説明

イオン性液体を使用した蒸留法による近沸点混合物、又は共沸混合物を分離する方法

イオン性液体を添加溶剤として使用して抽出精留によって共沸混合物、又は近沸点混合物を分離する方法であって、高沸点底部生成物が、側部取出し部を介してカラムから蒸気状態で取り出されることを特徴とする共沸混合物、又は近沸点混合物を分離する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近沸点混合物、又は共沸混合物を分離するために、抽出精留を使用した改良した方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の精留によっては分離不可能であり、好ましくは抽出精留(Stichlmair,S.and Fair,J.,Distillation,ISBN 0−471−25241−7,241頁ff)によって分離される液体混合物は工業上多く発生する。これは、混合物の成分の沸騰挙動が近似しているためであり、すなわち、特定の圧力、及び特定の温度において、これらが、実質的に同一又は同一のモル濃度割合で蒸気相と液相に分布することに起因している。
【0003】
成分iと成分jとから成る2成分液体混合物の場合、精留における分離作業の困難性が分離係数αijすなわち、成分iと成分jの分配係数の割合によって示される。分離係数の値が1に近づく程、通常の精留では成分の分離のコストが高くなる。なぜなら、精留カラム中の理論段(分離段)(theoretical plate)の数、及び/又はカラム頂部(上部)での還流割合(reflux ratio)を増加させなければならないからである。分離係数の値が1の場合、共沸混合物が存在することとなり、たとえ理論段又は還流割合を増加したとしても成分を更に濃縮するのはもはや不可能である。通常、分離係数は、低沸点物質の分配係数が分子になるか、又は分母になるかに依存して、1より大きいか、又は1より小さいものと考えられている。通常、低沸点物質は、分子に入るので、このため分離係数(separation factor)は1よりも大きくなる。
【0004】
近沸点混合物系、すなわち分離係数が約1.2よりも小さい系、又は共沸混合物系を分離するために、添加溶剤(entrainer)として知られている選択的添加剤を抽出精留に添加する処理が、しばしば工業的に行われる。適当な添加剤は、混合物の1種以上の成分と選択的に相互作用するので、分離係数に影響を及ぼし、これにより、混合者における近沸点成分又は共沸成分の分離を可能にする。抽出精留において、添加溶剤の作用により得られる頂部(上部)又は底部の成分は、カラムから得られる目的の成分である。頂部成分は、添加溶剤の存在下において低い沸点を有する成分であり、そして添加溶剤の存在下において高い沸点を有する成分は、底部に存在する。
【0005】
添加溶剤の、混合物の1種以上の成分との相互作用の強度の基準は選択率である。選択率は、成分iの界面活性係数の、成分jの界面活性係数に対する割合として定義され、この場合、成分iと成分jは、無限希釈の状態で添加溶剤中にしている(Schult,C.J.et.al.;Infinite−dilution activity coefficients for several solutes in hexadecane and in n−methyl−2−pyrrolidone(NMP):experimental measuremints and UNIFAC predictions;Fluid Phase Eqilibria 179(2001)pp.117−129)。Schultらによって示されているように、添加溶剤の選択率が高くなると、相対揮発性が高くなり、還流割合が小さくなり、そして従って分離コストが低くなる。以下に開示されているように、例えば、1.3を超え、好ましくは2.0を超える非常に高い選択率が望ましい。
【0006】
特許文献1(WO02/074718)は、イオン性液体が、近沸点液体混合物、又は共沸液体混合物の分離に、特に良好な添加溶剤であり、通常の添加溶剤よりも優れていることを開示している。イオン性液体の卓越性は、選択率と分離係数に直接的に見ることができる。適当なイオン性液体を使用した場合、共沸点における分離係数は、通常の添加剤を同量で使用した場合よりも、1の値から遠くなる。
【0007】
本発明の場合、イオン性液体は、Wasserscheid und Keim in Angewandte Chemie 2000、112、3926−3945に定義されている。イオン性液体の種類は、新しい種類の溶媒を表す。上述した刊行物に示されているように、イオン性液体は、比較的低い温度で溶解し、そして、非分子の、イオン性を有する塩である。これらは、200℃未満、好ましくは150℃未満、特に好ましくは100℃未満の比較的低い温度で液体であり、そして比較的低い粘性を有している。これらは、多数の有機、無機及び重合体の物質に対して、非常に良好な溶媒性能を有している。
【0008】
イオン性塩と比較して、イオン性液体は、有意に低い温度(通常、200℃未満)で液体であり、そして融点がしばしば0℃未満であり、ある例では−96℃まで低下するが、この融点は、抽出精留を工業的に行うのに重要である。
【0009】
これに加え、イオン性液体は、通常、不燃性であり、非腐食性であり、そして粘性が低く、そして蒸気圧が僅かなものである。
【0010】
本発明の場合、イオン性液体は、少なくとも1価のプラスの電荷と少なくとも1価のマイナスの電荷を有し、且つ全体として電気的に中性であり、そして200℃未満、好ましくは100℃未満、特に好ましくは50℃未満の融点を有する化合物である。
【0011】
イオン性液体は、複数価のプラス又はマイナスの電荷を有することも可能であり、例えば、1〜5、好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3、極めて好ましくは1又は2の電荷であり、でありしかし特に1価のプラス電荷であり、そして1価のマイナス電荷である。
【0012】
電荷は、分子の種々の局在化又は非局在化した領域に配置し、すなわち、ベタイル−状にすることができ、又は分離したアニオンとカチオンに分配することができる。少なくとも1種のカチオンと少なくとも1種のアニオンからなるイオン性液体が好ましい。カチオンとアニオンは、上述のように1価以上の電荷を帯び、好ましくは単一の電荷を帯びている。
