説明

イオン性液体中でのヒドロシリル化による有機ケイ素化合物の製造方法

ヒドロシリル化によりシランを製造する方法において、ヒドロシリル化反応の触媒として、反応の間、イオン性液体中に溶解して存在している遷移金属錯化合物を使用することを特徴とする、ヒドロシリル化によりシランを製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン性液体中でヒドロシリル化することにより有機ケイ素化合物を製造する方法に関する。
【0002】
有機ケイ素化合物の製造は、従来技術によればミュラー・ロッコウ合成によって行われる。官能化されたオルガノシラン、特にハロゲン置換されたものは経済的に極めて重要である。というのも、これらは多くの重要な生成物、たとえばシリコーン、定着剤、疎水化剤および建築物保護剤を製造するための出発材料として役立つからである。しかしこの直接合成は、全てのシランにとって同様に好適であるとは限らない。いわゆる欠乏シラン(Mangelsilanen)は、この方法では製造が困難であり、劣った収率で得られるにすぎない。
【0003】
欠乏シランを製造するための1つの可能性は、容易に製造することができるシラン(過剰のシラン)を、リガンド交換反応により欠乏シランへと変換することである。この場合、イオン性液体を2相系で使用することによってオルガノクロロシランと別のオルガノクロロシランとのリガンド交換が生じるが、これはたとえば特許文献DE10157198A1に記載されている。この方法の場合、リガンド交換反応は、ケイ素原子において行われ、その際に、オルガノシランは、有機窒素化合物またはリン化合物のハロゲン化物、金属ハロゲン化物または遷移金属ハロゲン化物であるイオン性液体の存在下に不均化されるか、またはリガンド交換の下で別のオルガノシランと反応する。
【0004】
イオン性液体とは一般に、融点が100℃より低い塩または塩の混合物であると理解され、たとえばP.Wasserscheid、W.Keim、Angew.Chem.2000、112、3926に記載されている。この種の、文献から公知の塩は、アニオン、たとえばスズ酸ハロゲン化物イオン、アルミン酸ハロゲン化物イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、アルキル硫酸イオン、アルキルスルホン酸イオンまたはアリールスルホン酸イオン、ジアルキルリン酸イオン、ロダン化物イオンまたはジシアナミドと、置換されたアンモニウム、ホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、トリアゾリウム、ピコリニウムまたはピロリジニウムのカチオンとの組み合わせからなる。多数の刊行物がすでに、遷移金属による触媒反応のための溶剤としてイオン性液体を使用することを記載している。たとえばT.Welton、Chem.Rev.1999、99、2071、ならびにP.Wasserscheid、W.Keim、Angew.Chem.2000、112、3926、ならびにP.Wasserscheid、T.Welton(編)、"Ionic Liquids in Synthesis"、2003、Wiley−VCH、Weinheim、第213〜257頁。これらの刊行物およびこれらの刊行物で引用されている論文は、遷移金属触媒が有機溶剤中にではなく、イオン性液体中に溶解されて触媒反応で使用される場合には、その触媒特性が部分的に顕著に改善されることを記載している。このような改善は、技術的に著しい関連性もあり、たとえば明らかに改善された触媒分離性および触媒再使用、明らかに高まった触媒安定性、明らかに高まった反応性、または触媒反応の明らかに改善された選択性において明らかである。一般にイオン性液体は適切な構造変態によって、関連する溶剤特性を具体的な適用目的に合わせて段階的に調整する可能性を提供する。
【0005】
1−アルケンのヒドロシリル化は公知のとおり、白金族の金属錯体によって触媒されるが、これはたとえばJ.Marciniec、"Comprehensive Handbook on Hydrosilylation"、Pergamon Press、New York 1992に記載されている。特に白金錯体、たとえばいわゆる「シュパイヤー(Speier)触媒」[H2PtCl6*6H2O]および「カールステッド(Karstedt)溶液」、つまり[H2PtCl6*6H2O]とビニル置換されたジシロキサンとからなる錯化合物は公知のとおり、極めて活性な触媒である。Lewisの論文はさらに、いくつかの無水白金化合物、たとえばジシクロオクタジエニル白金([Pt(cod)2])を使用する場合に白金コロイドが形成され、該コロイドは同様にヒドロシリル化に関して高活性の触媒であることを、たとえば文献L.N.Lewis、N.Lewis、J.Am.Chem.Soc.1986、108、7728に開示している。
【0006】
液−液の2相反応としてのヒドロシリル化反応の実施は、極性溶剤および非極性溶剤を含有し、両方の溶剤が混合ギャップを有する系を必要とする。非極性相としてのシクロヘキサン/プロペンと、極性相としてのシクロヘキサン/プロピレンカーボネートの系は、A.Behr、N.Toslu、Chem.Eng.Technol.2000、23、2に公開されている。この系を用いてたとえばトリエトキシシランによるΩ−ウンデセン酸のヒドロシリル化が行われ、その際、生成物は非極性相中で富化されるので、極性相中に残る触媒および原料から容易に分離することができる。同様にこの特殊な事例では、使用される不飽和脂肪酸の極めて極性の高い特性に基づいて分離が行われる。
【0007】
