薬として化合物を用い、アンドロゲン受容体の不適切な活性化に伴う状態を治療、または緩和することができる。拮抗薬についてのそのような状態の例には、ざ瘡、過剰皮脂分泌、アンドロゲン性脱毛症、前立腺癌などのホルモン依存性癌、および男性型多毛症が含まれるが、これらに限定されるものではない。部分作動薬、または完全作動薬であるこれらの化合物を用い、骨粗鬆症、性腺機能低下症、貧血を治療するか、あるいは、特に消耗性疾患において、筋肉量の増加を刺激することができる。
【0011】
また、本発明は、アンドロゲン受容体の活性化を変調するのに有効な量で、化合物のうちの少なくとも1つを含有する医薬組成物を対象とする。他の実施形態において、本発明は、アンドロゲン受容体の不適切な活性化に伴う状態を緩和するための化合物の使用法について消費者に助言する説明書と併せ、小売流通のために包装された化合物のうちの少なくとも1つを含む製品を対象とする。追加の実施形態は、アンドロゲン受容体の不適切な活性化を検出するための診断用薬としての化合物の使用を対象とする。
【0012】
他の実施形態において、化合物を局所的に使用し、発毛を誘導および/もしくは刺激しならびに/または脱毛を減速させる。化合物は、過剰皮脂および/またはざ瘡の治療において局所的に使用することができる。
【0013】
他の実施形態において、化合物は、ウシ、ブタ、ニワトリなどの家畜に使用することができる。化合物は、成長速度を増加させ、動物における赤身肉対脂肪比を高め、飼料効率を改善する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本文書内の表題は、読者によるその再検討を促進するのに利用されるに過ぎない。表題は、いかなる方法によっても、本発明または特許請求の範囲を限定していると解釈されるべきではない。
【0015】
定義および例示
特許請求の範囲が含まれる本出願を通して使用する以下の用語は、他に具体的に指示されていない限り、以下で定義される意味を有する。複数および単数は、数の表示以外は、互換性であると処理されるべきである。
a.「ハロゲン」は、塩素、フッ素、または臭素原子を指す。
b.「C〜Cアルキル」は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ペンチルなどの、1〜6個の炭素原子を含有する分岐鎖または直鎖アルキル基を指す。
c.「置換されていてもよいC〜Cアルキル」は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ペンチルなどの、1〜6個の炭素原子を含有する分岐鎖または直鎖アルキル基を指す。そのようなアルキル基は、置換されていてもよく、その場合6個までの水素原子が、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、チオール、シアノ、およびNR(ここで、RおよびRは、上記で定義した通りである)からなる群から選択される置換基によって置き換えられている。
d.「置換されていてもよいC〜C12アルキル」は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ヘキシル、オクチル、デシルなどの、1〜12個の炭素原子を含有する分岐鎖または直鎖アルキル基を指す。そのようなアルキル基は、置換されていてもよく、その場合8個までの水素原子が、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、チオール、シアノ、およびNR(ここで、RおよびRは、上記で定義した通りである)からなる群から選択される置換基によって置き換えられている。
e.「置換されていてもよいC〜C12アルケニル」は、2〜12個の炭素原子および1個または複数の炭素−炭素二重結合を含有する直鎖または分岐鎖炭化水素基を指す。アルケニル基の例には、エテニル、プロペニル、1,4−ブタジエニル、1−ヘキセニル、1,3−オクタジエニルなどが含まれる。そのようなアルケニル基は、置換されていてもよく、その場合8個までの水素原子が、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、チオール、シアノ、およびNR(ここで、RおよびRは、上記で定義した通りである)からなる群から選択される置換基によって置き換えられている。
f.「置換されていてもよいC〜C12アルキニル」は、2〜12個の炭素原子および1個または複数の炭素−炭素三重結合を含有する直鎖または分岐鎖炭化水素基を指す。アルキニル基の例には、エチニル、プロピニル、ブチニル、オクチニルなどが含まれる。そのようなアルキニル基は、置換されていてもよく、その場合8個までの水素原子が、ハロゲン、ヒドロキシ、ハロアルキル、チオール、シアノ、および−NR(ここで、RおよびRは、上記で定義した通りである)からなる群から選択される置換基によって置き換えられている。
g.「ハロアルキル」は、少なくとも1個の水素原子がハロゲンで置き換えられている1〜6個の炭素原子を含有する分岐鎖または直鎖アルキル基(すなわち、C〜Cハロアルキル)を指す。適当なハロアルキルの例には、クロロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1−フルオロ−2−クロロ−エチル、5−フルオロ−ヘキシル、3−ジフルオロ−イソプロピル、3−クロロ−イソブチルなどが含まれる。
h.「1個または複数のハロゲン原子で置換されている(C〜C)アルキル」は、1または2個の炭素原子を含有する直鎖アルキル基、すなわち、メチルまたはエチルであって、少なくとも1個の水素原子がハロゲンで置き換えられているアルキル基(すなわち、例えば、トリフルオロメチル、ジクロロメチルなど)を指す。
i.「1個または複数のハロゲン原子で置換されている(C〜C)アルコキシ」は、1または2個の炭素原子を含有する直鎖アルコキシ基、すなわち、メトキシまたはエトキシであって、少なくとも1個の水素原子がハロゲンで置き換えられているアルコキシ基(すなわち、例えば、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシなど)を指す。
j.「C〜Cアルコキシ」は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、ペントキシなどの1〜6個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖アルコキシ基を指す。
k.「ハロアルコキシ」は、少なくとも1個の水素原子がハロゲンで置き換えられている1〜6個の炭素原子を含む分岐鎖または直鎖アルコキシ基(すなわち、C〜Cハロアルコキシ)を指す。適当なハロアルコキシの例には、クロロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、1−フルオロ−2−クロロ−エトキシ、5−フルオロ−ヘキソキシ、3−ジフルオロ−イソプロポキシ、3−クロロ−イソブトキシなどが含有される。
l.置換されていてもよい「(C〜C10)アリール」は、6〜10個の炭素原子を含有する環式芳香族炭化水素を意味する。アリール基の例には、フェニル、ナフチル、およびビフェニルが含まれる。そのようなアリール部分は、4個までの水素以外の置換基で置換されていてもよく、各置換基は、独立して、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、1個または複数のハロゲンで置換されている(C〜C)アルキル、1個または複数のハロゲンで置換されている(C〜C)アルコキシ、SRおよびNRからなる群から選択される。RおよびRは、各々独立して、C〜Cアルキルまたは水素によって表される。これらの置換基は、同一であっても異なっていてもよく、化学的に許容できる環のどの場所に位置していてもよい。
m.置換されていてもよい「(C〜C10)シクロアルキル」は、飽和または部分飽和の単環式、二環式または三環式アルキル基を指し、各環式部分は、3〜10個の炭素原子を有する。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルなどが含まれる。そのようなシクロアルキル基は、置換されていてもよく、その場合、4個までの水素原子が、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、1個または複数のハロゲンで置換されている(C〜C)アルキル、1個または複数のハロゲンで置換されている(C〜C)アルコキシ、SRおよびNR(RおよびRは、上記で定義した通りである)からなる群から選択される置換基によって置き換えられている。
n.「アンドロゲン」は、ジヒドロテストステロンが含まれるがそれに限定されないテストステロンならびにその前駆体および代謝産物、ならびに5α還元型アンドロゲンを指す。アンドロゲンは、精巣、副腎腺、および卵巣由来のアンドロゲン、ならびにすべての形態の天然、合成および置換または修飾アンドロゲンを指す。
o.「薬学的に許容できる」は、哺乳類における使用に適していることを意味する。
p.「塩」は、薬学的に許容できる塩および化合物の調製などの工業プロセスにおける使用に適している塩を指すことを意図している。
q.「薬学的に許容できる塩」は、化合物の実際の構造に応じた「薬学的に許容できる酸付加塩」か「薬学的に許容できる塩基付加塩」のどちらかを指すことを意図している。
r.「薬学的に許容できる酸付加塩」は、式Iによって表される塩基化合物またはその中間体のいかなる非毒性有機または無機酸付加塩にもあてはまることを意図している。適当な塩を形成する例示的無機酸には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、およびリン酸ならびにオルトリン酸一水素ナトリウム、および硫酸水素カリウムなどの酸金属塩が含まれる。適当な塩を形成する例示的有機酸には、モノ、ジ、およびトリカルボン酸が含まれる。そのような酸の例は、例えば、酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ−安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、サリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ならびにメタンスルホン酸および2−ヒドロキシエタンスルホン酸などのスルホン酸である。そのような塩は、水和形態か実質的に無水形態のどちらかで存在することがある。一般に、これらの化合物の酸付加塩は、水および様々な親水性有機溶媒に可溶であり、それらの遊離塩基形態と比較して、より高い融点を一般的に示す。
s.「薬学的に許容できる塩基付加塩」は、式Iによって表される化合物またはそのいかなる中間体のいかなる非毒性有機または無機塩基付加塩にもあてはまることを意図している。適当な塩を形成する例示的塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムまたは水酸化バリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物;アンモニア、ならびにメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、およびピコリンなどの脂肪族、脂環式、または芳香族有機アミンが含まれる。
t.「プロドラッグ」は、例えば、血中における加水分解により、in vivoで急速に変換され、上記式の親化合物を与える化合物を指す。徹底した議論は、A.C.S.Symposium SeriesのT.HiguchiおよびV.Stella、「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」、Vol.14、およびBioreversible Carriers in Drug Design、Edward B.Roche編、American Pharmaceutical AssociationおよびPergamon Press、1987中に提供されており、両方とも、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
u.「式Iの化合物」、「本発明の化合物」、および「化合物」は、本出願を通して互換的に使用され、同義語として取り扱われるべきである。
v.「患者」は、例えば、モルモット、マウス、ラット、スナネズミ、ネコ、ウサギ、イヌ、サル、チンパンジー、ベニガオザルおよびヒトなどの温血動物を指す。
w.「治療する」は、患者の疾患(または状態)またはその疾患に伴う任意の組織損傷の進行を軽減、緩和、または遅らせる化合物の能力を指す。
x.「家畜」は、ヒトの肉消費に適している動物を指す。例には、ブタ、ウシ、ニワトリ、七面鳥、ウサギなどが含まれる。
y.「異性体」は、以下で定義されるような「立体異性体」および「幾何異性体」を意味する。
z.「立体異性体」は、1個または複数のキラル中心を有する化合物を意味し、各中心は、RまたはS立体配置で存在することができる。立体異性体には、すべてのジアステレオマー、エナンチオマーおよびエピマー形態ならびにそれらのラセミ化合物および混合物が含まれる。
aa.「幾何異性体」は、シス、トランス、アンチ、エントゲーゲン(E)、およびツザンメン(Z)形態ならびにそれらの混合物中に存在することができる化合物を意味する。
【0016】
式(I)の特定の化合物は、幾何異性体として存在することがある。式(I)の化合物は、1個または複数の不斉中心を有し、2種以上の立体異性体として存在することがある。本発明には、式(I)の化合物のすべての各立体異性体および幾何異性体ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0017】
さらに、本発明の化合物は、非溶媒和形態ならびに水、エタノールなどの薬学的に許容できる溶媒との溶媒和形態で存在することができる。一般に、溶媒和形態は、本発明の目的にとって、非溶媒和形態と等価であると見なされる。化合物は、1種もしくは複数の結晶状態、すなわち多形として存在するか、または無定形固体として存在することがある。そのようなすべての形態は、請求項の範囲によって包含される。
【0018】
式Iのすべての化合物は、フェニル環を含有する。本発明をさらに例示するため、この環のナンバリングシステムおよびその置換パターンを以下に示す。
【0019】
【化2】

