説明

イオン注入機の基板保持具の劣化判定方法

【課題】イオン注入剥離法を用いた貼り合わせウェーハを製造するにあたり、ウェーハ品質の悪化を防止するため、イオン注入機の基板保持具の劣化状況を容易に判定することができる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】イオン注入機の基板保持具の劣化を判定する方法であって、作製された貼り合わせウェーハ又は一部が剥離されたボンドウェーハの品質を測定し、該測定された品質から、前記ボンドウェーハを保持したイオン注入機の基板保持具の劣化を判定するイオン注入機の基板保持具の劣化判定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入剥離法による貼り合わせウェーハの製造に用いられるイオン注入機の基板保持具の劣化判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子用のウェーハの一つとして、絶縁膜であるシリコン酸化膜(以下、埋め込み酸化膜又はBOX層と呼ぶことがある)上にシリコン薄膜(以下、SOI層と呼ぶことがある)を形成したSOI(Silicon On Insulator)ウェーハがある。
このSOIウェーハは、デバイス作製領域となる基板表層部のSOI層が埋め込み酸化膜により基板内部と電気的に分離されているため、寄生容量が小さく、耐放射性能力が高いなどの特徴を有する。そのため、高速・低消費電力動作、ソフトエラー防止などの効果が期待され、高性能半導体素子用の基板として有望視されている。
【0003】
このSOIウェーハを製造する代表的な方法として、ウェーハ貼り合わせ法やSIMOX法が挙げられる。
ウェーハ貼り合わせ法は、例えば2枚のシリコン単結晶ウェーハのうちの一方の表面に熱酸化膜を形成した後、この形成した熱酸化膜を介して2枚のウェーハを密着させ、結合熱処理を施すことによって結合力を高め、その後に片方のウェーハ(SOI層を形成するウェーハ(以下、ボンドウェーハ))を鏡面研磨等により薄膜化することによってSOIウェーハを製造する方法である。また、この薄膜化の方法としては、ボンドウェーハを所望の厚さまで研削、研磨する方法や、ボンドウェーハの内部に水素イオン、希ガスイオンの少なくとも1種類を注入してイオン注入層を形成しておき、イオン注入層においてボンドウェーハを剥離するイオン注入剥離法と呼ばれる方法等がある。
【0004】
一方、SIMOX法は、シリコン単結晶ウェーハの内部に酸素をイオン注入し、その後に高温熱処理(酸化膜形成熱処理)を行って、注入した酸素とシリコンとを反応させてBOX層を形成することによってSOIウェーハを製造する方法である。
上記の代表的な2つの手法のうち、ウェーハ貼り合わせ法は、作製されるSOI層やBOX層の厚さが自由に設定できるという優位性があるため、様々なデバイス用途に適用することが可能である。特に、ウェーハ貼り合わせ法の一つであるイオン注入剥離法は、上記優位性に加え、優れた膜厚均一性を有するSOI層を得ることができるという特徴があり、ウェーハ全面で安定したデバイス特性を得ることができる。
【0005】
イオン注入剥離法では、イオン注入機にてウェーハ面内に水素イオン、あるいは、希ガスイオン等をウェーハ面内に、均一な量で、均一な深さに注入する必要がある。
この目的のための一つの要素として、イオン注入機の基板保持具には、ウェーハを均一に冷却する機能が求められる。この基板保持具にはウェーハとの接触を向上させるため、シリコーンゴム等のゴム部材やセラミック部材等からなるシート部材が使用されている。また、基板保持具の背面には冷却水を循環させるための配管が設けられており、イオン注入中のウェーハを十分に冷却することができるような構造となっている。
【0006】
このようなイオン注入機の基板保持具は真空容器内に装着されているため、そのウェーハ冷却能力を評価するには、保持するウェーハ表面にサーモラベルを貼り付け、イオン注入により上昇したウェーハ表面温度から判定する方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−9007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記方法では、サーモラベルを貼ったウェーハを注入処理するため、製造を停止する必要があることや、サーモラベルを貼った位置の情報しか得られないため、ウェーハ面内の局所的な温度異常を見逃す可能性があるなどの問題がある。
