説明

イソシアネートの製造方法

本発明は、アミンとホスゲンを場合により不活性媒体の存在下において気相で反応させることによりイソシアネートを製造する方法に関する。アミンとホスゲンを最初に混合して反応器内でイソシアネートに変換させる工程、反応器から出たイソシアネート及び塩化水素を含む反応ガスに液状急冷媒体(5)を添加してクエンチ部(3)内で反応ガスを冷却し、反応ガス及び急冷媒体の混合物を生成物流(7)としての急冷媒体を形成する工程を備える。用いられる急冷媒体(5)は、少なくとも一つの溶媒及びイソシアネートを含み、かつ調製工程から取り出される混合物であり、急冷媒体(5)に存在するあらゆる固形粒子がクエンチ部(3)に付与される前に除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミンとホスゲンを場合により不活性媒体の存在下において気相で反応させることによりイソシアネートを製造する方法に関する。アミンとホスゲンは、最初に混合されて反応器内でイソシアネートに変換する。反応器から出るイソシアネート及び塩化水素を含む反応ガスは、反応ガス及び生成物流の混合物としての急冷媒体を形成するための液状急冷媒体が付与されて急冷される。
【背景技術】
【0002】
アミンをホスゲン化することによってイソシアネートを製造する方法は、原則として、液相または気相のホスゲン化によって実現される。気相ホスゲン化は、高い選択性、有毒なホスゲンの低い滞留性及び要求されるエネルギーの減少量の点において注目に値する。
【0003】
気相ホスゲン化では、アミン含有反応物流及びホスゲン含有反応物流がそれぞれ気化状態で混合される。アミン及びホスゲンは、イソシアネートに付与するために放出される塩化水素(HCI)と反応される。アミン含有反応物流は一般的に液相に存在し、気化せしめられ、及び任意的にホスゲン含有ストリームと混合される前に過熱される。
【0004】
気相でイソシアネートを製造する関連の方法は、例えば、ヨーロッパ特許出願1319655またはヨーロッパ特許出願1555258で開示される。
【0005】
更なる反応を回避すべく、反応の終了後に反応混合物を冷却することが必要である。反応の終了のためには、例えば、液状急冷媒体が用いられる。このような液状急冷媒体は、例えば、ヨーロッパ特許出願1403248またはドイツ特許出願10 2006 058634で開示される。冷却用に加えられる急冷媒体は、50〜200℃の範囲の温度を有する。液流は、反応ガスに冷却状態で吹き付けられ、温度をおよそ100〜200℃にする。これは、高濃度イソシアネート液相及び低イソシアネート気相を備えた二相性混合物を形成する。この二つの相は、通常の分離工程または場合により分離工程に送られる。例えば、一方では塩化水素及びホスゲンを分離する蒸留工程、他方では、溶媒を含み得るイソシアネートを分離する蒸留工程である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ヨーロッパ特許出願1319655
【特許文献2】ヨーロッパ特許出願1555258
【特許文献3】ヨーロッパ特許出願1403248
【特許文献4】ドイツ特許出願10 2006 058634
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
急冷媒体中に存在する製造されたイソシアネートの製造過程は、ヨーロッパ特許出願1935875に開示されている。急冷媒体中のイソシアネート含有物の結果では、クエンチ部から出た生成物流中で高いイソシアネート濃縮に到達することが可能であり、後に精錬される必要がある。しかし、急冷媒体に存在するイソシアネートの製造方法の欠点は、出発原料及び/または反応物質の品質の低下によって固形物が生じ、及び下流側の装置部材へ運ばれてしまうことである。固形物は高沸騰流の中で積層され、一般的に、カラムの底部から排出される。しかし、液体は、高沸騰流から急冷媒体として引き出されることから、固形粒子が急冷媒体中に存在することとなる。これらは、下流側の装置部材中で沈殿物となる。より詳細には、クエンチ部の噴霧ノズルが閉塞される。このため、装置の清掃の費用及び不都合性が生じることとなる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アミンにホスゲンを反応させてイソシアネートを製造する方法を提供するものであり、急冷媒体が、後処理の後の工程中で少なくとも部分的に再循環され、従来技術の方法よりも高い製品寿命を達成するイソシアネートを任意に含むことを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、アミンとホスゲンを場合により不活性媒体の存在下において気相で反応させることによりイソシアネートを製造する方法によって達成され、アミンとホスゲンを最初に混合して反応器内でイソシアネートに変換させる工程、反応器から出るイソシアネート及び塩化水素を含む反応ガスに液状急冷媒体を添加して反応ガスをクエンチ部内で冷却し、反応ガス及び急冷媒体との混合物を生成物流として形成する工程を備える。用いられる急冷媒体は、少なくとも一つの溶媒及びイソシアネートを含み、かつ反応の終了後に続く後処理工程で取りだされる。急冷媒体に存在する任意の固形粒子は、クエンチ部に加える前に除去される。
