イオン注入分布発生方法及びシミュレーション装置
【課題】 イオン注入分布発生方法及びシミュレーション装置に関し、テール関数におけるイオン注入分布のテールの拡がりを表すパラメータLの比例係数ξLに物理的意味を持たせる。
【解決手段】 非晶質層中のイオン分布から抽出したモーメントパラメータ、イオンの飛程の注入方向の射影を表すパラメータRp、分布の標準偏差ΔRp、注入イオン分布の左右非対称性を表すパラメータγ、注入イオン分布のピークの鋭さを表すパラメータβを前記テール関数のRp、ΔRp、γ、βとして用い、xを基板の深さ方向、Φを注入するイオンのドーズ量、Φchanをチャネルドーズ量、na(x)を非晶質パートの分布関数、nc(x)をチャンネリングパートの分布関数として下記の式で表されるテール関数N(x)からイオン注入分布を発生させる際に、イオン注入分布のテールの広がりを表すパラメータLの比例係数ξLをイオンの散乱角θavとの関係で定義する。
N(x)=(Φ−Φchan)na(x)+Φchannc(x)
【解決手段】 非晶質層中のイオン分布から抽出したモーメントパラメータ、イオンの飛程の注入方向の射影を表すパラメータRp、分布の標準偏差ΔRp、注入イオン分布の左右非対称性を表すパラメータγ、注入イオン分布のピークの鋭さを表すパラメータβを前記テール関数のRp、ΔRp、γ、βとして用い、xを基板の深さ方向、Φを注入するイオンのドーズ量、Φchanをチャネルドーズ量、na(x)を非晶質パートの分布関数、nc(x)をチャンネリングパートの分布関数として下記の式で表されるテール関数N(x)からイオン注入分布を発生させる際に、イオン注入分布のテールの広がりを表すパラメータLの比例係数ξLをイオンの散乱角θavとの関係で定義する。
N(x)=(Φ−Φchan)na(x)+Φchannc(x)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン注入分布発生方法及びシミュレーション装置に関するものであり、例えば、本発明者が提案しているテール関数を用いてイオン注入分布を発生させる場合のテールの拡がりを表すパラメータLの比例係数ξLに物理的意味を持たせるための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、シリコン集積回路装置における不純物導入手段としては、イオン注入法が一般的である。イオン注入においては、注入後のイオン分布が重要であるため、さまざまなイオン注入条件に対応して分布を発生させるためにイオン注入データベースが構築されている。
【0003】
このようなイオン注入により注入された不純物の分布は、SIMS(二次イオン質量分析器)により求めることができるが、広範な各種のイオン注入条件によるイオン注入分布をSIMSにより実測することは現実的ではない。
【0004】
そこで、基板へ注入されたイオンの挙動を理論的に予測することが行われており、Monte Carlo法やLSS(Lindhart,Scharff,Schiott)理論が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
例えば、Monte Carlo法は、非晶質層へのイオン注入分布を理論的に予想する手段であり、入射イオンと基板との相互作用を(核阻止能、電子阻止能)の物理に基づいて、入射イオンの軌跡を追跡していくものである。この理論は任意のイオンを任意の基板にイオン注入した場合の一般的な場合にも有効である。
【0006】
また、同じ物理に基づいてイオンの従うべき積分方程式を提供するのがLSS理論である。この理論では、粒子の軌跡を追跡することなしに注入条件が決まれば即座に分布モーメントのエネルギー依存性までが即座に計算できるという特長がある。このLSS理論では、積分方程式を解く際に近似が必要で、これまでに提案されているモデルではイオンの飛程の注入方向の射影Rpは問題ないが、分布の標準偏差であるΔRpは格段に精度が落ちるか、計算できないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明者等は、データベースを構築する際に用いる関数として、従来のdual Peason関数からテール関数を提案した。このテール関数を用いることにより、現在標準的に用いられているPeason分布のパラメータを初めて解析的に求め、より少ないパラメータでユニークなパラメータセットが可能になった(例えば、特許文献1或いは非特許文献2参照)。
【0008】
しかし、LSIプロセスで実際に利用されるのは非晶質基板ではなくて結晶基板である。したがって、結晶基板中の分布を理論的に予想する際には、イオン注入に伴って導入される欠陥、およびその蓄積、その蓄積された欠陥とチャンネリングとの関連等解決されていない問題が多数存在する。
【0009】
一方、近年、Siより高移動度を有するSi1-xGexにより、MOSFET、特に、pチャネル型MOSFETを構成することが試みられている。
【特許文献1】特開2002−118073号公報
【非特許文献1】J.Lindhart,M.Scharff,H.Schiott,Mat.Fts.Medd.Dan.Vid.Sclsk,vol.33,pp.1−39,1963
【非特許文献2】K.Suzuki and R.Sudo,Solid−State Electronics,Vol.44,pp.2253,2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、いままでは、Si或いはGeについては豊富なデータベースが構築されているが、Si1-xGexについては、具体的なシミュレーション手法やデータベースが充分に開発されていないという問題がある。
【0011】
また、Si或いはGeについてのシミュレーション手法をSi1-xGexにそのまま適用するとしても、従来の提案されているシミュレーションに用いられているいくつかのモデルが経験的に扱われており、物理的意味が乏しいものがいくつかあるという問題がある。
【0012】
イオン注入分布のテールの拡がりを表すパラメータLはRmaxをイオンの最大飛程、Rpをイオンの射影とすると、(Rmax−Rp)に比例するとしてほぼ成功しているが、その比例係数ξLに物理的意味が乏しいという問題がある。さらに、この比例係数ξLがいかなるパラメータ依存性を有するかが不明であるという問題がある。
【0013】
したがって、本発明は、テール関数におけるイオン注入分布のテールの拡がりを表すパラメータLの比例係数ξLに物理的意味を持たせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一観点からは、xを基板の深さ方向、Φを注入するイオンのドーズ量、Φchanをチャネルドーズ量、na(x)を非晶質パートの分布関数、nc(x)をチャンネリングパートの分布関数とすると、下記の式(1)で表されるテール関数N(x)からイオン注入分布を発生させる際に、非晶質層中のイオン分布から抽出したイオンの飛程の注入方向の射影を表すパラメータRp、分布の標準偏差ΔRp、注入イオン分布の左右非対称性を表すパラメータγ、注入イオン分布のピークの鋭さを表すパラメータβを前記テール関数のRp、ΔRp、γ、βとして用いるとともに、
Rmaxをイオンの最大飛程とした場合に、L=ξL(Rmax−Rp)で定義されるイオン注入分布のテールの広がりを表すパラメータLにおける比例係数ξLを、A,rsを係数、M1をイオンの質量数、M2を基板を構成する原子の質量数、Eをイオンのエネルギー、E1を電子阻止能と核阻止能とが等しくなるエネルギーとして、下記の式(2)としたイオン注入分布発生方法が提供される。
N(x)=(Φ−Φchan)na(x)+Φchannc(x) ・・・(1)
但し、na(x)及びnc(x)は、hma(x),hmc(x)を前記の同じモーメントパラメータRp、ΔRp、γ、βを持つピアソン関数、xT=Rp+ΔRp、κを比例係数とした場合に、
na(x)=hma(x)
nc(x)=hmc(x):x<xT
nc(x)=κ〔hmc(x)+hTC(x)〕:x>xT
で表され、且つ、ピーク濃度位置をxpc、aをイオン注入分布のテールの広がりの形状を表すパラメータ、ηを係数とすると、
hTC(x)=hmc(xpc)exp{−(lnη)〔(x−xpc)/L〕a }
【数1】
【0015】
また、別の観点からは、上述のイオン注入分布発生方法に関する計算式に基づく計算を実行するシミュレーション装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
開示のイオン注入分布発生方法及びシミュレーション装置によれば、テール関数におけるイオン注入分布のテールの拡がりを表すパラメータLの比例係数ξLをイオンの散乱角度θavと関連付けることができる。それによって、比例係数ξLが物理的意味を持つことになるので多くの実験データの統一的説明が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ここで、図1乃至図15を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図1は、イオンの注入に伴う衝突現象の概念的説明図である。
図に示すように、質量数M1のイオンは、基板中を基板を構成する質量数M2の原子の原子核及び電子と相互作用しながらx方向に進んで行く。この時、基板を構成する質量数M2の原子も相互作用により影響を受け、これが、基板の受けるダメージとなる。
【0018】
図2は、イオン注入における各パラメータの説明図であり、質量数M1のイオンが、質量数M2の元素で構成される基板に注入された状態を示している。イオンは、基板中を基板を構成する原子の原子核及び電子と相互作用しながらx方向に進んで行き、イオンが進んだ軌跡の線積分を飛程Rとした場合、その注入方向の射影をRp、横方向の広がりをRTとすると、図から明らかなように、
