説明

イオン性ポリマーデバイス及びその製造方法

【課題】
イオン性ポリマー複合体デバイス及び該イオン性ポリマー複合体デバイスを製造する方法を提供する。
【解決手段】
イオン性ポリマー複合体デバイスは、それぞれ、複数の導電性粒子を含む少なくとも1つのイオン性ポリマーを含む、2つの拡張電極層、及び、2つの拡張電極層の間の、少なくとも1つのスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー又は誘導体を含む、誘電層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なイオン性ポリマーデバイス構造体、並びに、アクチュエータ、センサ、及び変換器として構成され得るイオン性ポリマーデバイスを製造する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン性ポリマー又はイオノマー複合材料は、柔らかく湾曲するアクチュエータ及びセンサとなり得る新種の電気活性ポリマー及び機能性スマート材料の1つである。該材料は本来、燃料電池用途のために製造され、その特有の生体模倣性検知−駆動特性は1992年になって初めて見出された。一般的なイオン性ポリマーアクチュエータ/センサ要素は、中間層に誘電層として高分子電解質イオン交換ポリマー薄膜、及び、該イオノマー膜の両表面上に電極としてめっき金属層を含む。イオン交換ポリマーは一般的に疎水性の主鎖、及び、負に帯電した親水性の官能基(アニオン)を側鎖として有する。これらの側鎖には正に帯電した移動性のカチオンが結合する。イオン交換ポリマーが溶媒を吸収すると、溶媒を含有する相互結合したクラスターネットワークがポリマーマトリクス内に形成される。アニオンがポリマー主鎖(ポリマーマトリクス)に固定されているのに対し、カチオンは、電気刺激時に溶媒内のクラスター間を自由に移動する。従来のイオン性ポリマー複合体は、ベースポリマーとして、パーフルオロ化イオン交換ポリマー、例えば、パーフルオロスルホン酸ポリマー(ナフィオン(登録商標))及びパーフルオロカルボン酸ポリマー(フレミオン(登録商標))を使用する。これらの材料は柔らかく、機械的剛性が小さい。
【0003】
電位がイオン性ポリマーアクチュエータに印加されると、結合していないカチオンは、溶媒を通ってクラスターに出入りし、且つイオン性ポリマー自体に再分布して、アノード境界層及びカソード境界層を形成し得る。弾性抵抗によって平衡が保たれる静電力及び浸透圧の変化は、溶媒を境界層クラスター内に入れるか又は境界層クラスターから出すことにより、この境界層における相互結合するクラスターの体積を変化させる。体積のこの変化は、アクチュエータの変形又は湾曲を導く。電荷分布及び水揚げ変化は、化学的−電気的−機械的に連結された式(coupled chemo-electro-mechanical formulation)によって算出することができる。
【0004】
イオン性ポリマー材料は、それらの小型サイズ、軽量、及び加工された材料から任意の形状へと切断できる能力のために、従来の電気化学材料及びシステムを超える著しい利点を提供する。加工されたデバイスは、ほんの僅かな動作電圧しか必要としない。イオン性ポリマーアクチュエータは、小さい電気刺激に応答して大きい曲げ変形を生じさせ得るのに対し、イオン性ポリマーセンサは、機械的変形(又は振動)に応答して電気信号を発生する。イオン性ポリマーの急激な湾曲は、低い電圧(mVの範囲)をもたらす。また、駆動/検知機能は、微細構造、電気入力、カチオンの組成、並びに溶媒の種類及び量を変更することによって調整することができる。この材料は、生体適合性であり、種々の溶媒中で作用し得る。このような材料は、生体医学的用途及びロボット工学用途のための新たな自己集積化材料システムを提供するように開発され得る。
【0005】
イオン性ポリマーに基づくセンサ/アクチュエータの化学的−電気的−機械的に連結された応答に影響を与える可能性のある多くの要因の1つは、電極モルフォロジー及び有効な電気容量である。イオン性ポリマーデバイス上に電極を形成する従来の製造方法は、最初に、既に硬化したポリマー膜の表面を粗化及び洗浄すること、化学的還元を受け得る物質をポリマー表面から吸収させること、及び吸収された物質を還元して電極を形成するこ
とを含む。このような製造方法は通常、より多くの物質をイオン性ポリマー膜中に拡散させる吸収工程及び還元工程を繰返し必要とするため、非常に長く高価なプロセスが必要とされる。しかしながら、ポリマー膜中への物質の拡散は依然として、膜表面から約20ミクロン未満に制限されている。製造プロセスは高価なだけでなく、イオン性ポリマーアクチュエータ/センサの性能は、導電材料の拡散制限によっても影響を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新規なイオン性ポリマーデバイス又はイオン性ポリマーアクチュエータ/センサ、及び単純で安価且つ速い製造プロセスを可能にする製造手法を提供することである。製造方法は、ポリマー相と導電相又は電極との間に大きい界面領域を形成することによって、イオン性ポリマーデバイスの電気容量を大きくするため、その駆動性能及び感度が改良される。
【0007】
本発明の方法及びデバイスは、それぞれいくつかの態様を有し、それらのうちの単一の態様のみが、その所望の特質に関与するわけではない。本発明の範囲を限定することなく、本発明のより顕著な特徴を簡単に述べる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によっては、各々が第1のイオン性ポリマー及び複数の導電性粒子を含む2つの拡張電極層、及び、2つの該拡張電極層間に第2のイオン性ポリマーを含み、該第2のイオン性ポリマーが第2のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー又はその誘導体である、誘電層を含む、イオン性ポリマー複合体デバイスを提供する。
【0009】
実施形態によっては、それぞれが、膨潤比の高い第1のイオン性ポリマーを含む複数のドメイン及び実質的に連続する三次元ネットワーク構造を有するポリマーを含むマトリクス相を含み、該複数のドメインが該マトリクス相に埋め込まれている、2つの拡張電極層、並びに、該2つの拡張電極層の間の、第2のイオン性ポリマーを含む誘電層であって、該第2のイオン性ポリマーが第2のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー又はその誘導体である、誘電層を含む、イオン性ポリマー複合体デバイスを提供する。
【0010】
実施形態によっては、スルホン化ポリエーテルスルホンポリマーは、以下の式:
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、xは約30〜約70である。)
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、RはH又はFであり、各y及び各zは約30〜約70である。)
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、Aはそれぞれ独立に、
【0017】
【化4】

【0018】
又はOHであり、且つ少なくとも1つのAは、
【0019】
【化5】

【0020】
である。)
の1つで示される。
【0021】
実施形態によっては、イオン性ポリマー複合体デバイスを製造する方法であって、第1のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー又はその誘導体を含む第1のイオン性ポリマー溶液中に分散した複数の導電性粒子を含む少なくとも1つの混合物を準備すること、該少なくとも1つの混合物を硬化させることで該複数の導電性粒子がそれぞれの中に分布する2つのイオン性ポリマー層を形成すること、及び、第2のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー又はその誘導体を含む誘電層を該2つのイオン性ポリマー層の間に位置させイオン性ポリマー複合体デバイスを形成すること、を含む方法を提供する。
【0022】
実施形態によっては、イオン性ポリマー複合体デバイスを製造する方法であって、イオン性ポリマー、マトリクス相及び溶媒に溶解した複数の導電性粒子を含む液体混合物を準備すること、基板上に該液体混合物をコーティングして乾燥することで2つの拡張電極層を形成すること、スルホン化ポリエーテルスルホンポリマーを含む誘電層を準備すること、及び該誘電層を2つの拡張電極層の間に組み合わせ、該イオン性ポリマー複合体デバイスを形成すること、を含む方法を提供する。
【0023】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下の説明及び添付の図面(正確な縮尺ではない)から容易に明らかとなるであろう。以下の説明及び添付の図面は、本発明を説明することを意図しており、本発明を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるアクチュエータ/センサデバイスの一実施形態を例示する図である。
【図2】図1のイオン性ポリマーデバイスのポリマー複合体の一実施形態の断面図である。
【図3A】図1のデバイスの実施形態のポリマー複合体厚さ方向の断面粒子濃度プロファイルを示す図である。
【図3B】図1のデバイスの実施形態のポリマー複合体厚さ方向の断面粒子濃度プロファイルを示す図である。
【図3C】図1のデバイスの実施形態のポリマー複合体厚さ方向の断面粒子濃度プロファイルを示す図である。
【図3D】図1のデバイスの実施形態のポリマー複合体厚さ方向の断面粒子濃度プロファイルを示す図である。
【図4A】表面電極層の構成を示す図である。
【図4B】表面電極層の構成を示す図である。
【図4C】表面電極層の構成を示す図である。
【図4D】表面電極層の構成を示す図である。
【図5】拡張電極層でのイオン交換容量(IEC)の大きいイオン性ポリマーの膨潤効果を示す図である。
【図6】相分離ポリマー構造の断面図である。
【図7】容器内に形成される複合体層の一実施形態の断面を示す図である。
【図8A】ポリマー複合体の一実施形態を形成するように結合される2つのポリマー−粒子層及び1つのイオン性ポリマー誘電層の断面図である。
【図8B】ポリマー複合体の別の実施形態を形成するように結合される4つのポリマー−粒子層及び1つのイオン性ポリマー誘電層の断面図である。
【図8C】ポリマー複合体を形成するように結合される2つのポリマー−粒子層の別の実施形態の断面図である。
【図9】図1のイオン性ポリマーデバイスのポリマー複合体を形成するプロセスを例示するフローチャートである。
【図10A】ポリマー複合体の一実施形態を形成するように結合される2つのポリマー−粒子層の断面図である。
【図10B】ポリマー複合体の別の実施形態を形成するように結合される2つのポリマー−粒子層及び1つのイオン性ポリマー誘電層の断面図である。
【図11】イオン性ポリマーデバイスの別の実施形態のポリマー複合体を形成するプロセスを例示するフローチャートである。
【図12A】インプリンティング用プレートを付設したポリマー複合体の一実施形態の断面を示す図である。
【図12B】インプリンティング用プレートが除去された後のポリマー複合体の一実施形態の断面を示す図である。
【図13】イオン性ポリマーデバイスの一実施形態を形成するように結合される2つのインプリンティングされた層及び固体イオン性ポリマー層の断面図である。
【図14A】ポリマー複合体の一実施形態の電極形態を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図14B】ポリマー複合体の一実施形態の電極形態を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図14C】ポリマー複合体の一実施形態の電極形態を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図15A】ポリマー複合体の別の実施形態の電極形態を示すSEM画像である。
【図15B】ポリマー複合体の別の実施形態の電極形態を示すSEM画像である。
【図15C】ポリマー複合体の別の実施形態の電極形態を示すSEM画像である。
【図15D】ポリマー複合体の別の実施形態の電極形態を示すSEM画像である。
【図16A】結合したポリマー複合体の一実施形態の断面図を示すSEM画像である。
【図16B】結合したポリマー複合体の一実施形態の断面図を示すSEM画像である。
【図17】ポリマー複合体の一実施形態における導電性粒子の分布を示すエネルギー分散型X線散乱解析(EDX)の線走査である。
【図18】いくつかのポリマー複合体デバイスに対する入力電圧に応じた変位%のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の詳細な説明は、本発明の或る特定の実施形態を対象としている。しかしながら、本発明は、多数の異なる様式で具現化することができる。本明細書中では、全体を通じて、類似の部分が類似の符号で示される図面を参照している。
【0026】
本発明の実施形態は、イオン性ポリマーデバイス製造用の新規なポリマー及び電極材料を提供する。実施形態によっては、センサ又はアクチュエータとしても構成され得る。アクチュエータは電気刺激を幾何学的変形及び力出力に変換し、センサは幾何学的変形及び力入力を電気信号に変換する。駆動性能及び検知性能は改善されている。これらの比較的安価な材料成分を用いることで、デバイスの製造コストの低減にもつながる。
【0027】
本発明の方法の実施形態は、様々なイオン性ポリマーデバイスの性能及び感度を最適化するために、ポリマー相と導電相との間の界面領域が増加するように設計される。電極モルフォロジーを向上させることによって、本方法によって製造されるイオン性ポリマーデバイスが、大きい有効電気容量を示し、これによって高い駆動性能及び/又は検知性能を達成することができる。本発明の方法はまた、機能性ポリマー複合体の効率的な製造を可能にする。プロセスは、より少ない工程しか含まず、且つイオン性ポリマー複合体の構造についてのより優れた制御を可能にする。プロセスは単純で、高価でなく、且つより高率的である。該方法の或る特定の実施形態は、マイクロメートルスケールからセンチメートルスケールまでの厚さのような種々の寸法、及び単一デバイス、センサ/アクチュエータアレイ、システム又は複合デバイス等の種々の構成のイオン性ポリマーデバイスを製造するために採用されるのに好適なものである。
【0028】
図1は、ポリマー複合体11と、ポリマー複合体11の両表面上に表面電極として少なくとも1つの導電層13とを含む、イオン性ポリマーデバイスの或る特定の実施形態を示している。ポリマー複合体11は、少なくとも1つのイオン性ポリマーから成る。イオン交換ポリマー又はイオノマーとしても知られているイオン性ポリマーは、カチオン交換ポリマー、又はアニオン交換ポリマーのいずれであってもよい。実施形態によっては、ポリマー複合体11の厚さは、用途に応じて数ミクロンから数センチメートルであり得る。好ましい実施形態では、全ポリマー複合体厚さは、約1μm〜約10cm、好ましくは約10μm〜約1cm、より好ましくは約100μm〜約1mmであり得る。
【0029】
イオン性ポリマー複合体は、2つの拡張電極層31、及び、2つの拡張電極層31の間に挟持されるイオン性ポリマー誘電層32を含む。2つの拡張電極層31の各々は、複数の導電性粒子12を含有する少なくとも1つのイオン性ポリマーを含む。実施形態によっては、複数の導電性粒子12は、2つの拡張電極層31の各々において濃度勾配を形成する。実施形態によっては、複数の導電性粒子12は、拡張電極層31内に十分に分散されている。複数の導電性粒子は、粒子が凝集していない場合に十分に分散されていると考えられ、実施形態によっては、粒子が単分散したようなものであってもよい。一般的に、導電性粒子12は、導電性である任意のナノスケール又はミクロスケールの粒子であり得る。導電性粒子12の非限定的な例は、Pt、Au、Ag、Ni、Cu及びPd等の金属粒子、並びに導電性ポリマー、カーボンナノチューブ及びグラファイト等の非金属粒子であ
る。金属粒子は、任意の形状を有していてもよく、また事前に形成されるか、金属塩の還元によってポリマー中で形成されるか、又は市販のものであってもよい。各拡張電極層31の厚さは、ポリマー複合体全体の厚さの約1%〜約49%、好ましくは約10%〜約40%、より好ましくは約15%〜約30%であり得る。
【0030】
実施形態によっては、誘電層32は、少なくとも1つのスルホン化ポリエーテルスルホン(SPES)ポリマー又はその誘導体を含む。実施形態によっては、拡張電極層31はまた、少なくとも1つのSPESポリマー又はその誘導体を含み得る。SPESポリマー又はその誘導体は、芳香族スルホン化イオン交換コポリマーである。従来のイオン性ポリマーと比較して、SPESポリマーは、高粘度のポリマー溶液を提供し、拡張電極層中で導電性粒子が分散し易くなる。SPESポリマーはまた、熱安定性が高く、酸化及び酸触媒加水分解に対して耐性がある。その結果、アクチュエータの信頼性が高くなり、より大きな駆動電圧を印加することが可能になる。
【0031】
SPESポリマーは、例えば、約0.9meq/g〜約3.3meq/gの高いイオン交換容量(IEC)を示す。IECは、イオン交換ポリマーのカチオン伝導度の指標となるパラメータである。meq/g(ポリマー1g当たりの官能基のミリ当量モル)の単位で、一定量のイオン交換ポリマー内の官能基(又は移動性のカチオン)の量が測定される。実施形態によっては、SPESポリマーのIECが増大すると、カチオン伝導度が増大する。IECの範囲は、約0.1meq/g〜約10meq/g、例えば、約0.9meq/g〜約4meq/gであり得る。実施形態によっては、SPESポリマーのIECは調整することもできる。例えば、SPESポリマーのIECは、約1.4〜約3.3meq/gに調整することができ、高いIECを有すると言われる。別の実施例では、IECは、約1.8meq/g〜約3.3meq/gに調整することができ、より高いIECを有する、すなわち、異方性膨潤構造における中心部のニートポリマー層等の或る特定の用途に好ましい範囲を有すると言われる。
【0032】
さらに、SPESポリマーはまた、従来のナフィオン(登録商標)ポリマー及びフレミオン(登録商標)ポリマーと比較して、例えば高い剛性等の、より良好な機械的特性を有するため、より大きな力出力を提供できる。SPESポリマーは、すぐに利用でき且つ安価なモノマーから製造されるため、イオン性ポリマー複合体デバイスのコストを低減することができる。
【0033】
実施形態によっては、SPESポリマーは、以下の式:
【0034】
【化6】