【0020】
このフェニル環の1位は、上記に示すように、シアノ部分で置換されている。4位は、酸素原子で置換され、エーテル部分を形成する。フェニル環は、Xによって示されているように、2、3、5、または6位において、ハロゲン原子、シアノ基、(C〜C)アルコキシ基、ハロアルコキシ部分またはハロアルキル部分でさらに置換される。通常、それは、2または6位に位置するハロゲンまたはハロアルキル部分とする。より典型的には、それは、フェニル環の2または6位に位置するトリフルオロメチルとする。フェニル環は、Xによって示されているように、4番目(4番目)の置換基で置換されていてもよい。Xは、存在する場合、ハロゲン原子、シアノ基、(C〜C)アルコキシ基、ハロアルコキシ部分またはハロアルキル部分によって表されることがある。
【0021】
ベンゾニトリルの4位における酸素原子は、以下に示すようなラクトンとエーテル結合を形成する。
【0022】
【化3】

【0023】
ラクトン中の炭素原子の数は、1〜4の整数を表すnによって指示されるように変化することがある。したがって、ラクトンは、5、6、7、または8員環であってよい。そのようなラクトンの例には、ジヒドロ−ピラン−2−オン、テトラヒドロ−ピラン−2−オン、ジヒドロ−フラン−2−オン、テトラヒドロ−フラン−2−オンなどが含まれる。
【0024】
エーテル結合は、化学的に許容できるラクトンの任意の炭素原子に結合することができる。例えば、ラクトンがフラン−2−オンである場合、エーテルは、ラクトンの3、4、または5位に結合するものとする。通常、エーテルは、フラン−2−オンの3位に結合するものとする。ラクトンがピラン−2−オンである場合、エーテルは、ラクトンの3、4、5、または6位に結合するものとする。通常、エーテルは、ピラン−2−オンの3位に結合するものとする。
【0025】
ラクトンは、Rについて上記に列挙されている置換基のうちのいずれかで置換されていてもよい。Rは、化学的に許容できる場合、6個までの水素以外の置換基を表すことがある。これらの水素以外の置換基は、化学的に許容できるラクトンの任意の炭素原子に結合することができる。単一の炭素原子は、一置換または二置換であってよい。二置換の場合、当該炭素原子は、同一、または異なる置換基で置換されることがある。
【0026】
本発明のより具体的な実施形態には、
i)Xが、クロロまたはトリフルオロメチルであってフェニル環の2または6位に位置し、Xが、存在せず、nが、1または2であり、Rが、上記で定義した通りであり、
ii)Xが、クロロまたはトリフルオロメチルであってフェニル環の2または6位に位置し、Xが、存在せず、nが、1であり、Rが、上記で定義した通りであり、
iii)Xが、クロロまたはトリフルオロメチルであってフェニル環の2または6位に位置し、Xが、存在せず、nが、2であり、Rが、上記で定義した通りであり、
iv)Xが、クロロまたはトリフルオロメチルであってフェニル環の2または6位に位置し、Xが、存在せず、nが、1または2であり、Rが、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、およびハロアルコキシからなる群から選択され、
v)Xが、トリフルオロメチルであってフェニル環の2または6位に位置し、Xが、存在せず、nが、1であり、Rが、メチル、エチル、トリフルオロメチル、メトキシ、およびエトキシからなる群から選択される置換基によって表される、
式Iの化合物が含まれる。
【0027】
式Iによって表される化合物のより具体的な例には、
i)(±)−4−(4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
ii)(R)−(+)−4−(4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
iii)(S)−(−)−4−(4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
iv)(±)−4−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
v)(+)−4−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
vi)(−)−4−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
vii)(±)−4−(5,5−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
viii)(±)−4−(4−メトキシ−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
ix)(±)−4−(5−メトキシ−4−トリフルオロメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
x)(±)−4−(5−シクロヘキシル−4−メチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル
xi)(±)−4−(5−ベンジル−4−フルオロ−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
xii)(±)−4−(5−シアノ−4−メチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
xiii)(±)−4−(4−メチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
xiv)(±)−4−(4−フルオロ−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル
xv)(±)−4−(4−メトキシ−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル
xvi)(±)−4−(4−メトキシ−2−オキソ−テトラヒドロ−ピラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル
xvii)(±)−4−(2−オキソ−テトラヒドロ−ピラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
xviii)(±)−4−(6−シクロペンチル−2−オキソ−テトラヒドロ−ピラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル、および;
xix)(±)−4−(6−メチル−5−フルオロ−4−メトキシ−2−オキソ−テトラヒドロ−ピラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル
が含まれる。
【0028】
合成
式Iの化合物は、エーテルを調製するための当技術分野において知られている方法を用いて調製することができる。読者の注意は、1982年9月1日に公開された欧州特許出願第58932号に向けられ、その内容は、そのような反応を説明するため、参照により本明細書に組み込まれるものとする。以下のスキームIは、そのような技法の1つに関する概要を提供する。
【0029】
【化4】

