説明

イミダゾール−5−カルボン酸系誘導体、製造方法及びその応用

本発明は、イミダゾール−5−カルボン酸系誘導体およびその製造方法を開示する。本発明に係る誘導体はアンジオテンシンII受容体の拮抗剤であり、強力なアンジオテンシンII拮抗活性と抗高血圧活性を有するため、高血圧治療剤として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
技術分野
本発明は、イミダゾール−5−カルボン酸系誘導体、その製造方法および該誘導体の抗高血圧薬としての応用に関する。
【0002】
背景技術
アンジオテンシンIIは、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の主要な血管収縮ホルモンであり、多くの慢性疾患の病理生理学において重要な役割を果たす。アンジオテンシンIIは、多くの組織に存在し、主としてアンジオテンシノゲンがレニンの作用により血管収縮作用の弱いデカペプチドのアンジオテンシンI(AngI)に変換され、さらにアンジオテンシン変換酵素によりオクタペプチドのアンジオテンシンII(AngII)に変換されるという経路により生成される。アンジオテンシンIIは、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の最終的な生理活性物質であって、特異的なアンジオテンシンII(AngII)受容体に結合することにより、血管収縮や血圧上昇などの生理作用を示す。
【0003】
EP0253310には一連のイミダゾール誘導体が開示されている。アメリカのデュポン社は検討した結果、コード番号DUP753の化合物が優れた降圧作用を有することを発現し、そして1994年に市販の許可を得て、最初の非ペプチド系AngII受容体拮抗剤であるロサルタンカリウムとなった。ロサルタンカリウムは、アンジオテンシンIIの血管平滑筋のI型受容体への作用を選択的に遮断して血管収縮を抑制することにより、血管拡張や血圧降下という作用を発揮する。
【0004】
ロサルタンカリウムの開発、市販に伴い、各医薬品研究開発機構及び会社はAngII受容体拮抗剤の構造学の研究が続々と展開された。US5196444には、アンジオテンシンII拮抗活性と抗高血圧活性を有するため、高血圧の治療に用いることができる、一連のベンゾイミダゾール誘導体およびその製造方法が開示されている。その中に、日本武田社により開発されたカンデサルタン・シレキセチルが1997年に市販され、体内でエステル基を除き、加水分解によりその活性代謝物を生成して、降圧作用を発揮する。
【0005】
US5616599にはロサルタンの構造と類似する一連の1−ビフェニルメチルイミダゾール誘導体が開示されており、その構造において一番の違いは、ロサルタンのイミダゾール環における4位のクロロ原子が1−ヒドロキシ−1−メチルエチルに、5位がカルボキシル基、水酸基、前駆体構造であるエステル又はアミドに変換されることにあり、優れた降圧作用を有することが証明されたため、日本三共社はオルメサルタンを開発して市販した。
【0006】
ロサルタンは後で市販された他のAngII受容体拮抗剤と比べて、耐性に優れ、副作用が少なく、咳や水腫を引き起こすことが少ない。研究によると、さらに血尿酸、TC、TGを降下する作用を有し、高インスリン血症患者のインスリン感受性、インスリン分泌、糖耐性に悪い影響を与えることなく、安全な抗高血圧薬であることが示唆されている。但し、ロサルタンカリウムは、体内で14%だけがその活性代謝物であるEXP3174に代謝され、ロサルタンカリウム自身も比較的に強い降圧能力を有するものの、EXP3174の降圧能力の3%しか及ばない。EXP3174の分子構造の極性が大きいため、拡散などの受動吸収の様態により細胞膜を通ることが困難で、構造改造によりその受動吸収を改善することが必要である。
【0007】
アメリカ特許US5298519にはEXP3174の5位カルボキシル基がエステル化された生成物が開示されており、化合物HN−65021について重点的に研究し、且つHN−65021経口投与の血圧降下の試験結果を公開し、該化合物の降圧活性がロサルタンに類似することが分かられた(British Journal of Clinical Pharmacology, 40,1995,591-593)。ロサルタン構造改造の方向の一つは、EXP3174分子におけるイミダゾール環5位のカルボキシル基を極性の若干小さい基に改造することにあることが表明された。降圧の薬理作用がさらに優れた活性化合物を得るためには、EXP3174分子に対して構造改造をする必要がある。
【0008】
以上のように、本技術分野では、優れた降圧効果を有し、高い吸収転化の効率が及び/又は優れた安全性を持つ活性化合物の開発が切望されている。
【0009】
発明の内容
本発明は、式(I)の化合物、或はその薬学的に許容される塩又はその溶媒化物を提供する。
【化12】

ここで、Rは、直鎖又は分岐のC1−4アルキル基から選ばれ、或いは、
【化13】

であり、ここで、R1、R2、R3は、それぞれ独立的に水素、直鎖又は分岐のC1−4アルキル基、C3−7シクロアルキル基からなる群から選ばれ、
且つ、前記R、R1、R2及びR3に定義されたアルキル基又はシクロアルキル基は、未置換で、またはF、Cl、Br、NH2及びOHからなる群から選ばれる1〜3個の置換基で置換されている。
【0010】
本発明の好ましい形態では、Rは直鎖又は分岐のC1−4アルキル基から選ばれ、エチル基が好ましい。
【0011】
本発明の好ましい形態では、Rは
【化14】

