説明

イオン注入システムにおいてプラズマを発生させるための薄膜形成用マグネトロン構造

イオンビームの空間電荷を中和するためのプラズマ発生器を開示し、このプラズマ発生器は、ビームライン径路に沿ってイオンブームを発生しかつ指向するように動作可能なイオン注入装置内に存在する。このプラズマ発生器は、ビーム径路の一部分に電界を発生させる電界発生システムとビーム径路の一部分に磁界を発生させる磁界発生システムとを有する。この磁界は、電界に直交している。プラズマ発生器は、さらに、電界と磁界によって占有される領域内にガスを導入するために作動可能なガス源を含む。この領域内の電子は、電界と磁界のそれぞれによって、この領域内を移動し、少なくともいくつかの電子がこの領域内で衝突し、ガスの一部分をイオン化し、これによりプラズマを発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、イオン注入システムに関し、特に、イオンビームに関連した空間電荷を中和するためにプラズマ発生システム及びそれに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入システムは、集積回路製造において、半導体に不純物を添加するのに使用される。このようなイオン注入システムでは、イオン源は、所望のドーパント要素をイオン化し、イオン源から抽出されたドーパント要素が所望エネルギーのイオンビーム形式で引き出される。このイオンビームは、所望の電荷質量比のイオンを選択するために質量分析され、そして、半導体ウエハの表面へと指向され、ドーパント要素がウエハに注入される。イオンビームのイオンは、ウエハ内にトランジスタ素子を製造する場合のように、ウエハの表面を貫通して所望の導電率の領域を形成する。一般的なイオン注入装置は、イオンビームを発生させるためのイオン源と、磁界を用いてイオンビームを質量分析するための質量分析器を含むビームアセンブリと、イオンビームによって注入されるべき半導体ウエハすなわち加工物を含むターゲット室とを有している。
【0003】
一般的にイオンビーム注入機は、イオン可能なイオン源材料から正に荷電したイオンを発生させるイオン源を含む。この発生したイオンは、イオンビームに形成され、所定のビーム径路に沿って注入ステーションに向かう。このイオンビーム注入機は、イオン源と注入ステーションとの間に配置されるビーム形成構造体を含んでいる。このビーム形成構造体は、イオンビームを維持して、ビームが注入ステーションへのルートを通過する細長い内部キャビティまたは通路を形成している。
【0004】
電荷に対するイオンの質量(即ち、電荷質量比)は、静電界または磁界によって軸方向及び横断方向の両方に加速される度合いに影響を与える。それゆえ、半導体ウエハまたは他の目標物の所望領域に到達するイオンビームは、非常に純度の高いものを作ることができ、不要な分子量のイオンは、このイオンビームから離れる方向に偏向され、所望材料以外の注入を排除することができる。所望の及び望まない電荷質量比のイオンを選択的に分離する工程は、質量分析として知られている。質量分析器は、双極子磁界を作り出す質量分析磁石を用い、異なる電荷質量比のイオンを有効に分離する弓形通路内で磁界による変更を介してイオンビーム内の種々のイオンを偏向させる。
【0005】
与えられた利用に対して所望の注入を達成するために、注入されたイオンのドーズ量とエネルギーを変えることができる。イオンドーズ量は、所定の半導体材料に対する注入イオンの集中を制御する。一般的に、高電流型注入機は、高ドーズ量の注入のために用いられ、一方、中電流型注入機は、より低いドーズ量の注入のために用いられる。イオンエネルギーは、半導体素子における接合深さを制御するのに用いられ、イオンビームのエネルギーレベルにより、イオンが半導体または他の基板材料内に注入される度合い、またはその注入深さを決定する。
【0006】
半導体素子がより小さくなる傾向により、低エネルギーで高ビーム電流を供給する機構を必要とする。この高ビーム電流は、必要なドーズ量のレベルを与える一方、低エネルギーは、浅い注入を可能にする。
【0007】
注入深さが浅いイオン注入に対して、高電流、低エネルギーのイオンビームが望ましい。この場合、減じられたイオンのエネルギーによって、電荷のように振舞うイオンの相互反発力によるイオンビームの集中を維持することが困難になる。一般的に、高電流イオンビームは、相互反発力によって軌道を外れる傾向にある、同等に荷電されたイオンの集中を高くする。低エネルギーで高電流のイオンビームを低圧力に維持するために、プラズマが、イオンビームの回りに作り出される。高エネルギーのイオン注入ビームは、残留ガスまたは背景ガスと相互作用するビームの副産物である一般的に弱いプラズマを通って伝搬する。このプラズマは、イオンビームによって生じた空間電荷を中和する傾向を有し、これにより、ビームを発散させる横断方向の電界を大いに減退させる。
【0008】
しかし、低イオンビームでは、背景ガスとの衝突によるイオン化の確率が低い。さらに、質量分析器の双極子磁界では、磁力線を横切るプラズマ拡散が、大いに減じられる一方で、この磁界の方向に沿う拡散は制限されない。
その結果、導入されたプラズマは、ビーム径路の室壁に対して双極子磁力線に沿って迅速に偏向するので、質量分析器における低エネルギービームの汚染を改善するための更なるプラズマの導入が、不要になる。
【0009】
空間電荷を中和するためのプラズマに関連したもう1つの問題は、問題となっている光学要素内の空間にプラズマ源が存在することであり、このプラズマ源及びイオンビームの両方に対して光学要素を十分に大きくしなければならない。このような付加的な空間は、光学要素の電力消費のためにコスト増となり、また、注入の困難性も増加する。
【0010】
イオン注入システムにおいて、ビーム閉じ込め装置が必要であり、また、高エネルギーシステムを含むイオン注入システムと共に用いるその方法も必要となる。更に、高電流、低エネルギーのイオンビームを低圧力で動作させ、質量分析器のビームガイド全体またはシステムの他の部分に沿って均一にビームを閉じ込める必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の1つまたは他の構成を基本的に理解するために、以下において、本発明を単純化して要約する。
【0012】
この要約は、本発明の外延的範囲を示すものではなく、また本発明の要部すなわち主要な構成を識別することを意図するものでもないし、また本発明の範囲を正確に規定するものでもない。さらに、この要約の主たる目的は、後でより詳細に説明する記述の序文となるように、単純化した形で本発明の概念を明らかにすることである。
【0013】
本発明は、イオン注入システムに使用するプラズマ発生装置、及びそのためのイオン注入システム並びにプラズマを発生させる方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の例示的な構成に従って、このプラズマ発生装置は、電界発生システムと磁界発生システムとを備えている。この電界及び磁界は、これらの発生領域内で電子が捕捉または循環されるように互いに直交する成分を有する。この領域内で移動する少なくともいくつかの電子をガスと衝突させて、ガスをイオン化させ、これによりプラズマを発生させる。
【0015】