また、サーモラベルでウェーハ温度を評価する場合、サーモラベルの焼損を防止するために、アルミテープや、熱に強い樹脂性テープをウェーハ表面に貼り付けてイオン注入する必要がある。しかし、これにより、イオン注入機においてパーティクル汚染や金属汚染などが発生する可能性がある。また、これらの汚染等の評価を別に行う必要があるため、製造を停止させ、装置稼働率の低下を引き起こす問題もあった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、イオン注入剥離法を用いた貼り合わせウェーハを製造するにあたり、作製される貼り合わせウェーハの品質の悪化を防止するため、イオン注入機の基板保持具の劣化状況を容易かつ高精度に判定することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、イオン注入機の基板保持具の劣化を判定する方法であって、前記イオン注入機において、基板保持具でボンドウェーハを保持して、該保持されたボンドウェーハの表面から水素イオン、希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入して、前記ボンドウェーハ内部にイオン注入層を形成し、前記ボンドウェーハのイオン注入された側の表面とベースウェーハの表面とを、絶縁膜を介して、或いは、直接貼り合わせた後、前記ボンドウェーハの一部を前記イオン注入層で剥離して、前記ベースウェーハ上に前記ボンドウェーハから剥離した薄膜を有する貼り合わせウェーハを作製し、前記作製された貼り合わせウェーハ又は前記一部が剥離されたボンドウェーハの品質を測定し、該測定された品質から、前記ボンドウェーハを保持したイオン注入機の基板保持具の劣化を判定すること特徴とするイオン注入機の基板保持具の劣化判定方法を提供する。
【0011】
このように、イオン注入剥離法により作製された貼り合わせウェーハ又は剥離後のボンドウェーハの品質は、イオン注入の際にボンドウェーハを保持したイオン注入機の基板保持具の劣化が反映されるため、その品質を測定して基板保持具の劣化を間接的に判定することで、容易かつ高精度に基板保持具の劣化を判定することができる。また、薄膜又はボンドウェーハの全面の品質を測定することが容易であるため、基板保持具の劣化が一部のみの場合にも劣化を高精度に判定できる。さらに、本発明であれば、製品の貼り合わせウェーハの製造の通常の過程で判定を行うことができ、また、イオン注入機内にウェーハ以外の特別な部品等を入れる必要が無いため、汚染等のおそれが無く、装置稼働率が低下しない。
以上より、本発明であれば、高精度かつ容易にイオン注入機の基板保持具の劣化を判定できるため、貼り合わせウェーハの品質及び生産性の向上に貢献することができる。
【0012】
このとき、前記測定する品質を、前記作製された貼り合わせウェーハの薄膜又は前記一部が剥離されたボンドウェーハの剥離面の面粗さ分布、剥離面の表面欠陥の面内分布、前記作製された貼り合わせウェーハの薄膜の平均厚さ、面内厚さ分布、前記作製された貼り合わせウェーハの研磨或は平坦化熱処理された薄膜の面内厚さ分布、表面欠陥の面内分布のうち少なくとも一つとすることが好ましい。
これらのような品質を測定することで基板保持具の劣化を高精度に判定でき、また、測定も容易である。
【0013】
このとき、前記判定する基板保持具の劣化を、前記基板保持具の表面に形成されたシート部材の劣化、又は、前記基板保持具を冷却するための冷却水配管の不具合によるウェーハ冷却能力の低下とすることが好ましい。
このようなシート部材や冷却水配管の劣化は、形成される薄膜やボンドウェーハの品質に特に影響するため、本発明によって、より高精度に判定できる。
【0014】
このとき、前記貼り合わせウェーハの作製の際、前記イオン注入機において、前記ボンドウェーハの表面から、イオン注入加速電圧70keV以上でイオン注入することが好ましい。
このようにイオン注入加速電圧70keV以上でイオン注入することで、基板保持具の劣化状況が、形成される薄膜又はボンドウェーハの品質に明確に反映されるため、より高精度の判定が可能である。
【0015】
前記貼り合わせウェーハの作製において、前記ボンドウェーハ及び前記ベースウェーハとして、シリコン単結晶ウェーハを用いることができる。
このように、シリコン単結晶ウェーハ同士の貼り合わせによる貼り合わせウェーハの作製において、本発明の方法で基板保持具の劣化を判定することができる。
【0016】
前記イオン注入機を、複数の基板保持具を有するバッチ式イオン注入機とし、前記作製された貼り合わせウェーハ又は前記一部が剥離されたボンドウェーハの前記測定された品質から、前記ボンドウェーハを保持した前記複数の基板保持具の劣化を判定して、劣化した基板保持具を特定することが好ましい。
このようなバッチ式のイオン注入機においては、本発明の方法により複数の基板保持具の中で劣化した基板保持具を高精度に特定することができるため、貼り合わせウェーハの歩留まりの向上に貢献できる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、高精度かつ容易にイオン注入機の基板保持具の劣化を判定できるため、貼り合わせウェーハの品質及び生産性の向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1において測定した剥離後のボンドウェーハの面粗さマップである。
【図2】実施例1において測定した剥離後のボンドウェーハの面内のAFMによる最大面粗さと最小面粗さを示す図である。
【図3】実施例2において測定した剥離後のSOIウェーハのSOI層の面内膜厚分布である。
【図4】実施例3において測定した研磨後のSOIウェーハのSOI層の面内膜厚分布である。
