イヌリンの新たな多形形態エプシロン・イヌリンおよびその組成物
【課題】イヌリンの新たな多形形態エプシロン・イヌリン(eIN)の精製法を開発し、eINを含む組成物の調製を可能とする。
【解決手段】エプシロン・イヌリン(eIN)は、例えば好ましい重合度を持つイヌリンを80℃に加熱し完全に水に高濃度で溶解したものを50−85℃に最低15分から2時間あるいはそれ以上の間維持することによって調製できる。
【解決手段】エプシロン・イヌリン(eIN)は、例えば好ましい重合度を持つイヌリンを80℃に加熱し完全に水に高濃度で溶解したものを50−85℃に最低15分から2時間あるいはそれ以上の間維持することによって調製できる。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヌリンの新たな多形形態であるエプシロン・イヌリン(eIN)に関する。
【背景技術】
【0002】
イヌリンは、直鎖状にフルクトースが側鎖なく結合し末端に1つのグルコースが結合したβ−D−(2→1)ポリフルクトフラノシルα−D−グルコース ファミリーから成る単純で不活性な多糖類である。従ってイヌリン組成物は、単純で中性の多糖から成る公知の組成であるが、分子量は多様であり16キロダルトン(kD)以下またはそれを超える範囲に及ぶ。イヌリンは、キク科(Compositae)の貯蔵炭水化物であり、ダリアの球根から安価に得られる。イヌリンは比較的疎水性のポリオキシエチレン様の骨格を有し、この珍しい構造に加えてイオン化されない性質が、再結晶による容易に、非常に純粋なイヌリンの調製を可能にしている。自然界ではイヌリンは重合度(DP)60程度あるいはそれ以上のフルクトースから成り、様々な溶解度や特性等を持つ。
【0003】
イヌリンの分子組成は周知であるが、報告されている溶解性は様々である。例えば、Merck Index(第13版,2001年)では、「低温の水および有機溶媒にわずかに可溶性であり、高温には可溶性」としてイヌリンを記述しており、一方、定量的研究(Phelps,CF,1965)によれば、水からの沈殿によって得られる第1のものと、エタノールからの沈殿によって得られる第2のものの、二つの性質が異なるイヌリンの形態が存在し、両方とも37℃で水に実質的に可溶性であることを示唆した。また、イヌリンの懸濁液は、静止したままであると溶解性がより低くなることも公知である。水からの沈殿によって得られる形態は、αイヌリン(aIN)と称され、エタノールからの沈殿によって得られる形態は、βイヌリン(bIN)として公知である。
【0004】
aINもbINも室温でしだいに水に対する溶解度が減少することが観察された(Cooper,P.D.and Carter,M.,1986)。この事がγイヌリン(gINあるいはガムリン)と称される、粒子状イヌリンの第3の多形形態の発見を導き、国際特許WO87/02679号において開示されており、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。また、Cooper,P.D.and Carter,M.,1986およびCooper,P.D.and Steele,E.J.,1988)も参照されたい。
【0005】
この第3の多形形態は、37℃で水に実質的に不溶性であるが、濃縮された溶液(例えば50mg/ml)において、45℃以上の温度でのみ、αおよびβ多形形態のように可溶性である。gINの際立った特徴は、50%OD700熱転移点(薄い溶液の溶解相転移)が47±1℃というシャープな溶解点を持つことである。
【0006】
その後、デルタ・イヌリン(dINあるいはデルティン)と称される、粒子状イヌリンの第四の多形形態が発見された。デルタ・イヌリンは50℃で水に不溶性であり、国際特許WO2006/024100号において開示されており、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。実際dINは、濃縮された溶液(例えば50mg/ml)において、70−80℃に加熱された場合にのみ可溶性である。dINは、薄い溶液の50%OD700熱転移点が53−58℃ということで特徴づけられる。dINは、濃縮されたgIN溶液を55℃以上に加熱することにより簡便に調製できる。
【0007】
これら既知の4種類のイヌリン多形形態は、23℃で急速に溶解する形態(β230イヌリン)から、37℃で8分の半減期で可溶性の形態(α378イヌリン)を経て、37℃で実質的に不溶性の形態(gIN)さらに50℃で実質的に不溶性の形態(dIN)という水性媒体における異なった溶解率によって特徴付けられる。後半の2つの多形形態は37℃で不溶性であり、もしこの温度を持つ人間のような生物体に導入されてもそれぞれの粒子形態を維持できる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、これらの多形形態が1970年代の、イヌリンの水溶液は生理学的に不活性(British Pharmaceutical Codex,1979)であり抗原性も腎毒性も無い(Verroust,PJ et al.,1974)が、にもかかわらず粒子形態のイヌリンは免疫学的に活性であり、特に補体の副経路(APC)の活性因子として働く(Cooper,PD and M Carter,1986)という観察の少なくとも一部を説明できると考えられる。
【0008】
このようにイヌリンは、様々な溶解性やその他の特性を持つ明瞭に異なる形態を取り得る。本発明はエプシロン・イヌリン(eIN)と呼ばれる新規な多形形態のイヌリンに関する。
【先行技術文献】
【0009】
【特許文献1】PCT/AU86/00311(WO87/02679)titled″Immunotherapeutictreatment″
【特許文献2】PCT/AU89/00349(WO90/01949)titled″Gamma inulin compositions″
【特許文献3】PCT/AU2005/001328(WO2006/024100)titled″New polymorphic form of inulin and uses thereof”
【非特許文献1】Cooper,PD et al.The adjuvanticity of Algammulin,a new vaccine adjuvant.Vaccine 9:408−415(1991a).
【非特許文献2】Cooper,PD et al.Algammulin(gamma inulin/alum hybrid adjuvant)has greater adjuvanticity than alum for hepatitis B surface antigen in mice.Immunology Letters27:131−134(1991b).
【非特許文献3】Cooper,PD and EJ Steele.The adjuvanticity of gamma inulin.Immunol Cell Biol66:345−352(1988).
【非特許文献4】Cooper,PD and EJ Steele.Algammulin,a new vaccine adjuvant Comprising gamma inulin particles containing alum:preparation and in vitro properties.Vaccine9:351−357(1991).
【非特許文献5】Cooper,PD and M Carter.Anti−complementary action of polymorphic″solubility forms″of particulate inulin.Mol Immunol23(8):895−901(1986).
【非特許文献6】Phelps,CF.The physical properties of inulin solutions.Biochem J95:41−47(1965).
【非特許文献7】Stephen,AM,GO Phillips and PA Williams(eds).Food Polysaccharides and their Applications,second edition.CRC Press,Boca Raton FL(2006).
【非特許文献8】Verroust,PJ et al.Lack of nephritogenicity of systemic activation of the alternate complement pathway.Kidney Int6:157−169(1974).
【発明の概要】
【0010】
本発明の第1の態様によると、十分に精製されたイヌリンであって、希薄懸濁液(<0.5
れる。
【0011】
58℃であるエプシロン多形形態のイヌリン粒子から成る薬理学的または免疫学的組成物が提供される。
【0012】
本発明の組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と共に、注射剤あるいは経口、経腸、経膣、経皮または経眼剤として調製され得る。組成物はまた、活性成分が例えばワクチン抗原(遺伝子組換え抗原を含む)、抗原ペプチドまたは抗イディオタイプ抗体を含むものとも成り得る。さらに組成物は、リンフォカイン、サイトカイン、胸腺細胞刺激因子、マクロファージ刺激因子あるいはエンドトキシンの様な免疫調節剤の一つあるいはそれ以上を含むものとも成り得る。
【0013】
本発明の第3の態様によると、第1あるいは第2の態様に基づく組成物の有効量を投与することによる、例えば感染症、自己免疫病、免疫不全症、悪性新生物、退行性あるいは加齢性の疾患の予防や治療を目的とした免疫応答を刺激するための方法が提供される。
【0014】
関連した本発明の第4の態様によると、第1あるいは第2の態様に基づく組成物の有効量を投与することによる、例えば感染症、自己免疫病、免疫不全症、悪性新生物、退行性あるいは加齢性の疾患の予防や治療を目的とした免疫応答を促進するための方法が提供される。
【0015】
本発明の第5の態様によると、ガンマ・イヌリン(gIN)および/またはデルタ・イヌリン
提供される。
【0016】
本発明の第6の態様によると、10mg/mlまたはそれ以上の濃度のイヌリン溶液を約50℃から約85℃の範囲の温度で、最低15分から2週間もしくはそれ以上維持する
ン多形形態のイヌリンを調整する方法が提供される。
【0017】
本発明の更なる態様によると、多形形態のイヌリン混合物の分画方法であって、溶解
ロン多形形態のイヌリンから成る懸濁液から沈殿させる方法であり、高分子量のイヌリン画分を得た後のイヌリン溶液からエプシロン・イヌリン(eIN)を得、さらに低分子量のイヌリン画分を得る方法が提供される。
【0018】
本発明の更なる態様によると、希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移点が
分に精製されたイヌリンであって、そのイヌリン精製物が水またはエタノールのような溶媒中のスラリーを加熱し調製された前駆体のエプシロン・イヌリン(eIN)を溶解し、その後アルファ・イヌリン(aIN),ベータ・イヌリン(bIN),ガンマ・イヌリン(gIN)あるいはデルタ・イヌリン(dIN)のうち一つあるいはそれ以上のイヌリンを沈殿させることにより調製したものが提供される。
【0019】
本発明の更なる態様によると、エプシロン多形形態のイヌリン懸濁液中のイヌリンの存在や濃度を測定する方法であって、その方法が希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移点を測定する方法が提供される。
【0020】
本発明の更なる態様によると、放射線や化学療法による免疫抑制を治療または予防する方法であって、その方法が第1または第2態様に基づく組成物の有効量を投与する方法が提供される。
【0021】
本明細書に記載した特徴および利点はすべて限定的ではなく、特に当業者には、添付図面、実施例および特許請求の範囲を読めば、多くの追加的な特徴および利点が明確であろう。さらに、実施例で使用した言葉は、読み易さや指示的であることを第一義としたものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものでは無い。
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、eINと称される新規の多形形態の粒子状イヌリンの調製および使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、イヌリンを58℃以上で15分から2週間あるいはそれ以上加熱し、その後およそ60℃から76℃で5時間程度保持することにより純粋なeINと称される新規の多形形態の粒子状イヌリンを調製する事に成功し、それに基き本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、aIN,bIN,gINあるいはdINより長鎖のイヌリンを簡便に調製することを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
好ましい実施態様に関する図および記載は、例示的なものである。下記の議論より、本明細書に記載された構造や方法を代替する実施態様は、本発明の請求項の原理から外れることなく実施できることは明白に理解されるべきである。
【0026】
いくつかの実施態様では、添付した図の様な詳細な引用がなされるであろう。可能な限り図においては文献番号のようなものが用いられると理解されるべきである。図は開示されたシステム(あるいは方法)の態様を例示する目的でのみ用いられる。以下の記載から本発明のさまざまな修正及び変更を、この発明の原理から外れることなく実施できることは、当業者には明白であろう。