SiH官能化されたポリジメチルシロキサンを用いた末端オレフィンの、Pt触媒反応によるヒドロシリル化における触媒相としてのイオン性液体の使用もまた公知であり、たとえばB.Weyershausen、K.Hell、U.Hesse、Green.Chem.、2005、7、283に記載されている。これによれば極性相としてのイオン性液体の使用は、触媒相と非極性生成物との分離につながるので、生成物自体が第二の非極性相を形成する。従って、極性のIL/触媒/原料相からの生成物の分離は、さらに蒸留による後処理を行わなくても可能である。SiH官能化されたポリジメチルシロキサンによる末端オレフィンのヒドロシリル化の特殊な事例に関しては、液−液の2相反応の工業的な利用のための条件、つまりイオン性液体中でのPt触媒の完全な溶解性およびイオン性液体と生成物との間の混合ギャップは、イオン性液体のアニオンとカチオンとを適切に設計することによって保証することができることが判明している。この場合、SiH官能化されたポリジメチルシロキサンによるヒドロシリル化は、末端のオレフィンのみに限定されず、特許文献EP1382630A1に開示されているように、全てのC−C多重結合を有する化合物にまで拡張することができる。
【0008】
新規の構想として、イオン性液体中で遷移金属触媒による反応を極めて効率的に実施するために、ここ数年でいわゆる「supported ionic liquid phase」(=SILP)触媒技術が確立されている。この技術はMehnertによって初めて、Rh触媒によるヒドロホルミル化反応および水素化反応の例に基づいて以下の文献に記載されている;C.P.Mehnert、R.A.Cook、N.C.Dispenziere、M.Afeworki、J.Am.Chem.Soc.2002、124、12932〜12933およびC.P.Mehnert、E.J.Mozeleski、R.A.Cook、Chem.Commun.2002、3010〜3011。SILP触媒技術では、イオン性液体中の遷移金属錯体の溶液を、物理吸着または化学反応によって担体、たいていは高多孔質の担体上に施与し、こうして得られた固体の触媒を気相反応または液相反応で反応体と接触させる。この技術は、古典的な均一系触媒反応の利点を、古典的な不均一系触媒反応と結びつめるための新たな手がかりである。厚さわずか数ナノメートルのイオン性液体の触媒溶液を多孔質の固体担体上に貼り付けることによって、機械的なエネルギーを導入することなく、イオン性液体の触媒溶液における高い比表面積によって反応体は反応に供される。この場合、触媒はさらに、均質に溶解して存在している。この技術はさらに、触媒を保留することが簡単であることによって、たとえばA.Riisager、P.Wasserscheid、R.van Hal、R.Fehrmann、J.Catal.2003、219、252に記載されている連続的な方法への極めて容易な適用も提供する。文献A.Riisager、R.Fehrmann、S.Flicker、R.van Hal、M.Haumann、P.Wasserscheid、Angew.Chem.Int.Ed.2005、44、815〜819が、分光分析および運動学的な研究において少なくともRh触媒反応によるヒドロホルミル化に関して示しているように、この場合、遷移金属触媒は常に固定化された液膜中に溶解した形で存在している。多孔質担体の活性な表面基と、遷移金属触媒との可能な相互作用に基づいて、わずか数ナノメートルの厚さの担体膜において、SILP技術の効果的な使用は当業者にとって容易に想到できるものではない。SILP技術のその他の公知の適用は、担持されたイオン性液体の触媒溶液を用いた、Pd触媒によるHeck反応およびRh、PdまたはZn触媒によるヒドロアミン化の実施を含む。これはたとえばH.Hagiwara、Y.Sugawara、K.Isobe、T.Hoshi、T.Suzuki、Org.Lett.2004、6、2325およびS.Breitenlechner、M.Fleck、T.E.Mueller、A.Suppan、J.Mol.Catal.A:Chem.2004、214、175に記載されている。
【0009】
特許文献WO02/098560A1においてMehnertは、反応性の側鎖を有するイオン性液体とケイ酸塩担体との反応によるSILP触媒の製造を開示している。反応性の側鎖を有するイオン性液体の記載との関連において、この場合、ヒドロシリル化も方法として言及されている。開示されている反応は、反応性の側鎖をイオン性液体に導入するための方法であり、これは共有結合の形成によってケイ酸塩担体に結合されるべきものである。
【0010】
従って本発明の課題は、極めて選択的に進行し、従って所望のシランの高い収率につながる、ヒドロシリル化によるシランの製造方法を提供することであった。
【0011】
前記課題は、ヒドロシリル化反応の触媒として、反応の間にイオン性液体中に溶解して存在する遷移金属錯化合物を使用することを特徴とする、本発明によるヒドロシリル化によるシランの製造方法によって解決された。
【0012】
本発明による新規の方法の1つの利点は、液−液の多相系において、または変法において、触媒を分離し、かつ返送する技術的可能性であり、この場合、イオン性液体の触媒溶液を固体上に担持させて使用する。さらに、多くの場合、公知の合成法に対してシランの合成の際に明らかな選択率の改善が達成される。
【0013】
本発明による方法では、ヒドロシリル化の際に一般式(1)
aSiRb (1)
の非高分子の化合物を、一般式2
89C=CR1011 (2)
[上記式中で、
Rは、相互に無関係に、Hを表すか、一価のSi−C結合した、ハロゲン置換されていてもよいC1〜C18−炭化水素基、塩素基、またはC1〜C18−アルコキシ基を表し、
