説明

イオン注入方法及び装置

簡単且つ容易に、厚い領域に均一にイオン注入するイオン注入方法及び装置を提供する。試料に打ち込まれるイオンを一旦略一定の速度を有するように加速した後、振動する不均一な厚さの薄板を通過させることによって、イオンが通過した薄板の厚さに応じてイオンを減速させ、当該イオンの速度を不均一に減速し、試料に打ち込むことができる。従って試料の所定のイオン注入部位には、不均一な速度を有するイオンが注入され、各イオンの有する速度によりイオンの注入深さが異なるため、厚い注入領域を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚い領域に均一にイオンを注入するためのイオン注入方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の不純物添加や光デバイス作製等において、イオン注入技術は幅広く用いられている。一般にイオン注入は、所望するイオンを加速して被処理体に照射することによって行われ、イオンの注入深さは、イオンの加速エネルギーが等しいと略一定の深さとなる。しかし、用途によっては深さ方向に厚い注入領域が要求される場合もあり、このような場合には、従来、イオンの加速エネルギーを変化させて、複数回イオン注入を行うことによって、厚い注入領域を形成している。
【0003】
図8は、このような従来のイオン注入方法及び装置を説明するための図であり、図8(A)の101は2.40MeVで加速した水素イオンを不純物としてSiOガラス試料(被処理体)に注入したときの、ガラス表面からの深さと水素の分布との関係を示したグラフである。一方、図8(B)はイオンの加速エネルギーを変化させて複数回イオン注入を行った場合の、ガラス表面からの深さと水素の分布との関係を示したグラフである。図8(B)においてグラフ102,103,104,105,106は、それぞれ2.30,2.35,2.40,2.45,2.50MeVで加速した水素イオンを試料に注入したときの、水素のガラス内での深さ方向の分布を示したもので、太線107は、それら5回のイオン注入を行った場合を合計した水素分布を示している。図8(A)で示すように、単一のエネルギー2.40MeVでイオンを注入した場合、約60μmの深さのところに、幅Wa=2μm程度にイオン注入されているが、図8(B)で示すように、加速エネルギーを変化させて複数回イオン注入すると、約20μmの厚い注入領域Wbを得ることができる。
【0004】
しかし、この図8(B)で示す手法は、加速エネルギーを変化させて複数回イオン注入するため、その都度イオンビームの調整等煩雑な作業が必要であり、時間がかかり、実際の半導体製造工程等で使用する場合、スループットを著しく低下させるという問題がある。
【0005】
一方、イオンの加速電圧の間隔を大きくしてイオン注入回数を減らすこともできるが、その場合、イオンの分布にムラができてしまい一様な注入領域を得ることができない。図8(C)は、2.30,2.40,2.50MeVの3段階の加速電圧で加速した水素イオンを試料に注入したときの、水素のガラス内での深さ方向の分布と、それら3回のイオン注入を行った場合を合計した水素分布108を示している。図示のように、図8(B)と比べて加速電圧の間隔が2倍になると、合計の水素分布108に凹凸が生じてしまい均一なイオン分布を得ることができない。
【0006】
このような課題に対して、従来、イオンの加速電圧を変調させてターゲットに照射したり、ターゲット試料を高周波で振動させてイオンと試料との相対速度を変化させて注入領域を厚く形成する方法も考えられている(例えば、特開平7−12226号公報参照。)。
【0007】
しかし、上記文献に記載されたような、加速電圧調整機構又は高周波振動機構を設ける方法も、装置が複雑になり、また、ビームが変動するためにその調整が困難である等という問題がある。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、簡単且つ容易に、厚い領域に均一にイオンを注入するイオン注入方法及び装置を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【0009】
本発明のイオン注入方法は、イオン源で発生されたイオンを略均一な速度に加速し、該加速されたイオンを被処理体に注入するイオン注入方法において、前記イオンを、略均一な速度に加速した後、被処理体に注入する前に、不均一な厚さを有する薄板を通過させることによって、不均一に減速させることを特徴とする。
【0010】
これによると、一旦、被処理体に打ち込まれるイオンを、略一定の速度を有するように加速した後、不均一な厚さを有する薄板を通過させ、通過した部分の厚さに応じてイオンを減速させ、当該イオンの速度を不均一に減速して被処理体に打ち込むことができる。従って、被処理体の所定のイオン注入部位には、様々な速度を有するイオンが注入され、これらイオンは各イオンの有する速度に応じた深さまで進んで停止し、厚い注入領域を形成することができる。