【0027】
本発明は、エプシロン・イヌリン(eIN)と命名された新規な、第5の多形形態のイヌリン粒子を同定した。aIN,bIN,gINおよびdINと似た特徴がeINでもまた見られるが、しかしながら識別できる特徴と効用もまた備える。
【0028】
ることにより同定され、この事がdINとは異なり、eINは、濃厚なイヌリンの懸濁液を
度で加熱することによりeINに変換できることを発見した。例えば、dINの濃厚な懸濁液を急速に加熱すると73℃以下で完全に溶解する事が見つかっている。予期せぬことに、同じ試料を60−80℃の間で徐々に加熱すると、73℃では溶解しないペースト状の沈殿が生じた。調べてみたところ、この高温で生じたイヌリンの沈殿物はaIN,bIN,gINおよびdINとは異なる特徴を持っており、希薄懸濁液の50%OD700熱転移点が一段高い、新規な第5のイヌリンの多形形態(エプシロン・イヌリン)の存在を示唆した。
【0029】
この様に、本発明の第1の態様によれば、十分に精製されたイヌリンであって、希薄
リンが提供される。
【0030】
本明細書において用いられるとき、「イヌリン」という用語は、イヌリン、β−D−[2→1]−ポリフルクトフラノシルα−D−グルコースだけでなく、例えばこの末端のグルコースを除くことが可能であるインベルターゼまたはイヌラーゼ酵素を用いて、イヌリンからの末端グルコースの酵素的除去によって得られる可能性があるβ−D−[2→1]ポリフルクトースを含む、イヌリンの誘導体も含むと理解されるべきである。この用語の範囲内に含まれる他の誘導体は、例えば公知の方法によるアルキル、アリール、またはアシル基での化学的置換によって、遊離の水酸基がエーテル化またはエステル化されたイヌリンの誘導体である。
【0031】
本発明のエプシロン・イヌリン(eIN)は、希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移点が好ましくは、約58℃から約80℃の範囲にある。
【0032】
本発明のeINの一つの局面では、59℃以下では水溶媒に溶解度が低く、より好ましくは、75℃以下で水溶媒に溶解度が低い。
【0033】
eIN粒子の単一分子は、約5から約50キロダルトン(kD)の範囲の分子量を持つ。
【0034】
eIN粒子の単一分子の重合度(DP)は、多くの場合高い(即ちフルクトースの重合度25以上、好ましくはフルクトースの重合度35以上)。
【0035】
好ましくは、eINはジメチルスルホキシド(水素結合を中和する事が知られている溶媒)に対しaIN,bIN,gINおよびdINのそれぞれと比較してより低い溶解度示す。
【0036】
他の多形形態のイヌリンと同様にeIN溶解と再結晶化により可逆的に他の多形形態に変換される事がわかった。このことにより、eINがイヌリン分子の構造内の化学的あるいは共有結合の変化というより、イヌリン分子の形態的再編成の結果によると推測される。
【0037】
eINは、ダリア、チコリ、アーティチョーク、玉ねぎおよびニンニクなど様々な植物から精製されたイヌリンや、シュークロース、グルコースあるいはフルクトースから合成されたイヌリンまたは当業者によく知られた方法で重合度を増したイヌリンから調整可能である。
【0038】
本明細書において用いられるとき、「十分に精製された試料」という用語は、本質的に他の多糖体や他の外来性の生物学的原料(例えば植物由来の物質)を含まないイヌリンを意味するものと理解されるべきである。この様な試料は、外来性の生物学的原料が10%(重量比)以下のものであり、よく知られているチコリからのイヌリンの商業的な生産に用いられる熱水抽出および精製工程(Stephen,AM,et al.,2006)を含む当業者によく知られた、いかなる方法によっても調整可能である。
【0039】
デルタ・イヌリンおよびgINは、免疫学的に活性であり、単独あるいは水酸化アルミニウムのような抗原結合担体材料と共に、特にワクチンのアジュバントとして有効であることがすでに解っている(Cooper,PD and EJ Steele,1991,Cooper,PD et al.,1991a,Cooper,PD et al.,1991b.WO90/01949およびWO2006/024100)。後述の実施例6において、本発明者等は、eINもまた免疫学的に活性である事のみで無く、gINおよびdINをしのぐレベルの免疫活性を持ち、eINを含むアジュバントが、今日までに研究あるいは開発されたいかなるイヌリンよりも強力である可能性を提供する。
【0040】
更にeINは、5つのイヌリンの多形形態の中で最も熱安定的であり、この事はeIN粒子の懸濁液が他の多形形態が溶解する温度においても不溶性のままである事を意味する。この事は、85℃まで加熱する製造工程の場合eINが最も熱安定的に有利であることにつながる。更に、もしeINが、熱安定性が要求されるアジュバントとして用いられる場合、eIN粒子が高い気温の中でも安定であることを意味する。
【0041】
第2の局面においては、本発明は希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移点が
成物を提供する。
【0042】
好ましくは、本発明のeIN粒子の組成物は、59℃以下の水溶性溶媒に溶けにくく、より好ましくは、75℃以下で溶けにくい。
【0043】
好ましくは、本発明のeIN粒子は約100nmから約10μmの範囲の直径を持ち、より好ましくは約1μmから約5μmの範囲である。
【0044】
本発明の組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と共に、注射剤あるいは経口、経腸、経膣、経皮または経眼剤として調製され得る。組成物はまた、活性成分が例えばワクチン抗原(遺伝子組換え抗原を含む)、抗原ペプチドまたは抗イディオタイプ抗体を含むものとも成り得る。追加的または代替的に活性成分は、リンフォカイン、サイトカイン、胸腺細胞刺激因子、マクロファージ刺激因子、エンドトキシン、ポリヌクレチド分子(例えばワクチン抗原をコードしているもの)あるいは組換えウイルスベクター、微生物(例えば微生物の抽出物)またはウイルス(例えば不活化または弱毒化されたウイルス)でもあり得る。実際、本発明の組成物は、不活化または弱毒化されたウイルスが活性成分である場合に使用される事に特に適している。
【0045】
本発明の組成物に含まれる事に適する好ましいワクチン抗原は、細菌、ウイルス、酵母菌、カビ、原虫および他の微生物の抗原の一部またはすべて、あるいはヒト、動物または植物由来の病原体および花粉やその他のアレルゲン、特に毒素(例えばミツバチやスズメバチの毒)およびハウスダストダニや犬猫のフケのような喘息を引き起こすアレルゲンを含む。
【0046】
特に好まれるワクチン抗原は、インフルエンザウイルスのHA蛋白(例えば不活化された季節性インフルエンザウイルスおよび季節性のH1、H3、B株またはパンデミックH5株の組換えHA抗原)、インフルエンザ核蛋白、ロタウイルスの外層カプシド蛋白、gp120のごときヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原、RSウイルス(RSV)表面抗原、ヒトパピローマウイルスE7抗原、単純ヘルペスウイルス抗原、B型肝炎ウイルス抗原(例えばHBs抗原)、C型肝炎ウイルス(HCV)表面抗原、不活化日本脳炎ウイルス、(狂犬病を引き起こす)リッサウイルス表面抗原等のウイルス抗原、および赤痢菌、ポルフィロモナス・ジンジバリス(例えばプロテアーゼおよびアドヘジン蛋白)、ヘリコバクター・ピロリ(例えばウレアーゼ)、リステリア・モノサイトゲネシス、結核菌(例えばBCG)、マイコバクテリア・アビウム(例えばhsp65)、クラミジア・トラコマチス、カンジダ・アルビカンス(例えば外膜蛋白)、肺炎球菌、髄膜炎菌(例えばクラス1外膜蛋白)、炭疽菌(炭疽の原因菌)、コクシエラ・ブルネッティ(Q熱の原因菌であるが自己免疫型糖尿病(即ち1型糖尿病)に対し長期にわたる防御反応を誘導できる)等の微生物由来の抗原およびマラリアを引き起こす原虫(特にプラスモディウム・ファルシパラムおよびプラスモディウム・バイバックス)である。
【0047】
他に特に好まれる抗原は、癌抗原(即ち一つあるいはそれ以上の癌に付随する抗原)例えば癌胎児性抗原(CEA)、ムチン−1(MUC−1)、上皮腫瘍抗原(ETA)、p53およびrasの異常産物およびメラノーマ抗原(MAGE)である。
【0048】
本発明の組成物がワクチン抗原である場合、その組成物は好ましくは抗原結合担体材料を含むものである。抗原結合担体材料は、例えばマグネシウム、カルシウム、またはアルミニウムのリン酸塩、硫酸塩、水酸化物(例えば水酸化アルミニウムおよび/または硫酸アルミニウム)の様な金属塩または沈殿物のうち一つまたはそれ以上、および/または蛋白質、脂質、硫酸化またはリン酸化多糖(例えばヘパリン、デキストラン、もしくはセルロース誘導体)を含む有機酸およびキチン(ポリN−アセチルグルコサミン)もしくはそれらの脱アセチル化誘導体、または塩基性セルロース誘導体のような有機塩基、および/または他の抗原のうち一つまたはそれ以上である。抗原結合担体材料は、溶解性の乏しい任意の材料(水酸化アルミニウム(アラム)ゲルまたはその水和塩複合体)の粒子でもよい。典型的には、抗原結合担体材料は凝集する傾向は無く、または凝集を避けるように処理される。最も好ましくは、抗原結合担体材料は、水酸化アルミニウム(アラム)ゲル、リン酸アルミニウムゲルまたはリン酸カルシウムゲルである。
【0049】
抗原結合担体材料が存在する場合、例えばeINと共に結晶化するなどしてeINの内部に存在する事が好ましい。粒子状のイヌリンと金属塩の様な抗原結合担体材料の共結晶は、以下の方法で組成される:
(a)eIN粒子の懸濁液を加熱する事によりイヌリン溶液またはイヌリン部分溶液を用意する
(b)当該溶液に一つまたはそれ以上の金属のリン酸化合物を加える
(c)当該溶液からイヌリンを再結晶化する
(d)再結晶化したイヌリンをeINに再び変換する
(e)eINと一つまたはそれ以上の金属のリン酸化合物が共結晶したものを分離する
【0050】
ステップ(a)のイヌリン溶液またはイヌリン部分溶液は、55℃で約30分あるいはeIN粒子の一部が溶解し完全には溶解しない時間加熱する事により調整される。ステップ(c)のイヌリンの再結晶化は、約4℃にする事により調整される。ステップ(d)の再結晶化したイヌリンのeINへの再変換は、それぞれ約37℃、45℃、>48℃と段階的に温度を変化させる事により調整される。ステップ(e)のeINの共結晶の分離は、例えば遠心分離し残存するイヌリン溶液を洗い除く事により調整される。
【0051】
金属塩の様な抗原結合担体材料とeINを組み合わせた粒子の直径は、約100nmから約10μmの範囲であり、より好ましくは約1μmから約5μmの範囲である。抗原結合担体材料とeINを組み合わせた粒子のイヌリンと抗原結合担体材料の比率(重量比)は、1:20から200:1の範囲であり得る。
【0052】
更に本発明の組成物は、リンフォカイン、サイトカイン、胸腺細胞刺激因子、マクロファージ刺激因子あるいはエンドトキシンの様な免疫調節剤の一つあるいはそれ以上を含むものでもあり得る。
【0053】
第3の局面においては、本発明は第1あるいは第2の態様に基づく組成物の有効量を投与することによる、例えば感染症、自己免疫病、免疫不全症、悪性新生物、退行性あるいは加齢性の疾患の予防や治療を目的とした免疫応答を刺激するための方法を提供する。
【0054】
関連する第4の局面においては、本発明は第1あるいは第2の態様に基づく組成物の有効量を投与することによる、例えば感染症、自己免疫病、免疫不全症、悪性新生物、退行性あるいは加齢性の疾患の予防や治療を目的とした免疫応答を促進するための方法を提供する。
【0055】
本明細書において用いられるとき、「有効量」という用語は、所望の効果を提供するために、非毒性であるが十分な量の試料/免疫学的組成物を含むという意味である。必要とされる正確な量は、治療される種、被験者の年齢および一般的状態、治療される状態の重症度、投与される特定の試料/免疫学的組成物および投与の形態などの要因に依存して、被験者ごとで異なるであろう。従って、正確な「有効量」を明記する事は不可能である。しかしながら当業者は、任意の症例に対し適切な「有効量」を日常的に決定する事ができる。
【0056】
第3および第4の局面の方法によれば、単核免疫細胞(例えば単核球、マクロファージおよび樹状細胞)の機能および/またはヒトやヒト以外の動物の補体系を活性化または調節する事により、例えば細菌、マイコプラズマ、カビ、ウイルス、原虫またはその他の微生物による感染あるいは、蠕虫や寄生虫の感染、あるいはこのような感染に伴う免疫病理の治療または予防、アレルギーやリュウマチの様な免疫疾患の治療、免疫システムの異常に関連する自己免疫病、免疫不全病または神経学的、皮膚学的、腎、呼吸器または消化器系疾患あるいは腫瘍や癌の治療または予防のため、免疫反応を刺激/促進する事ができる。本発明はさらに、第1あるいは第2の態様に基づく組成物の有効量を投与することによる、癌の治療および予防にも及ぶことを理解されるべきである。
【0057】
第5の局面においては、本発明はガンマ・イヌリン(gIN)および/またはデルタ・イヌリン
提供する。
【0058】
このeINの調整方法は、基本的にdINの懸濁液からの>55℃という最適変換温度に基づくものである。このことは、aINからgINへの最適変換温度(すなわち44−45℃)およびgINからdINへの最適変換温度(すなわち53−55℃)と異なる。
好ましくは、第5の局面は以下のステップによる:
それ以上加熱する。
(b)その後懸濁液を約60から約76℃の範囲で5時間以内加熱し、eINを形成させ更に随意で、