【図5】実施例6において測定した研磨後のSOIウェーハのSOI層表面のLPDである。
【図6】実施例7において測定した剥離後のボンドウェーハのHAZEマップである。
【図7】実験例において測定した平坦化熱処理後のSOIウェーハのSOI層の面内膜厚分布とイオン注入加速電圧との関係を示すグラフである。
【図8】(a)バッチ式イオン注入機の回転体部分の概略平面図と、(b)その基板保持具の部分拡大図である。
【図9】イオン注入機において基板を保持していない状態の基板保持具の(a)平面図と(b)側面図であり、また、基板を保持している状態の基板保持具の(c)平面図と(d)側面図である。
【図10】イオン注入機の基板保持具の冷却水配管を説明するための基板保持具の(a)裏面の概略図と、(b)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者らは、イオン注入機の基板保持具の劣化状況について鋭意検討を重ねたところ、イオン注入機の長期間にわたる使用で、基板保持具のシート部材が劣化すると、ウェーハ冷却能力が低下するため、ウェーハ品質に影響を与えることが分かった。また、基板保持具への冷却水配管の詰まりなどで、循環する冷却水の流量が低下することでも、ウェーハ冷却性能が低下し、ウェーハ品質に影響を与えることが分かった。
そして、これらの知見に基いて、イオン注入剥離法で作製した貼り合わせウェーハや剥離後のボンドウェーハの品質から、イオン注入機の基板保持具のシート部材の劣化状況、基板保持具の冷却水系統の不具合等を判定することができることを発想し、本発明を完成させるに至った。
【0020】
ここで、イオン注入機の基板保持具の劣化状況と、イオン注入剥離法により形成された剥離ウェーハ(貼り合わせウェーハ又は剥離して残ったボンドウェーハ)の品質との関係について下記に説明する。
【0021】
イオン注入剥離法による貼り合わせウェーハの製造におけるイオン注入工程においては、まず、所望の深さに、剥離に十分な量の水素、あるいは、希ガス等を注入してボンドウェーハ内部にイオン注入層(注入元素の高濃度層)を形成する。この際、イオン注入機の基板保持具の本体部分の金属板表面には、ウェーハとの接触面積を向上し、熱伝導率を高め、かつ、金属汚染を低減するための樹脂製シート(或いはセラミックシート)が貼り付けられている。
この樹脂製シートが劣化すると、樹脂が硬化してウェーハとの接触面積が低下したり、あるいは、樹脂そのものの熱伝導率が低下するため、イオン注入中に発生する熱エネルギーをウェーハから逃がすことが難しくなり、イオン注入中のウェーハ温度が上昇してしまう。
【0022】
イオン注入剥離法において注入されるイオン種は、水素、あるいはヘリウム等の希ガスであり、ウェーハに熱が掛かると比較的容易に熱拡散するものが多い。特に、水素は非常に拡散しやすい元素で、イオン注入中のウェーハ温度が上昇すると容易に拡散し、形成されるイオン注入層のピーク濃度が下がり、その深さ分布がシャープなガウス分布から、ブロードなものへと変化してしまう。このようなブロードな分布を持つイオン注入層の場合、ボンドウェーハを土台となるベースウェーハに貼り合わせ、イオン注入層にてウェーハの剥離を行うと、剥離の際に生じる欠陥領域が深さ方向に広がることで、剥離面の面粗さが大きくなってしまう。また、場合によっては、剥離時の剥離層厚さ(薄膜厚さ)が変化してしまうことがある。
【0023】
このような樹脂製シートの劣化は、基板保持具全体で均一に劣化するとは限らず、部分的に劣化することが多い。また、基板保持具本体部分や樹脂性シート(或いはセラミックスシート)にキズ等が発生すると、基板保持具面内で当該キズが発生した部分のみ冷却効率が低下してしまうこともある。この場合、保持される位置によってウェーハ冷却効率が変わるため、イオン注入中のウェーハ面内温度分布は不均一となる。この状態でイオン注入されたウェーハをイオン注入層で剥離すると、剥離したウェーハ表面の面粗さは、ウェーハ温度が高い位置では大きく、ウェーハ温度が低い位置では小さくなり、面内で不均一となってしまう。この場合には、剥離した薄膜やボンドウェーハの厚さも、面内で不均一となることがある。
【0024】
さらに、イオン注入剥離法では、この剥離した薄膜のダメージ層の除去、あるいは、平坦化のために研磨や平坦化熱処理が行われる。
この研磨の際には、薄膜の剥離面の面粗さに応じて研磨レートが変化してしまい、剥離後の面粗さの面内分布と同様の面内厚さ分布が形成されてしまう。これは、面粗さの大きい領域は、研磨スラリーが入りやすく研磨が進みやすくなることが影響している。また、イオン注入時の注入温度が高く、ダメージ層が広がりすぎると、通常の研磨取り代では完全にダメージを除去できず、ダメージの一部がピットなどの欠陥層として残ってしまう場合もある。また、平坦化熱処理の際にも、同様に、面内厚さ分布や表面欠陥の面内分布が不均一に生じてしまう。
【0025】
このように、イオン注入時のウェーハ温度は、剥離した貼り合わせウェーハやボンドウェーハの品質に大きな影響を及ぼすことから、この劣化した品質を検査工程にて検知できれば、イオン注入機の操業を停止することなく、容易に基板保持具の劣化状況を把握し、交換すべき基板保持具の判定を行うことができる。