【0010】
クエンチ部へ加える前に急冷媒体中に存在する固形粒子の除去は、急冷媒体に存在する固形粒子がノズルに沈積して、ノズルが閉塞することを防止する。これにより、従来技術の方法と比べて、クエンチ部の製品寿命を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による加工の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
イソシアネートを製造するために、好ましくは、ホスゲンとアミンは最初に、反応物質に添加するために混合されたアミンとホスゲンの混合領域に供給される。続いて、イソシアネートへの変換がなされる反応器に反応混合物が供給される。反応器内でのアミンとホスゲンの変換は、気相で行われることが好ましい。このため、反応器中の絶対圧力は、好ましくは0.3〜3バールの範囲内、より好ましくは0.8〜3.0バールである。温度は、好ましくは250〜550℃の範囲内、特に300〜500℃の範囲内である。
【0013】
気相で反応させるためには、ガス状のフォーム中にアミンとホスゲンを添加することが好ましい。このため、アミンは、200〜400℃の範囲内の温度を有することが好ましい。添加されるアミンの絶対圧力は、0.05〜3バールの範囲内であることが好ましい。付加されるホスゲンの温度は、250〜450℃の範囲内であることが好ましい。このため、ホスゲンは、当業者に知られた手法によって、添加する前に一般的に加熱される。
【0014】
ホスゲン及びアミンを加熱するため、及びアミンを気化させるために、例えば、電気加熱または燃料の燃焼による直接または間接加熱が用いられる。用いられる燃料は、典型的には燃料ガス、例えば天然ガスである。しかし、圧力を低下させることによるアミンの沸騰温度を低下させるためには、例えば、スチームによる加熱も可能である。スチームの圧力は、アミンの沸騰温度に従って選択される。スチームの好適な蒸気圧力は、例えば、40〜100バールの範囲内である。これにより、スチームの温度は250〜311℃の範囲内で生ぜしめられる。
【0015】
一般的に、複数の段階において、アミンを反応温度まで加熱することが必要である。一般的に、この目的で、アミンは最初に予め加熱され、気化させ過熱される。一般的に、気化は、最も長い滞留時間を費やし、アミンの分解に導く。これを最小にするために、例えば、低圧によって生じる低温下での気化が有効である。気化したアミンを過熱して気化後に反応温度とするためには、一般的には、スチームによる加熱では不十分である。従って、過熱のためには、電気加熱または燃料の燃焼による直接または間接加熱が典型的に用いられる。
【0016】
アミンの気化と対比すると、一般的に、ホスゲンは極めて低温で気化する。この理由としては、ホスゲンは、一般的に、スチームを用いて気化させることが可能だからである。一方、ホスゲンの気化は、熱統合によって実行される。例えば、ホスゲンを気化させるために急冷媒体中で得られた熱を利用することができる。これは、気化を全体的なエネルギー中性で実現することができる。急冷媒体中から得た熱に加えて、ホスゲンの気化温度より高い温度を有する他の任意の流体を利用することもできる。これらは、例えば、クエンチ部に続く凝縮から得られた凝縮流である。しかし、流体を反応温度まで加熱するためのホスゲンの必要な過熱は、一般に、電気加熱または燃料の燃焼による直接または間接加熱によって可能となる。
【0017】
イソシアネートを製造するためにアミンをホスゲン化することに用いられる反応器は、当業者に知られているものである。一般に、用いられる反応器は、管状の反応器である。反応器では、アミンが、イソシアネート及び塩化水素に付与するホスゲンと反応せしめられる。典型的には、反応器で形成される反応ガスが、形成されるイソシアネート及び塩化水素と同様に、ホスゲンを含むように、ホスゲンが過度に添加される。
【0018】
