イオンゲル及びその製造方法
【課題】所望の形状・寸法の電解質等を形成することが可能なイオンゲルを得る。
【解決手段】高分子となるイオンゲル用モノマーとイオン液体とを含む第1混合溶液と、前記イオン液体に対して相分離を起こす溶媒とを混合して第2混合溶液とする。この第2混合液中に、前記イオンゲル用モノマーと前記イオン液体を含むエマルジョンを形成させ、次に、このエマルジョンに含まれる前記イオンゲル用モノマーを重合させて高分子とする。これに伴って該高分子のネットワークに前記イオン液体が取り込まれ、その結果、前記高分子と前記イオン液体の相溶化合物であるイオンゲルが粒体として得られる。
【解決手段】高分子となるイオンゲル用モノマーとイオン液体とを含む第1混合溶液と、前記イオン液体に対して相分離を起こす溶媒とを混合して第2混合溶液とする。この第2混合液中に、前記イオンゲル用モノマーと前記イオン液体を含むエマルジョンを形成させ、次に、このエマルジョンに含まれる前記イオンゲル用モノマーを重合させて高分子とする。これに伴って該高分子のネットワークに前記イオン液体が取り込まれ、その結果、前記高分子と前記イオン液体の相溶化合物であるイオンゲルが粒体として得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン伝導性を示し、例えば、燃料電池に使用する電解質として好適なイオンゲル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン液体は、例えば、プロトン(H+)やリチウムイオン(Li+)等の各種のイオンを伝導する特性を示す液体として知られている。さらに、その蒸気圧が測定下限値を下回るとともに、凝固温度が低い性質を併せ持つ。換言すれば、殆ど揮発せず、且つ寒冷地であっても固相に変化し難い。従って、広範囲の温度域にわたって優れたイオン伝導体となり得る。このため、イオン液体は、燃料電池、二次電池、キャパシタ、色素増感型太陽電池等の各種デバイスの好適な電解質となり得る。
【0003】
しかしながら、電解質が液体である場合、上記したデバイスが何らかの理由で破損したり、デバイスに振動が加わることでシール機能が劣化したりしたときに電解質が漏洩してしまうことが懸念される。
【0004】
この懸念を払拭するには、非特許文献1に記載されているように、イオン液体をゲル化してイオンゲルとすることが有効であるとも考えられる。この場合、イオン液体は、高分子が形成するネットワークの中に取り込まれることで該高分子と相溶化し、これにより弾力性を示す固相(すなわち、イオンゲル)となる。このような固相のイオンゲルを電解質として採用した場合、仮にデバイスが破損したとしても、電解質が固相であるために漏洩することが回避される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】シロウ・セキ(Shiro Seki)ら著、「ジャーナル・オブ・フィジックスケミカルビー(J. Phys. Chem. B)」 2005年発行 第109巻第9号 第3886頁〜第3892頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1の記載によれば、イオンゲルは、以下のようにして得られる。すなわち、先ず、高分子の原材料となるモノマー、架橋剤及び重合開始剤をイオン液体に溶解して重合用溶液を調製する。
【0007】
次に、この重合用溶液を型に注入し、その後、前記型内で前記モノマーを重合させる。この重合に伴って高分子が生成するとともに、該高分子のネットワークにイオン液体が取り込まれる。換言すれば、高分子とイオン液体が相溶化してイオンゲルとなる。
【0008】
このことから諒解されるように、非特許文献1に開示された製造方法によれば、イオンゲルを、型(キャビティ)の形状に対応するバルク体として得ることができるのみである。すなわち、この製造方法には、イオンゲルを所望の形状として得ることができないという不具合が顕在化している。
【0009】
また、ゲルは周知の通り弾力性が著しく大きく、このために可塑性に乏しい。従って、非特許文献1の記載に従って得られたイオンゲルに対してプレス成形を行うことで所望の形状に成形することもできない。さらに、イオンゲルを用いて射出成形を行うことも不可能である。
【0010】
以上のように、非特許文献1に開示された製造方法では、イオンゲルを、デバイスの形状・寸法に対応する適切な形状・寸法で得ることができないという不具合がある。
【0011】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、所望の形状・寸法の電解質等を形成することが可能なイオンゲル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明に係るイオンゲルは、高分子とイオン液体の相溶化合物からなり、且つ粒径が1nm〜1mmの粒体であることを特徴とする。ここで、粒径は、走査型電子顕微鏡で二次元平面として視認される粒体(概ね楕円形状か真円形状)の長径と短径の平均値として定義される。
【0013】
すなわち、本発明に係るイオンゲルは、粒径が微細な粒体、換言すれば、微粒子である。このために可塑性に富むので、該イオンゲルを、充填箇所の形状に対応した形状で充填することや、所望の形状の凝集体(ないし圧粉成形体)とすることが可能である。従って、例えば、燃料電池の電解質等、デバイスの形状に応じてイオンゲルの凝集体(ないし圧粉成形体)の形状を設定することができる。
【0014】
なお、イオンゲルの粒径が1nmよりも小さいと、イオンゲルの分子数が十分でなくなるのでイオン伝導度が低下する傾向がある。また、1mmを超えると、可塑性が低下して所望の形状に充填したり、所望の形状の凝集体(ないし圧粉成形体)とすることが容易でなくなる。
【0015】
また、本発明に係るイオンゲルの製造方法は、イオンゲルの原材料となるイオンゲル用モノマーと、イオン液体とを混合して第1混合溶液を調製する工程と、
前記イオン液体を添加した際に該イオン液体に対して相分離を起こす溶媒と、前記第1混合溶液とを混合することで第2混合溶液を調製するとともに、該第2混合溶液にエマルジョンを生成させる工程と、
前記エマルジョンに含まれる前記イオンゲル用モノマーを重合させて高分子とするとともに、該高分子と前記イオン液体を相溶化させて粒状のイオンゲルを得る工程と、
を有することを特徴とする。
【0016】
このように、高分子となるイオンゲル用モノマーとイオン液体との微細なエマルジョンを形成した後、該エマルジョン中の前記イオンゲル用モノマーを重合させて高分子に変化させるとともに、該高分子とイオン液体との相溶化合物を生成することにより、上記した構成の粒状イオンゲルを容易且つ簡便に得ることができる。
【0017】
なお、前記第2混合溶液を、界面活性剤を含むものとして調製することが好ましい。この界面活性剤の作用により、エマルジョンの形成が促進されるとともに、形成されたエマルジョンが破壊されることが阻害される。従って、微細なエマルジョン、ひいては微細なイオンゲルを得ることが容易となる。
【0018】
