イグナイタ
【課題】効率的なコネクタを兼ねるイグナイタケースの設計を実現させ、2ndボンドをセラミック基板上に安定的に行うイグナイタを提供することを目的とする。
【解決手段】セラミック基材の片側に導体パターンが形成されたセラミック基板と、前記セラミック基板の導体パターンとコネクタを兼ねるイグナイタケースにインサート成形された端子の間がアルミワイヤボンディングで電気的に接続され、前記セラミック基板上に形成される導体パターンにアルミワイヤボンディングが直接なされるイグナイタにおいて、アルミワイヤボンディング部の導体パターンの下にセラミック基材の表裏を貫く穴が形成され、穴の内部に金属が充填される。
【解決手段】セラミック基材の片側に導体パターンが形成されたセラミック基板と、前記セラミック基板の導体パターンとコネクタを兼ねるイグナイタケースにインサート成形された端子の間がアルミワイヤボンディングで電気的に接続され、前記セラミック基板上に形成される導体パターンにアルミワイヤボンディングが直接なされるイグナイタにおいて、アルミワイヤボンディング部の導体パターンの下にセラミック基材の表裏を貫く穴が形成され、穴の内部に金属が充填される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イグナイタに内蔵する基板とコネクタを兼ねるイグナイタケースにインサート成形された端子のワイヤボンディング方法に関し、特にセラミック基板上のワイヤボンディング部分の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示す内燃機関用点火コイルにおいて、1は1次コイル、2は中心鉄心、3は2次コイル、4は点火コイルケース、5はイグナイタである。イグナイタ5は、1次コイル1、中心鉄心2及び2次コイル3の上部に設置され点火コイルケース4の内部に、1次コイル1、中心鉄心2及び2次コイル3と共に組み込まれた後、点火コイル充填樹脂でモールドされている。
【0003】
イグナイタ5は図2に示すような構造であり、51は1次電流遮断素子、52はヒートシンク、53は制御回路、54はセラミック基板、55はアルミワイヤ、56はコレクタ端子、57はバッテリ供給端子、58は2次コイル低圧接続端子である。イオン電流検出機能をもつ内燃機関用点火コイルについても図1の構造であるが、イグナイタ5は図3に示すような構造である。51は1次電流遮断素子、52はヒートシンク、53は制御回路、54はセラミック基板、55はアルミワイヤ、56はコレクタ端子、57はバッテリ供給端子、58は2次コイル低圧接続端子、59はイオン電流検出用電源基板、60はイオン電流検出用電源基板の接続部である。
【0004】
図2に示す内燃機関用点火コイルのイグナイタ及び図3に示すイオン電流検出機能をもつ内燃機関用点火コイルのイグナイタともに1次電流遮断素子51を制御する電子回路はセラミック基板54上に形成されており、セラミック基板54とコネクタを兼ねるイグナイタケースにインサート成形される端子との接続構造は図5に示すとおりで、セラミック基材20、導体パターン21、ガラス保護層22で構成されるセラミック基板がエポキシ接着剤24でヒートシンク52に固定され、さらにヒートシンク52は端子28をインサート成形されたイグナイタケース27にエポキシ接着剤26で固定される。基板54の導体パターンとはんだで固定される銅若しくは42アロイ製のボンディングパッド29表面にアルミワイヤが1stボンドされた後に端子28に2ndボンディングされ、セラミック基板54の導体パターンと外部入出力端子である端子28が電気的に接続されている。アルミワイヤボンディングが完了すると、セラミック基板54はアルミワイヤボンディングによってイグナイタケース27にインサート成型された端子28と電気的に接続され、イグナイタケース27に固定されたヒートシンク52に前記セラミック基板54は固定された状態で、エポキシ樹脂31によってモールドされる。
【0005】
上述の様に、イグナイタケースにインサート成形される端子28にアルミワイヤを2ndボンドするため、イグナイタケースは、ボンディング完了時のワイヤボンダのアルミワイヤカットによるツールの後退を考慮し形状決定を行う必用がある。