RT2 =(Δy)2 +(Δz)2 ・・・(4)
となる。
【0019】
そこで、イオンの横方向の広がりΔRptを、
ΔRpt=(RT2 /2)1/2 ・・・(5)
で定義する。また、分布の標準偏差をΔRpとし、イオンの飛程の最大射影をRmaxと定義する。
【0020】
図3は、注入されたイオンの1次元分布の模式的説明図であり、ここでは、本発明者が提案しているテール関数との関係で説明する。注入されたイオンは射影Rpにピークを有するとともに、イオン注入分布のテールの広がりを表すパラメータLだけ、裾をひいた分布になる。なお、1016cm-3程度がSIMSのバックグランウンドノイズである。
【0021】
この図3を基にして本発明者が提案している高位の階層のテール関数N(x)を説明する。
N(x)は、xを基板の深さ方向、Φを注入するイオンのドーズ量、Φchanをチャネルドーズ量、na(x)を非晶質パートの分布関数、nc(x)をチャンネリングパートの分布関数とすると、
N(x)=(Φ−Φchan)na(x)+Φchannc(x) ・・・(6)
で表される。
【0022】
但し、na(x)及びnc(x)は、hma(x),hmc(x)をイオンの飛程の注入方向の射影を表すパラメータRp、分布の標準偏差ΔRp、注入イオン分布の左右非対称性を表すパラメータγ、注入イオン分布のピークの鋭さを表すパラメータβを持つピアソン関数、xT=Rp+ΔRp、κをx=xTにおける式の連続性を保証するための係数とした場合に、
na(x)=hma(x) ・・・(7)
nc(x)=hmc(x):x<xT ・・・(81)
nc(x)=κ〔hmc(x)+hTC(x)〕:x>xT ・・・(82)
で表され、且つ、ピーク濃度位置をxpc、Lをイオン注入分布のテールの広がりを表すパラメータ、αをテールの広がりの形状を表すパラメータ、ηを係数とすると、低位の階層のテール関数hTC(x)は、
hTC(x)=hmc(xpc)exp{−(lnη)〔(x−xpc)/L〕a }・・(9)
で表される。なお、hTC(x)においては、イオン注入分布のテールの広がりの形状を表すパラメータαを便宜上aで表記する。したがって、提案に係るテール関数N(x)は、2つのPeason関数の和で表される。
【0023】
本発明の実施の形態においては、メインパートを表す分布関数na(x)を規定するモーメントパラメータRp、ΔRp、γ、βとして、非晶質層におけるモーメントパラメータRp、ΔRp、γ、βをそのまま採用する。また、hTC(x)における係数ηとしては、ここでは、η=1000とする。
【0024】
この場合の非晶質層におけるモーメントパラメータRp、ΔRp、γ、βとしては、実測による値でも良いが、ここでは、拡張LSS理論(必要ならば、特願2008−069509参照)から求めたRp、ΔRp、γ、βを用いる。なお、LSS理論は、粒子の軌跡を追跡することなしに注入条件が決まれば即座に分布モーメントのエネルギー依存性までが即座に計算できるという利点がある。
【0025】
このように定めたパラメータRp、ΔRp、γ、βを用いた上で、テール関数の結晶と関連するパラメータL、α、ΦchanをSIMSによる実測値をフィッティングすることによって抽出して任意性の非常に少ないユニークなデータベースを構築する。
【0026】
なお、電子阻止能Seは、リントハルトのモデルにおける電子阻止能Seを用いても良いし、或いは、ベーテの電子阻止能と組み合わせた改良電子能を用いても良い。なお、ここでは、下記の式(10)で表されるリントハルトのモデルにおける電子阻止能Se(例えば、非特許文献1参照)を用いる。
【数2】
なお、式(10)におけるZ1,Z2はそれぞれ入射イオンの質量数、基板構成原子の質量数である。また、係数reはフィッティングパラメータである。
【0027】
この電子阻止能SeをSi1-xGexに適用する場合には、下記の式(11)のように、組成比xに対応した比率でZ2をSiとGeに分割してその和で表す。
【数3】
なお、式(11)におけるフィッティングパラメータreとして、各入射イオン種毎に図4に示したSi及びGeについての数値を用い、Si1-xGexに対して特別の値を用いるものではい。
【0028】
また、核阻止能Sn、2次のエネルギー擾乱係数Ωn2 及び3次のエネルギー擾乱係数Λn2 は、上述の拡張LSS理論で用いた下記の式(12)乃至式(14)で表されるSn、Ωn2 及びΛn2 をSi1-xGexに対しても拡張して適用する。なお、式(12)乃至式(14)における係数μは、μ=M2/M1である。
【数4】
【0029】
次に、基板の単位セルの原子濃度Nは、基板の原子密度をρとし、Navoをアボガドロ定数、MSi及びMGeをそれぞれSiの質量数及びGeの質量数とすると、下記の式(15)で表される。
【数5】
【0030】
この場合、組成比xのSi1-xGexの格子定数aは、
a=0.002733x2 +0.01992x+0.5431〔nm〕・・・(16)
で与えられる。また、ダイヤモンド結晶構造のSi1-xGexは組成比xの如何に係わらず、単位格子当たり8個の原子が属するので、基板の原子密度をρは下記の式(17)で表される。
【数6】
なお、図5は、基板の原子密度ρの組成比x依存性を図示したものである。
【0031】
次に、イオン注入分布のテールの広がりを表すパラメータL、即ち、チャンネリングテール長について検討する。上記の図3に示すように、基板の一番奥まで到達するイオンは核と相互作用しないで電子とのみ相互作用したものと考えられる。即ち、イオンの到達する深さRmaxは、Nをイオンのドーズ量、Se(E)を電子阻止能、Eを注入エネルギーとすると、下記の式(18)で表現される。
【数7】
【0032】
また、同じく図3に示すように、Lはイオンの飛程の注入方向の射影Rpを基準にした場合のチャンネリング長であるから、ξLを比例定数とし、
L=ξL(Rmax−Rp) ・・・(19)
と表現することを本発明者は既に提案している(必要ならば、特願2008−059070参照)。
【0033】
この式(19)においては、チャンネリングしているイオンは非晶質中での電子相互作用の場合よりも平均的に原子核から遠いこと、つまり、この場合の電子阻止能は非晶質層に対して有効なものと異なること、Lは物理的に厳密に定義されたものでなく定性的にチャンネリング長を表していることが比例定数ξLで経験的に表現されている。
【0034】
ここで、LをSIMSデータから求め、一方、Rmax及びRpについては上述の拡張LSS理論から求め、求めたL,Rmax,Rpを上記式(19)に代入することによって比例係数ξLを評価する。
【0035】
図6はξLの評価結果を示した図であり、ここでは、B、P、Asの3種類のイオンをSi基板に注入した場合のSIMSによる実測値とテール関数をフィッティングして求めた注入エネルギー依存性を示している。図6から明らかなように、イオンの種類により注入エネルギー依存性が異なっており、20keV〜80keVの範囲ではξL=0.5〜1.5となっている。また、各イオンにおいて、比例係数ξLはエネルギーの増大とともに漸増している。
【0036】
そこで、イオンの種類によらずユニバーサルな注入エネルギー依存性が得られるように、各イオン種について注入エネルギーEを核阻止能Snと電子阻止能Seの一致するエネルギーE1で規格化することを試みた。図7は、核阻止能Snと電子阻止能Seの模式的説明図であり、核阻止能Snと電子阻止能Seの一致するエネルギーE1が存在するがイオン種によってその値は異なることになる。
【0037】
図8は、比例定数ξLの規格化注入エネルギー(E/E1)依存性の説明図であり、ほぼ不純物に関して依存性が明瞭になり、ほぼユニバーサルな依存性になっている。この場合、ばらつきはあるが、E/E1が1より小さい場合にはξLは1より小さく、E/E1が1より大きい場合にはξL も1より大きくなっている。
【0038】
但し、図8から明らかなように、イオン種毎に依存性が若干異なっており、イオンの質量が小さくなるにつれて比例定数ξLは小さくなっている。一方、Siに対する比例定数ξLとGeに対する比例定数ξLの乖離は、イオンの質量が大きくなるにつれて大きくなっている。さらに細かくみると、基板がGeの場合はSiの場合に比べて比例定数ξLは常に下側にある。つまり、弱い基板依存性があるように見える。
【0039】
この依存性の物理的な意味についてさらに検討する。まず、イオンがチャンネリングする前に大きく散乱された場合には、チャンネリング経路はイオンの入射方向と異なる。したがって、パラメータLはイオンの入射方向に投影された長さであるので、その比例係数ξLは小さくなる。
【0040】
そこで、飛程Rと飛程の射影Rpとの関係として、下記の式(20)を導入する。
【数8】
なお、式(20)における係数rsは、ある一定エネルギー領域におけるSn/(Se+Sn)の平均値であり、係数rsは0〜1の範囲となる。
【0041】
ここで、上記の図1における散乱の結果としての飛程Rと飛程の射影Rpとの関係を考慮して、平均散乱角θavを下記の式(21)で定義する。
【数9】
なお、この平均散乱角θavは厳密にはエネルギー依存性を有しているが、ここでは簡略化のために無視する。
【0042】
また、上記の式(21)において、基板の原子の質量数M2として、組成比xのSi1-xGexに対しては、
M2=28.09(1−x)+72.61x ・・・(22)
を用いる。
【0043】
一方、チャンネリングするイオンの電子阻止能が基板の平均的電子阻止能より小さくなると、比例係数ξLは大きくなる。また、低入射エネルギーにおいて核阻止能が優勢になった場合には、核との相互作用が不可避となり、比例係数ξLは小さくなる。このような特性が上述の比例係数ξLのエネルギー依存性を説明する物理的な意味合いである。