【0011】
また、上記のイオン注入方法において、前記薄板の板厚が、前記薄板の一方から他方に向かって漸増しており、前記薄板が前記イオンの注入方向に対して垂直に振動していることを特徴とする。
【0012】
これよると、板厚が一方から他方に向かって漸増する薄板を振動させるため、被処理体に到達するイオンは、ちょうどイオンが通過したときにそこに存在していた薄板の部分の厚さに応じて不均一に減速される。そしてそのように不均一に減速されたイオンが、被処理体に到達する際の速度によってその進入深さが異なるため、イオンの停止位置がばらつき、その結果として厚い注入領域を得ることができる。
【0013】
また、上記のイオン注入方法において、前記薄板の表面に単数または複数の凹凸が設けられており、前記薄板が前記イオンの注入方向に対して垂直に振動していることを特徴とする。
【0014】
これによると、表面に単数または複数の凹凸が設けられている薄板を振動させるため、被処理体に到達するイオンは、ちょうどイオンが通過したときにそこに存在していた薄板の部分の厚さに応じて不均一に減速される。そしてそのように不均一に減速されたイオンが、被処理体に到達する際の速度によってその進入深さが異なるため、イオンの停止位置がばらつき、その結果として厚い注入領域を得ることができる。
【0015】
更に、上記のイオン注入方法において、前記薄板の表面に複数の凹凸が設けられ、前記薄板と前記被処理体との間が離間していることを特徴とする。
【0016】
これによると、前記薄板には複数の凹凸が設けられているため、イオンは、通過する位置の薄板の厚さに応じて速度が減速される。また、イオンは、薄板を通過する際に、散乱の影響等によって僅かに広がるが、被処理体との間の距離が離れているため、その散乱の影響により、被処理体の特定のイオン注入部位には、薄板のいろいろな部分を通ったイオンが到達するようになる。従って、当該部位にはいろいろな速度を有するイオンが到達し、イオンの停止位置がばらつき、その結果として厚い注入領域を得ることができる。
【0017】
本発明のイオン注入装置は、被処理体に注入されるイオンを略均一な速度に加速する加速手段と、被処理体を保持する保持台と、を備えたイオン注入装置において、前記加速手段と前記保持台との間に、不均一な厚さを有する薄板を更に備え、前記イオンが、前記薄板を通過することによって、不均一に減速されるようになっていることを特徴とする。
【0018】
これによると、一旦、加速手段において被処理体に打ち込まれるイオンを、略一定の速度を有するように加速した後、不均一な厚さを有する薄板を通過させ、通過した部分の厚さに応じてイオンを減速させ、当該イオンの速度を不均一に減速して被処理体に打ち込むことができる。従って、被処理体の所定のイオン注入部位には、様々な速度を有するイオンが注入され、これらイオンは各イオンの有する速度に応じた深さまで進んで停止し、厚い注入領域を形成することができる。
【0019】
また、上記のイオン注入装置において、前記薄板を前記イオンの注入方向に対して垂直に振動させる振動手段を備え、前記薄板の厚さは、前記薄板の一方から他方に向かって漸増することによって不均一になっていることを特徴とする。
【0020】
これよると、板厚が一方から他方に向かって漸増する薄板が振動するため、被処理体に到達するイオンは、ちょうどイオンが通過したときにそこに存在していた薄板の部分の厚さに応じて不均一に減速される。そしてそのように不均一に減速されたイオンが、被処理体に到達する際の速度によってその進入深さが異なるため、イオンの停止位置がばらつき、その結果として厚い注入領域を得ることができる。
【0021】
また、上記のイオン注入装置において、前記薄板を前記イオンの注入方向に対して垂直に振動させる振動手段を備え、前記薄板の厚さは、前記薄板の表面に単数または複数の凹凸を備えることによって不均一になっていることを特徴とする。
【0022】
これよると、表面に単数または複数の凹凸を備える薄板が振動するため、被処理体に到達するイオンは、ちょうどイオンが通過したときにそこに存在していた薄板の部分の厚さに応じて不均一に減速される。そしてそのように不均一に減速されたイオンが、被処理体に到達する際の速度によってその進入深さが異なるため、イオンの停止位置がばらつき、その結果として厚い注入領域を得ることができる。
【0023】
また、上記のイオン注入装置において、前記薄板と前記被処理体との間が離間しており、前記薄板の厚さは、前記薄板の表面に複数の凹凸を備えることによって不均一になっていることを特徴とする。
【0024】
