説明

イソニトリルの分解方法とその利用

【課題】ニトリルやイソニトリルを分解する方法であって、触媒として酵素を用いる場合に比べて反応条件の制約が少ない分解方法を提供する。
【解決手段】下記金属錯体(I)を触媒としてイソニトリルを分解する方法、並びに下記金属錯体(II)を触媒としてニトリルおよびイソニトリルを分解する方法が提供される。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトリルやイソニトリルを分解する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ニトリル(一般式:R−CNで表される化合物。ここでRは有機基である。)またはその構造異性体であるイソニトリル(一般式:R−NCで表される化合物。ここでRは有機基である。)に属する有機化合物は、一般に環境負荷が高いため、該化合物を簡便に分解処理する方法は有用である。ニトリルやイソニトリルを分解する従来の方法として、酵素(ニトリルヒドラターゼ、イソニトリルヒドラターゼ等)を触媒に用いる方法が知られている(特許文献1、非特許文献1)。イソニトリルの分解に関連する他の従来技術文献として特許文献2が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−153291号公報
【特許文献2】特開2007−181404号公報
【非特許文献1】Yamada, H. and Kobayashi, M., Biosci. Biotechnol. Biochem. 1996, 60(90), 1391−1400.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、酵素は安定性に乏しく不活性化しやすいため、採用し得る反応条件(溶媒、反応温度、pH等)が限られる。
そこで本発明は、酵素を用いる従来の方法に比べて反応条件の制約が少ない(例えば、より厳しい反応条件をも採用可能な)ニトリルおよび/またはイソニトリルの分解方法を提供することを一つの目的とする。本発明の他の目的は、かかる分解方法において好ましく使用し得る金属錯体および該錯体を有効成分とするニトリルおよび/またはイソニトリル分解剤の提供である。関連する他の目的は、ニトリルやイソニトリルから有用物質を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、酵素に代えて、中心金属に複数の窒素原子および硫黄原子が配位した構造を有する特定の金属錯体を用いることにより、上記課題が解決され得ることを見出して本発明を完成した。
【0006】
本発明によると、次式(I)で表される金属錯体を触媒としてイソニトリルを分解することを特徴とするイソニトリル分解方法が提供される。
【化1】

ここで、上記式(I)中のM1はCo(III)またはFe(III)であり得る。aおよびbは、それぞれ独立して0(すなわち化学結合)または1(すなわち−CH−)であり得る。vおよびwは、それぞれ独立して1または2であり得る。式中の四つのR1は、それぞれ独立に、水素原子および炭素数1〜6の炭化水素基(典型的にはアルキル基)から選択されるいずれかであり得る。該炭化水素基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
【0007】
上記イソニトリル分解方法では、触媒として、酵素に比べて分子量が小さく化学的に安定な、上記式(I)で表される金属錯体を用いる。したがって該方法は、酵素が適切に機能する条件に限定されず、より厳しい条件(有機溶媒の存在、高温、非中性pH等)の下でイソニトリルを分解処理する態様でも好ましく実施され得る。かかる分解方法は、例えば、有機溶媒中または有機溶媒が混在する水溶液中のイソニトリルの分解にも適用され得る。また、式(I)で表される錯体は比較的高温(例えば40℃程度)でも触媒活性を維持し得ることから、上記イソニトリル分解方法は、加熱条件下(例えば凡そ40℃またはそれ以上、典型的には凡そ40℃〜100℃)でも実施され得る。このことによって、常温での分解が困難なイソニトリルを加熱条件下で効率よく分解し得る。また、かかる分解方法は、比較的高い酸性またはアルカリ性を示す溶液中におけるイソニトリルの分解にも適用され得る。更にまた、かかる分解方法は、複合的に厳しい条件下(例えば、アルカリ性の有機溶媒中等)におけるイソニトリルの分解にも適用され得る。
【0008】
なお、本明細書において「分解」とは、ニトリル分子中またはイソニトリル分子中のC−N三重結合(シアノ基またはイソシアノ基)の少なくとも一部分が分解し、当該化合物が最終的に他の官能基(アミド基、アミノ基等)を持つ化合物に変換されることをいう。
また、本明細書において「触媒」とは、ターンオーバー数(Turn Over Number;以下「TON」と表記することもある。)が1を超えることをいう。
【0009】
また、上記式(I)中のvが1である場合、該vが付されたOは、SとMとに架橋するように結合し得る。したがって、式(I)により表される金属錯体には、次式(V)で表される構造を有する金属錯体が包含され得る。
【化2】

【0010】
上記イソニトリル分解方法によると、分解対象(処理対象)たるイソニトリル(R−NC)が、対応する化学構造を有するアミン(R−NH)に変換され得る。アミンは化学産業上有用な化合物である。したがって、上記イソニトリル分解方法は、他の側面として、式(I)で表される金属錯体を用意する工程と、該錯体を触媒に用いてイソニトリルからアミンを生成する工程と、を包含するアミン製造方法を提供する。かかるアミン製造方法において、式(I)で表される金属錯体は、上記イソニトリル分解方法と同様の態様(反応条件等)を以って用いることができる。ここに開示されるアミン製造方法では、使用する溶媒は水に限られず、例えば有機溶媒または有機溶媒が混在する水であってもよい。したがって、水溶性イソニトリルおよび有機溶媒可溶性イソニトリルのいずれからも好ましくアミンを製造し得る。また、該錯体の触媒活性は比較的高温においても維持され得るため、イソニトリルからアミンを生成する際、必要に応じて加熱することにより該反応を効率よく行うことができる。更に、式(I)で表される金属錯体は、酵素が分解し得るpH(酸性またはアルカリ性)においても触媒活性を維持し得ることから、該錯体を触媒に用いる本発明のアミン製造方法によると、上記酵素が分解し得るpHの溶液においてもイソニトリルからアミンを生成し得る。したがって、該製造方法に伴う化学反応(加水分解反応)を酸またはアルカリにより更に促進させ、反応効率を高めることが可能である。また更に、本発明によると、必要に応じて複合的に厳しい反応条件(例えば、高温およびアルカリ性等)をも適用可能な、イソニトリルからのアミン製造方法が提供される。
【0011】
本発明によると、また、次式(II)で表される金属錯体を触媒として、ニトリルまたはイソニトリルに属する有機化合物(以下、ニトリル等と総称することもある。)を分解する方法が提供される。
【化3】