【0013】
種々のイオン性液体の混合物、又はN−メチルピロロリドン、ジメチルホルムアミド、エタンジオール、ベンゼン、シクロヘキサン、水等の通常の添加溶剤とイオン性液体との混合物も当然、考えられる。
【0014】
好ましいカチオンは、アンモニウムイオン、又はホスホニウムイオン、又は少なくとも1種の5員又は6員の複素環式化合物を含むカチオンであり、この複素環式化合物は、少なくとも1種の燐又は窒素原子を有し、そして所望により酸素、又は硫黄原子を有するものであり、特に好ましくは、1個、2個又は3個窒素原子及び硫黄又は酸素原子を有する、少なくとも1種の5員又は6員の複素環式化合物を有する化合物であり、極めて好ましくは1個又は2個の窒素原子を有する化合物である。
【0015】
特に好ましいイオン性液体は、分子量が1000g/mol未満、極めて好ましくは350g/mol未満のイオン性液体である。
【0016】
更に、式(Ia)〜(Iw)の化合物、
【0017】
【化1】

【0018】
【化2】

【0019】
【化3】

【0020】
【化4】

【0021】
【化5】

【0022】
(但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7が、それぞれ互いに独立して、C1−C18−アルキル、1個以上の酸素原子、及び/又は硫黄原子、及び/又は1個以上の置換又は無置換のイミノ基で遮断されても良いC2−C18−アルキル、C6−C12−アリール、C5−C12−シクロアルキル、又は5員又は6員の、酸素、窒素、及び/又は硫黄含有複素環式化合物を意味し、又はこれらの2個が合体して、1個以上の酸素、及び/又は1個以上の置換、又は無置換のイミノ基で遮断されても良い不飽和、飽和、又は芳香族環を形成し、且つ上述した基が、それぞれ、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子、及び/又は複素環式化合物によって置換されても良い。)の中から選ばれるカチオンが好ましく、及び、これらの構成を含むオリゴマー、又はポリマーも好ましい。
【0023】
更に、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、ハロゲンであっても良い。
【0024】
7は、C1−C18−アルキルオイル(アルキルカルボニル)、C1−C18−アルキルオキシカルボニル、C5−C12−シクロアルキルカルボニル、又はC6−C12−アリールオイル(アリールカルボニル)、(但し、上述した基が、それぞれ官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子、及び/又は複素環式化合物によって置換されても良い。)であっても良い。
【0025】
上記式において、
官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子、及び/又は複素環式化合物によって置換されても良いC1−C18−アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、2,4,4−トリメチルペンチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、1,1−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルブチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、α,α−ジメチルベンジル、ベンズヒドリル、p−トリルメチル、1−(p−ブチルフェニル)エチル、p−クロロベンジル、2,4−ジクロロベンジル、p−メトキシベンジル、m−メトキシベンジル、2−シアノエチル、2−シアノプロピル、2−メトキシカルボニルエチル、2−エトキシカルボニルエチル、2−ブトキシカルボニルプロピル、1,2−ジ(メトキシカルボニル)エチル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、2−ブトキシエチル、ジエトキシメチル、ジエトキシエチル、1,3−ジオキソラン−2−イル、1,3−ジオキサン−2−イル、2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル、2−イソプロポキシエチル、2−ブトキシプロピル、2−オクチルオキシエチル、クロロメチル、2−クロロエチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、1,1−ジメチル−2−クロロエチル、2−メトキシイソプロピル、2−エトキシエチル、ブチルチオメチル、2−ドデシルチオエチル、2−フェニルチオエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、6−ヒドロキシヘキシル、2−アミノエチル、2−アミノプロピル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、6−アミノヘキシル、2−メチルアミノエチル、2−メチルアミノプロピル、3−メチルアミノプロピル、4−メチルアミノブチル、6−メチルアミノヘキシル、2−ジメチルアミノエチル、2−ジメチルアミノプロピル、3−ジメチルアミノプロピル、4−ジメチルアミノブチル、6−ジメチルアミノヘキシル、2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルエチル、2−フェノオキシエチル、2−フェノオキシプロピル、3−フェノオキシプロピル、4−フェノキシブチル、6−フェノキシヘキシル、2−メトキシエチル、2−メトキシプロピル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、6−メトキシヘキシル、2−エトキシエチル、2−エトキシプロピル、3−エトキシプロピル、4−エトキシブチル、又は6−エトキシヘキシル、であり、及び、