イソシアネートを製造するために用いることができるアミンは、モノアミン、ジアミン、トリアミンまたは多官能価アミンである。モノアミンまたはジアミンを用いることが好ましい。用いられるアミンによれば、モノイソシアネート、ジイソシアネート、トリイソシアネートまたは多官能価イソシアネートが得られる。本発明に係る方法では、モノイソシアネートまたはジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0019】
ジアミン及びジイソシアネートは、脂肪族、脂環式または芳香族である。
【0020】
脂環式イソシアネートは、少なくとも1つの脂環式環系を含むものである。
【0021】
脂肪族イソシアネートは、イソシアネート族だけを直鎖状または分枝鎖状に結合しておくものである。
【0022】
芳香族イソシアネートは、少なくとも1つの芳香族環系と結合した少なくとも1つのイソシアネート族を含むものである。
【0023】
「(環式)脂肪族イソシアネート」の語は、ここでは、脂環式及び/または芳香族イソシアネートの意で用いられている。
【0024】
芳香族モノ−及びジイソシアネートの例は、例えば、フェニールイソシアネート、モノマー2,4−及び/または4,4’−メチレン−ジ(フェニールイソシアネート)(MDI)、2,4−及び/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)及び1,5−または1,8−ナフチルジイソシアネート(NDI)といった6〜20の炭素原子を有するものが好ましい。
【0025】
(環式)脂肪族イソシアネートの例は、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(1,6−ジイソシアネートヘキサン)、1,8−オクタメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、1,14−テトラデカメチレンジイソシアネート、1,5−ジイソシアネートペンタン、ネオペンタンジイソシアネート、リシンイソシアネートの誘導体、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、トリメチルヘキサンジイソシアネートまたはテトラメチルヘキサンジイソシアネート、及び3(または4)、8(または9)−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ−[5.2.1.02,6]デカン異性体混合物、及び1,4−、1,3−または1,2−ジイソシアネートシクロヘキサン、4,4’−または2,4’−ジ(イソシアネートシクロヘキシル)メタン、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,3−または1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、2,4−または2,6−ジイソシアネート−1−メチルシクロヘキサンのような脂環式ジイソシアネートといった芳香族ジイソシアネートが好ましい。
【0026】
好適な(環式)脂肪族ジイソシアネートは、1,6−ジイソシアネートヘキサン、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン及び4,4’−ジ(イソシアネートシクロヘキシル)−メタンが挙げられる。特に好適なのは、1,6−ジイソシアネートヘキサン、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,5−ジイソシアネートペンタン及び4,4’−ジ(イソシアネートシクロヘキシル)メタンである。
【0027】
芳香族ジイソシアネートの例は、2,4−、2,6−トリレンジイソシアネート、メチレンジフェニールイソシアネートまたは異性体混合物である。
【0028】
反応のためにイソシアネートを添加する本発明に係る方法で用いられるアミンは、対応する中間物及び対応するイソシアネートが選択された反応状態の下でガス状のフォーム中に存在するアミンである。ほぼ2モル%の範囲に対する反応状態の下で反応の持続時間を超えて分解するアミンが好適であり、より好適にはほぼ1モル%の範囲であり、最も好適なのはほぼ0.5モル%の範囲である。特に好適なアミンは、脂肪族または2〜18個の炭素原子を有する脂環式炭化水素を基にしたジアミンである。例としては、1,6−ジアミンヘキサン、1,5−ジアミノペンタン(IPDA)及び4,4−ジアミノシクロヘキシルメタンが挙げられる。1,6−ジアミノヘキサン(HDA)及び1,5−ジアミノペンタンを用いることが好適である。
【0029】
本発明の方法には、際立った分解をすることなくガス状態に変換される芳香族アミンを、同様に用いることができる。好適な芳香族アミンの例は、例えば80:20〜65:35(モル/モル)混合物といった2,4−または2,6異性体またはその混合物としてのトリレンジアミン(TDA)、ジアミノベンゼン、2,6−キシリジン、ナフチルジアミン(NDA)及び2,4−または4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンが挙げられる。