であり、ここで、R1は、水素、直鎖又は分岐のC1−4アルキル基、C3−7シクロアルキル基からなる群から選ばれる。直鎖又は分岐のC1−4アルキル基がより好ましく、直鎖又は分岐のブチル基が最も好ましい。
【0012】
本発明の好ましい形態では、Rは
【化15】

であり、ここで、R2は、水素、直鎖又は分岐のC1−4アルキル基、C3−7シクロアルキル基からなる群から選ばれ、直鎖又は分岐のC2−4アルキル基がより好ましく、エチル基、イソプロピル基又はt−ブチル基が最も好ましい。
【0013】
本発明の別の好ましい形態では、Rは
【化16】

であり、ここで、R3は、水素、直鎖又は分岐のC1−4アルキル基、C3−7シクロアルキル基からなる群から選ばれ、直鎖又は分岐鎖のC3−4アルキル基がより好ましく、具体的には、イソプロピル基、t−ブチル基、又はシクロヘキシル基が最も好ましい。
【0014】
本発明の以上の説明において、直鎖又は分岐のC1−4アルキル基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基又はt−ブチル基を指し、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基又はt−ブチル基が好ましい。C3−7シクロアルキル基とは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基を指し、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましく、シクロヘキシル基がより好ましい。
【0015】
本発明では、具体的に、好ましい化合物は、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸エチルエステル、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,2−ベンゾ[C]フラノニルエステル、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,シクロ2,3−カーボネートエステル、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,トリメチルアセトキシメチルエステル、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(イソプロポキシ)カルボニル]エトキシエステル、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(t−ブトキシ)カルボニル]エトキシエステル、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(シクロヘキシルオキシ)カルボニル]エトキシエステル、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(イソプロポキシ)カルボニル]メトキシエステル、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(エトキシ)カルボニル]メトキシエステル、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(t−ブトキシ)カルボニル]メトキシエステル
がある。
【0016】
また、本発明は、0.05〜50mgの前記式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有する薬物組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、アンジオテンシンIIのI型受容体を抑制することにより軽減又は治療され得る疾患を治療する方法であって、治療を要する患者に式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を0.05〜30mg/kg体重/日で投与することを含む疾患の治療方法を提供する。別の好ましい例では、前記疾患が高血圧である。
【0018】
さらに、本発明は、(a)ロサルタンカリウムを2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸に酸化させる工程、
【化17】

(b)工程(a)で得られた酸化生成物をトリフェニルクロロメタンと反応させ、2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1−トリフェニルメチル−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸を得る工程、
【化18】

(c1)アルカリ条件で、工程(b)で得られた生成物を一般式X−Rで表される化合物と反応させ(式中、Xはハロゲンであり、Rは
【化19】

を表し、ここで、R1、R2、R3は、それぞれ独立的に水素、直鎖又は分岐のC1−4アルキル基、C3−7シクロアルキル基からなる群から選ばれる)、
【化20】

エステル化中間体を得た後、保護基であるトリフェニルメチル基を脱離させて式Iの化合物を形成する工程、
【化21】

或いは、
(c2)Rが直鎖又は分岐のC1−4アルキル基から選ばれる場合には、工程(b)で得られた生成物を酸触媒の存在下で有機アルコールROH(ここで、Rは前記と同様の定義である)と還流反応させ、式Iの化合物を形成する工程
【化22】

を含む式Iの化合物を製造する方法が提供する。
【0019】
具体的には、本発明はさらに前記一般式(I)の化合物の製造方法を提供し、
【化23】

Rが直鎖又は分岐のC1−4アルキル基から選ばれる場合には、以下の方法により製造することができる。即ち、
a.ロサルタンカリウムをKMnO4のような酸化剤の存在下で2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸に酸化させ、
【化24】

b.前記酸化生成物をトリフェニルクロロメタンと反応させ、2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1−トリフェニルメチル−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸を得て、
【化25】

c.前記のbで得られた生成物に有機アルコールROH(ここで、Rは前記と同様の定義である)と酸触媒(p−トルエンスルホン酸のような有機酸又は塩酸、硫酸、リン酸のような無機酸)を添加して還流反応させ、抽出、濃縮した後、最終産物を得る。
【化26】

本発明にかかる他の化合物は以下の方法により製造することができる。即ち、
a.ロサルタンカリウムをKMnO4のような酸化剤の存在下で2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸に酸化させ、
【化27】

b.前記酸化生成物をトリフェニルクロロメタンと反応させ、2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1−トリフェニルメチル−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸を得て、
【化28】

c.アルカリ条件(例えば、炭酸カリウムとN,N−ジメチルアセトアミド(DME)又はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の体系の条件)で、前記bで得られた生成物を一般式X−Rで表される化合物と反応させ、エステル化中間体を得る。ここで、Xはハロゲンを表し、好ましくはF、Cl、Brであり、Rは、
【化29】