1個以上の酸素原子、及び/又は硫黄原子、及び/又は1個以上の置換又は無置換のイミノ基(imino group)によって遮断されたC2−C18−アルキルは、例えば、5−ヒドロキシ3−オキサペンチル、8−ヒドロキシ−3,6−ジオキサオクチル、11−ヒドロキシ3,6,9−トリオキサウンデシル、7−ヒドロキシ−4−オキサヘプチル、11−ヒドロキシ−4,8−ジオキサウンデシル、15−ヒドロキシ−4,8,12−トリオキサペンタデシル、9−ヒドロキシ−5−オキサノニル、14−ヒドロキシ−5,10−オキサテトラデシル、5−メトキシ−3−オキサペンチル、8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチル、11−メトキシ−3,6,9−トリオキサウンデシル、7−メトキシ−4−オキサヘプチル、11−メトキシ−4,8−ジオキサウンデシル、15−メトキシ−4,8,12−トリオキサペンタデシル、9−メトキシ−5−オキサノニル、14−メトキシ−5,10−オキサテトラデシル、5−エトキシ−3−オキサペンチル、8−エトキシ−3,6−ジオキサオクチル、11−エトキシ−3,6,9−トリオキサウンデシル、7−エトキシ−4−オキサヘプチル、11−エトキシ−4,8−ジオキサウンデシル、15−エトキシ−4,8,12−トリオキサペンタデシル、9−エトキシ−5−オキサノニル、又は14−エトキシ−5,10−オキサテトラデシルである。
【0026】
2個の基(ラジカル)が環を形成する場合、これらの環は共に、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン,2−オキサ−1,3−プロピレン、1−オキサ−1,3−プロピレン,2−オキサ−1,3−プロピレン,1−オキサ−1,3−プロペニレン、1−アザ−1,3−プロピレン、1−C1−C4−アルキル−1−アザ−1,3−プロペニレン、1,4−ブタ−1,3−ジエニレン、1−アザ−1,4−ブタ−1,3−ジエニレン、又は2−アザ−1,4−ブタ−1,3−ジエニレンである。
【0027】
酸素原子、及び/又は硫黄原子、及び/又はイミノ基の数については制限がない。通常、このような原子又は基は、基中に5個を越えて存在せず、好ましくは4個を越えて存在せず、及び極めて好ましくは3個を越えて存在しない。
【0028】
更に、通常、いずれの2個のヘテロ原子の間にも、少なくとも1個の炭素原子、好ましくは少なくとも2個の炭素原子が存在する。
【0029】
置換、又は無置換のイミノ基は、例えば、イミノ、メチルイミノ、イソプロピルイミノ、n−ブチルイミノ、又はtert−ブチルイミノであって良い。
【0030】
更に、
官能基は、カルボキシル、カルボキシアミン、ヒドロキシ、ジ(C1−C4−アルキル)アミノ、C1−C4−アルキルオキシカルボニル、シアノ、又はC1−C4−アルキルオキシであり、
官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子、及び/又は複素環式化合物によって置換されても良いC6−C12−アリールは、例えば、フェニル、トリル、キシリル、α−ナフチル、β−ナフチル、4−ジフェニリル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、トリクロロフェニル、ジフルオロフェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、ジエチルフェニル、イソプロピルフェニル、tert−ブチルフェニル、ドデシルフェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、エトキシフェニル、ヘキシルオキシフェニル、メチルナフチル、イソプロピルナフチル、クロロナフチル、エトキシナフチル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,6−ジエトキシフェニル、2,6−ジクロロフェニル、4−ブロモフェニル、2−又は4−ニトロフェニル、2,4−又は2,6−ジニトロフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、4−アセチルフェニル、メトキシエチルフェニル、又はエトキシエチルフェニルであり、
官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子、及び/又は複素環式化合物によって置換されても良いC5−C12−シクロアルキルは、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、ジエチルシクロヘキシル、ブチルシクロヘキシル、メトキシシクロヘキシル、ジメトキシシクリヘキシル、ジエトキシシクロヘキシル、ブチルチオシクロヘキシル、クロロシクロヘキシル、ジクロロシクロヘキシル、ジクロロシクロペンチル、又はノルボルニル(norbornyl)、又はノルボルネニル等の飽和又は不飽和の二環式の系(system)であり、
5員又は6員の、酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を含む複素環式化合物は、例えば、フリル、チオフェニル、ピルリル(pyrryl)、ピリジイル、インドリル、べンゾキサゾリル、ジオキソリル、ジオキシル、ベンズイミダゾイル、ベンゾチアゾリル、ジメチルピリジイル、メチルキノリル、ジメチルピルイル、メトキシフリル、ジメトキシピリジイル、ジフルオロピリジイル、メチルチエニル、イソプロピルチエニル、又はtert−ブチルチエニルであり、及び、
1−C4−アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル又はtert−ブチルである。
【0031】
1−C18−アルキルオイル(アルキルカルボニル)は、例えば、アセチル、プロピオニル、n−ブチロイル、sec−ブチロイル、tert−ブチロイル、2−エチルヘキシカルボニル、デカノイル、ドデカノイル、クロロアセチル、トリクロロアセチル、又はトリフルオロアセチルであって良い。
【0032】
1−C18−アルキルオキシカルボニルは、例えば、メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、n−ブチルオキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、tert−ブチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、又はベンジルオキシカルボニルであって良い。