すなわち図6に示すように2ndボンド後にワイヤボンダのツール32が矢印33の方向に移動すると、器状に成形されているイグナイタケースに接触しワイヤボンディングができない懸念が生じる。
よって、あらかじめツールの移動量を考慮したデッドスペースがコネクタ設計に反映されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、環境性能の要求に伴い内燃機関の更なる省燃費化の動きがあるが、燃焼の高効率化、重量の削減が具体的な案件として検討されている。
特に重量の軽減についてエンジンは小型化の方向にあり、点火コイルには更なる小型化によるエンジン搭載性の向上が求められる。
【0007】
図1に示す従来の内燃機関用点火コイル及びイオン電流検出機能をもつ内燃機関用点火コイルにおいて、エンジン搭載性向上にはイグナイタの小型化が必須である。しかし、図2及び図3に示す従来のイグナイタではコネクタを兼ねるイグナイタケース形状において、ワイヤボンダのデッドスペースを確保せねばならず効率的な設計ができずイグナイタ、ひいては点火コイルの小型化には限界がある。
【0008】
また、ワイヤボンダのツールによるデッドスペースの制約をイグナイタケースが受けないようにするには、従来のアルミワイヤボンディングの1stボンドと2ndボンドの位置を入れ替えればよい。すなわち、イグナイタケースにインサート成形される端子28に1stボンドを行い、セラミック基板54上にはんだで固定されるボンディングパッド29上に2ndボンドを行えばよい。セラミック基板54に実装される電子部品はイグナイタケースの器状に成形される部分に比べはるかに高さが低いためワイヤボンダのツール移動によるデッドスペースは激減する。しかし、セラミック基板上にはんだで固定されるボンディングパッド29ははんだでの固定であるため、実装時には制御が困難なボンディングパッド29の傾きが生じる。従来のボンディングパッドへの1stボンドでは、ボンディング終了後は2ndボンド位置へのフィードが行われるが、2ndボンドではボンディング終了後にワイヤのカットがなされる。この時ボンディングパッド29に傾きが生じていると図7のような傾きでは、アルミワイヤにカッター35が入りきらないためアルミワイヤのカット不良の懸念があり、図8のような傾きではボンディングパッド29へのボンディング終了後、ワイヤボンダのツール32が矢印35の方向に移動するためツール32がボンディングパッド29に干渉してしまいボンディングができないといった懸念がある。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、効率的なコネクタを兼ねるイグナイタケースの設計を実現させ、2ndボンドをセラミック基板上に安定的に行うイグナイタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に関し、セラミック基材の片側に導体パターンが形成されたセラミック基板と、前記セラミック基板の導体パターンとコネクタを兼ねるイグナイタケースにインサート成形された端子の間がアルミワイヤボンディングで電気的に接続され、前記セラミック基板上に形成される導体パターンにアルミワイヤボンディングが直接なされるイグナイタにおいて、アルミワイヤボンディング部の導体パターンの下にセラミック基材の表裏を貫く穴が形成され、穴の内部に金属が充填されていることを特徴とするイグナイタ。
【0011】
請求項2に関し、セラミック基材の両側に導体パターンが形成されたセラミック基板と、前記セラミック基材の導体パターンとコネクタを兼ねるイグナイタケースにインサート成形された端子の間がアルミワイヤボンディングで電気的に接続され、前記セラミック基板上に形成される導体パターンにアルミワイヤボンディングが直接なされるイグナイタにおいて、アルミワイヤボンディング部の導体パターンの下に金属が充填されたViaホールが形成されており、前記Viaホールによって基材の両側に形成された導体パターンが電気的に接続されていることを特徴とするイグナイタ。
【0012】
請求項3に関し、係る請求項1のセラミック基材の表裏を貫く穴に充填される金属、及び係る請求項2の充填Viaホールに充填される金属が、導体を形成する金属であることを特徴とするイグナイタ。
【0013】