aは、1、2または3を表し、
bは、4−aを表し、
8、R9、R10およびR11は、相互に無関係に、Hを表すか、一価の、F、Cl、OR、NR2、CNまたはNCOにより置換されていてもよいC1〜C18−炭化水素基、塩素基、フッ素基またはC1〜C18−アルコキシ基を表し、その際、R8、R9、R10およびR11のそれぞれ2つの基は、これらが結合している炭素原子と一緒になって環式基を形成してもよい]のアルケンと反応させる。
【0014】
本発明による方法では、非高分子の化合物として、一般式(3)
cdSiCl4-c-d (3)
[式中、
Rは、上記の意味を有し、かつ
cは、0、1、2、3または4の値を有することができ、かつ
dは、1、2または3の値を有することができる]の化合物が有利に反応される。
【0015】
この反応がうまくいくことは極めて意想外であった。これは、文献DE10157198A1により予測できるものではなかった。というのも、有機窒素化合物またはリン化合物のハロゲン化物、金属ハロゲン化物または遷移金属ハロゲン化物であるイオン性液体の存在下で、このようなヒドロシリル化反応の選択性が、並行して予測されるシランの不均化によって、もしくは並行して予測される2種類のオルガノシランのリガンド交換によって、十分に高い選択率でヒドロシリル化の所望の生成物につながることはないことが予測されていたからである。従ってこのような、ヒドロシリル化、不均化およびリガンド交換反応の重なりは、液−液多相系においてイオン性液体の触媒溶液を用いた不飽和化合物による1もしくは複数のH−Si−官能基を有する非高分子の化合物のヒドロシリル化の調製のための利用のためには、技術的に利用することができないと考えられていた。
【0016】
1もしくは複数のH−Si−官能基を有する式(1)の化合物の本発明による反応は、有利には炭素および水素以外にさらに塩素官能基、アルコキシ官能基またはアミノ官能基を有していてもよいアルケンを用いて行われる。
【0017】
この場合、従来技術ではさらに、ヒドロシリル化反応が公知のように塩素官能基、アルコキシ官能基またはアミノ官能基の、ヒドロシリル化触媒への、または使用される式(1)の化合物への移行を伴うという問題が生じ、このことによってヒドロシリル化法において達成可能な収率は、従来技術によれば、特にこのような物質混合物の反応のために満足のいく技術的な解決手段がこれまで欠けていたような制限を受ける。これらの塩素、アルコキシまたはアミノ官能化されたヒドロシリル化生成物の技術的な意義を鑑みて、本発明によるこの問題の解決手段により、著しい経済的な可能性がもたらされる。
【0018】
本発明による方法は、予想外の技術的な解決方法を示すが、これは、イオン性液体中の、ヒドロシリル化触媒として使用される遷移金属錯体の溶液は、意外にも選択的に多相での反応実施において、非高分子のSi−H−化合物のヒドロシリル化を触媒するというという発見に基づいている。本発明による方法はさらに、液−液2相系において、技術的に信頼性のある触媒分離および触媒リサイクルの可能性を提供する。イオン性液体を複数回リサイクルする場合に、イオン性液体の触媒溶液の活性および選択性はわずかに変化するにすぎないことが観察される。以下にさらに記載する本発明による方法の有利な変法では、このような変化は特にわずかである。
【0019】
本発明による方法の特に有利な実施態様では、式(3)により記載されるSi−H−化合物として、化合物のHSiCl3、HSiCl2Me、HSiClMe2、HSiCl2EtおよびHSiClEt2、HSi(OMe)3、HSi(OEt)3、HSi(OMe)2Me、HSi(OEt)2Me、HSi(OMe)Me2およびHSi(OEt)Me2が使用される。
【0020】
本発明による方法のさらに有利な実施態様では、アルケンとして、プロペン、塩化アリル、アセチレン、エチレン、イソブチレン、シクロペンテン、シクロヘキセンおよび1−ヘキサデセンが使用される。
【0021】
方法の特に有利な実施態様では、Si−H−化合物として、HSiCl3およびHSiMeCl2が使用され、かつアルケン成分として、塩化アリルが使用される。
【0022】
本発明による方法の特別な実施態様では、触媒として、白金、イリジウムまたはロジウムの錯化合物が使用される。特に有利であるのは、白金の錯化合物、特に錯体のPtCl4およびH2PtCl6である。
【0023】
この発明による方法の有利な実施態様では、イオン性液体として、一般式(4)
[A]+[Y]- (4)
[式中、
[Y]-は、[テトラキス−(3,5−ビス−(トリフルオロメチル)−フェニル)ボレート]、([BARF])、テトラフェニルボレート([BF4-)、ヘキサフルオロホスフェート([PF6-)、トリスペンタフルオロエチルトリフルオロホスフェート([P(C2533-)、ヘキサフルオロアンチモネート([SbF6-)、ヘキサフルオロアルシネート([AsF6-)、フルオロスルホネート、[R′−COO]-、[R′−SO3-、[R′−O−SO3-、[R′2−PO4-、または[(R′−SO22N]−を含む群から選択されるアニオンであり、その際、R′は、線状もしくは分枝鎖状の、1〜12個の炭素原子を有する脂肪族もしくは脂環式アルキル基、C5〜C18−アリール基、またはC5〜C18−アリール−C1〜C6−アルキル基であり、これらの水素原子は完全に、もしくは部分的にフッ素原子により置換されていてもよく、かつ
[A]+は、一般式(5)のアンモニウムカチオン
[NR1234+ (5)
一般式(6)のホスホニウムカチオン
[PR1234+ (6)
一般式(7)のイミダゾリウムカチオン
【化1】