また、エマルジョンを形成する工程、又はイオンゲル用モノマーを重合させる工程の少なくともいずれかにおいて、前記第2混合溶液を冷却することが好ましい。エマルジョンは、高温下では比較的破壊され易いので、イオンゲルを粒体として得ることが容易でなくなるからである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高分子となるイオンゲル用モノマーとイオン液体との微細なエマルジョンを形成した後、該エマルジョン中の前記イオンゲル用モノマーを重合させて高分子に変化させるとともに、該高分子とイオン液体との相溶化合物を生成するようにしているので、イオンゲルを微細な粒体(微粒子)として得ることができる。
【0020】
粒体であるイオンゲルは可塑性に富むので、所望の形状をなす充填物や凝集体(ないし圧粉成形体)とすることが可能である。従って、このイオンゲルを用いて充填物、凝集体(ないし圧粉成形体)を作製することにより、例えば、燃料電池の電解質を所望の形状のものとして得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係るイオンゲルの模式的な断面図である。
【図2】実施例1のイオンゲルの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図3】実施例1のイオンゲルのEDXスペクトル測定パターンである。
【図4】実施例2のイオンゲルのSEM写真である。
【図5】実施例2のイオンゲルのEDXスペクトル測定パターンである。
【図6】実施例3のイオンゲルのSEM写真である。
【図7】実施例3のイオンゲルのEDXスペクトル測定パターンである。
【図8】実施例4のイオンゲルのSEM写真である。
【図9】実施例4のイオンゲルのEDXスペクトル測定パターンである。
【図10】実施例5のイオンゲルのSEM写真である。
【図11】実施例5のイオンゲルのEDXスペクトル測定パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るイオンゲル及びその製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態に係るイオンゲル10の模式的な断面図である。この場合、イオンゲル10は、概ね球体に近似される微細な粒体、換言すれば、微粒子である。
【0024】
図1においては、イオンゲル10の直径に沿う断面を示している。イオンゲル10の粒径は、上記したように図1におけるD1とD2の平均値として示されるが、この場合、D1とD2は略同等である。
【0025】
このイオンゲル10は、イオン液体と高分子との相溶化合物からなる。すなわち、該イオンゲル10は、イオン液体が高分子のネットワークに取り込まれて形成されたものである。
【0026】
イオンゲル10を電解質として採用する場合、イオン液体としては、目的とするイオンを伝導することが可能な物質を選定すればよい。例えば、燃料電池の電解質とする場合、プロトンを伝導可能な物質を選定するようにする。具体的には、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、エチルメチルプロピルアンモニウムノナフルオロブタンスルホネート等を例示することができる。さらに、これらのイオン液体に対し、プロトン伝導機能の向上を目的として、リン酸、トリフルオメタンスルホン酸、パーフルオロスルホン酸高分子粉末のような酸塩基化合物を混合したものであってもよい。なお、酸塩基化合物については、イオンゲル微粒子を合成した後に酸塩基化合物をこの微粒子と混合することによって、該微粒子内のイオン液体に添加混合もしくは接触させることも可能である。このことによっても、プロトン伝導性向上効果を発現させることができる。
【0027】
一方、高分子としては、使用されるイオン液体をそのネットワーク中に取り込んで相溶化合物を形成するものが選定される。イオン液体が上記した物質である場合、その好適な例としては、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル等の重合性ビニルモノマーが重合した高分子が挙げられる。
【0028】
なお、高分子は、前記ネットワークが共有結合を介して架橋されたものであることが一層好ましい。この場合、イオンゲルに適度な強度が発現し、このために形状維持が容易となるからである。
【0029】
イオンゲル10の好適な粒径(D1とD2の平均値)は、1nm〜1mmの範囲内である。1nmよりも小さいと、イオンゲル10の分子数が十分でなくなるのでイオン伝導度が低下する傾向がある。また、1mmを超えると、可塑性が低下するので所望の形状の充填物や凝集体(ないし圧粉成形体)を得ることが容易でなくなる。イオンゲル10の一層好適な粒径は、10nm〜100μmである。
【0030】
粒径が1nm〜1mmであるイオンゲル10は、極めて微細な微粒子である。このため、充填箇所の形状に対応した形状で充填したり、所望の形状の凝集体(ないし圧粉成形体)とすることが可能である。従って、このイオンゲル10から燃料電池の電解質を得ようとする場合には、例えば、予め所定形状として形成されたシール部材内にイオンゲル10の微粒子を充填すればよい。
【0031】
このように、本実施の形態によれば、デバイスに応じた所望の形状の電解質を得ることができる。
【0032】
次に、本実施の形態に係るイオンゲル10の製造方法につき説明する。イオンゲル10は、イオンゲル用モノマーとイオン液体のエマルジョンを形成した後、該エマルジョン中の前記イオンゲル用モノマーを重合させることで得ることができる。
【0033】
具体的には、先ず、イオンゲルを得るためのイオン液体とイオンゲル用モノマーとを混合して第1混合溶液を調製する。第1混合溶液には、さらに、イオンゲル用モノマーの重合を促進するための重合開始剤又は架橋剤の少なくともいずれか一方を添加することもできる。
【0034】
イオン液体としては、上記の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート等が例示され、また、イオンゲル用モノマーとしては、このイオン液体に対して可溶であるポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル等の重合性ビニルモノマーが例示される。
【0035】
重合開始剤としては、上記したイオンゲル用モノマーの重合を促進し且つイオン液体に対して可溶である物質が選定される。その好適な例としては、ラウロイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジヒドロクロライド、過酸化ベンゾイル等、分解に伴ってラジカルを発生し得る物質が挙げられる。
【0036】
また、架橋剤としては、上記したイオンゲル用モノマーが重合することで形成されたネットワークを架橋することが可能であり、且つイオン液体に対して可溶である物質が選定される。その好適な例としては、N,N−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート等の重合性ビニル基を複数個有するものが挙げられる。
【0037】
その一方で、イオン液体と混合した際に該イオン液体に対して相分離を起こす溶媒を用意する。この溶媒は、イオン液体と2相に分離するものであれば特に限定されるものではないが、イオン液体が上記した物質である場合、その好適な例としては水が挙げられる。この場合、安価であり且つ入手が極めて容易であるという利点がある。
【0038】
なお、後述する理由から、この溶媒に対して界面活性剤を添加することが好ましい。溶媒が水である場合、界面活性剤の好適な例としては、非イオン活性剤であって且つHLBの値が12以上のものが挙げられる。
【0039】