【0033】
5−C12−シクロアルキルカルボニルは、例えば、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル、又はシクロドデシルカルボニルである。
【0034】
6−C12−アリールオイル(アリールカルボニル)は、例えば、ベンゾイル、トルイル、キシロイル、α−ナフトイル、β−ナフトイル、クロロベンゾイル、ジクロロベンゾイル、トリクロロベンゾイル、又はトリメチルベンゾイルである。
【0035】
1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、それぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n−ブチル、2−ヒドロキシエチル、2−シアノエチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(n−ブトキシカルボニル)エチル、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、又は塩素であることが好ましい。
【0036】
7は、メチル、エチル、n−ブチル、2−ヒドロキシエチル、2−シアノエチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(n−ブトキシカルボニル)エチル、アセチル、プロピオニル、t−ブチリル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、又はn−ブトキシカルボニルであることが好ましい。
【0037】
特に好ましいピリジニウムイオン(Ia)は、基R1〜R5の内の1つが、メチル、エチル、又は塩素であり、R7がアセチル、メチル、エチル、又はn−ブチル、及び他の全てが水素のものであるか、又はR3がジメチルアミノ、R7がアセチル、メチル、エチル、又はn−ブチルで、そして他の全てが全てが水素のものであるか、又はR7がアセチル、メチル、エチル、又はn−ブチルで、そして他の全てが水素のものであるか、又はR2がカルボキシル、又はカルボキシアミド、R7がアセチル、メチル、エチル、又はn−ブチルで、そして他の全てが全てが水素のものであるか、又はR1とR2、又はR2とR3が、共に1,4−ブタ−1,3−ジエニレン、R7がアセチル、メチル、エチル、又はn−ブチルで他の全てが水素のものである。
【0038】
特に好ましいピリダジニウムイオン(Ib)は、基R1〜R4の内の1つがメチル、又はエチル、R7が、アセチル、メチル、エチル、又はn−ブチルで、他の全てが水素のものであるか、又はR7が、アセチル、メチル、エチル、又はn−ブチルで、他の全てが水素のものである。
【0039】
特に好ましいピリミジニウムイオン(Ic)は、R2〜R4が、それぞれ水素、又はメチル、R7がアセチル、メチル、エチル、又はn−ブチルで、そしてR1が、水素、メチル、又はエチルのものであるか、又はR2とR4が、それぞれメチル、R3が水素、及びR1が水素、メチル、又はエチル、そしてR7がアセチル、メチル、エチル、又はn−ブチルのものである。
【0040】
特に好ましいピラジニウムイオン(Id)は、R1〜R4の全てがメチルで、R7がアセチル、メチル、エチル、又はn−ブチルであるか、又はR7がアセチル、メチル、エチル、又はn−ブチルであり、及び他の全てが水素のものである。
【0041】
特に好ましいイミダゾリウムイオン(Ie)は、それぞれが互いに独立して、R1が、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、2−ヒドロキシエチル、及び2−シアノエチルの中から選ばれ、R7がアセチル、メチル、エチル、又はn−ブチルで、そしてR2〜R4が、それぞれ互いに独立して、水素、メチル又はエチルのものである。
【0042】
特に好ましい1H−ピラゾリウムイオン(If)は、それぞれが互いに独立して、R1が、水素、メチル及びエチルの中から選ばれ、R2、R3及びR4が、水素とメチルの中から選ばれ、及びR7が、アセチル、メチル、エチル、又はn−ブチルの中から選ばれるものである。
【0043】
特に好ましい3H−ピラゾリウムイオン(Ig)は、それぞれが互いに独立して、R1が、水素、メチル及びエチルの中から選ばれ、R2、R3及びR4が、水素とメチルの中から選ばれ、及びR7が、アセチル、メチル、エチル、又はn−ブチルの中から選ばれるものである。
【0044】
特に好ましい4H−ピラゾリウムイオン(Ih)は、それぞれが互いに独立して、R1〜R4が、水素とメチルから選ばれ、そしてR7がアセチル、メチル、エチル、及びn−ブチルから選ばれるものである。
【0045】
特に好ましい1−ピラゾリニウムイオン(Ii)は、それぞれが互いに独立して、R1〜R6が、水素とメチルから選ばれ、そしてR7が、アセチル、メチル、エチル、及びn−ブチルの中から選ばれるものである。
【0046】
特に好ましい2−ピラゾリニウムイオン(Ij)は、それぞれが互いに独立して、R1が、水素、メチル、エチル及びフェニルから選ばれ、R7が、アセチル、メチル、エチル、又はn−ブチルの中から選ばれ、そしてR2〜R6が、水素とメチルの中から選ばれるものである。
【0047】
特に好ましい3−ピラゾリニウムイオン(Ik)は、それぞれが互いに独立して、R1とR2が、水素、メチル、エチル及びフェニルの中から選ばれ、R7が、アセチル、メチル、エチル、及びn−ブチルの中から選ばれ、そしてR3〜R6が、水素とメチルの中から選ばれるものである。
【0048】
特に好ましいイミダゾリニウムイオン(Il)は、それぞれが互いに独立して、R1とR2が、水素、メチル、エチル、n−ブチル及びフェニルの中から選ばれ、R7が、アセチル、メチル、エチル、及びn−ブチルの中から選ばれ、そしてR3とR4が、水素、メチル、及びエチルの中から選ばれ、そしてR5とR6が水素とメチルの中から選ばれるものである。
【0049】
特に好ましいイミダゾリニウムイオン(Im)は、それぞれが互いに独立して、R1とR2が、水素、メチル、及びエチルの中から選ばれ、R7が、アセチル、メチル、エチル、及びn−ブチルの中から選ばれ、そしてR3〜R6が、水素、及びメチルの中から選ばれるものである。
【0050】
