説明

イソオキサゾールおよびその使用

本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。これらの化合物は、神経学的障害、神経変性障害、虚血性障害および炎症性障害の処置に有用である。従って、本発明はまた、本発明の化合物を含む薬学的に受容可能な組成物、ならびにこれらの化合物および組成物を、神経学的障害、神経変性障害、虚血性障害および炎症性障害の処置において利用する方法を提供する。この組成物は、発作についての処置、アルツハイマー病についての処置、パーキンソン病についての処置、多発性硬化症(MS)を処置するための薬剤、喘息についての処置、精神分裂病を処置するための薬剤、抗炎症剤、免疫調節剤もしくは免疫抑制剤、神経栄養因子、心臓血管疾患を処置するための薬剤、または免疫不全障害を処置するための薬剤から選択されるさらなる治療薬剤をさらに含んでもよい。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、ヒトの種々の疾患および状態(例えば、いくつか名前を挙げると、虚血性障害、発作における再灌流/虚血、神経変性障害、神経学的障害、炎症性疾患、心臓病、器官低酸素、およびトロンビン誘発性血小板凝集)に有用なイソオキサゾールに関する。本発明はまた、本発明の化合物を含む薬学的に受容可能な組成物、および種々の障害の処置においてこの組成物を用いる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
脳への血流の減少または脳の破壊から生じる発作は、米国および他の先進国における第3位の死因である。さらに、発作を生き延びた患者は、代表的に、顔面または四肢の麻痺、言語障害、膀胱機能の喪失、嚥下不能または痴呆を含め、長期の障害を有する。
【0003】
発作は、通常、虚血性(生体組織における酸素の不足から生じる)または出血性(脳における出血を生じる動脈壁における断裂から生じる)のいずれかとして特徴付けられる。大部分の一般的型の発作である虚血性発作は、全ての発作のうちの80%余を引き起こす。酸素枯渇が虚血性発作において生じた後に、最終的に細胞死となる事象のサイクルが誘発されると考えられる。例えば、タンパク質(例えば、興奮性アミノ酸)が放出され、これが過剰産生された場合、神経細胞を殺傷すると仮定されている。これらのタンパク質は、ニューロンを覆う膜におけるチャネルを開いて、多量のカルシウムを流入させ、そしてこのカルシウムは続いて、ニューロン内で反応して、細胞に損傷を与える有害物質を放出すると考えられる。さらなる仮定は、通常マイナーな分子修復を行う酵素であるPARPが、過剰のATPを取り込むことによる実質的障害に応答し、元々の細胞死領域の周囲のさらなる細胞死をもたらすことを示唆した。さらに、さらなる障害もまた、下流の応答(例えば、炎症性反応)からもたらされることが仮定されている(del Zoppoら,Brain Pathology,2000,10,95−112を参照のこと)。
【0004】
医学研究者は、何十年もの間、虚血性脳発作の有効な早期処置を不首尾ながらも求めてきた。明らかに、虚血性脳組織が動脈血を受けるのが迅速であればあるほど、細胞死および得られる永続的な損傷が低減または予防され得る機会が増す。虚血性発作の初期処置について現在用いられている薬物としては、静脈内血栓崩壊剤(例えば、t−PA(Activase(登録商標))またはストレプトキナーゼ);および抗凝固剤(例えば、アンクロド、アスプリン(Asprin)、アグレノックス(Aggrenox)、チエノピリジン(Thienopyridine)およびワルファリン)が挙げられる。しかし、不幸なことに、これらの薬剤の多くは、虚血賞発作の処置において有効でないか、または重篤な副作用に関連している。例えば、チオのピリジン(例えば、チクロジピン(Ticlopidine)(Ticlid(登録商標))は、可逆的な狼瘡様症状、可逆的な好中球減少および血小板減少に関連している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発作について現在利用可能な処置選択肢が存在しないことを考慮すると、虚血性障害を低減もしくは予防し得るか、および/または下流の細胞応答から生じる損傷(例えば、炎症性応答)を低減もしくは予防し得る、安全かつ有効な治療薬剤を開発することが所望される。より一般的には、他の虚血性障害および炎症性障害の処置のために有用な治療薬剤を開発することもまた所望される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を提供することにより、この必要性に取り組む:
【0007】
【化13】

ここで、R、R、R、nおよびrは、以下に定義した通りである。
【0008】
本発明の化合物、およびその薬学的に受容可能な組成物は、種々の障害(いくつか名前を挙げると、神経変性障害、神経学的障害、炎症性障害、虚血性障害、発作における再灌流/虚血、心臓病、アレルギー障害、器官低酸素、およびトロンビン誘発性血小板凝集が挙げられる)を処置するか、予防するかまたはその重篤度を低下させるために有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
(1.本発明の化合物の説明)
本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩に関する:
【0010】
【化14】

ここで:
ここで:
は、水素またはハロゲンであり;
は、置換されているかまたは置換されていないシクロアルキルであり;
の各出現箇所は、独立して、ハロゲン、アルキル、
【0011】
【化15】

であり、ここで、mは、0、1または2であり、Rは、水素またはアルキルであり;
rは、0、1または2であり;そして
nは、0、1または2である。
【0012】
本明細書中で用いられる場合、そうでないと示されない限り、以下の定義は、適用されるべきである。
【0013】
語句「必要に応じて置換された」は、語句「置換されたかまたは置換されていない」と交換可能に用いられる。そうでないと示されない限り、必要に応じて置換された基は、各置換可能な部分の基において置換基を有し得、そして各置換は、他の置換とは独立している。
【0014】
単独で、またはより大きな部分のうちの一部として用いられる場合、用語「アルキル」、「アルコキシ」、「ヒドロキシアルキル」、「アルコキシアルキル」、および「アルコキシカルボニル」は、1〜17個の炭素原子(好ましくは1〜4個の炭素原子)を含む、そしてアルケニルの場合は、少なくとも2個の炭素原子および1つの二重結合、そしてアルキニルの場合は少なくとも2個の炭素原子および1つの三重結合を含む、環式および非環式の、置換および非置換の、そして直鎖および分枝鎖の両方を包含する。特定の実施形態では、シクロアルキル基は、好ましくは、5個、6個または7個の炭素原子を含み、そして単環式または二環式であり得る。さらに、シクロアルキル基は、1以上の置換基を含み得る。(Rによって定義される通りの)シクロアルキル環の飽和炭素上の1個以上の水素原子の置換のための適切な置換基(R)としては、以下のうちの1個以上の独立した出現箇所が挙げられる:
【0015】
【化16】

ここで、qは、0、1または2であり、そしてRの各出現箇所は、独立して、水素またはアルキルである。
【0016】
置換基または可変基の組み合わせは、このような組み合わせが安定かまたは化学的に実行可能な化合物をもたらす場合にのみ許容され得る。安定な化合物または化学的に実行可能な化合物は、水分または他の化学的に反応性の条件の不存在下で、40℃以下の温度にて少なくとも1週間保持した場合に実質的に変更されないものである。
【0017】
そうでないと言及しない限り、本明細書中に示す構造はまた、この構造の全ての立体化学形態(すなわち、各不斉中心について、R配置およびS配置)を包含することを意味する。それゆえ、本発明の単一の立体化学的異性体ならびに鏡像異性体およびジアステレオ異性体の混合物は、本発明の範囲内である。そうでないと言及しない限り、本明細書中に示す構造はまた、1以上の同位体が富化された原子の存在についてのみ異なる化合物を包含することを意味する。例えば、重水素またはトリチウムによる水素の置換または13Cまたは14C富化炭素による炭素の置換以外は本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内にある。このような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツールまたはプローブとして有用である。
【0018】
(II.特定の例示的化合物の説明)
特定の例示的な実施形態では、上記に直接的に記載される式Iの化合物については、Rは、水素またはフッ素であり;Rは、置換されているかまたは置換されていないシクロアルキルであり;rは、0または1であり;Rは、アルキル、または−(CHORであり;mは、0、1または2であり;Rは、水素またはアルキルであり;そしてnは、0、1または2である。
【0019】
他の特定の例示的な実施形態では、Rは、置換されているかまたは置換されていないシクロヘキシルまたはノルボルニルであり、従って、構造IIおよび構造IIIを有する化合物が提供される:
【0020】
【化17】