【0030】
上記に示すように、出発材料のうちの一方は、構造1によって示されるアルコールである。Rは、最終生成物において望ましいものと同じ1個または複数の置換基によって表されるものとする。同様に、nは、最終生成物において必要とされるのと同じ整数によって表されるものとする。そのようなラクトンは、当技術分野において知られている。多くは、知られている商業ソースから購入することができる。あるいは、それらは、文献に記載されているように調製することができる。
【0031】
もう一方の出発材料は、構造2によって示される4−フルオロ−ベンゾニトリルである。XおよびXは、各々、最終生成物において望ましいものと同じ置換基によって表されるものとする。これらのベンゾニトリルは、当技術分野において知られており、日本特許出願第01097937号により記載されているように合成することができる。
【0032】
上記に示される求核置換は、当技術分野において知られているように行うことができる。構造1のアルコールを、水素化ナトリウム、カリウムt−ブトキシドなどのわずかに過剰な塩基と接触させ、アルコキシドイオンを生成させる。反応は、約0℃の温度にて不活性雰囲気(通常は窒素)下でテトラヒドロフランなどの非プロトン性溶媒中で行う。アルコールを、塩基と共に、5〜60分間撹拌する。
【0033】
次いで、1当量の構造2の4−フルオロ−ベンゾニトリルを反応媒質に加え、反応物を、アルコキシドイオンがベンゾニトリル由来のフッ素と置き換わるのに十分な時間撹拌する。これには、通常、30分〜24時間かかる。通常、反応物を室温まで温める。
【0034】
式Iの望ましい生成物は、抽出、蒸発、または当技術分野において知られている他の技法により回収することができる。次いで、生成物を、クロマトグラフィー、再結晶、蒸留、または当技術分野において知られている他の技法により精製してもよい。
【0035】
当業者には当然のことながら、上記で議論したように、そのような化合物を調製するのに有用な方法のいくつかは、特定の反応基の保護を必要とし、例えば、分子内の他の部位における反応中のそのような官能基による妨害を防ぐか、あるいはそのような官能基の完全性を守ることができる。そのような保護の必要性、およびそのような保護のタイプは、当業者によって容易に決定され、例えば、官能基の性質および選択された調製方法の条件によって異なるものとする。例えば、T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、New York、1991を参照されたい。
【0036】
本発明の化合物のうちのいくつかは、酸性であり、薬学的に許容できる陽イオンと塩を形成する。本発明の化合物のうちのいくつかは、塩基性であり、薬学的に許容できる陰イオンと塩を形成する。すべてのそのような塩は、本発明の範囲内にあり、それらは、必要に応じて、水性媒質、非水媒質または部分水性媒質中で、酸性および塩基性実体を、通常は化学量論的な割合で混ぜ合わせることなどの従来の方法によって調製することができる。塩は、必要に応じて、濾過により、非溶媒による沈降と、続く濾過により、溶媒の蒸発により、または、水溶液の場合には、凍結乾燥により回収される。化合物は、エタノール、ヘキサンまたは水/エタノール混合物などの適切な1種または複数の溶媒に溶かすことによるなどの当技術分野において知られている手順に従って結晶形態で得られる。
【0037】
医学的および美容的使用
式Iの化合物は、アンドロゲン受容体調節薬である。それらを用い、アンドロゲン受容体の不適切な活性化に伴う状態を緩和することができる。アンドロゲン拮抗薬として作用する化合物を用い、前立腺癌などのホルモン依存性癌、良性の前立腺過形成、ざ瘡、男性型多毛症、過剰皮脂、脱毛症、女性の多毛症、思春期早発症、前立腺肥大、男性化、および多嚢胞性卵巣症候群を治療、または緩和することができる。部分作動薬、または完全作動薬として作用する化合物を用い、男性の性腺機能低下症、男性の性機能障害(インポテンス、男性の精子形成障害性不妊症)、異常な性分化(男性の半陰陽)、男性の思春期遅発症、男性の不妊症、再生不良性貧血、溶血性貧血、鎌状赤血球貧血、特発性血小板減少性紫斑病、骨髄線維症、腎性貧血、消耗性疾患(術後、悪性腫瘍、外傷、慢性腎疾患、熱傷またはAIDS誘発性)、女性器の末期癌における疼痛の寛解、手術不能乳癌、乳腺症、子宮内膜症、女性の性機能障害、骨粗鬆症、創傷治癒および筋組織修復を治療、または緩和することができる。
【0038】
上記に記載された治療特性を示すため、化合物は、アンドロゲン受容体の活性化を変調するのに十分な量で投与される必要がある。この量は、治療されている特定の疾患/状態、患者の疾患/状態の重症度、患者、投与されている特定の化合物、投与の経路、および患者に内在する他の疾患状態の存在などによって変わることがある。全身的に投与される場合、化合物は、通常、上記に列挙した疾患または状態のうちのいずれについても、約0.1mg/kg/日〜約100mg/kg/日の用量範囲でそれらの効果を示す。反復した毎日の投与が望ましいことがあり、上記で概説した条件に従って異なるものとする。
【0039】
本発明の化合物は、様々な経路によって投与することができる。化合物は、経口的に投与することができる。また、化合物は、非経口的に(すなわち、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、またはくも膜下腔内に)、直腸に、または局所的に投与することができる。
【0040】
典型的な実施形態において、化合物は、局所的に投与される。局所投与は、男性型多毛症、脱毛症、ざ瘡および過剰皮脂に特に適している。投与量は、一般的ガイドラインの通りであるが、異なることがあり、化合物は、約0.01〜50w/w%、より典型的には約0.1〜10w/w%の量で、皮膚科学的に許容できる担体中に存在するものとする。皮膚科学的調製物は、毎日1〜4回、病変部に塗布されるものとする。「皮膚科学的に許容できる」は、皮膚または毛髪に塗布することができ、薬物を作用部位に拡散させる担体を指す。より具体的には、アンドロゲン受容体の活性化の阻害が望ましい部位を指す。
【0041】
他の実施形態において、化合物を局所的に使用し、脱毛症、特にアンドロゲン性脱毛症を軽減する。アンドロゲンは、発毛と脱毛の双方に対して著しい効果を有する。あごひげおよび陰部皮膚などのほとんどの身体部位において、アンドロゲンは、毛周期の成長期(アナゲン)を延長し、濾胞サイズを増加させることにより発毛を刺激する。頭皮上の発毛は、アンドロゲンを必要としないが、逆説的であるが、アンドロゲンは、アナゲンの期間および毛包サイズが次第に減少する遺伝的素因のある人々(アンドロゲン性脱毛症)において頭皮上が禿げることに必要である。また、アンドロゲン性脱毛症は、女性に多く、男性に見られるパターンを示すよりむしろびまん性の脱毛として通常現れる。
【0042】
化合物は、アンドロゲン性脱毛症を緩和するために使用されるのが最も典型的であるが、本発明は、この特定の状態に限定されるものではない。化合物を用い、どのようなタイプの脱毛症も緩和することができる。非アンドロゲン性脱毛症の例には、円形脱毛症、放射線治療または化学療法に起因する脱毛症、瘢痕性脱毛症、ストレス性脱毛症などが含まれる。本出願で使用する「脱毛症」は、頭皮上の部分的または完全な脱毛を指す。
【0043】
したがって、化合物を頭皮および毛髪へ局所的に塗布し、禿げることを予防、または緩和することができる。さらに、頭皮上の発毛を誘導または促進するために化合物を局所的に塗布することができる。
【0044】
本発明の他の実施形態において、式Iの化合物は、そのような発毛が望ましくない領域において発毛を防ぐため局所的に塗布される。そのような使用の1つは、男性型多毛症を緩和することである。男性型多毛症は、通常は毛髪を有しない領域(すなわち、女性の顔面)における過剰な発毛である。そのような不適切な発毛は、女性において最も一般的に起こり、閉経期に見られることが多い。化合物の局所投与は、この状態を緩和し、この不適切な、または望ましくない発毛の低下、または解消につながるはずである。
【0045】
また、化合物を局所的に用い、皮脂生成を減少させることができる。皮脂は、トリグリセリド、ワックスエステル、脂肪酸、ステロールエステルおよびスクアレンからなる。皮脂は、皮脂腺の腺房細胞において生成され、それらの細胞が老化するにつれて蓄積する。成熟すると、腺房細胞は溶解し、管腔中に皮脂を放出し、皮膚の表面上に堆積することがある。
【0046】
一部の人々では、過剰量の皮脂は、皮膚上に分泌される。このことは、多くの有害な結果を有することがある。それは、皮脂が、ざ瘡の原因菌であるプロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes)の主要な食料源であるため、ざ瘡を悪化させることがある。それは、皮膚をべたべたした外観にすることがあり、通常は、美容的に魅力がないと見なされる。
【0047】
皮脂の生成は、成長因子およびアンドロゲンを含む様々なホルモンによって調節される。アンドロゲンが皮脂腺に対して影響を与える細胞機構および分子機構は、十分には解明されていない。しかしながら、臨床経験は、アンドロゲンが皮脂生成に対して有する影響を立証している。皮脂生成は、アンドロゲンレベルが最も高い思春期に顕著に増加する。フィナステライドなどの抗アンドロゲン薬は、アンドロゲン分泌を減少させることが明らかにされている。皮脂生成および皮膚代謝におけるアンドロゲンの役割に関する追加情報については、Moshell他、Progress in Dermatology、vol.37、No.4、Dec.2003を参照されたい。
【0048】
したがって、式Iの化合物は、皮脂の分泌を阻害するため、皮膚の表面上の皮脂の量を減少させる。化合物を用い、ざ瘡または脂漏性皮膚炎などの様々な皮膚疾患を治療することができる。
【0049】
過剰皮脂生成に伴う疾患を治療することに加え、化合物を用い、美容的効果を得ることもできる。一部の消費者は、過活動の皮脂腺に悩まされていると考えている。一部の消費者は、皮膚が脂ぎっているため魅力に欠けていると感じている。これらの人々は、式Iの化合物を利用し、皮膚上の皮脂の量を減少させることができる。皮脂の分泌を減少させることは、そのような状態に悩まされている人々において油性皮膚を緩和する。
【0050】
他の実施形態において、部分作動薬、または完全作動薬として作用するこれらの化合物を用い、骨粗鬆症を治療、または緩和することができる。骨粗鬆症は、骨吸収(破壊)と骨形成の間の不均衡に起因する骨量減少を特徴とするが、これは30歳代から始まり、1年あたり約1〜4%の割合で一生の間続く(Eastell、Treatment of postmenopausal osteoporosis、New Eng.J.Med.338:736、1998)。米国では、現在のところ、骨粗鬆症による椎骨の検出可能な骨折のある約2000万人の人々が存在する。さらに、最初の2年のうちに12%〜20%の死亡率を伴い、骨粗鬆症による1年あたり約250,000件の股関節骨折が存在し、患者のうちの30%は、骨折後に養護ホームでの介護を必要とし、多くは、再び完全に歩けるようになることは決してない。閉経後の女性において、エストロゲン不足は、骨吸収の増加につながり、閉経直後に、1年あたり約5%の椎骨における骨量減少をもたらす。したがって、この状態の初回治療/予防は、ビスホスホネート、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)およびカルシトニンによる骨吸収の阻害である。しかしながら、骨吸収の阻害剤は、かなりの量の骨をすでに失っている患者にとって骨量を回復するのには不十分である。ビスホスホネート治療により達成される脊髄BMDの増加は、アレンドロネートによる7年の治療後に11%に達することがある。さらに、骨代謝回転の速度は、部位によって異なる(長骨の皮質骨におけるよりも椎骨の海綿骨において高い)ため、骨吸収阻害剤は、股関節BMDを増加させて股関節骨折を予防するのにあまり有効ではない。したがって、皮質/骨膜の骨形成および長骨の骨量を増加させる骨同化(osteoanabolic)剤は、特に股関節骨折の危険性が高い患者にとって、骨粗鬆症の治療における未充足ニーズに対処するであろう。
【0051】
多くの研究は、アンドロゲンが、女性および男性において骨同化性であることを証明している。デカン酸ナンドロロンまたはスタノゾロールなどのアナボリックステロイドは、閉経後の女性において骨量を増加させることが明らかにされている。閉経後骨粗鬆症における骨に対するアンドロゲンの有益な効果は、テストステロンとエストロゲンの併用投与を用いる最近の研究で十分に立証されている(Hofbauer、他、Androgen effects on bone metabolism:recent progress and controversies、Eur.J.Endocrinol.140、271−286、1999)。したがって、作動薬または部分作動薬活性を示す式Iのこれらの化合物を用い、老人性、閉経後および若年性骨粗鬆症などの原発性骨粗鬆症、ならびに甲状腺機能亢進症またはクッシング症候群(コルチコステロイド治療による)、末端肥大症、性腺機能低下症、骨形成不全症および低リン酸血症による骨粗鬆症などの続発性骨粗鬆症が含まれる骨粗鬆症を治療、または緩和することができる。アンドロゲン作動薬による治療に修正可能な他の骨に関連する適応症には、骨粗鬆症骨折、小児特発性骨量減少、歯槽骨量減少、下顎骨量減少、骨折、骨切り術、歯周病、または補綴内殖(prosthetic ingrowth)が含まれる。