【0035】
(式中、xは約30〜約70である。)
【0036】
【化7】

【0037】
(式中、RはH又はFであり、各y及び各zは約30〜約70である。)
【0038】
【化8】

【0039】
(式中、Aはそれぞれ独立に、
【0040】
【化9】

【0041】
又はOHであり、且つ少なくとも1つのAは、
【0042】
【化10】

【0043】
である。)
の1つで示される。
【0044】
実施形態によっては、1種類以上のモノマーが式I、II及びIIIに示すポリマーの形成に用いられ、その場合はコポリマーとなる。これら各コポリマーにおけるモノマー又は繰り返し単位はランダムに分布していても、順番を入れ替えても、又はブロック単位であってもよい。例えば式Iでは、xが約30であれば、約30%の
【0045】
【化11】

【0046】
及び約70%の
【0047】
【化12】

【0048】
が式Iのポリマーの形成に用いられることを示す。また例えば式IIでは、yが約40でzが約50であれば、約40%の
【0049】
【化13】

【0050】
約10%の
【0051】
【化14】

【0052】
及び約50%の
【0053】
【化15】

【0054】
が式IIのポリマーの形成に用いられることを示す。
【0055】
実施形態によっては、高分子量SPESは、拡張電極層31及び誘電層32の両方に使用され得る。例えば、高分子量SPESは、約100000を上回る重量平均分子量を有し得る。物理的/化学的制約以外では、分子に対する特段の上限は存在しない。高分子量SPESの例としては、上に示した式I及び式IIが挙げられる。
【0056】
式IのSPESポリマーは、「スルホン化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)ランダム(統計的)コポリマーの直接重合:新規プロトン交換膜の候補物質(Direct polymerization of sulfonated poly(arylene ether sulfone) random (statistical) copolymers: candidates for new proton exchange membrane)」Journal of Membrane Science, 197, pp 231-242, 2002(この開示内容は本明細書中に援用される)で開示された方法に従って製造することができる。式IのSPESポリマーは、以下に記載する化学反応例により製造することができる。開示された実施例から、当業者は、反応物質の量、反応温度及び反応時間を調節することにより、SPESポリマーの異なるバリエーションを容易に得ることができる。
【0057】
合成例1a:式I(SPES−Ia)の合成
4,4’−ジクロロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ナトリウム塩一水和
物(30.56g、0.060mol)、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(34.46g、0.120mol)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(37.24g、0.200mol)、炭酸カリウム(33.17g、0.240mol)、N−メチルピロリドン(220mL)及びトルエン(170mL)を、ディーン・スターク・トラップ、冷却器、スターラー及び窒素供給管を備えた四つ口丸底フラスコ(1000mL)に加えた。混合物を約160℃に加熱し、2時間還流した後、190℃に昇温して、39時間撹拌することによりトルエンを留去した。110℃に冷却した後、4,4’−ジフルオロビフェニルスルホン(5.09g、0.020mol)及びN−メチルピロリドン(230mL)を加え、1時間撹拌した後、180℃で12時間撹拌した。冷却しながら、溶液を水2500mLに注ぎ、化合物を沈殿させた。沈殿した化合物を濾過し、蒸留水で十分に洗浄した。引き続き140℃で5時間加熱乾燥することにより、目的の高分子量SPESを得た。
【0058】
本反応により、約91.0gのSPES−Iaが収率約98.5%で得られた。SPES−Iaの重量平均分子量は約212,470であり、分散度は約4.21、イオン交換容量は約1.35meq/gであった。SPES−Iaは、xが30である式Iのポリマーを示す。
【0059】
合成例1b:式I(SPES−Ib)の合成
4,4’−ジクロロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ナトリウム塩一水和物(76.4g、0.150mol)、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(21.54g、0.750mol)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(46.55g、0.250mol)、炭酸カリウム(41.46g、0.300mol)、N−メチルピロリドン(230mL)及びトルエン(270mL)を、ディーン・スターク・トラップ、冷却器、スターラー及び窒素供給管を備えた四つ口丸底フラスコ(1000mL)に加えた。混合物を約160℃に加熱し、2時間還流してトルエンを留去した後、190℃に昇温して、18時間撹拌した。110℃に冷却した後、4,4’−ジフルオロビフェニルスルホン(6.36g、0.025mol)及びN−メチルピロリドン(230mL)を加え、1時間撹拌した後、180℃で25時間撹拌した。冷却しながら、溶液を水2500mLに注ぎ、化合物を沈殿させた。沈殿した化合物を濾過し、蒸留水で十分に洗浄した。引き続き140℃で5時間加熱乾燥することにより、目的の高分子量SPES−Ibを得た。
【0060】
本反応により、約124.5gのSPES−Ibが収率約95.2%で得られた。SPES−Ibの重量平均分子量は約192,609であり、分散度は約2.60、イオン交換容量は約2.13meq/gであった。SPES−Ibは、xが60である式Iのポリマーを示す。
【0061】
式IIのSPESポリマーは、式IのSPESポリマーに関する上記のものと同様の手順により製造することができる。式IIのSPESポリマーは、以下に記載する化学反応例により製造することができる。開示された実施例から、当業者は、反応物質の量、反応温度及び反応時間を調節することにより、SPESポリマーの異なるバリエーションを容易に得ることができる。
【0062】
合成例2a:RがFである式II(SPES−IIa)の合成
4,4’−ジクロロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ナトリウム塩一水和物(30.56g、0.060mol)、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(34.46g、0.120mol)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(37.24g、0.200mol)、炭酸カリウム(33.17g、0.240mol)、N−メチルピロリドン(220mL)及びトルエン(170mL)を、ディーン・スターク・トラップ、
冷却器、スターラー及び窒素供給管を備えた四つ口丸底フラスコ(500mL)に加えた。混合物を約160℃に加熱し、2時間還流した後、190℃に昇温して、16時間撹拌することによりトルエンを留去した。110℃に冷却した後、デカフルオロビフェニル(6.68g、0.020mol)及びN−メチルピロリドン(170mL)を加え、1時間撹拌した後、140℃で9時間撹拌した。冷却しながら、溶液を水7000mLに注ぎ、化合物を沈殿させた。沈殿した化合物を濾過し、蒸留水で十分に洗浄した。引き続き140℃で6時間加熱乾燥することにより、目的の高分子量SPESを得た。
【0063】
本反応により、約101.1gのSPES−IIaが収率約107.6%で得られた。SPES−IIaの重量平均分子量は約225,940であり、分散度は約4.28、イオン交換容量は約1.27meq/gであった。SPES−IIaは、yが30、zが60であり、RがFである式IIのポリマーを示す。
【0064】
合成例2b:RがFである式II(SPES−IIb)の合成
4,4’−ジクロロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ナトリウム塩一水和物(48.38g、0.095mol)、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(21.83g、0.760mol)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(35.38g、0.190mol)、炭酸カリウム(31.51g、0.228mol)、N−メチルピロリドン(220mL)及びトルエン(170mL)を、ディーン・スターク・トラップ、冷却器、スターラー及び窒素供給管を備えた四つ口丸底フラスコ(500mL)に加えた。混合物を約160℃に加熱し、2時間還流してトルエンを留去した後、190℃に昇温して、36時間撹拌した。110℃に冷却した後、デカフルオロビフェニル(6.35g、0.019mol)及びN−メチルピロリドン(170mL)を加え、1時間撹拌した後、140℃で9時間撹拌した。冷却しながら、溶液を水2500mLに注ぎ、化合物を沈殿させた。沈殿した化合物を濾過し、蒸留水で十分に洗浄した。引き続き140℃で5時間加熱乾燥することにより、目的の高分子量SPESを得た。
【0065】
本反応により、約131.0gのSPES−IIbが収率約135.1%で得られた。SPES−IIbの重量平均分子量は約634,600であり、分散度は約8.97、イオン交換容量は約2.06meq/gであった。SPES−IIbは、yが50、zが40であり、RがFである式IIのポリマーを示す。
【0066】
合成例2c:RがFである式II(SPES−IIc)の合成
4,4’−ジクロロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ナトリウム塩一水和物(67.90g、0.1333mol)、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(47.86g、0.1667mol)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(62.06g、0.3333mol)、炭酸カリウム(55.27g、0.4000mol)、N−メチルピロリドン(380mL)及びトルエン(300mL)を、ディーン・スターク・トラップ、冷却器、スターラー及び窒素供給管を備えた四つ口丸底フラスコ(500mL)に加えた。混合物を約160℃に加熱し、2時間還流した後、190℃に昇温して、38時間撹拌することによりトルエンを留去した。110℃に冷却した後、デカフルオロビフェニル(11.14g、0.0333mol)及びN−メチルピロリドン(300mL)を加え、1時間撹拌した後、140℃で8時間撹拌した。冷却しながら、溶液を水7000mLに注ぎ、化合物を沈殿させた。沈殿した化合物を濾過し、蒸留水で十分に洗浄した。引き続き140℃で6時間加熱乾燥することにより、目的の高分子量SPESを得た。
【0067】
本反応により、約180.9gのSPES−IIcが収率約110.3%で得られた。SPES−IIcの重量平均分子量は約424,100であり、分散度は約6.44、イオン交換容量は約1.44meq/gであった。SPES−IIcは、yが40、zが50であり、RがFである式IIのポリマーを示す。
【0068】
実施形態によっては、イオン性ポリマー複合体デバイス中の少なくとも1つのイオン性ポリマーは架橋ポリマーである。架橋ポリマーは、拡張電極層又は誘電層のどちらにでも使用され得る。架橋ポリマーの一例は、式IIIのSPESポリマーである。式IIIのSPESポリマーは、特開2008−117750号公報(この開示内容は本明細書中に援用される)に従って製造することができる。
【0069】
導電性粒子12は、拡張電極層31内に十分に分散され得るか、又は重力により濃度勾配を形成し得る。或る特定の実施形態における導電性粒子12の濃度プロファイルを図3A〜図3Dに示す。実施形態によっては、拡張電極層31は、少なくとも1つのポリマー−粒子層19又は複数のポリマー−粒子層(図7及び図8A〜図8Cを参照)を含み得る。ポリマー−粒子層19は、イオン性ポリマーマトリクス中に複数の導電性粒子12を含む。実施形態によっては、2つの拡張電極層31の各々を構成する全てのポリマー−粒子層19は、同じ濃度の十分に分散された導電性粒子12を含んでいてもよい。このようなポリマー複合体の厚さ方向の濃度プロファイルは、図3Aに示されるように、各電極からの或る特定の深さにおいて一定濃度を示すと考えられる。
【0070】
実施形態によっては、複数の導電性粒子12は、拡張電極層31の外表面でより高い濃度となるよう、2つの拡張電極層31の各々において濃度勾配を形成する。一実施形態において、濃度勾配は、各拡張電極層31の厚さ方向に、ポリマー複合体11の両表面(18a及び18b)から線形的に減少し得る(図3B)。別の実施形態では、濃度勾配は、拡張電極層31の厚さ方向に、ポリマー複合体11の両表面(18a及び18b)から非線形的に減少し得る(図3C)。複数のポリマー−粒子層19を含む実施形態では、各ポリマー−粒子層19は、種々の濃度の導電性粒子12を有していてもよい。一実施形態において、最内層のポリマー−粒子層は、導電性粒子12の最も小さい濃度を有し、濃度は、各ポリマー−粒子層19において最外層のポリマー−粒子層19aに向かって徐々に増大する。またこれによって、図3B又は図3Cの濃度プロファイルを有するポリマー複合体が得られ得る。