を表し、ここで、R1、R2、R3は、それぞれ独立的に水素、直鎖又は分岐のC1−4アルキル基、C3−7シクロアルキル基からなる群から選ばれる。
【0020】
d.cで得られたエステル化中間体を酸又はアルコール類(例えばメタノール、エタノール)の存在下で保護基であるトリフェニルメチル基を脱離させ、精製して最終産物を得る。
【化30】

前記の製造フローにおいて、各反応は、−10℃〜還流温度で行われ、通常、室温(約25℃)〜還流温度で行われる。反応温度は5〜100℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。反応時間は通常特に限定されないが、通常1分〜24時間で、1〜20時間が好ましい。ここで、使用される溶媒は、通常、不活性溶媒であり、例えば、水、DMF、アルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等)。
【0021】
本発明により得られる化合物は、経口投与、直腸投与、非経口的(静脈内、筋肉内又は皮下)投与、局所投与(粉剤、軟膏剤又は点滴剤)により人に投与することができる。前記化合物は単独でまたは他の薬学的に許容される化合物と合わせて投与してもよい。なお、本発明の化合物は混合して投与してもよい。
【0022】
経口投与用固体剤型にはカプセル剤、タブレット剤、丸剤、散剤、及び顆粒剤が含まれる。これらの固体剤型において、活性化合物と、少なくとも1種のクエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムのような通常の不活性賦形剤(又は担体)とを混合し、又は(a)でん粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、珪酸のようなフィラー又は増容剤、(b)ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、アラビアゴムのようなバインダー、(c)グリセリンのような保湿剤、(d)寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯でん粉、キャッサバでん粉、アルギン酸、ある複合珪酸塩、及び炭酸ナトリウムのような崩壊剤、(e)パラフィンのような緩慢溶解剤、(f)第4級アンモニウム化合物のような吸収促進剤、(g)セチルアルコールやモノステアリン酸グリセリンのような湿潤剤、(h)カオリンのような吸着剤、および(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム又はその混合物のような潤滑剤と混合する。また、カプセル剤、タブレット剤及び丸剤では、緩衝剤を含有してもよい。
【0023】
タブレット剤や、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、顆粒剤のような固体剤型は、腸衣や本分野で公知されるその他の材料などのコーティング材やシェル材で製造される。これらに不透明剤を含んでよく、且つこの組成物における活性化合物又は化合物は消化管のある部分で徐放することができる。採用し得る包埋成分の実例としては、ポリマー、ワックス類が挙げられる。必要に応じて、活性化合物は1種又は多種の前記賦形剤とマイクロカプセルを形成してもよい。
【0024】
経口投与用液体剤型には薬学的に許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ又はチンキ剤が含まれる。活性化合物の他、液体剤型には本分野で通常使用される不活性希釈剤を含有してもよい。例えば水又はその他の溶剤、可溶化剤及び乳化剤がある。例としては、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、プロピレングリコール、1,3−ブタジオール、ジメチルホルムアミド及び油、特に棉実油、落花生油、コーン油、オリーブ油、ひまし油、ゴマ油又はそれらの混合物が挙げられる。
【0025】
前記不活性希釈剤の他、組成物には湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、矯味剤、香料などの助剤を添加してもよい。
【0026】
また、活性化合物の他、懸濁液には、例えば、エトキシ化イソオクタデカノール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメトキシド、寒天又はこれらの混合物などの懸濁剤を含んでもよい。
【0027】
非経口的注射用組成物には、生理的に許容される無菌の、含水又は無水溶液、分散液、懸濁液又は乳液、及び無菌の注射可能な溶液又は分散液に再溶解するための無菌粉末が含まれる。適切な含水又は無水の担体、希釈剤、溶剤又は賦形剤としては、水、エタノール、ポリアルコール及びその適切な混合物が挙げられる。
【0028】
局所投与用の本発明の化合物の剤型には軟膏剤、散剤、スプレー剤及び吸入剤が含まれる。活性成分は無菌条件で生理的に許容される担体及び任意に防腐剤、緩衝剤、又は必要に応じて駆出剤と混合する。
【0029】
本発明において「薬学的に許容される塩」という用語は、相対的に無毒性の本発明化合物の無機酸付加塩又は有機酸付加塩を指す。これらの塩は、化合物の最終分離と精製工程において現場で製造されること、又は精製された化合物を遊離アルカリとして適切な有機酸又は無機酸と反応させ、さらに形成された塩を分離することにより製造されることができる。代表的な塩としては、臭酸塩、塩酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、硼酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トルイル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、琥珀酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、グルコン酸塩、ラクトビオン酸塩、ドデシルスルホン酸塩等が挙げられる。これらには例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムのようなアルカリ金属及びアルカリ土類金属のカチオン、及び無毒性アミン、第4級アンモニウムとアミンカチオンを含んでもよい。前記無毒性アミン、第4級アミンとアミンとしては、アミン、テトラメチルアミン、テトラエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン等を含むが、これらに限られない。
【0030】
本発明の化合物は、動物試験により血圧降下作用を有することが証明され、高血圧を治療する薬物の製造に用いることができる。本発明の化合物の降圧効果については、常法により測定することができる。好ましい評価方法の1例としては、以下の通りである。
【0031】
雌の高血圧自然発症ラット(SHR)をジアゼパン5mg/kg+塩酸ケタミン50mg/kgで腹腔内注射して麻酔した後、背位固定する。動脈管を左大腿動脈から低位腹大動脈まで挿入する。さらに、胃婁管挿入術を行い、手術後20〜30時間回復させ、動脈管を灌流三方管を介して圧力変換器に連結する。単位脈動の血圧信号を圧力変換器で生物信号に変換し、コンピュータで単位脈動の収縮圧、拡張圧をリアタイムで記録し、SHRとコンピュータシステムとが連接して4〜5時間安定化した後、1時間で血圧と心拍間隔を記録して投与前の正常対照とする。その後、投与量30mg/kg、投与容量2mL/kgで胃婁管により投与する。投与後、血圧を6時間連続して測定し、収縮圧、拡張圧の変化を観察する。
【0032】
本発明の主要な利点は、従来のAngII受容体拮抗剤と比べて、本発明の化合物は同程度の降圧効果を有する同時に、毒性がより低く、転化効率がより高いことにある。
【0033】
以下、具体的な実施例により、本発明をさらに説明する。これらの実施例は本発明を説明するためのもので、本発明の範囲を制限するものではないと理解されるべきである。以下の実施例において具体的な条件を説明しない実験方法は、一般的に通常条件、或いはメーカーの推薦条件で行われる。なお、特に説明しない限り、部は重量部で、百分率は重量百分率である。
【0034】
実施例1
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸
【化31】