ここで、上記式(I)中のM2はCo(III)またはFe(III)であり得る。Aはイソシアニド配位子(一般式:R−NC)であり得る。cおよびdはそれぞれ独立して0または1であり得る。xおよびyはそれぞれ独立して1または2であり得る。式中の四つのR2は、それぞれ独立に、水素原子および炭素数1〜6の炭化水素基(典型的にはアルキル基)から選択されるいずれかであり得る。該炭化水素基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
【0012】
上記イソニトリル分解方法では、触媒として、酵素に比べて分子量が小さく化学的に安定な、上記式(II)で表される金属錯体を用いる。したがって該方法は、酵素が適切に機能する条件に限定されず、より厳しい条件(有機溶媒の存在、高温、非中性pH等)の下でイソニトリルを分解処理する態様でも好ましく実施され得る。かかる分解方法は、例えば、有機溶媒中または有機溶媒が混在する水溶液中のニトリル等の分解にも適用され得る。また、式(II)で表される錯体は比較的高温(例えば40℃程度)でも触媒活性を維持し得ることから、上記ニトリル等の分解方法は、加熱条件下(例えば凡そ40℃またはそれ以上、典型的には凡そ40℃〜100℃)でも実施され得る。このことによって、常温での分解が困難なニトリル等を加熱条件下で効率よく分解し得る。また、かかる分解方法は、比較的高い酸性またはアルカリ性を示す溶液中におけるニトリル等の分解にも適用され得る。更にまた、かかる分解方法は、複合的に厳しい条件下(例えば、アルカリ性の有機溶媒中等)におけるニトリル等の分解にも適用され得る。
【0013】
上記ニトリル等分解方法をイソニトリルの分解に適用することにより、分解対象物(処理対象物)たるイソニトリル(R−NC)が、対応する化学構造を有するアミン(R−NH)に変換され得る。したがって、上記ニトリル等分解方法は、他の側面として、式(II)で表される金属錯体を用意する工程と、該錯体を触媒に用いてイソニトリルからアミンを生成する工程と、を包含するアミン製造方法を提供する。かかるアミン製造方法において、上記式(II)で表される金属錯体は、上記ニトリル等分解方法と同様の態様(反応条件等)を以って用いることができる。ここに開示されるアミン製造方法では、使用する溶媒は水に限られず、例えば有機溶媒または有機溶媒が混在する水であってもよい。したがって、水溶性イソニトリルおよび有機溶媒可溶性イソニトリルのいずれからも好ましくアミンを製造し得る。また、該錯体の触媒活性は比較的高温においても維持され得るため、イソニトリルからアミンを生成する際、必要に応じて加熱することにより該反応を効率よく行うことができる。更に、式(II)で表される金属錯体は、酵素が分解し得るpH(酸性またはアルカリ性)においても触媒活性を維持し得ることから、該錯体を触媒に用いる本発明のアミン製造方法によると、酵素が分解し得るpHの溶液においてもイソニトリルからアミンを生成し得る。したがって、該製造方法に伴う化学反応(加水分解反応)を酸またはアルカリにより更に促進させ、反応効率を高めることが可能である。また更に、本発明によると、必要に応じて複合的に厳しい反応条件(例えば、高温およびアルカリ性等)をも適用可能な、イソニトリルからのアミン製造方法が提供される。
【0014】
また、上記ニトリル等分解方法をニトリルの分解に適用することにより、分解対象物(処理対象物)たるニトリル(R−CN)が、対応する化学構造を有するアミド(R−CONH)に変換され得る。したがって、上記ニトリル等分解方法は、他の側面として、式(II)で表される金属錯体を用意する工程と、該錯体を触媒に用いてニトリルからアミドを生成する工程と、を包含するアミド製造方法を提供する。かかるアミド製造方法において、上記式(II)で表される金属錯体は、上記ニトリル等分解方法と同様の態様(反応条件等)を以って用いることができる。ここに開示されるアミド製造方法では、使用する溶媒は水に限られず、例えば有機溶媒または有機溶媒が混在する水であってもよい。したがって、水溶性ニトリルおよび有機溶媒可溶性ニトリルのいずれからも好ましくアミドを製造し得る。また、該錯体の触媒活性は比較的高温においても維持され得るため、ニトリルからアミドを生成する際、必要に応じて加熱することにより該反応を効率よく行うことができる。更に、式(II)で表される金属錯体は、酵素が分解し得るpH(酸性またはアルカリ性)においても触媒活性を維持し得ることから、該錯体を触媒に用いる本発明のアミド製造方法によると、酵素が分解し得るpHの溶液においてもニトリルからアミドを生成し得る。したがって、該製造方法に伴う化学反応を酸またはアルカリにより更に促進させ、反応効率を高めることが可能である。また更に、本発明によると、必要に応じて複合的に厳しい反応条件(例えば、高温およびアルカリ性等)をも適用可能な、ニトリルからのアミド製造方法が提供される。
【0015】
なお、式(I)および式(II)で表される錯体は、いずれも典型的にはアニオンであり、ここに開示される方法の好適な一態様では主に対イオン(カチオン)を含む塩(該塩の水和物であってもよい。)として使用され得る。
【0016】
本発明によると、また、次式(III)で表される新規な金属錯体が提供される。
【化4】

ここで、上記式(III)中のM3はCo(III)またはFe(III)であり得る。eおよびfはそれぞれ独立して0または1であり得る。式中の四つのR3は、それぞれ独立に、水素原子および炭素数1〜6の炭化水素基(典型的にはアルキル基)から選択されるいずれかであり得る。該炭化水素基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該錯体は典型的にはアニオンであり、通常対イオン(カチオン)を含む塩として存在する。該塩は水和物として存在し得る。
かかる構造の金属錯体は、イソニトリルの分解反応(加水分解反応)を触媒し得る。また、該イソニトリル分解反応の結果物としてアミンを生成し得る。したがって、ここに開示されるいずれかの方法に使用される触媒として好ましく採用され得る。
【0017】
上記式(I)で表される金属錯体(上記式(III)で表される金属錯体を包含する。)は、イソニトリルを分解する(典型的には、該分解の結果物としてアミンを生じる)分解剤の有効成分として有用である。したがって、本発明によると、上記式(I)で表される金属錯体を有効成分として含むイソニトリル分解剤が提供される。
【0018】
本発明によると、更にまた、次式(IV)で表される新規な金属錯体が提供される。
【化5】