【0044】
上記の本発明者による拡張LSS理論においては、このような比例係数ξLのエネルギー依存性を下記の式(23)で半経験的に表現していた。
ξL=λ(Z2)In(1000E/E1):E/E1≧1/1000 ・・(231)
ξL=0 :E/E1<1/1000 ・・(232)
但し、λ(Z2)は基板依存性を示す係数であり、Si基板及びGe基板の場合には、それぞれ、
λ(Z2=14:Si)=0.1485 ・・・(24)
λ(Z2=32:Ge)=0.1080 ・・・(25)
である。
【0045】
ここで、比例係数ξLにより正確で且つ物理的な意味合いを持たせるために、上記の平均散乱角θavを利用して、下記の式(26)で表す。
【数10】
なお、式(26)におけるパラメータAは定数である。
【0046】
この式(26)から分かることは、基板の構成原子の質量数M2が大きくなるほど、且つ、入射イオンの質量数M1が小さくなるほど、比例係数ξLは小さくなる。このことは、基板の構成原子の質量数M2が大きくなるほど、且つ、入射イオンの質量数M1が小さくなるほどイオンが大きく散乱されて飛程の射影Rpが小さくなるという物理現象を表現していることになる。
【0047】
図9及び図10は、それぞれBイオン及びAsイオンをSi基板及びGe基板に注入した場合の50個のイオンの軌跡をモンテカルロ法により求めてプロットしたものである。
図9から明らかなように、Ge基板中のBイオンの軌跡はSi基板中のBイオンの軌跡と同等かそれ以上の長さである。
【0048】
しかし、Ge基板中のBイオンの軌跡は多数回の散乱を繰り返して高角度で屈曲しており、散乱角θavが大きいことに対応する。その結果、軌跡の最終点、即ち、Ge基板におけるBイオンの注入深さは、Si基板における注入深さより浅くなる。
【0049】
一方、図10から明らかなように、Ge基板中のAsイオンの軌跡はSi基板中のAsイオンの軌跡より短くなっており、したがって、何方の基板においては散乱角θavは小さくなることがわかる。したがって、比例係数ξLの基板の構成原子の質量数M2依存性は、質量数M1がAsより相対的に小さなBの場合に顕著になる。
【0050】
上述の図8は、式(26)におけるパラメータrs及びAを、それぞれrs=0.2,A=0.18とした場合の比例定数ξLの規格化注入エネルギー依存性の説明図であり、質量数M1の小さなBの場合に、質量数M2依存性が大きくなることが表されている。
【0051】
次に、イオン注入分布のテールの広がりの形状を表すパラメータαについて検討する。
図11はパラメータαの注入エネルギー依存性の説明図であり、ここでは、B、P、Asの3種類のイオンをSi基板に注入した場合のSIMSによる実測値とテール関数をフィッティングして求めた注入エネルギー依存性を示している。図から明らかなように、イオンの種類により注入エネルギー依存性が異なっている。
【0052】
そこで、ここでもイオンの種類及び基板の種類によらずユニバーサルな注入エネルギー依存性が得られるように、各イオン種について注入エネルギーEを核阻止能Snと電子阻止能Seの一致するエネルギーE1で規格化することを試みた。
【0053】
図12は、パラメータαの規格化注入エネルギー(E/E1)依存性の説明図であり、Pの場合にはばらつきが見られるものの、この場合もE/E1は現象を区切るいい尺度になっている。即ち、E/E1が1よりも小さければα=1となり、E/E1が1よりも大きければα=2となっている。
【0054】
そこで、図12に示すパラメータαの規格化注入エネルギー(E/E1)依存性は、αがE/E1=1を境にして急激に変動するので、
α(E)=1+1/{1+(E1/E)4 } ・・・(27)
で経験的に表現される。
【0055】
次に、チャネルドーズ量Φchanについて検討する。図13乃至図15は、それぞれB,P,AsをSi基板に注入した場合のチャネルドーズ量Φchanのドーズ量依存性の説明図である。なお、いずれの場合も注入エネルギーを20keV、40keV、80keV、160keVとした場合のSIMSによる実測値を示している。
【0056】
この場合、ドーズ量Φが増大するに連れてΦchanが比例して増大し、あるドーズ量においてチャネルドーズ量Φchanは飽和する傾向が見られる。このドーズ量依存性に入射エネルギーの影響はほとんど見られない。
【0057】
この特徴を考察すると、チャネルドーズ量Φchanはイオン注入に伴うダメージの蓄積と関連すると考えられる。ドーズ量Φが小さい場合は各イオンの形成するダメージ領域は独立と考えることができるため、イオンの軌跡はダメージの蓄積に依存しない。したがって、チャネルドーズ量Φchanはドーズ量Φに比例すると考えられる。しかし、更にドーズΦを上げていくとダメージ領域は重なり、ついには面全体を覆い、その結果、チャネルドーズ量Φchanは高ドーズ量において飽和することになる。
【0058】
そこで、Φchanのドーズ量Φ依存性をユニバーサルな関係として表すと、
Φchan=rchanΦ :rchanΦ<Φchansat ・・・(281)
Φchan=Φchansat :rchanΦ>Φchansat ・・・(282)
と表現する。なお、rchanは簡略化して表現する場合には1とする。
【0059】
なお、図13乃至図15から明らかなように、飽和の状態が各イオン種毎或いは基板毎にばらついている。そこで、イオンの種類及び基板の種類によらずユニバーサルな注入エネルギー依存性が得られるように、各イオンの質量M1を基板を構成する原子の質量M2で規格化して、下記の式(29)で表現した。
Φchansat=3.3×1013(M1 /M2)-1.06 cm-2 ・・・(29)
【0060】
本発明の実施の形態においては、上記の関係式をシミュレーション装置に組み込んで所定の注入エネルギー毎に各種のパラメータL、α、ΦchanをSIMSデータとのフィッティングにより得る。得たパラメータL、α、Φchanをこの関係式に用いたパラメータRp、ΔRp、γ、βと組み合わせてセットにしたデータベースを構築し、構築したデータベースはシミュレーション装置内に格納する。このデータベースの基にして、各種のイオン種、基板、注入エネルギーに対するイオン分布を発生させる。
【0061】
また、LSS理論においてはイオンの横方向の広がりΔRptを合わせて求めることができるので、ΔRpt(x)を下記の式(30)で表し、ΔRpt0をデータベースのセットに加えておくことにより、2次元のイオン分布を発生させることができる。
【数11】
但し、式(30)におけるmはΔRptの勾配であり、また、ΔRpt0=ΔRpt(Rp)である。
【0062】
また、データベース化していないイオン種、基板種や注入エネルギーに対しては、その内挿および外挿で対応することが可能になる。
【0063】
このように、本発明の実施の形態においては、注入イオン分布のテールの拡がりを表すパラメータLの比例係数ξLを散乱角θavと関連付けることにより、パラメータLに物理的意味合いを持たせることができる。
【0064】
また、比例係数ξLが物理的意味を持つことにより多くの実験データの統一的説明が可能になるとともに、SIMSデータとの一致精度を向上することができる。なお、他のパラメータα、Φchanについては、係数の値を除いては先に提案したパラメータα、Φchanと基本的に同様である。
【実施例1】
【0065】
以上を前提として、次に、図16乃至図33を参照して本発明の実施例1のイオン注入分布発生方法を説明する。ここでは、SIMSによる実測のための基板として、Si基板に厚さが、300nmのSi1-xGex層を減圧化学気相成長法(LPCVD法)により成長させた基板を用意する。この基板に対してB,P,Asをチルト角を7°とし、回転角を0°とした条件で、色々な注入エネルギーでイオン注入する。
【0066】
この場合のSi1-xGex層のGe組成比xはラザフォード後方散乱(RBS)法によって評価した。図16はRBS法による測定結果の説明図であり、測定データとシミュレーション結果とを比較することによって実施例に使用するSi1-xGex層のGe組成比xをそれぞれ0.16、0.25、0.35と同定した。以下の各図においては説明を図を見やすくするために、x=0.16とx=0.35のデータのみを表示する。
【0067】
なお、検出されたHeイオンは高エネルギーであるほど表面に近い位置の原子による散乱であるため、図16における矢印で示すSiの位置はSi基板とSi1-xGex層との界面位置である。また、矢印で示すGeの位置はSi1-xGex層の表面のGeとの衝突によって散乱されたHeイオンに対応する。
【0068】
また、SIMSによるイオン分布の測定に際しては、一次イオンとしてCs+ を用い、測定対象がAsの場合には照射エネルギーを1keVとし、入射角を0°として、二次イオンとしてAs+ を検出することによりイオン分布を求める。また、測定対象がPの場合には照射エネルギーを1keVとし、入射角を45°として、二次イオンとしてP+ を検出し、測定対象がBの場合には照射エネルギーを1keVとし、入射角を20°として、二次イオンとしてB+ を検出する。
【0069】
図17乃至図19は、それぞれB,P及びAsをSi基板及びGe基板に注入した場合のイオン注入分布図であり、ここでは、シミュレーション値をSIMSによる実測値と比較している。各図の(a)はイオンを20keVの注入エネルギーで1×1013cm-2注入した場合であり、各図の(b)はイオンを20keVの注入エネルギーで1×1015cm-2注入した場合である。なお、SIMSデータにおけるバックグラウンドノイズは1016cm-3乃至1017cm-3である。
【0070】