ここで、R、R、rおよびnは、上記および本明細書中のサブセットで定義された通りであり;Rの各出現箇所は、独立して、以下である:
【0021】
【化18】

ここで、qは、0、1または2であり、そしてRの各出現箇所は、独立して、水素またはアルキルであり;そしてpは、0、1または2である。
【0022】
上記の化合物の特定のサブクラスは、以下においてより詳細に記載される。上記に一般的に記載される化合物(式I)およびそれらのクラス(例えば、式IIおよび式III)の各々について、以下のサブセットの任意の組み合わせが、本発明の例示的なサブクラスを記載するために利用され得ることが認識される。特に、特定の好ましいサブクラスとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
i)上記に一般的に記載され、本明細書中のクラスおよびサブクラスに属する化合物であって、ここでRがFである化合物;
ii)上記に一般的に記載され、本明細書中のクラスおよびサブクラスに属する化合物であって、ここでRがHである化合物;
iii)上記に一般的に記載され、本明細書中のクラスおよびサブクラスに属する化合物であって、ここでRが、置換されているかまたは置換されていないシクロヘキシルである化合物;
iv)上記に一般的に記載され、本明細書中のクラスおよびサブクラスに属する化合物であって、ここでRが、置換されているかまたは置換されていないノルボルニルである化合物;
v)上記に一般的に記載され、本明細書中のクラスおよびサブクラスに属する化合物であって、ここでRが、アルキル、OH、CHOH、またはアルコキシである化合物;
vi)上記に一般的に記載され、本明細書中のクラスおよびサブクラスに属する化合物であって、ここでnが0である化合物;
vii)上記に一般的に記載され、本明細書中のクラスおよびサブクラスに属する化合物であって、ここでnが1である化合物;
viii)上記に一般的に記載され、本明細書中のクラスおよびサブクラスに属する化合物であって、ここでnが2である化合物;
ix)式IIの化合物であって、ここでpが0である、化合物;
x)式IIIの化合物であって、ここでpが0である、化合物;
xi)式IIIの化合物であって、ここでpが1である、化合物;
xii)式IIIの化合物であって、ここでpが2である、化合物;
xiii)式IIまたはIIIの化合物であって、ここでpが0または1であり、そしてRが、独立して、OHまたはアルキルである、化合物;ならびに
xiv)上記に一般的に記載され、本明細書中のクラスおよびサブクラスに属する化合物であって、ここでrが、0または1である化合物。
【0023】
特定の好ましい実施形態では、化合物は、式IIを有し、そしてRはFまたはHであり;pは0であり;nは0または1であり;rは0または1であり;そしてRは、OH、CHOH、アルキルまたはアルコキシである。
【0024】
特定の他の好ましい実施形態では、化合物は、式IIIを有し、そしてRは、FまたはHであり;pは、0、1または2であり;Rの各出現箇所は、独立して、アルキル、OH、CHOHまたはアルコキシであり;nは、0または1であり;rは、0または1であり;そしてRは、OH、CHOH、アルキルまたはアルコキシである。
【0025】
式Iの化合物の代表的例を、表1に以下に示す。
【0026】
【化19】

【0027】
【化20】

【0028】
【化21】

【0029】
【化22】

(III.一般的合成方法論)
本発明の化合物は、以下の一般的スキーム例示されるような類似の化合物について当業者に公知の方法によって、および以下の調製実施例によって、一般的に調製され得る。
【0030】
以下のスキーム1は、式Iの化合物の一般的調製方法を示す。一般に、以下に記載されるように、以下の化合物(例えば、6A、7A、10Aおよび11A)は、当業者に公知の方法を用いて式I、式IIおよび式IIIの種々の化合物を形成する際に有用な中間体である。さらに、これらの化合物の合成方法は、PCT公報WO 01/12621に一般的に記載される。PCT公報WO 01/12621の内容全体は、本明細書中に参考として援用される。スキーム2は、式Iおよび式IIの特定の例示的な化合物(ノルボルニル誘導体およびシクロヘキシル誘導体に関する)の一般的合成方法を示し、ここで、フルオロ置換クロロキシム(chloroxime)中間体、ならびに置換されていないかまたはヒドロキシ置換のピペリジニル中間体が利用される。
【0031】
(スキーム1)
【0032】
【化23】