次に、この溶媒と、上記のようにして調製した第1混合溶液とを混合する。これにより、第2混合溶液が調製される。
【0040】
この混合の際には、マグネチックスターラ、撹拌翼、ホモジナイザ又は超音波分散装置等を用い、強制的な機械的撹拌を行う。これにより、イオンゲル用モノマーとイオン液体とでエマルジョンが形成される。なお、前記溶媒に界面活性剤が添加されている場合、エマルジョンの形成が促進されるとともに、形成されたエマルジョンが破壊されることが阻害される。すなわち、エマルジョンを微細形状に維持することが容易となる。
【0041】
なお、第2混合溶液の温度が過度に高いと、エマルジョンが破壊され易くなる傾向がある。従って、第2混合溶液を収容した容器をオイルバスに浸漬する等して冷却を行い、第2混合溶液の温度を40℃以下に保つことが好ましい。
【0042】
この状態で放置すれば、エマルジョン中のイオンゲル用モノマーの重合が自発的に開始して進行する。又は、第2混合溶液の温度が上昇しない程度に紫外線を照射することで重合を開始させるようにしてもよい。第2混合溶液の温度が過度の上昇すると上記同様にエマルジョンが破壊される懸念があるので、この工程でも第2混合溶液を冷却することが一層好ましい。
【0043】
イオンゲル用モノマーの重合が進行すると、高分子のネットワークが形成されるとともに、該ネットワーク中にイオン液体が取り込まれる。その結果、高分子とイオン液体の相溶化合物であるイオンゲルが生成する。
【0044】
イオンゲルは、各エマルジョンがゲル化することで形成されたものであるので微細である。すなわち、粒径が1nm〜1mmの微粒子となる。なお、粒径は、例えば、反応時間を適宜設定することで調節することができる。
【0045】
イオンゲルを単独で得るには、上記のようにして得られたイオンゲルを、遠心分離や濾過等によって分離し、乾燥すればよい。以上のようにして、イオンゲル10を粒体として得ることができる。
【実施例1】
【0046】
イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを0.7g秤量し、これに対して、0.19g(1.9×10-3mol)のメタクリル酸メチルモノマー、0.008g(4×10-5mol)のエチレングリコールジメタクリレート、0.006g(4×10-4mol)のアゾビスイソブチロニトリルを溶解して第1混合溶液を調製した。
【0047】
その一方で、20mlの脱イオン水に対し、非イオン性界面活性剤であるイゲパールDM−970(アルドリッチ社製ポリオキシエチレンノニルフェノールの商品名、HLB=19)を0.07g溶解した。
【0048】
次に、前記第1混合溶液と、イゲパールDM−970を溶解した前記脱イオン水とを混合して第2混合溶液とし、さらに、第2混合溶液をバスにて氷冷しながら60分間、マグネチックスターラで激しく撹拌した。にその結果、第2混合溶液にエマルジョンが形成された。
【0049】
前記第2混合溶液を冷却して5℃に保ちつつ、波長254nmのUVランプを照射してメタクリル酸メチルモノマーを重合させた。これにより、ポリメタクリル酸メチルのネットワークに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが取り込まれた、換言すれば、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが相溶化したイオンゲル微粒子を得た。
【0050】
次に、前記イオンゲル微粒子を精密濾過にて分離した後、脱イオン水で洗浄し、さらに、60℃で真空乾燥を施した。このイオンゲル微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図2に示す。図2から、イオンゲル微粒子の二次元平面形状が略真円形状であることが分かる。なお、粒径は小さいもので5〜10μm程度、大きいもので50μm程度であった。
【0051】
また、このイオンゲル微粒子を用いてEDXスペクトル測定を行った。スペクトルパターンを図3に示す。
【0052】
この図3から、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの構成原子であるF原子及びS原子に由来するピークが出現していることが認められる。このことから、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドがイオンゲル微粒子に含まれていること、すなわち、イオンゲル微粒子が、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物であることが明らかである。
【実施例2】
【0053】
1.0gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに対し、2.0g(0.028mol)の酢酸ビニルモノマー、0.12g(6×10-4mol)のエチレングリコールジメタクリレート、0.01g(6×10-4mol)のアゾビスイソブチロニトリルを溶解して第1混合溶液を調製した。
【0054】
その一方で、20mlの脱イオン水に対してイゲパールDM−970を0.07g溶解した。
【0055】
以降は実施例1に準拠し、前記第1混合溶液と非イオン性界面活性剤を溶解した前記脱イオン水とで第2混合溶液を得た後、第2混合溶液をバスにて氷冷しながら60分間、マグネチックスターラで激しく撹拌した。その結果、第2混合溶液にエマルジョンが形成された。
【0056】
前記第2混合溶液を冷却して5℃に保ちつつ、波長254nmのUVランプを照射して酢酸ビニルモノマーを重合させた。これにより、ポリ酢酸ビニルのネットワークに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが取り込まれ、ポリ酢酸ビニルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物であるイオンゲル微粒子を得た。
【0057】
このイオンゲル微粒子を精密濾過にて分離した後、脱イオン水で洗浄し、さらに、60℃で真空乾燥を施した。図4は、このイオンゲル微粒子のSEM写真である。この図4に示すように、このイオンゲル微粒子の二次元平面形状も略真円形状である。なお、粒径は小さいもので1〜3μm程度、大きいもので10μm程度であった。
【0058】
また、このイオンゲル微粒子を用いてEDXスペクトル測定を行った。スペクトルパターンを図5に示す。この図5から、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの構成原子であるF原子及びS原子がイオンゲル微粒子に含まれていること、すなわち、イオンゲル微粒子が、ポリ酢酸ビニルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物であることが諒解される。
【実施例3】
【0059】
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを1.0g、メタクリル酸メチルモノマーを1.0g(0.01mol)、エチレングリコールジメタクリレートを0.04g(2×10-4mol)、アゾビスイソブチロニトリルを0.05g(2×10-4mol)用いて第1混合溶液を調製した。また、20mlの脱イオン水に対してイゲパールDM−970を0.07g溶解した。
【0060】