(c)形成されたeINの少なくとも一部分を分離する。
【0059】
ステップ(a)において、懸濁液を好ましくは約1.5時間から10時間、更に好ましくは約3時間加熱する。ステップ(b)において、懸濁液を好ましくは約0.5時間から5時間、更に好ましくは約3時間加熱する。ステップ(c)において、eIN粒子の分離には、例えば懸濁液を遠心分離するか、もしくはタンジェンシャル・フローろ過のような分離過程を用いる。
【0060】
エプシロン・イヌリンはまた、様々な分子量のイヌリン分子が混合した溶液から直接調整することも可能である。
【0061】
この場合第5の局面の変法として本発明の第6の局面は、10mg/mlまたはそれ以上の濃度のイヌリン溶液を約50℃から約85℃の範囲の温度で、最低15分から2週間もしくはそれ以上維持する方法により、希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移
【0062】
本発明者等は、eINの形成がaIN、bIN、gINまたはdINより高い平均重合度(DP)を持つイヌリン分子を選択する事であることも発見した。このように、eINを調整する工程は、様々なDPを持つイヌリンの混合物(植物由来のイヌリンの典型)から簡便に、高いDP(即ちフルクトースの重合度30以上、好ましくはフルクトースの重合度35以上)を持つeINと可溶性または低い重合度の非eINを分画する方法を提供する。eINは、妥当な温度で再溶解し再結晶化すると高収率でgINおよびdINを産生するので、この方法(即ち高DPイヌリンを効率的に分画するような方法)で調整されたeINの一つの使用法は、高収率でgINおよびdINを産生する方法である。eINを出発材料とすることにより、本発明者らは以前示されたgINおよびdIN形成にそれぞれの最適な温度より低い温度で、可溶化された濃度の高いeINからgINおよびdINが最適に再結晶化できることを示した。
【0063】
従って本発明の更なる局面は、様々な分子量のイヌリン混合物の分画方法を提供する。この方法は、溶解したイヌリンと希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移点
あり、高分子量のイヌリン画分を得た後のイヌリン溶液からエプシロン・イヌリン(eIN)を得、さらに低分子量のイヌリン画分を得る方法を提供する。
【0064】
あるエプシロン多形形態のイヌリンが大部分を占める前駆体調製物から、十分に精製されたイヌリンであって、そのイヌリン精製物が水またはエタノールのような溶媒中のスラリーを加熱し調製された前駆体のエプシロン・イヌリン(eIN)を溶解し、その後アルファ・イヌリン(aIN),ベータ・イヌリン(bIN),ガンマ・イヌリン(gIN)あるいはデルタ・イヌリン(dIN)のうち一つあるいはそれ以上のイヌリンを沈殿させることにより調製したものを提供する。
【0065】
本発明の更なる局面は、エプシロン多形形態のイヌリン懸濁液中のイヌリンの存在や濃度を測定する方法であって、その方法が希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移点を測定する方法を提供する。
【0066】
本発明の更なる局面は、放射線や化学療法による免疫抑制を治療または予防する方法であって、その方法が第1または第2態様に基づく組成物の有効量を投与する方法を提供する。
【0067】
以下、本発明の範囲を限定するものとは決して解釈されるべきではない実施例と付随する図により本発明を説明する。
【実施例】
【実施例1】
【0068】
−エプシロン・イヌリンの同定
材料と方法
ガラスの試験管に7mlの112mg/mlの濃度のdIN懸濁液を入れウォーターバスで段階的に図1中の■で示した温度に加熱した(徐々に加熱とは1分間に約1℃上昇させることであり、図中に示した温度でそれぞれ5分間平衡化した)。平衡化後0.5mlのサンプルを採取後ただちに遠心分離し、上精中の濃度を決定した。急速加熱では、ガラスの試験管に入れた20℃の1.0mlのdIN水溶液を、いくつかの温度のウォーターバスに5分間浸し(急速に加熱)、同様に測定した。
【0069】
結果
急速に加熱した場合、上精中の濃度は70−72℃まで直線的に上昇し、イヌリンは完全に溶解し溶液は無色となった。
【0070】
徐々に加熱した場合、dINは約65℃まで急速に加熱した場合と同様に溶解した(図1)。驚いたことに65−70℃ではペースト状の沈殿が生じ75℃まで溶解せず、高温では溶解度の直線からかい離した(図1)。この結果は、懸濁液を65℃以上まで徐々に加熱すると新たなイヌリンの形態を生じることを予期せず示した。この沈殿はエプシロン・イヌリン(eIN)と命名された。その後の研究によりeINがイヌリンの新規の多形形態でありユニークな特性により他の形態と容易に区別できることが確認された。
【0071】
外観は、gINとdINが乳白色で自然沈降性があるのに対し、最初にdINを加熱して得たeINは灰色がかったペースト状で粘度のあるものであった。このようなeINの透過型電子顕微鏡(TEM)観察によるとeIN粒子は前駆体であるgINやdIN粒子と同様の大きさであるがより低密度であり、gINやdINからイヌリンの一部が除かれたか濾されたことを示唆した。しかしながら、eINを溶解し(図9および12に示すように)再結晶化すると粒子の懸濁液は、他の多形形態のイヌリンと同様のミルク様の外観を示した。
【実施例2】
【0072】
−eINの測定
イヌリンのアルファ、ベータ、ガンマおよびデルタ多形形態は、それぞれの希薄懸濁液(05mg/ml以下)の濁度変化のより測定される温度依存性溶解度に基づき容易に同定および測定可能である。このような希薄懸濁液を段階的に加熱してゆくと、濁度(700nmにおける吸光度(OD700))は一定の間安定しているが臨界温度で突然低下し、このことはバッチ間で再現性があり、精製された各多形形態それぞれに特徴的である。従って50%OD700熱転移点は、各多形形態を特徴づけるパラメーターとなる。本実施例ではeINの50%OD700熱転移点を測定した。
【0073】
材料と方法
1種類のdINと3種類のeINサンプルについて以下の通り測定した。各サンプルを5mlのPBSで0.5mg/mlに希釈した。ガラスの試験管に入れた希釈されたサンプルを一緒に22℃から段階的にウォーターバスで加熱(あらかじめ決めた温度に設定し5−10分かけて平衡化した)し、各サンプルのOD700を測定した。その後試験管をウォーターバス戻し次に高い温度に移した。
【0074】
結果
eINの場合、50%OD700熱転移点は59−68℃であった(図2)。このことによりeINはgIN(50%OD700熱転移点47−48℃、図3および4)、dIN(50%OD700熱転移点53−58℃、図4)あるいは様々なアルファおよびベータ・イヌリン(50%OD700熱転移点10−40℃、図3)と識別できる。図2−4は、dINとeINの希薄懸濁液の溶解度が明らかに異なる温度は58−60℃であり、この温度でdINは溶解しeINは不溶性のままである(図13も参照されたい)。この様に59℃に加温して不溶性のイヌリン(すなわちeIN)と溶解したイヌリン(すなわち非eIN)のパーセンテージを測定することにより、未知の希薄懸濁液中のeINの含量を推定することが可能である。
【実施例3】
【0075】
−eINの調製
材料と方法
1.エプシロン・イヌリンは濃縮されたdIN懸濁液を適温で加熱することにより調製可能である。図5はdINからeINを調製するための最適温度(60−68℃)そしてaINからgINを調製するための最適温度(44−45℃)およびgINからdINを調製するための最適温度(53−55℃)を示した図である。
【0076】
図5に示された最適温度は、1mlの各イヌリン調製物(約100mg/ml)を様々な温度で20分間加熱し、0.1mlのサンプルをガラス試験管内で5mlのPBSで希釈した。これらの試料をウォーターバスで10分間それぞれ40℃(gIN)、49℃(dIN)、または60℃(eIN)で加熱後OD700を測定した(値は得られた最高のOD値に対するパーセンテージで表した)。
【0077】
2.eINはまた、好ましい重合度を持つイヌリン粉末(例えばダリアやチコリの根から抽出されたイヌリン)を80℃に加熱し完全に水に高濃度で溶解したものを50−85℃、より好ましくは、50−65℃に最低15分から2時間あるいはそれ以上の間維持することによっても調製できる。この時eINは溶液から白色の沈殿として生じる。
【0078】
結果
図6は、本実施例の前半に記載した方法によるeINへの転換率を示す。図は特に、66℃におけるdINからeINへの転換率を示す。転換は最適温度では10−15分で50%完了し、80−90分後には大部分が転換した。図7はgINとdINが最適温度でほぼ同様な転換率を持つことを示す。各多形形態の収量は、各々の多形形態が由来するものの65−80%であり(図8)、この事は転換過程が原料中に存在する分子集団中の微量な成分を選択しているのではなく、むしろ全分子集団中の主要な成分をより熱安定的な型に再編成している事を示す。図9および10は、ある温度に保たれたイヌリン溶液から再結晶化された特定のイヌリン多形形態が、温度依存的であり、各多形形態の収量は、熱変換で見られたもの(図8)と同様のパターンであることを示す。この様にeINは、50℃以上の温度で沈殿し易い。
【実施例4】
【0079】
−eINの可逆性
既知の4つの多形形態のイヌリンは、高温の水で再溶解し、より低い温度で再結晶化することで、各多形形態が由来する以前の多形形態に変換でき、更に適当な温度処理によりベータ型→アルファ型→ガンマ型→デルタ型と変換できる。この事は図11に示されており、ここではdINを80℃で溶解した後、5℃または37℃で再結晶化し典型的なaINとgIN温度溶解度曲線を得た。さらにgINを56℃に保持する事により典型的なdIN温度溶解度曲線を得た。本実施例ではeIN再変換能について検討した。
【0080】
材料と方法
エプシロン・イヌリンを80℃で溶解し、より低い温度で再結晶化し徐々に高温で処理を行った。
【0081】
図12に示すように、この過程でaIN、gIN、dINそして最後にeINが再び得られた。このように、eINもまた再溶解と再結晶が可能である事が示された。しかしながらこの実験で、eIN溶液から5℃で再結晶化したものは典型的なaINの特徴を持つが、37℃で再結晶化したものはgINよりdINに近い熱転移点を示した。この様にeINの形成は可逆的であるが、粗製イヌリンが使われた場合、eINを可溶化後再結晶化する際、通常の至適形成温度より低い温度でイヌリンの多形形態が形成される傾向がある。この事は、各イヌリン多形形態の至適形成温度は、必ずしも一定ではなく、製造に使用されるイヌリンのDPにより変化することを示す。従って本実施例で使用したもの(平均DPが27)より高いDPの原料が使用される場合、gINおよびdINは漸次より低い温度で形成されるであろう。よって、eINの一つの使用法は、イヌリンの分画を得ることであり、より簡便に高収率でgINおよびdINを得るのに用いることができる。
【実施例5】
【0082】
−eINの識別特性
既知の4つの多形形態のイヌリンは、各々の希薄懸濁液の濁度により熱転移点を測定することで識別でき、この事は上述の通りeINにもあてはまる。さらに、熱変換または直接結晶化する場合、形成温度でeINを他の多形形態から識別できることもすでに示した。しかしながら、濁度の変化は様々な多形形態の特徴や特性の中の一つに過ぎない。本実施例では、eINを他の多形形態のイヌリンから識別する他の物理的パラメーターを検討した。
【0083】
材料と方法
1.イヌリンの水に対する溶解度
dINとeINの溶解度は、様々な温度で平衡化しながら比較した。水に懸濁したdIN(112mg/ml)とeIN(45−74mg/ml)のサンプル(0.5ml)を1.5mlのエッペンドルフ・チューブに入れそれぞれの測定温度のウォーターバスに15分間完全に沈めた後、ただちに遠心分離し上精の屈折度を測定した。
【0084】
2.イヌリンのジメチルスルホキシドに対する溶解度
50μlの精製されたgIN,dINおよびeIN(PBS中で50mg/ml)サンプルと450μlのジメチルスルホキシド(DMSO)水溶液を混合し同一の最終濃度となるようにした。水とDMSOの混合により熱を生じるのでDMSOの希釈は、アイスバス中でガラスの試験管を用いて行った。5分後試験管を25℃のウォーターバスに15分間置きその後氷に戻し、氷冷したPBS(4.5ml)を加え25℃のウォーターバスに15分間置きOD700を測定した。
【0085】
結果
dINとeINはそれぞれの測定温度で水に対して異なる溶解度を示したが、変化は直線的であり濃度の影響は少なかった(図13)。直線的な部分を延長してX軸と交差する点すなわち溶解度0となる温度は、50%OD700熱転移点と近似していた。カーブはほぼ完全溶解まで続いた。72℃(dIN)または75℃(eIN)以上でそれぞれほぼ完全に溶解した。ガンマ・イヌリンもほぼ同様な挙動を示し、X軸と交差する点が47℃で溶解点が65℃であった(データは示していない)。この様な特徴的な溶解性もまた多形形態の識別に使え、60−65℃で何度か洗浄することで大きな損失無くeINを下位の多形形態のものから選択可能である。
【0086】
水溶性の溶媒であるDMSOは、水系中で電媒常数を上昇させることが知られており、このことで水素結合を大いに弱める。イヌリンの水懸濁液は、0℃に至るまでDMSOに完全に溶解性であり、その後もし水で希釈しても溶解したままであるがエタノールで再沈殿することができる。細かなDMSO濃度の差で溶解度を比較すると(図14)、gIN,dINおよびeINは、それぞれ溶解が始まる時に異なる臨界DMSO濃度を示した。特にgINは最も容易にDMSOに溶解し、eINは最も難溶であり、水素結合の強さは、ベータ→アルファ→ガンマ→デルタ→エプシロンの順に強いことを示唆した。