一般式(8)のピリジニウムカチオン
【化2】

一般式(9)のピラゾリウムカチオン
【化3】

一般式(10)のトリアゾリウムカチオン
【化4】

一般式(11)のピコリニウムカチオン
【化5】

および一般式(12)のピロリジニウムカチオン
【化6】

を含む群から選択されるカチオンであり、その際、基R1〜R7は、それぞれ相互に無関係に、1〜20個の炭素原子を有する有機基を表す]のイオン性液体を使用する。
【0024】
基R1〜R7は有利には脂肪族、脂環式、芳香族、芳香族脂肪族またはオリゴエーテルの基である。
【0025】
この場合、脂肪族基は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の炭化水素基であり、この場合、鎖中にヘテロ原子、たとえば酸素原子、窒素原子または硫黄原子が含まれていてもよい。
【0026】
基R1〜R7は、飽和であってもよいし、あるいは1もしくは複数の二重結合もしくは三重結合を有していてもよく、これらは鎖中で共役であっても単独で存在していてもよい。
【0027】
脂肪族基の例は、1〜14個の炭素原子を有する炭化水素基、たとえばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチルまたはn−デシルである。
【0028】
脂環式基の例は、3〜20個の炭素原子を有する環式炭化水素基であり、その際、該基は、環のヘテロ原子、たとえば酸素原子、窒素原子または硫黄原子を有していてもよい。脂環式基はさらに、飽和であってもよいし、または1もしくは複数の二重結合もしくは三重結合を有していてもよく、これらは環中で共役であっても単独で存在していてもよい。5〜8個の環の炭素原子を有する、有利には5個および6個の環の炭素原子を有する飽和脂環式基、特に飽和脂肪族炭化水素が有利である。
【0029】
芳香族基、炭素環式−芳香族基または複素環式芳香族基は、6〜22個の炭素原子を有していてもよい。適切な芳香族基の例は、フェニル、ナフチルまたはアントラシルである。
【0030】
オリゴエーテル基は、一般式(13)
−[(CH2x−O]y−R″′ (13)
[式中、
xおよびyは、相互に無関係に1〜250の数であり、かつ
R″′は、脂肪族、脂環式、芳香族または芳香族脂肪族の基である]の基である。
【0031】
さらに有利な実施態様では、カチオン[A]+が脱プロトン化により、またはC−H結合の、価数の低い金属錯体への酸化による付加により、N−複素環式カルベンリガンドを有する金属錯体を形成することができないイオン性液体を使用する。特に有利であるのは、使用されるイオン性液体のカチオンとして、N−アルキルピリジニウムおよび1,2,3−トリアルキルイミダゾリウムカチオンである。
【0032】
これらのカチオン[A]+は、本発明の特に有利な実施態様では、特に[(CF3SO22N]-のアニオン[Y]-と組み合わされるので、本発明による方法における使用のために以下のイオン性液体が特に有利である:
1−エチルピリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、
1−ブチルピリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、
1−ヘキシルピリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、
1−エチル−3−メチルピリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、
1−ブチル−3−メチルピリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、
1−ヘキシル−3−メチルピリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、
1−エチル−4−メチルピリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、
1−ブチル−4−メチルピリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、
1−ヘキシル−4−メチルピリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、
1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、
1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、
1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド。
【0033】
本発明による方法は、2相反応として行い、その際、触媒は液相として使用し、かつ反応生成物は液相または気相として使用することができる。
【0034】
方法の有利な実施態様は、遷移金属錯体をイオン性液体中に溶解し、かつ反応器中で非混和性の相と接触させ、該相は反応器出口で反応生成物を含有しているので、イオン性液体は、相分離によってプロセス中で連続的に分離され、かつ再び反応器へ返送される。
【0035】