請求項4に関し、セラミック基材上の導体パターンに直接アルミワイヤボンディングを行う部位において、ワイヤボンディング部のガラス保護層の開口部形状が方形若しくは円形であることを特徴とするイグナイタ。
【0014】
請求項5に関し、係る請求項1及び請求項3乃至請求項5に記載のイグナイタ。
【0015】
請求項6に関し、係る請求項2乃至請求項5に記載のイオン電流検出機能をもつイグナイタ。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、基材20を厚さとするワイヤボンディング部をセラミック基板に形成することができ、導体パターンを増やす効果と同等の効果をコストアップ及び信頼性の低下を招くことなく実現でき、2ndボンドをボンディングパッドの傾きの影響を受けることなくセラミック基板に安定的に行うことができ、効率的なコネクタを兼ねるイグナイタケースの設計によってイグナイタの小型化を行い、点火コイルのエンジン搭載性を向上することができる。
【実施例】
【0017】
本発明の実施例は、図9に示す点火コイルに内蔵されるイグナイタ5において、1は1次コイル、2は中心鉄心、3は2次コイル、4は点火コイルケース、5はイグナイタである。イグナイタは図10に示す構造で、図11はイオン電流検出機能を持つイグナイタである。図10において、51は1次電流遮断素子、52はヒートシンク、53は制御回路、54はセラミック基板、55はアルミワイヤ、56はコレクタ端子、57はバッテリ供給端子、58は2次コイル低圧接続端子である。
【0018】
図11において、51は1次電流遮断素子、52はヒートシンク、53は制御回路、54はセラミック基板、55はアルミワイヤ、56はコレクタ端子、57はバッテリ供給端子、58は2次コイル低圧接続端子であり、イオン電流検出用電源を構成するZD59aとコンデンサ59bがセラミック基板54に搭載されている。
【0019】
図10に示すイグナイタのアルミワイヤボンディング部の詳細を図12に示す。図示されるように、セラミック基板54とコネクタを兼ねるイグナイタケース27にインサート成形された端子28のアルミワイヤボンディングは、イグナイタケースにインサート成形される端子28に1stボンドを行い、ワイヤボンダのツールによるデッドスペースの影響をイグナイタケース形状の設計から排除している。一方2ndボンドはセラミック基板54側に行うがボンディングパッドの傾きによる前述の問題点を解決するため、セラミック基板54の導体パターンに直接2ndボンドを行い、ボンディングパッドを廃止している。セラミック基板54上の導体パターンは8〜10um程度であり、従来のボンディングパッドが0.3〜0.5mmであることと比較すると、パッド部において大幅に低減してしまう。パッド部分の厚さの低減は、ワイヤボンディング部の機械的強度の低下、パッドの厚さによる熱応力の緩衝効果の低下をもたらし、接続部の信頼性の低下を招いてしまう。
【0020】
この問題を解決するには、図14に示す応力解析によるとセラミック基板54のワイヤボンディング部における導体パターン厚を厚くすることによって解決できることが判明したが、これは印刷・焼成を繰り返して導体パターンを形成するセラミック基板においては、印刷・焼成回数の増加を意味し、原材料の使用量の増加及び加工時間の増加を招きコストアップはもちろん、加工工程の増加により潜在的な不具合発生の可能性が増加し、結果的に故障確率の増加という点では信頼性の低下を招いてしまう。
【0021】
セラミック基板の両面配線基板において両面配線間の接続手法として、導体ぺーストに用いられる金属を充填したViaホール接続が広く知られている。通常はパターンの立体的な接続のみにしか利用されていないが、図10に示す35は上記のViaホールを応用したものであり、セラミック基板54のワイヤボンディング部における導体21の下に形成している。
【0022】
図11に示すイオン電流検出機能をもつイグナイタのアルミワイヤボンディング部の詳細を図13に示す。イオン電流検出用電源を構成するため、ZD59aとコンデンサ59bをセラミック基板54上に実装し、両面配線基板を用いて高密度配線を行っている。よってセラミック基板54のワイヤボンディング部にViaホール接続箇所を形成することによって両面配線の接続と、信頼性を損なわないアルミワイヤボンディングを行うことができる。
【0023】