【0052】
また、作動薬、または部分作動薬として作用するこれらの化合物を用い、AIDS、癌悪液質、熱傷、腎疾患などの消耗性疾患に悩まされている患者において筋肉量を刺激することができる。外傷、褥瘡、老齢などに悩んでいる患者も、アンドロゲンの同化効果から恩恵を受けることができる。
【0053】
同時投与
本発明の他の実施形態において、式Iの化合物は、他の化合物と同時投与し、それらの活性をさらに増強するか、あるいは潜在的副作用を最小限に抑えることができる。例えば、ミノキシジルなどのカリウムチャンネル開口薬は、発毛を刺激し、アナゲンを誘導することが知られている。他のカリウムチャンネル開口薬の例には、(3S,4R)−3,4−ジヒドロ−4−(2,3−ジヒドロ−2−メチル−3−オキソピリダジン−6−イル)オキシ−3−ヒドロキシ−6−(3−ヒドロキシフェニル)スルホニル−2,2,3−トリメチル−2H−ベンゾ[b]ピラン、ジアクソジド(diaxozide)、およびLeo Pharmaceuticalsで開発中のP1075が含まれる。そのような化合物を式Iの化合物と同時投与し、脱毛症を緩和することができる。
【0054】
甲状腺ホルモンも、発毛を刺激することが知られている。合成甲状腺ホルモン置換(すなわち、サイロミメティック(thyromimetics))も、発毛を刺激することが明らかにされている。そのようなサイロミメティックは、以前から文献中に記載されている。読者の注意は、欧州特許出願第1262177号に向けられ、その内容は、そのような化合物および脱毛症を緩和するためのそれらの使用についての議論のため参照により本明細書に組み込まれるものとする。関心のある特定の化合物の1つは、2−{4−[3−(4−フルオロ−ベンジル)−4−ヒドロキシ−フェノキシ]−3,5−ジメチル−フェニル}−2H−[1,2,4]トリアジン−3,5−ジオンである。そのような化合物を式Iの化合物と同時投与し、脱毛症を緩和することができる。
【0055】
抗アンドロゲン薬は、多くの異なる機構によって働くことができる。例えば、一部の化合物は、多くの組織において生物学的効果を担うテストステロンの5−α−ジヒドロテストステロンへの変換を妨げる。フィナステリドなどの5−アルファ−レダクターゼ阻害剤は、発毛を刺激し、皮脂生成を減少させることが明らかにされている。フィナステリドは、商品名Propecia(登録商標)としてMerckから市販されている。他の5−α−レダクターゼ阻害剤の例には、デュタステリド(Glaxo Smithkline)が含まれる。そのような化合物を式Iの化合物と同時投与し、脱毛症を緩和しかつ/または皮脂生成を減少させることができる。
【0056】
タンパク質キナーゼC阻害剤も、発毛を刺激し、アナゲンを誘導することが知られている。タンパク質キナーゼCの選択的阻害剤であるカルホスチンCは、アナゲンを誘導することが明らかにされている。ヘキサデシルホスホコリン、パルミトイル−DL−塩化カルニチン、および硫酸ポリミキシンBなどの他の選択的タンパク質キナーゼC阻害剤も、アナゲンを誘導することが明らかにされている。[Skin Pharmacol Appl Skin Physiol 2000 May−Aug;13(3−4):133−42]。いかなるそのようなタンパク質キナーゼC阻害剤も、式Iの化合物と同時投与し、脱毛症を緩和することができる。
【0057】
イムノフィリンは、細胞質タンパク質のファミリーである。それらのリガンドには、シクロスポリン、FK506、およびラパマイシンが含まれる。それらのリガンドは、真菌に由来し、主にそれらの強力な免疫抑制特性のために開発された。シクロスポリンは、タンパク質であるシクロフィリンと結合し、一方、FK506およびラパマイシンは、FK結合タンパク質(FKBP)と結合する。これらの化合物はすべて、発毛を刺激し、アナゲンを誘導することが明らかにされている。いかなるそのようなイムノフィリンリガンドも、式Iの化合物と同時投与し、脱毛症を緩和することができる。
【0058】
アシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤は、当初、血清コレステロール上昇の治療について評価された。その後、これらの化合物が皮脂生成を減少させることが発見された(米国特許第6,133,326号)。いかなるそのようなACAT阻害剤も、式Iの化合物と同時投与し、皮脂生成を減少させ、油性皮膚を緩和することなどができる。
【0059】
ざ瘡を緩和するため、テトラサイクリンおよびクリンダマイシンなどの抗生物質が用いられてきた。抗生物質は、微生物、プロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes)を根絶し、患者のざ瘡の減少をもたらす。式Iの化合物は、ざ瘡の治療に適しているいかなる抗生物質とも同時投与することができる。
【0060】
イソトレチノインなどのレチノイドは、皮脂生成を減少させることが明らかにされており、ざ瘡を治療するのに使用される。これらのレチノイドを式Iの化合物と同時投与し、皮脂生成を減少させかつ/またはざ瘡を治療することができる。
【0061】
エストロゲンおよびプロゲステロンは、各々、皮脂生成を減少させることが明にされている。これらの化合物、またはそのような化合物のいかなる合成作動薬も、式Iの化合物と同時投与し、皮脂生成を減少させることができる。
【0062】
本出願で使用する「同時投与された」は、望ましい結果を促進する投与計画を用い、通常は異なる作用機構を有する第2の医薬品と共に式Iの化合物を投与することを指す。これは、同時の投与、1日のうちの異なる時間における投与、または異なる日の投与さえも指すことがある。化合物は、別々に投与するか、あるいは単一の製剤に混ぜ合わせることができる。そのような製剤を調製するための技法を以下に記載する。
【0063】
製剤
望ましい場合、これらの化合物は、いかなる担体もなしに直接投与することができる。しかしながら、投与を容易にするため、化合物は、通常、医薬担体中に製剤化されるものとする。同様に、化合物は、最も典型的には、皮膚科学的、または美容的担体中に製剤化されるものとする。本出願において、用語「皮膚科学的担体」および「美容的」担体は、互換的に使用されている。それらは、皮膚または毛髪に直接投与するために設計される製剤を指す。
【0064】
医薬組成物および美容組成物は、当技術分野において知られている技法を利用して製造することができる。通常、有効量の化合物を、薬学的/美容的に許容できる担体と混合するものとする。
【0065】
経口投与の場合、化合物は、カプセル剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤、メルト剤、散剤、懸濁剤、または乳剤などの固形または液状調製物に製剤化することができる。固形単位剤形は、例えば、界面活性剤、滑沢剤ならびにラクトース、スクロース、およびコーンスターチなどの不活性増量剤を含有する通常のゼラチンタイプのカプセル剤であってよく、または固形単位剤形は、持続放出調製物であってよい。
【0066】
別の実施形態において、式Iの化合物は、アカシア、コーンスターチ、もしくはゼラチンなどの結合剤、ジャガイモデンプンもしくはアルギン酸などの崩壊剤、およびステアリン酸もしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤と組み合わせ、ラクトース、スクロース、およびコーンスターチなどの従来の錠剤基剤で錠剤化することができる。液状調製物は、水性または非水性の薬学的に許容できる溶媒に活性成分を溶かすことにより調製され、当技術分野で知られているような懸濁化剤、甘味剤、矯味剤、および保存剤を含有することもある。
【0067】
非経口投与の場合、化合物は、生理学的に許容できる医薬担体に溶かし、溶液か懸濁液のどちらかとして投与することができる。適当な医薬担体の例は、水、塩類溶液、ブドウ糖溶液、フルクトース溶液、エタノール、または動物、植物、または合成起源の油である。また、医薬担体は、当技術分野において知られているように、保存剤、緩衝液などを含有することができる。化合物が、くも膜下腔内に投与される場合、化合物は、当技術分野において知られているように、脳脊髄液に溶かすことができる。
【0068】
本発明の化合物は、通常、局所的に投与されるものとする。本明細書で使用する「局所的」は、化合物(および、場合により担体)を皮膚および/または毛髪に直接塗布することを指す。本発明による局所組成物は、液剤、ローション剤、塗擦剤、クリーム剤、軟膏剤、リポソーム剤、スプレー剤、ジェル剤、フォーム剤、ローラースティック剤の形態、または皮膚科学で常用される他の任意の製剤であってよい。
【0069】
したがって、他の実施形態は、上記の式Iに対応する化合物のうちの少なくとも1つを含む美容組成物または医薬組成物、特に皮膚科学的組成物に関する。そのような皮膚科学的組成物は、皮膚科学的に許容できる担体との混合物中に、化合物0.001%〜10%w/w%、より典型的には化合物0.1〜5w/w%を含有するものとする。そのような組成物は、通常、1日あたり1〜4回塗布されるものとする。読者の注意は、そのような製剤の調製方法について議論するためのRemington′s Pharmaceutical Science、第17版、Mack Publishing Co.、Easton、PAに向けられる。
【0070】
本発明による組成物は、洗浄用の石鹸または棒を構成する固形調製物からなることもある。これらの組成物は、通常の方法に従って調製される。
【0071】
また、化合物は、水性、アルコール性もしくは水性−アルコール性溶液の形態で、またはクリーム剤、ジェル剤、乳剤もしくはムース剤の形態で、あるいは加圧下で噴射剤も含むエアロゾル組成物の形態で毛髪に使用することができる。また、本発明による組成物は、ヘアケア組成物、特に、シャンプー、整髪ローション、処理ローション、スタイリングクリームもしくはジェル、染料組成物、脱毛を予防するためのローションまたはジェルなどであってよい。本発明による皮膚科学的組成物中の様々な構成成分の量は、考えられる分野において従来から使用されている量である。
【0072】
本発明の化合物を含有する医薬品および化粧品は、通常、小売流通(すなわち、製品)のために包装されるものとする。そのような製品は、患者に製品の使用法を指示するように、ラベルを付けて包装されるものとする。そのような説明には、治療される状態、治療の期間、投与スケジュールなどが含まれるものとする。
【0073】
また、式Iの化合物は、任意の不活性な担体と混合し、当技術分野において知られているように、患者の血清、尿中などの化合物の濃度を測定するための実験室アッセイに利用することができる。化合物は、研究ツールとしても使用することができる。
【0074】
家畜における使用
上記の治療的および美容的用途の他に、化合物を用い、動物、特に家畜の成長を促進することもできる。化合物は、動物が体重を増やす速度を増加させ、得られる肉の赤身を増加させ、飼料利用の効率を改善する。このことは、成長を支援するのに十分な栄養(すなわち、十分なカロリー、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、必須脂肪など)を受けている動物に有効量の式Iの化合物を投与することにより達成することができる。
【0075】
投与を単純化するため、化合物は、通常、動物飼料と混ぜられるか、または動物飼料とブレンドすることができる動物飼料プレミックス、濃縮物、またはサプリメントの形態で調製される。選択される手順に関係なく、化合物は、通常、飼料中に約0.05〜500ppmのレベルで存在するものとする。
【0076】
動物飼料プレミックス、サプリメントまたは濃縮物は、重量ベースで化合物約0.5〜50%を食用希釈剤約50〜99.5%と混ぜることにより調製することができる。動物飼料サプリメント、濃縮物、およびプレミックスの製造に使用するのに適している希釈剤には、以下のコーンミール、大豆ミール、ボーンミール、アルファルファミール、綿実油ミール、尿素、糖蜜、および他の類似材料が含まれる。飼料サプリメント、濃縮物、およびプレミックスにおける希釈剤の使用は、完成飼料における活性成分の分布の均一性を改善する。
【0077】
ブタ、ウシ、ヒツジ、およびヤギ用の飼料は、通常、飼料1トンあたり活性成分約0.05〜400グラムを含有する。家禽および家庭用ペット飼料は、飼料1トンあたり約0.05から400グラムまで様々である。
【0078】
本発明を、その具体的実施形態と関連して説明してきたが、当然のことながら、さらなる改変が可能であり、本出願は、一般に、本発明の原則に従い、本発明の技術分野の中で知られているか、あるいは習慣的なやり方に近いような本開示からの逸脱が含まれる本発明のいかなる変形、使用、または適応も包含することを意図している。以下の実施例および生物学的データは、本発明をさらに例示するために提供されるものである。この開示は、決して本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0079】
(実施例1)
(±)−4−(4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル)
【0080】
【化5】