これによると、前記薄板には複数の凹凸が設けられているため、イオンは、通過する位置の薄板の厚さに応じて速度が減速される。また、イオンは、薄板を通過する際に、散乱の影響等によって僅かに広がるが、被処理体との間の距離が離れているため、散乱の影響により、被処理体の特定のイオン注入部位には、薄板のいろいろな部分を通ったイオンが到達するようになる。従って、当該部位にはいろいろな速度を有するイオンが到達し、イオンの停止位置がばらつき、その結果として厚い注入領域を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明によるイオン注入方法の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は本発明の第1実施形態のイオン注入装置1の概略図である。図示のように、イオン注入装置1は、所望の原子や分子をイオン化するイオン源2と、イオン源2から引き出されたイオンの中から磁場による質量分離によって所望のイオンを選別する質量分析器3と、選別したイオンを所望の速度に加速する加速管4と、加速されたイオンからなるイオンビームを成形する四重極レンズ5と、成形されたイオンビームを試料に注入する注入室6とを備える。場合によっては、イオン注入装置1は加速管4と注入室6との間のいずれかの箇所に質量分析器3を有しても良い。
【0027】
注入室6には、試料Sが保持される保持台7が設けられており、また注入室6の壁部には、イオンビームを通過させる注入口8が設けられている。そして、注入口8と保持台7との間には、更に、イオンビームの進行方向Aに対して略垂直に薄板9が配置され、この薄板9は、イオンビームの進行方向Aに対して垂直な向きBに、例えば、スライダ、ピストン等の駆動機構(図示せず)によって振動可能となっている。ここでは、薄板9が注入室6の中に配置されている例を示したが、薄板9は加速されたイオンが試料に照射される際のイオンビームの軌道上ならどこに配置されても良い。
【0028】
図2は薄板9の斜視図である。図示のように、薄板9がイオンビームの進行方向Aに垂直な断面が略矩形で、また方向A及び振動方向Bに沿った断面は略三角形、即ち一端10から他端11に厚みが漸増する形状となっている。なお、薄板9の材料としては、本実施形態ではSiN、Si、SiC、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン等の硬い材料が好ましいが、これらに限定されず他の材料であってもよい。また、複数の材料の複合によって形成されても良い。例えば、上述のようなSiN、Si、SiC、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン等の薄板材料上に、塗布、堆積等により他の材料を積層して形成してもよい。薄板9の厚さは、端部11において約10μmであるが、これに限定されず、薄板の材料、イオンを注入する試料の材料、所望するイオン注入深さ及び幅、イオン種、イオンの加速エネルギー等によって異なる。
【0029】
次に、本実施形態の作用について説明する。なお、本実施形態ではSiOガラスにイオンを注入する場合について説明するが、これに限定されず、他の物質にイオン注入することもできる。
【0030】
まず、保持台7に試料Sを載置する。次いで、イオン源2において、プラズマ等によって例えば水素ガスをイオン化し、そのイオンを引き出し電極(図示せず)によって引き出す。そしてこのイオンを、質量分析器3を通過させて必要なイオンを選別し、これら選別されたイオンを加速器で約2MeVで加速する。加速されたイオンは各イオンが略同じ速度を有するイオンビームとなり、四重極レンズ5で成形された後、注入室6に入射される。
【0031】
この際に、薄板9を駆動機構によって図1及び2に示すB方向に振動させておくと、注入室6に入射されたイオンは、振動する薄板9に入射してこれを通過して試料Sに注入される。即ち、イオンは不均一な厚さを有する薄板9の異なる厚さ部分を通過することになる。例えば、薄板9がSi製であり、図4(A)に示すように、ある時間t=tでは、イオンビームは薄板9の最も厚い10μmの部分近傍を通過すると、速度の減速の度合いが大きく、薄板9を通過したイオンビームの速度は他と比較すると遅くなる。従って試料Sに注入されるイオンはあまり深く進入せず、図中の表面からd=30μm近傍のaで停止する。これに対して、図4(C)に示すように、それから所定時間経過したt=tの場合、イオンビームは薄板9の最も薄い部分を通過するため、速度の減速の度合いは小さい。従って、試料Sに注入されるイオンは比較的深く進入し、表面から約45μm近傍のcで停止する。また、図4(B)に示すように時間tがtとtとの間の、tの場合、イオンビームは薄板9の中間の厚さの約5μmの部分を通過するため、速度の減速の度合いも中間の度合いとなる。従って、試料Sに注入されるイオンは、aとcとの中間の表面から約37μm近傍のbの位置で停止する。従って、振動する薄板9を通過したイオンビームの試料Sへの注入領域は、試料の表面から約30μm〜45μmというある程度幅をもった領域となり、図4(D)に示すように厚い注入領域を得ることができる。
【0032】