ここで、上記式(IV)中のM4はCo(III)またはFe(III)であり得る。Aはイソシアニド配位子であり得る。gおよびhはそれぞれ独立して0または1であり得る。式中の四つのR4は、それぞれ独立に、水素原子および炭素数1〜6の炭化水素基(典型的にはアルキル基)から選択されるいずれかであり得る。該炭化水素基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該錯体は典型的にはアニオンであり、通常対イオン(カチオン)を含む塩として存在する。該塩は水和物として存在し得る。
かかる構造の金属錯体は、ニトリル等の分解反応(加水分解反応)を触媒し得る。また、該ニトリル等分解反応の結果物として、基質(分解対象物)がニトリルである場合には対応するアミドを、基質がイソニトリルである場合には対応するアミンを生成し得る。したがって、ここに開示されるいずれかの方法に使用される触媒として好ましく採用され得る。
【0019】
上記式(II)で表される金属錯体(上記式(IV)で表される金属錯体を包含する。)は、ニトリル等を分解する(典型的には、該分解の結果物として、基質の種類に応じてアミンまたはアミドを生じる)分解剤の有効成分として有用である。したがって、本発明によると、上記式(II)で表される金属錯体を有効成分として含むニトリル等分解剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0021】
ここに開示されるイソニトリル分解方法の好ましい一態様では、上記式(I)で表される金属錯体を触媒として用いる。上記式(I)中のM1はCo(III)およびFe(III)のいずれかであり、好ましくはCo(III)である。aおよびbはそれぞれ独立して0または1であり、aが1、bが0であることがより好ましい。vおよびwはそれぞれ独立して1または2であり、wが2であることがより好ましく、vが1、wが2であることが更に好ましい。なお、vが1である場合、該vが付されたOは、SとM1とに架橋するように結合し得る。すなわち、ここに開示されるイソニトリル分解方法に用いる触媒は、上記式(V)で表される構造の金属錯体であり得る。また、R1は好ましくは水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基(典型的にはアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等)である。四つのR1のいずれもがそれぞれ独立に水素原子およびメチル基から選択されるいずれかであることがより好ましく、R1がいずれもメチル基であることが好適である。
【0022】
上記式(I)で表される金属錯体は、典型的にはアニオンであり、当該イソニトリル分解方法における触媒としては、主に対イオンを含む塩または該塩の水和物として用いる。該対イオンは、該錯体の触媒活性を妨げない限り特に制限されず、容易に入手できるもの(製造(合成、精製)が容易なもの)や分解反応を行う溶媒中で電離しやすいものを適宜選択して用いればよい。例えば、金属カチオンおよび有機カチオンから一種または二種以上を選択して用いることができる。金属カチオンの好ましい例としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。かかる金属カチオンを含む錯体塩は、水溶性の錯体塩として好ましく採用され得る。有機カチオンの好ましい例としては、テトラフェニルホスホニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン等が挙げられる。かかる有機カチオンを含む錯体塩は、有機溶媒に可溶な錯体塩として好ましく採用され得る。加水分解触媒としては、該錯体を塩または水和物として直接添加してもよいし、該錯体を予め溶媒に溶かして調製した触媒溶液を添加してもよい。
【0023】
上記分解処理は、典型的には均質系において好ましく実施することができる。分解処理を行う際の溶媒としては、水および有機溶媒から選択される一種のみまたは二種以上の混合溶媒を用いることができる。また、上記錯体を触媒溶液として添加する場合、該触媒溶液の調製に用いる溶媒は、分解処理を行う溶媒と同様のものであってもよいし、分解処理を行う溶媒とは異なる一種のまたは二種以上の混合溶媒であってもよい。触媒溶液の添加後に反応液を均質系に保持し得るものであることが好ましい。
【0024】
特に制限するものではないが、上記反応液は、基質1当量に対する上記錯体の使用量が、例えば概ね2〜1000当量となるように好ましく調整することができる。また、特に制限されないが、基質(イソニトリル)の濃度が例えば凡そ0.01〜1M(より好ましくは0.1〜0.3M)程度となるよう上記反応液を調製し、該基質の濃度に基づき該錯体の濃度を好適に設定することができる。
かかるイソニトリル分解方法を適用して分解処理し得るイソニトリル(すなわち基質)の好適例として、一般式R−NCにおけるRが炭素数1〜6の炭化水素基であるイソニトリルが挙げられる。該炭化水素基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。例えば、該炭化水素基がアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基またはアリール基であるイソニトリルの分解に好ましく適用され得る。
【0025】
上記イソニトリルの分解反応(該イソニトリルからアミンを生成する反応としても把握され得る。)を行う際の反応温度や反応液のpHは、使用する溶媒の種類、基質(分解対象物であって、アミンの製造原料としても把握され得る。)の反応性、反応液の濃度、目的とする生成物の特性等を考慮して適宜設定することができる。例えば、反応温度として0℃〜60℃(好ましくは、20℃〜50℃)程度の温度を好ましく採用し得る。また、反応液のpHは、例えばpH3〜11程度の範囲内で適宜設定することができる。
【0026】
ここに開示されるイソニトリルからのアミン製造方法の好ましい一態様では、上記式(I)で表される金属錯体を触媒として用いる。かかるアミン製造方法において、上記金属錯体は、上述のイソニトリル分解方法と同様の実施形態を以って好ましく用いることができる。また、反応溶媒、反応温度、反応液の濃度およびpH等の反応条件についても、上記イソニトリル分解方法の好適な実施態様に準じて適宜設定することができる。該製造方法を好ましく適用し得る基質(アミン製造の原料)についても上記イソニトリル分解方法と同様である。
【0027】
また、本発明に開示されるニトリル等分解方法の好ましい一態様では、上記式(II)で表される金属錯体を触媒として用いる。上記式(II)中のM2はCo(III)およびFe(III)のいずれかであり、より好ましくはCo(III)である。Aは−NC官能基を有するイソシアニド配位子(R−NC)である。このイソシアニド配位子におけるNの置換基(R)は炭素数1〜6の炭化水素基であることが好ましい。該炭化水素基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。具体的な好適例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基等のアルキル基が挙げられる。例えば、式(II)中のA位にt−ブチルイソシアニド配位子を有する金属錯体を特に好ましく採用することができる。cおよびdはそれぞれ独立して0または1であり、cが1、dが0であることがより好ましい。xおよびyはそれぞれ独立して1または2であり、例えば、xおよびyが共に1または2であるものがより好ましく、xおよびyが共に1であるものが更に好ましい。また、R2は水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基)である。四つのR2のいずれもがそれぞれ独立に水素原子およびメチル基から選択されるいずれかであることがより好ましく、R2がいずれもメチル基であることが好適である。