【0081】
乾燥テトラヒドロフラン(50mL)中の水素化ナトリウム/鉱油(60%分散液、11g、270mmol)を、無水テトラヒドロフラン(90mL)中の3−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−ジヒドロ−フラン−2−オン(37.1g、281mmol)からなる冷たい(−15℃)撹拌した溶液に加えた。反応混合物を、追加の無水テトラヒドロフラン(100mL)を加えて希釈した。水素ガス放出終了後のこの撹拌した混合物に、カニューレを介し、無水テトラヒドロフラン(50mL)中の4−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(55.4g、289mmol)からなる溶液を加えた。反応混合物を、一夜撹拌し、その間に、室温まで徐々に温めた。酢酸エチル(100ml)を加え、溶液を、飽和水性塩化アンモニウム、水で、および飽和水性塩化ナトリウムで2回、洗浄した。有機層を、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮した。粗製の固体(86.72g)を、エタノールから再結晶すると、白色の結晶性固体65.47g(収率79.45%)が得られた。H NMR(400MHz;CDCl3)δ7.76(d,1H,J=8.5Hz)、7.42(d,1H,J=2.7Hz)、7.30(dd,1H,J=8.5,2.4Hz)、4.69(s,1H)、4.15(d,1H,J=9.0Hz)、4.09(d,1H,J=9.0Hz)、1.27(s,3H)、1.27(s,3H);19F NMR(376MHz;CDCl3)δ−62.70(s,3F);MS(APCI+)341.1(M+1+アセトニトリル)。
【0082】
(実施例2)
(R)−(+)−4−(4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル
【0083】
【化6】