方法のもう1つの変法は、イオン性液体の触媒溶液の膜を担体材料上に施与し、かつ該触媒をこの形で気相反応において、または液相反応において、反応混合物と接触させるという方法実施である。別の反応のために公知のSILP技術を、式(2)のアルケンによる式(1)の非高分子のSi−H−化合物のヒドロシリル化へこのように転用することは、意想外に極めて有効であった。というのも、この変法は、Pt含有SILP触媒の初めての効果的な応用であるからである。さらに意外であったのは、ヒドロシリル化反応が公知のとおり水に敏感であるにもかかわらず、担持されたイオン性液体の触媒溶液による反応がうまくいくからである。従って敏感な遷移金属触媒の失活が生じないこと、または担体と触媒との相互作用による生成物の選択率の可能な低下も、容易に予測できるものではなかった。
【0036】
記載されている方法は、加圧しなくても加圧下でも実施することができる。有利にはこの方法は、200バールまでの圧力で、特に有利には20バールまでの圧力で実施される。
【0037】
最後に、特に意外であり、かつ経済的に極めて重要なことは、本発明による方法の特に有利な変法に関して、高い選択率がヒドロシリル化反応の所望の生成物につながることが観察されるという事実である。この効果は、イオン性液体の特殊な溶剤環境に起因する。
【0038】
実施例
以下で使用される略号は、ここでは下記の意味を有する:
Kat 触媒
IL イオン性液体
HV 高真空
シラン:AC シラン対塩化アリルのモル比
Pt−Konz 白金濃度
X1 塩化アリルの反応率
X2 トリクロロシランの反応率
S1 生成物に対する選択率:生成物mol/生成物mol+テトラクロロシランmol
S2 プロシランに対する選択率:プロシランmol/プロシランmol+テトラクロロシランmol
Y 収率
"TOF" ターンオーバー頻度
テトラ テトラクロロシラン
プロシラン プロピルトリクロロシラン
[EMMIM] 1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム
[BTA] ビストリフルオロメタンスルホニルイミド
ICP−AES 誘導結合プラズマ原子分光分析。
【0039】
例1:3−クロロプロピル−トリクロロシランの合成例におけるイオン性液体を用いた常圧でのヒドロシリル化試験(本発明による)
加熱されるフラスコ(100〜250ml)中で、イオン性液体である1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム−ビストリフルオロメタンスルホニルイミド約10mlを装入する。これを恒常的に攪拌しながら(電磁攪拌機)、80℃(外部での温度制御)においてHV中で1時間、前乾燥させる。イオン性液体がほぼ湿分不含となったら、四塩化白金17mg(1500ppmnに相応)を秤量する。イオン性液体の触媒溶液を触媒の添加後に改めて1時間、真空下に80℃で後乾燥させる。引き続き三口フラスコを恒常的な保護ガス流下に還流冷却器に接続し、かつ滴下漏斗を設置する。フラスコの3つ目の接続部は、内部温度を制御するための接触温度計により封止する。装置が気密に封止されたら、新たに接続した全ての装置部材をHV中で乾燥させる。その後、残りの反応体(3−クロロプロピルトリクロロシラン:5.6g;塩化アリル5.6gおよびトリクロロシラン:12.5g)を、保護ガス雰囲気下で秤量する。この際、生成物の受け器は、原料の蒸気圧を低下させる。全ての反応体(3−クロロプロピルトリクロロシラン、塩化アリルおよびトリクロロシラン)を、秤量のため注入器に装入して正味量を補正し、かつ滴下漏斗に添加した後で秤量する。100℃の反応温度をサーモスタットで調整し、かつ制御する。強力冷却器の温度(−20℃)は、クリオスタットにより発生させる。反応温度に達したら、反応体を慎重に滴下漏斗から添加する(滴加速度5〜40滴/分)。反応温度を10℃以上下回ったら、反応温度が再び目標値に戻るまで添加を中断する。添加が終了したら、反応体の完全な反応を保証するために60分間、後攪拌する。その後、イオン性液体および生成物を氷浴中で冷却する。三口フラスコの内容物を相分離のために注入器中に収容し、有機相(上部)ならびにイオン性液体の触媒溶液を分離し、かつ別々の容器に充填する。少量の生成物はイオン性液体の触媒溶液中に溶解しており、所望の場合には、真空下で除去することができる。有機相をガスクロマトグラフィーにより分析する。生成物相に流出した白金の量を、ICP−AESにより測定する。
【0040】
比較例1:イオン性液体を用いない、常圧でのヒドロシリル化試験(本発明によらない)
三口フラスコ(100〜250ml)に滴下漏斗および内部温度を制御するための接触温度計を設置し、かつ高真空で乾燥させる。引き続き該三口フラスコに、生成物である3−クロロプロピルトリクロロシラン6.0gを保護ガス雰囲気下に装入する。ここへ80℃(外部での温度制御)で、有機触媒錯体(1−ドデセン中のPtCl4の溶液)約8.5mg(Pt600ppmnに相応)を、恒常的な撹拌下(電磁攪拌機)で溶解する。その後、残りの反応体(塩化アリル:6.40gおよびトリクロロシラン:13.9g)を、保護ガス雰囲気下で滴下漏斗へと秤量する。全ての反応体(3−クロロプロピルトリクロロシラン、塩化アリルおよびトリクロロシラン)を、秤量のために注入器に装入して正味量を補正し、かつ添加した後で秤量する。この際、特に反応体の正確な比率に注意しなくてはならない。100℃の反応温度をサーモスタットで調整し、かつ制御する。強力冷却器の温度(−20℃)は、クリオスタットにより発生させる。反応温度に達したら、反応体を慎重に滴下漏斗から添加する(滴加速度5〜40滴/分)。反応温度を10℃以上下回ったら、反応温度が再び目標値に戻るまで添加を中断する。添加が終了したら、反応体の完全な反応を保証するために60分間、後攪拌する。反応後に、有機生成物をガスクロマトグラフィーにより分析する。
【0041】
第1表は、例1および比較例1の結果を示している。
【0042】
【表1】