(スキーム2)
【0033】
【化24】

(IV.本発明の化合物の用途)
本発明の化合物は、予想外に、かつ驚くべきことに、虚血性損傷に対するニューロン細胞の保護における増大した能力およびインビトロでのCNS炎症アッセイにおいてインヒビターとしての増大した能力を示す。本発明において利用される化合物の活性は、インビトロで、インビボで、または細胞株において、当該分野で公知の方法に従ってアッセイされ得る。例示的なインビトロアッセイとしては、インビトロ虚血(ORG)アッセイ、およびインビトロCNS炎症アッセイが挙げられる。インビボでのアッセイとしては、本明細書で以下においてより詳細に記載される通りの、ラットMCAO(中大脳動脈閉塞)効力研究が挙げられる。
【0034】
別の実施形態によれば、本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、および薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクルを含む組成物を提供する。本発明の組成物中の化合物の量は、患者における虚血障害、炎症障害、神経変性障害または神経学的障害を処置、予防または軽減するために有効であるような量である。好ましくは、本発明の組成物は、このような組成物を必要とする患者への投与のために処方される。より好ましくは、本発明の組成物は、患者への経口投与のために処方される。
【0035】
用語「患者」は、本明細書中で用いられる場合、動物を、好ましくは哺乳動物を、そして最も好ましくはヒトを意味する。
【0036】
用語「薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクル」とは、処方される化合物の薬理学的活性を破壊しない、無毒性のキャリア、アジュバントまたはビヒクルをいう。本発明の組成物において用いられ得る薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクルとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物)、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂。
【0037】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩としては、薬学的に受容可能な無機酸および無機塩基ならびに有機酸および有機塩基由来の塩が挙げられる。適切な酸性塩の例としては以下が挙げられる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩(camphorate)、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモエート(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩(pivalate)、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシレートおよびウンデカン酸塩。他の酸(例えば、シュウ酸)は、それ自体は薬学的に受容可能ではないが、本発明の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な酸付加塩を得る際に中間体として有用な塩の調製において使用され得る。
【0038】
適切な塩基から誘導される塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウムおよびカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)塩、アルミニウム塩およびN(C1〜4アルキル)塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書中で開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も想定する。水溶性もしくは油溶性または分散性の生成物は、このような四級化によって得られ得る。
【0039】
本発明の組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、直腸的に、経鼻的に、頬に、膣に、または移植レザバを介して投与され得る。用語「非経口的」は、本明細書中で使用される場合、皮下、静脈内、筋内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病巣内および頭蓋内の注射または注入技術を含む。好ましくは、これらの組成物は、経口的に、腹腔内に、または静脈内に投与される。本発明の組成物の無菌の注射可能形態は、水性懸濁液または油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤、および懸濁剤を使用して、当該分野で公知の技術に従って処方され得る。無菌の注射可能な調製物はまた、無毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中の、無菌の注射可能な溶液または懸濁液であり得る(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液)。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒の中では、水、リンガー液および等張塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌の不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として従来より使用される。
【0040】
この目的のために、任意の無刺激の揮発性油が使用され得、このような油としては、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドが挙げられる。脂肪酸(例えば、オレイン酸)およびそのグリセリド誘導体は、天然の薬学的に受容可能な油(例えば、オリーブ油またはヒマシ油、特にそれらのポリオキシエチル化バージョン)と同様、注射可能物の調製において有用である。これらの油溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコールの希釈剤もしくは分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロース)または類似の分散剤(これらは、乳濁液および懸濁液を含む薬学的に受容可能な投薬形態の処方物中に一般に使用される)を含み得る。他の一般に使用される界面活性剤(例えば、Tween、Span)および他の乳化剤またはバイオアベイラビリティー増強剤(これらは、一般に、薬学的に受容可能な固体、液体、または他の投薬形態の製造において使用される)はまた、処方の目的のために使用され得る。
【0041】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、任意の経口的に受容可能な投薬形態(カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤または液剤が挙げられるが、これらに限定されない)で、経口的に投与され得る。経口的使用のための錠剤の場合、一般に使用されるキャリアとしては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)もまた、代表的に添加される。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。経口的使用のために水性懸濁液が必要な場合、活性成分は、乳化剤および懸濁剤と組み合わされる。所望の場合、特定の甘味料、香料または着色料もまた、添加され得る。
【0042】
あるいは、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、直腸投与のために坐剤の形態で投与され得る。これらは、薬剤を、適切な非刺激性の賦形剤(これは、室温で固体であるが、直腸温度では液体であり、従って、直腸で溶融して薬物を放出する)と混合することによって調製され得る。このような材料としては、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0043】
本発明の薬学的に受容可能な組成物はまた、(特に、処置の標的が局所的適用によって容易に接近可能である領域または器官を含む場合(眼、皮膚または下部腸管の疾患を含む)に)局所的に投与され得る。適切な局所的処方物は、これらの領域または器官のそれぞれについて容易に調製される。
【0044】
下部腸管に対する局所的適用は、直腸坐剤処方物(上記を参照のこと)または適切な浣腸剤処方物でもたらされ得る。局所的な経皮パッチもまた使用され得る。
【0045】
局所的適用について、この薬学的に受容可能な組成物は、1つ以上のキャリア中に懸濁または溶解された活性成分を含有する適切な軟膏中に処方され得る。本発明の化合物の局所的投与のためのキャリアとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:鉱油、ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋および水。あるいは、この薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリアに懸濁または溶解された活性成分を含有する適切なローション剤またはクリーム剤中に処方され得る。適切なキャリアとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水。
【0046】
眼科用途のために、この薬学的に受容可能な組成物は、塩化ベンザルコニウムのような保存剤を含むかまたは含まないかのいずれかの、等張のpH調整した滅菌生理食塩水中の微細化懸濁液として、または好ましくは、等張のpH調整した滅菌生理食塩水中の溶液として、処方され得る。あるいは、眼科用途のために、この薬学的に受容可能な組成物は、ワセリンのような軟膏中に処方され得る。
【0047】
本発明の薬学的に受容可能な組成物はまた、鼻エアロゾルまたは吸入によって投与され得る。このような組成物は、製薬処方の分野で周知の技術に従って調製され、そしてベンジルアルコールもしくは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティーを増強するための吸収促進剤、フッ化炭素、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、生理食塩水中の溶液として調製され得る。
【0048】
最も好ましくは、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、経口投与のために処方される。
【0049】
キャリア物質と一緒にされて、単一投薬形態を生成し得る本発明の化合物の量は、処置される宿主および投与の特定の様式に依存して変動する。好ましくは、この組成物は、0.01〜100mg/kg体重/日の間のインヒビターの投薬量が、これらの組成物を受ける患者に投与され得るように処方されるべきである。。
【0050】
任意の特定の患者に対する特定の投薬量および処置レジメンは、種々の因子に依存することもまた理解されるべきであり、この種々の因子としては、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、排泄の速度、薬物の組合わせ、ならびに処置医の判断および処置されている特定の疾患の重症度が挙げられる。組成物中での本発明の化合物の量はまた、その組成物における特定の化合物に依存する。
【0051】
処置または予防される特定の状態(または疾患)に依存して、さらなる治療薬剤(これは通常、その状態(または関連する副作用もしくは障害)を処置または予防するために投与される)もまた、本発明の組成物中に存在し得る。本明細書中で用いられる場合、特定の疾患(または状態)を処置または予防するために通常投与されるさらなる治療薬剤は、「処置される疾患または状態について適切である」として公知である。
【0052】
例えば、発作についての既知の処置としては、以下が挙げられる:Activase(登録商標)、組換え体または遺伝子操作された組織プラスミノーゲンアクチベーター(rt−PA)、ヘパリン、グルタミン酸アンタゴニスト、カルシウムアンタゴニスト、オピエートアンタゴニスト、GABAアゴニストおよび抗酸化剤。
【0053】
本発明の化合物がまた組み合わされ得る薬剤の他の例としてはまた、以下が挙げられるがこれらに限定されない:アルツハイマー病についての処置(Aricepto(登録商標)およびExcelon(登録商標));パーキンソン病についての処置(例えば、L−DOPA/カルビドパ、エンタカポン(entacapone)、ロピンロール(ropinrole)、プラミペキソール(pramipexole)、ブロモクリプチン、ペルゴリド、トリヘキセフェンジル(trihexephendyl)、およびアマンタジン);多発性硬化症(MS)を処置するための薬剤(例えば、βインターフェロン(例えば、Avonex(登録商標)およびRebif(登録商標))、Copaxone(登録商標)およびミトキサントロン);喘息についての処置(例えば、アルブテロールおよびSingulair(登録商標));精神分裂病の処置のための薬剤(例えば、ジプレキサ(zyprexa)、リスパーダル(risperdal)、セロルール(seroquel)、およびハロペリドール);抗炎症性剤(例えば、コルチコステロイド、TNFブロッカー、IL−1 RA、アザチオプリン、シクロホスファミド、およびスルファサラジン);免疫調節剤および免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコレノレートモフェチル(mycophenolate mofetil)、インターフェロン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、およびスルファサラジン);神経栄養因子(例えば、アセチルコリンエステラーゼインヒビター、MAOインヒビター、インターフェロン、抗痙攣剤、イオンチャネルブロッカー、リルゾール(riluzole)、および抗パーキンソン症候群剤);心臓血管疾患を処置するための薬剤(例えば、β−ブロッカー、ACEインヒビター、利尿剤、硝酸塩、カルシウムチャネルブロッカー、およびスタチン);肝臓疾患を処置するための薬剤(例えば、コルチコステロイド、コレスチラミン、インターフェロン、および抗ウイルス剤);血管障害を処置するための薬剤(例えば、コルチコステロイド、抗白血病剤、および増殖因子);ならびに免疫不全障害を処置するための薬剤(例えば、γグロブリン)。
【0054】
本発明の組成物中に存在するさらなる治療薬剤の量は、唯一の活性薬剤としてこの治療薬剤を含む組成物中に通常投与される量を超えない。好ましくは、現在開示される組成物中のさらなる治療薬剤の量は、治療的に活性な唯一の薬剤としてこの薬剤を含む組成物中に通常存在する量の約50%〜100%の範囲をとる。
【0055】
別の実施形態によれば、本発明は、神経学的障害、神経変性障害、虚血性障害または炎症性障害を処置するか、予防するかまたはこれらの重篤度を低減する方法に関し、この方法は、本発明の化合物またはこの化合物を含む組成物を被験体(好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト)に投与する工程を包含する。特定の好ましい実施形態では、本発明は、虚血性障害を処置するか、予防するかまたはこの重篤度を低減する方法に関し、最も好ましくは、発作を処置するか、予防するかまたは発作の重篤度を低減するための方法に関する。
【0056】
用語「生物学的サンプル」は、本明細書中で使用される場合、細胞培養物またはその抽出物;哺乳動物またはその抽出物から得た生検物質;ならびに血液、唾液、子宮、糞便、精液、涙液、もしくは他の体液、またはそれらの抽出物を包含するが、これらに限定されない。
【0057】
用語「虚血性障害」は、本明細書中で使用される場合、器官の血管に影響を与える、任意の疾患または状態を包含する。特定の好ましい実施形態では、虚血性障害は、脳の血管に影響を与える、任意の疾患または状態(例えば、いくつか名前を挙げると、発作および一過性の虚血性発作)を包含する。
【0058】
本発明の化合物によって処置または予防され得る神経変性疾患としては、アルツハイマー病、脳の虚血、または外傷性傷害によって引き起こされた神経変性疾患が挙げられるが
本発明の化合物によって処置または予防され得る例示的な計画的障害および疾患としては、発作および一過性虚血性発作が挙げられるがこれらに限定されない。
【0059】
本発明の化合物によって処置または予防され得る炎症性疾患としては、急性膵炎、慢性膵炎、喘息、アレルギー、および成人呼吸窮迫症候群が挙げられるがこれらに限定されない。
【0060】
本発明の化合物によって処置または予防され得る自己免疫疾患としては、糸球体腎炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性甲状腺炎、グレーヴズ病、自己免疫胃炎、糖尿病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫好中球減少、血小板減少、アトピー性皮膚炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、または移植片対宿主病が挙げられるがこれらに限定されない。
【0061】
代替の実施形態では、さらなる治療薬剤を含まない組成物を利用する本発明の方法は、上記患者にさらなる治療剤を別々に投与するさらなる工程を包含する。これらのさらなる治療剤を別々に投与する場合、これらは、患者に、本発明の組成物よりも前に、本発明の組成物に続いて、または本発明の組成物の後に投与され得る。
【0062】
本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な組成物はまた、移植可能な医療用デバイス(例えば、プロテーゼ、人工弁、血管移植片、ステント、およびカテーテル)をコーティングするための組成物中に組み込まれ得る。血管ステントは、例えば、再狭窄(損傷後の血管壁の再狭窄)を克服するために用いられている。しかし、ステントまたは他の移植可能なデバイスを用いる患者は、凝塊形成または血小板活性化の危険性がある。これらの望ましくない効果は、本明細書中に記載される通りの化合物を含む薬学的に受容可能な組成物でこのデバイスを予めコーティングすることによって、防止または緩和され得る。コーティングされた移植可能なデバイスの適切なコーティングおよび一般的な調製は、米国特許第6,099,562号、同第5,886,026号;および同第5,304,121号に開示される。このコーティングは、代表的には、生体適合性ポリマー材料(例えば、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル、およびこれらの混合物)である。コーティングは、必要に応じて、フルオロシリコーン、ポリサッカリド、ポリエチレングリコール、リン脂質またはこれらの組み合わせの適切なトップコートによってさらに被覆されて、組成物に制御放出特性を与え得る。本発明の化合物でコーティングされた移植可能なデバイスは、本発明の別の実施形態である。
【0063】
本明細書中に記載される本発明がより完全に理解され得るために、以下の実施例を説明する。これらの実施例は、説明の目的のみのためであり、そして本発明を限定するとは決して解釈されるべきでないことは理解されるべきである。
【実施例】
【0064】
本明細書中で用いられる場合、用語「R(分)」は、指定したHPLC法を用いたときの化合物に関連したHPLC保持時間(分)をいう。そうでないと示されない限り、報告された保持時間を得るために利用されるHPLC法は、以下の通りである:
方法A:カラム:ライトニング、2.1×50mm;勾配:4分間かけて、100%水(0.1% TFA)→100% CHCN(0.1%TFA);流量:0.8mL/分。
【0065】
方法B:カラム:ライトニング、2.1×50mm;勾配:4分間かけて、90%水(0.1% TFA)→90% CHCN(0.1%TFA);流量:0.8mL/分。
【0066】
方法C:カラム:YMC ODS−AQ、30×150mm;勾配:8分間かけて、10%→90% CHCN/水(0.01%TFA);流量:1mL/分;検出:210、220、254、280または300nm。
【0067】
方法D:カラム:Diacell Chiralpak OJ−H 250×4.6mm;Isocratic:5% MeOH/CO;圧力:200バール;温度:40℃;流量:2mL/分;検出:220nm。
【0068】
(実施例1:フルオロ置換クロロオキシム6の調製)
【0069】
【化25】