ここで、Si製の薄板9の最も厚い部分の厚さが10μmであるにも係わらず、イオン注入領域は約15μmの幅を持つ、と言う現象が見られる。これは、イオンの速度の失い方が、Si中とSiO中で異なる為である。このことから、薄板を形成する材料によって、注入されるイオンの深さ方向分布幅を調整することができることが分かる。同一形状の薄板を用いる場合、より幅の広いイオン注入領域を形成したい場合には、イオンを減速させやすい材料によって薄板を形成すれば良く、然程広いイオン注入領域が必要でない場合には、イオンを減速させにくい材料によって薄板を形成すれば良い。
【0033】
以上、本実施形態によると、イオン源2から発生されたイオンを、加速管4で略均一な速度に加速した後、試料Sに注入する前に、不均一な厚さの薄板9を通過させ、イオンを不均一に減速するため、試料Sの所定のイオン注入部位に、不均一な速度を有するイオンを注入することができる。そして、各イオンの有する速度によりイオンの注入深さが異なるため、結果として厚い注入領域を形成することができる。
【0034】
以上では、薄板9が図2に示した形状を持つ場合について説明したが、薄板9の形状は必ずしもこのような形である必要は無い。例えば、図2の形状では、先端10が破損しやすいため、図3(A)の様に薄い平板の上に薄板9を形成してもよいし、図3(B)、(C)、(D)に示すような台形凸型、三角凸型、三角凹型などでも良い。また、図3(E)に示すように、複数の凹凸を持つものでも良い。また、図中の三角形の頂点は必ずしも尖っている必要は無く、この三角形は円形、楕円形、台形などに置き換えることも可能である。
【0035】
また、この薄板9は数μmから数十μm程度の厚さであるため、直接保持するのは難しい。よって、保持しやすい厚さを持つ台に固定されていることが望ましい。
【0036】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。イオン注入装置1の全体的構成は、図1で示した第1実施形態と同様であるので説明を省略する。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、注入室6に配置された薄板20が振動しないことと、薄板20が微小な凹凸を有し、場所的に不均一な厚さをしていることである。図5に当該薄板20の斜視図を示す。図示のように、薄板20の上面には、凹凸としてピラミッド状の微小な山21が連続して形成されている。薄板20の材料は、第1実施形態と同様にSiN、Si、SiC、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン等の硬い材料が好ましく、また、複数の材料の複合によって形成されても良い。薄板20の最大厚さは約10μm程度で、山の高さ及び幅は約2μmである。ただし、これらの値は、第1実施形態と同様に、薄板20の材料、イオン種、イオンの加速エネルギー、対象とする試料、所望の注入深さ及び幅等によって異なる。なお、これらの微小な山21は、例えば基板に異方性エッチングを施すことや、薄板材料上に微細パターンメッキすることによって作成可能である。ただし、この製法もこれに限定されるものではない。また凹凸の形状もこれらの微小な山21に限定されるものではなく、他の凹凸形状、例えば図6に断面形状を示すような、滑らかな凹凸22(A)、ランダムな凹凸23(B)であってもよい。ランダムな凹凸23の場合は、均一な厚さの薄板上に、材料を吹きつけることによって容易に形成することができる。
【0037】
次に、第2実施形態の作用について説明する。まず、第1実施形態の場合と同様に、保持台に試料Sを載置する。それからイオン源2で例えば水素などのガスをイオン化し、当該イオンを質量分析器3で選別し、加速器4で加速して、四重極レンズ5で成形した後、注入室6に入射する。注入室に入射されたイオンは、図7(A)に示すように表面に複数の山21が形成された薄板20に入射する。この際、散乱等の影響によってイオンのビームは僅かに広がる。その結果、薄板20と試料Sとの間が離間していると、試料Sの特定の位置にはいろいろな方向からのイオンが到達し、全体として均一且つ厚い注入領域を得ることができる。
【0038】
なお、図7(B)に示すように薄板20が試料Sに密着している場合、又は両者の間の距離が短い場合、イオンの軌道が散乱によって曲げられたことによって生じる、試料内部へのイオンの到達位置のずれは僅かである。このため、薄板20の表面形状と同じような形にイオンが注入され、均一な密度の注入領域が形成されない。従って、図7(A)に示すように薄板20と試料Sとはある程度距離を開ける必要がある。この試料Sと薄板20との間の距離は、薄板20に形成されるパターンの大きさやイオンの散乱度合いによって決定されるものであるが、パターンの大きさが大きい場合はこの距離は長く取る必要があり、パターンが小さくなるほど、短くて良い。山21の高さが10μm、幅が10μm程度なら、薄板20と試料Sとの距離は数mmから数cm以上が好適である。
【0039】