本発明の一例によれば、プラズマ発生装置は、質量分析システム内に電極を形成することによってイオン注入システム内に小さい空間を作る。複数の電極が作られてバイアスが加えられ、電界が質量分析システム内にすでに存在する双極子磁界に対して直交する方向に生じる。このような場合、磁界発生システムは、単純に質量分析器であり、最小化されるべき質量分析される領域内でプラズマ発生のために必要とされる空間は最小化される。
【0016】
本発明の他の構成によれば、イオンビーム注入システムは、ペンシル型またはリボン型のイオンビームのいずれかを質量分析するために作られた質量分析システムを有する。リボンビームの場合には、質量分析器は、ビームの幅方向に伸びる横方向に長い一対のコイルを含み、このコイルの側方両端部は、質量分析器の対抗する側面を形成する。電流がこの一対のコイルに流れるとき、磁界が質量分析器のビームガイドを通るリボンビームの伝搬方向に直交して発生する。さらに、本発明は、質量分析器の両側の一方で、実質的にコイル間に一対の電極を有する。これらの電極は、質量分析器内でコイルによって発生する双極子磁界にほぼ直交する電界を、この電極間に発生するように作られている。これにより、マグネトロン型の効果を生じさせ、そして、局部領域内にいくつかの電子を捕捉する。捕捉された電子は、この領域内を移動し、そして、少なくともいくつかの電子が、この領域内でガスと衝突し、ガスをイオン化させてプラズマを発生させる。
【0017】
本発明のまた他の構成によれば、リボンビーム方の質量分析器は、対向する側の一方に電界発生システムを有する。この電界発生システムは、弓状に伸びる2つの導電性部分を含み、各導電性部分は、弓状通路にって伸びる複数の電極を有する。また、2つの導電性部分は、電気的に互いに分離されている。それぞれの導電性部分に関連する2つのグループの電極は、互いに対してバイアスされ、その電極間に電界を発生する。
【0018】
一の例では、発生する電界は、質量分析器内に双極子磁界に対して直交する方向に向いている。別の例では、磁界は、電界に関連した質量分析器の側壁上の弓状通路に沿って伸びる複数のマルチカプス磁界によって発生する。磁石は、側壁に対して局部的に通路に沿って、そして、電界に直交する少なくともその通路部分に沿って、複数のマルチカプス磁界を発生させる。また、別の例では、複数の導電性電極が、導電性部分に沿って弓状に伸び、この電極自体は、マルチカプス磁界を発生する磁石である。
【0019】
本発明の他の構成によれば、イオン注入システムにおけるビームライン径路の一部分に沿ってプラズマを発生させる方法が提供される。この方法は、互いにほぼ直交する電界及び磁界を発生させる工程を含んでいる。この互いに直交する電界と磁界は、その局部領域において電子を捕捉し、この局部領域内で電子を移動させ、電子をガスと衝突させてガスをイオン化する。
【0020】
上述の及び関連した目的を達成するために、本発明の詳細な例示的構成を示す記載及びこれに添付する図面が与えられている。これらは、種々の方法のうちの僅かであるが、これらは、本発明の原理を用いるものである。本発明の他の構成、利点、及び新規な構成が明らかになり、図面を参照して本発明の詳細な記述から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、図面を参照して記載され、全体を通して同一の参照番号は、同等の要素に対して用いられる。図面および以下の記載は、例示的なものであって、限定するものではない。それゆえ、上述したシステムおよび方法、さらに上記したものとは異なる他の構成も、本発明の範囲および請求項に記載の構成に包含されるものと見なされるであろう。
【0022】
本発明は、イオン注入システム内にプラズマを形成するシステム及びその方法に関係する。このシステム及び関連した方法は、互いに直交して発生する電界及び磁界を含み、所定の領域内に移動する電子を生じさせる。この移動する電子は、前記領域内でガスと衝突し、ガスをイオン化させ、イオンビームの空間電荷の中和に用いるためにプラズマを生じさせる。更に、種々の構成に対する本発明の利用については、以下の詳細な説明によって理解されるであろう。
【0023】
最初に、図1を参照すると、本発明の1つ以上の実施形態で実現できるイオン注入システム10が、ブロック図で示されている。このシステム10は、ビーム経路に沿ってイオンビーム14を生じさせるためのイオン源12を含む。イオン源12は、例えば、関連した電源18を有するプラズマ源16を含む。このプラズマ源16は、例えば、イオンビームが引き出される、比較的長いプラズマ閉じ込め室からなっている。引き出されたイオンビームは、ペンシル型またはリボン型のイオンビームである。本発明に関連して使用することができる1つの例であるイオンビームは、2002年5月1に出願された特許文献1に開示されており、この特許出願は、本発明の譲受人に譲渡され、その全体が、ここに参考として包含されている。
【特許文献1】米国特許出願番号第10/136,047号
【0024】
イオン源12の下流には、イオンビーム14を受け入れるためのビームラインアセンブリ11が設けられる。ビームラインアセンブリ11は、質量分析器22、スキャナー24、減速システム26、及び偏向システム28を含んでいる。ビームラインアセンブリ11は、イオンビーム14を受け入れるための経路に沿って配置される。質量分析器22は、磁石(図示略)等の磁界発生要素を含み、ビーム経路間に磁界を与えるように作動して、イオンビーム14からのイオンを質量(例えば、電荷質量比)に従って変化する軌道において偏向させる。磁界を通って移動するイオンは力を受け、所望質量の個々のイオンが、ビーム経路に沿って方向付けられ、不必要な質量のイオンをビーム経路から引き離す。
【0025】
スキャナー24は、制御された方法で、加工物を横切るイオンビームを方向付けまたは走査するために、ビームラインの軸線の方向を調整するために作動可能である。このスキャナーは、静電式または磁気式であり、このような走査機構または他の形式のシステムは、本発明と関連して使用することができる。さらに、ビームライン11は、ビームに関連したエネルギーを偏向するために制御可能であり、かつ選択的に操作可能である減速モジュール26を含んでいる。たとえば、中間エネルギーで、ビームエネルギーにおいて実質的変化がないことが必要であり、このモジュールは、ビームが実質的変化なしで通過できるようにする。
【0026】
この代わりに、低エネルギーの利用では、(たとえば、半導体本体内の浅い接合部の形成のために、)ビームエネルギーは、減速される必要がある。このような状況下では、減速モジュール26は、減速によって所望エネルギーレベルにするために、ビームのエネルギーを減少させるように操作可能である。
【0027】
ビームラインは、さらに、たとえば、加工物内への注入の前に偏向を使用する低エネルギーシステムを用いるための偏向システム28を含んでいる。この偏向システムは、たとえば、イオンビームをビームラインの軸線から離すように偏向させる偏向電極を含み、これにより、イオンビームがエネルギー汚染物質として作用する中性粒子を取り除く。
【0028】
図1に続いて、エンドステーション30が、質量分析されて浄化されたイオンビーム14をビームラインアセンブリ11から受け入れるために、システム10に設けられている。このエンドステーション30は、半導体ウエハ(図示略)等の1つ以上の加工物をビーム径路に沿って(しかし、デフレクター28による元のビームラインの軸線からオフセットされている)支持されており、リボン型イオンビーム14を用いて注入する。