【実施例6】
【0087】
−eINの用法
既知の四つの多形形態の内の二つ、すなわちgINとdINは免疫学的に活性であり特に同時に投与された抗原に特異的な抗体を誘導する(つまりアジュバント効果がある)ことが解った。本実施例では、eINもまた同様な免疫学的活性を持つか否か検討した。
【0088】
材料と方法
eINにアジュバント活性があるか調べるために、Balb/cマウスをB型肝炎表面抗原(HBs抗原)単独あるいはeINまたはdINと共に免疫した。
【0089】
結果
実験結果は図15に示す。eINをHBs抗原に添加すると抗HBs抗体の産生を有意に促進し、抗体価の幾何平均値および最小防御抗体価を10mIU/mlとした場合の抗体陽転率の両者ともに上昇する事が判明した。同じ量を使用した場合eINはdINより効果がある事も判明した。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のエプシロン・イヌリン(eIN)およびeINを含む組成物は、ワクチンのアジュバントとしてあるいは免疫を刺激または促進する用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1はdIN懸濁液を徐々に加熱した場合(■)と急速に加熱した場合(○)のeIN生成率を示した図である。
【図2】図2はdINとeINの熱転移吸光度を比較した図である。ガラス管に入った5mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁されたそれぞれのサンプル(0.5mg/ml)をウォーターバスで加熱した。それぞれのOD700(700nmにおける吸光度)値は各温度で平衡化した後測定した。
【図3】図3はaIN,bINおよびgINの熱転移吸光度を示した図である。ガラス管に入った5mlのそれぞれのサンプル(0.5mg/ml)をウォーターバスで加熱した。それぞれのOD700値は各温度で平衡化した後測定した。記号:+,4種類のgINバッチ;△,▲,□,aINs;○,bIN(Cooer,PD and EJ Steele,1991より引用)。
【図4】図4は2種類のdINバッチと同じ材料から調製したgINの熱転移吸光度を示した図である。それぞれのOD700値は各温度で平衡化した後測定した(WO2006/024100より引用)。
【図5】図5はaIN,gINまたはdINからそれぞれgIN,dINおよびeINを調製するための最適温度を示した図である。値はOD700の最高値に対するパーセンテージで表している。
【図6】図6は66℃という最適温度におけるdINからeINへの転換率を示した図である。dIN懸濁液(5ml,50mg/ml)をウォーターバスで66℃に加熱後一定間隔でサンプルを採取し5mlのPBSに0.5mg/mlとなるように希釈した。すべてのサンプルはその後eINのアッセイのため60℃で10分間加熱した。
【図7】図7はaINまたはgINからそれぞれgINおよびdINへの転換率をそれぞれの最適温度(45℃および55℃)で示した図である。aINまたはgIN懸濁液(5ml,50mg/ml)をウォーターバスで45℃または55℃に加熱後一定間隔でサンプルを採取し5mlのPBSに0.5mg/mlとなるように希釈した。すべてのサンプルはその後gINおよびdINのアッセイのため37℃または50℃で10分間加熱した。
【図8】図8は無精製イヌリンから得られるaIN,dIN,gINおよびeINの典型的な収量を示した棒グラフである。粗イヌリンを130mg/mlの濃度で水に溶解し5℃で1週間以上aINを結晶化させ、その後gIN(45℃),dIN(55℃)そしてeIN(66℃)を得た。各段階の上精の屈折率を不溶性画分を評価するために測定した。「水溶性」イヌリンは、最初の結晶化段階でaINとならなかったものの量である。
【図9】図9は様々な温度でイヌリン溶液をインキュベートした場合の様々な多形形態の粒子状イヌリンの収量を示したものである。イオン交換および滅菌フィルターを通過させた粗イヌリン溶液を100mg/mlに調整し、示された温度のウォーターバスまたは部屋に3週間置いた。7日毎に上精の屈折率を測定し、沈殿したイヌリンのパーセンテージを計算した。
【図10】図10は各懸濁液の3週間目の熱転移吸光度を示す。氷上に置かれた5mlのリン酸緩衝生理食塩液(PBS)に希釈(0.5mg/ml)された、各未分画懸濁液を含むガラスの試験管を一緒にウォーターバスで加熱した。それぞれの温度で平衡化した後、各サンプルのOD700を測定し、0℃におけるOD700値のパーセンテージで表した。
【図11】図11はdINの可逆性を示した図である。3種類のイヌリンサンプル(dINを溶解後それぞれ5℃または37℃で結晶化もしくは37℃の後56℃に加温した)をPBSで0.5mg/mlに希釈し、図に示した温度にウォーターバスで段階的に加熱し平衡化した後吸光度を測定した(WO2006/024100より引用)。
【図12】図12はeINの可逆性を示した図である。eINサンプルを80℃で溶解後5℃,37℃または50℃で結晶化した。50℃サンプルの半量は66℃で2時間加熱し再びeINに変換した。
【図13】図13はdINとeINの溶解度を示した図である。0.5mlのdIN(112mg/ml)およびeIN(45−74mg/ml)サンプルを1.5mlのエッペンドルフ チューブに入れ、15分間ウォーターバスに完全に沈めた後素早く遠心分離し上精の屈折率を測定した。
【図14】図14は3種類の多形形態のイヌリンのジメチルスルホキシド(DMSO)に対する溶解度を示した図である。50μlの精製されたgIN,dINおよびeIN(PBS中で50mg/ml)サンプルと450μlのDMSOを混合した。
【図15】図15はdINより優れたeINのアジュバント能を示した棒グラフである。1群10匹の35日齢のBalb/cマウスに0.2mgのdINまたはeINをアジュバントとして添加した0.5μgのB型肝炎表面抗原(HBsAg)を一回筋注した。3週間後マウスから採血し抗HBs抗体価をAUSAB▲R▼アッセイ(Abbott Laboratories Inc,Abbott Park,IL,United States of America)で測定した。(A)eINをアジュバントとして添加したHBsAgを接種したマウスは統計学的に有意(p<0.05)に高い抗体価を得た。(B)eINをアジュバントとして添加したHBsAgを接種したすべてのマウスがB型肝炎ウイルスに対する、10mIU/mlの抗体価を陽性のカットオフ値とした感染防御抗体価を得たが、dINをアジュバントとして添加したHBsAgを接種した群では60%のマウスのみが感染防御抗体価を得た(p<0.05、Fisher exact test)。
【符号の説明】
【0091】
[図1](■):徐々に加熱した場合、(○)急速に加熱した場合。
[図2](●):dINロットPCSP5.3、(□):eINロットPCSP2.2、(△):eINロットPCSP3.2、(×):eINロットPCSP4.2。
[図3](+):4種類のgINロット、(△,▲,□):aINs、(○):bIN。
[図4](■):gINロット3、(□):dINロット3、(▲):gINロット4、(△):dINロット4。
[図5](●):アルファからガンマ、(■):ガンマからデルタ、(□):デルタからエプシロン。
[図7](●):gINからdIN、(○):aINからgIN。
[図9](▲):5℃で結晶化、(△):22℃で結晶化、(■):37℃で結晶化、(□):52℃で結晶化。
[図10](▲):5℃で結晶化、(△):22℃で結晶化、(■):37℃で結晶化、(□):52℃で結晶化。
[図11](■):5℃で結晶化、(○):37℃で結晶化、(△):37℃の後56℃に加温。
[図12](◇):5℃、(□):37℃、(△):50℃(●):50℃から66℃。
[図13](○):eINロットPCSP2、(□):eINロットPCSP3、(△):eINロットPCSP4、(■):dIN。
[図14](■):gIN、(□):dIN、(△):eIN。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヌリンの新たな多形形態であるエプシロン・イヌリン(eIN)に関する。
【背景技術】
【0002】
イヌリンは、直鎖状にフルクトースが側鎖なく結合し末端に1つのグルコースが結合したβ−D−(2→1)ポリフルクトフラノシルα−D−グルコース ファミリーから成る単純で不活性な多糖類である。従ってイヌリン組成物は、単純で中性の多糖から成る公知の組成であるが、分子量は多様であり16キロダルトン(kD)以下またはそれを超える範囲に及ぶ。イヌリンは、キク科(Compositae)の貯蔵炭水化物であり、ダリアの球根から安価に得られる。イヌリンは比較的疎水性のポリオキシエチレン様の骨格を有し、この珍しい構造に加えてイオン化されない性質が、再結晶による容易に、非常に純粋なイヌリンの調製を可能にしている。自然界ではイヌリンは重合度(DP)60程度あるいはそれ以上のフルクトースから成り、様々な溶解度や特性等を持つ。
【0003】
イヌリンの分子組成は周知であるが、報告されている溶解性は様々である。例えば、Merck Index(第13版,2001年)では、「低温の水および有機溶媒にわずかに可溶性であり、高温には可溶性」としてイヌリンを記述しており、一方、定量的研究(Phelps,CF,1965)によれば、水からの沈殿によって得られる第1のものと、エタノールからの沈殿によって得られる第2のものの、二つの性質が異なるイヌリンの形態が存在し、両方とも37℃で水に実質的に可溶性であることを示唆した。また、イヌリンの懸濁液は、静止したままであると溶解性がより低くなることも公知である。水からの沈殿によって得られる形態は、αイヌリン(aIN)と称され、エタノールからの沈殿によって得られる形態は、βイヌリン(bIN)として公知である。
【0004】
aINもbINも室温でしだいに水に対する溶解度が減少することが観察された(Cooper,P.D.and Carter,M.,1986)。この事がγイヌリン(gINあるいはガムリン)と称される、粒子状イヌリンの第3の多形形態の発見を導き、国際特許WO87/02679号において開示されており、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。また、Cooper,P.D.and Carter,M.,1986およびCooper,P.D.and Steele,E.J.,1988)も参照されたい。
【0005】
この第3の多形形態は、37℃で水に実質的に不溶性であるが、濃縮された溶液(例えば50mg/ml)において、45℃以上の温度でのみ、αおよびβ多形形態のように可溶性である。gINの際立った特徴は、50%OD700熱転移点(薄い溶液の溶解相転移)が47±1℃というシャープな溶解点を持つことである。
【0006】
その後、デルタ・イヌリン(dINあるいはデルティン)と称される、粒子状イヌリンの第四の多形形態が発見された。デルタ・イヌリンは50℃で水に不溶性であり、国際特許WO2006/024100号において開示されており、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。実際dINは、濃縮された溶液(例えば50mg/ml)において、70−80℃に加熱された場合にのみ可溶性である。dINは、薄い溶液の50%OD700熱転移点が53−58℃ということで特徴づけられる。dINは、濃縮されたgIN溶液を55℃以上に加熱することにより簡便に調製できる。
【0007】
これら既知の4種類のイヌリン多形形態は、23℃で急速に溶解する形態(β230イヌリン)から、37℃で8分の半減期で可溶性の形態(α378イヌリン)を経て、37℃で実質的に不溶性の形態(gIN)さらに50℃で実質的に不溶性の形態(dIN)という水性媒体における異なった溶解率によって特徴付けられる。後半の2つの多形形態は37℃で不溶性であり、もしこの温度を持つ人間のような生物体に導入されてもそれぞれの粒子形態を維持できる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、これらの多形形態が1970年代の、イヌリンの水溶液は生理学的に不活性(British Pharmaceutical Codex,1979)であり抗原性も腎毒性も無い(Verroust,PJ et al.,1974)が、にもかかわらず粒子形態のイヌリンは免疫学的に活性であり、特に補体の副経路(APC)の活性因子として働く(Cooper,PD and M Carter,1986)という観察の少なくとも一部を説明できると考えられる。
【0008】
このようにイヌリンは、様々な溶解性やその他の特性を持つ明瞭に異なる形態を取り得る。本発明はエプシロン・イヌリン(eIN)と呼ばれる新規な多形形態のイヌリンに関する。
【先行技術文献】
【0009】
【特許文献1】PCT/AU86/00311(WO87/02679)titled″Immunotherapeutictreatment″
【特許文献2】PCT/AU89/00349(WO90/01949)titled″Gamma inulin compositions″
【特許文献3】PCT/AU2005/001328(WO2006/024100)titled″New polymorphic form of inulin and uses thereof”
【非特許文献1】Cooper,PD et al.The adjuvanticity of Algammulin,a new vaccine adjuvant.Vaccine 9:408−415(1991a).