各図において、イオン注入分布のピーク位置、即ち、Rpは組成比xの増加に伴って浅くなっている。また、チャネリングテールはドーズ量が1×1013cm-2の場合には組成比xの増加に伴って若干抑え込まれている。一方、ドーズ量が1×1015cm-2の場合には組成比x依存性は曖昧になっているが、これはSIMSの分解能によるものと考えられる。
【0071】
図20乃至図22は、それぞれB,P及びAsの電子阻止能Se及び核阻止能Snのエネルギー依存性の説明図である。図20に示すように、Bの場合には、核阻止能Snは低エネルギー領域においては組成比xの増加とともに増加し、高エネルギー領域においては逆の関係になっている。20keVにおける核阻止能Snは組成比xの増加とともに若干増加しているが増加の程度は僅かである。
【0072】
一方、電子阻止能Seは常に組成比xの増加とともに減少している。20keVにおいては電子阻止能Seの方が優勢であるので、全阻止能は全てのエネルギー領域において常に組成比xの増加とともに減少する。したがって、上記の図17におけるRpが組成比xの増加に伴って浅くなる理由を阻止能の観点からはうまく説明できない。
【0073】
また、図21に示すように、Pの場合には、核阻止能Sn及び電子阻止能Seともに20keVにおいて各組成比xについてほぼ同じである。したがって、この場合も、上記の図18におけるRpが組成比xの増加に伴って浅くなる理由を阻止能の観点からはうまく説明できない。
【0074】
また、図22に示すように、Asの場合には、核阻止能Sn及び電子阻止能Seともに組成比xの増加に伴って大きくなっており、この場合は、上記の図19におけるRpが組成比xの増加に伴って浅くなる事象と対応している。
【0075】
図23乃至図25は、それぞれB,P及びAsの飛程R、射影Rp、横方向の拡がりΔRptのエネルギー依存性の説明図である。なお、ここでは、擬似結晶LSS(QCLSS)で評価した値を示している。
【0076】
この場合、飛程Rは全阻止能の傾向と対応している。即ち、図23と図20との対比から明らかなように、Bの場合には、全阻止能が組成比xの増加とともに減少するので、飛程Rは逆に組成比xの増加とともに大きくなる。また、Pの場合も飛程Rは逆に組成比xの増加とともに大きくなる。一方、Asの場合には、図25と図22との対比から明らかなように、全阻止能が組成比xの増加とともに大きくなるので、飛程Rは逆に組成比xの増加とともに小さくなる。
【0077】
また、B或いはPの場合、横方向の拡がりΔRptは組成比xの増加とともに大きくなっているが、これは、上記の式(26)からも明らかなように、質量数が相対的に小さなB或いはPの場合に、散乱角θavが組成比xの増加とともに大きくなることに対応する。
【0078】
図26及び図27はBイオンのイオン注入分布図であり、それぞれSi基板及びGe基板に20keV、40keV、80keVの注入エネルギーで、1×1015cm-2のドーズ量の Bイオンを注入した場合のイオン注入分布図である。ここでは、上記の式(27)に示したΦchansatを用いてシミュレーションした結果を示しており、SIMSの実測データとの間の良好な一致が見られる。
【0079】
図28乃至図33は、上述のようにして構築したデータベースの一例であり、ここでは、B,P,Asを、Si、Si0.9Ge0.1、Si0.8Ge0.2、Si0.6Ge0.4、Si0.2Ge0.8、Geに注入した場合のパラメータRp,ΔRp ,γ,β,L,α,ΔRpt0,mのセットとして示している。
【0080】
このような、データベースを構築することによって、シリコン集積回路装置を設計する場合のイオン注入条件を安定して設定することができるようになる。また、以上の機能をプログラムとしてシミュレーション装置に搭載することによって、幅広い注入条件におけるイオン注入分布を簡単に求めることができるシミュレーション装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】イオンの注入に伴う衝突現象の概念的説明図である。
【図2】イオン注入における各パラメータの説明図である。
【図3】注入されたイオンの1次元分布の模式的説明図である。
【図4】reの設定値の説明図である。
【図5】Si1-xGex層の原子密度ρの組成比x依存性の説明図である。
【図6】ξLの評価結果の説明図である。
【図7】核阻止能Snと電子阻止能Seの模式的説明図である。
【図8】比例定数ξLの注入エネルギー依存性の説明図である。
【図9】BイオンをSi基板及びGe基板に注入した場合のイオンの軌跡の説明図である。
【図10】AsイオンをSi基板及びGe基板に注入した場合のイオンの軌跡の説明図である。
【図11】パラメータαの注入エネルギー依存性の説明図である。
【図12】パラメータαの規格化注入エネルギー(E/E1)依存性の説明図である。
【図13】BをSi基板に注入した場合のチャネルドーズ量Φchanのドーズ量依存性の説明図である。
【図14】PをSi基板に注入した場合のチャネルドーズ量Φchanのドーズ量依存性の説明図である。
【図15】AsをSi基板に注入した場合のチャネルドーズ量Φchanのドーズ量依存性の説明図である。
【図16】RBS法による測定結果の説明図である。
【図17】BをSi基板及びGe基板に注入した場合のイオン注入分布図である。
【図18】PをSi基板及びGe基板に注入した場合のイオン注入分布図である。
【図19】AsをSi基板及びGe基板に注入した場合のイオン注入分布図である。
【図20】Bの電子阻止能SSe及び核阻止能Snのエネルギー依存性の説明図である。
【図21】Pの電子阻止能Se及び核阻止能Snのエネルギー依存性の説明図である。
【図22】Asの電子阻止能Se及び核阻止能Snのエネルギー依存性の説明図である。
【図23】Bの飛程R、射影Rp、横方向の拡がりΔRptのエネルギー依存性の説明図である。
【図24】Pの飛程R、射影Rp、横方向の拡がりΔRptのエネルギー依存性の説明図である。
【図25】Asの飛程R、射影Rp、横方向の拡がりΔRptのエネルギー依存性の説明図である。
【図26】BをSi基板に注入した場合のイオン注入分布図である。
【図27】BをGe基板に注入した場合のイオン注入分布図である。
【図28】本発明のイオン注入分布発生方法により構築したBをSi、Si0.9Ge0.1、Si0.8Ge0.2に注入する場合の各パラメータを示すデータベースの構成例である。
【図29】本発明のイオン注入分布発生方法により構築したBをSi0.6Ge0.4、Si0.2Ge0.8、Geに注入する場合の各パラメータを示すデータベースの構成例である。
【図30】本発明のイオン注入分布発生方法により構築したPをSi、Si0.9Ge0.1、Si0.8Ge0.2に注入する場合の各パラメータを示すデータベースの構成例である。
【図31】本発明のイオン注入分布発生方法により構築したPをSi0.6Ge0.4、Si0.2Ge0.8、Geに注入する場合の各パラメータを示すデータベースの構成例である。
【図32】本発明のイオン注入分布発生方法により構築したAsをSi、Si0.9Ge0.1、Si0.8Ge0.2に注入する場合の各パラメータを示すデータベースの構成例である。
【図33】本発明のイオン注入分布発生方法により構築したAsをSi0.6Ge0.4、Si0.2Ge0.8、Geに注入する場合の各パラメータを示すデータベースの構成例である。
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン注入分布発生方法及びシミュレーション装置に関するものであり、例えば、本発明者が提案しているテール関数を用いてイオン注入分布を発生させる場合のテールの拡がりを表すパラメータLの比例係数ξLに物理的意味を持たせるための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、シリコン集積回路装置における不純物導入手段としては、イオン注入法が一般的である。イオン注入においては、注入後のイオン分布が重要であるため、さまざまなイオン注入条件に対応して分布を発生させるためにイオン注入データベースが構築されている。
【0003】
このようなイオン注入により注入された不純物の分布は、SIMS(二次イオン質量分析器)により求めることができるが、広範な各種のイオン注入条件によるイオン注入分布をSIMSにより実測することは現実的ではない。
【0004】
そこで、基板へ注入されたイオンの挙動を理論的に予測することが行われており、Monte Carlo法やLSS(Lindhart,Scharff,Schiott)理論が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
例えば、Monte Carlo法は、非晶質層へのイオン注入分布を理論的に予想する手段であり、入射イオンと基板との相互作用を(核阻止能、電子阻止能)の物理に基づいて、入射イオンの軌跡を追跡していくものである。この理論は任意のイオンを任意の基板にイオン注入した場合の一般的な場合にも有効である。
【0006】
また、同じ物理に基づいてイオンの従うべき積分方程式を提供するのがLSS理論である。この理論では、粒子の軌跡を追跡することなしに注入条件が決まれば即座に分布モーメントのエネルギー依存性までが即座に計算できるという特長がある。このLSS理論では、積分方程式を解く際に近似が必要で、これまでに提案されているモデルではイオンの飛程の注入方向の射影Rpは問題ないが、分布の標準偏差であるΔRpは格段に精度が落ちるか、計算できないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明者等は、データベースを構築する際に用いる関数として、従来のdual Peason関数からテール関数を提案した。このテール関数を用いることにより、現在標準的に用いられているPeason分布のパラメータを初めて解析的に求め、より少ないパラメータでユニークなパラメータセットが可能になった(例えば、特許文献1或いは非特許文献2参照)。