【0071】
他の実施形態においては、拡張電極層31を構成する各ポリマー−粒子層19は、ポリマー−粒子層の厚さ方向の濃度が実質的一定となるよう十分に分散した導電性粒子12を含んでいてもよい。粒子濃度の異なる2つ以上のポリマー−粒子層(例えば、図8B中の19a及び19b)を組み合わせ拡張電極層31を形成することにより、導電性粒子の濃度プロファイルが図3Dに示すようなものになる。
【0072】
実施形態によっては、表面積の大きい導電性ナノ粒子をポリマー中に分散させて、導電性層13と誘電層32との間に拡張電極層31を形成することができる。実施形態によっては、ナノ粒子はまた、任意の形状のナノ材料、例えば、少なくとも一次元がナノスケールの材料を含み得る。例えば、ナノワイヤ、ナノチューブ、ナノフレーク、ナノ多孔性構造体等。
【0073】
拡張電極層31に有用な導電性粒子としては、貴金属、例えば、金、白金、銀、イリジウム、レニウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム及び銅等が挙げられる。他の金属、例えば、アルミニウム、鉄、ニッケル、亜鉛及び鉛等も使用することができる。実施形態によっては、上記金属の化合物又は合金も使用することができる。実施形態によっては、非金属材料も拡張電極層を製造する導電性粒子として使用することができる。例としては、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、III−V族半導体、II−VI族半導体並びにそれらの化合物及び合金が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態においては、導電性ポリマー等の有機導電体も有用であり得る。
【0074】
金及び白金を用いて拡張電極層を形成しているが、それらの価格は高いため、アクチュエータ−センサデバイスの製造コストが高くなる。実施形態によっては、銀ナノ粒子(SNP)又は炭素ナノ粒子(CNP)を拡張電極層31用の導電性粒子に用いて材料コストを低下させることができる。
【0075】
イオン性ポリマー誘電層32は、導電性粒子12を実質的に含まないイオン性ポリマー膜の層である。イオン性ポリマー誘電層を形成するのに有用なイオン性ポリマーの例としては、SPESポリマー、ペルフルオロ−スルホン酸ポリマー、ペルフルオロ−カルボン酸ポリマー、ポリスチレン−スルホン酸ポリマー及びペルフルオロ−第三級アンモニウムポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。イオン性ポリマー誘電層32用のイオン性ポリマーは、同一デバイス内の拡張電極層31用のイオン性ポリマーと同じであっても、又は異なっていてもよい。イオン性ポリマー誘電層32の典型的な厚さは、乾燥状態でのポリマー複合体全体の厚さの約2%〜約98%、好ましくは約20%〜約80%、より好ましくは約40%〜約70%であり得る。
【0076】
実施形態によっては、少なくとも1つの導電層13が、ポリマー複合体11の両表面上に堆積され得る。ポリマー複合体11の両表面、即ち第1の表面18a及び第2の表面18bは、拡張電極層31a及び拡張電極層31bの外表面でもある(図2を参照)。導電層13は、2つの拡張電極層31と接触しており、イオン性ポリマー複合体デバイスにおける表面電極として機能している。導電層13は、Au、Pt、Pd、Ir、Ru、Rh、Ag、Al、Ni及びCu等の金属を含んでいてもよい。
導電層13はさらに、導電性ポリマー、カーボンナノチューブ及びグラファイト等の非金属、又は他の導電性材料を含んでいてもよい。実施形態によっては、導電層13は端子15及びワイヤ17を介して電源16に接続されて、アクチュエータ要素又はセンサ要素として構成され得る。導電層13は、平面全体に(端子15からの)良好な電導度を保証するように機能するのに対し、導電性粒子12は、拡張電極層31の厚さ方向の(導電層13からの)電導度を保証する。
【0077】
実施形態によっては、導電性層13を、任意の物理的又は化学的堆積手法によってポリマー複合体上に堆積させることができる。例としては、複合体の表面18a及び表面18b上への、電気めっき、無電解めっき、化学蒸着、積層化、スパッタコーティング、加熱蒸着、インクジェットプリンティング、導電性塗料の塗布(浸漬、ブラシ塗り及び吹き付け等を含む)、又は金属箔若しくは金属網の直接結合が挙げられるが、これらに限定されない。かかる層の厚さは、約10nm〜約500μm、好ましくは約100nm〜約50μm、又はより好ましくは約1μm〜約5μmであり得る。得られる表面電極は、連続シート、多孔性若しくは網状の薄膜、又は平行ワイヤであり得る(図4A〜図4D)。
【0078】
抗膨潤性ポリマー複合体の構造
IECの大きいSPESイオン性ポリマーは通常、溶媒取り込み時の膨潤比が大きく、例えば、約40%〜約200%又は約60%〜約150%の膨潤比である。膨潤比は、ポリマーの種類及びそのIEC、溶媒の種類、付随するカチオンの種類、並びにポリマーの熱履歴に依存する。例えば、IECが2.03の乾燥(例えば、100℃の真空オーブンに一晩置いた後の)高分子量SPESは、1週間後、室温で脱イオン(DI)水に浸漬させた後に80%近い体積増加を示す。IECが大きく、溶媒含量が高いと、カチオン伝導度が改善されるが、体積増加が大きいと、アクチュエータ−センサ性能に対していくらかの負の効果を有し得る。
【0079】
図5に示すように、導電性粒子をイオン性ポリマー溶液中に分散させ、混合物をさらに硬化プロセスに供すると、これらの導電性粒子は、乾燥ポリマー膜内に密に充填される。水和時、ポリマー複合体膜の膨潤は、ナノ粒子の分離及び有効界面面積の減少を引き起こ
すため、等価静電容量が減少する。アクチュエータ−センサデバイスの動作には、これらの導電性ナノ粒子が拡張電極層中に密に、すなわち接触して又は非常に短い距離(数nm以下)で、充填されることが必要である。一方、複合体膜が乾燥している場合に表面電極層を塗付すると、水和時に、拡張電極層の高IECイオン性ポリマーは大量に膨潤するのに対し、表面電極層は変化しない。この膨張の不一致により、2つの隣接層間に力が生じる。その結果、塗付した表面電極はひび割れ又は剥離し、そのため、表面電導度が大きく低下する。
【0080】
実施形態によっては、(製造から使用までの)拡張電極層中のイオン性ポリマーの過剰な体積変化を防止すると共に、全体のカチオン伝導度を最大化するために、異方性の膨潤構造が採用され得る。より低いIECを示すイオン性ポリマーを拡張電極層31に用いて低膨張率をもたらし、より高いIECを示すイオン性ポリマーを誘電層32に用いて高カチオン伝導度を保証することができる。低膨張率の拡張電極層による側部からの圧力を構造全体が受けるため、膜平面方向での寸法の増大は比較的小さいのに対し、膜厚方向ではより大きな寸法の増大が観測される。その結果、導電性粒子の分離が最小になり、導電性層(例えば、表面電極)がひび割れ又は剥離しにくい。
【0081】
実施形態によっては、図6に示す相分離構造を採用して、全体的に膨潤比を低下させることができる。図6では、拡張電極層31a及び31bに相分離構造を用いている。相分離構造は、高膨潤比、例えば膨潤比が約40%〜約200%の、イオン性ポリマーを含むドメイン相60、及び、ドメイン相中のイオン性ポリマーの膨潤を制限することができるポリマーを含むマトリクス相61を含む。実施形態によっては、マトリクス相ポリマーは、低膨潤比、例えば膨潤比が約1%〜約40%の、又は膨潤比が1%未満であることを意味する、膨潤比が実質的に0の非イオン性ポリマーであり得る。ドメイン相ポリマーは、膨潤比の大きいイオン性ポリマーであり得る。実施形態によっては、ドメイン相60中のポリマーは、ドメイン間のイオン伝導を可能にする実質的に連続した三次元構造を有し得る。実施形態によっては、マトリクス相61がドメイン相60の膨潤を制限することができる。実施形態によっては、マトリクス相ポリマー構造を、誘電層32又は拡張電極層31のいずれに使用してもよい。実施形態によっては、相分離構造を、導電性粒子12を中に混合した拡張電極層31に使用することができる。実施形態によっては、ドメイン相60は、少なくとも1つのSPESポリマーを含み得る。SPESポリマーは、上記の式I、式II又は式IIIから選択することができる。
【0082】
イオン性ポリマー複合体の製造
図1に示したイオン性ポリマーデバイスの種々の実施形態を製造する幾つかの方法を説明する。幾つかの実施形態は、「事前形成した導電性粒子の分散」を利用して拡張電極層を作り出すことによりポリマー複合体を形成する方法を提供する。他の実施形態は、金属塩を硬化ポリマー複合体中で還元して、拡張電極層中にナノスケール及び/又はマイクロスケールの導電性金属粒子を形成する、「in−situ還元」によりポリマー複合体を形成する方法を提供する。実施形態によっては、まず、ポリマー複合体を製造し、次いで、導電性層をポリマー複合体の両表面上に堆積させることにより、電極を形成する。ポリマー複合体に対するカチオン交換及び溶媒吸収等の他の工程は、電極の形成前又は後に実施することができる。
【0083】
事前形成した導電性粒子の分散
幾つかの実施形態は、事前形成した導電性粒子を用いてイオン性ポリマーデバイスのイオン性ポリマー複合体を製造する方法を提供する。事前形成した導電性粒子の非限定的な例としては、事前形成した又は市販の金属粒子、導電性繊維又は導電性クラスター鎖、グラファイト、炭素ナノチューブ、導電性ポリマー及びそれらの任意の組合せが挙げられる。事前形成した金属粒子は、自前で合成してもよく、又は市販のナノ粒子若しくは粉末で
あってもよい。事前形成した金属粒子の非限定的な例としては、粒径が約100nm未満、好ましくは約30nm未満、又はより好ましくは約20nm未満である、アルコール中の金ナノ粒子、及び粒径が約100nm未満、好ましくは約30nm未満である、粉末形態の銀ナノ粒子が挙げられる。
【0084】
一実施形態は、イオン性ポリマー複合体を製造する方法であって、イオン性ポリマー溶液中に分散した複数の導電性粒子を含む少なくとも1つの混合物を準備すること、該少なくとも1つの混合物を硬化させ、少なくとも2つのイオン性ポリマー層を形成すること、及び、該少なくとも2つのイオン性ポリマー層を組み合わせ、イオン性ポリマー複合体を形成すること、を含む方法を提供する。イオン性ポリマー溶液は、1種類のSPESポリマーを、アルコール、メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)又は2−メトキシエタノール等の溶媒に混合することにより製造できる。他の好適なイオン性ポリマーとしては、他の種類のSPESポリマー、ペルフルオロ−スルホン酸ポリマー(ナフィオン(登録商標))又はペルフルオロ−カルボン酸ポリマー(フレミオン(登録商標))、ポリスチレン−スルホン酸ポリマー及びペルフルオロ−第三級アンモニウムポリマー等が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマー溶液の濃度は、約1重量%〜約50重量%、好ましくは約1重量%〜約20重量%、又はより好ましくは約5重量%〜約10重量%であり得る。超音波処理、撹拌、回転、又はボルテックス等の混合手法を用いて、ポリマーを溶媒に溶解させることができる。超音波処理に関しては、継続期間は、約1分〜数日の範囲、好ましくは約24時間又は一晩であり得る。実施形態によっては、2つ以上の混合方法を用いることができる。
例えば、断続的にボルテックスすることと超音波処理とを組み合わせることにより、微視的及び巨視的の両レベルで確実に混合されるようにできる。
【0085】
実施形態によっては、事前形成した導電性粒子をイオン性ポリマー溶液に添加し、所望の濃度のポリマー−粒子混合物を形成する。実施形態によっては、導電性粒子濃度は、約1mg/mL〜約2000mg/mL、又は好ましくは約10mg/mL〜約200mg/mLであり得る。ポリマー−粒子混合物は、事前形成した導電性粒子がよく分散するのに十分に長く、再度、超音波処理し、室温で断続的にボルテックスする。界面活性剤、例えばテトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB)、チオ基、及びデンドリマー等を用いて、事前形成した導電性粒子の凝集を防止することもできる。例えば、TOABで保護した、及びチオ基で保護した金ナノ粒子を形成することができる。実施形態によっては、有機界面活性剤を用いることもできる。他の実施形態においては、イオン性ポリマー及び導電性粒子を別個に溶解又は懸濁させて、2つの別個の溶液を形成することができる。次いで、該2つの溶液は、上記混合手法を用いて互いに混合することができる。
【0086】
導電性粒子の混合及び分散後、任意で、ポリマー−粒子溶液を濾過し、溶液中の不具合及び未溶解/未分散の大粒子を排除することができる。
【0087】
実施形態によっては、高速混合装置をポリマー−粒子混合物の混合に用いることができる。高速混合装置の例としては、FlackTek SpeedMixerTM DAC 150 FVZ-Kが挙げられる。ポリマー前駆体を、DMF、NMP、又はDMSO等の溶媒に添加し、高速混合装置で約5分から約120分、約20分から約100分、又は約50分から約100分の間、予混合する。混合速度は、約500rpmから約4000rpm、約500rpmから約3500rpm、約1000rpmから約3500rpm、約2000rpmから約3500rpm、約2500rpmから約3200rpmであり得る。次いで、約1重量%〜約50重量%、又は約4重量%〜約32重量%の導電性粒子を、混合済みのポリマー溶液に添加する。混合物は、約5分から約120分、約20分から約100分、又は約50分から約100分の間、再度混合する。実施形態によっては、2度目の混合には異なる速度を用いてもよい。実施形態によっては、高速混合により、約10Gから約700G、約100Gから約6