このように、本実施形態によると、前記薄板の表面に複数の微小な凹凸21,22,23が設けられ、薄板20と試料Sとの間が離隔している。従って、薄板20のイオンが通過する場所の厚さに応じて、イオンの速度が減速される。また、イオンビームは薄板を通過する際に、散乱の影響等によって僅かに広がり、試料Sと薄板20との間の距離が離れているため、試料Sの特定の部位には、薄板のいろいろな場所を通ったイオンが到達するようになる。従って、当該部位にはいろいろな速度を有するイオンが到達し、厚い注入領域を得ることができる。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態のイオン注入装置の概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態の薄板の概略斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態の薄板の変形例の概略断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の薄板を振動させてイオンを打ち込んだ場合のt=tでのイオン注入深さを示した図(A)、本発明の第1実施形態の薄板を振動させてイオンを打ち込んだ場合のt=tでのイオン注入深さを示した図(B)、本発明の第1実施形態の薄板を振動させてイオンを打ち込んだ場合のt=tでのイオン注入深さを示した図(C)、本発明の第1実施形態の薄板を振動させてイオンを打ち込んだ場合のt=tでのイオン注入深さを示した図(D)である。
【図5】本発明の第2実施形態の薄板の概略断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態の薄板の変形例の滑らかな凹凸を示した断面図(A)、本発明の第2実施形態の薄板の変形例のランダムな凹凸を示した断面図(B)である。
【図7】本発明の第2実施形態の薄板を用いてイオンを注入した場合の、薄膜と試料とが離間している際のイオン注入の様子を示した断面図(A)、本発明の第2実施形態の薄板を用いてイオンを注入した場合の、薄膜と試料とが密着している際のイオン注入の様子を示した断面図(B)である。
【図8】従来技術により注入されるイオンの深さ方向の分布を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源で発生されたイオンを略均一な速度に加速し、該加速されたイオンを被処理体に注入するイオン注入方法において、前記イオンを、略均一な速度に加速した後、被処理体に注入する前に、不均一な厚さを有する薄板を通過させることによって、不均一に減速させることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項2】
前記薄板の板厚が、前記薄板の一方から他方に向かって漸増しており、前記薄板が前記イオンの注入方向に対して垂直に振動していることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入方法。
【請求項3】
前記薄板の表面に単数または複数の凹凸が設けられており、前記薄板が前記イオンの注入方向に対して垂直に振動していることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入方法。
【請求項4】
前記薄板の表面に複数の凹凸が設けられ、前記薄板と前記被処理体との間が離間していることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入方法。
【請求項5】
被処理体に注入されるイオンを略均一な速度に加速する加速手段と、被処理体を保持する保持台と、を備えたイオン注入装置において、前記加速手段と前記保持台との間に、不均一な厚さを有する薄板を更に備え、前記イオンが、前記薄板を通過することによって、不均一に減速されるようになっていることを特徴とするイオン注入装置。
【請求項6】
前記薄板を前記イオンの注入方向に対して垂直に振動させる振動手段を備え、前記薄板の厚さは、前記薄板の一方から他方に向かって漸増することによって不均一になっていることを特徴とする請求項5に記載のイオン注入装置。
【請求項7】
前記薄板を前記イオンの注入方向に対して垂直に振動させる振動手段を備え、前記薄板の厚さは、前記薄板の表面に単数または複数の凹凸を備えることによって不均一になっていることを特徴とする請求項5に記載のイオン注入装置。
【請求項8】
前記薄板と前記被処理体との間が離間しており、前記薄板の厚さは、前記薄板の表面に複数の凹凸を備えることによって不均一になっていることを特徴とする請求項5に記載のイオン注入装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2007−523440(P2007−523440A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523885(P2006−523885)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003089
【国際公開番号】WO2005/078758
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】