以上の溶液同士を混合して第2混合溶液を得た後、第2混合溶液をバスにて氷冷しながらホモジナイザで10分間、激しく撹拌した。その結果、第2混合溶液にエマルジョンが形成された。
【0061】
次に、前記第2混合溶液を冷却して5℃に保ちつつ、波長254nmのUVランプを照射してメタクリル酸メチルモノマーを重合させた。これにより、実施例1と同様に、ポリメタクリル酸メチルのネットワークに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが取り込まれ、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物であるイオンゲル微粒子を得た。
【0062】
このイオンゲル微粒子を精密濾過にて分離した後、脱イオン水で洗浄し、さらに、60℃で真空乾燥を施した。図6に、このイオンゲル微粒子のSEM写真を示す。この図6と図2を対比して諒解されるように、この場合、イオンゲル微粒子の二次元平面形状は実施例1と同様に略真円形状であるが、その粒径は、実施例1に比して小さくなっている。具体的には、大多数が1μm未満であり、大きいものでも3μm強程度である。このことは、エマルジョンを微細化する能力に優れるホモジナイザを用いることにより、粒径を容易に制御し得ることを意味する。
【0063】
図7は、このイオンゲル微粒子を用いて測定したEDXスペクトルのスペクトルパターンである。この図7においても、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの構成原子であるF原子及びS原子に由来するピークが出現していることが認められる。
【実施例4】
【0064】
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを1.0g、メタクリル酸メチルモノマーを1.0g(0.01mol)、エチレングリコールジメタクリレートを0.04g(2×10-4mol)、アゾビスイソブチロニトリルを0.05g(2×10-4mol)用いて第1混合溶液を調製した。また、20mlの脱イオン水に対し、ラテムルPD−450(花王ケミカル社製の非イオン系界面活性剤の商品名、HLB=16.2)を1.0g溶解した。
【0065】
以上の溶液同士を混合して第2混合溶液を得た後、第2混合溶液をバスにて氷冷しながらホモジナイザで10分間、激しく撹拌した。その結果、第2混合溶液にエマルジョンが形成された。
【0066】
次に、前記第2混合溶液を冷却して5℃に保ちつつ、波長254nmのUVランプを照射してメタクリル酸メチルモノマーを重合させた。これにより、実施例1と同様に、ポリメタクリル酸メチルのネットワークに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが取り込まれ、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物であるイオンゲル微粒子を得た。
【0067】
このイオンゲル微粒子を精密濾過にて分離した後、脱イオン水で洗浄し、さらに、60℃で真空乾燥を施した。図8に、このイオンゲル微粒子のSEM写真を示す。この場合も、イオンゲル微粒子の二次元平面形状は実施例1、3と同様に略真円形状であり、その粒径は、小さいもので1〜5μm程度、大きいもので10μm程度であった。
【0068】
また、このイオンゲル微粒子を用いて測定したEDXスペクトルのスペクトルパターンを図9に示す。この図9から明らかな通り、実施例4においても、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの構成原子であるF原子及びS原子に由来するピークが出現していること、すなわち、イオンゲル微粒子にイオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが含まれていることが認められる。
【実施例5】
【0069】
1.0gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに対し、1.0g(0.01mol)のメタクリル酸メチルモノマー、0.04g(2×10-4mol)のエチレングリコールジメタクリレート、0.05g(2×10-4mol)のアゾビスイソブチロニトリルを用いて第1混合溶液を調製した。この第1混合溶液に対し、20mlの脱イオン水を添加して第2混合溶液とした。
【0070】
この第2混合溶液をホモジナイザで10分間、激しく撹拌した。その結果、第2混合溶液にエマルジョンが形成された。さらに、この第2混合溶液に対して波長254nmのUVランプを照射することで、メタクリル酸メチルモノマーを重合させた。
【0071】
すなわち、この実施例5では、界面活性剤を用いず、また、エマルジョンの形成時やメタクリル酸メチルモノマーの重合時に冷却を行わなかったが、実施例1、3、4と同様に、ポリメタクリル酸メチルのネットワークに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが取り込まれ、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物であるイオンゲル微粒子が得られた。
【0072】
このイオンゲル微粒子を精密濾過にて分離した後、脱イオン水で洗浄し、さらに、60℃で真空乾燥を施した。図10は、このイオンゲル微粒子のSEM写真である。この場合も、イオンゲル微粒子の二次元平面形状は実施例1、3、4と同様に略真円形状であるが、その粒径は、小さいものでも10μmを若干下回る程度、大きいものでは15〜20μm程度であり、実施例1、3、4のイオンゲルの粒径に比して大きくなった。
【0073】
図11は、このイオンゲル微粒子を用いて測定したEDXスペクトルのスペクトルパターンである。この図11から、実施例5においても、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの構成原子であるF原子及びS原子に由来するピークが出現していること、すなわち、イオンゲル微粒子にイオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが含まれていることが明らかである。
【符号の説明】
【0074】
10…イオンゲル
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン伝導性を示し、例えば、燃料電池に使用する電解質として好適なイオンゲル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン液体は、例えば、プロトン(H+)やリチウムイオン(Li+)等の各種のイオンを伝導する特性を示す液体として知られている。さらに、その蒸気圧が測定下限値を下回るとともに、凝固温度が低い性質を併せ持つ。換言すれば、殆ど揮発せず、且つ寒冷地であっても固相に変化し難い。従って、広範囲の温度域にわたって優れたイオン伝導体となり得る。このため、イオン液体は、燃料電池、二次電池、キャパシタ、色素増感型太陽電池等の各種デバイスの好適な電解質となり得る。
【0003】
しかしながら、電解質が液体である場合、上記したデバイスが何らかの理由で破損したり、デバイスに振動が加わることでシール機能が劣化したりしたときに電解質が漏洩してしまうことが懸念される。
【0004】