【0029】
また、図2において、例示的な低エネルギーイオン注入機100が、本発明の種々の構成を理解するために詳細に説明されている。このイオン注入機は、イオン源112、質量分析磁石114、ビームラインアセンブリ115、及びターゲットまたはエンドステーション116を有する。ビームラインアセンブリ115に関してエンドステーションの動きを可能にするベローズアセンブリ118が、エンドステーション116及びビームラインアセンブリ115の間に結合されている。図2は、超低エネルギー(ULE)イオン注入機を説明するものであるが、理解できるように、本発明は、他の形式のイオン注入機にも同様に利用することができる。
【0030】
イオン源112は、プラズマ室120及びイオン引出アセンブリ122を含んでいる。エネルギーは、イオン化可能なドーパントガスに分与され、プラズマ室120内にイオンを発生する。本発明は、イオン源112によって負のイオンが発生するシステムに利用可能であるが、一般的に、正のイオンが発生する。この正のイオンは、複数の電極を含むイオン引出アセンブリ122によって、プラズマ室120に設けたスリットを介して引き出される。従って、イオン引出アセンブリ122は、プラズマ室120から正のイオンのビーム128を引き出し、そして、引き出されたイオンを質量分析磁石114内で加速する機能を有する。
【0031】
質量分析磁石114は、分析ハウジング123及びビーム中和器124を含むビームラインアセンブリ115に適当な電荷質量比のイオンのみを通過させる機能を有する。質量分析磁石114は、側壁130を有するビームガイドによって形成される通路139内の湾曲したビーム径路129を含んでおり、このビーム径路の排気のために、真空ポンプ131が設けられている。このビーム径路129に沿って伝搬するイオンビーム128は、質量分析磁石114によって発生する磁界によって影響され、不適当な電荷質量比のイオンを排除する。この双極子磁界の強さと方向は、電子制御装置132によって制御され、この電子制御装置は、磁石コネクタ133を介して磁石114の界磁巻線を通る電流を調整する。
【0032】
双極子磁界は、第1軌道、即ちイオン源112の近くにある入口軌道134から第2軌道、即ち、分析ハウジング123の近くにある出口軌道に湾曲したビーム径路129に沿ってイオンビーム128を移動させる。イオンからなるビーム128の部分128'、128"は、不適当な電荷質量比を有し、湾曲した軌道から反れて、アルミニウム製のビームガイド130の壁内へと偏向する。このように、磁石114は、所望の電荷質量比を有するビーム128内の所望のイオンのみを、分析ハウジング123に対して通過させる。
【0033】
分析ハウジング123は、ターミナル電極137、イオンビームを集束させる静電レンズ138、及びファラデーフラッグ142等のドーズ量指示器を含む。ビーム中和器124は、正に荷電されたイオンビーム128によって注入されるターゲットウエハ上に蓄積される正の電荷を中和するために、本発明(以下で詳細に記載される)に従うプラズマシャワー145またはプラズマ発生器を含んでいる。
【0034】
ビーム中和器124の下流には、エンドステーション116が設けられ、このエンドステーションは、処理されるウエハ等の加工物が取り付けられるディスク状のウエハ支持体144を含んでいる。ウエハ支持体144は、注入ビームの方向にほぼ直交するターゲット平面上に配置される。エンドステーション116に位置するディスク形状のウエハ支持体144は、モータ146によって回転される。その結果、ウエハが円形径路内を移動するとき、イオンビームがウエハ支持体に取り付けられたウエハに衝突する。エンドステーション116は、イオンビームの径路164とウエハWが交差する点162の回りを旋回し、その結果、ターゲット面は、この点の回りで調整可能である。図2は、バッチ型の処理システムを図示するけれども、本発明は、単一ウエハ型の処理システムにも利用できることは理解できるであろう。
【0035】
図3は、また別のイオン注入システム262、たとえば、本発明の1つ以上の構成を実現するのに適切な中電流型システムを図示している。このシステム262は、ガスボックス264、補助ガスボックス266、及びガスボックスの遠隔パージ制御パネル268を含んでいる。ガスボックス264,268は、他の物質の中でドーパント物質の1つ以上のガスを含み、そして、システム262内に設けた長寿命のイオン源282へのガスの選択的配給を容易にする。このシステム262内に選択的に運ばれるウエハまたは加工物内に注入するのに適したイオンを発生するために、1つまたは複数のガスが、このシステム内でイオン化される。ガスボックスの遠隔制御パネル268は、換気用または洗浄用ガス或いは他の物質を、必要とされる程度又は所望の基準において、システムから外部に排出するのを容易にする。
【0036】
他の構成として、高電圧の終端出力の分配器272及び高電圧絶縁変圧器274が含まれ、これらのものは、ドーパントガスを電気的に活性化させてエネルギーを与えて、このドーパントガスからイオンを発生させる。イオンビーム引出アセンブリ276は、イオン源282からイオンを引き出し、さらに質量分析磁石280を含むビームライン278内でイオンを加速する。質量分析磁石280は、不適当な電荷質量比のイオンを分離、すなわち排除するように操作可能である。特に、質量分析磁石280は、湾曲した側壁を有するビームガイドを含み、この側壁に不要な電荷質量比のイオンを衝突させ、質量分析磁石280の磁石によって発生した1つ以上の磁界によってビームガイドを通過してイオンが伝搬される。
【0037】
コンポーネント284が、走査されたイオンビームの角度制御を補助するために設けられている。このコンポーネントは、他のもの、即ち、走査角度補正レンズを含む。加速/減速コラム286が、イオンビーム内のイオンの速度を制御しかつ調整し、さらにイオンの集束を容易にする。コンポーネント288は、ウエハまたは加工物への汚染物質の進入を少なくするために、最終のエネルギーフィルタ等の汚染粒子を取り除くように動作する。
【0038】
ウエハまたは加工物290は、複数のイオンを選択的に注入するためにエンドステーション室292に載置される。機械的な走査駆動部294が室292内のウエハを動かしてイオンビームが選択的にウエハに容易に進入できるようにする。ウエハまたは加工物290は、ウエハハンドリング装置296によってエンドステーション室292内に移動される。このウエハハンドリング装置は、たとえば、1つ以上の機械式アームまたはロボットアーム297を備えている。オペレータは、オペレータ操作盤298により、このシステム262の1つ以上のコンポーネントを選択的に制御してイオン注入処理を調整することができる。最後に、全体のシステム262に電力を供給するために、電力分配ボックス299が設けられている。
【0039】
図4は、イオン注入システムに用いるための例示的な質量分析器ビームガイド300(たとえば、図1の分析器12、図2の分析器114、または図3の分析器280)を図示しており、このビームガイドは、それぞれイオンビーム径路308に沿う、内側及び外側の弓形状側壁304,306によって形成される弓形状の長手通路302を有する。ビームガイド300は、たとえば、概略135°となるようなアーク角度を通って、入口端310から出口端312への通路308に沿って長手方向に伸びている。ビームガイド300は、選択される電荷質量比のイオンを径路308に沿って出口端312に到達することができるような通路302内に双極子磁界を与えるために、さらに、2つの弓形状磁極または一対のコイル(図4には図示されていない)を含む分析磁石を含む。イオン注入システムの形式に基づいて、ビームガイド300は、更に以下で説明するように、ペンシル型ビームまたはリボン型ビームを偏向することができる。