特に好ましいイミダゾリニウムイオン(In)は、それぞれが互いに独立して、R1、R2及びR3が、水素、メチル、及びエチルの中から選ばれ、R7が、アセチル、メチル、エチル、及びn−ブチルの中から選ばれ、そしてR4〜R6が、ハロゲン、及びメチルの中から選ばれるものである。
【0051】
特に好ましいチアゾリウムイオン(Io)、及びオキサゾリウムイオン(Ip)は、それぞれが互いに独立して、R1が、水素、メチル、エチル及びフェニルの中から選ばれ、R7が、アセチル、メチル、エチル、及びn−ブチルの中から選ばれ、そしてR2とR3が、ハロゲン、及びメチルの中から選ばれるものである。
【0052】
特に好ましい1,2,4−トリアゾリウムイオン(Iq)及び(Ir)は、それぞれが互いに独立して、R1とR2が、水素、メチル、エチル及びフェニルの中から選ばれ、R7が、アセチル、メチル、エチル、及びn−ブチルの中から選ばれ、そしてR3が、ハロゲン、メチル、及びフェニルの中から選ばれるものである。
【0053】
特に好ましい1,2,3−トリアゾリウムイオン(Is)及び(It)は、それぞれが互いに独立して、R1が、水素、メチル、エチルの中から選ばれ、R7が、アセチル、メチル、エチル、及びn−ブチルの中から選ばれ、そしてR2とR3が、ハロゲン、及びメチルの中から選ばれるか、又はR2とR3が共に1,4−ブタ−1,3−ジエニレン基を形成し、そして他の全てが水素のものである。
【0054】
特に好ましいピロロリジウムイオン(Iu)は、それぞれが互いに独立して、R1とR7が、アセチル、メチル、エチル、及びn−ブチルの中から選ばれ、そしてR2、R3、R4及びR5が、それぞれ水素のものである。
【0055】
特に好ましいアンモニウムイオン(Iv)は、それぞれが互いに独立して、R7が、アセチル、メチル、エチル、及びn−ブチルの中から選ばれ、そしてR1、R2、及びR3が、メチル、エチル、n−ブチル、2−ヒドロキシエチル、ベンジル、及びフェニルの中から選ばれるものである。
【0056】
特に好ましいホスホニウムイオン(Iw)は、それぞれが互いに独立して、R7が、アセチル、メチル、エチル、及びn−ブチルの中から選ばれ、そしてR1、R2、及びR3が、フェニル、フェノキシ、エトキシ、及びn−ブトキシの中から選ばれるものである。
【0057】
これらの中で、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、ピリジウムイオン、及びイミダゾリウムイオンが好ましい。
【0058】
極めて好ましいカチオンは、1,2−ジメチルピリジウム、1−メチル−2−エチルピリジニウム、1−メチル−2−エチル−6−メチルピリジニウム、N−メチルピリジニウム、1−ブチル−2−メチルピリジニウム、1−ブチル−2−エチルピリジニウム、1−ブチル−2−エチル−6−メチルピリジニウム、N−メチルピリジニウム、1−ブチル−2−メチルピリジニウム、1−ブチル−2−エチルピリジニウム、1−ブチル−2−エチル−6−メチルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリ−メチルイミダゾリウム、1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3,4,5−テトラメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、3,4−ジメチルイミダゾリウム、2−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウム、3−メチル−2−エチルイミダゾリウム、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム、3−ブチル−1−エチルイミダゾリウム、3−ブチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジ−n−ブチルイミダゾリウム、3−ブチル−1,4,5−トリメチルイミダゾリウム、3−ブチル−1,4−ジメチルイミダゾリウム、3−ブチル−2−メチルイミダゾリウム、1,3−ジブチル−2−メチルイミダゾリウム、3−ブチル−4−メチルイミダゾリウム、3−ブチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウム、及び3−ブチル−2−エチルイミダゾリウム、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムである。
【0059】
極めて好ましくは、1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、及び1−n−ブチル−3−エチルイミダゾリウムである。
【0060】
アニオンとしては、原則として全てのアニオンが考えられる。
【0061】
好ましいアニオンは、ハロゲン化物、F-、Cl-、Br-、I-、アセテートCH3COO-、トリフロロアセテートCF3COO-、トリフレートCF3SO3-、サルフェートSO42-、硫酸水素塩HSO4-、メチルサルフェートCH3OSO3-、エチルサルフェートC25OSO3-、サルファイトSO32-、ハイドロージェンサルファイトHSO3-、クロロアルミネートAlCl4-、Al2Cl7-、Al3Cl10-、テトラブロモアルミネートAlBr4-、亜硝酸塩NO2-、硝酸塩NO3-、クロロカプレートCuCl2-、ホスフェートPO43-、燐酸塩水素HPO42-、燐酸塩二水素H2PO42-、炭酸塩CO32-、炭酸水素塩HCO32-である。
【0062】
特に好ましくは、アセテート、スルホン酸塩、トシラートp−CH364SO3-、硫酸塩、燐酸塩、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(CF3SO22-である。
【0063】
抽出精留の実施例は、特許文献1(WO02/074718)(図1、参照)に記載されている。(2)は、向流精留カラムへの添加溶剤の流入を示す。通常の方法においては、添加溶剤が有している揮発性物質の量は低いが、しかし添加溶剤は、頂部からの製造物(流れ7)と比較して相当量の揮発性物質を有しており、頂部製造物(上部製造物)と添加溶剤とを分離するために、分離エレメント(1)を使用しなければならない。分離エレメント(3)及び(5)は、添加溶剤の作用のもとに、底部製造物からの頂部製造物の所望の分離を行い、流れ(4)は、分離されるべき成分(フィード)の供給流であり、流れ(6)は、底部製造物、及び添加溶剤である。分離エレメントは、例えばトレイ、オーダードパッキング、又はランダムパッキングであり得る。