A)2の調製:オーバーヘッド撹拌子および還流凝縮器を備えた5Lの3首丸底フラスコにおいて、チオールピリミジン1の塩酸塩497.6g(3.06mol)を、1LのMeOHに懸濁した。6N NaOH溶液(1.2L、過剰量)を添加し、そして混合物を15分間攪拌した。この溶液を還流加熱し、そしてヨウ化メチル(192mL、3.08mol)を少しずつ添加した。この混合物を2時間還流し、冷却し、そしてCHClで抽出した。抽出物を乾燥(MgSO)し、そして減圧下でエバポレートして、347.3g(81%)のスルフィドを明黄色オイルとして得た。
【0070】
【化26】

B)3の調製:オーバーヘッド撹拌子を備えた5Lの3首丸底フラスコにおいて、4−メチル−2−チオメチルピリミジン(344.5g、2.46mol)を2LのTHF中に溶解した。シュウ酸ジエチル(334mL、2.46mol)を添加した。t−ブトキシドカリウム(286.22g、2.55mol)を50gずつ添加した。各部分は、軽度の発熱を生じた。この混合物は迅速に褐色になり、そして最終的に黄色の沈澱物が形成されて濃厚な混合物を形成した。この反応物を10% NHCl水溶液中に注ぎ、そしてCHClで抽出した。抽出物を乾燥(MgSO)し、そしてシリカゲルのプラグを通して濾過した。このプラグを10%EtOAc/CHClで溶出した。濾液をエバポレートして、褐色固体を得た。この固体を最少量のCHCl中に溶解した。ヘキサンを添加し、そして溶液を冷却して固体を沈澱させ、この固体を濾過した。濾液をエバポレートし、そして沈澱プロセスを繰り返して、合計401.5g(60%)のケトエステル3を得た。
【0071】
【化27】