【0043】
例2:加圧下でのイオン性液体を用いたヒドロシリル化試験(本発明による)
高真空で乾燥させ、かつアルゴンでパージした実験室用オートクレーブ中に、イオン性液体である1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド約10mlを装入する。ほぼ湿分不含のイオン性液体に、四塩化白金3.5mg(300ppmnに相応)を秤量する。イオン性液体の触媒溶液を触媒の添加後に1時間、真空下に100℃(内部での温度制御)で後乾燥させる。
【0044】
その後、残りの反応体(3−クロロプロピルトリクロロシラン:11.63g;塩化アリル:6.7gおよびトリクロロシラン:13.4g)を、保護ガス雰囲気下に、接続されている滴下漏斗中へと秤量する。全ての反応体(3−クロロプロピルトリクロロシラン、塩化アリルおよびトリクロロシラン)を秤量のために注入器中に装入して正味量を補正し、かつ滴下漏斗中へと添加した後に秤量する。この際、特に反応体の正確な比率に注意しなくてはならない。充填後に、反応器をアルゴンにより12バールの反応圧力下におく。100℃の反応温度を加熱マンシェットにより調整し、かつ内部で制御する。反応温度に達したら、反応体を滴下漏斗から添加する。反応の終了後に(所要時間約2時間)、オートクレーブを慎重に氷浴中で室温に冷却し、かつ引き続きアルゴン供給流下に開放する。内容物を相分離のために注入器中に収容し、有機相(上部)ならびにイオン性液体の触媒溶液を分離し、かつ別々の容器に充填する。少量の生成物がイオン性液体の触媒溶液中に溶解しており、かつ所望の場合には真空下で留去する。有機相をガスクロマトグラフィーにより分析する。生成物相中に流出した白金の量をICP−AESにより確認する。
【0045】
比較例2:加圧下でイオン性液体を用いないヒドロシリル化試験(本発明によらない)
高真空下で乾燥させ、かつアルゴンでパージした実験室用オートクレーブ中に、3−クロロプロピルトリクロロシラン約6.5gを装入する。ほぼ湿分不含の液体に、有機触媒錯体(1−ドデセン中のPtCl4の溶液)8.5mg(Pt600ppmnに相応)を秤量する。
【0046】
その後、残りの反応体(塩化アリル:6.0gおよびトリクロロシラン:13g)を保護ガス雰囲気下に、接続されている滴下漏斗中に秤量する。全ての反応体(3−クロロプロピルトリクロロシラン、塩化アリルおよびトリクロロシラン)を秤量のために、注入器中に装入して正味量を補正し、かつ添加後に秤量する。この際、特に反応体の正確な比率に注意しなくてはならない。充填後に反応器をアルゴンにより12バールの系圧力下におく。100℃の反応温度を加熱マンシェットにより調整し、かつ内部で制御する。反応温度に達したら、反応体を滴下漏斗から添加する。反応の終了後に(所要時間約2時間)、オートクレーブを慎重に氷浴中で室温に冷却し、かつ引き続きアルゴン流下で開放する。内容物を相分離のために注入器中に収容し、有機相(上部)ならびにイオン性液体の触媒溶液を分離し、かつ別々の容器中に充填する。少量の生成物がイオン性液体の触媒溶液中に溶解しており、かつ所望の場合には真空下に除去することができる。有機相をガスクロマトグラフィーにより分析する。
【0047】
第2表は、例2および比較例2の結果を示している。
【0048】
【表2】