【0064】
添加溶剤としてのイオン性液体の使用は、純粋なイオン性液体の蒸気圧、及び従って、頂部製造物との混合物中のイオン性液体の分圧がゼロに近いという利点を有している。従って、分離エレメント(1)を使用しないことが可能である。揮発性の不純物がイオン性液体中に存在する場合、例えば、再循環の間に完全に分離できなかった場合のみ、このケースに該当しない。これら不純物を頂部製造物から分離するために、イオン性液体の供給点とカラム頂部との間に、濃縮部分を設ける必要がある。
【0065】
抽出精留において、通常の添加溶剤と比較してイオン性液体の知られている有利な点は本質的に、以下のものである。すなわち、
・イオン性液体は、通常の添加溶剤よりも、より選択的(selective)である。これらの比較的高い選択性のために、通常の抽出精留と比較して、小さな質量流の添加溶剤を抽出精留に供給することができ、及び/又は抽出精留における理論段(分離プレート)の数を低減することができる。
【0066】
・添加溶剤の蒸気圧が極端に低い結果、通常の抽出精留における第2の精留カラムに対して、操作コスト、及び投資コストの観点から有利となる種々の分離操作を、底部製造物から添加溶剤を分離するために使用することができる。
【0067】
・分離エレメント(1)は、通常の抽出精留において、頂部製造物からの添加溶剤の分離を行うが、しかし、この分離は完全なものではない。イオン性液体の揮発性が極端に低いので、分離エレメント(1)を使用せずに蒸気相を経てイオン性液体を分離することは不可能である。
【0068】
・分離エレメント(1)を除去することで投資コスト(capital cost)が低減される。
【0069】
適当なイオン性液体は、液体の5〜90モル%、好ましくは10〜70モル%の合計濃度で、対象成分間の分離係数を異なるものにするイオン性液体である。
【0070】
抽出精留における、添加溶剤としてのイオン性液体の使用は、例えば、以下の適用が特に有用であり、例えば、共沸混合物:アミン/水、THF/水、蟻酸/水、アルコール/水、アセトン/メタノール、アセテート/水、アクリレート/水、トリメチルボレート/メタノール、又は近沸点混合物:酢酸/水、C4−炭化水素、C3−炭化水素、アルカン/アルケン、共沸混合物を形成するか、又は近沸点混合物である、極性、及び無極性物質の通常の分離、である。
【0071】
しかしながら、抽出蒸留(extractive distillation)の後のイオン性液体の回収(再生)は、従来においては、十分には解決されていなかった。通常の添加溶剤は、通常、第2の蒸留カラムで底部製造物から分離される。イオン性液体は蒸発できないので、向流蒸留法(countercurrent distillation process)における濃縮は有利なことではなく、そして、不要の投資コストをもたらす。
【0072】
特許文献2(WO02/07418)は、存在する添加溶剤の回収方法について、一般的な情報を提供している(16ページ)。蒸発に加えて、ストリッピングカラムの使用、又は固体相への析出も述べられている。
【0073】
特許文献3(ドイツ特許出願番号10313207.4)には、吸着性の分離方法が記載されており、その方法により、もはや蒸発不可能な高沸点物質がイオン性液体から分離されるものである。イオン性液体から蒸発可能な成分が既に分離されてしまった場合にそのような状態が発生する。同文献の混合物は、通常、イオン性液体の割合が高く、及び不純物のレベルが低い混合物であるが、不純物が分離されない場合には、濃縮されるものである。ここでは、IF(IL)含有の再循環流からの浄化流(purge stream)が、例えば、主に適用されている。
【0074】
通常、混合物の分離において、技術的に単純な方法で、低沸点物質と高沸点物質の両方を高純度の状態で得ることが望ましい。更に、価値のあるイオン性液体を抽出精留の後にまだ残っている高沸点物質から分離し、及びそれを高い純度で再生するためには、プロセス工学が複雑になり、及びエネルギーを浪費することとなる。これに関連して、高沸点物質は、所望の低沸点物質として抽出蒸留カラムの頂部で取り出されることのない、全ての蒸発可能な製造物である。例えば、テトラヒドロフラン(THF)/水の系では、THFは低沸点物質であり、及び水は高沸点物質である。特に、カラムからの底部流中の高沸点物質の割合が比較的高いと、更なる分離が非常に困難になる。
【0075】
【特許文献1】WO02/074718
【特許文献2】WO02/07418
【特許文献3】ドイツ特許出願番号10313207.4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0076】
本発明の目的は、上述した不利な点を解消し、及び技術的に簡単でそして経済的な分離を可能にする、近沸点混合物、又は共沸混合物を抽出精留を使用して分離するための改良された方法を見出すことにある。
【0077】
本発明の目的は、抽出精留を使用して近沸点混合物、又は共沸混合物を分離するための改良された方法を提供することにあり、上述した不利な点を解消し、そして技術的に簡単で、及び経済的な方法で達成されるべき分離を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0078】
発明者らは、この目的は、イオン性液体を添加溶剤として使用して抽出精留によって共沸混合物、又は近沸点混合物を分離する方法であって、高沸点底部生成物が、側部取出し部を介してカラムから蒸気状態で取り出されることを特徴とする共沸混合物、又は近沸点混合物を分離する方法によって達成されることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
本発明の方法は、実施例の形態で図2に示されている。向流精留カラム(20)には、ライン(21)を介して原材料(feed)が供給され、そしてライン(22)を介して添加溶剤としてイオン性液体が供給される。頂部流はライン(23)を介して取り出される。
【0080】