00G、約350Gから約550G、又は約400Gの力がかかる。実施形態によっては、高速混合により、約10Gより大きな、200Gより大きな、約350Gより大きな、又は400Gより大きな力がかかる。実施形態によっては、粉砕媒体の添加により混合時間を低減できる。粉砕媒体の非限定的な例としては、ZrO2、SiO2、MgO、CaO、Y2O3、Ce2O3、又はそれらの誘導体で作られたセラミックビーズが挙げられる。実施形態によっては、混合前に、ZrO2ビーズ(約0.1mmから約5mm、又は約1.5mmから約2mm)を混合物に添加する。実施形態によっては、約1gから約100g、約1gから約50g、又は約3gから約10gのZrO2ビーズを添加する。ポリマー−粒子混合物は、次いでキャスティング成形され、イオン性ポリマー層が形成される。
【0088】
少なくとも2つのイオン性ポリマー層は、少なくとも1つのポリマー−粒子混合物を硬化させることにより形成され得る。実施形態によっては、2つのイオン性ポリマー層の各々が、イオン性ポリマー層の一部分に分布した導電性粒子を有し得るのに対し、他の部分は、導電性粒子を実質的に含有しない。例えば、硬化プロセス時、分散した導電性粒子は、引力によって基板又は容器/型の底に沈み始め得る。その結果、イオン性ポリマー層の上部分(すなわち、基板又は容器/型の底から離れている)は、デバイスに電気を伝導するのに有意な量の導電性粒子を有しない可能性がある。層のこの部分はイオン性ポリマー複合体の誘電層32となり得る。導電性粒子を含有する部分は、完成した複合体において拡張電極層31となり得る。
【0089】
実施形態によっては、少なくとも2つのイオン性ポリマー層は、層の深さ全体にわたって有意量の導電性粒子を含み得る。次いで、これらのイオン性ポリマー層は、図8Aに示すように、完成した複合体において2つの拡張電極層31a及び拡張電極層31bとなる。
【0090】
他の実施形態においては、導電性粒子濃度の異なる2種類以上のポリマー−粒子混合物を硬化させ、導電性粒子濃度の異なる2つ以上のイオン性ポリマー層を形成することができる。導電性粒子濃度の異なるこれらのイオン性ポリマー層を組み合わせ、拡張電極層31の厚さ/深さ方向に粒子が分布する、1つの拡張電極層31を形成することができる。複合体は、2つの拡張電極層31とその間の誘電層32とを組み合わせることによって製造できる。
【0091】
実施形態によっては、太い帯状の拡張電極層を上記工程によって形成する。太い帯を半分に切断して、第1拡張電極層31a及び第2の拡張電極層31bを形成することができる。
【0092】
実施形態によっては、各ポリマー−粒子層19を、別個の膜としてキャスティング成形することができる。他の実施形態においては、さらなるポリマー−粒子層(群)19を、既に硬化したポリマー−粒子層の上面に直接形成することができる。
【0093】
実施形態によっては、少なくとも1つの拡張層のうちの1つが、図7に示すような第1の拡張電極層31aであり得る。第1の拡張電極層31aは、同一の又は異なる粒子濃度のポリマー−粒子混合物から製造した2つ以上のポリマー−粒子層を含み得る。混合物を昇温及び/又は真空下、基板上又は容器/型35内で硬化させて、第1のポリマー−粒子層19aを形成する。容器/型は、ガラス、シリコーン、テフロン(登録商標)又は他の材料から製造することができる。基板はガラス、シリコーン、テフロン又はポリエチレンテレフタラート(PET)等であり得る。薄いイオン性ポリマーデバイス要素が望ましい場合には、スピンコーティング又は他のプリンティング手法を用いて、薄いポリマー−粒子層を形成することができる。
【0094】
任意で、異なる又は同一の粒子濃度を有する1つ又は複数のポリマー−粒子層を、第1のポリマー−粒子層19aの上部全体に形成することができる。第1の拡張電極層31aは、単一のポリマー−粒子層19又は幾つかのポリマー−粒子層の組合せであり得る。実施形態によっては、第1のポリマー−粒子層19aは、最も高い濃度の事前形成した導電性粒子を有し、第2のポリマー−粒子層19bは、2番目に高い濃度を有する。他の実施形態においては、より低濃度のさらなるポリマー−粒子層も、第2のポリマー−粒子層19bの上部全体に形成することができる。組み合わされたポリマー−粒子層の第1のセット(例えば、19a及び19b)が第1の拡張電極層31aを形成する。第1の拡張電極層31aは、第1のポリマー−粒子層19aの外表面から、第1の拡張電極層31aとその隣層、例えば、誘電層32との間の界面に向かって減少する濃度勾配を有する。
【0095】
硬化したポリマー−粒子層又は膜が薄く、且つ初期混合物中の事前形成した導電性粒子の濃度が非常に高い実施形態において、事前形成した導電性粒子は、硬化したポリマー−粒子層19の厚さ方向にほぼ一定の濃度プロファイルを有し得る。他の実施形態においては、重力のために、硬化したポリマー−粒子層中に局所的な濃度勾配が形成される場合がある。かかるポリマー−粒子層は、拡張電極層31の形成においても有用であり得る。当業者は、各ポリマー−粒子層19製造用の各ポリマー−粒子混合物の濃度を調整することにより、本発明の実施形態に従い、特定の所望の濃度勾配を有する拡張電極層31を得ることができる。
【0096】
実施形態によっては、別個のイオン性ポリマー誘電層32が複合体デバイスの形成に必要となり得る。実施形態によっては、導電性粒子を含まない事前製造したイオン性ポリマーを使用することができる。それらは市販されているか、又は事前に硬化されうるかのいずれかである。他の実施形態においては、イオン性ポリマー誘電層を準備することには、第2のイオン性ポリマー溶液、例えば、SPESポリマー溶液を準備すること、及びイオン性ポリマー誘電層32を形成することが含まれる。誘電層32は、独立の層として形成してもよく、又は第2のイオン性ポリマー溶液を硬化させることによって、第1の拡張電極層31aの上部全体に形成してもよい。第2のイオン性ポリマー溶液は、イオン交換膜の形成に好適な任意のイオン性ポリマーから製造することができ、その例は上記の通りである。
【0097】
第2のイオン性ポリマー溶液は、ポリマー−粒子混合物の調製に用いた第1のイオン性ポリマー溶液と同一であってもよく、又は異なっていてもよい。例えば、異方性の膨潤構造を得るために、イオン性ポリマー誘電層32は、拡張電極層の製造に用いたポリマーよりもイオン交換容量(IEC)が高いSPESポリマーから製造することができる。誘電層の厚さは、乾燥状態での構造全体の厚さの約2%〜約98%、好ましくは約20%〜約80%、又はより好ましくは約40%〜約70%であり得る。
【0098】
イオン性ポリマー誘電層32を第1の拡張電極層31a上に形成する幾つかの実施形態において、イオン性ポリマー誘電層32の上部全体に上記少なくとも1つのポリマー−粒子混合物を硬化させることによって、第2の拡張電極層31bを形成することができる。第2の拡張電極層31bは、好ましくは、第1の拡張電極層31aと同一種類の濃度プロファイルを有するが、濃度勾配の方向が逆転する。例えば、19a及び19bのような濃度の異なる複数のポリマー−粒子層を形成し、第1の拡張電極層31aを製造する場合、イオン性ポリマー誘電層32の向こう側に逆の順番で再度同一の複数のポリマー−粒子層を形成する。粒子濃度が最も低いポリマー−粒子層19bを誘電層32上に形成し、より高濃度のポリマー−粒子層19aを先のポリマー−粒子層19b上に形成する。好ましい実施形態においては、第1の拡張電極層31a及び第2の拡張電極層31bは共に、対称的な濃度プロファイルを示す。各拡張電極層31の厚さは、乾燥状態でのポリマー複合体全体の厚さの約1%〜約49%、好ましくは約10%〜約40%、より好ましくは約15
%〜約30%であり得る。
【0099】
実施形態によっては、図8Aに示すように、ポリマー複合体を、少なくとも1つの拡張電極層及びイオン性ポリマー誘電層の2つを組み合わせることによって形成する。第1の拡張電極層31a及び第2の拡張電極層31bは、事前形成した粒子の分散方法を用いて別個に製造することができる。次いで、2つの別個に形成した拡張電極層を、イオン性ポリマー誘電層32が2つの拡張電極層間に挟持されるよう一緒に組み合わせて、単一のイオン性ポリマー複合体11を形成する。複数の層は互いに結合させて組み合わされる。実施形態によっては、図8Bに示すように、各拡張電極層を構成する複数のポリマー−粒子層を別個に形成し、次いで結合することにより、イオン性ポリマー複合体11を形成することができる。代替的には、図8Cに示すように、2つの組み合わせた層を結合する前に、誘電イオン性ポリマーの層を拡張電極層のそれぞれの上に直接形成して、イオン性ポリマー複合体を形成することができる。
【0100】
in−situ還元
いくつかの実施形態は、ポリマー複合体中に拡張電極層を形成するin−situ還元法を提供する。実施形態によっては、イオン性ポリマー溶液は、イオン性ポリマーを溶媒中に混合することによって製造され得る。好適なイオン性ポリマーとしては、イオン伝導することができる他のポリマーが挙げられ、この例は上記に挙げたものである。図9を参照すると、イオン性ポリマーデバイスを製造するプロセス100は、少なくとも1つの金属塩及びイオン性ポリマー溶液を含む混合物を準備することによる工程105で開始される。この混合物は、ポリマー−塩混合物又は溶液である。金属塩を、イオン性ポリマー溶液に添加し、強力攪拌する。実施形態によっては、金属塩は、HAuCl4、[Au(phen)Cl2]Cl、[Pt(NH36]Cl2、H2PtCl6、又は他のAu塩若しくはPt塩であり得る。一実施形態において、1又は複数の添加剤を混合物に添加して、硬化したポリマーの性能を改良することができる、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)を添加してポリマーのひび割れを防止することができる。
【0101】
ポリマー−塩混合物は、硬化プロセスに望ましい寸法及び形状に構成される容器に移してもよい。実施形態によっては、スピンコーティング、印刷(例えばインクジェット印刷)、又は他の薄膜キャスティング/堆積技法が、ポリマー複合体薄膜を製造するために使用され得る。実施形態によっては、硬化プロセスは、室温、約0〜約30Hg(相対)、好ましくは約0〜約15Hg、より好ましくは約5〜約10Hg等の真空下で起こり得る。次に、硬化したポリマー複合体を、高温、真空下でアニールする。例えば、温度範囲は、約50〜約200℃、好ましくは約70〜約150℃、より好ましくは約90〜約120℃の温度であり、真空範囲は、約0〜約30Hg(相対)、好ましくは約10〜約30Hg、より好ましくは約20〜約30Hgの真空である。他の実施形態では、硬化プロセスは、アニールすることなく高温、真空下でおこなうことができる。例えば、温度範囲は、約23〜約150℃、好ましくは約50〜約100℃、より好ましくは約80〜約90℃であってもよく、真空範囲は、約0〜約30Hg(相対)、好ましくは約0〜15Hg、より好ましくは約5〜約10Hgであってもよい。最も好ましくは、条件は、約80℃、真空が約5Hg(相対)であると考えられる。
【0102】
プロセスは、第1の拡張電極層31aを形成することによる工程110で継続される。ポリマー−塩混合物が部分的に硬化し、或る特定の粘度を有する場合、第1の割当の還元剤、例えばクエン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、又はHCHOを添加して、金属塩を還元し、ナノスケール及び/又はミクロスケールの金属粒子(例えば、導電性粒子12)を硬化ポリマー内部に形成させる。修練者(skilled artisan:当業者)は、ポリマー−塩混合物がいつ部分的に硬化されたかを、硬化ポリマー表面を観察することによって又は流動計を用いた粘度の測定によって求めることができるであろう。還元剤は典型的
には、硬化ポリマー層の第2の表面18bにわたって導入されるか又は添加される。第2の表面18bは、重力と対面するか、又は重力と反対の方向にあるように配向される。実施形態によっては、マイクロ噴霧機を使用して還元剤を導入し、液滴が第2の表面18bにわたって小さく且つ均質に分散されることを保証することができる。導電性粒子12は、重力のために、反対の第1の表面18aに向けて沈降及び移動する。第1の拡張電極層31aは、硬化ポリマーの第1の表面18aに且つ第1の表面18a付近に形成される。還元剤の導入速度を調節することによって、第1の表面18aで高濃度を伴う粒子の濃度勾配を実現することができる。
【0103】
ポリマーをさらに硬化させた後、プロセスは、第2の拡張電極層31bを形成することによる工程115で継続される。ポリマーがほとんど硬化してさらなる金属粒子を形成したら、第2の割当の還元剤を第2の表面18bにわたって添加する。ポリマーは硬化プロセスのこの時点でより粘性となるため、還元された導電性粒子12は、第1の表面18aに向けてよりゆっくりと移動し、第2の表面18bで且つ第2の表面18b付近で硬化して、第2の拡張電極層31bを形成する。硬化したポリマー組成物の中間部分は実質的に導電性粒子12を含まないため、イオン性ポリマー誘電層32となる。
【0104】