【0049】
例3:3−クロロプロピル−トリクロロシランの合成例によるイオン性液体を用いた常圧でのヒドロシリル化試験(本発明による)
加熱されるフラスコ(100〜250ml)中に、イオン性液体である1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム−ビストリフルオロメタンスルホニルイミド約10mlを装入する。これを恒常的に攪拌しながら(電磁攪拌機)、80℃(外部での温度制御)でHV中で1時間、前乾燥させる。イオン性液体がほぼ湿分不含となったら、四塩化白金0.62mg(55ppmnに相応)を秤量する。イオン性液体の触媒溶液を、触媒の添加後に改めて1時間、真空下に80℃で後乾燥させる。引き続き三口フラスコを恒常的な保護ガス流下に還流冷却器に接続し、かつ滴下漏斗を設置する。フラスコの3つ目の接続部を、内部温度を制御するための接触温度計で封止する。装置が気密に封止されたら、新たに接続された全ての装置部材をHV中で乾燥させる。その後、残りの反応体(3−クロロプロピルトリクロロシラン:5.6g;塩化アリル5.6gおよびトリクロロシラン:12.5g)を保護ガス雰囲気下に秤量する。この際、生成物の受け器は、原料の蒸気圧を低下させる。全ての反応体(3−クロロプロピルトリクロロシラン、塩化アリルおよびトリクロロシラン)を、秤量のために注入器中に装入して正味量を補正し、かつ滴下漏斗中へ添加した後に秤量する。100℃の反応温度をサーモスタットで調整し、かつ制御する。強力冷却器の温度(−20℃)は、クリオスタットにより発生させる。反応温度に達したら、反応体を慎重に滴下漏斗から添加する(滴加速度5〜40滴/分)。反応温度を10℃以上下回ったら、反応温度が再び目標値に戻るまで添加を中断する。添加が終了したら、反応体の完全な反応を保証するために60分間、後攪拌する。その後、イオン性液体および生成物を氷浴中で冷却する。三口フラスコの内容物を、相分離のために注入器中に収容し、有機相(上部)ならびにイオン性液体の触媒溶液を分離し、かつ別々の容器に充填する。少量の生成物がイオン性液体の触媒溶液中に溶解しており、かつ所望の場合には、真空下で除去することができる。有機相をガスクロマトグラフィーにより分析する。生成物相中に流出した白金の量を、ICP−AESにより確認する。
【0050】
例4:SILP技術によるヒドロシリル化(本発明による)
担体材料として、0.2〜0.5mmの粒径分布を有するシリカ顆粒(約5g)を使用する。イオン性液体を施与する前に、担体を450℃で数時間か焼し、かつまだ高温の状態で保護ガス下におく。イオン性液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(1.0g)は、すでに触媒(PtCl4:0.7mg、55ppmnに相応)により負荷されており、かつ10倍過剰量のメタノール中に溶解する。担体材料をILメタノール溶液と合し、かつ均一な分散を保障することができるまで攪拌する。最後の工程でメタノールを慎重に真空下に、および比較的高い温度(約50℃)で除去する。このSILP触媒を引き続き、恒常的に攪拌しながら(電磁攪拌機)、80℃(外部での温度制御)で、HV中で1時間乾燥させる。
【0051】
三口フラスコ(100〜250ml)に、滴下漏斗、還流冷却器および内部温度を制御するための接触温度計を設置する。この際、還流冷却器と三口フラスコとの間で、触媒を保留するために、加熱可能なガラスフリットを使用する。全ての装置をSILP触媒も一緒に高真空下で乾燥させる。装置が冷却されたら、滴下漏斗を恒常的な保護ガス流下に、塩化アリル6.3gならびにトリクロロシラン11.7gで充填する。全ての反応体(塩化アリルおよびトリクロロシラン)を、秤量のために注入器中に装入して正味量を補正し、かつ滴下漏斗への添加後に秤量する。この際、特に反応体の正確な比率に注意しなくてはならない。100℃の反応温度は、ガラスフリットの加熱コードにより調整し、かつ制御する。強力冷却器の温度(−20℃)は、クリオスタットにより発生させる。三口フラスコは、原料の蒸発器として役立ち、かつ油浴により100℃に加熱される。反応温度に達したら、反応体を慎重に滴下漏斗から添加する(滴加速度5〜40滴/分)。反応温度を10℃以上下回ったら、反応温度が再び目標値に戻るまで添加を中断する。反応後に有機生成物をガスクロマトグラフィーにより分析する。SILPに付着している残りの有機材料を真空により、または無水シクロヘキサンにより分離することができる。生成物相中に流出した白金の量をICP−AESにより確認する。
【0052】
第3表は、例3および4の対比を示している。
【0053】
【表3】