2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]−5−ヒドロキシメチルイミダゾール4.57gに水10mLを加えて溶解させ、-5〜0℃に冷却し、1.58gのKMnO4の水溶液を130mL滴下した後、50℃で16時間反応させた。反応終了後、ろ過し、濾液に1mol/LのNaS23を50mL滴下し、さらに希塩酸で溶液をpH2〜3に調節し、溶液が混濁し、酢酸エチルで抽出した後、乾燥、濃縮し、石油エーテル:酢酸エチル=1:6(v/v)を移動相としてフラッシュカラムを通過させ、3.85gの白い固体を得た。収率は89.1%であった。
【0035】
1HNMR(CDCl3):δH 0.801(3H,t, J=3.6), 25(2H,m, J=3.5), 1.49(2H,m, J=5), 2.56(2H,t, J=3.5), 5.58(2H,s), 6.94-7.08(4H,m, J=5), 7.65-7.50(2H,m, J=8.5)
ESI(-):435.1
Mp:125.2-128.5℃。
【0036】
実施例2
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1−トリフェニルメチル−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸
【化32】

100mLの一口フラスコに2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸4.36g、N,N-ジメチルホルムアミド15mL、炭酸カリウム1.66gとトリフェニルクロロメタン2.78gを順次に加え、室温で一夜反応させ、反応終了後、水を100mL加え、100mLの酢酸エチルで抽出し、さらに飽和食塩水で一回洗い、有機相を乾燥し、濃縮した後、黄色油状の2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1−トリフェニルメチル−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸を7.5g得た。
【0037】
本実施例で得られた粗製品は精製せず、下記の実施例における原料とした。
【0038】
実施例3
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸エチルエステル(化合物1)
【化33】

原料678.5mgに無水エタノール15mLとp−トルエンスルホン酸(TsOH)312mgを加え、6時間還流して反応させた後、水を30mL加え、30mLのエチルエーテルで抽出し、有機相を乾燥し、濃縮した後、274mgの無色油状生産物である2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸エチルエステルを得た。収率は59%であった。
【0039】
1H-NMR(CDCl3)
δH(ppm):0.80-0.85(m,6H, J=13.6),1.26(m, 2H, J=20.2), 1.38(H,t, J=14.8), 1.58(m,2H, J=7.5), 2.69(q, 2H, J=24.5), 5.44(s, 2H), 6.94-7.50(8H), 8.10(d, 1H, J=6.14)
ESI(+)m/z: 465.1。
【0040】
実施例4
(+/−)2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,2−ベンゾ[C]フラノニルエステル(化合物2)
【化34】

原料678.5mgをN,N−ジメチルアセトアミド(DME)8mLに溶解し、炭酸カリウム0.172gと2−ベンゾ[C]フラノニルブロミド263mgを順次に加え、40〜45℃で4時間反応させた。反応終了後、水を30mL加え、25mLのエチルエーテルで2回抽出し、有機相を乾燥し、濃縮した後、エステル化中間体606.4mgを75%の収率で得た。エステル化中間体をジオキサン15mLに溶解し、4NのHClを4mL加え、室温で一夜中約16時間反応させた。反応液を水に入れ、酢酸エチルで抽出し、乾燥、濃縮した後、酢酸エチル:石油エーテル(1:2)を溶出剤としてフラッシュカラムを通過させ、(+/−)2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,2−ベンゾ[C]フラノニルエステルの精製品284.7mgを得た。収率は67%であった。
【0041】
1H-NMR(DMSO-d6)
δH(ppm) :0.88(t, 3H, J=21.6), 1.26(m, 4H, J=29.6), 1.58(m, 2H, J=30.5), 2.50(t, 2H, J=15.5), 5.34(s, 2H), 6.95-7.63(12H), 8.06(d, 2H, J=9.1)
Ms(ESI+) m/z:569.5
Mp:120.6-124.6℃。
【0042】
実施例5
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,シクロ2,3−カーボネートエステル(化合物3)
【化35】