実施形態によっては、種々の量の還元剤を、硬化プロセスの種々の段階で数回導入して、濃度プロファイルを制御してもよい。実施形態によっては、金属塩を硬化ポリマー溶液中で還元し、約0.1nm〜約1μm、好ましくは約1nm〜約100nm、より好ましくは約1〜約10nmの範囲のサイズを有する実質的に球状の粒子を形成する。他の実施形態では、金属塩を、ポリマー複合体中で還元し、約0.1nm〜約1μm、好ましくは約1nm〜約100nm、より好ましくは約1〜約10nmの範囲の直径、及び約1nm〜約10μm、好ましくは約50nm〜約1μmの長さを有するクラスター鎖を形成することができる。実施形態によっては、テトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB)、チオ基及びデンドリマー等の界面活性剤を添加して、導電性ナノ粒子が凝集するのを防ぐことができる。
【0105】
いくつかの実施形態は、少なくとも2つのポリマー層又はブロックを形成すること、及びそれらを組み合わせてポリマー複合体を形成することを含む、ポリマー複合体を製造する別のin−situ還元法を提供する。プロセスは、工程105において上記のようにポリマー−塩溶液を混合することで開始されるが、使用されるポリマー−塩溶液の量は、最終ポリマー複合体11の所望の厚さの半分以下の厚さを有するポリマー層を形成するように調節され得る。プロセスは、工程110において上記のように第1の拡張電極層31aを形成することで継続される。継続して第2の拡張電極層を形成する代わりに、1つの拡張電極層を有するポリマー層50を、完全に硬化させることができる。当業者は、還元剤が導入される速度が、拡張電極層31の厚さ及び濃度プロファイルを確定し得ることを理解するであろう。2つのこのような硬化したポリマー層50は、2つの別個の容器内の一工程で、又は1つの大きい硬化したポリマー層50を2つの部分に切断することによって形成することができる。
【0106】
次の工程は、2つの硬化したポリマー層50を組み合わせることによって多層イオン性ポリマー複合体11を形成することを含む。表面のより高い導電性粒子濃度が重力と対面し且つ重力と反対の方向にあるように、硬化したポリマー層50の1つを、上側を下向きに反転させる。実施形態によっては、硬化したポリマー層50は、より狭い濃度勾配を有し得るか、又は図10Aに示されるように、硬化したポリマー層50の各々の一部が実質的に導電性粒子12を含まないものであってもよい。このような2つの硬化したポリマー層50は、実質的に導電性粒子12を含まない表面を接合させることによって互いに結合され得る。導電性粒子12を実質的に含まない各ポリマー−粒子層の一部は、イオン性ポリマー誘電層32を形成する。
【0107】
より厚いイオン性ポリマー誘電層が所望され得る他の実施形態においては、導電性粒子12を実質的に含まない別個のイオン性ポリマー誘電層32を使用することができる。誘電層32は、事前製造した、すなわち市販されているか又は事前に硬化されているかのいずれかの、イオン性ポリマーであってもよい。図10Bに示すように、このイオン性ポリマー誘電層32は、2つのポリマー層50間に挟持され、下記に示すように、すべての層を相互に結合することにより、ポリマー複合体11が形成される。
【0108】
上記方法により別個に形成された全ての層(拡張電極層及び/若しくは誘電層)又はポリマー複合体は、室温、真空下で硬化された後、高温、真空下でアニールされてもよい。室温における硬化に関する真空範囲は、約0〜約30Hg(相対)、好ましくは約0〜約15Hg、より好ましくは約5〜約10Hgである。アニール温度は、約50〜約200℃、好ましくは約70〜約150℃、より好ましくは約90〜約120℃の範囲である。アニールに関する真空範囲は、約0〜約30Hg(相対)、より好ましくは約10〜約30Hg、より好ましくは約20〜約30Hgである。他の実施形態では、硬化プロセスは、アニールを用いることなく高温、真空下で起こり得る。例えば、温度範囲は、約23〜約150℃、より好ましくは約50〜約100℃、より好ましくは約80〜約90℃であり、真空範囲は、約0〜約30Hg(相対)、より好ましくは約0〜約15Hg、より好ましくは約5〜約10Hgであり得る。
【0109】
任意の上記方法で製造した層の乾燥後、積層プロセスでは、加圧及び昇温条件下に層を相互に結合して、多層構造を形成することができる。実施形態によっては、真空オーブン又は加熱プレスを積層プロセスに使用してもよい。層を結合させることには、層の積層体に圧力を印加すること、例えば、2つのガラススライド間で積層体を締め付けるか、又は単に積層体に対して重いおもりを載せることを含む。実施形態によっては、少量のイオン性ポリマー溶液を、結合層間の接着剤として使用することができる。実施形態によっては、2−メトキシエタノール又はアルコール等の溶媒を接着剤として使用することができる。次いで、結合した積層体を、約0inHg〜約30inHg(相対値)、好ましくは約5inHg〜約20inHg、より好ましくは約10inHg〜約15inHgの範囲の真空下で、約50℃〜約200℃、約80℃〜約150℃、より好ましくは約90℃〜約120℃の範囲で昇温させて加熱し、隣接ポリマー相を再溶解すると共にすべての薄膜をシームレスに融合することにより、サンドイッチ型構造のポリマー複合体11を形成する。
【0110】
実施形態によっては、積層化は加熱プレスを用いておこなうことができる。加熱プレスを使用する条件は、積層体の厚さ、複合体の表面積、及び材料成分の種類に依存する。実施形態によっては、積層化の温度は、約室温〜約200℃、好ましくは約60℃〜約160℃、又はより好ましくは約100℃〜約120℃の範囲である。実施形態によっては、合計厚さが500μm未満の層積層体に印加する圧力は、約1kgf/cm2〜約1000kgf/cm2、好ましくは約20kgf/cm2〜約200kgf/cm2、又はより好ましくは約60kgf/cm2〜約120kgf/cm2の範囲である。実施形態によっては、結合の継続時間は、約1秒〜約24時間、約30秒〜約30分、又は約2分〜約10分であり得る。
【0111】
実施形態によっては、積層化を真空オーブン内でおこなうことができる。事前形成した層を、2つのガラス片間に配置及び固定し、オーブン内で積層体の上面におもりを載せる。温度条件及び真空条件は、上記硬化プロセスで使用したものと同様か、又はそれよりも低い。
【0112】
実施形態によっては、表面電極13を積層工程時に形成することができる。積層化時に
、導電性金属の薄膜、網、又は多孔性薄膜を、積層体の2つの外表面上に貼り付けて結合させることができ、これが複合体の第1の表面18a及び第2の表面18bとなる。実施形態によっては、導電性金属の薄膜、網、又は多孔性薄膜は、金、白金、銀、銅、ニッケル等を含み得る。実施形態によっては、薄膜又は網の厚さは、約10nm〜約100μm、好ましくは約100nm〜約10μm、又はより好ましくは約1μmであり得る。この方法を用いて形成した表面電極は、水及びカチオンを通過させることができ、水和時の膨潤に対してより高い耐性を示し得る。
【0113】
実施形態によっては、異なる表面めっき手法を用いて、積層体の結合後に表面電極を形成してもよい。上記の方法の任意の1つを用いて、ひとたび所望の粒子の濃度プロファイルを有するイオン性ポリマー複合体が製造されれば、任意に、少なくとも1つの導電層を、第1の表面18a及び第2の表面18bの各々の上に堆積させ、電極を形成することができる。導電層は、イオン性ポリマーデバイスの長さに沿って、良好な表面導電性及び均一な電場を保証する。事前形成した層を組み合わせてイオン性ポリマー複合体を形成する実施形態では、少なくとも1つの導電層が、ポリマー複合体の第1の表面18a及び第2の表面18bとなる表面上に堆積し得る。導電層に関する好適な材料としては、金属、導電性ポリマー、グラファイト、又は良好な導電性及び耐食性を有する他の材料が挙げられる。実施形態によっては、電極13に好ましい材料は、Au、Pt、Pd、Ir、Ru、Rh、Ag、Al、Ni及びCu等の金属、導電性ポリマー、カーボンナノチューブ及びグラファイト等の非金属、又は他の導電性材料である。導電層の堆積は、限定するものではないが、スパッタコーティング、無電解めっき、真空蒸着、電気めっき、導電性塗料の塗布(例えば吹き付け、塗装、ブラシ塗り、及び浸漬等)、及び上記の積層化中の結合を含む、任意の好適な堆積及び/又はめっき法によって実現することができる。表面めっきは複合体が水和していても乾燥していてもおこなうことができる。
【0114】
実施形態によっては、誘電層が堆積した後に、さらなる加熱プレスをおこなってもよい。加熱プレスにより誘電層とポリマー表面の間の接着が強化される。実施形態によっては、加熱プレスはスパッタコーティングされた誘電層に対しておこなわれる。スパッタコーティングに続いて、複合体はテフロン(登録商標)薄膜間に配置され、次いで2つの厚紙層の間に挟みこまれ、2つのアルミニウム板を厚紙層の上に配置する。挟み込まれた試料は、約50℃から約300℃、約50℃から約200℃、約80℃から約150℃、又は約100℃から約120℃で加熱プレスされる。実施形態によっては、加熱プレスの温度は誘電層の融点のほんの少し下であってもよい。実施形態によっては、加熱プレスのために印加される圧力は、約100ニュートン(N)から約20000N、約100Nから約10000N、約1000Nから約8000N、又は約5000Nであり得る。実施形態によっては、印加される圧力は、約0.01トンから約2トン、約0.01トンから約1トン、約0.1トンから約0.8トン、又は約0.5トンであり得る。本明細書中に用いられる「トン」という用語は、重量トン又はメートルトンであり、1トンは約9807N又は1000kgである。実施形態によっては、加熱プレスのために印加される圧力は、約2kgf/cm2から約450kgf/cm2、約2kgf/cm2から約250kgf/cm2、約20kgf/cm2から約200kgf/cm2、約60kgf/cm2から約120kgf/cm2、又は約112kgf/cm2であり得る。
【0115】
実施形態によっては、乾燥真空環境におけるスパッタコーティングを用いて、導電性物質の薄層を堆積させてもよい。マスクを用いて、或る特定のパターンでコーティングを塗布することにより、水和時のポリマーの膨潤の効果を低減させることもできる。実施形態によっては、層厚は、約10nm〜約1000nm又は約50nm〜約200nmであり得る。当業者には、所望の層厚、堆積させようとする物質、及び複合体の表面特性に応じた、スパッタコーティングパラメータの変更方法が既知である。実施形態によっては、電気めっき及び無電解めっき等の湿潤プロセスを用いて、ポリマーの膨潤に影響されないよ
うな表面電極を形成することができる。
【0116】
実施形態によっては、表面処理をおこなって、より良好に導電層と結合する表面積を大きくすることができる。これらの表面処理は、粗面処理、プラズマ表面処理、又は他の類似の処理であってもよい。また任意に、金属堆積工程前に、超音波洗浄又は酸洗浄等の洗浄プロセスを実施してもよい。
【0117】
電気刺激を受けてイオン性ポリマー複合体のクラスターネットワーク内のカチオンの移動が駆動するため、この駆動性能は、関連カチオンを換えることによって変更することができる。実施形態によっては、イオン性ポリマー複合体のカチオンを、イオン交換法によって、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、卑金属カチオン及びアルキルアンモニウム等の1つ又は複数のカチオンで置き換えてもよい。アルカリ金属カチオンは、Li+、Na+、K+、Rb+及びCs+等であり、アルカリ土類金属カチオンは、Ca2+及びMg2+等であってもよく、卑金属カチオンは、Al3+及びTl3+等であってもよい。アルキルアンモニウムカチオンとしては、テトラブチルアンモニウム(TBA+)及びテトラメチルアンモニウム(TMA+)が挙げられるが、これらに限定されない。これらのカチオンの異なる組合せは、所望の駆動性能及び特性を得るように探ることができる。実施形態によっては、小さいアルカリ金属カチオン試料は、より大きい変形率を示すが、全変形(駆動変位)は小さい。他の実施形態では、大きいアルキルアンモニウムカチオンほど、全変形が大きくなるが、変形率は小さいことを示す。
【0118】
実施形態によっては、相互結合したクラスターネットワークがイオン性ポリマー複合体中に形成されるように、溶媒吸収がおこなわれる。カチオンの移動は溶媒によって促進され、異なる溶媒の種類又は量を有するイオン性ポリマーアクチュエータは、異なる駆動性能を示し得る。溶媒としては、水、有機溶媒(例えば、エチレングリコール、グリコール、グリセロール若しくはクラウンエーテル)、又はイオン液体(例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート)が挙げられるが、これらに限定されない。また実施形態によっては、イオン交換及び溶媒吸収は、導電層を堆積する前におこなってもよい。
【0119】
実施形態によっては、拡張電極層が少なくとも約1.4meg/qのIECを有するSPESポリマー又はその誘導体を含む場合には、改善されたイオン性ポリマー複合体デバイスが製造され得る。実施形態によっては、拡張電極層のIECは、少なくとも約1.8meq/g又は少なくとも約2meq/gであり得る。実施形態によっては、拡張電極層のIECは、約1.5meq/gから約2.5meq/g、約1.8meq/gから約2.5meq/g、又は約2meq/gから約2.4meq/gであり得る。
【0120】