この懸念を払拭するには、非特許文献1に記載されているように、イオン液体をゲル化してイオンゲルとすることが有効であるとも考えられる。この場合、イオン液体は、高分子が形成するネットワークの中に取り込まれることで該高分子と相溶化し、これにより弾力性を示す固相(すなわち、イオンゲル)となる。このような固相のイオンゲルを電解質として採用した場合、仮にデバイスが破損したとしても、電解質が固相であるために漏洩することが回避される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】シロウ・セキ(Shiro Seki)ら著、「ジャーナル・オブ・フィジックスケミカルビー(J. Phys. Chem. B)」 2005年発行 第109巻第9号 第3886頁〜第3892頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1の記載によれば、イオンゲルは、以下のようにして得られる。すなわち、先ず、高分子の原材料となるモノマー、架橋剤及び重合開始剤をイオン液体に溶解して重合用溶液を調製する。
【0007】
次に、この重合用溶液を型に注入し、その後、前記型内で前記モノマーを重合させる。この重合に伴って高分子が生成するとともに、該高分子のネットワークにイオン液体が取り込まれる。換言すれば、高分子とイオン液体が相溶化してイオンゲルとなる。
【0008】
このことから諒解されるように、非特許文献1に開示された製造方法によれば、イオンゲルを、型(キャビティ)の形状に対応するバルク体として得ることができるのみである。すなわち、この製造方法には、イオンゲルを所望の形状として得ることができないという不具合が顕在化している。
【0009】
また、ゲルは周知の通り弾力性が著しく大きく、このために可塑性に乏しい。従って、非特許文献1の記載に従って得られたイオンゲルに対してプレス成形を行うことで所望の形状に成形することもできない。さらに、イオンゲルを用いて射出成形を行うことも不可能である。
【0010】
以上のように、非特許文献1に開示された製造方法では、イオンゲルを、デバイスの形状・寸法に対応する適切な形状・寸法で得ることができないという不具合がある。
【0011】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、所望の形状・寸法の電解質等を形成することが可能なイオンゲル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明に係るイオンゲルは、高分子とイオン液体の相溶化合物からなり、且つ粒径が1nm〜1mmの粒体であることを特徴とする。ここで、粒径は、走査型電子顕微鏡で二次元平面として視認される粒体(概ね楕円形状か真円形状)の長径と短径の平均値として定義される。
【0013】
すなわち、本発明に係るイオンゲルは、粒径が微細な粒体、換言すれば、微粒子である。このために可塑性に富むので、該イオンゲルを、充填箇所の形状に対応した形状で充填することや、所望の形状の凝集体(ないし圧粉成形体)とすることが可能である。従って、例えば、燃料電池の電解質等、デバイスの形状に応じてイオンゲルの凝集体(ないし圧粉成形体)の形状を設定することができる。
【0014】
なお、イオンゲルの粒径が1nmよりも小さいと、イオンゲルの分子数が十分でなくなるのでイオン伝導度が低下する傾向がある。また、1mmを超えると、可塑性が低下して所望の形状に充填したり、所望の形状の凝集体(ないし圧粉成形体)とすることが容易でなくなる。
【0015】
また、本発明に係るイオンゲルの製造方法は、イオンゲルの原材料となるイオンゲル用モノマーと、イオン液体とを混合して第1混合溶液を調製する工程と、
前記イオン液体を添加した際に該イオン液体に対して相分離を起こす溶媒と、前記第1混合溶液とを混合することで第2混合溶液を調製するとともに、該第2混合溶液にエマルジョンを生成させる工程と、
前記エマルジョンに含まれる前記イオンゲル用モノマーを重合させて高分子とするとともに、該高分子と前記イオン液体を相溶化させて粒状のイオンゲルを得る工程と、
を有することを特徴とする。
【0016】
このように、高分子となるイオンゲル用モノマーとイオン液体との微細なエマルジョンを形成した後、該エマルジョン中の前記イオンゲル用モノマーを重合させて高分子に変化させるとともに、該高分子とイオン液体との相溶化合物を生成することにより、上記した構成の粒状イオンゲルを容易且つ簡便に得ることができる。
【0017】
なお、前記第2混合溶液を、界面活性剤を含むものとして調製することが好ましい。この界面活性剤の作用により、エマルジョンの形成が促進されるとともに、形成されたエマルジョンが破壊されることが阻害される。従って、微細なエマルジョン、ひいては微細なイオンゲルを得ることが容易となる。
【0018】
また、エマルジョンを形成する工程、又はイオンゲル用モノマーを重合させる工程の少なくともいずれかにおいて、前記第2混合溶液を冷却することが好ましい。エマルジョンは、高温下では比較的破壊され易いので、イオンゲルを粒体として得ることが容易でなくなるからである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高分子となるイオンゲル用モノマーとイオン液体との微細なエマルジョンを形成した後、該エマルジョン中の前記イオンゲル用モノマーを重合させて高分子に変化させるとともに、該高分子とイオン液体との相溶化合物を生成するようにしているので、イオンゲルを微細な粒体(微粒子)として得ることができる。
【0020】
粒体であるイオンゲルは可塑性に富むので、所望の形状をなす充填物や凝集体(ないし圧粉成形体)とすることが可能である。従って、このイオンゲルを用いて充填物、凝集体(ないし圧粉成形体)を作製することにより、例えば、燃料電池の電解質を所望の形状のものとして得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係るイオンゲルの模式的な断面図である。
【図2】実施例1のイオンゲルの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図3】実施例1のイオンゲルのEDXスペクトル測定パターンである。
【図4】実施例2のイオンゲルのSEM写真である。
【図5】実施例2のイオンゲルのEDXスペクトル測定パターンである。
【図6】実施例3のイオンゲルのSEM写真である。
【図7】実施例3のイオンゲルのEDXスペクトル測定パターンである。
【図8】実施例4のイオンゲルのSEM写真である。
【図9】実施例4のイオンゲルのEDXスペクトル測定パターンである。
【図10】実施例5のイオンゲルのSEM写真である。
【図11】実施例5のイオンゲルのEDXスペクトル測定パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るイオンゲル及びその製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態に係るイオンゲル10の模式的な断面図である。この場合、イオンゲル10は、概ね球体に近似される微細な粒体、換言すれば、微粒子である。
【0024】
図1においては、イオンゲル10の直径に沿う断面を示している。イオンゲル10の粒径は、上記したように図1におけるD1とD2の平均値として示されるが、この場合、D1とD2は略同等である。
【0025】
このイオンゲル10は、イオン液体と高分子との相溶化合物からなる。すなわち、該イオンゲル10は、イオン液体が高分子のネットワークに取り込まれて形成されたものである。