図15に図10乃至図11のセラミック基板54におけるアルミワイヤボンディング部のガラス保護層の開口部形状を示す。前記開口部は、1stボンドからのアルミワイヤのフィード方向によって2ndボンドが可能なエリア面積が変わることによってボンディング性が低下しないよう配慮し、図10乃至図11のセラミック基板54における図12乃至図13のガラス保護層22に方形若しくは円形の開口部形状とし、アルミワイヤボンディング部を形成する。
【0024】
この構造を用いることによって、図12及び図13における基材20を厚さとするワイヤボンディング部を図10乃至図11のセラミック基板54に形成することができ、図16に示す応力解析によると導体パターンを増やす効果と同等の効果をコストアップ及び信頼性の低下を招くことなく実現でき、2ndボンドをボンディングパッドの傾きの影響を受けることなく図10乃至図11のセラミック基板54に安定的に行うことができ、効率的なコネクタを兼ねるイグナイタケースの設計によってイグナイタの小型化を行い点火コイルのエンジン搭載性を向上することができる。
【0025】
以上のように、本発明の実施の形態について説明したが、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当該点火装置が必要なあらゆるエンジンに使用できるものである。
【0026】
この発明の精神に基づき当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来例に係る内燃機関用点火コイルの構造を示す図
【図2】従来例に係るイグナイタの構造を示す図
【図3】従来例に係るイグナイタの構造を示す図
【図4】従来例に係るワイヤボンディング部の詳細構造を示す図
【図5】従来例に係るボンディングパッドの構造を示す図
【図6】従来例に係るワイヤボンダにおけるツールの状態遷移図
【図7】従来例に係るイグナイタにおけるワイヤボンディングを示す図
【図8】従来例に係るイグナイタにおけるワイヤボンディングを示す図
【図9】実施例に係る内燃機関用点火コイルの構造を示す図
【図10】実施例に係るイグナイタの構造を示す図
【図11】実施例に係るイグナイタの構造を示す図
【図12】実施例に係るワイヤボンディング部の詳細構造を示す図
【図13】実施例に係るイグナイタでのワイヤボンディング部の詳細構造を示す図
【図14】実施例に係るセラミック基板上の導体厚とワイヤボンディング部の応力の関係を示す図
【図15】実施例に係るセラミック基板のガラス開口部形状を示す図
【図16】実施例に係る導体厚とワイヤボンディング部の応力の関係を示す図
【符号の説明】
【0028】
27 イグナイタケース
54 セラミック基板
55 アルミワイヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、イグナイタに内蔵する基板とコネクタを兼ねるイグナイタケースにインサート成形された端子のワイヤボンディング方法に関し、特にセラミック基板上のワイヤボンディング部分の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示す内燃機関用点火コイルにおいて、1は1次コイル、2は中心鉄心、3は2次コイル、4は点火コイルケース、5はイグナイタである。イグナイタ5は、1次コイル1、中心鉄心2及び2次コイル3の上部に設置され点火コイルケース4の内部に、1次コイル1、中心鉄心2及び2次コイル3と共に組み込まれた後、点火コイル充填樹脂でモールドされている。
【0003】
イグナイタ5は図2に示すような構造であり、51は1次電流遮断素子、52はヒートシンク、53は制御回路、54はセラミック基板、55はアルミワイヤ、56はコレクタ端子、57はバッテリ供給端子、58は2次コイル低圧接続端子である。イオン電流検出機能をもつ内燃機関用点火コイルについても図1の構造であるが、イグナイタ5は図3に示すような構造である。51は1次電流遮断素子、52はヒートシンク、53は制御回路、54はセラミック基板、55はアルミワイヤ、56はコレクタ端子、57はバッテリ供給端子、58は2次コイル低圧接続端子、59はイオン電流検出用電源基板、60はイオン電流検出用電源基板の接続部である。
【0004】