【0026】
以下、本発明のイオン注入機の基板保持具の劣化判定方法の好適な実施形態について説明する。
本発明では、例えば、ボンドウェーハとして準備したシリコン単結晶ウェーハに酸化膜を形成し、イオン注入機において、基板保持具でボンドウェーハを保持させて、その表面から水素イオン、希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入して、ボンドウェーハ内部にイオン注入層を形成する。
【0027】
この際用いるイオン注入機としては、特に限定されず、通常のイオン注入剥離法による貼り合わせウェーハの製造に用いられているイオン注入機を用いればよく、例えば枚葉式のイオン注入機を用いることができるが、図8−10に示すようなバッチ式イオン注入機11を用いることもできる。
【0028】
図8(a)にバッチ式イオン注入機11の回転体部分の概略図及び(b)その基板保持具10の拡大図、図9(a)に基板を保持していない状態の基板保持具10の平面図、図9(b)にその側面図、図9(c)に基板Wを保持した状態の基板保持具10の平面図、図9(d)にその側面図を示す。
図8,9に示すバッチ式イオン注入機11は、回転体13と、該回転体13に設けられ基板W(ボンドウェーハ)を配置する複数の基板保持具10とを備え、該基板保持具10に保持され公転している複数の基板Wにイオン注入するものである。また、基板保持具10の本体部分の基板Wと接触する部分には、基板Wを保持するためのシート部材14が設けられており、これは、基板保持具10の本体部分との接触による基板Wのキズの発生防止や基板Wの均一な冷却に貢献している。また、基板Wを確実に保持するために、基板固定部品12も、保持される基板W外周に接触するように設けられている。
【0029】
また、図10(a)に基板保持具10の基板保持する面とは反対側の面の概略図と、図10(b)にその側面の概略図を示す。イオン注入機11の基板保持具10には、イオン注入時の基板Wの熱を効率的に逃がすために冷却水配管15が設けられており、この冷却水配管15内に冷却水を循環させている。
【0030】
そして、本発明においてイオン注入条件としては、通常のイオン注入剥離法による貼り合わせウェーハ作製時に用いられる条件を適用することができ、剥離が生じる程度の濃度のイオン注入層が形成されればよいが、例えば、イオン注入加速電圧70keV以上でイオン注入することが好ましい。
イオン注入エネルギーが高ければ高いほど、イオン注入中のウェーハ温度が上がるため、劣化した基板保持具では、ウェーハ冷却効率がより落ちるので、剥離した薄膜、ボンドウェーハの品質に顕著に影響してくる。このため、加速電圧を70keV以上とすれば、ウェーハに十分高い加速電圧やビーム電流値でイオン注入することができるため、イオン注入中のウェーハ注入温度が上昇し、劣化した基板保持具では、その劣化状況がより強調され、劣化判定が容易になる。
【0031】
そして、イオン注入後、ボンドウェーハを洗浄し、土台となるベースウェーハ(例えばシリコン単結晶ウェーハ)と貼り合わせる。貼り合わせ後、剥離熱処理(例えば500℃、30分)を行い、イオン注入層でボンドウェーハを剥離して、貼り合わせウェーハ(貼り合わせSOIウェーハ)、及び、一部が剥がされて残ったボンドウェーハが形成される。
なお、両方又は一方のウェーハの貼り合わせ面にプラズマ処理を行って結合強度を高めた上で貼り合わせることによって、剥離熱処理を行わずに、機械的な外力を加えて剥離することもできる。
【0032】
本発明では、上記のように作製された貼り合わせウェーハ又は剥離されたボンドウェーハの品質を測定して、当該測定された品質から、上記イオン注入時にボンドウェーハを保持した基板保持具の劣化を判定する。
【0033】
このとき測定する品質としては、特に限定されないが、作製された貼り合わせウェーハの薄膜又は一部が剥離されたボンドウェーハの剥離面の面粗さ分布、剥離面の表面欠陥の面内分布、作製された貼り合わせウェーハの薄膜の平均厚さ、面内厚さ分布のうち少なくとも一つとすることができる。
また、平坦化やダメージ層除去の目的で研磨或は平坦化熱処理が施された貼り合わせウェーハの薄膜の面内厚さ分布、表面欠陥の面内分布のうち少なくとも一つを測定することもできる。
このように剥離後のボンドウェーハや貼り合わせウェーハの薄膜の剥離面は、イオン注入時の基板保持具の劣化による面内温度の不均一により、面粗さ分布や表面欠陥の面内分布、厚さ等が不均一になっているため、これらを測定することで、精度良く基板保持具の劣化を判定することができる。また、研磨や平坦化熱処理が施された薄膜でも、その面内厚さ分布や表面欠陥の面内分布は、当該処理が施される前の面粗さ分布や表面欠陥の面内分布が反映されているため、当該処理後でも高精度に基板保持具の劣化を判定することができる。
【0034】
また、判定する基板保持具の劣化としては、基板保持具の劣化全般を判定することができるが、特には、基板保持具の表面に形成されたシート部材の劣化、又は、基板保持具を冷却するための冷却水配管の不具合によるウェーハ冷却能力の低下を判定することが好ましい。