抽出精留カラムのストリッピング部分(蒸留分離部分)において、低沸点物質(複数種類の場合を含む)(LB)(LB:Low boiler)が、高沸点物質(複数種類の場合を含む)(HB)(HB:high boiler)及びイオン性液体(IL)(IL:ionic liquid)から分離され、従って、低沸点物質が底部に存在しなくなる。これは、ILが1.3より大きい選択率を与える場合には、蒸留を行う当業者が、ストリッピング部分において、理論段の数を十分なものにすることによって行うことができ、そしてこのことは、適宜行われるものである。ILが蒸気圧を有していないので、底部における蒸気圧は、全て高沸点物質からなっている。これは、ガス状の側部流(24)として取り出される。この側部取出し部、及び必要な装置は、蒸留の通常の規定に従って設計され、対象となる特定の分離作業に依存するものである。IL、及びHBの間の分離係数が、無限(infinite)であるので、蒸発段階が1段階で十分に分離可能である。他の高沸点不純物が液相に存在しているか、又は形成される場合、又はILと通常の溶媒の混合物が添加溶剤として使用される場合、別の分離エレメントが必要になる。
【0081】
高沸点製造物は、好ましくは、底部付近のストリッピング部分に配置された、特に好ましくは、最下の3段のプレートの内の1段、極めて好ましくは、最下段のプレートに直接配置された側部流に取り出される。
【0082】
側部流の最適の量は、抽出精留カラムの底部における許容可能な温度に依存する。流量が多い程、より多くのHBがカラムのストリッピング部分から除去され、そして、IL中に存在するHBの量がより少なくなり、従って、底部に存在するHBの量がより少なくなる。ILは蒸気圧を有していないので、その結果、底部の温度が上昇する。ここで、底部における成分の熱的安定性、及び材料の負荷能力(stressability of the material)を考慮に入れなければならない。目的は、熱的な損傷が発生することなく、ILのHB含有量が非常に低くなることである。混合物、及び操作圧に依存して、底部における許容可能な温度は、50℃〜200℃以上になる。この温度は、100℃〜200℃の範囲であることが好ましい。通常のイオン性液体の熱的安定性のために、温度は、250℃、好ましくは200℃を超えるべきではない。
【0083】
側部流は、ILのHB含有量を非常に低減させることができる。ILのHB含有量を10%未満、好ましくは5%未満、特に好ましくは1%未満にすることが可能であり、その達成可能な値は、カラム底部における圧力と許容可能な温度に依存する。ILからのHBの除去は、温度が高いことのみならず、HBの分圧が高いこととカラムの圧力が低いことによって促進される。ここに記載されている濃度は、他に記載がなければ、質量によるものであり、すなわち%は、質量%を意味し、そしてppmは、質量ppmを意味する。
【0084】
HBが、液体製造物として得られるならば、ガス状の側部流は、付加的な凝縮器(condenser)によって、液化されなければならない。
【0085】
底部流は、ライン(25)を介してカラム(20)から排出される。蒸発、及び/又はストリッピング等の、下流の工程段階において、混合物になお存在する更なる高沸点物質が分離され得る。
【0086】
本発明の方法では、カラムから得られた底部流の高沸点物質を低減することができる。この濃度の低減は、ある適用例においては、イオン性液体の質的要求に適合し、従って、添加溶剤としてのイオン性液体を再使用するために、得られた底部流を、カラムの頂部付近の位置に直接的に再循環させることができる。
【0087】
経済的理由により、ILを循環させなければならず、すなわち、IL中に残っているHBがILと共に抽出精留カラムの頂部に戻されなければならない。これらのHBの部分は、蒸気相に移行し、そして頂部製造物(LB)を汚染する。LBに要求される純度が適当であれば、ガス状の側部流を介したIL中のHBの濃度の低減だけで十分であり、ILの更なる処理は不要である。この特に有利な変形例では、共沸混合物、又は近沸点混合物は、ILの添加によってカラム内で、低沸点物質と高沸点物質とに分離することができ、これに付加的な装置は不要である。添加溶剤の処理(再生)(work-up)のために第2のカラムを常に必要とする通常の抽出精留と比較して、上記変形例は、工程を相当に単純化し、そして、投資コストをかなり低減する。
【0088】
より高純度にする必要がある場合、又は底部流における高沸点物質の濃度がまだ十分に低減されていない場合、頂部製造物の望ましくない汚染物質を処理するために、カラムに再循環される前に、この流れを別の処理(work-up)に付することが望ましい。この目的のため、取り出された底部流が、蒸発器(evaporator)、及び/又はストリッピングカラムに供給され、その内部で、高沸点物質の残留含有量が更に低減される。このようにして得られたイオン性液体は、次に、カラムにフィードバックされる。これらの変形例は、例えば図3と図4に実施例の形態で示されている。これらは、実質的に図2に相当するものであるが、しかし、図3、4に示された実施例では、底部流の追加的な処理(work-up)を有している。この処理(work-up)は、図3のストリッパー(35)を使用して、又は図4と図4aの蒸発器(45)を使用して行われる。図4aにおいて、蒸発器(45)からのガス流はコンプレッサー(48)に通される。
【0089】
本発明の方法は、共沸混合物、又は近沸点混合物を分離する、経済的な、そして技術的に単純な方法を提供する。この方法により、装置に費用をかけることなく、存在する高沸点物質の大半が高純度で得られる。実質的に物質の特定の限定条件に依存し、及び必要な場合には、底部流で得られたイオン性液体はカラムに直接的に再循環され得る。純度を更に高くする必要のある場合には、再循環の前に、処理(work-up)段階を使用した更なる分離が必要であるが、しかし、本発明に従い高沸点物質を除去するために、この目的のために必要となるプロセス工学にかかる費用は有意に低いものとなる。
【0090】
実施例
以下の実施例において、他に記載がなければ、全ての濃度は、質量によるものであり、すなわち%は、質量%を意味し、そしてppmは、質量ppmを意味する。
【0091】