【0028】
なお、上記式(II)で表される金属錯体を用いるニトリル等分解方法の好適な態様に関するその他の事項(錯体の態様、触媒としての形態、反応系の態様、反応温度、反応液の濃度およびpH等)については、上述の上記式(I)で表される金属錯体を用いるイソニトリル分解方法の好適な態様に準ずる。
かかるニトリル等分解方法を適用して分解処理し得るイソニトリルの好適例として、一般式R−NCにおけるRが炭素数1〜6の炭化水素基(直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。)であるイソニトリルが挙げられる。例えば、該炭化水素基がアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基またはアリール基であるイソニトリルの分解に好ましく適用され得る。また、上記ニトリル等分解方法を適用して分解処理し得るニトリルの好適例として、一般式R−CNにおけるRが炭素数1〜6の炭化水素基(直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。)であるニトリルが挙げられる。例えば、該炭化水素基がアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基またはアリール基(フェニル基等)であるニトリルの分解に好ましく適用され得る。
【0029】
また、ここに開示されるイソニトリルからのアミン製造方法の他の好ましい態様およびニトリルからのアミド製造方法の好ましい態様では、上記式(II)で表される金属錯体を、上述のニトリル等分解方法と同様の実施形態を以って用いることができる。また、反応溶媒、反応温度、反応液の濃度およびpHについても上記ニトリル等分解方法の好適な実施態様に準じて適宜設定することができる。該製造方法を好ましく適用し得る基質についても上記ニトリル等分解方法と同様である。
【0030】
本発明によると、上記式(III)で表される金属錯体が提供される。ここで、上記式(III)中のM3はCo(III)およびFe(III)のいずれかであり、好ましくはCo(III)である。eおよびfはそれぞれ独立して0または1であり、eが1、fが0であることがより好ましい。また、R3は好ましくは水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基)である。R3が水素原子またはメチル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。該錯体の態様は典型的にはアニオンであり、対イオン(カチオン)を含む塩(該塩の水和物の形態であり得る。)として存在する。上記対イオンとしては、製造(合成、精製)が容易なものや水または有機溶媒中で電離しやすいものが好ましい。上記対イオンは、例えば、金属カチオン(ナトリウムイオン、カリウムイオン等)および有機カチオン(テトラフェニルホスホニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン等)から選択される一種または二種以上であり得る。
【0031】
ここに開示される好ましいイソニトリル分解剤は、上記式(III)で表される金属錯体を有効成分として含む。該分解剤としては、上記錯体をそのまま用いてもよく、該錯体を予め溶媒に溶かして調製した溶液状のものを用いてもよい。かかるイソニトリル分解剤は、該分解剤を用いてイソニトリルを分解する(典型的には、該分解の結果物としてアミンを生成する)用途等に好ましく利用され得る。例えば、上述の上記式(I)で表される金属錯体を用いるイソニトリルの分解方法に準じて好ましく利用することができる。
【0032】
また、本発明によると、上記式(IV)で表される金属錯体が提供される。ここで、上記式(IV)中のM4、g、h、R4に係る好適な態様は、それぞれ順に上記M3、e、f、R3に係る好適な態様と同様である。また、Aは−NC官能基を有するイソシアニド配位子(R−NC)である。このイソシアニド配位子におけるNの置換基(R)は炭素数1〜6の炭化水素基であることが好ましい。該炭化水素基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。具体的な好適例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基等のアルキル基が挙げられる。なかでもt−ブチル基が特に好ましい。該錯体のとり得る好適な態様は、上述の上記式(II)で表される錯体のとり得る好適な態様と同様である。
【0033】
ここに開示される好ましいニトリル等の分解剤は、上記式(IV)で表される金属錯体を有効成分の一つとして含む。該分解剤としては、上記錯体をそのまま用いてもよく、該錯体を予め溶媒に溶かして調製した溶液状のものを用いてもよい。かかるニトリル等分解剤は、該分解剤を用いてニトリル等を分解する(典型的には、該分解の結果物として、イソニトリルからアミン、ニトリルからアミドをそれぞれ生成する)用途等に好ましく利用され得る。例えば、上述の上記式(II)で表される金属錯体を用いるニトリル等の分解方法に準じて好ましく利用することができる。
【0034】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0035】
なお、以下の例1および例2で使用した試薬のうち、2-benzylmercapto-2-methylpropanoic acidについては、Luhman, U.; Wentz, F. G.; Luttke, W.; Susse, P. Chem. Ber. 1977, 110, 1421-1431.およびCarminati, G.; Galimrerti, P.; Melandri, M.; Bnoll. Chim. Farm. 1963, 102, 522-540.に基づいて合成したものを使用した。また、2-chloro-1-methyl-pyridinium iodideについてはSaigo, K.; Usui, M.; Kikuchi, K.; Shimada, E.; Mukaiyama, T. Bull. Chem. Soc. Jpn. 1997, 7, 1863-1866.に、[CoCl(NH3)5]Cl2については第4版 実験化学講座(第17巻、第102頁)に従って合成したものをそれぞれ用いた。
【0036】
<例1>
以下の手順により、次式(VI)で表される配位子3,3'-bis(2-mercapto-2-methylpropionylamino)dipropylsulfide(以下、L1と表記することがある。)を合成した。
【化6】