【0084】
(±)−4−(4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル(実施例1)のエナンチオマーは、キラルHPLC(Chiralcel AD、250×4.6mm;移動相:1:1ヘキサン−イソプロパノール;流速:0.7mL/min)により分離した。
12.57g(カラム回収率21%);融点89.9〜90.7℃;[α]58925:+191.5°;19F NMR(376MHz;CDCl3)δ−62.70(s,3F);MS(APCI+)341.1(M+1+アセトニトリル);C1412NOの微量分析(理論値/実測値):C 56.19/56.25;H 4.04/3.86;N 4.68/4.67;F 19.05/18.64。
【0085】
(実施例3)
(S)−(−)−4−(4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル
【0086】
【化7】

【0087】
(±)−4−(4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル(実施例1)のエナンチオマーは、キラルHPLC(Chiralcel AD、250×4.6mm;移動相:1:1ヘキサン−イソプロパノール;流速:0.7mL/min)により分離した。
325mg(カラム回収率29.8%);融点83.1〜84.4℃;[α]58925:−184.2°;19F NMR(376MHz;CDCl3)δ−62.70(s,3F);MS(APCI−)298.0(M−1);C1412NOの微量分析(理論値/実測値):C 56.19/56.23;H 4.04/3.81;N 4.68/4.65;F 19.05/19.37。
【0088】
(実施例4)
(±)−4−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル
【0089】
【化8】

【0090】
水素化ナトリウム(鉱油中60%分散液、0.44g、18.34mmol)を、テトラヒドロフラン(25mL)中の2−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン(1.29g、12.6mmol)からなる冷たい(−10℃)撹拌した溶液に少量ずつ加えた。反応混合物を、約40分間撹拌した後、固体の4−フルオロ−(2−トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(2.0g、11.0mmol)を直接加えた。反応混合物を、一夜室温まで徐々に温めた。水を加え、生成物を、酢酸エチル中に抽出した。有機層を、飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮した。粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン中の25〜50%酢酸エチルのグラジエントで溶出すると、白色の固体が得られた。生成物を、酢酸エチル−ヘキサンから再結晶すると、白色の結晶性固体0.45g(収率16%)が得られた;融点120℃;H−NMR(400MHz;CDCl)δ7.79(d,1H,J=8.5Hz)、7.43(d,1H,J=2.4Hz)、7.33(dd,1H,J=8.5,2.4Hz)、5.08(t,1H,J=7.8Hz)、4.57(m,1H)、4.43(m,1H)、2.78(m,1H)、2.56(m,1H);19F−NMR(376MHz;CDCl)δ−62.72(s,3F);MS(APCI)270.0(M−1);C12Nの微量分析(理論値/実測値):C,53.15/53.01;H,2.97/2.81;N,5.16/4.97;F,21.02/21.24。
【0091】
(実施例5)
(+)−4−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル
【0092】
【化9】

【0093】
(±)−4−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル(実施例4)のエナンチオマーは、キラルHPLC(Chiralcel AD、250×4.6mm;移動相:20:80エタノール−ヘキサン;流速:0.8mL/min)により分離した。
[α]58925(CHCl):−164°;融点107〜108℃;MS(APCI−)270.0(M−1);C12Nの微量分析(理論値/実測値):C,53.15/52.98;H,2.97/3.01;N,5.16/4.97;F,21.02/21.51。
【0094】
(実施例6)
(−)−4−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル
【0095】
【化10】

【0096】
(±)−4−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル(実施例4)のエナンチオマーは、キラルHPLC(Chiralcel AD、250×4.6mm;移動相:20:80エタノール−ヘキサン;流速:0.8mL/min)により分離した。
[α]58925(CHCl):+170°;融点107〜108℃;MS(APCI−)270.0(M−1);C12Nの微量分析(理論値/実測値):C,53.15/52.77;H,2.97/2.88;N,5.16/4.97;F,21.02/20.46。
【0097】
(実施例7)
式Iの化合物は、アンドロゲン受容体に対する親和性を有する。この親和性は、ヒト受容体を用い、選択された化合物について証明された。以下の説明は、アッセイを行った方法について記載している。
【0098】
競合結合分析は、様々な濃度の試験薬剤およびトレーサーとしての固定濃度のH−ジヒドロテストステロン(H−DHT)の存在下または非存在下で、バキュロウイルス/Sf9で生成されたhAR抽出物に対して行った。この結合アッセイ方法は、以前に記載されたプロトコル(Liao S.、他J.Steroid Biochem.20:11−17 1984)の修正形態である。手短に言うと、漸減濃度の化合物を、hAR抽出物(Chang他P.N.A.S.Vol.89、pp.5546−5950、1992)、ヒドロキシルアパタイト、および1nM H−DHTの存在下で、4℃にて1時間インキュベートする。続いて、結合反応物を3回洗浄し、過剰の非結合H−DHTを完全に除去する。hARに結合したH−DHTレベルを、化合物の存在下で測定し(すなわち、競合結合)、競合物質が存在しない場合の結合レベル(すなわち、最大結合)と比較する。hARに対する化合物の結合親和性は、最大結合の2分の1が阻害される化合物の濃度として表される。以下の表Iは、選択された化合物について得られた結果を提供している(報告データは、以下に示すような複数の試験の平均値である)
【0099】
【表1】