【0026】
イオンゲル10を電解質として採用する場合、イオン液体としては、目的とするイオンを伝導することが可能な物質を選定すればよい。例えば、燃料電池の電解質とする場合、プロトンを伝導可能な物質を選定するようにする。具体的には、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、エチルメチルプロピルアンモニウムノナフルオロブタンスルホネート等を例示することができる。さらに、これらのイオン液体に対し、プロトン伝導機能の向上を目的として、リン酸、トリフルオメタンスルホン酸、パーフルオロスルホン酸高分子粉末のような酸塩基化合物を混合したものであってもよい。なお、酸塩基化合物については、イオンゲル微粒子を合成した後に酸塩基化合物をこの微粒子と混合することによって、該微粒子内のイオン液体に添加混合もしくは接触させることも可能である。このことによっても、プロトン伝導性向上効果を発現させることができる。
【0027】
一方、高分子としては、使用されるイオン液体をそのネットワーク中に取り込んで相溶化合物を形成するものが選定される。イオン液体が上記した物質である場合、その好適な例としては、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル等の重合性ビニルモノマーが重合した高分子が挙げられる。
【0028】
なお、高分子は、前記ネットワークが共有結合を介して架橋されたものであることが一層好ましい。この場合、イオンゲルに適度な強度が発現し、このために形状維持が容易となるからである。
【0029】
イオンゲル10の好適な粒径(D1とD2の平均値)は、1nm〜1mmの範囲内である。1nmよりも小さいと、イオンゲル10の分子数が十分でなくなるのでイオン伝導度が低下する傾向がある。また、1mmを超えると、可塑性が低下するので所望の形状の充填物や凝集体(ないし圧粉成形体)を得ることが容易でなくなる。イオンゲル10の一層好適な粒径は、10nm〜100μmである。
【0030】
粒径が1nm〜1mmであるイオンゲル10は、極めて微細な微粒子である。このため、充填箇所の形状に対応した形状で充填したり、所望の形状の凝集体(ないし圧粉成形体)とすることが可能である。従って、このイオンゲル10から燃料電池の電解質を得ようとする場合には、例えば、予め所定形状として形成されたシール部材内にイオンゲル10の微粒子を充填すればよい。
【0031】
このように、本実施の形態によれば、デバイスに応じた所望の形状の電解質を得ることができる。
【0032】
次に、本実施の形態に係るイオンゲル10の製造方法につき説明する。イオンゲル10は、イオンゲル用モノマーとイオン液体のエマルジョンを形成した後、該エマルジョン中の前記イオンゲル用モノマーを重合させることで得ることができる。
【0033】
具体的には、先ず、イオンゲルを得るためのイオン液体とイオンゲル用モノマーとを混合して第1混合溶液を調製する。第1混合溶液には、さらに、イオンゲル用モノマーの重合を促進するための重合開始剤又は架橋剤の少なくともいずれか一方を添加することもできる。
【0034】
イオン液体としては、上記の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート等が例示され、また、イオンゲル用モノマーとしては、このイオン液体に対して可溶であるポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル等の重合性ビニルモノマーが例示される。
【0035】
重合開始剤としては、上記したイオンゲル用モノマーの重合を促進し且つイオン液体に対して可溶である物質が選定される。その好適な例としては、ラウロイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジヒドロクロライド、過酸化ベンゾイル等、分解に伴ってラジカルを発生し得る物質が挙げられる。
【0036】
また、架橋剤としては、上記したイオンゲル用モノマーが重合することで形成されたネットワークを架橋することが可能であり、且つイオン液体に対して可溶である物質が選定される。その好適な例としては、N,N−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート等の重合性ビニル基を複数個有するものが挙げられる。
【0037】
その一方で、イオン液体と混合した際に該イオン液体に対して相分離を起こす溶媒を用意する。この溶媒は、イオン液体と2相に分離するものであれば特に限定されるものではないが、イオン液体が上記した物質である場合、その好適な例としては水が挙げられる。この場合、安価であり且つ入手が極めて容易であるという利点がある。
【0038】
なお、後述する理由から、この溶媒に対して界面活性剤を添加することが好ましい。溶媒が水である場合、界面活性剤の好適な例としては、非イオン活性剤であって且つHLBの値が12以上のものが挙げられる。
【0039】
次に、この溶媒と、上記のようにして調製した第1混合溶液とを混合する。これにより、第2混合溶液が調製される。
【0040】
この混合の際には、マグネチックスターラ、撹拌翼、ホモジナイザ又は超音波分散装置等を用い、強制的な機械的撹拌を行う。これにより、イオンゲル用モノマーとイオン液体とでエマルジョンが形成される。なお、前記溶媒に界面活性剤が添加されている場合、エマルジョンの形成が促進されるとともに、形成されたエマルジョンが破壊されることが阻害される。すなわち、エマルジョンを微細形状に維持することが容易となる。
【0041】
なお、第2混合溶液の温度が過度に高いと、エマルジョンが破壊され易くなる傾向がある。従って、第2混合溶液を収容した容器をオイルバスに浸漬する等して冷却を行い、第2混合溶液の温度を40℃以下に保つことが好ましい。
【0042】
この状態で放置すれば、エマルジョン中のイオンゲル用モノマーの重合が自発的に開始して進行する。又は、第2混合溶液の温度が上昇しない程度に紫外線を照射することで重合を開始させるようにしてもよい。第2混合溶液の温度が過度の上昇すると上記同様にエマルジョンが破壊される懸念があるので、この工程でも第2混合溶液を冷却することが一層好ましい。
【0043】
イオンゲル用モノマーの重合が進行すると、高分子のネットワークが形成されるとともに、該ネットワーク中にイオン液体が取り込まれる。その結果、高分子とイオン液体の相溶化合物であるイオンゲルが生成する。
【0044】
イオンゲルは、各エマルジョンがゲル化することで形成されたものであるので微細である。すなわち、粒径が1nm〜1mmの微粒子となる。なお、粒径は、例えば、反応時間を適宜設定することで調節することができる。
【0045】
イオンゲルを単独で得るには、上記のようにして得られたイオンゲルを、遠心分離や濾過等によって分離し、乾燥すればよい。以上のようにして、イオンゲル10を粒体として得ることができる。
【実施例1】
【0046】
イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを0.7g秤量し、これに対して、0.19g(1.9×10-3mol)のメタクリル酸メチルモノマー、0.008g(4×10-5mol)のエチレングリコールジメタクリレート、0.006g(4×10-4mol)のアゾビスイソブチロニトリルを溶解して第1混合溶液を調製した。