【0037】
脱気したメタノール(関東化学)300mlにナトリウム(和光純薬工業)10.1g(46.6mmol)を溶解させた溶液に、水硫化ナトリウムn水和物(和光純薬工業)3.7gを加え溶解させた。ここに3−ブロモプロピルフタルイミド(アルドリッチ)25g(93.2mmol)を加え、18時間還流した。この反応液を放冷し、析出した白色沈殿物をろ取した。ろ取した化合物をn−ヘキサン(関東化学)および蒸留水で洗浄した後、ビス−(3−フタルイミドプロピル)スルフィド(Bis(3-phthalimidepropyl)sulfide)11.8gを得た。この工程の収率は62%であった。
【0038】
こうして得られたビス−(3−フタルイミドプロピル)スルフィド19.1g(46.7mmol)をメタノール(関東化学)150mlに溶解させた溶液に、ヒドラジン1水和物(和光純薬工業)1g(102.7mmol)を加え、12時間還流した。この反応液を減圧濃縮した後、10N水酸化ナトリウム水溶液を加え、ジクロロメタン(関東化学)で抽出した。このジクロロメタン層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水した。硫酸マグネシウムをろ過除去した後、減圧濃縮によりジクロロメタンを除去してビス−(3−アミノプロピル)スルフィド(Bis(3-aminopropyl)sulfide)2.92gを油状物として得た。この工程の収率は42%であった。
【0039】
次いで、2-benzylmercapto-2-methylpropanoic acid8.3g(39.4mmol)をアセトニトリル200mlに溶解させた溶液に、2-chloro-1-methyl-pyridinium iodide10.1g(39.4mmol)およびトリエチルアミン4.0g(39.4mmol)を加え、1時間撹拌した。ここに、上記で得られたビス−(3−アミノプロピル)スルフィド2.9g(19.7mmol)およびトリエチルアミン(和光純薬工業)4.0g(39.4mmol)をアセトニトリル50mlに溶解させた溶液を加え、更に18時間撹拌した。この反応液を減圧濃縮して得られた残渣を蒸留水100mlに溶解させ、得られた水溶液を酢酸エチル100mlで3回抽出した。該酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより脱水した。硫酸マグネシウムをろ過除去した後、減圧濃縮して黄色油状物の粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:和光純薬社 Wakogel C200,溶離液:メタノール/クロロホルム=1/50)により精製して3,3'-bis(2-benzylmercapto-2-methylpropionylamino)dipropylsulfide5.35gを油状物として得た。この工程の収率は51%であった。
【0040】
こうして得られた3,3'-bis(2-benzylmercapto-2-methylpropionylamino)dipropylsulfide9.86g(18.5mmol)を蒸留したテトラヒドロフラン50mlに溶解させた溶液に、液体アンモニア200mlを加えた。ここにナトリウム5.0g(217.3mmol)を加え、得られた反応液を30分間撹拌した。この反応液を塩化アンモニウムにより中和した後、室温で液体アンモニアを気化除去した。得られた残渣を蒸留水150mlに溶解させ、この水溶液がpH3になるまで1N塩酸を加えた。これを酢酸エチル100mlで抽出した。該酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを加えて脱水した。硫酸マグネシウムをろ過除去した後、減圧濃縮により酢酸エチルを除去して3,3'-bis(2-mercapto-2-methylpropionylamino)dipropylsulfide(L1)3.83gを白色固形物として得た。この工程の収率は59%であった。
得られた配位子L1の構造分析データは以下のとおりであった。
1H-NMR(CDCl3,TMS,δppm):1.60(s,12H),1.83(m,4H),2.21(s,2H),2.57(t,4H),3.37(q,4H),7.18(s,2H)。
IR(KBr,cm-1):3364(s,νN-H),2568(w,νS-H),1641(s,νC=O),1521(s,δN-H)。
【0041】
<例2>
以下の手順により、(PPh4)[CoIII(L1)](サンプル1)錯体を合成した。
アルゴン雰囲気下、例1で得られたL1200mg(0.567mmol)を脱気したN,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業)20mlに溶解させた溶液に、脱プロトン剤として水素化ナトリウム(和光純薬工業)98.7mg(4.11mmol)を加え、得られた反応液を15分間攪拌した。その後、[CoCl(NH3)5]Cl2142mg(0.567mmol)を加え、反応液が紫色を呈するまで70℃で一晩攪拌した。ここに塩化テトラフェニルホスホニウム(PPh4Cl)213mg(0.567mmol)を加え、10分間撹拌した後、液減圧濃縮して紫色固形物を得た。この固形物をエタノール(和光純薬工業)20mlに溶解させた溶液を、セライトろ過により脱塩した後、再び減圧濃縮して紫色固形物を得た。アルゴン雰囲気下で、この固形物をアセトン/ジエチルエーテル(和光純薬工業)から再結晶して(PPh4)[CoIII(L1)]180mgを紫色板状結晶として得た。この工程の収率は43%であった。
この錯体の構造分析データは以下のとおりであった。
IR(KBr,cm-1):1542(s,νC=O)。
定量分析(%)(PPh4)[CoIII(L1)](C38H44CoN2O2PS3):理論値 C,61.11;H,5.94;N,3.75 %; 分析結果 C,60.83;H,5.99;N,3.74 %。
EAS(MeOH,λmax,nm(ε)):369(5000),527(2500)。
また、上記結晶の構造をX線結晶構造解析により同定したところ、図1に示す構造であることが判った。
【0042】
<例3>
以下の手順により、(PPh4)[CoIII(L1:SOSO2)]・2H2O(サンプル2)錯体を合成した。
例2の手順で得られた(PPh4)[CoIII(L1)]200mgをメタノール(和光純薬工業)20mlに溶解させた溶液に、過酸化尿素(アルドリッチ)578.4mg(6.4mmol)を加え、得られた反応液を3時間撹拌した。この反応液を減圧濃縮した後、得られた赤紫色固形物をアセトン/酢酸エチル(和光純薬工業)から再結晶して(PPh4)[CoIII(L1:SOSO2)]・2H2O163mgを赤色板状結晶として得た。この工程の収率は77%であった。
この錯体の構造分析データは以下のとおりであった。
IR(KBr,cm-1):1568(s,νC=O),1176(m,νas(SO)),1049(m,νs(SO2)),1070(m,νs(SO2)),893(m,νs(SO))。
定量分析(%)(PPh4)[CoIII(L1:SOSO2)]・H2O(C38H46CoN2O6PS3):理論値 C,56.15;H,5.70;N,3.45 %; 分析結果 C,55.95;H,5.90;N,3.65 %。
EAS(MeOH,λmax,nm(ε)):329(5930),374(3510),500(sh)。
また、上記結晶の構造をX線結晶構造解析により同定したところ、図2に示す構造であることが判った。
【0043】
<例4>
以下の手順により、(PPh4)[CoIII(L1:SO2SO2)](サンプル3)錯体を合成した。
例2の手順で得られた(PPh4)[CoIII(L1)]200mgをN,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業)20mlに溶解させた反応液を3日間大気下にて撹拌した。この反応液を減圧濃縮した後、得られた紫色固形物をアセトン/酢酸エチルから再結晶して(PPh4)[CoIII(L1:SO2SO2)]152mgを濃緑色板状結晶として得た。この工程の収率は70%であった。
この錯体の構造分析データは以下のとおりであった。
1H-NMR(CDCl3,TMS,δppm):1.33(s,6H),1.49(s,6H),1.96(t,4H),2.61(m,2H),2.70(m,2H),3.17(m,2H),4.29(m,2H),7.64(m,8H),7.82(m,8H),7.94(t,4H)。
IR(KBr,cm-1):ν=1569(s,νC=O),1224(m,νSO2),1209(m,νSO2),1070(m,νSO2),1034(m,νSO2)。
定量分析(%)(PPh4)[CoIII(L1:SO2SO2)](C38H44CoN2O6PS3):理論値:C,56.29;H,5.47;N,3.45 %; 分析結果 C,56.38;H,5.38;N,3.37 %。
EAS(MeOH,λmax,nm(ε)):355(8200),561(590),400(sh)nm。
また、上記結晶の構造をX線結晶構造解析により同定したところ、図3に示す構造であることが判った。
【0044】
<例5>
以下の手順により、次式(VII)で表される配位子N,N'-bis((2-mercapto-2-methyl)propioyl)-1,3-propanediamine(以下、L2と表記することがある。)を合成した。
【化7】