【0100】
(実施例8)
アンドロゲン受容体に対するアンドロゲンの効果に拮抗する化合物の能力は、すぐ下に記載するような全細胞アッセイで測定した。
【0101】
AR拮抗薬細胞アッセイのための実験手順
細胞系:MDA−MB453−MMTVクローン54−19。この細胞系は、MDA−MB453細胞バックグラウンド(アンドロゲン受容体を発現するヒト乳癌細胞系)を持つ安定な形質移入細胞系である。まず、AREを含有するMMTV最小プロモーターを、ホタルルシフェラーゼリポーター遺伝子の前にクローニングした。次いで、カスケードを、トランスフェクションベクターpUV120puro中にクローニングした。MDA−MB−453細胞に形質移入するためにエレクトロポレーション法を用いた。ピューロマイシン耐性安定細胞系を選択した。
【0102】
細胞培養培地および試薬:
培養培地:DMEM(高グルコース、Gibcoカタログ番号:11960−044)、10%FBS、および1%L−グルタミン
プレーティング培地:DMEM(フェノールレッド非添加)、10%活性炭処理したHyClone血清、1%L−グルタミン
アッセイ培地:DMEM(フェノールレッド非添加)、1%活性炭処理したHyClone血清、1%L−グルタミン、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン
3×ルシフェラーゼ緩衝液:細胞溶解緩衝液中の2%β−メルカプトエタノール、0.6%ATP、0.0135%ルシフェリン
【0103】
アッセイ手順:
1.細胞を培養培地中に維持し、80〜90%コンフルエンスに達した場合に細胞を分割する
2.化合物を試験するため、1ウエルあたり10,000個の細胞を、100ul/ウエルのプレーティング培地中で不透明な96ウエル培養プレートにプレートし、細胞培養インキュベーター内で37℃にて一夜培養する
3.プレーティング培地を注意深く取り除き、次いで、80ul/ウエルの予熱したアッセイ培地を加え、10ul/ウエルの試験化合物(1000nM、200nM、40nM、8nM、1.6nM、および0.32nMの最終濃度)を加え、37℃にて30分間インキュベートする
4.10ul/ウエルの新たに調製したDHT(100pMの最終濃度)を各ウエルに加え、37℃にて17時間(一夜)インキュベートする
5.50ul/ウエルの3×ルシフェラーゼ緩衝液を加え、室温にて5分間インキュベートし、次いで、Luminometerでカウントする
【0104】
試験化合物の非存在下での100pM DHTによるバックグラウンドを超える発光量比を、100%として標準化し、実験結果を、試験化合物による阻害の割合として表す。
【0105】
結果を以下の表IIに記載する。結果を、以下に記載されるように、複数の試験の平均値として報告する(試験数を脚注に示す)。N.D.は、その化合物が試験されていないことを示す。
【0106】
【表2】

【0107】
(実施例9)
皮脂生成の阻害のための動物モデル
Luderschmidt他は、化合物が、皮脂生成を調節することができるか否かを試験するための動物モデルについて記載している。Arch.Derm.Res.258、185−191(1977)。このモデルは、それらの耳が皮脂腺を含有する雄性シリアハムスターを用いている。実施例1および2の生成物を、このモデルでスクリーニングした。
【0108】
皮脂阻害のための試験は、以下の方法で行った。9〜10週齢の雄性シリアハムスターを、実験室環境中に導入し、試験における使用に先立って2週間馴化させた。各群は、5匹の動物からなり、媒体および陽性対照と並行して実行した。投与に先立って、十分な量の各化合物を、トランスクトール(transcutol)、プロピレングリコール、およびエタノール(2/2/6 v/v/v)からなる溶媒1mLに溶かし、表IIIに記載されている最終濃度を得た。
【0109】
動物に、1日2回、1週あたり5日、4週間、局所的に投与した。各投与量は、媒体対照または薬物25マイクロリットルからなっていた。投与は、右耳と左耳双方の腹側表面に塗布した。すべての動物を、最終投与の約18〜24時間後に致死せしめた。各動物から右耳を集め、皮脂分析のために使用した。
【0110】
耳は、以下の方法でHPLC分析のために調製した。サンプル領域を規格化するための耳の解剖学的な「V」マークのすぐ上で、1つの8mmの遠位生検パンチを採取した。このパンチを分析した。腹側生検表面(局所投与が、皮脂腺に直接適用された領域)を試験のために保管し、生検パンチの背側表面は廃棄した。
【0111】
組織サンプルに窒素ガスを吹き付け、HPLC分析まで窒素下で−80℃にて保存した。耳サンプルの他に、各薬物および媒体の一定分量(少なくとも250ul)も、HPLC分析に含めるために−80℃にて保存した。
【0112】
HPLC分析は、組織サンプルの抽出物について行った。組織サンプルを、溶媒(2,2,4−トリメチルペンタンとイソプロピルアルコールの4:1混合物)3mlと接触させた。混合物を15分間振盪し、光から守って室温にて一夜保存した。翌朝、水1ミリリットルをサンプルに加え、15分間振盪した。次いで、サンプルを、約1500rpmにて15分間遠心分離した。有機層(上層)2mlをガラスバイアルに移し、窒素下で37℃にて約1時間乾燥し、次いで、約48時間凍結乾燥した。次いで、サンプルを、凍結乾燥器から取り出し、各バイアルを、溶媒A(トリメチルペンタン/テトラヒドロフラン(99:1))600μlで再構成した。次いで、サンプルに再び蓋をし、5分間ボルテックスした。
【0113】
次いで、各サンプル200μlを、200μLのガラスインサートにより予め標識した200μlのHPLCバイアルに移した。HPLCバイアルを、Agilent1100シリーズHPLCユニット用のオートサンプラートレイに入れた。Agilent1100HPLCシステムは、恒温オートサンプラー、クォータナリポンプ、カラムヒーター、およびA/Dインターフェースモジュールからなっていた。すべての部品は、Agilent ChemStationソフトウエアにより制御した。Waters Spherisorb S3W 4.6×100mm分析カラムを、Agilentカラムヒーターユニットにより30℃に維持した。HPLCオートサンプラーは、実行中に20Cにサンプル温度を維持するようにプログラムした。
【0114】
各サンプル10uLを、カラムに3回ずつ注入した。溶媒グラジエントには2種の溶媒を使用した。溶媒Aは、トリメチルペンタンとテトラヒドロフランの混合物(99:1)とした。溶媒Bは、酢酸エチルとした。利用したグラジエントを、下表に記載する。
【0115】
【表3】

【0116】
Sedex 75 Evaporative Light Scattering Detector(ELSD)を、ゲイン5、および3.1バールに維持したN圧で45℃にて操作した。機器によって得られたアナログ信号を、それをデジタル出力に変換するAgilent A/Dインターフェースモジュールに送った。変換は、10000mAU/ボルト設定点に基づき、データ速度は、10Hz(0.03分)に設定した。次いで、得られたデジタル出力を、ピーク面積を積分するためのAgilent ChemStationソフトウエアに送り入れた。
【0117】
HPLC分析の結果を、以下の表IIIで報告する。結果は、媒体対照と比較したコレステロールエステル(CE)およびワックスエステル(WE)生成の減少として報告する。負の値は、皮脂の増加を反映し、一方、正の値は、減少を反映している。
【0118】
【表4】