【0040】
図5及び図6は、図4の例示的な質量分析ビームガイド300の端部から見た正面図及び部分平面図をそれぞれ示し、このビームガイドは、本発明の構成に従って通路302に双極子磁界330を発生させるために関係するコイルを有する。コイルは、図示するように、弓形状で径路308に沿って長手方向に伸びている。しかし、いくつかの例では、磁石320が用いられる。代わりに、ビームガイドは、望むならば、永久磁石とコイルの組み合せを用いることができる。このような変形例は、本発明によって考えることができる。弓形状通路302は、更に、頂部壁322及び底部壁324によって形成される。
【0041】
図5及び図6の質量分析ビームガイド300に注目すると、磁極片間のギャップを大きくする必要がないので、ペンシル型イオンビームと共に用いることが望ましい。理解できるように、質量分析器ガイドは、異なる形式のイオンビーム、たとえば、リボン型イオンビームに対して、異なる構造とすることができる。
【0042】
次に図7において、2つ以上の電極340が、ビームガイド300内の少なくとも一部分に用いることができる。これらの電極340は、図示するように、RF電源等のバイアス源に結合されている。RF電源は、電極340間に電位差を生じさせ、電極間に電界344を発生させるように動作する。電界344の少なくとも一部分は、通路302内の磁界330に対して直交する方向に向いている。これにより、電極340は、電界発生器として作用し、一方、磁石320が磁界発生器として作用する。交差する電界と磁界は、マグネトロン効果を作り出し、そこで、電子が捕捉され、ほぼサイクロイドの形で移動する領域が形成される。この領域内を移動する電子は、ガスと衝突するまで移動し続け、電子の少なくともいくつかは、十分なエネルギーを有して、ガスの一部分をイオン化し、プラズマを発生させる。上記の例では、質量分析のためのバックグラウンド磁界330がすでに存在しており、単に電極340を付加することによって比較的単純な方法で、プラズマ発生器が設けられる。その結果、電界が少なくとも磁界に対して直交する方向に向かう部分を有するように電極が作られている。
【0043】
図8は、図7の線8−8に沿って取られた通路302内の断面部分を示す平面図である。図8に注目すると、電源340は、組み合わされた電極対340a、340bを形成する。上記配置によって電源342がより単純化された結合構成を有することができる。
図8の例示的構成は、通路302に沿う種々の領域に分配される電子を捕捉するための領域を可能にする。更に、図8の構成によれば、弓形状通路302を横切って伸びることができ、電極対340a、340bは、弓形状とすることができ、ビーム径路308の全長に沿ってプラズマを発生することができる。
【0044】
上述したプラズマ発生器の構造は、通常のプラズマ源と比較して多数の利点を有する。1つの利点は、電極340が、分析器の壁に沿って非常に小さい空間を有することである。
その結果、このプラズマ発生器は、磁気ギャップが小さな部分となるように作ることができ、このギャップが比較的小さくすることができるペンシル型ビームにとって大いに有利なものとなる。小さいギャップを維持することは、光学要素に執拗な出力を減少させることができる。さらに、本発明のプラズマ発生器は、ビームラインの全長に沿ってプラズマを発生させ、さらに磁界ラインに沿って拡散させることによって、ビームガイド全体にプラズマを有効に形成するように動作可能である。一般的に理解できるように、プラズマは、磁界ラインに対して実質的に抵抗となるように見えるが、この磁界ラインに沿って容易に拡散することができる。その結果、ガイド壁に沿って発生したプラズマは、対向するガイドに対して容易に拡散でき、これにより、比較的均一なプラズマを与える。
【0045】
本発明のプラズマ発生器は、質量分析システムと関連して上述してきたが、本発明は、これに制限されないことを理解すべきである。むしろ、本発明は、空間電荷の中和が利点となるような種々のビームライン部分において用いることができる。たとえば、低エネルギーイオン注入システムの減速部分において、イオンビームの輸送は、輸送効率のために比較的大きなエネルギーで行われ、そして加工物での注入の前に減速される。このような減速を用いて、イオンビームのパービアンスが増加し、そこで空間電荷の中和が生じるので、ビーム発散を防止するのに有利となる。本発明のプラズマ発生器は、そのような環境でまたはビームラインに沿う他の領域で用いることができる。また、これらの代替物も本発明の範囲内に包含されると考えられる。
【0046】
上述したように、本発明は、質量分析器以外の領域、たとえば、ビーム径路に沿うドリフト領域内で使用することができる。このような例は、プラズマ発生器は、磁界が光学目的のために与えられていない図9Aの場合と同様な構造とすることができる。このような領域において、複数の磁石を用いて発生させることができるマルチカプス磁界は、対向する複数の磁極を有する。たとえば、図9Aに示すように、第1磁石370は、第1磁極と第2磁極を有し、一方、隣接する磁石374は、第1磁石に対して反転した第2磁極と第1磁極を有する。このような配置は、図示するように、複数のマルチカプス磁界を生じさせる。
【0047】
図9Aに関係して、マルチカプス磁石は、複数の電極380をインタレースされており、上述したようにバイアスされて電界382を生じ、そこに、磁界378及び電界382の少なくとも一部分が互いに直交している。マルチカプス磁界378は、磁石から離れた距離で急速に減退する複数の磁石によって生じるので、この磁界は、イオンビーム軌道に影響されない。
【0048】
図9Aの例では、異なる平面にある複数の電界と磁石が図示されているが、これらは例示的なものである。代わりに、複数の磁石及び電極は、ビーム径路に関連した壁に沿って異なる形式で構成することもできる。別の形態では、複数の磁石それ自体が、電極であり、図9Bに関連して以下で説明するものと同様に使用することができる。最後に、上述の例は、電界に直交するマルチカプス磁界を有するプラズマ発生器を備えているが、本発明は、磁界発生器のための双極子磁界と共に、マルチカプス磁界を使用できることを理解すべきである。
【0049】
図9Bにおいて、ビームラインのコンポーネント390は、電極としてマルチカプス磁石392を用いる。これにより、上述したように磁界394と電界396を生じる。この構造において、磁石/電極392及びコンポーネント上を覆うクオーツカバー(石英層)398が、望ましい形で誘電体材料の中に埋設されている。このような配置は、プラズマを発生する単に必要ではないが、この配置は、ビームガイドの寿命を改善しかつ内部の汚染物質を減少させるために設けられているので、ある面で有利となる。
【0050】
図10〜13Bを見ると、質量分析システム400が図示され、このシステムは、リボン型イオンビームを質量分析するために形作られている。1つの例では、リボンビームは、上述したイオン源等のイオン源から得られる。本実施形態の質量分析器400は、300mmの半導体ウエハ用のリボンビームを質量分析するために形作られ、このリボンビームは、約400mmの幅を有し、質量分析器は、約600mmの幅を有するものでもよい。