【0008】
しかし、LSIプロセスで実際に利用されるのは非晶質基板ではなくて結晶基板である。したがって、結晶基板中の分布を理論的に予想する際には、イオン注入に伴って導入される欠陥、およびその蓄積、その蓄積された欠陥とチャンネリングとの関連等解決されていない問題が多数存在する。
【0009】
一方、近年、Siより高移動度を有するSi1-xGexにより、MOSFET、特に、pチャネル型MOSFETを構成することが試みられている。
【特許文献1】特開2002−118073号公報
【非特許文献1】J.Lindhart,M.Scharff,H.Schiott,Mat.Fts.Medd.Dan.Vid.Sclsk,vol.33,pp.1−39,1963
【非特許文献2】K.Suzuki and R.Sudo,Solid−State Electronics,Vol.44,pp.2253,2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、いままでは、Si或いはGeについては豊富なデータベースが構築されているが、Si1-xGexについては、具体的なシミュレーション手法やデータベースが充分に開発されていないという問題がある。
【0011】
また、Si或いはGeについてのシミュレーション手法をSi1-xGexにそのまま適用するとしても、従来の提案されているシミュレーションに用いられているいくつかのモデルが経験的に扱われており、物理的意味が乏しいものがいくつかあるという問題がある。
【0012】
イオン注入分布のテールの拡がりを表すパラメータLはRmaxをイオンの最大飛程、Rpをイオンの射影とすると、(Rmax−Rp)に比例するとしてほぼ成功しているが、その比例係数ξLに物理的意味が乏しいという問題がある。さらに、この比例係数ξLがいかなるパラメータ依存性を有するかが不明であるという問題がある。
【0013】
したがって、本発明は、テール関数におけるイオン注入分布のテールの拡がりを表すパラメータLの比例係数ξLに物理的意味を持たせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一観点からは、xを基板の深さ方向、Φを注入するイオンのドーズ量、Φchanをチャネルドーズ量、na(x)を非晶質パートの分布関数、nc(x)をチャンネリングパートの分布関数とすると、下記の式(1)で表されるテール関数N(x)からイオン注入分布を発生させる際に、非晶質層中のイオン分布から抽出したイオンの飛程の注入方向の射影を表すパラメータRp、分布の標準偏差ΔRp、注入イオン分布の左右非対称性を表すパラメータγ、注入イオン分布のピークの鋭さを表すパラメータβを前記テール関数のRp、ΔRp、γ、βとして用いるとともに、
Rmaxをイオンの最大飛程とした場合に、L=ξL(Rmax−Rp)で定義されるイオン注入分布のテールの広がりを表すパラメータLにおける比例係数ξLを、A,rsを係数、M1をイオンの質量数、M2を基板を構成する原子の質量数、Eをイオンのエネルギー、E1を電子阻止能と核阻止能とが等しくなるエネルギーとして、下記の式(2)としたイオン注入分布発生方法が提供される。
N(x)=(Φ−Φchan)na(x)+Φchannc(x) ・・・(1)
但し、na(x)及びnc(x)は、hma(x),hmc(x)を前記の同じモーメントパラメータRp、ΔRp、γ、βを持つピアソン関数、xT=Rp+ΔRp、κを比例係数とした場合に、
na(x)=hma(x)
nc(x)=hmc(x):x<xT
nc(x)=κ〔hmc(x)+hTC(x)〕:x>xT
で表され、且つ、ピーク濃度位置をxpc、aをイオン注入分布のテールの広がりの形状を表すパラメータ、ηを係数とすると、
hTC(x)=hmc(xpc)exp{−(lnη)〔(x−xpc)/L〕a }
【数1】
【0015】
また、別の観点からは、上述のイオン注入分布発生方法に関する計算式に基づく計算を実行するシミュレーション装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
開示のイオン注入分布発生方法及びシミュレーション装置によれば、テール関数におけるイオン注入分布のテールの拡がりを表すパラメータLの比例係数ξLをイオンの散乱角度θavと関連付けることができる。それによって、比例係数ξLが物理的意味を持つことになるので多くの実験データの統一的説明が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ここで、図1乃至図15を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図1は、イオンの注入に伴う衝突現象の概念的説明図である。
図に示すように、質量数M1のイオンは、基板中を基板を構成する質量数M2の原子の原子核及び電子と相互作用しながらx方向に進んで行く。この時、基板を構成する質量数M2の原子も相互作用により影響を受け、これが、基板の受けるダメージとなる。
【0018】
図2は、イオン注入における各パラメータの説明図であり、質量数M1のイオンが、質量数M2の元素で構成される基板に注入された状態を示している。イオンは、基板中を基板を構成する原子の原子核及び電子と相互作用しながらx方向に進んで行き、イオンが進んだ軌跡の線積分を飛程Rとした場合、その注入方向の射影をRp、横方向の広がりをRTとすると、図から明らかなように、
RT2 =(Δy)2 +(Δz)2 ・・・(4)
となる。
【0019】
そこで、イオンの横方向の広がりΔRptを、
ΔRpt=(RT2 /2)1/2 ・・・(5)
で定義する。また、分布の標準偏差をΔRpとし、イオンの飛程の最大射影をRmaxと定義する。
【0020】
図3は、注入されたイオンの1次元分布の模式的説明図であり、ここでは、本発明者が提案しているテール関数との関係で説明する。注入されたイオンは射影Rpにピークを有するとともに、イオン注入分布のテールの広がりを表すパラメータLだけ、裾をひいた分布になる。なお、1016cm-3程度がSIMSのバックグランウンドノイズである。
【0021】
この図3を基にして本発明者が提案している高位の階層のテール関数N(x)を説明する。
N(x)は、xを基板の深さ方向、Φを注入するイオンのドーズ量、Φchanをチャネルドーズ量、na(x)を非晶質パートの分布関数、nc(x)をチャンネリングパートの分布関数とすると、
N(x)=(Φ−Φchan)na(x)+Φchannc(x) ・・・(6)
で表される。
【0022】
但し、na(x)及びnc(x)は、hma(x),hmc(x)をイオンの飛程の注入方向の射影を表すパラメータRp、分布の標準偏差ΔRp、注入イオン分布の左右非対称性を表すパラメータγ、注入イオン分布のピークの鋭さを表すパラメータβを持つピアソン関数、xT=Rp+ΔRp、κをx=xTにおける式の連続性を保証するための係数とした場合に、
na(x)=hma(x) ・・・(7)
nc(x)=hmc(x):x<xT ・・・(81)
nc(x)=κ〔hmc(x)+hTC(x)〕:x>xT ・・・(82)
で表され、且つ、ピーク濃度位置をxpc、Lをイオン注入分布のテールの広がりを表すパラメータ、αをテールの広がりの形状を表すパラメータ、ηを係数とすると、低位の階層のテール関数hTC(x)は、
hTC(x)=hmc(xpc)exp{−(lnη)〔(x−xpc)/L〕a }・・(9)
で表される。なお、hTC(x)においては、イオン注入分布のテールの広がりの形状を表すパラメータαを便宜上aで表記する。したがって、提案に係るテール関数N(x)は、2つのPeason関数の和で表される。
【0023】
本発明の実施の形態においては、メインパートを表す分布関数na(x)を規定するモーメントパラメータRp、ΔRp、γ、βとして、非晶質層におけるモーメントパラメータRp、ΔRp、γ、βをそのまま採用する。また、hTC(x)における係数ηとしては、ここでは、η=1000とする。
【0024】
この場合の非晶質層におけるモーメントパラメータRp、ΔRp、γ、βとしては、実測による値でも良いが、ここでは、拡張LSS理論(必要ならば、特願2008−069509参照)から求めたRp、ΔRp、γ、βを用いる。なお、LSS理論は、粒子の軌跡を追跡することなしに注入条件が決まれば即座に分布モーメントのエネルギー依存性までが即座に計算できるという利点がある。
【0025】
このように定めたパラメータRp、ΔRp、γ、βを用いた上で、テール関数の結晶と関連するパラメータL、α、ΦchanをSIMSによる実測値をフィッティングすることによって抽出して任意性の非常に少ないユニークなデータベースを構築する。
【0026】
なお、電子阻止能Seは、リントハルトのモデルにおける電子阻止能Seを用いても良いし、或いは、ベーテの電子阻止能と組み合わせた改良電子能を用いても良い。なお、ここでは、下記の式(10)で表されるリントハルトのモデルにおける電子阻止能Se(例えば、非特許文献1参照)を用いる。
【数2】
なお、式(10)におけるZ1,Z2はそれぞれ入射イオンの質量数、基板構成原子の質量数である。また、係数reはフィッティングパラメータである。
【0027】
この電子阻止能SeをSi1-xGexに適用する場合には、下記の式(11)のように、組成比xに対応した比率でZ2をSiとGeに分割してその和で表す。
【数3】
なお、式(11)におけるフィッティングパラメータreとして、各入射イオン種毎に図4に示したSi及びGeについての数値を用い、Si1-xGexに対して特別の値を用いるものではい。