実施形態によっては、イオン性ポリマー複合体デバイスの誘電層又は中心層は、少なくとも約1.8meq/g、少なくとも約1.8meq/g、少なくとも約2meq/g、約1.5meq/gから約2.5meq/g、約1.8meq/gから約2.5meq/g、又は約2meq/gから約2.4meq/gのIECを有するSPESポリマー又はその誘導体を含み得る。実施形態によっては、イオン性ポリマー複合体の全ての層(拡張電極層及び誘電層を含む)が、少なくとも約1.8meq/g、少なくとも約1.8meq/g、少なくとも約2meq/g、約1.5meq/gから約2.5meq/g、約1.8meq/gから約2.5meq/g、又は約2meq/gから約2.4meq/gのIECを有する1又は複数のSPESポリマー又はその誘導体を含み得る。実施形態によっては、誘電層のIECは拡張電極層のIECよりも高い。
【0121】
実施形態によっては、表面電極がスパッタコーティングされた金薄膜である場合には、変位%、力出力、イオン性ポリマー複合体の仕事密度は、さらに改善され得る。表面電極
をポリマー表面上に堆積させた後で、表面電極に対し加熱プレス(すなわち、熱及び圧力処理)がなされれば、表面電極薄膜(例えば金属薄膜)とポリマー表面との接着は改善され得る。
【0122】
表面インプリンティング
別の実施形態は、電極と接するような表面形状/特質がインプリンティングされたイオン性ポリマー複合体を形成することによって、イオン性ポリマー相と導電相又は電極との間の界面領域を大きくする新規な方法を提供する。好適なイオン性ポリマーとしては、イオン伝導が可能な任意のポリマー、例えば、SPESポリマー、ペルフルオロ−スルホン酸ポリマー(ナフィオン(登録商標))、ペルフルオロ−カルボン酸ポリマー(フレミオン(登録商標))、ポリスチレン−スルホン酸ポリマー及びペルフルオロ−第三級アンモニウムポリマーが挙げられる。好ましい実施形態において、イオン性ポリマー複合体は、SPESポリマー溶液を用いて形成される。これらのポリマー溶液は、上記方法により製造される。イオン性ポリマー複合体のインプリンティングされた表面は、ナノスケール又はミクロスケールの表面形状/特質、例えば孔、溝及びトンネルを含む。
【0123】
図11を参照すると、インプリンティングされたポリマー複合体は、少なくとも1つのインプリンティング用プレート20を設けることによる工程305で開始されるプロセス300を用いて、製造され得る。ナノスケール及び/又はミクロスケールの表面形状/特質14を、電極13と接するイオン性ポリマー複合体11の両表面上に製造するためのテンプレートとして、少なくとも1つのインプリンティング用プレート20を使用する。インプリンティング用プレート20は、ナノスケール又はミクロスケールの圧こん、隆起及び穴等を有するいずれのプレートであってもよい。インプリンティング用プレートに好ましい材料は、半導体材料及び導体材料、例えば、多孔質シリコン(好ましくは重度にドープしたもの)、及びエッチングされた金属である。インプリンティング用プレートに好適な金属としては、Au、Pt、Pd、Ir、Ru、Ag、Al、Ni及びCuが挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
実施形態によっては、導体材料又は半導体材料を電気化学的にエッチングすることによって、インプリンティング用プレート20を製造することができる。一実施形態では、約10%フッ化水素酸(HF)エタノール/水溶液中でホウ素でドープされたP++タイプの<100>シリコンウエハを電気化学的にエッチングすることによって、多孔質シリコンインプリンティング用プレートを製造することができる。HFエタノール/水溶液は、48重量%のHF水溶液を、200プルーフのエタノールと1:4の体積比で混合することによって得られる。他のエッチング溶液としては、H+及びF+を生成することができるフッ化物塩と酸との任意の組合せが挙げられ得る。一実施形態では、エッチング溶液は、HNO3とNH4Fとの組合せであってもよい。別の実施形態では、アルミニウム箔は、HCl及び/又はHNO3でエッチングされてもよい。
【0125】
多孔性及び孔径は、エッチング条件を変えることによって調整することができる。種々のエッチング条件は、エッチング溶液の濃度、エッチング時間、印加される電気的機能、エッチングシーケンス、及びこれらの任意の組合せである。実施形態によっては、HFエタノール/水溶液は、濃度における約1体積%〜約99体積%、より好ましくは約5体積%〜約50体積%、より好ましくは約10体積%〜約38体積%であり得る。エッチング時間は、エッチング溶液の濃度に応じて決まり、約1秒〜約1時間、より好ましくは約10秒〜約10分、より好ましくは約30秒〜約5分の範囲をとり得る。印加される電流密度は、HF濃度に応じて決まり、約1〜約10000mA/cm2、好ましくは約10〜約2000mA/cm2であり得る。
【0126】
多孔質プレートの表面は、走査型電子顕微鏡(SEM)、反射率分光計、及び/又は原
子間力顕微鏡(AFM)によって特性化され得る。多孔質シリコンプレートの一実施形態は、大きい多孔性及び約5nm未満の平均孔径を示す。好ましい実施形態では、インプリンティング用プレート20は、比較的小さい孔(ナノメートルスケール)及び大きい孔深さ(マイクロメートルスケール)を有し、それゆえ、約10〜約100以上の大きいアスペクト比を有する。インプリンティング用プレートは、大きい多孔性(約70%〜約95%以上)を示し、それゆえ、大きい表面積対体積比を示す。インプリンティング用プレート表面を特性化及び試験することによって、修練者は、所望のテンプレートを製造するようにエッチングパラメータ及び条件を調節することができる。
【0127】
実施形態によっては、インプリンティング用プレート用の高度に多孔質の材料は、疎水性であってもよい。インプリンティングされた表面形状/特質は、イオン性ポリマー溶液をインプリンティング用プレートにキャスティングし、且つポリマー溶液をインプリンティング用プレートの多孔質マトリクス中に拡散させることによって製造され、適切な表面変性が、表面化学特性を変えるのに必要とされ得る。例えば、シリコンインプリンティング用プレートの酸化(Si−HをSi−Oへ変えること)は表面をより親水性とするため、イオン性ポリマー溶液は、インプリンティング用プレート上の穴及び圧こん中により容易に浸透し得る。一実施形態では、多孔質シリコンインプリンティング用プレートを約600℃で約2時間炉内に入れ、シリコン表面を酸化させる。
【0128】
プロセス300は、インプリンティング用プレート上に少なくとも1つのインプリンティングされたポリマー層を形成することによる工程310で継続される。イオン性ポリマー溶液を、インプリンティング用プレート20上に塗布するか又はキャスティングして、インプリンティングされたポリマー層41へと硬化させる。一実施形態は、2つのインプリンティング用プレート20の間のポリマー複合体を硬化させることによって表面形状/特質を有するイオン性ポリマー複合体を製造する方法を提供する。図12Aを参照すると、ポリマー溶液が、2つのインプリンティング用プレート20の表面上に塗布される。固体(事前に硬化された)イオン性ポリマー40は、ポリマー溶液が塗布された状態で、2つのインプリンティング用プレートの間に配置されていてもよく、挟持された構造体は、硬化プロセス中しっかりと固定される。実施形態によっては、ポリマー溶液は、2つの平行なインプリンティング用プレート20を伴う所望の容器に導入される。また、ポリマー溶液は、熱又は圧力によってインプリンティング用プレート20の穴及び圧こんに入れられてもよい。ポリマー溶液が硬化されると、インプリンティング用プレート20を除去して、図11Bに示されるような、孔、トンネル又は溝等の表面形状/特質14を両表面上に有する独立型イオン性ポリマー複合体12を得ることができる。
【0129】
他の実施形態では、ナノスケール又はミクロスケールの形状/孔を有するポリマー複合体は、一度に片面をインプリンティングすることによっても製造することができる。ポリマー溶液を少なくとも1つのインプリンティング用プレート20上に塗布し、硬化させて、インプリンティングされたポリマー41を形成する。薄いポリマー層が単一インプリンティング用プレート上にキャスティングされるいくつかの実施形態では、さらなるポリマー溶液を、補強層として薄いポリマー層上に塗布するか、又は添加するが、薄いポリマー層は依然としてインプリンティング用プレート20と結合している。インプリンティングされたポリマー層は硬化され、且つ(工程315で以下に記載されるように)インプリンティング用プレート20から剥離され、2つのインプリンティングされたポリマー層は、表面形状/特質が外側を向くように互いに結合して、ポリマー複合体11を形成する。さらなるポリマー溶液又は溶媒を、2つのインプリンティングされた層の間に接着剤として使用してもよい。代替的にはまた、別個に硬化したインプリンティングされた層が、表面形状/特質を有していない表面を接合させることによって結合させる前に最初に、表面形状/特質14上に堆積/めっきされる少なくとも1つの導電層13を有してもよい(図13)。導電層13の堆積/めっきは、上記のものと同じである。
【0130】
実施形態によっては、工程105によって生成されるポリマー−塩溶液は、インプリンティングされたポリマー層41を製造するのに使用することができ、還元剤19は工程110に記載されるように添加され、表面形状/特質14を有する表面に且つこの表面付近に、導電性粒子12を形成する。他の実施形態では、工程205によって生成されるポリマー−粒子混合物を使用しても、インプリンティングされたポリマー層41を形成することができる。工程210に記載される同じ技法を用いて、インプリンティングされた表面22を有する拡張電極層を形成する。導電性粒子が、in−situ還元又は事前形成された粒子の分散法のいずれかによって形成される実施形態では、導電性粒子を共に含む2つのインプリンティングされた層を結合させてイオン性ポリマー複合体11を形成する際に、イオン性ポリマー誘電層40を中心層として使用してもよい。
【0131】
プロセス300は、インプリンティング用プレートを除去してインプリンティングされたポリマー層を剥離させることによる工程315で継続される。インプリンティング用プレートを除去することは、酸又は塩基による化学エッチングを含み得る。多孔質シリコンテンプレートを使用するいくつかの実施形態では、多孔質シリコンインプリンティング用プレートは、NaOH又はKOH等の強塩基を用いてその表面構造をエッチングにより排除することによって、除去し得るため、インプリンティング用プレート20は、ポリマー複合体11の新たに形成される多孔質表面から剥離される。インプリンティング用プレート20が付設されたポリマー複合体11は典型的には、エッチング溶液に浸漬され、ポリマー複合体11を、付設されたインプリンティング用プレートから剥がすことができる。実施形態によっては、ポリマー複合体11、又はインプリンティング用プレートが付設されたポリマー層はまた、NaOH等の塩基性溶液に数時間浸して、インプリンティング用プレートを除去することができる。独立型ポリマー複合体11を風乾させる。
【0132】
例示される実施形態では、ポリマー複合体11がインプリンティング用プレート20から剥離したら、1つ又は複数の導電層13を、ポリマー複合体11の両方の多孔質表面上に堆積させ、電極を形成してもよい。実施形態によってはまた、少なくとも1つの導電層が実質的に複数の表面形状/特質を覆う。導電層に好適な材料としては、金属、導電性ポリマー、グラファイト、又は良好な導電性及び耐食性を有する他の材料が挙げられる。電極13に好ましい材料は、Au、Pt、Pd、Ir、Ru、Rh、Ag、Al、Ni及びCu等の金属、導電性ポリマー、カーボンナノチューブ及びグラファイト等の非金属、又は他の導電性材料である。導電層の堆積は、上記の通り、任意の好適な堆積及び/又はめっき法によって達成できる。
【0133】
他の実施形態では、導電性インプリンティング用プレートはまた、インプリンティング用プレートを除去しないか又はさらなる導電層を堆積しなかった場合には、電極としても機能し得る。電極として機能するのに好適なインプリンティング用プレートは、少なくともポリマー複合体の厚さ方向にわたって導電性である。実施形態によっては、インプリンティング用プレート20はまた、機械的に可撓性である(曲げ強度が低い)。これは通常、インプリンティング用プレートが非常に薄い場合のことである。最終的な表面めっき/コーティング工程は、付設されたインプリンティング用プレートの表面導電性を改良するのに、必要とされることがある。このようなインプリンティング用プレートの非限定的な例としては、重度にドープされたシリコンウエハからエッチングされる独立型多孔質シリコン薄膜、アルミニウム、金又は白金等の多孔質金属箔、導電性ワイヤから成る網目構造体、及び導電性ポリマー等の他の非金属材料が挙げられる。独立型多孔質シリコン薄膜は、重度にホウ素でドープされたP++タイプの<100>シリコンウエハを電気化学的にエッチングすることによって製造することができる。導電性ワイヤとしては、金属、シリコン、炭素及びカーボンナノチューブ等から成るワイヤが挙げられる。
【0134】
電気刺激を受けてイオン性ポリマー複合体のクラスターネットワーク内のカチオンの移動が駆動するため、この駆動性能は、関連カチオンを換えることによって変更することができる。実施形態によっては、イオン性ポリマー複合体のカチオンを、イオン交換法によって、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、卑金属カチオン及びアルキルアンモニウム等の1つ又は複数のカチオンで置き換えてもよい。アルカリ金属カチオンは、Li+、Na+、K+、Rb+及びCs+等であり、アルカリ土類金属カチオンは、Ca2+及びMg2+等であってもよく、卑金属カチオンは、Al3+及びTl3+等であっ