【非特許文献2】Cooper,PD et al.Algammulin(gamma inulin/alum hybrid adjuvant)has greater adjuvanticity than alum for hepatitis B surface antigen in mice.Immunology Letters27:131−134(1991b).
【非特許文献3】Cooper,PD and EJ Steele.The adjuvanticity of gamma inulin.Immunol Cell Biol66:345−352(1988).
【非特許文献4】Cooper,PD and EJ Steele.Algammulin,a new vaccine adjuvant Comprising gamma inulin particles containing alum:preparation and in vitro properties.Vaccine9:351−357(1991).
【非特許文献5】Cooper,PD and M Carter.Anti−complementary action of polymorphic″solubility forms″of particulate inulin.Mol Immunol23(8):895−901(1986).
【非特許文献6】Phelps,CF.The physical properties of inulin solutions.Biochem J95:41−47(1965).
【非特許文献7】Stephen,AM,GO Phillips and PA Williams(eds).Food Polysaccharides and their Applications,second edition.CRC Press,Boca Raton FL(2006).
【非特許文献8】Verroust,PJ et al.Lack of nephritogenicity of systemic activation of the alternate complement pathway.Kidney Int6:157−169(1974).
【発明の概要】
【0010】
本発明の第1の態様によると、十分に精製されたイヌリンであって、希薄懸濁液(<0.5
れる。
【0011】
58℃であるエプシロン多形形態のイヌリン粒子から成る薬理学的または免疫学的組成物が提供される。
【0012】
本発明の組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と共に、注射剤あるいは経口、経腸、経膣、経皮または経眼剤として調製され得る。組成物はまた、活性成分が例えばワクチン抗原(遺伝子組換え抗原を含む)、抗原ペプチドまたは抗イディオタイプ抗体を含むものとも成り得る。さらに組成物は、リンフォカイン、サイトカイン、胸腺細胞刺激因子、マクロファージ刺激因子あるいはエンドトキシンの様な免疫調節剤の一つあるいはそれ以上を含むものとも成り得る。
【0013】
本発明の第3の態様によると、第1あるいは第2の態様に基づく組成物の有効量を投与することによる、例えば感染症、自己免疫病、免疫不全症、悪性新生物、退行性あるいは加齢性の疾患の予防や治療を目的とした免疫応答を刺激するための方法が提供される。
【0014】
関連した本発明の第4の態様によると、第1あるいは第2の態様に基づく組成物の有効量を投与することによる、例えば感染症、自己免疫病、免疫不全症、悪性新生物、退行性あるいは加齢性の疾患の予防や治療を目的とした免疫応答を促進するための方法が提供される。
【0015】
本発明の第5の態様によると、ガンマ・イヌリン(gIN)および/またはデルタ・イヌリン
提供される。
【0016】
本発明の第6の態様によると、10mg/mlまたはそれ以上の濃度のイヌリン溶液を約50℃から約85℃の範囲の温度で、最低15分から2週間もしくはそれ以上維持する
ン多形形態のイヌリンを調整する方法が提供される。
【0017】
本発明の更なる態様によると、多形形態のイヌリン混合物の分画方法であって、溶解
ロン多形形態のイヌリンから成る懸濁液から沈殿させる方法であり、高分子量のイヌリン画分を得た後のイヌリン溶液からエプシロン・イヌリン(eIN)を得、さらに低分子量のイヌリン画分を得る方法が提供される。
【0018】
本発明の更なる態様によると、希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移点が
分に精製されたイヌリンであって、そのイヌリン精製物が水またはエタノールのような溶媒中のスラリーを加熱し調製された前駆体のエプシロン・イヌリン(eIN)を溶解し、その後アルファ・イヌリン(aIN),ベータ・イヌリン(bIN),ガンマ・イヌリン(gIN)あるいはデルタ・イヌリン(dIN)のうち一つあるいはそれ以上のイヌリンを沈殿させることにより調製したものが提供される。
【0019】
本発明の更なる態様によると、エプシロン多形形態のイヌリン懸濁液中のイヌリンの存在や濃度を測定する方法であって、その方法が希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移点を測定する方法が提供される。
【0020】
本発明の更なる態様によると、放射線や化学療法による免疫抑制を治療または予防する方法であって、その方法が第1または第2態様に基づく組成物の有効量を投与する方法が提供される。
【0021】
本明細書に記載した特徴および利点はすべて限定的ではなく、特に当業者には、添付図面、実施例および特許請求の範囲を読めば、多くの追加的な特徴および利点が明確であろう。さらに、実施例で使用した言葉は、読み易さや指示的であることを第一義としたものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものでは無い。
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、eINと称される新規の多形形態の粒子状イヌリンの調製および使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、イヌリンを58℃以上で15分から2週間あるいはそれ以上加熱し、その後およそ60℃から76℃で5時間程度保持することにより純粋なeINと称される新規の多形形態の粒子状イヌリンを調製する事に成功し、それに基き本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、aIN,bIN,gINあるいはdINより長鎖のイヌリンを簡便に調製することを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
好ましい実施態様に関する図および記載は、例示的なものである。下記の議論より、本明細書に記載された構造や方法を代替する実施態様は、本発明の請求項の原理から外れることなく実施できることは明白に理解されるべきである。
【0026】
いくつかの実施態様では、添付した図の様な詳細な引用がなされるであろう。可能な限り図においては文献番号のようなものが用いられると理解されるべきである。図は開示されたシステム(あるいは方法)の態様を例示する目的でのみ用いられる。以下の記載から本発明のさまざまな修正及び変更を、この発明の原理から外れることなく実施できることは、当業者には明白であろう。
【0027】
本発明は、エプシロン・イヌリン(eIN)と命名された新規な、第5の多形形態のイヌリン粒子を同定した。aIN,bIN,gINおよびdINと似た特徴がeINでもまた見られるが、しかしながら識別できる特徴と効用もまた備える。
【0028】
ることにより同定され、この事がdINとは異なり、eINは、濃厚なイヌリンの懸濁液を
度で加熱することによりeINに変換できることを発見した。例えば、dINの濃厚な懸濁液を急速に加熱すると73℃以下で完全に溶解する事が見つかっている。予期せぬことに、同じ試料を60−80℃の間で徐々に加熱すると、73℃では溶解しないペースト状の沈殿が生じた。調べてみたところ、この高温で生じたイヌリンの沈殿物はaIN,bIN,gINおよびdINとは異なる特徴を持っており、希薄懸濁液の50%OD700熱転移点が一段高い、新規な第5のイヌリンの多形形態(エプシロン・イヌリン)の存在を示唆した。
【0029】
この様に、本発明の第1の態様によれば、十分に精製されたイヌリンであって、希薄
リンが提供される。
【0030】
本明細書において用いられるとき、「イヌリン」という用語は、イヌリン、β−D−[2→1]−ポリフルクトフラノシルα−D−グルコースだけでなく、例えばこの末端のグルコースを除くことが可能であるインベルターゼまたはイヌラーゼ酵素を用いて、イヌリンからの末端グルコースの酵素的除去によって得られる可能性があるβ−D−[2→1]ポリフルクトースを含む、イヌリンの誘導体も含むと理解されるべきである。この用語の範囲内に含まれる他の誘導体は、例えば公知の方法によるアルキル、アリール、またはアシル基での化学的置換によって、遊離の水酸基がエーテル化またはエステル化されたイヌリンの誘導体である。
【0031】
本発明のエプシロン・イヌリン(eIN)は、希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移点が好ましくは、約58℃から約80℃の範囲にある。
【0032】
本発明のeINの一つの局面では、59℃以下では水溶媒に溶解度が低く、より好ましくは、75℃以下で水溶媒に溶解度が低い。
【0033】
eIN粒子の単一分子は、約5から約50キロダルトン(kD)の範囲の分子量を持つ。
【0034】
eIN粒子の単一分子の重合度(DP)は、多くの場合高い(即ちフルクトースの重合度25以上、好ましくはフルクトースの重合度35以上)。
【0035】
好ましくは、eINはジメチルスルホキシド(水素結合を中和する事が知られている溶媒)に対しaIN,bIN,gINおよびdINのそれぞれと比較してより低い溶解度示す。
【0036】
他の多形形態のイヌリンと同様にeIN溶解と再結晶化により可逆的に他の多形形態に変換される事がわかった。このことにより、eINがイヌリン分子の構造内の化学的あるいは共有結合の変化というより、イヌリン分子の形態的再編成の結果によると推測される。
【0037】
eINは、ダリア、チコリ、アーティチョーク、玉ねぎおよびニンニクなど様々な植物から精製されたイヌリンや、シュークロース、グルコースあるいはフルクトースから合成されたイヌリンまたは当業者によく知られた方法で重合度を増したイヌリンから調整可能である。
【0038】
本明細書において用いられるとき、「十分に精製された試料」という用語は、本質的に他の多糖体や他の外来性の生物学的原料(例えば植物由来の物質)を含まないイヌリンを意味するものと理解されるべきである。この様な試料は、外来性の生物学的原料が10%(重量比)以下のものであり、よく知られているチコリからのイヌリンの商業的な生産に用いられる熱水抽出および精製工程(Stephen,AM,et al.,2006)を含む当業者によく知られた、いかなる方法によっても調整可能である。
【0039】
デルタ・イヌリンおよびgINは、免疫学的に活性であり、単独あるいは水酸化アルミニウムのような抗原結合担体材料と共に、特にワクチンのアジュバントとして有効であることがすでに解っている(Cooper,PD and EJ Steele,1991,Cooper,PD et al.,1991a,Cooper,PD et al.,1991b.WO90/01949およびWO2006/024100)。後述の実施例6において、本発明者等は、eINもまた免疫学的に活性である事のみで無く、gINおよびdINをしのぐレベルの免疫活性を持ち、eINを含むアジュバントが、今日までに研究あるいは開発されたいかなるイヌリンよりも強力である可能性を提供する。
【0040】
更にeINは、5つのイヌリンの多形形態の中で最も熱安定的であり、この事はeIN粒子の懸濁液が他の多形形態が溶解する温度においても不溶性のままである事を意味する。この事は、85℃まで加熱する製造工程の場合eINが最も熱安定的に有利であることにつながる。更に、もしeINが、熱安定性が要求されるアジュバントとして用いられる場合、eIN粒子が高い気温の中でも安定であることを意味する。
【0041】
第2の局面においては、本発明は希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移点が
成物を提供する。
【0042】
好ましくは、本発明のeIN粒子の組成物は、59℃以下の水溶性溶媒に溶けにくく、より好ましくは、75℃以下で溶けにくい。