【0030】
モノイソシアネートを製造するために、脂肪族、脂環式または芳香族アミン、典型的にはモノアミンを用いることができる。好適な芳香族モノアミンは、特にアニリンである。
【0031】
気相ホスゲン化では、反応の過程で生じた混合物、例えば反応物(アミン及びホスゲン)、中間物(特に中間物として形成されるモノ−及びジカルバモイルクロライド)、最終製品(イソシアネート)、及び計測されたあらゆる不活性混合物が、反応状態の下で気相中に残存する。これら、または他の構成要素が気相から沈殿、例えば反応器壁または装置の他の構成要素に沈殿すると、これらの沈殿物は、作用を受ける装置等の構成要素を介して熱伝導または流動性に不具合を生じさせることとなる。遊離アミノ基と塩化水素から生じるアミン塩酸塩の発生にとって、これは特にあてはまることでる。生じたアミン塩酸塩は沈殿しやすく、困難ではあるものの再度気化する性質を有するからである。
【0032】
管状の反応器の使用に加えて、本質的な立方体状の反応チャンバ、例えばプレート器を用いることも可能である。反応器の異なった任意の断面形状であっても、好適に用いることが可能である。
【0033】
副生成物の形成を防止するために、ホスゲンを過度に供給することが好ましい。反応に必要とされるだけのアミンの割合を供給するためには、アミンに不活性ガスを混合することが可能である。アミン中の不活性ガスの割合は、アミンとホスゲンのための供給オリフィスの所定の形状に供給されるアミンの量を調節するために用いることができる。添加される不活性媒体は、反応チャンバ内のガス状フォーム中に存在し、反応の過程で生じた混合物と反応しない。用いられる不活性媒体は、例えば、窒素、ヘリウムやアルゴンといった貴ガス、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、トルエン、キシレン、クロロナフタレン、デカヒドロナフタレン、二酸化炭素または一酸化炭素といった芳香族炭化水素である。しかし、不活性媒体として、窒素及び/またはクロロベンゼンを用いることが好ましい。
【0034】
しかし、一方で、例えば、ホスゲンのあまりにも多い過度化を回避するために、ホスゲンに不活性媒体を添加することも可能である。
【0035】
一般に、アミンまたはホスゲンへの不活性媒体のガス容量の比率が0.0001〜30より少ない、好ましくは0.01〜15より少ない及びより好ましくは0.1〜5より少なくなる量で、不活性媒体が添加される。
【0036】
望まれない副生成物の形成を減少または妨げるため、及び形成されたイソシアネートの分解を抑制するために、反応ガスは、反応後に直ちに急冷される。このため、好適な液状急冷媒体が付加される。加熱または急冷媒体の気化の結果、熱の吸収及び反応ガスが急速に冷却される。
【0037】
本発明によれば、急冷媒体は、クエンチ部から出る混合物の一部を少なくとも含む。これは、一般的に、用いられる任意の溶媒、反応で形成されたイソシアネート、及びホスゲンとHCIの残留物をも含む。
【0038】
パイプライン、調節装置及び他の器具部材、特にクエンチ部の噴霧器で形成する際に生じる沈殿物の発生を防ぐために、急冷媒体中の任意の固形粒子が、クエンチ部へ加えられる前に除去される。
【0039】
第1の実施の形態では、急冷媒体中に存在する固形粒子は、ハイドロサイクロンまたはフィルタで除去される。フィルタまたはハイドロサイクロンは、噴霧器の上流側の好適な箇所に配置される。
【0040】
急冷媒体中に存在する固形粒子を除去するためにフィルタが用いられた場合、当業者に知られたいかなるフィルタであっても用いることができる。好適なフィルタは、例えば、スクリーンフィルタ、吸込フィルタ、キャンドル型フィルタ、リーフ型フィルタ、デプスフィルタ、チャンバ型フィルタ及びメンブレンフィルタのような表面またはデプスフィルタといった連続的及び回分式の器具である。これらのフィルタは、圧力(圧力フィルタ)または減圧(吸入フィルタ)によって操作される。
【0041】
フィルタに加えて、例えば、ピーラー遠心機、スクリーン遠心機またはプッシャー遠心機、または重力セパレータといった遠心機を用いて、特異な成分を除去することも可能である。
【0042】
他の実施の形態では、急冷媒体中に存在する固形粒子は、気化または再凝縮によって急冷媒体から除去される。気化は、急冷媒体の液状成分を気相に転換し、続いて、再度凝縮される。固形粒子及び高沸騰成分はこのように除去される。気化及び再凝縮は、例えば、蒸留カラムで実行される。一方、あらゆる好適な蒸留器を蒸留に用い、その下流に凝縮器を連結することも可能である。