【0028】
また、核阻止能Sn、2次のエネルギー擾乱係数Ωn2 及び3次のエネルギー擾乱係数Λn2 は、上述の拡張LSS理論で用いた下記の式(12)乃至式(14)で表されるSn、Ωn2 及びΛn2 をSi1-xGexに対しても拡張して適用する。なお、式(12)乃至式(14)における係数μは、μ=M2/M1である。
【数4】
【0029】
次に、基板の単位セルの原子濃度Nは、基板の原子密度をρとし、Navoをアボガドロ定数、MSi及びMGeをそれぞれSiの質量数及びGeの質量数とすると、下記の式(15)で表される。
【数5】
【0030】
この場合、組成比xのSi1-xGexの格子定数aは、
a=0.002733x2 +0.01992x+0.5431〔nm〕・・・(16)
で与えられる。また、ダイヤモンド結晶構造のSi1-xGexは組成比xの如何に係わらず、単位格子当たり8個の原子が属するので、基板の原子密度をρは下記の式(17)で表される。
【数6】
なお、図5は、基板の原子密度ρの組成比x依存性を図示したものである。
【0031】
次に、イオン注入分布のテールの広がりを表すパラメータL、即ち、チャンネリングテール長について検討する。上記の図3に示すように、基板の一番奥まで到達するイオンは核と相互作用しないで電子とのみ相互作用したものと考えられる。即ち、イオンの到達する深さRmaxは、Nをイオンのドーズ量、Se(E)を電子阻止能、Eを注入エネルギーとすると、下記の式(18)で表現される。
【数7】
【0032】
また、同じく図3に示すように、Lはイオンの飛程の注入方向の射影Rpを基準にした場合のチャンネリング長であるから、ξLを比例定数とし、
L=ξL(Rmax−Rp) ・・・(19)
と表現することを本発明者は既に提案している(必要ならば、特願2008−059070参照)。
【0033】
この式(19)においては、チャンネリングしているイオンは非晶質中での電子相互作用の場合よりも平均的に原子核から遠いこと、つまり、この場合の電子阻止能は非晶質層に対して有効なものと異なること、Lは物理的に厳密に定義されたものでなく定性的にチャンネリング長を表していることが比例定数ξLで経験的に表現されている。
【0034】
ここで、LをSIMSデータから求め、一方、Rmax及びRpについては上述の拡張LSS理論から求め、求めたL,Rmax,Rpを上記式(19)に代入することによって比例係数ξLを評価する。
【0035】
図6はξLの評価結果を示した図であり、ここでは、B、P、Asの3種類のイオンをSi基板に注入した場合のSIMSによる実測値とテール関数をフィッティングして求めた注入エネルギー依存性を示している。図6から明らかなように、イオンの種類により注入エネルギー依存性が異なっており、20keV〜80keVの範囲ではξL=0.5〜1.5となっている。また、各イオンにおいて、比例係数ξLはエネルギーの増大とともに漸増している。
【0036】
そこで、イオンの種類によらずユニバーサルな注入エネルギー依存性が得られるように、各イオン種について注入エネルギーEを核阻止能Snと電子阻止能Seの一致するエネルギーE1で規格化することを試みた。図7は、核阻止能Snと電子阻止能Seの模式的説明図であり、核阻止能Snと電子阻止能Seの一致するエネルギーE1が存在するがイオン種によってその値は異なることになる。
【0037】
図8は、比例定数ξLの規格化注入エネルギー(E/E1)依存性の説明図であり、ほぼ不純物に関して依存性が明瞭になり、ほぼユニバーサルな依存性になっている。この場合、ばらつきはあるが、E/E1が1より小さい場合にはξLは1より小さく、E/E1が1より大きい場合にはξL も1より大きくなっている。
【0038】
但し、図8から明らかなように、イオン種毎に依存性が若干異なっており、イオンの質量が小さくなるにつれて比例定数ξLは小さくなっている。一方、Siに対する比例定数ξLとGeに対する比例定数ξLの乖離は、イオンの質量が大きくなるにつれて大きくなっている。さらに細かくみると、基板がGeの場合はSiの場合に比べて比例定数ξLは常に下側にある。つまり、弱い基板依存性があるように見える。
【0039】
この依存性の物理的な意味についてさらに検討する。まず、イオンがチャンネリングする前に大きく散乱された場合には、チャンネリング経路はイオンの入射方向と異なる。したがって、パラメータLはイオンの入射方向に投影された長さであるので、その比例係数ξLは小さくなる。
【0040】
そこで、飛程Rと飛程の射影Rpとの関係として、下記の式(20)を導入する。
【数8】
なお、式(20)における係数rsは、ある一定エネルギー領域におけるSn/(Se+Sn)の平均値であり、係数rsは0〜1の範囲となる。
【0041】
ここで、上記の図1における散乱の結果としての飛程Rと飛程の射影Rpとの関係を考慮して、平均散乱角θavを下記の式(21)で定義する。
【数9】
なお、この平均散乱角θavは厳密にはエネルギー依存性を有しているが、ここでは簡略化のために無視する。
【0042】
また、上記の式(21)において、基板の原子の質量数M2として、組成比xのSi1-xGexに対しては、
M2=28.09(1−x)+72.61x ・・・(22)
を用いる。
【0043】
一方、チャンネリングするイオンの電子阻止能が基板の平均的電子阻止能より小さくなると、比例係数ξLは大きくなる。また、低入射エネルギーにおいて核阻止能が優勢になった場合には、核との相互作用が不可避となり、比例係数ξLは小さくなる。このような特性が上述の比例係数ξLのエネルギー依存性を説明する物理的な意味合いである。
【0044】
上記の本発明者による拡張LSS理論においては、このような比例係数ξLのエネルギー依存性を下記の式(23)で半経験的に表現していた。
ξL=λ(Z2)In(1000E/E1):E/E1≧1/1000 ・・(231)
ξL=0 :E/E1<1/1000 ・・(232)
但し、λ(Z2)は基板依存性を示す係数であり、Si基板及びGe基板の場合には、それぞれ、
λ(Z2=14:Si)=0.1485 ・・・(24)
λ(Z2=32:Ge)=0.1080 ・・・(25)
である。
【0045】
ここで、比例係数ξLにより正確で且つ物理的な意味合いを持たせるために、上記の平均散乱角θavを利用して、下記の式(26)で表す。
【数10】
なお、式(26)におけるパラメータAは定数である。
【0046】
この式(26)から分かることは、基板の構成原子の質量数M2が大きくなるほど、且つ、入射イオンの質量数M1が小さくなるほど、比例係数ξLは小さくなる。このことは、基板の構成原子の質量数M2が大きくなるほど、且つ、入射イオンの質量数M1が小さくなるほどイオンが大きく散乱されて飛程の射影Rpが小さくなるという物理現象を表現していることになる。
【0047】
図9及び図10は、それぞれBイオン及びAsイオンをSi基板及びGe基板に注入した場合の50個のイオンの軌跡をモンテカルロ法により求めてプロットしたものである。
図9から明らかなように、Ge基板中のBイオンの軌跡はSi基板中のBイオンの軌跡と同等かそれ以上の長さである。
【0048】
しかし、Ge基板中のBイオンの軌跡は多数回の散乱を繰り返して高角度で屈曲しており、散乱角θavが大きいことに対応する。その結果、軌跡の最終点、即ち、Ge基板におけるBイオンの注入深さは、Si基板における注入深さより浅くなる。
【0049】
一方、図10から明らかなように、Ge基板中のAsイオンの軌跡はSi基板中のAsイオンの軌跡より短くなっており、したがって、何方の基板においては散乱角θavは小さくなることがわかる。したがって、比例係数ξLの基板の構成原子の質量数M2依存性は、質量数M1がAsより相対的に小さなBの場合に顕著になる。
【0050】
上述の図8は、式(26)におけるパラメータrs及びAを、それぞれrs=0.2,A=0.18とした場合の比例定数ξLの規格化注入エネルギー依存性の説明図であり、質量数M1の小さなBの場合に、質量数M2依存性が大きくなることが表されている。
【0051】
次に、イオン注入分布のテールの広がりの形状を表すパラメータαについて検討する。
図11はパラメータαの注入エネルギー依存性の説明図であり、ここでは、B、P、Asの3種類のイオンをSi基板に注入した場合のSIMSによる実測値とテール関数をフィッティングして求めた注入エネルギー依存性を示している。図から明らかなように、イオンの種類により注入エネルギー依存性が異なっている。
【0052】
そこで、ここでもイオンの種類及び基板の種類によらずユニバーサルな注入エネルギー依存性が得られるように、各イオン種について注入エネルギーEを核阻止能Snと電子阻止能Seの一致するエネルギーE1で規格化することを試みた。
【0053】
図12は、パラメータαの規格化注入エネルギー(E/E1)依存性の説明図であり、Pの場合にはばらつきが見られるものの、この場合もE/E1は現象を区切るいい尺度になっている。即ち、E/E1が1よりも小さければα=1となり、E/E1が1よりも大きければα=2となっている。
【0054】
そこで、図12に示すパラメータαの規格化注入エネルギー(E/E1)依存性は、αがE/E1=1を境にして急激に変動するので、
α(E)=1+1/{1+(E1/E)4 } ・・・(27)
で経験的に表現される。
【0055】
次に、チャネルドーズ量Φchanについて検討する。図13乃至図15は、それぞれB,P,AsをSi基板に注入した場合のチャネルドーズ量Φchanのドーズ量依存性の説明図である。なお、いずれの場合も注入エネルギーを20keV、40keV、80keV、160keVとした場合のSIMSによる実測値を示している。
【0056】