【0043】
好ましくは、本発明のeIN粒子は約100nmから約10μmの範囲の直径を持ち、より好ましくは約1μmから約5μmの範囲である。
【0044】
本発明の組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と共に、注射剤あるいは経口、経腸、経膣、経皮または経眼剤として調製され得る。組成物はまた、活性成分が例えばワクチン抗原(遺伝子組換え抗原を含む)、抗原ペプチドまたは抗イディオタイプ抗体を含むものとも成り得る。追加的または代替的に活性成分は、リンフォカイン、サイトカイン、胸腺細胞刺激因子、マクロファージ刺激因子、エンドトキシン、ポリヌクレチド分子(例えばワクチン抗原をコードしているもの)あるいは組換えウイルスベクター、微生物(例えば微生物の抽出物)またはウイルス(例えば不活化または弱毒化されたウイルス)でもあり得る。実際、本発明の組成物は、不活化または弱毒化されたウイルスが活性成分である場合に使用される事に特に適している。
【0045】
本発明の組成物に含まれる事に適する好ましいワクチン抗原は、細菌、ウイルス、酵母菌、カビ、原虫および他の微生物の抗原の一部またはすべて、あるいはヒト、動物または植物由来の病原体および花粉やその他のアレルゲン、特に毒素(例えばミツバチやスズメバチの毒)およびハウスダストダニや犬猫のフケのような喘息を引き起こすアレルゲンを含む。
【0046】
特に好まれるワクチン抗原は、インフルエンザウイルスのHA蛋白(例えば不活化された季節性インフルエンザウイルスおよび季節性のH1、H3、B株またはパンデミックH5株の組換えHA抗原)、インフルエンザ核蛋白、ロタウイルスの外層カプシド蛋白、gp120のごときヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原、RSウイルス(RSV)表面抗原、ヒトパピローマウイルスE7抗原、単純ヘルペスウイルス抗原、B型肝炎ウイルス抗原(例えばHBs抗原)、C型肝炎ウイルス(HCV)表面抗原、不活化日本脳炎ウイルス、(狂犬病を引き起こす)リッサウイルス表面抗原等のウイルス抗原、および赤痢菌、ポルフィロモナス・ジンジバリス(例えばプロテアーゼおよびアドヘジン蛋白)、ヘリコバクター・ピロリ(例えばウレアーゼ)、リステリア・モノサイトゲネシス、結核菌(例えばBCG)、マイコバクテリア・アビウム(例えばhsp65)、クラミジア・トラコマチス、カンジダ・アルビカンス(例えば外膜蛋白)、肺炎球菌、髄膜炎菌(例えばクラス1外膜蛋白)、炭疽菌(炭疽の原因菌)、コクシエラ・ブルネッティ(Q熱の原因菌であるが自己免疫型糖尿病(即ち1型糖尿病)に対し長期にわたる防御反応を誘導できる)等の微生物由来の抗原およびマラリアを引き起こす原虫(特にプラスモディウム・ファルシパラムおよびプラスモディウム・バイバックス)である。
【0047】
他に特に好まれる抗原は、癌抗原(即ち一つあるいはそれ以上の癌に付随する抗原)例えば癌胎児性抗原(CEA)、ムチン−1(MUC−1)、上皮腫瘍抗原(ETA)、p53およびrasの異常産物およびメラノーマ抗原(MAGE)である。
【0048】
本発明の組成物がワクチン抗原である場合、その組成物は好ましくは抗原結合担体材料を含むものである。抗原結合担体材料は、例えばマグネシウム、カルシウム、またはアルミニウムのリン酸塩、硫酸塩、水酸化物(例えば水酸化アルミニウムおよび/または硫酸アルミニウム)の様な金属塩または沈殿物のうち一つまたはそれ以上、および/または蛋白質、脂質、硫酸化またはリン酸化多糖(例えばヘパリン、デキストラン、もしくはセルロース誘導体)を含む有機酸およびキチン(ポリN−アセチルグルコサミン)もしくはそれらの脱アセチル化誘導体、または塩基性セルロース誘導体のような有機塩基、および/または他の抗原のうち一つまたはそれ以上である。抗原結合担体材料は、溶解性の乏しい任意の材料(水酸化アルミニウム(アラム)ゲルまたはその水和塩複合体)の粒子でもよい。典型的には、抗原結合担体材料は凝集する傾向は無く、または凝集を避けるように処理される。最も好ましくは、抗原結合担体材料は、水酸化アルミニウム(アラム)ゲル、リン酸アルミニウムゲルまたはリン酸カルシウムゲルである。
【0049】
抗原結合担体材料が存在する場合、例えばeINと共に結晶化するなどしてeINの内部に存在する事が好ましい。粒子状のイヌリンと金属塩の様な抗原結合担体材料の共結晶は、以下の方法で組成される:
(a)eIN粒子の懸濁液を加熱する事によりイヌリン溶液またはイヌリン部分溶液を用意する
(b)当該溶液に一つまたはそれ以上の金属のリン酸化合物を加える
(c)当該溶液からイヌリンを再結晶化する
(d)再結晶化したイヌリンをeINに再び変換する
(e)eINと一つまたはそれ以上の金属のリン酸化合物が共結晶したものを分離する
【0050】
ステップ(a)のイヌリン溶液またはイヌリン部分溶液は、55℃で約30分あるいはeIN粒子の一部が溶解し完全には溶解しない時間加熱する事により調整される。ステップ(c)のイヌリンの再結晶化は、約4℃にする事により調整される。ステップ(d)の再結晶化したイヌリンのeINへの再変換は、それぞれ約37℃、45℃、>48℃と段階的に温度を変化させる事により調整される。ステップ(e)のeINの共結晶の分離は、例えば遠心分離し残存するイヌリン溶液を洗い除く事により調整される。
【0051】
金属塩の様な抗原結合担体材料とeINを組み合わせた粒子の直径は、約100nmから約10μmの範囲であり、より好ましくは約1μmから約5μmの範囲である。抗原結合担体材料とeINを組み合わせた粒子のイヌリンと抗原結合担体材料の比率(重量比)は、1:20から200:1の範囲であり得る。
【0052】
更に本発明の組成物は、リンフォカイン、サイトカイン、胸腺細胞刺激因子、マクロファージ刺激因子あるいはエンドトキシンの様な免疫調節剤の一つあるいはそれ以上を含むものでもあり得る。
【0053】
第3の局面においては、本発明は第1あるいは第2の態様に基づく組成物の有効量を投与することによる、例えば感染症、自己免疫病、免疫不全症、悪性新生物、退行性あるいは加齢性の疾患の予防や治療を目的とした免疫応答を刺激するための方法を提供する。
【0054】
関連する第4の局面においては、本発明は第1あるいは第2の態様に基づく組成物の有効量を投与することによる、例えば感染症、自己免疫病、免疫不全症、悪性新生物、退行性あるいは加齢性の疾患の予防や治療を目的とした免疫応答を促進するための方法を提供する。
【0055】
本明細書において用いられるとき、「有効量」という用語は、所望の効果を提供するために、非毒性であるが十分な量の試料/免疫学的組成物を含むという意味である。必要とされる正確な量は、治療される種、被験者の年齢および一般的状態、治療される状態の重症度、投与される特定の試料/免疫学的組成物および投与の形態などの要因に依存して、被験者ごとで異なるであろう。従って、正確な「有効量」を明記する事は不可能である。しかしながら当業者は、任意の症例に対し適切な「有効量」を日常的に決定する事ができる。
【0056】
第3および第4の局面の方法によれば、単核免疫細胞(例えば単核球、マクロファージおよび樹状細胞)の機能および/またはヒトやヒト以外の動物の補体系を活性化または調節する事により、例えば細菌、マイコプラズマ、カビ、ウイルス、原虫またはその他の微生物による感染あるいは、蠕虫や寄生虫の感染、あるいはこのような感染に伴う免疫病理の治療または予防、アレルギーやリュウマチの様な免疫疾患の治療、免疫システムの異常に関連する自己免疫病、免疫不全病または神経学的、皮膚学的、腎、呼吸器または消化器系疾患あるいは腫瘍や癌の治療または予防のため、免疫反応を刺激/促進する事ができる。本発明はさらに、第1あるいは第2の態様に基づく組成物の有効量を投与することによる、癌の治療および予防にも及ぶことを理解されるべきである。
【0057】
第5の局面においては、本発明はガンマ・イヌリン(gIN)および/またはデルタ・イヌリン
提供する。
【0058】
このeINの調整方法は、基本的にdINの懸濁液からの>55℃という最適変換温度に基づくものである。このことは、aINからgINへの最適変換温度(すなわち44−45℃)およびgINからdINへの最適変換温度(すなわち53−55℃)と異なる。
好ましくは、第5の局面は以下のステップによる:
それ以上加熱する。
(b)その後懸濁液を約60から約76℃の範囲で5時間以内加熱し、eINを形成させ更に随意で、
(c)形成されたeINの少なくとも一部分を分離する。
【0059】
ステップ(a)において、懸濁液を好ましくは約1.5時間から10時間、更に好ましくは約3時間加熱する。ステップ(b)において、懸濁液を好ましくは約0.5時間から5時間、更に好ましくは約3時間加熱する。ステップ(c)において、eIN粒子の分離には、例えば懸濁液を遠心分離するか、もしくはタンジェンシャル・フローろ過のような分離過程を用いる。
【0060】
エプシロン・イヌリンはまた、様々な分子量のイヌリン分子が混合した溶液から直接調整することも可能である。
【0061】
この場合第5の局面の変法として本発明の第6の局面は、10mg/mlまたはそれ以上の濃度のイヌリン溶液を約50℃から約85℃の範囲の温度で、最低15分から2週間もしくはそれ以上維持する方法により、希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移
【0062】
本発明者等は、eINの形成がaIN、bIN、gINまたはdINより高い平均重合度(DP)を持つイヌリン分子を選択する事であることも発見した。このように、eINを調整する工程は、様々なDPを持つイヌリンの混合物(植物由来のイヌリンの典型)から簡便に、高いDP(即ちフルクトースの重合度30以上、好ましくはフルクトースの重合度35以上)を持つeINと可溶性または低い重合度の非eINを分画する方法を提供する。eINは、妥当な温度で再溶解し再結晶化すると高収率でgINおよびdINを産生するので、この方法(即ち高DPイヌリンを効率的に分画するような方法)で調整されたeINの一つの使用法は、高収率でgINおよびdINを産生する方法である。eINを出発材料とすることにより、本発明者らは以前示されたgINおよびdIN形成にそれぞれの最適な温度より低い温度で、可溶化された濃度の高いeINからgINおよびdINが最適に再結晶化できることを示した。
【0063】
従って本発明の更なる局面は、様々な分子量のイヌリン混合物の分画方法を提供する。この方法は、溶解したイヌリンと希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移点
あり、高分子量のイヌリン画分を得た後のイヌリン溶液からエプシロン・イヌリン(eIN)を得、さらに低分子量のイヌリン画分を得る方法を提供する。
【0064】
あるエプシロン多形形態のイヌリンが大部分を占める前駆体調製物から、十分に精製されたイヌリンであって、そのイヌリン精製物が水またはエタノールのような溶媒中のスラリーを加熱し調製された前駆体のエプシロン・イヌリン(eIN)を溶解し、その後アルファ・イヌリン(aIN),ベータ・イヌリン(bIN),ガンマ・イヌリン(gIN)あるいはデルタ・イヌリン(dIN)のうち一つあるいはそれ以上のイヌリンを沈殿させることにより調製したものを提供する。
【0065】
本発明の更なる局面は、エプシロン多形形態のイヌリン懸濁液中のイヌリンの存在や濃度を測定する方法であって、その方法が希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移点を測定する方法を提供する。
【0066】
本発明の更なる局面は、放射線や化学療法による免疫抑制を治療または予防する方法であって、その方法が第1または第2態様に基づく組成物の有効量を投与する方法を提供する。
【0067】
以下、本発明の範囲を限定するものとは決して解釈されるべきではない実施例と付随する図により本発明を説明する。
【実施例】
【実施例1】
【0068】
−エプシロン・イヌリンの同定
材料と方法
ガラスの試験管に7mlの112mg/mlの濃度のdIN懸濁液を入れウォーターバスで段階的に図1中の■で示した温度に加熱した(徐々に加熱とは1分間に約1℃上昇させることであり、図中に示した温度でそれぞれ5分間平衡化した)。平衡化後0.5mlのサンプルを採取後ただちに遠心分離し、上精中の濃度を決定した。急速加熱では、ガラスの試験管に入れた20℃の1.0mlのdIN水溶液を、いくつかの温度のウォーターバスに5分間浸し(急速に加熱)、同様に測定した。
【0069】
結果
急速に加熱した場合、上精中の濃度は70−72℃まで直線的に上昇し、イヌリンは完全に溶解し溶液は無色となった。