図2に示す内燃機関用点火コイルのイグナイタ及び図3に示すイオン電流検出機能をもつ内燃機関用点火コイルのイグナイタともに1次電流遮断素子51を制御する電子回路はセラミック基板54上に形成されており、セラミック基板54とコネクタを兼ねるイグナイタケースにインサート成形される端子との接続構造は図5に示すとおりで、セラミック基材20、導体パターン21、ガラス保護層22で構成されるセラミック基板がエポキシ接着剤24でヒートシンク52に固定され、さらにヒートシンク52は端子28をインサート成形されたイグナイタケース27にエポキシ接着剤26で固定される。基板54の導体パターンとはんだで固定される銅若しくは42アロイ製のボンディングパッド29表面にアルミワイヤが1stボンドされた後に端子28に2ndボンディングされ、セラミック基板54の導体パターンと外部入出力端子である端子28が電気的に接続されている。アルミワイヤボンディングが完了すると、セラミック基板54はアルミワイヤボンディングによってイグナイタケース27にインサート成型された端子28と電気的に接続され、イグナイタケース27に固定されたヒートシンク52に前記セラミック基板54は固定された状態で、エポキシ樹脂31によってモールドされる。
【0005】
上述の様に、イグナイタケースにインサート成形される端子28にアルミワイヤを2ndボンドするため、イグナイタケースは、ボンディング完了時のワイヤボンダのアルミワイヤカットによるツールの後退を考慮し形状決定を行う必用がある。
すなわち図6に示すように2ndボンド後にワイヤボンダのツール32が矢印33の方向に移動すると、器状に成形されているイグナイタケースに接触しワイヤボンディングができない懸念が生じる。
よって、あらかじめツールの移動量を考慮したデッドスペースがコネクタ設計に反映されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、環境性能の要求に伴い内燃機関の更なる省燃費化の動きがあるが、燃焼の高効率化、重量の削減が具体的な案件として検討されている。
特に重量の軽減についてエンジンは小型化の方向にあり、点火コイルには更なる小型化によるエンジン搭載性の向上が求められる。
【0007】
図1に示す従来の内燃機関用点火コイル及びイオン電流検出機能をもつ内燃機関用点火コイルにおいて、エンジン搭載性向上にはイグナイタの小型化が必須である。しかし、図2及び図3に示す従来のイグナイタではコネクタを兼ねるイグナイタケース形状において、ワイヤボンダのデッドスペースを確保せねばならず効率的な設計ができずイグナイタ、ひいては点火コイルの小型化には限界がある。
【0008】
また、ワイヤボンダのツールによるデッドスペースの制約をイグナイタケースが受けないようにするには、従来のアルミワイヤボンディングの1stボンドと2ndボンドの位置を入れ替えればよい。すなわち、イグナイタケースにインサート成形される端子28に1stボンドを行い、セラミック基板54上にはんだで固定されるボンディングパッド29上に2ndボンドを行えばよい。セラミック基板54に実装される電子部品はイグナイタケースの器状に成形される部分に比べはるかに高さが低いためワイヤボンダのツール移動によるデッドスペースは激減する。しかし、セラミック基板上にはんだで固定されるボンディングパッド29ははんだでの固定であるため、実装時には制御が困難なボンディングパッド29の傾きが生じる。従来のボンディングパッドへの1stボンドでは、ボンディング終了後は2ndボンド位置へのフィードが行われるが、2ndボンドではボンディング終了後にワイヤのカットがなされる。この時ボンディングパッド29に傾きが生じていると図7のような傾きでは、アルミワイヤにカッター35が入りきらないためアルミワイヤのカット不良の懸念があり、図8のような傾きではボンディングパッド29へのボンディング終了後、ワイヤボンダのツール32が矢印35の方向に移動するためツール32がボンディングパッド29に干渉してしまいボンディングができないといった懸念がある。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、効率的なコネクタを兼ねるイグナイタケースの設計を実現させ、2ndボンドをセラミック基板上に安定的に行うイグナイタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に関し、セラミック基材の片側に導体パターンが形成されたセラミック基板と、前記セラミック基板の導体パターンとコネクタを兼ねるイグナイタケースにインサート成形された端子の間がアルミワイヤボンディングで電気的に接続され、前記セラミック基板上に形成される導体パターンにアルミワイヤボンディングが直接なされるイグナイタにおいて、アルミワイヤボンディング部の導体パターンの下にセラミック基材の表裏を貫く穴が形成され、穴の内部に金属が充填されていることを特徴とするイグナイタ。