全ての実施例において、抽出精留カラムへの供給物は、77%のTMB(トリメチルボレート)、及び23%のメタノールからなる、844kg/hの2成分混合物である。これは、共沸混合物の組成である。カラムは、常に20の理論段を有し、そしてRR=0.5の環流割合で、及びP=1バールの圧力で操作された。供給プレートは、常に理論段12であった。
【0092】
実施例1:側部流を有する抽出精留(図2、参照)
1364kg/hのIL(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−トシラート)を、カラムの頂部から導入した。ILは1%のメタノールを含んでいた。99%のTMB、及び1%のメタノールからなる、657kg/hの頂部製造物(overhead product)が得られた。カラムの底部領域からは、側部取出し部を介して179kg/hの純粋なメタノールが、蒸気の状態で取り出された。頂部と底部の温度は、それぞれ63℃と180℃であった。99%のILと1%のメタノールからなる1364kg/hの流が、底部製造物(bottom product)として得られた。
【0093】
熱交換器には、以下の電力が必要であった:カラムコンデンサー:95kW、カラム蒸発器:303kW、側部流コンデンサー:63kW。
【0094】
結果:共沸混合物は、イオン性液体によって分解された。頂部製造物において純度99%が達成された。この製造純度が十分であるならば、底部において排出されたILの更なる処理(work-up)は不要である。これは、カラムの頂部に直接的に再循環され得る。このようにして、添加溶剤としてのILと、側部取出し部を有するカラムの使用により、共沸混合物の有する課題を克服することが可能となり、そして比較的高純度の製造物が製造された。
【0095】
実施例2:側部流を伴わない抽出精留
1452kg/hのIL(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−トシラート)を、カラムの頂部から導入した。ILは1%のメタノールを含んでいた。99%のTMB、及び1%のメタノールからなる、657kg/hの頂部製造物が得られた。側部流は排出されなかった。頂部と底部の温度は、それぞれ63℃と94℃であった。87.6%のILと12.4%のメタノールからなる1639kg/hの流れが、底部製造物として得られた。熱交換器には、以下の電力が必要であった:カラムコンデンサー:95kW、カラム蒸発器:136kW。
【0096】
結果:カラムの底部において得られたILを豊富に含む流れは、メタノールの濃度が12%を超え、メタノールは非常に高い濃度であった。抽出物における99%の純度が達成不可能であったので、このILは直接的には循環できず、及びカラムに返すことができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】特許文献1(WO02/074718)の抽出精留の実施例を説明した図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明した図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明した図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明した図である。
【図4A】本発明の実施の形態を説明した図である。
【符号の説明】
【0098】
20 カラム
21 ライン
22 ライン
23 ライン
24 側部流
25 ライン
35 ストリッパー
45 蒸発器
48 コンプレッサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性液体を添加溶剤として使用して抽出精留によって共沸混合物、又は近沸点混合物を分離する方法であって、
高沸点底部生成物が、側部取出し部を介してカラムから蒸気状態で取り出されることを特徴とする共沸混合物、又は近沸点混合物を分離する方法。
【請求項2】
取出部が、最下の3段のプレート領域におけるカラムのストリッピング部分、好ましくは最下段のプレートに直接配置されていることを特徴とする請求項1に記載の共沸混合物、又は近沸点混合物を分離する方法。
【請求項3】
カラムの底部流が後処理段階に供給され、その後処理段階で、含まれるイオン性液体を、蒸発により、依然として存在している高沸点物質から分離することを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の共沸混合物、又は近沸点混合物を分離する方法。
【請求項4】
カラムからの底部流が、後処理段階に供給され、その後処理段階で、含まれるイオン性液体を、依然として存在している高沸点物質からストリッピングによって分離することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の共沸混合物、又は近沸点混合物を分離する方法。
【請求項5】
高沸点物質の量が低下した底部流を、カラム、好ましくは濃縮部分、特に好ましくは最上の3段のプレートの何れかのプレート、極めて好ましくは最上段のプレートに再循環させることを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の共沸混合物、又は近沸点混合物を分離する方法。
【請求項6】
後処理段階から回収されたイオン性液体を、カラム、好ましくは濃縮部分、特に好ましくは最上の3段のプレートの何れかのプレート、極めて好ましくは最上段のプレートに再循環させることを特徴とする請求項3又は4の何れか1項に記載の共沸混合物、又は近沸点混合物を分離する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【公表番号】特表2007−501191(P2007−501191A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522259(P2006−522259)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007869
【国際公開番号】WO2005/016483
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】