【0070】
徐々に加熱した場合、dINは約65℃まで急速に加熱した場合と同様に溶解した(図1)。驚いたことに65−70℃ではペースト状の沈殿が生じ75℃まで溶解せず、高温では溶解度の直線からかい離した(図1)。この結果は、懸濁液を65℃以上まで徐々に加熱すると新たなイヌリンの形態を生じることを予期せず示した。この沈殿はエプシロン・イヌリン(eIN)と命名された。その後の研究によりeINがイヌリンの新規の多形形態でありユニークな特性により他の形態と容易に区別できることが確認された。
【0071】
外観は、gINとdINが乳白色で自然沈降性があるのに対し、最初にdINを加熱して得たeINは灰色がかったペースト状で粘度のあるものであった。このようなeINの透過型電子顕微鏡(TEM)観察によるとeIN粒子は前駆体であるgINやdIN粒子と同様の大きさであるがより低密度であり、gINやdINからイヌリンの一部が除かれたか濾されたことを示唆した。しかしながら、eINを溶解し(図9および12に示すように)再結晶化すると粒子の懸濁液は、他の多形形態のイヌリンと同様のミルク様の外観を示した。
【実施例2】
【0072】
−eINの測定
イヌリンのアルファ、ベータ、ガンマおよびデルタ多形形態は、それぞれの希薄懸濁液(05mg/ml以下)の濁度変化のより測定される温度依存性溶解度に基づき容易に同定および測定可能である。このような希薄懸濁液を段階的に加熱してゆくと、濁度(700nmにおける吸光度(OD700))は一定の間安定しているが臨界温度で突然低下し、このことはバッチ間で再現性があり、精製された各多形形態それぞれに特徴的である。従って50%OD700熱転移点は、各多形形態を特徴づけるパラメーターとなる。本実施例ではeINの50%OD700熱転移点を測定した。
【0073】
材料と方法
1種類のdINと3種類のeINサンプルについて以下の通り測定した。各サンプルを5mlのPBSで0.5mg/mlに希釈した。ガラスの試験管に入れた希釈されたサンプルを一緒に22℃から段階的にウォーターバスで加熱(あらかじめ決めた温度に設定し5−10分かけて平衡化した)し、各サンプルのOD700を測定した。その後試験管をウォーターバス戻し次に高い温度に移した。
【0074】
結果
eINの場合、50%OD700熱転移点は59−68℃であった(図2)。このことによりeINはgIN(50%OD700熱転移点47−48℃、図3および4)、dIN(50%OD700熱転移点53−58℃、図4)あるいは様々なアルファおよびベータ・イヌリン(50%OD700熱転移点10−40℃、図3)と識別できる。図2−4は、dINとeINの希薄懸濁液の溶解度が明らかに異なる温度は58−60℃であり、この温度でdINは溶解しeINは不溶性のままである(図13も参照されたい)。この様に59℃に加温して不溶性のイヌリン(すなわちeIN)と溶解したイヌリン(すなわち非eIN)のパーセンテージを測定することにより、未知の希薄懸濁液中のeINの含量を推定することが可能である。
【実施例3】
【0075】
−eINの調製
材料と方法
1.エプシロン・イヌリンは濃縮されたdIN懸濁液を適温で加熱することにより調製可能である。図5はdINからeINを調製するための最適温度(60−68℃)そしてaINからgINを調製するための最適温度(44−45℃)およびgINからdINを調製するための最適温度(53−55℃)を示した図である。
【0076】
図5に示された最適温度は、1mlの各イヌリン調製物(約100mg/ml)を様々な温度で20分間加熱し、0.1mlのサンプルをガラス試験管内で5mlのPBSで希釈した。これらの試料をウォーターバスで10分間それぞれ40℃(gIN)、49℃(dIN)、または60℃(eIN)で加熱後OD700を測定した(値は得られた最高のOD値に対するパーセンテージで表した)。
【0077】
2.eINはまた、好ましい重合度を持つイヌリン粉末(例えばダリアやチコリの根から抽出されたイヌリン)を80℃に加熱し完全に水に高濃度で溶解したものを50−85℃、より好ましくは、50−65℃に最低15分から2時間あるいはそれ以上の間維持することによっても調製できる。この時eINは溶液から白色の沈殿として生じる。
【0078】
結果
図6は、本実施例の前半に記載した方法によるeINへの転換率を示す。図は特に、66℃におけるdINからeINへの転換率を示す。転換は最適温度では10−15分で50%完了し、80−90分後には大部分が転換した。図7はgINとdINが最適温度でほぼ同様な転換率を持つことを示す。各多形形態の収量は、各々の多形形態が由来するものの65−80%であり(図8)、この事は転換過程が原料中に存在する分子集団中の微量な成分を選択しているのではなく、むしろ全分子集団中の主要な成分をより熱安定的な型に再編成している事を示す。図9および10は、ある温度に保たれたイヌリン溶液から再結晶化された特定のイヌリン多形形態が、温度依存的であり、各多形形態の収量は、熱変換で見られたもの(図8)と同様のパターンであることを示す。この様にeINは、50℃以上の温度で沈殿し易い。
【実施例4】
【0079】
−eINの可逆性
既知の4つの多形形態のイヌリンは、高温の水で再溶解し、より低い温度で再結晶化することで、各多形形態が由来する以前の多形形態に変換でき、更に適当な温度処理によりベータ型→アルファ型→ガンマ型→デルタ型と変換できる。この事は図11に示されており、ここではdINを80℃で溶解した後、5℃または37℃で再結晶化し典型的なaINとgIN温度溶解度曲線を得た。さらにgINを56℃に保持する事により典型的なdIN温度溶解度曲線を得た。本実施例ではeIN再変換能について検討した。
【0080】
材料と方法
エプシロン・イヌリンを80℃で溶解し、より低い温度で再結晶化し徐々に高温で処理を行った。
【0081】
図12に示すように、この過程でaIN、gIN、dINそして最後にeINが再び得られた。このように、eINもまた再溶解と再結晶が可能である事が示された。しかしながらこの実験で、eIN溶液から5℃で再結晶化したものは典型的なaINの特徴を持つが、37℃で再結晶化したものはgINよりdINに近い熱転移点を示した。この様にeINの形成は可逆的であるが、粗製イヌリンが使われた場合、eINを可溶化後再結晶化する際、通常の至適形成温度より低い温度でイヌリンの多形形態が形成される傾向がある。この事は、各イヌリン多形形態の至適形成温度は、必ずしも一定ではなく、製造に使用されるイヌリンのDPにより変化することを示す。従って本実施例で使用したもの(平均DPが27)より高いDPの原料が使用される場合、gINおよびdINは漸次より低い温度で形成されるであろう。よって、eINの一つの使用法は、イヌリンの分画を得ることであり、より簡便に高収率でgINおよびdINを得るのに用いることができる。
【実施例5】
【0082】
−eINの識別特性
既知の4つの多形形態のイヌリンは、各々の希薄懸濁液の濁度により熱転移点を測定することで識別でき、この事は上述の通りeINにもあてはまる。さらに、熱変換または直接結晶化する場合、形成温度でeINを他の多形形態から識別できることもすでに示した。しかしながら、濁度の変化は様々な多形形態の特徴や特性の中の一つに過ぎない。本実施例では、eINを他の多形形態のイヌリンから識別する他の物理的パラメーターを検討した。
【0083】
材料と方法
1.イヌリンの水に対する溶解度
dINとeINの溶解度は、様々な温度で平衡化しながら比較した。水に懸濁したdIN(112mg/ml)とeIN(45−74mg/ml)のサンプル(0.5ml)を1.5mlのエッペンドルフ・チューブに入れそれぞれの測定温度のウォーターバスに15分間完全に沈めた後、ただちに遠心分離し上精の屈折度を測定した。
【0084】
2.イヌリンのジメチルスルホキシドに対する溶解度
50μlの精製されたgIN,dINおよびeIN(PBS中で50mg/ml)サンプルと450μlのジメチルスルホキシド(DMSO)水溶液を混合し同一の最終濃度となるようにした。水とDMSOの混合により熱を生じるのでDMSOの希釈は、アイスバス中でガラスの試験管を用いて行った。5分後試験管を25℃のウォーターバスに15分間置きその後氷に戻し、氷冷したPBS(4.5ml)を加え25℃のウォーターバスに15分間置きOD700を測定した。
【0085】
結果
dINとeINはそれぞれの測定温度で水に対して異なる溶解度を示したが、変化は直線的であり濃度の影響は少なかった(図13)。直線的な部分を延長してX軸と交差する点すなわち溶解度0となる温度は、50%OD700熱転移点と近似していた。カーブはほぼ完全溶解まで続いた。72℃(dIN)または75℃(eIN)以上でそれぞれほぼ完全に溶解した。ガンマ・イヌリンもほぼ同様な挙動を示し、X軸と交差する点が47℃で溶解点が65℃であった(データは示していない)。この様な特徴的な溶解性もまた多形形態の識別に使え、60−65℃で何度か洗浄することで大きな損失無くeINを下位の多形形態のものから選択可能である。
【0086】
水溶性の溶媒であるDMSOは、水系中で電媒常数を上昇させることが知られており、このことで水素結合を大いに弱める。イヌリンの水懸濁液は、0℃に至るまでDMSOに完全に溶解性であり、その後もし水で希釈しても溶解したままであるがエタノールで再沈殿することができる。細かなDMSO濃度の差で溶解度を比較すると(図14)、gIN,dINおよびeINは、それぞれ溶解が始まる時に異なる臨界DMSO濃度を示した。特にgINは最も容易にDMSOに溶解し、eINは最も難溶であり、水素結合の強さは、ベータ→アルファ→ガンマ→デルタ→エプシロンの順に強いことを示唆した。
【実施例6】
【0087】
−eINの用法
既知の四つの多形形態の内の二つ、すなわちgINとdINは免疫学的に活性であり特に同時に投与された抗原に特異的な抗体を誘導する(つまりアジュバント効果がある)ことが解った。本実施例では、eINもまた同様な免疫学的活性を持つか否か検討した。
【0088】
材料と方法
eINにアジュバント活性があるか調べるために、Balb/cマウスをB型肝炎表面抗原(HBs抗原)単独あるいはeINまたはdINと共に免疫した。
【0089】
結果
実験結果は図15に示す。eINをHBs抗原に添加すると抗HBs抗体の産生を有意に促進し、抗体価の幾何平均値および最小防御抗体価を10mIU/mlとした場合の抗体陽転率の両者ともに上昇する事が判明した。同じ量を使用した場合eINはdINより効果がある事も判明した。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のエプシロン・イヌリン(eIN)およびeINを含む組成物は、ワクチンのアジュバントとしてあるいは免疫を刺激または促進する用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1はdIN懸濁液を徐々に加熱した場合(■)と急速に加熱した場合(○)のeIN生成率を示した図である。
【図2】図2はdINとeINの熱転移吸光度を比較した図である。ガラス管に入った5mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁されたそれぞれのサンプル(0.5mg/ml)をウォーターバスで加熱した。それぞれのOD700(700nmにおける吸光度)値は各温度で平衡化した後測定した。
【図3】図3はaIN,bINおよびgINの熱転移吸光度を示した図である。ガラス管に入った5mlのそれぞれのサンプル(0.5mg/ml)をウォーターバスで加熱した。それぞれのOD700値は各温度で平衡化した後測定した。記号:+,4種類のgINバッチ;△,▲,□,aINs;○,bIN(Cooer,PD and EJ Steele,1991より引用)。
【図4】図4は2種類のdINバッチと同じ材料から調製したgINの熱転移吸光度を示した図である。それぞれのOD700値は各温度で平衡化した後測定した(WO2006/024100より引用)。
【図5】図5はaIN,gINまたはdINからそれぞれgIN,dINおよびeINを調製するための最適温度を示した図である。値はOD700の最高値に対するパーセンテージで表している。
【図6】図6は66℃という最適温度におけるdINからeINへの転換率を示した図である。dIN懸濁液(5ml,50mg/ml)をウォーターバスで66℃に加熱後一定間隔でサンプルを採取し5mlのPBSに0.5mg/mlとなるように希釈した。すべてのサンプルはその後eINのアッセイのため60℃で10分間加熱した。