【0119】
(実施例10)
アンドロゲン性脱毛症の動物モデル
上記に記載したように、脱毛症は、医学がかなりの資源を注ぎ込んできた問題である。いかなる疾患プロセスとも同様に、科学者が化合物の潜在的な相対的有効性をスクリーニングすることを可能にする動物モデルが開発されている。これらの動物モデルにおいて最高の有効性を示す化合物には、ヒトにおけるさらなる研究が考慮される。今日まで、脱毛症には2種の異なる動物モデルが開発されている。一番目は、雌性C3H/HeNマウスを使用するテロゲン変換アッセイである。2番目のモデルは、アンドロゲン性脱毛症にかかっているサルであるベニガオザルを使用している。
【0120】
テロゲン変換アッセイは、マウスにおいて発毛周期の休止期(「テロゲン」)を発毛周期の活動期(「アナゲン」)に変換する化合物の潜在力を測定する。このアッセイは、7週齢のC3H/HeNマウスの柔毛(すなわち、毛髪)が、テロゲン期にあるという事実を利用している。この期は、約75日齢まで続く。このアッセイにおいて、マウスの選択された領域を剃り、試験薬剤、または対照と接触させ、発毛速度の差を測定する(すなわち、アナゲン期の誘導)。アナゲンの最初の徴候は、着色した毛髪の生成に備えて濾胞中のメラニン細胞がメラニンを合成し始める時の皮膚色の黒ずみである。このモデルは、多くの利点を有する。これには、雌性CH3HeNマウスの入手しやすさ、多数の化合物を素早くスクリーニングする能力、およびそのような動物を収容し取り扱う容易さが含まれる。
【0121】
このモデルの第一の不利な点は、アンドロゲン依存性がないことである。ヒト禿頭症の正確な原因は不明であるが、アンドロゲンが、頭皮における毛包の退行を誘発することは十分に立証されている。この思春期後の退行性変化は、男性型禿頭症(すなわち、アンドロゲン性脱毛症)の基本的原因である。この現象は、前に述べたように、脱毛症の遺伝形質を受け継いでいる男性と女性の双方に起きる。ヒト頭皮に対するアンドロゲンの効果に関するより詳細な議論については、読者の注意は、Trueb,RM、Molecular Mechanisms of Androgenic Alopecia、Exp.Gerontology、2002、27:981−990に向けられる。
【0122】
研究者は、発毛が、ヒトの発毛と類似している他の動物を探した。これらは、研究者をベニガオザルに導いた。これらの霊長類も、アンドロゲン性脱毛症にかかっている。本質的に、思春期後のマカクはすべて、両性とも、禿頭症の発症を示す。ヒトにおける男性型禿頭症の発症と同様、アンドロゲンは、マカクの禿頭症における不可欠な誘発要素である。前頭部頭毛の薄化は、テストステロンの血清レベルが雄性動物において劇的に上昇するほぼ同年齢(4歳)で現れ始める。雌におけるテストステロンの上昇は、雄レベルの上昇の約10分の1であるが、雄ベニガオザルと雌ベニガオザルの間の禿頭症の発生率および発症年齢に差は認められない。抗アンドロゲン薬の局所塗布は、雌雄の動物におけるこの禿頭症を食い止めた(Pan,H J他、Evaluation of RU58841 as an anti−androgen in prostate PC3 cells and a topical anti−alopecia agent in the bald scalp of stump tailed macaques.Endocrine 1998;9:39−43)。
【0123】
このモデルは、ヒト禿頭症のモデルとしてテロゲン変換アッセイを上回る著しい改良であるが、多くの実践上の欠点に遭う。マカクは、高価で、比較的まれで、飼育するのに手間がかかり、試験の間に長いウオッシュアウト期間を必要とする。したがって、マカクは、多数の化合物をスクリーニングするための実用的モデルではない。
【0124】
抗アンドロゲン試験化合物を評価する場合、雄性C3H/HeNマウスがテロゲン変換アッセイで使用できることが発見されている。したがって、このモデルは、既存のテロゲン変換アッセイの変形形態に関する。約7週齢の雄性C3H/HeNマウスを利用する。これらの動物も、それらの雌性対応物と同様、一律にテロゲンにある。しかしながら、一旦剃られると、これらの雄性マウスに生得的に存在するアンドロゲンは、毛包のアナゲン期への変換を阻害する。抗アンドロゲン薬は、このアンドロゲン効果を遮断するはずで、濾胞は、それらの雌性対応物と同様、アナゲンに変換するはずである。
【0125】
(実施例10A)
実施例1に記載されている化合物は、上記に記載されている改良テロゲン変換アッセイを利用するさらなる試験を受けた。試験は、以下のように行った。
【0126】
試験には、6〜7週齢の雄性C3H/HeNマウス(Charles River Laboratories、Raleigh、NC)を使用した。試験の開始に先立って、マウスの背部から柔毛を刈り取った。テロゲン期の視覚徴候であるピンク色の皮膚をしたマウスのみを、試験に組み込むために選択した。
【0127】
試験化合物は、トランスクトール、プロピレングリコールおよびエタノール(2/2/6 v/v/v)からなる媒体に溶かし、1%w/vの濃度を得た。適切な投与量を、20μl/cmの容積で一方の試験群(7〜10匹のマウス)においてマウスの刈り取った背部へ局所的に塗布した。対照の役割を果たす動物の第2の群は、媒体のみを受けた。処置は、4週間にわたり1日2回塗布した。
【0128】
処置領域を観察し、発毛の徴候について1日おきに採点した。発毛反応は、各動物について、処置領域に発毛の徴候が初めて現れた日を記録することにより定量化した。アナゲンの最初の徴候は、着色した毛髪の生成に備えて濾胞中のメラニン細胞がメラニンを合成し始める時の皮膚色の黒ずみとした。マウスを35日以上観察した。
【0129】
アナゲンは、以下の図1に示すように、媒体対照群において起きる前に、試験群において開始した。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】アナゲンは、以下の図1に示すように、媒体対照群において起きる前に、試験群において開始した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式の化合物、またはその塩
【化1】

[式中、
a)Xは、ハロゲン、シアノ、C〜Cアルコキシ、ハロアルコキシ、またはハロアルキルによって表され、
b)Xは、存在しないか、またはハロゲン、シアノ、C〜Cアルコキシ、ハロアルコキシ、もしくはハロアルキルによって表され、
c)nは、1〜4の整数によって表され、
d)Rは、
i.水素、
ii.ハロゲン、
iii.シアノ、
iv.ヒドロキシ、
v.置換されていてもよい(C〜C12)アルキル、
vi.置換されていてもよい(C〜C12)アルケニル、
vii.置換されていてもよい(C〜C12)アルキニル、
viii.置換されていてもよい(C〜C10)シクロアルキル、
ix.アルキルおよびシクロアルキル部分が、各々、置換されていてもよい(C〜C10)シクロアルキル(C〜C)アルキル、
x.置換されていてもよい(C〜C10)アリール、
xi.アルキルおよびアリール部分が、各々、置換されていてもよい(C〜C10)アリール(C〜C)アルキル、
xii.(CH−SR
xiii.(CH−OR
xiv.(CH−NR
xv.(CH−COOR
xvi.(CH−CONR
xvii.(CH−NRCOR、および
xviii.(CHOCORからなる群から選択される置換基によって表され、
d)zは、0〜6の整数によって表され、
e)Rは、水素、(C〜C12)アルキル、(C〜C12)アルケニル、(C〜C12)アルキニル、置換されていてもよい(C〜C10)アリール、および(C〜C10)アリール(C〜C)アルキル(ここで、アルキルおよびアリール部分は、各々、置換されていてもよい)からなる群から選択される置換基によって表され、
f)Rは、水素または(C〜C12)アルキルからなる群から選択される置換基によって表される]。
【請求項2】
が、ハロゲンまたはハロアルキルであり、Xが、存在しない請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、クロロまたはトリフルオロメチルであり、2または6位に位置している請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
nが、1である請求項1、2または3に記載の化合物。
【請求項5】
が、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、およびハロアルコキシからなる群から選択される請求項1、2、3または4に記載の化合物。
【請求項6】
i)(±)−4−(4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
ii)(R)−(+)−4−(4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
iii)(S)−(−)−4−(4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
iv)(±)−4−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
v)(+)−4−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル、および;
vi)(−)−4−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル;
からなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
(R)−(+)−4−(4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項8】
医薬品としての請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項9】
アンドロゲン受容体の活性化を阻害するための医薬品の製造における請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項10】
ホルモン依存性癌、良性の前立腺過形成、ざ瘡、男性型多毛症、過剰皮脂、脱毛症、月経前症候群、肺癌、思春期早発症、骨粗鬆症、性腺機能低下症、筋肉量の加齢に関連した減少、および貧血からなる群から選択される状態を緩和するための医薬品の製造における請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項11】
1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤との混合物中に請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項12】
皮膚塗布に適している1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤との混合物中に請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物を含む局所用医薬製剤。
【請求項13】
ざ瘡、脱毛症、および油性皮膚からなる群から選択される状態を緩和するための化合物の利用方法を消費者に助言する、小売流通のために包装された請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物を含む製品。
【請求項14】
脱毛症、過剰皮脂および男性型多毛症からなる群から選択される状態を緩和するための医薬品の製造における請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項15】
(±)−4−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−2−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル、またはその塩。

【図1】
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【公表番号】特表2008−511606(P2008−511606A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529030(P2007−529030)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002700
【国際公開番号】WO2006/024942
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミテッド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】