C)5の調製:オーバーヘッド撹拌子を備えた3Lの3首丸底フラスコにおいて、566.6g(4.07mol)の4−フルオロベンズアルデヒドを、2LのMeOH中に溶解した。この溶液に、565.0g(6.89mol)の酢酸ナトリウムを添加した。この固体は、完全には溶解しなかった。塩酸ヒドロキシルアミン(304.42g、4.38mol)を50gずつ添加した。塩酸ヒドロキシルアミンの各々の添加は、軽度の発熱を生じた。白色固体が反応の間に沈澱し、一方、この混合物はそれほど濃厚にはならなかった。この混合物を1時間攪拌した。水を添加し、これは最初に沈澱物を溶解した。より多くの水の添加により、白色結晶固体が沈澱し、この沈澱を濾過し、水で洗浄し、そして減圧下で乾燥して、558.3g(99%)のオキシム5を得た。
【0072】
【化28】

D)フルオロ置換クロロオキシム6の調製:オーバーヘッド撹拌子を備えた3Lの3首丸底フラスコにおいて、558.3g(4.01mol)のオキシム5を、2LのDMF中に溶解した。N−クロロクスシンイミド(581.6g、4.36mol)を30gずつ添加した。誘導器官が観察され、その後、反応が生じた。反応開始時およびNCSの各添加の際に軽度の発熱が観察された。この反応物を一晩攪拌し、そして水中に注いで白色固体を沈澱させた。この固体を濾過し、水で洗浄し、そして減圧下でエバポレートして、309.2g(44%)のクロロオキシム6を白色固体として得た。
【0073】
(実施例2:臭化物(10)の調製)
【0074】
【化29】

A)7の調製:1L丸底フラスコにおいて、24.6g(90.6mMol)のケトエステル3を、300mLのエタノール中に溶解した。この溶液に、18.6g(107mMol)のクロロオキシム6を添加した。トリエチルアミン(53mL、380mMol)をこの溶液に滴下して黄色にし、そして軽度の発熱を生じた。このケトエステルがTLCによってもはや現れなくなるまで(約1時間)、この溶液を攪拌した。この混合物を水中に注ぎ、CHClで抽出した。この抽出物を乾燥し、そしてシリカゲルのプラグにて濾過した。このプラグを25%EtOAc/CHClで溶出させた。この濾液を減圧下でエバポレートして、粗製生成物を黄色固体として得た。この固体を最少量のCHCl中に溶解した。ヘキサンを添加し、そしてこの溶液を冷却して、29.5g(90%)のイソオキサゾール7を黄色固体として沈澱させた。
【0075】
【化30】

B)8の調製:5Lの3首丸底フラスコにおいて、エステル7(278.7g、773mMol)を2LのTHF中に溶解した。メタノール(1L)を添加した。水素化ホウ素ナトリウム(63.70g、1.67mol)を10gずつ添加した。水素化ホウ素物の各添加によって、いくらかの発泡が生じ、多量の気体が発生した。この溶液を2時間攪拌した。TLCは、生成物8の混合物およびより低いRfスポットを示した。この溶液を1N HCl中に注意深く注ぎ、そしてCHClで抽出した。抽出物を乾燥(MgSO)し、そして減圧下でエバポレートした。オイルを最少量のCHCl中に再度溶解し、ヘキサンを添加し、そしてこの溶液を冷却して、58gのアルコール8を白色固体として沈澱させた。濾液を減圧下で濃縮し、シリカゲルのプラグで濾過した。5%EtOAc/CHClでのプラグの溶出により、アルコール8が副生成物から選択的に溶出された。さらに48gのアルコールをこのプラグから回収して、合計106g(42%)の生成物を得た。
【0076】
【化31】

C)9の調製:室温のメタノール(1.5L)中の8(31.74g、100mMol)の攪拌した溶液に、滴下漏斗を介して45分間かけて水(750mL)中のオキソン(135g、220mMol)の溶液を添加した。得られた反応混合物を一晩攪拌した。水を添加し、そして混合物をCHCl(2×1L)で抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)し、濾過し、そして濃縮して、9(31.96g、91.48mMol、91%)を白色固体として提供した。
【0077】
【化32】

D)10の調製:室温のCHCl(500mL)中の9(31.96g、91.48mMol)の攪拌した溶液に、CBr(42.4g、128mMol)、続いてPPh(28.8g、110mMol)を添加した。わずかな発熱が観察された。20分後、さらなるPPh(2.00g)を添加した。2時間後、反応物を濃縮した。得られた物質をEtOH(500mL)中にピックアップし、そして攪拌した。所望の生成物(10)が溶液から沈澱し、そしてこれを収集し、そしてさらなるEtOHでリンスして、32.3g(78.7mMol、86%)の白色固体を得た。
【0078】
【化33】

実施例3:ピペリジニル中間体11の調製:室温のCHCN(20mL)中の10(1.66g、4.03mMol)の攪拌した溶液に、ピペリジン(0.406mL、4.11mMol)を添加し、続いてEtN(0.573mL、4.11mMol)を添加した。60分後、反応物を濃縮し、飽和NaHCO(50mL)とCHCl(30mL)との間で分配した。水層をさらなるCHCl(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)し、SiOを通して濾過し、そして濃縮して、1.50g(3.60mMol、89%)の無色オイルを得た。
【0079】
【化34】

実施例4:ヒドロキシ置換ピペリジニル中間体12の調製:室温のCHCN(220mL)中の10(22.7g、55.2mMol)の攪拌した溶液に、4−ヒドロキシピペリジン(5.58g、55.2mMol)、続いてEtN(8.08mL、58.0mMol)を添加した。90分後、この反応物を濃縮し、飽和NaHCOとCHClとの間で分配した。水層をさらに2回、CHClで抽出した。合わせた有機層を乾燥(NaSO)し、SiOを通して濾過し、そして濃縮して、23.7g(54.7mMol、99.2%の収率)の無色泡状体を得た。
【0080】
【化35】

実施例5:I−1の調製:DMSO(100mL)中の12(24.8g、57.3mMol)およびシクロヘキシルアミン(13.1mL、115mMol)の攪拌した溶液を、75℃にて4.5時間加熱した。反応物を室温まで冷却した。さらになる当量のシクロヘキシルアミン(6.5mL、57mMol)を添加し、そしてこの溶液を16時間攪拌し、この間に白色沈澱物が形成された。この固体を濾過によって収集し、そしていくつかの部分のEtOAcでリンスした。母液をCHClで希釈し、水、飽和NaHCO、およびブラインで洗浄した。有機相を乾燥(MgSO)し、濾過し、そして濃縮した。得られた固体を少ない部分の熱EtOAc中に懸濁し、そして濾過した。合わせた固体をEtOAc(100mL)中で16時間攪拌し、そして再度濾過した。この濾液をさらなるEtOAcでリンスした。得られた固体を減圧下で乾燥して、24.6g(54.5mMol、95%)の白色の非晶質粉末を得た。
【0081】
【化36】

ビスHCl塩:MeOH−CHCl(1:2)中のI−1(2.88g、6.38mMol)の溶液を、HCl(6.4mL、ジオキサン中4M)で処理した。2分後、EtO(50mL)を添加し、そして沈澱物がゆっくりと形成された。さらなる20分間の攪拌後、EtO(100mL)を添加し、そしてこの溶液を濾過した。固体濾液をいくつかの部分のEtOでリンスした。収集した固体を減圧下で乾燥して、3.22g(6.14mMol、96%の収率)の白色粉末を得た。
【0082】
HPLC(方法A)t=3.07分;MS(ES):m/z452.3(M+H)。
【0083】
【化37】