【図7】図7はaINまたはgINからそれぞれgINおよびdINへの転換率をそれぞれの最適温度(45℃および55℃)で示した図である。aINまたはgIN懸濁液(5ml,50mg/ml)をウォーターバスで45℃または55℃に加熱後一定間隔でサンプルを採取し5mlのPBSに0.5mg/mlとなるように希釈した。すべてのサンプルはその後gINおよびdINのアッセイのため37℃または50℃で10分間加熱した。
【図8】図8は無精製イヌリンから得られるaIN,dIN,gINおよびeINの典型的な収量を示した棒グラフである。粗イヌリンを130mg/mlの濃度で水に溶解し5℃で1週間以上aINを結晶化させ、その後gIN(45℃),dIN(55℃)そしてeIN(66℃)を得た。各段階の上精の屈折率を不溶性画分を評価するために測定した。「水溶性」イヌリンは、最初の結晶化段階でaINとならなかったものの量である。
【図9】図9は様々な温度でイヌリン溶液をインキュベートした場合の様々な多形形態の粒子状イヌリンの収量を示したものである。イオン交換および滅菌フィルターを通過させた粗イヌリン溶液を100mg/mlに調整し、示された温度のウォーターバスまたは部屋に3週間置いた。7日毎に上精の屈折率を測定し、沈殿したイヌリンのパーセンテージを計算した。
【図10】図10は各懸濁液の3週間目の熱転移吸光度を示す。氷上に置かれた5mlのリン酸緩衝生理食塩液(PBS)に希釈(0.5mg/ml)された、各未分画懸濁液を含むガラスの試験管を一緒にウォーターバスで加熱した。それぞれの温度で平衡化した後、各サンプルのOD700を測定し、0℃におけるOD700値のパーセンテージで表した。
【図11】図11はdINの可逆性を示した図である。3種類のイヌリンサンプル(dINを溶解後それぞれ5℃または37℃で結晶化もしくは37℃の後56℃に加温した)をPBSで0.5mg/mlに希釈し、図に示した温度にウォーターバスで段階的に加熱し平衡化した後吸光度を測定した(WO2006/024100より引用)。
【図12】図12はeINの可逆性を示した図である。eINサンプルを80℃で溶解後5℃,37℃または50℃で結晶化した。50℃サンプルの半量は66℃で2時間加熱し再びeINに変換した。
【図13】図13はdINとeINの溶解度を示した図である。0.5mlのdIN(112mg/ml)およびeIN(45−74mg/ml)サンプルを1.5mlのエッペンドルフ チューブに入れ、15分間ウォーターバスに完全に沈めた後素早く遠心分離し上精の屈折率を測定した。
【図14】図14は3種類の多形形態のイヌリンのジメチルスルホキシド(DMSO)に対する溶解度を示した図である。50μlの精製されたgIN,dINおよびeIN(PBS中で50mg/ml)サンプルと450μlのDMSOを混合した。
【図15】図15はdINより優れたeINのアジュバント能を示した棒グラフである。1群10匹の35日齢のBalb/cマウスに0.2mgのdINまたはeINをアジュバントとして添加した0.5μgのB型肝炎表面抗原(HBsAg)を一回筋注した。3週間後マウスから採血し抗HBs抗体価をAUSAB▲R▼アッセイ(Abbott Laboratories Inc,Abbott Park,IL,United States of America)で測定した。(A)eINをアジュバントとして添加したHBsAgを接種したマウスは統計学的に有意(p<0.05)に高い抗体価を得た。(B)eINをアジュバントとして添加したHBsAgを接種したすべてのマウスがB型肝炎ウイルスに対する、10mIU/mlの抗体価を陽性のカットオフ値とした感染防御抗体価を得たが、dINをアジュバントとして添加したHBsAgを接種した群では60%のマウスのみが感染防御抗体価を得た(p<0.05、Fisher exact test)。
【符号の説明】
【0091】
[図1](■):徐々に加熱した場合、(○)急速に加熱した場合。
[図2](●):dINロットPCSP5.3、(□):eINロットPCSP2.2、(△):eINロットPCSP3.2、(×):eINロットPCSP4.2。
[図3](+):4種類のgINロット、(△,▲,□):aINs、(○):bIN。
[図4](■):gINロット3、(□):dINロット3、(▲):gINロット4、(△):dINロット4。
[図5](●):アルファからガンマ、(■):ガンマからデルタ、(□):デルタからエプシロン。
[図7](●):gINからdIN、(○):aINからgIN。
[図9](▲):5℃で結晶化、(△):22℃で結晶化、(■):37℃で結晶化、(□):52℃で結晶化。
[図10](▲):5℃で結晶化、(△):22℃で結晶化、(■):37℃で結晶化、(□):52℃で結晶化。
[図11](■):5℃で結晶化、(○):37℃で結晶化、(△):37℃の後56℃に加温。
[図12](◇):5℃、(□):37℃、(△):50℃(●):50℃から66℃。
[図13](○):eINロットPCSP2、(□):eINロットPCSP3、(△):eINロットPCSP4、(■):dIN。
[図14](■):gIN、(□):dIN、(△):eIN。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
十分に精製されたイヌリンであって、希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移点
【請求項2】
のイヌリン粒子から成る薬理学的または免疫学的組成物。
【請求項3】
eIN粒子の直径が約100nmから約10μmを有する請求項2記載の組成物。
【請求項4】
抗原を結合するキャリアが水酸化アルミ(アラム)ゲル、リン酸アルミゲルおよびリン酸カルシウムルのうち少なくとも一つを含む、請求項2または3記載の組成物。
【請求項5】
活性成分がワクチン抗原、抗原ペプチドまたは抗体のうち少なくとも一つを含む、請求項2〜4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
免疫調節剤がリンフォカイン、サイトカイン、胸腺細胞刺激因子、単核球またはマクロファージ刺激因子あるいはエンドトキシンのうち少なくとも一つを含む、請求項2〜5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の調製物または請求項2〜6のいずれか一項記載の組成物の有効量を投与することによる感染症、自己免疫病、免疫不全症、悪性新生物、退行性あるいは加齢性の疾患の予防や治療を目的とした、免疫応答を刺激するための方法。
【請求項8】
請求項1に記載の調製物または請求項2〜6のいずれか一項記載の組成物の有効量を投与することによる感染症、自己免疫病、免疫不全症、悪性新生物、退行性あるいは加齢性の疾患の予防や治療を目的とした、免疫応答を促進するための方法。
【請求項9】
のイヌリンを調整する方法であって、ガンマ・イヌリン(gIN)および/またはデルタ・イヌリ
【請求項10】
のイヌリンを調整する方法であって、10mg/mlまたはそれ以上の濃度のイヌリン溶液を約50℃から約85℃の範囲の温度で、最低15分から2週間もしくはそれ以上維持する方法。
【請求項11】
多形形態のイヌリン混合物の分画方法であって、溶解したイヌリンと希薄懸濁液(<0.5
懸濁液から沈殿させる方法であり、高分子量のイヌリン画分を得た後のイヌリン溶液からエプシロン・イヌリン(eIN)を得、さらに低分子量のイヌリン画分を得る方法。
【請求項12】
のイヌリンが大部分を占める前駆体調製物から十分に精製されたイヌリンであって、そのイヌリン精製物が水またはエタノールのような溶媒中のスラリーを加熱し調製された前駆体のエプシロン・イヌリン(eIN)を溶解し、その後アルファ・イヌリン(aIN)、ベータ・イヌリン(bIN)、ガンマ・イヌリン(gIN)あるいはデルタ・イヌリン(dIN)のうち少なくとも一つのイヌリンを沈殿させることにより調製されたもの。
【請求項13】
エプシロン多形形態のイヌリン懸濁液中のイヌリンの存在や濃度を測定する方法であって、その方法が希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移点を測定する方法。
【請求項14】
放射線や化学療法による免疫抑制を治療または予防する方法であって、その方法が請求項1に記載の調製物または請求項2〜6のいずれか一項記載の組成物の有効量を投与する方法。
【請求項1】
十分に精製されたイヌリンであって、希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移点
【請求項2】
のイヌリン粒子から成る薬理学的または免疫学的組成物。
【請求項3】
eIN粒子の直径が約100nmから約10μmを有する請求項2記載の組成物。
【請求項4】
抗原を結合するキャリアが水酸化アルミ(アラム)ゲル、リン酸アルミゲルおよびリン酸カルシウムルのうち少なくとも一つを含む、請求項2または3記載の組成物。
【請求項5】
活性成分がワクチン抗原、抗原ペプチドまたは抗体のうち少なくとも一つを含む、請求項2〜4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
免疫調節剤がリンフォカイン、サイトカイン、胸腺細胞刺激因子、単核球またはマクロファージ刺激因子あるいはエンドトキシンのうち少なくとも一つを含む、請求項2〜5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の調製物または請求項2〜6のいずれか一項記載の組成物の有効量を投与することによる感染症、自己免疫病、免疫不全症、悪性新生物、退行性あるいは加齢性の疾患の予防や治療を目的とした、免疫応答を刺激するための方法。
【請求項8】
請求項1に記載の調製物または請求項2〜6のいずれか一項記載の組成物の有効量を投与することによる感染症、自己免疫病、免疫不全症、悪性新生物、退行性あるいは加齢性の疾患の予防や治療を目的とした、免疫応答を促進するための方法。
【請求項9】
のイヌリンを調整する方法であって、ガンマ・イヌリン(gIN)および/またはデルタ・イヌリ
【請求項10】
のイヌリンを調整する方法であって、10mg/mlまたはそれ以上の濃度のイヌリン溶液を約50℃から約85℃の範囲の温度で、最低15分から2週間もしくはそれ以上維持する方法。
【請求項11】
多形形態のイヌリン混合物の分画方法であって、溶解したイヌリンと希薄懸濁液(<0.5
懸濁液から沈殿させる方法であり、高分子量のイヌリン画分を得た後のイヌリン溶液からエプシロン・イヌリン(eIN)を得、さらに低分子量のイヌリン画分を得る方法。
【請求項12】
のイヌリンが大部分を占める前駆体調製物から十分に精製されたイヌリンであって、そのイヌリン精製物が水またはエタノールのような溶媒中のスラリーを加熱し調製された前駆体のエプシロン・イヌリン(eIN)を溶解し、その後アルファ・イヌリン(aIN)、ベータ・イヌリン(bIN)、ガンマ・イヌリン(gIN)あるいはデルタ・イヌリン(dIN)のうち少なくとも一つのイヌリンを沈殿させることにより調製されたもの。
【請求項13】
エプシロン多形形態のイヌリン懸濁液中のイヌリンの存在や濃度を測定する方法であって、その方法が希薄懸濁液(<0.5mg/ml)の50%OD700熱転移点を測定する方法。
【請求項14】
放射線や化学療法による免疫抑制を治療または予防する方法であって、その方法が請求項1に記載の調製物または請求項2〜6のいずれか一項記載の組成物の有効量を投与する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【公表番号】特表2013−505302(P2013−505302A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529068(P2012−529068)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001221
【国際公開番号】WO2011/032229
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(511246474)ヴァクシン プロプライエトリー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001221
【国際公開番号】WO2011/032229
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(511246474)ヴァクシン プロプライエトリー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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