【0043】
クエンチ部中の反応ガスの急速な冷却を達成するために、急冷媒体は、一般に、液状フォームに添加される。急冷媒体の温度は、好ましくは0〜250℃の範囲、特に好ましくは20〜220℃の範囲である。高温の反応ガス中に急冷媒体を噴射することは、急冷媒体を加熱し、及び/または気化させる。急冷媒体の加熱と気化に必要な熱は反応ガスから得られ、反応ガスはこのようにして冷却される。反応ガスが冷却される温度は、例えば、添加された急冷媒体の量及び温度を介して調節される。
【0044】
クエンチ部に添加される急冷媒体の温度を設定するためには、急冷媒体は熱交換器を通過させることが好ましい。熱交換器への急冷媒体の入り口温度によれば、急冷媒体は熱交換器で加熱または冷却される。例えば、急冷媒体として用いられる生成物流の一部がクエンチ部の下流から直接的に取り出される場合は、冷却が要求される。例えば、急冷媒体として用いられる生成物流の一部が加工領域の終端部分から取り出され、クエンチ部に加えられるべき急冷媒体の温度が望ましい温度よりも低い場合は、加熱が生じる。しかし、一般的に、クエンチ部に加えられる前に急冷媒体を冷却することが必要となる。
【0045】
急冷媒体中の溶媒損失を補うためには、クエンチ部に急冷媒体を加える前に溶媒を加えることが好ましい。急冷媒体に存在する好適な溶媒は、例えば、任意にハロゲン元素で置換された炭化水素である。急冷媒体中に存在する溶媒は、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ヘキサンベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、ニトロベンゼン、アニソール、クロロトルエン、o−ジクロロベンゼン、ジエチルイソフタレート、テトラヒドロフラン、ジメチルフォルムアミド、キシレン、クロロナフタレン、デカヒドロナフタレン及びトルエンからなる群から選択されたものが好ましい。
【0046】
クエンチ部の下流に続く冷却のための更なる段階は、例えば、当業者に知られた、冷却のためのクエンチ部または凝縮器または他の段階である。好ましくは、クエンチ部の下流に続く生成物流を冷却する少なくとも一つの段階は、凝縮器である。好適な凝縮器は、当業者に知られた凝縮器の形態であれば、どんなものであってもよい。典型的には、用いられる凝縮器は、冷却媒体が流れる熱交換器である。用いられる冷却水は、例えば、水または冷却された溶媒である。この場合、気体は、凝縮器の壁部で、少なくとも部分的に外部へ凝縮する。このように、生じる液体は、流れ落ち、かつ集められて、凝縮器から取り出される。
【0047】
生成物流の凝縮は、一般的に、加工工程に続くものである。例えば、凝縮された混合物は、溶媒中でこすり洗浄される。用いられる溶媒は、例えば、急冷媒体として用いられる物質と同じものである。
【0048】
こすり洗浄は、イソシアネートを選択的にスクラビング溶液へと変化させる。続いて、好ましくは精留によって、得られた混合物は、イソシアネート、溶媒、ホスゲン及び塩化水素に分割される。
【0049】
生成物流の冷却に代えて、クエンチ部を離れた後に、生成物流を分離工程に供給することも可能である。しかし、一方、適正な分離工程は、例えば、凝縮器の後に続く。しかし、好ましくは、分離工程はクエンチ部の後に続く。例えば、好適な分離工程は、蒸留カラムまたはスクラバーである。
【0050】
分離工程がスクラバーの場合、クエンチ部を離れた生成物流は、好ましくは、上述したように、溶媒とともにこすり洗浄される。これは、イソシアネートを任意にスクラビング溶液へと変化させる。こすり洗浄は、好ましくは精留によって、分離に続くこととなる。
【0051】
分離工程が蒸留カラムの場合、ガス状の生成物流が、精留カラムに供給される。精留カラムは、精留カラムの最高温度が生成物流の沸騰温度よりも低くなるように操作されることが好ましい。このように、生成物流の個々の成分は、精留カラムで選択的に凝縮され、カラムの頂点及び側部を通ってカラムの底部から取り出される。
【0052】
分離工程がスクラバーの場合、好適な装置は、形成されたイソシアネートが、不活性溶媒内の凝縮によってガス状の生成物流から除去されるスクラブカラムが特に好適である。一方、過度のホスゲン、塩化水素及びより正確には不活性媒体が、ガス状のフォーム内のスクラブカラムを通過する。不活性溶媒の温度は、アミンに対応するカルバモイルクロライドが選択されたスクラブ媒体内に溶解して存在するように選択されることが好ましい。特に好ましくは、カルバモイルクロライドの溶解温度を上回って、不活性溶媒の温度をアミンと一致させ続けることである。