【0047】
その一方で、20mlの脱イオン水に対し、非イオン性界面活性剤であるイゲパールDM−970(アルドリッチ社製ポリオキシエチレンノニルフェノールの商品名、HLB=19)を0.07g溶解した。
【0048】
次に、前記第1混合溶液と、イゲパールDM−970を溶解した前記脱イオン水とを混合して第2混合溶液とし、さらに、第2混合溶液をバスにて氷冷しながら60分間、マグネチックスターラで激しく撹拌した。にその結果、第2混合溶液にエマルジョンが形成された。
【0049】
前記第2混合溶液を冷却して5℃に保ちつつ、波長254nmのUVランプを照射してメタクリル酸メチルモノマーを重合させた。これにより、ポリメタクリル酸メチルのネットワークに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが取り込まれた、換言すれば、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが相溶化したイオンゲル微粒子を得た。
【0050】
次に、前記イオンゲル微粒子を精密濾過にて分離した後、脱イオン水で洗浄し、さらに、60℃で真空乾燥を施した。このイオンゲル微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図2に示す。図2から、イオンゲル微粒子の二次元平面形状が略真円形状であることが分かる。なお、粒径は小さいもので5〜10μm程度、大きいもので50μm程度であった。
【0051】
また、このイオンゲル微粒子を用いてEDXスペクトル測定を行った。スペクトルパターンを図3に示す。
【0052】
この図3から、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの構成原子であるF原子及びS原子に由来するピークが出現していることが認められる。このことから、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドがイオンゲル微粒子に含まれていること、すなわち、イオンゲル微粒子が、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物であることが明らかである。
【実施例2】
【0053】
1.0gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに対し、2.0g(0.028mol)の酢酸ビニルモノマー、0.12g(6×10-4mol)のエチレングリコールジメタクリレート、0.01g(6×10-4mol)のアゾビスイソブチロニトリルを溶解して第1混合溶液を調製した。
【0054】
その一方で、20mlの脱イオン水に対してイゲパールDM−970を0.07g溶解した。
【0055】
以降は実施例1に準拠し、前記第1混合溶液と非イオン性界面活性剤を溶解した前記脱イオン水とで第2混合溶液を得た後、第2混合溶液をバスにて氷冷しながら60分間、マグネチックスターラで激しく撹拌した。その結果、第2混合溶液にエマルジョンが形成された。
【0056】
前記第2混合溶液を冷却して5℃に保ちつつ、波長254nmのUVランプを照射して酢酸ビニルモノマーを重合させた。これにより、ポリ酢酸ビニルのネットワークに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが取り込まれ、ポリ酢酸ビニルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物であるイオンゲル微粒子を得た。
【0057】
このイオンゲル微粒子を精密濾過にて分離した後、脱イオン水で洗浄し、さらに、60℃で真空乾燥を施した。図4は、このイオンゲル微粒子のSEM写真である。この図4に示すように、このイオンゲル微粒子の二次元平面形状も略真円形状である。なお、粒径は小さいもので1〜3μm程度、大きいもので10μm程度であった。
【0058】
また、このイオンゲル微粒子を用いてEDXスペクトル測定を行った。スペクトルパターンを図5に示す。この図5から、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの構成原子であるF原子及びS原子がイオンゲル微粒子に含まれていること、すなわち、イオンゲル微粒子が、ポリ酢酸ビニルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物であることが諒解される。
【実施例3】
【0059】
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを1.0g、メタクリル酸メチルモノマーを1.0g(0.01mol)、エチレングリコールジメタクリレートを0.04g(2×10-4mol)、アゾビスイソブチロニトリルを0.05g(2×10-4mol)用いて第1混合溶液を調製した。また、20mlの脱イオン水に対してイゲパールDM−970を0.07g溶解した。
【0060】
以上の溶液同士を混合して第2混合溶液を得た後、第2混合溶液をバスにて氷冷しながらホモジナイザで10分間、激しく撹拌した。その結果、第2混合溶液にエマルジョンが形成された。
【0061】
次に、前記第2混合溶液を冷却して5℃に保ちつつ、波長254nmのUVランプを照射してメタクリル酸メチルモノマーを重合させた。これにより、実施例1と同様に、ポリメタクリル酸メチルのネットワークに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが取り込まれ、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物であるイオンゲル微粒子を得た。
【0062】
このイオンゲル微粒子を精密濾過にて分離した後、脱イオン水で洗浄し、さらに、60℃で真空乾燥を施した。図6に、このイオンゲル微粒子のSEM写真を示す。この図6と図2を対比して諒解されるように、この場合、イオンゲル微粒子の二次元平面形状は実施例1と同様に略真円形状であるが、その粒径は、実施例1に比して小さくなっている。具体的には、大多数が1μm未満であり、大きいものでも3μm強程度である。このことは、エマルジョンを微細化する能力に優れるホモジナイザを用いることにより、粒径を容易に制御し得ることを意味する。
【0063】
図7は、このイオンゲル微粒子を用いて測定したEDXスペクトルのスペクトルパターンである。この図7においても、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの構成原子であるF原子及びS原子に由来するピークが出現していることが認められる。
【実施例4】
【0064】
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを1.0g、メタクリル酸メチルモノマーを1.0g(0.01mol)、エチレングリコールジメタクリレートを0.04g(2×10-4mol)、アゾビスイソブチロニトリルを0.05g(2×10-4mol)用いて第1混合溶液を調製した。また、20mlの脱イオン水に対し、ラテムルPD−450(花王ケミカル社製の非イオン系界面活性剤の商品名、HLB=16.2)を1.0g溶解した。
【0065】
以上の溶液同士を混合して第2混合溶液を得た後、第2混合溶液をバスにて氷冷しながらホモジナイザで10分間、激しく撹拌した。その結果、第2混合溶液にエマルジョンが形成された。