このようなシート部材の劣化や冷却水配管の不具合は、保持されるボンドウェーハのイオン注入中の温度に直接影響するため、高精度の判定が容易であり、また、作製される貼り合わせウェーハの薄膜の品質にも大きく影響するため、上記の劣化を判定することで、製造する貼り合わせウェーハの歩留まりを向上できる。
【0035】
また、基板保持具の劣化状況の具体的な判定方法としては、例えば以下の方法がある。
まず、剥離ウェーハ(剥離後のボンドウェーハ又は貼り合わせウェーハ)の剥離面全体の面粗さを、光学的反射法による面粗さ測定器にて測定することにより、面内の粗さ分布の不均一性から基板保持具の劣化状況を判定することができる。あるいは、今まで当該基板保持具で保持して剥離してきたウェーハ(正常な面内粗さを有する標準サンプル)との面粗さの違いからも劣化判定できる。
【0036】
または、剥離後のボンドウェーハ又は貼り合わせウェーハの薄膜の剥離面全体の面粗さを、パーティクルカウンターによって検出されるバックグランドノイズ(HAZE)として測定することにより、面内のHAZE分布の不均一性、あるいは、今まで当該基板保持具で保持して剥離してきたウェーハ(正常なHAZE値を有する標準サンプル)とのHAZE値の大きさの違いから、基板保持具の劣化状況を判定することもできる。
【0037】
または、基板保持具の劣化状況にもよるが、劣化状況が酷い場合、剥離後の薄膜の面内分布をエリプソや反射分光法を用いた膜厚測定装置などで測定することで、面内の膜厚分布の不均一性、あるいは、今まで当該基板保持具で保持して剥離してきたウェーハ(正常な膜厚分布を有する標準サンプル)との膜厚の違いから、基板保持具の劣化状況を判定することもできる。
【0038】
また、剥離した貼り合わせウェーハの薄膜に平坦化研磨や平坦化熱処理を施して、処理された薄膜の膜厚分布をエリプソや反射分光法を用いた膜厚測定装置などで測定することで、面内の膜厚分布の不均一性、あるいは、今まで当該基板保持具で保持して剥離してきたウェーハ(正常な膜厚分布を有する標準サンプル)との膜厚の違いから、基板保持具の劣化状況を判定することもできる。
【0039】
または、剥離した貼り合わせウェーハの薄膜に平坦化研磨や平坦化熱処理を施して、処理された薄膜の表面欠陥をパーティクルカウンターなどで測定することで、処理前の面粗さが大きかったために除去し切れなかった剥離ダメージおよび面粗さを、欠陥の密集として検知することができ、これから基板保持具の劣化状況を判定することもできる。
【0040】
また、図8−10に示すような、複数の基板保持具を有し、複数のウェーハのイオン注入を同時に行うバッチ式イオン注入機の場合には、一度に全ての基板保持具が同じ早さで劣化することは無く、通常、ある特定の位置の基板保持具が特に劣化していく。このため、本発明により上記各測定及び判定方法を実施する際には、基板保持具で保持されたウェーハで形成された剥離ウェーハの品質の測定結果を、イオン注入時の当該ウェーハが保持された基板保持具の位置によって分類することで、劣化している基板保持具を容易に特定することが可能である。
【0041】
以上のように、本発明であれば、イオン注入機の基板保持具の劣化判定において、特別な装置は不要で、イオン注入機への汚染等のおそれはなく、製品の貼り合わせウェーハの製造過程でも高精度に劣化を判定することができる。従って、高品質の貼り合わせウェーハを歩留まり良く製造することに貢献できる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
ボンドウェーハ及びベースウェーハとして、CZ法で作製されたシリコン単結晶ウェーハ(直径200mm、結晶方位(100)、抵抗率10Ωcm、p型)を準備し、ボンドウェーハのみに200nmの熱酸化膜を成長させた後、バッチ式イオン注入機の基板保持具に17枚のボンドウェーハをそれぞれ保持させて、加速電圧(注入エネルギー)100keV、注入量8×1016atoms/cmでHイオンを注入してイオン注入層を形成した。
【0043】
次に、ボンドウェーハのイオン注入側の面を貼り合わせ面としてベースウェーハと貼り合わせた後、バッチ式横型熱処理炉にて、窒素雰囲気、500℃の熱処理を30分施し、ボンドウェーハをイオン注入層で剥離して、ベースウェーハ上にSOI層を有するSOIウェーハを作製した。
【0044】
バッチ式イオン注入機の17ヶ所の基板保持具に対応する剥離したボンドウェーハの剥離面の面粗さマップを、光学式表面粗さ測定器(Schmitt社製TMS)で測定した。この場合、1ヶ所の基板保持具に対応するウェーハの剥離面の面粗さマップが、ウェーハの左右方向に面内分布を持っていた。図1(a)に、当該左右方向の面内分布が確認されたウェーハの面粗さマップを示す。
このウェーハの面粗さ(10μm角)をAFMにて評価したところ、面粗さの悪い部分ではP−Vが102nm、良い部分ではP−Vが77nmと大きな差があることが分かった。図2(a)に、図1(a)の測定結果のウェーハの面内で面粗さの悪い部分と良い部分をそれぞれAFMで評価した結果を示す。