この場合、ドーズ量Φが増大するに連れてΦchanが比例して増大し、あるドーズ量においてチャネルドーズ量Φchanは飽和する傾向が見られる。このドーズ量依存性に入射エネルギーの影響はほとんど見られない。
【0057】
この特徴を考察すると、チャネルドーズ量Φchanはイオン注入に伴うダメージの蓄積と関連すると考えられる。ドーズ量Φが小さい場合は各イオンの形成するダメージ領域は独立と考えることができるため、イオンの軌跡はダメージの蓄積に依存しない。したがって、チャネルドーズ量Φchanはドーズ量Φに比例すると考えられる。しかし、更にドーズΦを上げていくとダメージ領域は重なり、ついには面全体を覆い、その結果、チャネルドーズ量Φchanは高ドーズ量において飽和することになる。
【0058】
そこで、Φchanのドーズ量Φ依存性をユニバーサルな関係として表すと、
Φchan=rchanΦ :rchanΦ<Φchansat ・・・(281)
Φchan=Φchansat :rchanΦ>Φchansat ・・・(282)
と表現する。なお、rchanは簡略化して表現する場合には1とする。
【0059】
なお、図13乃至図15から明らかなように、飽和の状態が各イオン種毎或いは基板毎にばらついている。そこで、イオンの種類及び基板の種類によらずユニバーサルな注入エネルギー依存性が得られるように、各イオンの質量M1を基板を構成する原子の質量M2で規格化して、下記の式(29)で表現した。
Φchansat=3.3×1013(M1 /M2)-1.06 cm-2 ・・・(29)
【0060】
本発明の実施の形態においては、上記の関係式をシミュレーション装置に組み込んで所定の注入エネルギー毎に各種のパラメータL、α、ΦchanをSIMSデータとのフィッティングにより得る。得たパラメータL、α、Φchanをこの関係式に用いたパラメータRp、ΔRp、γ、βと組み合わせてセットにしたデータベースを構築し、構築したデータベースはシミュレーション装置内に格納する。このデータベースの基にして、各種のイオン種、基板、注入エネルギーに対するイオン分布を発生させる。
【0061】
また、LSS理論においてはイオンの横方向の広がりΔRptを合わせて求めることができるので、ΔRpt(x)を下記の式(30)で表し、ΔRpt0をデータベースのセットに加えておくことにより、2次元のイオン分布を発生させることができる。
【数11】
但し、式(30)におけるmはΔRptの勾配であり、また、ΔRpt0=ΔRpt(Rp)である。
【0062】
また、データベース化していないイオン種、基板種や注入エネルギーに対しては、その内挿および外挿で対応することが可能になる。
【0063】
このように、本発明の実施の形態においては、注入イオン分布のテールの拡がりを表すパラメータLの比例係数ξLを散乱角θavと関連付けることにより、パラメータLに物理的意味合いを持たせることができる。
【0064】
また、比例係数ξLが物理的意味を持つことにより多くの実験データの統一的説明が可能になるとともに、SIMSデータとの一致精度を向上することができる。なお、他のパラメータα、Φchanについては、係数の値を除いては先に提案したパラメータα、Φchanと基本的に同様である。
【実施例1】
【0065】
以上を前提として、次に、図16乃至図33を参照して本発明の実施例1のイオン注入分布発生方法を説明する。ここでは、SIMSによる実測のための基板として、Si基板に厚さが、300nmのSi1-xGex層を減圧化学気相成長法(LPCVD法)により成長させた基板を用意する。この基板に対してB,P,Asをチルト角を7°とし、回転角を0°とした条件で、色々な注入エネルギーでイオン注入する。
【0066】
この場合のSi1-xGex層のGe組成比xはラザフォード後方散乱(RBS)法によって評価した。図16はRBS法による測定結果の説明図であり、測定データとシミュレーション結果とを比較することによって実施例に使用するSi1-xGex層のGe組成比xをそれぞれ0.16、0.25、0.35と同定した。以下の各図においては説明を図を見やすくするために、x=0.16とx=0.35のデータのみを表示する。
【0067】
なお、検出されたHeイオンは高エネルギーであるほど表面に近い位置の原子による散乱であるため、図16における矢印で示すSiの位置はSi基板とSi1-xGex層との界面位置である。また、矢印で示すGeの位置はSi1-xGex層の表面のGeとの衝突によって散乱されたHeイオンに対応する。
【0068】
また、SIMSによるイオン分布の測定に際しては、一次イオンとしてCs+ を用い、測定対象がAsの場合には照射エネルギーを1keVとし、入射角を0°として、二次イオンとしてAs+ を検出することによりイオン分布を求める。また、測定対象がPの場合には照射エネルギーを1keVとし、入射角を45°として、二次イオンとしてP+ を検出し、測定対象がBの場合には照射エネルギーを1keVとし、入射角を20°として、二次イオンとしてB+ を検出する。
【0069】
図17乃至図19は、それぞれB,P及びAsをSi基板及びGe基板に注入した場合のイオン注入分布図であり、ここでは、シミュレーション値をSIMSによる実測値と比較している。各図の(a)はイオンを20keVの注入エネルギーで1×1013cm-2注入した場合であり、各図の(b)はイオンを20keVの注入エネルギーで1×1015cm-2注入した場合である。なお、SIMSデータにおけるバックグラウンドノイズは1016cm-3乃至1017cm-3である。
【0070】
各図において、イオン注入分布のピーク位置、即ち、Rpは組成比xの増加に伴って浅くなっている。また、チャネリングテールはドーズ量が1×1013cm-2の場合には組成比xの増加に伴って若干抑え込まれている。一方、ドーズ量が1×1015cm-2の場合には組成比x依存性は曖昧になっているが、これはSIMSの分解能によるものと考えられる。
【0071】
図20乃至図22は、それぞれB,P及びAsの電子阻止能Se及び核阻止能Snのエネルギー依存性の説明図である。図20に示すように、Bの場合には、核阻止能Snは低エネルギー領域においては組成比xの増加とともに増加し、高エネルギー領域においては逆の関係になっている。20keVにおける核阻止能Snは組成比xの増加とともに若干増加しているが増加の程度は僅かである。
【0072】
一方、電子阻止能Seは常に組成比xの増加とともに減少している。20keVにおいては電子阻止能Seの方が優勢であるので、全阻止能は全てのエネルギー領域において常に組成比xの増加とともに減少する。したがって、上記の図17におけるRpが組成比xの増加に伴って浅くなる理由を阻止能の観点からはうまく説明できない。
【0073】
また、図21に示すように、Pの場合には、核阻止能Sn及び電子阻止能Seともに20keVにおいて各組成比xについてほぼ同じである。したがって、この場合も、上記の図18におけるRpが組成比xの増加に伴って浅くなる理由を阻止能の観点からはうまく説明できない。
【0074】
また、図22に示すように、Asの場合には、核阻止能Sn及び電子阻止能Seともに組成比xの増加に伴って大きくなっており、この場合は、上記の図19におけるRpが組成比xの増加に伴って浅くなる事象と対応している。
【0075】
図23乃至図25は、それぞれB,P及びAsの飛程R、射影Rp、横方向の拡がりΔRptのエネルギー依存性の説明図である。なお、ここでは、擬似結晶LSS(QCLSS)で評価した値を示している。
【0076】
この場合、飛程Rは全阻止能の傾向と対応している。即ち、図23と図20との対比から明らかなように、Bの場合には、全阻止能が組成比xの増加とともに減少するので、飛程Rは逆に組成比xの増加とともに大きくなる。また、Pの場合も飛程Rは逆に組成比xの増加とともに大きくなる。一方、Asの場合には、図25と図22との対比から明らかなように、全阻止能が組成比xの増加とともに大きくなるので、飛程Rは逆に組成比xの増加とともに小さくなる。
【0077】
また、B或いはPの場合、横方向の拡がりΔRptは組成比xの増加とともに大きくなっているが、これは、上記の式(26)からも明らかなように、質量数が相対的に小さなB或いはPの場合に、散乱角θavが組成比xの増加とともに大きくなることに対応する。
【0078】
図26及び図27はBイオンのイオン注入分布図であり、それぞれSi基板及びGe基板に20keV、40keV、80keVの注入エネルギーで、1×1015cm-2のドーズ量の Bイオンを注入した場合のイオン注入分布図である。ここでは、上記の式(27)に示したΦchansatを用いてシミュレーションした結果を示しており、SIMSの実測データとの間の良好な一致が見られる。
【0079】
図28乃至図33は、上述のようにして構築したデータベースの一例であり、ここでは、B,P,Asを、Si、Si0.9Ge0.1、Si0.8Ge0.2、Si0.6Ge0.4、Si0.2Ge0.8、Geに注入した場合のパラメータRp,ΔRp ,γ,β,L,α,ΔRpt0,mのセットとして示している。
【0080】
このような、データベースを構築することによって、シリコン集積回路装置を設計する場合のイオン注入条件を安定して設定することができるようになる。また、以上の機能をプログラムとしてシミュレーション装置に搭載することによって、幅広い注入条件におけるイオン注入分布を簡単に求めることができるシミュレーション装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】イオンの注入に伴う衝突現象の概念的説明図である。
【図2】イオン注入における各パラメータの説明図である。
【図3】注入されたイオンの1次元分布の模式的説明図である。
【図4】reの設定値の説明図である。
【図5】Si1-xGex層の原子密度ρの組成比x依存性の説明図である。