実施例7:I−3の調製:DMSO(300mL)中の11(22.65g、54.38mMol)およびシクロヘキシルアミン(12.4mL、109mMol)の攪拌した溶液を85℃まで4時間加熱した。反応物を冷却し、水中に注ぎ、そしていくつかの部分のCHClで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥(MgSO)し、濾過し、そして濃縮した。固体残渣をEtOHから再結晶して、18.75g(43.05mMol、79%)のI−3を得た。
【0084】
【化38】

ビス−HCl塩:MeOH−CHCl(1:1)中のI−3(1.32g、3.04mMol)の溶液を過剰の過剰のHCl−EtO溶液で処理した。数分後、この溶液を濃縮し、そして揮発成分を減圧下で除去して、対応するビス−HCl塩(1.50g、2.95mMol、97%の収率)を白色固体として得た。
【0085】
HPLC(方法A)t=3.25分;MS(ES):m/z 436.2(M+H)。
【0086】
【化39】

【0087】
【化40】

(実施例17:N−CBz−(1R,2R,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルアミンおよびN−CBz−(1S,2S,4R)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルアミンの調製)
【0088】
【化41】

スキーム3に示すように、実施例19、20および21において使用するために、N−CBz−(1R,2R,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルアミンおよびN−CBz−(1S,2S,4R)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルアミン(および実施例18に記載される通りのHCl塩)を以下の党利に調製する:0℃の水(220mL)中のラセミ2−オキソ−アミノノルボルナン(22.0g、198mMol)およびNaCO(22.0g、207mMol)の溶液に、クロロギ酸ベンジル(35.5g、198mMol)を滴下漏斗を介してゆっくりと滴下した。20分後、さらなる水(100mL)をこの反応物に添加し、そして添加をさらに20分間続けた。添加が完了したら、EtO(100mL)を添加し、そして反応物を0℃にて1時間維持した。次いで、この反応物を室温まで温め、そしてEtO(200mL)中に注いだ。層を分配し、そして水層をさらなるEtO(300mL)で抽出した。合わせた有機相を1M HCl、1M NaOHおよびブラインで洗浄し、乾燥(MgSO)し、シリカゲルを通して濾過し、そして濃縮して、白色固体(47.0g、192mMol、97%)を得た。
【0089】
この物質(43.8g)を、分取HPLC(カラム:CHIRALCEL(登録商標)OD−H(登録商標)、2.1×25cm、溶離液:CO/IPA:90/10、30℃)を用いて分離した。N−CBz−(1R,2R,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルアミン(18.94g、86.4%の回収率、>99%ee)HPLC:t=3.51分。N−CBz−(1S,2S,4R)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルアミン(19.42g、84.1%の回収率、99%ee)HPLC:t=3.90分。
【0090】
実施例18:(1S,2S,4R)−ビシクロ−[2.2.1]ヘプト−2−イルアミンHCl円の調製:0℃のトルエン中のN−CBz−(1R,2R,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルアミン(19.42g、79.16mMol)およびPd(炭素上5%、1.9g)の脱気した溶液を、H雰囲気下に配置した。氷浴を除去し、そして反応物を19時間攪拌した。次いで、MeOH(100mL)を添加し、そして混合物を15分間攪拌した。この反応物をCeliteを通して濾過し、そしてケークをMeOH(100mL)でリンスした。得られた濾液をHCl(2.0M、45mL)で処理し、そして10分間攪拌した。液体の濃縮によって、白色固体(11.0g,74.6mMol,94.2%)を得た。H NMR(CDOD、500MHz)δ3.13(dd,1H)、2.39(m,1H)、2.34(d,1H)、1.81(ddd,1H)、1.68−1.52(複雑なm,3H)、1.42(dd,1H)、1.34(d,1H)、1.23(m,2H)。
【0091】
実施例19:I−13の調製:DMSO(20mL)中の12(16.0g、37.1mMol)および(1R,2R,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルアミン(最終生成物の鏡像純度および絶対的立体配置は、以下の文献の方法に従った合成によって得た(1R,2R,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルアミンまたは(1S,2S,4R)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルアミンを用いて調製された物質を用いたHPLC比較に基づいて帰属された。Eda,M;Takemoto,T.;Ono,S.−I.;Okada,T.,Kosaka,K.;Gohda,M.;Matzno,S.;Nakamura,N.;Fukaya,C.J.Med.Chers.1994,37,1983−1990およびその中の参考文献を参照のこと)(6.75g、44.5mMol)およびNaCO(4.72g、44.5mMol)の攪拌溶液を、70℃まで0時間加熱した。この反応物を室温まで冷却した。反応物をCHClで希釈し、水中に注ぎ、さらに2つの部分のCHClで分配抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、乾燥(MgSO)し、濾過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、EtOAc溶離液)によって、16.0gの粘性オイルを得た。H NMRの遊離塩基、I−18と同じ。
【0092】
実施例20:ビスHCl塩の調製:MeOH−CHCl(1:4)中のI−13(16.0g)の溶液をHCl(2.5〜3当量、EtO中2.0M)で処理した。数分後、沈澱物が形成され始めた。30分後、さらなるEtOを添加し、そしてこの溶液を濾過した。固体濾液を、さらにいくつかの部分のEtOでリンスした。収集した固体を減圧下で乾燥して、15.69g(29.25mMol、79%の収率)の白色粉末を得た。この物質を、これを温かいMeOH中に15分間懸濁し、そしてMTBEの添加によって塩析することによってさらに精製した。
【0093】
HPLC(方法A)t=2.79分;HPLC(方法C)t=4.60分;HPLC(キラル方法D)t=14.74分、(>99%ee);MS(ES+):m/z 464.2(M+H)。
【0094】
実施例21:I−14の調製:これを、(1S,2S,4R)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルアミンを用いて出発して、実施例I−13について記載の通りに調製した。遊離塩基のH NMRは、I−18と同じである。
【0095】
【化42】

【0096】
【化43】

実施例25:I−18の調製:DMSO(20mL)中の12(2.00g、4.62mMol)および2−オキソ−ノルボルニルアミン(1.10mL、9.24mMol)の攪拌した溶液を75℃まで4時間加熱した。反応物を室温まで冷却した。反応物をCHClで希釈し、水中に注ぎ、2つのさらなる部分のCHClで分配抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、乾燥(MgSO)し、濾過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、EtOAc溶離液)によって、2.03g(4.38mMol、95%)の無色泡状物を得た。
【0097】
【化44】

ビスHCl塩:MeOH−CHCl(1:2)中のI−18(2.03g、4.38mMol)の溶液を、HCl(17.5mL、EtO中1M)で処理した。数分後、沈澱物が形成され始めた。30分後、さらなるEtOを添加し、そしてこの溶液を濾過した。固体濾液をさらなるいくつかの部分のEtOでリンスした。収集した固体を減圧下で乾燥して、1.93g(3.60mMol、82%の収率)の白色固体を得た。
【0098】
HPLC(方法A)t=2.79分;HPLC(方法C)t=4.59分;(キラル方法D)t=14.87および16.87分;MS(ES):m/z 464.3(M+H)。
【0099】
【化45】