一方、他の16ヶ所の基板保持具に対応するウェーハについては、図1(b)に示すように剥離面の面粗さマップには特別な傾向は見られず、AFMによる面粗さ(10μm角)についても、図2(b)に示すように面内で大きな差は見られなかった。
【0045】
これらの結果より、図1(a)の測定結果を示したボンドウェーハを保持した基板保持具の劣化が推定された。そこで、その基板保持具の冷却水流量を確認したところ、特に異常は見られなかったので、その基板保持具のヒートシンク(シリコーンゴム製シート部材)を新品に交換し、当該基板保持具で上記と同一条件でイオン注入してSOIウェーハを作製した。この剥離したボンドウェーハの剥離面の面粗さマップ及び面粗さ(10μm角)を測定したところ、他の16ヶ所の基板保持具と同等の分布レベルが得られた。
【0046】
(実施例2)
実施例1と同様に、ただし、イオン注入時の加速電圧(注入エネルギー)を60keVにして、17枚のSOIウェーハを作製した。
【0047】
バッチ式イオン注入機の17ヶ所の基板保持具に対応する作製したSOIウェーハのSOI層の面内膜厚分布を、光学式膜厚測定器(ADE社製Acumap)で測定した。この場合、1ヶ所の基板保持具に対応するSOIウェーハのSOI層の面内膜厚分布(P−V値)が、3.7nmと大きかった。図3(a)に、当該面内膜厚分布が大きかったウェーハの測定結果を示す。一方、他の16ヶ所の基板保持具に対応するウェーハについては、図3(b)に示すようにSOI層の面内膜厚分布(P−V値)が0.8nmと標準値を示していた。
【0048】
これらの結果より、図3(a)の測定結果を示すSOIウェーハのボンドウェーハを保持した基板保持具の劣化が推定された。そこで、その基板保持具の冷却水流量を確認したところ、特に異常は見られなかったので、その基板保持具のヒートシンク(シリコーンゴム製シート部材)を新品に交換し、当該基板保持具で上記と同一条件でイオン注入してSOIウェーハを作製した。このSOI層の面内膜厚分布(P−V値)を測定したところ、他の16ヶ所の基板保持具と同等のレベル(0.8nm)が得られた(図3(b))。
【0049】
(実施例3)
実施例1と同様に、ただし、剥離後のSOIウェーハのSOI層に200nmの研磨代で研磨を施して、17枚のSOIウェーハを作製した。
【0050】
バッチ式イオン注入機の17ヶ所の基板保持具に対応する研磨後のSOIウェーハのSOI層の面内膜厚分布を、光学式膜厚測定器(ADE社製Acumap)で測定した。この場合、1ヶ所の基板保持具に対応するSOIウェーハのSOI層の面内膜厚分布(P−V値)が、10nmと大きかった。図4(a)に当該ウェーハの面内膜厚分布の測定結果を示す。一方、他の16ヶ所の基板保持具に対応するウェーハについては、図4(b)に示すように面内膜厚分布(P−V値)が6nmと標準値を示していた。
これらの結果より、図4(a)の測定結果を示すSOIウェーハのボンドウェーハを保持した基板保持具の劣化が推定された。そこで、その基板保持具の冷却水流量を確認したところ、冷却水流量の低下が確認されたため、規定の冷却水流量が得られるように調整し、当該基板保持具で上記と同一条件でイオン注入してSOIウェーハを作製した。このSOIウェーハのSOI層の面内膜厚分布(P−V値)を測定したところ、他の16ヶ所の基板保持具と同等のレベル(6nm)が得られた。
【0051】
(実施例4)
ボンドウェーハ及びベースウェーハとして、CZ法で作製されたシリコン単結晶ウェーハ(直径300mm、結晶方位(100)、抵抗率10Ωcm、p型)を準備し、ボンドウェーハのみに150nmの熱酸化膜を成長させた後、バッチ式イオン注入機の基板保持具に13枚のボンドウェーハをそれぞれ保持させて、加速電圧(注入エネルギー)55keV、注入量6×1016atoms/cmでHイオンを注入してイオン注入層を形成した。
【0052】
次に、ボンドウェーハのイオン注入側の面を貼り合わせ面としてベースウェーハと貼り合わせた後、バッチ式横型熱処理炉にて、窒素雰囲気、500℃の熱処理を30分施し、ボンドウェーハをイオン注入層で剥離して、ベースウェーハ上にSOI層を有するSOIウェーハを作製した。その後、剥離後のSOIウェーハに、非酸化性雰囲気下、1200℃、2時間のArアニール(平坦化熱処理)を施した。
【0053】
バッチ式イオン注入機の13ヶ所の基板保持具に対応する平坦化熱処理後のSOIウェーハのSOI層の平均膜厚を、光学式膜厚測定器(ADE社製Acumap)で測定した。この場合、1ヶ所の基板保持具に対応するSOIウェーハのSOI層の平均膜厚が、151.5nmとやや大きかった。一方、他の12ヶ所の基板保持具に対応するウェーハについては、SOI層の平均膜厚が150nmと標準値を示していた。尚、このとき、SOI層の面内膜厚分布(P−V値)は、前者が2.0nm、後者が1.9nmであり、特に差はみられなかった。
【0054】
これらの結果より、平均膜厚が151.5nmとなったSOIウェーハのボンドウェーハを保持した基板保持具の劣化が推定された。そこで、その基板保持具の冷却水流量を確認したところ、特に異常は見られなかったので、その基板保持具のヒートシンク(シリコーンゴム製シート部材)を新品に交換し、当該基板保持具で上記と同一条件でイオン注入してSOIウェーハを作製した。このSOIウェーハのSOI層の平均膜厚を測定したところ、他の12ヶ所の基板保持具と同等のレベル(150nm)が得られた。