原料616.4mgをN,N−ジメチルアセトアミド(DME)8mLに溶解し、炭酸カリウム0.169gと4−ブロモメチル−5−メチル−2,3−カーボネート257mgを順次に加え、40〜45℃で4時間反応させた。反応終了後、水30mLを加え、25mLのエチルエーテルで2回抽出し、有機相を乾燥、濃縮してエステル化中間体596.8mgを得た。エステル化中間体をジオキサン15mLに溶解し、4NのHClを4mL加え、室温で一夜中約16時間反応させた。反応液を水に入れ、酢酸エチルで抽出し、乾燥、濃縮した後、酢酸エチル:石油エーテル(1:2)を溶出剤としてフラッシュカラムを通過させ、無色油状の2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,シクロ2,3−カーボネートエステルを得た。収率は44.2%であった。
【0043】
1H-NMR(DMSO-d6)
δH(ppm) :0.89(t, 3H, J=17.5), 1.27(m, 2H, J=11.0), 1.41(m, 2H, J=9.9), 1.58(t, 2H, J=7.5), 2.08(s, 3H), 2.60(t, 2H, J=17.5), 5.25(s, 2H), 6.86-7.04(8H), 8.15(d, 1H, J=6.64)
ESI(+) m/z:549.1。
【0044】
実施例6
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,トリメチルアセトキシメチルエステル(化合物4)
【化36】

原料407.1mgにN,N−ジメチルアセトアミド(DME)5mLと炭酸カリウム0.124gを加え、常温で10分攪拌した。さらにトリメチルアセトキシクロロメタン0.18gを加え、30分攪拌し、45〜50℃に升温し、一夜中約16時間反応させ、反応過程はTLC(石油エーテル:酢酸エチル=1:1)によりモニターされた。不溶物をろ過で除去し、50mLの水を加え、白い乳状物が生成し、50mLの酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、乾燥、濃縮し、フラッシュカラムを通過させ、0.273gの中間体を得た。さらに、ジオキサン10mLを加え、4mol/Lの塩酸溶液5mLを加え、室温で16時間反応させた。反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応液をpH6〜7に調整し、混濁が見られ、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、さらに乾燥、濃縮し、0.242gの油状物である2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,トリメチルアセトキシメチルエステルを得た。
【0045】
1HNMR:(CDCl3)
δH(ppm):0.89(s,12H), 1.21(t, 3H, J=16.9), 1.32(m, 2H, J=17.5), 1.54(m, 2H,j=8.1), 4.15(s, 2H), 5.50(s, 2H), 6.82-7.43(8H), 8.17(d, 1H, J=6.8)
ESI(-) m/z:547.6。
【0046】
実施例7 イソプロピルギ酸−1−クロロエチルエステル
【化37】

クロロギ酸−1−クロロエチルエステル1.43gにイソプロパノール0.66gを加え、溶液を氷水浴で0℃に冷却し、ピリジン0.84gとエチルエーテル10mLの混合液を滴下し、定温で1時間反応させ、室温でさらに4時間反応させた。反応終了後、ろ過し、ろ液をそれぞれ10%の塩酸および水で1回洗い、有機相を乾燥、高速濃縮して淡黄色の液体であるイソプロピルギ酸−1−クロロエチルエステルの粗製品1.461gを得た。収率は87.7%であった。製品は精製せず次の反応に用いられた。
【0047】
実施例8
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(イソプロポキシ)カルボニル]エトキシエステル(化合物5)
【化38】

100mLの一口フラスコに原料0.678g、K2CO3 0.152g、N,N−ジメチルアセトアミド5mLを順次に加え、室温で20分攪拌し、室温でイソプロポキシギ酸−1−クロロエチル0.666gを加え、45〜50℃で16時間反応させた。反応終了後、ろ過し、ろ液に30mLの水を加え、30mLの酢酸エチルで2回抽出し、有機相を乾燥、濃縮した後、油状物1.831gを得た。精製せず次の反応に用いられた。
【0048】
さらにジオキサン10mL、4mol/Lの塩酸溶液5mLを加え、室温で16時間反応させた。反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応液をpH6〜7に調整し、混濁が見られた。酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、さらに乾燥、濃縮し、2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(イソプロポキシ)カルボニル]エトキシエステル0.388gを得た。
【0049】
1HNMR:(CDCl3)
δH(ppm) :0.86(t, 3H, J=12.4), 1.21(d,6H, J=22.8), 1.32(m, 2H, J=38.1), 1.54(m, 3H, J=15.7), 1.63(m, 2H, J=7.9), 2.26(m, 1H, J=16.2), 4.15(q, 1H), 5.50(s, 2H), 6.82-7.64(8H), 8.01(d, 1H, J=7.7)
ESI(-)m/z:: 556.1。
【0050】
実施例9
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(t−ブトキシ)カルボニル]エトキシエステル(化合物6)
【化39】