(実施例28:ラットMCAO有効性の研究)
(一般手順)
ラットをイソフルレンで麻酔して、無菌手術のために準備した。MCAを管腔内技術を用いて閉塞して、虚血を誘導した(Schmid−Elsaesserなど、Stroke,1998;29:2162−2170)。閉塞を虚血2時間後に除去し、Vertexにより提供されるMed−e−cellポンプを用いて、ラットに化合物もしくはビヒクルを投薬した。化合物を、I.P.注入によってかまたはI.V.注入によって投薬し、2、3、または4投薬量投与において、1〜100mg/kgの範囲で投与した。i.v.ボーラスおよび持続注入を、外頸静脈を通じて投与した(MCAO前にカニューレ挿入した)。この実験の全持続時間は、24、48、もしくは72時間である。実験の終わりに、ラット脳を取り出し、氷上において、1×PBS中で10分間冷却した。2mm厚の冠状切片(7切片/脳)を、1×PBS中の2%TTCによって染色し、そして10%中性緩衝ホルマリンによって、一晩、後固定(post fix)した。
【0100】
虚血2時間後、閉塞器を取り外す前に、神経学的欠損基準に基づいて、この動物を研究に含めるかまたは研究から除外するかの決定を行った。0〜3の段階を、以下の神経学的反応:1)回転、2)触覚ひげ反応(tactile whisker response)、および3)尾の懸垂下での前肢の回旋、の各々に対して使用し、そして各動物において反応スコア(0〜9)を計算した。研究に含めるための最小スコアは、5以上である。加えて、早期に死亡した動物は全て研究から除外した。追加の動物を研究に含めて、各群が必要とする最終的な「N」を確実に得た。
【0101】
(測定された生理学的変数)
体温を手術中にモニタリングし、正常値近くに維持した(36.8〜37.5℃)。体温を、MCAOの時間、虚血にいたる2時間、処置開始時(虚血2時間後、4時間後、または6時間後)、虚血24時間後、48時間後、および72時間後(実験終了時)において記録した。
【0102】
体重を、虚血0時間後、24時間後、48時間後、および72時間後に記録した。
【0103】
行動学的評価を虚血前、および虚血2時間後、4時間後、6時間後、24時間後、48時間後、および72時間後に行った。
【0104】
本発明の化合物を、虚血惹起の2、4、または6時間後、3、または4投薬量投与で、1〜100mg/kgの範囲の投薬量で、投与した。一般に、これらの状態下で投与された化合物は、10%〜70%保護作用の範囲で%保護作用を示した。
【0105】
特定の好ましい実施形態において、化合物は、2−100mg/kgの範囲の投与投薬量で虚血惹起2時間後に投与され(TMCAO(一過性MCAO)またはPMCAO(持続性MCAO)モデル)、約35〜約70の範囲内で%保護作用を示す。
【0106】
さらに他の好ましい実施形態において、化合物は、TMCAOモデルを用いて、虚血惹起4時間後または6時間後に、2−15mg/kgの範囲の投与投薬量で(3または4投薬量投与で)投与され、そして約30〜約55の範囲内で%保護作用を示す。
【0107】
特定の他の好ましい実施形態において、化合物は、TMCAOモデルを用いて、虚血惹起4時間後に、2−100mg/kgの範囲の投与投薬量で(3または4投薬量投与で)投与され、そして約40〜約55の範囲内で%保護作用を示す。
【0108】
さらに他の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、持続注入様式で投薬される。なお別の好ましい実施形態において、化合物は、持続注入様式で0.125〜5mg/kg/時の範囲で投薬される。
【0109】
(実施例29:インビトロ虚血(OGD)アッセイ)
(神経保護作用パーセントの決定)
本明細書中で使用される場合、用語「保護作用パーセント」は、虚血性傷害(OGD)に対して保護されたニューロン細胞のパーセンテージを示し、以下として計算される:
%保護作用=(テスト−OGD)/(正常−OGD)×100。
【0110】
このプロトコールは、培養海馬ニューロン細胞において、無酸素−再酸素付加によって実験的虚血を誘導するために使用される手順を記載する。テスト化合物の神経保護効果は、虚血誘導性のニューロン細胞障害およびニューロン細胞死に対して評価される。
【0111】
以下の工程を、アッセイの日の前に行った:
LoG−Neurobasal[LoG−Neurobasalは、NoG−Neurobasal培地(Invitrogen Corp,カスタムオーダー)+0.5mMグルコース、0.5mM L−グルタミンおよび0.25×ペニシリン/ストレプトマイシンを含有する]を、低酸素チャンバーで一晩前平衡化した。
【0112】
LoG−Neurobasalを、通常のインキュベーター(5%CO)で一晩前平衡化した。
【0113】
通常のインキュベーター(5%CO)中で、Neurobasal/B27AO[Neurobasal/B27AOは、2×B27−AOサプリメント(Invitrogen Corp Cat#10889−038)、0.5mM L−グルタミン、および0.25×ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するNeurobasal培地(Invitrogen Corp Cat#21103−049)を含む]を、一晩前平衡化した。
【0114】
以下の工程を、アッセイの日に行った:
LoG−Neurobasal培地を低酸素チャンバーから取り出し、この培地を100%Nで軽く30分間泡立て、完全に脱酸素化した。
【0115】
Neurobasal/B27m培養培地[Neurobasal/B27mは、2×B27サプリメント(Invitrogen Corp Cat#17504−044)および0.5mM L−グルタミンを含有するNeurobasal培地を含む]を、滅菌ガラスパスツールピペットが取付けられた真空ポンプを用いて、各12ウェルプレート中の細胞から吸引した。
【0116】
プレートを、2mlのグルコースフリーBSS(pH7.4)で一度洗浄し、以下から調製した:143.6mM NaCl、5.4mM KCl、1.8mM CaCl、0.8mM MgSO、1mM NaHP0、26.2mM NaHC0、10mg/lフェノールレッド、および0.25×P/S。
【0117】
ニューロン(最初の培養から10〜11日)に、脱酸素化したLoG−Neurobasal(12ウェルプレートの各ウェルに対して1ml/ウェル)を補充した。これらのニューロン細胞を、Park LC,Calingasan NY,Uchida K,Zhang H,Gibson GE.(2000)「Metabolic impairment elicits brain cell type−selective changes in oxidative stress and cell death in culture」J Neurochem 74(1):114−124に従って調製した。
【0118】
テスト化合物を各ウェルに直接添加した(3種類の濃度の化合物+ポジティブコントロール、それぞれ三通り)。化合物を、100%DMSOに溶解し(ここで、DMSOの濃度は、0.5%を超えない)、次いで、プレートを低酸素チャンバー中に、プレートの蓋が半分開いた状態で5時間置いた。
【0119】
酸素正常状態コントロールとして、前平衡化した酸素正常状態のLoG−Neurobasal培地を各ウェルに添加し、プレートを通常の培養インキュベーター中に4時間、再度置いた。
【0120】
低酸素状態の4時間後、存在している培地を慎重に吸引し、2mlの新しい酸素化した(前平衡化した)Neurobasal/B27AOを、各ウェルに添加した。使用前に、培養インキュベーター(5%C0/95%0)中に一晩置くことによって、再酸素化した培地を獲得した。
【0121】
同じ濃度の同じテスト化合物を対応するウェルに戻して加え、このプレートを細胞培養インキュベーター(5%C0/95%0)中に置き、20〜24時間再酸素化した。20〜24時間の再酸素化の後、以下に記載する細胞追跡緑色蛍光法(cell tracker green fluorescence method)を用いて、生存ニューロン数を計数した。
【0122】
存在する培養培地を12ウェルプレートの各ウェルから吸引し、ニューロンを30〜37℃に予め温めたHBSS(pH7.4,Invitrogen Corp,Cat#14170−112)で、一度洗浄した。
【0123】
プレートの各ウェルに、HBSS中に溶解させた2.5μM Cell Tracker Green(Molecular Probes Cat#2925)および5μM Hoechst 33342蛍光色素を、1ml添加した。次いで、このプレートを室温で暗所に15分間置き、次いでニューロンを、2mlのHBSSで一度洗浄した。各ウェルに1mlのHBSSを添加し、生存蛍光細胞数および死亡蛍光細胞数を、Cellomics(登録商標)自動画像化システムを用いて計数した。
【0124】
好ましい実施形態において、以下の化合物が、≧50%のパーセント保護作用値を有することが見出された:I−1、I−3、I−13、およびI1−18。
【0125】
(実施例30:インビトロCNS炎症アッセイ:)
このプロトコールは、培養CNS混合グリア細胞において、リポ多糖類(lipopolysacchride)(LPS)による実験的炎症を誘導するために用いられる手順を記載する。テスト化合物の抗炎症効果を、混合グリア細胞におけるLPS−誘導性腫瘍壊死因子−α(TNF−α)産生に対して評価した。
【0126】
以下の工程を、アッセイの日に行った:
混合グリア細胞(最初の培養から7日)に、DMEM(高グルコース:Invitrogen Corp)、F−12(Invitrogen Corp)、100%ウシ胎仔血清、および100×N−2サプリメント(Invitrogen Corp)の50:50:10:1での組み合わせからなる、混合グリア細胞培養培地を補充した。これらの混合グリア細胞を、Park LC,Calingasan NY,Uchida K,Zhang H,Gibson GE.(2000)「Metabolic impairment elicits brain cell type−selective changes in oxidative stress and cell death in culture」J Neurochem 74(1):114−124に従って調製した(ある程度の改変を含む)。手短に言えば、ラット胎仔前脳(1〜2日齢)を単離し、粉砕して、5%COインキュベーター中、37℃で、96ウェルプレート上で混合グリア培地中に置いた(20,000細胞/ウェル)。最初の培養から4日目に、細胞に新しい培地を補充した。
【0127】
テスト化合物を、各ウェルに直接添加した(5種類の濃度の化合物+ポジティブコントロール、それぞれ四通り)。混合物を100%DMSOに溶解した(ここで、DMSOの濃度は、0.5%を超えない)。投薬30分後、50ng/mlのリポ多糖類(lipopolysacchride)(LPS)を、各ウェルに直接添加し、次いで、このプレートを5%COインキュベーター中に、37℃で6時間置いた。LPS処理の6時間後、存在する培地を慎重に回収し、培地中のTNF−αの量を検出した。
【0128】
混合グリア細胞から産生された、細胞培養培地中におけるTNF−αの存在の定量的決定を、BiosourceラットTNF−α ELISAキット(Biosource International)によリ提供されるプロトコールおよび試薬に基づいて、固相サンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法を用いて行った。
【0129】
好ましい実施形態において、以下の化合物が、1μM以下のIC50を有することが見出された:I−13、I−14、およびI−18。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