【0011】
請求項2に関し、セラミック基材の両側に導体パターンが形成されたセラミック基板と、前記セラミック基材の導体パターンとコネクタを兼ねるイグナイタケースにインサート成形された端子の間がアルミワイヤボンディングで電気的に接続され、前記セラミック基板上に形成される導体パターンにアルミワイヤボンディングが直接なされるイグナイタにおいて、アルミワイヤボンディング部の導体パターンの下に金属が充填されたViaホールが形成されており、前記Viaホールによって基材の両側に形成された導体パターンが電気的に接続されていることを特徴とするイグナイタ。
【0012】
請求項3に関し、係る請求項1のセラミック基材の表裏を貫く穴に充填される金属、及び係る請求項2の充填Viaホールに充填される金属が、導体を形成する金属であることを特徴とするイグナイタ。
【0013】
請求項4に関し、セラミック基材上の導体パターンに直接アルミワイヤボンディングを行う部位において、ワイヤボンディング部のガラス保護層の開口部形状が方形若しくは円形であることを特徴とするイグナイタ。
【0014】
請求項5に関し、係る請求項1及び請求項3乃至請求項5に記載のイグナイタ。
【0015】
請求項6に関し、係る請求項2乃至請求項5に記載のイオン電流検出機能をもつイグナイタ。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、基材20を厚さとするワイヤボンディング部をセラミック基板に形成することができ、導体パターンを増やす効果と同等の効果をコストアップ及び信頼性の低下を招くことなく実現でき、2ndボンドをボンディングパッドの傾きの影響を受けることなくセラミック基板に安定的に行うことができ、効率的なコネクタを兼ねるイグナイタケースの設計によってイグナイタの小型化を行い、点火コイルのエンジン搭載性を向上することができる。
【実施例】
【0017】
本発明の実施例は、図9に示す点火コイルに内蔵されるイグナイタ5において、1は1次コイル、2は中心鉄心、3は2次コイル、4は点火コイルケース、5はイグナイタである。イグナイタは図10に示す構造で、図11はイオン電流検出機能を持つイグナイタである。図10において、51は1次電流遮断素子、52はヒートシンク、53は制御回路、54はセラミック基板、55はアルミワイヤ、56はコレクタ端子、57はバッテリ供給端子、58は2次コイル低圧接続端子である。
【0018】
図11において、51は1次電流遮断素子、52はヒートシンク、53は制御回路、54はセラミック基板、55はアルミワイヤ、56はコレクタ端子、57はバッテリ供給端子、58は2次コイル低圧接続端子であり、イオン電流検出用電源を構成するZD59aとコンデンサ59bがセラミック基板54に搭載されている。
【0019】
図10に示すイグナイタのアルミワイヤボンディング部の詳細を図12に示す。図示されるように、セラミック基板54とコネクタを兼ねるイグナイタケース27にインサート成形された端子28のアルミワイヤボンディングは、イグナイタケースにインサート成形される端子28に1stボンドを行い、ワイヤボンダのツールによるデッドスペースの影響をイグナイタケース形状の設計から排除している。一方2ndボンドはセラミック基板54側に行うがボンディングパッドの傾きによる前述の問題点を解決するため、セラミック基板54の導体パターンに直接2ndボンドを行い、ボンディングパッドを廃止している。セラミック基板54上の導体パターンは8〜10um程度であり、従来のボンディングパッドが0.3〜0.5mmであることと比較すると、パッド部において大幅に低減してしまう。パッド部分の厚さの低減は、ワイヤボンディング部の機械的強度の低下、パッドの厚さによる熱応力の緩衝効果の低下をもたらし、接続部の信頼性の低下を招いてしまう。