てもよい。アルキルアンモニウムカチオンとしては、テトラブチルアンモニウム(TBA+)及びテトラメチルアンモニウム(TMA+)が挙げられるが、これらに限定されない。これらのカチオンの異なる組合せは、所望の駆動性能及び特性を得るように探ることができる。実施形態によってはまた、相互結合したクラスターネットワークがイオン性ポリマー複合体中に形成されるように、溶媒吸収がおこなわれる。カチオンの移動は溶媒によって促進され、異なる溶媒の種類又は量を有するイオン性ポリマーアクチュエータは、異なる駆動性能を示し得る。溶媒としては、水、有機溶媒(例えば、エチレングリコール、グリコール、グリセロール若しくはクラウンエーテル)、又はイオン液体(例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート)が挙げられるが、これらに限定されない。また実施形態によっては、イオン交換及び溶媒吸収は、導電層を堆積する前におこなってもよい。
【0135】
本発明の方法によって製造されるイオン性ポリマーデバイスの実施形態の片持ストリップは、約1〜約2ボルトのような小さい交流電流(AC)が厚さにわたって印加されるときに、大きい曲げ振動を受け得る。イオン性ポリマーデバイスがアクチュエータとして構成される実施形態では、曲げ振動の幅は、ゲージ長さの約5%〜約100%となり得る。直流(DC)が印加される場合、試料は、アノードに向けて速い湾曲の動きを示した後、同一方向又は反対方向に緩徐な動きを示す。他の実施形態では、イオン性ポリマー部材が急激に湾曲する場合、約数mVの小さい電位が表面にわたって発生し、センサとして駆動させることができる。
【0136】
イオン性ポリマーデバイスの可能性のある用途としては、内視鏡手術、カテーテルチップ及びガイドワイヤ、埋込み式マイクロポンプ、薬剤放出速度が制御されたマイクロドラッグデリバリ装置の蓋、人工筋肉、及び変形センサ(湾曲、成形又は回転用)のための可撓性マニピュレータを形成することが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態は、動作を駆動し、且つ医療装置の前進を操作又は誘導することができるイオン性ポリマーデバイス又は要素を含む医療装置を提供する。例えば、内視鏡手術用チップは、ブレード、メス、針、持針器/ドライバ、ホック、スパチュラ、送達器具、内視鏡、光ファイバケーブル、光ガイド、鉗子、剪刀、ディセクタ、鋏、モノポーラ型及びバイポーラ型電気メス、クリップ供給具及びクリップ保持具を制御する1つ又は複数のイオン性ポリマーアクチュエータ要素/デバイスを含み得る。実施形態によっては、2つ以上のイオン性ポリマーアクチュエータ要素を使用して、2つ以上のチップの動きを制御し、緻密な動き及び操作を実現することもできる。実施形態によっては、可撓性カテーテルチューブ又はカニューレの壁に敷設されるか又は内蔵されるポリマーアクチュエータは、或る特定の方向におけるカテーテルの湾曲の動きを或る程度制御することができる。チューブ壁の複数のセグメントは、操作を容易にするために別個のイオン性ポリマーデバイスで覆われる。
【実施例1】
【0137】
キャスティング成形したSPES−SNP 2層薄膜:
この拡張電極薄膜を製造するために、QuantumSphere(登録商標)銀ナノ粒子、SPES−IIc(IEC=1.44)、及び溶媒としてDMFからポリマー−粒子溶液を調製する。或る特定濃度のSNPを5重量%ポリマー溶液に分散する。ポリマー
粒子溶液は濾過してから使用する。シリコーン型は、表面積が21cm2であり、PET薄膜に覆われたガラスの基板を有する。第1の層は、150mg/mLのポリマー−SNP溶液1.3mLから、60℃〜80℃で1時間の温度ランプ(ramp)、次いで、80℃〜100℃で2時間の温度ランプによりキャスティング成形する。相対値で−5inHgの低真空及び20L/分の空気流速を、プロセス全体を通して維持する。第2の層は、同一条件下、第1の層の上に、20mg/mLのポリマー−SNP溶液3.0mLからキャスティング成形する。黒色薄膜が得られ、冷却後に剥離する。下表面は、SNPの濃度が非常に高いため、光沢のない特性を有し、表面電気抵抗率が、マルチメータで測定される場合、長さ方向の薄膜全体にわたって2Ωと低い。上表面は、SNPの濃度が非常に低いため、光沢のあるポリマー特性を示し、抵抗が∞Ωである。
【0138】
図14A〜図14Cは、高分解能SEMを用いて観察した断面の形態を示す。これらのSEM画像において、明領域は、SNPの存在(導電性であること)を示すのに対し、暗領域は、ポリマーの存在(導電性が低いこと)を示す。上表面近くの非常に明るい帯は、電子線からのポリマーの帯電により形成され、SNPがこの領域にほとんど又は全く存在しないことを示す。図14Aは、重力により上表面から下表面へ向かって増大するSNPの濃度勾配を示す。2つの層間の界面を区別することができないのは、第2の層の溶液を分配する際、第1の層の上表面が溶解し、キャスティング成形した第2の層と融合したためである。図14Bは、断面上の下表面近くの拡大領域であり、ほとんど凝集せずに密に充填されたSNPを示す。高倍率(×350k)画像である図14Cは、大きさが約20nmである個々のSNPを示す。
【実施例2】
【0139】
キャスティング成形したSPES−CNP 1層薄膜:
この拡張電極薄膜を製造するために、複合体溶液をKetjen Black炭素ナノ粒子、SPES−IIa(IEC=1.27)、及び溶媒としてNMPから調製する。まず、SPESポリマー111mgをNMP溶媒2mLに溶解した(5.3重量%)。超音波処理槽で一晩処理した後、Ketjen Black 50mgをポリマー溶液に加え、再度一晩、超音波処理槽で処理した。得られた固体薄膜中のCNP濃度は31重量%である。
【0140】
図15A〜図15Dは、高分解能SEMで観察した断面の形態を示す。CNP及びマトリクスポリマーは共に炭素から成るため、トポロジーを除いて2つの相を区別することはあまり容易でない。図15A〜図15Cは、複合薄膜が厚さ方向にほぼ一定のCNP濃度を有することを示す。CNPは表面積が非常に大きく軽量であるため、均質な複合薄膜が得られる。図15Dは、密に充填された、大きさが30nm〜50nmの範囲である個々のCNPを示す。
【実施例3】
【0141】
SPES−SNPアクチュエータデバイスの製造:
最初は固体粉末形態で開始したSPES−IIc(IEC=1.44)を溶媒であるDMFと混合及び溶解することにより、10重量%ポリマー溶液を調製した。さらに、DMFをQuantum Sphere銀ナノ粒子と2つの異なる濃度:300mg/mL及び40mg/mLで組み合わせた。3つの溶液すべてを超音波処理槽で24時間超音波処理し、断続的に3回ボルテックスした。次いで、SPESポリマー溶液を、2つの最終濃度が5重量%ポリマー溶液中で150mg/mL及び20mg/mLとなるように、両方の銀ナノ粒子溶液と組み合わせた。組み合わせた後、これらの最終溶液を、超音波処理槽に24時間入れて、断続的に3回ボルテックスした。分散後、両方の溶液を5μmのシリンジフィルタを用いて濾過した。
【0142】
次工程としては2つの複合体溶液のキャスティング成形が含まれていた。まず、より高濃度の複合体溶液をキャスティング成形し、硬化後、より低濃度の複合体溶液を第1の層の上に直接キャスティング成形し、再度硬化させた。使用した21.0cm2のシリコーン型は、型の底面上にPET薄膜に覆われたガラス片を取り付けた後、エタノールで洗浄ることにより準備した。また、レベリングデバイスを用いて表面の均一性を確認した。オーブン温度が60℃に達した後、より高濃度の溶液を型に供した。まず、150mg/mLの複合体溶液1.5mLをプラスチックピペットを用いて供した。溶液を均一に広げてから、オーブン温度を80℃に上げ、流速は20L/分に設定し、真空度は相対値で−3inHgに設定した。これらの条件で第1の層を1時間硬化させた。1時間後、100℃に昇温して、これらの条件で2時間放置した。次いで、温度を60℃に戻し、一晩オーブン内に放置した。翌日、第2の層を供した:20mg/mL溶液4.5mL、均一層で、これもプラスチックピペットを用いて。温度は60℃で開始し、80℃に昇温して、同一の流速及び真空度で1時間放置した。次いで、100℃に昇温して、同一の流速を保ちながら2時間放置した。
【0143】
冷却後、PET薄膜に覆われたガラスから膜を取り外した。硬化した膜の取り外し時には、ひび割れが起こらないように注意を払った。膜の縁を取り外し、厚さ及び電導度を測定した。平均厚さは80μmであり、下表面の抵抗は3Ω〜5Ωであり、上表面の抵抗は∞MΩであり(長さ方向)、断面は∞MΩで測定した。薄膜の断面の写真をSEMを用いて撮影して、銀ナノ粒子の大きさ及び分布を観測した。
【0144】
分析後、薄膜を2等分し、次いで、これをニートポリマー薄膜(すなわち、誘電層)と結合させた。ニートポリマー薄膜は、薄膜コーター及び多層キャスティング手法を用いてSPES−Ib(IEC=2.37)から別個に調製する。2片の複合体層の平均厚さはそれぞれ69μm及び63μmであった。中心のニートポリマーの平均厚さは132μmであった。ニートポリマーを中心に、複合体薄膜のより導電性の高い表面が外側に面するように、3つの層をまとめて積み重ねた。2−メトキシエタノールを隣接層の間に接着剤として塗布した。次いで、対称的なアクチュエータ−センサ構造体を、圧力70kgf/cm2及び温度105℃で5分間の加熱プレスを用いて積層化した。得られた表面電導度が良好であったため、この試料にはさらなる表面めっきは不必要であった。図16は、積層SPES−SNP複合体構造のSEMであり、2つの隣接層が分離することなく界面で完全に融合していることを示す。複合体の断面に対するエネルギー分散型X線散乱解析(EDX)の線走査を図17に示す。複合体の厚さ方向の銀の分布は、所望の濃度勾配及びプロファイルを形成した。
【実施例4】
【0145】
SPES−CNPアクチュエータデバイスの製造:
ライオン株式会社製の炭素ナノ粒子(CNP)の1種であるKetjen Blackを用いて、また実施例3に記載したものと同様の製造方法に従った。まず、粉末形態のSPES−IIa(IEC=1.27)を、溶媒であるNMPと混合して、5.3重量%溶液を製造し、超音波処理槽で一晩超音波処理し、断続的に3回ボルテックスした。次いで、CNPを15mg/mLの濃度でポリマー溶液と直接混合した。同一の混合プロセスを繰り返し、一晩超音波処理し、断続的に3回ボルテックスした。溶液を調製してから、シリンジ濾過もさらなる基板もなしに、10cm2のシリコーン型内で、シリコン型表面上で直接、キャスティング成形を完結させた。レベリングデバイスを用いて型の均一性を確認した。複合体溶液2mLを使用した。硬化の第1の段階は70℃で開始し、90℃に昇温して、同一の流速及び真空設定値で1時間放置した。1時間後、110℃に昇温して2時間放置した。膜の平均厚さは60μmであり、乾燥固体ポリマー中のCNP濃度は21重量%であった。電気抵抗率測定は膜の両側に対し50mAで20Ω/□であり、乾燥状態で4点プローブで測定した。
【0146】
ニートポリマー層を有する複合体薄膜の結合を完結させた。SPES−Ib(IEC=2.37)を用いてニートポリマー膜を調製した。ニートポリマー膜を中央に配置し、複合体膜の下表面は外側に面していた。これは、複合体薄膜の上表面がはるかに平滑な表面を有する傾向があるため、結合がずっと容易になるためである。加熱プレスにおいて、結合の温度は120℃であり、印加した圧力は、3/4t、合計5分間であった。次いで、金スパッタコーティングにより、表面コーティングを膜の両側に施して、表面電導度を増大させた。
【実施例5】
【0147】
市販のナフィオンアクチュエータ及び2つのSPESアクチュエータの駆動変位及び力出力を比較した。市販のナフィオンアクチュエータ(試料A)の厚さは202μmであり、拡張電極層は還元型白金ナノ粒子を含み、表面電極は白金である。2つのSPESアクチュエータを上記方法に従って調製した。試料Bの厚さは328μmであり、拡張電極層はCNPを含み(SPES−IIa中に21重量%、IEC=1.27)、表面電極は、積層化した銅メッシュ薄膜(1500メッシュ、5.6μm厚)である。試料Cの厚さは576μmであり、拡張電極層はCNPを含み(SPES−IIa中に21重量%、IEC=1.27)、表面電極はスパッタした金である(約120nm)。試料B及び試料Cは共に、SPES−Ib(IEC=2.37)のニートポリマー層を有し、共に異方性の膨潤構造を有する。
【0148】
1.0V及び0.25Hzの階段状入力電圧をすべての試料に印加する。駆動変位を、空気中でレーザ変位センサを用いて測定した。標準化した変位は、各側の駆動変位振幅を試料の自由長で除算することによって算出する(%で)。力出力は、10gロードセルを用いてゼロ変位位置で測定する(ブロックドフォース(blocked force))(単位はグラム重量(gf))。駆動作業密度は、標準化した変位にブロックドフォース(すなわち、力出力)を乗算して算出する。試料Aは駆動変位が大きいが、力出力が非常に小さかったのに対し、試料B及び試料Cは、駆動変位は小さいが、力出力がはるかに大きく、信頼性が良好であった。試料B及び試料Cの駆動変位は、その厚さが大きいため、より小さい。試料B及び試料Cの駆動力出力はそれぞれ、試料Aの約11倍及び30倍高い。試料B及び試料Cの駆動作業密度出力はそれぞれ、試料Aの約9倍及び6倍高い。2.0V及び0.25Hzの階段状入力電圧もすべての試料に印加し、同様な結果が得られた。2.0Vで、試料B及び試料Cの駆動力出力はそれぞれ、試料Aの約11倍及び40倍高い。試料B及び試料Cの駆動作業密度出力はそれぞれ、試料Aの約8倍及び4倍高い。結果を下記表1及び表2にまとめる。
【0149】
【表1】