100mLの一口フラスコに原料0.625g、K2CO3 0.146g、N,N−ジメチルアセトアミド5mLを順次に加え、室温で20分攪拌し、室温でt−ブトキシギ酸−1−クロロエチル0.624gを加え、45〜50℃で16時間反応させた。反応終了後、ろ過し、ろ液に30mLの水を加え、30mLの酢酸エチルで2回抽出し、有機相を乾燥、濃縮した後、油状物1.561gを得た。精製せず、次の反応に用いられた。
【0051】
さらにジオキサン10mL、4mol/Lの塩酸溶液5mLを加え、室温で16時間反応させた。反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応液をpH6〜7に調整し、混濁が見られた。酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、さらに乾燥、濃縮し、2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(t−ブトキシ)カルボニル]エトキシエステル0.358gを得た。
【0052】
1HNMR:(CDCl3)
δH(ppm):0.87(s,9H, J=14.7), 1.21(t, 3H, J=22.5), 1.41(m, 2H, J=39.7), 1.59(q, 2H, J=15.6), 2.04(q, 1H), 2.66(4, 2H, J=15.7), 4.15(q, 3H, J=21.3), 5.50(s, 2H), 6.82-7.64(8H), 8.06(d, 1H, J=8.9)
ESI(-):551.3
Mp:60.5-62℃。
【0053】
実施例10
(+/−)2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(シクロヘキシルオキシ)カルボニル]エトキシエステル(化合物7)
【化40】

100mLの一口フラスコに原料0.662g、K2CO3 0.161g、N,N−ジメチルアセトアミド5mLを順次に加え、室温で20分攪拌し、室温でシクロヘキシルオキシギ酸−1−クロロエチル0.584gを加え、45〜50℃で16時間反応させた。反応終了後、ろ過し、ろ液に30mLの水を加え、30mLの酢酸エチルで2回抽出し、有機相を乾燥、濃縮した後、油状物1.456gを得た。精製せず、次の反応に用いられた。
【0054】
さらにジオキサン10mL、4mol/Lの塩酸溶液5mLを加え、室温で16時間反応させた。反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応液をpH6〜7に調整し、混濁が見られた。酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、さらに乾燥、濃縮し、2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(シクロヘキシルオキシ)カルボニル]エトキシエステル0.412gを得た。
【0055】
1HNMR:(CDCl3)
δH(ppm): 0.87(t, 3H, J=14.1), 1.2-1.6(m,15H), 1.73(m, 2H, J=7.5), 2.07(s, 1H), 2.69(t, 2H, J=13.1), 4.05(q, 3H, J=22.0), 5.54(s, 2H), 6.80-7.70(8H), 8.08(d, 1H, J=8.6)
ESI(-)m/z:: 605.7。
【0056】
実施例11 イソプロポキシギ酸クロロメチル
【化41】

クロロギ酸クロロメチル2.63gにイソプロパノール1.32gを加え、さらにエチルエーテル20mLを加え、0℃に冷却し、ピリジン1.659gをエチルエーテル10mLに溶解した溶液を滴下し、定温で1時間反応させた後、室温で5時間反応させた。反応終了後、ろ液を希塩酸と水でそれぞれ1回洗浄し、有機相を乾燥、濃縮した後、イソプロポキシギ酸クロロメチルの粗製品を得た。精製せず、次の反応に用いられた。
【0057】
実施例12
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(イソプロポキシ)カルボニル]メトキシエステル(化合物8)
【化42】

100mLの一口フラスコに原料0.523g、K2CO3 0.124g、N,N−ジメチルアセトアミド5mLを順次に加え、室温で20分攪拌し、室温でイソプロポキシギ酸クロロメチル0.562gを加え、45〜50℃で16時間反応させた。反応終了後、ろ過し、ろ液に水30mLを加え、30mLの酢酸エチルで2回抽出し、有機相を乾燥、濃縮した後、油状物1.724gを得た。精製せず、次の反応に用いられた。
【0058】
さらにジオキサン10mL、4mol/Lの塩酸溶液5mLを加え、室温で16時間反応させた。反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応液をpH6〜7に調整し、混濁が見られた。酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、さらに乾燥、濃縮し、2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(イソプロポキシ)カルボニル]メトキシエステル0.436gを得た。
【0059】
なお、脱保護基反応では、油状物1.7gに無水メタノール5mLを加え、徐々に還流まで升温し、8時間攪拌し、不溶固体が全部なくなった。加熱を停止し、5℃に冷め、白い固体が析出した。ろ過し、ケーキを少量のメタノールで洗浄し、ろ液を合わせて乾燥まで濃縮し、2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(イソプロポキシ)カルボニル]メトキシエステルを得た。収率は約70%であった。
【0060】
1HNMR:(CDCl3)
δH(ppm):0.89(t, 3H, J=14.6), 1.24(d,6H, J=6.3), 1.37(m, 2H, J=22.1), 1.69(m, 2H, J=30.5), 2.64(t, 2H, J=15.5), 4.81(m, 1H, J=12.4), 5.54(s, 2H), 5.86(s, 2H), 6.95-7.64(8H), 8.08(d, 1H, J=7.42)
ESI(+)m/z:552.7
Mp:134.5-136℃。
【0061】
実施例13
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(エトキシ)カルボニル]メトキシエステル(化合物9)
【化43】