【0045】
2-benzylmercapto-2-methylpropanoic acid2.02g(9.61mmol)をアセトニトリル(関東化学)200mlに溶解させた溶液に2-chloro-1-methyl-pyridinium iodide2.47g(6.67mmol)およびトリエチルアミン(和光純薬工業)1.0g(9.88mmol)を加え、得られた反応液を1時間撹拌した。この溶液に、アセトニトリル50mlにプロパンジアミン(関東化学)0.37g(4.99mmol)およびトリエチルアミン1.03g(10.2mmol)を溶解させた溶液を加え、さらに2時間撹拌した。この反応液を減圧濃縮して得られた残渣を蒸留水100mlに溶解させ、得られた水溶液を酢酸エチル100mlで3回抽出した。併せた酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより脱水した。硫酸マグネシウムをろ過除去し、減圧濃縮により酢酸エチルを除去してN,N'-bis((2-benzylmercapto-2-methyl)propioyl)-1,3-propanediamine1.59gを白色固形物として得た。この工程の収率は72%であった。
【0046】
こうして得られたN,N'-Bis((2-benzylmercapto-2-methyl)propioyl)-1,3-propanediamine1.50g(3.28mmol)を蒸留したテトラヒドロフラン(関東化学)50mlに溶解させた溶液に、液体アンモニア(太陽日産)200mlを加えた。ここにナトリウム1.47g(63.9mmol)を加え、得られた反応液を30分間撹拌した。この反応液を塩化アンモニウム(和光純薬工業)により中和した後、室温で液体アンモニアを気化除去した。得られた残渣を蒸留水150mlに溶解させ、この水溶液がpH3になるまで1N塩酸を加えた。これを酢酸エチル(関東化学)100mlで抽出した。該酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより脱水した。硫酸マグネシウムをろ過除去し、減圧濃縮により酢酸エチルを除去してN,N'-bis((2-mercapto-2-methyl)propioyl)-1,3-propanediamine(L2)0.71gを白色固形物として得た。この工程の収率は78%であった。
得られたL2の構造分析データは以下のとおりであった。
1H-NMR(CDCl3,TMS,δppm):1.63(s,12H),1.68(m,2H),2.29(s,2H),3.29(q,4H),7.35(s,2H)。
IR(KBr,cm-1):3317(s,νN-H),2542(w,νS-H),1633(s,νC=O),1533(s,δN-H)。
【0047】
<例6>
以下の手順により、後述する例8および例10において使用する(PPh4)[CoIII(L2)]錯体を合成した。
アルゴン雰囲気下、脱気したN,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業)20mlに例5で得られたL2200mg(0.72mmol)を溶解させた溶液に、脱プロトン剤として水素化ナトリウム(和光純薬工業)98.7mg(4.11mmol)を加え、得られた反応液を15分間攪拌した。更に塩化コバルト(II)(東京化成工業)93.5mg(0.72mmol)を添加し、反応液が緑色を呈するまで一晩攪拌した。この反応液を大気中で15分間攪拌してCo(II)をCo(III)に酸化させた後、減圧濃縮して緑色固形物を得た。この緑色固形物をアセトニトリル20mlに溶解させた溶液を、セライトろ過により脱塩した後、減圧濃縮した。この残渣を蒸留水15mlに溶解させ、塩化テトラフェニルホスホニウム(PPh4Cl)水溶液(269.4mg,0.72mmol)5mlを加え、析出した粗生成物を水から再結晶して(PPh4)[CoIII(L2)]318.7mgを濃緑色板状結晶として得た。この工程の収率は64%であった。
この錯体の構造分析データは以下のとおりであった。
IR(KBr,cm-1):1560(s,νC=O)。
定量分析(%)(PPh4)[CoIII(L2)]・H2O(C35H40CoN2O3PS2):理論値 C,60.86;H,5.84;N,4.06 %; 分析結果 C,60.93;H,5.77;N,4.03 %。
EAS(CHCl3,λmax,nm(ε)):321(8800),350(sh),450(sh),643(3800),678(4100)。
【0048】
<例7>
以下の手順により、後述する例9において使用するNa[CoIII(L2)]錯体を合成した。
アルゴン雰囲気下、脱気したN,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業)20mlに例5で得られたL2100mg(0.36mmol)を溶解させた溶液に、脱プロトン剤として水素化ナトリウム(和光純薬工業)49.4mg(2.06mmol)を加え、得られた反応液を15分間攪拌した。その後、塩化コバルト(II)(東京化成工業)46.8mg(0.36mmol)を添加し、反応液が緑色を呈するまで一晩攪拌した。この反応液を大気中で15分間撹拌してCo(II)をCo(III)に酸化させた後、減圧濃縮して緑色固形物を得た。この緑色固形物をアセトニトリル20mlに溶解させた溶液を、セライトろ過により脱塩した後、減圧濃縮して緑色固形物を得た。大気下にて、この固形物をアセトニトリル/ジエチルエーテル混合溶媒から再結晶してNa[CoIII(L2)]103.4mgを濃緑色板状結晶として得た。この工程の収率は70%であった。
この錯体の構造分析データは以下のとおりであった。
IR(KBr,cm-1):1503(s,nC=O)。
定量分析(%)Na[CoIII(L2)]・3H2O(C11H24CoN2NaO5S2):理論値 C,32.19;H,5.89;N,6.83 %; 分析結果 C,32.21;H,5.94;N,6.68 %。
EAS(H2O,λmax,nm(ε)):317(8100),〜450(sh),654(2800)。
ESI-MS m/z:333.0。
【0049】
<例8>
以下の手順により、(PPh4)[CoIII(L2)(t-BuNC)2](サンプル4)錯体を合成した。
メタノール(和光純薬工業)200μlに例6で得られた(PPh4)[CoIII(L2)]5mg(7.23×10−3mmol)を溶解させた溶液に、t−ブチルイソシアニド(t-BuNC,アルドリッチ)200μl(1.76mmol)を加え、得られた反応液を攪拌した。該反応液が緑色から赤色へ変化した後、ジエチルエーテル(和光純薬工業)を拡散させ、析出した(PPh4)[CoIII(L2)(t-BuNC)2]5.3mgを赤色板状結晶として得た。この工程の収率は88%であった。
この錯体の構造分析データは以下のとおりであった。
IR(KBr,cm-1):2176(s,νC≡N),1535(s,νC=O)。
定量分析(%)(PPh4)[CoIII(L2)(t-BuNC)2](C45H56CoN4O2PS2):理論値 C,64.42;H,6.73;N,6.68 %; 分析結果 C,64.14;H,6.60;N,6.47 %。
EAS(H2O,λmax,nm(ε)):294(12800),360(sh)。
また、上記結晶の構造をX線結晶構造解析により同定したところ、図4に示す構造であることが判った。
【0050】
<例9>
以下の手順により、Na[CoIII(L2:SOSO)(t-BuNC)2]・urea・H2O・0.5EtOH(サンプル5)錯体を合成した。
例7の手順で得られたNa[CoIII(L2)]134.5mg(0.38mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業)1mlに溶解させた溶液に、t−ブチルイソシアニド(アルドリッチ)601.7μl(4.54mmol)を加え、得られた反応液を10分間攪拌した。この反応液を−10℃以下に保ち、過酸化尿素(アルドリッチ)211.7mg(2.3mmol)を添加した。−10℃以下で3時間攪拌した後、-10℃に冷却したアセトン(関東化学)120mlを加え、析出した赤色沈殿物(吸湿性)をろ取し、吸引乾燥させた。この粗生成物をエタノール/ジエチルエーテル(関東化学)から再結晶してNa[CoIII(L2:SOSO)(t-BuNC)2]・urea・H2O・0.5EtOH57.7mgを赤色板状結晶として得た。この工程の収率は24%であった。
この錯体の構造分析データは以下のとおりであった。
1H-NMR(DMSO-d6,TMS,δppm):1.10(m,12H),1.34;1.40(2s,18H),3.16(m,6H),5.42(s,4H)。
IR(KBr,cm-1):2192(s,νC≡N),1548(s,νC=O),974(m,νS=O)。
定量分析(%)(Na[CoIII(L2:SOSO)(t-BuNC)2]・urea・H2O・0.5EtOH(C23H45N6S2O6.5NaCo):理論値 C,42.13;H,6.92;N,12.82 %; 分析結果 C,41.95;H,6.78;N,13.15 %。
EAS(EtOH,λmax,nm(ε)):294(7000),381(8000),450(sh)。