【0055】
(実施例5)
実施例4と同様に、ただし、イオン注入時の加速電圧(注入エネルギー)を85keV、注入量を7.5×1016atoms/cmにして、13枚のSOIウェーハを作製した。
【0056】
バッチ式イオン注入機の13ヶ所の基板保持具に対応する平坦化熱処理後のSOIウェーハのSOI層の平均膜厚を、光学式膜厚測定器(ADE社製Acumap)で測定した。この場合、1ヶ所の基板保持具に対応するSOIウェーハのSOI層の平均膜厚が、303nmとやや大きかった。一方、他の12ヶ所の基板保持具に対応するウェーハについては、SOI層の平均膜厚が300nmと標準値を示していた。尚、このとき、SOI層の面内膜厚分布(P−V値)は、前者が5.4nm、後者が2.4nmであり、面内膜厚分布(P−V値)においても差異が見られた。これは、実施例4に比べて注入エネルギーが大きいことが、面内膜厚分布(P−V値)においても差異が出た要因であると考えられる。
【0057】
これらの結果より、平均膜厚が303nmとなったSOIウェーハのボンドウェーハを保持した基板保持具の劣化が推定された。そこで、その基板保持具の冷却水流量を確認したところ、特に異常は見られなかったので、その基板保持具のヒートシンク(シリコーンゴム製シート部材)を新品に交換し、当該基板保持具で上記と同一条件でイオン注入してSOIウェーハを作製した。このSOIウェーハのSOI層の平均膜厚及び面内膜厚分布(P−V値)を測定したところ、それぞれ、他の12ヶ所の基板保持具と同等のレベル(300nm、2.4nm)が得られた。
【0058】
(実施例6)
実施例1と同様に、ただし、イオン注入時にバッチ式イオン注入機の基板保持具に13枚のボンドウェーハをそれぞれ保持させ、剥離後のSOIウェーハのSOI層に200nmの研磨代で研磨を施して、13枚のSOIウェーハを作製した。
【0059】
バッチ式イオン注入機の13ヶ所の基板保持具に対応する研磨後のSOI層表面のLPDを、光学式表面検査装置(KLA−Tencor社製SP1)で測定した。この場合、1ヶ所の基板保持具に対応するSOIウェーハについて、SOI層のエッジ部の一部の領域にLPDの密集が見られ、そのLPD個数がサイズ0.16μm以上で227個/waferであった。図5(a)に当該ウェーハのLPDの測定結果を示す。一方、他の12ヶ所の基板保持具に対応するSOIウェーハについては、図5(b)に示すようにLPD個数がサイズ0.16μm以上で平均13個/waferであった。
【0060】
これらの結果より、図5(a)の測定結果を示すSOIウェーハのボンドウェーハを保持した基板保持具の劣化が推定された。そこで、その基板保持具の冷却水流量を確認したところ、特に異常は見られなかったので、その基板保持具のヒートシンク(シリコーンゴム製シート部材)を新品に交換し、当該基板保持具で上記と同一条件でイオン注入してSOIウェーハを作製した。このSOIウェーハのSOI層表面のLPDを測定したところ、他の12ヶ所の基板保持具と同等のレベル(13個/wafer)が得られた。
【0061】
(実施例7)
実施例4と同様に、ただし、イオン注入時の加速電圧(注入エネルギー)を85keV、注入量を7.5×1016atoms/cmにし、剥離後の平坦化熱処理(Arアニール)は行わずに、13枚のSOIウェーハを作製した。
【0062】
バッチ式イオン注入機の13ヶ所の基板保持具に対応する剥離したボンドウェーハの剥離面のHAZEマップを、光学式表面検査装置(KLA−Tencor社製SP1)で測定した。この場合、1ヶ所の基板保持具に対応するボンドウェーハについて、HAZEマップの一部(右側)の領域にHAZE値が大きく変化した領域が発生していた。図6(a)に当該ウェーハのHAZEマップを示す。一方、他の12ヶ所の基板保持具に対応するウェーハについては、図6(b)に示すように、図6(a)のウェーハのようなHAZE値が大きく変化する領域は見られなかった。
【0063】
これらの結果より、図6(a)の測定結果を示すボンドウェーハを保持した基板保持具の劣化が推定された。そこで、その基板保持具の冷却水流量を確認したところ、特に異常は見られなかったので、その基板保持具のヒートシンク(シリコーンゴム製シート部材)を新品に交換し、当該基板保持具で上記と同一条件でイオン注入してSOIウェーハを作製した。この剥離後のボンドウェーハのHAZEマップを測定したところ、他の12ヶ所の基板保持具と同等のHAZEレベルが得られた。
【0064】
(実験例):基板保持具の劣化判定に好適な加速電圧を見出すための実験例
ボンドウェーハ及びベースウェーハとして、CZ法で作製されたシリコン単結晶ウェーハ(直径300mm、結晶方位(100)、抵抗率10Ωcm、p型)を各8枚準備し、ボンドウェーハのみに150nmの熱酸化膜を成長させた後、イオン注入機の基板保持具にボンドウェーハを保持させて、注入量7.5×1016atoms/cmでHイオンを注入してイオン注入層を形成した。この際、劣化したヒートシンクを有する基板保持具と、正常なヒートシンクを有する基板保持具の両者を用い、さらに、イオン注入時の加速電圧(注入エネルギー)を55、65、75、85keVと4つの条件に振って、それぞれイオン注入を行った。