【図6】ξLの評価結果の説明図である。
【図7】核阻止能Snと電子阻止能Seの模式的説明図である。
【図8】比例定数ξLの注入エネルギー依存性の説明図である。
【図9】BイオンをSi基板及びGe基板に注入した場合のイオンの軌跡の説明図である。
【図10】AsイオンをSi基板及びGe基板に注入した場合のイオンの軌跡の説明図である。
【図11】パラメータαの注入エネルギー依存性の説明図である。
【図12】パラメータαの規格化注入エネルギー(E/E1)依存性の説明図である。
【図13】BをSi基板に注入した場合のチャネルドーズ量Φchanのドーズ量依存性の説明図である。
【図14】PをSi基板に注入した場合のチャネルドーズ量Φchanのドーズ量依存性の説明図である。
【図15】AsをSi基板に注入した場合のチャネルドーズ量Φchanのドーズ量依存性の説明図である。
【図16】RBS法による測定結果の説明図である。
【図17】BをSi基板及びGe基板に注入した場合のイオン注入分布図である。
【図18】PをSi基板及びGe基板に注入した場合のイオン注入分布図である。
【図19】AsをSi基板及びGe基板に注入した場合のイオン注入分布図である。
【図20】Bの電子阻止能SSe及び核阻止能Snのエネルギー依存性の説明図である。
【図21】Pの電子阻止能Se及び核阻止能Snのエネルギー依存性の説明図である。
【図22】Asの電子阻止能Se及び核阻止能Snのエネルギー依存性の説明図である。
【図23】Bの飛程R、射影Rp、横方向の拡がりΔRptのエネルギー依存性の説明図である。
【図24】Pの飛程R、射影Rp、横方向の拡がりΔRptのエネルギー依存性の説明図である。
【図25】Asの飛程R、射影Rp、横方向の拡がりΔRptのエネルギー依存性の説明図である。
【図26】BをSi基板に注入した場合のイオン注入分布図である。
【図27】BをGe基板に注入した場合のイオン注入分布図である。
【図28】本発明のイオン注入分布発生方法により構築したBをSi、Si0.9Ge0.1、Si0.8Ge0.2に注入する場合の各パラメータを示すデータベースの構成例である。
【図29】本発明のイオン注入分布発生方法により構築したBをSi0.6Ge0.4、Si0.2Ge0.8、Geに注入する場合の各パラメータを示すデータベースの構成例である。
【図30】本発明のイオン注入分布発生方法により構築したPをSi、Si0.9Ge0.1、Si0.8Ge0.2に注入する場合の各パラメータを示すデータベースの構成例である。
【図31】本発明のイオン注入分布発生方法により構築したPをSi0.6Ge0.4、Si0.2Ge0.8、Geに注入する場合の各パラメータを示すデータベースの構成例である。
【図32】本発明のイオン注入分布発生方法により構築したAsをSi、Si0.9Ge0.1、Si0.8Ge0.2に注入する場合の各パラメータを示すデータベースの構成例である。
【図33】本発明のイオン注入分布発生方法により構築したAsをSi0.6Ge0.4、Si0.2Ge0.8、Geに注入する場合の各パラメータを示すデータベースの構成例である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
xを基板の深さ方向、Φを注入するイオンのドーズ量、Φchanをチャネルドーズ量、na(x)を非晶質パートの分布関数、nc(x)をチャンネリングパートの分布関数とすると、下記の式(1)で表されるテール関数N(x)からイオン注入分布を発生させる際に、非晶質層中のイオン分布から抽出したイオンの飛程の注入方向の射影を表すパラメータRp、分布の標準偏差ΔRp 、注入イオン分布の左右非対称性を表すパラメータγ、注入イオン分布のピークの鋭さを表すパラメータβを前記テール関数のRp、ΔRp、γ、βとして用いるとともに、
Rmaxをイオンの最大飛程とした場合に、L=ξL(Rmax−Rp)で定義されるイオン注入分布のテールの広がりを表すパラメータLにおける比例係数ξLを、A,rsを係数、M1をイオンの質量数、M2を基板を構成する原子の質量数、Eをイオンのエネルギー、E1を電子阻止能と核阻止能とが等しくなるエネルギーとして、下記の式(2)としたイオン注入分布発生方法。
N(x)=(Φ−Φchan)na(x)+Φchannc(x) ・・・(1)
但し、na(x)及びnc(x)は、hma(x),hmc(x)を前記の同じモーメントパラメータRp、ΔRp、γ、βを持つピアソン関数、xT=Rp+ΔRp、κを比例係数とした場合に、
na(x)=hma(x)
nc (x)=hmc(x):x<xT
nc (x)=κ〔hmc(x)+hTC(x)〕:x>xT
で表され、且つ、ピーク濃度位置をxpc、aをイオン注入分布のテールの広がりの形状を表すパラメータ、ηを係数とすると、
hTC(x)=hmc(xpc)exp{−(lnη)〔(x−xpc)/L〕a }
【数1】
【請求項2】
前記係数A及び係数rsを、注入するイオンの種類と基板を構成する原子との全ての組み合わせに対して同じ値を用いる請求項1記載のイオン注入分布発生方法。
【請求項3】
前記基板が複数種の原子から構成される場合、M2iを各原子の質量数、niを各原子の単位体積当たりの原子数とした場合、前記M2として下記の式(3)で表されるM2avを用いる請求項1または2に記載のイオン注入分布発生方法。
【数2】
【請求項4】
前記基板がSi1-yGey(但し:0≦y≦1)である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のイオン注入分布発生方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のイオン注入分布発生方法に関する計算式に基づく計算を実行することを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項6】
前記計算式に基づく計算を実行することにより、適宜定めた任意のエネルギーにおける各イオン種及び各基板種について予め求めた前記Rp、ΔRp、γ、β、L、aを組合せをデータベースとして格納している請求項5に記載のシミュレーション装置。
【請求項1】
xを基板の深さ方向、Φを注入するイオンのドーズ量、Φchanをチャネルドーズ量、na(x)を非晶質パートの分布関数、nc(x)をチャンネリングパートの分布関数とすると、下記の式(1)で表されるテール関数N(x)からイオン注入分布を発生させる際に、非晶質層中のイオン分布から抽出したイオンの飛程の注入方向の射影を表すパラメータRp、分布の標準偏差ΔRp 、注入イオン分布の左右非対称性を表すパラメータγ、注入イオン分布のピークの鋭さを表すパラメータβを前記テール関数のRp、ΔRp、γ、βとして用いるとともに、
Rmaxをイオンの最大飛程とした場合に、L=ξL(Rmax−Rp)で定義されるイオン注入分布のテールの広がりを表すパラメータLにおける比例係数ξLを、A,rsを係数、M1をイオンの質量数、M2を基板を構成する原子の質量数、Eをイオンのエネルギー、E1を電子阻止能と核阻止能とが等しくなるエネルギーとして、下記の式(2)としたイオン注入分布発生方法。
N(x)=(Φ−Φchan)na(x)+Φchannc(x) ・・・(1)
但し、na(x)及びnc(x)は、hma(x),hmc(x)を前記の同じモーメントパラメータRp、ΔRp、γ、βを持つピアソン関数、xT=Rp+ΔRp、κを比例係数とした場合に、
na(x)=hma(x)
nc (x)=hmc(x):x<xT
nc (x)=κ〔hmc(x)+hTC(x)〕:x>xT
で表され、且つ、ピーク濃度位置をxpc、aをイオン注入分布のテールの広がりの形状を表すパラメータ、ηを係数とすると、
hTC(x)=hmc(xpc)exp{−(lnη)〔(x−xpc)/L〕a }
【数1】
【請求項2】
前記係数A及び係数rsを、注入するイオンの種類と基板を構成する原子との全ての組み合わせに対して同じ値を用いる請求項1記載のイオン注入分布発生方法。
【請求項3】
前記基板が複数種の原子から構成される場合、M2iを各原子の質量数、niを各原子の単位体積当たりの原子数とした場合、前記M2として下記の式(3)で表されるM2avを用いる請求項1または2に記載のイオン注入分布発生方法。
【数2】
【請求項4】
前記基板がSi1-yGey(但し:0≦y≦1)である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のイオン注入分布発生方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のイオン注入分布発生方法に関する計算式に基づく計算を実行することを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項6】
前記計算式に基づく計算を実行することにより、適宜定めた任意のエネルギーにおける各イオン種及び各基板種について予め求めた前記Rp、ΔRp、γ、β、L、aを組合せをデータベースとして格納している請求項5に記載のシミュレーション装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図18】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2010−153577(P2010−153577A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329910(P2008−329910)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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