ESI-MS m/z:531.0([CoIII(L2:SOSO)(t-BuNC)2]-),448.0([CoIII(L2:SOSO)(t-BuNC)]-),364.9([CoIII(L2:SOSO)]-)。
また、上記結晶の構造をX線結晶構造解析により同定したところ、図5に示す構造であることが判った。
【0051】
<例10>
以下の手順により、(PPh4)[CoIII(L2:SO2SO2)(t-BuNC)2]・EtOH(サンプル6)錯体を合成した。
例6で得られた(PPh4)[CoIII(L2)]83mg(0.12mmol)をエタノール(関東化学)1mlに溶解させた溶液に、t−ブチルイソシアニド(アルドリッチ)191μl(1.44mmol)を加え、得られた反応液を10分間攪拌した。この反応液を-10℃以下に保ちながら30%過酸化水素水(アルドリッチ)612.18ml(5.44mmol)を滴下して加え、-10℃以下で3時間攪拌した後、冷凍庫にて一晩放置した。この反応液に-10℃のジエチルエーテル(関東化学)100mlを加え、析出した黄色粗結晶をエタノール/ジエチルエーテル(関東化学)から再結晶して(PPh4)[CoIII(L2:SO2SO2)(t-BuNC)2]・EtOH102mgを黄色針状結晶として得た。この工程の収率は88%であった。
この錯体の構造分析データは以下のとおりであった。
1H-NMR(DMSO-d6,TMS,δppm):1.15(s,12H),1.34(s,18H),3.16(t,6H),7.83(m,20H)。
IR(KBr,cm-1):2199(s,νC≡N),1552(s,νC=O),1214および1071(m,νS=O)。
定量分析(%)(PPh4)[CoIII(L2:SO2SO2)(t-BuNC)2]・EtOH・H2O(C47H64CoN4O8PS2):理論値 C,58.37;H,6.67;N,5.79 %; 分析結果 C,58.14;H,6.50;N,6.00 %。
EAS(EtOH)λmax,nm(ε):273(9700),313(21400),400(sh)。
ESI-MS m/z:563.0([CoIII(L2:SO2SO2)(t-BuNC)2]-)。
また、上記結晶の構造をX線結晶構造解析により同定したところ、図6に示す構造であることが判った。
【0052】
<例11>
上記で合成した錯体(サンプル1〜6)の触媒活性を調べるため、イソニトリルに属する化合物であるt−ブチルイソシアニド(t-BuNC)の分解実験を行った。
各サンプル1μmol、基質としてのt-BuNC 0.1ml(440μmol)および内部標準としてのジメチルスルホンをバッファ溶液(NaHCO3/NaOHバッファ:pH10.2)1.9mlに溶解させ、40℃で24時間撹拌することにより反応を行った。反応終了後、ガスクロマトグラフ測定により反応生成物の定量を行った。
なお、上記ガスクロマトグラフ測定は、島津製作所製のガスクロマトグラフ、型式「GC-2014」を用いて行った。また、検出器にはFIDを、キャリアーガスにはヘリウムを用い、キャピラリーカラムにはRESTEK社製の商品名「Stabilwax(商標)-DB30m」を用いた。測定および解析には付属ソフトのGC solutionを用いた。生成物の定量には内部標準法を用いた。すなわち、予め既知量の反応生成物と内部標準物質としてのジメチルスルホンを用いて測定を行い、その面積から検量線を作成し、その検量線に従って定量した。
【0053】
また、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)によっても反応生成物を確認した。すなわち、測定装置としては島津製作所製のガスクロマトグラフ質量分析計、型式「GC−2010」を用い、キャリアーガスにはヘリウムを用い、キャピラリーカラムにはRESTEK社製の商品名「Stabilwax(商標)-DB30m」を用いた。試料の打ち込みには島津製作所製のオートインジェクタAOC-20を用い、イオン化方法としてはEI(電子イオン化)を使用し、測定および解析には付属ソフトのGC solutionを用いた。生成物の同定にあたっては、マルチスキャンによりm/z=60〜300の範囲について測定を行った。
【0054】
上記定量により求めたt−ブチルアミン(t-BuNH2)生成量に基づき、t-BuNCからt-BuNH2を生じる反応(反応条件:pH10.2、反応温度40℃)に係るサンプル1〜6のターンオーバー数(TON)を算出した。その結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示されるように、式(I)で表されるCo錯体(サンプル2,3。これらのうちサンプル2は式(III)に該当する錯体である。)および式(II)で表されるCo錯体(サンプル5,6。これらのうちサンプル5は式(IV)に該当する錯体である。)は、いずれも、40℃のアルカリ性条件下においてもt-BuNCをt-BuNH2に変換する反応(t-BuNCの分解反応、またはt-BuNCからt-BuNH2を生成する反応として把握され得る。)の触媒として有効に機能することが確認された。かかる反応についてのTONは、サンプル2,3,5,6のいずれにおいても約10またはそれ以上であった。一方、サンプル1,4を用いた場合にはt-BuNH2の生成が認められなかった。
【0057】
また、サンプル1〜3について、反応温度を20℃とした点以外は上記と同様にt-BuNCの加水分解実験を行い、同様にしてt-BuNCからt-BuNH2を生成する反応に係るTONを算出した。その結果、サンプル2ではTON3.6、サンプル3ではTON1.2の触媒活性を示すことが確認された。一方、サンプル1を用いた場合にはt-BuNH2の生成が認められなかった。
【0058】
さらに、サンプル1〜6について、反応温度20℃、pH7.5(pHの調整にはTris-HClバッファを使用した。)の条件、および反応温度20℃、pH4.7(pHの調整にはAcOH/AcONaバッファを使用した。)の条件で、その他の点については上記と同様にしてt-BuNCの加水分解実験を行った。反応の進行をガスクロマトグラフ測定より追跡したところ、いずれの条件においてもサンプル2,3,5,6がt-BuNCからt-BuNH2を生成する触媒として機能すること、および、サンプル1,4を用いた場合にはt-BuNH2の生成が認められないことが確認された。
【0059】
<例12>
上記で合成したサンプル5につき、アセトニトリルの分解実験を行った。
サンプル5 2.62mg(0.002mmol)、アセトニトリル0.1ml(1.92mmol)および内部標準としてのジメチルスルホンをバッファ溶液(NaHCO3/NaOHバッファ:pH10.2)1.9mlに溶解させ、室温4℃の冷蔵庫内で24時間撹拌することにより反応を行った。反応終了後、例11と同様のガスクロマトグラフ測定により反応生成物の定量を行った。その結果、アセトニトリルの水和生成物であるアセトアミドが確認された。上記定量により求めたアセトアミド生成量に基づいてアセトニトリルからアセトアミドを生じる反応(反応条件:反応温度4℃、pH10.2)に係るTONを算出したところ、58.7であった。この結果は、サンプル5が低温においても触媒として有効に機能し得ること、したがって常温では基質および/または目的物(反応生成物)が不安定または高揮発性である場合等に、反応条件として低温(例えば10℃以下)の反応温度をも好ましく選択し得ることを示すものである。
【0060】
なお、サンプル5に代えてサンプル2を用いた場合およびサンプル3を用いた場合につき、他の点については上記と同様の反応条件(反応温度4℃、pH10.2)によりアセトニトリルの分解実験を行い、反応の進行をガスクロマトグラフ測定により追跡したところ、サンプル2,3のいずれを用いた場合にもニトリルの分解生成物(アミドまたはアミン)は認められなかった。
【0061】
また、反応液の液性をpH4.7に調整し(例11と同じバッファを使用した。)、その他の点については上記と同様にして、サンプル5によるアセトニトリル分解実験を行った。反応の進行をガスクロマトグラフ測定により追跡したところ、上記pHにおいてもサンプル5がアセトニトリルからアセトアミドを生成する触媒として機能することが確認された。
【0062】
さらに、基質としてプロピオニトリルを用いた場合およびベンゾニトリルを用いた場合につき、バッファと基質との分離を防ぐためバッファ(例11と同じバッファを使用した。)1mlにエタノール0.9mlを加えた溶液を用いた点以外は上記と同様の反応条件(反応温度4℃、pH4.7)により、サンプル5によるニトリル分解実験を行った。反応の進行をガスクロマトグラフ測定により追跡したところ、いずれの基質についても対応するアミド(水和物)の生成が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】例2で得られた錯体(サンプル1)のX線解析結晶構造である。
【図2】例3で得られた錯体(サンプル2)のX線解析結晶構造である。
【図3】例4で得られた錯体(サンプル3)のX線解析結晶構造である。
【図4】例8で得られた錯体(サンプル4)のX線解析結晶構造である。
【図5】例9で得られた錯体(サンプル5)のX線解析結晶構造である。
【図6】例10で得られた錯体(サンプル6)のX線解析結晶構造である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
【化1】