【0053】
好適なスクラバーは、当業者に知られたスクラバーであれば、いかなるものであってもよい。例えば、撹拌容器または他の従来の装置、例えば、分離管またはミキサセトラ装置を用いることができる。
【0054】
クエンチ部を離れた後、反応ガスの混合物及び急冷媒体は、一般的に、例えば、国際公開2007−028715で開示されるように、こすり洗浄及び後処理される。
【0055】
生成物流の加工に凝縮器が用いられる場合、凝縮器から急冷媒体を取り出すことが好ましい。精留による加工の場合、急冷媒体として用いられる溶媒を除去することが好ましい。この場合、溶媒はイソシアネートの断片を未だ含有している。このように除去された溶媒及びイソシアネートの混合物は、急冷媒体として用いられる。
【0056】
生成物流の一部が急冷媒体として用いられる場合、例えば、冷却後に、生成物流からこの一部を分岐することが可能となる。一方、急冷媒体として用いられた生成物流の一部も、クエンチ部に続く後処理の後に、生成物流から分岐することが可能となる。
【0057】
本発明について、図を参照しながら説明する。
【0058】
図は、本発明による加工の概略を説明する図である。
【0059】
アミンと気相状のホスゲンとを反応させることによってイソシアネートを製造するために反応器から出るイソシアネートと塩化水素とを含む反応ガス1は、クエンチ部3に供給される。クエンチ部3への急冷媒体5の付与は、反応ガスと急冷媒体を含む生成物流7を形成する反応ガス1を冷却する。生成物流7は、一般的に液相及び気相を含む。
【0060】
図示される実施の形態では、生成物流7は、相分離装置9に供給される。好適な相分離器9は、気相から液相を分離する当業者に知られた装置であればいかなるものであってもよい。
【0061】
気相11及び液相13は、相分離装置9から引き出される。気相は、一般的に、ホスゲン、HCI及びあるいは不活性媒体及び溶媒を含み、液相13は、一般的に、イソシアネート、高沸騰副生成物及びあるいは溶媒を含む。
【0062】
更なる流体として、図示される実施の形態では、急冷媒体15も、相分離装置9から引き出される。急冷媒体15は、固形粒子を含み得る。一般的に、急冷媒体15は、溶媒及びイソシアネートを含む。急冷媒体15は、クエンチ部3への望ましい供給温度に冷却された熱交換機17に供給される。気相11または液相13とともに放出されるいかなる溶媒も、溶媒供給19を介して置き換えられる。溶媒19は、熱交換器17の上流または熱交換器17の下流のいずれか一方から供給される。溶媒流を分割し、熱交換器17の上流及び下流から溶媒の一部を供給することも可能である。溶媒の温度によっては、溶媒19の付与は急冷媒体15を更に冷却する。溶媒供給19は、任意の望ましい加工工程から供給され、または外部から付与される。
【0063】
熱交換器17の後に、少なくとも一つの粒子分離器21が配置される。用いられる粒子分離器21は、例えば、ハイドロサイクロンまたはフィルタである。一方、粒子分離器としては、例えば、蒸留カラムまたは気化器及び凝縮器を用いることも可能である。粒子分離器21では、急冷媒体5に存在するいかなる固形粒子も除去される。用いられる粒子分離器21次第では、例えば、スラッジ、フィルタケーク、または蒸留の残留物として、固形粒子が取り出される。固形物を含む流れを、符号23で示す。
【0064】
複数の粒子分離器21が用いられる場合は、複数の同種の粒子分離器または異なった粒子分離器を、直列または並列で用いることができる。例えば、複数のフィルタ、複数のハイドロサイクロン、または他のフィルタ及びハイドロサイクロンを用いることができる。粒子分離器21として複数のフィルタが用いられる場合、例えば、急冷媒体の流れる方向に沿ったフィルタからフィルタへと向かうに従って孔径が減少する孔径の異なる複数のフィルタを用いることもできる。しかし、複数の同種の粒子分離器を並列で用い、交互に再生させることが好ましい。固形粒子を解放した急冷媒体は、反応ガス1を冷却するためにクエンチ部3に供給される。
【0065】
ここで示される実施の形態に加えて、相分離装置9から引き出された急冷媒体15は、生成物流7の部分を、クエンチ部3を出た後に択一的に直接分岐することも可能である。急冷媒体として相分離装置9から引き出された液相13の部分を分岐することも可能である。しかし、溶媒供給19のみを介して急冷媒体を供給することも可能である。この場合、全ての液状物質は、液相13として相分離装置を離れる。
【0066】
一方、相分離装置の代わりに、後処理の他の工程を用いることもできる。この場合、任意の位置から生成物流の一部を取り出すことが可能であり、例えば、急冷媒体5として凝縮及び粒子分離といった適切な後処理の後に生成物流を用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 反応ガス