【0051】
本実施形態の質量分析器400は、一対のコイル402を含み、第1コイル(即ち頂部コイル402a)は、ビーム径路404を有する第2コイル(即ち底部コイル)402b上に配置され、ビーム径路は、第2コイル間にあって、入口端403a及び出口端403bから伸びている。各コイル402は、リボンビームに関して少なくとも幅方向406に伸びており、好ましくは更にリボンビームの幅よりも伸びている。図11及び図13A、13Bにおいて、各コイル402は、弓形状ヨークを有し、このヨークは、その回りを覆う、たとえば、弓形状のヨークに沿って長手方向にかつビーム径路404にほぼ平行な1つ以上の導体を有する。コイル402を通って流れる電流により、コイル間のギャップ412に、双極子磁界410がリボンビームの伝搬方向にほぼ直交する方向に(弓形状のビーム径路404とほぼ一致する)発生する。
【0052】
図10及び図11において、横方向に伸びるコイル402は、質量分析器400の横方向に対向する側面414を形成する。この側面の一方414a上でかつコイル402aとコイル402gとの間に配置されて、弓状に伸びているのは、電気的に絶縁された側壁420である。この側壁420上に、2つの弓状に伸びる導電性セグメント422a、422bが配置されている。この導電性セグメント422は、それぞれ導電性を有するが、互いに対して電気的に絶縁されている。各セグメント422上には、複数の電極424a、424bが弓状径路に沿って長手方向に伸びている。これらの電極424は、径路に沿って鎖のようにつながれている。電極424は、各セグメント422を介して電気的に連結された複数の別個の要素として図示されているが、他の形状と同様に、各電極424が単一で弓形状に伸びた導電性セグメントからなるものと理解すべきであり、このような代替物は、本発明の範囲内に入ると考えられる。
【0053】
電極424a、424bは、RF電源等の電源(図示略)に接続されており、バイアスを加えることにより電界が、ビーム径路404にほぼ直交する方向に電極424a、424b間に形成される。1つの例では、電極424は、マグネトロン構造に類似する電子捕捉領域を作り出すために、ギャップ412(電界に直交する)内の双極子磁界410と関連して使用することができる。上述したように、プラズマを発生させるために、移動する電子はガスと衝突してガス(残留するイオン源ガスまたはキセノン等の入力源ガス)をイオン化する。
【0054】
本発明の別の構成によれば、電極424は、磁石(図11参照)であり、各磁石424は、互いに関連するN極とS極を有する。たとえば、拡大領域423内の第1セグメント422aでは、磁石は、各磁石のN極が、他方の導電性セグメント422b上の磁石424bに向かって内側に面し、S極が他方の磁石424bから離れた外側に面するように配置されている。また、第2セグメント422bでは、磁石は、その磁極が同様に配置されているが、各磁石424bのN極は、第1導電性セグメント422a上の磁石424aに向かって内側に面し、S極が他方の磁石424aから離れた外側に面するように配置されている。
【0055】
このような構成によると、磁石は、マルチカプス磁界として作用し、ビーム径路404に向かう弓状通路内に伸びるマルチカプス磁界を発生するように動作する。1つの形状が図11に図示されているが、磁極方向は、逆転するように、内側で対面するS極と外側で対面するN極とすることもできる。このような変化は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0056】
磁石424によって発生するマルチカプス磁界は、電極424によって発生する電界に直交する部分を有する。このような電極を磁石として、また、マルチカプス磁界を磁界発生器として用いることによって、マルチカプス磁界は、理解できるように、双極子磁界410の質量分析機能を与えることなく、イオン化効率を最大にするように構成することができる。さらに、電極を磁石(電界発生器及び磁界発生器の両方の構成と同様な)として用いることにより、この設計が簡略化される。
【0057】
質量分析器400内に生じるプラズマは、双極子磁界410と関連するフィールドライン等の磁界ラインに沿って容易に流すことができ、図11において、紙面に向かってリボンビームに対して垂直に向かう。こうして、発生したプラズマは、H期秋的均一に弓状通路に沿って形成され、双極子磁界ラインに沿ってビームガイドの幅406横って容易に拡散し、リボンビームの幅を横切るほぼ均一なプラズマを与えることができる。この結果、リボンビームの空間電荷中和は、リボンビームの幅を横切って均一に有効に行われる。
【0058】
図10及び図12において、第1側壁414aからビームガイド400の対向する側に、電気的に絶縁された第2側壁414bが、第1コイル402aと第2コイル402bとの間に伸びている。第2側壁414bは、複数の磁石432が側壁に沿って配置されている弓形状に伸びるセグメント430を含んでいる。これらの磁石432は、セグメント430の形状に沿って、第1側壁420上のセグメント422の磁石424に関して約90°だけ回転した位置に配置されている。さらに、磁石432は、図12に示すように、1つの磁石のN極が隣接する磁石のS極と隣り合うように向いて配置される。第2組の磁石432は、磁石424に関して回転しており、これにより、対向する側のマルチカプス磁界の位相を変える。磁石432により形成されるマルチカプス磁界に向けて双極子磁界ライン410に沿ってリボンビームにプラズマが拡散するとき、側壁間の位相変動により、プラズマの不均一が起こることから生じるデッドゾーンを防止または軽減する。その結果、図10〜図13Bに係る本発明のこのような配置は、リボンビーム型イオンビームの空間電荷中和のために、ビームガイド400全体を均一にするプラズマを有効に与える。
【0059】
本発明の他の構成によれば、イオン注入システムにおいてプラズマを発生する方法が、図14に、参照番号500で図示するように設けられている。この方法500は、一連の動作または事象が、以下に図示されかつ記載されているが、本発明は、このような動作または事象の順序で行われることに限定されるものではないことが理解できるであろう。たとえば、いくつかの動作は、本発明の1つ以上の構成に従って、異なる順序および/またはここに図示かつ記載されているものと異なる他の動作または事象を同時に動作させる。さらに、本発明に従う方法を達成するのに必要なステップを付加することもできる。更に、本発明に従う方法は、ここに図示および記載した構成および/または処理とともに図示されていない他の構成にも関連して実行することができる。
【0060】
本発明の方法500は、ステップ502において、ビームラインに沿う領域内に磁界を発生させることから開始される。続いて、ステップ504において、この領域に磁界に直交する電界を発生させる。この方法は、ステップ506において、上記領域にガスを供給し、直交する電界と磁界により、この領域に捕捉された電子をガスと衝突させる。その結果、ガスをイオン化して、この領域内にプラズマを生じさせる。
【0061】