100mLの一口フラスコに原料0.698g、K2CO3 0.162g、N,N−ジメチルアセトアミド5mLを順次に加え、室温で20分攪拌し、室温でエトキシギ酸クロロメチル0.702gを加え、45〜50℃で16時間反応させた。反応終了後、ろ過し、ろ液に水30mLを加え、30mLの酢酸エチルで2回抽出し、有機相を乾燥、濃縮した後、油状物1.854gを得た。精製せず、次の反応に用いられた。
【0062】
さらにジオキサン10mL、4mol/Lの塩酸溶液5mLを加え、室温で16時間反応させた。反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応液をpH6〜7に調整し、混濁が見られた。酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、さらに乾燥、濃縮し、2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(エトキシ)カルボニル]メトキシエステル0.420gを得た。
【0063】
1HNMR:(CDCl3)
δH(ppm):0.92(t, 3H, J=17.5), 1.23(t, 3H, J=14.0), 1.37(m, 2H, J=34.2), 1.73(m, 2H, J=30.8), 2.69(t, 2H, J=15.5), 4.13(q, 2H, J=15.7), 5.58(s, 2H), 5.89(s, 2H), 6.99-7.61(8H), 8.16(d, 1H, J=6.1)
ESI(-): 539.1
Mp:164.5-160℃。
【0064】
実施例14
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(t−ブトキシ)カルボニル]メトキシエステル(化合物10)
【化44】

100mLの一口フラスコに原料0.629g、K2CO3 0.141g、N,N−ジメチルアセトアミド5mLを順次に加え、室温で20分攪拌し、室温でt−ブトキシギ酸クロロメチル0.625gを加え、45〜50℃で16時間反応させた。反応終了後、ろ過し、ろ液に水30mLを加え、30mLの酢酸エチルで2回抽出し、有機相を乾燥、濃縮した後、油状物1.732gを得た。精製せず、次の反応に用いられた。
【0065】
さらにジオキサン10mL、4mol/Lの塩酸溶液5mLを加え、室温で16時間反応させた。反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応液をpH6〜7に調整し、混濁が見られた。酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄してから乾燥、濃縮し、2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(t−ブトキシ)カルボニル]メトキシエステル0.349gを得た。
【0066】
1HNMR:(CDCl3)
δH(ppm):0.92(t, 3H, J=17.1), 1.25(s,9H), 1.37(m, 2H, J=32.0), 1.74(m, 2H, J=29.3), 2.69(t, 2H, J=14.9), 4.13(q, 2H, J=15.5), 5.58(s, 2H), 5.88(s, 2H), 6.95-7.60(8H), 8.17(d, 1H, J=6.20)
ESI(-): 565.5。
【0067】
試験実施例1
血圧降下効果
雌の高血圧自然発症ラット(SHR)をジアゼパン5mg/kg+塩酸ケタミン50mg/kgで腹腔内注射して麻酔した後、背位固定した。動脈管を左大腿動脈から低位腹大動脈まで挿入した。さらに、胃婁管挿入術を行い、手術後20〜30時間回復させ、動脈管を灌流三方管を介して圧力変換器に連結した。単位脈動の血圧信号を圧力変換器で生物信号に変換し、コンピュータで単位脈動の収縮圧、拡張圧を実時間記録し、SHRとコンピュータシステムとが連接して4〜5時間安定化した後、1時間で血圧と心拍間隔を記録して投与前の正常対照とした。その後、投与量30mg/kg、投与容量2mL/kgで胃婁管により投与した。投与後、血圧を6時間連続して測定し、収縮圧、拡張圧の変化を観察した。
【0068】
本発明の実施例における化合物の動物薬効学評価の結果は下表の通りである。
【表1】

【0069】
試験実施例2
活性代謝物転化率
SDラットに用量20mg/kgで胃内注入により経口摂取させ、投与後3時間経た時点で、血液が自由に遠心管に滴下するように眼窩から採血し、0.3〜0.5mLの血量を採集し、血漿を遠心分離した。サンプルを前処理した後、HPLC法で血漿のEXP3174の量を調べた。EXP3174量と投与量とのモル比により、実験化合物の動物体内での活性代謝物転換率を求めた。
【0070】
結果は以下の通りである。
【表2】