(式中、M1はCo(III)またはFe(III)であり、aおよびbはそれぞれ独立して0または1であり、vおよびwはそれぞれ独立して1または2であり、R1はそれぞれ独立して水素原子および炭素数1〜6の炭化水素基から選択されるいずれかである。);
で表される錯体を触媒としてイソニトリルを分解することを特徴とする、イソニトリルの分解方法。
【請求項2】
次式(I):
【化2】

(式中、M1はCo(III)またはFe(III)であり、aおよびbはそれぞれ独立して0または1であり、vおよびwはそれぞれ独立して1または2であり、R1は水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基である。);
で表される錯体を用意する工程と、
前記錯体を触媒としてイソニトリルからアミンを生成する工程と、
を包含する、アミンの製造方法。
【請求項3】
次式(II):
【化3】

(式中、M2はCo(III)またはFe(III)であり、Aはイソシアニド配位子であり、cおよびdはそれぞれ独立して0または1であり、xおよびyはそれぞれ独立して1または2であり、R2はそれぞれ独立して水素原子および炭素数1〜6の炭化水素基から選択されるいずれかである。);
で表される錯体を触媒としてニトリルまたはイソニトリルに属する有機化合物を分解することを特徴とする、ニトリルまたはイソニトリルに属する有機化合物の分解方法。
【請求項4】
次式(II):
【化4】

(式中、M2はCo(III)またはFe(III)であり、Aはイソシアニド配位子であり、cおよびdはそれぞれ独立して0または1であり、xおよびyはそれぞれ独立して1または2であり、R2はそれぞれ独立して水素原子および炭素数1〜6の炭化水素基から選択されるいずれかである。);
で表される錯体を用意する工程と、
前記錯体を触媒としてイソニトリルからアミンを生成する工程と、
を包含する、アミンの製造方法。
【請求項5】
次式(II):
【化5】

(式中、M2はCo(III)またはFe(III)であり、Aはイソシアニド配位子であり、cおよびdはそれぞれ独立して0または1であり、xおよびyはそれぞれ独立して1または2であり、R2はそれぞれ独立して水素原子および炭素数1〜6の炭化水素基から選択されるいずれかである。);
で表される錯体を用意する工程と、
前記錯体を触媒としてニトリルからアミドを生成する工程と、
を包含する、アミドの製造方法。
【請求項6】
次式(III):
【化6】

(式中、M3はCo(III)またはFe(III)であり、eおよびfはそれぞれ独立して0または1であり、R3はそれぞれ独立して水素原子および炭素数1〜6の炭化水素基から選択されるいずれかである。);
で表される錯体。
【請求項7】
請求項6に記載の錯体を有効成分として含む、イソニトリル分解剤。
【請求項8】
次式(IV):
【化7】

(式中、M4はCo(III)またはFe(III)であり、Aはイソシアニド配位子であり、gおよびhはそれぞれ独立して0または1であり、R4はそれぞれ独立して水素原子および炭素数1〜6の炭化水素基から選択されるいずれかである。);
で表される錯体。
【請求項9】
請求項8に記載の錯体を有効成分として含む、ニトリルまたはイソニトリルに属する有機化合物の分解剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−173562(P2009−173562A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12051(P2008−12051)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 掲載アドレス:http://pubs.acs.org/cgi−bin/abstract.cgi/inocaj/2007/46/i24/abs/ic701107x.html(掲載日:平成19年10月24日)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、財団法人科学技術交流財団(環境調和型高機能有機−無機ハイブリッドナノ材料開発(知的創造による地域産学連携強化プログラム「知的クラスター創成事業」))委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】