またはその薬学的に受容可能な塩であって、
ここで:
は、水素またはハロゲンであり;
は、置換されているかまたは置換されていないシクロアルキルであり;
の各出現箇所は、独立して、ハロゲン、アルキル、
【化2】

であり、ここで、mは、0、1または2であり、Rは、水素またはアルキルであり;
rは、0、1または2であり;そして
nは、0、1または2である、化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項2】
が、水素またはフッ素であり;Rが、置換されているかまたは置換されていないシクロアルキルであり;rが、0または1であり;Rが、アルキルまたは−(CHORであり、ここでmは、0、1または2であり、Rは、水素またはアルキルであり;そしてnが、0、1または2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、置換されているかまたは置換されていないノルボルニルであり、化合物が、式II:
【化3】

を有し、
ここで、Rが、水素またはハロゲンであり;
の各出現箇所が、独立して、ハロゲン、アルキル、
【化4】

であり、ここで、mが、0、1または2であり、Rが、水素またはアルキルであり;
nが、0、1または2であり;
rが、0、1または2であり;
の各出現箇所が、独立して、ハロゲン、アルキル、
【化5】

であり、ここで、qが、0、1または2であり、Rの各出現箇所が、独立して、水素またはアルキルであり;そして
pが、0、1または2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、置換されているかまたは置換されていないシクロヘキシルであり、化合物が、式III:
【化6】

を有し、
ここで、Rが、水素またはハロゲンであり;
の各出現箇所が、独立して、ハロゲン、アルキル、
【化7】

であり、ここで、mが、0、1または2であり、Rが、水素またはアルキルであり;
nが、0、1または2であり;
rが、0、1または2であり;
の各出現箇所が、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、
【化8】

であり、ここで、qが、0、1または2であり、Rの各出現箇所が、独立して、水素またはアルキルであり;そして
pが、0、1または2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
がFである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
rが0であるかまたはrが1であり、そしてRが、アルキル、OH、CHOH、またはアルコキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
nが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
nが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
nが2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
pが0である、請求項3に記載の化合物。
【請求項12】
pが0である、請求項4に記載の化合物。
【請求項13】
pが1である、請求項4に記載の化合物。
【請求項14】
pが2である、請求項4に記載の化合物。
【請求項15】
pが0または1であり、そしてRがOHまたはアルキルである、請求項3または4に記載の化合物。
【請求項16】
がFまたはHであり;pが0であり;nが0または1であり;rが0または1であり;そしてRがOH、CHOH、アルキルまたはアルコキシである、請求項3に記載の化合物。
【請求項17】
がFまたはHであり;pが0、1または2であり;Rの各出現箇所が、独立して、アルキル、OH、CHOHまたはアルコキシであり;nが0または1であり;rが0または1であり;そしてRがOH、CHOH、アルキルまたはアルコキシである、請求項4に記載の化合物。
【請求項18】
前記化合物が、以下の構造:
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

のうちの1つを有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
治療有効量の請求項1に記載の化合物および薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含む、薬学的組成物。
【請求項20】
発作についての処置、アルツハイマー病についての処置、パーキンソン病についての処置、多発性硬化症(MS)を処置するための薬剤、喘息についての処置、精神分裂病を処置するための薬剤、抗炎症剤、免疫調節剤もしくは免疫抑制剤、神経栄養因子、心臓血管疾患を処置するための薬剤、または免疫不全障害を処置するための薬剤から選択されるさらなる治療薬剤をさらに含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
神経変性障害、神経学的障害、虚血性障害または炎症性障害を処置するための方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項22】
前記虚血性障害が、発作である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
以下の工程:
発作についての処置、アルツハイマー病についての処置、パーキンソン病についての処置、多発性硬化症(MS)を処置するための薬剤、喘息についての処置、精神分裂病を処置するための薬剤、抗炎症剤、免疫調節剤もしくは免疫抑制剤、神経栄養因子、心臓血管疾患を処置するための薬剤、または免疫不全障害を処置するための薬剤から選択されるさらなる治療薬剤を患者に投与する工程をさらに包含し、ここで:
該さらなる治療薬剤が、処置されるべき疾患について適切であり;そして該さらなる治療薬剤が、単一投薬形態として前記組成物と一緒に投与されるか、または複数投薬形態の一部として該組成物とは別に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
神経変性障害、神経学的障害、虚血性障害または炎症性障害の処置のための医薬の製造における、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項25】
前記虚血性障害が、発作である、請求項24に記載の使用。

【公表番号】特表2006−502168(P2006−502168A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−534669(P2004−534669)
【出願日】平成15年9月8日(2003.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2003/027903
【国際公開番号】WO2004/022555
【国際公開日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】