【0071】
試験実施例3
毒性評価
体重18〜22gの昆明種マウス20匹をランダムに2群に分け、各群は10匹ずつで、それぞれ雌雄半分ずつであった。6時間絶食させた後、2群のマウスにそれぞれ胃内注入により本発明の化合物を10g/kg、5g/kg、2g/kgで投与し、投与容積は0.8mL/20gで、溶媒は0.5%のCMCNaであった。投与後(一回投与)14日以内の動物死亡数を積算してLD50を求めた。
【0072】
比較データは以下の通りである。
【表3】

【0073】
従来のAngII受容体拮抗剤と比べて、本発明の化合物は同程度の降圧効果を有するとともに、毒性がより低く、転化効率がより高いという利点がある。
【0074】
本発明におけるすべての文献は、独立的に引用されて参照できるに本出願に取り入られる。なお、本発明の前記内容を読んだ後当業技術者により本発明を各種の変更や修正をしてなる等価の形態も本出願の請求の範囲に限定される範囲に属する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)の化合物、或はその薬学的に許容される塩又はその溶媒化物。
【化1】

(ここで、Rは、直鎖又は分岐のC1−4アルキル基から選ばれ、或いは
【化2】

である。ここで、R1、R2、R3は、それぞれ独立的に水素、直鎖又は分岐のC1−4アルキル基、C3−7シクロアルキル基からなる群から選ばれ、
且つ、前記アルキル基又はシクロアルキル基は未置換で、又はF、Cl、Br、NH2及びOHからなる群から選ばれる1〜3個の置換基で置換されている。)
【請求項2】
Rは直鎖又は分岐のC1−4アルキル基から選ばれ、或いは
【化3】

(ここで、R1、R2は、それぞれ独立的に水素、直鎖又は分岐のC1−4アルキル基、C3−7シクロアルキル基からなる群から選ばれる。)
であることを特徴とする請求項1に記載の化合物及びその薬学的に許容される塩又はその溶媒化物。
【請求項3】
Rは
【化4】

(ここで、R1は、水素、直鎖又は分岐のC1−4アルキル基、C3−7シクロアルキル基からなる群から選ばれる。)
であることを特徴とする請求項2に記載の化合物及びその薬学的に許容される塩又はその溶媒化物。
【請求項4】
Rは
【化5】

(ここで、R2は、水素、直鎖又は分岐のC1−4アルキル基、C3−7シクロアルキル基からなる群から選ばれる。)
であることを特徴とする請求項2に記載の化合物及びその薬学的に許容される塩又はその溶媒化物。
【請求項5】
R2は直鎖又は分岐のC1−4アルキル基であることを特徴とする請求項4に記載の化合物及びその薬学的に許容される塩又はその溶媒化物。
【請求項6】
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸エチルエステル、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,2−ベンゾ[C]フラノニルエステル、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,シクロ2,3−カーボネートエステル、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,トリメチルアセトキシメチルエステル、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(イソプロポキシ)カルボニル]エトキシエステル、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(t−ブトキシ)カルボニル]エトキシエステル、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(シクロヘキシルオキシ)カルボニル]エトキシエステル、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(イソプロポキシ)カルボニル]メトキシエステル、
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(エトキシ)カルボニル]メトキシエステル、及び
2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸,1−[(t−ブトキシ)カルボニル]メトキシエステル
からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の化合物及びその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の抗高血圧薬の製造のための応用。
【請求項8】
0.05〜50mgの請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有することを特徴とする薬物組成物。
【請求項9】
アンジオテンシンIIのI型受容体を抑制することにより軽減又は治療され得る疾患を治療する方法であって、治療を要する患者に請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を0.05〜30mg/kg体重/日で投与することを含むことを特徴とする疾患の治療方法。
【請求項10】
(a)ロサルタンカリウムを2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸に酸化させる工程、
【化6】

(b)工程(a)で得られた酸化生成物をトリフェニルクロロメタンと反応させ、2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1−トリフェニルメチル−テトラゾール−5−イル)1,1’−ビフェニル−メチル]イミダゾール−5−カルボン酸を得る工程、
【化7】

(c1)アルカリ条件で、工程(b)で得られた生成物を一般式X−Rで表される化合物と反応させ(式中、Xはハロゲンであり、Rは
【化8】

を表し、ここで、R1、R2、R3は、それぞれ独立的に水素、直鎖又は分岐のC1−4アルキル基、C3−7シクロアルキル基からなる群から選ばれる。)、
【化9】

エステル化中間体を得た後、保護基であるトリフェニルメチル基を脱離させて式Iの化合物を形成する工程、
【化10】

或いは、
(c2)Rが直鎖又は分岐のC1−4アルキル基から選ばれる場合には、工程(b)で得られた生成物を酸触媒の存在下で有機アルコールROH(ここで、Rは前記と同様の定義である)と還流反応させ、式Iの化合物を形成する工程
【化11】

を含む請求項1に記載の式Iの化合物を製造する方法。

【公表番号】特表2009−527509(P2009−527509A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555597(P2008−555597)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【国際出願番号】PCT/CN2006/001914
【国際公開番号】WO2007/095789
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(508252745)上海艾力斯医薬科技有限公司 (7)
【Fターム(参考)】