3 クエンチ部
5 急冷媒体
7 生成物流
9 相分離装置
11 気相
13 液相
15 急冷媒体
17 熱交換器
19 溶媒
21 粒子分離器
23 固体含有流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミンとホスゲンを場合により不活性媒体の存在下において気相で反応させることによりイソシアネートを製造する方法において、
アミンとホスゲンを最初に混合して反応器内でイソシアネートに変換させる工程と、
クエンチ部(3)内で反応器から出るイソシアネート及び塩化水素を含む反応ガス(1)に液体急冷媒体(5)を添加することによって該反応ガスを冷却し、反応ガス及び急冷媒体(5)との混合物を生成物流(7)として形成する工程と、
少なくとも1種の溶媒またはイソシアネートを含む混合物を急冷媒体として使用する工程と、
上記反応が終了した後に続く後処理工程において該混合物を取り出す工程と、
急冷媒体(5)中に存在する任意の固形粒子を、クエンチ部(3)に加える前に除去する工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記急冷媒体(5)に存在する固形粒子は、
ハイドロサイクロン、フィルタ、遠心または重力分離器によって急冷媒体から除去されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルタは、
スクリーンフィルタ、吸込フィルタ、キャンドル型フィルタ、リーフ型フィルタ、デプスフィルタ、チャンバ型フィルタ及びメンブレンフィルタであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記急冷媒体(5)に存在する前記固形粒子は、
気化及び再凝縮によって急冷媒体から除去されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記急冷媒体(5)は、
任意にハロゲン元素で置換された炭化水素を溶媒として含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記急冷媒体(5)は、
モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ヘキサン、ベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、ニトロベンゼン、アニソール、クロロトルエン、o−ジクロロベンゼン、ジエチルイソフタレート、テトラヒドロフラン、ジメチルフォルムアミド、キシレン、クロロナフタレン、デカヒドロナフタレン及びトルエンからなる群から選択される溶媒を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記急冷媒体(5)は、
少なくとも前記生成物流(7)の一部を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記クエンチ部(3)に続いて、前記反応ガスの更なる複数の冷却工程があることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記クエンチ部(3)に続く前記反応ガスの冷却工程の少なくとも一つは、凝縮器であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記急冷媒体(5)として用いられる前記生成物流(7)の一部は、
前記クエンチ部(3)に続く後処理の後に前記生成物流から分岐することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記クエンチ部(3)に続く前記後処理は、分離工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記分離工程は、
蒸留カラムまたはスクラバーであることを特徴とする請求項11に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−510495(P2012−510495A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538978(P2011−538978)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066023
【国際公開番号】WO2010/063665
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】