【0065】
次に、ボンドウェーハのイオン注入側の面を貼り合わせ面としてベースウェーハと貼り合わせた後、バッチ式横型熱処理炉にて、窒素雰囲気、500℃の熱処理を30分施し、ボンドウェーハをイオン注入層で剥離して、ベースウェーハ上にSOI層を有するSOIウェーハを8枚作製した。その後、剥離後のSOIウェーハに、非酸化性雰囲気下、1200℃、2時間のArアニール(平坦化熱処理)を施した。
【0066】
このように作製されたSOIウェーハのSOI層の面内膜厚分布(P−V値)を測定し、P−V値の加速電圧依存性を求めた。この結果を図7に示す。
図7によれば、劣化したヒートシンクを有する基板保持具を用いてイオン注入を行った場合、加速電圧が70keV以上になると、P−V値が大きくなり、正常なヒートシンクを有する基板保持具との差が明確になることがわかる。すなわち、加速電圧が70keV以上の条件でイオン注入を行った方が、基板保持具の劣化判定を行う際の剥離ウェーハの品質の差が明確になることを示している。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0068】
10…基板保持具、 11…イオン注入機、 12…基板固定部品、
13…回転体、 14…シート部材、 15…冷却水配管、 W…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入機の基板保持具の劣化を判定する方法であって、
前記イオン注入機において、基板保持具でボンドウェーハを保持して、該保持されたボンドウェーハの表面から水素イオン、希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入して、前記ボンドウェーハ内部にイオン注入層を形成し、前記ボンドウェーハのイオン注入された側の表面とベースウェーハの表面とを、絶縁膜を介して、或いは、直接貼り合わせた後、前記ボンドウェーハの一部を前記イオン注入層で剥離して、前記ベースウェーハ上に前記ボンドウェーハから剥離した薄膜を有する貼り合わせウェーハを作製し、
前記作製された貼り合わせウェーハ又は前記一部が剥離されたボンドウェーハの品質を測定し、該測定された品質から、前記ボンドウェーハを保持したイオン注入機の基板保持具の劣化を判定すること特徴とするイオン注入機の基板保持具の劣化判定方法。
【請求項2】
前記測定する品質を、前記作製された貼り合わせウェーハの薄膜又は前記一部が剥離されたボンドウェーハの剥離面の面粗さ分布、剥離面の表面欠陥の面内分布、前記作製された貼り合わせウェーハの薄膜の平均厚さ、面内厚さ分布、前記作製された貼り合わせウェーハの研磨或は平坦化熱処理された薄膜の面内厚さ分布、表面欠陥の面内分布のうち少なくとも一つとすることを特徴とする請求項1に記載されたイオン注入機の基板保持具の劣化判定方法。
【請求項3】
前記判定する基板保持具の劣化を、前記基板保持具の表面に形成されたシート部材の劣化、又は、前記基板保持具を冷却するための冷却水配管の不具合によるウェーハ冷却能力の低下とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のイオン注入機の基板保持具の劣化判定方法。
【請求項4】
前記貼り合わせウェーハの作製の際、前記イオン注入機において、前記ボンドウェーハの表面から、イオン注入加速電圧70keV以上でイオン注入することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のイオン注入機の基板保持具の劣化判定方法。
【請求項5】
前記貼り合わせウェーハの作製において、前記ボンドウェーハ及び前記ベースウェーハとして、シリコン単結晶ウェーハを用いることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のイオン注入機の基板保持具の劣化判定方法。
【請求項6】
前記イオン注入機を、複数の基板保持具を有するバッチ式イオン注入機とし、前記作製された貼り合わせウェーハ又は前記一部が剥離されたボンドウェーハの前記測定された品質から、前記ボンドウェーハを保持した前記複数の基板保持具の劣化を判定して、劣化した基板保持具を特定することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のイオン注入機の基板保持具の劣化判定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−16745(P2013−16745A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150394(P2011−150394)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【出願人】(591037498)長野電子工業株式会社 (51)
【Fターム(参考)】