【0150】
【表2】

【実施例6】
【0151】
市販のナフィオンアクチュエータ及びSPESアクチュエータの検知電圧出力を比較した。市販のナフィオンアクチュエータ(試料A)の厚さは202μmであり、拡張電極層は還元型白金ナノ粒子を含み、表面電極は白金である。SPESアクチュエータは上記方法に従って調製した。試料Dの厚さは212μmであり、拡張電極層はCNPを含み(SPES−IIa中に31重量%、IEC=1.27)、表面電極は電気めっきした金(21mA、60分)であり、ニートポリマー層はSPES−Ib(IEC=2.37)である。
【0152】
検知電流は、イオン性ポリマー複合体の先端を曲げ伸ばすことにより試料の厚さ方向に生成する。変位及び計算した変位率を電圧出力と比較する。感度は、変位1単位当たりの電圧出力の量と定義する。試料Dの感度は試料Aの約20倍高い。結果を下記表3にまとめる。
【0153】
【表3】

【実施例7】
【0154】
SPES−CNPアクチュエータデバイスの製造:試料E−1
0.81gのポリマー前駆体SPES−IIb(IEC=2.06)を容器内で8mLのN−メチルピロリドン(NMP)に添加し、容器を高速混合装置(FlackTek SpeedMixerTM DAC 150 FVZ-K, Flacktek, Inc., Landrum, SC)のホルダにセットした。最初に3000rpm、90分で混合し、0.14gのCNPを混合ポリマー溶液に添加した。該混合物を高速混合装置で3000rpm、75分で混合した。混合された溶液をキャスティング成形のための鋳型に流し込んだ。硬化は70℃、180分でおこない、拡張電極層膜を形成した。膜の平均厚は110μmであり、乾燥固体ポリマー中のCNP濃度は15重量%であった。
【0155】
拡張電極層膜とニートポリマー層の結合は、加熱プレスによりおこなった。SPES−IIb(IEC=2.06)をニートポリマー膜の製造に用いた。ニートポリマー膜を中心に置き、拡張電極層膜の下表面は外側に面していた。加熱プレスにおいて、結合温度は104℃、印加した圧力は0.5トン、合計で10分とした。金スパッタコーティング(2分間)により、膜の両面に表面めっきがなされ、表面電導度を向上させた。金表面めっきとポリマー界面との接着を強化するため、スパッタコーティング後に、複合体を104℃、0.5トン、5分の加熱プレスに供した。
【0156】
試料E−2及びE−3は、E−2及びE−3のニートポリマー層がそれぞれSPES−Ia(IEC=1.35)及びSPES−Ib(IEC=2.13)を用いて製造されていることを除き、上記と同一の方法で調製した。E−2及びE−3の平均厚は305μm及び306μmであった。
【0157】
試料F−1、F−2及びF−3は、以下を例外として、上記と同一の方法で調製した。これら3つの試料についてSPES−IIbに添加したCNP量は0.24gであり、乾燥固体ポリマー中のCNP濃度は23重量%であった。F−1、F−2及びF−3のニートポリマー層はそれぞれ、SPES−IIb(IEC=2.06)、SPES−Ia(IEC=1.35)及びSPES−Ib(IEC=2.13)を用いて製造された。
【0158】
試料Gは上記に類似する方法で調製した。0.17gのSPES−IIbを2mLのNMPに添加し、高速混合装置で3000rpm、75分で混合した。0.032gのCNPを混合ポリマー溶液に添加し、高速混合装置で3000rpm、90分でさらに混合した。混合された溶液をキャスティング成形のための鋳型に流し込んだ。硬化は60℃、180分でおこない、拡張電極層膜を形成した。膜の平均厚は58μmであり、乾燥固体ポリマー中のCNP濃度は16重量%であった。複合体と表面めっきとの結合は上記と同一の条件でおこなった。
【0159】
試料H−1及びH−2は上記に類似する方法で調製した。0.17gのSPES−IIbを2mLのNMPに添加し、高速混合装置で3000rpm、60分で混合した。0.032gのCNPを混合ポリマー溶液に添加し、高速混合装置で3000rpm、50分でさらに混合した。混合された溶液をキャスティング成形のための鋳型に流し込んだ。硬化は60℃、180分でおこない、拡張電極層膜を形成した。膜の平均厚は94μmであり、乾燥固体ポリマー中のCNP濃度は16重量%であった。複合体と表面めっきとの結合は上記と同一の条件でおこなった。
【実施例8】
【0160】
試料E−1、E−2、E−3、F−1、F−2、F−3、G、H−1及びH−2の駆動変位を比較した。拡張電極層及び中心層の組成及びIEC値を表4にまとめる。試料の厚さは全て約300μmである。1.0V、1.5V、及び2.0Vで0.25Hzの階段状入力電圧を全試料に印加した。駆動変位を、レーザー変位センサにより空気中で測定した。標準化した変位は、各側の駆動変位振幅を試料の自由長で除算することによって算出する(%で)。図18は全試料について、異なる電圧を印加した際の変位のプロットを示す。高IEC拡張電極層を有する試料は、より低いIECの拡張電極層を有する試料(例えば、試料H−1及びH−2)よりも、大きな変位%を示す。高IEC拡張電極層及び高IEC中心ポリマー層の両方を有する試料は、高IEC拡張電極層及び低IEC中心ポリマーを有する対照試料よりも、一般的に大きな変位%を示す(例えば、試料E−3対E−2)。
【0161】
【表4】

【実施例9】
【0162】
試料F−3の駆動変位、力出力、及び作業密度を、試料A及びBと比較した。測定は実施例5に従っておこなった。結果を下記の表5及び表6にまとめた。試料F−3は高IEC拡張電極層及び高IEC中心ポリマー層を有する。試料Bは低IEC拡張電極層及び高IEC中心ポリマー層を有する。試料F−3は、市販のナフィオンアクチュエータ(試料A、厚さ202μm)及び試料Bと比較し、向上した駆動変位、力出力、及び作業密度を示す。特に、試料F−3の作業密度は、1.0V及び2.0Vでそれぞれ市販のナフィオンアクチュエータの64倍以上及び28倍近く高い。試料F−3の作業密度は、1.0V及び2.0Vでそれぞれ試料Bの7倍及び3.6倍高い。試料F−3の力出力は、1.0V及び2.0Vでそれぞれ試料Bの3倍以上及び2倍以上である。試料F−3の変位は、1.0V及び2.0Vでそれぞれ試料Bの2倍及び1.6倍である。
【0163】
【表5】

【0164】
【表6】

【0165】
当業者には当然のことながら、本発明の範囲を逸脱しない限り、上記実施形態に対して
様々な省略、付加及び改変をおこなうことができ、かかる改変及び変更はすべて、本発明の範囲内に収まることとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが、第1のイオン性ポリマー及び複数の導電性粒子を含む、2つの拡張電極層、並びに、
該2つの拡張電極層の間の、第2のイオン性ポリマーを含む誘電層であって、該第2のイオン性ポリマーが第2のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー又はその誘導体である、誘電層、
を含むイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項2】
前記第1のイオン性ポリマーが、第1のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー又はその誘導体である、請求項1に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項3】
前記第1のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー及び前記第2のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマーが、以下の式:
【化1】

(式中、xは約30〜約70である)
【化2】

(式中、RはH又はFであり、各y及び各zは約30〜約70である)
【化3】

(式中、Aはそれぞれ独立に、
【化4】

又はOHであり、且つ少なくとも1つのAは、
【化5】

である)
からなるグループから独立に選択される、請求項2に記載のイオン性ポリマー複合体デバ
イス。
【請求項4】
前記第2のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー又はその誘導体が、約0.9meq/g〜約3.3meq/gのイオン交換容量(IEC)を有する、請求項1に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項5】
前記第1のイオン性ポリマーが、前記第2のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー又はその誘導体のIECよりも低いIECを有する、請求項3に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項6】
前記第1のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー又はその誘導体が、少なくとも約1.4meq/gのIECを有する、請求項2に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項7】
前記第1のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー又はその誘導体が、少なくとも約2meq/gのIECを有する、請求項2に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項8】
前記第2のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー又はその誘導体が、少なくとも約1.4meq/gのIECを有する、請求項7に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項9】
少なくとも1つのイオン性ポリマーが、約100,000を上回る重量平均分子量を有する、請求項1に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項10】
前記複数の導電性粒子が、前記2つの拡張電極層のそれぞれで濃度勾配を形成する、請求項1に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項11】
前記濃度勾配の濃度が、前記拡張電極層の外表面に向かって増大している、請求項10に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項12】
前記複数の導電性粒子が、銀ナノ粒子、他の金属ナノ粒子及び炭素ナノ粒子から成るグループから選択される、請求項1に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項13】
前記複数の導電性粒子が、炭素ナノ粒子である、請求項1に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項14】
さらに2つの表面電極を含み、表面電極のそれぞれが前記拡張電極層の外表面上に堆積する、請求項1に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項15】
前記2つの表面電極のそれぞれが、前記拡張電極層の外表面の少なくとも一部を被覆する導電性金属薄膜を含む、請求項14に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項16】
前記導電性金属薄膜が、連続する薄膜、多孔性薄膜、メッシュ薄膜又は複数のワイヤである、請求項15に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項17】
前記導電性金属薄膜が、スパッタコーティングされた金薄膜である、請求項15に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項18】
前記スパッタコーティングされた金薄膜が、熱及び圧力で処理される、請求項17に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項19】
センサ又はアクチュエータとして構成される、請求項1に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項20】
それぞれが、高膨潤比の第1のイオン性ポリマーを含む複数のドメイン、及び実質的に連続する三次元ネットワーク構造を有するポリマーを含むマトリクス相を含み、該複数のドメインが該マトリクス相に埋め込まれている、2つの拡張電極層、並びに、
該2つの拡張電極層の間の、第2のイオン性ポリマーを含む誘電層であって、該第2のイオン性ポリマーが第2のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー又はその誘導体である、誘電層、
を含むイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項21】
前記マトリクス相が非イオン性ポリマーを含む、請求項20に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項22】
前記第1のイオン性ポリマーが、以下の式:
【化6】

(式中、xは約30〜約70である)
【化7】

(式中、RはH又はFであり、各y及び各zは約30〜約70である)
【化8】

(式中、Aはそれぞれ独立に、
【化9】

又はOHであり、且つ少なくとも1つのAは、
【化10】

である)
からなるグループから選択される、請求項20に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項23】
前記第2のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマーが、式I、式II、及び式IIIからなるグループから選択される、請求項22に記載のイオン性ポリマー複合体デバイス。
【請求項24】
請求項1に記載のイオン性ポリマー複合体デバイスを製造する方法であって、
第1のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー又はその誘導体を含む第1のイオン性ポリマー溶液中に分散した前記複数の導電性粒子を含む、少なくとも1つの混合物を準備すること、
前記少なくとも1つの混合物を硬化させることにより、前記複数の導電性粒子がそれぞれの中に分布する前記2つのイオン性ポリマー層を形成すること、及び、
第2のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー又はその誘導体を含む誘電層を前記2つのイオン性ポリマー層の間に位置させ、前記イオン性ポリマー複合体デバイスを形成すること、
を含む方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの混合物が高速混合装置を用いて調製される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記高速混合装置が約10Gを上回る力を提供する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記2つのイオン性ポリマー層それぞれの中の前記複数の導電性粒子が、前記イオン性ポリマー層の第1の表面に隣接する側が高濃度となるよう濃度勾配を形成し、且つ各イオン性ポリマー層の該第1の表面が前記イオン性ポリマー複合体の外表面となる、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
請求項24に記載の方法であって、
前記誘電層が、前記第2のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー溶液を準備すること、及び、
前記第2のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー溶液を硬化させることにより前記誘電層を形成すること、
により調製される方法。
【請求項29】
請求項24に記載の方法であって、
前記少なくとも1つの混合物を準備することが、第1の混合物及び第2の混合物を準備することを含み、該第1の混合物がイオン性ポリマー溶液中に分散した第1の濃度の導電性粒子を含み、且つ該第2の混合物がイオン性ポリマー溶液中に分散した第2の濃度の導電性粒子を含み、且つ
各拡張電極層が、前記第1の混合物を硬化させて第1のイオン性ポリマー薄膜を形成し、且つ前記第2の混合物を硬化させて第2のイオン性ポリマー薄膜を形成することにより形成される方法。
【請求項30】
金属薄膜を前記2つのイオン性ポリマー層の各外表面上に配置することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記金属薄膜が、前記2つのイオン性ポリマー層の各外表面上にスパッタコーティングされる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記金属薄膜に熱及び圧力を供することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の、及び前記第2のスルホン化ポリエーテルスルホンポリマー又はその誘導体が、以下の式:
【化11】

(式中、xは約30〜約70である)
【化12】

(式中、RはH又はFであり、各y及び各zは約30〜約70である)
【化13】

(式中、Aはそれぞれ独立に、
【化14】

又はOHであり、且つ少なくとも1つのAは、
【化15】

である)
からなるグループから独立に選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
請求項1に記載のイオン性ポリマー複合体デバイスを製造する方法であって、
溶媒中に溶解した前記イオン性ポリマー、マトリクス相ポリマー、及び複数の導電性粒子を含む液体混合物を準備すること、
前記液体混合物を基板上にコーティングして乾燥することにより、2つの拡張電極層を形成すること、
スルホン化ポリエーテルスルホンポリマーを含む誘電層を準備すること、並びに
2つの拡張電極層間に前記誘電層を組み合わせて、前記イオン性ポリマー複合体デバイスを形成すること、
を含む方法。
【請求項35】
前記イオン性ポリマーが、以下の式:
【化16】

(式中、xは約30〜約70である)
【化17】

(式中、RはH又はFであり、各y及び各zは約30〜約70である)
【化18】

(式中、Aはそれぞれ独立に、
【化19】

又はOHであり、且つ少なくとも1つのAは、
【化20】

である)
からなるグループから選択される、請求項34に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図17】
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【図18】
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【図11】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図16A】
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【図16B】
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【公開番号】特開2011−11549(P2011−11549A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151964(P2010−151964)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(500294958)ヒタチ ケミカル リサーチ センター インコーポレイテッド (27)
【Fターム(参考)】