【0020】
この問題を解決するには、図14に示す応力解析によるとセラミック基板54のワイヤボンディング部における導体パターン厚を厚くすることによって解決できることが判明したが、これは印刷・焼成を繰り返して導体パターンを形成するセラミック基板においては、印刷・焼成回数の増加を意味し、原材料の使用量の増加及び加工時間の増加を招きコストアップはもちろん、加工工程の増加により潜在的な不具合発生の可能性が増加し、結果的に故障確率の増加という点では信頼性の低下を招いてしまう。
【0021】
セラミック基板の両面配線基板において両面配線間の接続手法として、導体ぺーストに用いられる金属を充填したViaホール接続が広く知られている。通常はパターンの立体的な接続のみにしか利用されていないが、図10に示す35は上記のViaホールを応用したものであり、セラミック基板54のワイヤボンディング部における導体21の下に形成している。
【0022】
図11に示すイオン電流検出機能をもつイグナイタのアルミワイヤボンディング部の詳細を図13に示す。イオン電流検出用電源を構成するため、ZD59aとコンデンサ59bをセラミック基板54上に実装し、両面配線基板を用いて高密度配線を行っている。よってセラミック基板54のワイヤボンディング部にViaホール接続箇所を形成することによって両面配線の接続と、信頼性を損なわないアルミワイヤボンディングを行うことができる。
【0023】
図15に図10乃至図11のセラミック基板54におけるアルミワイヤボンディング部のガラス保護層の開口部形状を示す。前記開口部は、1stボンドからのアルミワイヤのフィード方向によって2ndボンドが可能なエリア面積が変わることによってボンディング性が低下しないよう配慮し、図10乃至図11のセラミック基板54における図12乃至図13のガラス保護層22に方形若しくは円形の開口部形状とし、アルミワイヤボンディング部を形成する。
【0024】
この構造を用いることによって、図12及び図13における基材20を厚さとするワイヤボンディング部を図10乃至図11のセラミック基板54に形成することができ、図16に示す応力解析によると導体パターンを増やす効果と同等の効果をコストアップ及び信頼性の低下を招くことなく実現でき、2ndボンドをボンディングパッドの傾きの影響を受けることなく図10乃至図11のセラミック基板54に安定的に行うことができ、効率的なコネクタを兼ねるイグナイタケースの設計によってイグナイタの小型化を行い点火コイルのエンジン搭載性を向上することができる。
【0025】
以上のように、本発明の実施の形態について説明したが、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当該点火装置が必要なあらゆるエンジンに使用できるものである。
【0026】
この発明の精神に基づき当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来例に係る内燃機関用点火コイルの構造を示す図
【図2】従来例に係るイグナイタの構造を示す図
【図3】従来例に係るイグナイタの構造を示す図
【図4】従来例に係るワイヤボンディング部の詳細構造を示す図
【図5】従来例に係るボンディングパッドの構造を示す図
【図6】従来例に係るワイヤボンダにおけるツールの状態遷移図
【図7】従来例に係るイグナイタにおけるワイヤボンディングを示す図
【図8】従来例に係るイグナイタにおけるワイヤボンディングを示す図
【図9】実施例に係る内燃機関用点火コイルの構造を示す図
【図10】実施例に係るイグナイタの構造を示す図
【図11】実施例に係るイグナイタの構造を示す図
【図12】実施例に係るワイヤボンディング部の詳細構造を示す図
【図13】実施例に係るイグナイタでのワイヤボンディング部の詳細構造を示す図
【図14】実施例に係るセラミック基板上の導体厚とワイヤボンディング部の応力の関係を示す図
【図15】実施例に係るセラミック基板のガラス開口部形状を示す図
【図16】実施例に係る導体厚とワイヤボンディング部の応力の関係を示す図
【符号の説明】
【0028】
27 イグナイタケース
54 セラミック基板