【0054】
例5:リサイクル試験(本発明による)
加熱されるフラスコ(100〜250ml)中に、イオン性液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−ビストリフルオロメタンスルホニルイミド約10mlを装入する。これを恒常的な攪拌(電磁攪拌機)下に80℃(外部での温度制御)でHV中で1時間、前乾燥させる。イオン性液体がほぼ湿分不含になったら、四塩化白金0.7mg(55ppmnに相応)を秤量する。イオン性液体の触媒溶液を、触媒の添加後に改めて1時間、真空下に80℃で後乾燥させる。引き続き、三口フラスコを恒常的な保護ガス流下に還流冷却器に接続し、かつ滴下漏斗を設置する。フラスコの3つ目の接続部は、内部温度を制御するための接触温度計により封止される。反応または調製の間に関与する必要のない口は、付加的にパラフィルムで保護する。装置を気密に封止したら、新たに接続された全ての装置部材をHV中で乾燥させる。その後、残りの反応体(塩化アリル:6.4gおよびトリクロロシラン:11.7g)を、保護ガス雰囲気下に秤量する。全ての反応体(塩化アリルおよびトリクロロシラン)を、秤量のために注入器中に装入して正味量を補正し、かつ滴下漏斗へ添加後に秤量する。この際、特に反応体の正確な比率に注意しなくてはならない。100℃の反応温度は、サーモスタットにより調整し、かつ制御する。強力冷却器の温度(−20℃)は、クリオスタットにより発生させる。反応温度に達したら、反応体を慎重に滴下漏斗から添加する(滴加速度5〜40滴/分)。反応温度を10℃以上下回ったら、反応温度が再び目標値に戻るまで添加を中断する。添加が完了したら、反応体の完全な反応を保障するために60分間、後攪拌する。その後、イオン性液体および生成物を氷浴で冷却する。三口フラスコの内容物を、相分離のために注入器中に収容し、有機相(上部)ならびにイオン性液体の触媒溶液を分離し、かつ別々の容器に充填する。少量の生成物がイオン性液体の触媒溶液中に溶解しており、かつ所望の場合には真空下に除去することができる。有機相をガスクロマトグラフィーにより分析する。生成物相中に流出した白金の量を、ICP−AESにより確認する。
【0055】
イオン性液体は後処理することなく改めて装置中に導入され、かつすでに記載した方法(使用される反応体の調製および量)で、改めて反応に使用される。この際、十分な保護ガス技術に注意しなくてはならない。この際、真空下でのイオン性液体の乾燥は省略される。このようなリサイクルは、多くの場合、4工程で有効に実施可能である。
【0056】
第4表は、そのつどのリサイクリングの結果を示している。その際、イオン性液体の触媒溶液の再使用は、3回目のリサイクリングの後でも良好な結果を生じることが明らかである。
【0057】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロシリル化によりシランを製造する方法において、非高分子のSi−H−化合物のヒドロシリル化反応の触媒として、反応の間、イオン性液体中に溶解して存在している遷移金属錯化合物を使用することを特徴とする、ヒドロシリル化によりシランを製造する方法。
【請求項2】
ヒドロシリル化反応の触媒として、白金、イリジウムまたはロジウムの錯化合物を使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ヒドロシリル化の際に、一般式(1)
aSiRb (1)
の非高分子のSi−H−化合物を、一般式2
89C=CR1011 (2)
[上記式中で、
Rは、相互に無関係に、Hを表すか、一価のSi−C結合した、ハロゲン置換されていてもよいC1〜C18−炭化水素基、塩素基、またはC1〜C18−アルコキシ基を表し、
aは、1、2または3を表し、
bは、4−aを表し、
8、R9、R10およびR11は、相互に無関係に、Hを表すか、一価の、F、Cl、OR、NR2、CNまたはNCOにより置換されていてもよいC1〜C18−炭化水素基、塩素基、フッ素基またはC1〜C18−アルコキシ基を表し、その際、R8、R9、R10およびR11のそれぞれ2つの基は、これらが結合している炭素原子と一緒になって環式基を形成してもよい]のアルケンと反応させることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
イオン性液体として、一般式(4)
[A]+[Y]- (4)
[式中、
[Y]-は、[テトラキス−(3,5−ビス−(トリフルオロメチル)−フェニル)ボレート]、([BARF])、テトラフェニルボレート([BF4-)、ヘキサフルオロホスフェート([PF6-)、トリスペンタフルオロエチルトリフルオロホスフェート([P(C2533-)、ヘキサフルオロアンチモネート([SbF6-)、ヘキサフルオロアルシネート([AsF6-)、フルオロスルホネート、[R′−COO]-、[R′−SO3-、[R′−O−SO3-、[R′2−PO4-、または[(R′−SO22N]−を含む群から選択されるアニオンであり、その際、R′は、線状もしくは分枝鎖状の、1〜12個の炭素原子を有する脂肪族もしくは脂環式アルキル基、C5〜C18−アリール基、またはC5〜C18−アリール−C1〜C6−アルキル基であり、これらの水素原子は完全に、もしくは部分的にフッ素原子により置換されていてもよく、かつ
[A]+は、一般式(5)のアンモニウムカチオン
[NR1234+ (5)
一般式(6)のホスホニウムカチオン
[PR1234+ (6)
一般式(7)のイミダゾリウムカチオン
【化1】

一般式(8)のピリジニウムカチオン
【化2】

一般式(9)のピラゾリウムカチオン
【化3】

一般式(10)のトリアゾリウムカチオン
【化4】

一般式(11)のピコリニウムカチオン
【化5】

および一般式(12)のピロリジニウムカチオン
【化6】

を含む群から選択されるカチオンであり、その際、基R1〜R7は、それぞれ相互に無関係に、1〜20個の炭素原子を有する有機基を表す]のイオン性液体を使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
2相反応として実施し、その際、触媒を液相として、かつ反応生成物を液相もしくは気相として使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
触媒をイオン性液体中に溶解し、かつ反応器中で非混和性の相と接触させ、該相は反応器出口において反応生成物を含有しており、かつイオン性液体の触媒溶液は、相分離によってプロセス中で連続的に分離され、かつ再び反応器へ返送されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
イオン性液体の触媒溶液の膜を担体材料上に施与し、かつ触媒をこの形で、気相反応または液相反応において、反応混合物と接触させることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2009−541420(P2009−541420A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517131(P2009−517131)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056210
【国際公開番号】WO2008/000689
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】