【0066】
次に、前記第2混合溶液を冷却して5℃に保ちつつ、波長254nmのUVランプを照射してメタクリル酸メチルモノマーを重合させた。これにより、実施例1と同様に、ポリメタクリル酸メチルのネットワークに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが取り込まれ、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物であるイオンゲル微粒子を得た。
【0067】
このイオンゲル微粒子を精密濾過にて分離した後、脱イオン水で洗浄し、さらに、60℃で真空乾燥を施した。図8に、このイオンゲル微粒子のSEM写真を示す。この場合も、イオンゲル微粒子の二次元平面形状は実施例1、3と同様に略真円形状であり、その粒径は、小さいもので1〜5μm程度、大きいもので10μm程度であった。
【0068】
また、このイオンゲル微粒子を用いて測定したEDXスペクトルのスペクトルパターンを図9に示す。この図9から明らかな通り、実施例4においても、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの構成原子であるF原子及びS原子に由来するピークが出現していること、すなわち、イオンゲル微粒子にイオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが含まれていることが認められる。
【実施例5】
【0069】
1.0gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに対し、1.0g(0.01mol)のメタクリル酸メチルモノマー、0.04g(2×10-4mol)のエチレングリコールジメタクリレート、0.05g(2×10-4mol)のアゾビスイソブチロニトリルを用いて第1混合溶液を調製した。この第1混合溶液に対し、20mlの脱イオン水を添加して第2混合溶液とした。
【0070】
この第2混合溶液をホモジナイザで10分間、激しく撹拌した。その結果、第2混合溶液にエマルジョンが形成された。さらに、この第2混合溶液に対して波長254nmのUVランプを照射することで、メタクリル酸メチルモノマーを重合させた。
【0071】
すなわち、この実施例5では、界面活性剤を用いず、また、エマルジョンの形成時やメタクリル酸メチルモノマーの重合時に冷却を行わなかったが、実施例1、3、4と同様に、ポリメタクリル酸メチルのネットワークに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが取り込まれ、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物であるイオンゲル微粒子が得られた。
【0072】
このイオンゲル微粒子を精密濾過にて分離した後、脱イオン水で洗浄し、さらに、60℃で真空乾燥を施した。図10は、このイオンゲル微粒子のSEM写真である。この場合も、イオンゲル微粒子の二次元平面形状は実施例1、3、4と同様に略真円形状であるが、その粒径は、小さいものでも10μmを若干下回る程度、大きいものでは15〜20μm程度であり、実施例1、3、4のイオンゲルの粒径に比して大きくなった。
【0073】
図11は、このイオンゲル微粒子を用いて測定したEDXスペクトルのスペクトルパターンである。この図11から、実施例5においても、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの構成原子であるF原子及びS原子に由来するピークが出現していること、すなわち、イオンゲル微粒子にイオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが含まれていることが明らかである。
【符号の説明】
【0074】
10…イオンゲル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子とイオン液体の相溶化合物からなり、且つ粒径が1nm〜1mmの粒体であることを特徴とするイオンゲル。
【請求項2】
イオンゲルの原材料となるイオンゲル用モノマーと、イオン液体とを混合して第1混合溶液を調製する工程と、
前記イオン液体を添加した際に該イオン液体に対して相分離を起こす溶媒と、前記第1混合溶液とを混合することで第2混合溶液を調製するとともに、該第2混合溶液にエマルジョンを生成させる工程と、
前記エマルジョンに含まれる前記イオンゲル用モノマーを重合させて高分子とするとともに、該高分子と前記イオン液体を相溶化させて粒状のイオンゲルを得る工程と、
を有することを特徴とするイオンゲルの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の製造方法において、前記第2混合溶液を、界面活性剤を含むものとして調製することを特徴とするイオンゲルの製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の製造方法において、前記エマルジョンを形成する工程で前記第2混合溶液を冷却することを特徴とするイオンゲルの製造方法。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の製造方法において、前記イオンゲル用モノマーを重合させる工程で前記第2混合溶液を冷却することを特徴とするイオンゲルの製造方法。
【請求項1】
高分子とイオン液体の相溶化合物からなり、且つ粒径が1nm〜1mmの粒体であることを特徴とするイオンゲル。
【請求項2】
イオンゲルの原材料となるイオンゲル用モノマーと、イオン液体とを混合して第1混合溶液を調製する工程と、
前記イオン液体を添加した際に該イオン液体に対して相分離を起こす溶媒と、前記第1混合溶液とを混合することで第2混合溶液を調製するとともに、該第2混合溶液にエマルジョンを生成させる工程と、
前記エマルジョンに含まれる前記イオンゲル用モノマーを重合させて高分子とするとともに、該高分子と前記イオン液体を相溶化させて粒状のイオンゲルを得る工程と、
を有することを特徴とするイオンゲルの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の製造方法において、前記第2混合溶液を、界面活性剤を含むものとして調製することを特徴とするイオンゲルの製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の製造方法において、前記エマルジョンを形成する工程で前記第2混合溶液を冷却することを特徴とするイオンゲルの製造方法。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の製造方法において、前記イオンゲル用モノマーを重合させる工程で前記第2混合溶液を冷却することを特徴とするイオンゲルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−126974(P2011−126974A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285478(P2009−285478)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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