55 アルミワイヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック基材の片側に導体パターンが形成されたセラミック基板と、前記セラミック基板の導体パターンとコネクタを兼ねるイグナイタケースにインサート成形された端子の間がアルミワイヤボンディングで電気的に接続され、前記セラミック基板上に形成される導体パターンにアルミワイヤボンディングが直接なされるイグナイタにおいて、
アルミワイヤボンディング部の導体パターンの下にセラミック基材の表裏を貫く穴が形成され、穴の内部に金属が充填されていることを特徴とするイグナイタ。
【請求項2】
セラミック基材の両側に導体パターンが形成されたセラミック基板と、前記セラミック基材の導体パターンとコネクタを兼ねるイグナイタケースにインサート成形された端子の間がアルミワイヤボンディングで電気的に接続され、前記セラミック基板上に形成される導体パターンにアルミワイヤボンディングが直接なされるイグナイタにおいて、
アルミワイヤボンディング部の導体パターンの下に金属が充填されたViaホールが形成されており、前記Viaホールによって基材の両側に形成された導体パターンが電気的に接続されていることを特徴とするイグナイタ。
【請求項3】
係る請求項1のセラミック基材の表裏を貫く穴に充填される金属、及び係る請求項2の充填Viaホールに充填される金属が、導体を形成する金属であることを特徴とするイグナイタ。
【請求項4】
セラミック基材上の導体パターンに直接アルミワイヤボンディングを行う部位において、ワイヤボンディング部のガラス保護層の開口部形状が方形若しくは円形であることを特徴とするイグナイタ。
【請求項5】
係る請求項1及び請求項3及び請求項4を全て組み合わせたことを特徴とするイグナイタ。
【請求項6】
係る請求項2及び請求項3及び請求項4を全て組み合わせたことを特徴とするイオン電流検出機能をもつイグナイタ。
【請求項1】
セラミック基材の片側に導体パターンが形成されたセラミック基板と、前記セラミック基板の導体パターンとコネクタを兼ねるイグナイタケースにインサート成形された端子の間がアルミワイヤボンディングで電気的に接続され、前記セラミック基板上に形成される導体パターンにアルミワイヤボンディングが直接なされるイグナイタにおいて、
アルミワイヤボンディング部の導体パターンの下にセラミック基材の表裏を貫く穴が形成され、穴の内部に金属が充填されていることを特徴とするイグナイタ。
【請求項2】
セラミック基材の両側に導体パターンが形成されたセラミック基板と、前記セラミック基材の導体パターンとコネクタを兼ねるイグナイタケースにインサート成形された端子の間がアルミワイヤボンディングで電気的に接続され、前記セラミック基板上に形成される導体パターンにアルミワイヤボンディングが直接なされるイグナイタにおいて、
アルミワイヤボンディング部の導体パターンの下に金属が充填されたViaホールが形成されており、前記Viaホールによって基材の両側に形成された導体パターンが電気的に接続されていることを特徴とするイグナイタ。
【請求項3】
係る請求項1のセラミック基材の表裏を貫く穴に充填される金属、及び係る請求項2の充填Viaホールに充填される金属が、導体を形成する金属であることを特徴とするイグナイタ。
【請求項4】
セラミック基材上の導体パターンに直接アルミワイヤボンディングを行う部位において、ワイヤボンディング部のガラス保護層の開口部形状が方形若しくは円形であることを特徴とするイグナイタ。
【請求項5】
係る請求項1及び請求項3及び請求項4を全て組み合わせたことを特徴とするイグナイタ。
【請求項6】
係る請求項2及び請求項3及び請求項4を全て組み合わせたことを特徴とするイオン電流検出機能をもつイグナイタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−248783(P2008−248783A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90678(P2007−90678)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】
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