本発明のステップ502及び504において、磁界及び電界を発生させるために、磁界発生システム及び電界発生システムは、いずれの形式を用いてもよい。たとえば、ビームラインの領域は、質量分析器を含んでいる。このような例における磁界発生器は、双極子磁界を発生させるために使用される質量分析磁石とすることができる。代わりに、上記したようにマルチカプス磁界を発生するために構成した複数のマルチカプス磁石を用いて、磁界を発生させることもできる。
【0062】
同様に、電界を発生するためにいずれの形式の電界発生器を用いることもできる。たとえば、電極にバイアスを与え、その間に電界を発生させるために電極に接続された電源を用いることもできる。さらに、複数の磁石を電極として用い、同一の構造が磁界発生器及び電界発生器としてそれぞれ使用することもできる。
【0063】
ビームラインに沿う領域は、質量分析器または質量分析器の下流に配置されるドリフト領域を含むことができる。最後に、この領域に供給されるガスは、残留イオン源ガスまたはポート(図示略)を介して領域に意図的に供給されるガスとすることができる。好ましくは、ここで使用されるガスは、容易にイオン化されかつ高いイオン化効率を有する、たとえば、キセノンガスである。しかし、他のガスも使用でき、このような代替物も、本発明の範囲内に入るものと考えられる。
【0064】
本発明を或る用途及び実施に対して図示して説明してきたが、この明細書と添付された図面とを読んで理解すると他の同業者にも同等の変更や修正ができるものと認識することができる。特に上述の構成要素(アセンブリ、装置、回路、システム等)によって実行される種々の機能に関して、そのような構成要素を説明するために使用される用語(「手段」に対する参照を含めて)は、他に表示されていなければ、たとえ開示された構成に構造的に同等でなくても本発明のここで図示された例示的実施においてその機能を果たすものであれば、説明された構成要素の特定された機能を実行する(即ち、機能的に同等である)いずれかの構成要素に相当するものと意図されている。
【0065】
さらに、本発明の特定の特徴が幾つかの実施の内のただ一つに対して開示され得てきたようであるが、そのような特徴は、いずれかの或る又は特定の用途にとって望ましくかつ有利な他の実施形態における一つ以上の特徴と組み合わされ得るものである。更に、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」及びそれらの変形が詳細な説明か特許請求の範囲のいずれかで使用されている限り、これらの用語は、用語の「構成されている」と同様に包含されるものであると理解すべきである。また、ここで用いられる「例示的な」は、最も良い従来例というよりも単なる手段としての例示を意味している。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の1つ以上の実施形態に従う例示的なイオン注入システムの構成要素を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明の種々の実施形態を実行できる低エネルギー型のイオン注入システムを示す概略図である。
【図3】本発明の種々の実施形態を実行できる中エネルギー型のイオン注入システムを示す概略図である。
【図4】本発明の構成に従う例示的な質量分析器のビームガイドの頂部平面図である。
【図5】本発明の別の構成に従う双極子磁界を発生させるための複数の磁石を有する図4の例示的な質量分析器の端部上面図である。
【図6】図4の線6−6に沿って見た例示的な質量分析器の側断面図である。
【図7】図4の線7−7に沿って見た例示的な質量分析器の側断面図である。
【図8】図7の線8−8に沿って見た例示的な質量分析器の側断面図である。
【図9A】マルチカプス磁界を用いる本発明の原理を説明する単純化した概略図である。
【図9B】本発明の例示的な構成に従う電極として複数の磁石を用いることを示す単純化した概略図である。
【図10】本発明の他の構成に従うリボンビーム用の例示的な質量分析器の斜視図である。
【図11】図10の例示的な質量分析器の第1側方部分を示す側断面図である。
【図12】図10の例示的な質量分析器の第2側方部分を示す側断面図である。
【図13】図13Aは、図12の線13A−13Aに沿って見たリボンビーム用の例示的な質量分析の断面図であり、図13Bは、図12の線13B−13Bに沿って見たリボンビーム用の例示的な質量分析の断面図である。
【図14】本発明の他の構成に従うイオン注入システムにおける空間電荷の中和用のプラズマを発生する方法を示す流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームの空間電荷を中和するためのプラズマ発生装置であって、
イオンビームを発生させ、ビームライン径路に沿ってイオンビームを向かわせるように動作可能なイオン注入システムと、
第1方向に向かう部分を有する電界を、前記ビームラインの一部分に生じさせるために動作可能な電界発生システムと、
前記第1方向に対して直交する第2方向に向かう部分を有する磁界を前記ビームライン径路の部分に生じさせるために動作可能な磁界発生システムと、
前記電界と磁界によって占有された領域内にガスを導入するために動作可能で、この電界と磁界による前記領域内で電子が移動し、少なくともいくつかの電子が前記領域内のガスと衝突して、ガスの一部分をイオン化させ、これによって、前記ビームライン径路の部分に関連した前記領域内にプラズマを発生させるためのガス源と、を含んでいることを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項2】
前記電界発生システムは、RF電源に接続された一対またはそれ以上の電極対を含み、これにより、前記領域内の電極間に交互に変わる電界を発生させることを特徴とする請求項1記載のプラズマ発生装置。
【請求項3】
前記一対またはそれ以上の電極対は、組み合わされた複数の電極であることを特徴とする請求項2記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記一対またはそれ以上の電極対の各々は、対向側面、頂部面、底部面をそれぞれ有し、対向側面と底部面は、誘電体材料により取り囲まれ、前記電極間で交互に変わる電界が頂部面から出ていることを特徴とする請求項2記載のプラズマ発生装置。
【請求項5】
前記一対またはそれ以上の電極対の頂部面上に広がる石英層をさらに含むことを特徴とする請求項4記載のプラズマ発生装置。
【請求項6】
前記ビームライン経路の一部分は、質量分析システムを含むことを特徴とする請求項1記載のプラズマ発生装置。
【請求項7】
前記質量分析システムは、コイル間に配置されるビーム径路を有する一対のコイルをさらに含み、前記コイルは、コイルに電流が流れるときにリボン型イオンビームの伝搬方向にほぼ直交する磁界を発生させるように動作し、前記一対のコイルは、磁界発生システムを含むことを特徴とする請求項6記載のプラズマ発生装置。
【請求項8】
前記電界発生システムは、電極間に電界を発生させるように動作可能にバイアスされた一対の電極を含んでいることを特徴とする請求項7記載のプラズマ発生装置。
【請求項9】
前記電界発生システムは、更に、バイアスされた一対の電極に接続されたRF電源を含むことを特徴とする請求項8記載のプラズマ発生装置。
【請求項10】
前記一対のコイルが、リボン型イオンビームの幅方向に伸び、かつ前記コイルのいずれかの端部に質量分析システムの第1、第2の対向側面部分を形成し、前記一対の電極が、前記第1の対向側面部分に存在することを特徴とする請求項8記載のプラズマ発生装置。
【請求項11】
前記バイアスされた一対の電極の各々は、前記質量分析システムの外形にほぼ従う弓形状の導電性セグメントと、電気的に接続されかつ前記導電性セグメントに沿って連鎖した複数の導電性部材を含むことを特徴とする請求項10記載のプラズマ発生装置。
【請求項12】
前記複数の導電性部材は、更に磁石を含み、各磁石は、その第1端部に設けたN極と第2端部に設けたS極とを有することを特徴とする請求項11記載のプラズマ発生装置。
【請求項13】
前記導電性セグメントの一方に複数の磁石が配置され、前記N極とS極は、第1方向に配置され、前記磁石のN極は、前記導電性セグメントの他方の磁石に対して内側に面し、前記磁石のS極は、前記導電性セグメントの他方の磁石から離れた外側に配置されており、前記他方の導電性セグメントの磁石は、第2方向に配置され、前記磁石のN極は、前記一方の導電性セグメントの磁石に対して内側に面し、前記S極は、前記一方の導電性セグメントの磁石から離れた外側に配置されていることを特徴とする請求項12記載のプラズマ発生装置。
【請求項14】
前記導電性セグメントの一方に複数の磁石が配置され、前記N極とS極は、第1方向に配置され、前記磁石のS極は、前記導電性セグメントの他方の磁石に対して内側に面し、前記磁石のN極は、前記導電性セグメントの他方の磁石から離れた外側に配置されており、前記他方の導電性セグメントの磁石は、第2方向に配置され、前記磁石のS極は、前記一方の導電性セグメントの磁石に対して内側に面し、前記N極は、前記一方の導電性セグメントの磁石から離れた外側に配置されていることを特徴とする請求項12記載のプラズマ発生装置。
【請求項15】
前記複数の磁石は、前記質量分析システムの第1側面部分に沿ってマルチカプス磁界を発生させるために動作可能であり、前記マルチカプス磁界は、電界と相互作用して電子を区域内の領域に移動し、少なくともいくつかの移動する前記電子がガスをイオン化させるように動作し、これによりプラズマを発生させることを特徴とする請求項12記載のプラズマ発生装置。
【請求項16】
前記第1側面部分上の弓形状の導電性セグメントに対向する質量分析システムの第2側面部分に、前記ビームライン経路に沿って伸びる複数の磁石をさらに含み、前記磁石の各々は、関連するN極とS極を有し、前記複数の磁石が、弓形状の導電性セグメント上の磁石に対してほぼ90°に向けられ、前記質量分析システムの第2側面部分に沿ってマルチカプス磁界を発生させるように動作可能であることを特徴とする請求項15記載のプラズマ発生装置。
【請求項17】
前記ビームライン経路は、質量分析システムの下流にドリフト領域を含み、前記ブームライン経路部分内のプラズマが、この径路を通過するイオンビームに対して空間電荷を中和することを特徴とする請求項1記載のプラズマ発生装置。
【請求項18】
前記イオン注入システムは、リボン型イオンビームを発生させるために動作可能なイオン源を含むことを特徴とする請求項1記載のプラズマ発生装置。
【請求項19】
前記イオン注入システムは、ビームを走査してリボン型イオンビームを作り出すための走査システムを含むことを特徴とする請求項1記載のプラズマ発生装置。
【請求項20】
イオンビームを発生するように動作可能なイオン源と、
前記イオンビームを受け入れて、イオンビーム内のイオンを偏向し、所望の電荷質量比を有するイオンを所定径路に沿って移動させ、さらに前記経路内にプラズマを発生させるプラズマ発生器を含み、前記イオンビームに関連した空間電荷を中和するための質量分析システムと、
質量分析システムの下流に配置され、イオンビームを介して注入するために加工物を支持するように動作可能なエンドステーションと、を含んでいるイオン注入システムであって、
前記プラズマ発生器は、
前記質量分析システム内に、第1方向に向いた部分を有する電界を発生させるように動作可能な電界発生システムと、
前記質量分析システム内に前記第1方向に直交する第2方向に向いた部分を有する磁界を発生させ、電子が前記電界と前記磁界により移動し、少なくともいくつかの電子が、残留ガスと衝突してガスの一部をイオン化するように動作可能な磁界発生システムと、を含んでいることを特徴とするイオン注入システム。
【請求項21】
前記電界発生システムは、RF電源に接続された一対またはそれ以上の電極対を含み、これにより、前記電極間に交互に変わる電界を前記領域内に発生させることを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記一対またはそれ以上の電極対は、組み合わされた複数の電極であることを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記一対またはそれ以上の電極対の各々は、対向側面、頂部面、底部面をそれぞれ有し、対向側面と底部面は、誘電体材料により取り囲まれ、前記電極間で交互に変わる電界が頂部面から出ていることを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記一対またはそれ以上の電極対の頂部面上に広がる石英層をさらに含むことを特徴とする請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記イオンビームは、リボン型イオンビームからなることを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項26】
前記質量分析システムは、コイル間に配置されるビーム径路を有する一対のコイルをさらに含み、前記コイルは、コイルに電流が流れるときにリボン型イオンビームの伝搬方向にほぼ直交する磁界を発生させるように動作可能であることを特徴とする請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記一対のコイルは、磁界発生システムを含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記電界発生システムは、電極間に電界を発生させるように動作可能にバイアスされた一対の電極を含んでいることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記電界発生システムは、更に、バイアスされた一対の電極に接続されたRF電源を含むことを特徴とする請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記一対のコイルが、リボン型イオンビームの幅方向に伸び、かつ前記コイルのいずれかの端部に質量分析システムの第1、第2の対向側面部分を形成し、前記一対の電極が、前記第1の対向側面部分に存在することを特徴とする請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
前記バイアスされた一対の電極の各々は、前記質量分析システムの外形にほぼ従う弓形状の導電性セグメントと、電気的に接続されかつ前記導電性セグメントに沿って連鎖した複数の導電性部材を含むことを特徴とする請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記電界発生システムは、弓形状の複数の導電性部材に接続されたRF電源を更に含み、これにより、前記弓形状の導電性セグメントの一方の上に配置された前記導電性部材と前記弓形状の導電性セグメントの他方の上に配置された前記導電性部材との間にそれぞれRF電界を発生させ、前記RF電界の方向が、前記ビームライン径路内の磁界にほぼ直交していることを特徴とする請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
複数の前記導電性部材は、更に、磁石を含み、該磁石の各々は、磁石の第1端部に関連したN極と、磁石の第2端部に関連したS極とを有することを特徴とする請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
前記導電性セグメントの一方に複数の磁石が配置され、前記N極とS極は、第1方向に配置され、前記磁石のS極は、前記導電性セグメントの他方の磁石に対して内側に面し、前記磁石のN極は、前記導電性セグメントの他方の磁石から離れた外側に配置されており、前記他方の導電性セグメントの磁石は、第2方向に配置され、前記磁石のS極は、前記一方の導電性セグメントの磁石に対して内側に面し、前記N極は、前記一方の導電性セグメントの磁石から離れた外側に配置されていることを特徴とする請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記導電性セグメントの一方に複数の磁石が配置され、前記N極とS極は、第1方向に配置され、前記磁石のS極は、前記導電性セグメントの他方の磁石に対して内側に面し、前記磁石のN極は、前記導電性セグメントの他方の磁石から離れた外側に配置されており、前記他方の導電性セグメントの磁石は、第2方向に配置され、前記磁石のS極は、前記一方の導電性セグメントの磁石に対して内側に面し、前記N極は、前記一方の導電性セグメントの磁石から離れた外側に配置されていることを特徴とする請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
前記複数の磁石は、前記質量分析システムの第1側面部分に沿ってマルチカプス磁界を発生させるために動作可能であり、前記マルチカプス磁界は、電界と相互作用して電子を区域内の領域に移動し、少なくともいくつかの移動する前記電子がガスをイオン化させるように動作し、これによりプラズマを発生させることを特徴とする請求項33に記載のシステム。
【請求項37】
前記第1側面部分上の弓形状の導電性セグメントに対向する質量分析システムの第2側面部分に、前記ビームライン経路に沿って伸びる複数の磁石をさらに含み、前記磁石の各々は、関連するN極とS極を有し、前記複数の磁石が、弓形状の導電性セグメント上の磁石に対してほぼ90°に向けられ、前記質量分析システムの第2側面部分に沿ってマルチカプス磁界を発生させるように動作可能であることを特徴とする請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
イオン注入システムにおいてプラズマを発生させる方法であって、
電界と、ある領域内に電界の一部分にほぼ直交する部分を有する磁界とを発生させ、前記領域内で電子を移動し、
前記領域内にガスを供給し、少なくともいくつかの移動する電子が一部の前記ガスと衝突させてガスをイオン化し、これにより、前記領域内にプラズマを発生させる、各工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項39】
前記ほぼ直交する電界及び磁界を発生させる工程は、前記イオン注入システム内のイオンビームの伝搬方向にほぼ直交する磁界を有する質量分析ガイド内に一対の電極を配置し、
前記電界の方向が質量分析システム内の磁界にほぼ直交するように、前記一対の電極が配置され、前記一対の電極にバイアスを印加してこれらの電極間に電界を発生させる、各ステップを含んでいることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ほぼ直交する電界及び磁界を発生させる工程は、2つの導電性の電気的に絶縁されたセグメントに沿って複数の導電性磁石部材を形作り、前記導電性磁石部材の各々は、この磁石部材に関連したN極とS極を有し、前記複数の磁石部材は、これらの間にマルチカプス磁界を発生させるように動作可能であり、
前記セグメントの一方の上に配置した前記複数の導電性磁石部材と、前記セグメントの他方の上に配置した前記複数の導電性磁石部材とにバイアスを印加し、これにより電界を発生させるステップを含んでいる特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記プラズマは、イオン注入システム内の質量分析システム内に発生し、前記質量分析システムは、弓形状通路に沿って伸びる第1、第2の対向側面を有する前記弓形状通路を含み、更に、2つの導電性の電気的に絶縁された前記セグメントは、互いに離れて第1側面に沿って伸びていることを特徴する請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記導電性セグメントの一方に関連した前記導電性磁石部材は、前記弓形状通路に沿って伸びるように形成され、前記導電性磁石部材の各S極は、前記弓形状筒路の中心部分から外側に離れて対面し、前記導電性磁石部材の各N極は、前記弓形状通路の中心部分に対して内側で対面することを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記導電性セグメントの他方に関連した前記導電性磁石部材は、前記弓形状通路に沿って伸びるように形成され、前記導電性磁石部材の各S極は、前記弓形状筒路の中心部分から外側に離れて対面し、前記導電性磁石部材の各N極は、前記弓形状通路の中心部分に対して内側で対面することを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
電界を発生させるステップは、組み合わされた一対の電極を前記イオン注入システムのビーム径路に沿って形成し、
前記一対の電極をこれらの電極間に電界を発生するように前記電極にバイアスを印加することを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記組み合わされた一対の電極は、質量分析システム内に配置され、前記一対の電極は、この電極間で伝搬するイオンビームを偏向させるのに使用する前記質量分析システム内に磁界を発生させるように形成されることを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記質量分析システムは、第1、第2対向側面を有する弓形状通路を含み、前記組み合わされた一対の電極は、前記第1、第2対向側面の一方に配置されていることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ガスを供給するステップは、前記領域内に残留ガスを使用することを含んでいることを特徴とする請求項38に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2007−524962(P2007−524962A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517429(P2006−517429)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/019588
【国際公開番号】WO2004/114358
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(500266634)アクセリス テクノロジーズ インコーポレーテッド (101)
【Fターム(参考)】